電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第9回)議事録

1.日時
平成23年6月17日(金)  14:00〜16:00
2.場所
グランドアーク半蔵門 富士西の間
3.議事
  1. (1)出版物の権利処理の円滑化に関する事項について
  2. (2)出版者の権利付与に関する事項について
  3. (3)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,片寄聰,金原優,里中満智子,渋谷達紀,瀬尾太一,田中久徳,常世田良,中村伊知哉,別所直哉,三田誠広

平成23年6月17日

【渋谷座長】
それでは,ただいまから第9回の会議を開催したいと思います。本日は雨の中お集まりいただきまして,どうもありがとうございました。まだ到着なさっておられない方もおられますけれども,時刻が参りましたので,始めさせていただきます。
議事に入る前に,例によりまして,お断りですが,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところです。特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
ありがとうございます。
それから,カメラ撮りにつきましては,会議の冒頭までとさせていただきますということでございます。
それでは,早速,事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第の下半分に書いてありますけれども,本日配布しておりますのは,資料1といたしまして,検討事項[2]「出版物の権利処理の円滑化に関する事項」に関する議論の整理(案)でございます。資料2といたしまして,主な既存の著作物等に係る「権利の集中管理」の取組について(概要)。資料3といたしまして,検討事項[3]「出版者への権利付与に関する事項」についてでございます。
そして,参考資料といたしまして,本検討会議の構成員の名簿を配布させていただいております。そして,ここの構成員の名簿をごらんいただければと思いますが,これまで御参加いただいておりました弁護士の牧野先生ですけれども,御都合により,構成員の御辞退のお話がありましたので,これを了承させていただきまして,本日の構成員の名簿からは牧野先生の名前は削除させていただいております。
配付資料につきましては,以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,本日の議事に入りたいと思います。議事次第にありますように,一応2つ上がっておるわけでございますが,まずは前回の本検討会議におきまして御議論を頂きました検討事項[2]「出版物の権利処理の円滑化に関する事項」につきまして,本日は,できれば,その議論の整理をしたいと思っておるところでございます。前回御参加いただいた方々,多少,人数が少なめでございましたので,本日のこの資料をごらんになりまして,つまり資料1でございますけれども,それをごらんになりまして,何かつけ加えるべき点があるとか,そういう御意見がございましたら,お述べいただきたいと思います。
それでは,まず事務局から,資料1と2につきまして説明をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
まず,先に資料2の方を少し説明させていただきたいと思います。これは,前回の資料といたしましては,別紙という形でつけさせていただいた既存の権利の集中管理を行っている団体の概要を整理いたしました資料です。本日お配りしておりますのは,前回配布いたしました資料に加えまして,権利委託者数ですとか,管理著作物の数,使用料徴収額など,団体によって,そのデータの整理の仕方が微妙に違っておりますので,把握し切れない数字もございますけれども,許諾件数なども入れた形で,資料2を整理させていただいております。御参考にごらんいただければと思います。
それでは,資料1で,前回の議論の整理案として提出させていただいておりますので,この内容について説明させていただきたいと思います。
まず,基本的な考え方といたしまして,1,2,3点を整理しております。
出版物の円滑かつ安定的な生産と流通,いわば知の拡大再生産の実現のためには,出版物の権利処理の円滑化が重要な課題となっておるということ。
更に,例えば絶版図書,「孤児作品」などについて,著作権者等に係る情報の入手が極めて困難な場合があり,これらについては何らかの対応が必要であるというポイントがございます。
そういった視点,認識に立ちまして,出版物の利用に当たって,著作権処理の円滑化を図るための制度的・組織的アプローチについて,その必要性や内容についての検討を進めていただいたことも整理させていただいております。
2といたしまして,「著作権処理の円滑化を図るための制度的,組織的アプローチ」の必要性についてです。ここにおきましては,現在,又は今後において市場で流通する出版物と,いわゆる「孤児作品」などの権利処理が困難となることが想定される出版物とに区別をした上で,その必要性について整理をいたしております。
まず,現在,又は今後において市場で流通する出版物についてです。
このような出版物についての,[1]とありますけれども,権利の集中管理の必要性です。この権利といいますのは,著作権の集中管理ということを意味しておりますけれども,現在市場に流通している出版物につきましては,当然,権利処理,契約などをされて流通しているというところでございます。そのような状況にあるものについて,新たに「権利」を集中的に管理する取組を実施する必要性は低いという御意見が出されたところでございます。
また,これまでの作者や出版者との個々のつながり,出版活動における多様性が失われる可能性がある。
そして,このような事情を踏まえますと,その実施に当たっては,必要性の度合いを考慮した上で慎重に検討するべきではないかという形で,御意見が出されていたところでございます。
2ページ目をごらんください。次に,[2]といたしまして,「権利処理を円滑に行うための何らかの仕組み」の必要性についてです。
こちらは,現時点において,出版者が出版契約に基づき権利者の「情報」を把握・管理しているという状況が一定程度あるわけでございますけれども,電子書籍の流通のさらなる円滑化のためには,著作者,出版者,配信事業者など多様な主体が独自のビジネス展開を行うことが可能となるような環境整備が必要とされるところであり,そのためには何らかの「権利処理システム」の整備が必要であると考えられる。
この点については,例えば,電子書籍配信に係る権利処理の円滑化を図るための集中的な窓口機能を果たす仕組みを構築すると。そういうことにより,中小の出版者などが電子書籍ビジネスの参入をするための環境を整備することが考えられるということです。
一方で,あらかじめ著作者が何らかの仕方により著作物の利用に係る条件を明示的に示すことで,著作者の許諾を事前に得なくとも,その条件に従った著作物の利用が可能となるような仕組みを構築することも権利処理の円滑化に資するものであると考えられるということです。
そして,そのような具体的な仕組みの在り方については,出版者や配信事業者などを含んだ様々な事業者の協議によって,その実態に応じた在り方が検討されることが重要であるという形で整理をさせていただいております。
そして,(2)といたしまして,いわゆる「孤児作品」などの権利処理が困難となることが想定される出版物です。
いわゆる「孤児作品」などにつきましては権利者が不明であり,その権利処理が困難であるという形のものであるわけですし,それ以外にも,著作権者などの連絡先が不明であるといった場合,そういったものについては,そもそも権利の集中管理はその性質上極めて困難なものであると整理をしております。
そして,そのような場合,通常であれば「裁定制度」の活用によって個別的に利用を実施するというところがあるわけですけれども,このような孤児作品などにつきましても,何らかの「権利処理システム」が実現されることで権利処理の円滑化が進むことになれば,この重要性は高いものであると考えられるという御意見があったところでございます。
そして,3といたしまして,その「権利処理システム」に係る具体的な取組についてです。今申し上げましたような何らかの「権利処理システム」の構築の必要性については一定程度認めるべきであるという御意見が示されているところの中で,具体的な取組として幾つかの御提案があったところでございます。
3ページ目をごらんいただきたいと思います。
最初に,出版物に係る情報を管理,整備する取組でございます。権利者の所在情報などが入手できれば権利処理などの対応は通常可能となるところから,「情報」の集中管理が進むことは有益であるということになるわけです。
現状といたしましては,権利者団体ですとか個々の出版者において,様々な契約が行われ,出版されておるというところがありますので,既に一定の情報につきましての窓口という機能は整備されている状況にはある。
そして,管理される「情報」の種類としましては,いわゆる書誌情報のようなものから権利者の所在情報まで様々なものが想定されることになりますので,権利処理の円滑化を図るために,どのような「情報」の管理が必要であるのかは,改めて検討する必要があるということ。
そして,具体的な取組の実施に当たっては,既に出版物に係ります情報につきまして,例えば国会図書館のデータベースのようなもので,既に存在するものがございますので,そのようなものの活用も念頭に置くことが必要であるということ。
それ以外にも,昨年度,総務省で行われました事業,「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」などの取組との関係にも留意しながら,この管理,整備に必要不可欠となる主体の参加を促すような仕組みの構築を目指すことが重要であるという御意見があったところでございます。
そして,2番目といたしましては,権利処理の窓口的な機能を果たす取組です。
集中化した情報の提供のみではなく,利用に係る申請の取次ぎですとか,その申請の可否,申請者への連絡,さらには使用料の徴収から分配などの機能を有するということになれば,これは更に有益である。
そして,加えまして,不明権利者の探索ですとか,裁定制度を利用するまでの手続の代行,こういったことを行うことも権利処理の円滑化には重要な役割を果たすということから,このような機能をあわせ持つことも重要であるという御提案があったところです。
次のページをごらんください。3番目といたしまして,権利処理に係る紛争の処理に資するような取組です。
孤児作品など権利処理ができないものにつきましては,「裁定制度」がございますけれども,例えば,その「裁定制度」に頼るのではなく,「権利処理システム」などにおいて何らかの担保をすることを条件に著作物を利用できることとし,その後において,仮に権利処理に係る紛争が生じた場合の,その処理に対応することが可能となるような取組を実施するということも考えられる。
