文化審議会著作権分科会政策小委員会(第2回)

日時:令和6年7月31日(水)

15:00~17:00

場所:文部科学省東館3F1特別会議室

(オンライン併用)

議事

1開会

2議事

  • (1)DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に関する今後の進め方について
  • (2)その他

3閉会

配布資料

資料1
「知的財産推進計画2024」及び「新たなクールジャパン戦略」等の政府方針等(著作権関係抜粋)(1.4MB)
資料2
DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に係るこれまでの議論及び今後の進め方について(案)(635KB)
参考資料1
第24期文化審議会著作権分科会政策小委員会委員名簿(109KB)
参考資料2
第23期文化審議会著作権分科会政策小委員会における主な意見(445KB)
参考資料3
AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(733KB)
参考資料4
令和6年度著作権セミナー「AIと著作権Ⅱ」(335KB)

議事内容

【太田主査】ちょうど時間となりました。3時となりましたので、ただいまから文化審議会著作権分科会政策小委員会(第2回)を開催いたします。

本日は御多忙中の中、またお暑い中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

本日は、委員の皆様には、会議室、こことオンラインにてそれぞれ御出席いただいております。

オンラインにて御参加されている皆様におかれましては、ビデオをオンにしていただき、御発言されるとき以外はミュートに設定をお願いいたします。

議事に入る前に本日の会議の公開について確認いたします。予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと思われますので、既に傍聴者の方にはインターネットを通じた生配信によって傍聴していただいているところですが、特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【太田主査】では、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

また、前回の会議、令和6年、2024年5月20日以降に委員の異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。新たに御就任いただきました委員を御紹介させていただきます。

佐藤委員の辞任に伴いまして、6月26日付で正親町友惠、一般社団法人日本経済団体連合会産業政策本部主幹に委員として御就任いただきました。御紹介申し上げます。

【正親町委員】よろしくお願いします。

【太田主査】ありがとうございました。よろしくお願いします。

それでは、まず、事務局に配付資料の確認をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】配付資料の確認をさせていただければと思います。資料は議事次第の配付資料一覧のとおりとなります。

対面で御参加の委員の方でもし不足などがございましたら、近くの事務局職員にお声がけいただければと思います。

資料の確認は以上です。

【太田主査】どうもありがとうございました。

それでは、議事に入りたいと思います。本日の議事は、議事次第のとおり、(1)から(2)の2点となっております。

早速、議事1の「DX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策に関する今後の進め方について」に入りたいと思います。

初めに資料1、資料2について事務局より説明していただきます。資料1の各政府方針における著作権関係の記載について御説明いただいた後に、一度質疑応答の時間を設けたいと思います。その後、対価還元方策に関する今後の進め方等について、資料2として御準備いただきましたので、事務局から御説明していただきます。その後で意見交換のためのまとまった時間を設けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。では、資料1の説明を始めさせていただければと思います。資料1「『知的財産推進計画2024』及び『新たなクールジャパン戦略」等の政府方針等」でございます。こちらの資料は、知的財産推進計画及び新たなクールジャパン戦略、経済財政運営と改革の基本方針、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画について、著作権関係の記載を抜粋したものでございます。

それぞれの方針における記載について説明いたします。まず、知的財産推進計画2024ですが、こちらにつきましては、知財戦略の重点施策として、まず、AIと知的財産権という項目がございます。そこではまず現状と課題としまして、1ページ目の一番下の段落になりますけれど、「AIは、情報のアクセシビリティの向上や、労働力不足の解消、生産性の向上など、大いなる可能性を予感させる技術である。しかしその一方で、大量のコンテンツ・データを利用し、人間による創作物と区別がつかないような生成物を生み出すAIの存在は、著作権等の侵害リスクや悪用に対する懸念等を生じさせるものともなっている」とされておりまして、次のページに移りまして、「また、生成AIは文章、画像、動画等を取り込み、マルチモーダル化が進んでおり、著作権のみならず、知的財産権全体との関係について、具体的に検討することが必要である」とされております。

そして、昨年度、法制度小委員会において取りまとめいただきました「AIと著作権に関する考え方について」に言及するとともに知的財産戦略推進事務局において行われておりましたAI時代の知的財産権検討会における「中間とりまとめ」についても言及されております。

また、生成AIと知的財産をめぐる懸念・リスクへの対応として、2ページの下の2段落になりますけれど、先ほど申し上げた中間とりまとめでも示されているように、「知的財産権の侵害リスクとして指摘されるものは、声や労力の保護等、必ずしも知的財産法のルールのみでは解決できない点も複合的に関わる。そのようなリスク等への対応策については、AIガバナンスの取組との連動が必要であり、生成AIに関わる幅広い関係者が、法・技術・契約の各手段を適切に組み合せながら連携して機動的に取り組むことが必要である」と指摘しております。

「また、そのような各主体の取組を促進するためにも、文化庁、特許庁及び経済産業省において、それぞれが所管する知的財産法について、AI技術の進展等を踏まえた必要な検討の継続を行うことや、文化・産業に関わる関係府省庁が連携して、関係主体に対する周知啓発を進めることが必要である。あわせて各主体の垣根を超えた共通理解の醸成を図ることも必要である。また、著作物等の適正な管理を期する権利者等の意思を貫徹し、契約による対価還元を実現するためにも、インターネット上の海賊版対策を強化するとともに」、次のページに移りまして、「民間においても、適正に管理された正規版の普及の取組も必要である」と指摘しております。

こういった指摘を受けまして、具体的な取組の内容としましては、4ページ目の施策の方向性について記載されておりますが、1つ目のポツでは、「AIと著作権に関する考え方について」に基づいて、「著作権制度等に関し、社会に分かりやすい形での周知啓発を行うとともに、好事例等の収集及び関係者への共有を行いながら、必要に応じた更なる明確化に向けた検討と、検討結果の周知を継続的に行う」こととしております。

また、次のポツですが、他省庁の取組がメインとなりますが、「生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声等の利用・生成に関し、不正競争防止法との関係について、考え方の整理を行い、必要に応じ、見直しの検討を行う。また、他人の肖像や声等の利用・生成に関し、その他の関連法についても、法的考え方の整理を行う」こととしております。

また、次のポツについては、先ほど申し上げた文化庁の取組も含めてとなりますが、「各知的財産法とAIの適用関係や各主体に期待される取組例等について周知し、取組を促進する」こととしております。

こちらの最後のポツでは、「生成AI及びこれに関する技術についての共通理解の獲得、AI学習等のための著作物のライセンス等の実施状況、海賊版を掲載したウェブサイトに関する情報の共有など、関係当事者間における適切なコミュニケーションを促進する」こととしております。

ここまでがAIと知的財産法の関係になります。

次、4ページ目の一番下からになりますけれど、「海賊版模倣品対策の強化」という項目では、次のページに移りまして、現状と課題として、日本向けの海賊版サイト上位10サイトのアクセス数は減少してきている一方で、英語版のサイトへのアクセス数やベトナム語版のアクセス数は以前大規模でございまして、海外発海外向けの海賊版サイトへの対応が喫緊の課題と指摘しております。

また、こちらの3段落目になりますが、漫画以外も含め日本コンテンツのインターネット上の海賊版被害額は2022年で約2兆円とされておりまして、その被害の深刻さは明白であり、海賊版に対する対策を強化していくことが重要であると併せて指摘しております。

こういった指摘を受けまして、政府が取り組むこととしている内容については、6ページ目の施策の方向性に記載されております。

まず1つ目ですが、「インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニューに基づく取組を官民一体となって進める」こととしております。

また、次のポツですが、侵害コンテンツを容認しないということが「国民の規範意識に根差すよう、関係省庁・関係機関による啓発活動を推進する」こととしております。

また、次のポツですが、「検索サイト事業者における海賊版に係る検索結果表示の削除又は抑制など」、民間事業者のサービスについても必要な対策措置が講じられるよう、様々な取組をすることとしております。

また、次のポツですが、海賊版対策のために国際連携の強化を図るでありますとか、摘発に向け、国際的な捜査協力等を推進するなど、国際執行の強化を図ることとしております。

また、次のページに移りまして、1つ目のポツですが、国境を越えた著作権侵害等に対し国内権利者が行う権利行使への支援を図ることとしております。

また、次のポツは、現地の言語での周知啓発、海賊版サイト等に関する情報提供のインセンティブ付与の在り方の検討でありますとか、正規版の流通促進などの取組を官民一体となって推進することとしております。

また、次のポツですが、模倣品・海賊版対策としては厳正な水際取締りを実施することとしております。

ここまでが海賊版対策に関して取り組むこととしている内容でございます。

次の4ポツの「高度知財人材の戦略的な育成・活躍」については、コンテンツ開発や利活用における人材育成として取り組むこととしている内容が記載されております。

この項目の現状と課題ですが、次のページに移りまして、8ページ目の2段落目で、コンテンツ開発や利活用に関わる人材の育成は重要であって、新しいビジネスモデルの創出などを牽引できる人材が求められている状況であり、このページの下から2番目の段落にございますように、スキルに応じた処遇の確保及び待遇の改善がコンテンツ業界において積極的に取り組まれることが必要であるという指摘をしております。

