文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会
平成28年度「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」(第3回)

日時:平成28年10月18日(火)
15:00~17:00

場所:東海大学校友会館望星の間

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について
      1. (i)所在検索サービス・情報分析サービスについて
      2. (ii)翻訳サービスについて
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1-1
分析・検索サービスがフェアユースとされた米国裁判例(1.0MB)
資料1-2
TVEyes事件補足資料(228KB)
資料2
所在検索・情報分析サービス等に関する論点(案)(183KB)
資料3
翻訳サービスに関する論点(案)(120KB)
参考資料1
第16期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム「著作権法における権利制限規定の柔軟性が及ぼす効果と影響等に関する作業部会」名簿(64.7KB)
参考資料2
新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム(第1回)における議論の概要(216KB)

議事内容

【土肥座長】それでは,定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」,第3回を開催したいと存じます。

本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますが,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥座長】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは,早速,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に議事次第を御用意ください。配付資料といたしまして,資料1といたしまして2点,石新先生の御提出資料でございます。資料2としまして,所在検索・情報分析サービス等に関する論点(案)と題する資料,資料3としまして,翻訳サービスに関する論点(案)と題する資料でございます。また,参考資料1におきましては,第1回の会議におきまして設置を御了承いただきました作業部会の名簿を御用意してございます。参考資料2につきましては第1回の議論概要でございます。不備等ございましたらお近くの事務局員までお伝えください。

【土肥座長】ありがとうございました。

初めに本日の議題を確認いたしますと,(1)新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について,(2)その他,このようになっております。この(1)の議題に関連しまして,本日はオブザーバーにお越しいただいておりますので,事務局からまず御紹介をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】本日,米国フェアユース法理の堅持の動向などを御紹介いただくため,弁護士の石新智規様にお越しいただいております。

【石新様】石新でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥座長】どうぞよろしくお願いいたします。

それでは,(1)の議題に入りたいと思います。本日はワーキングチームとして優先的に検討することといたしておりますニーズの中で,所在検索サービス,情報分析サービス,そして,翻訳サービスについて,さらに議論を深めていきたいと思っております。これらのサービスのうち,特に所在検索サービス,情報分析サービスについては,米国においてフェアユース法理に関する判例も幾つかあるようでございまして,我が国における議論にとっても示唆となることも少なくなかろうと考えられます。そこでまず,これらのサービスに関する御審議に先だち,米国の判例等の動向について,石新様より御発表をいただき,若干質疑の時間を取らせていただいた後,所在検索サービス,情報分析サービスについての議論をいただきたいと思っております。それらの議論の後で,翻訳サービスについても議論をいただきたいと思っております。

それでは早速でございますけれども,石新様,よろしくお願いいたします。

【石新様】では,今御紹介を頂きました石新から御報告をさせていただきたいと思います。20分ほどで報告をという御依頼を頂いておりまして,お配りした資料の2つ目は,後ほど概要を申し上げますFOX NewsとTV Eyesという一番最近の事案の,裁判を事実関係をかなり細かくまとめたレジュメを配っておりますが,それを詳細に御説明する時間がないので,ただ,後ほど申し上げる事実関係を裁判所はどう評価しているかという点に密接に関わってまいりますので,きょうは配付させていただきました。関係箇所は後ほど申し上げたいと思います。

では,早速,フェアユース法理と分析・検索サービスという関係について御説明したいと思います。皆さん御案内のとおり,アメリカでは,フェアユースという規定がございまして,裁判所により数多くの判例が出されている,日本と違う判例法の国でありますけれども,フェアユース判例がどういうふうになっているかという点を最初に申し上げます。それを簡単に申し上げた後に,実際にきょうの先生方の御議論の対象になると聞いております分析・検索サービスにフェアユース規定が適用されて,合法化された事例について,それぞれ概要を御紹介いたします。最後に,私の目から見た私見になりますけれども,米国の裁判例を見て,こうした分析・検索サービスを正当視した,合法と裁判所がどうして判断したのかという点について,2ページ目に上げました目的の変化,それから,原著作物の利用との代替性,それから,著作権者がどういう損害を受けるかという権利侵害の程度という3点について,最後言及しようと思っております。

レジュメの4ページに,御参考までにアメリカのフェアユース規定である107条を上げております。皆さん御案内だと思いますけれども,5ページ,6ページ目で,フェアユース規定がどう運用されるかという点ですけれども,問題となる利用行為を,5ページ目に上げました4つの考慮要素を考慮して合法・違法を判断するところでございます。アメリカ国内で長い間批判がございました。と言いますのも,107条を見ても,この4つの要素を考慮して判断すると規定されているのみでありまして,この4つの関係,どれかが重要でどれかが重要でないということがあるのか・ないのか,そういったことが法文上明らかではないということもありまして,米国では裁判例がその評価をめぐって長い間動いてまいっております。ただ,6ページ目の一番最後に上げましたCampbell対Acuff Rose事件という1994年の連邦最高裁の判決によって1つのスタンダードが締結されまして,それが現在では定着しているというふうに大きく評価されています。94年のCampbell判決において,フェアユースを判断するときにどういう基準でこの4つの要素を判断するべきだと最高裁が判断したかという点が7ページになります。

もっと多く判例事項あるわけですけれども,非常に重要な点としてはここに上げました3つ,日本でもかなり一般的に広まってきておりますけれども,被告の利用がTransformative,日本語にどう訳すかという問題はありますけれども,一般に変容的という訳され方が多いと思うんですけれども,Transformativeな利用というふうに被告の利用が言えるかどうか,そこがフェアユースの判断の鍵になると連邦最高裁は判じております。

では,その変容的な利用がどういうふうに評価するのかという点が7ページ目の3つの中の真ん中のところですけれども,変容的な利用か否かの評価は,新しい作品が単に原著作物に取って代わるものかどうか,又は,新しい作品が新たな目的又は異なる性質を持った何か新しいものを付加し,新しい表現,意味,メッセージといったものによって,原著作物を変容させるものか。そこを,言い換えてみれば,新しい作品が変容的であるか,Transformativeであるかという,その程度を問うものであるというふうに判じております。

そういうことで,変容的な利用かどうかというところの重要なポイントとしては,利用目的が変容的なものと評価できるかどうかであると連邦最高裁判所は言ったわけです。では,目的が変わればほかの要素はどうなるのかについて,連邦最高裁は,異なる表現上の目的を持つ利用,どんどん変わっていけば変わっていくほど,ほかの要素,第2,第3,第4という要素,特に被告の利用が営利性を持っている,商業的な行為であるといった,一般にフェアユースに否定的に働く要素について,その第4要素の評価の比重が低下する,仮に原著作権者に不利益を及ぼすようなことがあっても,変容利用目的を上回るとフェアユースとして肯定されるという判事をしたことになります。この94年の最高裁の事例は,皆さん御案内かと思いますけれども,パロディーの事案であります。パロディーについて,パロディーを合法であると判断した,最高裁のフェアユースの判断基準でありますけれども。

次の8ページに記載したとおり,94年以降,もう20年ほどたちますけれども,数多くのフェアユース判例の蓄積を経て,米国内の一般的な評価と言っていいと思うんですけれども,特に2005年以降のフェアユース裁判例においては,変容的利用と言えるかどうか,Transformativeと言えるかどうかというポイントがフェアユース判断の基準であるということが定着しつつあるようです。

以上申し上げたとおり,傾向が続いていたわけですけれども,その変容的利用かどうかという基準がきょう主なテーマとなる分析・検索サービスについても適用されて,その結果,合法である,フェアユースであると評価される動向もまた定着しつつあると言えると考えます。

8ページ目に,もっとたくさんありますけれども,代表的な裁判例として9つほど,2005年以降のものに限ってフェアユースをめぐって争われた裁判例を挙げましたけれども,ここで挙げた裁判例全てが,フェアユースかどうかの判断をする際に,Transformativeかどうかという94年Campbell判決に言及して,その判断を導いていること。それから,今ここに赤字で表記した裁判例については,きょうのテーマにつながる分析ないし検索のサービスをめぐったフェアユースの成否で,全てについてフェアユースであると。すみません,失礼しました,8番目のFox Newsは一部例外があるので,これは最後に申し上げますけれども,多くの部分についてフェアユースであるという判断をしたものとなります。

数が多いので,きょうは代表的な裁判例ということで,分析・検索サービスの近似のもの,今の8ページの番号で申し上げますと,5番から9番に関するものについて,簡単に御紹介したいと思います。まず1つ目が,2009年のiParadigms事件であります。この事案は,iParadigms社が高校生のレポートの盗作・剽窃を探知するためのデータベースサービスを高等学校や大学に対して提供していたという事案です。その際,iParadigms社は,学校から,学校に提出された高校生のレポートを無断で被告であるiParadigms社に提供して,データベースの中に取り込んでもらう。iParadigms社としては,そのデータベースと,さらに次に新たに提出された高校生のレポートを比較することを通じて,次の高校生が出してきたレポートが,前の別の高校生のものをコピーしたものではないか,また,その他,ほかの市販されている雑誌とか定期刊行物等の記載からそのままコピーされたものではないかといったことの検証を行うサービスを提供していたことになります。そのデータベースの中に無断で自分のレポートが取り込まれた生徒が原告となって,著作権侵害を主張した事案であります。

10ページ目と11ページ目がフェアユースの4要素の判断でありますけれども,結論としては,被告サービスにおいて,無許諾でレポートの複製を作り,データベースの一部として取り込むことについては,フェアユースであると判断されております。第1要素,目的の点は,これは簡単に肯定できると思うんですけれども,学生の表現した目的と,このiParadigms社が検索探知サービスを提供することの目的は違うということで,フェアユースに肯定的に評価されております。

10ページの下のところで赤字で書いたんですけれども,この点もその変容的利用ということでアメリカでも議論がありますけれども,変容というものとの関係で,このiParadigms社は,そのまま学生のレポートをデータベースに取り込んでいる,何の手を加えず,そのままデジタルなものとして,内容面には手を加えず取り込んでいるということで,何も付け加えていないということで,Transformativeなものではないという原告側の主張もあったわけですけれども,裁判所は,その点については,内容ということではなくて,著作物の機能とか利用の形態,目的が変化しているということさえあれば,変容的と評価できるとして,その点を退けております。

11ページに参りまして,第2,第3,第4要素という点も,被告,サービス提供者側に有利な評価となっております。簡単に申し上げますと,第2要素については,レポートという無公表な著作物なので,そういう形で取り込まれること自体は公表権を侵害するという主張を学生側はしたわけですけれども,裁判所は,被告の目的とこれも関連しますが,アーカイブを作るというプロセスでは,誰もその内容を検証していないということでありまして,その著作物を享受していないという意味だと思うんですけれども,そういう意味で第三者に対して,被告の従業員もそういうことをしていないし,被告自身が第三者に対して頒布・公表したりすることも,このサービスの中では予定されていないということで,その点は退けております。

また,第3要素の著作物の量という点についてですけれども,本来,全文複製することはフェアユースに否定的に働くわけですけれども,変容目的,ここで言う剽窃の探知をするという目的のためには,できるだけデータベースというものは完璧なものが存在していることが必要だということで,目的とその範囲というものが限定されている以上,全文複製も合理的なものとして肯定される,しかも,そのデータベースは外部に公表されるものではないということも,第3要素において被告側が有利に評価された理由となっております。