そして,これは紛争が生じることを前提とするのではなく,正規の手続を踏むことを前提としつつ,権利者が不明の著作物の利用に係る事後的な対応を可能とするものであり,例えば,出版物の利用に係る対価を積み立てておくとか,そういった機能を持つことが必要とされるということ。
また,著作物の利用契約といいますと,ビジネス目的が主なものということになります。そういう場合,権利者と利用者の間でそのような契約が結ばれるということを踏まえますと,このような取組の実施に当たっては,その関係者となる者たちが主導で行われることが重要である。
そして,具体的な取組の実施に当たっては,関係者の了解と協力を前提とすることが必要であり,このような取組が,著作物を利用することは著作者の許諾を得ることが必要であるというそもそもの原則に影響を与えることがないように,さらには,法的なリスクもあるかについて整理する必要があるということで,御意見があったところでございます。
最後に,取組の実施に当たってでございます。
このような取組の実施に当たっては,今後の電子書籍ビジネスの動向を踏まえた対応が求められるということでございますので,各取組にふさわしい主体の参加の促進,法的な整理に関する問題,実施に当たっての費用負担などの問題について整理,解決すべきところがありますので,その取組の実現の適否を含めて,当事者となる権利者や各事業者における具体的な検討が進められることが重要であるということでございます。
以上が,前回の議論を踏まえて整理させていただきました内容でございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
前回の議論の整理ということで,前回も申し上げましたように,大体こんなところで,本日,了承いただければというふうに一応考えておるところでございますが,ただいまの説明に対する御質問 を含めまして,まだいろいろ御意見おありかと思いますので,そういったものを披瀝(ひれき)していただきたいと思います。
それでは,どうぞよろしくお願いいたします。
【金原構成員】
よろしいですか。
【渋谷座長】
はい,お願いします。
【金原構成員】
2ページ目の2番,[2]の一番初めのところですが,前半部分は,このとおりだろうと思います。出版者が出版契約に伴って権利者の情報を把握しているというところです。1回出版されれば,そのようなことになると思いますし,電子書籍の流通のさらなる円滑化のためには,著作者,出版者,配信事業者などが独自のビジネス展開をやるということはそのとおりだろうと思いますが,その場合に,最後の行に,何らかの権利処理システムの整備が必要であると書いてあるんですが,既にこれは,著作者と出版者で配信を行うという体制ができ上がっているところにおける話であろうと思われるので,ここで,こういう権利処理システムの整備が必要であるというところが,どうも結びつかないんですが,この辺はいかがでしょうか。
それから,その次の,この点についてはというところですが,これも出版者と配信事業者が話し合って物事を進めていくというところで,もう当事者間,つまり出版者と事業者が確定して,その間の話を進めるという段階だと思うんですが,そこで果たして,その2行目の真ん中のあたりに書いてありますけれども,集中的な窓口機能が果たして必要であろうかと思います。話合いが既にまとまっているところにおいて,集中処理をするということが,どういう状況において必要なのか,ちょっとよく理解できないところなんですが,その辺いかがでしょうか。
【渋谷座長】
はい。
【三田構成員】
この議論は,1968年までの国会図書館の蔵書をどのように利用するかという文脈の中で生じたものであります。1968年までといいますと,著作者が生存中でありましても,もう当該出版者とのつき合いが途絶えている。出版してから,もう何十年もたっているわけですね。まして,御遺族の場合ですと,ほとんど,その当該出版者とはつき合いがないという状況であります。こういうものが大変多いので,何か集中管理をするような処理機構がありましたらば,問い合わせ等が一極集中で,そこに聞けばわかるという状況になって,大変便利かなと思います。
私は,何か新しいものをつくるということではなくて,例えば複写権センターのような既存のもの,今も機能しているようなものを利用して,改めて,そこの権利管理機構の品目を増やすような形で,うまく既存のものを利用すれば,それほどコストをかけずに,こういうことが可能になるだろうなと考えております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
はい。
【片寄構成員】
2番目にあります,その中小出版者等がという文言を見ると,私がこれ,発言したのかなと思いますけれども,小さな出版者にとっては,この手続そのものが非常に煩雑になり,仕事量が増えるということがあったときに,そういう窓口的なものがあれば非常に有効なのではないかということで発言をいたしました。
ただ,現状の集中管理機構では,その必要は,今のところ認められないというふうにも申し上げましたが,その可能性が今後は促進していく中で出てくるのではないかということで申し上げたので,今,三田先生がおっしゃったようなことと兼ね合わせて,この文言もあるのではないかと思っております。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,瀬尾構成員。
【瀬尾構成員】
大変,議論はよくまとまっていると,私は思っていました。
この2番に関しても,もともと集中管理といったときに,例えば権利自体を集中して,そこで処理を行うと。例えて言えば,団体名を出してどうかわかりませんが,例えばJASRACさんのように,権利を集中して統一的な管理を行うという形の必要性は,今のところ見当たらないというのが,今回の議論の骨子だったと私は理解しております。
ただ,だからといって,電子書籍が,それだけで,現状のままで有益に動いていくのか。市場に任せて,きちんと流れていくかのかについては,種々の疑問があるということで,こういうふうな集中処理機構の必要性ということが出てきたのではないかと思います。
私は,こういう集中処理機構は必要だと思っていますし,実は今回,隣接権や何かじゃない電子書籍が問題になっていますが,すべてに含めて,こういう一般的な民間でぱっと処理ができない部分について請け負い,円滑に処理をするための集中窓口のような組織,団体が必要だろうと思っています。
そういう文脈で読むと,今の[2]番の金原構成員のおっしゃったような,さらなるとか,そういうふうな話ではなくて,補完するような立場のものになるのではないかなと考えています。
そういうふうなことで考えて,この全文を読んでいけば,私は非常に早急な実現が望まれる組織ではないかなと思います。
2つ目なんですが,そういうふうな形で考えていくと,いつもこれで,例えば今年の議論が終わってしまって,また来年これが出ていったのでは,半年以上おくれます。おくれると言っていいのか,通常のスピード感であると言っていいのかはわかりませんが,今の時代感覚からいくと,私はおくれると,あえて申し上げたい。
つまり,これが議論として,もしまとまって,皆さんのコンセンサスを得たときには,具体的に関係者にお声がけをして,どういう方たちが適当であるかも含めて,そしてまた代行できる組織はどこなのかという候補も含めて,できるだけ早い段階で協議会を立ち上げていただいて,その中で,ここまで具体性が持たれていることですから,もしみんなが望むことであれば,早急な実現に向けて,準備委員会のような形でも持っていくまでをお願いしたい。つまり,議論のための議論ではなくて,もう早急に求められているんだという認識を共有できれば,できるだけ早い実現に向けての次のステップも,この時点で,文化庁さんを始め,皆さんにもお考えいただきたいと思います。早くこれができれば有益であるし,おくれればおくれただけ困難は広がるというぐらいの危機感を私は持っておりますので,是非前向き,かつ至急な御検討をお考えいただければと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,中村構成員。
【中村構成員】
今の瀬尾委員の意見に賛成で,それで少し質問を事務局にさせていただきたいんですが。この方向性には同意するんですけれども,それはまとまったとして,いかに実現するのかという問題かと思います。
そこで,ここで大事なのは,実現に向けて,では政策としてどのように,これを後押しされるのかということで,例えば1つ目は,システムの開発や構築に対する支援措置でありますとか,あるいは3ページ目にありますような,国会図書館のデータベース活用を容易にするような何か措置といいますか,施策が考えられるのかというのが1点。
それから,もう一つは,例えば,その窓口組織を考えてみると,結構ベースがしっかりした組織が必要かなとお読みしました。先ほど複写権センターの名称も出ておりましたけれども,既存の組織に業務を追加するというイメージなのか,あるいは新たに組織を設立していこうというイメージなのか。どのようなイメージなのか,もしあれば,お聞かせいただければと思います。
【渋谷座長】
それでは,事務局からお願いします。
【永山著作権課長】
この検討会議で方向性をいただければ,それを受けて,具体的に検討していくというのが模範解答的になりますが,これまで,ほかの分野で,集中処理のシステムが幾つかでき上がっております。その際に,私ども政府として果たしている役割としては,大きく2つということで,1つは関係者が集まった協議会,なかなか利害が錯綜する面もありますので,その中にオブザーバーとして我々文化庁も関与する形で議論を整理して,実現の方向に誘導していくと,そういう役割を果たしていく,そういう役割が1つあります。
また,最終的にはビジネスベースで進んでいくことになりますが,当然,政策として進めていくという観点から,最初のシステムの構築に必要なイニシアルコストについて,これは文化庁だけではなくて,これまでも総務省さんとか経産省さんのお力もかりながら,一緒になって,議論を整理し,また当初のコストの補助をするという形での役割を,これまでのほかの分野の取組でやってきている面がありますので,方向性をいただければ,私ども政府としても検討していきたいと思っております。
【渋谷座長】
中村先生,今の答えでよろしゅうございますか。
【中村構成員】
はい。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは。
【糸賀構成員】
この問題が出てきた背景として,これまでにも言われていることですが,出版物というものの確かにデジタル化が進んできたけれども,その一方で,依然として,データはデジタルかもしれないが,紙媒体で印刷されて流通している書籍というものも残り続ける。つまり,当分の間,デジタルとアナログの共存といいますか,混在,そういう意味ではハイブリッドの形が社会の中で進んでいく。それから,一方で,この電子出版にかかわるところでよく言われる,プロフェッショナルが今まで仕切っていた世界に,今度はアマチュアがいろいろと入り込んでくる。プロとアマチュアの混在というのもあるわけですよね。それから,それと関(かか)わることですけれども,今度はクリエーターとユーザーが,同一人物があるときはクリエーターであり,また別のときにはユーザーになり得るという,クリエーターとユーザーの混在という,いろいろなものが入りまじってきて,改めてルールとか制度設計を見直さなければいけないというところから,問題がいろいろ出てきたんだろうと私は押さえております。