これを受けまして、著作権に関係する取組としましては、9ページ目の施策の方向性に記載しておりますけれど、契約書の標準的ひな形の提供を行う「著作権契約書作成支援システム」や「誰でもできる著作権契約マニュアル」の公開など、フリーランスのクリエイター等を支援するということとしております。

次の「知財活用を支える人材基盤の強化」というところでは、現状と課題の2段落目にございますように、知財に関わる人材の裾野の広がりが必要であるということで、著作権に関係する取組としては、ページをまたぎまして、11ページになりますが、施策の方向性というところに記載しておりますとおり、「著作権Q&A集をリニューアルし、効果的な普及啓発を行う」ことでありますとか、「著作権制度に関する一般的な知識のみならず、著作権を巡る社会の動きやWeb3.0関連技術等のデジタル技術と著作権の関係などの視点を取り入れつつ、広く国民に向けたセミナーや学習教材の作成により著作権に関する普及・啓発を行う」こととしております。

以上が知的財産推進計画における著作権関係の記載となります。

次に新たなクールジャパン戦略ですが、新たなクールジャパン戦略はこちらの資料の12ページ以降から始まりますけれど、こちらにつきましては知的財産推進計画と重複する部分も多くございますので、新たなクールジャパン戦略のみに書かれている内容を中心に御紹介させていただければと思います。

この戦略において政府で行うこととされている取組としましては、15ページの「政府」という項目のところに記載がございます。

まず、こちらの1つ目のポツですが、公正かつ自由な競争の実現に向けて、一方的なルール変更の有無や透明性の向上に係る取組、収益配分、コンテンツの2次利用に係る権利設定等について実態の把握を進めることとしております。

また、次のポツでは、「改正著作権法に基づく未管理公表著作物等の利用に関する裁定制度の円滑な運用に向けた必要な準備を行う」こと。

「また、制度の施行に合わせて、『分野横断権利情報検索システム」が構築・運用されるよう』、「各分野のデータベースを保有する団体等との連携、可能な限りデジタルで完結できるシステムの設計・開発等に向けた取組を進める」こととしております。

また、次のポツですが、「店舗等におけるレコードの演奏や公への伝達に関し、国際的な著作権制度との調和等の観点のほか、報酬請求権の導入に係る関係者の合意形成の見通しや円滑な徴収・分配体制の見通し等を踏まえつつ、実演家及びレコード製作者への望ましい対価還元の在り方について検討する」こととしております。

次のページの一番上のポツ以降は知的財産計画と重複する部分になりますけれど、AIに関する取組でありますとか、コンテンツ産業を支える人材を強化する取組でありますとか、海賊版対策を強化する取組について触れられております。

新しいクールジャパン戦略については以上となります。

次に、18ページですけれど、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針です。こちらでは文化政策等の大きな方向性が示されております。

4ポツの(2)の一番下の段落で、新たなクールジャパン戦略に基づいて海賊版対策などに取り組むことについて触れられているほか、6ポツの(2)の「文化芸術・スポーツ」の項目で、「文化芸術のソフトパワーによる新たな価値創造と経済成長の好循環を実現し、心豊かで多様性と活力ある文化芸術立国を実現する」とされています。

次、最後になりますが、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版につきましては、3ポツの「コンテンツ産業活性化戦略」において触れられておりまして、(1)「クリエイター・コンテンツ産業に関する司令塔機能の強化」として、クリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備に加え、海賊版対策などの在り方などについて戦略的な議論を行い、PDCAサイクルを回すことを任務とするコンテンツ産業官民協議会を設置することとしております。

また、(2)の「海外展開及び世界に通用するコンテンツの制作・流通の促進」というところで、まず⑩ですが、「知的財産と異なる産業の組合せによる新たなコンテンツ産業の創出」として、音楽については、日本ブランドのキュレーションの在り方の再構築に向けて、デジタル化時代に対応した過去のコンテンツの利用に係る権利の整理や適切な対価還元を実現するための方策について検討することとしております。

また、⑫、「海賊版に対する対策強化」として、「外国での被害も深刻化する中、国外犯処罰の導入検討も含め、国際執行を強化する」ということについて触れられております。

各政府方針における著作権関係の記載については以上となります。説明は以上となります。

【太田主査】どうもありがとうございました。

ただいま事務局から説明していただいた内容について御質問がございましたら挙手をお願いします。オンラインの方は挙手ボタンによってお知らせください。

いかがでしょうか。

仁平委員、どうぞ。

【仁平委員】日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。AIについてなんですが、AIにおけるコンテンツにおける、法的にこの権利がどうなっているのかとか、利用方法についてどうなっているのかというところが今すごく議論になっていると同時に、クリエイターの中で間違った情報というか、不完全な情報における、そういうものがいろいろと飛び交って誹謗中傷みたいな問題が起きているというところも事実あります。

この中でいわゆる現行の法律に照らし合わせるとこうですよという、そういう議論も物すごく大切だと思うんですが、科学技術の発展によって、人間の生活というか、哲学みたいなものというのは変わってくるのかなとも考えていて、これらAIについて考えるときには、今後僕らはこの科学技術の発展を用いてどういう世の中をつくっていきたいんだ、どういうような創作文化をつくっていきたいんだというところからの検討が実は大事なんじゃないかなというふうに、すいません、ちょっと大上段で言ってしまいましたが、ちょっと思っている次第です。

そういうようなことを言われるクリエイターさんって結構いらっしゃるんですよ。言葉的にはもっと単純な言葉で言う場合もありますが。なので、今後、僕らは、つまり、AIによって今既存の仕事がなくなって困っているんだよということだけじゃなくて、今後僕らはどういう世界を目指していくんだという議論、議論というんですかね、そういったものが必要なんじゃないかなと思っています。

そういうような意見交換というか、哲学的思考の場みたいなものが、ちょっと僕あんまりよく分かってないので、そういうようなものがあるんでしょうかという質問というか、意見というか。

【太田主査】どなたに対する質問ですか。

【仁平委員】文化庁様になるんですかね。

【太田主査】では、籾井さん。

【籾井著作権課長】ありがとうございます。今仁平委員から御指摘いただいたこと、非常に重要なことだと認識をしております。一方で、ちょっと著作権制度の枠を出る大きな議論になってまいりますので、文化庁全体のほかの部署の中でどういった議論があるのかというようなことも踏まえつつ、その中で著作権施策として何ができるかというところは著作権分科会の中で御議論いただけますけれども、少し私どものほうでも、文化庁全体の中で今どのような動きがあるのかというのを情報収集させていただき、何かありましたらこちらで共有させていただければと思います。

【太田主査】仁平委員、よろしいでしょうか。

仁平委員がおっしゃるように、新たな科学技術の発展がどう人々の一人一人の幸福の向上につながるかという発想が非常に重要だと思います。

最近読んでおります、シンギュラリティーの本の続編が今年出たのですけれど、それによると2029年までに人間の能力を超えるどころか、生活も、人間の在り方とかが変わってしまうぐらいに技術革新が進むであろうと論じています。例えば、脳とコンピュータ、ブレーン・コンピュータ・インターフェースが一気に進んで、世界中のインターネット上のコンピューターパワーとデータを個々の人々が一瞬にして脳で直接使って思考ができるようになるだろうというような議論がされておりまして、本当にこれからちょっとどういう世界になるか分からない時代ではあると思います。仁平委員がおっしゃるようにそれらがどれだけ人々の幸福につながるかという視点は非常に重要だと思います。

1つ、私の方から7ページについて質問してよろしいでしょうか。上から2つ目のポツに、真ん中辺り、海賊版サイト等に関する情報提供のインセンティブ付与というのがありますが、この部分は海外の現地の人々に向けての記載なのですけど、具体的にはどういうインセンティブを考えたらよろしいんでしょうか。

と言いますのも、海外の人に限らず日本国民についてもこういう違法サイトの情報提供等へのインセンティブという議論があってもおかしくはない気がしたもので、ちょっと質問している次第です。

【持永著作権課課長補佐】こちらのポツ、文化庁が担当省庁として関係省庁の中に入っておりますけれど、こちらの取組は他省庁の取組になりますので、そちら情報収集しまして御報告したいと思います。

【太田主査】分かりました。ありがとうございます。アメリカ合衆国などですと、脱税等について情報提供すると、それで回収できた分の2割とか3割、場合によると何億円も何百億円も報酬として提供するというようなインセンティブもあるものですから、そういうことをお考えなのかなとちょっと考えた次第です。

いかがでしょうか。ほかに質問とか御意見ございますでしょうか。

どうぞ、福井委員。

【福井委員】福井でございます。いつもながら充実した御報告をありがとうございました。

それでは、ここではやはり資料1の5ページ、海賊版について申し上げたいと思います。被害の状況が記載されております。実際その後の動きについては伊東委員が最もお詳しいと思いますが、日本語のオリジナル海賊版サイトへのアクセスもこの時点から一段下がった後、若干増加傾向に戻った可能性があります。それから、英語などに翻訳されたサイトに関しては明らかにアクセス数は増加の一途をたどっている状況があります。

