電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第1回)議事録

1.日時 :
平成22年12月2日(木) 9:30〜11:30
2.場所 :
文部科学省旧庁舎6階講堂
3.議題 :
  1. (1)座長の選任等について
  2. (2)今後の進め方等について
  3. (3)意見交換
  4. (4)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,片寄聰,金原優,里中満智子,渋谷達紀,杉本重雄,瀬尾太一,田中久徳,常世田良,別所直哉,前田哲男,牧野二郎,三田誠広

9:32 開会

【永山著作権課長】
おはようございます。
定刻になりましたので,ただいまより電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議の1回目の会議を開催させていただきたいと思います。
本日は御多忙の中,御出席いただきましてまことにありがとうございます。私,文化庁著作権課長の永山でございます。
本日は1回目の会議ということでございますので,後ほど座長の方を御選任いただくまでの間,私の方で司会進行させていただきたいというふうに考えておりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,本会議の第1回の開催に当たりまして,まず笹木文部科学副大臣よりご挨拶(あいさつ)をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【笹木文部科学副大臣】
おはようございます。文部科学副大臣の笹木竜三でございます。今日はお忙しい中,この電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議に御参加を頂きまして,本当にありがとうございます。
国民の電子書籍に対する関心は非常に高まっていると思います。そして今後,ますますこの電子書籍ビジネス,この普及はいろんな形で普及,広がっていく,そういうふうに考えております。
6月にデジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会,ここから報告が文部科学省に対して行われましたが,3つの課題を示されました。3つというのは,1つはデジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方,2つ目が出版物の権利処理の円滑化,3つ目は出版者への権利付与,この3つの課題が文部科学省に対して与えられました。この検討会は,この3つの課題について検討していただいて,あるべき姿を示していただく,そういうことで発足をさせていただきました。是非知の資産の有効活用,そして電子書籍の流通の基盤整備についてあるべき姿,これをしっかり皆様に議論をしていただいて,示していただきたい,そう思っていますので,どうかよろしくお願いします。
ずっと聞いていたいところなんですが,今日は私,どうしても最初の20分少々しか一緒におれませんが,聞き役として皆さんの御意見を賜りたいと思っています。よろしくお願いします。
【永山著作権課長】
今,副大臣の方から御発言がございましたように,笹木副大臣におかれましては,この後公務のため御退席されますので,もうしばらく,20分程度会議の方に御出席いただいた上で御退席されますので,その点御了解いただければというふうに思います。
また,カメラ撮りにつきましてはここまでというふうにさせていただきたいと,カメラは入っておりませんが,ということにさせていただきたいと思います。
それでは,今回初めての,1回目の会議ということでございますので,本検討会の構成員に御就任いただきました方々,また,事務局を務めさせる関係の者につきまして,私の方から御紹介をさせていただきたいと思います。
お手元の資料の,資料1を御覧いただければと思います。
資料1の1枚目が設置要綱というものでございます。2枚目の方に構成員のメンバー表が付してございます。そちらの方を御覧いただければと思います。
お名前だけの御紹介ということにさせていただきたいと思います。
まず,糸賀雅児構成員でございます。
【糸賀構成員】
糸賀でございます。よろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
続きまして,大渕委員は遅れて御出席ということで御連絡を頂いております。
続きまして,片寄聰委員でございます。
【片寄構成員】
よろしくお願いしたいと思います。
【永山著作権課長】
金原優構成員でございます。
【金原構成員】
金原でございます。
【永山著作権課長】
里中満智子構成員でございます。
【里中構成員】
里中でございます。よろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
渋谷達紀構成員でございます。
【渋谷構成員】
渋谷でございます。
【永山著作権課長】
杉本重雄構成員でございます。
【杉本構成員】
杉本です。どうぞよろしくお願いします。
【永山著作権課長】
瀬尾太一構成員でございます。
【瀬尾構成員】
よろしくお願いします。
【永山著作権課長】
田中久徳構成員でございます。
【田中構成員】
よろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
常世田良構成員でございます。
【常世田構成員】
常世田です。よろしくお願いします。
【永山著作権課長】
中村伊知哉委員は,今日は御欠席という御連絡を頂いております。
続きまして,別所直哉構成員でございます。
【別所構成員】
別所でございます。よろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
前田哲男構成員でございます。
【前田構成員】
前田でございます。どうぞよろしくお願いします。
【永山著作権課長】
牧野二郎構成員でございます。
【牧野構成員】
牧野です。どうぞよろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
三田誠広構成員でございます。
【三田構成員】
三田です,よろしく。
【永山著作権課長】
続きまして,事務局の方の紹介は,著作権課の鈴木補佐の方からさせていただければと思います。
【鈴木著作権課課長補佐】
それでは,事務局側を御紹介させていただきます。
まずは文化庁長官近藤誠一でございます。
【近藤文化庁長官】
近藤でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木著作権課課長補佐】
続きまして,文化庁次長の吉田大輔でございます。
【吉田文化庁次長】
吉田でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木著作権課課長補佐】
そして,文化庁審議官芝田政之でございます。
【芝田文化庁長官官房審議官】
芝田です。よろしくお願いします。
【鈴木著作権課課長補佐】
そして,著作権課長永山裕二でございます。
【永山著作権課長】
どうぞよろしくお願いいたします。
【鈴木著作権課課長補佐】
著作権課著作物流通推進室長の川瀬真でございます。
【川瀬著作権課著作物流通推進室長】
よろしくお願いします。
【鈴木著作権課課長補佐】
私,担当させていただきます課長補佐の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
【永山著作権課長】
それでは続きまして,最初の議事でございます。座長の選任をお願いしたいと思います。
座長の選任につきましては,構成員の互選により行うということになってございます。私ども事務局の方からの今日は御提案をさせていただきたいと思いますが,私どもとしては,先ほど副大臣のご挨拶(あいさつ)にもありました,この会議の発足の前提になる御議論を頂きましたいわゆる3省懇談会,デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に向けた懇談会におきまして,今回御議論いただきます課題に,非常に課題について御議論いただきました利活用ワーキングの主査を渋谷先生がお務めになっていただいておりますので,引き続きまして渋谷達紀構成員に本会議の座長をお願いしてはどうかと考えておりますが,いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【永山著作権課長】
御異議がないようでございますので,渋谷構成員を座長として選任することで御承認を頂きたいというふうに思います。
それでは,渋谷座長には大変恐縮でございますが座長席の方にお移りいただきまして,これからの議事進行につきましては座長の方にお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【渋谷座長】
渋谷でございます。今年の初めころから3省懇談会の方に関係させていただきまして,にわか勉強で電子書籍のことをいろいろ,知識を得させていただいたわけです。そういうことで座長を務めるということですので,つたない座長ぶりだとは思いますけれども,精いっぱいいたしたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からのお話,それから先ほどの副大臣のお話の中にもありましたように,この会議では,大きく分ければ図書館問題と,それから出版契約の問題といいますか,その2つがあると思います。電子書籍に関しては,どちらに関しましてもこれまでのシステムがうまく機能しないようなことが予想,あるいは予感されるわけですので,どうかそういった問題意識を皆さんに共有していただいて,活発な御議論をこれから賜っていければと期待しているところです。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,先ほど配付資料の確認はしていましたでしょうかね,永山さん。それでは今。
【永山著作権課長】
事務局の方から配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
【渋谷座長】
先にお願いいたします。
【鈴木著作権課課長補佐】
それでは,本日の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
議事次第の下半分に配付資料一覧と書いてございますけれども,資料1でございます。本検討会議の設置についての2枚紙です。
資料2が議事の公開の取扱いについての1枚物。
そして資料3,「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告」についてというステープラどめの資料でございます。
資料4が電子書籍をめぐる最近の国内外の主な動向についての1枚物。
資料5−1が1枚物で国立国会図書館のデジタル化対象資料。
資料5−2が,これも国立国会図書館の納本制度審議会答申についての1枚物でございます。
資料5−3は,ステープラどめであります国立国会図書館 デジタルアーカイブポータルと書いてあります資料でございます。
資料6−1が日本における電子出版市場の規模の推移等についての1枚物。
資料6−2,米国における電子出版市場の規模の推移についての1枚物。
資料7が米国における主な電子書籍に係るビジネスモデルについての1枚物。