そうしたときに,古いスキームに,いかに新しいプレーヤーが容易に参入し,最適な「混在」を実現できるのかという視点で考えていく必要があるだろうと思います。その視点で考えたときに,今回のこの議論の整理というのは,いろいろな意見をうまくカテゴリー分けして整理していただいたと思うんですけれども,私としては,若干気になるのは,1ページ目にあります,この資料1の1ページの2,この組織的アプローチの必要性についての(1),それの[1],権利の集中管理の必要性の2番目の項目なんですけれども,権利を集中管理することにより,これまでの作者と出版者との個々のつながりや,出版活動における多様性が失われるという指摘ですね。これは,言ってみれば,既存の枠組みといいますか,あるいは従来維持してきた関係が,これで失われてしまうのではないかということだと思います。これは,言ってみれば,見方を変えると,既得権益を大事にしていて,新規のプレーヤーがなかなか参入できないんじゃないかという意味合いにもとられかねないのではないかということを多少,私は危惧(きぐ)いたします。
ただ,これ,うまくできているのは,今度は,その次の2ページの上の方に行くと,先ほど金原構成員も言われたし,片寄構成員も言われましたけれども,多様な主体が今後ビジネス展開をやる。2番目のところでは,中小出版者が電子書籍ビジネスに参入するための環境も整備されるというようなことへの配慮で,一応バランスを図っているのかなと思います。
ただ,いずれにしましても,オープン化というのが,もう社会の流れだと思います。いろいろな知的生産物に対してオープンアクセスで,だれもがアクセスできるようにしていく。そして,この市場といいますか,この流通している場面に新規のプレーヤーが参入しやすくしていくという方向を考えるべきです。
そういう意味では,私は権利の集中管理というのは,社会的コストとかということをいったん脇(わき)に置いて考えれば,一般論としては,これはあった方がいいだろうと考えます。
それで,1ページの[1]のところは,権利の集中管理を言っているわけで,今度は[2]の方は,言ってみれば,これは,そのための情報処理の仕組みを考えようということなんですね。権利の処理の仕組みと情報の処理の仕組みというのを分けて考えているわけなんですが,そこが若干わかりにくいために,冒頭で金原構成員が言われたようなわかりにくさというのが出てきてしまっているんだろうと思います。
ですから,[2]のところは,いわば情報の処理をするための仕組みで窓口が必要だろうという趣旨であることが,もう少し鮮明に出れば,御納得いただけるのではないかと感じました。これが1つ。
それから,もう一つは,今回のこの場の議論では,私は,いわゆるユーザーといいますか,電子出版でいえば,いわゆる読者,あるいは消費者と呼ばれるような立場の方々が,残念ながら,この構成員のメンバーの中には余り入っていないということを,ちょっと心配いたします。
じゃあ,実際にこれを使う人たち,特に私は,その二次的な利用で,何らかの形で出版されたものを加工した上で自分たちで使いたいとか。それが,要するに,さっき言った,クリエーターとユーザーが行きつ戻りつするというんですかね。一次ユーザーであるけれども,それを二次的に使って,今度はクリエーターになると。そういうことを促していくことで,日本社会そのものの活性化につながっていくはずですから,そういったことを考えますと,もう少しユーザー,読者,消費者,そういう方たちの意見も,今後は聞いていき,ここに反映させていくべきだろうと思います。
それから最後,3番目になりますけれども,この権利処理の円滑化という意味では,前回の会議でも申し上げましたけれども,今後の国際的な流れを考えると,事前に意思表示をする仕組みを考えて良いと思います。自分の著作物――これは電子出版に限りません――様々な著作物について,事前に意思表示をして,これはこういう形で使っても構いません,だけれども,こういう使い方は困りますというふうにした方が,社会的なコストの低減にはつながるだろうと思います。
そういう意味で,今回,2ページの[2]の3番目に,そういった,何らかの仕方によって著作物の利用に係る条件を明示的に。これは,要するに,事前に意思を表示するというやり方で,そこはもう少しわかりやすい書き方をしていただいた方がよろしいかとは思います。クリエイティブ・コモンズのように,いわば国際的な広がりをもちつつあるようなモデルもございますので,そういったことも,権利処理の円滑化を進める上での選択肢の1つになるだろうと思います。
これが,今言われているような,例えばハードローとソフトローによる改革ということを考えたときに,必ずしも法改正を伴わずに,ソフトローでの改善に結びついていくわけなので,これも,これからの時代の潮流に合ったものになるだろうと思います。そのあたりの論点とか視点が,もう少し明確になるような書き方をしていただければ,私はこれでよろしいかと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,瀬尾構成員。
【瀬尾構成員】
今回の論点の一番の問題点は,今,電子書籍のマーケットというのは,民間の間で自然に形成されつつある。ここに,余り,こういうふうなルールづくりを先に公のところでしてしまうのは,私はいいことだとは思いません。それでまた,形成していく方向性も,実は,余り見えていない部分もあると思います。
1つ,電子書籍と言われたときの視点で,先ほど,今の糸賀構成員のおっしゃった個人ということなんですが,この電子書籍の時代って,私は電子書籍の時代は,個人が出版をしたり,個人に近いところからも出版物が出ていく,そういう時代になっていくことで,著作物が豊富化し,文化と,それから皆さんの生活がよくなるという世界になるんじゃないかなと夢想しています。
ただ,そうなってきたときに,既存の枠組みでは,やはりとらえ切れないし,どうなるかもわからない。こういうことについては,民間の中で,具体的な取組として,マーケット形成をしていく様子を見るしかないのかなと思っています。そして,こういう全体の中では,もっと大きな,個人とか,そういう小さな枠組みでは決められない,一民間企業ではできないようなこと――たとえどんな企業にしても――そういうことについて,ここのところで,まず押さえていけばいいのかなと思っています。
例えば,先ほどの,じゃあ,これ,どういうふうに具体化するのかというステップについて,課長の方からいろいろおっしゃっていただいて,非常によくわかりましたけれども,ただ,例えば,これだけ細かいことがいろいろ詰まってきて,更に当事者,例えば経団連さんかもしれないし,ユーザーかもしれないし,いろいろな方たちの方で,民間の協議会の中で形づくることは,そんなに,今のところ反対という声も聞かないし,大きくない,難しくはないと思っています。
ただ,そのときに,じゃあ,最初に,これは文化庁さんだけでなく,総務省さん,経済産業省さん,それぞれの施策の中で御協力いただけるような――余り私はこの言葉は好きじゃないですけれども――実証実験的な試みをベースにして,そして初期起動をきちんと,そこら辺で御支援いただいた上で,そしてきちんと回っていくような組織を立ち上げる。例えば,3年間は実証実験の範囲内でベースを構築してしまって,それ以降は自立するような,そういう具体的な案というのが,もう,ここから生まれてくるのではないかなと思うんです。
ただ,電子書籍のマーケット自体に影響するような,それを形づけたり,方向づけてしまうようなことは,やはり民間のマーケット形成にとっては,必ずしもいいことばかりではないと思いますので,例えば国会図書館のデータを活用するとか,こういう民民の中で権利処理をするとか,不明をどうするかとかという部分について,今からやっていけば,民間のマーケット形成とよい形で大きな組織とがスキームとして成り立っていくのかなと思っておりますので。
ある程度形が見えてきているし,今,糸賀構成員のおっしゃったような点を踏まえて,できるだけ多くの人にわかりやすいように,そして仕切りをきちんと,ここまでをやるけれども,ここまでは民間に任せる部分はある程度明確化しないと,いろいろな雑念,懸念を生んでいくのかなと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,田中構成員。
【田中構成員】
古い不明の孤児作品の利用についてというところで,ここでの文脈では,従来の裁定制度が民間のビジネス,これからのビジネスを促進するというところには,もう制度的に対応できないので,新たな仕組みが想定されるという民間ベースで進めやすいようなやり方を考えるべき。そのこと自体は,前回も申し上げましたように,全く方向として否定するものではないんですけれども,既存の裁定制度の位置づけや,その役割についての総括というところで,現状の裁定制度が機能,十分し得ないというところについて,もちろん,いろいろな権利の保護というのが大前提でありますけれども,もう少し制度の仕組みや在り方のところで工夫の余地はないのかということも,我々,国会図書館としては,改めて提起をしたいというのが1つです。
例えば,権利情報の集中化と裁定制度を組み合わせるということは,本当にできないのか,それ次第によっては,もう少し簡易に裁定が扱えることもあるのではないかというのは,相変わらず思っておりますし,それから現行の裁定制度では,例えば料金,補償,供託金の算定も,本当に雲をつかむような形になっていまして,そこはいつも難しいお話をさせていただいているんですけれども,例えば利用料,補償料の算定についても,ある程度,その考え方のモデル的なものが出ていれば,民間で裁定制度を使うにしても,もう少し具体性があって,わかりやすい形での利用ができるのではないかという部分もあると思います。
それから,もう一つは,例えば国会図書館が税金を使って調査をして,その結果,裁定利用を受けている。それを,例えば二次利用したい,出版様が使いたいという場合に,また同じ調査を一からしなきゃいけないということで,それも1回調べた,調査したことというのを共有できるようにして,もちろん,その間に申出があったり,いろいろなことがあれば,また全然別ですけれども,基本的には,裁定利用しているものについての第三者の利用のハードルも下げるというやり方だって,もっとあり得ると思うんです。
ですから,ここに書かれているような新たな取組を否定するものではないんですけれども,もう裁定制度は工夫の余地がないから,別の形を考えましょうというのではなくて,裁定制度と組み合わせるとか,裁定制度の今の問題点を解消するような形で,特に商用ビジネス的に国会図書館がデジタル化したものを商用利用する際のハードルを下げるということも,いろいろなやり方が,まだ考えられるんじゃないかというのは,改めて,御指摘させていただきたいと思います。
【渋谷座長】
ありがとうございます。