私は対策として重要だと思うことを3つ申し上げておきたいと思います。既に次のページなどに記載されている事柄ですが、1つは、検索結果の削除なんですね。現在、漫画、海賊版では、グーグルとの協力関係により、裁判所の関与も得て検索結果からの特定の海賊版サイトの完全削除が実現していますが、これはアクセス数の抑制という意味では絶大な効果を発揮しています。実際3大サイト閉鎖後2億から1億近くまで落ちた主たる原動力はこれなんですね。ただし、今のところ日本国内でしか働いていませんので、海外、英語版サイトその他においても同じような仕組みを導入できると大変大きく働きます。これが1点目。

それから2点目は、ドメインホッピングの問題ですね。現在同じ内容の海賊版サイトも違うドメインでどんどん登録する、いわゆる量産型と言われるものが今年になってから登場しまして、全く同じ内容で270以上、別なドメインでの海賊版サイトというのも観測されています。

そうすると、これは対策が非常に難しくなりますので、ICANNなどのドメインを管理する国際機関での協力が生命線になってきます。現状、協力的とは残念ながら言いかねる状況ですので、政府には、既に努力いただいておりますが、さらなる働きかけが、そして国際社会のこの問題に対する理解の共有が重要かなと思います。

最後です。エンフォースメントですね。国外犯処罰の言葉も出ました。別な場でも御意見申し上げたことで、これ自体に反対というわけでは決してないのですが、国民以外での国外犯の処罰規定というのはなかなかハードルも高い。むしろ、例えば海外に拠点があっても日本の漫画・アニメなどが中心で、多くは日本のユーザーがアクセスしているであろう海賊版サイトについては、国内犯として処罰が可能であろうという整理を、恐らく有力な学説も行っているし、政府のサイト自身でも行っております。しかし、日本の国内犯と整理され得るサイト運営者も含めて、今、本拠地がほぼ集約されているベトナムにおいて、いまだに1つの刑事摘発にも至っていないんです。身元が分かって,身元情報をベトナム公安に提供しても、3年間にわたっていまだに1つの刑事摘発にもつながっていない。このエンフォースメントは、既に大きな力添えを政府からもいただいているところですけれども、さらなる注力が重要であろうかなと思うところです。

長くなりました。

【太田主査】ありがとうございます。もし事務局でリアクションございましたら…。

【持永著作権課課長補佐】この後、資料2の説明の後に具体的なところの御意見はぜひいただきたいと思います。資料1については、福井委員からはもっと問題を深刻に受け止めるべきだという御指摘をいただいたと理解させていただきました。具体的な中身のご意見については、この後資料2の説明の後に頂戴いただければと思います。

【太田主査】分かりました。では、後でもう一度お願いいたします。

ほかにございますでしょうか。

𠮷田委員、どうぞ。

【𠮷田委員】大阪工業大学の𠮷田でございます。大変精緻にまとめられた資料の中から、私のほうから少し御質問をさせていただきます。7ページ、高度知財人材の戦略的な育成というところでございます。偶然にも今年4月からコンテンツビジネスコースというのを本学でも設置いたしまして、著作権にかかる専門人材の育成にまさに進んでいこうというところでございます。

こちらに掲載されている産業、従事者の状況、主体的な収益と予想されるグッズ販売など、今後の社会を牽引するだろう産業として把握をしているところですが、現状では、コンテンツ産業のビジネスがどのような仕組みなのか、あまり見えてこないというところがあるのではないかなと思います。今後の方向性として契約書作成支援マニュアル等ができることは本当に重要なことだと思うと同時に、現状のビジネスモデルなどの把握も踏まえて進めていくことができれば、現場に沿った契約支援ができるのではないかと考えた次第です。その点のご予定などお考えがもしございましたらお聞かせいただければと思います。

【太田主査】事務局からご返答がございましたら、どうぞ。

【籾井著作権課長】すいません、必ずしも御質問の趣旨を十分に捉えられてなかったら申し訳ございません。人材のところは人材のところでありつつ、著作権分野に関して何ができるかという観点で言いますと、きちんと契約締結の際に今のコンテンツ産業をめぐる状況について踏まえた形で契約締結できるように契約システムだったりマニュアルだったりとかを作成をすることを通じて支援をしていくということになります。

今日この後の議論になりますけれども、やはり対価還元に関わるテーマの部分、全体の環境のお話もございますし、権利者一人一人の意識の持ち方というところも重要になってくる中で、そういった状況も踏まえてこうした契約システム、マニュアルの見直しも今後の議論としては出てくるものと承知をしておりますが、現時点で具体的にこういうふうに見直すということが決まっているというものではございません。

【𠮷田委員】ぜひ著作権ビジネスについての問題意識を共有できる場ができればと考えております。ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。

唐津委員、どうぞ。

【唐津委員】弁護士の唐津です。すいません、私のほうから4ページに関して幾つか質問というか、お願いも含めてあるんですけれども、4ページの中段の辺りに施策の方向性ということで、1つ目がAIと著作権に関する考え方、周知啓発とさらなる明確化ということが出ていまして、2つ目のところで生成AIにおける俳優や声優等の肖像や声の利用に関して不正競争防止法との関係ということが出てきているんですけれども、実は生成AIとそれに関する実演家の権利ということで少し御相談をいただく機会があったので、私自身もいろいろ考えることがあったんですが、1つは、これ一気に不正競争防止法が実演家に関して出てきているんですけれども、その手前で著作権法との関係で実演家の権利というのをどういうふうに考えたらいいのかという点の整理をできればぜひお願いしたいなと思っております。

「AIと著作権に関する考え方」というのは基本的には著作権に関するお話になっていて、著作隣接権のほうに関してはほとんど言及されていない状況かと思います。実際法律上は、隣接権にも例えば30条の4というのは適用されますということがさらりと書いてはあるんですが、同じようにAIと著作権に関する考え方を当てはめて考えようと思いますと、いきなり一番最初に、どういうふうに当てはめたらいいのか、思想・感情の享受を目的としない利用というところ1点を捉えても、実演というのはそもそも思想・感情というのが要件になっていないので、それを当てはめるときにどうしたらいいのかというところでいきなりつまずいてしまうような状況になっております。

ということで、「AIと著作権に関する考え方」は非常に注目もされていて、様々なところで参照されているので、こちらの周知啓発、それから明確化ということはぜひ進めていただきたいのと同時に、著作隣接権との考え方で何か指針のようなものを示していただければとは思っているんですが、その辺りについて今後検討してまとめていくというお話というのは今あるんでしょうか。

【太田主査】事務局のほうからどうぞ。

【籾井著作権課長】ありがとうございます。実演との関係ですとかにつきましては、基本的な考え方の最後の部分で、今後の様々な状況を見極めて必要が出てきたタイミングで検討するということが記載をされています。すいません、ちょっと今少し正確じゃないかもしれませんけれども、基本的な考え方の終わりの部分に確かそういった記載がございます。

現時点で直ちにこれを具体的に議論をして何かを取りまとめるというスケジュールはございませんけれども、また、ちょっと考え方のほうの記述も踏まえまして、いつどのような形で進めていけるのかというのは整理をしていきたいと考えております。

その議論を行うとすれば、政策小委の下に置かれております法制度ワーキングのほうで行うという、法制度に関することになりますので、そちらのほうでまずは議題を整理をして検討を行い、そして政策小委員会のほうに御報告をするという形になるかと思いますけれども、いずれにしてもスケジュール含めてこれからの整理ということになります。

【太田主査】よろしいでしょうか。

【唐津委員】分かりました。ありがとうございます。

【太田主査】ほかに質問等ございますでしょうか。

ありがとうございました。

それでは、次に移らせてさせていただきます。資料2に基づき事務局より説明をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。では、資料2の説明をさせていただきます。本政策小委員会では、先日行われた第1回の会合で昨年度に引き続きDX時代に対応した著作物の利用円滑化、権利保護、適切な対価還元に係る基本政策について御議論いただくとされたところですが、今後の進め方の案についてこちらでまとめさせていただきました。

まず、昨年度の議論で出た御意見から簡単に振り返り、その後、進め方の説明に移らせていただければと思います。

1ポツの「これまでの議論」についてまず説明させていただければと思います。昨年の政策小委員会では、特に近年、デジタルプラットフォームサービスにおけるコンテンツ利用への移行が進んでいるところであることから、そのような利用形態の中で様々な課題が指摘されている音楽分野を念頭に置きまして、特に、取引の透明性、対価の妥当性・公平性、適切な競争関係という3つの視点から、権利者、デジタルプラットフォームサービス事業者等の関係者からヒアリングを行い、議論を行いました。

