議事録

文化審議会著作権分科会出版関連小委員会(第9回)

日時:
平成25年12月20日(金)
10:00~12:00
場所:
文部科学省旧庁舎6階 第二講堂
  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書(案)について
    2. (2)その他
  3. 閉会

配布資料

議事内容

【土肥主査】 おはようございます。若干遅れて御出席の委員の方もおいでになるかと思いますけれども,ちょうど時間でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会出版関連小委員会の第9回を開催いたします。
 本日は,お忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に本日の会議の公開につきまして,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴をいただくことといたします。
 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いいたしま。
 なお,カメラ撮りにつきましては,事務局から配付資料の確認までとさせていただきまので,どうぞよろしくお願いを申し上げます。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下半分をごらんください。本日は,資料といたしまして,本小委員会における報告書(案)をお配りしてございます。全部で50ページになります。配付資料につきましては,その1点のみでございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局にまでお声がけいただければと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。
 それでは,初めに議事の進め方について確認をしておきたいと思います。本日の議事は,1,「文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書(案)について」,2,「その他」の,この2点となります。本日は,まず事務局から出版関連小委員会報告書(案)について説明をいただきます。その後,報告書(案)について御議論をいただきたいと思っております。
 それでは,事務局より報告書(案)についての説明をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 それでは,文化審議会著作権分科会出版関連小委員会報告書(案)について御説明させていただきます。
 この報告書(案)は,本小委員会におけるこれまでの議論の結果を整理させていただいたものでございまして,9月におまとめいただきました中間まとめから,意見募集の結果や11月25日に開催されました第8回の本小委員会における議論の結果を踏まえ,さらに加筆・修正したものでございます。私からは特に中間まとめの内容から修正された点を中心に御説明させていただければと思います。
 まず1ページ目,「はじめに」をごらんください。ここでは,出版者への権利付与等について,政府において行われた検討の概略や関係者からの様々な御提言,それから,2ページ目になりますけれども,知的財産政策ビジョンや知的財産推進計画等,それから,小委員会での検討経緯等について記述をしてございます。
 2ページ目の下から2段落目になりますけれども,本報告書(案)の全体を通じての用語の定義について記述しておりますが,意見募集等の結果や審議会における議論等を踏まえまして,電子出版についての定義について,「電子書籍の企画・編集から配信に至る行為をすること」と呼ぶこととしてございます。
 次に3ページ目をお開きください。第1章では,「出版,電子出版を巡る状況」といたしまして,出版に係る現状や電子出版に係る現状について,さらに海賊版の被害実態について整理をさせていただいておりますが,特段中間まとめから変更がございませんので,内容の説明は割愛させていただきます。
 それから,10ページ目から12ページ目にかけての「第2章 諸外国における出版者の権利等」について,それから,13ページから17ページにかけての「第3章 出版者への権利付与等についての方策」,こちらにつきましても,特段中間まとめから変更がございませんので,具体的な内容の説明は省略させていただきたいと思います。
 それで,18ページ目をお開きください。18ページ以降の「第4章 電子書籍に対応した出版権の整備について」,こちらでは本小委員会における議論の結果を整理させていただいております。
 19ページをお開きください。「第2節 権利の主体・客体」でございますが,現行法の説明につきましては省略をさせていただきまして,20ページ目の「(2) 紙媒体での出版と電子出版に係る権利の一体化の是非」というところをごらんください。この(2)につきましては,小委員会において時間をかけて御議論いただいたところでございますので,少し詳しく説明をさせていただきたいと思います。
 まず,「[1]問題の所在」についてでございますが,権利の主体に関連して,「出版者の権利のあり方に関する提言」では,現行の出版権が原則として電子出版にも及ぶように改正し,別途,特約により紙媒体での出版のみ又は電子出版のみという出版権の設定も可能とする旨の提言がなされていたところでございます。
 こうした提言も踏まえまして,日本書籍出版協会からも同様の要望がなされているところであり,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体とした制度設計か適当かどうか問題となり,本小委員会において御議論があったところでございます。
 [2]では「小委員会における検討」を整理させていただいております。まずアでは,「『紙と電子を一体』とすることに積極的な意見」を整理しておりまして,まず,日本書籍出版協会からは,紙媒体・電子媒体の出版物の流通を最大となるようにする観点や,海賊版対策を十分に行う観点からは,紙媒体での出版と電子出版を一体化した権利であることが望ましいこと,企画から編集,制作,宣伝,販売という一連のプロセスを引き受ける出版者の社会的役割は,紙と電子を分けて考えることができず,次のページをおめくりいただきまして,現に,出版者が制作する電子書籍の約97%は,自社の紙媒体の出版物をベースとしていると。そのような実態を反映してほしいということ。それから,著作権者が懸念する制度への不安等に対しては,著作権者に契約の範囲を明確に説明し,契約上明示していくこと,著作者団体と話し合いながら,契約ガイドラインの作成や契約をめぐる紛争処理のための仲裁機関を設けることも検討していることなどが挙げられてございます。
 このような意見につきましては,意見募集においても,出版関係者より多数の御意見を頂戴しておったところでございます。
 また,日本印刷産業連合会からも,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体的な権利とし,それが設定されれば効果的な海賊版対策を行うことができることなどを理由に積極的な意見が示されてございます。
 さらに,日本写真著作権協会からも,フェアな契約習慣を作ることがまず重要であるとの意見とともに,出版者が果たしてきた役割等に鑑み,一体的な権利とすることに積極的な意見というものも示されてございます。
 次に,イでは,「『紙と電子を一体』とすることに消極的な意見」を整理しておりまして,まず日本漫画家協会及び日本美術著作権連合からは,紙媒体での出版と電子出版について必要な分だけシンプルに契約を行いたいと考えていること,著作者の十分な認識のないまま一方的に電子出版が含まれてしまうことが危惧されることから抵抗感が強いことなどを理由に,紙と電子を一体とすることに消極的な意見が示されております。
 また,日本経済団体連合会からも,出版者が紙媒体での出版と電子出版の双方を行うのであれば,出版者と著作権者との契約において双方の権利を同時に設定することになるのであり,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を制度としても一体化させる理由は判然としないこと,全ての出版者にあまねく電子出版の義務を課すことに無理があること,電子出版のみ行う事業者を含む新規参入を促進し,既存の出版者とともに電子書籍市場を拡大していくことが重要であることなどの理由から消極的な意見が示されております。
 さらに,有識者からも,複製を基調とする紙媒体での出版と公衆送信を基調とする電子出版は法的には全く別の行為であり,権利としてそれを一体化することは妥当ではないとの意見や,一体的設定は契約により実現されるべきものであり,当事者間の信頼関係が重要であるとする意見が示されております。
 それから,ウでは,前回の小委員会における議論を整理してございまして,前回の小委員会では,この問題を検討するに当たっては,抽象的に論ずるのではなく,紙と電子を一体として扱うか否かにより生じ得る差異について,消滅請求の在り方,権利の内容を明示することなく他に出版権を設定するという契約を締結した場合の権利の内容,法改正前に設定された現行出版権の扱いの各論点について個別に検討を行い,そこから帰納的に判断すべきであるという意見が示されておりましたので,各論点についての検討結果を以下で記載してございます。
 まず,(ⅰ)消滅請求の在り方につきましては,紙媒体での出版と電子出版で分けて考え,義務違反に対応する権利のみとするべきであるとの意見が多勢を占めたと整理させていただいております。ただし,一体的な制度設計を考えた場合には,消滅請求の在り方については様々な組み合わせも考えられるという御意見もございましたので,その一例を脚注の46に記載してございます。
 それから,(ⅰ)でございますが,権利の内容を明示することなく,単に出版権を設定するという契約を締結した場合の権利の内容については,社会的実態,あるいは取引慣行に照らし,当事者の通常の合理的意思を反映させるべきであるが,少なくとも著作者の懸念を踏まえ,紙と電子を一体とする場合であっても,当然に紙媒体の出版に係る権利も電子出版に係る権利も含むのではなく,設定を受ける権利の内容について明示の合意をすべきであるとの意見が示されたと整理をさせていただいております。
 23ページをお開きください。(ⅲ)法改正前に設定された現行出版権の扱いについては,法改正により電子出版に係る権利も当然に含まれるとするべきではないとの意見が多勢を占めたと整理をさせていただいております。
 これらの整理を踏まえまして,(ⅰ)から(ⅲ)の各論点を検討した限りでは,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体的な権利とする制度的な意味については,必ずしも明らかではないと考えられると整理してございますが,しかしながら,出版という社会的経済活動がこれまで紙媒体のみによって行われてきたため,著作権法という紙媒体の出版を対象とした規定のみを定めていたが,技術の発展によって紙と電子の双方の形態によって出版が行われるようになったという変化を踏まえ,出版権の概念を拡大し,その一内容として電子出版に係る権利を含めることが適当であるとの意見も示されていると記載させていただいております。