この案ですと,今の田中構成員の御意見,関連するところは,裁定制度の手続の代行というのがありますが,それは1つの工夫だと思うのです。そのほかに,対価の算定方法のモデル化のようなこととか,出版者が二次利用するときに探索を繰り返さないと。言ってみれば,裁定の既判力といいますかね,訴訟で言えば。そういうものを認める必要があるのではないかと,そういう御意見だったと思います。そういうものをつけ加えてはどうかということですね。どうもありがとうございました。
はい。
【三田構成員】
この議論は,昨年の三省デジ懇から出発しているわけでありますけれども,三省デジ懇のころと状況が少し変わっているところがあります。
去年の段階ですと,今,仮に1968年までの蔵書ということになっておりますけれども,今後,次々と税金が投入されて,この1968という数字が短期間に現在に近づいてくることも想定されておりましたので,これは単に古い本の権利処理をするというだけではなくて,いつかは現在の電子出版にもつながるような,そういう総合的な著作権管理のシステムをつくらなければいけないと私も考えておりましたし,多くの人も,逆に警戒する人は,それに対して警戒感を持っていたと言えるだろうと思います。
ところが,急に国が貧乏になりまして,この1968年までの蔵書はとりあえずデジタル化されていますけれども,来年,再来年にどんどんと蔵書が増えていくということが,予測がつかないような状況になっております。
この権利処理の機構というのは,現在の古い本の権利処理をするだけだと,多分,採算はとれないだろうと思います。どんどん,どんどん拡大していくということであれば,名乗りを上げて,それでちゃんと,その管理機構を運営することは十分,民間の方でも手を挙げて,やってみようというところがあらわれるだろうと思いますが,1968年までの蔵書でストップしてしまうのだとしたら,これは慈善事業のようなものであります。これは国民の知る権利にこたえるために,ある程度公共性のあることだからやろうというようなスタンスで取り組まなければならないし,先ほど糸賀さんが言われたのは,どんどん拡大していくということを前提としたお話だろうと思うのですけれども,限定したものであれば,ある程度税金を投入して,何か組織を立ち上げ,運営費もある程度国家が補助をしながら,しかし国民の知る権利にこたえるんだというやり方でやっていくことも1つの考え方だろうと思います。
私は以前,貸与権センターを設立するときにもかかわっておりましたけれども,あのときは,貸本屋さんでどんどん本が貸し出されているので,そこと交渉して,お金を幾らかいただければ運営できるんだという具体的なめどが立っておりましたので,民間の出版者が団体をつくって,すぐに対応することができたのですけれども,今回の国会図書館の1968年までのデータを配信することに対しては,どれほど利用者があるのだろうかということもわからない状況ですので,民間がお金を投資して事業を始めることは考えにくいだろうと思います。
しかし,逆に,先ほど糸賀先生は,利用者のことを考えられていないというふうに言われたんですけれども,古い本を見る人って,大学の先生しかいないと思うんです。だから,ここに何人かいれば,もう十分だと。非常に限られた人の便利さ。
それから,私が一番懸念しておりますのは,配信するだけで,それをプリントできないということですと,利用者は大変困るんですね。自宅まで,例えば何百円かで配信されたら,デジカメで画面を写真撮るということが可能でありますが,本当は紙にプリントしたいんです。これを,例えば,近くの本屋さんに行ったらオンデマンドのプリンターがあって,幾らかお金を払えればオンデマンド出版というような形で紙の本にしていただけるということであれば,利用者にとっては大変便利であると考えられますが,税金を投入して,国会図書館さんでつくったデータをもとに,本屋さんがお金をもうけていいんだろうかという疑問も出てくるだろうと思います。
そういうことも含めて,公の機関と,この出版者,それからオンデマンドプリンターを置く書店さんとか,そういうものも含めて,総合的に国民のニーズにこたえるような形での利用システムを考えることが必要であろうかなと思いますが,原理的には,ここでまとめられているものの方向でいけるだろうなと思います。
ですから,この先は,もうちょっと少数精鋭の人で具体化,どうやったら具体化できるだろうか,幾ら予算があればできるんだろうかということの話合いをスタートできるのではないかなと思います。
以上です。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
はい。
【糸賀構成員】
三田構成員言われましたけれども,例えば1968年までデジタル化されたときに,そういう古い本を使う人が果たしているんだろうか。それは大学の暇な研究者ぐらいじゃないかというふうに言われた。そんなこと,決してないと思います。現在でも,国会図書館に対して,現物の貸借の依頼というのは全国から行くんですね。これは本当に,別に,いわゆる研究者に限りません。地域,郷土のことをいろいろと調べたり,退職してから,いろいろなことに興味を持って,外国のことに興味を持って,例えば,アイヌの文化について調べたいという方が,沖縄の伝統的な芸能と,そういったものの接点だとか共通点がどこなのかなんていうことを調べたりすることが,ままあるわけです。ですから,私は,こういうことをやって,むしろ国民全体が,そういった知的活動,知的生産にかかわっていくような契機,きっかけが,こういうことで生まれていくだろうと,本当に思います。
古い本はもう使われないということではなくて,もちろん新しい本に対する需要も多いんですけれども,古いものが,これで掘り起こされていくことになるだろうと思います。今までは,なかなか入手しにくかったから,そういうものの存在価値が見えなかったんですけれども,今後は入手可能性が高まることで,そういったものの存在価値を知る人は,もっと多く増えていく,そういうふうに考えております。
その意味で,この今回のまとめの,私,先ほど前半の部分,ちょっと申し上げましたが,最後に,取組の実施に当たってということで,今後の方向性が幾つか打ち出されているわけですね。この最後,4ページの最後のところに,今後は各取組にふさわしい主体の参加の促進。その主体の1つは,私申し上げたように,やはりユーザーだと思います。ただし,そのユーザーは,いつでもクリエーターというか,今度,生み出す側(がわ)にも転換し得るという,ここが,やはり大事な点だろうと思います。単に,一方的に使う,消費するだけではなくて,次の生産に結びついていくと。これが,いわゆる知の再構築といいますかあるいは,知の再生産に結びついていく。これはもう,日本の国家全体が目指さなければいけない方向ですので,この点で,特にふさわしい主体としては,今後,つくる側(がわ),出版者,それから今後新たにこのビジネスに参入していこうと考えている中小の出版者,こういったところが,今までの大手が,いわば囲い込みをしようとしているところに入り込めるような余地を与えないと,私はいけないと思います。
それから,実施に当たっての費用負担というのは,ここにも3番目に出てきております。これは当然だと思います。何でもかんでも,官が全部,税金を投入してやるわけではなくて,一定程度のユーザーの受益者負担ということも求められていくべきだろうと思います。
それで,先ほど三田構成員が言われた,プリントができた方がいいだろう。これは,私もそう思うんです。ただ,そうしますと,前から申し上げているとおり,多分,それに対しては一定の対価,いわゆるコピー代といいますかね,それが支払われる。それが,ちょっと細かい話になりますが,本当に今までの著作権法31条1項の図書館資料の複製と同じに考えていいかどうかは,私は,かなり重大な問題をはらんでいるだろうと思います。つまり,国会図書館から送信されたものを,ほかの図書館で複製をとる,プリントアウトすることが,31条1項では,本当に読めるのかどうかという点です。それから,そのときの対価といいますか,支払われたお金は,純然たる手数料と考えていいのかどうか。それが何らかの形で,権利者,著作者にフィードバックされなければいけないとなると,またややこしい問題が出てきて,そこでスピード感がなくなっちゃって,実現が先送りになってしまうということを,私は心配するわけです。今のところ,関係者の間で合意ができている部分で,さっさと始めちゃいましょうというのが,私の考えです。
そういう意味では,今,三田構成員が言われた,複製がとれるかどうかということは,利用者の利便性を考えれば,いずれは検討のテーマに上ってくるでしょう。しかしながら,その課金,費用徴収という問題が発生しますので,その問題は継続的に検討しましょう。差し当たりは,まずは複製はとらない形でスタートしたらどうでしょうかということで,これまで,[1]の項目については済んでいるんだろうと思います。
そういう問題も含めて,ここのところでは,最後に今後の取組の方向性が示されておりますので,今のような理解でよろしいのでしたら,これらの項目を挙げていただくことで十分だろうと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
三田構成員,お願いします。
【三田構成員】
第1弾の議論は,入手困難なものについて図書館に送信するということで,コピーはとれないということであります。
私が先ほど申し上げたのは,第2弾に,一般のユーザーにも何百円かお金を払っていただいて,お茶の間に送信をするとか,それから図書館でも,もっと端末を増やしていただいて,入手困難なものでなくて,その図書館にないものは,どんどん送信して,読めるようにするという,もっと利用者の利便性を高めるようになった場合に,利便性が高まれば高まるほど,これは,ただで無制限にやっていいということではないので,何らかの形で課金をすることも考えなければならないだろうと思います。
その場合に,図書館で本1冊丸ごとプリントするというのは,これはできないことであります。しかし,図書館の御近所の本屋さんにプリンターがあって,そこで有償でオンデマンドプリントするということは,すぐに可能でありますし,図書館と御近所の本屋さん,仲がよければ,図書館の隅の方に本屋さんを開設して,そこで,ここは本屋さんですよと。これは,似たようなことを今まで図書館がやったときに,出版者が怒ったことがありますが,ちゃんと出版者にもお金が払われるんだというシステムをつくりましたらば問題はないだろうと思います。
そういうふうに,何らかの形で,民間業者さんももうけるようなシステムができましたらば,ちゃんとお金が払えば,入手困難なものでも,すぐに紙の本になるということで,これは利用者にとっては大変便利な状況でありますし,私も利用者の1人として,一刻も早く,そういう状況をつくっていただきたいなと考えております。
この第2段階のものについても,これからは検討を進めるべきだろうと私は考えております。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい,お願いします。
【瀬尾構成員】