第4要素の市場への影響については,この案件においては,この市場への影響は少し変わった部分がございまして,学生のレポートであるということで,市場とは何なのかというところが1つ問題になりますが,判決の内容によりますと,原著作物の市場というのは,自分ではないほかの高校生などにそのレポートを販売する市場だという指摘があります。ブラックなマーケットだと思うんですけれども,他の学生にレポートを売るマーケットも一部存在しているようではあります。そのため,こういった原告の著作物がiParadigms社のデータベースに剽窃探知の対象として取り込まれてしまうことによって,自分のレポートがそういったマーケットで売れにくくなる不利益はあり得ると裁判所は認定しているんですけれども,そういった,ある意味不正を助長するような利益は,著作権法が保護するものではないということで,第4要素についても,特に原告の権利を侵害するものではないと判断した事案であります。

次に,12ページ以降,Authors GuildとGoogleという案件であります。時間の関係もありますので,一応レジュメ自体は情報を盛り込んでおきましたが,皆さん御案内のこともあると思いますので,少しはしょりながら行かせていただきます。本件はGoogle社が2004年に開始したプロジェクトで,プロジェクトに参加する図書館の所蔵書籍全てをスキャンする,スキャンしたものに基づいて書籍の検索サービスを提供するということを行った事案であります。Google自身が書籍の検索サービスを提供した事案がGoogle Books事件となっておりまして,12ページの3段目のところにあります,図書館自体が,Hathi Trustという,グーグルにスキャンしてもらった書籍を大学自身がそれぞれ共有してトラストを作り,そこで書籍情報の検索だけを可能にしたというサービスを別途グーグルとは別にやっているんですけれども,それも事案になっておりますけれども,論点は同じですのでここでは省略させていただきます。

そういった形で,グーグルの行った全文スキャンをめぐる著作権侵害の事案であります。本件における唯一の争点は,グーグルの行った全文スキャン及び書籍検索サービスにおいて,スニペット表示と言って,検索の対象として該当する部分の一部を表示するサービスを行っていたことが,フェアユースを構成するかどうかという。1つは,全文のデータベースを作る,先ほどのiParadigms社のレポートの全文アーカイブと同じですけれども,書籍の全文データの蓄積をする行為及びそこから検索サービスとして一部の表示をするサービスの二面にわたりますけれども,その点がフェアユースかどうかという点であります。

時間の関係もありますので,内容面の細かなところは,要素の判断との関係で申し上げるとして,16ページをごらんいただきたいと思います。16ページにおいては第1要素の判断でございますけれども,裁判所の方は,ニューヨークの連邦地裁と第2巡回区の控訴審判決,昨年10月,11月だったと思いますけれども,両方とも同じような判断でやっておりますけれども,第1要素の変容的な目的は肯定されるということでございます。16ページにその理由を書いておりますけれども,グーグルは書籍をデジタル化し,表現された文章を包括的な単語インデックスへと変容して,読者,学者,研究者,その他の者が書籍を発見する手助けをしている。そういったグーグルの検索サービスが重要な検索ツールとなっている。Google Booksは単語を異なる目的に用いている,幅広い書籍の選択にユーザーを向ける指針として機能させるためにスニペットを表示しているということで,その他いろいろな理由があるわけですけれども,従来の書籍の享受という目的とは異なる目的にあるということだと評価できると思いますけれども,そういったことをメーンな理由として,第1要素において変容的な利用であることを肯定しております。

第2要素の著作物の性質について,この点は,細かなことではあるんですけれども,一審と控訴審でちょっと違った評価をしておりまして,18ページですけれども,原審では,Google Booksの対象になっている書籍の性質がノンフィクションであると。フィクションではないという意味でむしろ事実に近いということを理由として,この第2要素について,むしろフェアユースに肯定的なものと原審は判断していたわけですけれども,控訴審の方では,第2要素というこの要素の位置付け自体とも絡みますけれども,第2要素自体がそれほど重要な要素ではない,第1要素,目的及びその権利者に対する影響という第4要素との関係で,変容的利用の評価がどちらかに触れれば,第2要素はそれに従うという判断をしておりまして,第2要素については特段具体的な評価はしておりません。

19ページ,20ページと,第3要素,第4要素の評価であります。第3要素の使っている量の部分についても,これもiParadigms社と同じように全文をスキャンしているという意味では,本来フェアユースに否定的な方向になりますけれども,この点も,検索サービスという変容目的の達成のためには合理的に必要なものである。それから,グーグルのサービスが原著作物の代替物を提供するような形をとっていないということから,第3要素も特段フェアユースに否定的なものにはならないと判じております。

ただ,ここで重要なのは,19ページの3つ目の部分で,スニペット表示については非常に慎重な認定をしております。スニペット表示について,皆さん御案内かと思いますけれども,検索の用語がヒットする書籍部分について,一部表示するという機能でありますけれども,グーグルはこのスニペット表示の機能を提供する際に非常に気を使っておりまして,その点だけちょっとサービス内容としてごらんいただきたいので,15ページに戻っていただければと思います。

スニペット表示の機能としてグーグル社は非常に気を使っておりまして,ここに挙げたとおりでありますが,スニペット表示を使ってユーザーが書籍全体を見ることができないようにしております。特に重要なのは,3つ目の,スニペットとしてもともと表示されない箇所が存在して,いくら検索しても,ある書籍の10%部分については当たらない,そこはどうあっても表現されないという部分を必ず作っているということで,全文書籍と代替し得ないように設計されています。それから,辞書,料理本,俳句,詩といった,短く,ある部分だけ見えてしまうと,それだけでその書籍の享受につながるような形態についても,スニペット表示はされないという機能の設定をしております。

以上申し上げましたようなスニペットの表示機能について,先ほど申したようなグーグルが課した制限を考慮した上で,スニペット表示というものは,原著作物の代替物としては機能しないということで,スニペット表示についても第3要素はフェアユースに否定的なものにはならないと判じております。

第4要素につきましては,二次的な利用が原著作物と市場で競合する代替物として機能するかどうかが鍵であるという,先ほど申しましたCampbell判決と同じ基準と言っていいと思います。裁判所は,今申し上げましたように,スニペット表示の厳格な制限を前提として,グーグルのサービスのスニペット表示は原著作物の代替物を提供するものではなく,第4要素もフェアユースに否定的な評価とはならないと判じております。

一審では特に大きな問題とならなかったんですけれども,二審で取り上げられた点としまして,第4要素の中で考慮されているのが,20ページの一番下のセキュリティの部分でございます。この点も著作権者の懸念としてよく理解できるところであるんですけれども,グーグルのようなデジタル著作物が安易に作られることによってセキュリティが破られて,そのデジタル複製物が広く頒布するという潜在的損失について,Authors Guildは控訴審で明確に主張してきたということがあるんですけれども,その点について裁判所は,そういった理屈としては考えられるけれども,実際のこの事案においてグーグルのセキュリティ技術は高度なもので,そうしたリスクは認められないということで,その点も排斥したという点が,一審とは少し違う特徴的なところとなっております。

最後に,FOX NewsとTV Eyesという案件について御紹介したいと思います。21ページですけれども,FOX NewsとTV Eyesの事件ですけれども,TV Eyesはメディアモニタリングサービスを提供する事業者でありまして,1日24時間,週7日,1400以上の全米のテレビ,ラジオ局のコンテンツを全て複製しております。それによってデータベースを作り,そのサービス利用者に対してキーワード検索や日時検索に基づいた放送内容の文字情報,それから,短いビデオクリップを提供している事案であります。FOX Newsは,このサービスについて著作権侵害であるということで差し止めを求めた事案になります。

お手元の配付資料1-2の3ページをごらんいただければと思います。被告のサービスが非常に細かく設計されておりまして,時間の関係でここで全て申し上げられないので,後ほどごらんいただければと思います。被告のサービスとして特徴的なこととしては,3ページ目の冒頭でありますが,利用者が自分の関心のあるキーワードや語句について全放送番組をモニターするというサービスですけれども,32日間しかコピーされた番組が保存されていないという点が1つポイントになります。また,そういったものについて,デジタルクリップということで番組を細かく切って,その検索が当たる部分について提供するわけですけれども,それ自体から番組内容を享受できないように工夫されております。その点については4ページ目の一番上の部分でありますが,時間という意味で申し上げますと,クリップの時間の長さが10分以内に制限されている。しかも,大部分の番組のクリップについては2分以内になります。ということなので,番組をこの検索サービスを使って享受しようとしてもなかなか難しいんじゃないかと思うんですけれども,そういった工夫を施した上で行っているサービスであります。

また,後ほど申し上げる公共性の評価に影響を与えていると思うんですけれども,4ページ目の上から4つ目の黒い丸のところで,このサービスは誰に利用されているかという点も結構重要ではないかと思うんですけれども,この原審の判決時点ですけれども,2013年10月現在で,ホワイトハウスとか連邦議会等々,名だたる方々がここに載っていると思いますが,そういった方々が検索キーワードによって放送番組をチェックするということに関心を持って,このサービスの利用者になっているという事実も認定されております。そういった形の,大規模に放送番組の検索を可能にしているサービスのフェアユースかどうかが判断された事案であります。

22ページから24ページにかけてでございますが,第1要素から第4要素がどのように評価されたかという点であります。22ページ,簡単にまとめておりますけれども,第1要素については,検索可能な壮大なデータベースを構築するという目的の変容を強調しているということが言えます。この点については,資料1-2の6ページで,第1要素の判決内容を認定事実を列挙しております。FOX NewsとTV Eyesが提供しているサービスの違いについて裁判所は,裁判官は,TV Eyesのサービスというものは,これが彼らが伝えたことである,放送事業者が提供したことであるというメッセージであると。FOXのニュース番組の提供するものは何かと言えば,裁判所は,これがあなたの知るべきニュースであるということになると思いますけれども,そういうメッセージであるという認定をして,TV EyesのサービスのメッセージとFOXのサービスのメッセージは本質的に異なる,目的が異なる。言い換えれば享受に向けられているかどうかという点に絡んでくると思うんですけれども,そういう意味で目的が違うということを強調しております。

第2要素についても,ニュース報道ということで,事実関係の方に傾きますので,フェアユースにとってはプラスでもマイナスでもないということになります。第3要素については,こちらもグーグルやiParadigms事件と同じように,データベースを構築するためにニュース全てを複製しているという点でありますけれども,合理的な検索サービスを行うという利用目的のためには,全ての複製を行うことが必要であると。1日24時間,週7日,全ての複製がなされていなければ,このTV Eyesが行おうとするサービスの価値はむしろ逆に毀損されてしまうという認定で,第3要素についてもフェアユースを否定するものではないということになりました。

第4要素について,グーグルの事件と少し違ったところがございます。基本的な枠組みとしましては,23ページの一番上に書いたとおりでありまして,変容的な利用によって生じる損害は第4要素で考慮されるべき損害ではなく,第4要素で懸念を持つべき損害というのは,原著作物の代替利用と言える損害のみであるという立場に立って,クリップの再生状況等の証拠に照らし,視聴者が原告のニュース番組を視聴せず,要するに,被告のTV Eyesのサービスを利用して,FOX Newsの方のサービスを利用しなくなってしまうという主張をしていたわけですけれども,そういった事実は認められない,そういった損害は推定にすぎないと認定いたしました。この点について,お手元の資料の6ページの一番下から5行目あたりのエのところから,第4要素ということで記載しておりますが,7ページに詳細な事実認定の列挙がございます。裁判所としてはかなり細かく認定しておりまして,ここを一々言及することはいたしませんけれども,ごらんいただいたとおり,裁判所が認定している事実としましては,TV Eyesの利用者がFOX Newsの番組内容を享受する形態ではTV Eyesのサービスが利用されていないということを,クリップの再生時間とか連続視聴されている番組がどれぐらいあるかといったような事実認定を経て認定していることが言えるかと思います。

