議事録

著作権分科会 私的録音録画小委員会(平成20年第4回)議事録

日時:
平成20年10月20日(月)
13:00~13:40
場所:
旧文部省庁舎 講堂

出席者

(委員)
石井,井田,大寺,大渕,華頂,亀井,河村,小泉,小六,椎名,津田,筒井,苗村,中山,野原,生野,長谷川の各委員
(文化庁)
高塩文化庁次長,山下著作権課長,川瀬著作物流通推進室長ほか

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)制度のあり方について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【中山主査】 まだ若干の委員の方がお見えではありませんが,時間ですので,始めたいと思います。ただ今から文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第4回を開催いたします。本日は,ご多忙中お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
 いつものことでございますけれども,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方々にはご入場いただいておりますけれども,このような処置でよろしいしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】 ありがとうございます。
 それでは,本日の議事は公開ということにいたしまして,傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
 議事に入ります前に,配布資料の確認と,事務局に人事異動があったようでございますので,併せて紹介をお願いいたします。

【高橋室長補佐】 事務局に人事異動がございましたので,ご紹介いたします。
 関裕行文化庁長官官房審議官,7月11日付で国立教育政策研究所教育研究情報センター長からの異動でございます。

【関審議官】 関でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【高橋室長補佐】 続きまして,本日の配布資料を確認させていただきます。
 お手元に本日の議事次第をお配りしておりますが,議事次第の下半分に本日の資料名を書いてございますので,そこをご覧いただきながらご確認いただきたいと思います。本日の資料は2点でございます。資料1といたしまして,「平成20年度私的録音録画小委員会の議論のまとめ 骨子(案)」でございます。資料2といたしまして,「著作権保護技術と補償金制度について(案)」及び「私的録音録画補償金制度の具体的制度設計について(案)」に関する議論の概要でございます。
 以上2点でございます。不足等がございましたら,お教えいただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。

【中山主査】 よろしいでしょうか。  ありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。
 まず,事務局より資料の説明をお願いいたします。

