電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第7回)議事録

第7回電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議

1.日時
平成23年4月27日(水)  17:00〜19:00
2.場所
当会大学校友会館 阿蘇の間
3.議事
  1. (1)デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方について
  2. (2)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,片寄聰,金原優,里中満智子,渋谷達紀,杉本重雄,瀬尾太一,田中久徳,常世田良,前田哲男,三田誠広

17:00 開会

【渋谷座長】
それでは,ただいまから第7回の会議を開催いたします。
本日は,御多忙の中御出席いただきまして,まことにありがとうございます。
議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいております。こういうことで,特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
よろしゅうございますか。どうもありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのままお席にいらしていただくことにいたします。
本日は,笹木副大臣が御多忙の中御出席されておられます。開会に当たりまして,副大臣に一言,ごあいさついただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
【笹木文部科学副大臣】
皆さん,こんにちは。きょうも本当にお忙しい中,構成員の皆様には貴重なお時間を頂きまして,本当にありがとうございます。
7回目になるのですかね。今まで自由闊達(じゆうかったつ)にいろいろな議論を頂き,そして貴重な重要な御意見もたくさん賜りました。
この検討会議は,知の資産の有効活用と電子書籍流通の基盤整備について検討を行っていただいているわけですが,昨年来からこの電子書籍の流通ということについては非常に関心が高まっております。
あと,2011の知財計画,今まとめに向けていろいろ議論を詰めているわけですが,ここでもこの電子書籍の基盤のより一層の整備に向けて,いろいろな詰めた議論が行われております。
本日は,これまでの皆様の議論を受けて,国会図書館のデジタルアーカイブ,この有効活用の方策について取りまとめを頂くというふうに聞いております。是非活発な御意見・御議論をたくさん頂いて,取りまとめを頂きたいと思っていますので,どうかよろしくお願いします。ありがとうございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
なお,カメラ撮りにつきましては会議の冒頭までとさせていただきますので,配付資料の確認までということで御了承願います。
それでは,まず事務局から配付資料の確認と,その説明をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】 
それでは,配付資料の確認をさせていただきます。
本日お配りしております資料ですが,まず資料1といたしまして,「『デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項』に関する議論の整理(案)」を配付させていただいております。
そのほか,参考資料といたしまして,検討事項として整理させていただいておりますものが参考資料の1,そして参考資料の2といたしまして,第1回から第7回までの意見概要です。参考資料3は本検討会議の構成員名簿となっております。
そして最後,参考資料4ですが,「グーグル・ブックス和解案の不承認決定について」として1枚の資料を配付させていただいております。これについては,少し触れさせていただきたいと思います。御承知の方も多いかと思いますが,2009年11月にグーグル・ブックスに係る訴訟についての,いわゆる修正和解案を提示し,米国裁判所に承認を求めていたところですが,本年3月22日にこの修正和解案につきましては不承認の決定をアメリカの裁判所が下したというものです。
不承認決定の概要ですけれども,修正案としては公正・適切・合理的なものではないということ,修正案についてオプトアウト方式からオプトイン方式に転換されれば,当該案に関して反対意見に指摘されている多くの懸念が改善されるであろう。そして裁判所としては適切に修正案を更に修正することを強く要望するというような内容であったということですので,これは参考として報告をさせていただきます。
配付資料につきましては,以上でございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,これから議事に入りたいと思いますけれども,本日は,これまでの本検討会議における御議論を整理した資料を用意しております。資料1というものですけれども,本日はこの資料の内容につきまして御議論を頂きまして,検討事項,つまり「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方について」という検討事項につきまして一定の方向性を取りまとめていただきたいと考えております。
そこで,まず事務局からこの資料の説明をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,資料1につきまして,説明をさせていただきます。
この資料は,前回の資料までは各構成員の意見の整理という形で提出させていただきました資料を,これまでの議論の内容を踏まえまして論点の整理という形で再構成をさせていただいているものでございます。
1ページ目のところですが,最初に「基本的な考え方」,そして「国会図書館が担うべき役割について」の検討に当たって前提とした事項などにつきましては,これまでもこの会議で御紹介している内容と基本的には同様の内容となっております。
そして,具体的な検討事項としましては,2の(2)とありますが,「国会図書館からの送信サービスについて」でございます。送信サービスの実施に当たっては,まず3点について意見の一致が見られたということで整理をさせていただいております。
まずは「一定の条件下により実施をすること」,「著作者,出版者の利益を不当に害さないことに留意」をすること,そして「可能な範囲から早急にサービスを実施するなど戦略的な取組が必要であること」,という意見の一致が見られたポイントを踏まえまして,「送信サービスの具体的な在り方について」を整理しております。
まず,国会図書館から各家庭等まで送信を行うというところです。2ページ目をごらんいただきたいと思います。「送信サービスの在り方の検討に当たって」です。障害者や高齢者へのアクセシビリティなどにも配慮し,公平かつ便利に利用できるよう国会図書館のデジタル資料の利活用を図ることが重要であり,各家庭までの送信が利便性については最も高いものであると考えられる。しかし,これを実現するには,関係者間の協議により,許諾に係る条件などを決めた上で個々に契約を結び,各家庭まで配信を行うということですとか,著作者と出版者が協力して集中管理機構を設立する,つまり契約ですとか,使用料の分配などを円滑に実施するための機構の設立などが必要となるという条件があるというところになりますので,やはり解決すべき課題が多く,関係者間において相当期間の協議を行う必要があり,実施までには相当の時間を要すると考えられるということになります。
一方,送信先,利用方法,対象出版物を限定した上で実施を検討するのであれば,早期に権利者・出版者の合意を得ることができるということが考えられるわけでして,その送信先として地域の公立図書館,大学図書館等までの送信を行うということを想定するということになっております。そして送信データの利用方法としては閲覧のみとし,プリントアウトを認めない。そして所蔵冊数を超える複数者の同時閲覧は認めないという条件を課すこと,そして送信サービスの対象出版物の範囲につきましては,相当期間重版していないなど,市場における入手が困難な出版物とするという,このような制限を課すことにより著作者・出版者の利益を不当に害することがないよう十分配慮するものであれば,利用者に対して無償提供を行うことは可能であると考えられる。しかしながら,実施に当たっては,その対象となる図書館につきましての整理が必要であるということ,そして市場における入手が困難な出版物の範囲についても整理が必要であるという課題は残るわけですけれども,情報の地域間格差の解消に資するものと考えられるということが,これまでの検討の流れであったかというふうに考えております。
そして,「まとめ」としてですが,2ページ目の一番後のパラグラフです。各家庭までの送信を目標とし,課題解決に向けて検討を進めていくことが必要であるが,そのための第一段階として,公立図書館等まで送信を行うことの実現を目指すことが適切であると考えられる。そして3ページ目をごらんください。公立図書館等まで送信を行うことについては,サービス範囲が限定ではありますけれども,早期の合意が期待され,迅速なサービスの実施が期待される。そして最後ですけれども,公立図書館等まで送信を行うことについては,その利用制限の内容が法令等によって担保されるのであれば,権利制限規定の創設により対応しても著作者・出版者の利益を不当に害することにはならず,電子書籍市場の発展にとっても意義があるものと考えられる。また,権利が制限された場合においては,送信対象となる出版物の著作権者等の求めがあった場合には,送信サービスの対象から除外する方式を導入するべきであると考えられる。
以上が,送信サービスに関しましての整理でございます。
続きまして,「国会図書館の蔵書を対象とした検索サービスについて」でございます。検索サービスの実施につきましては,さらなる利用者の利便性の向上を図るため検索サービスの提供が必要であること,出版物に対する新しいニーズの発掘にも資する面があることということが,まず意見の一致が見られた点でございます。
そして「テキスト化の方法について」です。本文検索サービスの提供に当たってはデジタル化資料,現在は画像ファイルになっているわけですが,これをもとにテキスト化することが必要となるわけですけれども,検索サービスにおける検索対象として利用するためのテキスト化であれば,著作者・出版者の利益を不当に害することにはならないと考えられる。そして,検索結果の表示についてですが,表示方法によっては著作権が働く場合があり,留意することが必要である。検索結果については,書誌事項,又は1行程度のスニペット表示,さらには著作権が働く分量のスニペット表示などがどの程度まで必要か否かについて,これは今後関係者間で協議を進めていくことが必要であるという形で,このように整理をいたしました。
続きまして,「デジタル化資料の民間事業者等への提供について」です。まず,この提供の是非についてですが,著作者,出版者の許諾を前提とした上で,電子書籍サービスを実施する民間事業者へのデジタル化資料の提供を実施することは重要であるということ。現在,国会図書館の蔵書をもとに復刻版を作成する場合には,有償で国会図書館が資料の提供を行っているという事実がございますので,デジタル化資料の提供については適切な仕組みを定めた上で実施されるべきであると考えられる。
