議事録

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第7回)

日時:
平成25年9月5日(木)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館 望星の間
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会出版関連小委員会中間まとめ(案)について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【土肥主査】 それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会出版関連小委員会第7回を開催いたします。
 本日はお忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばない,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございます。特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いしたいと思いますが,カメラ撮りにつきましては,事務局から配付資料の確認が終わるまでとさせていただきますので,よろしく御了承いただければと思います。
 それでは,お願いします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,配付資料の確認をいたします。
 議事次第の下半分をごらんください。まず資料1といたしまして,本小委員会の中間まとめの案をお配りさせていただいております。それから資料2といたしまして,日本書籍出版協会より御提出いただきました資料をお配りさせていただいております。
 配付資料につきましては以上でございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】 それでは,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,1,文化審議会著作権分科会出版関連小委員会中間まとめ(案)について,2,その他の2点になっております。
 具体的には,まず事務局から中間まとめ(案)について説明を頂きたいと思っております。次に,一般社団法人日本書籍出版協会より意見発表の御希望がございましたので,金原委員より御説明いただくことといたしたいと存じます。その後,中間まとめ(案)についての議論を行いたいと思っております。
 それでは,事務局から中間まとめ(案)についての説明をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 資料1に基づきまして,中間まとめ(案)について御説明させていただきます。
 資料1をごらんください。この中間まとめ(案)でございますが,これまでの小委員会における議論の結果を事務局において整理させていただいたものでございます。
 まず目次を飛ばしまして,1ページ目の「はじめに」をごらんください。ここでは本小委員会が開催されるまでの間に,出版者への権利付与等について政府において行われた検討の概略でございますとか,関係者からの様々な御提言等について記述をさせていただいております。
 その上で,2ページ目になりますけれども,文化審議会著作権分科会に本小委員会が設置され,本年5月以降,集中的に検討を進め,現時点では案でございますけれども,小委員会としての検討結果を中間的に取りまとめたこと,それから今後,関係者や一般国民に意見等を踏まえた上で結論を得ることということを記述させていただいております。
 それから,中間まとめ(案)全体を通じての用語の定義についても記述をしておりまして,具体的にはパソコン,携帯電話,専用端末等の機器を用いて読まれる電子化されたコンテンツを広く「電子書籍」というふうに書かせていただいておりまして,電子書籍を,インターネット等を通じて配信することを「電子出版」と呼ぶということとしてございます。
 次に,3ページ目をお開きください。第1章では,出版,電子出版を巡る状況といたしまして,出版に係る現状や電子出版に係る現状について,さらには海賊版の被害実態について,これまで日本書籍出版協会や電子出版制作・流通協議会により御発表いただきました資料を基に整理をさせていただいております。しかしながら,現状についての記述でございますので,内容の説明は割愛させていただければと思います。
 10ページに飛んでいただければと思います。10ページから12ページにかけての第2章でございますが,10ページの脚注20にございますように,過去に文化庁が実施いたしました委託調査研究の内容を参考に,諸外国における出版者の権利等について整理をさせていただいております。こちらにつきましても具体的な内容の説明は割愛させていただければと思います。
 次に,13ページ目をお開きください。第3章では,出版者への権利付与等についての方策ということでございまして,特に小委員会の第1回と第2回において議論した内容を記述してございます。
 まず13ページ目の第1節,問題の所在におきましては,近年,デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,電子書籍専用端末等の普及が電子書籍市場の形成を後押ししていると考えられる一方,出版物が違法に複製され,インターネット上にアップロードされるような侵害事例も出ていること,それから,こうした状況が出版者の役割そのものに変化を与えているということを記述しております。
 具体的には,電子書籍の登場・普及によって,出版者自らが電子書籍を制作し配信を行う場合だけでなく,出版者が第三者に電子書籍を配信させるために主体的に契約交渉を行う必要性も生じているということ,またインターネット上の海賊版に対して,出版者は創作活動に専念したい著作者に代わって主体的に海賊版への権利行使を担う必要性も生じていることということを記述させていただいております。
 そして,下から2段落目でございますが,現行の出版権制度は紙媒体の出版物を出版することを対象とし,電子書籍を想定しておらず,電子出版に対応した制度となっていないことから,現行の出版権制度では出版者が電子出版を行うための独占的な権利を得て,出版者が自ら権利者として主体的に電子書籍配信事業者等と電子出版に係る契約交渉を行ったり,インターネット上への配信行為に対し権利行使したりすることはできないこととなっているということを記述しております。
 そして最後の段落では,我が国における電子書籍市場の健全な発展を確保・促進するため,小委員会では電子書籍の流通と利用の円滑化の観点,及び効果的な海賊版対策の観点から,出版者への権利付与等について検討を行ったということを書かせていただいております。
 14ページ目をごらんください。第2節,出版者への権利付与等として考えられる方策につきましては,本小委員会ではこの点線の枠で囲っております(A)から(D)の4つの方策について検討を行ったところでございます。14ページと15ページそれぞれの方策の概略をまとめさせていただいておりますが,その詳細な説明は省略させていただきます。
 15ページ目をお開きください。第3節,関係団体ヒアリングでは,第1回と第2回の本小委員会において,計15の関係団体に対しヒアリングを実施した内容を記述させていただいております。15ページ,16ページでは,それぞれの方策について各団体から示された意見について整理させていただいておりますが,こちらについてもその詳細な説明を省略させていただきまして,17ページ目をお開きいただければと思います。
 17ページの第4節,小委員会における検討ということで,関係団体ヒアリングの結果,(A)から(D)の4つの方策のうち,(B)の電子書籍に対応した出版権の整備の方策について検討を求める意見が多かったこと,これに加えまして,小委員会における検討におきましても,同様に電子書籍に対応した出版権の整備の方策について議論を進めるべきとの意見が多数,示されましたことから,電子書籍に対応した出版権の整備の方策を軸に,検討を進めていくこととされたというところでございます。
 それで,18ページ以降の第4章におきましては,電子書籍に対応した出版権の整備について,本小委員会における議論の結果を整理させていただいているところでございます。18ページ目をごらんください。まず第1節,序としてございますが,3段落目,ごらんいただければと思います。小委員会では,現行の出版権を前提に,紙の書籍と電子書籍との相違点を踏まえて,電子書籍に対応した出版権の主体・客体や権利の内容等々につきまして検討を行ったこと,またいわゆる「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の是非ということについても検討を行ったということを記述しております。
 そして,なお最後の段落になりますけれども,電子書籍と紙媒体の出版物の違いや,電子出版の特性等を踏まえて検討することが必要であると考えるが,特段,両者に違いがない部分については,現行の出版権と同様に整理することが適当であると考える旨,記述をしてございます。
 19ページ目をごらんください。19ページ以降では,この電子書籍に対応した出版権を整備するに当たって,法的論点と考えられるものについて議論の状況を整理させていただいているところでございます。
 まず第2節,権利の主体・客体でございますが,1の現行法の説明については省略させていただきますが,2の(1)権利の主体のところをごらんください。小委員会におきましては,電子書籍の流通を増やす努力をするものや海賊版対策を行うもの,著作者の意向を形にして流通させるものが権利の主体となるべきとの意見が示された一方,現行の出版権を有している出版者に主体を限るべきとの意見も示されておりますが,この意見に対しましては,反対の意見が多数,示されたということを記述してございます。
 このため,電子書籍に対応した出版権の主体といたしましては,現行の出版権を有している出版者に限られず,著作物を電子書籍として電子出版することを引き受ける者であれば権利の主体となれるようにすることが適当であるということを書かせていただいております。
 それから,20ページになります。(2)の「出版者の権利のあり方に関する提言」における一体的設定の是非というふうに書かせていただいておりますが,「出版者の権利のあり方に関する提言」で,こちらでは現行の出版権が原則として電子出版に及ぶように改正し,別途,特約により紙媒体での出版のみ,又は電子出版のみという出版権の設定も可能とする旨の提言がなされていたところでございます。これにつきましては,出版者の立場から,紙媒体の出版物と電子書籍のシームレスな投資を想定した紙媒体の出版と電子出版を一体化した権利が制度上も保障されることが必要であるという意見が示されていたことを記述させていただいております。
 一方,著作者の立場からは,紙媒体の出版と電子出版について,必要な分だけシンプルに契約を行いたいと考えていることや,著作者の十分な認識のないまま一方的に電子出版が含まれてしまうということが危惧(きぐ)されることから,抵抗感が強い旨の意見が示されております。また有識者からも,契約意識の高い当事者間,そういうような場合でない場合には,権利の範囲は重要になるため,それぞれの方法のうちどちらが当事者の通常の意思に合致しているかという観点が重要であるとする意見が示されていることを記述させていただいております。
 そして,紙媒体での出版と電子出版は一体化した権利であっても,特約により紙媒体での出版のみ,又は電子出版のみという出版権の設定を可能とするものであることや,両方設定した場合に,いずれか一方の義務違反が生じた際の消滅請求の範囲が,義務違反に係る権利のみを消滅請求できると考えればよいとの意見が示されていることに照らせば,現行の出版権を電子出版にも拡張する方法と,現行の出版権とは別に,電子書籍を対象とした権利を創設する方法,これらに大きな差はなく,契約の仕方の違いでしかないのではないかといった意見も示されていたことを記述させていただいております。
 21ページになりますけれども,更に,どのような契約形態があり得るのかということも併せて考えますと,現行法の出版権を電子出版に拡張するという方法と,別の権利として創設する方法のいずれの方法をとる場合でも,紙媒体での出版と電子出版を行う場合には,出版者と著作権者との契約により,双方の権利を一体的に設定することが可能ということ,また出版者が多大な労力と資本を投下し,投資し,著作者と密接な関係の下で創作される著作物については,著作者と出版者との信頼関係に基づき,紙媒体での出版と電子出版に係る権利がおのずと同一の出版者に一体的に設定されていくことが想定されるということを記述させていただいております。
 次に,3の客体の在り方についてでございます。この2段落目をごらんいただければと思います。小委員会の中では,いわゆるリッチコンテンツなどに対象を広げるかどうかという議論がございましたけれども,この点につきましては,リッチコンテンツなどに対象を広げていくと議論の収拾がつかなくなることなどから,リッチコンテンツを対象に含めることに消極的な意見が示され,結局,客体については現行の出版権で対象となっている文書又は図画に相当するものを対象とすることが適当であると考えるというように記述をしてございます。
 なお,CD-ROMなどのパッケージ型のものにつきましては,インターネットで送信されるわけではなく,パッケージとして頒布されるものであるため,現行の出版権に含めるよう整理することが適当であるという意見が示されていることを記述してございます。
 22ページ目をごらんください。次は第3節,権利の内容でございますが,2のところでございます。電子書籍の作成等に必要な範囲での複製権に加えまして,自動公衆送信権なのか公衆送信権なのか,又は公衆送信権に加えて公衆伝達権を専有させるべきかという3つの意見があったわけでございますが,自動公衆送信権では海賊版をメールに添付して一斉送信するような場合に対応できなくなってしまうのではないかという御意見や,公衆伝達権については電子出版と呼ばれる行為とは異なるのではないかという意見が示されておりまして,結局,複製権及び公衆送信権が適当であると考えると記述をしてございます。
 また,脚注の43にございますように,この公衆送信権のうち,放送・有線放送を除くとするのが適当であるという意見もございましたことを併せて書かせていただいております。
 次に,3,「特定の版面」に対象を限定した権利の付与の是非についてでございます。この点につきましては,小委員会においても時間をかけて御議論いただいたところでございますが,まず(1)の問題の所在としては,1枚おめくりいただきまして,「特定の版面」の権利とは,当事者の特約により,「特定の版面」に対象を限定した上で,その複写利用などにも権利を拡張し,企業内複製やイントラネットでの利用許諾などに対応するものということが説明されております。
 更に小委員会では,金子委員より「特定の版面」は紙だけではなく,電子的なフォーマットも含むこと,また非著作物や保護期間が満了した著作物について権利を拡張するものではないこと,更に版面を作成していない出版者に対しても権利の設定が可能であることが説明されておりましたので,この点,記述をさせていただいております。
 次に,(2)小委員会における検討でございますが,ここではこれまでの議論を整理させていただきまして,23ページ目の〔1〕では,「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の是非につきまして,そして24ページの下段では,〔2〕といたしまして,出版物,特に雑誌をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策という2つに分けて議論を整理させていただいております。
 まず1,「特定の版面」に対象を限定した権利の法制化の是非ということについてでございますが,企業内複製などの利用許諾などに対応するという趣旨に対して反対意見が示されてございます。具体的には,23ページ中ほどの2つポツが並んでいるところでございますけれども,日本複製権センターでは,著作者単位で行っていた管理から出版物や「特定の版面」ごとの管理に変更しなければならず,複製権センターの運営業務に支障を来す恐れがあるというような御意見,また,企業内複製への対応という目的は,本来の改正趣旨と整合しないと考えられるといった御意見,これらが示されておりましたので,記述をさせていただいております。
 これに対しまして,日本書籍出版協会からは,24ページにかかりますけれども,出版界としては企業内複製を含む出版物の複製利用について,現行のシステムに影響を及ぼす制度設計は望まないという旨の意見が示されていたところでございます。また,法制化の趣旨という点とは別に,法制化すること自体につきましても反対意見が示されてございます。それが24ページ目で並べているところでございますけれども,具体的には,漫画家などの原稿と版面の区別が困難であること,それからリフロー型のような電子書籍の場合に,版面を特定することが困難であることと,そして少しでも版面が変われば権利行使できず,海賊版対策として実効性に疑問があるということ,それから最後のポツですが,電子書籍に対応した出版権と,それと同一の版面について,版面の権利を有する者が別々に存在し得るが,両者の優劣を第三者対抗要件,これは登録の先後で決するとすれば,電子書籍配信ビジネスをする者としては,対抗要件の具備を出版者に要求することとなると,そのことは現実的ではないといったようなことを記述させていただいております。
 これらを踏まえまして,「以上のとおり」と書かせていただいておりますが,小委員会での議論では頒布目的ではない利用対応に権利を及ぼすべきではないとの意見で収れんをし,加えて,「特定の版面」の権利の法制化に反対する意見が多勢を占め,日本書籍出版協会からも海賊版対策が可能な方策が講じられるならば,「特定の版面」に対象を限定した権利にはこだわらないとの意見が表明された結果,この権利の法制化に向けた合意形成には至らなかったということを記述させていただいております。
 次に,2でございますが,「特定の版面」の権利についての議論をする過程におきまして,日本書籍出版協会から示されたものがございます。25ページ目をお開きください。日本書籍出版協会からは,雑誌の版面をデッドコピーし,それをアップロードするという侵害に対応する必要があるということ,それから現行の出版権制度が将来発行されるあらゆる形態の紙媒体での出版についても,その出版権限を包括的に出版者に付与するものであると考えられるが,雑誌掲載時に将来的な出版利用についても著作者と出版者との間で包括的に合意をする場合は少数であるため,雑誌に出版権設定が行われた事例がないということについて説明がされておりまして,そのことを記述させていただいております。
 こうした意見を踏まえまして,小委員会では出版物,特に雑誌をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策を講じるための方法について検討することとし,(1)では,電子書籍に対応した出版権による対応,(2)はインターネット上の違法配信を紙の出版物に係る出版権の侵害とみなす規定の創設ということをすることによる対応について議論を行ったということを記述させていただいております。
 ここで脚注の46もごらんいただきたいのですけれども,この問題意識に対しましては,「特定の版面」の権利についても一定の効果が期待できる旨の御意見もございましたけれども,この「特定の版面」に対象を限定した権利というものについては,法制化に反対する意見が多勢を占めたということは,先ほど1のところで申し上げたとおりでございます。
 本文に戻りますけれども,(1)の電子書籍に対応した出版権による対応というものにつきましては,雑誌に出版権設定が行われた事例がないという説明がされていることから,雑誌を構成する著作物について,電子書籍に対応した出版権を設定することが可能かどうかということが問題となるところでございます。この点につきまして,事務局で小委員会の議論に補足させていただいた部分もございますけれども,まず雑誌に出版権が設定された事例がないということを考えると,現行の出版権制度の創設時に,雑誌を構成する著作物に出版権を設定することは想定されていたとは言い難いところもあり,また実務界の認識であったとも考えられるが,他方では,現行の出版権制度において,雑誌を構成する著作物に出版権を設定することは,必ずしも明確に排除されていないとも考えられると記述をさせていただきました。
 そして,近時において,雑誌を構成する著作物に関する権利侵害事例が増大していることに鑑(かんが)みると,雑誌に係る出版者の利益を確保する方策を講じる必要性があり,出版権制度において対応することが妥当であると考え,したがって,雑誌を構成する著作物についても現行の出版権を設定できるようにし,電子書籍に対応した出版権においても同様に設定できるようにすることが適当であると考えると記述をさせていただいたところでございます。
 26ページ目をごらんください。小委員会におきましては,現行の出版権においても出版権を設定する際の設定行為の中身として,出版権の効力を雑誌に媒体を限定したりすることも可能であると考えられるということ,それから,この意見に対しましては,物権の特定の範囲を当事者に委(ゆだ)ねた場合,権利の重複が生じ,登録との関係で混乱が生じるおそれがあることから,慎重な検討が必要であるという旨の意見,それから出版権の効力として,雑誌限りの出版権を設定できるか否かは別としても,契約自由の原則から,当事者間の契約(債権的合意)により,出版態様を雑誌に限定することは,少なくとも認められることといったような意見が示されておりました。
 以上を踏まえまして,日本書籍出版協会から提起された問題点を解消する具体的な方策としては,雑誌掲載時に出版権設定契約を締結する際に,雑誌の発行期間等に合わせた短期間の存続期間を設定したり,当事者間の契約(債権的合意)により,出版態様を雑誌に限定したりすることによる対応が考えられること,また雑誌の発行後に他(ほか)の出版者から単行本などで発行が行われる場合についても,雑誌についての存続期間を短期間とすることで出版権を終了させ,新たに別の出版者との設定契約を締結したり,出版権を存続させたまま,当該権利の設定を受けたものから再許諾したりすることによる対応が考えられることと,そしてこれらのことは,電子書籍に対応した出版権についても同様であると考えられ,これらを組み合わせる対応によって,インターネット上の違法配信,海賊版対策を効果的に行うことが考えられるということを記述してございます。
 次に(2)のみなし侵害規定についてでございますけれども,27ページ目をお開きください。これにつきましては,著作権法上のみなし侵害規定は,一般に支分権としては規定できないことを規定しているものであり,既に著作権侵害とされている利用態様を,更に出版権侵害とみなすことは,みなし侵害というものを大きく変えてしまうこととなり,法制的にハードルが高いのではないかという意見が示されたことを記述しております。
 最後に,ここでのまとめをしてございますけれども,出版物,特に雑誌をデッドコピーしたネット上の海賊版対策としては,最後の行になりますけれども,(1)の電子書籍に対応した出版権の創設により対応する方向で進めることが適当であると考えるというように記述をしてございます。
 28ページ目をごらんください。第4節,出版権者による再許諾という論点についてでございます。電子書籍の流通は,様々な形態で行われており,電子書籍に対応した出版権の設定を受けた者は,電子書籍の配信について第三者に許諾することを認めることが適当であると考えるということにしてございます。
 ただし,著作権者には,著作権者の意に反して再許諾されることに不安があるため,特許法における専用実施権の規定を参考に,著作権者の承諾を得た場合に限り再許諾可とするのがよいのではないかといった意見が示されており,このような著作権者の関与を認めることが適当であると記述をしてございます。
 また,最後の段落では,紙の出版物についても同様に,著作権者の承諾を得た場合には出版権者が第三者に許諾をすることが可能とすることが適当であるということを記述してございます。
 29ページをお開きください。第5節,電子出版の義務・消滅請求についてでございます。まずここも現行法については省略させていただきまして,2の義務についてでございますが,現行の出版権と同様に,電子書籍に対応した出版権の場合についても,権利を付与する場合にはそれに対応した義務を負うことが適当であると考え,例えば一定期間内に電子出版する義務や,慣行に従い継続して電子出版する義務など,電子書籍に対応した出版権の趣旨や性質を踏まえた義務を出版者に課すことが適当であると考えると記述をしております。
 また,3の消滅請求についてでございますが,現行の出版権と同様に,義務違反の場合,又は著作物の内容が著作者の確信に適合しなくなった場合に,消滅請求を認めることが適当であると考えると記述をしております。
 30ページをごらんください。第6節,その他では,存続期間,制限規定の在り方,それから権利関係の明確性の確保について記述をしております。まず1の存続期間でございますけれども,現行の出版権と同様に,原則として,設定行為で定めるところによるものとし,設定行為に定めがないときは,最初の電子出版後,一定期間を経過した日に消滅するものとすることが適当であると考えること,そして2の制限規定につきましては,電子書籍に対応した出版権の権利の内容に合わせて制限規定を整備することが適当であると考えるということを記述しております。
 それから,3の権利関係の明確性の確保についてでございますが,電子書籍に対応した出版権についても,現行の出版権と同様に登録制度を整備することが適当であると考えるとした上で,30ページと31ページにかけまして,登録しやすいような環境を整備すること等々につきまして,要望がございましたので,その記述をさせていただいております。
 そして最後ですけれども,32ページ目をお開きください。「おわりに」といたしまして,ただいま申し上げてきましたようなことをまとめて記述させていただいております。その内容は重複いたしますので,省略いたしますが,それに加えまして,一番下の段落でございますが,今般の取りまとめを踏まえ,電子書籍に対応した出版権を創設することにより,出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものとなり,出版者が自ら独占的に電子書籍を制作・配信するだけでなく,権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり,インターネット上の海賊版に対し権利行使することができるようになると考えると記述しております。
 このことにより,著作者の利益の保護の下,出版者の権利と著作者の権利の調和が図られ,電子書籍の普及が促進される結果,ユーザーにとっても利用しやすい健全な電子書籍市場の形成が期待され,ひいてはこれまでの紙媒体の出版と相まって,我が国の多様な出版文化が更に進展し,活力ある社会の実現に寄与するものと考えるということも記述させていただきました。
 以上,長くなりましたけれども,中間まとめ(案)の内容につきまして説明させていただきました。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 次に,意見発表の御希望がございました一般社団法人日本書籍出版協会より御意見の御説明をお願いいたします。
 それでは,金原委員,よろしくお願いいたします。

