議事録

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第2回)

日時:
平成25年5月29日(水)
13:00~15:00
場所:
グランドアーク半蔵門富士西の間
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)「出版者への権利付与等」について(関係者ヒアリング等)
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【土肥主査】 それでは,定刻でございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第2回)を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席いただきまして,まことにありがとう存じます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましてですが,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 御異議はないようでございますので,それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方には,そのまま傍聴を頂くことといたします。
 それでは,初めに,議事の進め方について確認をしておきたいと思います。本日の議事は,(1)「出版者への権利付与等」について(関係者ヒアリング等),(2)その他,この2点となっております。(1)につきましては,前回に引き続き,出版者への権利付与等につきまして,関係団体への方々から意見の発表をお願いしたいと思っております。各団体からの意見発表の後に,金子委員から前回御説明いただいた提言の補足説明をお願いしたいと思っております。その後でまとめて質疑応答と意見交換を行いたいと思います。
 最初に,事務局から配付資料の確認とヒアリング出席者の御紹介をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下半分をごらんください。
 まず,資料1から資料9までについてでございますが,本日,御意見を頂きます各団体の皆様方の発表資料をお配りさせていただいております。また,資料10といたしましては,金子委員より御提出いただいております「『出版者の権利の在り方に関する提言』に関する補足説明」という資料をお配りしてございます。更に,資料11といたしまして,日本書籍出版協会より御提出いただいております「出版者への権利付与の必要性等に関する補足説明資料」という名前の資料をお配りさせていただいております。このほか参考資料1といたしまして,本日ヒアリングをお願いいたします出席者の一覧,そして,参考資料2といたしまして,第1回の出版関連小委員会においてもお配りさせていただきました「『出版者への権利付与等』についての方策」という資料をお配りさせていただいております。
 配付資料につきましては以上でございます。落丁等がございます場合には,お近くの事務局員までお声がけいただければと思います。
 続きまして,ヒアリング出席者の皆様方を発表順に御紹介させていただきたいと思います。参考資料1をお手元にごらんいただければと思います。
 公益社団法人日本文藝家協会より高橋靖典様,長尾玲子様に御発表いただくこととしております。
 次に,日本美術著作権連合より福王寺委員,あんびるやすこ様に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人日本写真著作権協会より瀬尾委員に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人日本新聞協会より栗田委員に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人日本出版者協議会より高須次郎様に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人日本楽譜出版協会より内田豊様に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人電子出版制作・流通協議会より小林委員に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人電子情報技術産業協会より榊原美紀様に御発表いただくこととしております。
 次に,日本知的財産協会より今子さゆり様,大野郁英様に御発表いただくこととしております。
 次に,主婦連合会より河村委員に御発表いただくこととしております。
 1最後に,一般社団法人インターネットユーザー協会より小寺信良様,香月啓佑様に御発表いただくこととしております。
 以上,11団体の皆様方にヒアリングをお願いさせていただいております。
 1点お願い事がございます。参考資料中,各団体の横に御発表の目安の時間を記載させていただいておりますが,多くの団体に御発表をお願いしておりますことから,大変恐縮ではございますが,1団体当たり5分程度で御発表いただきたくお願いを申し上げます。御協力よろしくお願いいたします。
 ヒアリング出席者の御紹介につきましては以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,早速ヒアリングに入りたいと存じます。本日,御出席いただきました関係団体の方々には厚くお礼を申し上げたいと存じます。今,事務局から御要請ありましたけれども,時間の都合上,御発表のお時間としては5分程度ということでお願いせざるを得ませんので,どうぞよろしく御了承いただければと存じます。
 それでは,最初に,公益社団法人日本文藝家協会,高橋様,長尾様,よろしくお願いいたします。

【高橋様】 日本文藝家協会事務局の高橋でございます。隣が著作権管理部長をしております長尾でございます。よろしくお願いいたします。
御存じかと思いますが,当協会のあらましを簡単に申し上げさせていただきます。
 現在のところ,正会員が2,500名ほどおります。それから,この協会に著作物の二次使用の委託をしていらっしゃる方が3,700名ほどいらっしゃいます。それと,御自分の御両親とか,おじい様とかが作家さんであるということで,著作権を継承されている関係者の方がいらっしゃいます。この方たちが準会員ということで1,300名ほどおります。合わせますと延べ7,000名から8,000名の方が著作権というものに関して,日々,私どもの協会と連絡を取り合っているということでございます。
 1つ,ほかのところと違いますのは,縁が一生切れませんということでございまして,おじいさんが作家さんだったので継承しまして,息子さんになりまして,その息子さんがまた作家になりましたと。その息子さんがまた生まれまして,著作権を継承したりとずっとつながりますので,戸籍ではございませんけれども,この方たちと一生つき合わなければいけないという,そういう特徴を持った公益法人でございます。
 菊池寛が文藝春秋を立ち上げてから,文士のユニオンが必要だろうということで始まったのが前身でございますので,それが大正15年,1926年でございます。2016年,3年後にちょうど90周年目になります。それから,戦後,再建したのが昭和21年でございますので,そこから数えましても,2016年にちょうど70周年を迎えるという団体でございます。言うまでもなく,作家の職能団体でございます。権利を守り,文芸を広く普及するという公益法人になりまして,3年目でございます。
 結論といいますか,こちらの感触を申し上げますと,基本的には出版社さんが頑張ってほしい,再興してほしいというのはもちろんやぶさかではございませんので,御協力したい,もちろんです。それから,電子書籍の普及に協力するということももちろんやぶさかではございませんので,もちろん大いに御協力させていただきたい。ただし,現行法で対処するということをまず優先してほしいというのが1つでございます。新しい法律をつくる,新たな権利を創設するに関しては,慎重に検討を続けていただきたいなというのが曖昧な言い方ではありますけれども,今,この時点で申し上げられる事務局としての作家さんの総意だろうと思います。
 作家さんにとって,出版界に頑張ってほしいのは,これは言うまでもございませんし,一緒にパートナーシップでやってまいりましたので,そこが立ち行かなくなってしまうということはもちろん死活問題ですから,そこももちろんパートナーシップとしては協力したいということは当然でございます。もう一つ,電子出版に関しても,これもまた普及してほしいというのも本音でございます。ということでございますので,基本的には,今,ここでお話しされているようなことに関して,今まで,出版界,ちょっとひどかったじゃないかというようなことで,懐疑的なニュアンスではなくて,できることがあれば協力して,信頼関係で一緒にやっていきましょうというスタンスは確認させていただきたいと思います。
 次に,そうは言いましても,出版社さん,出版サイドと作家さん,それから読者,ユーザーの方で意識の違いという大きなものが1つあると思っております。それは,出版社さんが常々主張されている本は,現役で賞味期限が切れていない本に関しての言及のように聞こえることです。作家にとって,それから読者にとって,一旦(いったん),賞味期限の切れた現役でなくなった本もユーザーにとって,作家にとってはアーカイブとしてもそうですけれども,現役の本でございます。生きている本と死んだ本という言い方はちょっと言い過ぎですけれども,生きている本だけではなくて,眠っている本も視野に入れて,契約社会に向かって日本に合った契約のシステムを構築していく,そのためには,登録の許諾のシステムも必要ですし,そのことも御協力して一緒に話し合っていければと思っております。
 最後に,長尾の方から著作権管理について。

【長尾様】 長尾でございます。今,高橋の方から申しました最後のところですが,現実問題,当協会は日々,著作物の使用許諾事務をしておりまして,4月は,許諾を出しました件数が2,363件でございますが,教育関係は,例えば1つの教材の中に,たくさんの先生方が使っていらっしゃいます。こういう使われ方をしてもようございますかということをお一人ずつにお伺いいたします。お伺いした先生の延べの人数が2万5,106人でした。
 実際問題,これは,電子書籍のことも,出版社さんから来る契約書はさっぱり意味がわからないとおっしゃる先生が圧倒的に多く,そちらの方も,これはほとんど手数料が入りませんので,作業だけさせていただいているのはこの中に入っておりませんが,ここのところ,日々,毎日5件から6件は処理しておりますので,掛ける20日としても,1か月で100件以上は契約に関わる業務をしているということになります。現実は契約で進んでおります。法制化する必要はないのではないかなというのが現場の声でございます。
 失礼いたしました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,日本美術著作権連合,福王寺委員,あんびる様,よろしくお願いいたします。

【福王寺委員】 日本美術著作権連合の福王寺でございます。出版関連の小委員会ということで,この委員会を立ち上げていただいた文化庁著作権課に対しまして,この場をお借りしてお礼を申し上げます。このことにつきましては,2月28日の著作権分科会で,著作隣接権について大手出版社が議員立法をするという動きがあるという中で,それぞれの委員の先生方から意見が出ました。そういった状況の中で,文化庁がリーダーシップをとってこの会合を開いたということはとても有意義なことだと思います。
 日本美術著作権連合ということで,資料1がございますけれども,その2枚目に,構成団体として,東京イラストレーターズソサエティ,日本グラフィックデザイナー協会,日本児童出版美術家連盟,日本出版美術家連盟,日本図書設計家協会,日本理科美術協会,日本美術家連盟,7団体で構成されております。昭和40年9月に創立されました。毎月に1回理事会を開催しておりまして,出版と美術に関する著作権の問題を調査研究して,お互いに意見交換をしている団体でございます。
 今回の(A),(B),(C),(D)という方策について文化庁から出されましたが美著連としては(C)の訴権の付与ということが,私どもとしては一番望ましいと思います。ただし,幾つかの条件が整えば,(B)の電子書籍に対応した出版権の整備ということで,対応できるかもしれません。
 その内容につきまして,今,隣に絵本作家のあんびるやすこ先生がいらっしゃいますが,詳細について御説明させていただきます。