そして資料8が今後の進め方等について(案)。
以上でございます。
もし不足等ございましたら,事務局に申し出ていただければと思います。よろしくお願いします。
【渋谷座長】
資料の方,よろしいでしょうか。
それでは,先へ進めさせていただきますけれども,議事内容に入っていきます前に,この本検討会の議事の公開について,事務局より説明をお願いいたします。
【鈴木著作権課課長補佐】  それでは資料2を御覧いただきたいと思います。
本検討会議の議事の取扱いについてでございます。
本検討会議の議事の取扱いにつきましては,資料1の4(7)で,「検討会議は,原則公開とする」とさせていただいております。資料2につきましてはその内容の確認という形で御説明をさせていただきたいと思います。
資料2「2.」と書いてあるところから見ていただければと思います。
本検討会につきましては,その議事内容について透明性を確保する必要があるため,本検討会,配付資料,議事録は,原則とするとさせていただきたいと考えております。
「3.」としまして,一方,構成員の方々の自由闊達(じゆうかったつ)な議論を促進する必要もございますけれども,反面,個別企業のビジネス戦略など,個々の企業や個人に関する情報に言及する可能性もあるというところから,必要に応じて座長及び構成員の判断により,本検討会,配付資料及び議事録を非公開とすることができるという形で進めていければと思っております。
以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
ただいま事務局から説明がありましたように,本検討会における議事の公開については,原則公開で行いたいと思います。
また,本日の議事につきましても,議事内容を参照しましたところ,特段問題は見当たりませんので,公開で行いたいと思います。よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
ありがとうございます。
それでは本題に入らせていただきたいと思います。
まず,事務局から本年6月に取りまとめられましたデジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告,その中でも昨今の電子書籍をめぐる状況について,説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【鈴木著作権課課長補佐】
それでは資料3以降につきまして,順次,昨今における電子書籍の状況について説明をさせていただきたいと思います。
資料3は,本年6月に取りまとめられましたいわゆる3省懇談会の報告の概要です。
2枚めくっていただきまして,右肩に2と書いてあるページを見ていただければと思います。こちらがその懇談会の報告の概要です。ここにありますとおり,懇談会報告としましては具体的政策の方向性とアクションプランという形で8つの項目を取りまとめております。
そしてその中で,今後はこの検討課題により関係の深い省庁においてそれぞれ検討を進めていくという形の方向性が示されております。ここに挙げられております8つの中での,1番の著作物・出版物の権利処理の円滑化に関する検討,そして3番の出版者への権利付与に関する検討,そして7番のデジタル・ネットワーク社会における図書館の在り方に関する検討というこの3点につきまして,本検討会議において,検討課題として進めていくという形で考えております。
個々の検討課題のポイントにつきましては3ページ以降に記載されておりますけれども,これにつきましては説明は割愛させていただきますので,後で御覧いただければと思います。
続きまして,資料4を御覧いただければと思います。
電子書籍をめぐる最近の国内外の主な動向についてということで,これは文化庁の方で本年3月,いわゆる3省懇談会が設立されて以降の各省庁などの動きについて整理をさせていただいておるところです。
各省庁の動向といたしましては,この3省懇談会の報告が出されて以降,総務省,経済産業省,そして文部科学省で,それぞれ具体的な課題の検討を現在進めておるという状況でございます。
そして,国立国会図書館におきましては,この後の資料でも御説明いたしますが,納本制度審議会における答申が6月に行われました。そしてさらには出版物のデジタルアーカイブ化が積極的に推進されておるという動向でございます。
そして国内の民間ビジネスの動きといたしましては,様々な業種が共同した協議会の設立や,事業会社化が進んでいくとともに,電子書籍専用端末などの開発,販売が進められているという状況にございます。
そして国外の動向としましては,一番下の欄でございますけれども,iPadやKindle,さらにはギャラクシーなどの様々な電子端末が発売され,流通が進んできているという動向が示されているというところでございます。
続きまして,資料5−1を御覧いただければと思います。
こちらは国立国会図書館のデジタル化対象資料という表題をつけておりますけれども,過去のものも含めまして,国立国会図書館が現在進めてきております所蔵資料のデジタル化について,現在インターネットで公開中のもの,公開予定のもの,現在電子化を推進している部分に色分けをして,年代ごとに整理をしている表でございます。御覧いただければわかりますとおり,明治期までにつきましては現在インターネットで一般公開,戦前期までは公開予定の準備を進めておるところ,戦後期はデジタル化を進めているところで,白抜きの1969年以降の図書などにつきましては,今後順次着手をしていくという形の計画が示されておるところでございます。
続きまして,資料5−2を御覧いただきたいと思います。
こちらは本年6月に納本制度審議会の答申が示されております。ここで答申の趣旨でございますけれども,インターネット等で提供される民間の電子書籍,電子雑誌等,オンライン資料と総称しておりますけれども,個別の契約によらないで収集する制度を設けるという内容の答申が示されているところでございます。つまり,紙の書籍につきましては納本制度によりまして国立国会図書館に納本の義務が生じているというところでございますけれども,その対象としていわゆる電子書籍は含まれていないのですけれども,それを,今後,電子書籍につきましてもいわゆる納本をして,国立国会図書館で保管,管理をしていく必要性について,答申として示されたものでございます。
今後は国会図書館等が中心になりまして,この具体的な制度化に向けて検討が進められていると聞いておるところでございます。
続きまして,資料5−3を御覧いただきたいと思います。
こちらは国立国会図書館のホームページで公開しておりますデジタルアーカイブポータルでございます。これは国内の図書館,公立図書館や各大学などで進めておりますデジタルアーカイブを統合,検索するシステムとして,国会図書館で整備,公開をしているものでございます。本年11月現在,58機関176のアーカイブが検索対象となっており,その検索対象となります対象館,施設の一覧をプリントアウトしたものでございます。
中身は後で御覧いただければと思いますが,様々な県立図書館ですとか大学がデジタルアーカイブ化を進めており,その対象資料ですとか件数などが概要として示されておりますので,これも御参考として,資料として提出させていただきました。
続きまして,資料6−1を御覧いただきたいと思います。
日本における電子出版市場の規模の推移等についてということで,2003年から昨年2009年までの電子出版市場の規模につきまして,推移のグラフを示させていただいたものでございます。
インターネット配信をされているもの,携帯電話を対象としているものでそれぞれグラフを示すとともに,携帯電話向け,そしてPC向けの分野ごとの円グラフもあわせて表示させていただいております。現在の伸びの推移などにつきましては,こちらを参考に見ていただければと思います。
続きまして,資料6−2を御覧いただきたいと思います。
こちらはアメリカにおける電子出版市場の規模の推移でございます。2002年から2009年までの推移で,2008年から2009年にかけて急激に伸びておるというところがこのグラフでわかるかと思います。
続きまして,資料7を御覧いただきたいと思います。
こちらはアメリカにおける主な電子書籍に係るビジネスモデルについてということで,グーグル,アップル,そしてアマゾンが中心となって電子書籍を提供,販売をしておるわけですけれども,販売元と出版者との間の契約,販売価格の何%が出版者の取り分となるかという関係につきまして,それぞれの状況を整理させていただいたところでございます。こちらは文化庁の方で各種の資料を参考に図式化させていただきました。
簡単でございますが,昨今の状況につきましての説明は以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして,御質問,御意見等がございましたら,この後に予定されております意見交換の際,これはかなり時間をとってありますけれども,その際に御発言いただければと存じます。
それでは続きまして,事務局から今後の進め方等について説明を頂きたいと思います。
【鈴木著作権課課長補佐】
それでは資料8を御覧いただきたいと思います。
本検討会議の今後の進め方につきまして,資料として整理しておりますので,説明させていただきたいと思います。
1として,検討事項と書いてありますけれども,本検討会議の検討事項といたしましては,3省懇談会から示されている以下の3点,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項,出版物の権利処理の円滑化に関する事項,出版者への権利付与に関する事項,この3点について検討を進めていきたいと考えております。また,検討を進めていく順番につきましては,この書かれております(1)から検討に入っていければというふうに考えております。
そして,各検討事項に係る検討課題及び検討の進め方について説明をさせていただきたいと思います。
まず,1番目のデジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項についてでございます。
3省懇談会で示されました基本的な考え方といたしましては,大きく2点に整理できると考えておりまして,国会図書館の役割が重要になってくるということが1点,そして電子出版ビジネスと公共図書館などのサービスの共存を図るという視点から,いわゆる官民の役割分担ということも言えるかと思います。その環境を整備していくことが重要であるといったところが懇談会で示されていると考えられますので,次の検討課題といたしまして,3点を上げさせていただいております。国立国会図書館のデータの活用方策,電子書籍に係るサービスの対象コンテンツや実施範囲,そして実施方策について,そしていわゆる官民の役割分担についてのルールづくりが検討のポイントとなると考えております。
そして,この課題の検討の進め方でございますけれども,これにつきましては,国会図書館や公共図書館,大学図書館等における電子書籍の取扱いですとか,サービスの現状,そしていわゆる電子出版ビジネスに関しましての取扱いの状況についての現状把握をきちんと進めることがまず重要ではないかと考えております。そして更に,検討に当たりましては,著作権の有無ですとか,商業利用に関する状況につきまして,さらには官民の連携などを踏まえて,ある程度の場合分け,例えば先ほどの国立国会図書館の電子化の状況の表がございましたが,例えば時代,年代ごと,さらには出版される書籍の分野ごとの実態や特徴が様々あるかと思いますので,そういった場合分けなどを整理した上で議論を進めてはどうかというふうに考えているところでございます。