【金原委員】 ありがとうございます。日本書籍出版協会の金原でございます。
 それでは,若干,時間を頂戴(ちょうだい)して,資料2について御説明申し上げます。まず資料2としては2枚付いておりますが,最初の文字部分について御説明申し上げます。
 この文書の冒頭2行目から4行目にかけてアンダーラインが引いてありますが,ここに,「当小委員会において早急なとりまとめがなされ,その結果に基づいた立法が行われることに資するよう,以下のとおり意見を述べます」とあります。これが本書の大きなポイントでありまして,その御理解を頂きたいということであります。
 ちょっと話がずれるかもしれませんが,現在,超党派の国会議員で構成している電子書籍と出版文化の振興に関する議員連盟というのがありますが,そこではこの小委員会と並行して,この出版者の権利問題を検討しているというふうに聞いております。しかし書協としては,その検討は飽くまでも現状の問題点の分析であり,法制化はもちろん,具体的な対応策の立案・実行にまで及んだものではないというふうに理解をしております。
 国会議員の先生方に出版界が現在,抱えております問題について御理解を頂いて,真摯に検討していただいているということは出版界としては大変有り難く,感謝にたえない次第ではありますが,しかし一方では,この問題について現在,この小委員会で検討が加えられているわけでありまして,書籍協会としてはあくまでもこの小委員会における関係者各位の御意見と御要望を斟酌(しんしゃく)して,様々な角度から検討を加えて結論を得るべきであると思っております。したがって,冒頭,述べましたとおり,書籍協会としてはこの小委員会において早期に結論のまとめをお願いして,それによる法制化を目指したいと考えております。
 一部に,この問題について議員立法を予定しているとか,あるいは計画中であるという話も聞いておりますけれども,書籍協会としては,そのようなことを具体的にお願いしたことはございません。またそのような意向も現在,全く持っておりません。したがって,当小委員会委員におかれましては,その旨,御理解いただき,この小委員会における結論をお願いしたいという立場でございます。
 それから,制度設計についてですが,ここも若干,補足させていただきます。文書には,「出版権規定自体の内容を電子出版も含むものに拡大すべきであると考えます」とありますが,この趣旨としては,紙と電子が一体となった出版権をデフォルトとして創設することが望ましいと,そういうことであります。当然のことながら,電子書籍については独占出版の契約を交わしたくないという著作者の方も存在することは事実でありますし,承知しておりますので,仮に一体としての出版権が認められた場合であっても,それは特約によって,紙と電子を可分とすることができるということの必要性があると思います。
 しかし紙と電子を分けた場合に,紙の出版者に電子の出版権が設定されない場合も起こり得るわけでありまして,文書の2ページ目に海賊版対策のことが記載してありますが,そのような状態である場合は電子海賊版には対抗できないということになりまして,そういう問題は依然として残ってしまうということになります。この問題の存在というものは,この中間まとめでも,今ずっと御説明いただいたものを追っていく限りでは,必ずしも明確ではないと思いますので,是非今後の検討課題として残していただきたいと思います。
 また実際に著作者と契約を取り交わすという場面においても,その契約,出版権の設定についての契約の内容に電子が含まれているかどうかということを明示的に出版者から著作者にお示しして,著作者の意向に反した契約が締結されないように,契約締結に関する適切なガイドラインというものを作成して,その実施に向けて著作者団体とのお話合いを継続していく,そういう必要があると考えております。
 以上がこの資料2の文字部分についての補足説明であります。
 2枚目の表になっているものについては,これは堀内委員の方に説明をお願いしたいと思います。

