文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会
「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」(第5回)

日時:平成29年1月23日(月)
10:00~12:30

場所:東海大学校友会館望星の間

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料
新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方について(骨子案)(243KB)
参考資料
第4回ワーキングチームにおける議論の概要(145KB)

議事内容

【土肥座長】それでは,定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」第5回を開催いたします。

本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばない。このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥座長】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

初めに,事務局において人事異動があったようでございますので,御報告をお願いしたいと存じます。

【秋山著作権課長補佐】今月13日付けで文化庁長官官房審議官として永山裕二が着任しております。

【永山長官官房審議官】よろしくお願いします。

【秋山著作権課長補佐】また,同日付けで著作権課長としまして水田功が着任しております。

【水田著作権課長】水田でございます。よろしくお願いします。

【土肥座長】ありがとうございました。

それでは,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元,議事次第を御覧ください。本日は資料としまして,「新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定の在り方について(骨子案)」と題する資料を御用意しました。それから,参考資料といたしまして,前回の議論の概要を御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお伝えください。

【土肥座長】ありがとうございました。

初めに,本日の議題を確認いたしますと,2点,新たな時代のニーズに的確に対応した権利制限規定やライセンシング体制等の在り方について,そしてその他,これら2点となっております。

早速でございますけれども,議題に入りたいと思っております。これまでワーキングチームにおきましては,まず,優先的に検討することといたしましたニーズにつき,その正当化根拠の有無,あるいはその内容,更には権利者の正当な利益を保護するために特に留意すべき事項など,こうした各論点について議論を深めてまいってきたわけでございます。

前回のワーキングチームにおきましては,権利制限規定の柔軟性の及ぼす効果と影響等に関する分析を基にした議論を行いまして,我が国における望ましい柔軟性のある権利制限規定の整備の方向性について,基本的には御了解を頂いたものと承知をしております。このように柔軟性のある権利制限規定に関する議論は,相当程度成熟してきたように思っておりますので,これからはワーキングチームとしての最終的な報告書の取りまとめに向けまして,具体的な制度設計の在り方につき議論を進めていきたいと思っております。このために事務局におきまして,制度整備の在り方に関する骨子の案を準備していただいておりますので,本日はこれに基づき議論を進めていきたいと思っております。

それでは,事務局より骨子案についての説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】それでは,資料の「骨子案」と題するものを御覧ください。まず,構成としましては,ローマ数字1で「問題の所在と検討の視点」,2としまして,「柔軟性のある権利制限規定の整備の方向性について」というふうに整理をいたしております。

1に関しましては,御承知のところだと思いますが,政府の政策目的ということではIoTやビッグデータ,人工知能といった技術を利用したサービスの創出といったことを図っていくことが特に要請されている旨でありますとか,先ほど座長からもございましたように,権利制限規定の柔軟性を高めることの効果と影響なども踏まえて,制度整備の在り方を検討するという検討の手順について簡単に記載しております。

2番,柔軟性のある権利制限規定の整備の方向性についてでございます。まず,1.制度整備の基本的な考え方につきましては,前回第4回のワーキングチームにおいて御検討いただいた内容を簡単にまとめております。特に作業部会の検討経過報告を踏まえた権利制限規定の柔軟性が我が国に及ぼす効果と影響等について,1ページ目の下のパラグラフでエッセンスをまとめますとともに,次のページでございますが,2つ目の丸ですけれども,こうした分析を踏まえまして,明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによる「多層的」な対応を行うことが適当であるとしまして,3つの層について,それぞれ適切な柔軟性を確保した規定を整備することが適当であるとしております。

各層の考え方やそれぞれに応じた柔軟性のある規定の整備の方針につきましては,ここに掲載しておるとおりでございます。また,この内容のイメージを共有させていただくために,別紙としまして,少し概念図のようなものも御用意いたしました。これを詳細には御説明申し上げませんが,1層から3層までを権利者に及ぶ不利益という軸で分類をしたものが視覚的に分かるようになってございます。これは後ほど御参照いただければと存じます。

続きまして,3ページ,2.具体的な制度設計の在り方,とりわけ優先的に検討すべきニーズについて記述をさせていただいております。(1)権利者の利益を通常害さないと評価できる行為類型(第1層)というところでございます。この(1)から(3)においては,第1層から第3層の各層について,それぞれ考え方を整理するという形をとらせていただきました。

内容としましては,各層の分類の考え方につきまして,必要に応じて補足をすること,それから各層について優先的に検討すべきニーズを当てはめていくということ,さらに,それぞれのニーズを踏まえた各層における柔軟性のある権利制限規定の整備の具体的な制度設計の在り方について,これらの議論も踏まえまして整理をさせていただきました。

中身の御説明に入ります。まず,1つ目の丸でございますが,この第1層に該当するものとしましては,例えばとしまして,3つ類型を整理させていただきました。1つ目としまして,情報通信設備のバックエンドで行われる著作物の蓄積のように,著作物の表現の知覚を伴わない利用行為。マル2,著作物の表現の知覚を伴うが,技術開発の試験の用に供するために行うものなど,利用目的・態様に照らして当該著作物の表現の享受に向けられたものと評価できない行為。マル3,これも同じく著作物の表現の知覚を伴うものの情報処理や情報通信の円滑化等のために行われる行為,独立した経済的不利益は生じないというものが挙げられるとしております。

こうしたものが権利制限になるべきだという方向性につきましては,平成23年の報告書でもC類型として確認いただいたところでございます。したがいまして,こうした行為に該当するものが可能な限り幅広に権利制限の対象となるよう,抽象的に類型化を行った上で柔軟性の高い権利制限規定を整備することが適当であるとしております。

優先ニーズとの関係でございますが,「システムのバックエンドにおける複製」,それから「所在検索サービス」や「情報分析サービス」のうち検索・分析用データベースを準備段階で作成しておくという行為が,これに該当すると位置付けられると考えられます。また,「その他CPS関係サービス」と言われるものにつきましても,これは抽象的な概念であるわけですが,こうした同様の考え方に即したものにつきましては,この類型に位置付けられる部分があるということを確認的に記載しております。

それから,「リバース・エンジニアリング」につきましては,これは平成21年の報告書で権利制限の対象とすべきという方針については,既に御確認いただいておるわけでございます。また,平成23年報告書におきまして,プログラムの著作物の利用につきましては,技術検証などプログラムの機能の享受のために行われていないものはC類型に該当し得るという考えも示されているというところでございます。こうしたことを踏まえますと,当該行為は第1層に当たるという整理もできるのではないかと考えております。

次のページをお願いいたします。第1層の制度設計に当たりましては,現行法の権利制限規定において,これに該当すると考えられるものが既に相当程度整備されているというところでございまして,こうした規定との関係の整理の在り方につきましても,規定の予測可能性と柔軟性のバランスに留意しつつ検討することは適当としております。また,その際,現行規定が現在又は将来のニーズに十分対応できるものとなっていないのではないかといった御指摘があることを踏まえまして,これへの対応ということにも留意が必要であるとしております。

続きまして,(2)第2層でございます。こちらにつきましては,「所在検索サービス」及び「情報分析サービス」のうち,その結果提供の際に行われる著作物の表示行為がこれに該当すると考えられるわけでございます。

これらのサービスを含む第2層に対応する正当化根拠の考え方としまして,これまでのワーキングチームの議論で,以下の4つのポツが説明なされたわけでございます。まず,電子計算機による情報処理によって社会に新たな知見等をもたらすという付加価値の創出という点で社会的意義が認められるということ。

次に,結果提供の際に行われる著作物の表示は,本来的市場に影響を与えることは想定されていないということ。そして,提供される著作物の範囲が軽微なものにとどまれば,不利益の度合いも小さくなるんじゃないかということ。そして,契約による対応の困難性でございます。こうしたことから権利制限の正当化根拠が認められるというふうに御整理いただいたところでございます。

そして,これらのサービスにつきましては第2層に該当するということで,冒頭の整理に従いまして,権利制限を正当化する社会的意義等の種類や性質,こうしたことに関わる著作物の利用目的等によりまして,ある程度大くくりに範囲を画定した上で,相当程度柔軟性のある規定を整備することが適当としてございます。

また,利用目的等による範囲の画定の仕方でございますが,1つには所在検索・情報分析サービスというまとまりが考えられるところでございますが,また,より抽象化を図るという方策も考えられるということでございます。

具体的な制度設計に当たりましては,以下のような各論点に配慮するということに留意すべきだとしております。

以下,各論の方に移らせていただきます。5ページの小さなローマ数字1番です。権利者の本来的市場への影響についてでございます。この両サービスの定義に該当するサービスの中には,形式的にはこれらのサービスと言えるものでありましても,実質的にコンテンツ提供サービスと評価すべきものも存在し得るのではないかと考えられるところでございます。この正当化根拠を構成する本来的市場に影響を与えないという要請に反することにならないよう,制度設計及びその運用に当たって留意することが求められるとしております。

また,こうした本来的市場への影響が生じないサービスというためには,結果提供の際の著作物の表示がサービスの目的達成のために付随的に行われるということが前提となるのではないかと考えられますし,また,付加価値を創出する目的なのか,あるいは著作物を視聴したい人に視聴機会を提供する目的なのかといった目的の正当性の問題として捉えるという御意見や,それから結果として市場との競合性を判断するべきという御意見が示されたわけでございます。

ここで,点線囲みの中で更に御議論いただきたい点ということでお願いをお示ししております。つまり,ここでは,「目的が正当であること」や「本来的市場への影響がないこと」という基準でもって本来的市場への影響をクリアしていくということを議論いただいているわけでございますが,このあたりのもう少し具体的なサービスの態様に応じた考え方につきまして,何らかの指針をお示しいただくことをお願いしたいと存じます。

この点につきましては,これまでのワーキングチームにおきましても,権利者団体へのヒアリングなどにおきまして,こうしたサービスに該当するものは,結果として著作権者の本来市場を毀損するということがないようにという御意見が多々ございましたわけでありまして,今回,抽象的な規定を設けるということは,ある種柔軟な規定の眼目であるといたしますと,その規定が十分適正に運用されるように,こういった審議会の報告書の段階でもできるだけその趣旨等について御議論いただきたいという意味で,ここでお願いをさせていただくところでございます。

続きまして,2番,表示される著作物の質的・量的な程度についてでございます。この権利制限の正当化根拠の構成要素としまして,不利益が小さいということが確認されているわけでありまして,表示される著作物についても質的・量的に見て軽微であるということが求められるべきであるとしております。例えば,以下のような場合,「軽微」な範囲を超えると評価される場合もあるのではないかというふうにさせていただいておりまして,また,「軽微性」につきましては価値的・相対的な基準とされるべきとしております。

3つ目の丸,なお,条文上どのような文言を採用するかにつきましては,「軽微」というような事柄を明文化するべきという御意見がありましたほか,そうではなくて,「必要と認められる限度」といった現行規定を参考にした規定ぶりでも十分なのではないかといった御意見もあったところでございます。

次のページをお願いいたします。3番,著作物の種類ごとの特性や個別事情等に応じ権利者に生じる不利益への配慮についてでございます。この著作物の種類ごとの特性や個別の事情等によりまして,権利者に及び得る不利益というのは異なり得るわけでございまして,例えば,以下のような例については,権利者の利益を不当に害することとなる場合もあるのではないかとさせていただいております。ここではヒアリングなどでも出てきました映画,小説等の「核心部分」を表示する行為ですとか,そのほかにも,3点お示ししております。

それから,2つ目の丸でございますが,こうした不利益への配慮の在り方としまして,事案ごとに権利者に及ぶ不利益の度合いに応じて対応がなされるような制度設計を行うべきであるとしております。この論点につきましても,先ほど申し上げたことと同様の趣旨から,更により具体的な当てはめの考え方について御議論いただけると幸いでございます。

