文化審議会著作権分科会政策小委員会(第1回)

日時:令和5年11月17日(金)

14:00~16:00

場所:文部科学省東館13F1・2会議室

(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  • (1)政策小委員会主査の選任等について【非公開】
  • (2)今期の政策小委員会における審議事項等について
  • (3)放送条約の検討に関するワーキングチームの設置及び WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
  • (4)DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策について
  • (5)公正取引委員会「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」について
  • (6)その他

3閉会

配布資料

資料1
第23期文化審議会著作権分科会政策小委員会委員名簿(256KB)
資料2-1
第23期文化審議会著作権分科会政策小委員会における主な検討課題(案)(95.5KB)
資料2-2
「知的財産推進計画 2023」等の政府方針等(著作権関係抜粋)(2.8MB)
資料3-1
ワーキングチームの設置について(案)(324KB)
資料3-2
WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向(449KB)
資料4-1
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る現状、課題、論点(案)(466KB)
資料4-2
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る現状、課題、論点(案)関係資料(2.6MB)
資料5
公正取引委員会「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」(概要)(2.2MB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(346KB)
参考資料2
第23期文化審議会著作権分科会委員名簿(270KB)
参考資料3
第23期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(令和5年6月30日文化審議会著作権分科会決定)(275KB)
参考資料4
小委員会の設置について(令和5年6月30日文化審議会著作権分科会決定)(264KB)
参考資料5
令和4年度基本政策小委員会の審議の経過等について(227KB)
参考資料6
令和4年度国際小委員会の審議の経過等について(518KB)

資料2-1、資料3-1について異議なく、案の通り了承されました。

了承された資料については、以下の通りです。

資料2-1
第23期文化審議会著作権分科会政策小委員会における主な検討課題(95.3KB)
資料3-1
ワーキングチームの設置について(407KB)

議事内容

〇今期の文化審議会著作権分科会政策小委員会委員を事務局より紹介。

〇本小委員会の主査の選出が行われ太田委員が主査に決定。

〇主査代理について、太田主査より上野委員を指名。

〇会議の公開について運営規則等の確認。

※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【太田主査】それでは、準備が整いましたので、会議を公開の下に再開したいと思います。

傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださるようお願いいたします。

では、改めて御紹介させていただきますが、先ほど本小委員会の主査の選任が行われ、主査に私、太田が就任いたしました。また、主査代理として上野委員を指名いたしましたので、この旨御報告いたします。

また、本日は、今期最初の政策小委員会となりますので、議事に先立ちまして、中原文化庁文化戦略官から一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【中原文化庁文化戦略官】文化庁文化戦略官、中原でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。文化審議会著作権分科会政策小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

委員の皆様におかれましては、日頃より著作権施策の検討、実施に当たりまして、いろいろ御協力、御助言、御尽力を頂戴しまして、このたびは、また御多用の中、政策小委員会の委員をお引き受けてくださいまして、誠にありがとうございます。

この政策小委員会は、昨年度、基本政策小委員会にて議論されました、DX時代に対応した著作物の利用円滑化、権利保護、適切な対価還元に係る基本政策について、そしてまた、国際小委員会にて議論されました、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方について、一体的に御議論を頂戴すべく設置されたものでございます。

国境を越えてコンテンツが流通・利用され、また、コンテンツの提供の在り方も大きく変化する中、そうした現状に応じた対価還元方策の検討や、国境を越えた著作権の保護といいますのは、コンテンツの利用と創作の循環を最大化し、我が国の文化芸術の継続的かつ健全な発展を図る上で極めて重要なことです。

今期の政策小委員会における検討課題等につきましては、この後、確認されると思いますけれども、それぞれの御専門の立場から御審議を深めていただければ幸いでございます。

以上、簡単ではございますが、私からの挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。

【太田主査】ありがとうございました。

次に、議事2の「今期の政策小委員会における審議事項等について」に入りたいと思います。事務局に資料を準備していただいておりますので、まず、事務局から説明をお願いいたします。

【白井著作権課専門官】今期の政策小委員会における審議事項等については、資料2-1にございますとおり、本年6月30日に開催されました著作権分科会決定で主な検討課題とされました、DX時代に対応した著作物の利用円滑化・権利保護・適切な対価還元に係る基本政策、それから、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方、この2点を柱として御審議をいただけたらと考えております。

この点、資料2-2のほうも併せて御覧いただけたらと思いますが、知的財産推進計画2023においても、9ページあたりから、クリエイターへの適切な対価還元について記載がございまして、11ページを見ますと、競争政策、デジタルプラットフォーム政策、著作権政策、情報通信政策等の諸政策の動向や、国際的ハーモナイゼーションの観点等を踏まえながら、クリエイター・制作事業者への適切な対価還元や取引の透明性の確保、権利処理・権利保護においてプラットフォームが果たす役割、インターネット上のコンテンツ流通の媒介者である通信関係事業者の役割等をめぐる課題について、各分野の実態把握と課題の整理を進めるですとか、次のポツにおいても、コンテンツ配信プラットフォームや投稿サイト等における著作物の利用状況、対価に関する情報の透明性、契約当事者間の関係性、権利保護・権利処理において投稿サイト等が果たすべき役割を踏まえ、関連各分野の実態把握・課題整理の取組と連携しながら、検討を進めるとされております。

あわせて、17ページ以降から、海賊版・模倣品対策の強化について言及がございますが、例えば、19ページの3ポツ目ですが、海賊版対策に係る課題と適切な対価還元等に係る課題と併せて検討することが必要な領域への対応も含めまして、各分野の実態把握と課題の整理を進めるとされております。

以上です。

【太田主査】どうもありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえ、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。ございませんでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、資料2-1については、事務局から説明があった案のとおりとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【太田主査】ありがとうございます。それでは、本小委員会では、そのように審議を進めていくことといたしたいと思います。

次に、議事3の「放送条約の検討に関するワーキングチームの設置及びWIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について」に入りたいと思います。事務局に資料を準備していただいておりますので、まず、資料3について説明をお願いいたします。

【小林国際著作権室長】ありがとうございます。事務局でございます。

まず、資料3-1を御覧ください。先ほど御説明のありました今期政策小委員会の検討課題における著作権保護に向けた国際的な対応の在り方の一環として、主にWIPOにおいて検討中の放送条約の議論についても検討いただきたいと考えております。

放送条約に関しては、令和元年度から国際小委員会の下に設置したワーキングチームで、その対応の在り方について御議論いただいており、今年度も、本委員会の下にワーキングチームを設置して、集中的に審議を進めていただくことを提案させていただいております。

まず、1にございますとおり、ワーキングチーム名は、放送条約の検討に関するワーキングチーム、検討課題は、世界知的所有権機関にて検討中の放送機関の権利の保護に関する新たなルールづくりへの対応でございます。

2は、ワーキングチーム員の構成でございます。

ワーキングチームに座長を置き、座長は、政策小委員会の委員のうちから主査が指名すること。

ワーキングチーム員は、政策小委員会の委員のうちから座長が指名した者及びその他の者であって座長と協議の上で文化庁が協力を依頼した者で構成される旨、記載をしております。

3、議事の公開につきましては、冒頭御紹介した著作権分科会の議事の公開に準じて行うこととしております。

続きまして、WIPOにおける最近の動向について、資料3-2に基づき御説明させていただきます。

まず、今年の3月と11月に行われました著作権等常設委員会(SCCR)の結果概要です。

2ポツでございますが、SCCRは、著作権分野における国際調和について議論をする会議で、通常1年に2回開催されており、本年も2回開催されました。

議論としましては、これまでと同様に、放送条約、権利の制限と例外、その他の議題の3つの枠で議論が行われました。

まず、3ポツの各論です。

(1)の放送条約でございます。

アの経緯に記載のとおり、こちらは1998年から議論が続けられておりますが、近年、2020年から2021年の期間中に「外交会議」開催を目指すとの勧告が一般総会で採択されるなど、条約策定に向けた機運が高まっていたところですが、コロナ禍の影響で2年間実質的な進展がなく、昨年、約2年半ぶりに開催されたSCCRでは、条約案として、従前の複数並列的に記載されていた代案が統合され、代案のない形の議長テキストが示され、議論が行われました。その後、本年3月、9月のSCCRにおいて改訂版が示され、引き続き、加盟国間で議論が行われているところでございます。

イは、条約案の概要です。趣旨としては、放送番組のインターネットを通じた無許諾の再送信等を効果的に防止できるよう、放送機関に対して、「著作隣接権」または「適切かつ効果的な保護」を与えることを規定するものです。

最新版の議長テキストの特徴を簡単に御説明します。

①の受益者としては、テキストで示された「放送機関」の定義に当てはまるもの、すなわち、放送に対して、主導権を有し、編集責任を負う法人であり、放送機関のプログラムは、リニアなプログラムの流れを形成するとされております。

また、②で、保護の対象ですが、(1)放送機関が送信したプログラム搬送信号、(2)保存されたプログラムへのアクセスを公衆に提供するために放送機関が使用するプログラム搬送信号、これは、いわゆる見逃し配信等のインターネット上のオンデマンド送信に該当します。(3)の放送前信号、これはスポーツの試合会場から放送設備までの放送素材を含むような信号です。

そして、注釈にありますとおり、前回の第2版のテキストでは、この(1)から(3)について、放送機関がコンピュータ・ネットワークを用いて送信する信号を留保することが可能な規定となっておりましたが、EUを中心とした意見が反映され、最新テキストでは、留保がほぼ不可能であり、義務的保護とされております。