【堀内委員】 それでは,資料2の2枚目の表について補足説明をさせていただきます。
 これは日本電子書籍出版社協会加盟出版社40社について,9月に調べたものでございます。この表は,電子書籍8万点弱における自社コンテンツの割合を調査したものです。ごらんのとおり電子書籍の97.2%が自社で紙で発行したものをベースにしております。そのほか,電子書籍書きおろし作品を含めると,99.7%が自社コンテンツ。いわば出版を引き受けた作品ということになります。
 このように大半の作品について,その企画段階から紙及び電子で読者にお届けするまでを現実には出版者が担っております。大半が紙・電子一体での契約がなされております。新たな制度設計についても,この実態を反映するよう御配慮いただきたいと思います。
 この新制度の予定する主体は,現実に出版を引き受けている者であるべきで,実質的にはコンテンツを生み出すことに関与しない者が容易に出版権設定できるような制度は,出版という産業を空洞化・弱体化させることになると思います。本委員会の議論で,海賊版対策が必要であるという皆様のコンセンサスは得られていると認識しておりますが,本委員会の議論の延長線上で考えれば,紙と電子の両方を出版者にお預けいただかなければ,出版者は実効性のある海賊版対策はできません。是非このことも御考慮いただいた上で,海賊版対策にも有効な制度改革,制度設計をお願いしたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,審議を行いたいと思います。本日の審議は,中間まとめ(案)を幾つかのまとまりに分けて,そのまとまりごとに議論を進めたいと思っております。具体的には,まず「はじめに」から,第3章出版者への権利付与等についての方策,そこまでを最初に議論いただきたいと思います。次いで,第4章に入りまして,電子書籍に対応した出版権の整備の冒頭から,第2節権利の主体・客体までについての議論を頂きたいと思っています。3番目に,第3節権利の内容についての議論を頂きたいと思っております。それから最後に第4節,出版権者による再許諾以降の残りの部分についての議論を頂きたいと思っております。
 時間も限られておりますことから,本小委員会としてのまとめに向け,できるだけ効率的な議論を進めていきたいと思っておりますので,委員の皆さん方におかれましては是非よろしく御協力をお願いしたいと存じます。
 それでは,「はじめに」から第3章,1ページから17ページですけれども,出版者への権利の付与等についての方策まで議論を頂きたいと思います。どうぞ,1ページから17ページまでのところで御意見ございましたら,お願いをいたします。
 ここまでは特にございませんか。ここは基本的に事実が並べてあるわけでございますから,事実の記載どおりというふうに皆様,お認めいただいたものと認識いたしました。
 それでは,次の2番目でございますけれども,いよいよ第4章でございます。電子書籍に対応した出版権の整備の冒頭から,第2節の権利の主体・客体まで,具体的には18ページから21ページまで,4ページ分ですけれども,この部分について御意見をお願いします。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 それでは,今の御指定のある部分のうちの,今は2番目のブロックだと思いますけれども,この報告書の20ページの(2)とあるところで,出版者の権利のあり方に関する提言における一体的設定の是非という,ここの部分について意見を申し上げたいと思っております。
 まず意見に入る前に,私,法律家として,これに関与していまして,非常に議論が混乱しやすい,論点が複雑なところですので,まずその議論を整序すべしというところから始めたいと思います。
 この一体的設定の是非というのは,この全体の中で非常に大きな論点でありますが,ここの点については,私,今までここでの議論を拝聴しておりまして,大きな2つの論点が大きく混線して,議論が少なからず混乱してきたのではないかと思っておりますので,まずその点から申し述べたいと思います。
 できるだけストレートに,分かりやすく問題設定いたしますと,物権的な理論のレベルの話と,それから契約上の工夫のレベルの話が,この一体性というところで非常に議論が混在しておりますが,法的には全く別のレベルであります。この点では,一体性といっても,契約的な話として一体性を言っているのか,物権的な話として一体性を言っているのかで全く法的内容が違いますので,ここはまずきちんと整理する必要があるのではないかということで,以下,申し述べたいと思います。
 それで,結論的には,今,申し上げました物権レベル,すなわち,債権的な出版契約とは厳密に区別された意味での物権レベルにおいては,この紙出版権と,それから電子出版権というのは法的には全く別のものでありますので,物権的レベルでそれを一体化するのは妥当ではないということであります。ただ,ニーズをお聞きしておりますと,実は物権を一体化してほしいというよりは,最終的に契約としてきちんと一体的な処理をしてほしいと。私は拝聴しておりますと,ニーズはむしろそちらの方にあるのではないかというように思われます。ただこれら2つの問題を区別せずに混同してしまうと,みんなにとって不幸な結果になりますので,そこのところは,きちんと物権レベルか契約の工夫のレベルかというところは分けて議論を行うべきではないかと思っております。
 その上で,少し後の論点にも関(かか)わってまいりますけれども,少し話がややこしくて,契約上の工夫と物権とに,今,分けたわけですけど,物権の方の話といたしましても,前回,意見を申し上げたことにも関係してきますけど,要は,少し言葉は分かりにくいかもしれませんが,物権的単位というか,物権としての外枠の話と,その外枠の中で債権的契約で一定のものを限定,除外していくという,こういうような形で物権と債権がまた複雑な形で絡み合っておりますので,このあたりはきちんと整理しないと議論が混乱していくのではないかと思っております。
 今のが議論の整理整序をすべしというところでありますけれども,その上で,飽くまで契約レベルの話ではなくて,物権レベルとして,紙・電子を一体化するという御見解かどうかも分からないですけど,仮にそうであるとすれば,これは,私は理論面からも実務面からも失当であると考えております。物権として合体してしまうというのであれば。
 1点は理論面でありますが,ここの議論の中でも次第に整理されたかと思いますが,複製を基調とします紙出版権と,それから送信というものを基調とする電子出版権というのは,元々,複製と送信というのは著作権法上も明らかに位置付けが違うのであって,著作権法体系上,全く異なる2つの体系であります。このように,元々,体系が異なるのであれば,別個に問題設定した上で,あとは契約でどう扱うかという問題になってくるかと思いますので,最初から物権としてこれを混ぜてしまうというのは乱暴な議論というか,著作権法上,あり得ないのではないかと研究者として思っております。
 この点は,権利として見ましても,複製というのはもちろん複製であって,新たな複製ファイルをもう一つ作ることでありますけど,それ以外に,送信というのは,レベル的にはむしろ譲渡に当たるようなその次の段階のレベルでありまして,このように,紙出版権と電子出版権とでは,それぞれ,その着目しているレベルが,そもそも,先ほどの支分権が違うというところに深く関(かか)わっておりますけど,先ほどのように本質的に違っております。その上,社会的実態としても,少なくとも現状としては,やはり紙出版と電子出版というのは非常に社会的実態としても大きく異なっております。以上のとおり,物権レベルで,法的性質が大きく異なり,社会的実態も大きく異なるようなものを一括してしまうというのは不適切であるというのが1点目の理論的な理由でございます。
 それから2番目が,これはもちろんこういう問題ですので,理論面だけではなくて実務面が重要であることは当然ですけれども,実務面からも,これも前に申し上げましたとおり,これは後の契約のところにもかかわってきますけれども,契約以前に,物権として一体としてしまえば,1つずつ紙と電子とを最初から2つ設定する意思のある著作者にとっては余り関係ないかもしれませんけど,紙しか出版する意思がない人や電子しか出版する意思がない人にとっても,その2つを合わせたものの出版しかできないということになってきますので,この点,物権で,少し後の契約の方にも若干関係しなくもないのですけれども,これは前回,お話ししたところを,今回の枠組みで説明し直しているだけですけど,デフォルトルールというと,何かきれいな響きがあって分かりにくいのですけど,実は,実務的には非常に深刻な効果があります。これは要するに反対合意をしない限りは,要するに出発点が紙と電子一体でありますので,反対合意をして,紙は外す,電子は外すという合意をしない限りは結局,一方しか設定する意思のない著者にとっても,反対合意をしない限りは原則,両方が設定されるということとなります。
 これは別の言い方をすれば,要するにデフォルトルールというのは原則と例外が逆転していますので,実務的にそのような深刻な効果を及ぼすというのも当然と言えば当然ではないかと思っております。それともう一つ,これは前回も申し上げましたが,何かそれは原則,例外が逆転しているので,説明の仕方だけで,さほど実務的なインパクトはないのではないかという気をお持ちかもしれませんが,私は一法律家としては,実は前回も申し上げましたとおり,挙証責任を転換したら訴訟は結果が逆転するということが多いというのは周知の事実なので,それと同じように,原則,例外を逆転させるというのは,特に微妙なケースについては,はっきりと契約マインドがあって,両方を設定する,一方を設定するとはっきりした合意をしている場合であれば,恐らくこのデフォルトルールの出番はなくて,デフォルトルールの出番が実務上,出てくるのは,かなり曖昧(あいまい)な形でしか契約がなされていない場合にどちらにするかということであります。そのような場合に,勝つか負けるかが尖鋭(せんえい)に争われるような事件で逆転するということでありますし,これも法律家として言うのも何ですけど,大体,健康でぴんぴんした人が病院に行かないのと同じように,はっきり契約で決めたようなものは裁判にならなくて,今のような曖昧(あいまい)な形で残っているようなものが大体,裁判に行くので,そういうところで,法律家には目にしやすいものですけど,そのような曖昧(あいまい)な形のものがデフォルトルールの実際の出番となってきます。そのような意味では,実はこれは,先ほど言ったように理論的に重要なだけではなくて,実務的にも非常に深刻な影響があるということは念頭に置いた上で,考えていく必要があるのではないかと思っております。 長くなりましたので,この論点についてはとりあえず以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか,御意見は。松田委員。