4番,権利者の利用を拒絶する意思に対する配慮についてでございます。いわゆるオプトアウトを認めるべきかどうかや,どういう場合にそれが妥当するのかという論点でございます。この点につきましては,2つ目の丸にございますように,権利者の意思に配慮することの意義を認める御意見はございましたものの,一律にオプトアウトを認めることについては,様々な理由から消極的な御意見があったわけでございます。

7ページをお願いいたします。こうしたことから,1つ目の丸ですけれども,インターネット上の情報を利用する場合など,一定の場合にはオプトアウトを認めることが許容される場合もあり得るが,仮に一定の場合にこれを認めるとしても,サービスの態様や技術的・経済的な要素を考慮して適切な範囲にすることが求められるとしてございます。

最後に5番,市場が形成されている場合についてでございます。この論点につきましても様々な御意見がございまして,2つ目の丸でございますけれども,少なくとも一律にライセンス市場への配慮,つまり,ライセンスが成立している場合に権利制限の対象から除外するといった配慮でございますが,こうしたことには消極的な意見が複数ございました。こういう御意見を踏まえまして,明文上一律にライセンスが優先するような仕組みを設けるということは適当ではなく,個別の事情に応じて対応がなされるべきだというふうにしております。

次のページをお願いいたします。翻訳サービスを対象に第3層について御説明をしております。まず,翻訳サービスにつきましては,著作物の本来的利用を伴うものでございまして,公益的な政策実現のために権利者の利益の調整が求められる第3層に当たるというふうに整理をしております。翻訳サービスにつきましては,観光立国,高度外国人材の受け入れなどの観点から,我が国の言語の理解が困難な者に対して翻訳を提供するサービスについては,少なくとも社会的意義,公益性が認められるという議論でございました。

外国人が観光や生活上必要とする著作物には,商業著作物以外の著作物が多く,権利者の意思に反しないと思われる場合も多くございますので,権利制限は正当化されるのではないかとしております。

また,その範囲につきましては,少なくとも無償の著作物に限定することを前提としまして,更に権利者の利益を不当に害さないような範囲の画定が必要であるとしております。さらに,対象範囲について様々な御意見がこれまでございました。5つここで御紹介しておりますが,こうした御意見を踏まえまして,権利制限の趣旨の達成と保護と利用のバランスにつきまして,配慮して制度設計を行うべきだとしております。

それから,イですが,教育関係,障害者関係サービス等というところでございます。ここはより具体的なニーズの御説明があって議論がなされたということではございませんが,CPS関係サービスに関わる様々なニーズの中で言及されていたところでございます。こちらに関しましても著作物の本来的利用を伴うものでございますので,第3層に当たるということで,サービスの目的・態様等を踏まえて,当該サービスの社会的意義などを慎重に検討し,権利制限の範囲や規定の柔軟性の程度を判断する必要があるとしてございます。

それから,教育や障害者関係などにつきましては,現在,法制・基本問題小委員会において検討がなされておりますので,この検討結果を踏まえた規定の整備等が適当であるとしております。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥座長】ありがとうございました。

それでは,議論に入りたいと思います。骨子案に番号が振ってございますので,ローマ数字に従って意見の交換ができればというふうに思います。まず1は,先ほどの御説明にございましたように,これまで本ワーキングチームがなぜ柔軟な権利制限規定の在り方について議論するに至ったかという経緯について述べてございますので,この点は特に御異論はないものと承知しておりますので,ローマ数字の2ですね,「柔軟性のある権利制限規定の整備の方向性について」の1,ここから議論を進めたいと思います。

まず最初に,制度整備の基本的な考え方について,この部分について何か御意見等がございましたらお伺いしたいと思います。いかがでございましょうか。前田委員。

【前田委員】基本的な方針としては,私はこれでよろしいと思っております。2ページ目の第1層,第2層,第3層と書いてあるところがあり,その上の丸のところに基本的な方針が示されていると思いますが,それによりますと,明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の組合せによる「多層的」な対応を行うことが適当であると,そういうことでよろしいと思っております。

これの私なりの理解を申しますと,現行の著作権法には個別的な制限規定が多数あるわけですけれども,そういった個別的な規定の組合せを,更に適切な柔軟性の程度を備えた形でそろえて,もしかしたら場合によっては包括的な規定というのをサポート的に使うこともあるのかもしれませんけれども,そういったものも視野に入れながら,そういう方針でやっていくというのがよろしいのかなと思います。

第1層,第2層,第3層ということですが,基本的には第3層で示してあることというのが大きな方針なのかなと思っております。権利者にどの程度の不利益が及ぶのかということを考慮に入れつつ,更に何を目的として権利者の利益と衡量するのかということを勘案の中で,どういう柔軟性を備えた規定を持つのがいいのかと考えるということだと思います。その中で第1層や第2層に表されたものというのは,そういう考慮の中で,第1層では柔軟性の高い規定を整備することが望ましいという結論が,第2層については相当程度柔軟性のある規定を整備することが望ましいという結論が出てきたということだと思います。

第3層についてはいろんな規定があって,例えばイメージ図に示したところで言えば,教育関係,報道関係,障害者関係といったいろいろな種類のものが含まれていると思います。これらについては,どの程度柔軟性を持つことが望ましいのかというのは,これからの議論だと理解しております。例えば,教育関係や報道関係というのは,現状でもそれなりに柔軟性の程度は高い規定だろうというふうに思っておりますけれども,議論の次第によっては,第1層とかに匹敵する程度の柔軟性の高い規定の方が望ましいということになることもあるかもしれないし,そうでないことがあるかもしれないということだと理解しております。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにこの基本的に考え方について御意見ございますか。大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】3つの層に整理するというのが眼目だと思いますが,これは,24年改正のときに導入しようとしたことと表現の仕方は違いますが,思想としては共通性があるのではないかと理解しております。あのときは「享受」と言って,今回は「知覚」となっているという少し違いはあります。当時,私は第1層と第2層を両方含めてC類型というイメージを持っていたのですが,そうではなくて,第1層だけをC類型と考えている人もいらっしゃいました。イメージの幅の差はあるが,基本的な思想はほぼ同じで,それに応じた規定の在り方ということになってくるかと思っております。今回の1層と2層の違いは,1層はバックエンド的なものが中心であり,2層には表示の部分があるのですが,1層にはそれがないと理解しております。

私は,2層の表示の部分も道しるべといいますか,当該著作物の享受というか,知覚を目的とするのではなくて,単なる道しるべの一環としてURLをただ貼るよりも分かりやすくしてある,スニペットがしてあるという,そのようなものを含めてC類型だと思ったわけですが,それに応じて,この3つを組んでいただいていると思っております。要するに,表示がなくてバックエンド的なものというのが第1層,表示があるがも,それが享受に至っていないようなものが2層ということであります。私は前からボックスプラス表示と言っていましたが,ボックスというのは今の用語だとバックエンドに当たるもので,ボックスだけのものが第1層で,ボックスプラス表示のものが第2層ということで,その意味ではC類型の考え方をきれいに整理していただいたということになるのではないかというように理解しております。

その関係で,「柔軟な規定」の意味がよくわからないことが前から少し気になっていのですが,こうやって考えると,「柔軟な」と言っているのは,細切れの立法を要しないというように整理できるのではないかと思います。細切れの立法を要せずに,ある程度大くくりのものとして出していくということであります。「柔軟」というと,ややもすると境界線がはっきりしなくて,ぶよぶよしているというのか,曖昧で使いにくいという語感があるのですが,ここで言われている柔軟性というのは,今言ったように,場合によってはクリアで広いということもあり得るわけであります。大くくりというのがよい用語かもしれません。細かい個別規定を重ねるのではなく,ある程度包括的な形で,大くくりの個別規定を設けるということで,このあたりが明確性と柔軟性のバランスということになってくるのではないかと思っています。

あとは作り方次第でありますが,基本線としては,今回の3層の方はそのような大くくりな規定ではなく,従前の形を継続したものであり,1層と2層には大くくりな形の,もはや個別規定と言う必要もないのかもしれませんけれども,そのようなものを打ち出すということで,これらの組み合わせにより非常にバランスのとれた形になると思います。「柔軟な規定」については,結局丸投げになってしまうというイメージが強かったので,そこのところは丸投げにならない,境界線がはっきりした形で,細切れの立法を必要としないというニーズに応えられるので,正しい方向性を示しているように考えております。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかに,この基本的な考え方につきまして,こうした方向性,コンセプトについて何か御意見ございましたら,よろしゅうございますか。

前田委員も,それから大渕委員も,この基本的な考え方,こういう3層に分けて明確性と柔軟性の適切なバランスを構築していくという,その点については御賛成いただいております。3層について,前田委員の考え方はいろいろあったんですが,それはまた3層のところで御意見を頂戴したいと思います。

それでは,この基本的な考え方につきましては,委員全員の御了解を頂いたものということで具体的なところに入ってまいりたいと思います。ローマ数字の2,そしてアラビア数字の2ですけれども,いわゆる第1層ですね,権利者の利益を通常害しないと評価できる行為類型でございますけれども,この第1層のところ,これにつきまして御意見いただければと思いますが,いかがでしょうか。第1層でございます。じゃ,お願いします。

【龍村委員】第1層についてネーミングの問題になりますが,「権利者の利益を通常害さないものと評価できる行為類型」という名称,呼び名になっており,他方,第2層,第3層の冒頭部分は,「著作物の本来的利用には該当せず」が第2層で,第3層は「著作物の本来的利用を伴うが云々」というネーミングになっているわけですが,第1層と著作物の本来的利用との関係性が明確でない面があるようにも思われ,あるいはこれは著作物の本来的利用には該当せず,権利者の利益を通常害さないと評価できる,こういう類型とすべきなのか。あるいは,利益を通常害さないという点でインクルードしているということで,こういうネーミングが適切なのか,そのあたりが少し気になりますが。

【土肥座長】ありがとうございます。今,龍村委員の御質問になるんでしょうか,要するに第1層が著作物の表現の享受を目的としない利用ということで整理していただいているんだろうと思います。2層は,先ほどの大渕委員の御意見にもございましたけれども,表示を伴う結果,表現を享受するような場面が出てくるけれども,著作物の本来的な利用という観点からすると,それは当たらないのではないか。そしてまた,軽微という押さえも付いているのが第2層。それから第3層は,著作物の本来的な利用,今度は翻訳とか,そういうことが入ってまいりますので,まさに本来的利用ということは想定される場合が出てくるわけでございますけれども,そういうところで分けられているものと理解をしております。

大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】私が理解しているところは,今,座長に整理していただいたところに近くて,知覚や享受がないのが第1層で,2層は表示はあるが,知覚や享受というほどではないという違いであり,それが恐らく24年改正のときの関係者の共通認識だったと思います。権利者の利益を通常害さないというのは,1層も2層も同じでしょうから,その違いをさらにクリアにして,もっと前面に出していただいた方が分かりやすくなると思います。

権利を害さないというと抽象的になって分かりにくいのですけど,享受や知覚というように言い換えると分かりやすいので,バックエンドで外から表現が知覚できないというか,享受できないようなものということをクリアに出していただいた方が分かりやすいのではないかと思います。権利を害さないというのは,1層も2層も同じなので,違いが分かりやすくなるように,その点はもう少し御工夫いただいた方がいいのではないかと思います。

【土肥座長】2層に関しましては,本日のかなり議論が集中するところではないかと思うんですけれども,2層の部分については,またこの後のところで,今大渕委員がおっしゃられたような,そういう論点も踏まえて議論させていただければというふうに思っております。