【あんびる様】 あんびるやすこでございます。本日は発言の機会を頂きましてありがとうございました。お手元に資料1をおとりいただいて,お読みになりながらお聞きいただければと思います。
 まず,電子書籍化の現状につきまして,私の所属する日本児童出版美術家連盟の立場から申し上げます。私自身,絵本や童話の作家であり,画家でございます。そういった画家が携わっている児童書では,まだ電子書籍化はほとんど進んでおらず,児童書出版社の多くが,近い将来におきましても電子書籍の刊行計画を持っておりません。また,海賊版などの侵害行為も絵本には及んでおらず,契約の現状は,電子出版の権利の入った契約書への合意を特に強く求められない限り,紙のみの契約を交わすことが多く,現段階では特に不都合を感じておりません。
 続きまして,今回のヒアリングの趣旨でもございます出版者への権利付与の方策につきまして,ここから先は美著連としての立場から申し上げたいと思います。
 美著連では,4つの方策の中から,(C)訴権の付与を最も望ましいとするものの,幾つかの条件のもとであれば,(B)出版権の整備を考える余地はあるという結論に至りました。ただし,訴権の付与と申しましても,これは現行の訴権ではなく,たとえ紙のみの出版の契約であっても,ネット上での不正使用を出版社においてもとめることができるなど,現状に速やかに対応できるよう,訴権の及ぶ範囲を広くした新たな訴権である必要があります。
 しかし,このような訴権の付与によって,出版社が海賊行為を取り締まれるようになったとしても,出版社への権利付与のもう一つの目的である著作権の利活用につきましては,現状に変化をもたらすことはできません。美著連といたしましては,著作物の利活用の現状について,不都合は感じていないものの,電子出版の契約の在り方について検討する場は必要であると感じていることから,先ほども申し上げました結論,つまり(C)訴権の付与を最も望ましいとするものの,幾つかの条件のもとであれば,出版権の整備を考える余地はあるという選択をした次第でございます。
 今から,幾つかの条件というのを具体的に申し上げます。1つ,出版社が海賊版対策に真剣に取り組むことを約束する。1つ,出版社が著作権者の権利と利益を現状より縮小しないと約束する。1つ,著作権者も加わった委員会が中心となり,法改正と並行して,著作者の権利や公平な利益配分に配慮した新しい電子出版契約書ひな形をつくる努力をする。
 出版権の整備の議論は,この3つの条件について御検討いただいた後のことと考えておりますが,中山提言につきましては,出版美術家として幾つかの問題点を感じております。
 具体的に,まず,提言全般についてですが,原則に特約をつけることで契約内容をコントロールできる形になっておりますが,出版者の権利を制限する特約をつけるには,著作者側から申し出なければならないということになっていることが,大変問題だと思っております。
 その理由といたしましては,特約を出版者にすいすいと申し出てすんなり受け入れてもらえる著作者がいる一方で,特約を申し出るには勇気が要るという著作者もたくさんいるからです。そういう著作者の中には,特約を言い出すことによって出版社との関係が悪化し,仕事を失うのではないかという不安を感じる人もいらっしゃいます。また,何より,契約にふなれな新人にとっては,特約を自分から言い出すということは難しいのではないでしょうか。このことから,「再許諾可」などの出版社側の便宜のための特約については,出版社側から申し出るのを原則とした方がいいと思います。
 次に,個別に1につきまして,紙の契約が電子にも及ぶということでございますが,具体的な電子出版の予定がないままに紙の契約をした場合でも,契約が電子に及ぶというのは不自然だと感じております。やむを得ず,そのような事態になったとしても,一定の期限内に電子出版が行われなかった場合,自動的に電子出版の権利のみ消失するなどの仕組みが整っていると安心できると思います。
 続いて,2につきまして,電子と紙,両方について,出版社は再許諾のために著作者の許諾を得なくてよいということですが,これには反対いたします。その理由といたしましては,紙の再許諾について,具体的な例を挙げてお話ししたいと思います。
 (A)社から出版した本を(B)社が文庫化したいと申し出た場合,(A)社が文庫レーベルを持っていなければ,スムーズに(B)社への再許諾が行われるといったケースはよくあります。その場合,現在,交わされている契約書では,文庫化は両者協議の上で決定し,別途契約するとなっているのが通例です。しかし,提言の原則では,他社での文庫化は著作者の意思にかかわらず,出版社が単独で決定できることになり,大変問題です。つまり,原則のまま契約書に特約をつけずにサインした場合,現在の契約書より著作者の権利は縮小することになり,賛成することはできません。
 一方,電子の再許諾については,データ製作や配信のことを考えますと,再許諾可とすることも理解できるところがあります。しかし,そうであっても,絵本などにおいては,再許諾の際に,電子書籍の版面を画家が必ず監修できるようにするよう保証することが必要だと思います。
 最後に,3の出版社が特定の版面を対象として,権利を拡張できるとすることにつきまして,3は,一(いち),絵本画家である私が理解するには難解で,正直なところ,完全に理解しているとは言い難い状況ではございますが,いろいろ勉強させていただいた限りでは,3は適用範囲が大変に広く,その適用の目的も多種多様であると感じます。そのため,契約の時点で双方の解釈が完全に一致することは難しく,その結果,作者自身が著作物を利用する際,その自由度が狭まる可能性があるのではないかと大変不安を感じております。
 以上,長くなりましたが,出版美術家の立場より発言させていただきました。ありがとうございました。

【土肥主査】 どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,一般社団法人日本写真著作権協会,瀬尾委員,よろしくお願いいたします。

【瀬尾委員】 写真分野として発言することは余りないのですが,今日は,日本写真著作権協会のヒアリングということで御説明します。余り長くしゃべらないで,簡単にお話ししようと思います。
 最初,出版者の著作隣接権について写真著作権協会は賛成しておりましたが,現在の中で,出版さんが2番の出版権の拡張,中でも特に中山信弘先生の提案を推すということに同意いたします,中山提案に賛成いたしますが,3番につきましては,実務との乖離(かいり)も大きいし,懸念事項が多いために,3番を除外することを前提として,中山提案に賛成いたします。
 もし,これが不即不離で分離が不可能ということであれば,経団連提案の出版権の拡大に,中山提案の4番をつけたものが望ましいというふうに考えています。
 特に一言コメントを申し上げるとすると,中山提案の4番については,実際の今回の話と多少ずれるのではないかというお話もございますが,今後の流通に関して非常に重要な提案であると受けとめておりますので,どちらにしましても,2番目によって解決する中で,4番の提案をきちんと受けとめて,生かすということが重要だと考えております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人日本新聞協会,栗田委員,よろしくお願いいたします。

【栗田委員】 新聞協会の栗田です。資料はございませんが,新聞協会としての意見を述べさせていただきます。
 日本新聞協会は,昨年8月に開かれた文化庁の出版者への権利付与等に関する研究会で,電子書籍の円滑な流通促進と,いわゆる海賊版のような権利侵害の横行に有効な対策を講ずるために,出版者の権利を見直す議論を行うことについて意義を認めるとの意見を表明しています。当時は,著作隣接権についての議論でしたが,賛成,反対,双方ありまして,十分な合意形成がされていなかった状況でしたので,新たな権利付与については,あらゆる角度から慎重に検討することが必要とも述べました。この2つの考えは現在も変わっていません。このときの研究会の席上では,権利者,利用者が一堂に会し,オープンな形で慎重に深い議論が行われるようお願いしたいとも要望しましたので,この文化審議会の小委員会の場で議論する運びとなり,皆さんと十分に議論を尽くしたいと考えております。
 さて,権利付与等についての方策についてですけれども,第1回の小委員会で,経団連の吉村委員から電子出版権案についての御説明がありました。金子委員からは,中山研究会の現行出版権の拡張・再構成案についての御説明がありました。いずれも,出版社と著作者との契約を前提としていることなど共通点も認められましたし,反対意見があった著作隣接権の問題点をかなり修正していると見られます。出版者への権利付与等の方策の(B),電子書籍に対応した出版権の整備に含まれると見られます。この2つの案を中心に検討していくことが望ましいと考えます。
 ただ,両案につきましては,前回の金子委員の御説明にもあったように,大きな相違点もありましたし,まだ具体的に明確になっていない点,これから詰めていかなければいけない点があると考えています。
 これは,私個人の意見ですけれども,例えば,中山研究会案の提言3の特定の版面,あるいは特定の版の意味については,更に具体的に明示していただきたいと思いますし,私が十分理解できていないだけかもしれませんけれども,一般の利用者にもわかりやすい例を挙げていただきたいと考えています。
 また,企業内複製,イントラネットへの拡張ということも言われておりますけれども,現在の集中処理体制との整合性がとれるのかといったことも含めて,十分な検討が必要ではないかと思います。
 もう一つ,登録制度については,短期間で整備できることと,中長期的に整備すべきことが混在しているような印象を受けますので,ここは区別して議論する必要があるのではないかと思います。
 以上,数点挙げさせていただきましたけれども,新聞協会としましては,電子出版権案,それから,現行出版権の拡張・再構成案を軸に,特に両案の相違点について細部を詰めていって,議論を進めていっていただきたいと考えております。ただ,現時点では,もう少し細かい点,あるいは具体的な内容を確認させていただいてから,全体,あるいは個々の賛否について判断していきたいと考えています。
 最後に繰り返しになりますけれども,この小委員会で了承できる範囲と,それから,将来を見通して時間をかけて議論すべき内容とを切り離して,優先順位をつけて議論していくことが必要だと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人日本出版者協議会,高須様,よろしくお願いいたします。

【高須様】 日本出版者協議会の高須でございます。
 私ども,日本出版者協議会,出版協は,著作物再販制度の擁護などを目的にしまして,1979年に出版流通対策協議会を前身としまして結成された出版業界団体でございます。会員社は現在95社,専ら人文社会科学,自然科学などの学術専門書,あるいは教養書など,どちらかといいますと少量出版物を発行する中小零細出版社によって組織されております。
 出版者への権利付与につきましては,本委員会の方策にございます「(B) 電子出版に対応した出版権の整備」を希望いたします。私ども,権利付与につきましては,現在も著作隣接権が望ましいというふうには考えているわけですけれども,昨年,いわゆる中川勉強会という形で提案されました著作隣接権案,出版物に係る権利法制度骨子案,これですと,原出版者,私どもは原出版者というんですが,中山提案ですといわゆる一次出版者の権利保護やオンライン出版への対応等で不備な点があるというふうに考えまして,現行設定出版権の拡大再構成を内容といたします,先ほど来出ております中山信弘先生の提言を,中川勉強会の最終提言としましたこの方向で,整備をお願いしたいというふうに考えております。
 ただし,現行の設定出版権をオンライン出版,電子出版に拡大するだけではなく,デジタルネットワーク時代の出版実務の諸問題に包括的に対応し得るような内容に改訂されるように要望いたします。
 これは,なぜ包括的かと申しますと,この要望書の2枚目の理由に,マル1から5,違法複製から5の電子出版等への対応の必要性に具体的に書いておりますけれども,この出版実務上の諸問題が,現行の設定出版権制度の制約から,出版者が法的当事者になれないことに,その問題対応ができない理由になっておりまして,これが出版者並びに著作権者の利益を棄損していることになっているわけです。そしてこれを打開するために,包括的な対応が必要で、以下の要望をまとめてみたわけです。
 具体的に,現行設定出版権のオンライン出版,電子出版への拡大につきましては,紙とオンラインの出版が特約なき限り可能となるように整備されることを要望いたします。現在,出版者が有しております出版物は,私ども団体の場合ですが,ほとんど全(すべ)て紙の出版物でありまして,この出版物を電子化して出版可能にできるような方法が必要だと思います。そのために設定出版権の拡大,電子への拡大等が必要で、マル5の電子出版,マル1違法複製,2,海賊出版への対応になります。これが要望1ということになっております。
 次に要望4の,紙での出版ないしオンライン出版の設定出版権に第三者への再利用許諾,サブライセンスを特約なき限り出版者に付与することが,実務上必要不可欠というふうに考えています。これは2枚目の理由に述べました,4の文庫化と,5のオンライン配信に対応するための理由から,こういう要望をしたいと考えております。これが2番目でございます。
 3番目,要望5,コピー等の複写利用については,特約なき限り再利用許諾を出版者に付与することが必要不可欠と考えています。理由のマル3の複写要請,個人の方を含めて,複写要請等への対応で,実務上,極めて煩瑣な作業になっている現状等から,こういった対応を放置したりするような事態が現に起きておりますので,特約なき限り許諾を出版者に付与するようにということで,要望5というふうになっております。
 それから,設定出版権では対象外となってしまう出版物において,特に文化的,学術的観点から,下記の出版物を出版した出版者などに一定の条件をつけて,一定期間,保護するための法的整備を要望したいと思います。これが要望の6でございます。これは古典を新たに組み直したり,翻刻,復刻するなどして出版した出版者,それから,著作権が消滅した未発行の著作物を発行した出版者,これは本要望書の3枚目の3というところに一応書いてあるんですが,これらの保護につきましては,この委員会の第1回の配布資料にもあるとおり,EU諸国での保護法制がございます。また,私どもの会員社でも,翻刻版などを広く発行しておりまして,出版者の初期投資の回収促進をさせるために,是非,設定出版権の枠を超えるわけですけれども,この保護法制を考えていただきたいというふうに考えております。
 そして,最後になりますが,いわゆる孤児出版物の出版を促進できるようにするために,それ以外の目的もあるわけですけれども,現行登録制度を簡素化して,権利情報が容易に明らかになり,孤児出版物を含め,出版物の権利処理の環境が整えられて出版が促進されるような体制を整備していただきたいというふうに考えます。これが要望の7ということになります。
 時間がございませんので,私どもの今日配付の資料3を是非読んでいただきたいと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人日本楽譜出版協会,内田様,よろしくお願いいたします。