【川瀬室長】 それでは,お手元の資料1と資料2に基づきまして,ご説明をさせていただきたいと思います。
 資料1が,本日の議題でございます「平成20年度私的録音録画小委員会の議論のまとめ 骨子(案)」でございまして,事務局で作成させていただきました。ご承知のとおり,7月10日,前回の会議以来,非公式に事務局では妥協点があれば新たな提案をするということも視野に入れまして,関係者のご意見を承ってきたところでございます。しかし,残念ながら現状では,新たな文化庁提案と言いますか,新たな妥協を模索する提案は出させないという状況でございます。
 一方,今期の委員の任期も迫ってまいりましたので,そろそろ現状を前提とした,今期の取りまとめに移られてはいかがでしょうか。なお,事務局としましては,今後も話合いの解決を目指しまして,引き続き調整に努力をしていきたいと考えております。
 それでは資料のご説明に入ります。
 まず,資料1「平成20年私的録音録画小委員会の議論のまとめ骨子(案)」の性格でございますけれども,通常,文化審議会著作権分科会の各小委員会では,中間まとめというものを公表させていただきまして,それに意見募集の結果を踏まえ,さらに議論していただいた後,最終的には一つの報告書にまとめるのですが,私的録音録画小委員会におきましては,様々な議論がございました関係で,昨年の10月に中間整理という形で,それぞれの議論の進捗状況と,意見の概要について整理をしたペーパーをまとめさせていただきました。
 先ほど言いましたように,それ以後の議論において合意が成立しなかったという現状でございますので,私ども事務局としましては,中間整理は中間整理として置いておきまして,それ以降の審議の経過等には「今期のまとめ」という形でまとめさせていただきたいと考えております。したがって,中間整理に加えて「今期のまとめ」というものをまとめまして,中間整理と「今期のまとめ」を通読していただくと,審議の経過,内容,議論の視点等が分かるようにしたいと考えております。
 そういう意味で,第1章の私的録音録画補償金制度の見直し,第2章の著作権法第30条の範囲の見直しは,中間整理でもそのように分けて整理しておりました関係上,そのそれぞれ1節に中間整理の概要ということで概要をまとめさせていただくということで,議論の流れが概括できるようにしたいと思っております。
 第1章の第2節につきましては,昨年の12月18日から今年の1月17日,また,5月8日にわたりまして,文化庁で様々な提案をいたしましたので,それに関する内容と解説等について整理するということにさせていただければと思います。
 それから,第3節は私的録音録画補償金制度の見直し案に対する意見ということでございます。資料2は,文化庁が5月8日に具体的な提案をいたしまして,それに関わる5月8日と7月10日の出席者のご発言をまとめた議論の概要というペーパーでございまして,ここで関係者のお考え等について発言がされているわけですけれども,それをさらに整理して,意見を概括した形で,この3節のところにその見直しについて論点ごとに整理してはどうかということでございます。もちろん結論が出せなかったわけでございますから,その点については両論併記という形になると思います。
 それから,第2章の著作権法30条の見直しでございますけれども,中間整理と同様に,まず第2節として違法録音録画物,違法配信等からの私的録音録画,これは昨年の12月に中間整理以降の意見募集の結果を踏まえまして,さらに議論がされているわけでございますけれども,そういうような集中的な検討も踏まえ,対応策をまとめたいと考えております。第3節につきましては,これも同様に12月の時点で議論がされておりますので,その議論も踏まえて,その方向性について整理したいと思っております。
 最後に,第3章の今後の進め方でございます。私的録音録画問題につきましては,様々な議論を経て今期結論を得るというわけはいかなかったという状況でございますけれども,事柄の重要性から今後も引き続きこの問題については検討をしていく課題だと私どもも認識しております。したがいまして,今期の小委員会としては一応終りになるということでございますけれども,今後どのようにしてこの課題の検討を進めていくのか等につきまして,対応方法をまとめたいと思います。
 この問題については,話合いというものが重要になってくるわけでございますけれども,関係者の協議の場をどういう形で設けるのかということも,大きな課題というふうに承知しております。現時点において事務局としては具体案はございませんけれども,関係者とも協議をしながら,今後の進め方の方向性については,まとめの段階で考えていきたいと思っております。
 なお,参考1,参考2は,中間整理にも関係団体の様々な調査等を踏まえて,違法配信等からの私的録音録画の現状について記述しておりましたが,それ以降の新しい調査もございますので,参考1としてバージョンアップ版を作りたいと思っております。また,この問題に関する海外の動向につきましても,中間整理以降,海外で幾つかの動きがございますので,それを踏まえて記述をし,参考2として添付資料として掲載したいと思います。
 なお,私どもとしましては,この「平成20年私的録音録画小委員会の議論のまとめ 骨子(案)」につきまして,ご議論の上,ご承認いただければ,直ちに原案の作成に着手させていただきまして,11月末ないしは12月初めに会議を開催していただきまして,報告書をまとめたいと考えております。
 以上でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。
 それでは,事務局の説明につきましてご意見,ご質問ございましたら,お願いいたします。
 はい,生野委員。