【松田委員】 松田でございます。私も紙ベースの出版と電子ベースの出版の法的な視点をとらえれば,公衆に著作物を提供する方法の違いであります。これは紙の場合には公衆への譲渡,それから電子の場合には公衆送信ないしは自動公衆送信,これは決め方の問題ですが,ということでありますので,これを一まとめにして,1つの権利として設定するということについては,どうかなと思っておりますので,大渕委員と同じ意見を持っています。
 デフォルトの問題でございますけれども,そうなりますと,もし分ければ,紙ベースの出版契約を締結する出版者は,この紙だけの契約を結んだとすれば,当然のことながら電子出版は入らないというデフォルトルールが一般に,デフォルトルールにまさになるだろうと,こういうふうに思われます。
 しかし出版者はもう少し努力をすべきなのであります。何かといったら,出版者が著作物を作るところから出すところまで管理していて,プロデュースしていることの地位を高め,そしてそれを著作者にも理解していただいて,そして今のような構成を取ったとしても,社会的には2つの権利を一体として契約書を作り上げ,その利害を進めていくということが考えられるわけであります。
 そういう状態になったときに,社会的には出版者が紙と電子の両方の出版を取りまとめているという社会状況が生まれる。多分,こういうものが,国民といいますか読者といいますか,著者も含めてですが,そういうものを出版者に期待しているのではないかと,こういうふうに思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか。瀬尾委員,お願いします。

【瀬尾委員】 今,いろいろな御意見,伺っていて,実はここの中間まとめまで来て,この小委員会で精力的にいろんな議論をフェアに行ってきた結果として,こういう中間まとめにたどり着けたというのは,私も参加させていただいている委員として大変うれしく思っております。
 ただ,今の問題が非常に象徴的で,この2つは信頼関係があれば同一に運用ができる,先ほど大渕委員のおっしゃったような,法的には全然,別なんだけれども,逆にこれをあえて1つにしなければ実務上,動かないというもし現実があるとしたら,著者と出版者の信頼関係が現在,非常に大きく揺らいでいるのではないかという大変大きな危惧(きぐ)を持ちます。
 またこの1年間,いろいろな議論の中で,出版者と,そこで出版をする著作者は,協力して,そしてお互いで1つの文化を作っているわけだから,そこで遅疑がどんどん広がって,そしてお互いを契約の上で信用できなくなって,取り合ってしまうような体制になっているとしたら,それが一番の問題だと私は思います。
 今,法的な建て付けとしては,2つを別にする,また1つにする,これは論議があると思いますが,私はこの前,それを2つにするべきではないかと申し上げましたし,今もそう思っております。ただこれは本当に一生懸命,担当者さんがやられて,著者も一生懸命,書き,そして最終的に出版者から本になったということにお互いがリスペクトがあれば,当然1つになると。1つの契約として両方の権利を運用できるというふうに私は信じています。
 ただこれを,いやいや,もしかしたら紙だけうちで出して苦労したけども,電子出版権はほかに持っていかれてしまうのではないかと,著者が分からないことを言ってほかのところにあげちゃうんじゃないかと,そういう遅疑があるとしたら,それは著者も頑張ってお互いの信頼関係を作るように努力しなければいけないと思います。
 ですからこの2つの権利の在り方によって,出版権を1つとするのか2つとするのかありますけれども,私は著作者の側(がわ)として,この問題は分けることというのが法的に正しいとしても,信頼関係があればきちんとなるだろうし,もしないとしたら,これからどうやってもう一度,著作者と出版者がそういうことを信頼できる関係になるかの方に何か考えていかなきゃいけないんじゃないかなと。例えば契約についても,お互いが歩み寄れる何らかのルール作りをするとか,若しくは何らかの処理機関を考えるとか,そういうことを一緒にやっていった方が,そこは幸せな世界になるんじゃないかと思います。
 今回の議論のまとめの中で,いろんな問題もございますけれども,ここのまとめまで来たときの最大の問題は,その出版さんと,それからほかのいろいろなところにもし溝ができてしまったとしたら,それを修復すること,また私は修復していくべきだと思うし,したいと思います。ですので,具体的なこの書きぶりとかの内容とは関係ありませんけれども,一言申し上げておきたくて,お話をしました。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ。

【堀内委員】 今の瀬尾さんと松田先生からもございましたけども,先ほどの資料でお示ししたのは,出版社の一部,協会に加盟して電子書籍に積極的に取り組んでいる40社の例ですけども,まさに著者の方々とお話をして,御理解を頂いて,あれだけ高い率で最初に作ったコンテンツを電子書籍までお任せいただくと,こういうことを今,努力しながら,実際にこれだけたくさんの御理解を頂いているということをお話しした次第です。またこれからも当然そういうことを続けていかなければいけないと,こういうように思っておりますし,またいろんな,一体であるか別々であるかの御議論,専門的な御議論はあると思うんですけれども,我々の要望は要望で,先ほどお話ししましたけれども,いずれにしても著者の方々の方で何か知らない間に契約書にサインさせられちゃうんじゃないかとか,いろんな,このまとめにも書いてありましたけれども,それについては制度の問題と別に,著者と出版者の問題として,出版業界全体で,そういうことがあるのであれば取り組んでいかなければいけないと思いますし,契約するときにきちっとそういうことを御説明し,明示して,あるいは業界全体で著者団体と話し合いながら,一定のガイドラインを作るなど,前向きに取り組んでいく所存です。
 現在,それでも何か問題が起きたときは,第三者機関というか仲裁機関というか,ADRというんですか,こういうものを設けたらどうかというようなことも,出版業界の中で検討しているということも,申し上げておきます。

【土肥主査】 どうもありがとうございます。
 ほかに。河村委員,どうぞ。

【河村委員】 今日お出しいただいた日本書籍出版協会さんの要望の表のところですけれども,ここに書かれていることは理解したんですが,利用者から見て知りたいことというのはここにないことも含まれておりまして,ここには電子書籍のうち,紙の出版物も同時に出版している,つまり紙の出版物を一生懸命作り上げて,電子出版にしたものというのは,電子出版のうちどれだけあるかと書いてあるんですが,出版社さんが出している紙の出版物全体の中で,電子出版になっているものの割合というのがここには出てきていないので知りたいと思います。電子出版の数を分母にすると,このように高い割合になるのは当然かなと思います。紙の出版物の中で電子出版も出している割合というのは,大体ざっと,出版社により差はあるんでしょうけれども,どんな感じなんでしょうか。

【堀内委員】 今,ここで正確な数字はあれですけれども,全体で30万点,小林さんがお詳しいと思いますけれども,30万点行っているかどうか。そして今それぞれ,例えば講談社,あるいは角川,あるいは学研ホールディングスとか,今後,出すものはすべて電子も同時に出していくと,こういう方針でやっていますし,スピードの差はありますけど,多くの出版社が今,積極的にそういう体制を整えて,取り組んでいるところですけれども,今まで発行されたものというのは膨大にございます。これについては,出版各社が個社の取組とは別に,印刷,大日本とか凸版さんとか,それから出版社の多くが産業革新機構の出資も仰いで,出版デジタル機構というのを作って,これから5年ぐらいのうちに100万点をデジタル化しようということを目標に,出版界挙げて取り組んでいるということで,これから出すものについてはもっとスピードアップして電子化されていくと思います。
 それから今まで多く出されたもの,これもそれぞれが取り組んでおりますけども,現時点ではそのくらいの数字じゃないかと思います。

【土肥主査】 どうぞ。補足だそうですので,お願いします。

【永江委員】 書協が作っているデータベースによりますと,今,出版社が権利を持っている著作物が90万点あります。そのうちデジタル化したものが大体30万点弱ですけども,完全に紙のものと同じとは限りません。1冊の紙の本をばらばらにして電子書籍化することもありますから。だからもし90万点すべてをデジタル化すれば,電子書籍の点数はもっと増えるでしょう。単純に3分の1がデジタル化されたということではないんです。
 それと,参考事例ですけれども,経産省の緊急電子化事業が復興支援事業でありましたけれども,これは1年間かけて10億のお金をつぎ込んで,東北関連中心に書籍をデジタル化するというものでした。,やってみると1年かけて6万点はぎりぎりでした。校正その他の作業をする人手が足りないんですね。ですから残り60万点をデジタル化するには,それなりの時間がかかると思います。
 それと著作者の中でも文芸家の態度は,大きく3つに分かれています。断固としてデジタル化は拒絶するという作家もいます。特に一部ベストセラー作家の中で結構いらっしゃいます。それとは反対に,どんどん積極的にデジタル化したいという作家もいます。しかし一番多いのは,状況を見てからという人。もっと電子書籍が盛んになってから契約書にサインしましょうという文芸家が大半です。
 補足しました。