その際、適切な対価還元を図るという観点から出た主な意見は以下のとおりとなります。

まず、総論のところについての意見ですが、著作権法のみに限定せず、独占禁止法やいわゆる透明化法、プロバイダ責任制限法を総合的に検討することが必要というご意見。

コンテンツの取引や契約関係、業界の慣行、実演家の育成プロセスやマネジメント契約等の環境なども踏まえて検討することが必要というご意見。

透明性の確保に当たり、対価還元の文脈で不可欠となる情報を特定するとともに、それらの情報をどう表現すべきかを含めて検討すべきというご意見。

相場となる対価のイメージが形成され、契約当事者間で「対価の妥当性・公正性」は何かということを具体的に共有できることが必要というご意見。

また、誰もが他者の著作物の利用者になり得る現状を踏まえ、円滑に適法利用ができるようにするにはどうしたらよいかというご意見。

契約当初は考えていなかった新しい利用方法にどう対応するかも含めて検討すべきというご意見がございました。

次に、プラットフォーム事業者に関する意見ですが、まず、ユーザーアップロード型のデジタルプラットフォームにおいて著作権侵害コンテンツが投稿され、削除も対価還元もなされない場合、プラットフォーム事業者が広告収入を得ていることの責任も踏まえて対応を検討すべきという御意見。

デジタルプラットフォームは、コンテンツにアクセスする機会を増やすことなどによりコンテンツ市場そのものの拡大に寄与しているという積極的な側面もあるという御意見。

対価還元の文脈で不可欠な情報について、プラットフォーム事業者に対して精緻に定期的な情報の開示を求めることが必要という御意見。

プラットフォーム事業者の自主的な取組である権利管理ツールは、対価の妥当性・公正性という観点からも有用であり、デジタルプラットフォームのコンテンツ提供の場としての信頼を高めるという点も踏まえ、権利管理ツールの採用を促進することはできないかという御意見。

権利管理ツールの導入やコンテンツモデレーションの実施に当たり、自動判定等の技術が活用されると想定されるところ、これらが適切かつ効果的に作用し、より信頼されるデジタルプラットフォームづくりに資するよう、プラットフォーム事業者と権利者の協働を進めていくことが期待されるのではないかという御意見がございました。

次に、著作権等管理事業者に関する御意見ですが、1つ目が、包括的利用許諾契約の役割や意味合い、プラットフォーム事業者と権利者が共にコンテンツ市場そのものの新たな開拓や活躍の機会の拡大等に資する活動を行っていく関係性を構築する可能性等についても念頭に検討を進めるべきという御意見。

競争法上の制約に留意しつつ、いわゆる交渉力向上のために、例えば権利者同士が共同してプラットフォーム事業者に対して要請を行うなどの取組も期待されるのではないかという御意見。

グローバルなプラットフォーム事業者から、より適切な対価還元を受けるためにはどうすればいいかについて関係者間で情報交換を行うことが有用ではないかという御意見。

著作権等管理事業者は個別の権利者と比して大きな交渉力を持つ主体となり得る。集中管理を高めること等を通して、著作権等管理事業者がプラットフォーム事業者と対等な交渉主体となる可能性を模索することもありうるのではないかという御意見がございました。

こういった御意見を踏まえまして、2ポツの「今後の進め方」では御議論いただきたい論点をお示ししております。

また、昨年は音楽分野を中心に議論を行って論点の洗い出しを行ったところですが、今期は音楽分野に限らず分野横断的に方策を議論することとしてはどうかと提案させていただいております。

それでは、具体的な論点ですが、まず1)で、昨年の御意見を踏まえ、今期は適切な対価還元に向け、各関係主体に求めるもの、期待するものをさらに具体的にすべく御議論いただいてはどうかということで、各主体別に期待される役割としての論点を整理しました。

まず(ア)ですが、著作権等管理事業者等に期待される役割として、1つ目は、デジタルプラットフォーム上における新しいサービスの出現など新しい利用形態が想定される中で、十分に対価還元に結びつくような適法かつ円滑な著作物等の利用が求められますが、それに向けて著作権等管理事業者にどのような役割が求められるかといった論点。

次に、これに関連しますが、管理事業者との管理委託契約時には想定されていなかった利用方法について、新たなライセンス契約により対価還元の機会を逃さないためにも、著作権等管理事業者にどのような役割が求められるか。特に権利者に対して契約の見直しの打診をしたり、対外的にこうした取扱いについて周知したりすることについてどのような対応が著作権等管理事業者に求められるかといった論点。

次に、著作権等管理事業者が権利者に分配する対価について、適正性・透明性を高める観点から、権利者に開示すべき情報は何か。このためにプラットフォーム事業者との契約に当たり、管理事業者がプラットフォーム事業者にどのような情報の開示を求めるべきかといった論点。

次に、集中管理の割合を高めることがプラットフォーム事業者に対する交渉力向上のための1つの方策であるところ、集中管理の割合を高めるために管理事業者等としてどのような対応が考えられるか。また、分野の特性として、これまで集中管理が進められてこなかった分野についてはどのような対応があり得るかといった論点について期待される役割として議論を深めてはどうかということで提案させていただいております。

次に、(イ)ですが、こちらはプラットフォーム事業者に期待される役割についてになります。

1つ目として、著作権侵害コンテンツによる広告収入により、プラットフォーム事業者も結果として不当と言える広告収入の一部を利益として得ることとなるところ、侵害コンテンツへの対策の責任についてどのように考えるかといった論点。

また、次ですが、他方で、コンテンツ市場の拡大に寄与しているという側面もあり、デジタルプラットフォームがさらに信頼される場になることが期待され、そのために著作権侵害の抑止は必要であり、それに向けてプラットフォーム事業者が果たし得る役割は何か。また、プラットフォーム事業者は、そのために著作権等管理事業者等とどのような協働が期待されるかといった論点。

次に、プラットフォーム事業者から著作権等管理事業者に対して支払われる対価、その先に管理委託契約を結んでいる個々の権利者がいるわけですが、その対価が適正なものとなるよう、根拠となる情報としてどのようなものが開示されることが望ましいかといった論点。

次に、適切な対価還元のために正規版の流通を促進するのと同時に、著作権等侵害物による対価獲得機会の喪失を防止する観点から音楽分野でContentIDという技術が導入されてきましたが、その実績を踏まえ、ほかの分野においても類似の技術を導入することは検討できないかといった論点について、期待される役割として議論を深めてはどうかということで提案させていただいております。

また、管理事業者やプラットフォーム事業者に期待される役割についての論点をお示ししたところですが、一方で、権利者自身も適切な対価還元を受けるために留意すべき内容があるのではないかということで2つ論点をまとめております。

1つ目ですが、新しい利用方法が生じた際にも適切な対価を得られることが重要であることから、管理委託契約を結ぶ際に、新たな利用方法が生じることを前提とし、どのようなことに留意すべきかといった論点。

また、適切な情報に基づいて契約を行うことが権利者にとって適切な対価を得ることにつながるため、次のポツに記載してありますとおり、管理委託契約を結ぶ際に、管理事業者とプラットフォーム事業者との契約の内容についてどのような情報を確認すべきかといった論点が考えられるのではないかということでお示ししております。

ここまでがクリエイターへの適切な対価還元に向けた各主体に期待される役割や留意すべき事項についての論点となります。

次に、2)ですが、対価還元に関連する諸制度として、昨年度と同様の内容ですが、2つ事項を挙げさせていただいております。

1つ目は私的録音録画補償金制度についてです。2つ目はレコード演奏・伝達権についてです。これらはどちらも様々な社会的な理解や国際的な状況などを踏まえ、必要に応じてということになると思いますが、引き続き検討するとさせていただいております。

最後になりますが、海賊版対策として、3)国境を越えた著作権侵害への対応についてとして論点をお示ししております。海賊版による著作権侵害は、対価獲得の機会を喪失させることなどから、その対策が急務であり、対策のために必要な検討を行うこと。また、その際には、海賊版対策とコンテンツの海外展開を両輪として検討を行うこと。さらに、国境を越えた著作権侵害であっても、現行の著作権法において執行可能な部分もあると考えられることから、その適用可能な範囲について具体的事例に即した検討を行うとともに、実際に執行されるよう、国際執行の強化に向けた連携の在り方について検討を行ってはどうかとして論点を挙げております。

また、プラットフォーム事業者が現状義務的に求められている以上に侵害対策に取り組むことが期待されることから、諸外国の制度の状況も踏まえつつ、侵害対策に主体的に取り組むことを促す方策についても検討を行ってはどうかとしてお示ししております。

以上が資料2の説明になります。

【太田主査】ありがとうございました。

ただいま事務局から説明いただいた内容に対する質問や今後の進め方についての御意見を含め、これから、議事の時間、先ほどの(1)についての御質問や意見交換も含めての議事の時間を取りたいと思います。

