文化審議会著作権分科会政策小委員会(第5回)

日時:令和6年2月28日(水)

10:00~12:00

場所:文部科学省東館3F1特別会議室

(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  • (1)DX時代における適切な対価還元についての関係者からのヒアリング
  • ― 関連する諸制度(レコード演奏権・伝達権/私的録音録画補償金制度)について
  • ・三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング
  • ・日本レコード協会(畑委員)/日本芸能実演家団体協議会
  • ・日本総合研究所
  • ― DSM著作権指令における透明性原則等について
  • ・上野委員
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング発表資料(780KB)
資料2
日本レコード協会・日本芸能実演家団体協議会発表資料(1.3MB)
資料3
日本総合研究所発表資料(716KB)
資料4
上野委員発表資料(3.2MB)
参考資料1
DX 時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る現状、課題、論点(案)(490KB)
参考資料2
DX 時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係る現状、課題、論点(案)関係資料(4.5MB)

議事内容

【太田主査】時間となりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会政策小委員会(第5回)を開催いたします。

本日は、御多用の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。本日は、委員の皆様には、会議室とオンラインにて、それぞれ御出席していただいております。オンラインにて御参加されている皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段、非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方には、インターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところでございます。特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【太田主査】ありがとうございます。では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【白井著作権課専門官】ありがとうございます。事務局より資料の確認をさせていただきます。資料1から3として、関連する諸制度に関する調査の報告について、御用意いただいております。それから、資料4として、上野委員にヒアリングの資料として御用意いただいております。参考資料1ですが、これまでも確認してきました論点が掲載されております。参考資料2ですが、一部更新をしていますが、これは後ほど御説明させていただければと思います。

以上です。

【太田主査】どうもありがとうございました。では、議事に入る前に、前回の会議で委員から御指摘のありました、デジタルプラットフォームサービスに関連する法令、サイバー犯罪に関する条約について、まず事務局より御報告をお願いいたします。

【渡邉著作物流通推進室長】参考資料の2の21ページを御覧いただければと思います。前回会議におきまして、内山委員より御指摘のありました、デジタルプラットフォームを直接対象にした海賊版を取り締まる法律の有無ということに関連をいたしまして、事務局において関係省庁にも御知見をいただきながら、関連のものをまとめたものとなってございます。

1つ目に、デジタルプラットフォーム取引透明化法、2つ目に、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法を挙げてございます。これらは、商品等を提供しようとする者と提供を受けようとする者をつなぐ場としてのプラットフォームを対象として、そのプラットフォームを提供する条件の開示や、取引の適正化、紛争の解決促進に資する措置などについて規律を設けているものとなってございます。

3つ目のプロバイダー責任制限法は、その対象として、いわゆる動画投稿サイト事業者等も含まれるとされているところですけれども、著作権侵害も含めました権利侵害について、事業者の免責要件等を定めたものとなってございます。

続きまして、25ページを御覧いただければと思います。不特定の者が情報発信をし、不特定の者が閲覧をできるというプラットフォームサービスに関しましては、総務省におきましてプラットフォームサービスに関する研究会を開催し、誹謗中傷等の違法有害情報対策について、削除申出窓口の設置義務等の事業者に求めるべき具体的な措置を取りまとめて、法制上の手当ても含めて検討がなされているものということで、その取りまとめの概要を参考資料として追加させていただいております。

以上、直接的にプラットフォームの責任を問うということとは異なる部分もございますけれども、関連の情報として整理をさせていただいたところでございます。

【小林国際著作権室長】続きまして、海賊版対策の関連で御指摘をいただいた国連サイバー犯罪条約の状況につきましては、2019年12月の国連総会にて、犯罪目的による情報通信機器の使用対策に関する包括的な国際条約を作成するアドホック委員会を設立する決議が採択され、当該委員会で議論が行われております。

アドホック委員会は、2022年の2月から2024年の2月までに6回の交渉会合と、1回の最終会合が開催されました。第78会期中、つまり2024年9月9日までに条約案を国連総会に提出することを目指しています。国連サイバー犯罪条約の起草過程においては、各国からインプットを募集する形式がとられたところ、日本としては、コンピューターシステムを利用した著作権の侵害行為の国内犯罪化を義務づける規定を設けることを提案しまして、交渉過程においても、これを主張していたものの、この条項に対して、各国からの幅広い支持が得られなかったことから、第5回会合の後で条約の草案テキストから、この規定全体が削除されました。

このため、現在議論されている条約案で、コンピューターシステムを利用した著作権侵害は扱われておらず、締約国に国内犯罪化を義務づける規定としては、主に違法なアクセス行為や違法なサイバーを本質とする犯罪のほか、いわゆる児童ポルノやリベンジポルノに関する規定などが主な規定として含まれております。

御報告は以上でございます。

【太田主査】ありがとうございました。本件に関しまして御質問がございましたら、お願いしたいと思います。

ないようですので、ありがとうございました。

それでは、議事に入ります。本日の議事は、議事次第にありますように(1)と(2)の2点となります。早速、議事(1)のDX時代における適切な対価還元についての関係者からのヒアリングに入りたいと思います。

本日は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、一般社団法人日本レコード協会、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、一般財団法人日本総合研究所より、DX時代における適切な対価還元に関連する諸制度であるレコード演奏権・伝達権並びに私的録音録画補償金制度について御発表いただき、その後、上野委員より、DSM著作権指令における透明性原則等について、御発表いただきます。

それでは、初めに資料1に基づきまして、三菱UFJリサーチ&コンサルティング政策研究事業本部主任研究員であられる、萩原理史様より御発表いただきます。

それでは、よろしくお願いいたします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】三菱UFJリサーチ&コンサルティングの萩原と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

商業レコードの利用に係る権利に関する諸外国調査ということで、御紹介させていただきます。本日、10分と伺っておりますので、ごく簡単に御紹介させていただきたいと思います。

1ページ目、御覧ください。1つ目の調査の背景については、これまでも議論なされていただいたと思いますが、クリエイターの皆様への適切な対価関係の中でというところの議論を踏まえての調査となっております。そういった中でも、いわゆる我が国のレコード製作者・実演家の皆様におかれましては、商業レコードを用いて市販CD等を直接的に再生して、店舗、商業施設等で音楽を公衆に聞かせる行為、並びに有線・衛星音楽ラジオ、インターネット配信等の公衆送信を店舗等が受信して、音楽を間接的に公衆に聴かせる行為、こちらについては権利が与えられてないという状況を踏まえまして、この調査においては、我が国において、音楽著作物も含めた、いわゆる実演・レコードに関する保護の歴史と経緯を整理するとともに、いわゆる関連する国際条約上の取り扱い、また、実際、諸外国における法制度や簡単ではございますが、これらの実践についても御紹介していくといった調査の内容となっております。

調査のスケジュールについて、2ページ目で簡単に御紹介させていただきます。10月下旬ぐらいから調査をスタートして、主要国として、EU、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカ、中国、シンガポール、韓国といったところを文献調査して、2月、3月にかけて海外の方には書面調査だったりとか、国内の研究者の方々に意見交換をしたりとか、そういったことで調査を進めているといったところでございます。

本日、時間も限られているといったことで、この調査全体の中でも、こちらの太字の下線を引かせていただいたところを中心に御紹介させていただきたいと思います。特に音の権利に関する国際条約でいうと、WPPTが一番重要であろうということでWPPTに着目して整理しております。また、この加盟している各国における留保の傾向について、簡単に御紹介させていただきます。

また、この調査の中では、第4章ということで、諸外国の状況ということで、各国における権利の付与の状況や、本日のご説明の中では最後に各国における徴収、分配方法の動向についても、本日、簡単に御紹介させていただきます。

では、4ページ目、御覧ください。先ほどからWPPTということで、著作隣接権に関する国際条約でございます。この第15条第1項を見ると、「実演家及びレコード製作者は、商業上の目的のために発行されたレコードを放送又は公衆への伝達のために直接又は間接に利用することについて、単一の衡平な報酬を請求する権利を享有する」といった規定になっております。

この規定は、いわゆる留保をすることができる。つまり、一部だけ導入することができるといったものになっております。留保の形態はさまざまありますが、1つ分類の方法があるかなということで、この直接と間接、放送と公衆へ伝達という4つの軸で分けると、左の表のような形で分けられると考えております。

具体的には、放送の行でいうと、直接と放送の欄でいえば、普通に放送でレコードを使う、間接と放送については、再放送だったりとか、有線同時再送信が含まれると考えられます。続いて、公衆への伝達の行は、概念としては結構広いのですが、具体的な例としては、公衆の伝達のうち直接については店舗等でレコードを再生するといったことが挙げられると思います。具体的には、ディスコ、バー、レストラン、地下鉄の駅とか、そういったところも含まれることは注釈などでも補足をしております。

また、公衆の伝達のうち間接については、放送したものを店舗が受信して、それを聴かせるといったことが含まれます。もちろん、この四等分よりもさらに細かい部分だけ留保している場合、逆に包括的に留保しているケースはありますが、調査のまとめ方の1つの分け方の指針になるかなということで、こちらの4軸を御紹介しています。

では、実際どれぐらい留保しているのかは、右側のグラフになっております。これを見ると、12%の国がこの第15条第1項について留保しています。完全に適用しないと明確に書いている国も4か国ぐらいございまして、この12%の中のほかの国については日本も含まれますが、店舗内でのレコード再生や、オンデマンド・ストリーミング・サービスを受信して、店舗で再生することについては認めないというような日本のような国もあれば、カナダのように、レコードの再送信については報酬請求権を認めませんといったように、条件付で適用している国もあります。

5ページ目です。お時間の関係で一つ一つは読み上げませんが、本調査の調査対象国のうちアメリカを除いた国や地域について、報酬請求権、いわゆる権利をどのように与えているのかといったところを御紹介している一覧表になります。こちらは、先ほど申し上げた放送の直接と間接、公衆への伝達の直接と間接といったことで整理をすると、EUと、また、そこに所属しているドイツ、フランス、また、今は離脱してしまいましたが、イギリスについても、やり方はやや違うといえ、権利を付与しています。また、韓国については、報酬請求権ということで、2016年以降、権利を与えていると伺っております。

また、中国、シンガポール、こちらの国については、実演家についてはまだというふうに伺っていますが、レコード製作者に対しては権利を付与しています。

こちらの権利については、通常、それぞれの実演家、レコード製作者が集めるということは現実的にもなくて、通常は集中管理団体、いわゆるCMOが店舗等などから報酬を徴収しているといったところになっていますので、どういった団体が徴収しているのかといったことも、簡単に御紹介をさせていただいています。

また、実際のところ、実演家、レコード製作者の配分比率がどうなっているのか、こちらについては、通常、実演家に権利を付与している国においては、レコード製作者と実演家の配分比率については半分、半分で与えているといったところは傾向としてあるのかなということで、簡単に御紹介しています。

また、この比率の根拠は、通常はCMOの規定で定められていますが、フランスのように法律で実演家、レコード製作者を半々にしなさいというふうに規定している国もございます。

最後の5ページ目、一番最下段の行になります。こちらについては、いわゆる条約締結については、内国民と同じ扱いをしているかどうかといった、いわゆる内国民待遇、こちらについて各国、どのようなスタンスでいるのかを整理しています。実際、規定と運用のところの間で乖離している国もあると思われますが、まずは各国法令の中でどのような書かれ方をしているのかといった観点から、整理をしているものになります。

ですので、例えばフランスとかは規定上は内国民待遇になっているけれども、EUの関連する報告書の評価によっては、これは相互主義的な運用をしているのではないか、そういったコメントをされている国もあります。また、中国も原則、内国民待遇になっていますが、前ページ目で第15条第1項についてWPPTで留保しているという観点から考えると、少なくともこのレコードに関するものは、相互主義的な運用をしているのではないかと考えられますので注釈でコメントを付しております。

6ページ目以降では、いわゆる徴収・分配のスキームということで、簡単に御紹介させていただいております。6ページ目は、EUの報告書のほうで、どのようにこのレコードの権利についてお金を徴収して、分配しているのかということをまとめているものがございますので、その中からから御紹介したものになります。

大きく4パターンございますが、一言で言うと、例えば実演家のCMOが2つ、製作者のCMO、集中管理団体が2つあった場合に、それぞれが店舗等に行って、お金を徴収しているということは実際のところなく、通常の場合は、この図にあるような4つのパターンがとられているということでございました。

1つは、合弁モデルということで、集中管理団体1つを立ち上げて、そこが実演家・製作者に対して、それぞれ分配するといったやり方です。また、分担モデルということで、放送局、店舗等について役割分担をして、あるCMOは放送、あるCMOは店舗ということで役割分担して徴収をして、それから相互に送金し合うというやり方です。また、ワンストップということで既にCMOがあるので、別途CMOをつくり、そこが徴収するというやり方もあれば、4つ目は1から3をミックスし、特に徴収が大変な店舗について、ワンストップで徴収しているというケースもあるといったところでございました。