【土肥主査】 ありがとうございます。
 それじゃ,どうぞ。続けて河村委員,あるんですね。

【河村委員】 読者といいますか消費者から見てすごく興味があるのは,新刊のものが電子化,特に大手のところはされているというのはよく分かるんですが,本というのは新刊本ばっかり買うのでは全然なくて,やはり今までの膨大な著作物の中から,本当にいろんな時代のものを買っていくわけなんですが,そういうものに電子のものが少ないということ,電子出版のバラエティー,網羅性が非常に低いということを,常日頃(ひごろ)すごく感じているところです。
 ですから,ちょっと意地悪な見方をすれば,この表の作り方はちょっと,電子の側(がわ)から見てのパーセンテージを出しているので,だから一体なんだとおっしゃいましたけれども,そうじゃなくて,紙だけのものがいっぱいあるとしましたら,私が申し上げたいのは,読者としては,過去のものも含めて,急には無理だとしても,やはり非常に使いやすい電子出版が増えていって,その選択肢が広がり,電子出版がどんな分野のどんな時代のものでも手に入るとなると,コンテンツを入手するという意欲は高まるはずなんです。重たい紙が増えていかないし。
 ということを考えれば,出版社の方もそれを努力なさるとおっしゃっているわけですから,過去のものの電子化ついて,期待したいところです。私が申し上げたいのは,この要望を見ると,何か紙としての出版物を作り上げたところだけが電子化の権利を持てるんだと,何かやはりいまだにそういうニュアンスがあって,そうしますと,過去の出版物について,意地悪く私が感じてしまいますのは,自分たちは差し当たってこれは出したくないけれども,よそから出されるのは困るということに尽きるのかなと思うんです。でもよそから出されて困るのであれば,やはりそれはもう電子出版権をお持ちになって,出版する以外にないと思いますので,そこで何かいつまでも紙優先,紙を持っているところ優先というところにこだわられると,ルールが何となくフェアじゃない感じに映ります。
 おっしゃっていること,すごく分かるので,苦労してコンテンツ作り上げた方たちのこととかも分かるので,皆さん,いろんな先生方おっしゃっているように,両方の権利が十分,契約で取れるのであれば,特に優先的な何かがなければいけないということがなくても,十分,ビジネスをやっておいきになれるのではないかと思うので,その点を申し上げたいと思いました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 先ほど申し上げました契約上の工夫というのを,先ほど少し後回しにしてしまいましたけど,この中身を少し御説明したいと思います。特に今,お伺いしていて,この点はより一層重要であるということを痛感いたしました。
 先ほど契約上の工夫と申し上げましたのは,物権での一体化は駄目だという話はもう御理解いただいたと思いますので,それを前提とした上で,あとは契約上,一体化というところが次に問題になってきますけれども,そこの点で,先ほど申し上げましたとおり,デフォルトルールというのは非常に実務的には深刻な問題があるという話ですが,やはり聞いておりますと,それだけの問題ではなく,出版というのは,私は法律家というより,今は一委員として聞いていたのですけど,お聞きしたら,やはり最終的には本を出すというのは著者と出版者の信頼関係なくしては全く進み得ないものだと改めて痛感しました。単なる一ビジネスだけではなくて,やはり人格的な要素が強いものですから,そのような中では,やはり原則,例外を逆転させるのではなくて,原則どおりに,かつ両者御納得いただくような形で行えば,自然に今後は紙を出す人は紙だけ出すとして,紙プラス電子で出す人は両方としてというように,よく両者で話し合った上で,その真意に合った形で自然に契約ができていくし,それこそが契約の本質だと思います。契約は,両当事者の最大の信頼の証(あか)しだと思います。契約上の工夫と申し上げましたのは,デフォルトルールというように法律で原則,例外を逆転させなくても,自然に人間,合理的に行動していくようになりますので,大体,一般的相場感として,普通はこの種の本を出すときには紙プラス電子で出すというのが標準になってきたら,標準ひな形というのも変かもしれませんが,このジャンルのものであれば大体,今後は紙プラス電子というようになってくるというのであれば,それはここできちんと標準ひな形では紙と電子と両方入っているということを明示した上で,両者納得した上で行えば,次第に経済合理性に従って,両者最適の方向に向かうと思われます。結局,契約というのは法律自身が具体的な中身を決めるというよりは,最終的には当事者同士の私的自治で,当事者が納得したように法律関係を形成していくということでありまして,まさしくここに最適なものであります。そして,先ほど松田委員も言われたところに通じることだと思いますけど,工夫をしていかないと,そういう方向に行きませんので,その契約上の工夫というのは,ひな形を考えていくとか,関係者が集まって知恵をひねっていくということになり,そのような方向に持っていくべきものだという趣旨が,先ほどの契約上の工夫ということでございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 いずれにいたしましても,この電子出版というのは著作者の意思に基づいて初めて設定されるものでございますし,ただいまの各委員の御意見を伺っておりますと,出版者の立場からの御発言もあり,それからクリエーターの委員の立場からの御発言もあり,利用者の,消費者といいますかね,利用者の立場からの御意見もあり,いずれにしても,この21ページまでのところのまとめについて,特に修正等をお求めになっておられないというふうに認識をしておりますけれども,吉村委員は,この点についてまだありますか。
 どうぞ。

【吉村委員】 今日もいい議論がたくさん出ており,,まだまだここに入れるべき論点があるように思います。特に,大渕委員から御指摘のあった,紙の出版の権利と電子の出版の権利は法体系上別物であって,これらの権利を混ぜて一体化させることは,法律の建て付けとして問題があるのではないかという御指摘は,極めて重要であると思います。こうした御意見は,中間まとめの中に記述されてしかるべきであろうと感じております。
 また,ここの「一体的設定の是非」の箇所なのですが,電子の権利だけ別立てにすべきとの意見が出されたことが書かれていないと感じます。タイトルを「一体的設定の是非」としてあるためだとは思いますが,前回までの議論を振り返りますと違和感がございます。
 この小委員会においては,別立てについては,著作者の意向を重視できるとか,新規参入の可能性が高くなるとか,今後の法改正に対応しやすいとかいった意見が出されています。別立てとすることについてポジティブな意見が出ていることには,何らかの形で言及されるべきではないかと思います。
 他方,権利の一体化を支持する積極的で説得的な議論というのは,今まで小委員会で聞いた記憶がございません。権利の一体化を主張される方がおられるとすれば,その論拠となる合理的な説明を,今後,小委員会の場で行っていただきたいと思います。
 結局,今日いろいろな方からも御議論が出ているとおり,著者の方と出版社の方々との間に信頼関係があれば,権利が別立てであってもこのタイトルでいう「一体的設定」,即(すなわ)ち,電子と紙の両方の権利を出版社が持てる蓋然(がいぜん)性は高いということだと思います。皆さんがおっしゃっているのと繰り返しになりますけれども,出版社には,著作者との信頼関係をしっかりと築くための努力が求めらるということだと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 いずれにいたしましても,今回まとめておりますのは中間まとめということになっておりますので,今,吉村委員の御意見のようなものは,どういう形でこの中間まとめに反映するかについては,主査にお任せいただければと思っております。
 時間の関係もありますので,第2点,3点のお話になるわけでございます。第3節の権利内容について,具体的には22ページから27ページまででございますけれども,この点について御意見ございましたら,お願いいたします。
 どうぞ,あんびる委員,どうぞ。

【あんびる委員】 ありがとうございます。では,第4節の2の再許諾の在り方について意見を述べさせて……。

【土肥主査】 ちょっといいですか。4つに分けて議論させていただこうかなというふうに予定しておりまして。

【あんびる委員】 済みません,今,3節ですね。済みませんでした。

【土肥主査】 今,3節。すぐ4節に入りましたら,冒頭,指名させていただきます。

【あんびる委員】 はい。どうも申し訳ございません。

【土肥主査】 とんでもない。3節で,権利の内容について何か,22ページから27ページまでのところで御意見ございませんか。
 前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 24ページ以下に,雑誌の版面をデッドコピーして,それをアップロードをするという侵害事例に関する記述があるのですけれども,雑誌の版面をデッドコピーしてアップロードするという侵害事例では,雑誌丸ごとをデッドコピーする場合と,雑誌を構成している個々の著作物を取り出してデッドコピーしてアップロードするというケースがあるかと思います。
 前者のケースについては,出版者は編集著作権を持っているケースが多いと思いますので,編集著作権で対応が可能であると。これは今までも指摘があったことかと思います。ですので,恐らくこの24ページ以下で議論されていることは,編集著作権では対応ができない,雑誌を構成する個々の著作物のみが取り出されて,アップロードされているというケースを主として念頭に置いているのかなと思いますので,その点を脚注か何かに入れていただけると分かりやすくなるのではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか。森田委員。

【森田主査代理】 この「第3節 権利の内容」の検討で,今の24ページの[2]以下の「出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策」という点ですが,雑誌については何回かにわたって議論がありましたけども,この報告書のまとめでいきますと,25ページの一番下の3行に述べられているように,「雑誌を構成する著作物についても,現行の出版権を設定できるようにし,電子書籍に対応した出版権においても同様に設定できるようにすることが適当であると考える」ということで,雑誌についても出版権の設定が電子書籍を含めてできるようにするということが方向として示されております。それから,出版物の海賊版対策については,最後の27ページの結論によりますと,みなし侵害規定の創設ではなくて,電子書籍に対応した出版権の創設をすれば,それで対応できるということが書かれているように思います。
このうち,まず前者の雑誌の問題点の方については,現行の出版権が雑誌について設定できるかどうかについては,この小委員会でも委員の意見が分かれていたところを,この報告書では,今後としては少なくとも出版権の設定ができるようにする,これが現行の著作権法の解釈運用で対応できるのか,それとも何らかの立法的な手立てが必要なのかというのは次のステップの問題かと思いますけれども,いずれにせよ,方向性としては,雑誌についても出版権の設定ができるということを前提に考えるということが示されているかと思います。
 その上で,後者のみなし侵害規定の創設の点ですが,このみなし侵害の規定の定義は,25ページの真ん中あたりに,「インターネット上の違法配信を紙の出版物に係る出版権の侵害とみなす規定を創設する」と述べられておりまして,紙の出版物に関する出版権があることを前提として,違法配信については紙の出版物に係る出版権の侵害とみなすということであります。先ほどの雑誌との関係でいきますと,そもそも雑誌については紙の出版権が設定できなければ,このみなし侵害の規定が使えないわけでありますけども,雑誌についてもその出版権を設定することができるということについては,先ほどの点でクリアされたわけであります。
そうしますと,残る問題は,雑誌も含めて,書籍全般について,紙と電子と両方の出版権を持っている場合には,このインターネット上の違法配信に対しては,出版社は当該電子書籍の出版権に基づいて差止請求ができるわけでありますけれども,先ほどから出ていますように,著作者の意向としては紙の書籍だけで出版したいという場合や,あるいは,先ほどからの議論によりますと,著作者と出版社の間の信頼関係があれば,おのずと特定の者が紙と電子とを両方出版するということが一般化していくのではないかと言われていましたが,法制上の可能性としては,別個の主体が紙と電子それぞれの出版権を持つということもあり得るわけであります。それらの場合に,紙の書籍についてだけの出版権を持っている者が,インターネット上の違法配信に対して海賊版対策として差止請求をすることができるかという問題があろうかと思います。
 ただ,この報告書ではその問題については正面から触れられておりません。このみなし侵害規定を置かない場合には,紙と電子の両方の出版権を持っている場合には違法配信に対して差止請求ができるけれども,紙の出版権だけを持っている出版者は,違法配信の差止を請求することはできないのであって,みなし侵害規定の創設には,雑誌の問題とは別に,紙の出版権しか有しない出版社についても違法配信の差止請求ができるようにすべきではないかという問題点があるわけですが,この中間とりまとめ案には,このような観点からのみなし侵害規定の意義については,明示的には述べられていないわけです。そうしますと,みなし侵害規定を設けない場合には,出版社は,著作者から海賊版対策についての委託をもらうとか,あるいは,解釈論としては,債権者代位権に基づいて著作者が有する差止請求権を出版社が代位行使するということであれば,現行法の枠内ではできるけれども,出版社が自己の名において違法配信の差止請求をすることはできないということになるわけですが,それで仕方がないというふうに割り切るべきなのか。この点は先ほどの御発言にもありましたように,著作者の意向で,紙だけで出版してほしいというニーズが現にあるわけでして,また,電子を含めて出版権を設定する場合には,電子書籍の出版義務が生じてきますので,電子書籍に対応した出版権を設定することでは,このようなニーズにうまく対応することができないことになります。そういった場合についても,海賊版対策が必要だと考える場合には,このみなし侵害規定を併せておくという対応が必要になってくるのではないかと思います。
 このあたりは実際のニーズによるわけでありますので,そこまでしなくても海賊版対策として十分だということであれば,特にみなし侵害規定を置く必要はないかと思いますけども,仮に紙の出版権しか有しない場合であっても海賊版対策を行えるようにして欲しいいというニーズがあるとすれば,みなし侵害規定の創設というのが,雑誌の出版権設定の問題とは別に,次の問題として残るということではないかと思います。そのあたりが必ずしもこの中間まとめ案では明確に説明されていないような感じがしますので,何らかの書き方の工夫をする必要があるのではないでしょうか。
 今後,この中間とりまとめ案はパブリックコメントに付されるということでありますので,パブコメに付するときには,一体どのような問題点に対してどのような提案が示されているのか,それに対し,どういうニーズがあって何に賛成するかというその対象が明確になっていた方が,パブコメの実質を確保することができるということがあると思いますので,そういった観点から,もう少しこのみなし侵害規定の創設の意義というのが,この中間とりまとめ案では,雑誌との関係で主に述べられているような感じがありますけども,そうではなくて,雑誌に限られず,紙だけの出版権しか持たない者が海賊版対策として違法配信を止められるかという問題,先ほどの紙と電子と一体的にという問題も実はその点にも関(かか)わっていたような気がしますけれども,そのような問題があるということ自体を明確に示す,方向性としては,どうするかについてはオープンで結構だと思いますけども,少なくとも問題点は示す必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか,この点。じゃあ,金子委員,どうぞ。