そして,2番目の出版物の権利処理の円滑化に関する事項でございます。
これにつきましては,3省懇談会におきましては権利処理を周知的に処理する仕組みが必要であろうという考え方が示されておるところですので,その課題といたしましては,その権利処理の仕組み,主体などにつきまして,だれがどういう対象について,どのように行っていくのかというところがやはり課題ということになってくるかと思います。
そして,検討の進め方でございますけれども,先ほど申し上げましたその1番目の官民の役割分担ですとか,どの対象の書籍についてどのような扱いをしていくのかといった議論が整理された内容に応じて,様々な電子書籍の流通や関連する課題が見えてくるところがあるかと思いますので,それらを踏まえた上で複数の選択肢などを整理して,メリット,デメリットについて整理を進めていくという形でどうかというふうに考えておるところでございます。
そして,3番目の出版者の権利付与に関する事項でございます。
3省懇談会の基本的な考え方としましては,出版者の機能の維持,発展の観点から,その権利付与に関しての可否を含めて検討ということが示されております。ですので,検討課題といたしましては,その必要性及びその在り方についてが今後検討の課題かと考えております。
そして,検討の進め方でございますけれども,出版者の権利付与に関する事項を検討するに当たりましては,諸外国の著作権法における出版者の権利などにつきましての実態,さらには国内外の出版契約に係る実態についての調査,分析をまず行い,そして実情や実態を把握することが必要ではないかと考えております。そして,そのような調査の分析などを踏まえた上で検討に入っていく必要があるのではないかと考えております。
更に,この出版者の権利の関係につきましては,そのような観点もございますので,この検討会とは別に,まず各国の法制状況についての調査につきまして,文化庁の方で独自に調査を実施しようと既に計画を進めておるところでございまして,年度内にその内容についてはまとめる予定としております。更に,出版者の契約関係につきましては,日本書籍出版会に御協力を頂きまして,海外の出版契約の実情,実態について調査を進めていただく予定としており,その内容について,同じく年度内に整理できることとなっておりますので,それらを踏まえた上で検討に着手するという形で進めていければどうかと考えております。
今後の進め方につきましての説明は,以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明につきまして御質問,御意見等がございましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。検討項目と,それからそのスケジュール,検討の内容,大まかなところを御紹介いただいたわけですが。
【瀬尾構成員】
今の,最初のお題であります図書館関係の議題なんですが,最初にお願いしたいこととして,国会図書館を中心とした図書館のシステムというのが,これまでとは役割が大きく社会的に変わってくる時期にあるんじゃないかというふうに考えます。ですので,ただ単にそこのところからデータベースを利用できるための方策をつくるだけではなくて,そのもののありようの部分にまで踏み込んだ議論と施策に結びつくような方向性を持っていただきたいというふうに希望します。
なぜならば,今後のデジタル書籍,電子書籍の流通においては,やはり核になったり,社会的なインフラになるということが図書館に期待されるところもあるかと思いますが,今,ここのところで付け焼き刃的な施策を行ったとすると,将来的に非常に混乱をするでしょうし,多分市場とのバッティング等の問題が出るように思います。ですので,図書館関係の議論に関しては,広い視野に立った上で,個別の施策をお考えいただく議論でお運びいただきたいというふうに希望いたします。
以上です。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
ほかに何かございませんでしょうか。
【糸賀構成員】
糸賀でございます。実は私,今日この後10:45から大学で授業がございまして,中途退席することになりますので,ちょっと発言させていただきたいと思います。
今,今後の進め方やここでの検討事項を事務局方から説明いただいたわけなんですけれども,今後議論する範囲といたしまして,私ちょっとわかりにくいのは,電子出版と言われているものと既存のものがデジタル化,アーカイブ化されて,それをどういうふうに利用するのかというのは,やや文脈が違うんではないかという気がするんですね。
典型的なのは国立国会図書館がもう既にデジタル化ないしはアーカイブ化していると,これを流通させるのと,今後新たに電子出版する,これも今度は国会図書館の納本制度審議会の答申を見ますとそれが納本されるわけなんですけれども,それはまだまだ大きな市場が当然成り立つ,要するに,書店を通じてでありますとか,あるいはネットを通じて販売されるものであります。こういったものの扱いというのは,やや文脈を異にするんではないかというふうには思います。そこも,だからこの中,今日のこの資料8の中でも,出版物という言い方もしていれば,一方でデジタル化,アーカイブ化という言い方も,表現もされております。そこらあたりを一緒に議論することができるのかどうか。
それから一方で,出版物と言ったときに,ここには電子書籍という表現もございますけれども,だんだんと書籍,雑誌,場合によっては新聞といったものがデジタル化される中で,従来のそういうメディアの区分が意味をなさなくなりつつあるわけです。そこらあたりも含めまして,デジタル化,アーカイブ化という位相と,それからそもそも出版者がこれを多くの人に買ってもらおうとして出版するものとの議論の仕分といいますか,区別みたいなものもどこかで考えていく必要があるんではないかというのが1点。
それからもう一つは,この検討事項の最初に,図書館と公共サービスの在り方だというふうに書かれております。この公共のサービスというのが何を意味するのか,いまひとつ判然としませんけれども,恐らくは公共性を持った流通の仕組み,あるいは公益性に合致するような電子出版物の流通の仕組みを考えていくんだろうと思います。
その際に,ここでは今,国立国会図書館の役割が重要だ,それから公共図書館との共存を図るべきだという指摘がございます,それは大変もっともだと思うんですが,一方で,検討の進め方を見たときに,大学図書館ということも入ってまいります。私は,電子出版物の中で,あるいは専門性の高い出版物だとか,必ずしも多くの大きな市場が成り立たないようなもの,つまり現状のように電子コミックだとかあるいは電子写真集というのは,これはもう既に大きな市場が成り立っているんですけれども,今後,その電子出版が目指すべきものは,日本の知的財産をいかに多くの人に共有してもらうかという仕組みづくり,そう考えたときには,必ずしも電子コミックだとか電子写真集だとか,そういったもの以外も電子出版されていくだろうと思います。
そう考えると,大学図書館というのも極めて大きな,重要なプレーヤーだし,更に言えば,私は,学校図書館というのも当然あるわけで,子供たちがそういうふうな知的生産物をどうやって利用して,学習にあるいは勉強に生かしていって,いずれはそういうものも十分使いこなせるような人材として育っていくという,そういう文脈も考えなければいけないんで,ここで言う図書館というのは,やっぱり私は公共図書館,大学図書館,そして多分学校図書館あたりも含めて,この公共性に合致するような流通の仕組みというのを考えていく必要があるんではないかと。それはちょっとそういう視点がここに入っていればよろしいんですけども,表現として,せっかくこれ,文科省さんや文化庁さんが主催する会議体であれば,当然学校図書館も含めて検討していくべきだろうと思います。
それから最後に,検討課題の中で,官民の役割分担でいわばルールづくりだと。確かにルールづくりなんですが,一方で,これは民間もあることだから,余り国の関与というところをどこまでやるべきなのかというところですね。
実際には,例えばアメリカなんか見ていても,出版者と図書館が個別に契約をしたり,あるいはいろいろな民間の契約の中でおのずとルールができ上がっている。一方で,これは国が主催する会議の中で,どこまでそれが国が関与するべきなのか,ある意味では民間にやらせていく方がいいという気もいたします。総務省さんや経済産業省さんでもそれぞれプロジェクトを走らせて,この電子書籍の流通をめぐっていろいろな政策づくりをされているようですから,そことの整合性も図りつつ,どこまでが競争原理あるいは市場原理の中で調整を図っていけばいいのか,それに対してどこまで国が関与するのか。
具体的には多分著作権法の改正でありますとか,場合によっては図書館をめぐる法制度の改正だとか,新しい条項の追加ということになるんだろうと思いますが,そこの,おのずと引かれるような線というのは意識しておかないと,何でもかんでも国がこの問題について関与していってコントロールをしていくべきとは私も思えませんので,どこまでが国の役割なのか,それでいて民間の自由な契約システムの中で成立する,させるべきものがどこなのか,その辺の見極めも今後していく必要があるんじゃないかと,そこらあたりも1つの論点になるんではないかと考えております。
以上です。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
3点にわたって貴重な御意見を頂いたわけです。ほかにいかがでしょうか。
【三田構成員】
現状を調査する,それから外国の状況を調査するというのは大変貴重なことだというふうに考えますけれども,そういう調査というのは絶えず後追いになってしまうんですね。今は時間の速度が非常に速くなっております。ですから,この会議で必要なのは,現状を踏まえた上で,ここにいらっしゃるメンバーが少し未来に目を据えて,未来がどうなるかということを予測した上でビジョンをつくっていくということではないかなというふうに思っております。
私は,いわゆる3省デジ懇というものにも出席をいたしましたけれども,そこの議論は大変有効であったというふうに思っております。しかし,半年たってしまいますと事態は一変しているんですね。といいますのは,昨年アメリカのグーグル社がハーバード大学にある日本語の蔵書をデジタルスキャンいたしました。これについては,アメリカで訴訟が起こって,和解案が提示され,その過程で我々もアメリカの作家たちと議論を重ねたわけでありますけれども,現状では日本語のものは対象としないということで,デジタルスキャンされたものは塩漬けになっております。
並行して,日本の国会図書館のデジタルスキャンについて,権利制限にするんだという議論にも私は参加しておりました。そのときの私の認識では,図書館の蔵書をデジタルスキャンするというのは大変費用のかかるものでありますし,グーグルのような大資本や,それから国会図書館,つまり国でありますけれども,そういう大きな組織が特権的にやると,一般に蔵書をスキャニングするというのは難しいというような認識でおりました。
