議事録

国語分科会(第32回)議事録

平成18年3月27日(月)
11:00〜12:30
如水会館「オリオンルーム」

〔出席者〕

(委員) 阿刀田分科会長,阿辻,井田,市川,岩淵,甲斐,金武,蒲谷,菊地,小池,坂本,佐藤,陣内,杉戸,西原,林,前田,松岡,松村,山内各委員(計20名)
(文部科学省・文化庁) 加茂川文化庁次長,平林国語課長,氏原主任国語調査官ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 文化審議会国語分科会委員名簿
  2. 文化審議会国語分科会運営規則(案)
  3. 文化審議会国語分科会の議事に公開について(案)
  4. 今期文化審議会国語分科会における検討スケジュール(たたき台)

〔参考配布〕

  1. 文化審議会関係法令
  2. 文化審議会運営規則
  3. 文化審議会の議事の公開について

〔経過概要〕

  1. 事務局から,出席者の紹介があった。
  2. 文化審議会令に基づき,委員の互選によって,阿刀田委員(文化審議会会長)が国語分科会長に選出された。
  3. 事務局から,配布資料の確認があった。
  4. 事務局から,資料2「文化審議会国語分科会運営規則(案)」及び資料3「文化審議会国語分科会の議事の公開について(案)」の説明があり,了承された。
  5. 上記4で了承された「文化審議会国語分科会運営規則」に基づき,敬語小委員会と漢字小委員会に所属する委員の指名が阿刀田分科会長から行われた。
    両小委員会の主査・副主査については,阿刀田分科会長から,前期に引き続き,敬語小委員会の主査として杉戸委員,副主査として蒲谷委員,漢字小委員会の主査として前田委員,副主査として林委員に,それぞれお願いしてはどうかという提案があり,了承された。
  6. 第6期国語分科会の発足に当たり,加茂川文化庁次長からあいさつが行われた。
  7. 事務局から,配布資料4についての説明が行われた。さらに,同資料の敬語小委員会の部分については杉戸主査から,漢字小委員会の部分については前田主査からそれぞれ補足説明が行われた。その後,質疑疑応答等を行った。
  8. 今後の両小委員会の開催日については,日程を調整した上で,事務局から改めて連絡することとされた。
  9. 質疑応答等の内容は,次のとおりである。
○市川委員
敬語小委員会の皆様方の御努力については,書面の上だけですが,本当に大変なお仕事だな,「よりどころ」というのも一体どうなるのか,大変難しいことに取り組んでいらっしゃるなということを,非常に敬意を持って拝見させていただきました。
ただ,私の読みが不足しているのかもしれませんけれども,私の感覚では,言葉は伝播するものである,人から人へ伝染していくものであるという思いがございます。例えば,細菌が人から人に移っていく。それが悪ければ,悪い病気になって社会を悪くする。あるいは,例えば,ミトコンドリアというような,昔何か寄生したか感染して,それがかえって人間の役に立ったみたいな,確かミトコンドリアというのは何か細胞の中に入って,かえっていい役目をしたというようなことがあったと思います。敬語に取り組む場合には,そのいい細菌,人間にとっていい細菌,ビフィズス菌とかそういういい細菌を植え付けようという考え方があるべきだと思います。ですから,その伝播の仕方,現代における伝播の仕方がどうあるのかというのをもう少し考えていただきたいなと思います。
と言うのは,例えば「1,000円からお預かりいたします」という不思議な日本語,最初は確かファミリーレストランか何かが始めたものだと思いますけれども,今ではスーパーのレジなどでも聞くようになった。最初は,どうもマニュアルらしいのですけれども,そのマニュアルの感染源は何なのか。それから,その伝播の仕方は現代においてはどうなのか。敬語というのも,ただこういうもんですと言うんじゃなくて,現代に波及させるためには,現代の感染の仕方がどうである,それからまた感染源がどうなんだということによって,いいワクチンと言いますか,いい言葉をそこへ流していくと,皆さんが感染しやすいんではないかと思っています。
こういう視点と言いますか,そういう活用部分のところまで,これまでの資料を拝見していると,まだ届いていないのか論議されていないのか分かりませんけれども,現代における伝播の仕方というような視点というのは,お考えになっていられるのかどうか,ちょっと杉戸主査にお伺いしたいと思います。
○杉戸委員
非常に重要なポイント,かつ難しいポイントだと思って伺っておりました。二つの段階と言いましょうか,課題がある御指摘だと思いました。
一つは,この答申をまとめていく上で,伝播とか,あるいは感染とおっしゃる,その過程,プロセスをどうやってつかんで,それをどう答申に反映させるかということです。それからもう一つは,その答申を出した後,いいワクチンと言いましょうか,ビフィズス菌のようないいものを答申が発散するというか機能する,そういう段階でどう工夫するかと,その2段階があると思ってお話を伺いました。