【金子委員】 雑誌に関する海賊版の事例で,本小委員会において若干,言及があった事例として,印刷の過程なり,何らかの途中の過程でスキャンがされて,それがアップロードされる,海賊版として頒布される,という場合の,そのスキャン行為自体が出版権の侵害となるかにという論点があったかと思います。そのようなスキャン行為それ自体についても,この案の下では,基本的には頒布の目的での複製,あるいは公衆送信等電子での配信の目的での複製ということで,この電子出版権,あるいはその拡大された出版権の効力の対象に含まれるという理解で,スキャンの時点で頒布目的,あるいは公衆に対する送信の目的があれば出版権等の侵害となると,そのような理解ということでよろしいでしょうか。

【土肥主査】 そういうことだと思います。

【金子委員】 了解しました。

【土肥主査】 大渕委員は。

【大渕委員】 この今の第3ブロックのところということでありまして,2点あるのですが,1点は,23ページの「特定の版面」のところはもうほとんど解決済みですから,余り意見を申し上げる必要もないだろうということで,1点だけです。
 前回,私もこれはそもそも「特定の版面」というのは,ものすごく手短にいたしますけど,定義すらできていないということを申し上げましたが,その趣旨は,定義というと,法律家的にうるさい意味での定義ができていないというふうに解釈されたら,私の真意ではありません。これはそのような意味ではなくて,何が「特定の版面」かというのは,そういう細かいものではなくて,レイアウトなのか何なのかすら分かっていない状態で,それぞれをどう盛り込むかで,主体も客体も全部変わってくるような一番入り口のところのものが何ら明確に示されていないということであります。最低限,そのようなものが示されて初めて,議論が始まり得るのではないかと思っておりますが,それすら示されずに議論が全く始まってもいないという意味では,そこにすら至っていないということであります。
 法律家の言うような細かい定義ができていないというのではなくて,レイアウトかどうか等,そこすら全く決まっていないということですから,特にこれ以上はコメントしなくていいということで,理解しております。もしも何か必要があるのであれば,また後でいたしますが。
 それから次に,擬制侵害のところでありますが,これは先ほど出た問題意識は別として,要するに私なりに理解しているのは,このペーパーの趣旨は,擬制侵害はハードルが高いということで,これは最終的には紙と電子と両方取得すれば対策ができることは間違いないし,他方で,侵害対策というのは,著者本人ができることも間違いないので,いろいろ工夫があるから,それはもう読めば明らかであり。これ以上,少しその辺は分かりやすさの観点からいろいろ御工夫はあるかと思いますけど,これを見たら,今言ったところは明らかではないかというふうには感じます。私が申し上げたかったのは,このハードルの話でありまして,恐らくこの擬制侵害の点は,前回,ハードルが非常に高いということを申し上げたのですが,あのときは時間も少なかったので,もう少し付け加えた方がいいかなということで,今,お話ししております。前回申し上げましたのは,1点あるのですけれども,実は以下,申し上げるように,相互に関連しておりますが,2点,この擬制侵害,こういうような形の擬制侵害を認めることについては法制的にハードルが高いということがあります。1点目は,前回のややおさらいをするだけですけれども,現行法の113条各項,各1項以下に挙がっているのはすべて支分権を追加しているレベルのものでありまして,母権と言われたりしていますけれども,民法でいえば所有権に当たるような部分のものが支分権化されておりますから,そういうもので擬制侵害ということになっているのに対して,ここで議論されているのは用益物権レベルなものであるので,レベルが違うことは間違いないし,その点と絡んでくるのですけれども,現行の擬制侵害というのは,これは純粋客観レベルでいうとやや分かりにくいのですけれども,要するにこの擬制侵害規定がなければ,侵害ではなくて適法なものを法律上,擬制して,侵害とするという,いわば白を黒に変ずるというような,ないものを違法を作るという非常に客観的な意味での擬制侵害で,それは現行法,あるわけでありますけれども,ここでやっておりますのは,もちろん既に複製権侵害にせよ,著者が訴えようと思えば幾らでもできるような,既に侵害になっているものを今度,出版権として捕捉(ほそく)するようにするかという,ここが主観的と言うのはやや日本語として分かりにくいのですが,ドイツ語でいえば,subjektivということで,「主体的」に近いような,誰(だれ)が権利者として訴えることができるかというのを著者の方から出版者にするという,そういう意味で,母権レベルか用益物権レベルかでも違うし,純粋客観なのか主観でも違うということで,法制的なハードルは非常に高いと思います。法制的なハードルの高さという点では,この点に限らず,この辺は恐らく私も含めて,それは認識した上で,現実的にこの問題を解決するに足るような議論に絞って,ここでの議論に参加してきたものと思います。私も,理論的に言えば研究者の立場からは,他(ほか)にもいろいろと可能性があったのを抑えに抑えて,極度の時間的制約の下で,現実的でないものは全部落とした上で,この議論に参加しているつもりであります。そのような観点からしますと,この擬制侵害を新たに導入するというのであれば,今のような本質的に極めて性質の異なる2つのタイプの擬制侵害が併存することとなってしまい,例えば大学の授業での擬制侵害の定義自体が大幅に変わってしまって,今までは1タイプしかなかったのに,今後は2タイプあることになるというようにと本質的に変わるぐらいの,法思想を変えるぐらいの大きな話であります。ここで申し上げたいのは,極めて現実的なアプローチでのここでの議論で,それほどの極めて大袈裟(おおげさ)なことをやるほどのニーズないし立法ニーズが本当にあるのかということであります。最後はニーズと時間等のコストとの比較衡量に帰着することになってくるのでしょうが,そこは,はたで聞いている限りでは,そこまでの現実的ニーズはない,これだけのために全体が非常に大幅に遅れるということも皆さんの本意ではないでしょう,というような問題であると認識しております。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 この点,前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 現実のニーズがどの程度あるかということについては別といたしまして,今,大渕先生からお話がありました法制上,そもそも,みなし侵害はおかしいということになるのかどうかという点なんですけれども,まず用益物権レベルでみなし侵害がおかしいかというと,必ずしもそうではなくて,既に113条1項が……。

【大渕委員】 おかしいのではなくて,ハードルが高い。

【前田(哲)委員】 あ,ハードルが高い,そうですね。113条1項自体が既に出版権侵害についてみなし侵害を定めているところでございますので,用益物権について,そのみなし侵害を設けることが法制上,ハードルが高いということは特にないのではないかと思います。
 それから,大渕先生がさっきおっしゃった2点目の,今まで適法なものを違法なものとすることが,みなし侵害の存在意義であるというお話があったかと思うんですけれども,今回,もし出版権についてみなし侵害を設けるとしたら,確かに著作権侵害には既になっているけれども,出版権侵害ではない行為なわけですから,現行法上,出版権侵害でないものを出版権侵害であるとみなすという規定を置くということがさほど法制上,ハードルが高いとは私には思えないんです。
 仮にみなし侵害規定を置くとしたら,出版者が現実に出版しているその出版物を物理的に利用した行為に限るべきであり,また著作権侵害にもなるものに限るべきではないかと思いますが,ある程度,限定した上で,みなし侵害規定を置くということは,もしニーズがあればということなんですが,可能ではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 もう一回,ありますか。

【森田主査代理】 今,前田(哲)委員から御意見がありましたので,私自身の意見も申し添えますと,このハードルが高いという意見が示されたというのは,そういう意見があったという事実はそうだと思いますけれども,それでは,そのような法制が適切でないのかと,あるいは本当にハードルが高いのかということについては,私は,法制化は可能ではないかというふうに思っています。
 先ほど大渕委員が説明されたように,従来のみなし侵害規定とは少し性質が違うということは,これはどなたもお分かりのことだろうと思いますが,ただ従来の体系を変えてしまうからハードルが高いということになるかといえば,新たな事態に直面して,法制度を変えるときには,従来の体系そのものを組み替えないと十分に現実に適応できないという問題はこれからもどんどん出てくるわけでありますので,その新たな理論的な説明については,授業ノートは書き換えていただくことにしまして,理論的な説明はどんどん更新していって,新たな事態には対応する必要があるのではないかと思います。
 より実質的な問題は,従来は白のものを黒にする,つまり誰(だれ)も権利は持っていないところで,新たに侵害を認めるという形でその権利内容を実質的に拡張するものであったのに対して,ここでは,既に著作者が一定の権利を持っていて,あるいは別の者が差止請求権を持っているという場合に,紙の出版権のみなし侵害とするという場合には,そちらの権利内容との調整が必要になってくるという点ではないかと思います。逆に言えば,その点の調整がうまくつくのであれば,みなし侵害としても実質的な問題は起きないのではないかということです。前田(哲)委員から今提案がありまして,私もそういった方向で限定を加えれば,みなし侵害とすることによって,実質的な問題は十分にクリアすることができると思います。体系的な説明が変わるからハードルが高いというのは,それは従来の体系は組み替えていただいて結構なので,そういう形式論ではなく,実質的にみて問題があるのかということを今後詰めていくべきではないかと思います。

【土肥主査】 じゃあ。

【大渕委員】 どうぞ。最終的には答えますから,どうぞ。

【土肥主査】 じゃあ,金原委員,お願いします。

【金原委員】 第3節で,雑誌にも出版権を設定できるとあります。それはそれで当然といえば当然だと思いますが,ただし先ほどの議論でちょっと漏れているのは,雑誌における掲載が必ずしも独占的出版契約でない場合が多いと思います。その場合には当然,出版権の設定ができないということになりますから,依然としてやはりその海賊版に対抗できないという問題は起きるわけで,一方で,仮にこれが紙と電子と分かれた場合,先ほどの一体の話で,分かれた場合には,紙の出版権を持っている人も電子海賊版には対抗できない,そういう漏れの部分がまだ出てくると思います。
 先ほどの資料2の趣旨説明のところでも御説明申し上げましたけども,やっぱりそういう問題がまだこの中間まとめの中では必ずしも明確ではないのではないかと思いますので,その辺についての御配慮をお願いしたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかには。大渕委員ですか,はい。