 これらを踏まえまして,エでは小括をさせていただいておりまして,小委員会における検討を踏まえれば,一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化する場合との差異は特段ないと考えられる。本件について関係者の意見に隔たりがあるのは,電子出版についての契約慣行が十分に確立していないことが一因となっていると考えられると整理をさせていただきまして,出版権制度が設定契約を基礎とする制度である以上,出版界として,出版者と著作権者が協力して契約慣行を形成していく努力を行うとともに,実際の契約締結過程においても,出版者が著作権者に対し契約の範囲を説明し,契約上明示していくことが極めて重要になると考えるとさせていただいております。
 こうした出版界の取り組み等を通じ,著作権者と出版者との間に信頼関係が構築されれば,紙媒体での出版と電子出版に係る権利がおのずと同一の出版者に一体的に設定されていくことが想定され,そのことにより,出版者が紙媒体での出版及び電子出版を行うだけでなく,インターネット上の海賊版に対応できるようになることが期待されるとしてございます。
 最後に,これらを踏まえまして,電子書籍に対応した出版権の立法化に当たっては,小委員会で示された関係者の意見や出版・電子出版の実態,出版者の役割等を考慮することが必要であると考えられるとまとめさせていただいております。
 次に3の「客体の在り方」,それから,第3節の「権利の内容」につきましては,特段中間まとめから変更がございませんので,省略させていただきたいと思いますが,25ページになりますけれども,先ほど御説明をいたしました一体化の是非についての議論において,権利の内容に関連する御意見が示されてございましたので,脚注の50を追加してございます。
 それでは,次に,3,「『特定の版面』に対象を限定した権利の付与の是非」についてでございます。特定の版面に対象を限定した権利の付与の是非につきましては,特段中間まとめから変更がございませんので,省略をさせていただきまして,27ページをお開きいただきたいと思います。
 27ページの下ほどにあります「[2] 出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策」についてでございますが,小委員会においても時間をかけて御議論いただいたところでございます。記述の分量が増えておりますので,中間まとめからは新たにア,イ,ウ,エ,オと見出しをつけて整理をさせていただいておりますが,具体の内容につきましては中間まとめから大きく変わったというものではございません。記述の追加があったところを中心に説明をさせていただきたいと思います。
 29ページをお開きください。ウのところでございます。「対象となる媒体を雑誌などに限定した出版権の設定の可否」について整理をさせていただいております。この点につきましては,中間まとめまでの議論に加えまして,前回の小委員会においても関連する御意見があったかと思いますので,幾つか追記をさせていただいております。
 対象とする媒体を雑誌などに限定した出版権を設定することが可能かどうかについて,ここに列記しておりますような意見が示されておったわけですけれども,まとめますと,「このように」から始まる段落でございますが,小委員会では,物権的に,雑誌のような媒体に限定した出版権を設定することは,現行法においても可能であるとの意見が示されたが,一方で,こうした細切れの出版権を無数に認めることによって実務上の混乱が生じるおそれがあること,さらには,物権的に限定した出版権では,当該限定と同じ媒体で流通している海賊版にしか権利行使できないため,海賊版対策としては不十分であるとの意見も示されたと整理させていただいております。
 そして,これらの意見に照らせば,出版権の効力として雑誌限りの出版権を設定できるか否かは別としても,契約自由の原則から当事者間の契約(債権的合意)により,出版態様を雑誌に限定することは,少なくとも認められることから,こうした当事者間の契約を行うことによって,出版者と著作権者との間において対象とする媒体を雑誌などに限定することが考えられると記述をさせていただいております。
 次に,30ページの下段のほう,オの「みなし侵害規定の創設の可否等」をごらんいただきたいと思います。31ページをお開きください。みなし侵害規定の創設につきましては,積極的な意見がございました一方,中間まとめにおいても法制的にハードルが高いのではないかとの意見が示されたことを記述しておったところでございます。
 その次の段落になりますけれども,前回の小委員会において示された御意見を踏まえて追加した部分でございます。著作権者が権利行使を望まない場合に,出版権者がみなし侵害規定により差止請求等が可能であるとしてよいのかという意見や,現行の出版権を見直して,紙媒体での出版に加え,電子出版に係る権利を出版権の一内容に含める場合においては,電子書籍に対応した出版権を設定することができる状況であるにもかかわらず,電子書籍に対応した出版権を設定しないで,みなし侵害規定により差止請求等を行うのは,法律としてバランスを欠くという意見が示されていたところでございます。
 また,次の段落では,著作者の立場の意義より,期間限定の著作権譲渡契約を締結するなどの方法を考えられる旨御意見がございましたので,著作権者自らがインターネット上の海賊版対策,海賊版に対応することに加えまして,期間限定の著作権譲渡契約を締結するなどの方法も考えられる旨を追記させていただいております。
 32ページのカ,「小括」でございますが,2段落目後半にございますように,電子書籍に対応した出版権による対応につきまして,紙媒体での出版と電子出版に係る権利が一体的に設定されるのであれば,出版者が海賊版に完全に対抗できることに照らせば,まずは電子書籍に対応した出版権の創設により対応する方向で進めることが適当であると考えると整理をさせていただきました。ただし,電子書籍に対応した出版権を創設するに当たっては,個別には様々なケースが考えられますことから,出版者が海賊版に対応できるようにさらに制度設計を工夫することも考えられる旨,脚注の62に記載をさせていただいております。
 そして,本文の「さらに」から始まる段落の中ほどでございますが,海賊版対策は喫緊の課題であり,出版者のみならず,著作者等も含めて海賊版対策の必要性については共有されていることに鑑みると,電子書籍に対応した出版権による対応に加え,実務上,著作権者が自ら海賊版に対応することや期間限定の著作権譲渡契約や一部譲渡契約を締結するなどの方法も含め,著作権者と出版者との間でこれらを組み合わせた対応により効果的な海賊版対策を行うことが重要であると整理をさせていただいております。
 33ページをごらんください。「第4節 出版権者による再許諾」についてでございます。特段中間まとめから変更がございませんでしたので,説明を省略させていただきたいと思いますが,前回の小委員会の議論を踏まえまして,電子書籍に対応した出版権を有する者と単に事実上の配信行為を行っている者について混同が生じないようにするため,脚注の64におきまして,出版者が配信事業者に配信行為を行わせている場合,法的な行為主体としては,配信事業者が配信を行っているのではなく,出版者が配信を行っていると評価される場合もあると考えられることを追記させていただいております。
 それから,34ページの「第5節 電子出版の義務・消滅請求について」も,説明を省略させていただきたいと思いますが,前回の小委員会において,一体化の是非についての御議論の際,義務の在り方についても議論になりましたので,その概略を脚注の66において記載をさせていただいております。
 35ページをお開きください。「第6節 その他」では,これまで存続期間や制限規定の在り方,権利関係の明確性の確保について記述をしておりましたが,前回の小委員会での御意見を踏まえまして,1つ目に「著作物の修正増減」について追加をしております。著作物の修正・増減につきまして,現行の出版権では,出版権者が著作物を改めて複製する場合には,著作者は正当な範囲内においてその著作物に修正・増減を加えることができることとされており,このような著作者の修正・増減の機会を確保するために,出版権者が著作物を改めて複製しようとする場合における著作者への通知義務等が定められているところでございます。
 電子書籍に対応した出版権の場合にもそうした考え方は基本的に変わるものではなく,現行の出版権の考え方とのバランスを踏まえつつ,著作者が修正増減を加えることができるようにすることが適当であると整理をさせていただきました。
 37ページをお開きください。最後に,「おわりに」として,この報告書(案)の内容をまとめて記載させていただいております。そのまとめに加えまして,一番下の段落でございますが,今般の取りまとめを踏まえ,電子書籍に対応した出版権を創設することにより,出版者の電子出版を行う地位が法的に強固なものとなり,出版者が自ら独占的に電子書籍を制作・配信するだけでなく,権利者として主体的に第三者と電子出版に係る契約交渉を行ったり,インターネット上の海賊版に対し権利行使することができるようになると考える。また,紙媒体での出版と電子出版に係る権利を一体的に設定を受ける場合には,出版者は紙媒体と電子媒体を通じて出版事業を安定的に実施することができるようになると考えられる。
 38ページになりますが,このことにより,著作者の利益の保護のもと,出版者の権利と著作者の権利の調和が図られ,電子書籍の普及が促進される結果,ユーザーにとっても利用しやすい健全な電子書籍市場の形成が期待され,また,これまでの紙媒体の出版もより豊かになることによって,我が国の多様な出版文化が次代に受け継がれ,かつ,さらに進展し,活力ある社会の実現に寄与するものと考えると結ばさせていただきました。
 以上,長くなりまして恐縮でございますが,報告書(案)の内容につきましては以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。それでは,報告書(案)について議論を行いたいと思います。議論の進め方といたしましては,本小委員会の中間まとめから変更があったところを優先して議論を行い,その後,電子書籍に対応した出版権の整備に関する内容全般についての議論を行いたいと思います。さらに,加えて最後に,報告書(案)全体を通じて御意見を伺えればと思っております。
 まず具体には,報告書(案)の20ページから24ページまでの「紙媒体での出版と電子出版に係る権利の一体化の是非」について議論を行いたいと思います。次に,報告書(案)の27ページから32ページまでの「出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策」について議論をいただきたいと思います。それから,第3に,報告書(案)の18ページ以降の第4章,「電子書籍に対応した出版権の整備について」の全般につき,御議論をいただきたいと思っております。ここでは,出版権者による再許諾,電子出版の義務,消滅請求など,まとめて御議論いただければと思っております。そして,最後に,報告書(案)の全体を通じて何か御意見がございましたらお願いできればと,このように思っております。
 本小委員会での議論も佳境に入っておりますことから,本小委員会として最終の取りまとめに向けできるだけ効率的な議論が集中してできるように御協力をお願いしたいと存じます。
 それでは,まず紙媒体での出版と電子出版に係る権利の効力の一体化の是非について,報告書(案)の20ページから24ページですけれども,ここについて御意見がございましたらお願いをいたします。どうぞ,野間委員。