4ページ目をごらんください。そのデジタル化資料の「提供のための環境整備について」でございます。民間事業者への提供に当たっては,当然許諾を個別にとるということが前提となるわけですけれども,特に過去の出版物などについては権利者情報が不明な場合が多いことから,集中的な権利管理機構の創設などにより,簡易迅速な許諾システムを構築する必要があると考えられます。また,国会図書館のデジタル化資料を活用した新たなビジネスモデルの開発も必要であり,関係者間の協議促進の場を文化庁が設置することや,事業に意欲のある関係者による有償配信サービスの限定的・実験的な事業の実施なども検討する必要があると考えられる。
以上が国会図書館の役割について整理したものでございます。
3としまして,「公立図書館等の役割について」でございます。公立図書館等は公共性の高い社会教育施設であり,その使命を果たすため,所蔵資料の電子アーカイブ化ですとか,ネットワークを使ったサービスの提供を推進することには意義があると思われます。
更に,民間事業者との契約に基づいた当該事業者が提供するサービスを図書館において利用させる場合など,今後様々なサービスが行われてくるわけですが,そのサービスの実施に当たりましては公立図書館が果たす役割などを踏まえ,それぞれの図書館の判断運用にゆだねられるべきと考えられます。あわせて,純文学ですとか,学術に関する入門書のように,公立図書館等が実際に購入することで買い支えられている出版物も存在しているという側面もあるわけでございますので,公立図書館は知の集積と情報発信の地域拠点であるという意義にかんがみ,各館の特色を踏まえつつ,引き続き多様で豊かな蔵書の収集に努めていくことが重要である。そして最後ですけれども,公立図書館等における電子書籍の利活用に当たりましては,電子書籍市場と相互補完的に機能するべきであり,両者が競合することなく発展していくための関係者間の協議促進のための場を設けること,さらにはサービス実施に意欲のある関係者によるモデル事業の実施などを検討することが必要であると考えられる。
以上が,これまでの議論を踏まえまして整理させていただきました,これまでの議論の整理案でございます。よろしく御議論いただければと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,ただいまの説明に対する御質問も含めまして,いろいろ御意見等ございましたら,これから時間は十分ございますので,お願いしたいと思います。どうぞ,どなたからでも結構ですので,御発言を願います。
【金原構成員】
よろしいですか。
【渋谷座長】
はい。
【金原構成員】
これまでの議論をよくまとめていただきまして,私どもが発言したことの趣旨を酌んで,利用者,あるいは権利者双方のことにも配慮しながらまとめていただいたことに感謝を申し上げます。
幾つか出版としての意見を申し上げたいと思っております。最初,この国会図書館の送信サービスについてのところですが,この2ページ目の真ん中あたりから始まります公立図書館・大学図書館等までの送信を行うということについては,これまでもこのような流れで議論が進んでおりまして,基本的には私どももこのようなものでよろしいのではないかというふうに思っております。
若干補足すると,この対象となる出版物,あるいは著作物のところです。市場で入手不可能なものというところで,この白丸の2ページ目の下の方に「実施に当たっては」というところにありますが,絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料ということがあります。絶版ということだけではなくて,やはり市場で著作物単位で入手できないもの。つまり絶版と言いますと特定の出版物を対象として絶版という定義が存立するわけですけれども,そうではなくて,著作物単位で入手が可能かどうかということを,是非判断の基準にしていただきたいということであります。その場合には,電子出版物として流通していることもありますので,電子出版物の場合には絶版という定義そのものが存在しないということでありますし,実際問題として私ども商業出版者としては電子バージョンとして流通させているものもたくさんありますので,そういうもので流通しているものがあるならば,それは是非,このカテゴリーから外していただきたいということであります。これがまさに我々民業として電子出版物の流通の促進を図っているところでありますので,そこについてはやはり商業出版者の活動というものを是非優先していただきたいというふうに思います。
それから,これは入手困難とはいえ,やはり著作権の保護期間中の問題,内輪の問題でありますし,やはりいろいろな権利者がおり,どうしても駄目だという方もいると思いますので,そういう方については除外する,これをオプトアウトと言っていいかどうかわかりませんが,そのようなものも考えていただきたい。それから,同様にやはり著作権の保護期間内であるということであれば,何らかの補償金のようなものもあってもいいのではないかなというふうに思います。
それから,各家庭への配信ですが,ここにもかなり否定的なまとめで書いてありますが,やはりこれは民間の事業者が行うべきことであって,私どもとしてはこれは是非除外をしていただきたい。あるいは当面,検討することはいいと思いますけれども,こういった配信というのはやはり難しいのではないかということで,国会図書館が直接行うというようなことではないだろうというふうに思います。
それから,本文検索のところですが,これは今まだ国会図書館としてはデジタル化の途中でありまして,まだかなりの費用がかかるということであるようですが,更にそれを本文検索ということでテキスト化するということになると,かなりの費用がかかる,コストがかかるということでしょうけれども,それをかけるということと見合うかどうか,それをもう少し慎重に考えていただきたいというふうに思います。所詮やはりこれは国の予算の中で,税金の中からやるということですし,この大震災の後で果たしてそういう予算が継続して割り振られるのかどうかということも含めて検討していただきたいというふうに思います。
それから,あと2つあるのですが,まずスニペット表示ですが,これは全文検索であるとやはり避けられないだろうというふうに思います。特に書籍の場合は書いてあることがどのくらいの重みであるのかということは,実際のその部分が表示されないと,果たして求める出版物であるか,著作物であるかどうかということがわからないのではないかと思いますので,スニペット表示はある程度必要だろうと思います。もしそうであるとするならば,やはりこれは権利者としては著作者も出版者も非常に慎重になるところでありまして,スニペット表示を二,三回繰り返せば,全文が読めてしまうというものもありますし,スニペット表示によって例えば地図のようなもの,あるいは俳句,あるいは短歌のようなもの,あるいは辞典・辞書類,あるいはマニュアルの類というものはスニペット表示からオプトアウトされるべきではないかなと,あるいは権利者がそのような意思を表明した場合にはやはり除外をするということではないかなというふうに思います。
それから,テキストファイルを表示するということになると,やはり権利者の了解というものが必要であろうと,先ほどのオプトアウトと同じですが,そのような配慮が必要なのではないかというふうに思います。
とりあえず以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。全般にわたっていろいろ重要な問題を御指摘いただいたわけです。
今の金原委員の御意見に対する御意見でも結構ですし,ほかのことでも結構ですが,御発言は。はい。
【糸賀構成員】
今の金原委員の発言に対するコメントなのですけれども,国会図書館からの送信の範囲です。今,金原委員が言われたようなものは,例えば電子納本されたようなものについては,当然今のまとめの1ページにあります2,国会図書館からの送信サービスのところでは,そういったものは私は想定していないのだろうと考えておりました。つまり,再三申し上げているように,一昨年ですか,補正予算127億円でデジタル化された1968年までの資料,これがここでの中心になるものというふうに私は考えております。
そのことは,具体的には1ページ目の今申し上げた国会図書館からの送信サービスの最初のところで「以下の3点について意見の一致が見られた」,それの2番目です。「電子書籍市場に対してその形成,発展を阻害しないことや,著作者,出版者の利益を不当に害さないことに留意して行う」。こういうことを考えれば,電子納本された最近のものについて,これをほかの図書館に送信するということは含まれないというように私は理解しております。
そこらあたりの対象範囲の明示ということはいずれ必要になるだろうと思います。
それからもう1点,今度は2ページのところで,「国会図書館から地域の公立図書館,大学図書館等まで送信を行う」というふうに書かれております。このことと,同じそこのまとめの丸が5つあって,最後に「実施に当たっては」で2つ丸があります。この最初のところに「対象となる図書館は,著作権法第31条の適用がある図書館の定義等も参考にした上で整理が必要」と。依然として,これはまだちょっとはっきりと明示はされていないのですが,31条の適用があるということは学校図書館が含まれないことになります。私は,国会図書館のそういった資料は子どもたちが例えば調べ学習とか,今は高等学校でも探求型学習と言いまして卒業論文のようなものを書かせる学校が公立高校・私立高校,いずれも増えてきております。それを考えたときに,高校生,場合によっては中学生がその国会図書館の本を調べて探究型学習をやるということは当然予想されるところです。
そういう意味では,私は何らかの形で学校図書館の生徒もこれを使えるようにすることを考えるべきだと思います。ただ,現行の著作権法31条では学校図書館が適用されないと言いますか,権利制限されないのです。ですから,ここはちょっと参考にしつつ,整理するときに,やはり学校図書館への一定の配慮は必要になるだろうと思います。その一方で,現行の著作権法31条の適用がある,この私立図書館,これは公益法人立であれば,やはり同じようにここで適用になるものと思われます。そういう意味では,見出しが公立図書館・大学図書館等となっているけれども,公益法人の私立図書館,それから場合によって私は学校図書館といったものも,是非今後整理していく過程の中では配慮していくべきだろうと思います。それが本当の意味でのいわゆる知財立国,知的立国を目指す場合に,やはり子どもたちを含め全国民が必要な情報にアクセスできる環境という意味で,今回の国会図書館のデジタルデータの送信ということが提案されている。その背景,文脈といったものはきちんと押さえなければいけないと思います。
そして,そのことを更にちゃんと実現する意味で,これも私はこの会議の場で繰り返し申し上げてまいりました。どこかで報告書のような形でまとまったときには取り上げられるのだと思いますが,公立図書館や大学図書館が身近にない方が実は日本にはまだまだいらっしゃいます。いわゆる図書館未設置地域です。こういった方向で行くのであれば,図書館の設置ということを一方で考えなければ,いつまでたっても肝心のその国会図書館が築き上げた知の集積にアクセスできない人たちが残ってしまう。そういった不平等の格差解消も一方で考えていく必要があるだろうと思います。
そういう意味では,2ページの一番下のまとめのすぐ上のところに,こういった「課題は残るが,情報の地域間格差の解消に資する」と書かれております。それは公立図書館の未設置自治体の解消といったことで,初めて実現するものだろうと思います。そういう意味では,ここの表現は「情報の地域間格差」と書かれていますが,正確にはやはり「情報入手」とか,「情報アクセス」の地域間格差の解消につながっていくのだろうと思います。その辺もあわせて考えていっていただきたいと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
2つ述べられましたけれども,電子の本文は含まないということ,それから,今の学校図書館をこちらに含めてということでございますね。