ところが,現在では個人の方が蔵書を業者に依頼しますと1冊80円でPDF化できます。ということは,現在出版者に,例えば50年前に出版した本が現物としてあったとして,そして御遺族の方と連絡がつくという状況でありましたらば,1冊80円でPDF化できます。それをアップストアにアップすれば,簡単に電子出版が可能なんですね。そういう事態になっておりますので,国会図書館のいわば特権的な地位というものと,民間の出版者でも現物があればすぐに出版できるんだという状況の違いを認識する必要があると思います。
だからといって,私は,国会図書館の蔵書が無意味だと言っているのではありません。国会図書館という1つのパッケージの中で全文検索ができたり,すべての著作物が音訳化される,視覚障害者の方等に朗読サービスがロボットでできるというような未来を見据えて,できれば1つのパッケージの中ですべての蔵書を一般の方々に提供できるようなシステムをつくるべきだというふうに考えておりますけれども,それをやるためには,出版者も,今80円で電子化できるんですよということを踏まえた上で,出版者の逸失利益であるとか,あるいは何らかの形で出版者にもインセンティブを与えるような方式をとっていくと。もちろん著作者にもインセンティブを与えるということが必要であろうと。つまり,公共性があるから例えばただで流通させていいんだという議論にはならないだろうと思います。そういう点も踏まえて,少し近未来を見据えた上で議論を進める必要があるのではないかなというふうに考えます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,事務局から説明のありました今後の進め方等についての御質問とか御意見,このあたりで一応切り上げまして,次に進ませていただきたいと思います。
今後は資料の8に基づきまして進めさせていただきます。本日は1回目の検討会でありますので,今後の進め方というペーパーにあります検討項目について,御自由に意見交換を行っていただければと思います。どうぞお願いいたします。
【常世田構成員】
図書館協会の常世田でございます。
図書館がテーマになっておりますので,図書館を考えるときに重要なポイントが2つか3つあるかなと思うんですけれども,1つは経済的な活動の側面だけで見ると,図書館の関連についてはちょっと本質を見誤る可能性があるのではないかなというふうに思っております。
特に公共図書館の場合には,教育機関だということであります。日本の教育の体系というものがまずあります。憲法,教育基本法,社会教育法,図書館法という流れの中で,日本人の民度を高めていって国を豊かにし,国を強くしていくというような,そういう教育的な側面があるというのを忘れてはならないというふうに思っています。
そのために,これまでに紙媒体を中心にして様々な施策が行われてきたということでありますので,これはデジタルという媒体が変わったとしても,教育体系の中で,教育の理念の中で変わらない機能を果たすという必要があるだろうと思います。具体的に言いますと,例えば無料の原則ということで,エンドユーザーは無料でコンテンツを利用できる,そのことによって,金を持っていようが貧乏であろうが,同じような環境で,条件で物事を学ぶことができるということであります。
それから,図書館というと何か娯楽作品を多くの人が争って読んでいるようなイメージを持っていらっしゃる方がいるんですが,実態は,貸し出される本の大半はいわゆる専門書や実用書が占めているわけでありまして,先ほど糸賀委員もおっしゃいましたけども,少部数の専門書を少数出版している,出版事業を買い支えているというのは明らかに図書館でありまして,それらのものを利用者は読んで,学んで,民度を高めているというそういう効果,理念の在り方というのをきちんと踏まえた上での議論が必要かなというふうに思っております。
それからもう一つは,今のことと似ているんですが,社会政策的な側面というのがやはりあるだろうと思います。これはもう少し今の日本の社会,あるいは三田さんがおっしゃったように,これからの日本の社会はどうなるかという側面であります。日本の社会はこれから自己判断,自己責任型の社会に突入すると。あるいは地球全体が非常に複雑化して,日本も様々な問題に,国際的なレベルでも,経済的な面でも直面するわけであります。そういうものに日本の社会全体が格闘していかなければならない。そのときに,それに必要な情報を提供する社会的な情報インフラとしての側面が存在しているというふうに思います。
ですから,例えば産業政策ですとかあるいは医療政策ですとか,介護の問題,失業の問題,そういうものに具体的な情報を提供して,その問題を国民が克服していくための情報を提供するという意味でありますが,そういう社会政策的な側面というものも忘れてはならないと思います。
ただそのときに,じゃその公共図書館の中でコンテンツをどのように流通させるかという問題については,これはただでコンテンツを無料でエンドユーザーに提供するという話ではありませんで,既にアメリカや韓国では,特にアメリカでは20年以上前に,デジタル出版物については公共図書館が公費でライセンスフィーを権利者に支払うことによって,エンドユーザーに無料で提供するというビジネスモデルが成立しております。もちろんこれはデジタル出版物だけではなくて,データベースも電子ジャーナルも同じようなビジネスモデルで行われているわけでありまして,そういうビジネスモデルを確立して,権利者に適正な利益を確保しつつ,今お話ししましたような教育や社会政策的な図書館の機能も担保すると,そのバランスを実現するような仕組みを考えていく必要があるんではないかなというふうに思っております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
【金原構成員】
書籍出版協会の金原でございます。
今のお話にも関連すると思いますが,我々書籍出版業界としては,この検討会議の対象となる出版物を多く発行しておるわけであります。中には我々のような商業出版社ではない出版者が,この場合は出版社の社は者でしょうけれども,発行しているものが対象となるということもあるとは思いますけれども,国会図書館を中心とした図書館と電子書籍の関連ですからそこに限ってのお話ということになりますと,恐らく大半は我々商業出版者が発行したものが利用されるということであろうかと思います。
当然のことですけれども,我々商業出版者が発行したものというのは,とりあえず紙媒体で発行したわけで,これは専門書であれ一般書であれ,あるいはコミックであれ,すべて紙媒体で発行されたものが,それが国会図書館によるデジタル化あるいはその他の方法によってデジタル化されて,それをいかに流通させるかという話になるわけですけれども,出版者が考えることというのは,やはり紙媒体で発行したものを基本的には全部完売をしてコストを回収するというところでありますので,それが電子化されて何らかの方法で利用者に利用されるということになった場合において,紙媒体への影響が一体どうなるのかというのは,我々の最大の関心事であります。
当然のことですけれども,紙媒体の出版物があって電子化が図られると,そうではない,初めから電子化するものもあるとは思いますけれども,それは著者と,あるいは電子化をする1つの関係においてそういう出版物というのが発行されて,紙媒体が省略されるということももちろん今後あるだろうと思いますが,現状では恐らく紙媒体で発行されたものが電子化されていくという形になるんであろうと思います。
これは出版者によって,あるいは著者の先生方との関係によって多少の違いはあるかもしれませんけれども,出版物の価格のうち,著者の先生方に対する印税あるいは原稿料というものはおおむね1割ぐらい,出版者の利益も多少ありますけれども,残りの8割ぐらいのものというのは出版者が経費を,自らの資金の中からかけてつくり出したものであるわけで,それがやはり回収できないということになると,出版自体が成立しなくなってしまう。
著者の先生方への印税あるいは原稿料もお支払いできなくなる,そういう状況になるわけで,これは電子化されてそのようなスキームがその中ででき上がっていけば,著者への還元あるいは出版者のその投資への還元というものももちろん可能になるわけですが,図書館の,今の常世田さんもお話にもありましたけれども,それが有料で配信されるということを原則としてコストの回収というものを図る,あるいは著者の先生方への還元を図るということがないと,やっぱり出版自体の衰退につながると,結局元も子もなくなってしまうということになっていくわけです。この電子化ということ自体をもちろん否定しているわけではないので,我々出版協会としても,電子化を今後積極的に進めていかなければならないとは思っておりますが,大原則論として,やはり図書館の機能ということをここで考えると,すべて図書館の大原則である無料というものだけを考えていたのでは,電子化はむしろ促進されないだろうというふうに思います。
したがって,今後,やり方もいろいろ難しい面があるので,個別の各論に入ってきたら,また少しいろいろお話しをしたいと思うんですが,総論としては,やはり公共ということ,図書館というのは基本的には公共性のあるものであるというふうに我々も理解しておりますけども,そこである一定の限界があるだろうと思いますから,更にこれを進めて考えるということになると,やはり電子書籍,書籍に限定した,今これは雑誌は含まれていないというふうに私も理解しておりますけれども,ちょっと書籍と雑誌では考え方が違うところがありますので,書籍に限定した話としても,公共性のあること,つまりイコール非営利,無償という原則だけではこの問題に対応できないんではないかなと,少し幅を広げて考えていく必要があるんではないかなというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それではほかにどなたか,御意見をお持ちの方,おられませんでしょうか。
【杉本構成員】
杉本です。ごく素朴な疑問というか,素朴な思いなのですけれども,公共図書館ということのお話が出てきたときに,1つ感じることは,大都市にいますと本はいっぱい周りにあるわけです。ところが地方に行くと,東京から離れたところに行くと非常に環境が悪くなります。そうすると,頼りにできるものというのはやはりまずは公共図書館でしょうし,それからその地域にある本屋さんということになるわけですが,地域の小さな本屋さんというのはこれから先どうなっていくかわからない,そうでなければ大手のチェーン店になる。そして品ぞろえが決まってくる。多様な,本来いろんな人がいて,いろんな要求があるはずなんだけれども,それにこたえられるものというのは大都市にしかない。とすると,やはりある種地域を活性化していきたいといったときに,その知の基盤というものが出版物であるとすると,それが衰えていかざるを得ない。特に,次世代をはぐくんでいくために知の基盤をどこまで持てるのかというところが非常に気になるわけです。
デジタルな出版物が出てきたときに思うことですが,もう20年近く前になりますけれども,どこにいてもアクセスできるんだということに対する期待というのは非常に大きかったと思うんです。ところが,実際にはまだなかなかそこまで到達できていないと思います。その一方,大学図書館で扱っている学術雑誌のたぐいというのは本当に電子ジャーナル化してしまいました。かえって価格が高くなったよという議論もあるとは思うんですけれども,でもいろんな意味でアクセス性はよくなったわけです。そこに新しいビジネスモデルも出てきたと思います。ではそれに対して,要は新しい環境ができてきて,例えばアマゾンさんのようなネット通販を使うとどこででも本は買えるよというような議論もあるとは思うんですけれども,でも中身を読んだ上で買えるのか,あるいはものとして運んでもらわないといけないのどうかといったことも素朴な疑問として感じます。