【大渕委員】 それでは,先ほどの点ですが,順次,御説明いたしますと,まず,たくさんありましたのであれですが,113条は,先ほど申し上げた意味で支分権追加的だという点については,これは余り異論はないかと思います。そして,それは次の理論的なところにも非常に関(かか)わってくるところでありまして,何を言いたいかといいますと,これは民法では,有体物についての包括的な使用・収益・処分権限が権利内容になっているのに対して,これは無体財産法としての著作権法の本質的な特徴だと思いますけど,支分権として細かく切り分けたところにしか限定的にしか及んでいないということであります。
 著作物一般だから,使うというものがすべて規制されているわけではなくて,これは恐らく権利者の保護と,それから利用者の公正な利用とのバランスを考えて,ぎりぎりに詰めていったらここに落ち着いたという非常に重要な著作権法のポイントであります。民法の場合には,この対象有体物一般についての使用・収益・処分だから別にそういう細かいことを考えなくても,包括的にすべて権利の内容だということになります。
 これは有体物の特色に適した内容だと思いますので,それはほとんど異論もないところだと思いますが,著作権の場合にはそうはなっていなくて,細かく切ったピースのようなものしか権利の対象にしていないというのは,これは非常に公正な利用に対する配慮にも,対抗利益も十分考慮した上でのぎりぎりのものでありますけれども,その上で,私の理解で,そんなにこれは異論はないのではないかと思いますが,113条に掲げられているのは,113条に書いてあるからといって,21条以下のものと効果がさほどは大きく変わるわけではないということであります。
 そのような意味で支分権追加的であるわけですけれども,次が問題でありまして,現行法の出版権というのは,著者の権利と同列のものでなくて,やはりライセンス的な性質と申しますか,これはまさしく用益物権的なものでありまして,先ほどの支分権がすべて所有権レベルで来るとすれば,そこからライセンス的な許諾というか,権利の一部の譲与を受けて初めて成り立った,いわば俗に言う,ぶら下がっているという状態でありますので,そういう意味では,現行法であるのは,支分権レベルの増やす方はあっても,ぶら下がっている人の権利というのは上の人の権利以上にはならないわけであります。そのぶら下がっている人の権利だけ増やすというのは,体系的に,これは説明の仕方だと言われるかもしれませんけど,恐らく実質からすると,これは前もこの審議会で申し上げたと思いますけど,実質は恐らくそれはここで言っているような,形式上は擬制侵害になるのかもしれませんが,むしろここでいえば紙の複製権について許諾を受ける以外に,侵害対策のためにアップロード行為を抑えるために,隣の支分権である公衆送信権の一部についても許諾を受けるという性質のものではないかと思います。
 だから組むとすれば,むしろ意思解釈規定的なものとなり,ないしはそこを工夫して,出版権というのは飽くまで本権の域を超えるものではないけれども,設定の範囲について,複製権についてだけ設定するのではなくて,公衆送信権についても設定するという意思解釈規定的なものになっていくのだと思います。
 というような,いろいろ細かい話はあるのですけど,実はこれは先ほど言いたくて抑えてきたという,この問題というのは,実はそのために私も自己規制をしながら,これは物権だ,物権だと言い続けているこの出版権なのです。特許の世界では,排他的ライセンス契約に基づく差止めという議論も非常に盛んになってきているので,そういうものも,時間があったら,やったらいいとは思っています。私はもう特許法の議論もかなり進んできているから,特許法では,先ほどの議論の立法化も,時間の問題ではないかと思っています。したがって,別にこちらでやるから特許法との整合性が問題になるということもないのではないかと思いつつも,今申し上げたいのはそれ自体ではなくて,そういうふうに私は一研究者としてはそういうのを言いたいけど,時間的制約などを考えると,そういう話をしたら,これ,今,債権ではなくて,物権的な出版権として話が進んでいるところを阻害しますので,だからそういう意味では,この擬制侵害も似たようなところはあるのかなと思われます。
 全く不可能とまで言ったつもりはなくて,ハードルが高いということであります。その上で,それを超えるだけのニーズ,立法事実が出るのかという,最後はそのような比較衡量的なことになってくるのではないかと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 前田委員おっしゃるところはあるんですけれども,出版権侵害がみなし侵害になっているのは,輸入と所持のところですよね。併せて,同時にそこのところは,もともと支分権には入っていないような,そういうものが出版権侵害というふうに規制されているわけですから,従来から比べると,やっぱりハードルが高いというのはそのとおりだろうと思います。
 この第3の部分について,権利の内容について御意見を多々頂戴(ちょうだい)したわけでございますけれども,この部分についても両方からの御意見もあるところでございます。つまり入れるべし,あるいは現在の表記のような形でよしという,そういうような御意見もございますので,ここの部分についても主査にお任せいただければと思います。
 理由は,先ほどから申し上げておりますように,まだこれは中間まとめのレベルでございますから,これからパブコメ等で多方面の御意見を徴した上で,また最終的に最終案ということになろうかと思いますから,この段階では,どういうふうな表記にするのか,あるいは例えば脚注のレベルからの御注文もございましたけれども,そういうことを合わせてお任せいただければと思います。よろしいでしょうか。
 じゃあ,最後の部分でございます。お待たせをいたしました。あんびる委員,お願いいたします。

【あんびる委員】 ありがとうございます。先ほどは大変失礼いたしました。
 第4節の再許諾の在り方についてという部分と,あと第6節についても今,お話ししてよろしいのでしょうか。

【土肥主査】 どうぞ,お願いします。

【あんびる委員】 あともう一つは,第6節の出版権の存続期間について,その2点について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず再許諾の在り方について,この中間まとめでは28ページにありますが,ここの段落が3つございますが,最後の3つ目の段落,「また,紙の出版物についても」という段落につきまして,私は著作権者として大変,抵抗感を感じました。現在,ここにあるとおり,単行本の他社での文庫化というのは行われていることでございまして,私自身も経験のあることでございます。しかしこの場合,親本の会社が文庫化をした会社から親本印税を受け取るという行為は,慣行として行われてはおりますけれども,実際の契約書では,こういった文庫化というのは別途契約というふうになっているのが通常の契約でございます。
 そういったことがありまして,親本の出版社が二次使用とか二次的使用に対してエージェント的な立場に立つことが望ましいのかどうかということについて,著作権者の側(がわ)は常にこれは大きな問題だと考えてまいりました。その大きな問題を考えるにふさわしい時間をかけて検討されたとはちょっと思えないということと,ましてやこの最後の一文で,「可能とすることが適当であると考える」という文章にぴったりと来るような合意に至ったとも思っておりません。
 ですので,この紙の出版物の二次的使用に関しては,別の機会でまたじっくり考える問題なのではないかと私は考えております。現時点では,この点については法改正ではなくて,契約によって個々の著作権者と出版者が考えて合意に至るべきことだと考えておりますし,この委員会の趣旨自体,電子書籍の流通と,あと海賊版対策ということで話し合ってきたことを考えますと,ここの部分に言及するというのは,ちょっと不適当なのではないかなと思っておりますので,こういう問題があるというふうに問題提示をするというのであればいいとは思いますが,このままの形で多くの方にお読みいただくというのは,もう少し考えていただきたいなと思います。

【土肥主査】 もう一点あると思うんですけれども,1点の方を先に確認させていただきたいんですけれども,「著作権者の承諾を得た場合に」と,こういうふうにありますよね。つまりそこで契約が結ばれるという,あんびる委員がおっしゃっておられるような合意が行われた場合にはということなんですが。

【あんびる委員】 もちろんでございます。それで,その辺は私もちゃんと読んでおりまして,ここにも「契約を得た場合には」ともちろん書いてあるんですけれども,現在の状況であっても,こういった文庫化については別途契約となっている契約書がほとんどですので,別に現状を変える必要というのはないのではないかと考えているわけですね。
 ですから,ここでこの一文が入ることによって,可能とすることが適当だという一文が入ることに抵抗を感じるということでございます。

【土肥主査】 もう一点,じゃあ,お願いします。

【あんびる委員】 もう一点,出版権の存続期間についてということですが,これは紙の出版権は何も特に記載がない場合は3年ということが通常とされております。そのことはもちろん私たち著作権者も存じているわけですが,では電子書籍の契約に関しては,この3年というのが適当なのかどうかということにつきまして,私が所属している童美連,絵本作家の団体でございますが,そこで先日,電子出版に関してのリッチコンテンツを含む契約についての勉強会が開かれまして,その中で,出版権の存続期間がどの程度が適当と思うかという議論が交わされましたので,御参考までにと思って申し上げたいと思いました。
 結論といたしましては,紙の出版権というのは,最初は3年,その後1年更新ということになるんですが,電子の場合にはもっと短くてよいのではないかという意見が多く出されました。その理由といたしましては2つございまして,1つ目は,紙の出版の場合,初版印税という形でミニマムアドバンスの支払を受けるという点で出版者はリスクを負っている,そして製版などの固定費などによっても,出版者はリスクを負っているために,最初,3年の出版権が設定されるのは当然だろうと。
 でも電子出版の場合には,それらのリスクが少し紙よりも少ないのではないか。リスクが少ないのであれば,出版の存続期間というのももう少し短くすべきなのではないかという意見です。もう一つは,電子出版というビジネスは今,始まったばかりで,市場もこれから広がっていく大変流動的な状況にございます。その中で,3年という契約を結んでしまうよりは,1年にしておいた方がお互いにいいのではないかと,そういう意見が出されました。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにこの点についての御意見ございましたら,お願いいたします。

【大渕委員】 この件というのは。

【土肥主査】 この件というのは,第4ですから,28ページ以降というんですかね。

【大渕委員】 注でいうと,少々これは,これ自体に直接関係があるのでもないのですけど,先ほど言いましたように,はたで聞いていまして,前回まで議論がやや法的に混乱している感じがあったので,この51の対抗要件のところについて,少しここでお話ししておいた方が今後の議論のためにもいいのではないかということです。
 1としては,管轄権的には,この注の51ですが,実際上はもう既に過ぎてしまいましたが,24ページの真ん中辺の,ポツが4つあるうちの4つ目のポツのところで,「特定の版面」に限定する第三者登録要件具備云々(うんぬん)のところで,前回まで,かなり誤解があったかと思います。これは一言で言いますと,対抗要件というのは,対抗要件の抗弁と呼ばれているものと,対抗要件具備による権利喪失の抗弁と言われているものがあるのですが,これら二者がかなり混乱されているのではないかということがありました。私はここに書いてある内容自体は非常に賛成ですけど,前回,前々回にやや誤解があったように思いますので,そういう意味では,ここに書いてあることに賛成であるということの補足説明になるかと思います。少しこれは,また全部,講義的になっている。講義といっても実務的講義みたいですけれども,よくある典型的な例として,二重譲渡というのは,Aから例えば土地所有権をBとCに2人に二重譲渡しましたという誰(だれ)でも知っている典型的事例なのですけれども,これは恐らくこのままだと普通に民法の教科書に書いてあるとおり,BとCは両方とも対抗要件を具備していないから,相手に対して権利を対抗できないということとなります。
 これが普通,対抗要件の抗弁と呼ばれている部分なのですけれども,これも民法の教科書には余りはっきり書いてないかもしれませんけど,実務的には常識の部類だと思いますけれども,今,言ったような,本件は二重設定ですけど,話を簡単にするために所有権のシンプルなもので始めたいと思いますが,二重譲渡の事案におきまして,先ほどのAがBとCに二重譲渡したというので,Bの方が対抗要件を具備すると,さきほどのケースでは,両方とも対抗要件を具備していなければ,普通の対抗要件の抗弁になるのですけれども,これはBが対抗要件を具備することによって,確定的に所有権を取得し,その反面,Cは確定的に所有権を失うということで,もっと言うと,Bが対抗要件を具備することによって,確定的に所有権を取得した場合には,その所有権はAからBにすっと行ったということになって,Cは所有者である時期はなかったことになるという,こういう理解は,私はごく普通の理解だと思いますが,前回,対抗要件は不法行為者に対しては要らないのではないかという,それは対抗要件の抗弁の部分ではそうなのでしょうが,ここで話をしているのは,対抗要件プロパーというよりは,対抗要件を片一方が具備したら,そちらの方が確定的に権利を取得して,それはまさしくここに書いてあるとおりでありまして,そういう問題は,ここにあるように,この4つ目のポツにあるように,そういう意味で,この「特定の版面」として問題がありますし,やや蛇足的ですけれども,前回も申し上げましたとおりそういう対抗関係に立つのが,ユニット,単位を先ほど言ったように紙と電子と一体にしてしまえば,ますますこの深刻な問題が起きて,大変なことになるというところがあります。このように,対抗要件といっても,ここで問題になっているのは,対抗問題それ自体ないし対抗要件の抗弁というよりは,対抗要件具備による権利喪失の抗弁の方の話だと思いますので,これも1点,付け加えた方が良いと思われます。
 あともう一点,済みません,恐縮ですが,根が小心なもので,さきほどはとても申し上げることができなかったのですが,26ページのところです。これはもう御説明の必要もないかと思いますけれども,一番上に3つポツがあるうちの,3つ目の私が前に申し上げた意見だと思いますけれども,これが先ほど申し上げました外枠の,これは雑誌等でものすごく重要になってくる話だと思いますけど,外枠は物権の外枠であるけれども,特定の雑誌以外,必要ない部分はしっかりと債権的合意で外していくというのは,これはごく普通の見解だと思って,言いました。これも,それだけ言うと説得力がないから,これを,この平成11年の判決でも,これは恐らくは詰めていけば異論のないところだと思いますが,やはり権威あるものが何かなければいけないので,これは判例としてもこういうものがあるから,御心配なくということであります。先ほどの物権としての外枠と,必要に応じて債権契約で除外していくという,先ほどの2つのものというのは,もう少し説明を加えますと,26ページの注47のようなものであります。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかにございますか。渋谷委員,お願いします。