済みません,ちょっと話が戻るんですけれども,先ほどの田中構成員の裁定制度の改定の必要ということがあって,確かに国会図書館さんが,民民の中での,みなしのような形の中で使っていくことは非常に難しい。やはり,きちんとした法的根拠の中で使っていかなければいけないだろうと思われることは非常によくわかりますが,データベースをきちんと,書誌データベースを流用させていただく中で,実は,こういう処理センターができた場合,国会図書館さんとは特別非常に近しい連携,特定の連携というものをしていかないと実は成り立たないというふうには,私はイメージしています。
裁定制度をどんどん,どんどん,ある程度使いやすくするという1つの方向は,もちろんあるんですけれども,やはり,裁定制度は法によって確実に裏づけがある最後のとりでのような形というポジションは残しておいた方がよろしいのかなと私は思っています。
ただ,前からお話が出ていますように,図書館ネットワークと申しますか,国会図書館さんから中央公共図書館とのネットワークの中で,そこでのデータベースと,この集中処理センターなるような仮定される機構とは非常に近しい連携をして,データを共有し合い,そしてまた,そのバックボーンには権利者,それから出版者さんのデータベースをバックボーンに入れていかないと,このような権利者が不明であるということを探り当てるのは難しいと思っています。
ですので,ちょっと今回,私は,裁定制度をこの中に組み込むというよりは,この中で自己完結するような。それは固有の名詞である国会図書館さんというものを一応考えた上で組み入れていかないと難しいのかなと思っていますので,いきなり裁定制度まで広げると,ちょっと私は問題があるのかなというふうには感じました。
もう一つ,糸賀構成員のおっしゃったクリエイティブ・コモンズのような,自分からその使い方について意思表示をするシステムについてなんですが,私も実は,もう数年前から,作者が自分の作品の使われ方まで責任を持つべき時代であるということを強く思っていますし,つくり手にも,そういうことをお話しをしたりしてきています。
ただ,クリエイティブ・コモンズ,若しくは自由利用マークのように,自分で意思を表示するシステムは,成り済ましも含めて,やはり非常に,その危険性もはらんでいることも確かです。ですので,特に今回の集中処理とは違った問題として,集中処理するためには,それがあると件数が減って楽だというつながりはあるのかもしれませんが,システマティックに考えると,それとこれは連動しない議論にした方が混乱はしないのかなと,私自身は思っております。
それから,もう一つ,最後には,個人のマーケット,個人が作者になったりユーザーになったりするというマーケットが予想されると,先ほど私も申し上げましたけれども,それについて,やはりどうなるかがわからないんですけれども,こういうふうな,今の段階から,その個人のマーケットについてどう思っていくかというのは,非常に難しいと思います。
ただ,その協議会なり何なりを立ち上げたときには,やはりユーザーはいなければ,これはどうしようもないので,入っていくんですけれども,システム的には,そういうユーザーまで取り入れていくのは,かなり難しいのではないかなと思っています。
私のイメージしているのは,例えば,個人で出版者をやめられた出版人が,二,三人の著作者をバックボーンに持って,個人的に出版を繰り広げていく。これはあり得るかなと思っていますし,作者が自分の仲間を何人かを代表して,ある一定の法的な責任を負って仲間のものを出版していくとか,出版者に至らないような小さい出版の形態が出る可能性がある。そういうものについてどうするかは,ちょっと,この集中処理というものとは,また違った将来性があるような気がするんですね。
これについては議論すべきだし,非常に私もそういうことについては興味もあるし,いろいろな考えていることもありますが,先ほどからの議論で,大分具体的な手法的,技法的,現場的なレイヤーと大枠の話が,何かちょっと交錯しているような気がするので,切り分けるべきかなと。そして,個人のそういったエージェントのような形に関しては,やはり,またもうちょっと後の協議会内での議論であろうと考えます。別に排除するわけじゃないんですが,段階を切り分けていかないと,議論が何か大枠と細かいのと,すごい細かいのがまじるような気がしたので,あえて,ちょっと申し上げさせていただきました。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい。
【金原構成員】
孤児作品と権利処理システムの関係なんですが,4ページ目の一番初めのところに出ておりますが,先ほど田中構成員がおっしゃったように,権利処理システムが裁定制度の窓口,あるいは代行システムというなら,これはそれでいいんですけれども,そうではなくて,権利処理システムが何らかの形で権利許諾をするという場合には,何らかの権利制限をしないと,これは法体系上,無理なのではないかなと思いますが。
それから,権利処理システムができたからといって,孤児作品の著作者がすぐ見つかるというわけではないので,やはり,依然として孤児は孤児ですので,これは,こういうことをやるために,権利制限ということも含めて考えるようなことになるんでしょうか。ちょっとこれは事務局にお尋ねしたいんですが。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
ここは前回出されました意見を整理させていただいたものではあり,その中では,この権利処理システムが,いわば許諾を与えるということをおっしゃられてはいなかったと理解をしております。
この権利処理システムは,ある著作物を利用しようとする人が当然,裁定制度に近いような形で不明権利者を探索した後,結果,見つからなかったときについて,その使用料に相当するような金額を,この権利処理システムなりのところに一たん預けた上で,結果,無許諾にはなるんですけれども,での使用を行うと。しかしながら,事後的に,その権利者が見つかった場合は,その預けていた使用料を支払う。また,権利者が見つかった場合に,何らかの紛争,トラブルといったものがあったときには,その仲裁役的な形で,この権利処理システムが間に立つとかの,クッションといいますか,そういう中立的な立場をイメージしておったかと思っていますので,ここに書いてありますような紛争処理の仕組み,これに関して,権利の制限なり制度改正とかというところは,我々としてはイメージはしておりませんでした。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ここ,今の4ページの御指摘になったところ,権利処理システムとあるのですが,そうすると,表現としては,むしろ権利処理円滑化システムとか,そういう内容になりますかね。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
ここの権利処理システムといいますのは,実は,前のページから続いてきたものということで考えております。つまり,大きい3番として,権利処理の具体的な取組についてという形で,[1],[2],そして[3]という形で流れてきておりますので,そういうことで,ここの構成としては,いわゆる権利処理システムはどういう機能を持つものなのかということで,順番に[1],[2],[3]と,徐々に追加された方がよいであろうと,提案された機能が加わってきているということですので,ここの権利処理システムは,そういう意味でして,ここが権利の許諾を与えるとか,そういう言葉として使っているものではありません。
【渋谷座長】
つまり,権利処理システムというものは,2つの機能を営むと。本来の権利処理と,それから権利処理の円滑化の機能と,窓口機能を含めてですね。そういうような意味合いで,この言葉を使っているということでしょうかね。
その点,金原さんの最初の御発言のときにもちょっと気づいたのですが,2ページの一番上の[2]のところを御指摘になったと思うのですけれども,各出版者が権利を管理しているのだったら,何らかの権利処理システムの整備というようなものは必要ないのではないかと,そういう御趣旨の御発言あったかと思うのですが,ここも,あれですね。各出版者において権利を処理するのが現在の姿だけれども,そのほかに,この権利処理の円滑化のための何かシステムが必要なのではないかと。そういう意味合いで,この言葉を使っておられるんですね。報告書としては,このあたり,もう少し用語を整理する必要があるのではないかなと。
それと,発言を続けて恐縮なんですけれども,同じ部分なんですが,三田構成員が御指摘になりましたことと関係するのですが,この権利処理円滑化システムが本当に必要なのは,その同じページの(2)にある孤児作品等の権利処理が困難であると,そのことに対応しなければならない場合ではないかなとも感ずるのですけれどもね。出版者が実際に権利処理して,どんどん電子出版を行える体制にあるときに,この,いわゆる権利処理円滑化システムを別に立てる必要があるのか。そういうシステムを立てる必要があるのは,むしろ孤児作品等というか,出版者がもう出版する意思を持っていない作品ですね。孤児作品ではないですけれども,もう出版する必要がないと思っているものを別の配信業者が電子出版として配信したいというときに,何かこういうシステムが必要だと。そういうふうになってくるのじゃないかなとも思うのですが。
三田構成員の御意見を伺っていて,そんなことも感じたんですが,そのあたり。
はい。
【瀬尾構成員】
基本的に,例えばユーザーが何かを使いたいと,この何らかのセンターなり機構なりに申し込む。そうすると,そこで調べて,出版者がわかれば,出版者に当然,権利で振る。その出版者が,嫌だ,これ,電子化したくないと言ったら,それはしようがないですよね。それはそれで終わり。
要は,権利処理ができない。だれだかわからない。言ってみれば,孤児作品とか不明のものをいかにするかということが第一義であることは確かですし,そのときに,許諾じゃない形で使えるようにしようというのが多分,この話の眼目だと思います。
だから,みんなで寄ってたかって,いっぱい多くの権利者から,利用者から,いろいろな方たち,一般の方とかみんな入って,合意をした上でいくので,これが成り立つということにしてみたらどうかということです。
ですので,どちらかというと,取り次ぐとか,そっちのイメージが近いのかなという感じがいたします。
【渋谷座長】
はい。
【糸賀構成員】
済みません,私,さっきも申し上げたんですけれども,この[1],[2],それから,その次の(2)の切り分けは,[1]は権利の処理であって,どういう権利について,誰(だれ)の許諾をとって,幾ら払うかとかいうのが[1]。
[2]は,権利者がだれだかわかっているんだけれども,その人と連絡がとれない,どこにいるかわからない,そういう情報をここで提供するシステムだと思います。私なりに言葉を補えば,これは権利処理をするための情報システムの整備ということを[2]は言っているんです。
次の孤児作品は,権利者がだれだかもわからない。もちろん,どこにいるかもわからない。そういう場合が,オーファンワークスで,孤児作品になっているんだろうと思います。
私はそういうふうに,この切り分けを理解したんですが,違うんでしょうか。