【糸賀構成員】
それから,公益法人の図書館は含まれる,だから私立図書館が含まれるということと。
【渋谷座長】
そうですね。
2つ目は,御主張というか,御意見ということでございます。1つ目は,これは確認でしょうかね。
【瀬尾構成員】
よろしいですか。
【渋谷座長】
はい。
【瀬尾構成員】
全般的なことについて少し申し上げたいと思います。
まず1つは,公共図書館ということで,国会図書館から公共図書館までの送信を可能にするということで,今糸賀構成員からそこには学校図書館も含まれるべきだし,私立の図書館も含まれるべきであるという御意見ですね。というふうな御意見もございました。
ただ,現図書館法の中では,3人程度の人数が集まったことによって一般社団を設立して容易に図書館ができるという現実もございますので,これからいろいろ議論の対象になるべきところかと思います。
私が申し上げたいのは,今のような議論ももちろん承知しておりますし,学校図書館に配信することは検討の課題になるかと思いますが,現時点,今,このときに考えて何をしなくてはいけないかということを,私は少し切り出した方がいいのではないかと思っています。
というのは,今図書館がずっとこれまでの議論の中で,情報というのはインフラである,電気・水道,同じように情報があまねく行くべきであるというふうな議論もございました。図書館さんから,そういうものを目指しているんだという現実も頂きました。
今,東北の復興の中で,やはり新しくつくらなければならないときに,図書館というのをそういう立場でつくり出す,そして新しい街づくり,復興計画の基本的なところの中に早く図書館を整備するという事案を入れていただいて,そのためにも著作権法はきちんとこれに対応しているんですよと。ですから,東北でまずこれから復興のいろいろなものが起きるときに,率先してインフラとして図書館をつくってください,なかったところにもつくってください,壊れたところにもつくってくださいというようなきちんとしたそういう姿勢があった上で,そして今の国会図書館からの流れをつくっていくということは,実は早めに言わないと,これを3年間かけて,4年間かけて言って済むことではないのではないかなという気がしています。
ですので,私は復興に対して今回の図書館というのは非常に重要な役割を持つべきだと思うし,実際に持つ可能性がある,そして今回情報がどれだけ大事なものなのかということを被災地の皆さんが身をもって知ったし,社会も身をもって知ったということですね。とすると,今やはり先にやるためには,私は課題としては先ほどの範囲を広げることもあるでしょうけれども,私は公共図書館という著作権法の中で新しい切り出しで国会図書館を中心としたシステムを今年の復興の早い時期の構想の中にきちんと組み込めるような対応をまずはする,それをするべきだというような意見を,まず出すべきなのではないかと思います。
それを膨らませていくと,多分いろいろな課題が出てくると思います。例えばボーンデジタルのものを今どうするのか,学校図書館をどうするのか,公共図書館以外の私立をどうするのかということは,実はいろいろな問題を含んでいる。だから復興とは言いつつ,拙速になってしまうと後々の禍根を残すことにもなりますから,やはり検討するところはきちんと検討しますけれども,それ以前にすべきこと,今,今年にすべきことを切り出して提案していくということも必要なのではないかというふうに思います。
私の意見としては,中央の国会図書館から入手不能なもの,私はボーンデジタルのものも入手不能であれば入れるべきなのではないかと思っております。ただ,それが地方公共図書館まで伝送するということが必要なのではないかと考えます。
それともう1つ,この部数,現部数を超えてという部分がありますが,ここは本当に現部数を超えないだけでいいのかどうか。つまり,デジタル化することによって複数が同時閲覧できる利点を完全に封鎖してしまうことでいいのかどうか,そこに多少の余地は必要なのではないかというふうには考えております。
たくさん言ってしまって,きょうは時間がたくさんあるそうなので,もう少し言わせていただきます。
検索についてです。全文検索については,これは今まで申し上げてきた地方公共図書館までとは大きく話が違っている問題だと思っています。これは全国民が家庭の中から検索できるべきシステムだし,それによって非常にたくさんの,本当に国民的な恩恵が受けられる,そういうものであろうと思います。ただし,そのOCRによる識字率は何度もここで出てきているように98%とか,非常に高いものではない。確かにこれをボランタリーな形で補完していくことも非常に重要だと思いますが,私はこれはもっと早急に実現して,国民にきちんとデジタル化の利益を出すべきだと思っています。
ただし,先ほど金原構成員もおっしゃったように,スニペット表示については検討を要するとおっしゃっています。ただ,実は私は検索を自分で非常にしますけれども,検索は複合語でするのが今は普通ではないですか。and検索,or検索を普通やっていかないと,例えば単純に織田信長を検索するときに,「織田信長」だけで検索することはあり得ませんね。膨大な量が出てしまって,自分の欲しいものが手に入らない。つまり,これから検索スキルというのは,いかにキーワードを切り出して複合的に自分の目的を達成するかが検索の基本技術になると思います。そのときに,スニペット表示といってもとに出てくる部分を出したらどうなりますか。相当難しい問題になると思います。
つまり,以前出てきたキャッシュの部分が網掛けで出てくるというスニペットがございました。ただ,それを何語も何語も複合語でやっていったら,相当出ますね。それで本当によろしいのですか。これは現在の検索の事実に対して,スニペット表示というのは今のように大変難しい問題をはらんでいると私は思っています。ですので,スピード感を重視するのであれば,私はその検索したキーワードの出現頻度を出したらいいのではないかと思います。例えば,「織田信長 桶狭間 鉄砲」で検索をしたら,それぞれが何回この本に出てきたかというのが出てくれば,その出現頻度が3つとも非常に高い本というのをユーザーは見ることができる。そして,それを,では図書館に行って見よう,買って見よう,ユーザーはそれを見て何らかの形で利用するわけです。どこにも売っていない,国会図書館にしかないとなったら,地方公共図書館に,若しくは国会図書館に行って,その本の現物に当たる。ただ,これが家庭で全部できるとすれば,私は相当な量の検索結果として効果があると思っていますし,これは本文を出さないわけですから,かなりいろいろな面で著作権法的には処理が容易になる,つまり実現が早期に可能になるのではないかというふうに思っています。
ですので,こういうふうにできるところと議論するところを分けて,できるところは早めにやった方がいいのではないですか。せっかくデジタル化して,効果が見えずに2年も3年も放っておくよりは,1年ごとに段階的に結果を出していくということが,私はいいように考えています。
非常に長くなりまして,申し訳ございません。以上が申し上げたいことです。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,一瞬早く三田委員が挙手されましたので,どうぞ。
【三田構成員】
幾つかのことを申し上げたいと思います。
まず1つは,我々が読者として利用者として本を読みたいと言ったときに,日本文学等も必要でありますけれども,我々は外国文学を読んで育ってまいりました。外国の翻訳作品,子どものころ読んだものを確認したいとか,いろいろな翻訳が出ているのを研究者が比べてみるとか,そういう要望が多いだろうと思います。しかし,外国の翻訳作品の場合には,その外国の作家の著作権が生きている場合があります。
ここで問題になるのは,もうインターネットというものは世界標準で,世界を経めぐってつながっているという現実があります。利用者の中にも,外国で日本語の読める方が御利用になるようなケースも将来的には想定されなければならないと思います。
ところが,外国と日本でシステムが著しく違っている点が2つあります。1つは,アメリカは別でありますけれども,ヨーロッパのほとんどの国では図書館で紙の本をユーザーが読まれるということに対して,国が著作者に補償金を支払うという公共貸与権という制度を実施しております。ですから,図書館でただで読まれるということに対して著作者は一定の補償金を得ると。だから,どうぞお読みくださいということになっているわけです。
それから,もう1つ,著作権の保護期間が諸外国はほとんどは70年でありますが,日本では50年であります。日本で50年にしておりますので,ヨーロッパの作家,まだ70年で著作権が残っているものでも,日本では自由に利用できるということになります。もし,今回のその図書館で本を読むということについて,著作権の切れているものはどんどん利用できるんだということになりましても,翻訳作品について諸外国の著作者はまだ自分に権利があるのではないかというような声が起こってくるだろうと思います。
こういう問題は,外国の著作者団体と協議をしながら進める必要があるだろうと思います。実は,何年か前にアメリカのグーグル社が主要な図書館の本をデジタル化して,これを配信しようと試みたことがありました。それに大反対をしたのがフランスとドイツのペンクラブであります。そこから反対の声が起こったので,アメリカの作家たちとグーグルが結ぼうとした和解案が,結局は和解できないと,そのまま現在に至っているということであります。
日本の場合は,国立国会図書館がやっているので,民間企業がやっているわけではないのですが,やろうとしていることはグーグルがやろうとしたことと全く同じであります。ですから,諸外国の作家の方々の御意見を聞くということが是非とも必要であります。
何かそれにかこつけて権利を主張するようでありますけれども,日本の著作権がいまだに諸外国と違っている,50年であるということ,そういうことも問題でありますし,それから公共貸与権というような制度がないということも問題であります。
今,図書館の範囲を広げようという話が出てまいりました。これに対して,出版者や著作者はそう無制限に広げられたら困りますよと,確かに実害が出てきますよというような議論もこれから起こるだろうと思います。そこで議論をしていたら,せっかくのこういう提案がなかなか先に進まないということが起こると思います。せっかく100億円以上の予算を投入して,もう少しでこのシステムが実現しそうになっている,こういう現状を鑑(かんが)みると,公共貸与権で諸外国が支払っている金額というのはごくわずかなものであります。そういうもので出版者や著作者の御理解を得て,図書館の範囲も広げ,学校図書館も含めて,より多くの方々に御利用できるようなシステムを検討してはいかがかなというふうに考えます。
それから,もう1点でありますけれども,絶版になったものを利用するということなのですが,実はグーグルがこの書籍のデジタル化ということをやり始めた当時は,こういうふうに書籍の画像をデジタルデータにすることについては大変な費用がかかるというふうに考えられておりました。ところが,現在,本が1冊ありましたら,それは100円以下で業者がデジタル化してくれます。それから,今日本のグーグルが各出版者に働きかけまして,出版者にあるもう流通していない本をグーグルに持ってきていただければ,グーグルがただで有料販売をやりますよということをやっております。
こういう現状でありますので,絶版になっていますからただで流通させようということを,もしこのシステムでやろうとしましたら,出版者は全部自分のところで,あるいはグーグルに頼んでデジタル化して,有料配信を始めてしまいます。