例えば,そうしたことも含めて考えると,やはりデジタルなものを使って,立ち読み程度でもいいんですけれども,できるだけ,まずは中身にアクセスできる環境というのを,日本国じゅうどこにいても,稚内から沖縄までアクセスできるようにしたいというふうな素朴な思いを持ちます。
それとまた,そういうデジタルのものを使うことによっていろいろな,人を引きつけることもできると思うんです。ですから,そういったことに関する素朴な期待というんでしょうか,そういうものを強く持ちます。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【里中構成員】
図書館の在り方についてはまず図書館法というのがあるわけで,たしかさっきちらっと,法改正も含めていろいろと検討していくというようなニュアンスのことが出たと思うんですけれども,もしそうであれば,図書館の在り方というのもこの21世紀,電子化の中で,いろいろ在り方を変えていくといういいきっかけになるんじゃないかなと思っております。
だれがどこにいても,都会であれば手に入る本はいいとしてという論議もありますが,それも流通して販売されている間だけなんですね。一時期どんなに流通したとしても,これは時の流れとともに市場から消えていきます。そういう意味でも,すべての本を公平に保存しておくという国会図書館の在り方はすばらしいと思うんですけれども,デジタル化が促進されますと,今のお話にありましたように,今度は環境による不公平というものもなくなる,これはすばらしいんですが,ただし,先ほど来話に出ておりますごく少数の部数しか出ていない学術本,これはもともとそれほど利益を上げていないわけですよね。それがデジタル化されて,半永久的にどこでも読まれるということになって,著者や版元に何の見返りもないままそれが推進されたとすると,一体どうなるのかとちょっと危惧(きぐ)いたします。
我が国の知的水準とか,昔から,江戸時代から識字率が高いとかというのは,もともと勤勉な国民性,民族性と同時に,やはりものを知りたい,役に立つか立たないかわからないことでも知っておきたいという,そういう雰囲気がずっとあったからだと思うんですね。その中には,経済的に恵まれないまま読まれていく少数本というものも知の蓄積には役立ってきたと思うんです。そして,たった1冊の本のために一生かけて研究して,経済的に苦しい中,一生懸命やってこられた数々の学者の方とか著作者の方とかいらしたわけですね。
そういう方たちへの敬意も込めて,公共サービスの在り方として,知的財産の蓄積に対する社会全体からのその見返りとして,有料配信ということを積極的に進めていただければ,版元も著者も,そしてサービスを受ける側(がわ)のいわゆるお客さんですね,その方たちが経済的なランクに応じてただで利用できる方,しかるべき使用料を払う方とに分けるというようなシステムができればうまく機能していくんじゃないかなと,素人考えではありますがそう思います。
かねてより,図書館で買い上げる本について,公からの負担の在り方,そういうことを望んできましたけれども,多くの方が読める環境にその出版物を置くということ,それに対して版元なり著作者なりが得られたであろう経済的利益をなくしてしまっているということ,これをうまくバランスとるためには,図書館に納められる本についての公的援助というものを版元,著者への見返りとするということは理想だなと,著者の側(がわ)から思っておりますが,今後,デジタル書籍,これ先ほど糸賀委員の話にありましたように,デジタル書籍と一口で言いましても,紙の出版物をスキャンしてデジタル化した書籍と,最初からのデジタル用原稿とはやっぱり違ってくると思いますので,間に合ううちに分けて考えておいた方がいいと思います。本来デジタルだけで成り立っているデジタル書籍に関しましては,図書館の在り方というのは今決めておかないと,公共サービスの在り方というのは,今まだそれほど広まっていないうちに何らかの道というのを決めておかないと,今後ますます混乱が生じるかなと思っております。
図書館も各地で大変頑張っておりますが,図書館独自がある程度の経済的利益を上げないといけない,つまり自己責任で運営しなければいけないというような形になりまして,ますます過疎地の図書館というのは成り立たなくなっていると思うんです。こういうことではいけないと。それが図書館という形をとりながら,デジタル配信受取基地になれれば,環境による不公平も是正されるのではないかなと思います。
ですから,今回のこの委員会での話というのは,いろいろ項目は分かれておりますけれども,当然すべていろいろかかわってくることですので,先ほど三田委員からお話がありましたように,半世紀後の日本の社会の知的環境の在り方,それにつなげて広い視野で考えていく必要があるかなと思っております。
失礼いたしました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
常世田構成員,お願いします。
【常世田構成員】
私も里中委員のおっしゃることについて部分的に,賛成でありまして,何も権利者に対してただでコンテンツを提供すべきだということを話しているわけではない。先ほどお話ししましたように適正の対価をきちんと担保するということがポイントだというふうに思っております。
私が申し上げたいのは,国民というエンドユーザーに知的な,あるいは学術的なコンテンツが提供されるというチャンネルが多様に存在するということが重要だろうというふうに思っているわけであります。単にエンドユーザーが個人で支払をするというそのビジネスモデルだけではなくて,失業中のお金がない人や,あるいは母子家庭の方々や,様々な条件,そういうものを一切払拭(ふっしょく)されて公平に知的なコンテンツを感受できるという環境が重要だと。
これは恐らくアメリカや韓国だけではなくて,ヨーロッパもユーピアーナ等のプロジェクトの中で,恐らく公共図書館において,利用者に対して無料でデジタルの配信提供をするシステムをつくっていくだろうと思います。それによって,これからの地球上の各国間の競争に勝ち抜いていくんだという,そういう社会的な政策を実施,実践していくだろうというのはもう明らかであります。これにおくれをとったら,本当に亡国,日本の衰退につながる可能性さえ出てくる。それを権利者も一定の売上げを上げつつ,そしてほかの国に先んじて先進的な情報を国民が享受できるという環境をどうつくるかというところがポイントだろうというふうに思っています。
市民は図書館で本を借りると買わなくなるという,そういう言説がありますが,例えば私が館長をしておりました千葉県の浦安市の状況を申し上げますと,人口15万で年間200万冊の本を貸しておりますが,市内の書店がつぶれたということはありませんし,むしろ経済産業省の商業別統計を見ますと,同規模自治体の都市の書店より売上げが多いという結果が出ています。これを調べていきますと,活発に活動している図書館のある都市の書店というのは,押しなべて売上げが多いんです。それから,活発に活動している図書館がある町で書店が減少しているパーセンテージを調べますと,これは図書館がなかったり活発でない図書館がある町と比べても別段数字に違いはないんです。そういう意味では,私は,図書館が活発に活動することによって,購買力というのでしょうか,本に対する親和性が高まって,本の購買が進んでいるということがあるんではないかと思います。
それからもう一つは,日本じゅうの図書館では子供たちに対して読み聞かせというようなことを組織的にやっております。次の時代の読者を育てるという役割をこれだけ全国的に,組織的に進めている機関はほかにはないというふうに思います。そういうトータルな点での見方というものが必要なんではないかなというふうに思っております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
では牧野さん。
【牧野構成員】
2つちょっとあるんですけれども,1つは皆さんにちょっと,むしろ僕は教えてほしいんですけれども,私は,電子出版というのは大変いいものだし,広げていくべきだし,この検討会も当然その前提だと思うんですが,本当にそうなのかなという部分があって,活字を守るという意味があるのか,それから今までの出版のその伝統というものを守って,何か守らなければいけない,文化を支える人たちという組織ネットワークがあって,それを破壊することになりはしないのかという意見があるので,その意味では,電子出版にすることによって中間のシステムが全部圧縮されていくということになるんだけれども,それはそれでいいのかどうかと。
この委員会は,検討会は,既存の書籍についての出版と,電子出版というものの例えばすみ分けであるとか,例えば,よくわかりませんけれども,エンターテインメイント系はどちらかというとこっちなんだけれども,歴史的なものはこっちだとかいうような,何らかの指標で特異性のあるものをより強く保護するというような方向があるのかどうか。その意味では,もう電子書籍でいいんですということで走っていいのであれば,その方向でこの検討会は進むことになるのではないかと,そのあたりがちょっと悩みとして持っています。
私は一介の弁護士ですけれども,なかなかCDの六法って使いにくくて,普通の六法がすごく使いやすいんですね。記憶と物との関係性というのは物すごく大事だなと最近思うようになって,新聞の一覧性というのが大事だなと思うようになってくると,デジタルにはデジタルの物すごいよさがあるんだけれども,アナログにはアナログのよさというのが物すごくあるんじゃないかと。そうなってくると,その2つを,この検討会はどういうスタンスで見ていくのかというのが1つわからないので,どなたか教えていただきたいなというのが1つあります。
それから,皆さん議論されている部分で,私は,最近アメリカでも,あるいは日本の大型の書店でも,書店の中に非常にいい椅子(いす)を置いて本を自由に読ませるというようなことをするわけですね。あれは何でああいうことをするんだろうかということをずっと考えていたんですけれども,図書館に,先ほどちょっと御意見ありましたけれども,図書館あるいは書店に人が集まると,そして集まってくると目についたものを必ず買っていくというような流通形態ができてくると。そうすると,先ほど,本来有料のものが無料になっているから,それを何とか経済的に補てんしてほしいという話なのか,無料でサービスを提供することによって,より大きなマーケットができるということであれば,無料で広げていくという,これはアメリカ的ビジネスでもあるわけですけれども,無料で広げていって,更に有料化に変化させていく,より大きなマーケットをつくっていくという考え方が一方ではあると。