あと7ページ目の2,公共の利益と書いてありますけれども,その上の黒い丸の部分で少し言及しましたけれども,Google Booksと違って,FOX NewsはTV Eyesと少し競合する,自分のニュース番組のクリップ提供サービスを行っていたり,You tubeその他に対してライセンスをしているという実態がございました。一部競合し得る部分ではあるわけですけれども,その点の競合の証拠・証明はさておきながら,裁判所は,仮にそういうFOXの行っているサービスに何らかの影響があるとしても,被告のサービスの公益性を考慮すると,トータルでは第4要素でフェアユースに否定的には働かないと判決しております。この点がグーグルの判決以上に少し踏み込んでいるのではないかと思いますけれども,そういった形でライセンス市場が一部あって,そこで一部競合がある場合にも二次的利用者のサービスの公共性がある場合にはフェアユース足り得るという判断をしております。

このTV Eyesのサービスの公共性という点については,同じ7ページの下に書きましたけれども,被告サービスがなければ,そういった情報はどうしても入手できないというサービスの不可欠性と言っていいかと思うんですけれども,そういったものを被告が提供しているという被告サービスの性質及び実際の被告サービスの利用形態が,7ページの下に書いたとおり,政府機関は全米で流れている情報の正確性の補足及び訂正のために使っていたり,ジャーナリストは各報道機関がどういうふうにニュースを調査・比較しているかを確認して,それを批判していくために使ったりということで,これも享受とは少し違う形の利用形態を促進させているという部分があると思うんですけれども,そういった点を捉えて被告サービスの公共性が強いと認定しております。

そういうことで,まとめますと,被告のTV Eyesが,全米のFOXの番組も含めた全米のデータベースを作ること,それから,それについてキーワード検索をかけて,該当する箇所について一定の短い時間ですけれども,その視聴を可能にさせること,という部分についてはフェアユースであると判断いたしました。ただ,この事案のおもしろいところは,TV Eyesはそういう該当部分の一部の視聴に限らず,さらにその部分をダウンロードするとか,そのデジタルクリップを第三者と共有することができる,電子メールで添付して送ることも可能にしていたり,副次的なサービスも提供していたんですけれども,2014年の段階では,そういった部分については証拠が不十分だと,さらなる証拠の収集が必要だということで判断が留保されておりました。その判事が2015年8月,去年の夏ですけれども,出されたのが,24ページの下の部分でございます。

アーカイブ化することはフェアユースとして認めた,かなり簡略して書きましたけれども,アーカイブというのも,ユーザーとして検索結果をどこかに残しておきたいといったときに,被告サーバに自分のユーザーが持っている空間がありまして,そこにコピーをアーカイブとして検索結果を置いておけるという機能もあるわけですけれども,そういったことについては検索の関係上必要だということで,フェアユースであるというふうに判断しております。

他方,自分のパソコンにそのクリップをダウンロードできる機能及びキーワード検索に加えて日時検索もできる,何月何日のFOXのニュース番組ということで検索できる機能については,キーワード検索とは違って,被告のサービスにとって不可欠な内容ではなくて,むしろ検索というよりもコンテンツのデリバリーになっているという評価をして,一部フェアユースではないという判断を昨年8月にしております。

ということで,この事案は第2巡回区で継続中ということでありますが,一審段階では以上のような判断となっております。

すみません,ちょっと長くなってしまいましたが,以上,駆け足で御紹介しました判決内容等を,私の目から見て,どうしてそういうサービスが合法化されたのかという点を,25ページ以降,3ページでまとめました。簡単にいかせていただきます。まずは,変容的利用法理そのものでありますけれども,被告のサービス利用形態が検索や分析であるという部分は,やはり著作物を享受するという本来的な利用形態とは異なる目的であると評価される傾向が非常に強い,それゆえに正当化されるということが言えるのではないかと思います。

2つ目には,アメリカで正当視されているサービスの公共性が非常に強いと言えるのではないかと。グーグルブックスなどの判決をごらんいただければ,グーグルの検索サービスがこんなにすばらしい,これだけ公共性が強いということを非常に強調している判決文になっているんですけれども,そういった意味で,サービスの公共性が非常に強いときに正当化されると言えるのではないかと思います。

26ページ,ここは注意すべきところなんですけれども,変容的目的があると正当化される傾向にあるわけですけれども,では,著作権者に対する影響を全く配慮していないかと言うと,そういうことではなくて,むしろ慎重に評価していると言えるのではないかと思います。例えば,Google Booksの事案で申し上げますと,先ほど申しましたように,スニペット表示については,Google Booksサービスが非常に厳格な制限を施していることを事実認定及び評価した上でフェアユースと判断しておりますし,TV Eyesの事件では,一部の視聴の場合と,ダウンロード,日時検索の場合の機能及び原告著作権者であるFOXに与える影響の差に配慮して,一部をフェアユースでないと判断するといったところに見られますように,慎重に第4要素も評価していると言えると思います。

アメリカのフェアユースの判例を見ておりますと,目的が変容した場合,変容目的によって著作物の利用される市場については,著作権者が独占的な権利を有するものではないとはっきりと明言する裁判例もございます。変容目的後の変容目的に関する市場は,著作権者が何も言えない領域であると明言する裁判例もあるんですけれども,今申し上げたような裁判例は必ずしもそこまでは言っていなくて,第1要素で変容性を肯定しても,第4要素の判断をおろそかにするのではなく,むしろ第4要素も慎重にサービス内容を検証して,代替物の提供になっていないかについて慎重に評価した上で,フェアユースの判断を導いていると言えると思います。

最後の部分ですけれども,もっともということで,第4要素のところについて,裁判所が非常に慎重に評価しているということもありますけれども,原告側,権利者側の損害の立証も非常に困難である様子がうかがえます。TV Eyesの事件では,クリップの視聴サービスの方ですけれども,その部分について一部競合しているということがあったとしても,公共性が強いこと,それから,FOX Newsが行っているビジネス全体から見ますと,クリップの視聴サービスの売り上げが年間数億円だと思うんですけれども,FOXの行っているビジネス全体から見ると,やはり軽微な損害だと認定されたところから見ましても,著作物の本来的な利用方法ではない部分に仮に競合が生じたとしても,権利者の損失はなかなか認定されにくい傾向があるように思われます。この点は,ここに書いたとおり,権利者による著作物の本来的用法でない部分の利用形態について,著作権者の損失を大きく見ることができるのかどうかに関係してくるのではないかと思われます。

最後に,他方,サービスによって得られる公共の利益は,グーグルブックスにせよTV Eyesにせよ,iParadigmsもそうだと思いますけれども,そのサービスがなかったときに比べると非常に便利な公共性の高いものを提供していると高く評価される傾向があって,ますます第4要素によって権利者がフェアユースをひっくり返そうとするのはなかなか高いハードルになっているという評価ができるのではないかと思います。特にデータベースの構築の段階で,無断で全文複製というものを当然しているわけですけれども,グーグルブックスにおいてその全文スキャンというものが肯定され,最高裁で上告が受理されなかった,その結果,確定したということもあって,バックオフィス側で検索の前提となる全文スキャンを行う行為自体はフェアユースであるということで,ほぼ認識的に固まりつつあるような印象を受けます。特にTV Eyesの事件では,グーグルブックスのときと違って,FOXは,放送番組の全文複製のデータベースへの取り込み行為自体を取り上げて,あえて著作権侵害の主張をせず,クリップを取り出して視聴させるという部分だけの著作権侵害を争っていたということで,検索結果,分析結果の前提としての全文複製については特段争わなかったという事実もありまして,そういったことから見ましても,そういう傾向は顕著になりつつあるのではないかと思います。

すみません,駆け足で,かつ長引いてしまって,申し訳なかったです。以上で私からの報告とさせていただきたいと思います。

【土肥座長】石新様,本当に貴重な有益なリポートをしていただきまして,ありがとうございました。せっかくの機会でございますので,ただいまの御発表に関連して御質問がございましたら,1つ2つ受けたいと思っていますが,いかがでしょうか。

【大渕座長代理】すみません,私,前の関係で遅れて聞けていないのかもしれませんけれども。個別の詳細の御発表ありがとうございました。これは多くの人が聞きたい話だと思うんですけれども,パワーポイントで言いますと6ページのところで,個別の判断は後でお伺いしますけれども,これは,総合考量と書いてある2つ目のポチのところなんですけれども,これは一般的な話なのか,御報告者の御見解なのかというあたりで,第1ないし第4要素をどのように考慮するのか条文上の手がかりがないということで,要素の間の軽重が法文上は不明,あるいは不明確・予測不可能との批判というのはよく聞くところなんですが,全体にわたる重要な点だと思いますので,もう少し具体的に御説明いただければとと思います。

【石新様】この点は,私の印象ではなくて,アメリカの著作権法学において,それは私の理解だと言われてしまえばそうかもしれませんけれども,一般的に言われていることかと認識しています。特に,先生も御案内のとおり,最高裁判例が揺れていたということもございます。ソニー・ベータマックス事件において,ビデオテープでテレビ番組を複製するというユーザーの行為が,タイムシフティングすることがフェアユースであるという判事をした最高裁判例などでは,第1要素のところで,商業的な行為,その事案では,一般家庭においてテレビを複製するという行為なので,非商業的利用という事案になるわけですけれども,一般論として,当時の最高裁が展開したものが,第1要素において,もしも被告の行為が営利性を持っていたら,アンフェアであることが推定されるという判事を行っていたという時代的背景があって,第1要素でそういった推定がされるのかといったこと自体は,107条の条文からは読んでも分からないわけですが,少なくとも1984年のベータマックス事件の最高裁判決は,そういう形で,第1要素・第4要素において,商業性があるかないかについて非常に重視する姿勢をとっていたという時代がある。それに対して,先ほど申し上げました94年のキャベル事件で,明確には自分の最高裁判例である84年を否定しなかったわけですけれども,実質論としては,被告の利用が商業的であるかどうかよりも,トランスフォーマティブな利用と言えるかどうかの方が鍵であると,ちょっとかじを切ったというふうに,アメリカでは一般的に評価されている。ゆえに,107条をどう読むかについて法文上ははっきりしていないもので判例が揺れているということは1つ言えますし,先生も御案内のとおり,アメリカ国内でもフェアユース規定をなくせという議論は余りないと認識していますけれども,フェアユース規定の107条のあのままでいいのかという議論はもちろんありまして,そういったこととの関係もあると思います。

【土肥座長】ありがとうございました。この後の審議いただく問題もございますので,もう一方もしおいでになれば。

【上野委員】最後のスライド27で,サービスの正当化事由の第4要素として「著作者の市場に対する影響は慎重に評価される」と書いておられることについてお聞きしたいと思いますが,アメリカでは,権利者側が,変容的利用と同種のサービスをみずから行っているときであっても,公益性が高いサービスの場合はなおフェアユース該当性が認められる可能性があるというご趣旨かと思います。

この点は,日本でも同じような議論があるところです。日本の場合,権利者による市場が形成されている場合は権利制限を否定すべきではないかというご意見がありまして,しかも,権利者が自分で同種のサービスを提供しているために,いわば本来的市場を形成している場合だけではなくて,第三者が行うサービスにライセンスをする用意があるというだけでも,そこに「ライセンス市場」というものが形成されており,権利制限規定を設けるとそこにいう「ライセンス市場」が害されてしまうので,そのような場合には権利制限は否定されるべきだという考えも見られるところです。例えば,論文剽窃サービスに権利者がライセンスする用意があるとか,番組検索サービスに権利者がライセンスする用意がある場合は,いずれもフェアユースに当たらないと考えるべきだという議論です。