【内田様】 音楽の専門の出版者が27社集まる,日本楽譜出版協会の内田でございます。本日は,ヒアリングの機会を与えていただきまして,ありがとうございます。着席させていただきます。
 お手元にグリーンの表紙の楽譜出版者の役割と固有の権利についてというのがあると思います。資料4です。もう一つは,楽譜の三つの特性についてというものを資料として差し上げてありますが,このグリーンの方は逐一説明する時間もございませんので,要点についてのみ申し上げたいと思います。
 音楽の原点と言われる楽譜は,音楽を演奏したり上演する上で欠かすことのできないマテリアルであり,楽譜出版事業というのは,あらゆる音楽活動の基盤になっている,こういうふうに考えております。そして,楽譜出版者は音楽の著作物の公衆への伝達する役目,そして,音楽文化の所産としての役割を果たしていると考えております。
 その,楽譜には三つの特性があります。お手元の,資料にありますとおりですが,一つは,楽譜出版者はいかにして読みやすく演奏効果を高める楽譜を製作するかということで競っておりまして,そこには高度な創作性を有していると自負をしております。したがいまして,同じ作家の全く同じ作品でも,でき上がった楽譜のつくり方というものは,楽譜出版者によってそれぞれ主張が違いますので,でき上がったものを比べた場合に違うという結果になっています。
 それから,一般の書籍と異なり,楽譜の場合は教本とか個人の作品以外の著作物は,1冊が単位ではなくて,原則として一つの作品が単位という基準になっていることであります。
 それから三つ目,これが一番大事なところなんですけれども,著作権の消滅したクラシック音楽をはじめとして,それ以外の演歌とか,ポピュラーやJポップに至る全(すべ)てのジャンルにおいて,著作権のある,なしに関係なく,著作者を立てずに,自社の編集部門で編さんし,編集部編,あるいは出版部編という形で多様な楽譜を刊行しているものが相当数あるということでございます。
 この3番のことをあえて申し上げますと,出版者が著作者の役割も果たしているというふうに置きかえていただければよろしいのではないかと思います。デジタル社会となった今日,複製機器の普及に伴って,楽譜の無断コピーや海賊版が横行する中,楽譜出版者は疲弊して,非常な危機に直面しています。
 そこで私どもは,レコード制作者や実演家,あるいは放送事業者と同じように,著作隣接権の創設によって法的保護を得たいというのが私どもの希望です。御提案,整理していただいた(A)から(D)までありますけれども,私どもは(A)ということで,是非ともご考慮を頂きたいと考えております。
 先ほど申し上げましたような楽譜の特性を考慮した場合に,目下,提案されている著作権者と出版者の契約に基づいた法制化につきましては,楽譜出版の多様性を確保する上で非常に困難であり契約の対象にならない楽譜の出版物が多数出版されているからであります。
 最後に,私どもの著作隣接権の要望に対して,音楽の作家12団体で構成する日本音楽作家団体協議会,それから,権利出版者260社からなる日本音楽出版社協会,それに音楽の著作権を管理していますJASRAC,それから,無断コピーの防止と著作権の啓発活動を行っています楽譜コピー問題協議会,この音楽の著作者,著作権関係の4団体から,私どもの要望する著作隣接権について賛同を頂いていることを,ここで申し上げておきたいと思います。 それから,お手元のグリーンの表紙の中には,9ページに,年間に楽譜がどれだけコピーされているか,1年に2億6,000万枚の楽譜がコピーをされているという実態があります。それから,無断コピーの防止,あるいは著作権の啓発活動の,これまでの履歴について,14ページに掲載してあります。あわせてこの資料を是非ごらんいただいて,私どもの立場を御理解いただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】 どうもありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人電子出版制作・流通協議会,小林委員,よろしくお願いいたします。

【小林委員】 電子出版制作・流通協議会の小林と申します。
 電子出版制作・流通協議会は,設立して3年ほどしかたっていない,まだ若い協議会でございまして,名前のとおり,電子出版が立ち上がったと同時,少し遅れてでき上がった協議会でございます。参加者は,ここにあるように制作・流通に関係した会社が入っておりまして,目的としては,これから新しくできてくる電子出版の流通をいかに円滑にするかということを日々考えている協議会でございます。
 私の方は,今までの出版物と電子出版物は違うものだと思っていまして,一番違いがわかるようなことを説明させていただきます。レジュメで,TTS対応の電子出版についてというものがあります。TTSはtext to speechの略でございます。つまり,テキスト化したデータを音声に変えるというソフトウェアがございまして,それによって電子書籍にした場合,紙の本とどういう形で大きな広がりがあるかということをお話ししたいと思います。
 下の方に,日本の読書障害者数の現状があります。障害者手帳を持っている方,約31万人でございますが,もろもろ足していくと,一番下の小さい文字ですけれども,実際は1,000万人から1,500万人規模の方が本を読めないという状況が日本でもあります。
 次のページを見ますと,我々,流通協議会に参加しておりますけれども,それとともにビジネスをやっている人間でございますので,1,500万人に対して読めるようにしてあげたいということと,もう一つは,以前,全盲の方とお話ししましたが,小林さん,ボランティアではやってくれないでくれと。商売としてやってくれないと長続きしませんよということで,試算しまして,電子書籍で2013年ごろ,もうなっちゃいますけども,150億から300億ぐらいの市場ができるんじゃないかということと,それに対応した端末,PCでもソフトウェアを入れれば読めますけれども,端末が出ていくことを考えますと,このくらいの商売はできるのかなと思っています。
 下に行きますと,どういう人に電子書籍はいいんだろうと考えますと,一番右側のところを見ていただきたいんですけれども,外出できない病気の方とか,今言いました目が不自由な方,あるいは教育向けにということで,音に変えることが,いろんなところで本を読める状況ができるんじゃないかと思っています。健常者の方も,私もそうですけれども,私は車で本を聞くという習慣は余りないんですけれども,アメリカでは,車に乗りながら朗読を聞くということを,かなり前から市場ができておりますので,日本でもそういう市場ができていいかなというふうに思います。
 右側に行きまして,現在の書籍の流れということで,そういう方が本を読むタイミングというのは,紙の本ができたものの中から幾つか朗読してもらって,その本の内容を知るとか,そういったものしかないです。もう一つ,点字というものがありますけれども,点字の本をごらんになった方もいらっしゃると思いますけれども,つくるのが非常に大変です。今,実態はボランティアの方がおつくりになっています。ですから,数がたくさんあるわけではございません。
 という中で,このTTSエンジンが出ると,テキスト化された本が,基本的にはそういう方が全部読めるということになりますので,非常に電子書籍を普及する意味が出てくるのではないかと思っております。
 次のページは,つくり方とかその辺が書いてありまして,今,流通協議会では,つくるためのガイドラインをつくっています。それによって,正しく伝えられるような音声のものをつくりたいというふうに思っています。  それと,最後のページですけれども,今,TTSの本をつくる課題が幾つかありまして,1つは,TTSエンジンに対応した文字なんですけれども,JISのX0208という,第一,第二水準というものでつくっております。これは漢字で6,355文字対応します。実はこれで対応できないものがあります。例えば,地名とか人名というものは,ここで音にならない,あるいは間違って表現をします。ですから,開発側の課題は,これを第三,第四水準,高い水準ですね,JISのX0213というのがあります。これに合わせてつくっていくと,正しい音への変換ということができますので,それをやっていかなきゃいけない。
 もう一つは,今回のテーマになります,著者の方への許諾の問題があります。電子書籍になりますと,こういった紙の本とは違う使い方がありますので,こういうものをどんどん普及して,流通量が増えるような形の新しい法律の整備をしていただきたいというふうに思っています。
 最後,流通協議会の結論としましては,(B)の電子書籍に対応した出版権の整備ということで,こういう新しいものに対応したものを法律としてつくっていただきたいというふうに思っています。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 続きまして,一般社団法人電子情報技術産業協会,榊原様,よろしくお願いいたします。

【榊原様】 一般社団法人電子情報技術産業協会の榊原でございます。お手元,資料6番で,2つ資料がございます。文章のものと,絵にしたパワーポイントでございます。文章の方を基本的に説明させていただきますが,時々絵の方を参照いたしますので,横に置いてごらんください。
 まず,資料6の1のところですけれども,私ども協会と出版者の権利付与との関係についてでございますが,現在,活字離れが進む中で,電子書籍化の促進によって,活字文化の発展・普及を期待しております。その中で,出版者に権利が付与されますと許諾を受けるべき権利者ないしは権利行使できる権利者の方の数が単純に増加いたしますので,権利処理が複雑化するということで,電子書籍の利活用の促進が停滞しかねないのではないかと懸念をしております。したがいまして,私ども情報端末機器の製造販売業や,クラウド等のサービス業という立場だけではなくて,文化の発展という大きな視点からも,権利保護だけではなくて,ユーザーの利便性とか電子書籍の利用促進といった,保護と利用の両者の観点をあわせて検討いただくということを視点としてお願いしたいと思います。このことは,スライドの絵の方ですけれども,2枚目の方に簡単に書いてあるてんびんの絵でございます。
 資料6に戻りまして,2番の立法化に対する意見でございますが,まず,侵害対策のための訴訟といいますと,出版者が訴訟費用を負担する等によっても可能でしょうし,実際,ネット上にアップロードされているコンテンツというのは,海賊版についてはほとんどが外国サーバー上にあるということも聞いておりますので,実際の侵害対策として,そもそも国内法の改正によって解決できる問題なのかという疑問は若干持っております。しかしながら,現在,悪質な自炊代行業者に対して訴訟提起をされているというような現状のようですので,1冊の書籍を電子化してネット上に頒布をしてしまうような違法行為をとめるという,その必要性については理解しております。
 他方で,ユーザーの視点なんですけれども,適法に保有する紙の書籍を電子化するというようなサービスまでは否定してはならないのではないかと考えております。例えば,自宅に保存しきれない書籍を電子化するニーズ,これは絵の方ではスライドの次のページをめくっていただいて,ビフォー,アフターと書いておりますものですけれども,書籍がたくさん家にあって,これを電子化して,いつでもどこでも,どんな端末でも読めるようにするというニーズが大きいのではないかということでございます。
 それから,それらのたくさんの本をクラウド上に保存するニーズ,絵になりますと,次のページ,スライド番号で言うと5番,クラウドストレージという絵ですけれども,この中のスライド5の[3]です。クラウドの中にある自分の領域にコンテンツ,電子書籍を保存するというようなニーズがございます。それから,大量の本を,とても軽い情報機器端末に保存をして持ち歩くニーズというものもございます。これが,絵ではスライド番号の4番,メディア変換とタイトルで書いてございますけれども,このメディア変換のスライド4の2番とか3番,自分で購入した本を,お店のスキャナで自分で電子化をしたり,お店の店員さんに電子化をしてもらったりするような,こういったニーズも高いだろうと思います。
 それから,どこからでもクラウド上の電子書籍にアクセスをして読書を楽しむニーズ,これはスライドナンバー5番の,クラウドストレージと書いてございます絵のうちの3番に書いてございます。クラウド上の中の自分の領域に電子書籍を保存して,自宅外からアクセスをして読むという,こういったニーズも大きいだろうと。これらのニーズというのは,社会的に大きいと考えております。
 他方で,著作権者としても出版者としても,これらの行為を不当に害するものではありませんから,むしろ,読書習慣が普及をして,電子図書の購入拡大につながるものですから,こういったことを認めても異論はないのではないでしょうか。
 以上から,必要な範囲での侵害対策,そして電子書籍の流通促進という観点も加味して,当協会としては(B)案を基本的に支持をしております。(A)案は利用流通を阻害するということで反対の立場であることを付言しておきます。ただし,(B)案を採用するとしましても,中山提言の3については,あらゆるメディア変換行為に権利が及ぶというふうになりますと,先ほどの社会的なニーズ全(すべ)てに権利が及ぶと過度に広汎(こうはん)な規制となるおそれがありますので,社会的に認められる行為についての配慮が必要だろうと考えております。
 これに関しまして,電子書籍の保存を業者が行うことなどについては,海賊版の温床になるのではないかというような意見もあるようですけれども,そもそもそういった対策については,違法行為が行われた時点で対処をして,事前にそういう行為が行われるということで規制をするというのは,国民の自由とか産業振興の観点から疑問を持っております。
 最後に,中山提言については電子書籍の流通促進という観点からも出版義務もあわせて設けていただきたいと考えております。それから,中山提言の4の公示,登録の環境整備についても,何らかの制度的担保を期待しております。
 意見は以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは続きまして,日本知的財産協会,今子様,大野様,よろしくお願いいたします。