【生野委員】 これまでご報告いたしましたとおり,ネット上の違法流通による音楽権利者の被害は非常に深刻であり,その被害は今後ますます増大することが見込まれます。この問題の解決なくして今後の音楽産業はビジネスが立ち行かなくなる,これは明らかであります。資料1の第2章第2節,「違法録音録画物,違法配信からの私的録音録画」につきましては,補償金制度とは切り離して,速やかに法改正を行って頂きたいと考えます。
 日本レコード協会といたしましては,法律が改正された場合,円滑に運用されるように,利用者保護の観点から,その対策を他の権利者団体や行政機関などと連携しながら,積極的に行っていく所存であります。対策の大きな柱といたしましては,「著作権教育・啓発活動の推進」,「適法配信識別マークの普及促進」,「法的対応」,それから「技術的対応」の4つを考えております。
 まず,第1に「著作権教育・啓発活動」についてですが,「違法サイトからのダウンロードをしてはいけない」というルールは非常に分かりやすいため,学校での著作権教育を通じて,特に若年層の著作権意識を十分に喚起できると考えております。また,日本レコード協会はこれまでも「Respect Our Music」キャンペーンや「携帯音楽を守りたい」キャンペーンなど,新聞やテレビなどを通じて著作権啓発活動を進めておりまして,今後も文化庁などとも協力しながら,法律の周知に努めたいと考えております。
 なお,法改正が行われた場合は,より直接的に違法サイトからのダウンロード自体が違法だと言えるために,「かくあるべき」から「当然のこと」として啓発できるようになるので,これまでより一層の効果が望めることと考えます。
 2点目の「適法配信識別マークの普及促進」につきましては,4月3日のこの小委員会でもご報告させていただきましたとおり,当協会は本年2月から「エルマーク」,識別マークの運用を開始いたしました。現在把握している音楽配信事業者157のうち既に153の音楽配信事業者に対応していただいておりまして,サイト数は888に上っております。今後,映画配信事業者も順次対応予定であると伺っておりますので,消費者保護の施策が着実に進んでいるものと考えております。
 3点目の法的対応につきましては,当然のことながら違法にアップロードされた音楽ファイルの削除要請と,悪質なアップローダーへの法的対応の強化を図るとともに,違法にアップロードしたユーザが行うダウンロードに関しても併せて押さえていくなどの措置を講じていきたいと考えます。
 最後の技術的対応につきましては,ユーザが違法であることを知らずにファイルをダウンロードすることを防止するために,どのような技術的措置が可能なのか,携帯キャリアなどと協力して検討を進めていきます。
 以上のほか考えられる対策を,可能な限り,権利者として不退転の決意で行っていきたいと思いますので,冒頭申し上げましたとおり,法改正をぜひ迅速に行っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。
 ただ今のご発言は,従来主張されていたことに付け加えるものは特にないですか。従来のご主張と同じですね。

【生野委員】 はい。基本的には。

【中山主査】 つまり,この新しい報告書に新たに書き加える論点は別にないですね。

【生野委員】 はい。

【中山主査】 分かりました。  ほかに何かございましたら。
 どうぞ,華頂委員。

【華頂委員】 生野さんから,今,違法ダウンロードの件をお話いただいたんですけれども,意見を言ってよろしいでしょうか。

【中山主査】 はい,どうぞ。

【華頂委員】 9月18日に京都府警が著作権侵害の疑いで仙台市在住の男を逮捕したことは皆さんもご存じだと思います。この男は日本で未公開の洋画にご丁寧にも日本語字幕をつけて,ファイル交換ソフトのWinnyを使ってインターネット上に不正に流通させたわけです。いわゆる違法アップロードに対する容疑なんですけれども。その大本となる未公開作品の映像は,何者かによって海外の映画館で盗撮されて,P2Pソフトによって海外でインターネット上に流出した違法複製物を,この男がダウンロードして入手したわけです。要するにダウンロードした映画の違法複製物を加工して再アップロードしたということですね。
 何が言いたいかと申しますと,2点あります。まず第1のポイントは,著作権侵害を引き起こす違法アップロードと違法ダウンロードは,今申し上げたように,今や密接に関連しているという事実です。どちらか一方の違法行為を取り締まるだけでは,インターネット上のコンテンツ流出を正常化することは非常に難しい時代になっていると思われます。もう一つのポイントは,我々は,この事案もそうですけれども,警察との連携も含めて日々自助努力を重ねているということです。違法ダウンロードが違法化となれば,生野委員のご発言のとおり対策もいろいろありますが,それに対応して自助努力を継続していく用意があるということです。
 先ほどLマークについて,生野委員から映像の方にもということだったんですけれども,映連加盟社の自社配信サイトも含めて,番組を供給している配信事業者に対しても,順次表示していく予定であります。音楽と同様に映画の著作物もインターネットにおける違法複製物の不正な流通によって甚大な被害を被っておりますので,違法ダウンロードの違法化を一日も早く実現してほしいと切に願っております。
 以上です。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。
 よろしいでしょうか。
 それでは,先ほど川瀬室長がおっしゃったような方向でとりまとめをするということでよろしいでしょうか。
 どうぞ,津田委員。