すみません、7ページ目、8ページ目では、主要な国についてということで、ドイツの例を7ページ目で御紹介しています。ドイツには、GVLという隣接権団体があり、この団体は実演家とレコード製作者をまとめています。ラジオ・テレビについてはGVL、隣接権団体が直接徴収するのですが、いわゆる店舗等での再生については、音楽著作権団体に委託という形で依頼し、そこが徴収して、さらに隣接権団体に再分配するといった方法をとられているようでした。

料金表も、いわゆる音楽著作権団体であるGEMAほうで、1つの料金表を提示して、その金額を徴収しています。料金表の注釈を見ると、徴収した報酬の一部をGVLが隣接権団体に分配しますよといったことが書かれています。いいかえると、GEMAとGVLのそれぞれで料金表を設定するのではなくて、1つの料金表で運用されているということでした。

店舗は、主な収入としてはテレビ・ラジオが中心で、現状、公衆の伝達、いわゆる店舗等での再生は63億円ぐらい集められていると伺っています。

続きまして、8ページ目は、英国です。こちらは店舗等の徴収については、隣接権団体と著作権団体が1つの法人をつくって、そこが徴収をしているという方法になっています。料金表については、資料中は合算したものを表示していますが、実際の運用としては、各団体のほうで内訳となる料金表を持たれていて、徴収は1つのPPL PRSという合弁会社がまとめて徴収すると伺っています。

いろんな例から、かいつまんで合算したものが右の表になっていますが、内訳については、報告書のほうで御紹介したいというふうに考えております。

その他の国も、いろいろ運用はございますが、一言で申し上げると、冒頭、6ページ目の御説明のときに申し上げたとおり、まず個人や各社が徴収するということはなく、団体が徴収しています。さらにはそれぞれの団体がばらばらに徴収するというやり方ではなくて、例えば隣接権の団体で1つにまとまるとか、ドイツのように一部のパートについて音楽著作権団体と協力してやられているとか、イギリスのように1つの法人をつくって、店舗からの徴収を行っているとか、そういった形で割と合理的な手段がとられているのかなというふうに感じているところでございます。

かなり駆け足の御説明になってしまいましたが、弊社の御説明については以上でございます。かなり省略してしまったところがありますので、御質問等あれば、この後いただければというふうに考えています。

【太田主査】ありがとうございました。ただいまの御発表について、御質問がございましたら、お願いいたします。なお、御意見につきましては、日本総合研究所の御発表が終わった後に、まとめて意見交換の時間を設けますので、その際によろしくお願いいたします。

御質問、ございますでしょうか。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。ありがとうございました。まさに、この原盤の報酬請求の部分というのは、私どもが一番気にしている部分で、この海外の事例でどんなふうにやられているかを教えていただきたいです。

例えば、放送等でその原盤が使われました、もしくは、どこかの会場で使われましたというものを、どのようにしてその情報を吸い上げているんでしょうかという質問です。つまり、使用者が手書きみたいなメタ情報を出しているのか、デジタルで自動的にマッチングしているのか、ちょっとその辺り、海外事情を教えていただきたいと思います。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】今回省略していますが、例えばアメリカについてはオンライン、いわゆるインターネットラジオについての制度があるのですが、ユーザーが申告する仕組みがとられ、こういう手法で実態を把握されているのかなと感じているところでございます。

利用データの収集についてもわかる国については報告書でも紹介していきたいなと考えていますが、報告書は割と規定関連を中心に整理しているのが現状です。今の御意見みたいなところも参考にしながら、デジタルな手法で利用データを集めているのかといったことを調べていきたいなというふうに思いました。ありがとうございます。

【仁平委員】ありがとうございます。まさにその部分、一番気になっていて、つまり、使用者が性善説的に、私は何々を使いましたというのを報告する必要があるのか、それとも、今この時代ですから、デジタルマッチング等でふにゃらかふにゃらかという原盤が確かに使われているねと。

そのふにゃらかふにゃらかを、データベース上で調べると、誰が製作者で、実演家が誰だかというのが分かるよという、何かスーパーなデジタル社会が世の中では、海外では実現されていたらすばらしいな、それを日本でも取り入れたいなという意味合いで、ちょっと聞かせていただきました。

もし今後、何かそういうことが分かりましたら、ぜひよろしくお願いします。

以上です。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】ありがとうございます。ちょっとだけ補足すると、英国、フランスとかでは、いわゆる分配するときの利用方法については、割とデジタル方式で、使用データとかを吸い上げて、それを分配しているというケースはあるみたいなので、今のところ過渡期なのかなというふうに感じたところです。

【太田主査】ありがとうございます。ちょっと関係しますけど、これ、無理難題かもしれませんが、捕捉率とかいうのは各国であるんでしょうか。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】こうしたご意見は関連する調査を行うたびに毎回聞かれますし、すごい知りたいことだなというふうには思っていますが、意外とそういったデータを整備されていないことが、過去の例を見ていると多いのかなというふうに感じています。もちろん、もし、関連するデータがあれば御紹介できたらと思っていますので、努力はします。おそれいりますが、そういう回答をさせていただきます。

【太田主査】ありがとうございます。ほかに御質問はございませんか。

内山委員、どうぞ。

【内山委員】内山でございます。萩原さん、ありがとうございました。私の質問は、資料4ページの右下のほうで留保条件について国の一覧があって、割に国土の大きな大国がいっぱいあるなというふうに見ていたんですけれども。この中でも、特にアメリカがどういう形で留保条件をつけているのかということについて、もしお分かりになれば教えていただければという質問でございます。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】調査の中では、全世界でWPPTで留保している国は全部留保規定をレビューはさせてはいただいています。

アメリカはデジタルのレコード配信に関してのみ、いわゆる第15条第1項の規定を適用するというような規制が書いてありますね。

【内山委員】やっぱりリアル店舗は難しいということですかね。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】そうですね、一応、もともと、これは多少過去の調査などの受け売りではあるんですけれども、もともと、いわゆるアナログの電波のラジオについては、かなり力が強くて、なかなか報酬請求権を認めてこなかったという歴史がある中で、いわゆるオンラインストリーミングが登場してきており、このタイミングで報酬を得られる仕組みを導入して、少なくともオンラインストリーミングには、一定の権利が認められたという歴史があるようでした。

以上です。

【内山委員】ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。

今村委員、どうぞ。

【今村委員】1点、お伺いしたい点があるんですけれども、資料でいいますと、5ページの部分です。実演家・レコード製作者の配分比率というものがあって、この表だと、実演家・レコード製作者の配分比率が分かります。イギリスには隣接権はないですけれども、レコードと実演の団体が1つの団体をつくって分けているわけですね。

レコード演奏などについて、トータルで集めて分配しており、実演とレコード製作者の割合が50%、50%というのは分かるんですけれども、著作権者のほうも合わせた配分比率みたいなものが、分かると良いのではないかなと思います。イギリスは多分データは出ていると思いますし、ほかの国も分配モデルの組み立て方によって違うと思うんですけれども、著作権者との関係でどういう比率になっているかというのも、そういうデータが出る国については、出していただければ、今後レコード演奏に関する権利ついて動きがあったときに、こういう比率でやっているということが、外国ではこういう比率だということは分かっていいかと思います。

その点、追加で調べることが増えるのかもしれませんけれども、お分かりでしたら、報告書に載せていただければなと思います。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】音楽著作権団体と著作隣接権団体の比率は、正直国によってデータの粒度にかなりばらつきが出そうです。ドイツについては、先程ご紹介したとおり料金表が合算されており金額がわかりません。ただ、分配計画書やGVL50年という資料があり、これによると音楽著作権者からもらった比率が紹介されています。

逆に言うと、イギリスはきれいにデータが出せそうだと思いますし、それに近い状況はフランスにもあります。似たような項目から比較できるような形で整理してまいりたいと思います。

アドバイス、ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。菅委員から、事務局を通じて質問をいただいておりますので、お願いします。

【渡邉著作物流通推進室長】本日、菅委員が事情によりチャットで御連絡いただくような形になっておりまして、代わりに読み上げさせていただきます。

8ページですけれども、使用料の規程がございますけれども、ライブミュージックのライセンス料が低いのはなぜでしょうか。音楽関係なので、しっかり取ると思っていましたということの御質問でございます。よろしくお願いいたします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】すみません、これも、あくまでも例示のために一番小さいところ、つまりスタッフ4人以下とか、いわゆる100人以下規模の店舗だけでお示ししているところであります。大きい場所の場合には異なるかもしれません。また、純粋に料金表を見て、こういう金額ですというふうに整理はしていたので、細かい理由までは、今のところすぐ御紹介できない状況にあります。分かる情報があれば、御紹介できたらと思っております。

【太田主査】よろしくお願いします。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】ちなみに国によっては、もちろん主に音楽のレコードを使われている場所で金額が大きい場合がありますので、報告書の中でも御紹介していきたいなというふうに考えております。

すみません、補足でした。以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

上野委員、どうぞ。

【上野委員】御報告ありがとうございました。韓国についても御紹介がありましたけれども、2009年に法改正があって、御紹介のように、もうこの問題については既に条約に対応されていると思うのですけども、他方で、留保宣言の国の一覧に入っております。これは今でも留保宣言が維持されているということでしょうかね。もしそうだとしたら、その理由など、お分かりになりましたらご教示いただけませんでしょうか。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】そうですね、それは上野委員からの御指摘は、結構各所からいただいていまして、我々もちょっと頭を抱えているところではあります。韓国の法令は、もう既に改正後で報酬請求権を与えていますが、最新の留保宣言でも改正前の留保宣言のままになっているという状況にあります。

正直、理由を知りたいと思っており、周辺情報を洗ってはいるんですが、答えは今のところないといった回答になります。なかなか直接聞ける状況になく、対応を失念しているのか、相互主義を維持するために留保したままにしているのかとか、いろいろ推測はしても、確定的なことは言えません。

この点については、もしアドバイスがあれば、むしろ教えていただきたいという状況にあります。

【上野委員】すみません、ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。私から1つ、的外れかもしれませんけれども、質問させて下さい。「法と経済学」などでは、ライアビリティー・ルールとプロパティー・ルールの区別をして分析することがあります。これに交渉の要素を加味すると、第4章のところで「許諾権」とありますけど、許諾権者に許諾してもらうためにお金を払うということになると思います。その場合,実態としてどのくらい払っているのかということも分かるでしょうか。

許諾権ということは、許諾しないでもいいということですから、許諾してもらうためには何らかの報酬が必要になるので交渉になると思われますので、その実態です。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】英国の場合には、結果的には集中管理がなされているので、制度としては許諾権だったとしても、運用としては報酬請求権に近いような運用なのかなと考えています。

おそれいります。どのようにお答えすればよろしいですか。

【太田主査】相場観ですかね。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】相場観でいうと、いや、許諾権だからなのかというふうには、明示的には言えませんが、他分野も含めて全般的にはイギリスの徴収額は高い傾向にあるという肌感覚はあります。ただ、それは許諾権が要因であるとはいいきれないと思っています。クリアな回答ができず申し訳ございません。もう少し勉強させていただきたいと思います。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかに御質問ございますでしょうか。オンラインの先生方、委員の方々。では、萩原様ありがとうございました。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】お時間いただきましてありがとうございます。至らないところがあったかもしれませんが、御要望等あれば、文化庁さんに言っていただければ、可能な範囲で努力はしていきたいと思いますので、アドバイスいただければ幸いです。ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

それでは、次に資料2に基づき、日本レコード協会専務理事、畑陽一郎委員と、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員会副委員長、日本音楽事業者協会専務理事、中井秀範様より、御発表いただきます。

それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

【畑委員】御紹介いただきました日本レコード協会の畑でございます。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】中井でございます。今回、レコード協会さんと、我々実演家団体と御一緒に調査研究しましたので、発表のほうを畑さんに任せてしまいます。すみません。

【畑委員】では、今回の調査「レコード演奏・伝達権に関する市場調査」の結果を報告させていただきます。

次、お願いします。まず調査設計でございます。様々な業種におけるレコード演奏の実態を把握するために、日本標準産業分類に基づいた全業種を対象としたウェブアンケートを実施しました。事前のスクリーニング調査が3万6,000サンプル以上、これで回答者属性、レコード演奏の有無等を把握いたしまして、演奏実態のあるサンプルから2,000人弱の調査対象を抽出して深掘り調査を行っております。実査は12月末、約2か月前のタイミングでございました。

次、お願いします。こちらが、本日御報告する調査結果の主立った数字のまとめでございます。内容はそれぞれのページで御報告をさせていただきます。

次、お願いします。まずは、業種別のレコード演奏を行っている割合、それに基づく事業所数の集計です。この表では、業種の大分類を取りまとめておりますが、「宿泊業・飲食サービス業」で大きな割合になっている実態が見てとれるかと思います。これらを業種別の事業所数に基づいて加重平均をすると、全体で29.7%という数字となりました。この数字は、全国で157万事業所に相当する割合となります。