それでは、御質問や御意見がございましたら挙手をお願いいたします。オンラインの方は挙手ボタンにてお知らせくださるようお願いいたします。

いかがでしょうか。

河野委員、どうぞ。

【河野(康)委員】どうも御指名いただいてありがとうございます。日本消費者協会の河野でございます。御説明ありがとうございました。

令和6年度は、分野横断的に方策を議論するという方向性と、お示しいただいた各論点については、私は消費者の立場ですから特段異論はございません。

その上で、まず、検討に際して、時間軸を明確にして、議論で得られた成果を生かすためのルールづくりまで踏み込んで進めるべきではないかと思っております。DX時代の課題として見過ごしていけないのが、技術開発や社会実装のスピードへの対処で、議論を進めるのに拙速であってはならないとは思いますけれども、同時に丁寧に論点を洗い出すことに時間をかけるとビジネス環境などの変化に置いてきぼりを食うのではないかという不安を持っております。スピード感を持ったロードマップを示して、その下で取り組むべきではないかと思ったのが1つでございます。

また、令和5年度の議論で得られた内容は、主に音楽分野が中心であるため、この取りまとめのままで据え置かれるのか、それともこの議論を基に、これが1つの形になって、実際に起きている様々な問題の解決に対するインパクトを発揮できるのかどうか、令和5年度の検討結果の生かし方というのも知りたいと思いました。

先ほども申し上げたとおり、ロードマップを示すこと、また早期に一定の見通しないしは優先順位を決めての部分的な結論を示すことで、より実効性の高い検討につながるのではないかと思っております。

私からは以上でございます。ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございます。もし事務局のほうでリアクションがございましたら…。

では、先に御意見、御質問等をいただき、それらを集約した上でお答えになるそうですので、ほかに質問や御意見ございますでしょうか。

菅委員、どうぞ。

【菅委員】ありがとうございます。SF作家の菅です。たくさんいろいろメモをしたので申し上げたいと思います。もし的外れだったら途中でも御指摘ください。

まず、今の河野先生の御意見に私は全面的に賛成して、似たようなことを申し上げようと思っておりました。本当に手をこまねいているうちに世界が変わってしまいます。そして、先ほど御説明いただいた昨年度のというところで、例えばプラットフォームが何をできるかというところにおきまして、私をはじめ、いろんな方が意見をおっしゃって、例えば私なんかの場合だと、プラットフォーム自体が予算を持って著作権のPR動画をつくる。それを強制的に見せる。一番最初のCMのコーナーみたいな、強制的に見せることによって、プラットフォームを利用する若い子たちに著作権意識を高めてもらうというようなことを申し上げたんですけども、復習として今申し上げましたが、そういうことがどうなっているのか、あとさっぱり分かってないんですね。もしもそれができないよということであれば、できないことについては、言いにくいであろうけども、それはできないのでほかの案をというふうに先に進めていかないと、こういう意見がありました、ああいう意見がありましたでは次には進めなられないと思っております。こういう意見に対して、できる、できない、そして今、文化庁さんがどういうふうに着手をしているのかというのが、私たち委員にも見せていただければ、次の考え方につながると思います。

著作権だけではないんですけど、文化庁さんに関してですけども、例えば啓蒙という話が去年から出ておりました。ここは政策小委員会ということですが、啓蒙活動というのはほかに部署があるんでしょうか。私たちがこのまま議論しても、その意見は具体的になるんでしょうかね。ちょっと分からないんですけども、具体的になると信じて意見を申し上げますと、文化庁というものもキャラクターとして私は確立すべきだと思います。今「ぶんちゃん」というブンチョウのキャラクターがおりますが、そうではなくて、文化庁、例えば、Xでも、シャープさんとか、いわゆる中の人と言われる発信者がキャラクター化されてしまっている。文化庁も、今文化庁さんはこういうことをやっているというふうにみんなが応援できるようなキャラクター性を(キャラクターを作れというのではなく、事務的ではないもっと伝わる形にするということ)持って、文化庁やっているぞというのを、私たち、あと一般の方々に伝えるのが割と効果があるのではないか。そのために、今これをやっています、次はこういうのを考えていますというのをはっきり見せていただきたいと思っております。

ここからはちょっと別の意見になります。2つ申し上げます。ContentIDについて、私は仕組みはよく分かっておりませんが、これ正規版のみがContentIDを付与できるというととてもすっきりして見えるわけですが、現状ではContentIDを正規版のコピーに対してつける悪い人もいるわけですよね。メーカーとくくってしまうと今度はUGCがこぼれてしまう。ContentIDの性格とシステムと付与をする権利、そして利用できる条件というのはもっと知られるべきだと思っています。

最後の1点ですけども、文化庁さんは今年のフランスのジャパンエキスポにどなたか派遣されましたでしょうか。ジャパンエキスポというのは、日本のアニメが大好きなフランス、そこで日本のコンテンツを一斉に集めた展示会のようなものです。日本の国内では同じくアニメジャパンという展示会、紆余曲折あって今この名前になっているんですけども、アニメジャパンというものが開催されています。京都である京まふというところには文化庁さんは小さいながらもちゃんとブースを出しておられるんですが、残念ながら文化庁が来ましたよというアピールにしかなってないんですね。文化庁何やっていますよ、文化庁は著作権に関して、コンテンツに関してこう考えていますというのが、申し訳ないですけど、京まふで見た限りでは通じなかった。

アニメジャパンにしても、ジャパンエキスポにしても、そうやって文化庁さんが、それこそキャラクター性を持って、今これやっています、皆さんこれをお願いしますということをもっと強く言う。要するにオタクの中に分け入っていくような姿勢も必要ではないかと思っています。

ここまでで論は終わりになるんですが、最後に太田主査にお礼を申し上げます。私はSF作家なんですが、SFプロタイピングという考え方があり、SF作家のおばかな、壮大なものを現実に落とし込んでいこうというようなことがこの数年、大澤さんという学者さんを中心に活発化しています。今、シンギュラリティーという言葉、SF小説、20年前ですけども、を国家を背負った会議で聞くとは思っておらず、そのような考え方をしていただくことについて、クリエイターの一人としてお礼を申し上げますし、もっと、SF作家だけではなく、いろんなことをいろんなところに聞いて、ばからしくても意見を取り、その意見ができる、できないで振り分けされて、また私たちクリエイターにフィードバックされるのであれば、もっともっと私は協力できるなと思いました。

どうも長々すいません、ありがとうございました。

【太田主査】ありがとうございました。菅委員のSF小説もエンジョイさせていただきました。

ほかに質問や御意見ございますでしょうか。

河野委員、どうぞ。

【河野(智)委員】御説明ありがとうございました。私は、お示しいただいている方向性、音楽分野に限らず他の分野についても議論を進めていくという方向に賛成です。

また、論点として掲げていただいた事項についても特に違和感はございません。

その上で、一点。クリエイターへの適切な対価還元を実現するためには、クリエイターさんやコンテンツ提供者が、その方々の意思を反映したライセンスがきちんと成立する環境があるというのが大前提になると思っています。

そのためには、一定程度機能している海賊版対策というのが必須なのではないかと思っておりまして、対価還元の在り方ということと、そのための環境整備としての海賊版対策というのをぜひセットで議論していけたらなと考えております。

以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかにございますか…。もし福井委員、先ほどのフォローアップがございましたら…。

【福井委員】ありがとうございます。海賊版に関してはさっきお話ししてしまいましたので、ぜひそれをご参照いただければと思いますけれども、コンテンツの契約、プラットフォームとの関係についてコメントさせていただきます。

中ではアップロード型のプラットフォームを想定していらっしゃるかなという記載もあるんですけど、私はもうちょっと広げたお話をさせていただきます。管理事業者がプラットフォームと交渉するという姿が比較的視点として打ち出されているなと感じ、これ自体には賛成です。ただ、これは組織率が高ければ交渉力が十分もつであろうし、恐らく交渉はお仕事ですから、実際やられると思うんですよね。問題は、管理事業者でも組織率が高い存在はごく一部にしか存在していないということです。かつての文化審議会内での検討でも、多くの分野では組織率、加入率は大体10から15%ぐらいということで、非常に低い。そうすると、この組織率を上げることがやっぱり重要になってくるわけですけれども、少々時間がかかります。この努力はもちろん続けるべきなんですが、あわせて、そうした管理事業者では交渉できない種類の契約もまた重要だと思うんですね。具体的には、例えば制作委託契約です。つまり、既に存在しているコンテンツだったらライセンスですから、管理事業者の交渉もあり得ますが、今現在、例えば配信プラットフォームなどで起こっているのは、日本の作家など多くのクリエイター、あるいはプロダクションに対して作品作りの委託の契約が多く提示されていて、これがかなりワンサイドです。

例えば権利に関していえば、守るも何も、そもそもプラットフォーム側への永久の完全権利譲渡、これが相当多数です。資料には新たな利用についての記載もありましたけれども、権利譲渡してしまえば新たな利用の権利はプラットフォームのものですよね、もはや。

それから、ちょっと細かい話になりますが、ライセンスばかりか委託契約でもオプションといって、一方的な将来予約がかなり目立ちます。つまり、このシリーズの続編は何年後につくるか分からないが、何年後につくろうが、依頼をしたらあなたは仕事してくださいね。こういう形でのオプションです。仕事を与えますという保証はない。でも依頼を受けたら、新たな仕事をしなきゃいけない。ということは、受託側は予定を柔軟にして待っている必要が多分ありますが、一方でプラットフォーム側による交代、降板は自由なんです。