【野間委員】 2ページ目の「はじめに」のところに,電子出版の定義というものが改めて示されています。中間まとめのときは,電子出版というものに対していささか不明確なところがあったのですけれども,今回,電子書籍の企画・編集から配信に至る行為をすることを電子出版ということで明確に御定義いただきました。これによって20ページ目の電子出版することを引き受ける者の定義が非常に分かりやすくなったと,大変評価をいたしております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。金原委員,どうぞ。

【金原委員】 20ページ以降のところですが,出版権の一体化のところにつきましては,私ども書籍出版協会が意見として申し上げたことを十分斟酌していただいて,適切におまとめいただいていると思います。
 あとは,ここにも書かれていますが,運用の問題になろうと思いますので,その点につきましては,著作者の方々と出版社の間で,出版契約を含めて,権利の在り方,またその後の侵害に対する対応については,十分話し合いを深めた上で対応していきたいと思っております。
 したがいまして,ここの部分につきましては,このまとめを尊重した上で,ぜひ法制化を図っていただきたいと考えます。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。どうぞ,吉村委員。

【吉村委員】 基本的には契約をベースとして,いろいろな形をとれるということになっておりますので,そこは私としても特に異論がないところであって,今,金原委員がおっしゃっられたように,出版社の方と著作権者の方とのきっちりとした話し合いのもとで,両者が納得の上で契約内容を取り決めていくということが大原則になるだろうと思っております。そういう形のまとめになっていることは評価したいと思います。
 その上で一点確認したいのですが,消滅請求の話です。今回,出版業界さんにおかれましては,業界を挙げて出版権の一体化を実現させるためにキャンペーンを展開されておられました。パブコメの際には,ホームページでも一体化を求めるコメントのひな型のようなものまでお示しされ,出来る限り一体化支持のコメントが多く提出されるように努力されてこられた経緯がございますし,またそれと同時に,紙と電子,両方出版していくというのは出版者の社会的責任であるともおっしゃっておられました。
 つまり,紙も電子も両方とも責任をもって出版していくのが原則だということですよね。この点,まとめにおいては,義務違反に対応する権利だけが消滅されるということになってはいますけれども,出版業界としては,両方の形態で出版していくんだという覚悟を持って取り組む旨を表明されているのだと思います。そうした中にあっては,片方の義務を違反したときに,両方剥奪されるということがあってもしかるべきというぐらいの気概を持っておられると理解してよろしいでしょうか。これは出版業界の矜恃の問題だとも思っており,その点について少しコメントをちょうだいできればと思っております。

【土肥主査】 じゃあ,金原委員,特に注の46のところもよく踏まえた上で,今の御質問に御回答いただければと思うんですけれども。

【金原委員】 今の吉村委員の御質問に対してお答えを申し上げます。仮に一体型で設定をして,紙も電子も両方とも出版いたしますということで契約を結んだとしても,もしその義務を果たしていない,つまり,紙も電子も両方とも,いや,両方ともでないにしても,どちらかを実行していないというようなことがあって,著者の意向にそむいているというようなことがあるということになりますと,これはもちろん契約を着実に実行していないことですから,消滅請求をされても仕方がないと思います。
 ただし,その前に,先ほど私も申し上げたとおり,著作者の方と十分なお話し合いをした上で,我々も,無責任な契約,つまり,どちらかしか発行しない場合には出版権を両方一体型で設定するということをしないようにするという,そういう,何ていうんでしょうかね,そのつもり,そういう気概というか,そういう方針というか,そういう体制にするということが必要であろうと思います。
 ですから,こういう制度ができた暁には,私どもも,出版社としても,著作者の方と,一体型に設定しておけばオールマイティーなんだからいいだろうなんていう,そういう考えではなくて,それぞれの出版事情,それから,各社の出版の能力あるいは方針に沿って可能な範囲の契約を結ぶように,そういうふうに業界を動かしていかなければいけないと思います。
 出版物によっては,紙と電子を別々に出版していく,別々の事業者によって出版していくということのほうがいいものもないではないと思います。しかし,読者の方々の要請にも応えなきゃいけませんので,そこは何が一番いい方法かということは,著作者の方と十分なお話し合いをした上で,一体型として両方の義務を果たしていくのか,あるいは,別々として別の事業者がやるのか,あるいは,著者の先生とのお話し合いによって,これは電子出版に向かないという出版物であれば,これについては,著者との合意の上で,電子は当面やりません,あるいは控えましょうというようなことももしかしたらあるかもしれない。
 つまり,その辺については,著作者の方と十分なお話し合いであろうと思います。私どもも,出版社というのは,当然のことながら,著者と読者の期待に応えるということですから,そもそも著者の方々の意向に反するということは私どもはやるべきではないと考えておりますので,その前提で運用していきたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございます。

【吉村委員】 考えていることがほとんど同じだということで,少し安心をしたところです。こうした制度設計を「原則一体」と呼ぶのかどうかは,正直,私にはよく分かりませんが,現実的で共感できる考え方であり,ぜひその方向で取り組んでいただきたいと思います。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございます。この報告書(案)に書かれておる22ページの真ん中あたりにある大勢的な意見では,割合この委員会の中でも中立的な立場の方の御意見が多かったと思っております。矜恃の問題,あるいは意気込みとして金原委員がおっしゃるような形でお進めいただくというのは大変結構でございますけれども,基本的には1の本文に書いてあるような内容ですね,一方の義務違反の場合に全部の権利が消滅するという考え方ではない,そういう立場を御支持になるのかどうか,その点,最後にちょっとだけ確認をさせていただければと思います。

【金原委員】 仮に一体型で設定した場合には,両方の出版義務が生じるわけですが,その場合に,仮に紙だけ発行されていたということについて,じゃあ,消滅請求があったら,紙も消滅してしまうのかということについては,これは私ども出版社としても,実務的ではないし,また,それは著作者の意向にも反するのではないかなと考えます。そこは,著者の方とのお話し合いですが,両方消滅するということには,当然我々両方の当事者として持っていくべきではないのではないかと思いますので,十分話し合いをした上で,仮に消滅請求が出るとしても,それは実行されていないほうのみについて消滅していくという形を取るべきであると思いますし,また,そのようにお考えいただきたいということです。

【土肥主査】 ありがとうございました。この点,ほかに。吉村委員。

【吉村委員】 考え方はそのとおりだと思いますが,やや疑問がございます。私は,片方の形態で出版できない事態に陥りそうなものは,そもそも一体的に契約すべきではないのではないかと思います。一体的に契約しておいて,後から片方できない等といった事態は,そもそもあってはならないということではないでしょうか。言い換えれば,一体型で設定する場合は,片方出版できない時に両方の出版権について消滅請求できるくらいのものでなければいけないのではないかと思います。その点はいかがですか。

【金原委員】 よろしいですか。

【土肥主査】 はい,どうぞ。

【金原委員】 おっしゃるとおりだと思います。両方できないのに,両方の契約をするというのは好ましい状態ではないと思います。最初から電子をできないんだったら,先生,これは電子で私どもでは対応できません,ということで,紙だけ設定すればよろしいのであって,できないものを最初からできるという,そういうのは好ましい状態ではありませんので,先ほど主査のご質問がありましたけれども,そういう状態がそもそも起こらないような状態にしておくということが望ましいと思います。あくまで仮の上の話ですから,そういう仮の状態が起きないように我々は努力が必要だということではないかと思います。

【土肥主査】 よろしゅうございますか。じゃあ,ちば委員,どうぞ。

【ちば委員】 著作者と出版社がよく話し合えばいいという話が先ほどからたくさん出ていますけれども,それがなかったからこういう問題,いろんな問題が起きているので,著作者が知らないうちにいろんなことが決まっていってしまっているということが非常に問題なんですね。そういうことを根底に,今までがそうだったから,これからも,ちょっと我々も,ちょっとそういうことで,今までは出版社に全て任せてきたんですけれども,そうすると,出版社の都合のいいほうに,いいほうにどんどんどんどん転がってしまって,著作者のほうの権利がどんどんどんどん削られてしまっているという現実を,今,こういうことを見据えて,こういう会議が行われているんじゃないでしょうか。ちょっとその辺をもう1回確認したいと思います。

【土肥主査】 確認というか,基本は,クリエイターの方も,こういう出版の分野において極めて重要なキーパーソンになるわけでありますので,こういう委員会における議論を通じて,重要な一方の当事者として,今後電子書籍の問題,電子出版問題における契約においては,どういう契約内容にしていただくのがいいのか,そういうことを十分検討して考えていただいた上で,出版権設定というものに臨んでいただければと思いますので,ぜひよろしくお願いいたします。永江委員,どうぞ。

【永江委員】 両方の権利を一体的に設定して,片方しか行使されなかった場合ということですけれども,近い将来,あり得る,考えられるだろうという形は,電子書籍でまずテスト的に作ってみて,それが売れるか売れないかを見て紙を作るみたいなケースがあり得ると思うんですね。それが結果的に,じゃあ,電子書籍で作ってみたけど,あまり評判も芳しくないから,じゃあ,紙は取りやめようとなったときに,両方の権利,消滅するというふうになると,出版のハードルが,著作者にとってはハードルが上がってしまうことになるわけですよ。要するに,紙も電子も両方とも売れる見込みがないと契約されないから出せないみたいな。もちろん,いや,電子だけ売れたんだから,紙の権利は別にしてとか,あるいは,紙も電子もということでそもそも契約したのに,電子しか作れなかったとなったら,権利なくして別のところから出せばいいじゃないかということも考えられはするんですけれども,でも,あまり厳密に,両方の権利を出版社が契約どおり行使しないんだったら,両方とも消滅してしまうというふうにハードルを上げてしまうと,書いたものが世に出にくくなってしまうのではないかというのが著作者としてはひとつ懸念されるところです。
 だから,あまりがんじがらめに,理念として契約を結ぶからには,両方ともばんばん売るだけのプロモーションその他しましょうよということは分かるんですけれども,でも,出版は水物ですから,出してみないと分からないということが多いので,両方ともということで出版社を縛ってしまうと,結果的には出せるものがだんだん少なくなっていく,確実に売れるものしか出せなくなるとなると,知名度のある作家のものしか出なくなるんじゃないかということで,少しそこは心配です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか,この点。松田委員,どうぞ。