1層についてネーミングの問題がございますけれども,これは勉強させていただくしかないんだろうと思うんですが,私としては,利用というものが著作物の表現を享受している利用なのか,それを利用する場合もあり得るけれども,それは本来的な利用とは言えないというふうな整理というのがよく分かったものですから,こういう形でお示しをさせていただいているわけでございますけれども,また,大渕委員等々おっしゃっているようなところは少し考えさせていただければというふうに思います。要は,我々のメッセージが正確に伝わるということが大事だと思いますので,少し勉強させていただきたいというふうに思っております。

ほかに,1層に関して何か御意見ございますでしょうか。前田委員,どうぞ。

【前田委員】今の議論を受けて,半分ぐらい質問になってしまうのかもしれませんけれども,私が第1層,第2層をどのように理解しているかということをお話しさせていただきたいと思います。結局,第1層,第2層では著作権者に対する不利益がほとんどないということを権利制限の正当化根拠の一つに挙げているのだと思います。そうすると,著作権法が財産権としての著作権で,どういう利益を著作権者に対して保護しているのかということがポイントになるのかなと思います。恐らくですけれども,著作権法が保護している利益というのは,基本的には著作物を表現として享受するというタイプの利用,それを著作権者が独占できるということだと思います。もうちょっと正確に言えば,そういう利用に対して,何らかの形で対価を得る機会を確保するということに目的があるのだと思います。

そうすると,表現を享受する利用かどうかというのが,著作権の要保護性を基礎付けるために必要条件になるのだと思うので,そこがそもそもないときは,第1層ということになると思います。そこが一応形式的にはあり得るけれども,いろいろなことを総合考慮すれば,実質的にはそこでそういう不利益を著作権者に与えていないと言えると第2層なのかなと思います。

第1層の中にも,この3ページの上の3つの類型を見ると,いろいろなものが含まれていて,例えばマル1は表現の知覚を伴わない利用行為というふうに書いてありますけど,これはそもそも表現の享受が物理的な意味でもおよそあり得ないということなのかなと思います。

2番目は,表現の享受に向けられたものと評価できないということなので,物理的な意味で言えば,表現の知覚というのはあるのだけれども,利用の目的や態様に照らせば,受け取る側としては実質的に表現の知覚をしていないのだということと思います。

マル3は若干難しいですけれども,新しい表現の享受の機会というのを生み出しているわけではないということなのでしょうか。そういうことなので,そこに著作権者に与えるべき利益が基本的には発生しないと理解できるということなのだろうと思います。

一方,第2層の方は,例えばスニペット表示などそのようなもので表示が出てきますので,それは表現を享受すると一旦は捉えざるを得ないと。その上で著作権者に保護しているマーケットというか,そういったものに対してはダメージが実質的にはないのだという方向に更に議論を加えて持っていくというところが違うのかなと思っております。

以上です。そういう理解でよろしいでしょうか。

【土肥座長】ありがとうございます。今,前田委員がおっしゃるように,第2層については,いわゆる第2層の議論をまだ始めていないんですけれども,送信可能化された情報以外のそういう様々なコンテンツについても,第2層のところでは議論をしてくることになりますので,そこで本日のところは議論をしていただきたいなというふうに思っておるわけでございますけれども,よく出てくるのはアイドルの写真集とかいうような,そういうものが所在検索サービス等々において検索の対象になってきますと,そこのところは,先ほど前田委員がおっしゃったように著作物の享受というふうなことを認めざるを得ない場面もあるんじゃないかなという整理だと理解をしておりますが,2層は今からご検討いただきますので,1層だけでお願いします。

【大渕座長代理】議論を整理する上で1層がやや分かりにくいものですから,確認させていただければと思いますが,一番上のところのマル1,マル2,マル3で,マル1は,そもそも享受以前に物理的な知覚すら伴っていないから,これは不利益の与えようがないということですね。これは分かりますし,それからマル2は,表現の知覚は伴うのだが,享受に向けられていない場合であり,著作法的には表現の享受というのが眼目になるので,そこには当てはまらないということですね。やや分かりにくいのがマル3で,知覚は伴っているのだけれども,享受ではないということで同じなのではないかと思ったのですが,ここは何も書かれていません。享受を伴わないが,権利者に経済的な不利益があるというのは,享受とはまた別の要素で判別しており,そのために上の方が権利者の利益を通常害さないというようになっているかもしれないので,少しこの書き分けのところを御説明いただければと思います。

【土肥座長】じゃ,その点の意図を御説明いただければと思います。

【秋山著作権課長補佐】御説明いたします。大渕先生おっしゃるように,享受でないという整理も一つあるのかなとは思いましたが,どちらかといいますと,前田委員から御説明いただいたような発想に近い形で整理をさせていただきました。つまり,マル3につきましては,具体例としてはミラーリングとか,そういうものを想定しているわけでありまして,例えばミラーサーバーに蓄えられた著作物といいますのは,インターネットの利用者が直接その情報を視聴しまして,通常の方法で享受するような形,享受という言葉はどうか分かりませんが,まさにその内容を味わって鑑賞するというふうに使われるわけでございまして,そういう意味では,ミラーサーバーに複製された情報は一応享受されているのではないかというふうに考えるところですが,しかし,ミラーサーバーに蓄えられた情報というのは,もともとは何らかの形で適法にもとのサーバーに一旦蓄えられたものでありまして,そこで一度権利者の権利行使の機会,対価回収機会が確保されている中で,単に情報通信を円滑に行うという目的のために,過渡的なのか,一時的なのか,そういうものとして複製され送信されているというふうに理解いたしますと,前田先生の言葉をおかりしますと,新たな機会を生じさせないので,不利益が新たに生じているわけではないというふうな理解でこのように書かせていただきました。

ちなみに,EUのディレクティブでは,こういう行為につきましては,独立した経済的価値を生じない行為というふうに整理されていたことも参考にさせていただきました。

【土肥座長】ありがとうございます。よろしいですか。

第1層に関しまして,よろしゅうございますか。基本的にはこういう整理でよろしゅうございますか。御異議がないようでございますので,本日のところ,幾つか御意見を頂戴いたしましたけれども,基本的にはこのような整理で進めさせていただきたいと思います。

それでは,先ほどから議論が出てきておりますところの第2層でございます。著作物の本来的利用には該当せず,不利益が軽微な行為類型につきまして御意見を頂きたいわけでございますけれども,これはその中に,ⅰからⅴまで5つに分かれておりますので,第2層全体について御発言いただいていいんですが,特に自分としては,ローマ数字の1,2,3,4,5のこれについて意見を述べているんだということをおっしゃっていただくと非常に私ありがたいんですけれども,御意見を頂けますでしょうか。

前田委員,お願いします。

【前田委員】先ほどの話の若干続きということになってしまいます。私が今からコメントするのは,主に1の点についてで,それに加えて,2,3についても若干触れたいと思います。どういう基準で権利制限規定の範囲を判断すればいいかということですが,私は,基本的には,結果として,著作権者の本来的市場にどう影響を与えるかというところで見た方がいいのかなと思っております。ただ,利用者の目的がどういった点にあるのかという目的の正当性で捉えるという意見に特に反対するという趣旨ではありません。いずれにしろどういったものが著作権者の本来的市場なのかということははっきりさせておいた方がよろしいかと思いますので,そこについての私の意見を述べさせていただきます。

先ほども申しましたように,著作権が保護する利益というのは,著作物の表現を享受する利用について,対価の回収の機会を確保するということだと思います。そういった観点からしますと,第2層の利用によって著作物の一部ないし全部が表示されたりするということについて,著作権者の市場がどのように害されるかということを考える必要があります。

一つあり得るのは,例えばスニペット表示とかで,画像だとしますと,解像度が高いような画像が全体として出てしまうと,著作権者が本来独占している画像という著作物のマーケットに対して真正面から競合するわけですね。もしそれが解像度の高い画像とかあるいは映画や小説などの全体とかそういったものではなくても,重要な一部であれば,その需要を満足させるということはあるのだろうと思います。つまり,ここで表示されるものというのが,もとの著作物との関係で,どれぐらい需要を代替させるものなのかというところが一つ大きな指標としてあると思います。

ですから,2のところで幾つか例が上がっているのですけれども,辞書・辞典の各項目や俳句等の著作物の全部表示,写真・映画の精細な画像の表示等々挙がっておりますけれども,こういったものは量的な部分が,あるいは質的な部分が大きくなればなるほど,もとの著作物の需要というのを正面から奪ってくることになるかと思いますので,権利者の本来的市場に対するダメージ,もしくは不利益の程度というのは大きくなってくるということなのだと思います。

一方で,全部だったら常にだめなのかと言われると,これはなかなか難しい問題があるというふうに思っています。たしかワーキングチームの3回目ぐらいのときに,TVEyesという事件の例が出たと記憶しております。アメリカでフェアユースが問題になったものです。あれはTVのニュースの検索で,キーワード検索か日時検索でニュースの内容を見られるというものだったというふうに記憶しております。このとき恐らくですが,例えばキーワード検索の方でニュースを出すと,ニュースのかなりの部分が表示されるのだと思うのですね。今言った全部か一部かというような観点からいくと,そのニュースを見たいという需要そのもの,恐らくそれを見てしまうと満足されるという部分があるので,今言った観点だけからいくと,権利制限規定が適用されないといった話になりやすいのだと思います。

ただ一方で,アメリカの判断が正しいかどうかは分かりませんけれども,アメリカでは日時検索については否定的にとらえる一方で,キーワード検索というものについては,フェアユースを肯定する方向で捉えていたと思います。その理由を考えてみると,キーワード検索によってニュースの内容を出すというやり方ですと,ニュースの本来的な需要の在り方とはバッティングしない部分というのがあるのではないかとも理解できると思うのですね。ニュースというのは,新しい情報について適時に触れるという目的があると思いますので,過去のニュースを検索して,こういうキーワードがこのように使われていたということを調査する目的で見るというときには,ニュースが持っている本来的な市場とはバッティングしないという理解も理解の一つとしてはあるのだろうと思うのですね。

この事案自体の当否の議論についてはいろいろ御意見があるとは思うので,それについて特定の意見を主張する意味で言っているわけではないのですけれども,例として,全部が出る場合であっても,本来,その著作物がどういうマーケットを目指していて作られて,現実に提供されていたものなのかというところを考慮すると,全部か一部かというだけが絶対的な考慮要素になるわけでもないのかなというふうに思っております。

最後に,3に関してちょっとコメントさせていただきたいのですけれども,今,申し上げてきたのは,著作物の本来的市場というのが著作物の表現を享受する市場というのがあって,それと直接バッティングするのかという形で権利者の不利益を理解してきたわけです。つまり,画像で言えば,サムネイル表示がされて,そのサムネイル表示を見ることで,その見たこと自体によってもとの画像を見たいと思うという需要が満足されるかどうかというような話をしてまいりました。

その観点からすると,ここで挙がっているいろいろな例というのは,必ずしもそれだけで理解できるものとも違うように思うのですね。今,3つ例がここに挙がっていますけれども,一番上の映画,小説等の「核心部分」を表示する行為。これはもしかしたら核心部分を見てしまえば,もとの映画や小説を見たくなくなるという意味で,需要を満足させてしまうという説明の仕方で説明できるのかもしれません。ただ,2番目,3番目というのはちょっとそれとは違うような気がして,つまり,どういった宣伝戦略をするかによって,もとの著作物の需要をどうコントロールするかという話のように私には思えます。

つまり,表示の方法によって直接的にマーケットが奪われるという話じゃなくて,表示の仕方によってもとの需要がそもそも変わってしまうというような話なのだと思います。こういった利益というものも著作権法は保護しているという考え方もあると思うし,いや,そこまで保護していないという考え方もあるのかなと思います。ただ,少なくとも現実に今著作権を使ってこういったものをコントロールするということは恐らく行われているのだろうと思いますので,そういった現状ある利益というのにどこまで配慮する必要があるのかというところが議論の対象になるのかなと思っております。