その意味でも,何らかのメリットが出版者や著作者にあるようなシステムを考えないと,皆様に御迷惑をかけませんから,ただで図書館で読めるようにしますよということだけでは,このシステムは前に進まないのではないかなというふうに思います。
それから,もう1点だけ。テキスト文書化というのは,全文検索のためだけではなくて,視覚障害者のアクセシビリティのためにも是非とも必要なことであります。ただし,そのテキスト文書というのはファイルの裏に張りついているものでありますから,前面には出てこないものであります。
それから,あのスニペット表示というものも,図書館で見るユーザーはただで読めるわけでありますから,スニペットで読もうと,本文を読もうと,同じことでありますから,幾らでもスニペットで見られる状態にしておくべきだし,そのことについて,問題が生じるとは思えないわけであります。
ただ,これを有料配信した場合に,100円でも200円でも有料で買おうとしている人は,スニペットなどで済ませてしまうと損失が出るというようなおそれがないわけではないのですが,しかし,ここでこれから想定されるであろう利用料というのは,それほど法外に高いものではないというふうに私は予想しております。非常に安い料金で個別のユーザーにも配信できるようにして,どんどん便利にすることによって利用者が増えて,結果としては出版者や著作者にもお金が入ってくるというようなシステムを目指すべきであろうと思います。すると,その安い料金を考えれば,スニペットだけで済ませてしまおうというようなユーザーはあまりいないのではないかなというふうに思います。
というふうに,いろいろなことをもっとちゃんと検討していって,よりよき便利な利用法というのを考えていくべきで,何かこの報告書を見ますと,とりあえずこれだけうまく推進して図書館で利用できたら,それであと個別配信はもう少し時間をかけてというような,何か暫定的な方法という印象が残るのですけれども,私はそういう形で暫定的なことを考えるよりも,もう少し視野を広げて,よりユーザーにとって便利なシステムをできるだけ早く考えていくということを考えるべきではないかというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
視野を広く持って考えなくてはいけないという御意見だったと思います。国際的な視野であるとか,あるいはグーグルが行っているこの事業,それとの競争力の問題等々指摘されたように拝聴いたしました。どうもありがとうございました。
それでは,どなたか。
【常世田構成員】
瀬尾委員の先ほどの御意見に関連したことでありますけれども,前回,公立図書館から被災地への情報提供に関して公衆送信について御検討いただきたいということで,貴重なお時間を拝借して討議を頂きました。おかげさまで,ほとんどの権利者からおおむね許諾と言いますか,何とか特別な事例でお許しいただくというようなお返事を頂いております。おかげさまで図書館は安心して被災地への情報提供が可能になりました。
21日から24日にかけて,図書館協会でキャラバンを仕立てまして被災地に行ってまいりましたけれども,その際にも被災地から遠隔地の図書館に対して情報提供を求める,そういうことが可能だよというチラシを配布させていただきました。これで図書館としての社会的な役割を果たせるような体制になるのではないかというふうに思っております。本当にありがとうございました。
それで,瀬尾委員もおっしゃっておりますが,被災地でのライフラインの確保ができてきますと,次第に情報についてのニーズが高まっているということがテレビなどでも繰り返し報道されております。ただ,被災地での情報提供の担い手についての議論はほとんど聞かれません。一般的には地元の行政が行うべきというようなニュアンス,雰囲気があるのですけれども,皆様御存じのように,被災地の行政マンはもう本当に疲弊し切っておりまして,過労死が出るような状態でありますので,個別の被災者に対しての情報提供はほとんど不可能だろうというふうに思っています。そういう意味では,遠隔地からの情報提供は非常に重要だと。
それから,実は阪神・淡路のときにも,行政機関での復旧が一番おくれたのは図書館,社会教育施設でありました。被災地での情報提供ということでは,瀬尾委員がおっしゃったように,地元の図書館を至急に復旧させることによって必要な情報提供が確保されるはずなのですけれども,そういう形には理解されておりません。図書館協会としても,政府や関係機関に対して現地での図書館の復旧を急ぐようにという要請をしておりますので,これについても皆さん御理解を頂いて,是非応援をしていただきたいというふうに思っております。
それで,三田委員の御意見の公貸権についてでありますけれども,これは何回かお話をしておりますが,欧米の場合は補償という意味ばかりではない,むしろ文化政策として文化的な活動をしている方たち,作家の著作物をつくり出している方たちに対しての国としての報奨,ごほうびという意味での制度が強いという側面があると思っております。図書館会としても補償金ではちょっと困るのですけれども,文化政策としての報奨という意味であれば,しかも国がそれを負担するということであれば,必ずしも反対ではありません。そういう制度で文化的な活動をしている方たちに対しての支援ができるということについては,決して反対ではないということをお話ししておきたいというふうに思っております。
以上でございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは。
【田中構成員】
国会図書館ですけれども,今回のこの方向性で,まず迅速に進めるところを先に進めるという,そういう方向については,私どもとしましては,そのようにしていただけると大変有り難い。全体をきちんとした協議,あるいはそのルール・制度を検討するというのはもちろん大事だと思うのですけれども,まず限定したところでの仕組みというところで,切り離して進められないかというところは強くお願いしているところであります。
その上で,先ほど金原さんが言われたところですけれども,1つは商業出版のサービスに影響を与えないように全国での利用のバランスを図るかは重要な課題で,一番大事なところだとは思うのですけれども,基本的には商業利用されているもの,商業的に提供されているものについては,この今回の仕組みは発動しませんというところが切り分けの一番大きなポイントではないかと思います。
ですから,国会図書館でデジタル化したものも商業利用されたいということであれば,国会図書館はルールのもとにそれを提供しますということですので,売れるもの,まだ商業価値があるものについては国会図書館がデジタル化したものも使っていただいて,それを商業的に配信していただくということも選択肢として出てくると思うのです。
そういうふうになった場合には,それは当然,国会図書館の方から公共図書館に提供するものからは外れますということでもありますから,商業的にまだ価値があるものは商業利用を優先するということで,それを徹底していけば,そこのところはきちんとすみ分けができるのではないかというふうに考えます。
それから,補償金というお話もあったのですが,そうやって残ったものについて補償金を払うというのは,今の公共貸与権の話とはまた別の次元で,補償すると言っても,結局補償する先がないというところで,またひっかかってしまうと思うのです。図書館で配信したものについて補償する先がわかっているものは,逆に商業的にも利用が別に進んでいるものだと思います。それができないから,絶版となりますので,そこでまた補償金の話が出てしまいますと,むしろお金を回せない。全国でこの範囲で限定的に利用するというところでバランスをとりませんかという今の話で,その先の議論をする際には,もちろんお金の話の整理というのは重要だと思うのですが,現在,この公共図書館・大学図書館の中で入手できないものに限定した利用というところの話で補償金の話が出てきてしまうと,それを戻す先があったら,それは出版者さんから配信をしていただければいいというふうにむしろ考えたいというところであります。
それからもう1つ,本文検索の話ですけれども,今の国の財政の厳しいところで,そもそも本文検索ができるようなことを整備する必要があるのかというお話もありましたけれども,ここのところはやはり段階に分けまして,障害者の方が利用できるような読み上げにできるようなきちんと構成したデータを整備するのは,それは確かに莫大なお金がかかってしまうので,よく考えてどういうふうに提供していくか考えなければいけないところなのですが,検索のためにOCRをかけるというだけであれば,そもそもデジタル化をする作業の中に1項目その作業を加えるだけですので,そういう形で検索用に特化した,まずテキストデータ,それは間違っている部分もあるかもしれないですけれども,重要なキーワードのところがきちんと,九十何%でできていれば,そのものを利用するのではなくて,それは検索のインデックスに使うだけですから,費用的な問題はむしろセットで,早くルールを決めていただいて,それを作業手順の中に組み込んでしまえばいいことですので,費用の問題というところは一たんクリアできるのかなというふうに考えます。
また本文の表示とセットでなくても,私たちが昨年実験したところで本の見出しとか,目次とか,それから章の見出しとか,本を構成する重要なところに出てくるキーワードは,本文,地の文に出てくるものと区別して,階層的に重みをつけてヒットさせるとか,それからもう1つ,章の中でその1つの検索語が何回出ましたという頻度を,例えば本が4章から成っていれば,4章の中である言葉が幾つ含まれていたかということを視覚的に表示する仕組みというのも試行的につくりました。そういうことをやれば,本文そのものを出さなくても,大体この章のところにこれだけこの言葉がヒットしているから,この本は利用できる,できないと,そういう判断ができると思いますので,それは早く検索のサービスとして整備して提供したいと,そういうふうに考えます。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほかにどなたか。はい,お願いします。
【杉本構成員】
ちょっと今までの議論と違うところを言うかと思います。
後ろの方で,最後のページの上のところに「ビジネスモデルの開発も必要であり」ということが書いてあるのですけれども,私自身ここのところはとても大事かなというふうに思っております。
というのは,ここのお話でいくと,国会図書館から公立図書館等という,その間での話なのですけれども,利用者の立場に立ってみたときに,要は公立図書館に行ってそこで検索をすることもあれば,あるいは自宅で検索することもあれば,いろいろな立場からとか,位置から探すと思います。それで,当然その探しているときには「これは国会図書館だから公立図書館に行けば見られるよね」というようなことは,あまり気にしないと思うのです。
そういうことを考えると,要はその時と場合と場所に応じていろいろ使えるものが,要は家でも読めるもの,あるいは図書館に行けば読めるものとかいうふうに,わかりやすくなることというのが必要だと思いますし,それがある種,世の中全体での知の基盤というものを引き上げるということに非常に役に立つと思います。
では,そのときに,例えば「これは公的につくったもので,公的なところだけで使えます」,あるいは「その閉じたシステムでなければなりません」とか,そうしたことになると,これは使う立場からすると,要は使いにくくなっていきますので,ある種付加価値をするサービス,付加価値をするビジネスですね。そういうものが使えるような形でもって進めていっていただきたいというふうに思います。