【山中著作物流通推進室長】
事務局の方から。
糸賀構成員のおっしゃったようなことでございまして,先ほど座長の方からもお話ありましたけれども,2のところの,2ページの[2]のところで,権利処理を円滑に行うための何らかの仕組みを,ここで権利処理システムという形で記載してしまっているものですから,まさに権利を処理するというふうに,ちょっと誤解をされてしまうような表現ぶりになってしまったのかなと思います。
前回の議論の中では,そういうことを使いながら,今,糸賀構成員の言われたような,その情報処理システムという形での議論であったかと記憶しておりますので,ちょっとその辺の用語の整理について,修正を考えさせていただきたいと思います。
【渋谷座長】
はい,金原構成員。
【金原構成員】
最初に,この2ページ目の[2]のところを発言したので,ちょっと補足をいたしますが,きょうの皆さんのお話を伺って,出版者が現在発行中で流通させているものについて,これが集中権利処理システムで処理されるということは,まずないだろうと思います。
ただし,紙媒体で出版したものは,どこかの時点で寿命が来て,寿命が来てというか,著作物の寿命ではなくて,出版物の寿命として,絶版になったり,あるいは入手困難になったりします。もう,その段階ですと,恐らく出版者も,電子的な流通というものに対しての興味を失っている。しかし,著作物としてはまだ価値があるという場合には,こういう権利処理システムに著作者がその権利を預けることによって,もしかしたら,その当該の出版者かもしれない,あるいは違う出版者かもしれない,あるいは全く別の配信業者かもしれない,そういう人たちが,そこから許諾を受けて,配信して,著作物の流通を活性化させることは十分あり得ると思います。
したがって,これは現在,出版物,紙媒体で流通しているものについては,多分こういうことは起きないだろうと思いますけれども,ある一定の時間が経過した後は,我々も他者から出たものを電子的に自社の中に取り込んで流通させることもあるかもしれません。その場合は,この権利処理システムから許諾を得ているということも当然起こり得ると思いますので,ここの趣旨は何となくわかりました。これで促進されるということについて,全く異論はありません。
【渋谷座長】
あるいは,その切り分けということですと,現在,出版者が出版している出版物と,もう出版しなくなった出版物と,それから孤児作品と,その3つに,切り分けて記述すると,誤解が生じないのかもしれませんね。この現行の案ですと,2つなんですよね。  はい。
【里中構成員】
済みません,今,金原委員のおっしゃったことで,ちょっと私が勘違いしているといけないので,質問させていただきたいんですけれども,今おっしゃった,もう既に出版されていない,出版者が出版する気がなくなった出版物を他(ほか)の出版者がもう一度出版したいというときに,別にこういう窓口がなくても,著者にアプローチすれば,それは可能ではないかと思うんですけれども。
【金原構成員】
基本的に出版者が出版物を流通させなくなったとき,つまり在庫が切れて,いわゆる絶版という状態になったとき,ただし余り最近,絶版という言葉は使われないんですけれども,もう既に在庫がなくなって,入手困難になった場合に,出版契約が,もうそこで終了になりますから,著作者の方にすべての権利が戻ってくるわけですね。ですから,その段階でも,もちろんB出版者が著作者の方にアプローチをして許諾を得てということで,十分あります。
だから,直接ということも,もちろんありますけれども,著作者の方が管理団体あるいは権利処理システムに預けて,複数の人に,複製を許諾するがごとく,電子書籍あるいは電子出版物として流通させることを許諾するということもあり得るだろうと思います。つまり両方あり得ると思います。
【渋谷座長】
はい。
【糸賀構成員】
今議論になった点を,私も前々から考えているわけです。つまり,もとの出版者がもう再版する気がない,だけれども,ほかにデジタルで出版する技術と,それから,例えば広報の戦術,戦略を持っているところが,こういう本はもっと世の中に多く出回るべきだと思ったときに,そういう人たちが参入できるようにしておいた方が,絶対に私もいいと思います。場合によっては,金原構成員のところが,ほかの出版者がやったものを新たに,私の言うデジタル復刻とか,デジタル重版なんですよ。そういうことができるようになってきているわけだから,それは私も,やりやすくする方向でまとめていった方がいいだろう。
そのときに,1番の権利集中処理というのは,これは出版権だとか,それから,ほかの権利も全部そこに預けておいて,どういう権利が,もう使えるのかというのがわかるようになっているのが,権利処理の集中機構だと思います。
[2]番は,そうではなくて,それを円滑にやるために,その著者がだれで,どこにいるかがわかるような仕組みを2番で用意しているんだろうと思います。だから,著作権に伴う様々な権利は,ここには多分,移譲されていないんですよ。ただ,どこのだれが,その権利を持っているかがわかれば,新たにデジタル復刻しようとするところは,ここに問い合わせて,その著者と連絡をとることができるわけですよね。里中構成員が言われるように,著者と直接交渉して,じゃあ,こういう条件でデジタル復刻しましょうというふうにやれるわけです。
3番目の孤児作品は,だれのものかもわからない,もちろん,どこにいるかもわからないようなのが孤児作品だと思います。こういうものは私,基本的に,この3層構造というのか,2層構造の中の上が2つに分かれているというのでもいいように思いますが,座長言われるように,場合によっては3層構造なのかもしれませんけれども。
やはり,それぞれ違うケースですので,こういう書き分けというか,切り分けは,必要になるし,私が前々から言っているデジタル復刻,デジタル重版という,その可能性って,私はものすごく魅力的だと思うんですよね。実は結構,それを求める読者はいると思います。それが紙での重版だと,出版者,二の足を踏むんですけれども,今やデジタル復刻であれば,そのハードルは下がってきているし,そういうビジネスに参入したがっている人たちはたくさんいるわけなので,そういうところへの開放を考えていきましょうという趣旨だと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,続きということで。
【里中構成員】
済みません,続きで,ごめんなさい。
もちろん,糸賀構成員の言われることは,本当に,そうなればいいな,そうできるだろうと信じているんですね。ただ,こういうふうに新しい仕組みをつくるときに,世間一般が納得するかどうかということを考えた場合に,理由として,簡単に言ってしまえば,今のままだったら出したいデジタル出版物も出せないからという理由だと,ちょっと弱いと思うんですよ。
なぜなら,可能なんですよね。今,作者を探すのも,もう非常に簡単といいますか,情報社会で,ネットで探せば,本当に,すぐ見つけられると。だから,それでも見つけられない方は,本当に,もうこの世にいらっしゃらないか,行方不明になっているかで,窓口ができたとしても,恐らく所在をつかむことは不可能だろうなと思われる方たちだと思います。
孤児出版に関しましては,もっと使いやすい仕組みができるというのは,これはもう,みんな納得すると思うんですが,それ以前の1と2において,どうしても窓口が必要だという説得力を考えた場合には,この窓口ができれば,デジタルの出版物,デジタル重版が速やかにできるんだと言い切っちゃうのは,いかがなものかなと思っています。
今だって,本当に速やかに,簡単に,民間と著作者との間でできているわけですので,その辺をわかりやすく,かつ説得力をもって,窓口の必要性というところまで持っていくとすると,ちょっと心配なので,今,幾つか質問させていただきました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,三田構成員。
【三田構成員】
2つに分かれるか,3つに分かれるかというのは,私は瑣末(さまつ)なことだろうと思います。
私が指摘しておきたいのは,また1968年生まれの書物に戻るんですけれども,膨大な量の電子書籍というか,画像があるわけです。しかし,その中の大半のものは,1回もダウンロードされないようなものだろうと思います。1回も読まれなくても,送信可能の状態に置くわけですから,現在の法律によると,国会図書館がやったとしてもアウトであるということであります。
だから,権利処理をしなければいけないのですが,1回も使われないもののために権利処理をする,あるいは1回使われる。これ,値段幾らにするかわかりませんけれども,例えば100円にしたら,その100円を著作者に分けるために,あらかじめ登録をしていただく。そのために電話をかける,契約書を交わすと。これは現実的ではないだろうと思います。
国が関与して,さあ,やりますよと。これは図書館における公共貸与権のような一種の権利制限かもしれませんが,それからアメリカのグーグルがやったようなオプトアウトと言えるものかもしれませんが,さあ,やります,嫌な人は手を挙げてくださいと言ってやると。しかし,大部分のものは,利用されないからお金を分けることもないんだという状況になるだろうと思われます。
すると,現に出版者さんが販売しているものは,これはオプトアウトしますと。申し出ればいいだけのことであります。
それから,もう流通していないもので,多くの人は,もし読まれるならいいですよと思ったら,黙っていれば利用していただけるということで,これもいいんだろうと思います。
それから,行方不明になっている人も,何も言わないだろうと思います。
たまさか,御遺族の中に変な人がいて,勝手に使ったのはけしからんと言って裁判を起こされる方がいるかもしれない。そのために,100円を積み立てて,クレーム処理費として積み上げていくと。これぐらいのことで対応できれば,国会図書館,1968年までの膨大なデータを国民が利用するということが可能だろうと思います。
あらかじめ契約を結ぶということをやったら,これはものすごいコストがかかって,現実的には流通しないのではないかなと。そこで,評判の悪いオプトアウト方式をせざるを得ないかなと考えております。これについては,皆さんで今後も議論が続くだろうと思います。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
ほかにどなたか,御意見ございませんでしょうか。
本日は,本当にいろいろな御意見ちょうだいできたと思います。どういたしましょうかね。この整理案というものが出されているんですけれども,この原案に,本日ちょうだいした御意見等を加えまして,全体を,この会議の報告書としてまとめることができれば,今後のこの会議の進行のぐあいから言いまして,大変有り難いことと思っておりますが,いかがでしょうか。
きょうの意見を踏まえて,また案をこしらえていただく。次回,それが提示されるという,そういう進みぐあいになるんでしょうか。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