なお、脚注のとおり、グレーの網かけになっている業種は、JASRACさんに倣って徴収免除と考える業種、また「公務」については著作権法38条の権利制限の適用として、この後御説明します市場規模の推計等からは除外をして計算をしております。

次、お願いします。次に、レコード演奏に使用される音源について、どのような種類がどの程度使用されているのかという分析です。全業種で見た場合、一番多いのが「CD・レコード」及びそれらの複製物を用いる形で、27.8%という結果でした。2番目が、USENなどの「有料音楽チャンネル」で23.6%、そして、3番目が「プラットフォーム関連サービス」で、23.1%という結果になりました。「プラットフォーム関連サービス」とは、脚注にも書いておりますが、SpotifyやApple Music、YouTube等のプラットフォーマーが一般ユーザー向けにインターネットで提供する、いわゆるBtoCサービスを総合したものです。

これらのBtoCサービスは、通常は利用契約によりまして業務利用は禁止をされております。しかしながら、店舗等での利用を制限できるような仕組みがないこと、また、便利であり価格も安い、あるいは無料だということで、利用規約を無視して実態としては使われてしまっている、ということが分かりました。

これらの「プラットフォーム関連サービス」の利用割合というのは、今後も加速度的に進むことが予測されますので、何らか正常化していく方策も必要ではないかと感じているところでございます。

次、お願いします。音源の種類別利用率を業種別に見たグラフですが、ちょっと細かいグラフになりますので割愛します。後ほど御覧いただければと思います。

次、お願いします。次も音源の種類別利用率ですが、回答者の事業形態で分析した資料です。上段が自営業などの個人店における利用率、下段が企業、チェーン店等における利用率を表わしております。グリーンの部分を見ていただきますと、これはUSENなどの「有料音楽チャンネル」、あるいは「業務用の有料ストリーミングサービス」等の部分になりますが、BGMサービスを有料で利用している割合になります。

つまり、企業・チェーン店のほうがBGMというものにお金を払う意識が高いということが見てとれるかと思います。

次、お願いします。アンケートでは、レコード演奏における音楽ジャンルについての質問もしています。これを音源の種類別に分析した資料です。「日本の音楽」と「外国の音楽」、また、「その他」に分けております。その他にはクラシック、伝統音楽等を含みます。この3つで分類したところ、全音源種類の加重平均で「日本の音楽」が56.1%、「外国の音楽」が28.3%になりました。何となく外国音楽の利用のほうが、BGMは多いんじゃないかなというイメージを持たれる方も多いかと思いますが、実態としては、圧倒的に日本音楽の利用のほうが多いという結果になりました。

次、お願いします。ここから、国内の市場規模推計に入っていきます。御覧のチャートが推定ロジックになります。レコード演奏実態のある事業所につきまして、音源の種類に応じて蛇口徴収と推計するか、または元栓徴収かに分類します。蛇口徴収とは、管理団体が1店舗ずつ回って、契約して、使用料を徴収する方式、元栓徴収とは、有料音楽チャンネル、USEN等のサービス事業者が自社サービスの利用者から使用料を代行徴収して、管理団体に納付するという方式です。これは、JASRACさんが既に実施されている方式になります。

なお、元栓徴収の例で、今、画面上に「プラットフォーム関連サービス」も例示がしてありますが、これについては、現在は元栓徴収の実態はございませんが、事業者が提供しているサービスということで、今後の可能性として、今回は元栓に入れて推計をしております。

それらの分類に対して、蛇口徴収の場合は事業者面積に応じた使用料を適用します。アンケートでは、各事業所の面積も回答いただいておりますので、その面積で計算が可能になっております。元栓徴収の場合は、サービス利用料金の一定%を使用料として積み上げております。先ほど御説明しましたとおり、免除業種、あるいは著作権法38条の権利制限に該当する利用については、外しております。

次、お願いします。こちらが今回の推計に用いた使用料テーブルになります。著作隣接権に関する演奏の規定というのはございませんので、今回はJASRACさんの使用料規定をお借りして、それに基づいて計算をしております。蛇口徴収の場合は、御覧のように店舗面積に応じた使用料テーブルになっております。また、元栓徴収の場合も、現在、JASRACさんが適用されているBGMサービス利用料金の1%ということで、仮置きしました。

次、お願いします。こちらが、国内市場規模の推計結果になります。運用としては、左上、ベースに黄色(ベージュ)の網掛けを敷いている「元栓と蛇口徴収の組合せ」で「免除業種を除外」した数字、これが一番現実的なところであろうと我々は考えております。この場合で年間約68億円の徴収規模という推計をいたしました。このうち蛇口徴収が64億円、元栓徴収が3億6,000万という数字になっております。

また、全対象事業所、1店舗当たりの平均徴収額、年間で見てみますと6,344円という数字になりました。このように、日本には決して小さくない規模のレコード演奏市場があります。ただ、この推計はあくまでアンケート結果に基づく潜在的規模の数字でございますので、管理開始と同時に、これが満額取れるかというと、そういうわけでもないと思っております。

例えば、実務的には激変緩和措置として、契約当初は低い料率から開始し、複数年かけてフルに持ち上げるといったような運用もあります。しかしながら、我々、レコード製作者及び実演家の団体といたしましては、157万事業所をカバーできるような効率的な徴収方法を、これから関係者でしっかり検討いたしまして、先ほどの三菱UFJリサーチさんの資料にもあったような方法も視野に入れ、68億円というところに何とか近づくように最大限努力してまいりたいと考えております。

次、お願いします。最後に、国際収支のシミュレーションについて述べます。これは、レコード製作者及び実演家に権利付与された場合に、これまで得られなかった外国からの分配収入、それに対して日本国内での徴収から外国権利者に分配する支出、その収支バランスを推計してみたものでございます。

まず、分配収入ですけども、IFPIの数字で世界75か国の2022年の徴収実績、これが約7.2億ユーロでした。それに対して、日本楽曲の視聴割合を乗じるわけですけれども、レコード演奏における日本楽曲シェアというデータはございませんので、日本を除く世界200か国・地域のストリーミングデータを今回は用いました。

アメリカのLuminate社がまとめた2023年のデータによりますと、世界上位25万曲にランクインした日本楽曲数の割合が0.4%ということで、その結果、管理開始後の分配収入は約4億5,000万円という推計をいたしました。

それに対して、下段の外国に対する分配支出ですが、潜在的市場規模68億円をフルで見て、この調査結果で得られた外国音楽の比率28.3%を乗じますと、最大で約19億円の支出が見込まれて、管理開始当初は輸出過多となる可能性がございます。ただ、我々、音楽業界としましては、グローバルで先行しておりますK-POPの背中に追いつくことを目指して、今、業界一丸となって、いろんな海外展開施策をやっております。

同じこのLuminate社のデータでは、K-POPはシェア4%というデータがありますが、我々、決して追いつけない背中ではないと思っております。事実、日本音楽制作者連盟さんの調べによりますと、2023年に海外で行った日本人のポップスアーティストのライブが900公演あったというデータが出ております。この取組みは、今年もさらに拍車がかかっておりますので、さらに多くの海外公演が実施されるようになります。

昨年、YOASOBIの「アイドル」という非常に大きなヒットモデルがありました。また、今年も同じようなヒットモデルが既に出現をしております。そのような形で、グローバルにおける日本音楽の人気がさらに盛り上がって、中段で推計をしておりますけども、毎年20%ずつ日本音楽のシェアが拡大するという仮定を置いていますが、それも現実のものになってくるのではないかと考えております。

日本音楽の海外展開の拡大が、レコード演奏のマネタイズ促進につながると、そういった好循環のサイクルを我々期待しております。

他方、グローバルにおける英語楽曲のシェア、一番下段に注記をしておりますが、これもLuminate社のデータによりますと、既にダウントレンドに入っているというデータもあります。そのような状況を考慮すると、管理開始後6年程度でこの国際収支は逆転、黒字化できるんではないかと。10年後には、分配収入50億超も夢ではないと考えております。

このように、10年後は、音楽業界だけでなく、日本社会に大きな還元をもたらす取組と我々考えておりますので、ぜひ御支援、御検討をよろしくお願いしたいと思っております。

では、最後に実演家の立場から、中井さん。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】ほぼ畑さんのほうから御紹介があったとおりでございます。非常に分かりやすく申しますと、喫茶店とかでCDがかかっていると。作曲家、作詞家の先生にはちゃんとお金が行くんですけど、レコードをつくった人、歌っている人には一銭も入らないという現状を御理解いただければと思います。

この辺は、我々もこれからちゃんと啓蒙活動をしていかないといけないなというふうに思っております。CPRAという著作隣接権管理団体もできてちょうど30年たちまして、30年記念の活動として、そういうことも行っております。4月ぐらいにはレコード協会さん、我々、JASRACさんと対談させていただいた分のVTRを公開したりとか、既に上野先生には公表していただいたりとか、そういうことで、実演家のことについて、これからもっと御理解をいただけるようにというふうに思っております。

徴収に関しても、分配に関しても、これからまだ課題がありますけれども、取りあえず、世界に追いつくようにというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【畑委員】以上です。

【太田主査】ありがとうございました。ただいまの御説明を踏まえ、御質問がございましたら、お願いいたします。

唐津委員、どうぞ。

【唐津委員】唐津です。御発表ありがとうございました。資料9ページのところで、この使用料の試算というお話のところで、実際に使用料を徴収するようになったときに、満額取れるわけではないというお話がありました。使用料を取られるのであれば、じゃあ、使わないという事業者が出てくるだろうという、そういうお話もありました。

満額取れるわけではないというのは、使用料を実際に設定した場合には、使用料が設定されたから、今使っている事業者の中に使わないという人が出てくるだろうとか、そういう想定でのお話でしょうか。

【畑委員】そういうケースもあり得ますが、どちらかというと、こういう管理事業をやっておりますと、運用的に多いのは、例えば6,000円という使用料を明日から払ってくださいというのは、なかなかハードルが高かろうと。最初、例えば1年間は3,000円で運用しましょう、2年目は4,000円で運用しましょうというような、階段をかけて規定の使用料金額まで持っていくという運用も実際にはございます。

ですので、そういう面で、ユーザー数のカバー率と金額的な到達率、両方の要素があるということで御理解いただければと思います。

【唐津委員】分かりました。そうすると、使用料の設定で、ある意味、権利者団体側が自主的に、初めは段階的に低めの設定をして、徐々に増やしていくということを想定しているということですか。

【畑委員】そうですね、その辺、どこまで段階的にするのか、あるいはそれを実際に適用するのかどうかという点は、これは利用者との契約になりますので、その契約においていろいろ協議をしていくということになろうかと思います。

【唐津委員】ありがとうございました。

【太田主査】よろしいでしょうか。ほかに御質問ございますでしょうか。

伊東委員、どうぞ。

【伊東委員】ABJの伊東です。非常に丁寧で興味深い調査、ありがとうございました。個人的な感想なんですけれども、業種別のレコード演奏率で宿泊と飲食が多いのはすごいよく分かるんですけれども、漁業と工業がそれに匹敵しているというのがなかなか興味深かったんですが。

私の質問は、3ページ目ではなく、4ページ目で音源の種類がありまして、5番目、6番目ぐらいにそこそこ数が多いDVD・Blu-rayなどとありまして、その括弧の中に、DVD・Blu-rayの映像を取り込んだ端末からの再生を含むとあります。DVD・Blu-rayから映像を取り込むって、結構難しいじゃないですか。これはレアケースで、あえて入れているのか、結構多くの人がDVD・Blu-rayから、言葉は悪いですけど、ぶっこ抜いているのか、そこら辺は分かっていますでしょうか。

【畑委員】これは、いわゆる技術的保護手段の回避なのかどうかは置いておいて、回答の選択肢にある「CD・レコード」の方で、「CD・レコードの音源を取り込んだ端末からの再生を含む」という定義をしていますので、それとの並びで映像を取り込んだ端末からの再生を入れただけだと思います。そういうケースが非常に多いといった実態を、あえて想定して入れたということでは決してないと思います。

【伊東委員】分かりました。ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【畑委員】ちなみに漁業はなかなか興味深いというお話がございましたけれども、一応これ全部「接客スペース」ということでアンケートを取っていますので、例えばお魚センターとか、そういうところなのかなと想像しております。

【太田主査】ありがとうございます。ほかに御質問ございませんか。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】すみません、仁平です。漁師さんが歌を歌っているというわけではないなというところで、ちょっと面白かったんですけど。

すみません、興味本位の質問なんですが、これ著作権の演奏権使用料を徴収するお話をJASRACさんに伺うと、皆さん、すごい大変なんだよというふうに、本当にこっちが割と徴収、簡単ですよねみたいなことをちょっとでも匂わせると、JASRACの方から物すごい怒られるというか、エネルギッシュな目線を向けられてしまうんですが。