それと,それに関連してなのですけれども,国立国会図書館,あるいは今まで中継ぎでいろいろなマークデータ,そういうものがつくられてきています。ある種それは大ざっぱに図書館という形で,あるいは目録という形でとらえますと,要はそういう目録に関する知見,知識,あるいは技術というものが今までいわゆる図書館のコアなところとして,コアなものとしてつくり上げられてきたと思うのです。その一方で,例えばグーグルを使うと,全文検索で一発でどこでも探せるよということで,要は多分世界全般的にそうした書誌データというか,そこの部分に関する重みづけが下がってきているように思います。
例えば,先ほど金原構成員がおっしゃっていた絶版のものと,要はそれと等価なもの,例えばそれがうまくマッチできるかどうかというと,それの背後にある書誌データ,あるいはそのメタデータがうまく整理できていないと,うまくはいかないはずです。
ということは,そういうところに対する投資というのを,今までと同じではないと思いますけれども,ネットにより応じた形で進めていっていただくということ,それをお願いしたいと思います。また,それは新しいビジネスのモデルを開いていく上でも役に立つのだろうというふうに思っています。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
利用者の利益というようなこともよく考えてシステムを……。
【杉本構成員】
そうですね。利用者の利益と,何か面白いことをできるようにしていっていただきたいと思います。
【渋谷座長】
そこが出版者の利益とか,いろいろな利益とぶつかり合うだろうと思いますけれどもね。どうもありがとうございました。
【前田構成員】
まず,国会図書館から公立図書館・大学図書館等までの送信についてなのですが,先ほど補償金の要否について議論がありましたけれども,公貸権の議論は,これはこれでありますので,引き続きそれは議論すべきと思いますが,今回のこの国会図書館から公立図書館・大学図書館等までの送信についてのみ,特別に補償金の対象にするというのは,ちょっとバランスがよくないのかなと。
また,この今回できることとしては要件がかなり限定されておりますので,それに照らしても補償金は,これについて補償金を特に設けるということは必要ではないように思いました。
それから,この要件のところで,所蔵冊数を超える複数者の同時閲覧を認めないこととすべきかどうかということで,先ほど瀬尾構成員から,そこまで限定をしなくてもいいのではないかという御指摘もありましたけれども,これは現時点では所蔵冊数の範囲を超える同時閲覧を認めないという要件で限定して,それで考えていった方が効率的なのかなという気がいたします。
それから,入手困難なものに限るということは,国会図書館の方でもそういうふうに限定して考えるということでお話しいただいていますので,そういう入手困難なものに限って対象にするということでよろしいのではないかと思います。そのときに,金原構成員から御指摘がありましたように,書籍として提供されていなくても,電子出版として提供されているというものは入手容易なものの方に入るということになると思います。
それから,権利制限のオプトアウトなのですが,先ほど金原構成員から著作権者が嫌だと言った場合には,それはほかの要件を満たしている場合であっても送信はとめるべきではないかというお話がありましたけれども,今回ここで書かれている送信を認める要件というのはかなり限定されておりますし,また,入手困難なものに限定されるということを前提といたしますと,例えば近々電子出版で発行する予定があるとか,つまり入手困難ではなくなるということを理由としてオプトアウトを求める権利者の方がいらっしゃった場合には,それはなるほどと,よく理解できるのですが,そういう理由なくただ嫌だということでオプトアウトを認めるのはどうかな,そこまでの必要性はないのではないかと思いました。
それから,今度は検索の表示のことなのですが,先ほど国会図書館としても必ずしも本文のスニペット表示は必要でないというお話もありましたけれども,常識的には本文のスニペット表示があった方が,その言葉がどういう文脈で使われるのかがユーザーにわかって,ユーザーにとっては利便性が高いのではないかと思います。ただ,金原構成員から御指摘がありましたように,それでその目的を達成してしまう,書籍に対する需要がそれでもう満たされてしまうということは確かに避けるべきですので,そういうものについては表示方法を工夫するということで進めてはどうかと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほかに何か。はい,三田構成員。
【三田構成員】
私はユーザー,利用者の立場として図書館は便利になってほしいし,それから自宅で国会図書館の資料を読めるというような環境を是非とも早くつくっていただきたいというふうに考えております。ですから,補償金を払えるなら払ってもらったら,どんどん話が先に進むと。別に私自身がお金が欲しいわけではありませんし,私はそんな昔の本を出しておりませんので全く利害関係はないわけなのですけれども,何かこの議論が,利害が反する人同士が綱引きのように引っ張っていったら,話が進みませんよということを申し上げたいと思います。
図書館をどんどん便利にするだけではなくて,図書館が便利になって一番困るのは本屋さんだろうと思います。ですから本屋さんの立場も考えて,例えばヨーロッパのある国では国が本屋さんに補助金をつけてオンデマンドプリンターを置けるようにするというような事業を進めているということを聞いたこともありますけれども,例えば図書館の中に地元の本屋さんに入っていただいて,一角にオンデマンドプリンターを設置して,図書館でバッと読んで「この本は面白い」と,是非プリントしたものが欲しいと思ったら,その本屋さんに行ってこれこれのものをプリントしてくれと言ってお金を払えば,そのプリントが手に入って,出版者や著作者にも,これはオンデマンドプリントでありますから本代の一部としてお金が入るというようなシステムをつくれば,出版者も著作者も,それから本屋さんも図書館が便利になってよかったなというふうに感じるだろうというふうに思います。
何かそういう前向きなプランをみんなで考えていくということにならないのかなというふうに期待をします。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい,糸賀構成員。
【糸賀構成員】
2度目の発言になりますけれども,よろしいわけですね。
【渋谷座長】
はい。
【糸賀構成員】
再三,そのスニペット表示の話が出てくるのですけれども,ここで言うテキストサーチは,デジタル化された本についての検索だけだから,そうでないものについては当然スニペットの表示もされないということになりますね。そうすると,もともと主たる対象は市場ではなかなか入手困難なものが対象になるわけですから,そのスニペット表示を繰り返しやることでもとの本が売れなくなる可能性というのは,私は,もともとそれが出版市場にあまり出回っていないはずなのだから,そういう影響はあまりないのではないかと思います。もちろん,デジタル化されたものの中にまだ市場に出回っているものがあって,それが流通しているということは否定できないわけですから,それはそれでその本の出版物の売れ行きへの影響を心配されることはわかりますけれども,スニペット表示そのものは多分サムネイルなどと同じで,それで代替できるものではないと。つまり,現物の代替はきかないという考え方だろうと思います。
問題は,ここにも書いてありますけれども,スニペット表示で著作権が働く分量というのは一体どういう分量なのかというのがよくわからないで,いろいろと議論が分かれていくのだろうと思います。私はこの辺は不勉強でよくわかりませんが,そういった例えば判例があるわけでもないし,どこまでで著作権が働き出すのか。これはもう出版物の大きさも違います。文字の活字の組み方も違います。一概に何行以内であれば著作権が働かないというのは言いにくいのだろうと思います。
その辺は,決してそれで本文を使うことの代替にならないという前提で,本当に数行の範囲,前後数行が表示されるということでいいのだろうと思います。万が一,それが著作権が働くようなことになると,私は前も発言しましたけれども,一方で同時アクセス制限をかけているわけですから,同じものの検索,これはまあ,全国で同じものの検索,同じ箇所を表示ということが複数の人がやる可能性は極めて小さいのですが,ある一時期に特定の出版物が話題になったり,この小説のここにこんな表現があるなどということが話題になると,全国で一斉にその本のその該当箇所を検索する可能性はもちろん出てまいります。ですが,著作権が働くほどになった場合には,おのずと同時アクセス制限がかかってしまいますので,それはやはり1人しか,あるいは国会図書館に2冊あれば,2人といいますか,2か所しか検索ができなくなるだろうというふうになっています。
そういう意味での安全弁というか,セーフティネットのようなものが張られているので,私はこれはこれでよろしいのではないかというふうに考えております。
それから,今,三田委員が言われたように,この仕組みの中のどこかにやはり出版者や書店に対するメリットが組み込まれていないと,私もいけないと思います。それはどういうところかというと,今のテキストサーチにしても,あるいは国会図書館のデジタルデータに対するアクセスにしても,どんな本がどれくらいアクセスされたかというのは,一方で国会図書館の方はわかるわけです。私はそういったものの中でアクセス数が多いものは復刻の可能性,つまりそういった市場が潜在的にはあるということを示しているのだろうと思います。従来はそれがなかなか把握できなかったわけです。読者が寄せる読書カードのようなものくらいしかわからなかった,あるいは書店だとか,出版者に時折問い合わせがあることでしか把握できなかったものが,国会図書館の蔵書に対するアクセスからどのくらい実は潜在的にニーズがあるかということがわかるわけですから,それをきちんと私は出版者にフィードバックして,ものによってはそれをデジタル復刻すると,それによって買ってもらう人の可能性を大きくするということはできると思います。そういうふうな仕掛けも組み込まれているというふうに考えてよろしいのではないかと思います。
そして最後に,結局こういうことをやっていって,私たちが究極的に目指しているのは,「すべての国民が,必要な知的なコンテンツに必要なときにアクセスできるようにする,そういう環境を整える」と思います。今回の一連のきょうのこのまとめをずっと見ていった読者がどう考えるかというと,国会図書館がデジタル化していないものの中で,既に絶版入手困難などというものはたくさんあるわけです。国会図書館がデジタル化したのは1968年までと聞いております。1970年代,80年代,90年代の本の中にもたくさんもう既に絶版,品切れ,入手困難,書店に注文すると,当分の間重版予定なしと言って返ってくるものがたくさんあります。こういったものは紙で出版されています。ボーンデジタルでもありません。こういったものの入手は一体どうするんだというふうに多分多くの読者は思うだろうと思います。
つまり,そういったものは,今全国どこの図書館にその本が所蔵されているかは比較的簡単にわかります。これは国会図書館でも,あるいは国立情報学研究所でも,更に最近ではカーリルという若者たちが始めたNPO組織がやっている蔵書検索がありまして,これは大変便利です。カーリルを使うと,たちどころに自分の指定した図書館にその本が,3か所まで指定できるのですが,検索できます。検索できたけれども,それを実際に実物を入手することがいまだに困難なまま。