また、③、与えられる権利として、「再送信」及び「固定化」の禁止による保護があります。

続いて、ウの議論の概要です。第43回、第44回のSCCRでは、議長テキストに関する起草者からの説明後、インフォーマル会合を中心に議論が行われました。

主な論点としては、1つ目のチェック、受益者が伝統的な放送機関であることについてはコンセンサスが得られていることを踏まえ、放送や放送機関の定義がかなり広くなっておりますので、少なくともリニア送信に連動したものであることを明記して、定義を明確化する必要があるとの意見。これは日本からの意見であり、おおむね同意が得られて、反映される見込みです。

2つ目のチェック、インターネット送信に係る保護対象の留保の範囲は最低限にすべきとの意見がEUを中心にあったのに対しまして、日本やカナダからは、加盟国によってこの部分の法体系は異なり、柔軟性を保つように、留保の規定は維持すべきであると。つまり、倫理的保護にすべきであるとの意見を行いました。

また、3つ目のチェック、これはアメリカ、カナダが中心となっておりますが、固定権や維持送信等の保存されたプログラムの保護については、放送信号の保護というよりは、実質的にコンテンツの保護であり、これと混同する可能性があるので、反対との意見がございました。

このように、保護対象や与えられる権利などの基本的な部分に関してコンセンサスが得られていないことから、今後、本議長テキストについては、各国からの意見を踏まえてさらに修正されて、次回のSCCRで議論が行われる予定となっております。

次に、(2)の権利の制限と例外に関する議題ですが、アにございますとおり、現在は図書館とアーカイブのための制限と例外、教育と研究機関等のための制限と例外というのが議論の対象となっております。

イの①にございますが、前回の会合では、「教育、研究及び文化遺産の保存を支援する法律及び政策の作成を支援する技術支援プログラムの指針となる途上国向けのツールキット」の研究の進捗に関して発表がありました。

また、②のとおり、アフリカグループより提案された関連調査や事業の推進に係る例外と制限に関する作業プログラム案が採択されました。

(3)のその他の議題では、御覧のとおり、6つにわたるトピックがございますが、内容は記載のとおりでございまして、時間の都合上、詳細は割愛させていただきます。

なお、会議資料は、SCCRのホームページから入手可能となっております。

4ポツの今後の予定ですが、来年は1回ということで、4月15日から19日にSCCRの会合が開催される予定となっております。

続きまして、7月に行われたWIPOの加盟国総会の結果概要として、特に著作権に関する議題を記載しております。

前述のSCCRの結果報告があり、まず、SCCRの活動について、WIPOの事務局から報告があり、その後、各国からステートメントの発出が行われました。放送条約については、日本を含む多数の国々が議論を進展させることの重要性を指摘しましたが、その一方で、法的にも技術的にも複雑な問題を扱う本条約について、検討に時間が必要であるといった慎重な発言も見られました。

その他の詳細については、割愛させていただきます。

説明は以上でございます。

【太田主査】どうもありがとうございました。

ただいまの事務局からの説明につきまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしくお願いいたします。

上野委員、お願いいたします。

【上野主査代理】御説明ありがとうございました。

2回にわたるSCCRの非常に多岐にわたる論点についての御議論を整理しておまとめいただきまして、ありがとうございました。よく分かりました。

特に放送条約につきましては、もう25年も議論しておりまして、この間、日本政府のほうでも、非常に多くの方がこれを担当されて、頻繁な交代がありながらも、皆さま速やかに専門家になられて、国際的な舞台でも有益な議論の進展に大きく貢献されてきたことに敬意を表したいと思います。

その上で、今日あまり御説明がなかった「その他の議題」について、もし可能であれば1点御質問させていただければと思います。といいますのは、お話の中で、幾つかの課題については、これを常設議題化するかどうかという点で若干の見解の相違があったようであります。

具体的には、「デジタル環境に関連する著作権の分析」というものと「追及権」に関して、常設議題化に積極的な国も多いように見える中、日本政府といたしましては、米国と歩調を合わせる形で、これに対して消極的な姿勢を示されているようでございます。

この点について私自身に強い意見があるわけではないのですけれども、日本政府がこのような方向性をお取りになっていらっしゃる理由のようなものがありましたら、ご説明いただけましたら私どもの議論にも資するかと思いまして、お伺いする次第でございます。

よろしくお願いいたします。

【太田主査】よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

【小林国際著作権室長】上野先生、ありがとうございます。

まずアのデジタル環境に関連する著作権の分析に関しましては、米国とはまた違った理由となりますが、SCCRの時間が非常に限られていることから、まずは長年にわたって議論している放送条約の議論が、基本的な部分が合意されて進展した後で、ほかの議題についてより時間を配分することを考えるべきではないかというスタンスで、常設議題化を支持しないという旨を述べております。

エの追及権に関しても、基本的には同様の理由でございます。

【上野主査代理】どうもありがとうございました。

いずれの論点も、この委員会でも課題になるような重要なものと思いますけれども、SCCRの時間的限界というのもありますので、その点を考慮なさった上でのお立場と理解いたしました。どうもありがとうございました。

【太田主査】どうもありがとうございました。

ほかに御質問ございますか。仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】よろしいでしょうか。日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。

各論のウの部分なんですけれども、2番目の保護対象の留保の範囲に関しては、最小限にすべきという意見があって、先ほど日本とカナダのほうからそれに対する反論というか、お話があったというところがあったんですが、これ、もう少し具体的に、どういう形でお話しになったのか、議論されたのか、ちょっと興味本位の質問で大変恐縮ですが、お願いできますでしょうか。

【太田主査】事務局、小林様、よろしいでしょうか。よろしくお願いします。

【小林国際著作権室長】ありがとうございます。

各国で法制度が異なる状況の中で、EU諸国では、電波放送に加えて、インターネットを介した見逃し配信やオンデマンドの部分に関して、放送事業者に著作隣接権が付与されておりますが、日本を含む国の一部においては、インターネット配信の部分が著作隣接権の対象とはなっておりませんので、その部分を締約国が留保できるようにすることによって、各国でどこまで国内法で担保するか選択できるような柔軟な規定とするべきではないかという趣旨で、日本から発言をしております。

【仁平委員】分かりました。ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。

ほかに御質問や御意見等ございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、資料3-1については、事務局から説明があった案のとおりといたしたいと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【太田主査】どうもありがとうございます。それでは、ワーキングチームの構成員につきましては、私のほうで指名させていただき、後日、事務局よりお知らせいたしますので、しばらく時間をお願いいたします。

次に、議事4の「DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る現状、課題、論点(案)」に入りたいと思います。事務局に資料を準備していただいておりますので、まず、説明をお願いいたします。

【渡邉著作物流通推進室長】渡邉でございます。資料4-1を御覧いただければと思います。

まず、1番、本件に係る経緯についてでございます。

本件は、令和3年7月に文部科学大臣から文化審議会に対して諮問が行われ、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップや契約の在り方に関する審議が要請されているというところでございます。

そして、次ですけれども、本件につきましては、これまで基本政策小委員会において、音楽、書籍、映像分野を対象とした実態調査などを基にした議論を行ってまいりました。また、国際小委員会においても、EUのいわゆる「DSM著作権指令」に関する動向を踏まえた議論を行ってきたところでございます。

2ページを御覧いただければと思います。

2番目に、コンテンツ流通の現状、国際的動向、将来展望というものでございますけれども、デジタルプラットフォームサービスは、著作物の創作・流通・利用・収益の各側面の基盤として大きな社会的役割を果たしているということでございます。

2つ目、具体的には、コンテンツの流通がパッケージから通信を介するものへと移行しているということについて、データとしてもまとめてございます。

また、3つ目ですけれども、分野別に見ますと、例えば、音楽、書籍、映像、それぞれの分野でストリーミングなどによる流通が年々拡大しているという現状をまとめてございます。

次に、3ページ目を御覧いただければと思います。

こうした中でありますけれども、EUにおいては、デジタル環境における国境を越えた著作物の利用に関する域内の調和促進を目的といたしまして、2019年にDSM著作権指令を採択して、その中で様々な関連の規定を設けているという状況でございます。

また、次の丸ですけれども、これらの規定のEU加盟国の国内法化につきましては、2021年6月までに整備をすることとされていたところでございますけれども、次の4ページの表に記載のとおり、整備が進んでいるというような状況でまとめさせていただいております。

少し飛ばさせていただいて、3番目、各分野における対価関係の実態と課題というところでございますけれども、以下に音楽、書籍、映像と、これまで実態調査を行ってきたものでありますとか、今回御報告いただくニュースコンテンツ分野についてまとめているというようになっております。

具体的には、5ページから音楽分野でございますけれども、デジタルプラットフォームサービス及びそのビジネスモデルといたしましては、主に3つのものがあるということで、1つ目がユーザーアップロード型と言われるもの、2つ目がサブスクリプション型、3つ目がダウンロード型というのがございますけれども、ダウンロード型におきましては、音楽利用は減少傾向にあるということで、以下、前2者について整理をしているというものでございます。

6ページ目を御覧いただければと思います。

契約の実態につきましては、対象となるものが著作権なのか、著作隣接権なのか、また、集中管理があるのかないのかといったところでのバリエーションが様々ございますけれども、表のように整理いたしまして、以降、この分類に沿って現状、課題を整理しているというものとなっております。

以下、特に課題が挙げられているところに焦点を当てて御説明申し上げたいと思います。

1の①でありますけれども、2つ目の星でありますとおり、ユーザーアップロード型事業者と管理事業者との包括的利用許諾の契約内容などについて、秘密保持契約となっているなど、権利者の立場からは対価還元の仕組みなどが不透明であるとの指摘があったというようなことでございます。