長くなりましたが,以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】私は,ローマ数字の1と3に関して申し上げたいと思うんですけれども,今,前田委員からありましたように,本来的市場の影響ということを考えるべきであるということについては,私も全くそのとおりだと思うんですが,ただ,本来的市場への影響があるかどうかということは,サービスの目的との関係,利用の目的との関係で判断せざるを得ないんだろうというふうに思います。そこを抜きに結果としての影響だけを見ても,そうすると本来的な目的が達成できないということになるのではないかなと思います。

例えとしていいのかどうか分かりませんけど,例えば,私たちが広く認識している権利制限規定であるところの引用規定を例に考えた場合,例えばある推理小説の一番の核心の部分,犯人を明かす部分があったとしても,そこを批判しないといけないんだということがあった場合,核心部分だからその引用はまかりならぬということは少なくとも引用規定の場合はないはずだと思うんですね。これは,結局著作権法って,どの規定もそうなんですけれども,著作物の中身,内容,そういうものについて次元が高いとか,応用美術はそんなことを言うんだっていろいろ議論がありますけれども,それ以外の場合は,中身が高尚とかそうではないとか,すばらしいとかきれいとか,そういうことは一切関係せずに,著作物として認定した限りはすべからく等しく扱うということなわけです。中身に入っていって,ここがコンテクスト上,核心である云々というようなことは,これは中身の評価の問題であって,著作権法上は考えなくていいし,それは例えば引用規定だって,ほかの規定だって,そこは核心だから,それは許されないんだというようなことは言わないということと同じ。ただ,今回のような情報検索の目的に,じゃあそこを見せないとだめというケースがどれだけあるんですかというのは,類型的に引用なんかだったら多いかもしれないけれども,極めて少ないのではないかなとは思います。ただ,当然のようにそれが排除されるということはないんだろうというふうに思うわけであります。

それと同じことは,例えばどういう著作物であるかとか,どれだけの部分が使われるかとかいうような,2に関係するようなところに関しても全く同じことであって,ある程度目的との関係で判断されるところは,これはやむを得ないと思います。ただ,今回の規定は,どちらにしても,所在検索であったり情報分析であったりもくてきですから,その縛りから当然に広がるということはむしろおかしいのであって,コンテンツを見せるという方向,単に代替的な使用をさせるというだけのカモフラージュであるかどうかということは考えればいいんだと思うんです。

例えば,適切な例かどうか分かりませんが,私なんかイメージしているのは,例えば本を検索したときに,スニペットが出てくる代わりに,映像検索をしたときに短いクリップが見えるということで,それを見ないことには判断がつかないというようなときに出していれば,それは核心部分であろうと何であろうと必要だということになるんだと思う。

例えば,この前別件で調べていたら,加藤剛さんが演じられた「大岡越前」というシリーズの中では,「三方一両損」という有名な大岡政談の話が4回か5回出てくるらしいんですね,あの長いシリーズの中に。そうしたら,大岡越前の三方一両損で,自分で見たことがあるあのシーン,どの回だか分からない。ウィキペディアなんかにも登場人物が載っているが,それだけ見ても分からない。ところが,そのときに「三方一両損」の1シーンがぱっと見れたら,あっこれだというふうに特定できると。そのときに,「三方一両損」を全部見せる必要もないですし,登場人物の方もそれで見ればいい。

ところが,これでもまだ桜木健一さんが出ているのが2回あるということになると,その桜木健一さんが出ているところを更にもうちょっと見ないと,それのどっちの回だったんだということが区別できない。そういうのがあると思うんですね。だからといって桜木健一が出るところが一番いいところだから見せられないと言ったのでは,これは区別がつかなくなって情報検索サービスとして意味がなくなるわけですから,それらは検索の絞り込みの内容に応じて必要なものを適宜見せていくということで,サービス提供者がきちっとやっていくということで許される範囲になるのではないかなというふうに思う次第であります。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございます。じゃ,大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】1層のミラーリングなどは,私は独立の享受がないという説明でもよいのではないかと思いますが,そこはやや形式的な問題なので話を飛ばして2層にいきますと,バックエンドでやっている部分には表示はあるが享受はないという状態で,享受というのは著作権的満足を得られる程度の享受かという話かと思いますので,そのような観点でここも考えていかざるを得ないのかなと思います。要するに普通の文字情報であれば,URLだけ示されても中身が分からないから,ある程度さわりの部分をスニペット等で表示してあげているわけであります。先ほどの映画だったら,それと同じように一部分を,道しるべとして必要な最小限度出すということであります。核心部分まで及ばなければ道しるべにならないのかどうかというあたりが非常に難しいと思います。核心部分も短かったらいいのか,ほんの短時間だったらいいのかなど,個別の判断になってくるかと思います。

基本的には,ここにこのようなものがあってアクセスできるという道しるべを示すのに最低限必要な部分はある程度見せないと,これが見るに値する映画かどうかが分からないことになります。しかし,見るに値するかどうかの判断のときに,核心部分をどの程度見せるかというのは非常に難しくて,場合によっては量は少ないが,全部見たのと同じになるということもあるので,そこは条文で細かく決めるわけにもいかなくて,個別の当てはめになるかと思います。先ほどのように市場を奪うかという話になってくると,核心部分は基本的にはかなり少なくしか出せないというような総合考慮になってくるかと思います。趣旨に鑑みると,道しるべというか,スニペット的なもの,ほかも個別の判断になってくるかと思います。ただ,その部分については,これを享受というのか,それで市場が代替というのかどうかというところが基本になってきて,細かい判断は条文では書けないので個別の認定になってくるかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。大渕委員もどちらかといえば道しるべという,目的でという御趣旨かなと思いますけれども,ほかに,この市場化。森田委員,どうぞ。

【森田委員】今,ローマ数字の小文字の1のところに関してですけれども,ここで点々囲みで御議論いただきたい点として,例えばどのようなサービスであれば,肯定されやすいと考えるべきかという問いなんですが,どういう問いが立っているかということに関係しますけれども,目的というのと影響というのを立法化するときに,どちらに寄るべきかということが問題になっているわけじゃなくて,ともに考慮されるべきだろうというふうに私は考えていますし,その点について,今異論が述べられているわけではないというふうに理解していいかという点が確認したいことであります。つまり,目的も大事だし,影響も大事だと。双方それぞれ考慮する必要があるんじゃないかということであります。

また,両者は全く無関係ではなくて,これからサービスを提供するという場合はともかく,現に一定の影響が出ている場合に,そういう状況を認識しながら続けることが目的に影響しないかというと,目的そのものの正当性にも影響することがあると思いますから,2つの事象は独立というよりは関係しているところもありますので,双方考慮するという枠組みが規定の在り方としては適当じゃないかと思います。

そのこととも関係するんですが,最初から議論になっていることでありますけど,第2層というのがどういう位置付けになっているかということなんですけれども,第2層というのは,情報検索とか情報分析をした結果を表示するという部分をとらまえて,それがどうかということを議論しているんですけれども,その前提としての情報分析の部分というのは第1層に属する話ですね。そこがまたがっているか,またがっていないかという議論があって,きょうの別紙も,第2層のところでインターネットの情報検索と挙がっていますけれども,情報検索の表示の部分が第2層だけれども,前提としてのバックエンドの部分については第1層なので,具体的なサービスとしては第1層,第2層にまたがると思うんですね。そのときに,目的の正当性という場合の目的というのは,情報分析の結果を表示するということでありますから,そういうサービスなんですけれども,情報分析の結果を表示すること自体が社会的に意義が高いかどうかという問題が実は隠れてあって,例えば先ほどの大岡越前の分析サービスなんて,そんな分析サービス要らないんじゃないのという人がいたら,第2層の議論をするときの目的が正当でないということになってくるかもしれない。情報分析が,社会的価値が高いということを前提として,それに伴って付随的になされることだから第2層として制限されるというわけでありますけれども,情報分析が持っている,そのこと自体の社会的な価値という要素も考慮に入れないと第2層の議論はできないんじゃないか。それは影響というよりは,目的のところでカウントすべきことだと思いますので,目的という要素を除いてしまうと,その点の考慮が十分できなくなるんじゃないかという点では,両方含めることが必要じゃないかということを申し上げたいと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。その点に関して,どうぞ。

【大渕座長代理】私が理解しているところでは,1層というのは広さにも関わってくるのですが,享受ないし市場代替性がゼロないしはニアリー・ゼロであり,とにかく享受していないようなものだから,対抗利益の公共性などをあまり考えなくてもよいこととなります。他方,2層の方はある程度の表示であるから,対抗利益としてあり得るものが所在検索とか情報分析などという公益的な必要性であります。だから,思想として1層と2層は少し違います。

ただ,先ほど言われたとおり,サーチエンジンもバックエンドでやっている部分は1層,表示の部分が2層なので,バックエンドの方は問題ないから,表示のところが問題になっているのではないかと思います。これも何度も言っているところですが,引用でも,例えばある絵画についての批評の論文において絵画の筆使いを説明しようとする場合には,非常に高い画質で論文に表示して,それで論評したいけれども,別紙で付いている絵の画質が非常に高くて,画集に代替するようなものであるならば過剰だからいけないという議論があります。それと似たような話で,道しるべとしての目的に必要の範囲ならよいが,余り画質が高過ぎるのはいけないということであります。目的を中心に考えますけれども,結果として目的が良ければいいのかというのは,その目的に必要な範囲というところで,事実上の影響というのは必ず入ってくるところではないかと思います。そのような意味では目的だけということはなく,影響も考慮に入れる必要があると考えます。

【土肥座長】ありがとうございました。市場への影響,これはあくまでも本来的な市場ということでありまして,何らかの影響があれば,全て市場の影響というわけではないということは御承知いただいておるところだと思います。あと目的の,ここが正当性というのか,社会的な評価,そういったものも入ってくるのかというのは非常に難しいなというふうに私は考えておるところでございますけれども,これまでの議論をちょうどしていただいているところでございますので,ⅰのところに更に御議論いただきたい点ということで,「目的が正当であること」や「本来的市場への影響がないこと」というのは,例えばどういう態様のサービスであれば,より肯定されやすいのか,あるいは否定されやすいのか。そういうことの中で目的の社会的な評価のようなものも入ってくるのか,入れるべきではないのか,そういう点ですね。少しこの辺について御議論,御意見いただけませんか。奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】先ほどちょっと例の出し方が良くなかったのかもしれない。別段大岡越前の分析サービスをやりたい,ということではなくて,あくまで所在検索サービスと言われるものの中で,ネットに限らず,本や何かの例がありますけれども,そうでなくて,ネットに挙がっている動画に限らない,様々な動画の所在の検索サービスという例として挙げさせていただいたので,私としては,もちろんいろいろなものが出てくるんでしょうけど,ここで議論された所在の検索サービスであるとか,情報分析サービスというのは,仮に社会的な正当性,相当性ということを考えるとして,それらは既にインターネットの検索エンジンが社会的に相当であると私たちがかつて認めたのと同じように,それは認められるのではないか。さらに,まさに柔軟な規定でありますので,これらではカバーできないような新しいものがどんどんできてくるかと思いますが,それについては,今は何とも言えませんが,ただ,やはりこういうものが前提に作られて出発点であったということを念頭に置きながら,それらに近いような,ある程度の目的を持っているものということでしか今の時点では想定できないのかなというふうには思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。前田委員,どうぞ。