【津田委員】 1年前の議論の繰り返しというか,あえて繰り返しになってしまう部分があるんですが,僕は30条の変更に関しては反対です。懸念が2つあって,1つは,生野委員とか華頂委員のおっしゃる海賊版に対して,それが正規のコンテンツビジネスを阻害しているという,僕もそういう認識には同意します。それに対して何らかの対策が必要であろうということも全くそのとおりだと思います。ただ,30条をこういった形で変えることによって,この後の数年の流れとして,知財保護の中で30条の制限というのが全ての著作物に適用されてしまうことを非常に懸念しています。
 今回こういう形で30条が来年の通常国会で通って,録音録画に限定してダウンロード違法化が実現するという形になれば,現実問題として,法制問題小委員会ではゲームもそれに含めてくれという話にもなるでしょうし,ほかの著作物はどうなるんだと。ダウンロードを違法化している国は欧米などでもありますけれども,録音録画という形で限定するのは日本だけという,ある種ちょっといびつな状況になっている中で,写真の著作者協会がそれも含めてくれというようなことを言い出してくることは十分考えられる。
 そういう状況を踏まえたときに,僕が懸念するのは,インターネットという情報技術,テクノロジー自体が他人の著作物をオンラインでコピーしてしまうがゆえに,違法なコンテンツに触れてしまわざるを得ないところがあると思うんですよ。検索エンジンなどが象徴的だと思うんですけれども,ネットのサービスは情報取得の利便性を上げるために,著作権的にグレーなところをあえて越えてしまうサービスが出てきているわけです。
 例えば,今,若者だとなじみがあるmixiというソーシャルネットワークのサービスでは,動画を張り付けることもできますし,動画をそこでダウンロードすることもユーザにおいてできる。あとは,mixiの中のモバイル版のサービスというのがありまして,携帯電話で他人のmixi以外のブログを自動的に取り込んでしまって,それを表示するという機能もあります。あれは他人のブログまで勝手にとってきて,mixiのサーバ上に変換してしまっているので,あれも厳密にいけば公衆送信権の侵害という形になると。
 そこには画像なども置かれているわけで,そういったものもユーザインターフェースの中で,利便性の中で,mixiのユーザというのは他人の日記を見る感じでブログを見ているわけですから,それがまさか違法なものだというのは気付かない。「情を知って」という要件があるにしても,著作権は常にグレーな状況で,利便性を高めるために違法な状態に置かれる著作物を取得している可能性は非常に高くなっているという状況がある。デッドコピーに関しては対策すべきだと思います。ただ,やるのであれば本当に実効性のある方法でやるべきでしょうし,現実的に対策をするということであれば,実効性があるというのは,プロバイダ責任制限法とか,そこの発信者情報開示請求の見直しとか,もっとほかにやるべきこと,実効性の高いものあると思います。
 先ほど生野委員から,このままだと音楽ビジネスが立ち行かなくなるというお話がありまして,確かにそういった面はあるとも思うんですけれども,例えばアメリカに目を向けてみたら,9月の終りぐらいにmyspace musicというサービスが始まりまして。それはどういうサービスかというと,ソーシャルネットワークサービスなんですけれども,myspace musicが世界で非常にシェアが高い4つのレコード会社全てと契約して,ユーザが無料で音楽を自分のページに張ることができる。500万曲以上あるカタログの中から自由に自分で他人に向けて無料で配信することができる。それはあくまでも合法的なビジネスで,それに対して広告スポンサーがいて,スポンサーが広告料を支払うことで著作権料をクリアして,ユーザはそのおかげで自由に張ることができるというサービスがある。
 そういった新しいものが出てきている中で,音楽ビジネスはネットという新しいメディアが出てきたところで,新たなビジネスモデルを,アメリカの音楽業界は日本以上にパッケージというのが落ち込んで,デジタルに移行しているからと,そういった状況の違いがあるというのは分かるんですけれども,そういったデジタル化の変化の波が訪れてきている中で,アメリカはユーザが自由に音楽を利用できるような環境を整えて,かつ,そこから先は正規の音楽を買ってくださいということで,アマゾンとかいったところに誘導したり,もしくはそこでライブチケットを買ってくださいと,そういったサービスを提供して,デジタルの世界で合法なコンテンツビジネスを行おうという形に,ビジネスモデルを転換しているわけですよね。
 そういった意味では,前の審議会でもお話があったと思いますけれども,海賊版対策の王道というのは,正規品をきちんと合法的に消費者が利用しやすい形で流通させた上で,デッドコピーに対してはきちんと摘発を行っていく,この組み合わせだと僕は思っています。そういう意味で,コンテンツビジネスのコンテンツホルダー側がやることをやった上で,悪意のあるユーザーを摘発するという形であれば,日本の消費者も納得すると思うんですが,今はmyspace musicみたいな,自由にいろいろなコンテンツを無料で楽しんで,アテンションを得た後にそこから購入するといった,消費者にとって非常に便利なサービスが日本に十分確保されているかというと,なかなかそうはなっていないという状況です。そういったことをやった上で30条の変更を考える,そういったことを総合的に考えていただきつつ,文化庁に対しての30条変更も含めてやるということを要望していただきたいなと。最後ということもあるので,権利者に十分考えていただきたいと思って発言させていただきました。
 以上です。