そこのところは,ここで御判断いただければと思いますけれども,きょう出されました御意見,もう少し用語の整理などの御意見もございましたので,これらにつきましては,全体の方向性として,大きな修正とかが仮になしで,そのようなポイントについての修正でよかろうかというお話であれば,それは最終的な報告の整理の際に御提示させていただくということで御了解いただければ,そういう方法もあるかと思っておりますが。
【渋谷座長】
そういうふうに進めることでどうかという提案なんですが,いかがでしょうか。
はい。
【常世田構成員】
基本的には,それでよろしいかと思うんですけれども,やはり新しい時代というんでしょうかね,国民の文化的資源の膨大な蓄積を文化の再生産につなげていくということだと思います。そういう意味では,どなたかもおっしゃっていましたけれども,今までのプレーヤーと違うプレーヤーの参加というのが重要だと。
この4ページの大きい4の2つ目の○ポツの2行目あたりに,各取組にふさわしい主体の参加の促進と具体的に書いてありますけれども,例えば,この電子化されたものを利活用するときには,ここで,この会議でも繰り返し議論されましたように,障害を持った方たちに対しての定義をどうするかとか,そういうようなこと,あるいは出版と全く関係ない産業主体の参加とか,そういうことがあるので,そういう方たちの意見をどう吸い上げるかということが重要なことになるのではないか。できれば,何かヒアリングをするとか,パブコメをするとか,やはり,そういう方たちの意見を吸い上げるということも重要なんじゃないかと思います。
【渋谷座長】
その吸い上げ方ですけれども,民間で何か協議会のようなものがつくられて,そういうところで吸い上げるようなことをお考えなのでしょうか。どういうイメージなんでしょうか。
【常世田構成員】
可能であれば,この場で,そういう従来型でないプレーヤーの方たちの意見を聞くとか,あるいはそういう団体を代表する方に来ていただいてお話を伺うとか,そういうことも1つの手段じゃないかなと思いますけれども。
【渋谷座長】
瀬尾構成員,お願いします。
【瀬尾構成員】
今の,常世田構成員のお話なんですけれども,さっき糸賀構成員も同じようにおっしゃっていて,実は,かなりいろいろな産業の方たちの意見も聞いていかなければいけない話だと思うんですね。それは,やはり,かなり具体的な話になってくると思いますし,私は,この報告書は,今のことを踏まえていただいて,フィックスして,できるだけ早く,その具体的な話のできる協議会のようなものをして,でも,それは民民とは言いながらも,でき得れば,文化庁さんの主導で,経産省さん,総務省さんにもオブザーバーで出ていただいて,それぞれの施策とのすり合わせも,その場で考えていただけるような,そういう民間の会議の中で,今の,例えば障害を持たれている方に対する,どういう配慮が必要なのかとか,そういう方たちの希望は何なのかということまで,その場でヒアリングをして,たくさんのヒアリングを重ねて具体化するのが,多分,私は,具体的にいく一番の近道かなと思います。
ですので,ここはディレクションを行うということで,次へ早めに,先ほど申し上げましたけれども,次の協議会なり,もう少し具体的なレベルに持っていくことが,今の時代,スピード感からいくと,適当ではないのかなと私は一応考えております。
【渋谷座長】
はい。
【糸賀構成員】
今,瀬尾構成員言われることに私も基本的に賛成で,これはもう次のステージで,いろいろと,そういう利害関係者というか,俗に言うステークホルダーの意見を幅広く聞いていくべきだろうと思いますね。
そうしないと,前の国会図書館の国内図書館への送信にしても,もう,そういう法改正なら法改正ということをやっていかなければ実現しないことなので,ここで一応こういう方向性出ましたから,次の検討の素材なり方向性が見えてきたということで,次のステージに進めばいいように思います。
もちろん,常世田構成員が言われるような,いろいろな利用者が想定されますから,そういう人たちの意見も吸い上げていく場面は当然,用意されてしかるべきだろうと思います。
それから,先ほど三田構成員に2層構造でいくか,3層構造でいくか,瑣末(さまつ)だというふうに言われてしまいましたけれども,でも,この構成がわかりにくというところは,確かにあると思います。私も最初見たときに,1番目と2番目,冒頭で金原構成員が言われたとおりで,ちょっとわかりにくいと感じました。仮に,この構成を維持するのであれば,そこはもう少しわかりやすく,最初は権利の処理,2番目は情報を一括して集めて,その権利者がどこにいるのか,どうやって連絡を,コンタクトがとれるのかがわかるシステムだということは明確にした方がいいだろうと思います。
場合によっては,私は完全に3つに切り分けるという,先ほど座長が言われたようなやり方も1つの方法だろうとは思います。
いずれにしても,工夫をすれば,そこはちゃんとわかるだろうということです。
それから,もう終わりなので,若干私,気になるところで,これはむしろ,金原構成員や田中構成員あたりに御意見伺いたいのは,きょうの案の3ページなのです。また瑣末(さまつ)なことだと言われちゃうかもしれませんが,3ページの一番初めの出版物に係る一次的な情報管理は,我々からすると,これは二次的な情報じゃないかというふうに,私はずっと前から思っています。出版物の一次的情報というのは,そこに書かれたコンテンツじゃなくてテキストを我々指すので。ここで言っているのは,後に出てくる,例えば書名だとか,出版者名だとか,出版年月日,あるいは,いわゆる版次ですね。初版なのか,2版なのか,3版なのかとかということだと思うので,これは私は二次的な情報の管理じゃないかと。出版物のテキストそのものは,出版物の一次情報だと思います。
あわせて,このポツがある4番目のところの作品名となっていますが,これは別に,いわゆる文学作品だけを問題にしているわけではないので,これは俗に言う,書名なりタイトルということだと思います。出版物のタイトルを指しているんだと思います。
それから,発行出版社名の社は,やはり,この報告書全部,全体が者で書かれているのに,ここだけ会社の社になっているので,そういったところは,いずれ,ちゃんと直していただいた方がいいと思います。
出版物の一次的な情報と考えるのか,二次的な情報と考えるのかは,少なくとも構成員の中に,そういう出版に携わっている方々がいらっしゃいますので,専門家がいらっしゃいますので,きちんと確認をしていただいた方がよろしいかと思います。
以上です。
【渋谷座長】
出版物に関する情報ではいけませんか。
【糸賀構成員】
それでも結構です。
【渋谷座長】
先生,瑣末(さまつ)なとおっしゃったけれども,これは事務局からすると,大変有り難い御意見だったと思います。
それでは,三田構成員。
【三田構成員】
瑣末(さまつ)なということ,言い方が悪いかもわかりませんが,こういう審議会では,意見が1つにまとまることはないので,細かいところは両論平均のような形で,大体こんな意見が出ましたよということで,もう次のステップに行くべきだろうと思います。
常世田さんが言われた,いろいろな業界の人を呼んで意見を聞くというのは,私はやらない方がいいだろうと思います。なぜかというと,ちょっとここから先,オフレコにしていただきたいんですけれども,今までかかわっていない新たなプレーヤーを呼ぶということは,例えばグーグルさんが手を挙げて出てきて,全部私に任せてください,ただでやりますよと言われたときに,どうするんだといったときに,いや,私は,それはまずいと考えております。
ここには,今までのプレーヤーがいるんですね。今までのプレーヤーというのは既得権を持っております。しかし,この既得権をみんなで少しずつ供出して,それで国民の利便性のために新たな便利な使いやすいシステムをつくろうということで,みんな少しずつ身を削って,公共のために何か新しいことをやろうということなので,そういう既得権も何もない新たなプレーヤーが出てきて,全く別のことをやるというふうに提案されたら,今まで我々が議論してきたことが全部ひっくり返ってしまう可能性があると思います。
だから,私は,もうこの辺でやめておいた方がいいのではないかと思います。
以上です。
【渋谷座長】
常世田構成員。
【常世田構成員】
気持ちは大変よく理解できるんですけれども,私が申し上げたのは,プレーヤーというのは,ユーザーでもある,恐らくエンドユーザーでもあるし,二次利用するような,半分プレーヤーで半分利用者というところもある,そういう人たちもいるでしょう。
例えばゲーム会社なんかが,膨大な知的資源を使って,何かゲームを使っていくということもあるかもしれない。ですから,そういう意味では,既得権を持っていらっしゃる既成のプレーヤーの方たちの収入が増えるということに結びついていく。
それから,日本は自由主義経済の国ですから,やはり新しいプレーヤーが来て,新しい事業をしていくということにストップはかけられない。だから,三田さんはオフレコでとおっしゃったんだと思いますけれども。その辺はバランスがとれた形で,やはり何かのパブコメでもいいので,やる必要があるのではないかなと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
4ページの一番下のところに[1]として,各取組にふさわしい主体の参加の促進。この主体というものについて,いろいろなプレーヤー,利用者を読み込んでいくと,そういうことではないかと思いますね。ですから,この主体という言葉について,我々がそういう意味合いの用語であるという了解がつけば,これでいかがかという考え方もあり得るかと思うのですが,いかがでしょうか。常世田構成員,そのあたりは,よろしゅうございますか。ありがとうございます。
それでは,はい。
【里中構成員】
済みません,瑣末(さまつ)なことでもと言われたので,ほんのちょっとだけ。
先ほど来心配しておりましたのは,これが一般社会に対して,既得権者が集まって,何だかうまくやろうとしているかのようにとられるとまずいなと,そういう余計な心配があります。
ですから,ビジョンとして,こういう情報が外に出るときに,なぜこういうことをしようとしているのかというあたりで,世のため人のためと言うと古臭い言い方なんですけれども,やはり我が国がずっと過去において積み重ねてきた知識とか知恵とか,そういうものを広く多くの人がより生かせるようにと,そういう知的環境を整えるためにも,様々な取組が必要であると。
もったいないわけですよね,過去のいろいろな知識とか,知恵とか。たとえ100年に1人しか読まないものであっても,それもみんな,すべて含めて,我が国の知識の結晶だと思います。
デジタル化するというのは,その情報を半永久的に保存し活用するためにあるわけですから,それをいかに使いよく,かつオープンに,公平にやっていくかという仕組みを,そのために考えているのだというのが,余計な文章になるかもしれないですけれども,どこかに入った方が,理解は得やすいかなと感じておりますので,本当に瑣末(さまつ)なことで申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
何か瑣末(さまつ)という言葉が大はやりですが,決してそのようなことはないわけで。構成員の意見,よく酌み取られて,案がまとまるとよいと思っております。