この状況で対価還元、クリエイター保護が実効性を持てますかという視点はやっぱり持つべきだと思います。例えば、韓国『イカゲーム』においても、国際的にあれだけ大成功したけれども、本国クリエイターへの還元はごく僅かだったということもよく報道されます。

そうした交渉力の非対称性について、既に資料2枚目には、競争法に配慮しつつ、権利者同士が連携しての交渉、あるいはお互いに差し障りのない範囲での情報交換、こういうことをやらないといつまでたっても絵に描いた餅だよねということが記載されていて、私もそのとおりだと思います。こういう非対称性についての政府の支援、伴走型の協力ということも重要かなと感じました。

長くなりますが、もう1点だけ。レコードの演奏・伝達権についての記載がありました。これは、権利といっても、報酬請求権だと理解しているので、それであれば求める側のお考えは十分理解できます。よって、それ自体には決して異論はないです。

ただし、その対価水準、集め方が現実的か、また、現場に負担がないかということについては、十分な各現場の理解を得ることが条件になるだろうと思います。

また、あわせて、それと近接する例えば複製利用、これはすでに許諾権です。ですが、現在集中管理がほとんどレコードの分野では行われていないので、そういう周辺での利便性を高めるということもセットで行っていかないとなかなか理解は得られないんじゃないかなということも感ずるところでした。

私からは以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかに…。どうぞ、早稲田委員。

【早稲田主査代理】ありがとうございます。私も本年からこの政策小委に参加させていただいて、昨年の意見、発表資料とか意見のほうを見させていただきまして、昨年音楽でいろいろな検討されたことを本年度、それを分野横断的にするということ自体について論点的には賛成なんですが、先ほど福井委員がおっしゃったように、なかなか集中管理が音楽以外は非常に難しい、組織率が低いというのは、一昨年の簡素で一元的な議論していたときに出ておりまして、そういう意味では、音楽以外で著作権管理事業者にはできることがどういうふうなことがあるのかというところを議論していかなきゃいけないのかなというのが思ったところでございます。

それから1つ質問なんですが、3ページの1)の(ア)の④は「著作権等管理事業者等」になっておりまして、同じく(イ)の②も「管理事業者等」となっておりまして、ほかは全部「管理事業者」になっているんですが、当然管理事業者は委託を受けたところとか、そういうところで、ここの「等」がついているのは、それ以外の交渉力とか、そういう意味なので、管理事業者以外のものもお考えになっていると思うんですが、どういうものを例としてお考えになっているかというのは、後ほどでいいんですけども、教えていただければと思いました。

【太田主査】どうもありがとうございます。

伊東委員、どうぞ。

【伊東委員】丁寧な御説明ありがとうございます。私、伊東からは3)の国境を越えた著作権侵害への対応に関して、考えを述べさせていただければと思います。

一番最後のほうで、プラットフォーム事業者が侵害対策に主体的に取り組むことを促す方策についても検討を行うと。これが実現できれば大変うれしいことなんですけれども、やはりプラットフォーム事業者は、インターネットの流れから考えると、いかに海賊版や著作権侵害から免責されるかが法律的に規定されてきて、海賊版に対して主体的に取り組まなくても許されるというこの状況で、本当に主体的に取り組むということは非常にハードルが高いかなと思います。

ここを取り上げてくださって、実効的な枠組みができれば大変うれしいのですが、お題目だけで終わってしまうのが非常に残念かなとちょっと心配しておりますので、ぜひ実効性がある方策ができればいいなと思っています。

その流れに関していうと、去年、法制度小委の場にTikTokさんがいらっしゃって、TikTokさんがプレゼンしてくれて、私のほうからTikTokで海賊版がひどいよということを申し上げたところ、TikTokさんも、法制度小委という国の公的な場でそういうふうに言われたので非常に真剣に受け止めてくれて、その直後から海賊版対策を一緒に頑張りましょうよというような話になりました。しかし去年1回法制度小委に呼ばれただけで、その後何もこういう公的な場に出てくる機会がないので、何となくだんだんスピード感が今ゆったりになっていて、今、TikTokさんが普及啓発についてちょっと我々で考えますと言って、どんなことを考えているのかというフィードバックを待っている状況です。やはりこういう公式な場で継続的に注目しているよというアピールを一出版社であったり、そういう団体が言うのではなく、文化庁さんと政策小委が見守っているというアピールがこういうプラットフォーム事業者が侵害対策に主体的に取り組む上では非常に大事かなと思いますので、そういうところもケアしていただけるとうれしいかなと思いました。

私からは以上ですが、それともう一つ、AIも含めて世の中がどんどん変わっていくのでスピード感を持ってやるという話は全く賛成で、福井委員から海賊版、ベトナムがひどいよという話が出ていて、文化庁さんも含めいろんな官庁の皆さんに協力いただきながらベトナム対策を進めていて、じりじりとではありますが、進んでおります。しかしながら、そうこうしているうちに、今、インドネシアとインドがかなりひどくなっています。ベトナムがうまく片づいたとしても次はインドネシアとインドかというふうで、ちょっとかなり気が重い状態になっているということを付け加えさせていただければと思います。

私からは以上です。

【太田主査】ありがとうございます。オンラインでお二人挙手をされていて、どちらが先かちょっと分からないので、まず坂井委員から、お願いいたします。

【坂井委員】エンターテイメント表現の自由の会の坂井です。御指名ありがとうございます。

まず、議論の対象を音楽以外に広げるということについては私のほうから特に異論はありません。

ただ、最近あまり話題に上がらないんですけれども、これはなかなか解決は難しいと思うんですけれども、UGCというところがあまり最近出てきてないので、これも含んでいるよというところは改めて確認をさせていただきたいなと思っています。

その上で、今の伊東委員に、ちょっと順番があれだと反論みたいになってしまうんですけれども、3)の一番最後のところですね。諸外国の制度の状況も踏まえつつ、プラットフォーム事業者が権利侵害に主体的に取り組むことを促す方策について検討を行うとあります。当然ですけど、国境を越えた著作権侵害というのは重大であるし、日本のコンテンツを海外展開するに当たって対処しなければいけないという課題は理解しているんですけれども、ここで主体的に取り組む、取組を促すというのは必ずしも何を意図しているかというのはちょっと分からないんですけれども、やっぱりプラットフォーマーの影響というのはよくも悪くも影響力が大きくて、彼らが情報流通に対して保守的になってしまうと結果的に一般の人の表現の自由が制約されてしまう可能性はあると考えています。

ContentIDみたいにある程度機械的に判定ができるという仕組みだったらいいと思うんですけれども、表現の自由との兼ね合いというところもぜひ考えてほしいなと思っています。

少なくともプラットフォームが間違って表現を制約してしまった際の権利回復とか、表現者に対する説明責任というんですかね、そういうところは同時に議論していくべきだと思っています。

それから、レコードの公への伝達についてなんですけれども、これは前回かな、去年のかな、審議会でも言ったんですけれども、少なくとも消費者に対する影響というのは考えるべきだなと消費者団体として考えております。

以上です。

【太田主査】ありがとうございます。お待たせしました。生貝委員、どうぞ。

【生貝委員】ありがとうございました。まず全体として、やはり分野横断的に取り上げていくことということと、あと、それから最初、河野智子委員からありましたように、やはりスピード感を持って、特に具体的な制度化というのも、私の言葉で言えば常に視野に入れながら検討していくことというのは大変重要かなと思います。

過去にも申し上げましたけれども、やはり解決すべき問題というのはかなり明確にここまでの議論でも見えてきているかと思いますので、最終的にどういう手段を取るかということは一旦おいたとしても、その問題を解決するために具体的なハードロー、あるいはソフトロー、あるいはその組合せといったようなオプションを具体化していく作業というのは常に続ける必要があるのだろうと思います。

その上で、特に今、伊東委員、坂井委員の御発言にも関連して、プラットフォーム、わけても特に3ページの、ここでは1)のイのところについて、少し3点ほど意見という形になるのですけれども、まず1つは、やはり著作権侵害に限らず、権利侵害に関わるプラットフォームの役割というのが、やはり世界的に法制度全体として、ここ2、3年ぐらいで非常に大きくシフトしてきていると思います。

そのことというのは、典型的にはまさにデジタル単一市場著作権指令の17条もそうですし、あるいは、著作権も含む違法コンテンツ全般への対応を規定しているデジタルサービス法もそうなんですけれども、これはしばしば、責任パラダイムから責務パラダイム、ライアビリティーパラダイムからレスポンシビリティーパラダイムと表現することが多い変化があります。

このことは何かというと、例えば著作権侵害の分野ですと、どういった条件でまさしくその上で行われた権利侵害に対してプラットフォームは責任を問われるのか、あるいは免責されるのかといったような、まさにライアビリティーを中心とした議論から、そういった社会的に影響力の大きいプラットフォームというのは果たして何をしなければならないのかという主体的な取組というものを法律で義務づける。まさにそれを責務パラダイムというべき形でかなり大きくシフトしてきている。