【中山主査】 ありがとうございました。
 今日はとりまとめですので,あまり議論をしても終りがなくなってしまうのですけれども,ただ今の津田委員のご意見は,こういうご意見もあったということは書き加えていただけますね。

【川瀬室長】 先ほど言いましたように,昨年の12月に意見募集の結果を踏まえて議論しておりますので,そういう議事の内容,それから,今日ございました意見交換と言いますか,そういうものを含めて適切に表現したいと思います。

【中山主査】 お願いします。
 はい,どうぞ,椎名委員。

【椎名委員】 今の津田さんのお話は,myspace musicとかmixiの利用の利便性までスポイルするかのようなお話に聞こえたんですけれども,そういう趣旨のものではないと思います。違法配信や違法複製物からの複製の違法化というのは,補償金制度の本体の議論とは別な話として,補償金制度をめぐる議論が決着しない中で,権利者の被る被害を少しでも少なくするという観点から重要だというふうに考えています。これによって現在の消費者の利便性に影響を与えるとも思われませんし,権利者が被っている被害を看過してまで違法化に反対することの正当性がどこにあるのか,全く理解ができないです。
 2年もの時間をかけてこの小委員会は全く結論を導き出せずにいるということを非常に残念に思っています。私的な利用における利便性の確保と権利の保護を調整するという,我々の住む世界にとって非常に重要で,かつ,今日的なルールを決めることを付託されながら,我々は何の結論にも至っていないわけですよね。そのような中でも,権利者サイドは地上放送のコピーワンスをダビング10へ緩和することについて,最大限の理解をもってその実現に協力しました。
 一方で,6月に鳴り物入りで報じられたブルーレイディスクの政令指定に関する経産・文科両大臣の合意は,4ヶ月もたった今になっても,とあるメーカーが抵抗していて,実現していないというふうに聞いています。メーカーは何年も前からの原則論をおうむ返しに主張しているだけです。こんな状態をいつまで続けるんですか。こういうやり方を続けていく限り,問題の本質は解決しないし,さらに複雑化していくと思います。現にメーカーの主張の中心である技術的保護手段と補償金制度の関係についても,DRMが補償金制度に取って代わるということをむしろ懐疑的に見るような議論まで,ヨーロッパで既に生れています。
 状況は刻一刻と変わっていくわけでありまして,この報告書に文化庁案なるものをそのまま書くことがどうなのかという気も若干しているところです。現行制度のまま,権利者の不利益が拡大し続ければ,将来に大きな禍根を残すものと考えています。また,この問題に限らず,ネット権とかフェアユースとか,権利者の権利を制限しようという話は今や目白押しですが,そこで制限される権利者の利益をどうするかという点については,どこを探しても実のある議論がないんですね。こういうような状況を続けていることが国益にかなうのかどうかということを,ナショナルプランを担うべき行政の立場と,社会的にも責任ある立場にいるメーカーは,今一度真摯に考えていただきたいと思います。
 以上です。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。
 生野委員,どうぞ。

【生野委員】 先ほど津田委員から,正規品の流通をしっかりやってから云々というお話がありまして,例としてアメリカのmyspace musicがどう機能しているかという話もありましたが,海外と比べて日本ほど音楽の正規品流通がしっかりなされている国はないのではないでしょうか。例えば,CDレンタルだって海外にはない,そういったシステムも日本にはあるということで,少なくとも音楽に関して,正規品に関していつでもどこでも簡単にアクセスできるような環境というのは,日本が一番進んでいると思います。
 いかにも日本が音楽の提供に関して遅れているような発言に聞こえたのですが,そういうことは決してないということを言わせていただきます。