しかし,先ほどのお話からいたしますと,アメリカでは,権利者がライセンス・スキームを用意すると言ったとしても,そして,権利者がみずから同種のサービスを提供しているとしても,サービスの公益性によっては,なおそれがフェアユースに該当することが否定されないという理解でよろしいでしょうか。

【石新様】アメリカでそれが主流かと言われますと,そうじゃないんだと思います。と言いますのも,例えば,Google Booksの事案でも,先生御案内のとおりですけれども,第2巡回区でフェアユースであると判断がされ,最高裁で上告受理されず確定したとはいえ,根強い批判もあり,あの場合に,第2巡回区の控訴審,裁判所は,著作権者は,書籍の情報提供をすることについて独占権を持っていないんだということを判じていたと思うんですけれども,なので,情報提供することについて第三者にライセンスする・していないということは,基本的に考慮の対象外であると判じていると私は理解しているんですけれども。もちろん,先生の御案内のとおり,Authors Guildが主張していたとおり,ライセンス市場というものは,自分たちがライセンスする権利を侵害しているという意味でフェアユースじゃないんだとAuthors Guildは主張していましたし,一部の有力な学者なども,ああいうGoogle Booksのような形態において,利用はいいけれども対価は払われるべきだという議論をされているのは先生御指摘のとおりでありますので。アメリカで確定しているかと言えば,すみません,そこは私のミスリーディングな御説明になろうかと思いますので,第2巡回区はそういう判断をして確定してはいますけれども,その他については,やはりまだ議論は残っていると認識しています。

【大渕座長代理】すみません,後のこともありますので,細かい話は大体分かりましたが,お聞きしていると,変容と言っても結構,言葉の端々にも出てくるし,この25ページのところにも出てくるけれども,享受というのがかなり重要なファクターになるんじゃないかと思われますが,この25ページを見ると,細かい一連の判例を分析されてまとめられたところだと思うんですが,キーワード的には,アメリカだと変容というところに関わってくるかと思うんですが,享受というところが重要だし,もう一つは,我々は当然なんですが,所在検索にせよ,翻訳にせよ,サービスの公共性というか公益性というか,要するに一方では享受が害されるというところが重要だし,もう一方では,権利制限だから当然と言えば当然なわけですけど,著作者の利益と,それに対抗利益とのバランスと考えると,アメリカのものと,我々が普通に考えているものと,表現の仕方が違うだけで,実は各国ロイヤーが考えていることは,判例法的にやるのか立法でやるのか違いますけど,かなり似ているかなという気がするんですけど,そういう理解でよろしいんでしょうか。

【石新様】はい,先生の御意見に私も全く賛成でありまして,向かっている方向は似ているんじゃないかというのが私の個人的な見解であります。

【土肥座長】ありがとうございました。恐らく御質問・御意見まだまだいろいろあるかもしれませんけれども,先ほど申しましたように,この後の議題が重要なのがございまして,本当にこの段階で申し上げるのは恐縮なんですけれども,15分ぐらい延長する場合もあり得るんじゃないかと思いますので,その分どうぞお含みおきいただければと存じます。

石新様,どうもありがとうございました。

これから意見交換に入りたいと思うんですけれども,石新様の御発表を踏まえまして,各サービスに係る権利制限の正当化根拠,権利者に及び得る不利益への配慮,こういう観点から議論を深めていきたいと思っております。こうした点について,論点を事務局でまとめていただいておりますので,まず事務局から,この論点の説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に資料2をお願いいたします。所在検索サービス等に関する論点です。最初の四角囲みはこの資料の趣旨を紹介したものでありまして,本日は権利制限の正当化根拠等について,実質的な内容面の議論を行っていただきたいということでありまして,具体的な制度設計は今後,作業部会の検討結果を踏まえてまた別途ということでございます。

まず分類としまして,1,データベースへの著作物の収集行為や整理,翻案行為と,2としまして,サービスの結果提供の際に行われる著作物の外部への表示,これを分けまして議論をお願いしたいと存じます。前者につきましては,著作物の表現の知覚を通じて享受することの用に供するものとは認められないことから,原則権利者の利益を害することとはならないという考え方で,これまでもある程度コンセンサスがあるのではないかと整理させていただきました。

2の著作物の表示に関する論点をこれから御紹介したいと思います。まず論点1としまして,権利制限の正当化根拠でございます。本日,事務局としまして,これまでの議論や本日の御発表なども踏まえました整理案のたたき台を御用意しました。以下の幾つかの○のところを総合考量しますと,権利制限は正当化根拠が基本的に肯定できるとしております。まず,両サービスに共通する事項としまして,1つ目の○は,社会に新たな知見や情報をもたらすという付加価値を創出するという点で,社会的意義が認められるのではないか。

2つ目の○,サービスの主たる目的は,新たな知見や情報をもたらすことでありまして,著作物の表示は付随的に行われるということから,著作権者の本来的市場に影響を与えることは基本的に想定されないとしております。ここでは本来的市場と言いますのは,先ほど石新先生から御紹介いただいたところの表現によりますと,原著作物に代替するというようなイメージで使っております。

3つ目の○,非本来的市場に係るような不利益の発生を完全には否定できないということですが,これは軽微なものにとどまるということであれば,不利益の度合いは小さなものにとどまるかと思います。さらに最後に契約による対応困難性ということも紹介しました。

次のページをお願いいたします。特に所在検索サービスに特徴的な事項としまして,次のことが言えるのではないかとしております。すなわち,当該サービスにつきましては,一般公衆に提供・提示されている著作物について,著作権者は,通常,当該著作物の購入の増加等を図るために,その所在等について,できるだけ多くの利用者に知らしめたいという意図が推認されるのではないかということを述べました。

以上が正当化根拠に関する整理案のたたき台でございます。

次に,下の,本ワーキングチーム等における議論や,関係団体からの御意見につきましては,既にこのワーキングチームで議論いただいたことの整理でございますので,御説明は省かせていただきます。

続きまして,3ぺージをお願いいたします。論点2,ここからは仮に先ほどの整理のように,例えば,権利制限の正当化根拠が認められるとした場合でも,どのような場合であれば権利者の不利益に配慮が必要かについての論点でございます。論点5つ御用意いたしました。

まず第1,論点2-1としまして,サービスの提供対応に応じた権利者の本来的市場への影響について,(主従関係)とさせていただきました。1つ目の○,論点1の整理案で述べましたように,権利制限の正当化根拠を構成する要素の1つに,本来的市場との競合性の小ささ,すなわち,著作物利用が他の主たる目的に付随して行われるものであるとした場合には,その主従の関係をどのように考えるべきかという論点でございます。例えば,所在検索サービスを例に取りますと,1つ目,所在情報提供サービスを主たる目的と捉えまして,これに付随して著作物の提供が行われると評価できるようなサービスと,一方で,著作物の一部分の提供そのものを目的としてサービスを提供しており,それに付随して出典等の所在情報も提示されているにすぎないと評価されるべきものもあろうかと思いますが,これらの区別をどのように行うべきかという視点でございます。この点,例えば,当該サービスの利用者が結果として表示される著作物について,一定程度,意図的に選択できるような,そういうサービスの場合は,どちらかと言うと評価は1より2に近付いていくのではないかというふうに示しております。

なお,御参考までに,先ほど石新先生からも御紹介ありましたように,TV Eyesの地裁判決では,キーワード検索機能はフェアユース,しかし,日時検索機能はフェアユースとは認定されませんでした。その理由としまして,判決では,キーワード検索機能は探索手段なんですが,日時検索機能は,探索手段であるというよりはコンテンツを提供する手段であるということで,それほど変容的ではないというふうにされたということでございます。

論点2点目でございます。論点2-2,表示される著作物の質的・量的な程度についてでございます。これら各サービスにおいて,結果提供の際に行われる著作物の表示の質的・量的な程度と,権利者に及ぶ不利益との関係についてでございます。例えば,ここにございますような例の場合はどうかということでございまして,1つ目としましては,辞書,辞典の各項目や俳句等の著作物の全部表示,2点目,写真・絵画の精細な画像の表示,3点目,言語の著作物や映像の短い一部分を超える表示を例として示しました。

次のページをお願いいたします。論点2-3でございます。著作物の種類ごとの特性や,個別事情等に応じて不利益の度合いは変わり得るかという論点でございます。各サービスにおいて,表示が軽微なものにとどまる場合でありましても,著作物の種類ごとの特性や個別事情,ビジネス戦略等によって不利益は異なるのではないかということを示しております。例示としまして,想定される例のところにありますように,映画・小説等の核心部分の表示をする場合。2つ目,購入者以外には部分的なものを含めて,その内容を一切見せないことによりまして,その著作物の購入意欲をかきたて,収益の最大化を図ろうという戦略の下で販売されているものについて,これを表示する行為であるということです。

3点目,映画やレコードの概要を紹介する目的で行われるサービスの場合は,正規の映画のダイジェスト版ですとかレコードのサンプル版といったものが権利者から提供される場合に,それとは異なる部分を切り出して提供する行為はどう評価するかという論点でございます。

続きまして,論点2-4,権利者による利用廃絶の意思が明らかにされている場合についてでございます。ここにお示ししておりますとおり,所在検索サービスにつきましては,先ほど申し上げたように,権利者の意思の推認が正当化根拠の1つを構成し得ると考えられるわけでございますが,他方で,利用の廃絶の意思が権利者によって明らかにされている場合に,配慮が必要かどうかという論点でございます。この点,参考までに,現行法,インターネット検索サービスを対象にした47条の6では,ID,パスワード等によりまして受信者を制限するウエブサイトにつきましては管理制限の対象外とされております。

また,次のページでございますが,無償に公開されているものでありましても,一定のロボットテキストなどによって収集を禁止する旨の意思表示が付されているサイトにつきましては,これも権利制限の対象外とされています。この点,文化審議会報告書では,このような取り扱いをする理由につきまして,権利者や著作物等をめぐる個別の事情に対する配慮であると述べられております。

最後に論点2-5,市場が形成されている場合についてでございます。各サービスについて,結果提供の際に行われる表示に関して,先ほど議論に出ましたようなライセンス市場などが既に形成されている場合にどう考えるかという論点でございまして,参考としましては,過去の保護・利用小委の方で御発表がありました,評判分析サービスに関するライセンスビジネスの動向について御紹介しております。

駆け足になりましたが,御説明は以上でございます。御審議よろしくお願いいたします。

【土肥座長】ありがとうございました。それでは,議論に入りたいと思います。論点1につきましては,これまでワーキングチームの議論において,権利制限の正当化根拠となる社会的な意義については,既にある程度肯定的な御意見を多数頂戴しておるように思います。本日は,今後具体的な制度設計を考えていく上でのよりどころとなるような,そういった考え方を確認していただければと思っております。事務局に示していただいたように,正当化根拠についてより詳細な整理をしておきたいと思っております。先ほど,冒頭お話ありましたけれども,具体的な制度設計の在り方については,本日は議論いただくことを想定しておりません。それは今後の検討課題でございますので,本日はそのことを念頭に置いて御議論いただければと思っております。