私はこの枠組みを提案し,可能なところからスピード感を持って実現していくことが大事だと思いますが,その次に,繰り返しますが,紙でもともと出版されていて現在絶版,入手困難,再版・重版の予定なし,でもどこか遠くの図書館にあることだけはわかっている,こういったもののアクセスということを一方では考えていかなければいけない。考えられるのは,該当ページをスキャンして,それをPDFのファイルのようなもので読者のところに送ると。これはやはり一定の料金がかかる場合もあるでしょう。現行では著作権があれば,当然著作権者の許諾が必要になります。しかしながら,一つ一つの著作物について著作権者を同定する,確認するという作業は当然時間のかかる作業です。一方で,そういったもののアクセスということを考えていかなければ,本当の意味での,必要な知的なコンテンツにいつでもどこでも国民がアクセスできる,その一方で,権利者や書店・出版者への利益も配慮する,そういう仕組みは完成しないことになります。
だから,今回のこの報告,この方針で私は全然構わないと思いますが,次のステップとしてそういった問題も残されているということを考えていく必要があると思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい。
【片寄構成員】
今の糸賀先生のお話,全くそのとおりですが,かといって出版者が何もしていないかと言いますと,そうでもありません。重版予定なしという本も電子書籍の普及・促進という観点から,積極的にデジタル化していこうと動いています。ですので,一切手をつけていないということではないのでよろしくお願いいたします。先ほど金原構成員からも発言がありましたように,この「絶版その他」という文言ですが,これは電子書籍を意識していない時代の著作権法に基づいてつくられた文言で,この文言がまんま,一人歩きするのはちょっと不安かなというのが正直なところです。是非ともこの文言についてはただし書をつけるなり,新しい表現をされるようにしていただきたいと思っています。
電子書籍として,新たに著作物として生きているものもありますので,その辺を是非御理解いただきたいと思います。
【糸賀構成員】
片寄構成員,ありがとうございます。
その点に関しては,今回の報告書のやはり3ページだと思うのです。これは先ほどの金原構成員の指摘とも重なるのですけれども,3ページの上のところに,例のオプトアウトのことが書かれています。これは先ほどオプトアウトは必要ないのではないかという御意見もありましたけれども,この3ページの一番上の丸が2つあるうちの2番目の丸の方で,この文章の後段です。「また,権利が制限された場合においては」と,この文章はなっていますが,むしろ日本語的には「権利が制限された場合でも」でしょうね。「場合でも,送信対象となる出版物の著作権者等の求めがあった場合には当該出版物を送信サービスの対象から除外する方式を導入する」,これはオプトアウトというふうに言っていいと私は思います。
今,片寄委員が言われたようなもので,これは近々やはり重版するとか,電子出版という形で市場に流すというふうに考えた場合には,その時点でオプトアウトできるというふうに出版先もした方がいいと思います。それはもう既にここで,私はそういう意味でこの1文があるのだというふうに理解しておりました。
【渋谷座長】
前田構成員が先ほど御指摘になった御意見と同じですね。オプトアウトの要件。正当な理由があるときだけという御趣旨だったと。
【前田構成員】
はい,私もそう思います。
【渋谷座長】
そうですね。どうもありがとうございました。
はい。
【瀬尾構成員】
今,糸賀構成員がおっしゃったところで,ちょっと内容が混同しているような私は気がして,私自身,ちょっと整理させていただきたいと思います。
全文検索サービスは,各家庭からすべての,1968年までデジタル化されたものすべてが対象として検索になるわけですね。それの内容について頻度がいろいろ出てくる。つまり,国会図書館から地方公共図書館へ貸し出せる,貸し出せないかかわらず,すべてのものが検索の対象になる。そのものがどこで入手できるかは,もしかしたらネット書店で買うかもしれない,自分の家で買うかもしれない,本屋さんに行くのか,わからないですけれども,ともかくそこで資料として自分の欲しいものを検索する書籍本文検索データベースがそこで実現するわけですね。1968年までの。
これは大変大きいことなので,これを進めるべきだというのは私が申し上げたことで,それと,その入手困難なものが国会図書館から地方公共図書館に送れるというものは,これは入手困難性があるので,その1968年までデジタル化されたものの中の,多分ごく一部になると思うのです。入手できるものが結構入っていると思います。それに関しては,国会図書館さんの入手困難性の立証というフローを前に見たことがありますけれども,ただ自分でそこで検索をする,自分が欲しい本が検索結果で返される,これの恩恵をすべての国民がネット上でまず受ける,1968年までの本で,これが大事。
そのときにスニペット表示をすることについては,私は否定的に申し上げた。なぜと言うと,検索が高度化していくと,それの歯どめがかからなくなるからということなのです。それには入手困難も,困難でないも関係なく全部そこで出るから,それが利益になるわけです。なので,スニペットで出さずに頻度で,先ほど田中構成員がおっしゃったような,現在考えられる最も有効な方法ですべからく1968年までは検索対象にし,結果を出す。それの本の入手の話になってきたときに,先ほどの入手困難性とか,国会図書館から地方公共図書館に送れる・送れないの話になるので,検索・サーチに関しては入手困難か,困難でないかをかかわらずにそのサービスが実現するというふうに考えているので,それと入手困難性の話があるから利害を害さないという話は全く別というふうに私は理解をしています。
だから,金原構成員がおっしゃったような,スニペット表示を信頼する・しないはもちろんありますけれども,ただ,入手困難性があるから,そこで返しても安全という話ではないという,ちょっと説明が下手かもしれませんが,2つの違った問題が混同しているような気がするので,ちょっと確認させていただいて,もし皆さんが,おまえの言っていることは違うということであれば,是非御指摘いただきたいというふうに思います。
私はそういう意味で理解をしているし,賛成をしているということです。
【金原構成員】
はい。すみません。
【渋谷座長】
はい。
【金原構成員】
私も先ほどの糸賀構成員の話は今瀬尾構成員がお話になったとおりであって,本文検索は全部表示されないと検索の対象にならないので,それは全蔵書が対象になるというふうに理解をしております。
その上で,日本は1億ちょっとの人口ですが,世界にまれに見る出版大国でありまして,日本は数千の出版者と数万の書店によってこれまでも支えられてきたわけです。識字率もほぼ100%でありまして,これは出版が果たしてきた役割も非常に高かったであろうというふうに自画自賛をしております。このバランスは,電子書籍,電子出版物になっても,やはり是非守っていただきたいというふうに思います。
この「基本的な考え方」の最初のところに,「知の拡大再生産の実現を前提として,広く国民が出版物にアクセスできる環境の整備を図ることが重要な課題」であると,まさにこのとおりでありまして,これをどのように実現するかというのは,やはり我々出版,著作者がいなければ出版というのはあり得ないのですが,やはり出版事業としてこれまでやってきたことを,この電子の世界でも同じように継続していくということをまず第一に考えるべきだろうというふうに私は思っています。
きょうここで話が出ている国会図書館からの配信を含めて国会図書館のデータを使うというのはその補助的なものであって,そちらが第一義に考えられるということではなかるべきであろうと思います。その意味では,私ども出版界ができることはまずどんどん手がけていくということをやるべきだろうと思います。
その意味においては,この3ページの下の方にあります「デジタル化資料の民間事業者等への提供について」ということについては,ちょっと先ほど話しましたように,まず我々出版を生業とするものがこのデジタル化を図るべきなのですが,それが追いつかないところ,あるいはそれが不十分であるところについては,こういうデジタルデータの提供によって電子化を図っていくということも肯定的に考えていくべきだろうと思います。それは我々出版界がどこまでそれに関与できるのかわかりませんけれども,民間の事業者が許諾ベースで一定の使用料,利用料を課金した上で利用者へ提供するという仕組みを,我々出版界もその中に入って,あるいは著作者の方もそこに入ってそういう仕組みをつくっていって,民間の出版者が実現できていないところについては国会図書館のデータを使って配信して,国民に広く著作物を伝達するということはやるべきだろうというふうに思います。
ただ,その場合も,やはり民間の出版あるいは既存のデジタル配信とぶつかるところもあるだろうと思いますので,やはりそこに必要なのは,私は出版者に対する固有の隣接権的な権利が必要であろうというふうに思います。それがないと,やはりデジタル化されるとかなり幅広く,不正利用というのはなかるべきだろうとは思いますけれども,やはり意図しない利用によってデータが拡散してしまうということについては,現実の問題としては出版者が対応しなければならない場面が非常に多いと思います。そのようなことに対応するためにも,是非出版者の権利問題はこの問題とセットで考えていただきたいというふうに思います。
それからもう1点は,この最後の公立図書館等の役割の問題ですが,我々出版もかなり電子配信というのを事業として既に実現しております。そういった既存の配信事業というものも,図書館がその利用者としてそこの図書館の入館利用者,そういう方にデータとして提供して閲覧していただく,あるいは大学図書館が我々が用意した電子書籍・雑誌類を利用者として契約していただいてそれぞれの地域,あるいは教育機関,あるいは研究機関に所属する人たちに対してそれを提供するということをどんどん進めていただくということが,まさにこのデジタルネットワーク社会において図書館と公共サービスの在り方を更に促進するということにつながるのであろうと思います。
そこはやはり当然その契約が必要でしょうし,それから予算も必要なことであろうと思いますが,まず,その図書館,これは公立図書館も大学図書館も,まず我々民間の出版者が提供しているものについてどんどん利用していただくという,これはちょっと商売の話が絡んでしまうので非常に言いにくいのですけれども,やはりこのデジタルネットワーク社会において電子書籍・電子出版物の流通を促進するということから言うと,まず民間の今まで出版業が手がけてきたようなものについて皆さんお買い上げいただいたように,我々が電子配信というものをどんどん促進すると同時に,それをどんどん利用していただくと,そこが全体の促進につながるのだろうと思います。
その上で,それを補完するのが図書館の役割であって,それはデジタル化された資料が国会図書館にあるなら,我々の努力不足のところはそれで補うと。ただし,それは一定の許諾も必要な場面もあるでしょうし,どうしても駄目だという場合はオプトアウトすることもあるだろうと思いますが,その辺のバランスを考えながら,こういったことを考えていくべきではないかというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい。
【杉本構成員】
先ほどから絶版という話がありまして,それに関連して,加えてそれのまた電子化という話があって,思うことなのですけれども……,というか,それの前に,とにかく今ここでまとめられていることというのは大きな1歩だというふうに私自身思っております。それの上での話なのですけれども,要はちょっと長い将来のことを考えたときに,要は電子書籍,あるいはもともと電子出版されるものというのが当然多くなってきます。これは当然,将来の話になりますので,ここのまとめの話とちょっと違う話かと思いますが,それでもやはり出版されたものを保存するという役割を図書館というのは担ってきていますし,これからも担っていくことになると思います。