こういう原盤において、その徴収の人的な組織というのは、今現状、何かプランはあるんでしょうか。

【畑委員】これは、現状、いわゆる演奏権として、全国津々浦々、利用者と契約して使用料を取っていく全国組織はJASRACさんにしかありませんので、著作隣接権においてこのレコード演奏・伝達権がもし認められれば、というか、認めていただくためには、その検討をこれからしていかないといけないと考えています。

今、レコード協会、それから実演家団体は二次使用料等を別々で徴収していますけども、そういうやり方は、レコード演奏権については現実的ではないだろうということで、やっぱり一緒にやっていく。でき得れば、先行するJASRACさんともうまく連携していくような方法を、これから関係者全員でしっかり検討して、効率的で網羅性の高い徴収ができるようにしっかり検討していくということだと思います。

【仁平委員】ありがとうございました。

【太田主査】よろしいでしょうか。ほかに御質問ございますでしょうか。ありがとうございました。

それでは、次に、資料3に基づき、一般財団法人日本総合研究所研究員、原晶穂様より御発表いただきます。

それでは、どうぞよろしくお願いします。

【日本総合研究所(原氏)】一般財団法人日本総合研究所の原と申します。本日は、令和5年に実施されました、レコード演奏権等及び知的領域におけるデジタル方式の録音録画等に関する調査につきまして、報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

本調査の概要につきましては、資料1ページ目を御確認ください。一般国民と音楽、または映像の権利者個人へのアンケート調査と、大手BGM配信事業者へのヒアリング調査の結果に基づいて、今後の検討の参考に資する知見を抽出することに努めました。

それでは、資料の2ページ目に移ります。レコード演奏・伝達権についての一般的な認識と範囲拡大の意向について、一般国民向けアンケートでは、店舗等においてBGMとして音楽を利用することに対する対価を求める権利について、実演家とレコード製作者にはBGM使用の対価を求める権利が与えられていると思っていたと答えた人が最も多くなりました。

次に、店舗等においてBGMとして音楽を利用することに対する対価を求める権利の範囲拡大への意向について、実演家とレコード製作者を加えるほうが望ましいと答えた人が多くなりました。

店舗等でのBGMの使用の対価の範囲拡大に伴うBGM使用料が値上がりすることによって、店舗等において価格転嫁が行われる可能性があることも考慮した場合の権利の範囲拡大への意向について、価格等への転嫁が行われるとしても、実演家とレコード製作者を加えるほうが望ましいと、価格等への転嫁が行われるのなら、新しく何かを加えるのは望ましくないという回答で、それぞれの割合は拮抗しています。

資料の3ページ目に移ります。次に、BGM使用の対価を求める権利の範囲拡大の意向を、一般的な著作権に対する重要性の認識別に比較しました。結果、著作権をとても、または、やや重要だと思うと回答した場合、実演家とレコード製作者を加えるほうが望ましいと答えた割合が増加していることが分かりました。

資料の4ページ目に移ります。今回のアンケート調査には、作詞家、作曲家、編曲家、ミュージシャン、プログラマー等、様々な属性の方々から御回答いただきました。回答者ごとの属性の整理として、作詞・作曲家等の権利者と、作詞・作曲家等ではない権利者に分け、著作権者と著作隣接権者の違いを踏まえた分析を行います。

音楽の権利者のレコード演奏・伝達権の認識について、「実演家とレコード製作者にはBGM使用の対価を求める権利が与えられていると思っていた」が最も多く、「実演家とレコード製作者にはBCM使用の対価を求める権利が与えられていないことを知っていた」よりも多くなりました。

資料の5ページ目に移ります。音楽の権利者のレコ―ド演奏・伝達権についての範囲拡大の意向について、「実演家とレコード製作者を加えるほうが望ましい」のほうが多く、権利の範囲拡大に伴うBGM使用料の値上がりによる価格転嫁の条件が加えられた場合でも、「実演家とレコード製作者を加えるほうが望ましい」のほうが多くなりました。

前出の一般的な範囲拡大への意向に比べると、価格転嫁の条件が加えられた場合でも、過半数は「範囲拡大が望ましい」と回答しています。

BGM使用の対価を求める権利を既に持っていることが範囲拡大の意向にどのように影響するかに関してですが、作詞・作曲家等ではない権利者のほうが範囲拡大の意向を示す割合が高くなりました。

資料の6ページ目に移ります。本調査では、レコード演奏・伝達権の認識と範囲拡大への意向について、BGM配信事業者を中心にヒアリング調査を行いました。全体として実演家やレコード製作者にも、対価還元を促進することに関して肯定的でしたが、実演家やレコード製作者のレコード演奏・伝達権の導入の在り方に対しては、慎重な姿勢でした。

今後、権利導入の議論に際しては、権利者に還元されるだけでなく、BGMの利用者に対するメリットも併せて検討する必要性が明らかになりました。特に、レコード会社や実演家のレコード演奏・伝達権に対する認識と、権利が範囲拡大した場合のサービス料金への価格転嫁の可能性や影響の2点について、ヒアリング内容からまとめました。

各BGM配信事業者における現在の対価の支払いに関する認識や、BGM利用に関する交渉への把握が必要なことと、権利が範囲拡大した場合の社会的な影響の考慮を含めた施策の検討が必要なことが示されました。

資料の7ページ目に移ります。私的な音楽等の録音行為の補償に関して、補償の必要性や、対象機器の範囲、補償金と制限との関係の一般的な認識について、著作権に対する重要性を認識している場合、補償の必要性をより認識しており、また補償の対象機器の範囲を広げることに肯定的で、さらに私的録音行為に対する制限を受けることよりも補償金を支払うことを選択しているということが分かりました。

資料の8ページ目に移ります。私的なテレビ番組の録画行為に関して、同様に著作権に対する重要性を認識している場合、補償の必要性をより認識しており、また、補償の対象機器の範囲を広げることに肯定的で、さらに私的録画行為に対する制限を受けることよりも、補償金を支払うことを選択していることが分かりました。

資料の9ページ目に移ります。一般国民の回答者全体では「ダビング10を知らない」と答えたほうが多くなりました。「ダビング10を知っている」と答えた場合の傾向として、私的録画行為における補償は必要だと考え、対象機器の範囲拡大は望ましいと回答しており、また、補償金を支払うことよりも、私的録画行為の制限を受けることを選択する回答者が多くなりました。

資料の10ページ目に移ります。一般国民におけるテレビ番組の録画に関連する行為別に補償に対する認識を比較しました。10ページのテレビ番組の録画理由と、録画後の行為のうち、100人以上が選択し、意識的、意図的に行う目的行為であるものには、色つきで表しています。録画に特に手を加えずに、1回だけ視聴する目的行為として、リアルタイムで見られないからと、一度視聴したらすぐ削除するを赤字にし、視聴に当たって録画したものに手を加えたり、何度も繰り返し見る目的行為として、コマーシャルを飛ばしたいからと、保存版として何度も見返したいからを青字にしました。

比較を行った結果、行為、目的の違いで補償に対する認識の差はあまり生じていないことが分かりました。

資料の11ページ目に移ります。まず、映像の権利者へのアンケート調査に御協力いただいた回答者については、11ページにあるとおりです。

次に、権利者の私的録音録画行為の補償に対する認識ですが、権利者の過半数以上が補償の必要性を認識していました。また、過半数以上の権利者は補償の対象機器の範囲拡大に関して望ましいと考えており、頻繁に広げることが望ましいと考える人が一般国民よりも多いことが分かりました。さらに、私的録音録画行為の制限と補償金の支払いに関しては、私的録画行為においては大きな差はありませんでした。

最後に、レコード演奏伝達権や私的録音録画行為の補償に対する認識に関してのまとめとして、著作権に対する重要性の認識の差によって、一般国民の間で差が生じていること、一般国民と権利者の間での認識に差が存在することを、まとめとして報告させていただきます。

日本総合研究所からの報告は以上でございます。ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございました。ただいまの御発表につきまして御質問がございましたら、お願いいたします。ございませんでしょうか。

どうぞ、唐津委員。

【唐津委員】唐津です。御発表ありがとうございました。非常に興味深い結果で、1つ、一番興味深かったのが、著作権の重要性の認識が高まると、ユーザーから見たときに価格転嫁をされても、実演家などへの分配は許容するという割合が増えているというのは非常に興味深いというか、著作権教育の重要性というのを感じました。

質問のほうは、これは6ページ目、BGM配信事業者へのヒアリングというところで、サービス料金への価格転嫁をすると、音楽配信サービスの違法利用が増えるのではないかというのが出ました。ちょうど先ほどの御発表の中にも、spotifyなど、本来は事業目的での利用というのは規約上禁止されているんだけれども、BGMで利用している方が相当程度いらっしゃるというのが実態として確かに出てはいたんですが、spotifyなどの規約で、事業目的での利用が禁止されているということの認識をどれくらい、皆さん、されているかというアンケート調査は、もしあったのであれば、伺いたいなと思ったんです。

【日本総合研究所(原氏)】ありがとうございます。BGM配信事業者さんにヒアリングした際に、そちらの不正利用の認識のほどについて伺ってみたんですけれども、あまり知らずに、結果として不正利用になっているというケースも、往々にしてあると伺っております。

【唐津委員】分かりました。そうしたら、そこのところの例えば周知が、1つは必要であるということも言えそうだということですか。配信事業者から、こういう場合は違法ですよという周知が、今の段階では十分にされていないということも言えそうだということですか。

【日本総合研究所(原氏)】不正利用を結果として行っている店舗に対しては、BGM事業者さんの営業回りとかで発見というか、分かり次第、それとなくそれは不正利用であるということは周知はしているんですけれども、その後、改善されたかということまでは、ちょっとまだ追跡はできない、把握できていないというのが実態であるというふうに伺っております。

【唐津委員】ありがとうございました。

【太田主査】よろしいでしょうか。ほかに。

今村委員、どうぞ。

【今村委員】非常に興味深い検討結果を御案内いただきまして、どうもありがとうございました。私からは、2ページ目の一般国民の認識の点についてお伺いしたいんですけれども、BGM使用の対価と範囲の認識で、私もこれはすごく気になっていて、学生なんかにもよく聞くことがあり、試験でも問題を出して間違わせるんですけれども、アンケートのとり方として、実演家とレコード製作者にはBGM使用の対価を求める権利がないということを説明した上で、その認識を聞いたという理解でよろしいでしょうか。

そもそも権利が働いていないというふうに聞いた上ですと、知っていたというふうに知ったかぶりする人もいるかなと気もして、取り方によって随分数字が変わって、私はもうちょっと数字が多くなるんじゃないかと。多くというのは、演奏権が与えられていると思っていたという人がもっと多いかなというふうに思ったので、そこのアンケートのクエスチョンの問いの立て方についてちょっと確認させていただければと思います。

大体の比率としてはこれでいいと思うんですけども、どんなふうに聞いたのかなという点の確認です。

【日本総合研究所(原氏)】ありがとうございます。アンケートのほうでは、最初にその条約、今現在、日本では与えられていないということを情報提示した上で、そのことに関してどのような認識で今までいましたかというふうに聞いているので、ある意味、最初に正解情報を与えているというので、全く知らない情報で、正解はどれでしょうとした場合とは確かに変わってしまうとは思います。

【今村委員】どうもありがとうございます。一般的に、一般国民の方――私も一般国民ですけども、音楽を聴くときって、もちろん作詞家・作曲家の方の名前を知って聴く場合もありますけど、やっぱりアーティスト名とかレーベル名で認識しているという人も多いと思います。何となくデータとしては、お金をそうした人々に払われているかなというふうに思っている人のほうが、つまりこの演奏権という権利を持っていると思っている人のほうがもっと多いのではないかと思ったので、確認した次第です。

アンケートの仕方としては、そういう仕方もあると思いますので、差し支えないとは思います。

以上です。

【太田主査】よろしいでしょうか。ほかに。

【佐藤委員】1点だけお伺いしたいのですが、このようなアンケート調査ですと、どうしても一時点のものしかなく、比較することは単純ではないとは理解しておりますが、先ほどように、国民の間で、著作権に対する理解が深まっていると示す場合には、時系列的な比較があっても良いと思うのですが、参考までに、これまでそのような調査や分析をされていたことがあるのでしょうか。

【日本総合研究所(原氏)】最後、聞き取れなかったので、すみませんが、もう一度お願いします。

【佐藤委員】このような議論を行う場合には、過去と比べてどうかという時系列的な比較があっても良いとは思うものの、他方で、調査時点で、質問内容やサンプルが異なるという点も理解はしており、一概に単純比較はできないとも承知はしております。ただ、認識の変化を把握する上で、過去との傾向での比較するものがあると、議論のための理解が一層深まると考えた次第ですが、いかがでしょうか。

【日本総合研究所(原氏)】ありがとうございます。著作権で、レコード演奏・伝達権に関する調査としては、ちょっと比較が難しいんですけれども、著作権自体の重要性の認識としては、文化庁さんの令和4年度のアンケート調査のほうと比較して……。サンプル対象が違うということもあって、時系列的にとても重要だと思うという割合が少し増えているのではないかなというのを、予備的に参照していたので、時系列的に比較するということは、今後検討すべき課題かなと思っております。