まず論点1について,この論点1の収集段階,それから,表示をする段階,分けていただいておりますけれども,こういう基本的な分け方についてはよろしゅうございますか。

そこで,先ほどの説明ありましたように,収集段階におきましては,これは著作物の表現の知覚を通じて享受する,そういう利用ではないということを,共有できればと思っております。問題は,表示の段階でごさいますけれども,この論点1,正当化根拠,この点について,先ほども説明ございましたけれども,御意見ございましたらお願いをいたします。

【前田委員】先ほど御整理いただき,所在検索サービスと情報分析サービスの結果の表示についての正当性ということですけれども,前段階のデータベースを構築するための収集行為などについては,著作物の表現や視覚を通じてこれを享受することの用に供するものではないから,著作権者の利益を基本的には害しないということでした。御説明いただいた,たたき台のところに,本来的市場に影響を与えるどうかというキーワードが出ていたと思います。私の理解ですと,基本的に結果の表示行為というのは,本来的市場に影響を与えることは目的とはされていないわけですけれども,事実上,その結果を表示することによって本来的市場に影響を与える可能性が考えられなくはないと。なので,こういった行為については,著作権者の利益を害さないかどうかというのは慎重に検討する必要があるので,分けて考えているということだと思います。

一方で,所在検索サービスや情報分析サービスについては,ここもたたき台に書いてありますけれども,電子計算機による情報を処理することによって,社会に新たな知見や情報をもたらす,そういう付加価値を出すという特徴がある。こういう公益的な利益が認められるので,多少,著作権者に不利益を与えるおそれがあったとしても,それは軽微なものにとどまるのであれば,公益性の方を優先させて,こういった結果表示についてもある程度許容しようということなのかなと理解しております。

それに加えて,ずっと所在検索サービス,分析サービスという言葉が使われておりまして,これ,ニーズの中で出てきた様々なサービスを総称する言葉として使われていると理解しております。その共通する特徴というのは,情報処理,恐らく大量の著作物等を収集処理することによって,社会に新しい知見や情報をもたらすというところに共通の特徴があるので,情報分析サービス,所在検索サービスという用語を使うのはよろしいんですけれども,そういう共通の特徴を持ったものの総体について言及していると理解しております。

最後に,大量性というところがあると思いますので,一般的には契約による処理を期待することが困難だというところがあり,その点も一定の場合において権利制限規定の適用を認めるべきだということの根拠になっていると理解しております。

私からは以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにこの点で御意見ございますか。

【奥邨委員】今の特に正当化根拠のところですけれども,たたき台の方では,本来的市場,それから,非本来的市場という言葉が使われているわけですけれども,ここは,非本来的と言っていることが,すなわち,先ほどのアメリカの整理を前提にすれば,変容的市場と置き換えて理解した方がいいのであろうと思います。そういうふうに考えますと,アメリカの整理としては,非本来的市場というのは,本来,著作権が及ぶべきものかどうかに関して,当然及ぶべきものではないという認識がある中で,しかし,形式的には著作物の利用があるということで,著作権でそれを止めてしまうということはいかがなものかということで,フェアユースが認められる余地があるわけであります。そういう意味においては,ここの結果提供のところ,先ほどの石新先生のもので言えば,17ページのところにも出ていますけれども,スニペット表示自体が変容なんですね。スニペットが変容的利用の付随物として表示されているわけではなくて,スニペット表示自体が有益なインデックスになっているという意味において,通常の文章を読ませるという意味とは変容しているということに意義がある,ここでの言い方であれば非本来的な,市場である,というふうに整理すべきであろうと思います。

そういうことで理解すれば,アメリカはここまで来るのに10年かかっているわけですので,私たちはその中の上澄みのきれいなところを,私たちの法制の中に取り込んでいけばいいのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。

【大渕座長代理】まず1点目は確認,2点目が整理なんですけれども,今までずっとワーキングでやってきたものをだんだん積み上げてきて,要するに,代替もほとんど頭の整理として出てきたのは,最初にアナログも含めていろいろ収集する部分と,この収集という意味がよく分からないので確認したいだけなんですが,それでもっていろいろ演算をしたり整理するという,バックエンドというかボックスの部分はほとんど,これは非享受の最たるもので異論はなくて,あと表示というふうに3段階に分かれているんですが,1のところで,たしかあのときにも常にできるとは限らないから,アナログでもできるようにどうにかした方がいいのではないかという意見が前回あったかと思うんですが,そこの位置付けがよく分からないので,そこを御確認したいというのが1点です。

それから,恐らく石新先生も一緒じゃないかと思うんですが,トランスフォーマティブと言うと,アメリカ法はあれで判例が出てきちゃっているので,ああ説明せざるを得ないんですけれども,中身が変容していなくても目的が変容しているという,要するに,聞くと,我々が思っている享受と余り変わらないような話だったら,今までのとおり,私の理解では,どこかでうまくやられていたと思うんですけれども,道しるべというか,そういうものに付随してなのか,そういうふうな整理の方が分かりやすくて,ややここが分かりにくいけれども,恐らく趣旨は同じことで,演算はよくて,その結果を表示する際に諸種情報だとかURLだとか分かりにくいから,かわりにスニペットで表示してあげていますよというのは,表示の仕方であり,そこは強いて言えば,先ほどので公益性というか,もともとサーチエンジン,認めなきゃいけないし,せっかく検索しても表示しなきゃほとんど意味ありませんから。公益性というのがあって,それに付随する表示というのは当然認められてしかるべきで,それはある程度使い勝手のいいものじゃなきゃいけないと。ただ,さはさりながら,引用のところであったかと思いますけれども,その表示が享受と代替するような,原著作物と代替するようなものだったらいかんよという,実はごく単純な話をしているだけで,公益性に必要な範囲ではやりますよ,ただ,安全弁をつけて,必要性を高めていけばすごく幅広い表示にしてしまうと,要するに,原著作物と代替してしまうことになるからいかんという,ものすごく単純なことなのかなと思って,ややこれ分かりにくいので,もう少しここは。

そうやってしめると,所在サービスにせよ,情報解析にせよ,要するに公益性のある所在を教えてあげるとか,情報解析の一定の傾向とかをつかんであげる,そのためだったらある程度我慢しなさいということになってくるという,単純な理屈で済む話かなという気がしています。

ただ,これ内容として別に異論はないんですけれども,私としては,単純なことをやや分かりにくく書いている感じのところがあるので,そこはもう少し工夫いただければと思います。

【土肥座長】大渕委員がお尋ねになった最初の質問の方はアナログの点,これはもちろん入るという理解ということですよね。

【秋山著作権課長補佐】さようでございます。

【土肥座長】今,3人の委員の方から御意見を頂戴しておりまして,正当化根拠に関しましては,社会に新たな知見・情報をもたらすという付加価値を創出するという意味で,公益性のある,社会的な意味のある利用行為である,そういう意味でトランスフォーマティブと言ってもいいのかもしれませんけれども,その点。

それから,このサービスの達成のためにも付随的に行われるわけでありまして,したがって,著作物が利用される範囲も軽微になってくるということになれば,権利者に及ぼす損害の点においても不当に利益を損なう状況はないのかなというふうに伺っておりましたけれども。大体こういうような理解でよろしゅうございますか。

【龍村委員】今のお話をいろいろ伺っていますと,混乱してくる面があるのですが,享受可能かどうかという従来の議論と,先ほどアメリカの御紹介にあった,変容,トランスフォーマティブとは大分違うロジックから由来しているものではないかと思います。アメリカの議論だと,例えば,目的が違えば全く変容的市場になってしまう,そうであれば,著作物全体が表示されても,全く別の変容的市場に乗るものなのだから構わないのだと,非本来的市場を変容的市場と全く読み替えるということのようなのですが,本来,享受可能かどうかという問題とは異質の論理ではないかと感じられます。ですので,先ほど奥邨先生が,非本来的市場は変容的市場と読み替えていいのだという御指摘については,果たしてそう言い切ってしまっていいのかという点については疑問があります。整理案のたたき台は基本的にそのように整理されることになるのだろうと思いますが,そこが1点ひっかかりました。

それから,先ほどの議論に戻りますが,ついでに申し上げると,収集の段階の問題でのバックエンドにおける複製は問題はない部分と整理されたわけですが,先ほどのアメリカの判例等との比較で言えば,その分野においても,セキュリティ技術による裏付けが必要という指摘が出ていたわけです。セキュリティ技術でがっちり守られているということも,附帯的な正当化理由として挙げられているという点も1つ視野に入れる必要があると思った次第です。

【土肥座長】ありがとうございました。

【奥邨委員】今の龍村委員からお話あった点,変容的利用ということと,享受しないということは一緒ではないのではないかと言う点ですが,多分,変容の方がより広い概念だろうと思います。享受しないこと以外にも,享受する場合であっても目的が違えばということがあります。例えば,画像検索のサムネイルの表示というのは,まさしくユーザーサイドで見れば享受している形になりますが,それでも変容ですので,誰が享受するかという議論は横に置いて,より広い概念だと思います。ただ,アメリカの場合はフェア・ユース規定しかありませんので,いろいろなことを,フェア・ユースで読み込まなければいけないので,いろいろなことが盛り込まれてしまう点は1つ指摘します。

それとあともう一つ,公益性の話がありましたけれども,公益性が高いことについては私はもちろん賛成するんですが,ただ,アメリカで,公益ということを余り正面に出して言わないというのは,実は公益と言ってしまったときに,商業的利用が公益なのかという議論を呼び起こす可能性があるからなのだと思います。商業的な利用であっても許容されるということを言いたいがゆえに,変容というより大きな概念が出てくるということもあるわけでございます。したがって,余り公益ということを追求すると,例えば,非営利でなければいけないのではないかという議論が出てしまうと,こういうサービスも全部非営利でないといけないということになってしまったのでは,ちょっと趣旨から遠くなってしまいます。ただ,ここで言っているような,社会への意義があるというような意味の公益ということであれば,私としては納得のいくところだし,アメリカとも整合するかなと思っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。

【森田委員】「変容的」という言葉は,アメリカ法の文脈で出てくる言葉ですが,これはパロディーをはじめいろいろな場合に使われている概念なので,日本法の議論をするときには,日本法上の技術概念として「変容的」というのは使わない方がかえって混乱を招かないのかなという気がしております。

今日の資料2の論点の整理では,Ⅰの段階で,「収集行為等」という言葉が適切かどうかはともかくとして,所在検索や情報分析をするという段階の行為と,それをアウトプットする段階を分けて整理いただいており,これは私が前回申し上げたところであり適切だと思いますが,アメリカの場合は両方含めてトランスフォーマティブで議論しています。その点からも,その区別を曖昧にしてしまうという意味では,「変容的」という概念を用いて議論するのは適切ではないのではないかということをまず申し上げたいと思います。

その前提で,この論点整理では,最初の情報の入力分析段階は,いわゆるC類型に当たるということで,当該著作物の表現の知覚を通じてこれを享受することの用に供するための利用とは認められないことから自由にできるとされております。したがって,その分析の結果を提示する際に,常に著作物の表示を伴うわけではないので,著作物の表示を伴わない形で情報分析の結果を提示すれば,それは全くここでの問題は生じないことになります。検索エンジンでも,その結果をURLだけを表示するということであれば,何ら権利制限を問題にする必要はないわけですが,それだけでは多分利用者は,そこに実際にアクセスして中身を見ないとそれが有益かどうかは分からないので,URLプラス一定の情報提供をすることによって,検索というものの利用者にとっての価値を高めることになります。そういう限度で著作物の表示を伴うということは,その種のサービスを認めることの持っている公益性とか正当性と相まって,一定の限度で認められるべきだろうといえますが,ただ,それに伴う著作権者の不利益等とのバランスを図る必要があるということです。このようにみますと,「整理案(たたき台)」というところに書かれている大枠については,理論的に見ても,このような整理は正当ではないかと思います。