【今子様】 日本知的財産協会の常務理事をさせていただいております今子です。知財協は,900社を超える正会員を有する知的財産権に関する企業の団体でございまして,産業の持続的な発展や競争力の強化という観点で,企業の知財実務や法制度についての議論を産業横断的に進めております。
 著作者や出版者という立場の会員企業は非常に少ないので,この出版者の権利というテーマについては,やや客観的な立場ではございますが,コンテンツの流通促進やコンテンツ産業の発展という観点から,非常に重要なテーマであるというふうに考えて議論を行ってまいりました。
 検討の内容につきまして,著作権委員会の大野委員長から紹介させていただきます。

【大野様】 それでは,具体的な中身につきまして,私,大野の方から御説明差し上げたいと思います。資料ナンバーは資料7になります。
 時間もございますので前書きのところは少し割愛させていただきまして,四角枠をさせていただいているところ,そのあたりからお話をさせていただきたいと思います。現在,4つの方策が示されているわけですけれども,後ほど個別には補足させていただきますが,当協会の意見をまとめますと、この四角の枠の中の内容になります。
 まず,基本的には違法流通対策ということであれば,(D)の案にございます「契約による対応」など,現行法下でも行うことが可能である。したがいまして,出版者に積極的に新たな権利を付与する必要はないのではないかということがベースにございます。
 特に,(A)案にございます「隣接権の創設」,これにつきましては,自然発生的な権利を付与するということが,電子書籍の円滑な流通に弊害をもたらすおそれがございますので,賛同できません。
 一方で,日本と諸外国との文化の違いや,業界慣行等の事情によって(D)案の「契約による対応」というのが現実的,効果的ではないという実態があるのであれば,相対的に弊害が少ない(B)案であるとか(C)案といった方策について検討することにも十分意味があるのではないかと考えております。
 なお,今回の議論というのが違法流通対策という問題意識から検討が開始されたと認識しておりますので,であれば,まず被害の実態などの客観的な立法事実を明確にした上で検討がなされるべきではないかと考えております。
 以下,4つの案につきまして補足させていただきます。
 1つ目の(A)案,隣接権についてですが,こちらは先ほども申し上げましたが,自然発生的に権利が付与されるという権利でございます。したがいまして,例えば著作権者が許容する利用に対して,出版者の方が独自に権利行使をするといった,著作権者の意に反する権利行使がなされるという可能性が理論上ございます。そういった意味で,権利関係をいたずらに複雑化させるということを懸念しますし,それから純粋に権利が増えるということでありますので,権利処理コストが増大するであるとか,出版物の円滑な流通への弊害といったものを懸念しております。更に言えば,国際的に見ても,日本だけがこういった特殊な制度を導入するということに強い違和感を抱いております。
 2つ目の(B),出版権の整備でありますけれども,こちらは著作権者との合意,契約によって初めて権利が発生するというものでございますので,(A)案の隣接権創設に比べますと,著作権者の意に反した出版者の権利行使がなされる可能性が低いという意味で,権利関係の安定化に資する案であると考えております。現在,79条以下に出版権が規定されているわけですけれども,それを紙から電子化へ拡大するという趣旨であると思いますので,その点からすると,実務的にはなじみやすい考えではないかと思っております。
 ただ,一方で,出版者に対して,一定の出版行為を独占させるということになりますので,塩漬けの問題ですとか,それから今後,リッチコンテンツが多くなると考えておりますので,そもそも出版というのをどういうふうに定義するのかといった問題を十分に詰める議論をしていただく必要があると考えております。
 案としては,中山先生の提言が有力な選択肢になると考えております。[2]にあるようなサブライセンスを原則可能とするといった提案など意義がある提案を多くしていただいているところですけれども,一方で,[3]にあるような特定版面に対する物権的な権利の設定というのは,この提言の中では,ほかの項目と比べてかなり異質だと感じておりますし,実務に広範な影響が出るのではないかと懸念しております。立法事実をまず確認して,それに照らした慎重な検討をしていただきたいと考えております。
 3つ目の訴権付与について,こちらはライセンサーとライセンシーとの契約,すなわち著作権者と出版者の合意に基づく独占的利用許諾契約によって効果が発生するという点においては,(B)案と同じく,相対的な権利関係の安定化に資する案だと考えております。
 契約に基づく差止請求権の付与については、特許の分野においても,独占的通常実施権者に差止めの権利を認めるか、といった議論はされてきているところでございますので,著作権法においても同じような検討をされるということには,その余地があるのではないかと。ただ,一方で,これは出版物だけではなく,全(すべ)ての著作物に影響が及ぶということなので,実務的には弊害がないかということ。逆に,出版物だけに当制度を導入するということであれば,なぜ出版物だけなのかといった合理的な説明が必要となってくるだろうと考えております。
 最後に,(D)の契約による対応でございます。もともと著作権の自由な譲渡が認められておりますので,仮に著作権者において権利行使が困難であるということであれば,著作権者と出版者の合意によって,権利の全部,あるいは一部を委譲することによって,出版者が違法流通に対して権利行使をするということが可能であると考えております。
 また,権利譲渡でなかった場合においても,一定の要件を備えた利用許諾契約であれば,出版者自らが債権者代位によって差止請求をするということも,解釈として現行法下ではできると考えておりますので,違法流通対策ということであれば十分ではないかと考えているんですが,その一方で,現状として,「契約による対応」が困難という状況があるというふうにも聞いておりますので,であれば(B)案等の選択肢を検討するということになるのかもしれませんが,いずれにしましても,海外での出版物の違法流通対策まで視野に入れた場合には,国内法の改正だけで対応するというのでは不十分ではないかと思いますので,これと平行して,国際的に通用する契約慣行を早期に普及させるということが重要かつ不可欠ではないかと考えております。
 駆け足になりましたが,以上が知財協としての意見となります。

【土肥主査】 ありがとうございました。続きまして,主婦連合会,河村委員,よろしくお願いいたします。

【河村委員】 消費者団体の主婦連合会の河村と申します。簡単な資料を作りましたけれども,読めば分かるぐらいの量ですので,ちょっと別の角度から始めさせせていただきます。
 まず,消費者から見て出版者への権利付与というのがどういう意味をもつのか,消費者との関係,また消費者がどんな懸念を持っているかということを申しあげます。私は総務省で放送コンテンツ関係の委員会に出ていた経験がございまして,そこで受けた印象が大変今回の問題と似たものであったので,消費者からどう見えて,どう懸念があるかということを,ある種の例えとしてお聞きいただければと思います。
 総務省の委員会でわかったことといいますのは,まずは制作会社の方が大変額に汗して,安い予算の中でできるだけいい番組を作ろうとしているということ。制作の現場の方というのは概ね,お金の多寡とかそういうことに関(かか)わらず,作り始めると,いいものを作りたいと思って頑張ってお作りになるわけです。それを放送局が,放送局のビジネスであるスポンサーを付けて放送するということをやるわけですが,そのコンテンツを、放送で流すだけでなくもっと2次利用しましょうということが総務省はじめ国を挙げて,コンテンツの利用とということで,言われているわけです。ところが視聴者,ユーザー側が期待するほど2次利用というのは,行われていない現状があって,それについて当事者からヒアリングをしたことがあります。そのときに,制作者の方というのは,作った側(がわ)はとにかく見てもらって何ぼ何だと。とにかく多くの人に見てもらいたいということをおっしゃっているんですが,私が見た限り,放送局というのは,自分のビジネスモデルを守るといいますか,いずれスポンサーがついて,また再放送するかもしれないということを考えてなのか、とっておくということがあって,小さなメディアだったり,いろいろな形での二次利用の機会があっても,作った人たちが思うようには利用されないということがあるようです。
 そうなりますと,たとえば「この間,とてもいいドキュメンタリーがあったのよ」と誰(だれ)かに聞いて,もう一回見たいなと思っても,それほど人気番組でなければネット上での利用にも回っていませんし,作った人は見てもらいたいと思っていても、視聴者には見る機会がなくなるということになります。視聴者,消費者との関係として考えられることはこういうことがあります。
 ほとんどの場合権利を持っている放送局ですらこういうことがあるわけです。つまり今回の権利付与ということに関しては,まずは何案に賛成という前に申し上げたいと思うのは,海賊版対策にいたしましても,あとは電子出版を一生懸命やっていこうということに関しても,やれるだけのことを,つまりこれだけやったけど,この権利がないからできなかったとか,これだけ出版したいというふうに熱意を持ってやっているんだけれども,この権利がないためにどういうハードルやネックがあったという御説明が足りないのではないかということです。
 それで,資料の1番に書きましたけれども,消費者の権利というのがございまして,アメリカのケネディー大統領が言い始めたことなのですが,その後,日本の消費者基本法にも書かれておりますが,その中に「選択の機会が確保される権利」というのがございまして,そういうものに実現につながる施策でなくてはならないと考えております。つまり電子出版であれば,その分野で魅力的な商品,サービスが、豊富な選択肢をもって提供されることにつながらなければいけません。それには公正な競争が必要だと考えております。
 少し飛ばしまして,2番の「方策」に対する意見といたしましては,出された中では,本当にやる気を持ってやっているのか疑問があるという前提ではございますが,電子書籍に対応した出版権の整備(B)を支持いたします。
 その理由は,繰り返しになりますが,消費者は,より良いサービス,良い商品の選択機会が豊かになることを求めております。そのためには,出版者に対して,権利だけではなくて出版の義務も課すことができるという,現行出版権を拡大して電子出版をその範囲に収めるという方向に賛成いたします。
 その際,先ほどメーカー団体の方のヒアリングでおっしゃっていたことと重なるんですけれども,消費者による私的な複製,その私的な利用の利便が妨げられないということは,消費者の権利,更に国民の権利を守る立場からこの施策を進める上で絶対条件でございます。
 繰り返しになりますけれども,魅力的で使いやすくて自由度が高い,そしてリーズナブルな価格のサービス,商品というのをいかに提供していくかということが,すなわち,それは消費者目線の戦略となるわけですけれども,それこそが持続可能な経済の発展を実現して,事業者,消費者共に豊かになっていく道だと思っておりますので,それにつながるような施策となりますよう,(B)案を基にして,そのような方向に行くことを希望しております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。続きまして,一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺様,香月様,よろしくお願いいたします。

【小寺様】 一般社団法人インターネットユーザー協会の小寺信良と申します。
 私どもの団体は,利用者の立場からインターネットやデジタル技術について,その技術の発展や利用者の利便性に関(かか)わるような法制度への提言などを行っております。2007年に設立されました比較的新しい団体でございます。私個人といたしましては,本業,実業としては文筆家でございまして,日々文筆,執筆を行っております。紙の書籍はもちろん,電子書籍の出版の経験もございます。
 では,まず資料に沿って,4案について御説明させていただきたいと思います。冒頭に大変恐縮でございますが,資料について一部訂正がございます。(A)案の最初の出だしの1文,「出版物の海賊版被害は主に中国及び米国で生じている」,この「中国及び米国」というところを「海外」という形で訂正させていただきます。失礼いたしました。
 それでは,御提示いただきました4案について,簡単に意見を申し上げたいと思います。
 まず(A)案につきましては,既に音楽や映像業界に隣接権はございますけれども,それが実際に海賊版対策にとって有効な手とは思えないということ。また,新たな権利創設は権利が分散化して,再発行の手間が増すなどの懸念がございます。具体的に細かい問題点につきましては,私どもの資料の3ページ目,「参考資料」と書かれたもので,既にこれはインターネット上で意見を表明しておりますので,詳しくはこちらの方をごらんいただければと思います。
 続きまして,(B)案でございますけれども,デジタルであるか否かを問わず,同じ出版権で処理をするという考え方には妥当性があると考えております。また,現行制度のままで拡張して運用すれば良いため,今後スピード感のある展開が見込めるのではないかと期待しております。ただ,[3]の御提言については,限定的ではありますが,出版隣接権としての問題点と同様のものが発生する懸念がございますために,[3]の中身については,もう少し具体的に検討が必要であろうと考えます。
 (C)案につきましては,これは出版のみに関(かか)わらず,映像や音楽など,ほかの産業にも関係のある法改正になる可能性もありますので,既に隣接権があるそれらの産業,そして産業構造が違う別の産業について,どのような影響があるのかということが未知数でございます。更に,訴権を持っているかどうかというのをどうやって確認するのかといった具体的な運用のハードルもございますので,ちょっとこれは難しいのではないかと考えております。
 (D)案につきまして,基本,契約ベースで進めていくというプランでございますけれども,こちらの方は,私どもとしては電子出版に対する柔軟性を確保するために,個別契約が基本になるべきだと考えております。
 それにつきましては,私どもの資料の2枚目の方に2点書かせていただきましたけれども,これの上の方,「一般ユーザーも著作者になる時代への対応」,こちらの方をお読みいただければと思います。簡単に内容を御説明いたしますと,今後は今までの出版のケースとはかなり違った形の出版というのもあり得るだろうと。つまりプロの著作者が一生懸命,家にこもって原稿を書いて本を出すというスタイルではなく,既に無償でインターネット上に公開されているものを,新たに編集を加えて有償化して販売するなど,多様な権利が発生する可能性がございます。そのような自由度を確保するためには,基本は契約ベースで進めるべきであろうと考えております。
 さらに私ども独自の視点といたしましては,消費者が,これは個別利用として十分許されるであろうと思われるインターネットやデジタル,あるいはクラウドの利用に関して,そこまで出版社の独占的な権利が及ばないよう、慎重に制度を設計するという必要があろうかと思います。
 具体的に1例を申し上げますと,私どもの資料の2ページ目の2番目,既存の書類の電子化をどのように進めていくのか,これも私ども利用者の点からすると,非常に大きな問題でございます。自分で買った本を自分で電子化をしていくということが可能な方は結構なんですけれども,技術的にそれができない方,あるいは量が多過ぎて,とても1人ではできない方,こういった方の電子化を手助けするために,誰(だれ)かに業務を委託するということも,実際にあっていいのではないかと私どもは考えております。
 このような観点からいきますと,基本,私どもは(D)案の契約ベースで行うべきというふうには考えておりますが,(B)案についても妥当性があるということで,(B)案の方で慎重に議論を進めていただければと私どもでは考えております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 関係団体の方からの御意見は以上でございますが,次に金子委員から,前回御説明いただいた提言の補足説明があるようでございますので,お願いいたします。