これはもしかすると、例えば著作権法も、プロバイダ責任制限法も、民法の特別法という位置づけで説明されることが多いですけれども、そこからいわゆる規制法へのパラダイムシフトと申し上げてよいのかなと思います。やはり著作権法そのものの中でやることができるのか、やる必要があるのかといった論点は常にあるかと思いますけれども、短期・中期・長期でパラダイムシフトに我が国著作権法というのがどのように対応していくのかといったようなことというのは、常に、特に今考えていかないといけないイシューだと思っています。

それから2点目として、同じところに関連して②と③のところでございます。やはり権利者とプラットフォーマーが協力すること、そしてその前提として様々な情報開示というものをしていただく必要があると。恐らく適正な対価還元というところですと、利用回数ですとか、オーディエンスデータですとか、もちろん様々あると思うんですけれども、特にやはり権利侵害対策、つまり、これはコンテンツモデレーションというふうにより広く権利侵害対策一般では言われることが多い。そのことについての透明化というものをいかに図るか。それはどのように例えば技術を使っているのか、そして運用状況をちゃんと公表していただく、削除の要請があったら、ちゃんとその対応した理由なんかをしっかり説明していただくといったようなところも含めて。

このことについては、それに基づいてさらに対話をしていくという意味ですと、しっかり対話の場というのを法律的に位置づけるということもしっかり前向きに考えていく必要があるんだと思います。

例えばDSM著作権指令の17条の10項ですと、まさにいかに権利侵害コンテンツに対応していくかということについての権利者、そしてプラットフォーマー、さらにはそれの影響を受ける様々な利用者も含むステークホルダー、そういったことも含めたダイアローグというものがしっかりと位置づけられているところ、まさにそういったことを含めた法制化も視野に入れた議論というのが大変重要なのかなと思います。これが2点目でございます。

最後に3点目として、これもちょっと大きいんですけれども、今回のペーパーとしては、基本的にはプラットフォームを対象にしていて、生成AIは一旦外に置いていると認識はしています。なんですけれども、しかし、今、生成AIとプラットフォームの関係性あるいは重なりといったことは非常に複雑になってきているところがあります。

1つは、やはり多くの生成AIはプラットフォームサービスの中に組み込んで使われる、あるいは生成AIというのがやはりプラットフォーム的な役割を果たしている。よく国際的にもAIのプラットフーォマイゼーションという言葉も使われるようになってきていますけれど、そのときに例えば論点としては、例えばDSM著作権指令の17条のプレス隣接権の文脈ですと、フランスで、例えばコンテンツの検索での利用契約に付随して、そのコンテンツがAIの訓練データとして使われることについてのまさに追加的なエンフォースメントというのが課されたりしているところであり、あるいはまたプラットフォーマイゼーションという意味だと、さっきコンテンツモデレーションのプラットフォームの透明化と申しましたけれども、AIの側が権利侵害コンテンツなんかをしっかり出さないためにどういうコンテンツモデレーション、つまりフィルタリングなどをしているかということについての透明性というのもやっぱり非常に重要になってきている。今改めてプラットフォームとAIの多面的な関係というものを視野に入れながらこの議論というものをしていくことが大変重要なんだろうなと感じております。

ちょっと長くなりまして、すいません。以上でございます。

【太田主査】ありがとうございます。ほかにございますか。楠本委員、どうぞ。

【楠本委員】レコード協会の楠本です。今回の文化庁さんからお示しいただいたクリエイターへの適切な対価還元について、昨年来、音楽をベースに議論というか、整理を進めていただきましたので、非常に音楽の集中管理のお話ですとか、いろいろなものが出ております。その中で、最終ページに一番関連するんですけども、私的録音録画補償金制度については、変更以来、いろいろちょっと時間がかかっておりますが、最後、文化庁さんのリーダーシップに期待しているところを、ここはお願いというところで1個取り上げます。

それから、2つ目のレコード演奏・伝達権のところですが、せっかくクリエイターへの適切な対価還元というところで、具体的に国際的な著作権制度の中で日本がかなり後塵に排しているという部分から、ここを音楽をきっかけに挙げていただいておりますので、ぜひここは強く推し進めていただきたいと。

昨年の調査の中でも、音楽のファンは、まさか作曲家と作詞家だけが、演奏、いわゆる音楽がかかっていて対価を受けていて、アーティストや音楽をつくっている人間がもらってないとは思ってなかったというアンケート結果がすごく強く出ていますので、ぜひ音楽を応援している人にも、そりゃそうだよね、アーティストにも音楽をつくる人にも対価還元があるべきだよねという正常な形になっていただきたいなというのがイのところについてです。

それから、最後の違法対策のところですけども、伊東さんがおっしゃっているとおり、どうしてもインターネットというのは国境を当然越えてしまっていますので、なかなか手が届かないところも多いです。そんな中で1つ、どうにか手が届くといいますか、きっかけになるのはプラットフォーマーを介した対策ということになります。一番最後の行で主体的に取り組むというところ、何回も皆さん取り上げていますので、文化庁さん、嫌かもしれませんが、やはり自発的なパトロール、自分のところは場を提供しているだけだから知らねえよという話ではなくて、自分の場が著作権侵害で荒らされているのであれば、そこをパトロールする、あるいは何らかの対処するというのは、先ほど生貝先生もおっしゃっていたとおり、ヨーロッパを中心にそういった考え方に変わりつつあります。

ちっちゃいところ、大きいところという分け方がどうかとは思いますが、少なくとも自力でできるプラットフォーマーは多くなってきているはずですので、ぜひその辺の主体的に取り組むというところは、どうにかここの中で結論というか、方向性が出ていくといいなと考えています。

以上です。

【太田主査】ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。

どうもありがとうございました。では、議事を次に進ませていただきます。よろしいでしょうか。

では、事務局のほうからお願いいたします。

【籾井著作権課長】皆さん、様々な御意見を大変ありがとうございました。非常に多岐にわたる御意見を頂戴しましたように、まさに、特に適切な対価還元の議論というのは、恐らくこれまで著作権分科会の中で取り上げた様々なテーマとは少し私自身は異色なのかなと捉えている部分もございまして、いわゆる文化庁において所管する制度のみではなくて、他省庁が所管する制度、それから、様々な業界の慣行、それから個人の契約のレベルまで様々なことが関わっての課題が今生じている状況だと認識をしております。

したがいまして、スピード感を持ってロードマップ引いてルールづくりまで漕ぎ着けられればいいんですけれども、まずはどこからどう議論を進めていけるかというところの整理をするところが一つ大きな難関になるというテーマなのだろうと思っています。

今日皆様からいろんな御意見を頂戴してヒントになるようなところもございましたので、いただいたところも踏まえながら、そしてまた昨年度は音楽を中心に様々なヒアリングをやりました。今年度は横断的にやるということになりますので、もう少し関係者からのヒアリングというのもやっていく必要があると思っています。

そうした中で、また今後、どういうロードマップで議論を進めていけるかというところも、委員の皆様と御相談をさせていただきながら整理をしていければと思っております。

それから、集中管理の組織率が低いからこれを上げていかなければならないという御指摘も多くの皆様からいただきました。まさにその点は一つ大きな課題だというふうに、これまでも恐らく課題だったと思うんですけれども、冒頭御紹介しました様々な政策文書におきましてもやはりコンテンツ産業の重要性ということがうたわれる中で、当然権利保護はもちろん重要なんだけれども、円滑な著作物の利用というところとセットでやっていく必要があると思っていまして、これを管理事業、集中管理のカバー率を上げていくということとともに、UGCの皆様のように個人で今活動されている皆様方の利用の円滑化に向けて何ができるのかといったようなところも併せて考えていかなければならないんだろうと思っていますし、それから、管理事業の在り方というのも、管理事業者の役割とか、あるいは今、集中管理が進んでない分野に対してどうこれを進めていけるのか、例えば集中管理されることのメリットをどのように捉えるのかとか、そういったところもヒアリングの中で少しお伺いしていく必要があるのかなと受け止めました。

それから、海賊版対策につきましては、果たして実効的な解決策が出てくるのかというような御指摘もいただきました。冒頭申し上げましたように、なかなか文化庁が所管する制度の中で何かできる話ばかりではございませんが、ぜひ実態とか、あるいはより具体的にこうしたことを求めていきたいというようなことをこの委員会の場でも御指摘をいただきまして、そこからまたできるだけ実効性を持たせるための方策というのをまとめていけるとありがたいなと思いました。

それから、AIについての御指摘がございました。AIに特化してこの会議で議論するということはございませんけれども、論点の中にも、新たな利用形態、契約当時には想定されていなかったような利用形態への対処というようなことも記載してございます。AIの話のようなものもそういった中で少し拾っていけるのではないかと思っております。

それから、レコード演奏権につきましては、導入に向けて積極的な御意見とそれから利用者側の御意見といただきました。まさに論点に挙げさせていただいておりますのは、そうした理解を得られるような徴収の在り方というところも、今、レコード協会さんをはじめ、実演家の皆様と少し検討いただいていると思いますので、そういったところの検討状況も見つつ、また適切なタイミングでこの会議の場にも御報告をいただければと思います。