【松田委員】 今までの消滅の点の御意見を聞いておりますと,片一方が不履行であっても,全部一遍になくなるのはどうなんだろうかと,これは問題だというような御意見が強いようであります。これ,貫いていきますと,法律的にはやっぱり出版設定契約と電子出版設定契約がそれぞれ別の契約だという建前を取らないと,そうならない可能性があるということを一応言っておきたいと思います。
 それから,金原委員が盛んに言われていた,これからの話し合いが十分行われて,実態に合うようにすべきだというのは,これはみんな同じ意見だろうと思います。私も同じ意見であります。この報告書で,一体化については,立法的にどうするかについては,実は2つ書いてあるんだろうと思います。一体化してもいいという意見と,そうでない,別々にしようという意見と2つ書いてある。だから,立法段階ではどちらになるか分からないということが,私,この報告書だろうと思っております。それでいいんだろうと思っています,この報告書の段階においては。しかしながら,どっちかになるわけです,立法段階では。そのときに,一体化したときには,著作者の団体のほうが協議について大きな利害関係を持つということを御認識ください。ですから,出版社が引っ張っていっちゃって,いつの間にか分からなくなっちゃっているとか,権利が向こうに行っちゃっているとかというようなことのないようにお願いしたいと思います。
 それから,2本立ての場合には,一体化しない場合の立法が行われた場合には,むしろ書協,出版社のほうが積極的になって実態に合うように協議をしていかなきゃならないという,そういう場面が生じるとなると思います。いずれにしても,十分なお話し合いをしていただきたいと思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。あんびる委員,どうぞ。

【あんびる委員】 ありがとうございます。私は21ページの一番上の段落について少し疑問が残りましたので,述べさせていただきます。もし一体化になった場合につきまして,出版社がこのような準備をしているので大丈夫ですよということについてここでは書かれているんですが,例えば仲裁機関を設けることを検討しているというふうにありますけれども,仲裁機関というのは,中立的立場のものであるはずであって,出版社側が一方的にこういったものを作ろうというふうに計画されるものではないような気がいたしております。もしこのような機関を作るのであれば,著作者の意見も聞いてほしいと思いますし,あるいは,もっと中立的な立場の団体の方にお願いをするという形のほうがよいのではないかと感じております。
 また,先ほどちば先生からのお話にもありましたとおり,この報告書の総意としましては,出版社と著作者が話し合うことが大事だということでございましたが,ここの21ページの一番上にもございますとおり,一体化になっても,契約について,出版社は契約の整備に協力をするという形で書いてございますし,今までも一体化について語るとき,出版社は契約について十分に話し合う準備があるということを何度も言ってくださっていました。私は,それが出版社全体の総意であるのか,全ての出版社がそう思われているのか,書協もそう約束できるのかということがとても疑問に感じております。そのことを,もしこの場でお聞きできるのであれば,それが出版社としての総意であるのかどうか,是非お聞きしたいと思います。

【土肥主査】 出版業界について総意をこの場で御発言できる方というと,あんびる委員はどなたがそういう立場においでになると思いますか。

【あんびる委員】 では,金原委員にお願いします。

【土肥主査】 それでは,すみません,恐縮ですけれども,金原委員,お願いいたします。

【金原委員】 立場上,今の御質問にお答えしなければいけないんだと思うんですが,総意で書協として絶対にこれをお約束しますということは,心情的には言いたいですが,日本の出版社は,数千社,3,000社とも4,000社とも言われておりますが,かなりの数があります。したがいまして,私ども協会単位では,もちろん日本中の全社,全部の出版社を管理するということは,これは不可能ですので,それについてお約束したいという気持ちはありますけれども,絶対にそういうことのないように保証をいたしますということは,これは申し上げられないことなので,その点は御理解をいただけると思うんですが,しかし,先ほども私も申し上げたとおり,やはり今後,新たな電子出版権という権利が発生するということになりますので,これまでとは状況が違うんだろうと思います。これまでの出版権というのは,紙媒体だけでしたので,先ほどちば先生も,余り説明がなかったと,いうような御意見がありましたけれども,これまでは紙媒体ですので,比較的分かりやすかったんですが,今後電子も含まれてくるとなると,これを両方の義務を課すのか,あるいは,それぞれ別でやるのかということについては,当然私ども出版社としては著者の先生方への説明義務が発生することになります。
 したがって,そこでの話し合いをした上で,著者の先生の御意向に沿うように,両方やるということで契約をするのか,あるいは,どちらかにするのかというようなことについての説明はこれまで以上にやらなければいけませんし,また,そのことについては,出版業界内で,私どもとしては徹底したいと思います。ただ,徹底するというのは,保証するということでは必ずしもありませんので,そういう意向に沿わない出版社が出現するというのも,これはそれを止めるということはなかなか私どもでも難しいですし,それに違反した出版社について何らかの罰則を与えるなんていうこともできませんし,これはもう私どもでも,努力義務を課せられていると思って周知を図り,先生方との問題が起きないように最大限の努力をするというところしかないと思います。
 それに加えて,ぜひ著作者の先生方も,この2つの権利ができるのであって,それを今後どのように運用していくかということについては,ぜひ出版社と積極的に話をしていただきたいと思います。自分はもう紙しかやらないと,あるいは,電子しかやらないと,あるいは紙と電子別々に考えたいという御意向ももちろんあると思いますので,これ,自分で,出版の首を締めるようで変な言い方かもしれませんけれども,出版社に対して,どんどん注文を出していただきたいと思いますし,出版社の言っていることをそのままうのみにするのではなくて,先生方もよくお考えいただいて,契約の当事者として,一方の責任を果たしていただけるように,是非この問題について御理解をいただいて,もう少し言いますと,その辺の力を発揮していただきたいということです。その力を発揮するためのお手伝いを私どもはいたしますけれども,やはり最終的な判断は契約の双方の当事者同士が決定しなければならないことで,私ども,著者の先生方のお考えを強制するわけにもいきませんし,変えるわけにもいきませんし,是非先生方も,こういう著作権制度,特に出版権の制度というものについて御理解をいただいて,出版社に十分ものが言える,そういう形を作っていただきたい。私どもはそれをむしろ歓迎いたしますので,そういう形で双方対等な関係を築き上げていくべきだと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。堀内委員,どうぞ。

【堀内委員】 今のあんびる委員の仲裁機関のことですけれども,この委員会でたしか私が発言いたしましたので,出版界の中でそういう機関が必要だろうという議論をして,いろいろな考えを今準備をしておりますけれども,当然それは著者と出版社がもめたときに,裁判をやると,お金もかかる,時間もかかる。もっと気楽に安心して頼めるものがあればいいなということで,そういうものを考えております。ですから,当然,著作者団体とか,出版団体,そして,この第三者機関,第三者の方を交えた協議が必要で,相談に乗るのは,例えば契約に詳しい弁護士の方々ということで,当然著作者団体の方々と一緒に作り上げていかなければなりません。そうすることで初めて,誰でも安心して相談できる機関ができると考えております。出版社ともめている時に,専ら出版社主導でできた機関には余り相談に行かないと思いますので,そういう安心できる機関を作るために,これから著作者団体の方々と御相談をしていこうと,出版界の中でそういう議論をしているということでございます。

【土肥主査】 瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】 今の議論をずっとお伺いしていて,非常に分かりやすいところもあるんですが,これまでの議論とまた違った内容も多少含まれてくると,いろんなことがあるかと思います。ただ,先ほどあんびる委員から出版社さんの総意ということを聞くということがございましたけれども,長いこの議論の中で,出版社さんというのは,非常に多様性があって,意見も違って,そこで出版文化が保たれているということがあるのではないかなということをやっぱり強く感じています。その中で,できるだけくくろうとされているんでしょうけれども,やはりなかなかいろんな方がいらっしゃって,いろんな意見があるんだなということを理解しています。
 そういった意味からいきますと,この一体化も含めて,この報告書に書かれていることは,少なくとも出版の方たち,かなり大多数の方たちの意見がきちんと反映されているものだろうというふうには思っています。その中で,この案の中でどう立法されるのか。例えばこれから内閣法制局との交渉もあるでしょうし,また,その後,実は国会に出た後,議員さんたちの中できちんと検討もされたりした上で立法化されるわけですから,そういうプロセスの中で,一番良いと思われた立法の形に落ちつくのであるでしょうし,そのときに,今金原委員のおっしゃったような話し合いということは基本的にあると思いますし,重要だと思っています。
 ただ,この場で,例えばこの報告書以上に,一言一句どう使うか,どういうふうにするかというのを,出版界の総意としてという議論にすると,ちょっと難しい議論になるのかなと思います。ですので,出版の委員の方々,これは,それぞれ,金原委員も,野間委員も,堀内委員もお立場のある方ですけれども,いきなり出版界の総意といって全体を引っくるめた議論というのは,これは,これまでの中でいっても,質問自体,どこまでお答えになれるのかなというのは,正直,これは申しわけないですけれども,疑問に思っていますし,その中での立場の方がそういう発言があったというふうには理解しますけれども,私は,出版界の,少なくともずっとやってきた総意は,この案の中にきちんと入り込んでいるんじゃないかなと思いますので,この案をもとに速やかに,最も良いと思われる方向性で立法化をしていただくという方向に行くのが一番望ましいのではないかなと思います。この最後に来て,一言一句の部分というか,御発言の一言一句について議論していくというふうな方向では,また難しいかなと思いましたので,蛇足かもしれませんが,付け加えさせていただきました。よろしくお願いします。