【渡邉著作物流通推進室長】この意識ということに着目して、少なくとも文化庁として調査をしたことはなくて、これは今回初めてということになります。一方、私的録音録画制度に関しましては、今までは機器をどう使っているかなでおのそれぞれの機器についての調査がこれまでは多かったということでございます。

また、先ほど少し御説明がありましたけれども、著作権意識であるとか、どのように音楽を聞いているのかだとかの設問に関しては、部分的には過去の調査を参照した部分がございますけれども、最終的なこの対価の認識ということに関しましては今回初めてなので、これがどう推移するかなどについてもまさに1つの観点であると承知しています。

【太田主査】私の方からよろしいでしょうか。今の佐藤委員と今村委員の御質問に関連する質問です。こういう調査した場合、結果をどう解釈するかを考える上では、質問票そのものも出していただかないと、意味理解に不確実性が残るということもあると思いますので、それも、もし可能でしたらお願いできればと思います。

それと、統計分析の手法として、クロス集計の独立性の検定とか、分散分析や重回帰分析などでのP値であるとか、通常使われている統計学の検定結果も示していただいたほうがいいかなあと感じました。

あと、この1,600人が各世代400人とサンプリングしています。通常、こういう調査をするときには、日本全国民についての世代別、ジェンダー別の比率に対応するような形で層化というか、Stratifyすることが通常ですけども、そこら辺りはどうなっていますか。仕様書のほうでそうなっていなかったのかもしれませんが、今後のことを考えると御検討いただいたほうがいいかなと思います。

というのも、例えばさっきの集計の中に、倍速で聴くというのが意外と少なかったなと思うのですけど、今では、1.4倍とか、1.2倍とか、1.6倍とか、自分の好みで聴いている人が、倍速と尋ねられると、自分は2倍では聴いていないと答えることもあり得ると思います。そういう、いろいろと文言上も設計上も、社会調査法については非常に神経を使うところがございますので、そこら辺りも、今後検討していただければと思います。

ほかに御質問等ございますでしょうか。

中井様、どうぞ。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】今の主査の話に乗っかるわけではないんですけれども、価格に転嫁された場合に、管理の拡大を望まないという方が随分いらっしゃるんですけれども、この設問も、例えばコーヒー1杯に何十円とかみたいな具体的なことではなくて、ざっくり、これ価格に転嫁されたらって聞かれているんですね、質問としては。

【日本総合研究所(原氏)】はい、具体的な何円ぐらいというのは挙げていません。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】なるほど。例えば、今の私どもの数字でいうと、年間で6,344円、月額500円ちょっと、それを例えば喫茶店のコーヒー1杯に換算しますと、0.00何円という、ほとんど転嫁ないじゃないかという数字なんですけれども、この印象でいうと、コーヒー1杯に50円ぐらい転嫁されちゃうんじゃないかみたいな。そうすると、ミュージシャンですら、いや、それはちょっと拡大は望まないよみたいな答えが出てしまうんじゃないかなというように感じました。

【太田主査】大変重要な御指摘だと思います。経済学的に言うと、100%転嫁ということはほぼないわけで、部分的な転嫁で、その率は交渉力とか、消費者と業者の力関係とかで決まるわけです。それなのにあたかも100%、当然転嫁すると思わせるような形で聞くと、現実とかなり離れた質問事項になり得るという点がございます。

ちょっと私、法社会学というのが専門で、社会調査とか、統計分析というのをいつもやっているものですから、細かい話になりますけど、そこら辺り、今後、検討していただければと思います。

ほかにございますでしょうか。ありがとうございました。

それでは、これまでのヒアリングを踏まえて、意見交換を行いたいと思います。御意見等がございましたら、お願いいたします。また、もし御質問がございましたら、このタイミングでもお受けしたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いします。畑委員、どうぞ。

【畑委員】よろしいですか。レコード協会の畑でございます。最初の三菱UFJリサーチさんの発表に対する御質問が幾つかありましたが、2~3点、私の方でお答え可能なものがございますので、差し出がましいようですが、少し情報提供させていただきたいと思います。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング(萩原氏)】ありがとうございます。

【畑委員】1つは、最初の仁平委員の質問で、どうやって楽曲の把握をするんだということです。昔は、かなりアナログで、利用者が手書きかエクセルか何かで打ち込んで提出という時代がありました。今、かなり技術の導入が進んでおりまして、実際、レコード演奏される、あるいはライブ演奏もそうですけども、音を聴かせて、いわゆる楽曲認識技術、フィンガープリント技術、あるいはAIによる楽曲解析、そういったもので、何のレコード、あるいは音楽を使っているかを特定していく技術の精度が大分高くなっています。

ただ、放送の楽曲報告につきましては、今、ほぼ100%楽曲認識技術でカバーされているわけですが、日本においてレコード演奏を行っている事業所は157万か所あるということになりますと、それを全部認識技術で把握するというのはかなり不可能に近いといいますか、やはりコストメリットがない、追いつかないということでございます。

ですので、通常ヨーロッパとかでは、各業種の中で幾つか代表的な事業所を選んで、そのデータを認識技術で取り、それをサンプルとして全体に押し広げる形で分配に役立てるといった対応がなされていると聞いております。

また、放送を演奏として流している事業所でしたら、放送のプレイリストを分配に使っていくとか、そのような形で、なるべく精緻な透明性の高い分配方法を取り入れていると聞いております。それが1つ。

あと、菅委員の御質問でPPLのライブ演奏の料率が低い。資料の8ページのPPL PRS MUSICの合算値のライブミュージックの料率がどうしてこんなに低いんだという話がございました。

これは推測ですけども、これはレコード演奏に関する料率ですので、ライブハウスとかで生演奏している部分の料率は入っていないのだと思います。つまり、ライブが始まる前とか、バンドチェンジのインターバルとか、恐らくそういったところでBGMがかかっている部分の料率で、生演奏との合算を想定してレコード演奏は多少安く設定されているのではないかと思います。

それから、最後は、主査からの御質問のイギリスの許諾権で、これは許諾権として行使されているのか、それだったらお金が高いんじゃないかという話です。確かにイギリスの料率は高いんですけども、先ほど三菱UFJリサーチさんからも説明がありましたとおり、集中管理されていますので、禁止権としての行使はされてないと。つまり、拒否をするということは想定をされていないということになります。

したがいまして、実質的には報酬請求権と同じ運用をされておりまして、それが例えば著作権と比較して高いか、安いかというのは、これは国によっていろいろございますので、一概に比較するのは難しいかなと思っております。

ちなみにイギリスの場合、レコード製作者は許諾権で、実演家が報酬請求権になってますけども、この実演家の報酬請求権はレコード製作者に対する報酬請求権ということになっております。

以上です。

【太田主査】どうも詳細な情報提供、ありがとうございます。

ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。

坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】坂井です。今日は、発表ありがとうございました。最初、畑さんから、先ほど質問すればよかったんですけれども、発表資料の4ページで、音源の種類別利用料というのがあったんですけれども、ここで、たしか著作権法の38条の最初については度外しているというお話だったんです。もしかしたら畑さんじゃないかもしれないんですけども、まちの中華料理屋とかで、テレビとか、それからAMとかFMのラジオ、これを流すのは、今の著作権法上で多分適法とされていると思うんですけれども、ここについては、まちの中華料理屋さんでテレビを流すのは除外されているというところの確認。

それから、ここに入っているのは、オフィスとかで昼間テレビをつけているのとかいうのがここの対象になるのかというのは、それは38条の関係で、すみません、知識不足で分からなかったので、教えてほしいと。

それから、地上波とか、FMとか、AMの放送局に対して、そこで音源が使われた場合というのは、原盤権者とかアーティストに対して、放送の二次使用料が払われているという認識なんですけど、そこがきちんと機能しているのか、していないのかという、そこの実態をちょっと教えていただきたいと思います。

すみません、質問です。よろしくお願いします。

【畑委員】著作権法38条との関係では、テレビ・ラジオ等の伝達利用、間接演奏については、非営利の場合、または、民生用のラジオ・テレビ受信機を使う場合は権利制限の対象となっておりますので、今回のアンケートでは、テレビ・ラジオをつけている回答者には、それは機器は何を使っていらっしゃいますかという質問も併せて聞いていますので、権利制限の対象となる利用については、今回、金額等の推計からは外していると御理解いただければと思います。

あと、放送の二次使用料についてですが、例えばUSEN等の有線音楽放送および衛星ラジオ放送については、著作権法上の放送または有線放送に係る放送二次使用料をレコード製作者・実演家とも徴収し、分配をしております。したがいまして、放送する際のレコード利用については二次使用料の枠組みの中で処理をされているということですが、それを用いて店舗等で演奏するところが無権利になっていると、そういうことでございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【坂井委員】ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。ほかに御質問ございますでしょうか。

菅委員からの御質問、事務局経由で、お願いいたします。

【渡邉著作物流通推進室長】菅委員からですけれども、市場拡大についての御意見ということで、K-POPの背中を追うという話がありました。私の記憶では、BABYMETALやきゃりーぱみゅぱみゅなど、サブカルチャーと密接な関係にあるものが海外で強いと感じています。ダンスユニットなども出ていっていますが、これはK-POPとかぶります。

お話に出た「アイドル」もアニメの主題歌ですし、「鬼滅の刃」の主題歌各種なども日本でヒットしました。海外に進出するには、映像分野やオタク的なものと柔軟にセット化して売り込むのはどうかと思っています。実際、「うたのプリンスさまっ」や「アイドリッシュセブン」などでは、声優たちがライブで歌うイベントがものすごい盛況で、グッズ販売も好調です。周知のきっかけさえあれば、音楽単体の成績としても、主題歌ライブや声優ライブは十分に世界と戦えると思います。音楽業界主導でのメディアミックス戦略を期待します。

【太田主査】ありがとうございます。もし、リアクションがございましたら、どうぞ。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】ありがとうございますしかないんですけど、先ほど海外への展開の話で、畑さんのほうからも御紹介があったんですけれども、Adoが海外展開、そんなに小さい会場じゃないところでやったのは、ツアー全部売り切れております。そういうサブカルとは違う部分で、いきものがかりの「ブルーバード」が中国で大ヒットしたりと。これは、単に「NARUTO」の主題歌ということだけではないんですけれども、現地でローカライズされたり、有名な歌手がカバーしたりということで、違う展開の海外での動きも始まっておりますので、ますます頑張ります。

【太田主査】ありがとうございます。ほかに御意見ございますか。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】すみません、日本ネットクリエイター協会、仁平です。最後の日本総研さんのアンケートを見たときにも思ったんですけども、こういった、いわゆる原盤における新たな印税を発生させるというようなこと、僕も大賛成なんですが、僕自身が日本ネットクリエイター協会を10年ぐらい前に設立して、各音楽権利者及び使用者の方に、音楽原盤と著作権って違うんだよというのを、まずは生放送、あとは直接会って話をするというのをずっと続けてきています。

僕の正直な感覚だと、まだまだその区別がついていないんじゃないかな、ついていない人が多いんじゃないかなと思います。今回のアンケート結果の中では、相当優秀な一般国民の方がいらっしゃったのかなと。つまり、この表を見たときに、こんなに原盤と著作権を明確に区別して、自分の意見を言える人がいるんだと。確かに半分ぐらいは、よく分からないというような方がいたんですけど、もっともっと僕ははてなマークが大きい人のほうが多いんじゃないかなというふうに感じています。これ、実態、雰囲気的なものです。調査はしてないです。

なので、これを僕は知りたいんですが、今現状、こういう音楽原盤の権利と、著作権というのは違う権利なんだよ、隣接権と著作権で違う原理なんだよというのは、これ学校教育とかで教えているんですかね。というところと、これはやっぱり必要ありますよねと、皆さんの同意をいただきたかったというところです。

【太田主査】ありがとうございます。もし、お分かりでしたら。

【渡邉著作物流通推進室長】今の学習指導要領や実際の学校教育においても、著作権というのが1つの重要な権利として、教育課程の中で教えるべきだという位置付けはございます。ただ、そもそも学習指導要領なども大綱的なものでございますので、具体的にどこまで何を教えるかということは、具体の教材のつくりや各現場に委ねられているところがございます。

【仁平委員】ありがとうございます。本当にクリエーターさんですら、この区別がつかない人が多くて、特に僕が接しているボカロPさんというのは、著作権者でありながら原盤権利者でもあるので、その区別、明確についていないんです。なので、あなたは、放送二次使用料等の報酬請求権がありますよというふうに口を酸っぱくして言っても、いや、僕、もうJASRACさんに著作権を預けているから大丈夫ですという回答が普通に来るんですよ。

なので、そこを本当に一生懸命、熱意を持って話したり、ほかの先輩のアーティストさんから、いやいや、それは違うんだよ、仁平さんの言うとおりやってみたら、僕、実は毎月これだけもらっているんだよというのが実際あって、初めて、ああ、違うんだというのをようやく認識してくれるというのが、僕が今まだ感じているところです。