1の②でありますけれども、個人のクリエイターなどにつきましては、ユーザーアップロード型事業者が提供する権利管理ツールを活用して対価を得るという方法があるところでございますけれども、そういったものの個人の活用には一定の制限があるというような指摘もあったところでございます。

7ページを御覧いただければと思います。

1の③ですけれども、隣接権に関してでありますが、こちら、集中管理が行われていないということで、特にインディーズレーベルにおきましては、個別にユーザーアップロード型事業者と交渉し、契約を締結すること自体に難しさがあるということの指摘があったということでございます。

次に、ユーザーアップロード型共通の課題ということでまとめておりますけれども、1つ目は、その性質上、コンテンツマッチングが不確実となる場合があるということでありますとか、次の星で書いておりますのが、ユーザーアップロード型事業者は、削除通知を権利者から受けた場合に、コンテンツの削除を行えば賠償責任は負わないというルールとなっているところでございますけれども、権利者は自ら監視・削除通知を行う負担を回避して、対価を得るために、プラットフォーム事業者と包括的利用許諾契約を締結する必要に迫られて、こうしたインセンティブの偏在が権利者の交渉力を弱めているのではないかといったような指摘があるということでございます。

次に、8ページの2の①でありますが、以降、サブスクリプションでありますけれども、サブスクリプション型につきましても、同様に対価還元の仕組みなどが不透明であるとの指摘があるということでありますとか、再生数等を加味して、現在の条件より高い使用料の設定にすべきではないかというような指摘があったところでございます。

1つ飛ばしまして、2の③でありますけれども、ユーザーアップロード型と同様に、レコード会社ごとにサブスクリプション型事業者との交渉力が異なることから、契約条件に差異が生じやすいというような問題が指摘されているということでございます。

次に、9ページの書籍分野でございますけれども、こちらにつきましても、プラットフォーム上での電子書籍流通の現状などについてまとめているところでございますけれども、結論といたしましては、5つ目の丸にございますように、電子書籍市場の増大によっても、対価の交渉が円滑に行われているのではないかというような見解が多数見られたところでございます。

次に、10ページ目をお願いいたします。

映像分野でありますけれども、こちらにつきましても、あまり多くの課題は挙げられなかったというところでございますけれども、4つ目にありますように、サブスクリプション型へのコンテンツ提供につきましては、固定報酬となっていることは一般的だということでございますけれども、この場合、対価に関する総再生数などの情報提供が権利者になされていないといったような課題も一部見られたということでございます。

次に、ニュースコンテンツ分野ですけれども、本日、公正取引委員会の御担当者様に報告いただくということでございますので、割愛させていただければと思います。

少し飛ばしまして、12ページを御覧いただければと思います。

以上の共通事項としてまとめておりますけれども、1点目が、以上のことを踏まえますと、様々な課題が指摘されている音楽分野を念頭に置きつつ、論点の検討を進めることとしてはどうかということでありますとか、2つ目に書いてございます、ユーザーアップロード型において著作権等を侵害するコンテンツが投稿されるような場合には、権利者は対価還元の機会そのものを逸するというような反面、投稿者やプラットフォーム事業者が広告収入を得るということもあるというような状況でございます。こうした課題も、ある意味では対価還元と表裏をなすものとして、共に検討する必要があるのではないかということで書かせていただいております。

その下が、4番目、論点ということで、以下、大きく3つにまとめております。

まず1つ目は、取引の透明性ということで、コンテンツの流通について、プラットフォーム事業者の透明化を促進するために、どのようなことが期待されるのかということでございます。

そして、13ページ目の2つ目の丸ですけれども、管理事業者の権利者に対する説明責任の在り方をどのように考えるかということで、特に契約の透明性の確保のために使用料規程が果たすべき役割をどのように考えるかというようにしております。

3つ目でありますが、DSM著作権指令では、透明性義務に関する規定も設けられておりますけれども、こうしたルールの有効性をどのように考えるかというようにしております。

次に、大きな2つ目ですけれども、対価の妥当性・公平性についてということでございます。

取引の透明性などにより図られる面がこれについては大きいと考えられるところでございますけれども、そのほかに、それに資する取組としてどのようなことが考えられるかということが1点目です。

2点目は、ユーザーアップロード型における権利管理ツールの提供といったプラットフォーマー側の自主的な取組を積極的に促すには、どのような方法が考えられるかということでございます。

次に、14ページ目ですけれども、続きで、また、DSM著作権指令に定められました、適正かつ比例的な報酬を受け取る権利ということにつきまして、同じく、こうしたルールの有効性をどのように考えるかということでございます。

次に、大きな3つ目ですけれども、適切な競争関係ということで、プラットフォーム事業者が果たすべき責任をどう考えるか、また、適切な競争環境を確保するためにどのような方法が考えられるかというような論点でございます。

次に、権利者の交渉力を向上させるために、例えば、どの程度権利者同士が共同することが許容されるかというようなことを論点として書かせていただいております。

次に、5番、関連する諸制度の在り方ということで、まず1点目、私的録音録画補償金制度を挙げております。

具体的には15ページからですけれども、これまで見てきましたとおり、ストリーミングによる聴取や視聴の方法が普及してきているという現状、また、複製手段についても多様化・汎用化しているという状況がございます。

こうした中、政府といたしましては、過渡的な措置として、昨年、新たな制度の対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを規定したというような経緯がございます。

こうした現状と経過を踏まえまして、私的録音録画補償金制度の今後の在り方について、どのような方向で考えるかということが1つ目でございます。

次に、16ページですけれども、レコード演奏・伝達権ということでございます。

現在、商業用レコードを用いて店舗等が公の場で利用する場合の権利につきましては、著作権者には付与されているものの、隣接権者には付与されていないというのが日本の現状となってございます。

これにつきまして、2つ目ですけれども、最近では、例えば、プラットフォームサービスの利用規約では、私的利用に限ることが求められているにもかかわらず、そうした利用条件の範囲を超えて店舗等において音楽を利用している実態もあるといった指摘もございます。

こうした現状と動向を踏まえまして、我が国におけるレコード演奏・伝達権の在り方についてどのような方向で考えるか。

以上2つの制度を関連のものとして、最後に論点として挙げさせていただいております。

もう一つ、資料としては、資料4-2を本日御用意しておりますけれども、本日の本議題に関連するデータでありますとか図解などを掲載してございますので、併せて御参照いただければと思っております。

私からの説明は以上でございます。

【太田主査】どうもありがとうございました。

本日は、今期の政策小委員会の第1回ということですので、ただいまの御説明を踏まえ、委員の全員の方々から御意見をいただきたいと思います。

御欠席の委員を除き、お名前の五十音順で指名させていただきます。一人当たり2分程度で簡潔に御発言をお願いいたします。

まず麻生委員、お願いできますでしょうか。

【麻生委員】九州大学芸術工学研究院の麻生でございます。

政策小委員会の議論の方向性と論点に賛同します。

特に、デジタルプラットフォームが関わる場合に、音楽著作物において権利者に適切な対価還元がされていない可能性がある、もしくは、そうした可能性が高いというのであれば、それが本当に事実かということも含めて、ヒアリング等を通じて実態を把握した上で、適切な方策を検討していくべきではないかと思います。

他方、そうした対価還元を実現する方策というのは、御説明がありましたように、著作権法だけで対応すべきものなのか、独占禁止法や、いわゆる透明化法、プロバイダ責任制限法などを含めて検討した上での幾つかの方策のパッケージで、ということが現実的なのかもしれませんので、そうした検討も欠かせないと考えております。

これからヒアリングなどもあろうかと存じますし、本日は欧州の法制度の紹介が中心ではございましたが、可能であれば、その他の国々の状況も鑑みながら様々考えさせていただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

【太田主査】ありがとうございました。

続きまして、生貝委員、お願いできますでしょうか。

【生貝委員】一橋大学の生貝でございます。特に欧州等を中心とした諸外国のデジタル分野の法制度と、日本法との比較を研究している者でございます。

私も、こういった検討の方向性、非常に共感するところでございまして、一つは、これまで様々な形で実態把握というところを行ってきたわけですけれども、やはりこの透明性の確保といったようなことは、様々こういった政策の検討という前提になるものでもあり、また、様々な権利者様、あるいは、その団体といったようなところがプラットフォーム様と適切な交渉を行っていく上での前提となるものだと考えております。

そうしたときに、まさしく対価の算定方法でありますとか、あるいは、まさしく権利管理の在り方を含めて、どのような手法を取っているのかといったようなこと、これ、常に変わり続けるところ、どのようなアップデートの様々な努力をプラットフォームの側で行っているのかといったようなこと、そうしたことをしっかりと透明な形で御説明をして頂きながら、御紹介いただいているような、権利者同士での共同要請といったようなところも含めて、しっかりと改善が必要なところであれば求めていく、そのことを進めていくのは、まず一つの大きな手段として重要なのかと思います。

その上で、他方で、こういった透明性アプローチですとか、よくガバナンスアプローチというふうに申したりもしますけれど、というのは適切な行為規制と組み合わされて初めて効果を持つといったようなところもございますので、まさしく複数の手段の組合せといったようなところを念頭に、一つの手段に必ずしもこだわるという形ではなく、広く考えていけるとよいのかと考えております。

それから、これは今まで触れたところとも関わるところではあるのですけれども、特に外国法の参照というところでありますと、DSM著作権指令を特に挙げていただいておりますけれども、あれはある種の著作権分野の特定領域における特別な規律であって、一般的なプラットフォームの責任システムというものは、デジタルサービス法という形で非常に大きなアップデートが行われているところである、そのことの兼ね合い全体を含めて見ながら、しっかりと対応を考えていけるとよいのだろうといったようなことがございます。