1点だけ付言したいのは,2ページ目の「所在検索サービスに関する事項」ですが,今日の整理では,所在検索サービスと情報分析サービスという概念がタイトルにあって,両者に共通する事項と所在検索サービスに固有の事項とに分けて検討されていますが,これは例示なのか,それともこの二分法でいくのか,仮に法律上ルール化する場合にもこの2つを分けて規定するのかということです。仮にこの2つを分ける場合に,この2ページ目の一番上で,所在検索サービスの方は,その検索結果の提供は,権利者の利益に合致する面もあるから,権利者の意思の推認という正当化根拠もあり,その点で情報検索サービスとは違うというふうに書かれているように思いますが,この点で2つのサービスに歴然と差があるというよりは,程度の問題ではないかという感じがいたします。例えば,人工知能を使って多数の法律文献を読んで,紛争に対して適切なリーガルアドバイスをするという人工知能があったとして,ただ,そのアドバイスをするときに,それを支える根拠となる文献を提示する,その際に一定の短いフレーズが出てくるというときに,そういう形で広く使われて,場合によっては,それで原典に直接当たって読んでみたいという人も出てくるということは,そういう法律書を書く法律家にとってみれば,これは極めて有益なことであって,そういう場合にも権利者の意思が推認されるというふうにいうことができるように思います。つまり,自分の著作物が利用される機会を高めるという限りにおいては,権利者の意思推定が働くのであって,所在検索サービスと情報解析サービスとでは,いずれもその著作物が結果提供に使われているという意味においては,程度の差はあれ共通する面もあるのではないかと思います。したがって,ここで大きな線を引いて,正当化根拠が異なるというよりは,この後に出てくる具体的な論点で考慮する際の1つの要素として,そういう点も考慮できるような枠組みになっていればよく,意思推定があるから必ずオプトアウトを認めなくちゃいけないとかいうようなルールを立ててしまうと,かえってまた窮屈になってしまうのではないかということが危惧されます。

この5つ目の○に書いてあること自体が適切でないというということではありませんが,これを余り絶対的なものとして,全体を所在検索サービスと情報分析サービスという形で二分してまとめるという方向には今後行かないほうが適切であると私自身は考えております。

【土肥座長】ありがとうございました。この先の話はまた置いておくとして,この段階で考え方として,本日検討すべき所在検索サービス・情報分析サービス,これらについての権利制限を設ける際の正当化根拠につきましては,ほぼ皆様の御意見というのは一致しているのではないかと思います。先ほどトランスフォーマティブという言葉を使いましたけれども,確かにそれは広過ぎると言いますか,誤解を招くおそれがあると思いますので,そこは十分自覚して言葉としては選びたいと思います。ただ,今回のこのサービスに関しましては,いわゆるこれらのサービスに付随する著作物の部分的な利用ということでございますし,それは当然,その関係から軽微なものになってくるということでございましょう。したがいまして,3ページで言う論点2の権利者に及び得る不利益の問題への配慮ということでございますけれども,この問題についても,やはり先ほどの正当化根拠の中でるる御指摘いただいたものにつながるのかもしれません。そこで,2の権利者に及び得る不利益への配慮をどうすべきかという点で,まず,論点2-1ですね,ここでは権利者の本来的市場への影響について,主従関係という言葉が使われておりますけれども,この点について御意見を頂ければと思います。いわゆる付随性と言いましょうか,その問題について御意見を頂ければと思いますが,いかがでございましょうか。

【池村委員】基本的にお書きいただいているところはそのとおりだと思っているんですけれども,1点,参考というところで,TV Eyes事件の日時検索機能について,タイミングが違って恐縮なんですけれども,石新先生にお聞きしたいなと思っています。日時検索機能全般がだめというよりは,結果の提供としてどういうものを提供するかというところに関係するんじゃないかと思っていて,日時検索の結果として,例えば,極めて短い時間の動画だったりとか,あるいは静止画だけを提供するような場合は,そんな場合でも日時検索である以上,フェアユースとは認定されないというふうになってしまうのか。検索の結果の提供する内容次第ではフェアユースとなり得るのかという点について,教えていただきたんですけれども。

【石新様】池村先生おっしゃっている点は,恐らく控訴審で争っているんだと思うんですけれども,原判決の裁判官自体は前者の方でしたか,日時検索機能であるということをもってフェアユースでない,要するに,キーワード検索で具体的なコンテンツの享受ではないということに関心が向けられたサービスであるということを恐らく裁判官は重視して変容目的を肯定しているので,判決文をそんなに詳細に展開していないので,どこまで申し上げていいのか分からない部分があるんですけれども,裁判官は,やはりその日時検索ということは,何月何日,FOXのニュース番組を見たいという形で使う,日時検索機能をこのTV Eyesで使うというのはそういうことだと。TV Eyesからそれを享受するのではなくて,FOXの何月何日のニュースが見たいのであれば,そこから提供されているものを享受すべきだという発想なんだと思うんですけれども。そういうすごく広い意味で,日時検索ということの機能自体でフェアユースではないということを判事しています。それが控訴審でどうなるかは別ですけれども,原審ではそういう判断です。

【土肥座長】池村さん,今の点よろしいですか。

【大渕座長代理】今の点,私も池村委員と同じように,先ほど判決の紹介を聞いたときに気になりました。アメリカの場合にはトランスフォーマティブと言っているから我々と発想が違う。先ほど座長が整理されたとおり,我々は別にトランスフォーマティブという判例法に付き合う必要はなく,むしろそこから足を抜きたいと思っていますけれども,それは別として,要するに,最後は,享受なのか権利者への不利益とかそういうものがファクターとして残ります。その中の一方にあるのは公益性であり,公益に必要な限度では認めるけれども,それ以上なものは認めてはいけないというのは当然と言えば当然だし,公益性があるからと言って権利者に不利益を与えてはいけないというのも当然と言えば当然であります。その1つの表れが,先ほど事務局が言われたところにも出ているけれども,日時検索なのではないかと思われます。本当にそのコンテンツが欲しい人は,当該費用を入れてでも入手しますが,そういうものは完全に代替性というか享受性が出てくるのでだめとなります。もしかしたら裁判官は,そういうリスクがあるから一般的に押さえたいということなのかもしれなくて,その辺少し細かいところを見ていないからよく分からないのですけれども,日時検索即悪というよりは,日時検索というのは,ワンショット的に当該コンテンツをねらうという,濫用的なものがあるからという理由で,フェアユースと認められにくいのではないかと推測します。日時検索即アウトと言うと,ある何月何日のものが本当に欲しいのに一切だめ,ワンショットだけちょっと見たいというのも全部だめとなると,公益性というか利便性が大変衰えるので,そこのところは日時検索は即アウトというようなカテゴリカルなものからではなく,なにゆえこういうことを言っているのかという実体を重視することが重要ではないかと思っております。

【奥邨委員】時間は忘れましたけれども,たしかTV Eyesはクリップ10分ぐらい見られるんですよね。ですから,日時検索で10分見るというのは,10分間見たいということ以外の何ものでもないわけです基本的には。それに対して,キーワードの場合は,そのキーワードがその10分間でどういう文脈で何回使われたかということを見る意味があるわけでして,10分見ることの意味が全く違ってくるということになります。したがって,キーワード検索の場合は10分見せないと,10分というのは大体アメリカのニュースの1つのコーナーであったりしますけれども,そこでどう使われたかというのを見るという,このサービスの本来の趣旨にかなった使い方ということが説明できる,したがって,先ほどの池村委員のご意見にあったように,もしかしたら1秒見せる,2秒見せる機能だったら,別の判断が出ていたかもしれないということなので,基本的には事案に影響されていると考えた方がよろしいかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。今の点は3ページ目の論点2-1の参考にあるわけですが,その上に1と2があって,今,奥邨委員の紹介していただいたケースにもつながるんだろうと思うんですけれども。サービスに付随して著作物を提供していると評価できるものと,10分間見れると,その10分間の放送コンテンツの提供サービスに付随して,例えば,日時検索サービスなども提供している場面もあるのではないかということで,こういう整理と言いますか論点の紹介があるんですけれども。この点いかがですか,奥邨委員,続いてどうでしょうか。

【奥邨委員】すみません,機能ではなくて,やはり使われ方の文脈であるとか,どういう目的で使われているかということで,基本的には,先ほど総合評価,総合考量というのがありましたけれども,そういう形で評価せざるを得ないと思います。アメリカでは,ブライトラインルール,何らかの形で,1つの基準があって,すっぱりとこっちからこっちはだめで,こっちからこっちはオーケーということにはならないということがフェア・ユースについては強調されますから,この主従というのも,あくまで使われ方との関係の中で,何が主で何が従かということを言わなければいけない。したがって,ものによっては,同じ10分でも1になるものもあれば,先ほどのように2になってしまうものもあるという,それこそ移り変わるようなものではないかと私は思っています。したがって,ある程度はその辺は幅を持った要件なり要素として検討しなければいけないのかなと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。森田委員から次に前田委員というふうにお尋ねします。

【森田委員】この論点2-1の内容について今までなされた議論については,特に異論はないのですが,整理の仕方として,主従関係の問題だという捉えた上で,主従の境界をどのように考えるべきかというふうに定式化するのが適切であるのかについては疑問があります。そのようにいうよりは,むしろ目的の正当性というべき問題ではないか。最初の総論的な正当化根拠であったように,もともとの著作物とは違う新たな知見を社会にもたらす付加価値を創出するというサービスであるという目的の正当性の問題ではないかと思います。今の事例で,仮に日付検索サービスというのが,そういう目的よりは,もともとの放送番組を見たい人に視聴の機会を提供することを目的としたサービスであるというふうに評価されるとすると,先ほど言った正当化根拠にいう目的の正当性がないということになるのではないかと思います。したがって,主従関係の問題という整理に法律的になるかと言うと,そういうふうに整理しなくてもいいような感じを私は持っております。

【前田委員】今,目的の正当性という話がありましたけれども,アメリカの変容的利用というのは,そういう変容目的があるかどうかというところで判断されるところがあると思いますので,その文脈でどういう目的かということがアメリカの場合は判断されていたのかと思います。

一方で,私の理解だと,ここで結局何が問題になっているのかと言うと,ある目的で提供しているということは,利用者の実際の利用の仕方に対して影響を与えるわけです。その結果として,利用者の利用の対応が著作物の享受をする市場と直接に競合するような形で利用される結果になる,そのため,著作権者のマーケットを奪うことになるということを結局は見ている部分もあるのではないかと私は感じました。

先ほどの日時検索で10分見れるという話も,その時間の番組を10分見たいというニーズを直接奪うものになるんだと思います。一方で,どういう用語が使われていたかを調べるためにいろいろなところを合計10分間見るというのは,番組の本来の享受の仕方とは恐らく違うんだろうと思いますので,そういう意味では,原著作物のマーケットと直接競合するわけではないと思います。それで全てが説明できるかどうか分かりませんが,そういう観点もここには含まれているのではなかろうかと思いました。