それを考えると,図書館がとりあえず文化を守るものとして存在するんだけれども,実はその持っているもう一つの機能として,文化を支えながら,どちらかというと売れるものというか,本屋さんで売っているものをも支えていくというような,そういう意味では図書館の中だけがマーケットなのではなくて,図書館をめぐる大きなマーケットというのが存在するのではないかと。そうすると,ビジネスとの区分けとか,民間との共存というような言い方,あるいは共存という前に,私は,インフラとしてそもそも図書館があって,それとはレイヤーの違うところでビジネスが発展するのではないかと。その意味では,先ほどからちょっと議論されているとおり,視点を広げて,図書館で配信をしたら駄目になるというレベルではなくて,図書館で配信することによってもっと大きなマーケットができるのではないかという視点から,これを検討すべきではないかというふうなことを考えています。
以上,2つだけちょっとお話しさせていただきました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは田中さん,お願いします。
【田中構成員】
国会図書館の立場から,今回の公共サービスの在り方というところでは,まず国会図書館のデータを活用するための方策を検討課題として掲げていただいているのは,私どもとしましては大変有り難いと思います。今までもいろんなところで議論がされてきているわけですけれども,出版物はやっぱり時代がたつと入手が非常に困難になります。出版者の皆様の理解と協力によって納本制度というのは維持されてきて,日本の出版物の総体としての国会図書館の蔵書があるわけなので,それは国民の財産であって,かつその中でも一番,出版者の皆様の寄与によってできている財産ですから,その利用について,利害関係者の皆様の納得のいくようなルールがないとそれを使うことができないというのは当然と思います。その際に,やはり考え方としましては,先ほどもお話ありましたように紙で出たものをアーカイブして,基本的に古い一定の年限がたったものの話と,今,電子の書籍としてこれからビジネスが動こうというところの話というのは,やはりかなり違う話になるんではないかなと思います。古いところについて,もちろんビジネスとしては共通する部分もあるし,そこまで含めないと全体の組立てができないということもあると思うんですけれども,話をすべてを一緒くたにしてしまうと,やはりきちんとした利害益の調整もできないし,あるいは全体のスケッチというのも十分できないと思いますので,私たちとしましては,インフラとして国会図書館が何をしていくか,するべきかという議論は踏まえつつ,国民の財産として,今後利用できるようになってくるデジタル資料について,いかに利活用のルールをつくれるか,そのために新しいところも含めた公共サービスとしてやっていい範囲,ここはやってはいけないところを決めていく。民間ビジネスが成り立つのが第一ですから,そういう前提の上で安心して出版者さんや権利者の皆様もビジネスができるというような,そういう環境をまずこの場で議論ができればと念願しているところです。
その上で,当面の利活用の枠組みというのがやはり見えてこないと,諸外国と比べても,過去の出版物の総体というものが知的な財産として十分利用できないというようなことは,やっぱり国益を損なっている話だと思いますし,今後の日本の知的活動にもそこは大きなマイナスになってしまうところなので,紙で出た出版物をデジタル化するというのは,それが検索できて,あるいは遠隔地で利用できて初めて,そのデジタル化した意味が出てくるんだと思います。そのためには,もちろんその利益,利害関係の調整ができ,かつ出版活動に大きな影響を与えないといいますか,基本的にそれが新しい出版活動をも促進させる方向にいかないと本来いけないはずなので,そのためのルールをやっぱり徹底的に議論していく必要があるというふうに考えます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【金原構成員】
今の国会図書館のお話のとおり,日本で発行された過去の出版物というのは相当古いものもありますし,先ほど国会図書館のデジタル化の予定表のようなものも拝見いたしましたが,我々商業出版者が過去において発行したものであっても,一定期間たつと,もう我々の手元にもないし市中にも流通していない,国会図書館にしかその出版物が存在しないというものは物すごくたくさんあるわけです。これはジャンルを問わず,文芸作品であれ専門分野であれ,それはやはり日本の国民がまだ利用したいというものがたくさんあるならば,それはその部分においては国会図書館の果たす役割というのは非常に大きいと思います。
何らかの形,今既にデジタル化進んでいるわけですから,もう市中で入手できない,出版者も全く関与していない,ただ,文芸作品というのは50年たっても100年たっても,また更に新刊として発行されるということもあり得るわけですが,そうでないものに限定すれば,国会図書館が何らかの形でそれを利用者に配信すると。そこはもう著作権も切れているようなものであるならば,無償ということも当然あり得るだろうというふうに思います。そこについて,我々も何を反対するものでもありませんし,我々も,出版としても著作物の利用者でもありますので,国民の1人としてはその辺を是非推進していただきたいなというふうに思います。それが国民の利益にかなうことであろうというふうに思います。
しかし,先ほども話したことにちょっとふれますけれども,新しい著作物については,基本的には商業出版者が出版物として発行しているものがたくさんあるわけでありまして,大原則としては,今日は図書館との関連ということでお話しいたしますが,大原則としては,やはり出版した出版者が著者の先生方と何らかの取決めを行った上で,出版者が電子配信をして,電子書籍として流通させていくということが最も好ましい,望ましい形だろうというふうに思います。そうでないものについてのその図書館の役割というのはあるだろうとは思いますけれども,やはり第一義的には,出版者が発行したものについて,自ら電子配信をするという形を我々はつくっていかなければならないと思います。その意味では大変大きな課題を我々に与えられているなというふうに思っております。
しかし,いろいろな障害がありまして,幾つかお話をいたしますと,1つは,今日3番目のテーマに入っておりますが,出版者の権利問題というのがありますが,それもありますが,ちょっとそれは置いておいたとしても,やはり国民の著作権に対する意識,これをやはり涵養(かんよう)していかないと,電子書籍として流通したものが更に許諾を得ないで広まっていくという可能性が非常に強い性格を持った商品というふうになりますので,先ほど三田先生もお話しになりましたけれども,80円でPDF化されてしまうと。これは30条に該当するんだというふうなことを主張しているようですけれども,そういうようなことが日本の社会で平気で通ってしまうというようなこと,更にインターネットで流通するということになりますと,基本的には多くの情報が無料で利用できるわけですが,それ自体は別に否定するものではないし,いいことだと思っていますが,その流通の中に著作物が流通していくと,果たして本当にその電子配信されたものが,その権利が守られるのかどうかが疑問です。
そういうことに対しては国民一人一人の意識をしっかり持ってもらう,また,それについては我々というか,国レベルで知識をみんなに持ってもらうというそういう運動というものもないと,結局,流通したものが著作権法の枠外で勝手に使われてしまうということになりますと,これはもちろん著作者の方にもマイナスですし,出版者にとってもマイナスとなります。その辺の意識の涵養(かんよう)も必要なんではないかなと思います。それが前提にないと非常に難しく,それは出版者として躊躇(ちゅうちょ)している1つの理由でもあります。先ほどの権利問題もありますけれども,それは著者の方々とお話をすれば済むことですけれども,著作権意識が,先進国の中では私は日本は低いと思っています。そういうものもないと,やはり権利侵害というものが起きやすくなる。そういうことについての対応も必要なのではないかなというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは別所さん。
【別所構成員】
図書館の周りのところは余り存じ上げていないので,次回以降でも結構なんですけれども,検討の進め方の中で教えていただければと思っているんですけども,今少しお話が出ていましたけれども,やはり図書館の役割というもの,私もいろいろなところでお話を聞く機会はあるんですけど,まだよく正確にはわかっていないところがあって,例えば費用を払わないで使えるというのは所得の再分配ではないんじゃないかと個人的には考えているんですけれども。なので,その費用を払わないで使えるというのは所得の再分配でないとすると,一体どういう機能を図書館に期待しているので無償で使える部分があるのかというのは,少しはっきりさせていただければ有り難いなというふうに思っています。
例えばですけれども,多分個人の人で,大量の資料を一遍に集めることができないので,そういう資料がある場所に行って,そういう資料に自由にアクセスすることができて,その資料を選択するようにできる機会というのは,多分図書館というところでないとできないと。それはたまたま,その1つの資料が無償で使えるとしても,それは無償で使える,つまり所得が低い人たちでもただで使えるという所得再分配の機能を果たしているんではなくて,知的な再生産を行うための機会を,場所を提供する機能というのを期待して,そういうものが存在している。なので膨大な図書が1つの場所に集まっている必要もあって,でき上がってきているんではないかなというふうに思っているというところです。
この辺が今,現実にどういうふうな役割を各図書館果たしているのかというのがよくわからないまま議論が進んでいる気がして,そこは実際,現実に各地の図書館とかがどんな機能を果たしていて,どういう書籍が実際に貸出しされていて,どういうものが今取りそろえられているのかというような実情をひとつ教えていただければ有り難いなというふうに思っております。
それから,先ほど図書館の周りでは書籍が売れている例もあるというふうなお話をされていましたけど,図書館法とか見ても,あるいは国立国会図書館法を見ても,図書館の役割の中にマーケティングというのは,もちろん当然ですけど入っていないわけですよね。たまたまそういう現象があるからといって,図書館というものにマーケティングをサポートする機能を期待していいのかというと,そうではないんじゃないかなというふうに思っています。もしそれを期待するんであれば,現実そういうことがどう起きているのかということをきちんと分析した上で,それを図書館の機能としてやはり組み込まないと,それは結果的にたまたまなっている場所があるというところにすぎないと思っていますので,そこもきちんと,それがもし仮説だとしても,仮説を検証するというプロセスがないと,マーケティングの機能を果たしているんですよという話に乗ることはなかなか難しいんではないかなというふうに思っているというところです。
あともう一つ,デジタル化の件なんですけれども,私どもデジタルのコンテンツでビジネスをしているんですけれども,インフラとしての紙とそのデジタル化されたものは,多分共存していくんではないかなと思っています。機能がやっぱり違うというふうに思っています。
それから,現実的なインフラの状況も多少御理解いただいてはいるかと思うんですけれども,日本は確かに高速の通信回線が整備されている国のうちの,上から数えた方が早いというふうに言われておりますけれども,インターネットを使って高速の回線にアクセスをすることができる環境にいる人たちは9割ぐらいですけれども,実際にそういう回線に加入している人たちは3割程度というふうに言われているのが実情です。