【中山主査】 それでは,津田委員,簡略にお願いします。

【津田委員】 単純にインターネットというものに限定して話をさせていただければ,日本の音楽の正規流通という意味では,試聴というところに限っていうとほとんどが30秒以内に限定されているということと,ほとんどの曲が事前に試聴することができないという意味では,明白にアメリカと差があります。あくまでインターネットみたいな新しいメディアが出てきて,そういったものを捉えたときの正規流通というところの意味も含めた意味で言っております。

【中山主査】 生野委員。

【生野委員】 確かに日本は音楽配信の中で携帯電話向けの配信が圧倒的なウエートを占めている,9割占めていますが,ただ,これはインターネットか携帯電話かというプラットホームの違いだけで,どっちが多いから遅れているという話では全くないと思います。それぞれの国においてどういったプラットホームが支持されているのかは,国民性や支払方法の簡易さとか,様々な要因があって各国のこういう実態になっているわけで,特定の配信事業がアメリカと比べてあまり普及してないことを例に日本は遅れているというのは,議論をミスリードするものだと思います。
 もうこれでやめておきます。

【津田委員】 僕も最後に一言。まさにおっしゃるとおりで,今までのコンテンツビジネスというのは,国によって違っているというところでのローカリティーがローカルなところで守られていたし,そうでなったんですけれども,インターネットの世界というのはそれを超えていけますよね。そういったところで日本のユーザで海外の洋楽に興味がある人だったら,そういったサービスを使うと,素朴に消費者感情として何でアメリカではこういうサービスがあるのに日本はならないのと。それは日本とアメリカのビジネスモデルが違うからというのが合理的な理由かもしれないですけれども,納得できるかどうかと,そういう消費者感情の話をしています。
 以上です。

【中山主査】 はい,華頂委員。

【華頂委員】 議論ではないんですけれども,今,myspace musicというところのお話を聞いたんですが,映画はちょっとあてはまらないんじゃないかなと思いました。誰でもいつでも無料で視聴できるようなところに映画を丸々おきますと,その時点でその映画の市場価値は限りなくゼロに近づくんですね。そうすると次のマルチユースができないので,映画製作者としてはmyspace musicですか,そういうふうな方式のところに映画を放置することはあり得ないということです。

【中山主査】 はい,分かりました。  ほかに何かございましたら。どうぞ,長谷川委員。

【長谷川委員】 この件とは別な,今の椎名委員の発言の中の一言だけでございますけれども,ブルーレイの指定について,椎名委員の発言の中に意味不明なことがところがありましたが,事実だけ申し上げますと,私ども,文化庁の方からブルーレイの技術的な仕様について,政令指定に関する問いかけを受けておりまして,それに対してJEITAとして答えております。そういう状況にございますということだけお伝えしておきます。

【中山主査】 ほかに何かご意見ございましたら。
 よろしいでしょうか。
 先ほど言いましたように,今日は激論を戦わせて結論を出すという場ではございませんので,いろいろご意見を頂戴して,それをまとめとして報告書にしたいと思いますけれども,よろしゅうございますか。まあ出るべき意見は大体前回までには出ていると思いますけれども,よろしいですね。
 ありがとうございました。
 それでは,まだ大分時間は余っておりますけれども,本日の議論はこのくらいにしたいと思います。
 最後に何かございますか。はい,どうぞ。

【津田委員】 ちょっと事務局に確認をしたいんですけれども,パブリックコメントを中間整理の段階でやったんですが,今回またこの整理案に対してのパブリックコメントを行うんですか。

【川瀬室長】 私どもとしては,中間整理の段階で意見募集をしておりますので,今回は改めて意見募集を考えておりません。

【津田委員】 前回のパブリックコメントのときに反対の評価が多かったということも一つのメインだと思っているので,できればもう一度パブリックコメントを行っていただきたいなというのが,一点,希望としてあります。
 もう一つ,ダビング10の問題も今回この委員会にかなり影響を及ぼしたと思うんですけれども,次回以降の,先ほど川瀬室長から「どういう形になるか分からないけれども,継続的な議論が必要」というところで,これは文化庁だけの問題ではないと思うんですね,総務省も関わってくれば,知財本部でもこういった私的録音録画の議論もされていますし,経済産業省も関わってくるというところで,来年以降この問題に対して,30条の話ではなくて,iPodの課金なども全部含めて文化庁,総務省,経産省,知財本部,そういった関係省庁が共管という形で参加するような委員会というのを,そういう形で仕切り直しができないのかなということをぜひお願いできればなと思いました。