【前田委員】今,奥邨委員が御指摘された点と重なるところがあると思うんですけれども,目的の正当性というところで社会的な評価を加味できるのかという点ですが,私は,加味できないとは申しませんけど,余りここを重視するべきではないのかなと思っております。むしろ所在検索サービスや情報分析サービスを提供するという看板を立てて,著作権者の本来的な市場を奪おうという目的を持っていないのかどうかというところを見る方がよろしいのかなと思います。

もし社会的な意義を評価するということになると,裁判所なり何なりがこのサービスは社会的に有用なのだという評価を下すということにもなりますし,私はそういうのは余り適当ではないのかなと思っております。しかも,第2層の場合は著作権者に与える利益がない,もしくは軽微というのが前提になっていると思いますので,目的の正当性というのを殊更に高く見る必要というのはないのかなと思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。上野委員,どうぞ。

【上野委員】2層に関しては,なかなかイメージが共有されにくいところがあるのかもしれないのですけれども,きょうの事務局の整理で申しますと,1層は「権利者の利益を通常害さない」のに対して,2層の場合は,権利者の利益を通常害さないとまではいえないけれども,所在検索サービスや情報分析サービスを典型として,社会的な意義があるサービスだということを考慮すれば権利制限の対象になっていいだろう,そういう考え方に基づいているのではないかと思います。そうだといたしますと,所在検索サービスであるとか,あるいは情報分析サービスというものが,どのような社会的意義を持っているのかということが問題になるかと思います。

今日の資料で「権利者の利益を不当に害することとなり得る場合の例として…どのようなものが考えられるか」と書かれておりますので考えてみますと,現行法の47条の6でも,現在既にインターネット上にある情報の所在検索サービスは適法にできるわけですけれども,例えば,インターネット上の情報をあらかじめ集めておいて,ユーザが物事を調べられるようにするような情報提供サービスをしたいという声もあるようです。例えば,アメリカの大統領選挙とはどのようなものか,とか,東京タワーの歴史は,といった質問がユーザから入力されることを予想して,あらかじめさまざまなテーマについて情報を集めておき,ユーザの質問に応じて情報を提供するというサービスが考えられます。これは既にインターネット上に存在している情報の「所在」を検索するサービスというより,まさに情報自体を提供するサービスというものですので,資料5頁にある「実質的にコンテンツ提供サービスと評価すべきもの」というのに近いのかもしれません。ただ,こうしたものも「情報分析サービス」の一環だといえるのだとして,今回の改正で適法にすべきだというふうに考えるのか,それともこうしたものは権利制限の対象外と考えるのかというところが,今回問題になってくるのではないかというふうに思います。

そのような観点からすれば,私は「所在検索サービス」というものの意味についても,もう少し明らかにする必要があるのかなと思っております。きょうの資料の3ページ目では脚注の3で「所在検索サービス」の定義が書かれていまして,「サービス利用者の関心に合致する著作物の書誌情報や所在を検索し,提供すると共に,検索結果が利用者の関心に沿うものであるかを確認できるよう,検索結果と併せて著作物の一部を表示するサービス」とあるわけですけれども,所在検索サービスの典型である現行法47条の6も,「著作物」の所在を検索するサービスを念頭に置いているというよりは,文言上も,送信可能化された「情報」の所在検索サービスを想定したもので,例えば,ある言葉などをキーワードに,それがどこにあるのかという検索の仕方をします。これに対して,例えば,著作物のタイトルなどをキーワードにして,この著作物の概要を知りたいというユーザに情報を提供するというようなサービスを,第2層として今回の権利制限により適法にするサービスの具体例としてよいのかどうか,私にはちょっと疑問があるところであります。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。それでは,大渕委員。

【大渕座長代理】これはまさしく所在情報としてロケーティトしてもらうことが目的なのであります。ここははっきりしないといけませんが,その著作物の享受自体を目的としているものは,TVEYEがそうかもしれませんが,特定の日を入れて,特定の局を入れるような場合は検索に該当するわけではありません。要するに中身が見たいというようなものは,濫用事例というかどうかは別として,そのようなうものを認め出したら2層は崩れてしまいます。2層は所在の検索を,今までネット上のものだけ認めていたのにネット外でも認めるようにするということですが,ただ,道しるべとして一部分だけ表示するという,あくまで非享受的なものが前提になっているので,そこを崩し出すと大変なことになってくるのではないかと思います。

その前提で,一個一個のサービスが社会的に有用かどうかということを判断し出したら大変なことになるし,制度が機能しませんので,先程述べた目的の適合性というのは,所在検索目的なのか,それともコンテンツの獲得目的,享受目的かという程度の話ではないかと思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。どうぞ,森田委員。

【森田委員】先ほど目的に関連して申し上げたことは誤解を与えたかもしれませんので若干補足させていただきます。私自身も社会的な意義について,裁判所が情報分析の評価をすべきだということを申し上げているわけではなくて,このペーパー自体が広い意味の情報分析そのものが社会的意義が高いということを前提に立法すべきだということを前提にしているということについては,私も全然異論がないわけでありますけれども,ただ,その上でどこまで必要かということとの関係で,その点を考慮した上で,そこまで情報分析を,サービス提供を認めるべきだということになれば,その価値が高ければ,権利者側の不利益がある程度あったとしても許容されるべきだ。そういう形で働いてくるということでは,社会的意義というものも考慮の要因として入れておくべきだろうというふうに思います。

私,申し上げたことは,4ページの(2)の2つ目の丸に書いてあることというのはそういう趣旨じゃないかと。つまり,ここでは「権利制限を正当化する社会的意義等の種類や性質に応じ,著作物の利用の目的等によってある程度大くくりに範囲を画定した上で,それらについて権利者の正当な利益の配慮を行った上で」という,このプロセスで判断していくというふうにここに書いてあるわけでありまして,これでいいんじゃないかということで,これについて異論が提示されているわけじゃないということで理解していいんじゃないかということを申し上げたかったことであります。

【土肥座長】ありがとうございました。上野委員,どうぞ。

【上野委員】現行法47条の6では,所在検索サービスのうち,インターネット上の情報を検索するものしか対象になっていませんので,所在検索である限り,対象となる情報の範囲を拡大すべきだということは,私もかねてから主張しているわけですけれども,そのようなものだけを第2層が意味するのであれば,例えば,資料6ページ目のポツの3つ目に,「映画やレコードの概要を紹介する目的で,正規の映画のダイジェスト版(トレーラー)や正規のレコードのサンプル版とは異なる部分を切り出して提供する行為」というようなものは,もともと情報の「所在」を提供して情報に到達しやすくするというものではなくて,その著作物はどういうものなのかというのを知りたい人のために情報を提供するというもののように思います。現行法47条の6を所在検索サービス一般に広げる改正を行うということだけであるのならば,このような情報提供サービスは,それが権利者の利益を不当に害するかどうかに関わらず,そもそも権利制限の対象に入ってこないのではないかと思います。

ですから,この第2層というものが,所在検索サービスだけではなくて,「情報分析サービス」というものも対象にするとするならば,そこにいう「情報分析サービス」というものがどのようなものまで含むものなのかということが,どういう目的のサービスを適法にするのかということと関連して,やはり大きな問題にならざるを得ないのではないかと感じている次第です。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。本来的な市場への影響の問題,それから目的の問題も議論として来ているわけでございまして,どちらかいずれを強調するというよりも,それは相関的にここでも見るべきではないかという御意見が多いかなと承知をいたしておりますけれども,特に第2層でキーワードになっているところは軽微というところがあるわけですが,軽微性について,これも目的で判断すべきというふうな御意見になるのかなとも想像しておるわけでございますが,軽微の問題ですよね。所在検索サービス,それから情報分析サービスにおける軽微性の問題について,何か御意見いただけませんか。

【龍村委員】軽微性という問題とはやや角度が変わるのかもしれませんが,通常,目的の正当性と対になって,態様の相当性を問題にするのが法律上定番の用語だと思いますが,態様の相当性も厳しく取れば,必要にして十分なところに限定されることになり,強く絞り込みむ場合もあれば多少やわらかにする場合もあるでしょうが,ここではそれだけでなく,本来的市場への影響がないという要素を取り上げ,更に踏み込んだ歯止めを問題にしていると思うわけです。

それと,更に御議論いただきたい点との関係にもなるわけですが,本来的市場の影響がないということでいえば,一般に,結果として表示されるものに何らかの非享受的な措置が施されているとか,あるいは既存の著作物利用を何らかの意味で阻害するような配慮がなされているとか,享受性を毀損,妨害する措置,享受の程度を下げる措置が施されるかどうかで判断に影響を与えることができるのではないか。それがまた軽微判断にも影響を与えるのではないか。例えば,画素数を抑える例に代表されるように,アイドルの写真の所在は示されるが,その写真に対してそのままではきれいには享受できない措置がされる,あるいは時間的な長さを持つフィルム,映像とかそういうものでも,途中で画像自体を曖昧な画像にするとか,あるいは辞書の各項目を出すにしても一部はマスキングが入るとか,そのような措置を施すのであれば肯定に傾くとか,そういうような判断基準もあり得るのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。ほかに。上野委員,お願いします。

【上野委員】この第2層につきましては,権利者に与える不利益が「軽微」であるということが権利制限の根拠とされているわけですから,権利制限するとしても,権利者に与える不利益が軽微なものにとどまることが結果として担保されるべきだとは思いますけれども,権利者に与える不利益が軽微と言えるかどうかは,目的との相関関係によって決まるものかと思います。

例えば,スター・ウォーズの映画シリーズ全編の中から,ある言葉がどこに出てくるのかという検索ができるサービスを提供するといたしますと,その言葉が登場する場所というメタデータだけを提供するという所在検索サービスも考えられますけれども,それに加えて,その言葉が登場する前後数秒の映像も見ることができるサービスとか,あるいは,その言葉が出てくる瞬間の静止画だけ見られるサービスとかが考えられます。このようなサービスが権利制限によって許されるとしましても,それは所在検索サービスという目的との関係では軽微に当たると言える可能性があるように思います。

しかし,これに対して,スター・ウォーズのエピソード2というのはどういう作品なのか概要を知りたいというユーザに対してその映画の一部を見せるというサービスまで第2層に当たるとして――そもそもそういうサービスまで「情報分析サービス」と言えるのか分かりませんけれども――,仮に権利制限によって許されるのだとしますと,そのような目的のためにユーザに見せることが許される映像の長さというのはかなり限定的にならざるを得ないように思います。このように,軽微か否かというのはアプリオリに決まるのではなく,目的に応じて決まるものではないかと思っております。

以上です。

【土肥座長】大渕委員,上野委員の続きでお願いしたいんですけれども,特に軽微でですね。

【大渕座長代理】軽微です。軽微という要件は必要だと申し上げているのですが,どうすれば軽微になるかという具体的な手法としては,龍村委員が言われたとおり,一番簡単には画素を下げるなど,いろいろやり方があって,要するに享受代替にならないように,つまり,それをもってDVDを買わなくても見られるというようなことにならないようにすればよいのであります。結局は,市場代替性ないし享受がないような形にするということが図られればいいのであって,やり方は幾らでもあります。それをせずにそのまま代替させてしまったら,結局,所在サービスと言いつつ,TVEYEがそうだったかと思うのですが,結局,コンテンツ提供サービスになってしまうので,そのような意味では,個別の判断は難しいのですが,思想としてはかなりクリアなものがあるのではないかと思っています。

【土肥座長】今の点だと思うんですけれども,例えば5ページの下のポツが3つあるところの著作物の全部表示をするような場合も出てくる,俳句とか,そういうような問題のときには異論として当然出てくるんだろうと思うんですが,恐らく奥邨委員はそこについて。