地方に行くと,なかなか整備が進んでいない,デジタル化をすると,地方でいろんな人たちが自由に見られますよという話があるんですけど,実は地方のインフラの状況をちゃんと考えていただくと,地方の人たちが,実はそこはデジタル化しただけでは使えるような状況には実はないというところもあって,中央でデジタル化さえ進めば日本の津々浦々でそういう状況になるのかということは,実は違うんだということも現状では御理解いただいた方がいいと思いますし,地方の図書館も,地方の図書館の持っている回線をちゃんと調べておかないと,地方の図書館のところでどう使えるかわからないですし,貸出しに例えばデジタルのデバイスを貸しましょうということになっても,貸されたデバイスが貸してもらった方々の自宅で使える環境にあるのかというと,そうではない地域もたくさんあって,関東近辺に住んでいると,環境が余りにも整備されているのでそこに気がついていないんですけども,実はそういうのが日本の全体の実情だということも考えた上で,スピード化含めていろんな議論をしていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
どういたしましょう,では三田委員,まずお願いします。
【三田構成員】
ネットの時代になりますと,あらゆる情報が世界を駆けめぐるわけです。こういう状況の中で,著作権の保護期間が日本だけ短いという現実があります。諸外国はもう70年になっているのに,日本だけ50年であります。谷崎潤一郎や江戸川乱歩はもうすぐ切れてしまうわけです。そういうものが無制限に流出したり,あるいは改ざんされて流通したり,そういうことを防ぐためにも,保護期間については世界標準にすべきであろうというふうに考えます。そうでないと,50年たって切れましたというものが無制限に流通するということが起こるのは,大変危険なことだろうというふうに思います。  そういうことを前提として,図書館がいかにあるべきかということはこれから考えていかなければならないんですが,話を整理するために,国会図書館のようなアーカイブというものと,それから今後は,今まで紙の本で出していたような少部数の出版物や自費出版物がデジタルだけで出てしまうということがあると思います。これは図書館で読めなければ困るわけです。ですから,この2つの点から話を分けて考えるべきだろうというふうに思います。
まず,既存の紙の本をアーカイブしたものについて申し上げますと,これまで図書館は日本の出版界を支えていたわけですね。純文学でありますとか,学術の出版,初版3,000部というようなものを図書館が半分ぐらい買うということで,出版というものが成り立っていたわけであります。私がこれからの図書館ということを考えたときに,大変に恐れるのは,図書館が推理小説等のよく売れるものしか置かなくなって,そういう学術書や純文学が読みたいというお客様が来た場合は,端末を用意してこれで見てくださいということになると,これが大変危惧(きぐ)される事態であります。
それを防ぐ手だてとして何があるかというと,やはり図書館の方に良識を持っていただいて,よりよき書物をしっかりとそろえるということが必要なんでありますけれども,今,図書館の実情は,業者に委託をするとか,それから,専門の図書館司書の方を公務員として雇わずに全部アルバイトに任せてしまうと,図書館司書のアルバイト化や派遣社員化,それから業者委託というのが進んでいるというふうに私は考えております。それから,図書館そのものも変わってきまして,今,株式会社の図書館ができるようになりました。そういう図書館は端末だけを置いて紙の本を置かなくなるということも十分に考えられます。
これに対してはどうすればいいかというと,これは簡単であります。図書館間の送信を有料にするということであります。要するに,紙の本を本当は買っていただきたいんですけれども,どうしても紙の本を置かずに,端末を置いて図書館間でデータを交換するというような図書館ができましたら,図書館間同士でデータを動かす場合には,著者と出版者に一定の課金をすると。そこの図書館を訪れたユーザーは無料で読めるということにする必要があるだろうと思います。
それからもう一つ,デジタル出版しか出されないようなものが今後普及した場合は,これは図書館で購入していただいて,一般の方にも見ていただくということが必要なんですけれども,紙の本と違って,デジタル書籍は劣化をしません。子供向きの本ですと,お子さんがずっと読んでいくとすぐに劣化をしますので,図書館は買いかえているわけです。ところがデジタル書籍というのは劣化をしませんので,これについては図書館との間に一定の話合いをして,例えば,今,図書館が映画のDVDを買うときは図書館価格という一般の定価よりも高い価格で買っている,3倍程度のお金で買っているということがあります。デジタル書籍についても,普通の個人ユーザーが買う希望小売価格よりも高めの図書館価格というものを設定したり,あるいはその地域の利用者の人数に応じて値段を決めていくとか,そういう新しい図書館価格というものを考えていく必要があるだろうなというふうに思います。
こういうことをちゃんと考えていけば,図書館に行けば無料で読めると,しかし出版者,著者にもちゃんと対価費用が払われるというシステムはできるはずだというふうに考えております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは片寄さん。
【片寄構成員】
片寄でございます。
1回目,いきなり冒頭からこういう各論めいた話で,自分の勉強不足をちょっと恥じているわけですけれども,この図書館問題に関しては,収集・保存については,だれもが異論のないところだとは思います。が,その後の提供・利活用という点でいろいろ御意見が出てくるのではないかと思います。
先ほど杉本先生がおっしゃった,田舎で書店がなく,本を読む機会に恵まれない方もいるという話,私も実感としてあります。デジタルネットワーク社会では,どこでも誰(だれ)でも本が読めるということで,とても便利になるだろうとは思っておりますが,先ほどの別所さんの話のように,まだまだインフラ状況が完全ではなく,デジタルが進めば日本の津々浦々で,即,本が読めるようになるわけでもないようですし…。
また公共のサービスとしてやるべきなのか,あるいは民業としてできるんじゃないかといったことが今後の議論すべきところだと思います。
この検討会議は,知のインフラへのアクセスというものと,それから知の拡大,再生産というものをどうバランスをとっていくのかということが,この会議全体を通してのテーマだと思います。言ってみれば官のかかわりと民のビジネス,どうやって融合するかということだと思いますが,私は出版界の一員として席におりますので,出版界がこれまで知の拡大,再生産に大きな役割を先生方とともに努めてきたということは,強く今後も申し上げていきたいなというふうに思っております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【杉本構成員】
いわゆる電子ジャーナルの話に近いんですけれども,今,図書館の役割として収集と保存という話が出てきましたので,保存の方の話を少ししたいです。電子ジャーナルになったときに,図書館はものを持たなくなったわけです。ライセンスしか買わなくなったので,コンテンツは出版者にあって,そのライセンスの購入を止めた途端に図書館では読めなくなるという問題が出たわけです。例えば電子本を貸し出すというときには,図書館経由でライセンスを一時的に利用者が持つというただそれだけですので,すべてのコントロールは出版社がすることになります。ですから,先ほどの金原構成員からのお話でも,既にない本であっても図書館に行けばあるということがでましたが,実は電子出版になった途端に,そうした保証が一切なくなるというふうに考えられます。
ですから,パッケージ系ではなくてネットワーク系のものの場合,図書館における保存という話になりますと,地域の図書館での保存ということも大事でしょうし,特に納本制度の上に立っている国立国会図書館と出版社がどうやってコラボレーションしていくかということは,やはりこれから50年,あるいは100年,あるいは200年というふうな単位でもって考えていくと,非常に大事なところだと感じております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
前田構成員,何かございませんか,音楽業界に非常にお詳しいわけで,最近,ニュースを見ていますと,有名作家の場合,音楽業界でいえば音楽出版社みたいなものを設立して,そこを通して出版をしていくというようなことですけれども。それに関連しなくても結構ですから,どうぞ御自由に。
【前田構成員】
音楽出版者という概念は,通常の書籍の出版者とは全く別の意味を持っておりますので,このテーマとはちょっと違うのではないかと私としては思います。
【渋谷座長】
電子書籍の新刊本を発行するときは似たような形態になるのではないかなと。冒頭に糸賀先生がおっしゃったことと少し関連があると思います。それは結構です,どうぞ御自由にお願いします。
【前田構成員】
今までの議論をお聞きしていて私が思いましたのは,今は紙媒体でしか出版されていないものを,それを電子媒体に図書館の方で変換して,それをユーザーに提供していくということがどこまで進めていかれるべきかという問題が1つあると思います。
もう一つは,既に出版者の方が電子媒体で提供しているものについて,図書館がそれを購入する場合があると思うんですけれども,この場合には,先ほども御指摘がでていた価格設定をどうするかという問題と,それから保存をどうするかという問題が生じるのだと思います。ただ,それらはいずれにしても何らかの方法で解決可能な問題ではないかと思います。
問題は,紙でしか出されていないものを,図書館がそれを電子化して提供するということをどこまで認めるべきかということだと思います。そこで何らかの対価を出版者の方に払うという,いわゆる報酬請求権的な構成をとるのか,許諾を必要とするのか,あるいは出版者の方で自ら電子化しないんだったら図書館の方でやっていいんだというような考え方もあろうかと思いますが,そこで何らかのルールづくりをしていく必要があるんだろうと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
ほかにどなたか。
【里中構成員】
電子化ということで,ちょっと一番気になっていることがありまして,例えば国立国会図書館でどういう形式でデータをとっているか,スキャンのときの方式ですよね。今,官民それぞれ,いわゆる紙媒体からつくっていく電子書籍に対して,取り込み方,技術的な面が統一されていないのではないかという危惧(きぐ)があります。
これは今後の日本の文化の配信に関して,縦書きに対応するようなデータというか,メディアもそうですけれども,様式ですよね。この縦書きが画像ファイルとしてしか認識できないようなやり方でやっていますと世界から取り残されてしまうので,世界の中で考えますと,標準化とかそういうことが大事だと思うんですけれども,そこらあたり少々不安があるのですが,どうなっているのかわかりやすく,ちょっとどなたかに質問したいなと思うんです。どなたに聞いていいかわからないので,よろしくお願いいたします。