【大渕座長代理】これは前から言っていることの繰り返しになるのですけれども,分かりやすい表現で道しるべでいきますと,サーチエンジンだけだったら,使い勝手を無視してURLだけ提供するものでもいいのでしょう。けれども,それだと一々それを見に行ったりして使い勝手が悪いので,大体どんなことが書いてあるのかが分かれば非常に表示として適切だということになります。例えば,絵画の評論の論文で対象の絵画について詳細に論じるために,論文の別添に豪華な絵を載せれば,その絵画の微妙な筆使い等といったことについては分かりやすくなるけれども,反面で,絵画が余り立派だと,その論文の別添だけで,画集を買う必要がなくなる。まさしくここで議論しているのはそのような話で,利便性はあればとてもいいのだけれども,余り大幅に表示してしまうと,結局本を買わなくて済むということになります。それだけの話です。それを言いたいがために,主従関係とか,主が道しるべでなどと言うのだったら,むしろ道しるべと言って,行き過ぎはいかんと言った方がよいように思われます。誰も反対しようもないことがやや分かりにくく書いてあるかなという気がします。バックエンドは享受していないけれども,表示も享受というか代替性があるものはだめであるという,そこに通じてくるわけで,みんなこのあたり表示も含めて納得しているのは同じなので,そこは余りぶれない分かりやすい形で説明した方がいいのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。この権利者への不利益への配慮の問題に関しまして,サービスの内容を見て,総合的に目的の正当性等を考慮するということは確かに必要なことなんだろうと思いますけれども,本来のサービスに付随して行われているというような兆候と言いますか,エレメントというのは,目的の判断に関して,やはり1つ大きな意味を持ってくるんじゃないかと私は思っております。

この問題,まだまだあろうかと思いますけれども,権利者に及び得る不利益の配慮の問題として,量の問題があろうかと思います。質・量の問題,著作物の性質,それから,利用される著作物の量,これは事務局のたたき台からすると,軽微というところが1つ出ておるわけですけれども,この点についての御意見を頂ければと思います。

【奥邨委員】先ほどから座長の方からお話があるように,基本的にこういう目的のために非本来的な形で使って,そして,それが正当な目的があって付随的に使われると,その流れでは軽微であるんですけれども,軽微でなければそうではないというふうに,逆に捉えるのは当然ではないように思います。軽微であることも考慮の要素の1つに入ってはいいんですけれども,軽微でなければ,この権利制限に当てはまらないとやってしまうと,かなり範囲としては狭くなる可能性があって,むしろそれより軽微であることも考慮の要素の1つということで,ほかとのバランスの中で判断すべきでいいのではないかと。基本的には多くの場合は軽微であるけれども,絶対的に軽微でなければいけない,ということでもないと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。ほかにこの点いかがでしょうか。

【大渕座長代理】奥邨委員が言われたのをやっていくと,またフェアユース的に総合考量になってくるので,ここではできるだけ利用者のためにも明確なルールを整理した方がいいと考えます。軽微というのは,ある程度の相対概念ですけれども,軽微を総合考量の要素にしてしまうと,恐らくビジネス界も含めて,みんな怖くて使えなくなってしまう可能性が高いと思われます。軽微というのは物理的に何行といった形では表現できないものであり,例えば,俳句の場合だったら,1行書いても軽微ではないわけです。そのような価値的概念を総合考量のファクターの1つに落としてしまうと使えなくなってしまうから,軽微は軽微として要件として残しておく必要があるのではないかと思われます。基本的にみんな思っているのは,軽微でないものは権利者に対する不利益が大きいということで,そんなものはだめだということが前提になっていますので,余り総合考量の方には行かないようにする,行くとアメリカと同じことになってしまいますので,日本のような大陸法としてはきちんとクリアにしておいた方がいいと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。今,大渕委員がおっしゃった,例として挙がっている俳句のような,そういう著作物のような場合について,これを例えば全部表示するのかどうか,こういったことについてもたたき台では出ているわけですけれども。大渕委員の御発言では,そういうものは入れるべきではないということだと思いますが,この点何か御意見ございますか。ここはよろしいですか。

【森田委員】ここに並んでいる全ての論点というのは,ある意味では最終的な総合考量なので,それぞれ独立にというのもかえって難しい感じがします。軽微というのを法律用語として使うかどうかという点にも関わるかと思いますし,次の2-3にも関係しますが,こういったこともマイナスに働くだけではなくてプラスに働く場合もありますので,2と3というのを連動するような感じがします。過度に総合考量に流れるのは予測可能性を害するけれども,他方で,余りぎちぎちにしてしまうのは使い勝手が悪くなる,そのあたりをどうするかというのは,最終的には法文を作る際の考慮要因として御配慮いただければよいのではないかと私は思います。

【土肥座長】確かに論点2-3も著作物の性質・種類というところからすれば共通すると言いますか,併せて論じていただいていいと思いますので,論点2及び3,このあたりについてほかに御意見ございますか。

【前田委員】2-3と併せてということで申し上げたいと思います。2-2では軽微なものについてはよろしいじゃないかと。2-3では,軽微だけれども不利益が著作権者に生ずる場合があるのではないかという整理になっていると思います。ただ,これも軽微を価値的な概念だとすると,2-3も量としては少ないけれども軽微とは言えないという例であるという整理の仕方もできるわけですね。これはまさに総合考量というか,2-3のところで,著作物の種類ごとの特性や個別事情に応じて考えるべきだという視点が示されていますけれども,様々な種類の著作物や様々な取引の事情において,どの程度利用すれば著作権者に不利益が及ぶのか,それは当然違ってくるんだと思うんですね。例えば,2-3の一番上の想定される例の上のところで,映画・小説等の核心部分の表示と書いてありますけれども,例えば,極めて映画の中の短い数分を表示したとしても,そこを見れば映画全編を見たのとかなり近いような満足度を利用者に与えてしまうんだとすると,それは著作権者が有している本来的という言葉が適切かどうか分かりませんが,そういうマーケットを奪って,映画を見る必要はなくなるという事態があるかもしれないですね。そうすると,これはごく短いんだけれども軽微ではないということになるかと思います。

私の頭の中では,結局,著作権者が提供している著作物全体の市場と申しますか,そういったものに対してどれだけダメージを与えるのかというところが問題になっているのかなという気がして,その一部分を見ることによって全体はもう見なくていいということがかなりの頻度で起こるようなタイプのものは,基本的には権利制限の対象にするのには慎重にした方がいいと思っております。

【奥邨委員】今の例なんですけれども,前田委員もそれが頻繁に起こるようなとおっしゃっておりますので,そういうことがたまたま起こることを排除されているわけではないと思うんですけれども,先ほどの例えばTV Eyesのようなものを日本で認めるかどうかは別としても,例えばキーワード検索をしたらそれが核心部分を見せてしまうということはあって,じゃあ,核心部分だけは見えないように,ラストだけは見えないように編集しないとだめなのかと言うと,それは著作物のどこだとやること自体も,それこそまさに誰かがどこかで享受しないと,機械的に行うことはできないわけですから,ここのところはやはり目的との関係で考えざるを得ない部分だと思います。結局,核心部分ばかり見せるのは,本来の目的として非本来的市場をねらったものではない,むしろ代替物だという評価になるということでしょう。捉え方として,核心だから云々というのは,それを専らにすれば別ですけれども,難しいと思います。

そういう意味において1点だけ申し上げると,参考のところでTV Eyesを出しているのはミスリーディングだと思います。そもそも指導的判決であるCampbell判決は音楽について,しかも核心的な一番のサビの部分をパロディーして,それでもいいんだと言っているわけですから,ここでTV Eyesを出してしまうのはミスリーディングだと思うので,参考は消しておいた方がいいかなと思います。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【龍村委員】先ほどの論点2-1を通じて,あるいは2-2もそうですけれども,質的・量的な問題は確かに扱いは難しい。提供サービスに付随して併せて表示されるものはやむなしということですので,まず,あるサービスの目的に応じて,それに引きずられて出てくるものはしようがない,そういう発想だと思うのですね。逆に言えば,目的から照らして不可避だったり,あるいは必要にして十分な程度であればやむを得ないという整理が2-1の整理だとすると,2-2の質的・量的な問題というのは,むしろ余り関係ないというか,付随的な問題になっていかざるを得ないと感じられます。その意味で,2-1の主従関係というのは,主を量的な大小とかいうことで考えるのであれば,それは分類軸としては適切ではないのではないかと思います。主従という関係では整理できないのであって,目的に照らしてどうなのかという発想でいかないとならないのではないかと思うわけです。ただ,その点を措いても,やはり質的・量的な部分は無視できないのだというのが本当の2-2の論点の提示趣旨なのだと推察されます。その意味で1つ考えられるのは,全部表示するものはだめだとか,数量的に,例えば,図書館におけるコピーの場合には50%とか数量的な基準があるわけですが,50%が適切なのかどうかは分かりませんが,たとえば,少なくとも全部表示してしまったらお釈迦になるのでだめという一線はキープすべきだという意味で,2-2を何らかの形で残すというのはありえない選択ではないと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにございますか。

【上野委員】先ほどから「軽微」性の要件を残すべきかとか,一定の具体的な場合は権利制限から除外されることを明示すべきかどうかという点が議論になっているかと思いますけれども,現在の47条の6――これは検索エンジンに関する規定でありますけれども――,この規定は現時点でも,検索結果の提供に伴う著作物の利用が「軽微」にとどまらなければならないという要件は設けておりませんで,「検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において」と定めているだけです。検索結果の提供に伴う著作物利用はスニペットやサムネイルなど様々な態様で行われ得ますので,どの程度までが妥当かどうかはケースバイケースで判断した方が適当と考えられることから,文章の長さや画像の大きさ等に関して具体的な定めを設けず,「必要と認められる限度」とだけ定めたのです。これでも「必要」以上に表示することは許されないということになるわけですから,この文言で現状に対応できているように思います。

今回,この規定をインターネット上の検索エンジンに限られない様々な所在検索サービスに適用できるような規定にするなら,検索結果の提供も実に様々なものとなりますので,そのようなものに対応できるような規定にするためには,一律に「軽微」性の要件を設けたり,新たな具体的基準を設けたりすると,硬直的になり過ぎてしまいかねないように思います。もちろん,小説の核心部分が表示されてしまっては困る,といった懸念があることは承知しておりますが,それは,現状の「必要と認められる限度」というような文言を維持したとしてもクリアできる問題ではないかと考えております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。いずれにしても,従来の47条の6より広がりますので,ネット上に上がっているものだけではないという,今度の場合はアナログも全部対象になりますので,そういうところから歯止めと言いますか,どこかで権利者への不利益というものを具体的なメルクマールをもって配慮しているということではないかと思います。しかし,きょう頂いております御議論を踏まえて,さらにこの点については進めていければと思います。

あと,2-4のオプトアウトの問題,つまり,利用廃絶の意思が明らかにされている場合,それからもう一つ,2-5,市場が形成されている場合についての御意見を頂ければと思います。

【池村委員】利用の廃絶の意思とは何かという話かと思うんですけれども,これが例えば単なる無断複製禁止とか無断転載禁止といったものも広く含むという意味だとすると,相当対象が狭まってしまって,使い勝手が悪いものになってしまうのではないかと思いました。

【土肥座長】ありがとうございます。ほかに。

【奥邨委員】確かに検索エンジンのところは,ある程度そういうことはロボットテキストでって配慮されていますし,範囲を広げる以上,ある程度,権利者の意思を考慮するということは,考慮要素としては私は重要だと思うんですが,ただ,実現手段として,いろいろなサービス,いろいろな技術を考えたときに,検索エンジンのように1つの方法でできないということがあるので,これは今の池村委員の意見ともつながりますけれども,何か工夫が要るところだろうと思います。言葉,総論としては簡単なんですけれども,具体論化するのは非常に難しい部分があるということは留意する必要があると思います。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。この点はよろしいですか。