そのときに,では例えば電子書籍になったときに,要は絶版という概念が消えてしまう,なくなってしまうと。加えてそのもとの版を持っていることもそれほど,要はコストがかからなくなる可能性はあります。ただ,そうは言っても,もちろんその技術が変わってしまうので,もとの形で読めることはできない,そういう状況というのは必ず出てきますし,それは多分,例えば20年くらいたったときにあらわれていると思います。そのときに,ではどこが責任を持って,電子出版されたものというのを世の中というか,要は我々の社会に対して提供し続けていくのかということが,やはり継続的に考えていかないといけないことであるというふうに思います。
ですから,要はその電子出版になったときに「出版者だけに任せてくださいね」と言われると,それはそれで困るなというふうに感じています。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほかにどなたかありませんか。
そうしますと,本日いろいろ御意見をちょうだいいたしましたが,どうなりましょうか。もう,報告書としてまとめなくてはいけない段階でありますので,本日頂いた御意見を織り込んだ上で確定版を今後作成していくということになりましょうか。そういう段取りでよろしゅうございますか。
ほかに何かご意見はありませんか。まだ時間が……。
【瀬尾構成員】
すみません。
【渋谷座長】
はい,それでは。
【瀬尾構成員】
度々すみません。
今,まとめということで座長からお話がありましたけれども,今回のまとめの中でたくさんのいろいろなお話が出たし,可能性もすごく出たと思うのです。ただ,今回でもしまとめるとしたら,ここら辺のところはみんなで合意がとれたよという部分,例えば私の理解であれば,国会図書館から地方公共図書館への送信は多分皆さん認められているのではないかと私は思っておりますけれども,そういうふうな意見があったら,それはそういうくくりで,みんなの意見が合致したところだけでも,きちんと最初にまとめて出していただきたい。そうしないと,進まないから。
たくさん将来的な問題とか,継続した討議が要るような問題と一緒に埋もれてしまうのではなくて,この部分とこの部分とこの部分は今回のここまでの議論では皆さんの意見が一致しましたよというふうな部分を幾つか,やはりきちんとまとめていただきたいというのが希望です。そうしないと,具体的なアクションとか,そういうふうなものへ移り難くなってしまうような気がします。
具体的に言えば,今言った全文検索をする,提供するということと,もう1つは今の地方公共図書館まで国会図書館が送信するということ,この2点については最低限皆さんの意見が一致しているのではないかと,そこら辺をできれば……。この私の理解が違っていて,一致していないとおっしゃれば,またここで意見が出てくるでしょうけれども,それを私は一致していると感じているので明記していただきたいというのがまとめについての私のお願いです。
もし違っているという認識があれば,当然ここで御意見を頂いて,まだ時間がありますから,何かすべきではないかなと思いますが,是非,まとまるところは書いていただきたい。
【渋谷座長】
ありがとうございます。
今,瀬尾委員が指摘された2点,これは前回からずっと続いて確認をとってきたところですが,この検討会議の合意は得ているのではないかと,そういう認識でおります。はい,おっしゃった2点ですね。
はい。
【糸賀構成員】
きょうのこの資料1の中でも,今瀬尾委員が言われるようなことについては,恐らく意見の一致が見られたというふうに何か所か書かれておりますので,それで反映されているのだろうと思います。
基本的には私は,きょうのこの資料1の議論の整理で,この方向で私は賛成です。
先ほどちょっと申し上げたスニペット表示のことではいろいろと意見も分かれるところがあるのですけれども,これは本当に私は伝聞で申し訳ないのですが,グーグルブックサーチあたりを聞くと,とにかく表示されている箇所,あれは出版物によってばらばらなのです。本当に数行しかないものもあれば,1ページ近く表示されているものもあります。あれで表示されている部分が多いほど,実はその本に対する注文は多いのだそうです。つまり,やはり前後をちゃんと読めて,それでもって「これは必要だ」,「これは役に立つ」というふうに判断できたものについては注文が増えるというものだろうと私も思っております。
そういう意味で,そういう国会図書館の本の検索,あるいは送信に関しても,きちんと必要なものは買ってもらえる,流通させることによって出版市場を多少なりとも潤すのであれば,そういう方向の仕掛けは随所に本当は散りばめておくべきだろうと思います。ただ,それはこの報告書の中に事細かには書けないので,幾つかの留意点として示されたのだろうというふうに理解しております。
最後に,私はちょうどこのきょうの資料1の最後の4ページの一番後のところに,文化庁がそういった協議の場を設けたり,「関係者によるモデル事業の実施なども検討することが必要」というふうに来年度以降の予算取りを目指したかどうか,よくわかりませんけれども,ちゃんと書き込んであるわけです。
私はその前に,例の,昨年の三省懇がまとまったときに,隣に総務省さんの方もいらっしゃいますけれども,総務省さんや経済産業省さんがそれぞれ実証実験だとか,モデル事業のようなものをかなりたくさん走らせたわけですね。この中にはその幾つかにかかわっていらっしゃる方もいるのだろうと思いますが,私はそのある程度結果が出たところで,どういうふうに利用されたのか,どんなコンテンツが実際に今のところデジタル化されているのか,その辺の報告は聞いた上で,次の手を打っていくべきだろうというふうに思います。
だから,もちろん文化庁さんが中心にモデル事業の実施は検討していただいていいと思うのですけれども,既に行われたものの報告というのも,この会議そのものが三省懇が出発点で行われているのであれば,是非その経過なり,結果なりというものもどこかで御報告いただきたいと思います。
これはこの報告書云々(うんぬん)ではなくて,一構成員としての要望です。
【松田補佐官】
総務省の松田でございます。
糸賀構成員から御指摘がございました三省懇の結果を受けて様々な事業が進んでおります。本この検討会議もその一環かと思われますが,総務省の方でも10くらいの事業,それから検討会議を設けまして,それぞれ議論を進めてまいりました。
この3月末がその期限ということだったのですが,震災の影響等もございまして,報告の取りまとめ等に若干時間を要しているところでございますが,例えば電子書籍の交換フォーマットの問題,あるいはEPUBという海外のフォーラム標準,これに縦書き・ルビ等の対応をさせる問題,それぞれ展開をしております。また,これは常世田構成員の方にお願いしているところでございますけれども,公共図書館における電子書籍の取扱いガイドライン,こういったものの策定も行っているところでございます。
こういった様々な成果につきましては,総務省といたしましては5月中・下旬に全体として発表させていただくことを考えておりますし,また,何らかのタイミングで三省懇談会への報告等も検討したいというふうに考えております。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【金原構成員】
よろしいですか。時間があるので。
【渋谷座長】
どうぞ。
【金原構成員】
あともう幾つか申し上げたいことがあるのですが,1つは先ほど瀬尾構成員もお話になった,何が合意点なのかということであります。合意が見られたという点は何を国会図書館が公立・公共図書館あるいは大学図書館に向けて何を送信するか,どういう内容のもの,あるいはどういう条件のものを送信するかということによりけりだと思います。
例えば同時閲覧は駄目とか,あるいはプリントアウトは認めないとかいう条件については,そのコンテンツが一体どういうものであるかということによりけりであって,これ以上の議論というのはもう少し各論に踏み込まないと,どこまでがよくてどこからが駄目なのかということの意見は非常に出しにくいわけでありまして,そこまでこの検討会議でやるかどうかというのは別の問題としてあると思うのですが,ただ,おおむねこの一定の条件を課した上で入手困難なものであるとかという条件があれば,この程度まではいいだろうという,非常にざっくりとしたところでは,ほぼ私も皆さんの意見に賛成いたしますし,特に問題はこれでないのかなというふうに思っております。
それから,もう1点別のことなのですが,私も利用者としては国会図書館が何らかの形で全文検索を国民に提供するというのは,これはもう間違いなく便利になりますし,全文検索というのは必ずしも100%ではありませんが,ないよりはあった方が確実に情報を検索することに対してはプラスになりますから,もしそのようなものを考えるならば,先ほどのスニペット表示の問題はありますが,それをもう少し整理した上で,国会図書館だけではなくて,もう少しこれを民間に提供するということは考えられないのでしょうか。
国会図書館がそれをデータとして持った上で,一定の条件のもとで民間に提供して,民間がそれを書籍検索に役立てて,例えば我々であれば,それを出版物の販売に結びつける,例えば書店であれば,それを使って読者の人に検索をしてもらって出版物の売り上げにつながるような,そういう仕組みを考えるとかは必要だと思います。全文がデータとして入っていると,非常にそのコンテンツの保護というのは難しい,神経を使うところではありますけれども,それを何らかの仕組みによってそれが外に流出しないような方策を考えた上で,ちょうど気象衛星を国の予算で上げたものを民間の予報会社が利用しているのと同じように,国の予算でつくったものを我々民間がそれを出版物の流通上役立てるというようなことも,考え方としてはあり得るのではないかというふうに思います。
それも含めて,この検討会議ではないのかもしれません。別のところ,次の次元の話かもしれませんけれども,考えてもいいのではないかなというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
御発言にもありましたけれども,ざっくりしたところでまとめるとすると,個々の問題に関しては表現が物足りなかったり,議論がまだ深められていなかったりすることがあるかもしれないけれども,おおよその方向性としては大体こんなところだというところで,これは報告書としてはまとめざるを得ないと思います。
ということで,本日頂いたこの資料1は,ざっくりしたところで方向性が出ているように私は見ているのですが,これを骨格にして完成版をつくり上げていくというようなことでよろしゅうございましょうか。はい。
【常世田構成員】
完成版のところには恐らく盛り込まれるとは思うのですけれども,三田構成員もおっしゃっておられた障害者向けの部分でありますが,直接国会図書館から個人の,障害を持った方の個人へ届くというそのチャンネルと,公共図書館を通じるというチャンネル,それぞれ意味もコストも違うと思いますが,技術的には様々クリアできる技術も発達してきていると思いますので,早急にやはり権利者と図書館,あるいは直接個人に届く場合についても検討を進めるべきだろうというふうに思っています。
著作権の改正があって,権利制限で公共図書館での媒体変換は自由にできるようになりましたが,それでも障害を持った方たちに届いている情報量というのは健常者に比べれば非常に少ないという状況でありますので,やはり最終的には電子化されたものが障害者の手元に届けば,健常者とほとんど変わらない情報入手が可能になりますので,これは重ねて報告書の本文には強調していただきたいというふうに考えております。