【奥邨委員】結構です。大丈夫です。議事進行で結構です。

【土肥座長】いやいや,僕は奥邨委員に御発言いただけるものだとばっかり思って,目的において……。

【奥邨委員】すみません,それであれば,はい。私は,やはり目的との関係で見ざるを得ないということを繰り返しで申し上げてしまいますけれども,そうなると思います。逆に言えば,その目的のところで,先ほどから出ている概要を示したいというようなのは,そもそも今回の情報分析サービスにもなるのかなという気がいたしておりまして,その必要性が本来あるのかなということもあります。というのは,極端に言えば,映画の概要を知りたいんだったら,別に映像を見せなくても文章でも構わないわけですし,それから本来のトレーラーにリンクして飛ばせば,それで済むことです。ただ,その概要の中で何らかのキーワードなり,更に絞り込みをして,本来提供されているもの,既存にあるものでは足りないということで,こういう形でしか提供できないということで絞られていく。そうすると,結果的に軽微な部分になることもあるでしょうし,今まで提供されたものと違うことになるということもある。やはり目的との関係,そしてサービスの提供態様によって変化する部分,スライディングスケールだろうというふうに思っております。

【土肥座長】ありがとうございます。ほかにこの点,御意見ございますか。前田委員,お願いします。

【前田委員】軽微かどうかは目的との相関関係で判断するというお話があって,それは私もそうなのかなと思います。ただ,ちょっと考えなきゃいけないのは,目的との関係で判断すると,正当であるとされる目的との関係で必要最低限度にしなさいということは言えるとは思いますが,必要最低限にしても,絶対的に言って結構著作権者に与えるダメージが大きいというケースもあるだろうと思い,そのときにどうするのかということです。

そのときに,目的との関係で必要最低限度に抑えられているから,それでいいのだという考え方も一つあり得ると思います。目的の正当性が高ければ,そういうことというのもあるのかもしれません。

一方で,絶対的に著作権者の市場に与えるダメージが大きいという場合には,そのときには少なくとも第2層で考えているようなものではないという整理をするということも考え方としてはあると思います。5ページの一番下のところに「必要と認められる限度」だけで足りるのか,「軽微」ということも入れた方がいいのかというのは,そのあたりについてどういう考え方をとるのかというところとも関係するのではないかと思っております。

【土肥座長】ありがとうございます。例えば「たらちねの」という枕言葉を用いた短歌がどのくらいあるのかということになると,俳句でもそうなんですけれども,著作物の全体を示さざるを得なくなるような場合も出てきそうなんですが,それは目的との関係で考えてよろしいということでしょうか。

要するに,5ページの辞書・辞典,検索,こういう情報検索サービスを提供される事業者は,サービスを提供される方というのは,目的との関係で著作物の軽微な部分を表示するということが技術的にかなり難しくなるのではないかなというところも考えるわけでございます。例えば辞書・辞典の各項目や俳句等の著作物の全部表示,こういったものは軽微と言えないのかどうかということで問われているわけでありますけれども,それは例えばそういう枕言葉を使った短歌はどのぐらいあるのかということからすると,必要と認められる限度として認めるのかとか,こういうところなんですが,上野委員,どうぞ。

【上野委員】ネット検索に関する現行法47条の6も,どの程度表示してよいかということについて「必要と認められる限度」としか規定しておりません。例えば,文章のスニペットは何行までとか,画像のサムネイルはどれぐらいの大きさまでといったような具体的なことは何も規定していないわけです。そのような具体的な基準を法令に書くというのは,今後この規定の対象を拡大する場合はもちろん,現状においてさえ難しいと思います。

例えば,ある言葉が書籍内のどこに出てくるのかを検索できるサービスを適法にするとしても,辞書のようなものがその対象になる場合,結局,辞書の中のある項目の解説が全て表示されてしまうことになってもよいのか,という問題があります。そのような場合には,例えば,極端な話,表示はゼロで,その言葉の所在だけ,つまり何ページの何行にあるというメタデータだけを提供するというサービスしか許されない,と解釈する可能性もあり得るように思います。このような表示がゼロのサービスであっても,これを行うためには事前に書籍をスキャンしたデータベースを作る必要がありますので,現行法ではできないことになりますので,規定が必要になりますけれども,たとえ「必要と認められる限度」としか書かれていない権利制限規定を作っても,結果として許される出力はゼロだという解釈は十分あり得るのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】例えば5ページの下の方で言うと,絵画などは画質を下げて代替性をなくすことによって問題の発生を防ぐことができます。問題は俳句だと思うのですが,そこは個別で考えるしかないので諦めてしまうという手もあるかと思います。俳句の場合には最後の一文字だけ外しても余り意味がありません。ただ,それについて条文上決める必要もないし,現状においても47条の6でそのような問題が起き得るにもかかわらず,実際上法的紛争にもなっていないかと思います。そこは想定しつつも,基本思想だけ示して,最後はここにこういう俳句があることを示す所在サービスのための必要性と,それから不利益との相関関係でぎりぎりのところで決めるしかないかと思います。そこのところはしようがないから,最後は不利益を与えるからそのサービスをするなというか,サービスのために必要なのだから,ある程度我慢しようかというぎりぎりの判断をどこかでせざるを得ないのですが,そこは恐らく立法ではなくて解釈適用の場面だと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。それで,今までの議論を踏まえていって,どちらかというと本来的な市場への影響,あるいは目的の道しるべとか,所在検索サービスで言えば,そういう目的との関係で相関的にも考えていくという場合に,個別の事情から見ますと,権利者に不利益が生ずるおそれもあるのではないか。つまり,6ページのⅲですよね。こういう場合,例えば個別の事情に応じて生ずる不利益というものを配慮して但書を設けておくとか,そういうような必要性についてどのようにお考えなのか。あるいはⅳのところで拒絶の意思,オプトアウトの可能性といいますか,オプトアウトを設ける必要性があるのかどうか,こういう問題ですね。それから最後に,先ほどから出ている,今度は本来的な市場が形成されている場合,市場が形成されている場合において,この場合,権利制限規定というものはどういうスタンスをとるべきか。このあたりの議論をしていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。池村委員,どうぞ。

【池村委員】3のところ,最初の丸の2つ目の例で,アイドル写真集の例が載っていますが,個人的にはここはちょっとピンとこないところがあります。つまり,ここに書いてあるような観点で権利制限規定を適用するかどうかを決めてしまうと,結局,アクセスコントロール的なものを認めることに等しくなってしまうんじゃないかというような気がしております。むしろこの例というのは,次の4のオプトアウトの観点から考えるべきであって,そうした前提の下で,7ページの最初の丸で書いてあるまとめの文章に私は賛同します。

【土肥座長】ありがとうございました。オプトアウトで考えるとしても一定の場合という,そういう条件の下でという,7ページ目の丸はそういう前提の話ですよね。ありがとうございました。

ほかに。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】但書で,これは前の方の本則の方をどう書くかによって変わってくるわけですけれども,書きぶりによっては,権利者の利益を不当に害さないことというのを,但書を付けるということは必要だろうと思う。ただ,私はここに載っている3つのポツの例を但書に当てはまるものとするのは,違和感がどれもあって,このようなものを不利益という評価をすることですね,特に2や3については,先ほど前田委員からもありましたけれども,いわゆる販売戦略,経営戦略,マーケティング戦略みたいなものまで不利益を与えないという点を,著作法として評価していくということについては,やはり違和感を感じます。一般論として不利益を与えないというのはほかの規定でもあることですので,十分考慮に当たりますけれども,これらがその例とされることについては少し違和感を感じるというふうに思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。ⅲのところには点線の枠がありまして,更に御議論いただきたい点ということで,3つのポツには違和感を2人の委員によって示されているところでございますけれども,こういう権利者の利益を不当に害することとなるような典型的な例というのは,この3つの場合以外にどういうものがあるのかということも含めて御意見をいただければ更にありがたいと思いますが,いかがでしょうか。具体的な例は付けておいて。

【大渕座長代理】今回まさしく柔軟な規定と言っているところに関係してくるのですが,柔軟な規定というのは,先ほど述べたように細かく細切れにしなくていいという利点があることと,35条の但書というのは,まさしくこのあたりが全て吸収できるので非常に重要なものだと皆様お気づきだと思います。これは逆側にフェアディーリング的になっているという,よい例であります。先ほど出ていましたように,個別規定を設けても全てを想定することはできなくて,何か深刻な不利益を与えるようなものが出てくる可能性があるので,今は予想できないから但書で吸収するということにしなくてはいけないと思います。先ほどほかの委員の方がこの2つのポツには違和感があるということだったから,それは恐らく解釈適用の際には考慮されることになると思われます。このようなものは但書で吸収されるようなものに当たらないというのは,なるべくこの場で出しておいた方がよいかと思いますが,全部出すことはできないので,やはり但書でそこを吸収できるという枠組みを作ることが必要だと思います。

そのような意味では,但書的なもので吸収できそうなのが今のローマ数字の3のところと,市場が形成されている場合の5です。教育でもそうなるのかもしれませんが,市場が形成されている場合も一律に判断するのは難しいので,正当な利益を害することになるかどうかという判断の中に吸収される話ではないかと思います。あと大きいのはオプトアウトであります。嫌だったら出るということで,残っているということは黙示の許諾があるということになれば正当化根拠が強化されますので,このようなことを組み合わせていくと,細かく規定しなくても明確な形で利用者と権利者の大きなバランスが図られるようになると思います。

【土肥座長】ありがとうございました。オプトアウトに関して,送信可能化情報の場合だと割合対応しやすいんですけれども,いわゆる例えば印刷物等のそういうようなものの奥付に何か書いておくようなことで認めるのかどうかですね。このあたりが難しい問題になってくるんだろうと思いますけれども,これらの点についていかがでございましょうか。但書の必要性,あるいはオプトアウト,既に成立した市場の存在,こういうような問題について更に御意見を頂きたいと思いますが,いかがでございましょうか。森田委員。

【森田委員】このペーパーの読み方の確認ですけれども,ローマ数字3,4,5は,いずれも最後の丸で書いてあることは一律に扱うんじゃなくて,具体的な要素の一つとしてそういうことを組み込んで判断できるような制度設計が望ましいというまとめになっていると思いますので,それでいいんじゃないかと。何が入るか,入らないかについては,これは出来上がった条文の解釈問題として,法律ができた後も開かれていくということにならざるを得ないので,例えばローマ数字3の3つのポツについて,これがそれに当たるという意見も,それから疑念を表示した意見もありましたけれども,これはこの場でどちらに決めるというわけにはなかなかいかないんじゃないかと。最初に前田委員が適切にまとめられたように,著作権があるということを,著作権そのものではないけれども,それがあることを通じて一定の販売戦略とか,そういうものが保護されているとすれば,それも付随的な利益として考慮に入れることができないということを決めるわけでもないし,必ず入るというわけでもなくて,入り得るということを前提した上で全体の中で考慮していくということが適切ではないか。

それから,オプトアウトについても,仮にインターネット上の情報だとしても,必ずオプトアウトでなくちゃいけないということじゃなくて,それを考慮要素として入れることはあり得ていいんじゃないかというまとめになっていますし,5についても同じ,一律な基準じゃなくて個別の事情に応じてということでありますので。

さらに,先ほどの軽微ということについても,これは最終的に法律の文言に入れるかどうかということについては,これは審議会の意見がまとまった後での,事務局といいますか,立法段階の問題で,ここで確認されたことは,軽微という文言を仮に入れるとしても,それは独立のものでなくて,価値的,相対的なものであって,他の要素と相関の中で判断されるということを押さえておくべきだということで,それが押さえられてあるとすれば,文言があっても困ることはないでしょうと。あるかないかは法制上の問題で,そこはここで結論を出す問題ではないとしますと,結局は1番目の問題ですね。目的の問題と影響の問題というのが多分法律上の規定としては要件として入ってきて,他の要素は考慮要因として位置付けるということで良いかというふうに問われていて,それは良いんだということを前提に,その解釈としてどういうことが考えられますかということについて各人が意見を述べていると。そういう理解に至っていますけれども,そういうことであれば,解釈そのものについては収れんは多分見なくて,法律ができた後もいろいろな解釈が出てきて,むしろそういう解釈が柔軟に許容できる方が適当だというふうに私は考えます。