なので、この辺り、もちろん、今日集まられている専門家の方にはもうこんなのは常識だろうということなんでしょうけど、実際に音楽を使われている方、お店の御主人、あとは個人クリエーターの方、なかなかまだこういう情報が浸透していないというのを、何となく僕は思っています。この辺の重要性というのを、ぜひ皆さんにも御理解いただきたいなと思います。ありがとうございます。

【太田主査】ありがとうございます。貴重な御意見、ありがとうございます。

ほかに御意見ございますでしょうか。

坂井委員、どうぞ。

【坂井委員】先ほどの質問を受けて、意見という形なんですけれども、今後、spotifyとか、YouTubeでの配信というのは、多分、今までのCDとかと比べると、やっぱり広がっていくというふうに思います。その利用規約のレコード演奏、それについても多分一緒に考えていかなければいけないなというふうにあると。それは今後の検討に当たってです。

それから、さっきも質問したんですけれども、今、レコード会社とか実演家の方が受け取っているお金、例えばCDの料金の一部であったり、さっきの放送二次使用料とか、そういうところも含めて、じゃあ、それは果たして今まで二次利用されること前提のお金だったんじゃないかというところも含めて、議論しなきゃいけないんだろうなというふうに思っています。

それから、先ほど難しいというお話がありましたけれども、徴収の実態を持つ、持たないというところもきちんと議論していかないと、ただ必要だよねということで権利を上げましたということになったとして、実態として何もお金はもらえませんみたいな形だったら、無用な萎縮を招くだけだと思いますので、そういったところも含めて議論することが必要なのではないかなというふうに考えました。ありがとうございます。

【太田主査】ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

1つ、事務局にお聞きしていいですか。飲食店等の営業許可を出すときの要件として、著作権関係の処理をしっかりと対応しているかというようなことは、要件とされることがあるんでしょうか、現状は。

【渡邉著作物流通推進室長】特段そういったことは承知はしてございません。

【太田主査】というのは、捕捉する上では、営業許可申請の際にちゃんと著作権関係の対処は、うちはやっているということが具体的な要件であれば、相当捕捉率も違ってくるかなと思いまして、ちょっと思いつきで御質問したわけです。

では、ほかに御意見等ございますでしょうか。

では、ありがとうございました。

それでは、続きまして、DSM著作権指令における透明性原則等について、資料4に基づきまして、上野達弘委員から御発表いただきます。

それでは、よろしくお願いします。

【上野委員】本日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。ここまでの充実した議論で、先生方は既におなかいっぱいではないかと思いますけれども、せっかくの機会ですので、「欧州指令における著作権契約法」ということでお話をさせていただきます。

「著作権契約法」というのは、著作者や実演家を保護するために契約を規制する著作権法上の規定です。著作者にしましても、実演家にしましても、多くの場合、他人と契約することが必要です。そこで著作権や著作隣接権を譲渡したり、あるいはライセンスをしたりするわけですけれども、契約時に完全に有効な合意をしたといたしましても、著作者や実演家が正当な権利や利益を奪われないように保護するための規定、これが著作権契約法でありまして、そのようなものが欧米諸国では様々な形で見られます。

例えばドイツでは、1965年法において、既にベストセラー条項というのがありまして、著作者が一旦契約した後でも、その著作物が非常に大きな利益を上げ、相手方が大きな収益を受けた場合には、まったく合意していなくても、事後的に著作者が追加的な報酬を請求できるということになっております。

フランスには伝統的に比例報酬原則というものがありまして、比例報酬でない一括払いは原則禁止されております。一括払いですと、どうしても報酬が1回的な評価になってしまい、収益に連動しないのですけれども、印税のような比例報酬ですと、収益に連動した利益分配が可能になるという考えであります。

アメリカにも終了権制度というものがありまして、著作者が著作権を譲渡してしまった後でも、35年後にこれを取り消すことができます。著作権譲渡から35年後に自分の著作物がヒットして非常に大きな収益を上げられるものになった場合は、その収益に見合った利益分配がなされるように、改めて契約をし直すことができるというわけですので、この点で著作者を保護していることになります。

こうした著作権契約法は欧米諸国に見られるのですけれども、国毎に相違がありましたところ、2019年の欧州DSM著作権指令がそれを統一するということになったわけでございます。

2019年当時は私もドイツにおりまして、この指令につきましては盛んな議論がなされておりました。その後、2021年に指令を国内法化する実施期限が到来しましたけれども、ごく最近まで、十分に実施が完了していない国も多くございました。現在は、ポーランドだけが実施不十分と言われておりますけれども、先週パリでポーランドの先生に会いましたら、すでに指令の実施法案はできており、また、著作権契約法に関する部分は以前から規定があるのだとおっしゃっていました。

欧州DSM指令には、著作権契約法として第18条から第23条の規定があるわけなのですけれども、これは義務的な規定ですので、加盟国はこれらの規定を国内法で設けなければなりません。したがって、著作権契約法に関する一定のハーモナイズはもう既に実現しているということになるかと思われます。これまで、ヨーロッパでは著作権分野で多くの指令が作られ、様々なハーモナイゼーションを行ってきたのですけれども、著作権契約法に関するハーモナイゼーションというのは、この欧州DSM指令が初めてのことであります。

具体的な規定のうち、この委員会が関心を持っている透明性義務というのは、そのうちの第19条でありますが、この第19条というのはその前の第18条が前提になりますし、ほかの規定もありますので、今日は欧州DSM指令における著作権契約法の全体についてお話をさせていただきます。

まず第18条は、著作者や実演家と契約する際には、まず相当な報酬を支払わなければならないということを定めています。当たり前のように思われるかもしれませんが、これをきちんと定めていることは重要です。英語では「appropriate」というのですけれども、日本語では「適正」と訳されたり、「相当」と訳されたり、あるいは「適切」と訳されたりもいたします。ただ、この相当報酬原則はもともとドイツ法に見られる考え方で、日本のドイツ法研究では昔から「相当」と呼ばれてきましたので、ここでも「相当」という言葉を中心に使いたいと思います。

次に、報酬は「比例的」(proportionate)でなければならないとも定められています。これはフランス法の比例報酬原則に由来します。つまり、著作者や実演家と契約する際、その報酬は基本的に比例報酬でなければならず、原則として一括払いはできないということになります。

この規定の適用を受ける主体は、「著作者及び実演家」となっていますが、このこと自体も重要であります。つまり、著作権者や著作隣接権者といった財産権者ではなく、あくまで自然人である著作者と実演家だけが保護の対象となるのです。また、隣接権制度というのは実演家以外もレコード製作者なども保護しているのですが、ここでは実演家のみが対象です。ヨーロッパでは、このように著作者と実演家を特別扱いすることがよくあります。

そして、この規定は、著作者や実演家が、自己の著作物や実演について、権利を譲渡した場合のみならず、ライセンスした場合にも適用されます。したがって、権利譲渡の対価のみならず、許諾の対価についても、相当かつ比例的でなければならないということになります。もし、ある報酬が相当と言えないものだった場合にどうなるかは欧州DSM指令には定められておりませんが、例えばドイツでは、事後的に、過去に合意した報酬を相当なものに変更するように請求できる権利があると定められております。そうした規定があるからこそ、著作者や実演家と契約する際には、あらかじめ報酬は相当で、かつ、きちんと収益に連動するものにしようということになるのだろうと思われます。

しかし、多くの方は、なぜこのような規定があるのか、なぜ契約で自由に定めることができないのかというふうに思われるかも知れません。この点については、5ページ目にまいりまして、正当化根拠といたしまして、前文72に次のように書かれております。すなわち、「著作者及び実演家は……傾向として契約の立場上より弱い位置づけにあり(tend to be in the weaker contractual position)、それら自然人は、EU法に基づき調和した権利を十分に享受できるよう、本指令に定める保護を必要とする」というのです。このように、著作者や実演家は契約上弱い立場にあるというのが、その背景にある考え方であります。

なお、比例報酬原則については、前文73に、「一括払いも比例的な報酬となりうるが、それは基本原則であってはならない(A lump sum payment can also constitute proportionate remuneration but it should not be the rule)」と書かれております。

比例報酬原則を定めているフランス法においても、一括払いが許容される一定の例外的な場合が定められておりますし、学術出版や百科事典など、分野によっても一括払いが許容されております。

さて、その上で、このような報酬の相当性を現実に確保するために、次の19条において、透明性義務が課されております。確かに、ある報酬が相当かどうかを判断するためには、相手方にどれくらいの収益があったのかということに関する情報が必要になりますので、著作者と実演家は、相手方にこれを明らかにするよう請求できるというのが、第19条の透明性義務ということになります。この権利も著作者と実演家に付与されていますけれども、管理団体などもその請求ができることになっております。

相手方につきましては、著作者や実演家が権利譲渡やライセンスを行った契約当事者としての相手方のみならず、その承継者も含まれます。したがって、著作者や実演家は、契約当事者でない相手方に対しても透明性を求めることができるということになります。

さらには、第19条2項には「サブライセンシー」とも書かれています。つまり、権利譲渡した相手方が著作物や実演を利用する場合のみならず、その相手方からライセンスした者や、その者がサブライセンスした者が著作物や実演を利用するという場合であっても透明性義務が適用されることになります。確かに、サブライセンシーが利用を行う場合は、そこで収益が上がることになり、そこに収益に関する情報があるわけですので、著作者や実演家は、そうした情報を、直接または間接に得ることができるようにしているというわけなのです。そして、この場合、サブライセンシーは誰かという情報も必要になりますので、契約相手方はサブライセンシーの情報も提供しなければならないとも定められているところであります。

ただ、透明性義務にも限界があります。確かに、あまりにも情報提供の負担が大きくなってしまってはいけませんから、「比例的かつ効果的(proportionate and effective)」と定められておりまして、負担と効果のバランスをとることになっております。

また、第4項は、ある著作者や実演家が行った寄与が小さい場合には、透明性義務の対象から除外できると定めております。

さらに、第5項は、「collective bargaining agreements」、これは「労働協約」と訳されておりますけれども、同業者団体の取り決めのようなものがあれば、それに従えばよいということになっております。

さて、なぜこのような透明性義務を課しているのでしょうか。前文75には、先ほどと同じように、「傾向として契約の立場上より弱い位置づけにある(tend to be in the weaker contractual position)」ということが指摘されております。そして、「ライセンスまたは譲渡の対価として受領した報酬との関係において、その権利の存続期間にわたる経済的価値を評価するための情報が必要であるが、多くの場合、透明性の欠如に直面している。したがって、契約の相手方または権利の承継人が適切かつ正確な情報を共有することは、著作者および実演家の報酬を管理する体制の透明性と衡平性にとって、重要である」と述べられております。

このように、透明性義務というのは、著作者と実演家に相当な報酬が分配されることを確保するためには必要なのだと、このように考えられているわけであります。

続きまして、第20条の契約調整メカニズム(Contract adjustment mechanism)です。これは、ドイツ法に昔からあるベストセラー条項的な規定をEU全体にハーモナイズしたものと考えられます。つまり、著作者と実演家がその著作物や実演について契約した後に時間がたって、当初の想定より非常に大きな利益を上げた結果、収益に比して、その報酬が著しく低い(disproportionately low)ことが判明したときには、追加の適正かつ公正な報酬(additional, appropriate and fair remuneration)を請求できるというものです。

もちろん、当初の契約では、そのようなことは何も合意していないのですけれども、しかし、ある著作物や実演があまりにも大きな利益が上げたという場合は、その分、これを作り出した著作者や実演家に分配しなければならない、という考えなのです。これも、契約の相手方のみならず、その権利を承継した者に対しても請求できるということになっております。

先ほどの第19条と比べますと、第20条には「サブライセンシー」という言葉が出てきませんので、サブライセンシーまで含まれるかどうかについては議論があるのですけれども、少なくとも契約の相手方とその承継人に対しては、追加的な報酬を請求できるというわけです。

ただ、例外もありまして、ここでも「collective bargaining agreement」ということで、例えば、ジャーナリスト団体ですとか、そういう団体との協約において契約調整メカニズムがある場合は、それに従えばよいということになっております。また、権利管理団体のライセンスに関しては除外されております。確かに、権利管理団体のライセンスを受けて莫大な収益が得られたら、追加的に使用料を払わければならないというのも困りますので、そこは除外ということになっているわけであります。

このような契約調整メカニズムの正当化根拠につきましては、前文78にありますように、やはり契約というのは長期間にわたりますと、当初の見込額よりも著しく大きな収益が上がる場合がありますが、そのときに著作者や実演家が報酬について再交渉する機会を与えられることはほとんどないのだと述べられております。そこで、莫大な収益が上がった結果、ある報酬が著しく低いことが判明した場合には、その契約を調整するメカニズムが必要だということが書かれております。

あとは細かい規定になりますけれども、第21条にADR手続があります。これは、前文79にありますように、「著作者および実演家は、多くの場合、契約の相手方当事者に対し、裁判によりその権利を主張することに消極的(reluctant)である」ということから、ADR手続を設けなければならないと書かれております。