以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、伊東委員、お願いできますでしょうか。

【伊東委員】一般社団法人ABJという、出版社や電子書店、あるいは、通信事業者の皆さんと横断的に組成された組織で海賊版対策に従事しつつ、一方、日頃は集英社という出版社でも海賊版対策に従事しておりまして、去年の国際小委のほうでは、コンテンツがいかに海賊版に悩んでいて、どう対策すべきかというところを会議でお伝えさせていただきました。

今年に関して言うと、今回、適切な対価還元ということで、音楽業界のことを中心にまず話し合われるということで、音楽業界のデジタル化や海賊版対策に関しては非常に先行されていて、我々出版業界としても非常に興味深いところではあります。当然、我々出版業界もデジタルプラットフォームサービスと日々向き合っておりまして、今回の議題の中でも、動画投稿サービス等々で、漫画や出版物が勝手に動画にされて、それがアップロードされているという現状があります。

例えば、集英社の場合、一番多い月で、月に2万件ぐらい削除するなどしておりまして、これにどうやって対応していくか。その再生された動画の広告収益は、デジタルプラットフォーム側と海賊版の投稿者にお金が入っているだけで、我々と権利者のほうにはいかないという点もありますので、こういう視点からの現状を今回お伝えさせていただければと思います。

もう一つだけ追加させていただきたいのは、音楽業界とは非常に共通するところは多いのですが、出版業界と若干違うところは、音楽業界の場合は、ライブで収益を上げるというところが、コロナ禍以前からその話があって、コロナで一旦その方向が少し収まりましたけれども、今、恐らくライブを重視されていて、その点がライブの収益が見込めない出版業界と違うかなというところもあるので、そういうところも気をつけていただければと思います。

以上になります。

【太田主査】ありがとうございます。

では、続きまして、上野委員、よろしいでしょうか。お願いいたします。

【上野主査代理】クリエイターへの適切な対価還元というのは、かねてからの大きな課題でありまして、特にこの委員会では、――もう何度も名前が変わっているように思うのですけれども――その歴史を通じて、特に私的録音録画補償金制度に関する検討の中で、まさにこのクリエイターの適切な対価還元という問題が議論されてきたかと思います。

しかし、最近ではさらに様々な課題でも同じことが議論されています。先ほど、欧州指令17条についても御紹介がありましたけれども、YouTubeみたいな動画投稿サイトを中心とするプラットフォームにおいて、バリューギャップ問題というものが指摘されていますが、そこでも、クリエイターへの適切な対価還元をどうやって実現するのかという問題が議論されてきたかと思います。さらに、今日も御紹介があったレコードの演奏権あるいは伝達権についても、やはり適切な対価還元という同じ問題が生じているかと思いますし、後ほども御議論が予定されているニュースサイトも同じような性質の問題だと思いますし、まさに先ほどお話があったような追及権も、やはりクリエイターへの適切な対価還元という同じような性質の問題であるかと思います。

このように、適正な利益分配が幅広く問題になっているわけですが、これをどのように実現するのかという問題解決のための手段については様々なアイディアが提示されている点が注目されます。先ほどまでの御議論においても御指摘があったように、著作権法だけではなくて、独禁法とか、下請法とか、経済法とかもありますし、さらには、契約法も重要であります。

この契約を規制する契約法というのは、民法の中に規定が置かれたり、あるいは、著作権法の中に規定が置かれたりするもので、形式的にはいろいろな立法例があるわけですけれども、しかし、当事者の合意によって成立した契約について、一定の規制をするというもので、具体的内容は、対価の規制であったり、透明性義務を課すものであったりします。

このように、クリエイターへの適切な対価還元といいましても、その手段については、こういった様々な幅広い視点からのアプローチが考えられますところ、今日もそのような検討が様々に行われたというのは、非常に有意義なことではないかと思っております。

したがいまして、今後も、クリエイターへの適切な対価還元という政策の実現を考える際には、著作権法に限らず、様々な手段を総動員して検討するという姿勢で臨む必要があるのではないかなと感じた次第でございます。

以上です。ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、内山委員、お願いできますでしょうか。

【内山委員】青山学院の内山でございます。毎年この委員会にいる人ではないので、軽く自己紹介しておきますと、研究対象は映像、ですから、映画とか、放送とか、あるいは配信とか、あるいは、広くコンテンツ産業というところになります。ディシプリンは、基本的にミクロ経済学から経営戦略論にかけてといったところが自己紹介になります。

当然、適切な対価というのは一つキーワードになっているお話ですけれども、経済学の見地からいうと、相場的な価格がちゃんと売手と買手の間で共有されているかどうかというのが一つのポイントになってくるところだと思います。そういう意味では、買手側になりますが、いろんな情報の開示、透明性の確保ということは、もう当然ながら必要なことだと思いますので、またその議論を深めることができればと思っております。

それから、皆さん御存じのように、先週までハリウッドは、脚本家さんと俳優さんが長いストライキをやっていて、ようやく暫定合意にたどり着きました。当然、その中にはAIの話もありましたし、また、配信分野での収益分配の話ということも盛り込まれておりました。

脚本家さんと俳優さんで妥結の仕方が違っていたところがありますけれども、こうしたことがやがてハレーションとして日本に来るかどうか分かりませんけれども、ちょっと注意しておきたいなというふうには思っております。

適正な対価ということで、もう一例ですけれども、先ほどから挙がっているようなDSM、デジタルサービス法、デジタルマーケット法、あるいは、放送系ですと、欧州メディア自由法であるとか、まだ審議中でございますけど、こういったところの議論もありますし、それから、ここに来てようやく、いろんなところからクリエイターエコノミーに関するレポートというものも出始めるようになってきたかと思います。そうしたことも参考にできればと思っております。

蛇足ですけれども、先ほど議題の3番目でWIPOの放送保護の話がありましたけれども、その放送の定義がどうなっているかというのは非常に個人的な関心がございまして、少し注意していきたいなと思うと思っております。

以上でございます。ありがとうございます。

【太田主査】どうもありがとうございます。

続きまして、唐津委員、お願いできますでしょうか。

【唐津委員】唐津でございます。こちらの委員会、名前が変わってまいりましたので、私自身は小委員会としては3期目になるんですけれども、こちらの委員会は初めてですので、簡単な自己紹介をさせていただきます。

弁護士として28年目になります。現在、主なお客様がメディア関係、あるいは、エンターテイメント関係、アート関係のお客様が多いということもありまして、長年、著作権法、あるいは、商標権といった知的財産分野に関する御相談を数多く受けてきました。その関係で、こちらの委員会にもお呼びいただいたのかと思います。

先ほど出たお話の中では、やはり個人的に気になる点としては、クリエイターへの適切な対価還元ということです。

コンテンツに関するお客様からの御相談、数多く受けるんですけれども、常日頃思っていますのは、例えば、今、日本の主要産業の一つと言ってもいいかと思うんですが、日本のアニメ、非常に品質もよくなっていますし、世界でも人気になっているかと思うんですけれども、アニメ産業が今後も日本で発展して継続して成長していくためには、最終的にはアニメーターがちゃんと食べていけることが重要であるというのをいろんなところで発言させていただいております。

決してアニメーターの代理人ではないんですけれども、アニメが好きで、そこで食べていきたいという若者たちがずっとアニメーションの仕事をしていけるだけの経済的基盤があるということが非常に重要ではないか。非常に重要であると同時に、今、非常に危機感を持っております。

お聞き及びかもしれませんけれども、アニメーターの報酬が低いという状態は、徐々に改善されているとはいえ今も続いておりますし、一方で、例えば、中国のアニメ産業では、はるかに高い報酬を払っているというようなこともありますので、そちらのほうに人材が実際に流れている、流出しているということもありますので、そこを考えると、この配信の中でコンテンツの著作権者に幾ら払われているかという、その先を、さらに最終的なアニメーターのほうには一体どれぐらい流れていくのかと。そういったかなり大きな上流から下流までの流れの実態調査と対策というのを考えていく必要があるのではないかなと思っています。

以上です。

【太田主査】どうもありがとうございます。

続きまして、河野智子委員、お願いできますでしょうか。

【河野(智)委員】日本知的財産協会(JIPA)の河野と申します。

JIPAは、いわゆる業界団体ではなくて、様々な業界の知財関係者が集まって議論をしているところで、私が所属しているデジタル政策ワーキングでは、いわゆる権利者、利用者の会社さんがそれぞれ複数おられるということになっております。そのような立場で議論に参加させていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

資料4についてですけれども、記載されている現状認識はそのとおりだと思いました。デジタルネットワーク技術が発達したことで、それまでは、音楽であればCD、映像であればDVDのようなパッケージや放送、小説や漫画などは紙の書籍でそれぞれ流通していたものの多くが、インターネットを介して、デジタルプラットフォームサービスにより提供されるようになりました。そして、その傾向は加速していると思います。

それは、コンテンツの利用形態も変化しているということを意味しているのだと思います。今までは、見たいときに聞きたいときにコンテンツを利用する、その利用するためにコンテンツを複製物として所有するということが必要でした。が、今ではクラウド上にあるコンテンツを見たいときに見たいところで閲覧したり、ストリーミングを楽しむことが可能になりました。

このようなコンテンツの利用形態の変化を的確に捉えた上で、適切な対価還元というのがどうあるべきなのか、それを議論していければと考えています。

その際に、資料にも言及がありましたけれども、合法ではない利用から広告収入を得ているケースがあると。そういうことへの対応をどうしていくのかというのは、とても重要な論点ではないかと考えています。対価還元の話は、侵害対策の話とセットで検討されるべきだと考えています。

以上です。よろしくお願いします。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、河野康子委員、お願いできますでしょうか。