【金子委員】 金子でございます。前回の小委員会に加えて,本日も補足の説明のお時間を頂きましたことを有り難く思います。また,委員の先生方や関係者の皆様には,我々の提言についても,その問題点を含め御検討いただいていること,提案者の1人としてまことに光栄に思います。
 私に関係する資料10は,先の委員会での説明資料の公表のご要望を踏まえ,5月16日に6人で公表した「出版者の権利の在り方に関する提言」の補足説明となっております。その内容は,私の先の小委員会の説明と基本的には同じ内容であると考えております。そして,資料10-1として付け加えていますのが,本日の小委員会での説明のために,私個人の意見として作成した資料であります。
 本日の補足の説明では,先の小委員会やその後の議論において,指摘された問題点や,私に寄せられた質問などを踏まえて,私個人の立場から若干の補足の説明をさせていただきます。
 まず,譲渡契約などによる対応ではなぜ不十分なのかとの疑問についてですが,それは事実上の困難もさることながら,とりわけ著作権の譲渡契約につき,著作者を保護する規制がほとんどない日本法においては,著作権の全部ないし一部の譲渡による対応は,実質的にも望ましくないと考えているからであります。それよりも,むしろ,著作者の利益等にも配慮した内容の権利について,法で規定することが望ましいのではないかと考えているわけであります。
 次に,我々の提言の[3]に対しては,先ほど来,指摘されている実務上のニーズや,流通に対する影響などの問題とともに,従来の出版権が頒布を目的とする出版行為を対象とするものであるところ,[3]によって,出版・電子出版を目的としない利用行為についてまで,出版権という権利を組み込むということに対して,理論的な疑問も提示されております。現行法の出版権を念頭に置けば,このような疑念はもっともなものであります。
 この疑問に対する私の回答が,順番が前後いたしますが,資料10-1の中ほど,出版とは言えない利用行為につき,出版権を拡張すべきとする理由であります。近年の出版物の流通・利用環境においては,単に出版・電子出版行為のみならず,「出版物」の出版・電子出版を目的としない様々な利用行為についても,その利用許諾の窓口を明らかとする必要性が高い状況にあります。また,著作者と出版者などとの間の契約も出版行為とともに出版物の利用に関する契約を含むものとなっております。含む場合もあるということであります。
 このような現状に対応するものとして,著作権者がその意思により,出版者等に対して著作物の出版・電子出版のみならず,出版物としての一定の利用行為についても,物権的な権利を設定可能な形へと出版権を拡大し,再構成すべきというのが我々の提言の内容であります。もちろん,著作権者がそのような利用を特に出版者等に対して委(ゆだ)ねる意思がある場合にのみ,その権利が設定されるということには十分留意する必要があります。
 我々の提言を別の表現で表せば,出版と出版物の利用について,物権的な効力を有する独占的ライセンスにつき,一種の典型契約のようなものを定めるものと位置づけることもできるかもしれません。私個人の理論的な立場としては,将来的には著作権につき,特許の専用実施権類似の,ただし登録を効力発生要件ではなく対抗要件とする専用利用権制度の導入が望ましいと私個人は考えております。
 しかし,専用利用権制度の導入のためには,現行法の著作権の一部譲渡,更に支分権主義による支分権ごとの譲渡を認めている現行法との調整が不可欠であり,これを短期的に実現することは困難であろうと思います。また,出版物以外の著作物について,全面的な専用利用権制度の導入に耐えるだけの登録制度の整備も早期には困難であろうと思います。
 他方で,将来,仮に専用利用権制度が導入された場合にも,またそれが導入されない場合にも,出版と出版物の利用について,専用利用権的な権利につき,定型的な内容を定めた一種の出版に対する典型契約のような規定が存在することは有意義であると考えております。
 そのような観点から,まずは出版と出版物の利用について,既存の出版権を拡張し,再構成することが望ましいと考えております。
 次に,前回の小委員会において御指摘を頂いた海賊版対策と利用許諾の促進という2つの目的の関係について説明させていただきます。
 両者を分けて議論した方が分かりやすいという御指摘はもっともなことでありますが,我々の提言の趣旨としては,侵害対策と適切な利用及びその許諾の促進は表裏一体のものであると認識しております。海賊版への最大の対策となるのは,正規品の円滑な流通,許諾のシステムの構築であります。また,利用許諾に応じないまま侵害を行う者への権利行使は,個々の著作権者よりもその権利を集約して利用許諾を行う者が訴訟提起等を行うことが,円滑な権利行使が期待できます。ただ,私個人の認識としては,海賊版対策というのは,飽くまで著作物の適切な創作,流通の仕組みの構築のための手段であるというのが私個人の認識であります。
 補足資料10の補足説明の2ページの具体例では,出版者の権利の侵害となるべき行為について具体例を示しておりますが,これらは権利の侵害という書き方をしておりますけれども,同時に,出版者によって利用及びその利用許諾が行われるべき行為をも意味しているということになります。
 先の小委員会において堀内委員が言及された漫画のスキャンの例について,私の理解から補足をさせていただければ,まずアップロード行為自体が日本国内で行われている場合については,経団連様の案,また我々の提言の[1]によって,その行為は侵害として止められるということになります。
 他方で,準備段階としてのスキャン行為自体については,みなし侵害規定等の整備が行われない限りには,[1]では止められず,[3]の出版とは言えないけれども,版面を通じた利用として把握されるものということになろうと思います。
 ただ,このスキャンの例は,許諾の対象となる行為というよりも,侵害対策の一環としての性質が強いものでありますけれども,それ以外の点では出版者が海賊版対策のみならず,[3]の権利について設定を受けた場合に,積極的な利用の窓口としての役割を担っていこうとされていることは,本日のヒアリング等や,また書協様の資料にも示されているのではないかと私は理解しております。
 なお,1点御留意いただきたいのは,我々の提言は著作権の制限規定が適用される行為について,出版者の権利の侵害としようとするものではありません。侵害となるべき行為について,適切な許諾のシステムが構築されることを願って,[3]についての提言をしているものであります。
 このほか,[3]及び[2]などについて,実際上の意義の問題点については,様々な御指摘を頂いております。これらの点については,基本的にはその問題点については,これから議論していただきたいと考えておりますが,[3]については,隣接権のように自動的に発生するものではなく,著作権者が出版者などに対して,それを委(ゆだ)ねることが望ましいと考える場合にのみ設定されるものであります。出版者がそのような能力を持っていない,あるいは著作者がそのような利用形態が望ましくないと考えている場合には,設定されないものであります。
 先ほどの御説明の中で,そのような利用の窓口というのは,出版者だけではなく,権利者団体等の方々も担われているという御説明がありましたが,そのようなことを我々は否定するものではなく,様々な形で利用の窓口が設けられることは望ましいと考えております。[3]の権利の内容の設定次第では,出版者以外の者がその主体となり得ることもあり得るかもしれません。ただ,それらは,登録などによって,その利用許諾の窓口が明確とされることが,利用者にとっては望ましいと考えております。
 また,[3]の対象となる行為が不明確である,具体的に,より規定を置くべきだ,あるいは版面としての利用という限定では不十分であるという御指摘も,今後十分に議論をしていただきたいと考えております。
 この点,企業内複製などについて,[3]の提言が,円滑なものとなるよりは阻害なものとなるのではないかという御懸念も示されておりましたが,この点に関して,私,先日の研究会において,研究者というのは実務に疎いと申しましたが,疎いのは私でありまして,研究者全員が疎いわけではないということをここで訂正させていただきますけれども,その点について,企業内複製について,我々が6人の提言でまとめた際,背景となった認識については,また機会があれば改めて詳細について御説明をさせていただきたいと考えております。
 ただ,私自身が具体的に念頭に置いたのは,特に学術論文などにつきまして,我々が論文を書いたときに,雑誌等に載せた場合の特定の版については,出版者にその権利を委(ゆだ)ねて,別の版で論文集等に収録する行為については,なお権利を留保しておくという選択肢があってもいいのではないか。
 また,他方で,雑誌の,収録されている論文等を教育目的で複製,しかも35条の範囲を超える内容でイントラネットで利用したり,あるいは将来的には国立国会図書館等からその複製物がメールで送信される,そのようなものについて,著作権者にも一定の対価等が支払われる一方で,その利用許諾が円滑に行われる,そういうシステムが構築されれば望ましいと考えて,[3]を提言したということがあります。もちろん,著作物の種類や利用形態によっては,[3]のような特約の必要性は低いというものもたくさんあるとは思いますけれども,それらについてはそのような,[3]の特約が付された契約がされないということで十分ではないかと思っております。
 とは申しましても,その内容が不明確である,また,[2]に関しても許諾をデフォルト化とすることが,著作者に対して勘違いのまま契約をしてしまうということになるのではないかといった危惧(きぐ)については,これらは十分検討されなければいけないと考えており,今後議論をしていただきたいと考えているところであります。
 長くなりましたが,以上であります。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,残る時間で質疑応答と意見交換を行ってまいりたいと思います。御質問,御意見ございましたら,お願いいたします。金原委員,どうぞ。