【土肥主査】 挙がっていますね。どなたが一番最初に挙がっていました? 里中委員,お願いします。

【里中委員】 そもそも今回このような問題,問題と言うとちょっと問題発言みたいですけれども,様々出版界が努力なさって,海賊版を何とか一掃する努力を形にするということで始まったのがスタートだと思うんですけれども,法というのは,一度決まってしまうと,そのまた解釈もいろいろ出てくると思うんですね。どうしてこうやってすごくいつも不安になってしまうかというと,私がいる分野の話ですが,著者も著作権についてよく知らないままやってきました。現場の編集者も著作権について知らないままやってきたので,そこで取り交わされてきた会話というのは,過去4,50年間にわたって,出版社がもう既に著作隣接権を持っているという前提で話されてきたことが多かったと認識しております。ですから,いまだに著作者の多くは,自分で自分の作品を自由選択で生かすことができないと思い込んでいらっしゃる方も多い。勉強不足だと言われればそれまでです。また,著者として責任を果たしているかと言われれば,いろいろな,例えば締め切りを守らないとか,いろいろあると思います。でも,そういう,まるで古い時代のような口約束とお互いの感情的信頼の中で醸成してきた世界だと思っております。
 でも,今,この時代の変化に向かって,何をどうすれば権利が守れるか,より良い出版環境が守れるかということで,双方努力をしているんだと思うんですね。この双方の努力というところで,先ほどから,言質は取れないんですけれども,この場にいる,ちゃんと分かった方に関しては,相応の努力をするということで理解を求められるという発言がありました。ただ,現実に,出版社の現場の著者と直接会う編集者たちはいかがなものかと思う事例がいまだにたくさんございます。どうか,真っ当な出版社の方たちは,自分たちの現場の現場編集者への著作権教育をよろしくお願いしたいと思います。
 驚くべき事例がありまして,つい2週間ほど前ですが,同業者から相談がありました。出版社の担当編集者から言われたそうです。契約を解除しようとしたらしいんですが,それはできないと。なぜならば,過去にさかのぼって,あなたの全てのうちで書いた作品については,今後電子化の権利はうちで持つということでもう国で決まったのだと言われたと。本当ですかと聞かれて,とんでもないと,その編集者と話をさせろと言いましたが,昔からこういうことは,もう頻繁にございます。また,勉強不足の著作者は,自分には著作権がないのだということで,何も言えずに塩漬けになってきたという過去の事例が山ほどございます。
 今懸念しておりますのは,一体型となったときに,出版社,少なくともこの場で話していらっしゃるような出版社は,本当に一体型をきちんと利活用できるのかということにも疑問がございます。実は大変な負担を強いるのではないかと思っております。自分のところで出した紙の出版物に対して全てを電子化しなければいけないとなると,現実にはどれぐらいの割合で電子化されているかというと,ごく一部です。はっきり申し上げて,電子化してよく売れる作品だけ電子化していれば済んだ今の状況のほうが自由でいいんじゃないかと勝手に同情しておりますけれども,様々な事例がございます。
 その事例を,今,法改正をどうするかという場で,お互いに気持ちを分かってほしいとか,美しい言葉で努力しますと言って,これに効力があるのかどうか。あくまでこの場は,法改正するか否か,するとしたらどういう形かということを話す場だとは思っております。思っていながら,非常に感情的な事例を申し上げて申し訳ないんですけれども,願わくば,これ機会に,自由で明るい出版の世界というのが著作者にとっても実感できるようなものになればうれしいと思います。
 いろいろものが言える方はいいんですが,例えば消滅請求にしましても,消滅したいと言える著作者がどれだけいるか。力のある,売れている一部の作者しかそれを言えないと思います。そして,出版社にとっても,そういう方に言われると困るということでしかないのではないかと勝手に疑いの気持ちを持っております。弱くて,力がなくて,何の約束もされず,電子化もされない著作者が山ほどいます。そういう作者たちは,出版社に何か言った途端に干されるんじゃないか,今,細々ともらっている仕事ももらえなくなるんじゃないかという不安に駆られております。何の保証もない世界の中で,夢と情熱だけで書いている作者が山ほどいるわけです。何の生活の保証もありません。その中で,一方的に印税率も決められ,それも法律だと思い込んでいるんですね。出版契約の機関の法律だと思い込まされているわけです。契約と法律の違いすら分からない弱い著作者が山ほどいる。その中から抜きん出た人が大きく花を開き,発行部数にも貢献していくわけなんです。
 どうか,力のない著作者が,難しくて分からないけれども,どうにもならないんだと思わないような説明の仕方で,法改正がどっちに転ぼうと,きちんと責任を持って分かりやすい契約書を作っていただくことを望みます。
 外圧とか何とか言いますけれども,これまで築き上げてきた日本の出版文化は,非常にウェットな感情的つながりで著者と出版社の信頼関係の上に成り立ってきました。でも,全ての著作者が出版社を信頼しているか,それは定かではありませんし,出版社も,全ての著作者を大切に思っているか,これも確かではありません。競争の世界ですから,二度とこの人の原稿要らないと思われる著作者も山ほどいるわけですね。そういう不安定な世界の上に,法改正ということが語られたことをきっかけに,明快な契約が取り交わされる,そういう世界になることを望んでおります。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】 ありがとうございました。じゃあ,次は,河村委員,お願いします。

【河村委員】 素朴な疑問がございます。資料が送られてきて,パブコメも読ませていただきました。23ページに,一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化する場合の差異は特段ないと考えられると書かれており,おおむねそういうふうに意見をおっしゃる方が多いのですが,特段差異がないのに,あれほどたくさんの一体化でなければだめだという意見が出版関係の方から強力に出てくるということ自体,私にはなぜそうなのかが分かりません。特段違いがないのであればいいはずなのにと思います。やはりり違いがあるからあれほど強い意見が出るんだろうと思うんですが,ここではきれいごとばかりが出てきてその辺りがはっきりしません。しかも,契約に関して強い立場にあって,知識があって,優越的地位というか,そういう側の方から,どうしても一体型のほうじゃなきゃだめだという強力な意見のパブコメが,おそらくひな型を使ってまで多数出てくるということに,やっぱりこれは同じじゃないからとしか私には思えません。でも,そのことについての説明は,きょうに至って,何となくうやむやになっている気がします。
 その上で,やはり同じじゃないんだということがそこにあるのであれば,今日もこの場で著作者の方たちがおっしゃっている懸念とつながっていくお話だと思うので,まずはこの言葉,ここに書いてあるとおり,特段差異はないというところを,そのことをきちんと踏まえた上で,どういう制度になるとしても,特段差異はないという性質の,そういう制度になることを望んでおります。もし仮に一体型になるとしても,そのことで何かしらの違いが起きるということがないような制度設計にしていただきたいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございます。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 この委員会に法律家は必ずしも多くなくて,少ない人員として最初からの印象があるのですが,やはり一体化という言葉が少なからず不分明ということであります。我々法律家なので,法的な意味として捉えるのが本来であるのですけれども,ここで,法的な意味での物権自体の一体化というよりは,社会的意味として契約の結果一体となっているようであります。まず事務局のほうで大変に分かりにくい複雑な状況をきれいにペーパーでまとめていただいて,これは大変いいサマリーないし描写になっているかと思うのですが,22ページ,先ほども多勢を占めたという注46がついているところで,消滅請求の在り方については,紙媒体での出版と電子出版と分け,義務違反に対応する権利のみとする。結論としては,これは多勢を占めたことに間違いないと思うのですが,これに対して吉村委員が言われたのが,理論的に本当に一体だったらこうなるのかという御趣旨ではないかと思いますが,このあたりにあらわれているのが,そこを事務局のほうで苦労してまとめられたのは,私が前に申し上げたような,物権的一体ではなくて契約的一体とかいうことにかかる。契約として最終的に設定されたものとして一体となっていればということであれば,むしろ,権利自体としてはばらばらであることが前提になっているかと思うのですが,このあたりは,法的に厳密な意味での物権的一体という趣旨では,ここでは,ペーパーでは書かずに,契約の結果として最終的に一体となっている。私が理解するところでは,出版社さんが望んでおられたのはまさしくこれだと思います。前回申し上げたように,代理人というのは,本人が言ったとおり代理するのがいい代理人ではなくて,本人の真の意図をはかってそれをうまく構成してあげるのがよい代理人だという例を出しましたけれども,まさしくそういう話であります。出版社さんが一体として今まで言われているものというのをまとめていただいたら,こういうものとなるのであって,契約の結果としての一体という,そうなれば,理論的に言えば,片一方の義務違反だったら,片一方だけということになって,このところは,多勢を占めたというところの議論に行くのであります。その意味で,御懸念があるのも,一体というのがムード的に使われているのだけれども,ブレークダウンしていくと,ここで具体的に書いていただいたようなことを称して一体と呼ぶかどうかというのは,やや言葉の定義みたいなところがありますが,おそらく法的な,厳密な物権的意味での法的一体というよりは,契約の結果として一体的に設定されたというのは,まさしく両方,両者納得の上で,紙も設定するし,電子も設定すると言っていれば,それは一体ということになるはずでしょうから,このあたりを,ややムード的に言ったことをきちんとブレークダウンしていった結果が,事務局のペーパーであろうし,そうであれば,おそらくあまり御懸念になるようなものでもないのではないかと端で聞いていて思いました。
 その関係で,次にまた繰り返しになりますけれども,最後は,これで法制をどうするにしろ,最後は契約です。これは信頼の証だと前々回申し上げましたが,そういうことで,両者納得して結んでいくということなので,これはもちろん法的枠組みとして重要ですけれども,最後は,契約をきちんと両者納得して結んでいくという,契約プラクティスをどのようにやっていくかという別の問題です。法制自体と関連しているけれども,もう一つの,車の両輪のような別の問題なので,それはまさしく契約について,プラクティスをどういうふうに,両者納得したものを,どういうひな型を作っていくかは別の話なので,これは,法制の問題としては,このペーパーの形の話だし,先ほど言われたようなものは,良い契約プラクティスを組んでいくという,そちらのほうのプロセスの話ではないかというふうに,法律家として整理するとそういうことになるかと思います。そのように考えていただくと,今後契約をきちんとやっていけば,先ほどあったような御懸念は次第に払拭されていくのではないかと思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。報告書の内容として書いてある20ページから24ページの内容に関して,この内容の精神どおり,つまり,本委員会において議論されたどおりに,新しい制度が運営されていくかどうかについて御心配ももちろん,今伺っておりますと,あるようでございますけれども,そこについては,出版社のほうも十分配慮をすると。そしてまた,さらに仲裁機関なんていうものは,一方に偏執するような判断がなされるようであっては,それはもちろん仲裁機関たり得ないわけでありますので,まさにそのバランスの取れたそういう機関,あるいは,バランスの取れた新しい制度の運営がなされていくというふうに期待をしております。
 いただいた御意見等々を拝聴しておりますと,特段この点についての記載を改めるというようなことはなかったように思いますので,時間の関係もございますから,次に入りたいと思っております。
 次は,27ページから32ページなんですけれども,「出版物(特に雑誌)をデッドコピーしたインターネット上の海賊版対策」についての部分,27ページから32ページの部分について御意見がありましたらお出しいただければと存じます。堀内委員,どうぞ。