【中山主査】 室長。

【川瀬室長】 ご趣旨は,そういう代表の方が委員として就任されるということでしょうか。3省庁につきましては,様々な形を通じて意見の交換をしておりますし,それぞれの省庁間で意思疎通が図られてないというふうには私どもは理解しておりませんので,これからもこの問題は3省庁も含めて意見交換をしていくことだと認識しています。
 一方,先ほど私が言いましたように,この私的録音録画問題というのは非常に重要な問題でございまして,今期の小委員会で結論が出なかったとしても,今後も継続して検討すべき課題だと思います。そういう話合いの場で,どういうメンバーが会するかどうかにつきましては,これから関係者のご意見もよく聞きながら検討していきたいと思っております。

【中山主査】 今回は一定の結論とか方針を出してどうだということでないので,パブリックコメントといってもなかなか難しいのではないかと思いますし,違法録音録画物あるいは違法配信からの録音録画についてはもう既に行っておりますので,パブリックコメントをこの時点について行っても,同じことを2回聴くということになって,ちょっと難しいのではないかという気はします。  これは私がやることではないかもしれませんけれども,3省庁の話ですが,この審議会は法令に根拠を置いてやっているわけですね。3省庁で話合うことはできるのですけれども,これと同じようなことをやるとするならば,また法令の根拠に基づいてやらないといけないし,法的な組織を設けて議論するというのはあまり現実的でないような気がします。ただ,川瀬室長がおっしゃったように,例えばこの審議会に呼ぶとか,意見を聞くとか,話をするとか,それは十分できると思います。

【津田委員】 2005年に情報家電ネットワーク化に関する検討会というのが,総務省と経産省で,両方に関わってくるという形でそういった共管の委員会も開かれていて,こういった私的録音録画の問題は関係省庁が多いので,そういう委員会を開いた上で,委員の人選も含めてやるべきではないのかなと思ったので,意見として言わせてください。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。
 どうぞ,華頂委員。

【華頂委員】 事務局に対してなのか分かりませんけれども,先ほど椎名さんのお話にもあったんですが,ブルーレイの政令指定というのは,両大臣がダビング10の環境整備ということで合意されたという報道があったわけですね。その後,実際にダビング10は解禁されたわけですし,ダビング10が運用されているうちはブルーレイは補償金の対象機器であるという理解でよろしいんですね。素朴な疑問です。椎名さんの発言があったので,ちょっと心配になりました。

【中山主査】 現在課金されていますかという質問ですか。

【華頂委員】 いやいや,これから政令指定も粛々と行って,ダビング10が運用されているうちは政令指定を続けるというような理解でよろしいんですね。

【中山主査】 川瀬室長。

【川瀬室長】 誠に申しわけございません,椎名さんのご指摘のように,少し作業が遅れておりますけれども,経済産業省と私どもの間で今協議を進めているという状況でございます。その過程の中で,先ほど長谷川委員もおっしゃいましたように,JEITAに関して言うと,様々な技術的仕様等についてはご協力いただきまして,その面では大体決着というような局面に至っておりますので,少し時間を頂戴したいと思っております。

【中山主査】 それでは,先ほど話の途中で議論が入ってしまいましたけれども,事務局から何か連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【川瀬室長】 それでは,この場で私どものまとめの骨子案についてご承認いただけたということで,直ちに原案の作業に入らせていただきたいと思います。原案ができました場合には,関係委員にご提示しまして,その文言等を調整の上,先ほど言いましたように11月の末ないしは12月の初めにこの委員会を開いて,この委員会のまとめとさせていただくよう努力したいと思います。
 日程につきましては,改めて調整の上ご連絡したいと思います。
 以上でございます。

【中山主査】 それでは,本日はこれをもちまして,文化審議会著作権分科会の第4回私的録音録画小委員会を終了いたします。
 本日はありがとうございました。

―― 了 ――

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