【金原委員】 日本書籍出版協会の金原でございます。本日配付されました資料の中に,資料11として書協からお配りをお願いした資料がございますので,若干これについて補足をさせていただきたいと思います。
 この文章にも書いてありますとおり,様々な権利侵害であるとか,あるいは海賊版であるとかというのは,現行法の範囲内でも対応できることはそのとおりであります。現状では,複製権であるとか,あるいは公衆送信権をお持ちになっている著作者の方に対応していただければ,現行法の制度の枠内で十分,権利侵害に対して対応できるというのは,この文章にも書いてあるとおりでございます。
 しかし,実際にそういうことが行われるか,あるいはそういうことが可能であるかというのは,様々な理由によって,著作者の方個人が対応するという状況に立ち向かうというのは難しいというのも,ここに書いてあるとおりでございます。しからば,どうするかということですが,それを可能にするということが,出版者としてこれまで主張していた隣接権の創設ということでありますが,隣接権については,先ほどからもここで議論があるとおり,様々な難しい面がありますので,今回この検討の中で議論していただくということを,あえて求めるものではございません。
 その中で,中山先生,先ほどの金子先生からも御説明がありました出版権の拡大ということが提案されましたので,今回はそれを御検討いただきたいということで,その趣旨をまとめたのが,この資料11に記載した文面であります。
 具体的なことでありますが,出版権の設定というのは,中山先生の提案にあるとおり,紙と電子を一体のものとして考えるべきであると思います。ただし,様々な利用形態,あるいは著作者の御意向というものもありますので,紙と電子を分離して出版権を設定するということも,方法論としてはやむを得ないことかと考えます。
 また,特定の紙の版面が電子的に複製されて利用されるということもありますので,またそれが現実の問題としてかなり起きているということから考えますと,特定の版面に対して出版権を設定できるようにするということも非常に重要な問題であると我々は考えております。
 資料の11の最後,4ページの後半から,「出版界が著作隣接権を要望した理由」というのを付記としてまとめてありますが,これは先ほども申し上げたとおり,隣接権を今回の検討の中であえてお願いするという姿勢ではございませんので,後ほど委員の先生方にお読みいただければ結構かなと考えております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,ほかの委員の方,御質問,御発言ございましたらお願いいたします。どうぞ,松田委員。

【松田委員】 金子先生に再度,資料10の御質問させていただきたいと思います。1と3の関係がどうしても,もうひとつ,私自身は理解できていないところなんでありますが,3は当事者の契約によって特定の版の利用について,出版以外の利用について,物権的な権利を持つわけですから,ここに書かれているように,当事者の契約によるというのは,著者がX,著作者X,著作権者は当然ですが,Xが,出版者Yに対して契約を結ぶというときに,この3の権利設定ができるよということになります。
 この場合に,XとYとの関係ですが,Yは当該版面を作った出版者に限るのか,当該版面を作らない出版者に対しても,この権利設定ができるのかという質問であります。先生の資料の2ページを見ますと,3の権利についての行使という説明がありまして,ここは3が単独で設定できるようになっております。こういうことになりますと,当該,版面を作らなかった出版者に対しても,この設定ができるのではないかというふうに読めてしまいます。果たしてそれでいいのかということも含めまして,質問させていただきます。

【土肥主査】 どうぞ,お願いします。

【金子委員】 松田委員,御質問ありがとうございました。答えですが,そのとおりであります。版面を作った出版者に限らず,版面を作ったどうかに関係なく,この権利を設定されることはできるということになります。これは,飽くまで設定される権利内容について,特定の版面によってその限定をするということが重要なのであって,その版面をどの出版者が作ったかということは,あるいは出版者以外の主体が作ったかということは,全く重要ではないということになります。
 更に言えば,これは[3]の権利内容の設計次第になりますが,出版者以外の主体が[3]のような利用許諾としての窓口を果たすという場合には,それについて権利の設定を受けるということも,私はあっても良いのではないかと思います。ただ,このあたりは,[3]の内容として継続出版義務等も当然含むとか,出版と必ず付随して行わなければいけないという制度設計にすれば変わってき得ると思いますが,それについては様々な制度設計があり得ると思います。ただ,少なくともこの提言について我々が言えるのは,この版面を作った出版者以外についても,どの出版者が作ったかということには関係なく,版面によって権利の範囲が特定されて,権利が設定されるということであります。

【土肥主査】 どうぞ,続けて。

【松田委員】 関連しますので,松田から。割り切ることは分かりました。多分そうだろうということで質問させていただいたわけですけれども,そうなりますと,例えばこういうことになりますね。XとYとの間でライセンス契約で出版をさせて,Yが版面を制作して出版を完了した。これはライセンス契約ですから何も権利が動いていないわけです。先生方の物権的な権利が何らかの形で法定されたとしても,これは従前と同じということに多分なるのでありましょう。
 そうしたときに,XがY以外の出版者に対して,当該版面をそっくり,Y2といいましょうか,出版者に対して,これについての物権的権利を設定するからねということで契約を結ぶ。当然,これは違法でも何でもないことは私は承知いたしますけれども,著作権を持っているわけですから,Xは。しかし,Y2は当該版面について利用するものがある場合には,それに対して差止請求ができるのと同時に,今度はそういう権利がありますから,この版面について何らかの利益配分を受けるような場合,例えば当該版面を使った電子出版,国立国会図書館を通じて多様な利用に提供されたような場合に,今度,その利用の還元は著者Xにも回りましょうが,Y2にも回るようになるはずであります。このY2に対して利益が取得されるのは,著作権ではなくて当該版面に関する権利として配分されるのではないでしょうか。この配分される部分がXの判断でできるということだけで,本当にいいのでありましょうか。Y1の版面を作った立場といいますか,これを全く無視してY2のみが配分を受けるということでいいのでしょうか。これで流通が促進されるのでしょうか。その点の御見解をお聞きしたいと思います。

【金子委員】 今の御質問にお答えいたしますが,隣接権という考え方というのは,どちらかといえば今のような場合に,Y1について,当該版面に関してはある程度の権利を認めようというものであります。それに対して,我々の提案からすれば,それはY1がそのような契約を結んでいなかったとすれば,それはY2がそのような権利が設定を後から受けた場合には利益を得て良いと,著作権者の意思により,そのような形で設定された場合には,そのようなものとして良いという考えであります。
 ただ,我々としては,Y1についてもそのような権利の設定を受けるということを著作者に対してメニューを用意しているわけですので,Y1がそのような権利の設定を受けたいと考えれば,そのような権利の設定を受ければいいだろうと思います。
 更に言えば,版面の作成についてどれぐらいの労力が掛かるかというのは,著作物によって様々でありまして,それによっては大変な労力が掛かることもあれば,そうでないものもあるだろうと思います。最初の出版のときに出版者が大きく関(かか)わるものもあれば,そうではないものもあるだろうと思います。それらに応じて,著作者と出版者との間でどのような権利を著作者から出版者に対して設定をするのかということは,合意によって定められるべきであるというのが我々の考えであります。

【松田委員】 割り切って考えればそうなるということは,結論的には理解いたしました。理解いたしました。しかし,全く版面に関する配分の権利を著作者Xに,これは著作権に基づいてのみやっているわけですから,それでいいのだという結論については,Y1の立場に立つ出版者が,果たしてこのまますんなり,この案に同意するかどうかについては,かなり問題があるのではないかと思います。やっぱり版面を物権的に,ないしは隣接権的に処理をしようということではなくとも,版面の何らかの利益があるからこそ,版面に関する権利というものをお考えになったわけであります。
 すなわち版面は,それなりに経済的対価としての取得する一定の根拠を持っているからだと思います。そういう前提に立つと,どうしてY1に全く無視して,その権利を全部,著作者であるXにもう一度戻して版面の権利を付与したりできるのだろうかということを,もう一度考えてみなきゃいけないのではないかと思います。
 以上が私の意見です。

【土肥主査】 ありがとうございました。今,交わされております御意見については,今後,出版小委の中でも議論する時期が来ようと思いますので,一応本日のところは,御質問と,それに対する金子委員のお答えというところで,私どもとしては承りたいと思います。
 ほかに御意見,御質問ありますか。渋谷委員,お願いします。

【渋谷委員】 渋谷でございます。前回のこの会議で出版関係の方から御発言があったのですけれども,出版者が何らかの権利を欲しいのは,海賊版に対してクレームを言っていくときに法的根拠が欲しいんだと,そういうことをおっしゃった。そこに私,御本心があるのではないかと思います。
 クレームを付けていくときに,何か法的根拠がないとクレームを付けにくいというのは,大分以前のことになりますけれども,消費者団体訴訟の制度を新設するときに,それまでは誤認的表示をする悪質な業者に対して,それをやめろと言うときに,お願いをするという形になってしまうんだと。だけれども,団体訴訟を起こせるという地位を法的に保証されていると,いざとなったら伝家の宝刀を抜くぞということが言えるようになる。そのように消費者団体訴訟は実際には機能するんだ,そういうことが言われていたわけであります。ですから,出版者に権利を与えて,クレームを付けるときに法的根拠を得るというのも,実際に訴訟を起こすかどうかは別問題ですが,そういう主張として了解すべきだろうと思っています。
 こういった観点から見ると,文化庁で用意した(A),(B),(C),(D)の4つの方策,案ですけれども,これはどれでもいいということになるわけです。どれでも法的根拠にはなります。
 ただ,これも前回の御報告にあったことですけれども,非常に多数の違反に対して日常的に多数のクレームを付けていかなければいけない。何万件という違反に対してクレームを付けていかなくてはいけないということになると,効率的に処理をしなくてはいけない。そういうことを前提に考えますと,出版業界が当初,主張されてきたように隣接権方式が一番手軽なんです。著作権者と一々契約を結ばなくても,出版をすれば自動的に取得することのできる権利ですから,隣接権が欲しい,こういう御主張になっていたのではないかと思います。
 私もしばらくの間,この問題に関係してきたんですけれども,実際に出版者がどういう姿でクレームを付けているのか,実際に著作権者のためにクレームを付けた実例がどれくらいあるのかといったこと,なかなかその情報を提供していただけなくて,その主張にいつも一抹の疑問を感じてまいりました。ほかの検討会の委員の方も,そういう心地であったのではないかと私は推測しますが,前回,その点,はっきりとした資料,情報が提供されたのは大変よかったと思うんであります。
 ところで,法的根拠の話ですけれども,クレームを付ける相手というのは海外の海賊版の出版者であったり,電子配信業者であったりするわけでありますから,海外でクレーム付けるときに法的根拠になり得るものでなければいけないということであります。
 そうすると,著作隣接権には多少問題があります。版面権をはっきりと認めているのは今のところイギリスだけだろうと思うんですが,イギリスで裁判を起こせば,我が国の出版者が版面権という著作隣接権を侵害されたんだと主張すれば,イギリスの裁判所は認めてくれるかもしれません。しかし,それ以外の国に訴訟を起こしたときに,そういうふうに認めてくれるとは限らないわけですね。そのことを考える必要があったんだろうと思います。
 出版権を法的根拠として据えるならば,これはどこの国に行っても恐らく裁判所は,日本でいう出版権というのは自分の国でいう著作物の独占的利用権と同じものだなと,こういうふうに考えてくれまして,恐らくは日本の出版者の主張を認めてくれるだろうと思うんです。
 確実に外国の裁判所で勝とうと思えば,それは著作権の譲渡を受けておくのが一番確実なんですが,そこまでできないということであれば,次善の策として外国法制における独占的利用権と同等と思われる出版権,これを取得するというのが一番穏当な方法ではないかと思います。これが発言の第1点なんですが,もう一点だけよろしいでしょうか。