【渋谷委員】 先ほどあんびる委員が述べられました再許諾の問題について,私もこの28ページに書かれていること,特に最後の行に,「著作権者の承諾を得た場合には,出版権者が第三者に許諾を可能とすることが適当であると考える」,ここはちょっと言い過ぎではないかなということを心配しております。
 特許法に,専用実施権の関係する規定が置かれていると,それを参考にということなんですが,通常実施権というのは,特許法に基づいて,いろんな効果が与えられている権利です。
 1つだけ申しますと,特許権者から通常実施権を与えられた場合,それから専用実施権者から与えられた場合も共通ですけれども,その特許権者や専用実施権者の同意がなくても,通常実施権者だというだけで,その通常実施権を事業とともに譲渡することができるというようなことなんですね。ですから,一旦(いったん)その特許権者なり専用実施権者が通常実施権を許諾してしまいますと,その先,通常実施権者がどこに流れていくか分からなくなってしまうと。極論をすればですね。そんな効果すら与えられている権利です。
 それから,専用実施権者が通常実施権を与えるときなんですが,一体その通常実施権の中身をどう定めるかという問題があるんですね。契約期間とか,それから製品の製造の数量とか,いろんなことを定めなてはならないんですが,こういったことを特許権者は専用実施権者が通常実施権を与えることについて,同意をしているんだから,問題はないだろうと特許法の立法者は考えたんですが,それは特許権者が事業者だからだろうと私は思います。
 事業者ですから,自分の判断で,専用実施権者が通常実施権を与えたいと言ってきたときに,どんな中身の通常実施権ですかといろいろ聞きただして,やたらな内容の通常実施権は許諾できないように縛りを掛けることができる,それだけの力を持っているんですね,特許権者というのは。
 ところが,著作権者はどうかといいますと,普通は著作者が著作権者で,個人なんですね。それで力が弱い。その力の弱い著作者が出版者に一旦(いったん),この出版権を与えてしまうと,そして後日,その出版者から,「実は再許諾をしたいんだけど,文庫本で出したいというところがあるんだけど,どうだろうかね」と言ってこられたら,これはやはり著作者はちょっと対抗できないんだろうと思うんですね。
 そして再許諾の条件なども,出版者がいいように決めてしまう可能性があるわけです。出版物をどうするとか,印税をどうするかとか,そんなことも出版者の方で決めて,そしてこういうのでどうでしょうかというので著作者のところに承諾を求めてくるんだと思うんです。
 ですから,特許法の制度を参考に,こちらにも同じような制度を設けるというのは,私は余り賛成できないですね。そんなに単純なものじゃないだろうと。現行法は,再許諾できないということになっているんですが,これはできない方が私,いいと思いますよ。原則はできないことにしておいた方が,今,言ったような理由からいいだろうと思います。
 しかし現行法の規定は,これは明らかに任意規定でありまして,ですから当事者,つまり出版権者と著作権者が契約で別の内容を定めることはもちろん可能であります。だから著作権者にとっても出版権者が再許諾を与えるのが利益になると考えたら,再許諾を与えることについて同意を与えればいいだけのことでありまして,現行法でも,契約に基づいて再許諾を許すことは十分可能です。そう考えますので,あんびる委員の御心配,私も全く同感です。
 28ページの最後の行のような表現でも悪くはないと思うんですが,実際に運用の姿がどうなるか,それによるわけですので,立法するときには,特許法とは世界が違うんだということを十分考えて,慎重な配慮をしていただきたいと思います。
 大変長くなりました。どうも失礼しました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 前田委員,どうぞ。

【前田(哲)委員】 今の渋谷委員の御意見についてなんですが,私の理解では,今回,この再許諾を可とするべきだという理由は,28ページの2の1段落目のところに書かれているのではないかと。こういう実際上の必要性があるから,第三者に許諾をすることを認めることは適当であると。特許法における専用実施権の規定を参考にするのは,著作権者の承諾を得た場合に限るというところであって,特許法における専用実施権の規定を参考にするから,第三者に許諾することを認めるのが適当であるということではなくて,第三者に許諾することを認めるのが適当であるという理由は,電子書籍の流通形態に鑑(かんが)みて,それが必要であると。だけど第三者に許諾をすることについては,専用実施権の規定を参考にして,著作権者の承諾を得た場合に限るのが適当であると,そういう文脈であると私は思いますので,原案でいいのではないかと思います。

【土肥主査】 本小委員会において,この再許諾の在り方についての議論は,まさに今,前田委員がおっしゃっておられたような文脈の中で,こういうふうにしたところでして,特に重要なところは,著作権者の承諾がある場合に限り,再許諾ができるという,そこに意味があるんですね。
 ですからそこのところは,あんびる委員にも是非十分,御理解いただければと思っておりますが,時間がかなり逼迫しておる状態にもあるわけでございます。それで,再許諾以外のところで何か御発言ございますか。
 どうぞ,お願いします。

【ちば委員】 出版者と著作者というのは,これまでは非常に強いきずながあったし,そういうことで仕事をしてきました。ただ最近ちょっと著作者がいないところでいろんな会議が開かれたり,議員の方にいろんな動きがあったりということを,さっき金原委員の方からもありましたね。こういうことはあったけども,今,現在はやっていないと。これからもやるつもりはないということを聞きましたので,ちょっと安心しているんですけども,やっぱり私は,大くくりで言って済みませんけども,いろんな問題は信頼関係だったし,それから今度,契約の問題なんですね。ただ契約をやれることとやれないことをはっきり,やれることだけ契約する,著作者と出版者が,そういうことに尽きると思うんです。
 細かいことはちょっといろいろお話しできません。これからもその信頼関係を続くためにも,是非何かいろいろ動きがあるときには,我々,著作者も参加させて,話をさせてほしい。今までちょっと我々がいないところでいろんなことが決まりかけていたので,例えば隣接権のことにしても何にしてもね。それで我々が気が付いて,ちょっと慌てて参加させてもらって,こうやってこういう会議に出ているんですけれども,こういう会議はとても有意義だと思いますし,こういうところで決まったことはとても我々も守りたいと思いますので,出版者の方も是非これは尊重してもらいたいと思いますし,いろいろ何か動きを掛けるときには,漫画家,あるいは著作者,絵本作家やいろんな方に声を掛けて,こういうことをしますよということをオープンにやってほしいと思います。
 そして契約はできるだけシンプルにということに尽きると思います。
 ありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 ほかの点で何か御発言ございますか。じゃあ,瀬尾委員,お願いします。

【瀬尾委員】 内部の議論に入って,非常にちょっとどこのタイミングで発言させていただこうかと思ったんですが,実はこのまとめの部分と,それから最初,冒頭に金原委員からございました出版者さん,書協さんの御意見について,時間もございませんので,簡単に質問と,幾つかお願いしたいと思うんですけど,議員立法の動きということをお伺いしております。別に議員立法がどうのこうのということではございませんけれども,この審議会できちんと話し合った結果というのを尊重していただくことは,今,ちば委員からもおっしゃったように,当然だと思うんですけれども,それについて,やはり書協さんもそうなんだということを最初,金原委員がおっしゃいました。
 ただ,そういう一方,そうではない動きをしていることも承知しているというふうにおっしゃいました。それは,そういう動きがあった場合,書協さんとしては,その方たちに書協の立場はこうですというのを表明しないんでしょうか。例えば書協の中で,各社がばらばらに動いて,ばらばらにやっていることを書協さんはどういうふうにお考えになって,そして実際にそういう動きを否定しつつも,そういう書協さんの立場を,そのような先生方にも御説明することなく,二重,三重に進捗(しんちょく)している状況というのは,実は提言を頂いた中山先生の案に対しても,この審議会に付託されたわけですよね,審議を。
 最初,金子委員がおっしゃいました,ここで審議をしてお考えいただきたいと。そこで審議してきたわけですよね。それを更に方法論的に否定するようなことについては,あり得ないとはっきりおっしゃっていただいたので,これは非常に心強いことですが,でもそう言いつつも,いろいろな動きに対して書協さんが動いていらっしゃるのかいないのか,そしてどこまで事実を把握していらっしゃるのか,これについて幾つかの御見解を頂きたいと思います。

【金原委員】 書協としては,先ほど申し上げたとおりこの小委員会の場以外の検討というものについて,書協として参画しているということはありません。ただ出版界は非常に広いわけでありまして,個々の出版者レベルで特定の議員の方とお話をするということは,それはあり得るだろうと思います。
 それまで書協として止めるということは非常に難しいとは思いますが,やはり書協としては1つのまとまりとして,この小委員会というものに参画しているという立場もありますので,我々としては,この小委員会の議論を最優先して,当面,それ以外の方策については,書協としてはやってほしくないと考えております。
 また,それを今後の方針として持っていきたいと。そういうことがあるので,是非小委員会としては熱心に御議論いただいて,結論を導いていただきたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 金子委員,ございますか。

【金子委員】 全体的なことについて,今の点に含めて少しコメントさせていただきますが,我々の提言というのは本来,文化審議会において議論することがふさわしいということであり,最終的な議論の内容については個々の項目について我々の提言の中で採用された部分,採用されていない部分,ありますが,それについては,まさに著作者や出版者,また様々な関係者の方々が議論されて,議論された内容ということでまとめられたということは私自身はよいことではないかと思います。
 基本的に,この出版権の内容をどうするのかということは当事者の契約に基づくものでありまして,当事者にとって望ましくないようなルールを法律によって押し付けるということは,これは望ましくないであろうと思います。そういった意味では,関係者が集まって議論する,このような形で議論がされているということはいことではないかと思います。
 ただ,むしろ重要なことは,この件にどういう内容になるにせよ,これを使ってどう出版のよい姿を実現していくかということであり,また法制度としてもアーカイブの整理等,それ以外の形で何ができるのかということを継続して議論していくということが重要であろうと思われます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 議論もなかなか尽きないようではございますけれども,時間が過ぎております。本日,種々御意見,お聞きいたしました。先ほど私もお願いいたしましたように,中間まとめでもございますので,この後の中間まとめ,一体どういう形で本日の意見を反映するかについては,私に御一任いただきたいというふうに思っております。その上で,中間まとめについてまとめたものを改めて各委員にお示しをする,そういう形で進めさせていただきたいと思っております。それでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 ありがとうございます。
 それでは,そういう形で進めさせていただいて,その後は,このお示しした中間まとめについては,広く国民,各界,各層の御意見をお聞きするということで,意見募集をさせていただきたいと思っております。これもよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 ありがとうございます。それでは,そのような形で進めさせていただきたいと思っております。
 こうした扱いについて,特に御発言がなければ,本日はこのくらいにしたいと思います。よろしゅうございますね。
 じゃあ,最後に事務局から連絡事項がありましたら,お願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 本日はありがとうございました。次回の出版関連小委員会の日程でございますけれども,先ほど主査より御説明がございましたように,この中間まとめの案につきまして意見募集,パブリックコメントを実施した後,その後に開催することとさせていただきたいと思いますので,また日程を改めて調整させていただいた上で,御連絡させていただければと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会出版関連小委員会の第7回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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