【河野(康)委員】皆様、こんにちは。私は、日本消費者協会の河野と申します。これまでも著作権分科会の委員として、何度も審議に加わらせていただいております。

消費者としては、この分野の抱える様々な課題やその対策等について考え、学ぶ機会を頂戴しておりまして、まず感謝申し上げたいと思います。

御説明いただいた論点について、2点申し上げたいと思います。

1点目は、課題の抽出と対策の策定に対して、従前よりも増してスピード感を持って取り組まなければならないのではないかと思った次第でございます。

生成AIの登場など、技術開発は目覚ましい進展がありますし、それに伴う流通や利用方法など、産業構造の変化も大きく、その中での権利保護と権利侵害に関する規制も含めてなんですけれども、それに関しましては、たくさん課題といいますか、論点は挙げられているんですが、優先順位を決めて、時代に遅れない施策を進めていただきたいと思いました。

2点目は、私たち国民はみんな認識しているということだと思いますけれど、音楽やアニメなど、日本のコンテンツというのは、今や我が国の経済を支える、本当に期待が大きい産業分野だと思っております。そこに実は著作権という問題があるということに対して、権利保護、それから、権利処理についても、社会に向けて啓発、周知や広報を継続して進めていただきたいと思っています。

大きな問題が起きたときは報道等で社会にもいろいろと問題提起がされますけれども、今の日本国民が著作権のことを理解して消費行動を行っているか不十分であり、ある意味、自覚なく権利侵害等が起きている可能性というのは否めませんので、ぜひ、著作権とそれに伴う課題があるということについて注意喚起を続けることが、とても重要であるということをお伝えしたいと思っています。

私からは以上です。

【太田主査】どうもありがとうございます。

続きまして、坂井委員、お願いできますでしょうか。

【坂井委員】皆さん、こんにちは。エンターテイメント表現の自由の会の代表の坂井と申します。よろしくお願いいたします。

我々、エンターテイメント表現の自由の会という団体なんですけれども、今、たまたま前のお二方から言及があったんですけれども、漫画とか、アニメとか、ゲームといった主にエンターテインメント表現についての表現の自由であったりとか、あるいは、そういったものを我々消費者として楽しむためにはどういうようなことが必要かというような観点で活動している団体です。

冒頭、中原審議官からも、利用の円滑化と、対価還元、それと国際的なというところで、一体化して議論を進めたいというお話があったんですけれども、これ、いつも言っているんですけれども、どうもやっぱり権利者というところが多く打ち出されていて、利用者、あるいは、ユーザーというところの視点というものをぜひ議論の中にも入れていただきたいなと思っております。

決して我々ユーザーは、権利者が持っているものをただで使わせてくれということを言っているわけではなくて、そういう悪いことをやっている人はいますけれども、言っているわけではなくて、やっぱり多くの人は、ちゃんと適切な対価であればきちんと払うというようなことを考えていると思っています。

ただ、あともう一つ、やっぱりあるのが、便利なものが世の中にあると、その対価還元というのとはまた別の視点で、使いやすいからという理由で、グレーあるいは黒になるようなことをやっている人も多分いるんだろうと思っています。

今回、4-1の中では音楽を中心にということだったんですが、私自身もそれでいいとは思うんですけれども、ただ、特に国際的という視点を考えると、特に画像系の生成のAIであったりとか、あるいは、メタバースの話みたいなところは、もしかしたらほかの委員会で議論しているのかもしれません。ごめんなさい。分からないですけども、どこかで議論していく必要があると思いますし、本当に避けなければいけないなと思っているのが、いろんな場所で適切な対価還元について議論を進めて、やっと関係者の合意が得られたとなったら、もうそのときには実際に守るべき権利の対価というものがどんどん薄れてしまっていたりとか、実際にそのビジネスをやっている税金というのは、海外の事業者であったり、プラットフォーマーを含めたところ、そこが持っていってしまっているというところになってしまっては本末転倒だと思いますので、河野委員からあったように、本当に早いような形で、特に1年前なんて、ChatGPTも多分正式リリースされていなかった、我々の去年の議論の中でそんなことは一言も話さなかったのが、今、もうこんなに変わっている状況ですので、ぜひスピード感を持ってということは、私も含めて、皆さんにお願いしたいなというふうに思っております。

ありがとうございます。

【太田主査】どうもありがとうございます。

続きまして、佐藤委員、お願いできますでしょうか。

【佐藤委員】経団連の佐藤でございます。

経済界全体でみると、まさにコンテンツ産業の振興がこれからの日本経済の成長の一翼を担っていくという位置づけは、年々重みを増してきていると存じます。こうした中、コンテンツ産業の要となっているのが、まさにそれを担うクリエイターの方々ですので、当然ながら、適正な契約関係の構築および法令遵守、さらには、先ほどご指摘があった適切な労働・就労環境の確保については、産業の持続的な発展のためには必要なものと考えております。

ついては、経済界全体としても、労働関係法令やコンプライアンス遵守の徹底ですとか、取引の適正化は求められるものと存じますので、引き続き、協力していくべきところと考える次第でございます。

他方、今回の論点については、先ほど音楽等と映像等のご指摘がありましたけれども、やはり既に他の委員からご意見が出ているように、ネットを介したコンテンツにつきまして、ゲーム等を例に挙げても、様々なコンテンツが複雑に絡み合っているのが現状であろうかと存じます。これを鑑みますと、そのようなところでも著作権は発生すると思いますので、ネット上にあるコンテンツというように、視野を広げてもいいのではないかと考えている次第でございます。

私からは以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、菅委員、お願いできますでしょうか。

【菅委員】よろしくお願いいたします。SF作家の菅です。

SF作家というのは、未来をどう見るか、こうだったらいいのになみたいな視点で語ることが多く、夢物語だと言われたり、あと、結論のないこういう視点はあるのはあるよという指摘になってしまうので、ちょっと皆さんとは立場が違うので、失礼なことも申し上げるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

私自身は、SF作家、小説家としてプロのクリエイターでありますし、また、インターネットがまだMS-DOS3.0の頃からのユーザーでもあります。インターネット以前ですね。パソコン通信の頃からのユーザーでもあります。

また、ニコニコ動画のほうでは、私、音楽もやっていまして、テレビの曲とか、ゲームの曲とかをちょっとやっているんですけれども、そちらをアップロードしたり、あと、MikuMikuDanceというものを使ってファン活動もしていますので、使う側、作る側、それをオタクという存在でつなぐ者として、いろんな立場から見ていきたいと思っています。

今、DXだけに関して申し上げますと、やはり今、UGC、クリエイターが作ったもの、プロのものではない、一般ユーザーのものがだんだんこれから問題になってくると思います。

ニコニコ動画のほうは、もともとこの曲は使ってもいいよというのは出ていたんですけども、昨今、YouTubeでようやく、これは使ってもいいというリストが出まして、1年前からは考えられないことだなと思って、状況は変わってきているなと思っています。

また、YouTubeのほうで、この曲を申請したら、それは著作物なので、ほかの人は使えないよというシステムが一時期あったんですけれども、これは多分失敗だろうと思います。虚偽の申請が多いような気がしました。

私のそうだったらいいのになで言いますと、題名を検索すると、AIなりデータベースなりが、それを使うんだったらここで言いなさい、料金は幾らですというのが、もう訊いたらすぐにぱっと返ってくるような状態になれば、例えば、100円、200円だったら払おうかなと思う人があるので、AIの発達に伴って、そういう臨機応変な、訊いたらすぐ分かるというシステムが出てくればいいなと思います。

これは去年から言っておりますが、出す側もCCマーク、いろんなCCのレベルがあるんですけれども、CCマークを必ずつける、これはもう無条件に使っていい、いや改ざんは駄目ですという、CCマークをもっと利用して使ってもらう、使うんだったら利益が入るというふうに、出す側も気をつけていくべきだと思います。

すいません、もう一言だけ。電子出版なんですが、電子出版というのは、出した部数分しかお金が入りません。紙の出版だと、初版といって、例えば、今1万部ということはないんですけど、1万部出したら、その1万部の分だけは先に著作権料処理されて、がばっと入ることになるんですね。ところが、1冊だけになると、もう5円、10円、下手したら1冊出して50円みたいな話になってしまうわけです。これは、売れるものしか作らない、似たようなコンテンツ、人気のコンテンツの後追いばっかりになると思って、私は大変危険だと思っています。

再販売価格維持制度のときにも十分に議論されたかと思うんですけれども、安全なものしか出さないというのは、これは文化の衰退になりますので、電子ばかりにこれからなっていくとしたら、その電子だけでどういうふうなものが出ていくのか、人気作ばっかりにならないか、ここを注意して見ていきたいと思っています。

YouTubeに関しても、ある内容が当たったら次は追従するということになってしまいます。今、シラスという、東浩紀さんが中心になってやっておられる配信プラットフォームがあります。これは完全有料制です。月会員とか、番組都度買いとか、きちんとお金を払う。それは、10人の人がメモを取るような大事なことを言っても、ちゃんとお金が入る制度です。YouTubeは、1,000人以上でないと広告収入は入りません。ですから、そうやっていろいろな収入の方法というのを考えていくのも大事かと思います。

長々ありがとうございました。以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

引き続きまして、田村委員、お願いできますでしょうか。

【田村委員】田村です。著作権法を専門としております。

私も、事務局からの御提案、あるいは、いろいろな委員からの御意見である、総合的に考えていかなければいけないという点には賛成いたします。

ただ、総合といいましても、例えば、透明性を図っていくことで交渉力を高めるということに関しては、どうしても構造上、プラットフォーマー相手ですと限界があります。その意味で、競争政策に期待するところが大きいということであります。