【土肥主査】 どうぞ。

【渋谷委員】 中山提言が問題になっておりますが,その[3]の提言,要するに企業内複製などについても出版者の権利を認めてはどうかということなんですが,そうなりますと,現行の出版権の規定を踏まえますと,出版者には与えられていない権利がたくさんあるんです。第1に,複製物譲渡権が出版権の設定によっては与えられません。複製物の貸与権とか,それから楽譜の出版関係の方がおられますけれども,例えば違法にコピーした海賊版の楽譜を使って音楽を演奏するという場合に,演奏を止められる出版権類似の利用権というものがあるかというと,そんなものはないわけです。
 というわけで,中山提言の[3]の権利というのは,それらの権利のうちの1つなんですね。ですから,この問題はそれ自体として,他(ほか)の権利とひっくるめて包括的に検討すべき問題ではないかと思います。
 今回,この小委員会で問題になっている出版関係,あるいは電子配信関係の権利をどうするかという問題とはまた別に,一くくりにして,将来引き続いて検討を進めていくべき問題ではないかと,そういうふうに私は考えております。
 ちょっと長くなって申し訳ありませんでしたけれども,2点申し上げました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 本日,各団体の皆様の御意見をお聞きして,改めて参考資料2に記載された4つの方策を眺めてみたいと思うんですが,まず(A)の「著作隣接権の創設」につきましては,本日のヒアリングでも反対意見が多いようですし,今までなかった準物権的な権利を独占権として新たに設けるということは,影響も大きいですし,そのことにコンセンサスが得られていないという現状では,(A)の方策というのは余り現実的ではないんじゃないかと。また,楽譜出版にだけ他(ほか)の出版物と異なる取扱いをするということも,現実問題として難しいんではないかと思います。
 (B)は賛成意見が多かったのでちょっと除きまして,(C)の「訴権の付与」についてなんですが,これは先ほどもヒアリングの中で御指摘が出ていましたように,これは出版に関する許諾契約にとどまらないで,著作物の独占的利用許諾一般に,あるいは更に,産業財産権とか,その他の権利の独占的利用許諾一般にも影響が及ぶ話になりますし,更に言うと,不動産賃借権以外の賃借権とか,対抗力を具備していない賃借権の妨害排除請求権など,限りなく話が大きくなっていく可能性があって,そうしますと,もし独占的ライセンシー一般に差止請求権を付与するという制度を作るということならば,この小委員会だけじゃなくて,いろんな場所で時間を掛けて議論をしていく必要があるのではないかと思います。
 他方,先ほど日本知的財産協会様からも御指摘あったと思いますが,出版に関する独占的許諾についてだけ特別扱いをするということであるならば,特別扱いをする根拠は何なのかということが問われるということになると思いますので,いずれにしても,短期的にはなかなか結論を得難いということになろうかと思います。
 それから,(D)の「契約による対応」についてなんですけれども,本当は著作権譲渡の意思が当事者双方にない,だけども,出版者が差止請求権を行使できるようにせんがために,著作権譲渡の法形式をとらざるを得ないということになるのであれば,それはやっぱり制度として不備があると言わざるを得ないんじゃないかと思います。著作権譲渡の法形式を借用すれば問題の解決はある程度図れるとしても,だからといって,電子書籍に対応した出版権の整備の必要性がなくなるというわけではないと思います。
 そうしますと,結局,参考資料2では4つの選択肢を挙げていただいていまして,また今日のヒアリングもそれを前提に行っていただいたと思うんですけれども,現実的な選択肢としては,やはり(B)しか残らないんではないかなと私としては思います。
 (B)の方策をとるとしても,吉村委員からの御提案をベースにするのか,あるいは金子委員からの御提案をベースにするのか,あるいはそれ以外の制度設計にするのか。また,紙の出版権についても再許諾を認めるのか,それから今日も御指摘ありました出版義務,継続出版義務をどうするのか。更に私が前回,質問させていただいたんですが,著作権者からの消滅請求権をどういうふうに構成するのか,そういった細かい制度設計の点も含めて,解決しなきゃいけない問題が山積しているという気がいたします。
 そうすると,とりあえずは(B)の方策をとることを前提として,具体的な制度設計について議論を進めるのがいいのではないかなと思います。

【土肥主査】 ほかに御意見,内田様,御意見ございますか。

【内田様】 日本楽譜出版協会の内田です。これまで私,いろいろな会合にも出させていただいていますけれども,楽譜についてはほとんど話題にもならないという状況を感じているんです。楽譜の特性というものを先ほどのお話の中で申し上げさせていただきましたけれども,一番の問題はクラシック音楽,ここにいらっしゃる皆さんもかなり音楽の愛好者がいらっしゃると思うんですけれども,著作権のないクラシック音楽,それからポピュラー関係でも権利が消滅しているものがかなりあります。これは,全体の市場の売上げの約4割ぐらいを占めているわけです。これを救う道がないんですね。どうも隣接権は今までの話を伺っていると,かなり不利のようなムードにあるんですけれども,私どもが一番心配しているのは,著作権が切れたもの,これからもクラシック音楽というのはどんどん企画はされてくると思います。これと,先ほどの特性の中の3番,出版者が著作者の役目を果たしている出版物もかなりあるわけです。これは,著作権は著作権者の許諾を得ていますけれども,刊行に当たってはそういう出版物の種類のものがたくさんあるわけです。
 では,これはこの4つの提言のうち,どれが当てはまるのか,権利のないものの譜面はされるのか。これは,ほとんどコピーの餌食(えじき)になっているわけです。恐らく一般の書籍と比べて少なく,わずか200億か250億の市場性でしかありませんけれども,音楽が国民一人一人の生活,あるいは,教育の場でどれだけ役に立っているか,人の気持ちを,心を癒(い)やすものになっているかということは,皆さん個々にはおわかりになっているはずです。その楽譜の出版したものが守れないということになれば,恐らく楽譜の出版社は半分ぐらい死滅しちゃうだろうと思います。
 ですから,今4つの提案のうち,どれが楽譜の発行した版面を守ってくれるのか,出版社にそういう権利を与えてくださるのか,もう心配でしようがないんです。中山提言も前から伺っておりますが,金子先生のこの前のご説明で,楽譜の場合は,非常に特殊なので,中山提言では無理かもしれないというお話がありましたが,楽譜について,どういうふうにして法的保護が受けられるのか,実際わからなくなってきました。
 ですから,ここにいらっしゃる皆さんにも,この席でなかなか私どもは発言する機会がありませんので,もう少し楽譜というものに関心を持っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから,中山研究グループの金子先生に楽譜の処理,扱いについて,もう一度御見解を伺いたいと思います。

【土肥主査】 どうもありがとうございました。恐らく楽譜についての御見解を金子委員はお持ちだろうと思いますけれども,本日のところは,広く皆様から御意見を出していただいて,今後の議論の方向性等を考えていきたいと思いますので,内田様,まず我々の,本日の11団体からおいでいただいた御意見を踏まえて,委員の意見を伺いたいと思っておりますので,よろしく御了解ください。
 それから,御存じと思いますけど,時間的にはもう過ぎているんです。しかし,せっかくお忙しい皆様に今日はお集まりいただきましたので,どうぞお許しを頂いて,若干時間を延ばさせていただきたいと思います。  どうぞ御意見いただければ,末吉委員,どうぞ。

【末吉委員】 末吉でございます。今日は貴重なお話を伺いまして,ありがとうございました。私が以前,渋谷先生のもとで,出版者の権利に係るヒアリングをやらせていただいたときに比べて,非常に方向感が見えてきたと今日は思いました。
 私も(B)案に賛同する者ですが,どうも伺っていると,これまで検討してきたことよりも,(B)案にはいろいろまだ詰めなければならない論点があるように思いました。先ほどの松田先生の御指摘もそうです。片や我々に与えられている時間が非常に少ないということで,大変私は危機感を持っております。
 あと数回で結論を得なければいけない状況に,今,我々はあるのではないかと思うので,私はできれば(B)案に絞って,更にいろいろな論点出しをしていただいて,恐らくこれまで議論されていないような論点もまだ残っている気がいたしますので,(B)案の中で一番いい成案を得て,立法化を進めていくことを私の意見として申し上げたいと思います。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかに,どうぞ,潮見委員。

【潮見委員】 末吉委員が考えておられるのと基本的な方向は同じなんですが,今日はいろんな御発言を伺っていて,(B)案を支持しておられる方々も,頭の中が同床異夢の世界になっているんじゃないかという感じがいたしました。
 私自身の考えは,別のところにあるのですが,今日,もう一度金子委員から補足された部分で,海賊版対策と利用許諾の促進は表裏一体だという形で説明をされた部分について,若干というか,ますます違和感を抱くようになったことを申し上げておきたいと思います。
 先ほど末吉委員が直前におっしゃいましたように,今回ここでやるべきミッションにとっては,かなり時間が限られています。
 それから,実際に出版権の内容というものを考える場合に,海賊版対策のためにあるべき出版権の内容は何かということと,利用促進のためにあるべき出版権の内容は何かということについては,基本的に私は分けて考えるべきではないかと思っています。
 その上で,海賊版対策のためにあるべき出版権の内容は何かという点に関しては,(D)案を支持される方々でも,法制化についての必要性を特に否定するわけではないという御趣旨の発言もあったように思われますので,この点については前回の議論を踏まえて考えますと,ほぼ異論はないのではないかと思います。あとは,海賊版の対策のために,出版権というものをどのように定義していくのが適切なのかという観点から,現行の出版権に関するルールをどこまで拡張したり,修正したりするか,あるいは,オプトインにするのか,オプトアウトにするのかという観点から議論を具体的に進めていけば,それでいいのではないかという感じがいたします。
 他方,利用促進のためにあるべき出版権の内容は何かということを考えていく際には,コンテンツの利用促進のことも考えなければいけません。対価とコストの分配をどういうふうにするのかということも考えなければいけません。更に,出版契約の内容というものも考えていかねばなりませんし,さらには私の専門に引きつけて申し上げますと,そもそも物権的な権利というのは一体何なのかということは,そんなに簡単には決まらないところがあります。
 そういう意味では,私自身も利用促進のためにどういう形でこの問題を考えていったらいいのかについて考えていかなければならないことは十分わかっておりますけれども,しかし,今回の議論においては,少し分けて考える必要があると思います。
 時間があればという言い方は変なのですが,最初に差止めの話を固めてみて,そのときに,例えば(B)案的なものがいいのか,あるいは,私自身はちょっと違和感を抱くんですけれども,(C)案的なものがいいのかというあたりを議論して,その上で,もう一度時間があれば利用促進のところも考えてみて,このところで更に一致が見られるようであれば,更に振り返って,新たな内容を盛られた出版権というものをもとにして考えたときに,それが差止めの効果と結びつくのかという形で,もう一度もとに振り返って議論するのが筋じゃなかろうかと思います。
 恐らく金子委員がおっしゃった表裏一体というのは,今,私が申し上げた最終段階で出てくることではないのかという感じが強くいたしました。研究会なら,いろいろ表裏一体の,最終的なところを意識して議論していってもいいと思いますが,ここは委員会です。時間も限られていることも考えますと,(B)案に限るかどうかは別として,基本的には末吉委員がおっしゃった方向での議論に賛成ということをもって発言を終わります。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。どうぞ。

【萩原委員】 凸版印刷の萩原と申します。1つ確認をさせていただきたいと思いまして,発言をさせていただきたいと思います。
 今まで議論になっています,中山研究会の3の点でございますけれども,3の版面についての権利まで拡張するということについての必要性を,金子委員の御説明では,企業内複製を担保するという御説明であったと思うのですけれども,現在,複製権センターが存在していまして,私の認識では一定の評価,効果を上げていると思っております。
 したがって,実務的にはそれでいいのではないかと考えるのですけれども,その上で,この版面に関する権利を創設して,それを担保する必要性,要するに,それが不十分だという御認識でそういうことになっているのかということと,一方で,書協さんの方の3についての必要性の理由は,毎週出る雑誌のコピーが横行していると。それをとめたいということで,3についての理由が金子委員というか,中山研究会と書協さんとでは違うという点があります。
 書協さんの方の必要性の理由は,いわゆる出版権そのもので押さえられるのではないかと思うのですが,その点について,それぞれもし時間の余裕があればお聞かせいただきたいと思います。

【土肥主査】 金子委員,時間はそんなにたくさんはないんですけれども,手短にお願いできますか。

【金子委員】 まず,3については,現状が不十分かどうかはともかくとして,より促進されるべきだということは前回申したとおりです。詳しい認識については,機会があれば,また別のときに,どういう認識に立っているかということは御説明したいと思います。
 また,雑誌の問題については,我々の主張は雑誌等の版に限定をして,著作者が著作物について権利を設定できるようになれば,雑誌単位では,利用を出版社に預けてもいいというものを集約しやすくなるだろうとは認識しております。ただ,それは飽くまでそういう効果を持つということであります。
 現状,雑誌の中に含まれる1つの著作物について現行法の出版権を設定することは,私自身は現行法でも可能だと考えております。

【土肥主査】 松田委員も先ほど挙手されておられましたので,どうぞ。

【松田委員】 私は最初に質問させてもらって,私の1つだけ意見を述べましたけれども,基本的に,私もそういう質問をするわけですから,金子先生の案にシンパシーを強く感じているわけであります。更に議論をして,これを洗練化させていくというほかの先生方とまさに同意見であります。
 ただ,そこにたくさんの出版に関する条項を盛り込んでしまうと,なかなかうまくいかないと思いますし,実は,出版に象徴されるけれども,これは著作権契約法をどうするかという問題にも,私はなるんだろうと思っています。契約のターミネーションや,増額・減額請求権などというものは,他国では採用されている部分もあるわけでありまして,そういうことについて日本の著作権法は,契約法については,出版権設定契約を除きまして,残るところ,63条,1条があるだけであります。そういうことを考えますと,契約法について,余りにも規定が少な過ぎるところからも実は来ているわけであります。その点の視点も忘れないでいかなきゃいけませんが,これをまとめるために,それをやり出すと切りがなくなります。
 ですから,著作権契約法ということを念頭に置きながらも,これはこれでまとめるという2つの路線を考えながら審議すべきではないかと思っています。