【堀内委員】 この報告書案では,出版社の契約等の実務上の努力によるところがすごく大きいように思います。もちろん出版社が引き続き海賊版対策に努力し続けることは当然としましても,自助努力にはおのずと限界があるということは何度もここで御説明してきたので,御理解をいただいていると思います。海賊版対策,ことに雑誌などの紙媒体のみの出版に対する電子的海賊版への対策が必要であるということは,この委員会でも共有されていると思います。本委員会の報告書確定後も,この報告書案にもございますように,みなし侵害規定も含めて,今後も引き続き有効な海賊版対策のための議論が広く行われるように希望したいと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。特にはございませんでしょうか。金原委員,どうぞ。

【金原委員】 今の堀内委員の発言とほぼ同じでありますが,海賊版対策については,32ページの最後の4行,実務上というところから最後のところまでですが,要するに,著作権法という制度で海賊版対策を,まあ,著作権法は1つのサポートにはなりますけれども,法制度だけで対応できるものではないと思います。したがって,今後こういう最後の4行にまとめられているように,著作者と出版社と相協力して,状況によっては,文科省,あるいは経産省,国のサポートも得ながら,特に海外については対応していくという,そういう仕組みを作ることが重要だろうと思います。法制度としては,これはこれで作った上で,別途その上で,我々がこういう仕組みを作り上げていくという努力をしていくことによって対応していきたいと思っております。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。特にはございませんか。
 それでは,27ページから32ページの部分については,特に変更等の御意見はなかったというふうに進めさせていただきます。
 それでは,報告書(案)の18ページ以降の第4章の「電子書籍に対応した出版権の整備について」の全般について御意見をいただければと思います。一部の内容はさきに既にもう議論しているわけですけれども,再許諾の問題,それから電子出版の義務,消滅請求,そういったところをまとめて御意見があれば伺いたいと思っております。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 電子書籍に対応した出版権に係る義務のところなんですけれども,ここに書いてあるとおり,これに合ったものを義務として入れることが適当であると書いてあるんですけれども,紙媒体であっても,電子媒体であっても,これは人に情報を伝える手段なんですね。ですから,目的としては,作家の方もそうだと思うんですけれども,多くの作品を多くの人に読んでもらうということが大事であると私は思っています。それぞれ,手段でありますけれども,特性がございまして,紙は紙の特性もありますし,それから,電子は電子の特性があります。それを十分検討した上で義務を決めていただきたいなと思っています。
 この会が始まったころに1回御説明をしたと思うんですけれども,電子媒体にして,テキストデータにしたことによって,今,テキストtoスピーチというソフトウェアがありますから,音に変わります。今まで目が見えなくて本が読めなかった方も,電子にすることによって読むことができるようになりますので,そういうことも含めて,多くの人が読めるような,読めるようになるというのが電子の良さですから,もちろん海賊版の件もありますけれども,とにかく多くの人に伝えるという意味での義務を決めていただきたいなと思います。以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ちば委員,どうぞ。

【ちば委員】 ありがとうございます。この出版関連小委員会でこれまで9回にわたって話し合われた結果は,それぞれの関係者が,それぞれの立場を主張して,尊重し,話し合った結果ですから,この内容は是非残して,今後も指針として大切に参考にしていただきたいと思っています。
 この委員会が一定の結論を迎えた以上,これからは,契約の在り方ですね。契約の在り方,これが大きく問われると思います。これまでも我々著作者たちは,紙の出版物を出すなら,紙出版の契約を結び,グッズなど,二次使用するなら,二次使用の契約を結び,電子書籍を出したいのなら,電子書籍の契約を結ぶ。つまり,やりたいこと,やれることのみを契約を交わすと,誰にも分かりやすく理解しやすい契約の形を取ってほしいとずっとお願いしてきたつもりです。そして,これからも,我々著作者は,単純でシンプルで分かりやすい契約であるべきという姿勢,願望は変わっていません。
 ですから,再来年に予定されている法律の施行までに,その運用の約束事を,出版社と著作者側,双方がさらに真摯に誠実に話し合いを続ける必要があると思っています。そして,その際には,出版社も,著作者も,これまでのように自分たちの立場や利益を主張するだけではなく,大きく将来を見据えて,大局に立って,出版物の文化,そして,何よりも読者や利用者の方々のことを最大限考慮した公益性の高い環境の実現を念頭に,実りのある議論が行われることを強く希望します。
 漫画著作者を代表して言いたいことの要約は以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかに。村上委員,どうぞ。

【村上委員】 私は,基本的にこの案についての補足意見的なもので,第1点は,ここで議論いろいろしましたけれども,一番大事な争点の出版権と電子出版権のところは,意見の取りまとめというか,合意ができればよかったのでしょうが,そこはできなかったので,両論併記に落ちついたのだと思います。それは,この小委員会の議論を反映していて,やむを得ないのかなと思っています。
 次は,当然立法の作業に移るわけです。別に著作権法だけじゃなくて,ほかの法分野とも共通でありますけれども,法律改正というのは,私の意見では,むしろ勢いで実現するというのが実態であって,なかなか理論どおりに動くわけではないと,これが事実だと思います。ただ,そうした場合であっても,法律改正で,非常に極端な法律改正がされた場合は,その後やはりうまくいかなくて,再度修正とか何とかせざるを得なくなるので,そのときの社会的なコストも随分大きいという,これが法分野共通の原則だと思います。その点は,十分に理解していただいて,法改正作業に移るというか,法案を作る作業に移っていただければと思います。
 それで,個人的には,私の意見というのは,有識者の意見に書いてあるとおりなもので,理論としてはわりとはっきりしている。一体化については,基本的には分けることが望ましい。これは権利の性格とか内容から,さらには,消滅請求権の行使など,権利,義務のバランスを取るという点からいっても,理論上は分けたほうが望ましいという結論になるんだろうと思います。
 それから,雑誌の連載についての差止請求についても,何度も出ていましたけれども,原稿を渡す段階で出版社に対して期間限定の著作権譲渡を行うとか,著作者から最初の差止請求権を代理行使できるような委任状を交付するというような,そういう形でも,法律上は十分に賄えるのではないかなと考えています。
 それから,サブライセンスについても,契約上のサブライセンスが任意に行われた場合には,当然それが有効なことは問題ありませんけれども,あえて自動的なサブライセンス権というのを法律上に書き込むことまでの必要はあるのかということについては疑問に思っています。そういう意味で,別立てにして,あとは,契約自由の原則のもとで,任意に契約内容の工夫とか,もしくは実務慣行の見直しでかなりなところは対応できるのではないかという,意見であります。
 したがって,この次に,法律改正案を作る話になりますけれども,一体化した出版権を設定して,そういう改正案が通ったとしても,内容的にあまり極端な内容にしたり偏ったものにすると,いろいろ問題が起こることがあるので,そこだけは十分に留意して改正作業をしていくべきであろう。補足的意見的には,そういう形でこれから進んでもらったほうがいいのではないかと思っています。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかに。どうぞ,吉村委員。

【吉村委員】 今回の見直しによって,今後は電子書籍のタイトルが急増していくことが期待されますけれども,やはり文化審でも,今後の状況をフォローしていったほうがいいのではないかと思っています。何を申し上げたいかと言いますと,一体化という話が出たときに,「出版物にもいろんなジャンルがあり,必ずしも電子化になじまないものもあるのではないかと思われますが,大丈夫ですか」とか,「中小・零細の事業者さんもいらっしゃいますが,大丈夫ですか」といった,ある種のご心配を申し上げて参りましたが,出版業界さんは,「大丈夫」「できる」というご認識であったと思います。そういった中,そうしたことが確実にできているのかどうかということについては,業界でもデータをきちんとと取って公表し,年々電子化が進んでいるということを明確に示していくことが求められると思います。出版社は,3,000から4,000近くの会社があると聞いておりますので,まとめ方は難しいかと存じますが,法改正から何年か経過して,仮に電子書籍のタイトルが今とそれほど変わらない状況だとした場合,それがなぜなのか検証するにあたり,「データがありません」「分かりません」といったことは許されないのではないかと思います。出版業界におかれては,責任をもって状況を説明できるデータを整備していただき,文化審の場でも確認できるようにお願いしたいと思います。