他方で、プラットフォームというのは、ネットワーク効果があり、独占化が必然的なものだというような状況がありますので、競争政策に対しては、構造上、どうしても対処的なものに止まりがちです。そうなってくると、法的な介入が必要なのではないかといった話の流れになるのではないか、総合政策でも、そういう段階的な話なのだろうと思われます。

他方、プラットフォームの利便性というのは、何人かの委員の方が強調されていましたように、また、事務局の御提案にも入っていましたとおり、プラットフォームができたことによって、非常に利便性は高まっていまして、そういったユーザーの便利というのは見逃せないわけで、そうなってくると、排他権の強化というのが必ずしも得策とは言えないのではないかという気がいたします。

そうすると、総合政策、とりわけ必要となる競争政策の実効性、そしてまた、今、菅委員からお話がありましたが、技術的に解決がどこまで進むのかといったことも評価する。競争政策を対処的になしていく中で、それに流されて技術的な解決というのも促されていくのではないかと期待されますが、その上で、場合によっては、私的録音の補償金のような、法的に補償金を強制するといった制度の導入の是非の検討も必要なのかもしれないと思っております。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、墳﨑委員、お願いできますでしょうか。

【墳﨑委員】弁護士であり、また、コンテンツ海外流通促進機構の知財保護センター長をやっております墳﨑と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私もこういった場でずっと国際小委員会に参加させていただいてきておりまして、基本的には、コンテンツ海外流通促進機構の通称はCODAというんですけれども、CODAは権利者の団体ですので、権利者の立場からいろんな意見を申し上げさせていただくことが多く、今回の話ですと、クリエイターへの適切な対価還元というのは非常にいい話なのかなと思っておりますので、積極的に議論させていただきたいと思っているところではございます。

皆さんの御意見もいろいろ出ているところですので、私のほうからは1点程度の話にはなりますけれども、やっぱりこういった話、インターネットは、別に日本国内に限っている話ではなくて、海外のプラットフォーマーというのがやはりどうしてもいて、そこまで手が及ぶのかという話はある程度最初から考えておかなければいけないのかなとは思っております。

もちろん、日本国内でまずどうしようという話があって、それから世界に広げていくという話になるとは思うのですが、ちゃんとやってくれるプラットフォーマーがいる中で、そういう人たちがちゃんと対価還元のシステムをつくってやったものの、逆に、それを遵守しないほうが得をしてしまうみたいな環境になると、多分片手落ちになってしまうのかなと思いますので、まさに先ほど田村先生のおっしゃっていた実効性という話なのかもしれませんけれども、実際にどうやって実行していくのか、遵守、それをやらないプラットフォーマーについてはどうやっていくのかというところまで考えながら進めていけるといいなと思っております。

簡単ですけれども、私からは以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、仁平委員、お願いできますでしょうか。

【仁平委員】日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。すみません、こんな声で。

僕のほうからは、ユーザーアップロード型に限って、課題だけをちょっと羅列したいと思います。

1つは、権利者が誰なのかというところがなかなか明確にならないので、この辺りを明確にするシステムの必要性というところですよね。それを、どうそれを正当なものなんだというのを証明するのかという、その仕組みの必要性、また、権利者がそこで登録できたとして、個人情報がそこに出てきてしまうということに、個人クリエイターさんなんかは特にアレルギーを感じると思います。ですので、個人クリエイターが、これは僕の作品だよというのを登録したとしても、その情報をどういうふうにいい感じで匿名化できるのか、これの必要性というのが重要かなと思います。

さらには、そういった部分で、自分の作品が登録できたとして、それをどう海外のいろいろなプラットフォームだとか、そういったところとつなぎ込むのか。つまり、日本語の場合は、2バイト文字というハンディがありますので、例えば、日本語で千本桜と言っているものがアメリカでは何と言われているのか、中国では何と呼ばれているのか、その辺りのちゃんとしたマッチングができないと、使われているというマッチングが恐らくうまくできないような気がするんですね。

そういった部分を問題点として、課題として、私のほうは考えております。

ありがとうございます。失礼します。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、畑委員、お願いできますでしょうか。

【畑委員】日本レコード協会の畑でございます。よろしくお願いします。

まず、これからの検討の進め方として事務局でまとめていただいて本日御提案いただいた内容については、全面的に賛成をさせていただきます。

その上で2、3点コメントを述べたいと思います。1つは、今回のデジタルプラットフォームサービスからの適切な対価還元方策、ここにおける重要なポイントとしまして、資料4-1におまとめいただいたページ12の「4.論点」、ここに書かれております「適切な競争関係」というところが一番重要なポイントではないかと考えております。

ユーザー投稿型プラットフォームサービスにつきまして、EUのDSM著作権指令においては、一定条件の下でユーザー投稿型プラットフォームサービスを著作物等の利用主体とみなすと。これによって、大きなプラットフォーマーは著作物の利用主体として、利用許諾契約の締結に向けた努力をする義務を負うであるとか、侵害コンテンツに対応する責任を負うとか、そういったことが定められております。

そういった今までとは違う規範を導入することにより、権利者とデジタルプラットフォームサービス間の競争バランスを回復することができるというDSM著作権指令の趣旨だと思いますが、それを日本としてどのように考え、規範として盛り込んでいくかということが1つの大きなポイントかなと考えております。

それともう1点、その後に記載されております「5.関連する諸制度の在り方に」ついては、1つ目の「私的録音録画補償金制度」、2つ目の「レコード演奏・伝達権」、両方とも私のほうは非常に深く関与しております。

「私的録音録画補償金制度」につきましては、管理団体であるsarahの理事長を今年から拝命しておりまして、今後の在り方の検討を是非進めていきたいという思い、もう一つ「レコード演奏・伝達権」につきましては、資料4-2のページ20に事務局でまとめていただいてますが、この権利は我々の調べでは世界142か国で導入されておりまして、OECD加盟38か国のうち日本とアメリカのみ権利がないということになっております。

この国際的制度とバランスを取り、適切に対価還元をすること、また、権利の在り方として海外の権利者と同じ土俵に立つということが音楽ビジネスの競争においても非常に重要なポイントだと考えております。ここについても、今期、是非検討を進めていければと考えております。

以上でございます。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、渕委員、お願いできますでしょうか。

【渕委員】神奈川大学の渕と申します。知的財産法を研究しております。私は、昨年の国際小委員会に引き続いて参加させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

本日、事務局から詳細に御説明いただき、整理してくださった各論点について、もちろん異存はございません。いずれも重要な論点でございますし、次回以降、こちらの委員会で丁寧に議論をさせていただければと考えております。また、その際に、それぞれの段階で意見を申し上げていきたいと思っております。

既に今日、委員の先生方から詳細な御意見を頂戴しているところですので、その上で、私から全体の大きな方向性のようなものについてだけ付け加えるといたしますと、プラットフォーム事業者自身も、これまで規約等で一応利益配分について自律的なルールを定めてきた、にもかかわらず、バリューギャップ問題をはじめとする様々な問題が生まれているという状態にございます。

それから、ここ1年ほどの間に、SNSではございますが、プラットフォームも経営の主体が変わることで、そのルールを大きく変える可能性があって、その影響は単なる一企業のルール変更を超えて、国際的に大きなインパクトを与えるということを私たちは痛感しているところではないかと思います。

プラットフォームの自律的なルール形成とその限界、それから、著作権法の規定の在り方、その両者の関係について、既に問題となっていることはもちろんですが、先ほどChatGPTの件についても言及がありましたけれども、今はまだ予測できないようなことにも対応できるように、幅広い観点から議論をしていけたらと考えております。

どうぞよろしくお願いいたします。

【太田主査】ありがとうございます。

続きまして、丸山委員、お願いできますでしょうか。

【丸山委員】丸山ひでみでございます。私は、日本芸能実演家団体協議会、皆さん芸団協と言うとちょっと聞いたことがあるかなと思いますが、芸団協の理事で、また、そこにあります実演家著作隣接権センター、これはCPRAとよく言っていますが、そちらの運営委員をしております。

皆様のお話を聞きながら、私は10代の頃からずっと実演家をしておりますので、俳優という職をやりながら、あるときからこうして芸団協ほか、いろいろ団体のほうで仕事をさせていただいております。その中で、今まで自分が培ったもの、経験してきたものを踏まえて実演家の視点から幾つか御意見をさせていただこうかなと思っております。

まず、コンテンツ創作の好循環を促進するためには、クリエイターへの適切な還元が非常に重要であり、そして、著作権分科会基本政策小委員会においても、2021年度から継続して、DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策が検討課題に挙げられ、各分野の実態把握のための調査研究が進められてまいりました。

この小委員会では、これらの調査研究を踏まえて、バリューギャップ問題の解決を含む、クリエイターへの適切な対価還元を実現するための具体的な措置について、皆様と検討を深めていきたいと思っております。

皆様の御意見を伺いつつ、私も自分が経験してまいりました実演家としての思いをきっちりと皆さんにお話もできたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【太田主査】どうもありがとうございました。

最後に、私も一言だけ言わせていただこうと思います。

私は、弁護士登録はしてはおりますが、基本的に研究者で、明治大学法学部で法社会学という科目を教えております。具体的にやっていることは、法現象に関して、法と経済学とか、行動経済学、認知科学、それから、社会学などを用いて研究しています。とりわけ、社会調査とデータ分析とかの実証を中心に研究をしています。その意味でいくと、この委員会の仕事の内容が適合している面もあるかなと自負はしております。

とは言いながら、ここでカバーされている論点の膨大さと広さ、それぞれが既にこういう小委員会が一つずつ必要ではないかというぐらいの内容ですし、そこで考慮すべき諸要素も、今、先生方がたくさん挙げていただいたように膨大でして、私に本当に務まるか心配になっているところでございます。