次に、第22条の撤回権です。これは、著作者や実演家がその著作物や実演について、権利譲渡またはライセンスをしたのだけれども、相手方が全然利用してくれないという場合において、利用しないならほかの人に使わせたいというときに、権利譲渡やライセンスを撤回できるというものであります。一般論としては、撤回権にはいろいろ種類があるのですけれども、欧州DSM指令のそれは、不利用を理由とする撤回権になっております。

撤回権の正当化根拠は、前文80にありますように、著作者や実演家というのは、権利譲渡またはライセンスをした場合、自己の著作物または実演が利用されることを期待するものだけれども、実際には、著作権譲渡やライセンスの後に全く利用されないということがあり、そのような場合には、著作者や実演家が別の人に利用させることができるようにしなければならない、ということが述べられています。このことは「use-it-or-lose-it」と呼ばれたりします。

第23条は共通規定ということで、第1項は、第19条、第20条、第21条については、これに反する契約をすることができない、そのような契約条項をつくっても強制力がないということを定めています。例えば、先ほどの契約調整メカニズムはなしでいいよね、という契約をいくら締結したとしても、それは強制力がないということになります。また、透明性義務についても、俺たちの間では透明性義務なしでいいよな、ということをいくら当事者間で合意したとしても、それは強制力がないということになります。

以上をまとめますと、大陸法諸国には以前から著作権契約法がありましたけれども、今回、欧州DSM指令が加盟国に対して義務的な規定として導入しましたので、著作契約法に関するEU全体のハーモナイゼーションが実現することになるということで、これは非常に大きなことではないかと思います。

そのため、日本でも二、三年前から、著作権法学会やALAIなど学界ではこの問題が議論されてきたのですけれども、一方で、日本の著作権法には、このような著作権契約法に関する規定がほぼ皆無であります。日本には著作権契約法はないと言って過言でないかと思います。

もちろん、現行法にも第61条2項の特掲要件というものがありまして、著作権を全部譲渡するという契約をしても、二次的著作物に関する権利はむしろ留保されたものと推定されると定められていますが、これは著作権者についての規定ですので、やはり著作者や実演家を保護するという規定は皆無と言ってよいかと思います。少なくとも、著作権契約の報酬に関する規定は日本法にはまったくありません。

ただ、実は現行法の立法過程にはいろいろ議論がありました。特に著作権制度審議会第一小委員会の審議結果報告(1965年5月17日)は、日本法に特有の出版権制度をやめて出版契約制度を設けることを検討していたわけなのですけれども、その際、出版契約の報酬は「発行部数を基礎としていわゆる印税方式によって算定した額」つまり比例的にすることを提案しています。また、「出版者は、著作者の請求により、製作部数、販売部数等出版の状況を報告する義務を負う」とも提案されておりまして、これはまさに透明性義務と言えます。こういう問題意識が、当時の審議結果報告に打ち出されていたということは、非常に注目されるところであります。

ただ、その後の立法過程では、古くからあった出版権制度が維持されることになります。ちなみに、日本の出版権制度というのは非常に特殊な制度であると言われておりまして、私はLexisNexisの「International Copyright Law and Practice」で外国向けに日本の著作権法の紹介をした英語論文のアップデートをしているのですけれども、私の前任者としてその大部分を書かれた土井輝生先生は、日本の出版権のことを「Right of Publication」としながら、わざわざその後でイタリックのローマ字で「shuppanken」と言い換えておられます。日本の出版権制度は、それくらい特殊な制度だとも考えられるのですけれども、現行法制定に際して、結局これを維持することになったため、先ほどのような契約法規定を設ける提案は全部飛んでしまったということなのであります。

ただ、立法過程で作成された法案の中には、確かに報酬に関するものはないのですけども、例えば、文部省文化局試案(1966年10月)には、「将来のすべての著作物に係る著作権の譲渡を約する契約は、無効とする」(第54条)という、これはドイツ法に存在したような規定なのですけれども、こういうものが提案されていました。しかし、その後の立法過程で、こうした規定は縮小されていって、今の第61条2項の特掲要件しかなくなってしまったわけであります。

その背景には、著作権者というのは常に弱者とは言えないだろうと、むしろ立場が強い著作権者もいるではないかという議論があったようです。そして、現行法制定後、2005年頃に文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 契約・利用ワーキングチームというのもありまして、契約の問題が多少議論されたのですけれども、そこでは著作者や実演家を保護するというより、むしろ「『著作権者は弱者である』との前提を一律に採ることは、必ずしも適切ではない」とした上で、特許要件の「第61条第2項は廃止の方向で検討すべきである」とまとめられております。

学界でも、当時東京大学教授であった中山信弘先生は、ご著書の中でも第61条2項は「立法論としては削除すべき」とお書きになり、また、2006年の著作権法学会シンポジウムでも、「著作権者の権利を譲渡する場合は、普通の売買とどこが違うのか。売手が強い場合もあれば、弱い場合もある。種々雑多ですね。著作権で言いますと、私は世界一の著作権者はマイクロソフト社だと思っています。これが弱者と言えますか。これに何らかの法的保護を与える必要がありますか。……一方の当事者が弱い場合もあれば、強い場合もある。そういうときに、著作物だけが特殊だというのは、余りにもおかしな議論ではないか。余りにも知財音痴的な発想ではないか、と思っております」と発言されています。このように、日本では、著作権契約法に対する消極的な見方が有力と言ってよいでしょう。

しかしこれは、日本の著作権法が、日本特有の職務著作制度を設け、自然人のみならず法人も「著作者」になるということを定めてしまったことに原因があるのではないかと私は思っています。つまり、日本法の場合、自然人でなくても著作者になってしまい、弱者でない者も著作者になるという前提があるため、著作者だからといって保護する必要はないという話になっているわけです。言ってみたら、法人である著作者を念頭に置いて、著作者を保護する契約法は必要ないと論じる結果、自然人の著作者も道連れになって契約法による保護を受けることができないままでいるという状況ではないかと私は思っております。

ということで、以上をまとめますと、欧米の著作権法においては、著作者や実演家を保護する著作権契約法が様々に発展していまして、欧州DSM指令は、この点に関する初めてのハーモナイゼーションを実現しました。その背景には、自然人としての著作者や実演家というのは、著作物や実演の利用がもたらす収益から適切に利益分配を受けることができるべきだという発想があり、そのためには、契約自由に委ねているだけでは不十分だという考えが強く見られるところであります。

このような状況を目にしますと、日本の著作権法において著作権契約法がほぼ皆無であるというのは、決して自明のものではないと思います。

そもそも、著作権法というのは、著作者や実演家に権利を付与してその利益を保護する法律です。しかし、どんなに強力な権利を付与しても、それが契約によって簡単に奪われてしまったら意味がありません。著作権法というのは、権利を付与するだけの法律でよいのでしょうか。こうした問題提起は、私が2010年頃ドイツに留学していたときにお世話になったアドルフ・ディーツ先生が、2014年に来日して早稲田で講演して下さったときにもおっしゃっています。そのときのご講演は、「著作権法による著作者・実演家の保護――現代ヨーロッパ大陸著作権法の5本の柱」というもので、現代的な著作権法に必要な5本の柱として、①実体的著作権法、②隣接権制度、④権利管理団体法、⑤エンフォースメント(救済)とあるのですけれども、その3番目のところに、③著作権契約法というのが掲げられているのです。現代の著作権法にとって、著作権契約法というのはそれだけ重要な柱なのだというわけです。

もちろん、ドイツでも著作権契約法が初めから完備されていたわけではなく、利用者側の抵抗も受けつつ試行錯誤を繰り返しながら、2002年にも大きな改正をしまして整備が進められてきました。かつて私がディーツ先生に日本には著作権契約法がありませんと申し上げましたところ、ヨーロッパにもない国はあるし、日本もこれから頑張ってね、みたいなことを言われたわけなのですけれども、今やこうして欧州DSM指令でEU全体がハーモナイズされる時代になりましたので、やはり日本も考える必要があるのではないかと私は思っております。

その日本では、以前から、著作者や実演家の保護は、著作権法でやらなくてよいのではないかと言われてきたように思います。確かに、労働法とか、下請法とか、最近ではフリーランス保護法とか、そういった著作者や実演家に限られない一定の者の保護立法がありますし、あるいは、私も参加していましたけれども、文化庁の「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」では、2022年に「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」をまとめており、そうしたソフトローで対応するということも有用ではないかという議論がなされてきました。

しかし、国際的な動向に鑑みますと、日本においても、自然人としての著作者と実演家を保護する著作権契約法という課題は十分検討に値するのではないかと思います。もちろん、日本では様々な方面からの反対も強いかと思いますので、現実問題として立法論になることは簡単でないかもしれませんが、今日こうして取り上げていただけるだけでも有意義なことと思っております。そして、仮に報酬の定めに関する直接的な介入を定めることは当面難しくても、少なくとも透明性義務を定めることくらいは可能性があるのではないかと、私自身は思っております。

ただ、そのように著作権契約法を論じる際、最終的に問題となるのはその正当化根拠です。恐らく、著作者や実演家は弱者であるという説明だけでは不十分だろうと思います。2022年の著作権法学会シンポジウムでも、その点をいろいろ議論したのですけれども、今後さらなる研究が必要かと思います。

以上、今日は著作権契約法のお話をさせていただきましたが、今後は政府の方でもこうした契約法の問題をさらに議論すべきだろうと思います。昨今、著作権法はAIとの関係で激しい議論がありますけれども、クリエーターやアーティストにとっては、こちらの問題のほうが遙かに重要な問題ではないかと、私自身は思います。

以上、どうもありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございました。ただいまの御発表について、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。内山委員、どうぞ。

【内山委員】ちょっとシンプルに聞かせてください。4ページ目、5ページ目の比例報酬原則のところですけれども、単純にMG付レベニューシェアって、この議論の中で出てきた話だったかどうかということなんです。そもそも大体、MGを付けられるということが、そもそもここで言う弱い位置づけにある人ではないから、議論の範疇外だったのかなという気もするんですけれども、MG部分というフラットの部分があり、なおかつ、一方で、レベニューシェアで比例報酬の部分がありという、そういう折半の形なので、EUでこういう議論をやったときに、その辺の話があったのかな、どうかなという御質問でございます。

【上野委員】ありがとうございます。著作権契約にも非常にいろいろな分野があって、その分野ごとにどのような算定方法が比例的かつ相当な報酬と言えるのかという判断が異なる可能性もあるのではないかと思います。実際のところ、フランス法でも、比例報酬が望ましくないとされる場合は一括払いで終わることも許されているところでありますので、常に比例報酬でなければならないというわけではないと認識しております。その上で、ご指摘のように、最低保障として1回的な報酬を支払った後に、一定の売上げ以上は比例報酬という定めをする場合など、算定方法にもいろいろなパターンがあるかと思うのですけれども、収益に連動するものと評価できる限りは、そのようなものも恐らく比例報酬に当たると判断されるのではないかと思います。この点、ドイツなどでも、翻訳家の報酬が正当と言えるかという形で問題になった事例で、それに近い報酬の算定が問題になった裁判例があったように思います。いずれにいたしましても、ご指摘のように、そうした様々な算定方法を踏まえた検討が必要かなと思いますので、また、先生にも御教示いただければと思います。

ありがとうございます。

【太田主査】よろしいでしょうか。ほかに御質問ございますか。

生貝委員、どうぞ。

【生貝委員】大変勉強になりました。2点だけ質問させてください。まず、1つは、19条の透明性義務のところで、この透明性の内容、どういった情報を、例えばどういった頻度で適用しなければならないのかといったような、フォーマットを細かく決めていくメカニズムというものはあるのかどうかというのが、まず1点目の御質問でございます。

それから、2点目として、こういった著作権契約法、本当にアナログの契約から、あるいはリアルの、デジタルの利用の用途に関わる契約まで、非常に様々あるというふうに思います。この指令の表題がデジタル単一市場指令だといったようなところもございますけれども、わけても、まさにデジタルのこの時代において、それは、今までこの委員会でも議論してきたようなデジタルプラットフォームとの関わりも含めて、このデジタル環境特有の課題として、この著作権契約法が特に活用が期待されている、あるいは実際に活用されているといったような文脈や、状況というものがあれば、教えていただければと思います。

【上野委員】どうもありがとうございました。まず、1点目といたしまして、透明性義務の具体的な内容ですけれども、国内法化に当たっては加盟国が一定の裁量を有している一方で、第1項には「少なくとも年1回、定期的に」と規定されておりますので、時期に関しては少なくとも年に1回の報告義務を負うことになろうかと思います。

その上で、報告義務の内容につきましては、条文上、「完全な情報」という言葉もあるのですけれども、結局のところ、この義務が課されていることの趣旨は、著作者や実演家に正当な報酬が確保されるようにする点にありますので、報酬の正当性を判断できるために必要な限りで情報を提供する義務があるということになろうかと思います。そのさらなる具体化は加盟国に委ねられているのかなとも思っております。