それで,その前の方ですね,答申を準備する過程でどう伝播なり感染のことをとらえるか。これは,文化庁文化部国語課が毎年進めている「国語に関する世論調査」,あるいは私の勤務先の国立国語研究所が進める現代日本語の姿をとらえる実態調査,そういった中で,もう既に敬語に関する状況というのはかなり押さえられています。それを今度の答申の内容として扱う項目に対応した調査結果をきちんと反映させるということで対応できる,対応しなければいけないと,そう考えています。
ただ,例えば「1,000円からお預かりします」,これは調査によれば,もう若い人たちだけでなくて,ちょうど私のような50半ばを過ぎたおじさんたちも結構使っているという,そういう調査結果もあります。それはどのように伝播したのかということを克明にたどること自体は非常に難しい仕事だと思います。しかし調査結果から,今こういう状態にあるということはきちんと踏まえて答申をまとめていかなければいけない,とそんなふうに思っています。
それから後者の,答申をまとめて発表した後のことに関しては,言わばその答申の内容及びその答申の趣旨,精神,これをどう普及するかという,その段階のことだと思います。「よりどころ」という言葉を使っておりますが,この分科会でも,言い方として「よりどころのよりどころ」となるようなものを目指そうと言っております。つまり最初の「よりどころ」は,例えば,学校教育で,あるいは会社などの社員教育で,あるいは家庭教育や,地域の社会教育で,敬語についての「よりどころ」となるパンフレットなり,映像教材なりが作られるであろう,そういう具体的な「よりどころ」にとって,より基本的な「よりどころ」になる答申を目指そう,そういうことだと思っています。そういう形で,「よりどころのよりどころ」として,いいワクチンたろう,目指すべき位置付けはそういうことだと,そんなふうに理解しております。
普及の具体的な仕事については答申が完成した後に限らず,答申をまとめていく上でも,それを予想しなければいけないという御意見として今日は伺いますけれども,次の段階のこととして,いいワクチンに仕上げていくと,そういうことが求められているだろうと,そんなふうに考えています。
○阿刀田分科会長
国語政策というのは一体どういう権限を持っているのか,どこまで権限を持っているものなのかというのはなかなか分からないところがあります。どういう敬語の指針を出してみても,スーパーのマニュアルとして「1,000円からお預かりします」というのを配って店員にそういう教育をしていた場合,それはけしからんと言って,こちらから何かができるというものではないわけです。
答申を学校教育にはある程度反映させることができるかなとは思いますけれども,市民社会全般に対して,強い強制力を持ってやれることではないわけです。敬語を話したいとは思っているんだけれども正しく話せないという方が非常に多くて,今度の答申も基本的にはそういう方々に対して,こたえるものでありたいというのが一つの方向性であるわけです。出来上がった具体的な指針が「なるほどこれは見事である」というような形で,こたえられなかったら,我々の負けであるという,そういう非常に厳しい状況の中でやっていく仕事なんだろうなと私は考えております。
ところで,今日の午後の予定というのはどういう形で話し合いがなされるのでしょうか。
○平林国語課長
本日午後の懇談会でございますが,また後ほど御説明しようと思っておりましたけれども,3名の方をお呼びいたしまして,そこでそれぞれのお考えを発表していただきます。漢字が中心で,漢字小委員会の中でも,書ける漢字と,読める漢字を分けたらどうかとか,読めればいいんじゃないかとか,そういった御意見が出ていますが,それぞれの論点について,まず3名の先生方にお話しいただきます。それを受けて,出席された委員の方と一緒にフリートーキングしていただき,それぞれ考えを深めていただきたいと考えております。ちょっと長時間になりますけれども,今申し上げたような形で進行したいと思っております。
○阿刀田分科会長
漢字中心でございますね。
○平林国語課長
はい,漢字中心でございます。
○阿刀田分科会長
そうしますと,このメンバーで敬語についてお話しするのは取りあえず今日は午前中だけだと思います。もちろん午後,漢字についてのフリートーキングができるわけではないと思いますが,この際という御意見を是非承りたいと思いますので,どうぞお願いいたします。
今日は,今期の第1回目でございますけれども,前期は割と細かく集まりをやっておりました。特に私なんかは両方の小委員会に出ておりますので,いろんな話題を,ああ,あの話か,この話かと,聞き覚えのある話がたくさんあるのですが,何かほかに御質問,御意見,ございませんでしょうか。
格別ないようでしたら,今日の会議はこれにて,少し早めでございますが,終了したいと思います。
本日はお忙しい中,どうもありがとうございました。
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