そんな中で、権利者への適正な利益配分、あるいは、価格の適正な形成、これは基本的には厚生経済学の完全競争市場とか法と経済学のコースの定理というところにたち戻ってくると思いつつも、それを実現する上では、やはりナッジであるとかアーキテクチャであるとかの行動経済学の理論も必要になるだろうと思っております。

とりわけ、この7ページにありますノーティス・アンド・テイクダウン、これは日本の法制度にも一部入っておりますが、こういった事後的にサンクションで取り締まるよりも、むしろもっと前の段階からソフトに介入することで,コンプライアンスと権利の実現の両立を図るという行動経済学的な手法が、ますますこの分野、とりわけ完全競争から乖離しやすい属性を持っているこの分野で必要となると考えております。

しかも、先生方何人からも御指摘がありましたように、ChatGPTの出現をはじめとして、明日何が起きるか分からないというDX社会でございますので、これにどう追いついていきつつ、適切な法的規制・行政的規制・市場的規制をして、それを通じて適切な市場をどう形成するかという非常に大きな課題に直面していると感じております。

また、今日の事務局からの御報告は、割とEUを中心としたものが多かった印象ですが、確かにアメリカ合衆国、EU関係は割と研究と紹介が進んでいますが、間もなく世界第一の市場になりそうな中国がどういうふうな政策を採りどういう実態であるのかは、もろに日本に大きな影響を与えるところですので、そこら辺りも視野に入れないといけないと思います。とは言え、中国自体、一つのユニタリーなシステム(単一統合社会)と言っていいのかという問題もありますので、今後、この委員会でもいろいろと議論がされるのではないかと思っております。

私の研究領域は、先ほど申し上げたように、実証を重視しております。この委員会でも、これまで様々な実態調査をし、それに基づいて政策提言をしております。このようなエビデンス・ベース・ポリシー・メイキングをさらに実践して、この方向で進めたいと考えている次第です。

少し長くなりましたが、私のほうからは以上でございます。

これまでの先生方の御意見を踏まえまして、御質問、補足などの御意見がございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。先ほど言い足りなかったという先生もいらっしゃるのではないかと思います。

菅委員、お願いいたします。

【菅委員】資料を膨大に頂きまして、読んだところで、私がちょっと考えていることを、今、チャットのほうにお送りしました。時間がありませんし、どこまで今日深く掘り下げていいのか分かりませんので、チャットのほうに今お送りしましたので、よかったら御参照ください。

アニメのほうに関しても、身近にクリエイターがというか、アニメスタジオと私は関係が深いので、また、ゆっくりと唐津先生とかもお話ししたいと思っています。

よろしくお願いいたします。

【太田主査】どうもありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。追加の御意見や御質問等ございましたら、お受けしたいと思います。

では、特にございませんようですので、ありがとうございます。

次に、議事5の公正取引委員会「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」に入りたいと思います。本日は、公正取引委員会デジタル市場企画調査室長の稲葉僚太様に御登壇いただきまして、デジタルプラットフォーム上の取引に係る関係当事者の透明性の確保や対価の妥当性、デジタルプラットフォームと権利者の適切な競争関係の確保といった観点から御発表いただきます。それでは、稲葉様、よろしくお願いいたします。

【公正取引委員会(稲葉氏)】御紹介いただきました、公正取引委員会でデジタル市場企画調査室長をやっております稲葉と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

先ほどの議事の中でも、DX時代における、特に適切な対価還元というお話、議論になっていましたが、それに関連いたしまして、特に、ニュースコンテンツの配信分野について、公正取引委員会として実態調査をいたしまして、その結果を今年の9月に公表いたしましたので、その概要について、本日は御紹介させていただければと思います。

まず初めに、公正取引委員会の実態調査とは何かということなんですが、皆さんは公取というと、例えば、カルテルとか談合の取締りをしていて、そういった違反事件について立入検査をして処分をするといった印象を強く持たれている方も多いかと思いますが、そういった個別具体的な違反事件の処理というのとはまた別に、広く業界の取引慣行などについて調査をいたしまして、例えば、独占禁止法上の問題があるような行為があれば、その問題点について指摘を行うなどして、改善につなげていくといった取組を実態調査と呼んでおります。

今回のニュースコンテンツ配信分野の実態調査、まずお手元の資料1ページ目ですが、調査の趣旨、背景についてですが、これは先ほどの御議論の中でもあったように、ニュースの閲覧に関してもデジタル化が進展していく中で、従来の紙媒体からネットへと閲覧方法が大きく変化してきています。

そういった中で、いわゆるニュースポータルサイトですとか、検索サイト、そういったプラットフォーム事業者が提供しているサービスの利用が増えていて、プラットフォーム事業者のプレゼンスが高まってきているわけですが、そういったプラットフォーム事業者とメディアとの取引の状況などによっては、消費者が質の高いニュースコンテンツを享受することが困難になるおそれがあるのではないかといった問題意識に基づいて調査を行っております。

次のページ、2ページ目に行きますが、調査の対象といたしましては、大きく2つございまして、インターネット検索事業者、そして、真ん中のニュースポータル事業者、この2つをニュースプラットフォーム事業者というふうに、この調査の中では呼んでおります。

皆様いずれもよく御利用されているかと思いますが、検索事業者に関しては、ニュースを見たいときに検索すると、左側の絵にありますように、ニュースの見出しですとか、その短い抜粋、いわゆるスニペットといったような形でニュースコンテンツが利用されています。

一方で、ニュースポータル事業者、主にはYahoo!ニュースなどですが、こういったところは、メディアとの関係で、利用許諾契約を締結して、その契約に基づいて提供を受けたニュースコンテンツを、言わば二次配信しているような形になっておりまして、この契約においては、基本的に許諾料という形で対価が支払われております。

ちなみに申し上げますと、検索のほうは、基本的には契約はなくて、特段対価の支払いはされていないという状況にございます。

次に、1ページ飛ばして4ページ目ですが、先ほど申し上げたような消費者のニュースの閲覧行動が変化してきている中で、この10年間を見ましても、従来新聞が最も利用されていた一方で、10年たつと新聞とニュースポータルが逆転するような形になっておりまして、既存の紙媒体の発行部数が減少し、それに伴ってメディアの収入も減少傾向にあります。

さらに、次のページ、5ページ目ですが、そういった中で、メディアにおいては、ニュースプラットフォームとの取引に直接または間接的に依存している許諾料収入、それから、デジタル広告収入、こういったものが増加傾向にありまして、そういったことも踏まえますと、ニュースプラットフォーム事業者との取引の重要性が増加していると評価をしております。

続いて、6ページ、右上に6と書いてあるページですけれども、このニュースポータルに関して、どういった事業者が力を持っているか、いわゆる市場シェアのようなものを出しておりますが、こちらはYahoo!ニュースが半分弱、続いてLINE NEWS、スマートニュースという状況になっておりまして、Yahoo!ニュースが一番存在感を発揮しているということが言えるのではないかと思います。

続いて、次のページ、7ページ目ですが、今度は、検索を中心とした、消費者がニュースコンテンツを探す際に利用するサービスということで、今回の実態調査の中でユーザー向けのアンケート調査を行いまして、最も利用頻度の高いサービスとしては、Googleの検索が約3割弱、続いてYahoo!検索、Yahoo!ニュースという順番になっておりまして、一方で、下のほうを御覧いただきますと、ニュースメディアサイト、これは新聞社や雑誌社が運営しているウェブサイトですが、これを全て合わせても2%という状況になっております。

続いて、この調査の中で幾つか実態解明のようなことをしておりますが、少しページを割愛して、13ページまで飛んでいただきまして、こちらでは、適切な対価還元という御議論ありましたが、それにも関連しまして、許諾料の水準に関して調べております。

その結果がこちらですけれども、1,000PV当たりということで、ユーザーがポータルサイトでニュースを1,000回閲覧した当たり、ポータルサイトを運営しているプラットフォーム事業者からメディアに対して支払われる許諾料の水準の平均が124円で、最大値が251円、最小値が49円と、これはプラットフォーム事業者ごとに平均をしておりますので、個々の契約を見ますと、これより高い額が払われていたり、また、低い額が払われているといった例はございます。

一方で、この米印のところですが、メディアのほうが、自社が運営するウェブサイトで得られるデジタル広告の収入、これは同じ1,000PV当たりで見てみますと、平均352円ということで、先ほどの許諾料の平均値と比較しますと、約3倍の開きがあるという状況にございます。

さらに、ニュースポータル事業者が、自社が得た広告収入のうち、どの程度を許諾料としてメディア側に支払っているのか、いわゆるレベニューシェアがどれぐらい行われているかという割合を見てみますと、こちらは、平均が約24%、低いところで8%、高いところで約50%といった状況になっております。

こうした状況を踏まえまして、公正取引委員会としての考え方を整理しておりますが、20ページまで飛んでいただきまして、まず、許諾料の水準の問題に関して、メディアにとってはこの水準が低いのではないかという不満を持たれている方が多い一方で、具体的な交渉なり、契約の見直しに向けた要請を行ったことがないというメディアは非常に多くて、約8割ぐらいのメディアがそういった状況ですが、そういったことの要因の一つとしまして、資料の左側のアンケート結果にもございますように、約50%のメディアは、具体的な交渉材料がないといったようなことを主張しておりまして、他方で、ニュースポータル事業者側は、情報開示に係る具体的な要望があれば、必要な範囲で検討したいというような説明をしております。こういったことを踏まえて、下の考え方にありますが、許諾料の水準の妥当性の検証、それから、円滑な交渉が行われるように、ニュースポータル事業者においては、ニュースコンテンツの利用によって得られた広告収入など、許諾料の水準の根拠となるデータを可能な限り開示していただくことが望ましいといった指摘をした上で、同じ枠の星印のところですが、取引上の地位が相手方に優越しているニュースポータル事業者が、一方的に契約内容を変更するなどして、著しく低い許諾料を設定するといった場合には、いわゆる優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となるという指摘を行っております。