それから、福井委員から先ほど御指摘いただいた件につきましても、ここもまた海賊版対策、政府全体の動きがある中で文化庁として何ができるかというところを、また具体の事例なども伺いながらこの場でも議論できればと思っております。

検索結果の削除とかドメインホッピングとかのところは文化庁として何ができるのかというのは直ちにはちょっと思い浮かばなかったんですけれども、その辺りもぜひ、具体的に御提案をいただきながら議論を進められればと思っております。

【中原文化戦略官】今、籾井課長の説明に少し付けくわえさせていただければと思いますが、菅委員から、文化庁は、もう少しキャラクター化するなどの更なる積極的な取組を行うべしという御指摘を頂戴しました。非常に貴重な御指摘でありまして、私どもも、こういった文化芸術を振興していくという取組と、その基盤となるルールをしっかりしていくという取組を、車の両輪として取り組んでいかなければいけないということではないかと思っております。

先ほどの生貝先生のお話からも示唆されるとも存じますが、現在では、振興的な施策とルール整備的な施策がシームレスになってきているほか、他の競争法、経産省の不正競争防止法などの隣接分野との関わりあいもかなり大きくなってきているものと存じます。そして、それぞれの問題をどんなふうに捉えるのかということをどこか1つの視点に固定してしまいますとなかなか議論が深まらないというようなこともありまして、今回、いろんな隣接分野に関連する議題を率直に私どもとして出させていただいております。そうした中で、当審議会は著作権関係の審議会ではあるのですけれども、隣接分野を視野に入れながら著作権に関する議論をさせていただければと思っています。

その際、これは他の隣接分野との連携が必要になるじゃないかということは、本当に御遠慮することなく御指摘をして頂き、それでまた他の政府機関と連携していくということが非常に有益な議論になるのではないかと思っておりますので、そうした方向感で議論をお進めいただけると誠に幸甚に存じます。

そして、振興的な施策につきまして我々において昨今、尽力している話について申し上げます。先ほど吉田先生からもお話のあった点に関しまして、コンテンツ産業の市場規模というのは、世界規模で見ると、石油化学産業とか、あるいは半導体産業より大きいんだとか、それから日本のコンテンツ産業の輸出というのは、鉄鋼産業や半導体産業と比べて遜色がないという点を踏まえて、知財計画、クールジャパン施策、新しい資本主義の実行計画の中などでもコンテンツ関連施策の推進を大きく取り上げております。これは本当に当審議会の委員を含めた関係者の皆様がこの分野を、盛り上げていただいた御尽力の成果として、勝ち取ったという言い方は変ですけど、そうした記載に至っていると思っております。

特に昨年の補正予算の中では、クリエイター振興のために3年間60億として、複数年度にわたって支出を可能にする基金というものを創設しまして、若手のクリエイターを中心に海外に展開していくことを応援しようじゃないかと。それも今までのやり方をさらにディペロップさせて、ここで評価されるとその後の展開も大きくなるといった点などにも配慮しながら、新しいクリエイターの展開を後押ししていこうじゃないかということで、先般プロジェクトを採択したところでございます。

こうした取組と併せて私どもの職員や調査官をアートフェアとか、アニメエキスポとか、各地の博物館などに、人数の限界はあるんですけれども、そうしたところに派遣をして一生懸命勉強させていただいたりですとか、あるいは、サマーソニックの中ではアートと音楽を一体化するというような形で、文化庁という形でドローンを飛ばしたりとか、あるいは最近はインスタグラムによる発信というのも始めまして、ちょっとキャラクター化はしてないんですけれども、そうした取組を進めております。

著作権に関しての普及活動という点につきましては、自治体の教職員へのセミナーを開催させて頂いておりますほか、ネットで配信したAIと著作権のセミナーは相当な人数の方に御高覧いただきました。これまでよりもご理解は浸透しているのではないかと信じてはいるのですが、この普及啓発活動は、今後ともしっかり一生懸命やりたいと思っています。

いずれにしましても、振興とそれからルールといったものがシームレスになっているということ、それについて私たちは本当に努力を惜しまず進めていくことと、それから隣接分野との関係が非常に重要になってくるので、著作権というものをベースに置きながら、そういったことも視野に入れて御議論いただけますと、私たちも他省庁との連携ということも含めてしっかりやりたいと思っておりますので、充実した議論をお願いさせていただければと存じます。ありがとうございます。

【太田主査】ありがとうございます。

どうぞ。

【持永著作権課課長補佐】すいません、意見に対する回答ではなくて、先ほど早稲田委員から御質問があった管理事業者の後の「等」ですけれど、管理事業法に基づいた管理事業者に限らず、そういった権利を様々な形で管理されているような団体もあるかと思いますので、そういったものを読み込めるように、「等」がついているところでは、そのように表記させていただいております。

ただ、「等」がついてないからといってそういう団体が排除されるようなものではないと思いますので、文脈によってはそういった団体も一部含まれるところはあるかと思います。一応そういった使い分けをさせていただいております。

【太田主査】よろしいでしょうか。

どうもありがとうございます。

では、次に進ませていただきますが、よろしいでしょうか。

では、議事(2)の「その他」に移ります。事務局より御報告事項があるということでございますので、御説明をお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】事務局でございます。参考資料3と4を御覧いただければと思います。本年3月に昨年度設置されておりました法制度小委員会において「AIと著作権に関する考え方について」が取りまとめられたところ、その内容や著作権制度に関する基本的な考え方については分かりやすい形で周知啓発することが求められているところです。

そこでこのたび、その考え方や関係する文書の内容を著作権者等の権利者やAI開発者、AI提供者、AI利用者といった各関係当事者の立場ごとに分かりやすいように整理し紹介するものとして「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を作成いたしましたので、この場で御紹介させていただきます。

こちらにつきましては、本日会議資料として配付しておりますとともに文化庁ホームページにも会議資料としてアップしておりますので、今後周知に努めていきたいと考えております。

また、先ほど中原審議官のほうからも言及がございましたが、周知の一環として著作権セミナーを今年も開催することとしておりまして、8月9日にAIと著作権をテーマとした著作権セミナーを開催することとします。そのチラシを参考資料4として配付しております。

こちら、オンラインでライブ配信する予定ですので、御関心がある方に広く御視聴いただけるよう引き続き広報活動に努めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

【太田主査】どうもありがとうございました。

ただいま事務局から御報告いただいた内容について御質問がございましたら挙手をお願いいたします。オンラインの方は挙手ボタンにてお願いいたします。いかがでしょうか。

ありがとうございます。ございませんようですので、その他、今日の全体を通して何か御意見、御質問等ございましたらここでお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

菅委員、お願いいたします。

【菅委員】何度も申し訳ございません。先ほどの質問でちょっと漏れていたんですけども、ここの場でまだPRとか啓蒙とかの話を私はし続けてもいいんでしょうか。ちょっと政策小委員会というのにそぐわないかなと思って。

【太田主査】どうぞ、まだ時間も少しありますので。

【菅委員】今じゃなくて、政策小委員会の場で決まった政策の告知とかPRとか啓蒙とか、そういうことについてもこの場に含まれる話題として捉えておいていいんですかね。

【太田主査】まあ、どうぞ。この段階で私にはちょっと判断が……。

【籾井著作権課長】ありがとうございます。普及とか啓発とかの重要性については当然御指摘をいただければと思います。

一方で具体の事業をどうしていくかということにつきましては、また予算の獲得などの中で事務局において具体化に向けて議論をしていくことになりますので、この場でいただいた御意見につきましては、御参考として事務局が受け止めさせていただきまして、検討するということにさせていただくこととなります。したがって、ここで1つの御提案について何か議論を深めて決めるというような場ではないということでございます。

【菅委員】了解しました。そこの距離感覚がちょっとつかめなくて私がいつもたくさんしゃべってしまうのですが、今回、ロードマップ等々、もっと計画的にもっと早くというお話が皆さんから出ていたと思います。それはやはりここで出した意見がのれんに腕押しのように私たちの委員の中で思えてしまう。言っても、言っても、分かりました、聞きましたで終わって、できません、これ今進めていますというやはりフィードバックが欲しい。そうするともっと働くよというようなことになってくると思いますので、ちょっとそこら辺、私、官公庁よく分からないんですけども、聞きましたで終わるのは寂しいなというのが今日の皆さんの御意見を聞いた感想です。

失礼しました。

【太田主査】御意見として承りたいと思います。

ほかに今日全体を通じての御意見や御質問ございますでしょうか。

どうもありがとうございました。

ございませんようですので、それでは、本日の議事は全て終了といたしたいと思います。ほかに特段ございませんようでしたら、本日はここまでとしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

【持永著作権課課長補佐】本日はありがとうございました。次回以降の政策小委員会は、改めて事務局にて調整の上、日程をお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。

【太田主査】ありがとうございます。

それでは、以上をもちまして、文化審議会著作権分科会政策小委員会(第2回)を終了とさせていただきます。

本日は本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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