なお、第5項では、団体協約によって透明性ルールが定められている場合は、それに従ってよいということになっております。したがって、これはむしろ、関係団体に対して、分野毎に具体的な透明性ルールを定めさせて、それを合理的なものと追認するという形をとることによって、団体間協議を促進する狙いがあるのではないかとも考えられるところであります。

2点目は、デジタル環境において著作権契約法の規定がどのように適用されるかという点かと思います。欧州DSM指令は、デジタル単一市場のための指令ではあるのですが、著作権契約法の規定は、デジタル的な利用に限らず、すべての利用に適用されますので、私自身はこの点についてあまり考えたことがありません。ただ、例えば、サブスクの映像配信といったものに関してプラットフォーマーにどのくらいの収益が上がっているのかという問題がこの委員会でも議論されてきましたけれども、そうした場面で、プラットフォーマーの得る収益が著作者や実演家にも適正に分配されるように確保するために、この透明性義務が一定の役割を果たしていくということは十分考えられるのではないかなと思っている次第でございます。

御質問ありがとうございました。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【生貝委員】ありがとうございました。

【太田主査】坂井委員、お願いいたします。

【坂井委員】上野先生、ありがとうございました。最初に、先ほどの演奏権だとか、伝達権について、

今後、検討する上でこういうことを考慮してほしいということを言ったんですけれども、消費者の立場から言いましたということで御理解いただければと思います。

上野先生に質問なんですけれども、先ほど、今の御回答だと難しいかなと思うんですけれども、生貝先生の質問ともかぶるんですけれども、欧州著作権指令の透明性義務、この分科会でも相当ずっと問題になっているところだと理解しています。実態として、この規定によって、著作権者とか実演家というのは必要な情報を得られて、それで必要な、適当な報酬というのを得られるような形に、世の中というのは変わってきているものなんでしょうか。もし御存じだったら、すみません、教えていただければと思います。

【上野委員】ありがとうございます。確かに、このような規定があってヨーロッパの実務がどう変わってきたのかという点は気になるところであります。ただ、透明性義務につきましては、既にEU加盟国ではかなり以前から導入をしている国があります。今回の欧州DSM指令は、すべてのEU加盟国において、最低限のハーモナイゼーションをするというものでありまして、今まで著作権契約法がなかった国もあるとは承知しているのですけれども、透明性義務についても、既にこれを有していた国もかなり多いと承知しておりますので、今回の欧州DSM指令の成立によって、契約実務がどれほど変わったかというのは把握しづらいところがあるかもしれませんね。

ただ、欧州DSM指令の影響かどうかはともかくとして、ヨーロッパの実演家や著作者が具体的にどれほどの情報を獲得しているのかという実態については私も興味があるところであります。その点は、またこういった委員会で、将来ぜひ調査していただければ、日本の実務にとっても有意義なのではないかと思っております。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【坂井委員】ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。

唐津委員、どうぞ。

【唐津委員】非常に興味深い御発表、ありがとうございました。以前、この小委員会でも少しお話しさせていただいたんですけど、エンターテインメント業界のお客様と、ふだん弁護士としてお付き合いしていることが多いものですから、この著作者・実演家が傾向として、契約の立場上、弱い位置づけにあるというのも、非常に納得できる。もちろん、ごく一部の強い権利者はいるんですけれども、その周りに強い権利者のようになりたいなと思っている、非常に多くの非常に弱い権利者、実演家がいるというのは本当の実感として持っていますので、この欧州の認識というのは、日本においても当然当てはまるのではないかなというふうには思っております。

日本には今ない話ですので、仮に来たらという御質問になるんですけれども、例えば日本の中では、1つは、これも以前、この委員会でちょっとお話ししたように、メインのアーティストであれば、アーティスト印税という形で、比例報酬的な、売上げが上がれば印税という形で入るという扱いをされていますけれども、スタジオミュージシャン、バックバンドの方というのは、日当という形でお支払いをして、契約書はないけれども、譲渡、売り切りという形でしているのが一般的なんです。

先ほど、この欧州でも、一定の場合には一括払いというのが認められるというお話だったんですけれども、日本にそれを当てはめた場合、このようなバックバンド、スタジオミュージシャンへの一括払いというのは認められる場合に当たるのかどうかというのが1点。

それから、日本の芸能事務所とのマネジメント契約というのも、世界的にはある程度特殊なのかなと思うんですけれども、マネジメント契約上、そこに属するタレントさん、アーティストの方が、権利は取りあえず一括して事務所に譲渡しますと。ただ、その代わりに、事務所からの報酬という意味では、売上げが上がれば、その何%かの分配をもらう形になっているというのはあります。

使用料、印税という形でなくても、こういう形で比例報酬的な部分が転嫁されていれば、それもこの欧州においても認められる形態ということになるのかというのを、ちょっとお伺いしたいなと思ったんです。お願いします。

【上野委員】ありがとうございます。欧州DSM指令における報酬に関する契約法規定が仮に日本に導入されたらどうなるかということで、確かに、一括払いに関しましては、スタジオミュージシャンさんなどが一括払いの権利譲渡で終わっていることを維持できなくなりはしないか問題になるかもしれませんね。ただ、欧州DSM指令でも、一括払いが一切許容されないというわけではありませんで、第2項でも、契約の自由の原則及び権利と利益との公正なバランスを考慮すると定められていますので、最終的には、分野毎に総合的な判断をせざるを得ないのかなと思っております。

なお、仮に第18条との関係で一括払いの報酬が許されたとしても、ある実演が莫大な収益を上げた場合に第20条の契約調整メカニズムのほうで追加的な報酬を得られる可能性は残るのかなとも思っております。

2点目に、日本特殊とも言われるような芸能マネジメント契約に関して、もし欧州DSM指令のような著作権契約法が導入されたら何らかの影響を受けるかというと、欧州DSM指令の著作権契約法は、契約が権利譲渡であれライセンスであれ適用されるわけですし、たとえ何らかの比例的な報酬が定められていたとしても、それが相当であるかどうかが問題になるとともに、莫大な収益を上げた場合は契約調整メカニズムも問題になりますので、確かに影響はあるのだろうと思います。

そういう意味では、欧州DSM指令と同じような著作権契約法を日本に導入することに対しては、現実問題として反対もあるのかもしれないのですけれども、日本は別にEU加盟国ではないですので、もし日本が何らかの著作権契約法を導入する場合は、欧州DSM指令の内容はさておき、その導入の仕方にはいろいろあるかと思いますし、分野や事情によって様々な個別的なルールに定めることもそれなりに可能ではないかなと思っているところです。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【唐津委員】どうもありがとうございました。

【日本音楽事業者協会(中井氏)】マネジメント契約でいうと、私が適任かとは思うんですけれども。芸能プロダクションがアーティストの方と契約をするときは、著作隣接権を一旦譲渡していただいて、それで稼いだお金は、ちゃんと契約に基づいて分配をすると。これはなぜかと申しますと、プロダクション側が預かっていないと行使ができないからということでございます。

例えば、作曲家の方が音楽出版社に一旦譲渡するというのと同じことです。作曲家の方が音楽出版社に譲渡しました。音楽出版社はJASRACに信託しますと。著作権料が入った場合は、音楽出版社を経由して作曲家に戻るというのと、構造的にはほぼ同じような形をとっております。

ですので、基本的に、正直、買取りみたいものはまだまだ横行しています。これは、テレビ局とか、映画の場合はちょっと収入構造が違うので問題なんですけれども、テレビ局なんかが、本来であれば二次使用料というのは別途考えなきゃいけないところを、買取りをしてしまうということは横行していまして、それを何とかするのに、この原則というのが非常にプラスになるのではないかなと思っております。

【太田主査】ありがとうございます。

今村委員、どうぞ。

【今村委員】上野先生に1点、御確認なんですけれども、この欧州の著作権契約法というのは、著作権に関連する契約の規律を定めているわけですけども、今ご紹介されていたいろいろな御意見は、主にエンターテインメント産業のマネジメント契約であるとか、あるいは商業出版の世界における出版契約とか、そういうビジネスとして、通常、定型的に行われていることを念頭に、この契約法の規律の必要性というものが議論されるわけです。

著作物にせよ、実演にせよ、レコードにせよ、今、世の中にあふれているわけで、私なんかも、ちょっとした原稿を書いたりとか、いろんな人が著作物を創作しますし、レコードも、録音すればレコードにはなりますし、実演も、何か実演すれば、実演が成立するわけです。

欧州の著作権契約法の欧州指令というものは、対象とする契約というのを、別にエンターテインメントの分野の商業的に行われているものに限定しているとか、そういうことはあるのか、ないのかということをお伺いできればと思います。

それを聞きたいのは、やっぱり日本では契約という話になってくると、著作権だけの話ではなくなるということになって、全ての契約に関係するから、こういうところでは決められないみたいな、文化庁の所管する著作権法の範囲内ではできないみたいな議論にもなってくるのかもしれないと思うんです。その辺について何か、欧州指令で対象を限定しているというような部分があるのかどうかというのを、お伺いできればと思います。

【上野委員】ありがとうございます。欧州DSM指令の著作権契約法はエンターテインメント契約だけを対象としているわけではないのですけど、1つだけ除外しているのがコンピュータ・プログラムです。第23条2項によって、コンピュータ・プログラムの著作物に係る著作権契約については、欧州DSM指令の契約法の規定を全て排除しています。

このように、明文上はコンピュータ・プログラム以外の区別はないのですけれども、国内法化の過程で、何らかの具体化をしているケースはあるように思います。例えば、フランス法では、学術図書の出版について、初版に限って一括払いが許容されていたりしますので、その意味では、欧州DSM指令の国内法化の段階では、ある程度、分野に応じた調整というのが裁量の範囲で可能な場合があるのかなとは思っている次第です。

以上です。

【太田主査】よろしいでしょうか。ありがとうございます。

ほかに御質問、御意見ございますか。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】日本ネットクリエイター協会、仁平です。興味本位の質問なんですけども、日本の場合だと――日本に限らないのか、新しいテクノロジーが出てくると、契約当初は全く考えていなかったような収益方法というのがよく出てくるんです。例えば、YouTubeが出てきて、コンテントIDでの収益が可能になってくると、原盤をレコード会社さんにCD用に譲渡はしていますと、ライセンスアウトしていますと。

CD及び、そのCDの販売促進用には使っていいですよというのと、じゃあ、その楽曲を誰かがBGMに使って踊ってみたというようなものがYouTubeに流れたときのコンテントIDというのが、その範疇に入るのか、入らないのかとか、結構分からないというようなものが、多分ヨーロッパの中でも、今までもいっぱいあったような。これからもいっぱいあると思うんですけど、それに対しては、この規約、この法律はどういうような対応をするんでしょうか。

【上野委員】ありがとうございます。今回の欧州DSM指令の著作権契約法というのは、報酬に関する規定が中心なのですが、確かに、一般には、著作者や実演家を保護する著作権契約法として、権利譲渡の範囲を制限する規定も重要です。例えば、先ほど日本法の立法過程において出てきた案の中で少し触れましたように、ある著作者が将来創作する著作物の著作権を全部譲渡する契約を無効とする規定があったりします。

そして、ドイツ法に昔からあるのが未知の利用方法に関する契約を禁じる規定で、これがご質問に関わるかと思います。つまり、将来の技術について予測することは通常困難ですので、未知の利用方法に関する契約については、これを無効にしたり、あるいは撤回できると定めたりしているわけであります。

これに対して、日本の著作権法には、将来発生する著作権を全部譲渡する契約を禁じる明文の規定はありません。したがって、著作権を全部譲渡してしまいますと、その後に昔はなかった新たな利用方法が登場しても関係ないということになります。むしろ過去の裁判例によりますと、著作隣接権を全部譲渡する契約を締結した場合、その後の法改正によって新たに創設された送信可能化権も譲受人に帰属するとした判決があり、その意味では、実演家にとって不利な解釈がされているとも考えられます。

本来、著作者や実演家がその著作物や実演が上げる収益から適正な利益分配を受け続けることができるべきだと考えるならば、たとえ権利譲渡が認められても、少なくとも契約後に新しく発生した利用方法による収益について新たな報酬を受け取ることができて然るべきではないかと考えられます。しかし、現在の日本ではその点に関する制度的な担保はない状況かなと思います。

【仁平委員】これはぜひ検討いただきたいですね。今後、まず全然想像できないようなことが、来年出てくる可能性はすごく高くなってきたので。

ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。

ありがとうございます。その他、全体を通して何かございますでしょうか。ありがとうございました。

それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、ほかに特段ございませんようでしたら、本日はここまでとしたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。

白井様、お願いします。

【白井著作権課専門官】本日はありがとうございました。次回の政策小委員会ですが、3月13日を予定しております。またどうぞ、よろしくお願いいたします。

【太田主査】それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会政策小委員会(第5回)を終了させていただきます。

本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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