それから、もう一つ、今度は検索の問題について、25ページですが、一つだけ御紹介させていただきますと、検索においては、検索サービスを運営しているプラットフォーム事業者からメディアに対して現状対価の支払いは行われておりませんが、これに関しましては、著作権法上も、いわゆる軽微利用ということで、原則として、著作権者の権利が制限されているというふうに理解をしております。

こういったところに関して、今回の実態調査においては、ユーザー向けのアンケート調査を実施いたしまして、ニュースを探す際に検索サービスを利用して、検査結果からニュースメディアのサイトにアクセスしないことがどれぐらいあるかという質問したところ、「よくある」または「どちらかといえばある」と回答した消費者は8割を超えておりまして、そのうちの約半数が、検索結果からニュースコンテンツの内容が理解できるということを理由として挙げております。

こうしたことを踏まえますと、消費者は、インターネット検索のサービスにおいて、スニペットなどの閲覧によってニュースコンテンツを一定程度消費していると言えるのではないかというふうに考えておるところです。

こうしたことも踏まえて、一番下のところですが、まずはこの問題に関しても、両当事者間の十分な交渉を通じて、対価の問題も含めて共通認識が得られることが望ましいといった考え方を示しております。

最後になりますが、29ページ、一番最後のページですけれども、今日は時間の関係でかなり割愛させていただきましたが、今回の調査では、ほかにも、様々な指摘をさせていただきまして、まずはプラットフォーム、それから、メディアの両当事者間の交渉を通じて課題の解消に向けた取組が進められることが望ましいということで、我々公正取引委員会としても、引き続き、この両当事者とコミュニケーションを取りながら、取組の進捗を注視していきたいと思っておるところです。足元では、この調査結果を公表した後、ニュースプラットフォーム事業者側から、今回の報告書も踏まえて、例えば、必要なデータの開示ですとか、それから、契約内容についての説明、また、契約実績に応じた見直しなど、そういったことを順次実行に移して、メディアとの間で継続的な関係の改善を図っていくといった方針が表明されたりしておりまして、徐々にではありますが、具体的な交渉に向けた動きが出始めているのではないかと受け止めているところです。

ちょっと駆け足になりましたが、説明は以上になります。

【太田主査】どうもありがとうございます。

ただいまの御説明を踏まえ、御質問、御意見がございましたら、お願いしたいと思います。

内山委員、お願いできますでしょうか。

【内山委員】ありがとうございます。

まず、20ページに出されていた結論、つまり、情報開示して当事者同士でちゃんと話し合いなさいという結論に関しては、全く異存はないんですけれども、引っかかったとこは何かといいますと、13ページですね。

これ、公取から報道が出たときからちょっと引っかかってはいたところで、許諾料で平均値で124円、一方で、プラットフォーム事業者のそれは352円という形で、その数字を並べておられたんですけれど、プラットフォーム事業者にネットワーク効果があることの背景は、費用逓減型産業で(自然独占性が)あるということが大きなポイントです。つまり、やたら固定費がでかい産業であるということ。だから、この124のほうは、純粋なコンテンツ料で、プラットフォームの固定費に対する収入もプラットフォーム事業者は、別途、賄わなければいけない。

逆に、この352のほうは、(この数字で)、コンテンツ料も(自社のプラットフォームの)固定費も賄わなければいけないということで、その収入の裏側にある費用の在り方が全然違っていると思うんです。なので、あまりこの数字を横に並べておくのは、いろんなミスリードをするのではないかなと。

これがちょっと引っかかったところでございました。多少意見でございます。

【太田主査】ありがとうございます。

何か応答はございますでしょうか。

【公正取引委員会(稲葉氏)】おっしゃるとおり、プラットフォーム側は、当然自社のサービスの提供に必要なコストを引いた上でこの許諾料というのを支払っておりますので、もちろん単純な比較はできないわけでありますけれども、そうした意味では、この下側の、どれぐらいそのレベニューシェアがされているかという割合も含めて、こういった水準が適正かどうかというところは判断していくべき問題だというふうには理解しているところです。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。

坂井委員どうぞ。

【坂井委員】すみません。ちょっと基本的なところを教えていただきたいんですが。これ、もしかしたら事務局のほうになるかもしれないんですが。

今、御報告いただいた内容を、私なりに考えてみると、ニュースを提供している会社のほうはお金を少ないと思っているけど、交渉していなくて、プラットフォーマーのほうは、言われたら情報を出すよと言われている状況ですと。ただ、スニペットについては、これは今のこの状況だと払われていませんということかなと思ったんですけど、我々は、今後、このスニペットについて、これを狭めるとか、そういう議論を求められているのか、あるいは、ここで競争政策はあまり関係ないかなと思っていたんですけれども、そこら辺はどう理解したらよろしいんでしょうか。

【太田主査】稲葉様、ご回答いただけますか。それとも、事務局。では、渡邉様。

【渡邉著作物流通推進室長】著作権課のほうでございますけれども。

こちら、調査をしていただいたということで、おっしゃるとおり、かなり性質の違う2つの事柄だというふうに理解しております。

そのスニペットのほうは著作権法で認められた権利制限の範囲だということではあるのですが、また報告の中でもあろうかと思うのですけれども、どれくらいの利用であればスニペットとして適正な分量なのかどうなのかという課題はあって、メディア側のほうでも自分たちの考え方を示しているというような状況にあるのですが、それについて権利制限の範囲内かどうなのかというところの共通理解ができているかという課題というのはあろうかと思います。

なので、結局、スニペットの権利制限を前提として、どういった適正な運用がなされているか、それについての両当事者間の共通理解が必要だというような課題の整理になっているというふうに理解をしております。

【坂井委員】関連してよろしいですか。

【太田主査】はい、坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】そうすると、要は、ニュースを提供している側は、スニペットは、今の領域だと出し過ぎだということから問題意識を持っていらっしゃるということなんですかね。今の現状で。そこは課題だというんだったら、分かりました。

【太田主査】応答はございますでしょうか。

【公正取引委員会(稲葉氏)】今回の調査の中では、メディア側から様々な御意見をいただいておりますけれども、その長さも含めて、結局、スニペットでニュースが消費されてしまっていて、そこからメディアのサイトのほうにお客さんが流れてこないというところを、メディアのほうは主に問題点として指摘をしています。

他方で、プラットフォーマー側からも、特にこの検索サービスについては、スニペットをそもそも表示するかどうかですとか、それから、表示するとして、どれぐらいの長さを表示するか、これは基本的にはウェブサイトの運営者側で設定できるといった説明がなされています。つまり、メディアに関して言えば、メディアのほうで、それがコントロールできるというようなこともありますので、公正取引委員会としても、そういった諸々の事情を踏まえると、まずは当事者間で共通の理解をしっかり醸成していただくことが優先的にやっていただくべきことではないかということで、考え方をまとめたところです。

【坂井委員】ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。ありがとうございます。

ほかに質問等、御意見ございますでしょうか。

私のほうから、内山委員の質問のフォローですけれども、ここの価格が124円が平均とか、352円が平均とかとあるのでございますが、利益率的に見ると、どういうふうになっているのでしょうか。価格が少なくても利益率が高ければ儲かっているということにもなりうるものですから、もし御存じでしたらお教えください。

【公正取引委員会(稲葉氏)】メディア側のネットを通じたニュース配信に関する利益率については、今回の実態調査の中では調査をしていないというのがお答えになります。

【太田主査】分かりました。どうもありがとうございます。

ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。

生貝委員、どうぞお願いします。

【生貝委員】大変重要な調査であると思います。

そして、先ほどのやり取りに関してなんですけれども、著作権法上の論点としては、47条の5を果たして見直すのかどうかという大きい話は一旦難しい問題だとしても、やはり今回の報告書の中でも、47条の5をどのように解釈するのか、明確化するのかというのが、一つの論点としては見えてくるのかなと思います。

そうしたときに、これ、私がふだん関わっているデジタルアーカイブに関する世界でも、例えば、比較的非営利に近いようなアーカイブでこの条文を使いたいときに、スニペットがどこまで許されるのかといったようなことについてのガイドラインというものがいまだ存在していないのでなかなか使い難いといったような課題もあるし、しばしば聞こえるところではございます。

そういったときに、もしかすると、それこそデジタルプラットフォーマーのようなリスクの取れる事業者様でなくても、こういった条文を適正に使っていくことができるようにするためにも、30条の4については、今、生成AIとの関係で、その明確化に関する議論が一定程度進んでいるところかと思うのですけれども、47条の5の明確化の在り方というところについても検討することは、いろいろな意味で有意義なのではないかなと感じるところがございます。

差し当たり、以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

御意見だと思うのですが、もし御応答がございましたらお願いします。

では、ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。

ありがとうございます。

続きまして、その他、全体を通して何か御意見、御質問、コメント等ございましたら、お受けしたいと存じます。いかがでしょうか。

どうもありがとうございます。

ないようですので、予定しておりました本日の議事は全て終了いたしましたので、特に特段ございませんようでしたら、本日はここまでとしたいと存じます。よろしいでしょうか。

ありがとうございます。

最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。

【白井著作権課専門官】本日はありがとうございました。

次回以降の政策小委員会については、改めて事務局にて調整の上、日程などをお知らせさせていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

本日はありがとうございました。

【太田主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会政策小委員会第1回目を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには、Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動