【土肥座長】ありがとうございます。今,森田委員がいみじくもおっしゃった3,4,5の最後の締めくくりのまとめのところについては,一定の場合にとか,適切な範囲にとか,個別的なとか,そういう個別の事情に応じてとか,いろいろ出ているわけですけれども,これは決して余裕を持ってこういう表現になっているわけでは多分ないんだろうと思うんですね。でありますので,本日この委員会の中で,具体的なイメージが形成できるような,そういう法文についてですけれども,形成できるような示唆,あるいは御意見を頂戴できればありがたいのですけれども,大渕委員。

【大渕座長代理】先ほど申し上げましたように,小さなローマ数字の3のところと5のところは但書で吸収になるのだろうと思ったのですが,オプトアウトの方は但書での吸収もあるのかもしれないが,現行の47条の6でオプトアウト的なものが一般条項ではなくて普通に書かれているので,それと関連して論じる必要があると考えています。一律かどうかは別として,これも但書に入れてしまうと,だんだん但書が肥大してきて分かりにくくなってしまいます。現行法のとおりにするかどうかは別として,オプトアウトはオプトアウトとしてもう少しクリアに出してもいいのかなというようにも思います。そもそもオプトアウトを認めるべきではないのなら,そう決めるべきだし,オプトアウトの部分まで但書に入れてしまうと,やや分かりにくいかなという気もします。

オプトアウトについては,所在検索とか情報サービスのバックエンドの使用にまでだめだと言う人はあまりいないでしょうから,オプトアウトが適用されるのは表示の部分だけなのでしょうが,表示は書誌情報だけにして,スニペットは出さないという理解でよいのでしょうか。自分の著作物をそもそも複製するなというオプトアウトではなくて,バックエンドはやってもらっていいが,表示のところはやめてほしいというオプトアウトだと理解してよろしいのでしょうか。

【土肥座長】今,御質問なんですけれども,ここでいうオプトアウトというか,拒絶する意思についての配慮として,どういうイメージを持ったらいいのかということでございます。

【秋山著作権課長補佐】事務局といたしましては,2層は表示に関わる部分の類型でございますので,表示に限った議論というふうに考えております。そういう御意見が前回もワーキングチームであったというふうに理解しております。

【大渕座長代理】そのような意味ではサーチエンジンも2層だけではなくて,主に2層の部分が問題になっているだけで,サーチエンジン自体はバックエンド部分もあるから,そこは1層で,1層プラス2層ということになるわけですね。サーチエンジンのために複製するという部分は1層だし,そうでなくて,表示する部分は2層とする方が分かりやすいかと思います。2層と言っていても,2層は表示部分だけで,2層を行うためにはバックエンドがないとできないわけでしょうから,そのようなことだと非常にクリアになるかと思います。

【土肥座長】ほかにいかがでございましょうか。でも,そういうことですよね。

ほかに何か。前田委員,お願いします。

【前田委員】いろいろ意見を出しておいた方がいいということで,オプトアウトについて若干申し上げます。一律にオプトアウトを認めることが望ましくないという話がありましたけど,そもそもの目的の正当性と権利者に与える不利益のところで権利者に与える不利益が軽微だという前提の下この権利制限規定が適用されることになりますので,そういう意味では,一旦権利制限規定が適用されるという話になっているときに,著作者にとって本来的な市場という観点からは守るべき利益はないというのが前提になっていると思います。でも一方で,著作権があることによって事実上守られていた利益というのが幾つかありまして,そういったものについても場合によっては配慮する必要があるときもあると思います。そのときにはオプトアウトという方向でそういう利益を守る手段を確保するのだと,そういう整理の仕方もあるのかなと思っております。

以上です。

【土肥座長】ほかにございますか。第2層に関しましてはよろしいですか。市場の存在の問題,そういったところもございますけれども,よろしゅうございますか。

それでは,またお気付きの点は後からお出しいただいても結構でございますけれども,第3層に入りたいと思います。公益的政策実現のために著作物の利用の促進が期待される行為類型として,本日のところはアの翻訳サービスのみを検討の対象といたしたいと存じます。イのところですね。これは法制・基本問題小委の方で取りまとめを行うということでございますので,イについては検討から外したいと思います。ア.翻訳サービスについて御意見を頂戴したいと思います。いかがでございますか。長時間になってお疲れになったのかもしれませんけれども,もうちょっとでございますので,是非。

前回,第4回でもここが議論になったんですけれども,余り十分な時間を割けることができなかったところであります。特に対象範囲の問題とか,なかなか議論が尽くされていないところでございますので,こういう翻訳サービスの正当性の根拠についても,恐らくこの委員の中において,まだ完全な一致が得られているとも思っておりません。コアのところは了解されているんだろうと思いますけれども,いかがでございましょうか。

森田委員,お願いします。

【森田委員】この問題については,多分議論は必ずしも収れんしていないところがあるんじゃないか。書かれているところから見ますと,観光立国とか,あるいは外国人材の受け入れといったような観点から権利制限を設けるとしますと,そういうことを目的とした場合に限るんだということで,観光とか,あるいは生活上必要と認める範囲とか目的とか,そういう目的で絞っていくということが一方で考える反面,ここで書かれていることは,範囲としては無償かどうかという点で区別するという。これは重なる範囲ということなのか,それともそういう目的だけれども,切り方としては無償かどうかで切るんだということだとすると過不足が出てくるわけでありますので,これをどうするかというのがなかなか難しいところだと思います。

無償ということでいきますといろいろなものが入ってきて,例えば,最近は博士論文は全部無償で公開したり,学術論文もデポジトリーに無償で公開したりしますから,あの手のものは全部,翻訳は自由にしていいということになりそうなんですが,それが観光立国や外国人材の受け入れという観点から正当化されるかというと,ずれがあるように思います。立法するときにはどちらかに決めなくちゃいけないんですけれども,その方向性というのは,必ずしも現時点では公正さがないとすると,仮に今回立法するとすれば,ある程度重なる範囲で限定的な形で要件を立てざるを得ないんじゃないかというふうに思います。

他方で,意見としては,ITなんかを使った一律的な翻訳というか,蓄積を伴うような翻訳については別にすべきだというような意見もあって,それは今後議論すべきだと思いますし,また,翻案の中で翻訳というものが持っている,つまり,異なる言語を用いる人々の間でのコミュニケーションツールとしての翻訳というものを著作権法の中でどう位置付けるかについてのむしろ本格的な議論をした上でどうするかというのが今後必要になってくるわけでありますけれども,今回はそこまでは行けませんので,仮に今回立法するとすれば,ある程度限定的な範囲で絞って立法するということにならざるを得ないんじゃないかという感触を私は持っております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございます。目的の関係でいうと,今おっしゃっておられたように,観光立国といいますか,そういう外国人に対するおもてなしのサービスということの著作権法的な態様ということだと思いますし,それから外国人の受け入れに伴う生命・健康等々に関する情報アクセスの促進の問題,このあたりのコアのところについては恐らく異論はなかったのではないかなというふうに思っています。したがって,そういうサービスを超えるようなところについて一つ御意見を頂きたいのと,先ほど森田委員がおっしゃった対象物ですよね,翻訳の対象になるものについて,公衆に無償で提供されているもの,提示されているもの,こういうところは目的との関係で絞り込んで,それでいいのではないかというような御意見が出ておりますけれども,大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】前者の方なのですが,今までは観光外国人,高度外国人材,あるいは日本に永住されている外国の方の生命・身体等の安全にかかわる災害情報等を念頭に置いてスピード感を持って議論を進めてきました。先ほどあったように無償で公開されている論文の翻訳というところまで話を広げてしまうと,非常に重要な難しい問題が出てきて大変なことになってしまうという気がします。切り方は難しいのですが,今まで想定されていたところに絞った上でスピード感を持って立法するのがいいのではないかと思っております。

それから,無償の点も,これは非常に分かりやすいメルクマールで,先ほどのものの範囲に限って無償であれば,比較的容易に立法ができると考えられます。そこを動かし出すと,また崩れてくるから,余り欲張らずに,手堅くスピード感を持って速やかにできるところに絞った方がよいのではないかというように思っております。必要に応じ,今後また手を広げていけばいいので,まずは当初想定されていた範囲に絞るのが良いというように思います。

【土肥座長】何分ここは著作物の本来的な利用を目的にしたところでございますので,今言われるように慎重にといいましょうか,謙抑的にといいましょうか,もしこれを広げようという,そういうニーズが出てきたときに,また考えていくということもあり得るんじゃないかなと思うんですけれども,上野委員,どうぞ。

【上野委員】この翻訳サービスに関しましては,ややネガティブなことを言い続けてきましたが,もちろん政策的に見ればこうしたサービスを可能にする規定を設けることが必要だろうとは思います。

ただ,コアの部分ではかなり高いコンセンサスがあるけれども,それを超える部分に広く権利制限が及ばないように何とかして限定をかけることができないかということが課題になります。具体的には,例えば,観光目的など目的で限定するとか,外国人向けのサービスに限定するとか,あるいは,日本語から外国語への翻訳に限定するとか,いろいろアイデアがあり得るわけですけれども,どのようにして限定するかという点がやはりとても難しいような気がします。とはいえ,東京オリンピックに向けても早期の解決が図られるべきだということであれば,何とかして一定の範囲で立法を進めるべきだと思います。

実際,先ほど森田委員からも御指摘がありましたように,現行著作権法でも,二次的著作物作成行為である翻訳・編曲・変形・翻案の4つの行為のうち「翻訳」は,最も大きな権利制限がなされております。例えば,現行法43条2号は,編曲・変形・翻案は許されないけれども,翻訳であれば許されるというものを掲げております。例えば,32条の引用もそうですし,31条の図書館複製等もそうです。また,41条の時事の事件の報道などもそうです。このように,翻訳に限って許されるという権利制限規定が少なからずあります。これはやはり,他人の著作物を映画化するとか,漫画化すると,編曲するとかというのと違って,翻訳するというのは,言葉の意味をそのまま伝えるという行為に過ぎないので,より広く許されてよいだろうという考えのもとに権利制限が相対的に大きくなっているのではないかと思います。そういう意味では,今回の翻訳サービスのように,翻訳について比較的大きな権利制限規定を作ることは正当化しやすいのかなという気はしております。

以上です。

【土肥座長】ありがとうございました。いただいた意見,特に基本的な考え方については異なったところはないと思います。森田委員にしても大渕委員にしても上野委員にしても,目的との関係で立ち上がりについては少し慎重な,そういうことが求められているのかなというふうに認識をいたしました。翻訳サービスについて更に御意見があれば伺いますけれども,なければ3層についてはこれぐらいにしたいと思いますが,ありますか。どうぞ,お願いします。

【前田委員】翻訳サービスについて,少しだけちょっと違った観点で御指摘しておきたいのですけれども,著作権の権利制限規定として一定のものにこれを設けるのはよろしいのですけれども,翻訳することが同一性保持権との関係でどうなるのかというのは議論しておいた方がよろしいのかと思います。例えば,先ほど出た論文の例などでいうと,それを翻訳するときには,同一性保持権の問題というのは正面から出てくる可能性はあるのかなと思います。一方で,パンフレットとかそういったものの翻訳サービスにおいては,例えば,仮に改変に当たるにしてもやむを得ないものであるとか,そういった話にしやすいのかなと思っております。このあたりをもし立法化するに当たっては議論として整理しておいた方がよろしいのかと思いました。