【田中構成員】
国会図書館で,今デジタル化やっていることについてちょっと御説明させていただきますと,基本的には画像データをつくっておりますが,今はJPEG2000という形式で,データが損失しない形の圧縮率の高い形で,A3で400dpiというような解像度で,すべてのものをカラーでとっております。その基準というのは,お金との見合いとかいろんな観点で決めておりますけれども,一応きちんと仕様が確定するデータで,やり方もきちんと決めまして,将来にわたって長く使える形というようなデータとしてつくっております。
仮に,今現在やっていないですけども,そこからOCR処理等をして文字データをつくるということでも,小さいルビ等も含めて十分後で文字認識ができるということも,解像度を決める観点としては含めて作業はして,その形で保存しております。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
よろしいでしょうか。
【里中構成員】
ほかの国会図書館以外のところはどうなんでしょうか。ばらばらなんでしょうか。
【渋谷座長】
もう一度確認のために,お願いします。
【里中構成員】
民間とかあるいは国立国会図書館以外のところでは,それぞれもしかしてばらばらに,いろんなやり方でデータを今のところとっているんじゃないかなという心配があるんですけれども,今後グローバルに取り込んだデータ,とっておくデータ,世界に対して配信するときに,我が国の様式としてまとめておいた方がいいとは思うんですけれども,とても大事なことだと思うんですがどうなっているのかなということです。ですからすみません,国会図書館についてはわかりました。画像データとして取り込んでいるということですが,ほかのところでちょっとおわかりの方。
【三田構成員】
今御指摘の点については,3省デジ懇で随分議論されたことであります。結論としては,シャープさんのものと,それから携帯電話で力を持っているボイジャーというところが,双方協議して,統一した基本フォーマットをつくるということで補助金も出ております。それができましたらば,それをほかのメーカーにも提供していくということで,縦書きの基本フォーマットは近い将来できるだろうということになっております。
今ある,既に出ているものは,統一されたものができましたらばそれに変換していく努力をするということで,解決するというふうに私は考えているんですが,いかがでしょうか。経済産業省等ではどうお考えなのかなというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【鈴木著作権課課長補佐】
今のファイルフォーマットの関係の御質問でございますけれども,3省懇談会の中での1つの今後の検討課題としてもあげられておるところでございまして,更に現在ですと,総務省の方で委託調査をして,交換フォーマットとしての標準化の検討が進められておるということを聞いておりますので,これにつきましての状況については,また次回なりに少し資料とかを整理させて,御報告させていただきたいと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほかに,どなたか御意見ある方。
【金原構成員】
先ほどの杉本先生の御意見の,要するに電子ジャーナルを含めた各施設,図書館を含めた教育施設への配信問題ですけども,これはおっしゃるとおり,配信されてはいるけれどもアーカイブとしては残らないという問題は,これは出版者にとっても,私も個人的には専門書の出版者ですから,非常に大きな問題として,解決しなければならない問題だというふうに思っております。それはそれで,図書館にも何らかのデータが,出版社というのはいつつぶれるかわかりませんので,そうなってもデータとしては残るような形はつくらなければいけないというふうに思っております。
そういうこともあって,今日この図書館に係るテーマとして入ってくるというふうには思っていなかったんですが,ちょうどいい機会ですのでちょっとそれについてふれさせていただくと,図書館が電子出版物の利用者として各出版者と契約をすることになるだろうと思うんですが,今までは個人購読に頼っていたものが,今度は施設購読に置きかわっていくことになるわけで,各施設としては,そこの施設に属する人たちに資料を提供するという,そういう責務ができてくるのかなというふうに思います。そういう意味では,公共図書館はそういう範囲に入ってこないだろうと思いますけども,教育機関における図書館は施設に所属する学生,あるいはそこの研究者の先生方に資料を提供するという使命があります。そういう意味では,やはりどうしても教育予算との関連もあると思いますので,我々電子配信をしている出版者とすれば,是非ここは文科省にそういう予算を是非考えていただきたいと思います。個人の購読に頼るのではなくて,やはり施設としてそこに所属する先生方への資料を提供するという,そういう重要な意味があると思いますので,是非そこは教育を担当するところの文科省に是非お考えいただきたいというふうに,出版者としては思っております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほかに,いかがでしょうか。
【常世田構成員】
今の金原委員の,個人購買から施設購買へ置き換わるという,御発言に私ども賛成をします。アナロジーで考えていただくとわかりやすいんですけども,要するに義務教育,世界じゅうの国でほとんど義務教育を行っていない国はないわけで,国民として基本的な民度を担保するために義務教育を行うわけですが,基本的に義務教育は受ける国民は無料であります。国のレベルでのコスト負担をして義務教育を行うというのが普通の考え方だと思います。例えば一般道路などもそれに近い考え方だろうと思います。つまり,社会的インフラとして必要なものを国全体で担保するという考え方だと思います。
公共図書館のそもそも歴史的な経過を見ますと,やっぱりヨーロッパで国家間の競争が激しくなっていったときに,産業革命というようなものを円滑に進めていくために,労働者の能力をやっぱり高める,つまり民度を高める必要があったというそういう側面があるわけでありまして,これは今でも社会政策的な側面というのは重要な課題だというふうに思っていますので,そういうふうに考えていただくと,図書館というものを理解していただきたい,理解いただけるんではないかなというふうに思うわけです。
特に,今の公共図書館というのは各自治体が100%コスト負担をしておりますので,そういう形でのコスト負担は先進国ではほとんどないんですね。国がやはりある程度の部分の負担をしているということはあります。ですから,義務教育というようなもので図書館,いわゆる大人に対する義務教育というふうに言ったらいいんじゃないかと思いますが,民度を高めて国を強くしていくという,社会政策的な観点で言えば,当然国のコスト負担というものがあってしかるべきだろうというふうに思います。こういう形でデジタル出版の図書館での利用というものが担保できればいいのではないかなと思っています。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
今日のお話を伺っておりますと,電子書籍,これも書籍であると。図書館,それから出版者というような概念が出てくるのですけれども,これらは紙本を前提にして形成されてきた概念ですし,それらによるシステムも,もちろん紙本を前提にしているわけです。しかし,電子書籍というものは,デジタル情報,インターネット上を流れるデジタル情報だろうと思うのです。ですから全く異質のもの,その電子書籍の流通,利活用に関する将来図を描くときに,これまでの図書館とか出版者とか,出版契約とかそういうものを類推していると,恐らく方向がちょっと違ってくるのではないかと思います。
皆さん方ももちろんそういう意識をお持ちだろうと思うのですけれども,今後の検討においてはそういうこともあるなということを頭の片隅に置いて,議論が進めていくとよろしいんではないかなと。そういうことを感じました。これは私の個人的な感じ方ですから,お聞き流しくださって結構でございます。
それでは,今日はそろそろ時刻が近づいてきております。いかがでしょうか,本日はこのくらいにしてお開きということでは。よろしゅうございましょうか。
【三田構成員】
今の座長の御意見は半分正しいというふうに思っているんですが,ちょっと聞き捨てならんところもありますので,ちょっとだけ意見を言わせてください。
日本は世界に誇るべき出版文化を持っておりますし,文学も持っております。それがなぜ可能だったかというと,評判の悪いところもあるんですけれども,今までの日本のシステムというのは非常によくできているというふうに私は考えております。
1つは本屋さんに対して委託販売をするということです。出版者が責任を持って本を本屋さんの店頭に置いていただくと。そこに読者との出会いがあるわけです。それからもう一つは再販制度です。定価が一定であるということで,出版者も著作者も守られていたわけであります。それから,アメリカなどですと契約期間内は著作権を出版者が持っております。それで電子配信をしたり映画化を検討したり,音楽出版者と同じようにいろんなことができるわけでありますけれども,逆にそういう売れる可能性のない出版物は出にくいという状況があります。
日本の出版物が非常に多様で,少部数のものでも出てきたというのは,そういう著作権を全部とってしまうということではなくて,出版者に一定の権利を預けて,その範囲内でやっていただくということが機能していたんだろうと思います。そういう少部数の出版を守るためには,現行のシステムというものは一定の機能を持っていたというふうに考えますので,電子書籍になったから全部が御破算になるという考え方は,大変危険だろうと思います。電子書籍が普及しても,これまでの紙の本の流通や出版文化というものが残っていくような細心の注意を払って,未来というものを見据えていく必要があるかなというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,本日の議論はこのあたりで終えることにいたします。次回以降ですけれども,これは図書館関係者,それから出版関係者などから,昨今の電子出版をめぐる状況,実態等についてヒアリングを行う,これが必要であろうと思われます。そのようにして進めていきたいと思いますけれども,これでよろしゅうございましょうか,ヒアリングをしばらくの間続けるということです。
それではそのように進めさせていただきたいと思います。
では最後に,事務局から連絡事項がございましたらお願いします。
【鈴木著作権課課長補佐】
それでは,先ほど座長の方からお話がありました次回以降のヒアリングに関しましては,その対象者,関係者につきましては,座長とも相談いたしまして決定いたしたいと思います。
また,次回の検討会議でございますけれども,12月17日(金)13:00,本日と同じこの文部科学省の6階第2講堂で開催させていただくこととしておりますので,よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【渋谷座長】
それでは,これをもちまして第1回検討会を終わらせていただきます。
本日は大変ありがとうございました。

11:26 閉会

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