【土肥主査】 ありがとうございます。瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】 よろしいですか。終わってから言うのも何なんですけれども,基本的に今,松田委員がおっしゃるように,これは結論を出さなきゃいけない小委員会だと思っております。
 写真は,中山提案に同意と申し上げました。ただ,出版に対しての思いを強くするために言っていることであって,基本的に権利者が,自分たちの権利について譲歩している結果,申し上げていることであって,積極的に出版さんの権利を全員が拡張したいかと思っているかといえば,権利者団体としては,そういうことは実は余りない。でも,それは同じ船の仲間だから,よく聞かなきゃいけないということで,賛成をしているわけです。少なくとも写真はそうです。ほかの団体もそういう思いはあるんじゃないかと推察しますけど,ほかの団体を推察すると怒られるので,私は推察をしないで写真と申し上げます。
 ただ,こういう状況の中で結論を出していく,絞っていくことについて,是非お願いしたいし,譲歩の中で,いわゆる法体系の複雑な部分に踏み込んで,数か月もかかっていく形にすると,少なくとも私たちの思いは無駄になってしまうと思うので,是非進捗(しんちょく)としては,そのようなことを前提にお考えいただいて進めていただきたいと思います。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。それじゃあ,どうぞ。

【河村委員】 時間がないのにすいません。書籍出版協会の方の御発表の海賊版対策のところで,違法流通が減って,その結果市場が創出されると書いてあって,そうすると,正規版コンテンツが参入できる素地(そじ)が用意されると書かれているんです。ほかのところでも表裏一体とか言われていますが,これはすごくよく聞く言葉なんですが,私から見ますと,確かにもちろん海賊版対策は大切だと思いますけれども,魅力的なサービスや網羅的な選択の余地とか,サービスが用意されていない,製品が用意されていないから,そういうところで入手している実態は,音楽であれ,いろんなところであると思うんです。
 それがあるからビジネスができないんだと言って,それがなくなるのを待ったらできるところは,ほかの業界でも言われるんですが,ところが,結果的にはなくならなかったからできなかったみたいなことで終わることがほんとに多いんです。
 ですから,私が申し上げたいのは,それもやりつつ,まずはいかにやる気があるのかということを,私は発表のときも申し上げたんですけれども,ビジネスをやるために,これが必要なんだとおっしゃるのであれば,半分に減りましたねとかいうのを待つんじゃなくて,それに対抗できるような,きちんとした網羅的で,リーズナブルで,使いやすくというものがなければ絶対に,結果的に何もいいことが日本には起こらなかったということで終わってしまいます。
 僭越(せんえつ)ですけれども,何回か引用しているんですけれども,スティーブ・ジョブズさんがiTunesを始めるときに,こんなに違法なものがネット上にあるのに,よくそういうサービスを始めますねとどこかで言われて,我々は違法なものと戦うのではなくて競争するんだとおっしゃったんです。大部分の方は,リーズナブルな価格でそういうものが用意されていれば,違法なものではなくて,ちゃんとしたところから入手するはずだとおっしゃっていますので,あんまり違法なものがあるからできなくて,それがなくなって市場ができた暁にはやりますみたいな言い方は,結局何も起こらなかったということにつながりそうで危惧(きぐ)しております。以上です。

【土肥主査】 金原委員,どうぞ。

【金原委員】 今の河村委員の御意見に対してですが,それはおっしゃるように,例えば,海賊版があれば,海賊版に対抗できるような正規の商品を我々が出して,海賊版と対抗し得る価格で流通させれば海賊版は淘汰(とうた)される。それはそのとおりなんです。
 しかし,じゃあ,海賊版と我々が発行する正規のものとの価格構成がどうだということになりますと,海賊版はもう既にある版面をそのまま複製するだけでありまして,我々が出版社としてかけたコストは,我々は償却しなきゃいけないわけですが,償却コストがない。それから,著作者に対する印税の支払もない。こういう問題を総合的に考えると,海賊版というのは今に始まったことではなくて,日本においても大昔からあることでありまして,海賊版にはとても対抗できない。かけるコストが違う。
 質も確かに悪いんですが,質が悪くてもいいという読者の方がいれば,それはそれでいいんでしょうけれども,やっぱり我々としては,著作者の期待に応(こた)える,きれいな出版物として仕上げて,読者の利便性を高めるという作業を出版社としてはやらなきゃいけないわけです。そういうコストをかける必要もない。とにかく安くて,みんながとっつきやすい価格であればいいという判断基準でつくられたのとは,とても勝負にならないのが実態です。
 では,赤字覚悟でやればいいじゃないか,そういうふうにおっしゃる方もいるかもしれませんけれども,それでは出版業として成り立たないし,著作者への還元もできないし,そうなれば,いずれ出版物は淘汰(とうた)されてしまう。それは情報の伝達が減りますし,文化の伝達もできなくなる結果を招いてしまう。そういうことであろうと思います。

【河村委員】 すいません,手短にいいですか。

【土肥主査】 じゃあ,河村委員,どうぞ。

【河村委員】 私は主婦連合会ですけれども,安くしろという意味で申し上げたのではございません。
 例えば,ここに書かれているように,きちんと海賊版対策が功(こう)を奏して,市場がすごく減った状態になっていったときには,多分そのコンテンツに対する興味が,みんなからなくなったときだと考えます。それを待っていたら,何もできないじゃないかということが私の言いたいことで,それが音楽で言われ,放送で言われ,そのたびに二次利用ができませんとか,あれができません,これができませんとおっしゃって,そのまま衰退していっているのを見ていますと,やはり出版業も,それはそれとして対策しながら,きちんと打って出ることを同時にやっていただきたいと考えております。

【土肥主査】 ありがとうございました。順番として,堀内委員がまずお話しになるそうですので,その次にお願いします。

【堀内委員】 河村委員の発言に一言申し上げますと,すでに多くの出版社が正規のデジタル電子書籍の配信に,積極的に取り組んでおります。例えば,講談社さんなんかでは,発行書籍の七,八割ぐらいは同時に出すとか,様々な形で,積極的に取り組んでおられます。
 それから,コミックでいうと海外での違法アップロードも多いんですけれども,集英社の場合でいいますと,米国では『少年ジャンプ』の日本での発売日とほぼ同じ日に,電子版『少年ジャンプ』を配信する事業を1月から始めております。そういうことは今,我々出版社も一生懸命やっております。同時に,やっぱり膨大な量の違法なコンテンツが流通しているということで,これを何とかするための方策を皆さんで議論していただきたいということです。海賊版が完全になくなるまでは何もやらないということではございません。

【土肥主査】 野間委員,どうぞ。

【野間委員】 堀内委員と同じようなことを言おうと思っていたんですけれども,書協の補足資料の2ページ目に書いてありますように,(2)の1,今年の3月の私どもの書籍の新刊は,おおむね9割近くが電子書籍になっておりますし,先ほど金子委員のお話で,海賊版対策と利用の促進は表裏一体ということがありましたけれども,海外で起きている違法行為に対して,我々も正規版をどんどんアップ(配信)していこうということで進めております。法的根拠として戦う武器を頂くと同時に,我々も正規版をどんどん投入していくという、その両面でやっていくしかないのかなと思っておりまして,引き続きそういった活動はしていきたいと思っております。

【土肥主査】 じゃあ,村上委員,最後でよろしいですか。

【村上委員】 もう結論だけで,私も(B)案を基準として,これから議論を進めるという意見に賛成であります。理由についても繰り返しません。皆さんの言われているとおりであります。
 ただ,その前に1点だけ確認させてもらいたく,渋谷委員か,若しくは事務局に答えてもらいたいと思います。海外での海賊版が出て,それを法的に訴訟でも起こして禁止することというのは,我々は第2,(B)案の出版権の拡大,若しくは電子出版権を認める場合には,それは確実に保証されるということを前提にしてよろしいでしょうかというのが,第2案で行くべきだという前提になると思いますので,いかがでしょうか。そこだけ答えてもらえればと思います。

【土肥主査】 事務局にですね。

【村上委員】 まず渋谷委員に。

【土肥主査】 渋谷委員ですか。

【村上委員】 一番専門であろうと思いますので。

【土肥主査】 じゃあ,渋谷委員,すいません。一言お願いできますか。

【渋谷委員】 たまたま楽譜出版協会から提出された青い冊子がありますが,それの20ページ以降に各国の制度の概要が紹介されています。これは,恐らく文化庁でやった調査の結果を踏まえたものだと思いますが,そこをごらんになるとおわかりだと思うんですが,各国では著作物の独占的利用権には,排他効を与えるというのが古くからの判例理論であったり,あるいは立法であったりするわけです。
 我が国の場合は,そういう法理は,これまではないわけで,立法で利用権に排他効を与えた唯一の例が出版権なんです。ですから,我が国において,電子配信について,出版権類似の権利を与えることになると,各国の裁判所では,恐らく通用する解釈,理論ではないかと思います。そういうことから,私は先ほどの発言で,一番確実なのは著作権の譲渡を受けておくことなんだけれども,次善の策としては,多少危ないかもしれないけれども,出版権の内容の拡大でも,国際的には対応できるんじゃないか。
 出版社の方々が国内だけに目を向けているのか,海外の海賊版にも目を向けているのかにもよるわけで,国内だけでしたら,そんなことを考える必要はないですが,国外も考えておられるとすれば,出版権の内容の拡大というのがよいのではないかと考えるわけであります。

【土肥主査】 本日,長時間にわたって意見を伺い,そしてかつまた,委員の間で意見交換をさせていただきました。最後のところの問題等も,恐らく今後,この小委の中で議論になってくると思いますけれども,いずれにいたしましても,前回と今回,2回にわたって関係団体の御意見を伺いまして,4つの方策の中からどういうものについて基本的な支持があるのかということも伺いました。
 我々としては,4つの方策というものは常に頭に置いておきたいと思っておりますけれども,やはりこういう場における議論というのは,当然時間には限りがあって,有限的なものにならざるを得ません。したがって,効率的な検討を進めざるを得ないと思います。
 したがいまして,どこから議論を始めるか,最後のところで,また4つの方策全体を見てと,眺めることはもちろん必要なのかもしれませんけれども,最初にどこから始めていくかということになりますと,これはやはりこれまでの前回と本日の意見,ヒアリングというものを無駄にしないためにも,やはり(B)を軸に検討を進めていかざるを得ないのではないかと思っております。
 ただ,(B)についても委員から御発言がございましたけれども,それぞれ現在ある建物の隣に別棟を建てるのか,何かを拡充するのか,アドオンなのか選択なのか,いろいろまだ検討しなければならんことが多々あるように感じました。これは,他(ほか)の委員も同様の認識であろうと思います。
 したがいまして,今後,次回からは,こうした2回のヒアリングを受けて,(B)というものをまず議論の軸として検討を進めていきたいと思います。ただ,常に(A),(C),(D)を捨てるわけではなくて,そのことは我々委員全員頭に置いておきたいと思っております。大体そういう形で今後,検討を進めていきたいと思いますけれども,いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 ありがとうございました。それでは,今後はそういう形で更に検討を進めていきたいと思っております。
 では,すいません。今日は30分も延びまして,まさに私の委員長としての責任重大なんですけれども,その点については深くお詫(わ)びさせていただきたいと思います。連絡事項がございましたら,事務局からお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 本日は長時間ありがとうございました。
 次回の出版関連小委員会でございますが,遅い時間で申し訳ございませんが6月13日(木)17:00から,文部科学省3階の講堂において開催をする予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会出版関連小委第2回を終了とさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。それから,ヒアリングのためにおいでいただいた方々,本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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