【森田委員】2-5の市場が形成されている場合についてですが,全体のペーパーの整理によりますと,情報の分析をするための段階での複製等は,これは自由に行っていいということになりますが,これまではそこも自由に行ってはいけないということでしたので,権利者から一定の許諾をもらって行うことになりますから,権利者がこの情報分析サービスについても市場を形成するための,いわば独占的な地位を持っていたという面があるわけであります。しかし,今後は,情報分析サービスは誰もが自由に提供してよいということになりますと,ここでの権利者から許諾を得て情報分析サービスを提供する者の市場先行の利益というのは,それによって情報分析サービスの市場を独占するということではなくて,他と競合することは当然前提となるわけであります。その点を踏まえて考えますと,権利者から許諾をもらって情報分析サービスが提供され,市場が形成されている場合には,その者に市場先行の利益が発生しやすいだけで,ほかの競合するサービス提供者が出てきて競争することによって,その独占的利益が制限されることになったとしても,これは当然の結果であって,これを不利益としてカウントするのはおかしいのではないかと思います。この点については,変容的利用について独占的利用を持っていないというアメリカ法の紹介ありましたけれども,それは日本でも同じように妥当することではないかと思います。

【土肥座長】ほかにございますか。

【前田委員】現在既に市場が形成されている場合について,さらにコメントさせていただきたいと思います。既にいろいろな面について情報分析サービスとか,それに類するようなものについてもライセンスがなされているところもあるんだろうと思います。ただ,もしこの新しい規定ができて,一定の軽微な利用については許諾なしにできるようになったとしても,今現状あるライセンスがどの範囲でなされているんだろうかについては注意を払う必要があると思うんですね。サービスによっては,軽微な範囲を超えて,さらにより著作物を利用するものまで含めて許諾して,その方が利便性が高いからということで,追加的な部分についてライセンスを取ってやっているということもあるんだろうと思うんです。現状行われているサービスがどうなのかについては今承知しておりませんけれども,そういったものも恐らく含まれているんだろうと思います。そういったものについては,この規定がもし仮にできた後であっても,超過する部分についてライセンスサービスを継続することは可能だろうと思いますので,そういう点にも注意して議論する必要があるんじゃなかろうかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。オプトアウトを認めるとすれば,そういうライセンス,市場がもう形成されている場合に関しては,そういう形での対応もできるんだろうと思います。

時間的に,本日当初始めるときには3時から5時までということで始めたわけでありますけれども,途中お願いいたしましたように,若干時間を頂戴して延長させていただいて,もう一つの方を御意見を頂きたいと思います。この資料3,翻訳サービスに関する論点について,事務局から御紹介をお願いします。

【秋山著作権課長補佐】本日,翻訳サービスにつきましては,これまでニーズ募集の方で提出いただいてきたものについて若干御議論いただいておりましたが,本日,この問題状況とか政策目的等々に立ち返りまして整理させていただきました。資料3の1.翻訳サービスの国家政策上の意義等ということで,日本再興戦略ですとか観光ビジョンですとか,そういうところでは,産業政策上の必要性ということで,観光客の増加とか,あるいは高度外国人人材を日本に受け入れていくという観点で,言語面,翻訳システムの整備などが求められているということでございます。

それから,一番下の総務省の地域の多文化共生推進プラン,これは産業政策というよりは,地域創生,地域活性化とか,あるいは外国人の人権保障という観点の政策領域でありますが,ここでも外国人の生活領域に関わるような情報についての多言語展開を求めているものでございます。

具体的なニーズとしまして2.でございますけれども,若干省略させていただきつつ,総務省の調査などでもニーズがありまして,いろいろ生活領域全般にわたる言語の翻訳などのニーズがあると書いております。

2ページ目でございますが,そうしたこととも関連しまして,文化庁の行ったニーズ募集にニーズを提出いただいた団体様からは,交通機関や施設に関する案内情報ですとか,屋内外の看板等ですとか,それ以外にもインターネット上の情報ですとか,様々なものについて翻訳サービスを提供していきたいという御要望でございました。

これらを受けまして,本日御議論いただきたい論点は2点ございます。3.論点1としまして,権利制限の正当化根拠についてでございます。要点としましては,外国人向け翻訳行為について,権利制限の正当化根拠としてどのようなものが考えられるかということでございます。先ほど申し上げたように,我が国の産業競争力の強化や,地方活性化,外国人の人権保障という観点で,国としてはこれを進めていくべきだという方針が出ておりまして,こういうことも踏まえまして,社会的ないし公益性が認められるのではないかとしております。

また,外国人の人権保障という観点では,障害者の情報アクセス機会確保といった視点とも合致するのではないかと書きました。

それから論点2としまして,対象著作物でございます。今回,外国人向けの翻訳について,権利制限の対象とする場合にどういった範囲が妥当かという視点でございます。これまでのワーキングでは,例えば,屋外に恒常的に設置されている看板,日本人であれば誰でも無償でアクセスできるようなものについては対象にしてもいいのではないかという御意見があったわけでございますが,この点につきましても併せて御議論いただきたいと存じます。

以上,よろしくお願いいたします。

【土肥座長】ありがとうございました。今,御説明をお聞きになったとおりでございます。今説明のあった範囲での翻訳サービスという場合に,正当化根拠として,2ページ目の論点1の2つ目の段落あたりに書いてあるようなことについて,こういうことでいいのかどうか御意見を伺いたいと思います。

それから論点2の方では,どの範囲を認めるのか。ここでは,例えば,看板などが挙がっておるわけですけれども,その程度のものでいいのか,あるいは日本のような場合,通りに名前がついていなかったり,番地がなかったりするような,こういう特殊な町の中で言うと,もう少し広めに認める必要があるのではないか,こういうこともあろうかと思います。いかがでしょうか。

【奥邨委員】そろそろ失礼しないといけないので,簡単に申し上げます。まず1つ,正当化根拠は,今挙がっているものは私はこれでいいと思います。追加的に言えば,例えばここに出ている観光生活情報などについては,本来それを提供している人が翻訳して提供しようという思いがあっても,なかなか,財政的・経済的,それからいろいろな事情でそこまで至っていないことも多かろうと思いますので,それを提供することは,まさに先ほどの話ではありませんけれども,もともと情報を提供している人の意思に合致する,しかも,別に英語だけでいいわけではなくて,世界中のいろいろな言語にということであれば,より趣旨に合致するということも言えるのではないか,もちろん,おおむねですけれども,追加で言えるのではないかと思っております。

それから,対象著作物についてですけれども,基本的には,使い方にもよりますけれども,例えば,ここで出ているスマホをかざしたら,スーパーインポーズで翻訳されて表示される,拡張現実みたいな形でやるのであれば,別に看板に限らなくても,いろいろなこういう無償の著作物であれば,パンフレットなんかであっても,かざしてみたら,日本語のところが英語に見えて,ああこういう意味かと分かるようにするという形で,より広くしても構わないのではないか。スーパーインポーズで重ねて見るのであれば,著作権者に対する影響も少ないですし,そのつど翻訳されるわけですので,問題は少ないのではないかと思っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにございますか。

【上野委員】この「外国人向け」の翻訳サービスは有意義なもので,権利制限を基礎づける正当化根拠も認められるように思うのですけれども,2点ほど難しい問題があるように思いますので,問題提起だけさせていただきます。

まず1つ目は,「外国人」と申しましても,日本語を理解できる外国人もおるわけですし,日本語が理解できない日本人もおりますので,そうすると結局,国籍にかかわりなく,言語の理解が困難な者に対する翻訳サービスを許容する,という考えがあろうかと思います。

その上で,もし「日本語から外国語」に翻訳するサービスだけを対象にするならば,外国人の受け入れや観光ビジョンといった,ここで意図されている政策目的には合致するのかとは思いますけれども,言語の理解が困難な者に対する翻訳サービスを一般に対象として権利制限規定を設けるという場合は,「日本語から外国語」への翻訳のみならず,それ以外の翻訳も含まれることになろうかと思います。しかし,そこまで権利制限してよいのかどうかは問題になるように思います。例えば,フランス語で書かれている文章を日本語に翻訳するというサービスを日本国内で行うことが許容されて然るべきかどうか,これはなかなか判断が難しいように思います。

したがいまして,今回の権利制限は,外国人の受け入れや観光ビジョンといった政策目的に焦点を当てて,「日本語から外国語」への翻訳だけを対象にするというのも1つのアイデアではないかと思います。

2つ目に,対象著作物につきましては,看板などについては権利制限の対象とすることに異論がないと思いますけれども,それ以外にも「公衆に無償で提供又は提示されている著作物」を含めることが,今日の論点資料にも書かれておりますし,先ほど奥邨先生からも御指摘があったところです。

ただ,「無償」であれば広告がついているものも含まれるということになりますと,インターネット上のウエブサイトですとか,ラジオとかテレビの放送番組も入ってくるように思います。特に,1つ目の言語の問題とも関係して,例えば,フランスの新聞社が無料でインターネットに掲載しているフランス語の新聞記事サイトについて,これをフランス語の理解が困難な人のために日本語に翻訳して提供するサービスを行うことが許されてよいのかどうか,あるいは,日本語で書かれた芸能人のブログについて,これを日本語の理解が困難なフランス人向けにフランス語に翻訳して提供するサービスが許されてよいのか,ということが問題になるように思います。

このように,翻訳サービスの意義は認められるところですが,実際の立法化においては,以上のような難しい問題を伴うのではないかと感じております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかに。確かに上野委員の話を聞いているといろいろあるなと。

【龍村委員】正当化根拠に加えるとしますと,公共の安全と言いましょうか,国民の財産,生命・身体の安全と言いましょうか。外国人にも理解していただけていないと危険のある事項,たとえば交通ルールとか,そういうものから割り出される正当化根拠もあるのではないかという点を追加させていただきます。

【大渕座長代理】今出たのと近いのですが,国家戦略の観光立国とか訪日外国人の増大といったものももちろん重要なんですけれども,外国人が看板などを読めないのは大変な不利益だし,それは我々の安全にもかかわってくることなので,こういう点はもう少し重視していいのではないかと思います。前半の方だけだと,しばらくして観光立国というのが国策でなくなれば取りやめるとか,そのような一過的な感じになるかもしれません。外国人の人権とか公共の安全とか言い出すと,もっと基本的な国家の利益という公益性は高いのではないかと思います。ただ,そうかと言って,余り手広くすると,前に申し上げたようなスピード感がなくなって,結局重くなって進まなくなるので,できるところからやるというところに重点を置きつつも,これはかなり深い問題ではないかと理解しております。

【土肥座長】ありがとうございました。少なくともここに書かれておりますところの正当化根拠としての観光立国等の文脈の中で書かれてあること,これについては特に御異論はなくて,これから広げるかどうかについてはいろいろあるなと承知しました。

それから,対象著作物についても,確かに看板だけじゃないなということは御意見としてあったんですけれども,これをどこまで見るのかというのは,今後もう少し検討する必要があるのではないかと思います。皆さんにお約束した時間を15分延長するということでお願いしておりましたので,これが限度かなと思いますが。

その他を含めて,皆さん,何か最後に御意見あれば,いかがでしょうか,よろしいですか。

それでは,きょうのところはこのぐらいにさせていただいて,いつも時間が延長になって申し訳ないんですけれども,事務局から何か最後に連絡事項等ありましたらお願いします。

【秋山著作権課長補佐】次回ワーキングチームにつきましては,改めて日程調整をさせていただいた上で御連絡したいと思います。ありがとうございました。

【土肥座長】それでは,本日はこれで第3回のワーキングチームを終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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