【土肥座長】この点について,御意見ございますか。大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】翻訳のみならず翻案も含め,変形する場合には,ほぼ常に同一性保持権の問題が起きてくるのでしょうが,翻訳,翻案等において,当該財産権の行使として正当化される範囲の中では,過剰なものはだめですが,翻案,翻訳というのは,やむを得ない改変ということで同一性保持権侵害にはならないと解されるということが一般論としてありますが,それを今回いじり出すと大変なことになってしまいます。そのような前提を念頭に置いた上でやれば,特に問題もなく同一性保持権の点も解消できるので,別に立法上はそこをいじる必要はないと思われます。今までやってきたのと同じような,一般論をここにも当てはめればよいと表明すれば,安心して皆さんに翻訳利用していただけるということになるのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございます。今の大渕委員の考え方をもって本委員会の議論とさせていただければと思いますけれども,何かこの点,いや,ちょっと待ってくれというようなお立場の方,おいでになりますか。よろしゅうございますか。翻訳という改変について,同一性保持の問題はやむを得ない改変という,そういう整理の中で理解するということでよろしゅうございますね。

そうすると,2層について,時間がまだございますので,きょうは12時半までのセットになっておりますので,本来,最初は12時までだったんですけれども,30分,議論が延びるのではないかということで事務局の方で予想していただいて,こういう時間設定になっておりますので,どうぞ,どの点でも結構でございます。1層,2層,3層,先ほどの2層についていただければありがたいんですけれども,どの点でも結構でございますのでお出しいただければ,奥邨委員。

【奥邨委員】先ほどの同一性保持権の整理のことに対して反対意見を述べるわけではなくて,より一般化すると,たしか23年の報告書の場合には,C類型全般について,もちろん配慮しなければいけないところはあるんだけれども,人格権上の問題は,基本的には普通にやって,ここで考えているような関係においては問題がないというようなまとめが付いていたかと思うので,それと同じ意味で,さっきの翻訳のところだけ取り出して,それについて確認をしてしまうと,それ以外のところはむしろどうだったんだということになると思うので,細かく読み切っていないんですけれども,23年のところでも,基本的には,もちろん特殊な使い方をすれば別だけれども,同一性保持権の問題であるとか,人格権についてはある程度の検討がされていたと思うので,それを大きく変えるような状況は,今回はそもそもがC類型とも延長上の議論,ある程度関係する議論かと思いますので,大きくは違わないということで,今のような,先ほどのまとめのような形で整理できるのではないかなと,ちょっと漠然としたことですけれども,一言付け加えておきたいなと思いました。

【土肥座長】ありがとうございました。大渕委員。

【大渕座長代理】今の話に関係して,例えば表示を必要最小限に抑えるために画素を落とすと,同一性保持権の侵害問題につながりますが,これはやむを得ない改変ということになってきます。同様なことはいろいろなところに出てくるかと思いますが,そこは一般論のとおりだということであります。たしか23年報告書でもそれで処理したので,恐らく必然的に伴うものは問題ないということだと思います。そこはもう一回よく検討した上で,最後には23年報告書にさらに内容を付け加えて,皆様にご安心していただくのがよいのではないかと思います。

【土肥座長】ありがとうございました。いみじくも23年のときの議論,侵害報告の話が出ておりましたけれども,そういう意味ではリバース・エンジニアリングですね。この問題もそのときに出たわけでございますけれども,今回ワーキングで,3ページの一番下のポツのところにリバースが入っております。これはC類型に該当し得るという考え方が示されていることを踏まえれば,第1層に当たるということで整理をしていただいているところでございますが,これはこういう整理でよろしいのか。大渕委員,どうぞ。

【大渕座長代理】これは是非とも実現していただければと考えております。私は,現行法の中でも読めるのかもしれないし,最低限C類型の一つであると考えています。そもそも,著作権法においては表現は保護するが,アイデアは保護しないということですが,アイデアを得るためのリバース・エンジニアリングについて,この点が権利制限の対象になることがきちんと示せていないというのが,我が国著作権法にとっては一つのマイナス点だったと思います。今までもリバースで侵害になるといって訴訟になっているわけでもないかと思うのですが,たしか24年改正のときには,A,B,C以外にはパロディーとリバースは先送りにしていたかと記憶しております。私はパロディーは32条で読めると考えますから現行法でよいのですが,リバースのところも問題をなくしておけば,これでほぼ大どころのところが片付きますので,ここはしっかりとした形でクリアに出していただければと思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。ほかにリバースについて御意見ございませんか。この3ページのところに書いてあるんですけれども,「技術検証などプログラムの機能の享受のために行われていないもの」,そういう限定がくっついておりまして,技術検証を超えるようなものについて,何か御意見ございませんか。つまり,競合製品を開発するためにとか,そういうような目的でリバースを行うような場合についての御意見が頂戴できればありがたいんですが,いかがでしょうか。

【大渕座長代理】今,言われた技術検証というのは意味がやや不明確なので確認させていただけますでしょうか。私が主に思っていたリバースというのは,画期的なプログラム作成のためのアイデアを得る,いいプログラムを書くという目的が問題になったかと思います。それはアイデアをとるためであって,表現を享受していないことは間違いないし,それ自体として演算をするということでもありません。それ以外にインターオペラビリティなどもありましたが,全て享受はしていないのではないかというように思います。23年のときは侵害発見のためなどと細かく一個一個分けましたけど,全て含めて非享受の,非知覚かもしれませんけれども,第1の中に入れたらよい,ないしは第1の中にむしろ典型的に入るようなものというように思っております。

【土肥座長】いかがでしょうか。この点。3ページのところの「技術検証など」というふうに,この「など」というのは何か意味があるんですよね。

【秋山著作権課長補佐】いや,これは特に,これに限定しようという趣旨ではありません。

【土肥座長】大渕委員が言われたように様々な目的も含むということですか。

【秋山著作権課長補佐】はい。

【土肥座長】なるほど。それはいろいろ議論が出るかも。23年のときはそこまで考えてなかったと思うんですけれども。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】今,23年のを見ると,23年の機能を享受しないで出しているのは,オブジェクトコードの場合,表現を享受しないと言ってしまうと,全て表現を享受しないということになってしまうので,オブジェクトコードの場合は機能を享受しないという書きぶりになって,その例がここで出てきている……,少なくとも機能を享受しない,技術検証はちょっと遠いところにありますけれども,機能を享受しないところはそうなので,そこまでここのところで読み込むのは,まとめとの関係もあって狭いのかなと。もう少し広いものが私は23年の時点では入っていたのではないのかなとは思うんですけれども,ちょっとこのまとめと整合しているのかどうか,今にわかには分からないのですが。

【土肥座長】ありがとうございます。23年のときの報告は,どの程度のことをまとめていたのかについて,私も手元に何も持っていませんので,定かのことは申し上げられないんですけれども,逆に言うと,23年報告で考えていたようなスコープについて,ここでは言っているということでよろしいんですか。23年報告が考えているようなリバースの許容性について言っていると。

【秋山著作権課長補佐】申し訳ありません。その23年の報告書もどういう趣旨,認識の下でそのようなまとめになったのかということも,必ずしも詳細に私どもで理解し切れているところではございませんで,今回改めてリバース・エンジニアリングの関係で少し御議論を頂ければということを考えております。

【土肥座長】今回改めて。

【秋山著作権課長補佐】改めてといいますか。

【土肥座長】分かりました。改めてということでございますので,是非御意見を頂ければと思いますが,いかがでございましょうか。大渕委員はお考えをお示しになっておりますけれども,例えば大渕委員がおっしゃるような,そういうリバースを想定しておいてよろしゅうございますか。

【龍村委員】技術検証にもいろいろあり,結果としての享受の有無で判断するということもありますが,目的からのアプローチもある。例えばセキュリティ対策とか,障害の発見,あるいはプログラムの相互運用性の確保,確認とか,そういうようなものは入ってくる。ニーズ募集のときにリバース・エンジニアリングといって他目的に利用しているケースもありましたが,そういうものは外れる。

【大渕座長代理】「タ目的」の「タ」は,「多い」ですか。それとも「ほかの,アザー」ですか。

【龍村委員】アザーです。例えば保有プログラム資産の検索とか整理とか,そういうところになると行き過ぎだろうという理解です。

【土肥座長】奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】私も大渕委員の御意見と基本的には同じで,アイデアを取り出すということにおいて利用している限りにおいては,このC類型の中に,C類型の定め方次第ではありますけれども,取り込んでも構わないのではないかなというふうに思います。昔々の議論と違ってくるのは,プログラムについてある程度特許が認められて,もちろん今アメリカどうだとか,いろいろ議論があるとしても,少なくとも日本においてはそれとの兼ね合いがありますので,このリバース・エンジニアリングが昔々に,20年前ぐらいに大問題になったときとはかなり状況が違って,著作権法の大原則に照らしてアイデアを利用すること自体は,いわゆる表現を享受しない利用であるというふうに整理しても,それほど関係者の方に対する影響というのは大きくないのではないかなと。それについては,特許なりなんなりで十分保護される部分があってバランスはとれるのではないかなというふうに思っております。

昔の議論は,プログラムについては特許権による保護が難しいということを前提にしながら,そこを余り口では言わないけれども,頭の中に入れながら議論していたようなところがあってちょっと難しかったかなと思うんですけれども,その辺は,今はかなりきれいに整理できているので,むしろ著作権法の原則を曲げない方向で整理した方がいい,特にC類型自身もまたそれを無理にゆがめてしまうと,C類型自体がゆがんだ形に読めてしまうところもあると思うので,素直に整理していいのではないかなと私は思っております。

【土肥座長】ありがとうございました。きょういただいた意見を基に次回まとめの案を,きょうは骨子案でございますけれども,次に案を作っていただきたいなというふうに思っておりますので,このリバース・エンジニアリングについても,本日の意見を参考に取りまとめいただければというふうに考えております。

そのほかの点で何かございますか。よろしゅうございますか,全体的には。大体いただいた御意見を参照いたしますと,大体骨子案で考えられているところに御了解いただいているんだろうと思いますけれども,ただ,例えば目的の正当性との関係,それから……。ちょっと今,舞台裏で失礼しました。1層のところでありますけれども,既存のものとの関係なんですよね。既存の権利制限規定との関係なんですが,ここについては,4ページの一番上の丸ですね。これですけれども,既存の規定との関係をどのように整理するべきかについて,規定の予測可能性と柔軟性のバランスに留意しつつ検討するのが適当であると。これは本ワーキングでもそのように認識しておるわけでありまして,ただ,その姿というものが現在又は将来のニーズに十分対応できるものになるように,既存の規定との関係を十分留意して柔軟な権利制限規定の形でまとめていただければというふうに思います。だから,基本は従来のようにばらばらではないということになるんだろうと理解しております。

ほかに何かございますか。よろしいですか。

基本は,2層に関して申しますと,本来的な市場への影響の問題,それから目的の正当性,そういう総合的な,相関的な判断から,例えばオプトアウトの問題とか,但書の問題とか,そういうところを取りまとめていただくというところが特にお願いしたいところでございますけれども,それ以外のところは本ワーキングチームの御意見としては御了解を頂いたというふうに思っております。したがって,次回は本ワーキングチームとしての最終的な取りまとめに向けた議論をしたいと思っておりますので,きょうの御意見を踏まえていただいて案を作成していただければと思います。その点,よろしくお願い申し上げます。

それでは,今回の本ワーキングチームの議論は以上といたしますので,事務局から何か連絡事項がございましたらお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】次回会合につきましては,日程調整の上,追って御連絡したいと思います。ありがとうございました。

【土肥座長】それでは,本日は,これで第5回のワーキングチームを終わらせていただきます。ありがとうございました。

──了──

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