【土肥主査】 瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】 今,この議論が,最終的このペーパーに凝縮されている部分があって,私は非常にこれでよかったなと思っているんですけれども,電子に関して,やはり実態に売れる,売れないとか,そういう現実の商売上の話もありますけれども,社会的にはやっぱり促進をするということで,ニーズがあると,求められているということは,これは著作者も出版社も関係なく,あるという認識だと思います。社会的にも,一般の人たちがもっとこれによって便利になりたいとか,それから,それによって豊かな読書環境を広げていきたいという欲求は,あると思っています。
 今回,この議論で,実は,出版社さんの権利についてというのは入り口だと私は思っていて,これは最初の話であって,これからその流通の促進とか,社会的にどういうふうに広げていくのかについて,本丸というか,本当のところに入っていかなきゃいけない。そのときには,当然メーンプレーヤーとして,著作者だけじゃなくて,出版社さんも一緒に話し合っていかなきゃいけない。そういうコラボレーションができなきゃいけないというところになると思います。社会的には,これから実現されるべきいろいろな課題,例えば,前に中山先生の提言にございました,丸4に代表されるような新しいシステムへの取り組みはどうすべきなのかとか,どういうふうなことができるのかとかということを,きちんと実現する方向性をかなり早急に話し合って実現していかなければいけないのではないかなと私は思っています。
 ですので,今回のこの議論というのは,最終まとめに来ましたけれども,このペーパーをもとにどう立法されていくかというのは,先ほど村上委員のおっしゃられたことももちろん,実際どうなるか分からないという話もいろいろありますけれども,何らかの形で立法されたら,それを少なくとも有効活用して,先ほど言ったような,利用者も,権利者も,そして,途中をきちんとコントロールできる出版社も,いい方向の新しい展開にきちんと取り組めるということを前提にして,次の議論を是非速やかにこの後お願いしたいと私は思っています。
 法律で,立法論で,法制局とのお話し合い云々というのは,もう権利者の我々の話す部分ではなく,具体的な法制の話となりますので,我々としては,少なくとも次のステップで,明るく可能性のあるシステムを,是非この議論と結果をステップにしてやっていきたいと思うし,それについては,可能な限り,権利者も参加し,出版さんも,いろいろな御意見はおありでしょうけれども,新しい取り組みについて,前向きに取り組んでいただけたら一番いいんじゃないかなと期待しております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 すいません。先ほど村上委員のほうから御意見があったので,補足していきたいと思いますが,私が理解したところでは,サブライセンスないし再許諾は契約自由に委ねていいのではないかというお考えだと思うのですが,私は,一般的には再許諾というのは,契約自由に委ねていいという考え方もあろうかと思いますが,おそらくここでは,今まで現行法として80条3項で,再許諾をすることができないという条文があり,その関係で,現行法として再許諾できないという規定があるので,それを今後どうしていくかという問題です。何にもない白地のところだったら,契約自由に任せるというのもあり得るのでしょうけれども,このところは,ちょっとそのような意味では一般的な法分野とは違う,そのような条文を持つところだから,このような現行法との関係もあって,整理していく必要があるということであって,一般の法分野とは大きく違うという特殊事情があるということは御理解いただければと思います。

【土肥主査】 ありがとうございました。渋谷委員,どうぞ。

【渋谷委員】 ありがとうございます。報告書(案)の内容はこのとおりでよろしいと私も思うんですけれども,今後,特に金原委員にお願いしたいところなんですけれども,著作者との間の契約の結び方,それから,契約を結ぶ時期などについても,ひとつお考え願えたらと思うんですね。先ほどちば委員のほうからも出されたのですけれども,紙媒体で出版する,それから,グッズを販売するとか,さらには電子出版をする。この3つの行為といいますか,これはそれぞれ別の内容の行為でして,それを1本の契約で3つの内容の行為について合意をしてしまうというのは本来無理な話で,その必要が生じたときに,その都度契約を結んでいくというのが本来の姿ではないかと思うんですね。ずっとこの小委員会で出てきました一本化という問題も,これは出版社が,紙媒体の出版もするし,電子出版もすると,確実にやるんだと,これからその2つをやるんだというときでしたら一本化の契約を結んでも構わないんですけれども,将来電子書籍を出版するかもしれないというような状況で一本化の契約を結ぶと,おかしなことになってくると。
 再許諾についての同意もそうなんでして,単行本で出版しておいて,将来文庫本で出版するかどうか確実ではないわけで,再許諾の必要が生じたときに改めて契約を結ぶというのが本来の姿ではないかと思うんですね。
 ところが,出版業界のほうでは,モデル契約書というようなものを作成されるんだと思うんですけれども,そこには何から何まで盛り込んだような内容のものを作られるんじゃないかと思うんですね。これまでは紙媒体の出版1本でしたから,それに法律の規定もそんなに複雑でありませんから,1本に盛り込んだ1枚のモデル契約書で片がついたと思うんですけれども,今後はそういう慣行でいいんだろうか。
 ですから,著作者の立場からしますと,私も拙い専門書を何冊か出版した経験があるんですけれども,紙媒体の出版の場合ですと,契約書というのをいつ我々,提示されるかというと,本が刷り上がって,出版社から本を著作者分としていただく。その場で,実は契約,こうなっていますというので示されるんですね。私の法律書の関係の出版社では,大体そういうことです。そのとき1回限り,いろんなことが書かれた契約書を提示される。で,これでいいでしょうかと,署名をしたりすると。
 こんなふうにしてやっているものですから,将来電子出版とか,それから,漫画家の方ですと,グッズの販売なんていうことがあるでしょうけれども,そういうときに,いっときの1回限りの機会に契約させられてしまうと。そこがとても不安です。ですから,契約締結の在り方というものを少し考えていただけないかなと。それも,モデル契約書を内容に応じて数枚こしらえて,場合に応じて著作者に提示していただいて,著作者の明確な意思を確認されるとういようなことですね,これからはそういう慣行を育成されていくべきではないかというようなことを感じております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。森田委員,どうぞ。

【森田主査代理】 既に議論が報告書全体にわたっているようですので,最初に,注の46の消滅請求の範囲について一言しておきたいと思います。私の意見は,既にこの委員会でも述べたところですが,先ほど異なる意見もありましたので,改めて述べたいと思いますが,この点については,私は,一体的な権利とするかどうかは,結論に影響しないと思います。これは,契約の一般原則で最高裁の判例もあるところですが,1個の契約でその一部に義務違反ないし不履行があったときに,全部解除となるのか,それとも,一部の限度でしか解除できないかというのは,最高裁の判例によると,給付対象が可分であって,かつ,その可分な部分について利益がある場合には,一部の解除しかできないということであります。したがって,仮に一体的な権利とした場合でも,そのうち電子だけ,紙だけというように一部が可分だということは異論のないところでありますから,判例の考え方に従いますと,紙または電子の一方についてのみ義務違反があった場合には,必ず全部について消滅請求を認めることになるかというと,必ずしもそうではないということになると思います。紙と電子の双方について出版がなされなければ著作者の契約目的が達成できないというような場合には,これはいずれの考え方をとったとしても,そのベースには債権契約があるわけでありますから,全体について解除ができる場合もあると思いますが,しかし,原則は紙と電子は可分であるという制度設計でありますから,義務違反に対応したところしか消滅請求はできないという本文の考え方は,これは現在の契約の一般原則から見ても,判例を前提に考えればそういうことになると考えております。
 それから,先ほどからの議論をお伺いしていまして,まず,出版権は1個の権利なのか,すなわち,紙と電子を一体とするかどうかという議論は,法的に見ますと,非常にテクニカルな問題でありまして,物権的な権利としての出版権は,電子と紙とで別個の権利として2個とすべきなのか,電子と紙とを一体とみて1個とすべきなのかという問題と,それから,その基礎となる債権契約といいますか,それらの物権的な権利としての出版権を含んだ全体の契約が1個なのかどうかという問題は,別個の問題であって,仮に物権的な権利としては2個の権利だとしても,債権契約としての契約書は紙と電子とで別々に作ることもできれば,1つの契約書の中で2つの物権的な権利を同時に処理することもできるわけです。この点は,いずれの考え方を採っても同じであり,そういった契約の慣行そのものをコントロールすることはできないわけでありますので,望ましい契約環境というのを作っていかなければ,どの考え方を採ったとしても,実際には不都合が生じてくる可能性があるのだろうと思います。
 次に,契約というのは,契約締結に要するコストから考えますと,1回結んで,それで全てに対応ができれば望ましいのかもしれませんけれども,電子書籍についても,その出版が望ましいかどうかというのが当初の契約締結の時点で判断できないような場合があるとしますと,そのような場合には,契約締結後に状況に応じて出版権の権利内容を広げたり,あるいは狭めたりするということが必要になってくると思います。そういう対応を考えずに,どこかの時点でどちらかに決めて契約を結ぼうとしますと,これは必ず不都合が起きてくるわけでありまして,今後は,契約の在り方としても,1回契約を結べばそれで終わりということではなくて,状況に応じて,当事者で出版権の範囲について再交渉するような条項を入れておいて,再交渉の結果,当事者の合意によってその範囲を膨らませたり,狭めたりというような対応をすることができるという,そういう契約環境がないと,これはいずれの立場に立ってもうまくいかない,そのような懸念が表明されたと理解すべきだろうと思います。
 それから,この報告書案の小括では,「小委員会での検討を踏まえれば,一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化する場合との差異は特段ない」とされておりますが,これは,法制という観点からみれば,いずれの考え方を採っても結論の違いがないというまとめであります。論理的に言えば,結論に違いが生ずるような制度設計も選択肢としてはあり得たところだと思いますが,このまとめというのは,どちらの考え方を採ったとしても,結論に違いがないように制度設計をしてくださいと,そういうメッセージが含まれているのだろうと思います。
 そして,そういった法制面での整理を踏まえた上で,立法には,法制面だけではなくて,そのような立法をすることが社会に対して持つ象徴的な効果ないしメッセージ効果というのがあって,それが人々の行動に影響を及ぼすということがありうるので,立法に当たっては,この点も考慮に入れておく必要があります。ある立法をしたことによって,それが自分たちに有利なようにそのメッセージ効果が使われないかという点であり,それぞれの立場から,つまり,一体的な権利としない場合には,紙媒体の出版と電子出版というのは本来別のものであるというメッセージが生じないかという懸念が出版社の側から表明され,反対に著作者の側からは,紙と電子とを一体とすることによって,法制面の違いを超えて誤った運用がなされることに利用されないか,そういう危惧が示されているわけでありまして,法律の規定の効果そのものではなくて,その外にあるところの,ある法律を定めることによってもたらされるメッセージ効果というものをどう考えるかというのが,ここでの議論が分かれてくるところだろうと思います。この点は,法面面での詰めだけでは解決できない問題でありますし,政策としてどちらの方向で進めるのが適当かという政策的な判断にかかるところでありますので,今後,この報告書を受けて法案作成の段階で,そのあたりの全体の政策的なインプリケーションというのをどのように判断するかという点は,文化庁の政策的判断に委ねられることになるのだろうと思います。
 私から申しあげたい点は以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。伺っておりまして,18ページ以降の第4章全体については,特にこの報告書の内容について手を加えるというような御意見はございませんでした。むしろ,全体的な,本報告書全体についていろいろ御心配,つまり,特にこういう新しい出版権制度ができ上がった上で,どういうふうに運営していかれることになるのか,そういう御心配も幾つか御指摘があったわけであります。管理事業法のような全く新しい制度ができる場合については,数年後にレビューというようなこともやったと思いますけれども,契約自由の原則の上に基づいてでき上がっていくこういう制度について,今後著作権分科会の中で何か議論をするかどうかというのはちょっと難しいなとは思いますけれども,この新しい出版権制度によってどういうような運営の仕方が行われていくのか,出版社の利益,クリエイターの方の利益はどういうふうな形で実現されていくのかということについて,文化庁著作権課におかれて,いろんな勉強の仕方はあるんだろうと思うんですね。調査を外に依頼して,そういうものを勉強してみるとか,そういうようなことがもし考えられるのであれば,そしてまたこの段階において何かおっしゃることがあるのであれば,お聞かせいただければと思いますけれども,いかがでしょうか。