それから,あくまでこの会議は電子書籍について検討する場ではあるのですけれども,この4ページの3の公立図書館等の役割についての3つ目の丸のところですが,私はこれは非常に重要だと思っております。ここは何を書いているかというと,印刷物もきちんと図書館は購入をして整備しなければならないということが書かれていると思います。当面,電子書籍が増えていったとしても,印刷された書籍・雑誌は相当数供給されるということは確かであります。
三田構成員もずっと心配されているように,データが1つ国会図書館にアップされてしまえば,図書館はその該当するコンテンツを買わなくなるのではないかと心配されていますが,我々少なくとも図書館関係者は市町村図書館や県立図書館に当然あるべき,存在すべき資料についてはきちんと予算化をして,紙ベースで購入すべきだということをずっと訴えてきております。残念ながら,行政,役所の財政担当者はなるべく安く上げようとしてそういうことを考える方もおられるようでありますが,少なくとも図書館関係者はあるべきところにあるべき資料はきちんと所蔵すべきである,そのために予算を増やさなければいけないということで運動してきております。皆さんも是非それを御理解いただいて,図書館の予算を増やすような世論構成に是非お力をおかりしたいというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【常世田構成員】
それから,すみません。この4ページのそこのところ,「純文学や芸術に係る入門書のように」となっていますが,入門書は要らないというふうに,レベルの高い本も収集しておりますので,よろしくお願いしたいと思います。
【渋谷座長】
はい,それでは,三田委員。
【三田構成員】
きょうは非常に中身の濃い議論が交わされたと思います。それで,今後継続的になるべく早く解決しなければならないテーマがたくさん見つかったと思います。ですから,このことも是非報告書には入れていただきたいというふうに思うのですけれども,その上で早急に実現しなければならないこととして,今,国会図書館にしかない蔵書を地方の利用者が読みたいというときは,今までですと,その本を送って見てもらうということをやっていたのですけれども,デジタル化するときに,デジカメで写真を撮るときにガラスで圧着するので本が壊れてしまって,もう送れないということがあります。ですから,地方の利用者にとって大変不便な状況が出現してしまっておりますので,早急に送信ができるようにしなければならないということは私も痛感をいたしております。
ですから,送信できる図書館を公共図書館と大学図書館に限定すると,それから送信できる本も絶版の定義を厳しくして入手困難であるというような定義をもっと厳しくすることによって,どうしても入手困難なものについては送信できるようにするということについては,ここにいらっしゃる皆様全員が合意できるのではないかなと。
ただ,厳し過ぎてしまいますと,糸賀先生が言われたように,中学や高校でも利用できた方がいいだろうと。私もそれは当然だと思います。しかし,より便利にすると,権利者の中にはこれは困るということも出てきますので,これは引き続き議論をしていくということにして,ある程度限定を加えた範囲内で送信ができるように法律を変えるということについては,ここで合意が成立したのではないかというふうに考えるのですけれども,いかがでしょうか。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【里中構成員】
すみません。
【渋谷座長】
はい。
【里中構成員】
このまとめ,大体本当にうまくまとまったなと思っております。普通,何とかまとめなければというときに,可もなく不可もなくということがあるかもしれませんが,非常に前向きなことも入っておりまして,いずれ通らねばいけない道なのです。デジタル化という時代を迎えて,このデジタルをどう利用するかで今後の情報の処理の在り方とか,すべて変わってくるという時代に,やはり本の中の情報をどう扱うかというのは,絶対にいつまでも放っておいていい問題ではないと,いつかは通らなければいけない峠,それを1つ越えるためのまとめに向けては,みんなでちょっと登りやすい峠になったかなという気はしております。
ちょっと余計なことかもしれませんが,ただ,今はこれは図書館と公共サービスとか,電子書籍について話しておりますが,文化というのは必ずしもその分野だけで成り立っているわけではありませんので,この4ページの3の丸の3つ目,先ほど常世田委員からありましたように,図書館がではこれで本を買わなくていいかというと,決してそうではないと。書籍というのは,実は中身の情報だけを提供するものではなくて,文化の中で装丁とか,活字の大きさとか,活字のスタイルとか,装丁の材質とかデザインとか,そういうものをすべて含めて素晴らしい作品として書籍というのが成り立っているわけです。
その,当たり前のようにみんながそれを手にとって本を読んでいるわけなのですけれども,そこでのデザイン力とか,本をちゃんときちんと形につくる技術力とか,あるいは最近は少ないのですけれどもきちんと箱に入れるとか,様々な技術とか,文化とか,そういうものが育ってきた過去はあると思います。
ですから,図書館では今後,図書館に納められる本としては本の中身だけという話も聞いたこともありますが,是非箱も帯も何もかもをその文化の情報,その時代の歴史としてとっておいていただきたいと思います。ですから,今中身の情報について,それの届け方について話をしているのですが,本という原点に返りますと,本そのものが1つの文化財であるということも忘れてはいけないなと新たに思います。
今回はこういうことでみんなでいいだろうとなるのですが,実際,本というのがデジタルで読まれる本も1回読まれるごとに本が1冊売れるんだというような計算で成り立てば,だれも抵抗しないということはないと思いますが,版元も著作者もあれこれ心配しなくて済むわけですね。悩みの根源というのは経済にかなりかかわっているわけで,やはりみんな自分の仕事に誇りを持ちながらちゃんと続けていきたいと,しかもこれまで築いてきたという自負もありますので,デジタルだから中身だけが簡単に読まれればそれでいいということではないのではないかということを一生懸命ここで話してきたのだと思います。ただし,デジタル化の恩恵というのは,結局将来的に見ればだれもが不公平なく文化的環境に身を浸すということですから,それこそ障害者の方とか,いろいろな条件によりある土地を動けない方にとっても,等しくやはり知的環境を与えられるべきだと思います。それが国家としての責任でもあると思います。ですから,各家庭への配信サービス,それを障害のある方や条件によって無償にするか,有償にするか,何らかの方法は考えなければいけない。先の問題ではありますけれども,それはあると思います。
それと,これも先の問題なのですけれども,今ここでスタート地点について話しておりますが,我が国が築いてきた文化的環境,知的財産,それに誇りを持って皆さんに見ていただくということは,つまり世界に対しても言えることなのです。税金で賄っている,この税金を納めているのはだれかとなりますと,日本国民です。日本国民が納めた税金で運営しているものを,海外の方からも無償でサービスしていいのかという議論は必ず出てくると思います。やはりそれは各国のいろいろな条件を勉強して,ある国では自国民には無料でサービスするけれども,海外からのアクセスに関しては何らかの形で制限をするとか,有料でないとつなげない業者を通してやるとか,いろいろなことをやっているみたいですので,それを参考にしながら納税者からその不公平感が出ないような仕組みが将来的にできればいいなと思っております。
本日の話された問題とはちょっと外れてしまって,非常に申し訳ありません。先のことまで話しましたが,感想を含めて申し述べさせていただきました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい,お願いします。
【大渕構成員】
前回でしたか申し上げましたとおり,この問題点は大変重要な問題で,図書館の役割論なり,あるいは書籍の役割,あるいは文化政策等々に係る非常に難しい重要な問題で,いろいろな面から議論を尽くさなければいけないわけでありますけれども,やはり前回申し上げましたとおり,非常にニーズとして強くて緊急なものがありますので,現実的でスピード感のあるアプローチをとらない限りはこの会議としての責任を果たしたことにならないのではないかというふうに思いますので,細かい話はやり出したら幾らでも,議論をこの会議を通じていろいろ各論的な話をある程度せざるを得ない細かい点は多々出てくるかと思いますが,この段階で,先ほどどなたか「ざくっと」と言われましたけれども,骨子というか,エッセンスのようなものだけはある程度固めておかない限りは議論が先に進みませんので,この段階で資料1でまとめられて本日若干付加とか確認とかありましたけれども,そういうことで,この段階でおおむね若干明確化とか,そういうのでこの紙をもう少し注をつけたりとか,あるのかもしれませんけれども,大体エッセンスというか,骨格で,これをベースに今後議論していきましょうというところは,ある程度コンセンサス的なところは得られたのではないかと思いますので,これで早くこれをベースとしてある程度固めて,また先に進むという,そういうふうな着実に一歩一歩進めていくということが一番重要ではないかというふうに思っております。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,そろそろ時刻がまいっております。これまでのいろいろな御議論を承ってきまして,この議論の整理案というものができているわけですが,つまり資料の1ですけれども,これについては基本的に御了承いただいたというふうに理解した上で,本日ちょうだいした様々な御意見を踏まえまして,また,この検討会に課せられている2つ目の検討事項というのがあるわけですけれども,これは出版物の権利処理の円滑化に関する事項というものですが,そういった事項とあわせて,本検討会議の報告書としていずれまとめていくことにさせていただきたいと思います。
私もきょうの皆様方の御意見を伺って,このメモをしていたのですが,メモがびっしりになっています。そのメモと照らし合わせると,この資料1に書かれている内容,それからその表現,もう少しふくらみを持たせた方がいいとか,そういうことがところどころ見られるわけでありますから,そういったことは事務局の方でよくお考えになって,すばらしい報告書を今後まとめていっていただきたいと思います。
こんなふうなまとめになりますけれども,よろしゅうございましょうか。
どうもありがとうございます。それでは,ほかに御意見もないようですので,本日はこのくらいにいたしたいと思います。
事務局から連絡事項があれば,お願いします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
長時間にわたります議論,ありがとうございました。
先ほど座長からもお話がありましたが,デジタルネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項につきましては,本日のこの資料の内容で了承いただいたという整理をさせていただくこととなりましたので,次回の検討会議におきましては,本検討会議の2つ目の検討事項であります「出版物の権利処理の円滑化に関する事項」につきまして議論を行えればというふうに考えております。
また,会議日程につきましては,現在調整中でございますので,固まり次第御連絡させていただきたいと思っております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,これで第7回の会議を終わらせていただきます。本日は大変ありがとうございました。

── 了 ──

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