【作花文化庁長官官房審議官】 主査からのお尋ねでございますのでお答えします。おっしゃるとおり,もともと出版権という制度は,当事者間の債権的契約事項を戦前のいろいろな協議の中で実定法に引き上げたという経緯がありまして,債権的事項と実定法上の物権的事項のある種境界領域にある固有の1つの制度と位置づいています。
 したがって,この制度を円滑に運用するためには,契約ということをどう考えるかということが,他の著作権制度の諸課題に比べてより重要になる,より重要になる問題だと考えております。
 現在,経済産業省のほうでは,電子書籍の流通という観点から,契約ガイドライン等の作成について検討を始めたと聞いておりますけれども,やはり文化庁としても,著作権法制度を所管する立場から,この審議会の議論を踏まえて,著作者と出版社の方々の適正な契約慣行,著作権法に基づく契約慣行がどのように形成されていくかということは継続的に注視していかなければならないと思います。法律は改正してやりっ放しというのがついつい多いというのがひょっとしたらこれまでだったかもしれませんが,やはりそうではなくて,法律制度を改正するということは,その後の実態についても責任を持たなければいけないと感じております。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。第4章以降については,既に御意見ちょうだいしてしまったんですけれども,全体で最後に何か,,全部で9回この小委員会開催させていただきましたけれども,この全体を通じて,報告書(案)全体を通じてでも結構ですし,この委員会全体を通じてでも結構ですけれども,最後に何か御意見があれば。前田委員,お願いします。

【前田(哲)委員】 すいません。細かい書きぶりのところでもよろしいですか。31ページの脚注の60でございますけれども,これはみなし侵害の規定に関するところでございますけれども,ここには,紙のみの出版権者と電子のみの出版権者と著作権者の3者の関係をどう整理するかという問題がみなし侵害の規定を設けた場合にはあるという御指摘があるんですけれども,これについては,こういう意見ももちろんあり得ると思うんですけれども,みなし侵害とするのを著作権侵害となる場合に限定することで3者の関係の問題は解決可能なのではないかと思います。
 また,後段の御指摘のところなんですが,電子出版の義務を課さないにもかかわらず,紙の出版権者に差止請求権を認めることは,現行出版権制度と整合しないということが書かれているんですけれども,紙の出版物が物理的にスキャンされて,それがアップロードされることによって,紙の出版に対して看過できない経済的な悪影響が生じているという場合には,電子出版の義務を負わない紙のみの出版権者に差止請求権を与えても,現行出版権制度と整合しないということにはならないと私は思います。脚注60は,これ以外の考え方がないように書かれていると思うんですけれども,私としてはこれと違う考え方を持っています。脚注60のようなご意見があることはもちろん理解できるんですけれども,これのみが唯一の考え方ではないように思います。

【土肥主査】 そこのところは,「整合性も問題となると考えられる」というふうに,「も」というふうに言っている。前田先生のようなお考え方を特に否定しているわけではないと理解しているんですが,よろしいですか,それで。

【前田(哲)委員】 否定されているような書きぶりのようにも私には思えますけれども,書きぶりのことでございますので,最終的には私としてこだわることではございません。

【土肥主査】 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】 もうこれは最終段階で,今,半分裁きは付いたような感じではありますけれども,おそらくこれは,いろいろな意見を,前田委員が言われれば,おそらく私を含め,また反論もあり得るので,そういうものを全て飲み込んだ上で,こういう問題があるということで非常にニュートラルに書いておられるので,これをいじり出したら,またほかのところもいじらざるを得なくなって,本ペーパー全体がばらけてしまい,崩れてしまうおそれがあります。そこのところは,先ほど申し上げたのは,事務局におかれては,非常に御苦労になって,意見の対立があるところは,今みたいに問題があるというので,ここも含めて,非常にバランス取って書いていただいているので,それを一字一句でも変え出すと,他の箇所も皆,対抗上種々大幅に変えざるを得ないことになって,全体で収拾のつかない大変なことになるおそれがあります。そこは,前田先生の御意見は分かった上で,私も反論せずに抑えていますので,そこのところは,ご理解いただいた上で,このような形で収めていただければと思っております。全て和の精神で収めていただければと思います。

【前田(哲)委員】 了解しました。

【土肥主査】 どうもありがとうございました。ほかにございますか。金子委員,どうぞ。

【金子委員】 中間まとめの取りまとめのときにも申し上げましたが,「出版者の権利のあり方に関する提言」では,デジタル時代に対応すべく,現行出版権の拡張,再構成を文化審議会で審議をしていただくということが提言としてあったところ,今回,9回の集中的な審議で出版権の拡大,再構成についての検討がなされ,報告書としてまとめられたことは大変良いことであろうと,提言に関わった一人として思います。
 内容については私個人としては異なる意見を有する部分もありますけれども,この公開の場で,著作者,出版者,その他様々な立場から意見が出されて,このような形で議論がまとめられたということは良いことであり,本小委員会の議論を踏まえた法改正により,出版権の設定を一つの選択肢として適切な契約環境が構築され,海賊版対策という以上に,正規品,デジタルでの流通等の促進が実現されることを強く願っております。
 以上です。

【土肥主査】 ありがとうございました。ほかによろしければ。栗田委員,どうぞ。

【栗田委員】 私もこの内容については,審議の中身を全てまとめている形になっていますので,異論はございません。今後,内閣法制局との調整に入ると思うんですけれども,どういうふうな法案になるのか,全くお任せするというふうな形になりますので,やはりどこかのタイミングで骨格をこの委員会にも示していただけないかなと。そういう予定があるのでしたら構わないんですけれども,修正される可能性も考えられるというふうにも聞いていますので,是非ともある程度内容が固まった段階で,この委員会にもお知らせいただけないかとお願いしたいと思いますが。

【土肥主査】 今のこの委員会でどうなのかというのは難しいとは思うのですが,何かありますか,分科会とか,そういう場において報告があるとか,ありましたらお願いします。

【菊地著作権課課長補佐】 実際に法改正作業に当たって,途中段階のものをお示しすることはなかなか難しいのが現実かなと思います。これから分科会において御報告するプロセスがございますけれども,私どもといたしましては,ここで議論していただいたようなことをしっかりと法案の中に盛り込んでいくということを頑張らせていただくということでお許しいただけないかと思います。

【土肥主査】 どうもありがとうございました。本日議論を伺っておりますところ,特段,今回の報告書(案)を修正するという御意見はなかったように認識しております。
 したがいまして,この報告書(案)の「(案)」は取ると,この報告書を,これは小委ですけれども,上の分科会にまた上がっていくということになりますけれども,この出版小委においては,この報告書(案)を了承するということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】 ありがとうございました。今申し上げましたように,この報告書につきましては,今後著作権分科会において報告をさせていただきます。
 そのほか,御質問等,特段ございませんでしょうか。なければ,このぐらいにしたいと思っております。
 今回は第9回ということで,集中的にことし議論いただきましたけれども,最後の出版関連小委員会ということでもございますので,作花文化庁長官官房審議官から一言御挨拶を賜れれば幸いでございます。

【作花文化庁長官官房審議官】 出版関連小委員会の終了に当たりまして,文化庁として一言御礼の御挨拶を申し上げます。
 この報告書(案)の41ページに出ておりますけれども,この出版関連小委員会,今年の5月から審議を開催して,9回ということで,非常に集中的,精力的な御審議をいただきました。この経過を見ると,7月5日とか,7月29日とか,9月5日という,歴史的猛暑を乗り越えて本日に至ったかという1つの感慨があるところでございます。
 今後,この報告書を踏まえまして,しかるべき時期には親会であります著作権分科会のほうにも御報告申し上げるとともに,具体的な制度化に向けて精査をしていきたいと考えております。
 これまでは委員の先生方の責任で審議会の報告をまとめていただいたわけでございますけれども,これからは行政府の責任で,より適切な制度を考えなければいけないということで,大きな責任を感じているところでございます。
 いずれにいたしましても,短期間の間でも回数を重ねていただきました。土肥主査,そして,森田主査代理をはじめ,各委員の皆様方には大変お忙しいところ,貴重な時間をちょうだいしまして,まことにありがとうございました。皆様方のこの御労苦に応えるだけの制度を作りたいと思います。
 今後とも御協力のほどよろしくお願い申し上げます。まことにありがとうございました。

【土肥主査】 ありがとうございました。そのほか,事務局から連絡事項がありましたら,お願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】 委員の皆様方におかれましては,本日まで全部で9回精力的な御議論をいただき,まことにありがとうございました。先ほど土肥主査からも少しお話がございましたが,本報告書につきましては,日程はまだ未定でございますけれども,年明け以降に開催されます著作権分科会において報告される予定となってございます。
 以上でございます。

【土肥主査】 ありがとうございました。皆様方には,先ほど作花審議官からお話がありましたように,暑い中,歴史的な猛暑の中,集中的な議論に御協力いただき,最終的なこの報告書にたどり着くことができまして,本当に皆様方に感謝をしております。本当にありがとうございました。
 それでは,以上をもちまして出版関連小委員会を終わらせていただきます。

―― 了 ――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動