それでは,いかがでしょうか。こきょうの御意見踏まえた上で,もう一度取りまとめることになりますが,そういうものとして,御了承いただいたものと理解してよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,本日のこの議事の1つ目は,一応ここで一区切り,終えさせていただきまして,時間が20分強残っておりますので,続きまして,きょうの議事の2つ目なんですが,出版者への権利付与に関する事項についてというものですが,これについて御議論を頂きたいと思います。
それでは,まず事務局から,この資料3につきまして説明をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,資料3につきまして説明をさせていただきます。
まず,この資料3につきましては,1といたしまして,三省懇談会で示された方向性を,改めてここで整理をさせていただいております。出版者への権利の付与を必要とする意見と出版者への権利付与に反対する意見。三省懇談会の報告としては,このような2つの意見が出されておるというところでございます。
必要とする意見としましては,出版契約が促進される可能性がある。出版者が物権的請求権がある差しとめ請求を行い得るようなことで,より効果的に違法複製物対策が可能であるということ。
反対する意見といたしましては,著作者と出版者との間で独占的な許諾契約を結ぶなど明確な出版契約を結ぶことによって,個々の課題に対応が可能であるということ。また,権利関係を更に複雑にし,権利処理に支障が生じる。
このような御意見が三省懇談会で示されており,そして,更に出版契約や流通過程に与える影響,各国の動向について調査・分析をするとともに,その可否を含め検討することが必要であると,報告では述べられておりました。
そして,検討の進め方としましては,このようなポイント等で,まずは示させていただいております。
この検討会議を始めます当初のときにもお話しさせていただきましたが,諸外国の法制も含めた調査研究などを実施させていただきたいというお話もしました。ですから,そのような結果なども含めて,その権利をめぐる現状を適切に把握することが必要ではないか。デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,電子書籍化などの出版物の多様な利用が想定される中,その円滑な流通の促進を図るという視点が重要ではないか。そして,検討に当たっては,「出版者への権利付与」に係る可否を含め多角的に検討することが重要ではないかということを,検討の進め方として整理をさせていただいております。
そして,次のページ,2枚目をごらんいただきたいと思います。
そして,具体の検討に当たりまして,検討が必要とされる論点についてということで,これは事務局の方で整理をさせていただいております。三省懇談会での指摘なども踏まえて,このような項目立てをさせていただいております。
(1)としましては,権利付与の必要性等について。そして(2)としましては,権利付与の具体的な在り方についてということで,整理をさせていただいております。
その内容としましては,必要性というポイントとしましては,出版者の権利付与の意義,そして出版物の流通等に与える影響,国際的な動向との関係性,出版者への権利付与以外の方法という形で,このようなところが検討が必要とされる論点ではないかということで整理をさせていただいておるところでございます。
資料の説明としましては,以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
この今の事務局からの説明にもありましたけれども,本日は時間の関係もございます。そこで,出版者への権利付与に関する事項に係る具体的な論点の内容に関して,いろいろ御意見をちょうだいするということではなくて,今後のこの議論の進め方の方針を決めたいということですので,今,資料の2ページ目で提示されました,この論点の構成等につきまして,御議論を頂きたいということです。なかなか,これは難しいことでして,各論点の内容に踏み込まないと,この論点を提示したことの当否も判断できないということがあります。そうではありますが,できれば,こういった論点について取り上げて進めていきたい。不足するものはないかという観点から,御議論ちょうだいできれば有り難いと思っております。
いかがでしょうか。はい。
【金原構成員】
具体的には2ページ目のところだろうと思いますが,(1)が「出版者の権利付与」の必要性等についてとなっていますが,これはむしろ,出版者への権利付与の意味というか,あるいは意義であって,その中に[1],[2]からずっとあるわけで,[1]に「出版者への権利付与」の意義とありますが,ここがむしろ,必要性あるいは出版者の権利が不在のことによって起きている問題点のようなことを,最初に検討した上で,その上で[2],[3],[4]につながっていくのではないかなと思います。
というのは,[1]は必要性と書いてありますけれども,[3],[4]は,必要性から更に踏み出した検討を加えようとしているのではないかなと思います。意味があって,あるいは意義があって,それで必要性をまず議論した上で,その必要性を満たした場合に,どういうことが起きてくるかということを議論していくのが順番ではないかなと思いますが,いかがでしょう。
【瀬尾構成員】
ちょっとよろしいですか。
【渋谷座長】
はい。
【瀬尾構成員】
出版者さんがこういうふうな権利について必要であるということで,三省懇で意見が出たことをもとにしていると思われますけれども,一番初めの(1)で,いきなり必要性等についてと,ここで要るの,要らないのとぽんと聞かれるというのは,やはり,議論をしていく,何か進行できないような雰囲気が,私はしてしまうんですよね。そういった権利が欲しいという御要望があり,また,それに対しての影響や何かもあるでしょうけれども,とりあえず,まず,どういうふうな出版物,どういうふうなものに対して,どういうふうな権利を,どういうふうに御要望されていて,そして現状はどうであるのかとか,順番にちゃんと検討していかないと。
例えば,ここで出版物への権利付与って,じゃあ,出版物って電子書籍は入るんですかとか,いろいろな話が出てきてしまいますよね。それってどれですかと。じゃあ,絵,動いたら,これ,出版物じゃないんですかとか,非常にややこしい話になってくると,もう全然,まとまる話もまとまらなくなってしまうと思うし,正確な議論ができないような気がするので,私は,この現状とか,それから定義とか,そういうことをきちんと狭めて,必要なものをちゃんと明確にしていった上で,最終的に,これ,必要があるのかないのかというふうに持っていかないと。いきなり必要性があるのかと聞かれて,そこで結論出さなきゃいけないのは,何かちょっとしんどいなという感じは,正直言って,この順序立てはしましたので,これ,ひっくり返して,そういう形にした方が,議論しやすいような気がするんですが。
【渋谷座長】
片寄構成員。
【片寄構成員】
まず必要性云々(うんぬん)の前に,やはり,なぜこういうことを言っている実情,背景があるのかということを,きちっと皆さんに御理解いただくことが必要かなと思っています。
違法サイトや海賊版というものが,多分,皆さんが想像する以上の実態になっておりまして。そういう意味で,その担当者や関係者は,皆さんにきちっと伝えたいと思っています。
なぜ,そういった違法行為が,いろいろな形で継続して行われているのかという背景も含めて,権利が付与される意味を訴えると思いますので,是非,海外での契約の実態だとか,アンケート調査とか,いろいろ調べておりますので,まずそれをヒアリングしていただくのがいいかなと思っております。
【渋谷座長】
その意義のところを遵守してもらいたいということでもありましょうか。
【片寄構成員】
実情を,まず御理解いただきたいと。
【渋谷座長】
なるほど,実情ですね。
そうすると,瀬尾構成員の御発言の中にありましたが,この出版者というけれども,これは既存の紙本の出版者を言っているのか,これからの電子書籍の出版者を言っているのか。
【瀬尾構成員】
そうですね。結局,出版物。例えば出版物すべてにといって,その出版物というのは紙であって,ボーンデジタルなものは含まないのかとか,非常にいろいろなことが出てくると思うんですね。今,出版が,何せ,こんな電子書籍の会議を持たなければ整理がつかないぐらい複雑化している中で,そして,いや,隣接権を持って。それは当然,それに対して検討するんですけれども,まずきちんと,そこら辺の御提案,こういうものに,こういう権利が,こういう理由で必要なんだということがなくて,いきなり出版者への権利付与の必要性がありますかと(1)で,まず出てくると,何もなしで,これを読むと,非常にしんどいというか,逆に非常に簡単だというか,そういう話になってしまうと,多分この話は成り立たないので。
ちょっと手順を考えて,今,片寄構成員のおっしゃった,なぜこれが必要なのかという話のヒアリングとか,どういうものに,どういうふうであるのかという定義,どこまでの範囲をどうお考えになっているのかとか,もっと具体的に御提案いただかないと,正直言って,議論にならないんじゃないかなという気がしたので,順番を,そういうところからなさったらいかがかという御提案をさせていただきました。
【渋谷座長】
片寄構成員のおっしゃる,その実情というのも,紙本の出版者にとっての実情と,そういう観点ですよね。
【片寄構成員】
そうですね。多分,今,侵害されているものは,紙の出版物のデジタル化の部分で侵害されているということ。
【渋谷座長】
はい。
それでは,別所構成員,お願いします。
【別所構成員】
挙げていただいた論点は,多分こんなものなのかなと思っているんですけれども,瀬尾さんがおっしゃったように,多分,順番が重要かなと思っていまして,今お話がありましたように,実態がどうなのかというところを教えていただくことから始めていただければ有り難いなと思っています。
今,紙をベースにというお話でしたけれども,多分,今から議論するときには,その紙がデジタルに移って,もし同じことが起きるのであれば,出版物と言っているものは,実は紙だけではないという話が延長線上にあるんだと思うんですね。もしそうなってくると,デジタル化されたものってどこで切ると出版物と切れるのかみたいな話とかにもなってくるんだと思っていますし,何をこの権利付与をすることによって実現できるのかという想定も含めて,現実に困っていらっしゃることを実は教えていただきたいと思っています。
三省懇の方でも,出版契約が促進される可能性があるということと,物上請求権があることで違法物対策が可能になるという2つの論点が挙げられていますので,ここが具体的に,どういう事実があって,どういうことが期待できるのかというところを明らかにしていただければ有り難いと思っていますし,一応,既に反対意見が三省懇の中でも出ていますので,これの反対意見に関して,現実,実情を踏まえて,どのように考えていらっしゃるのかというところも,あわせて教えていただけると,その先の検討が進みやすくなるんじゃないかと思いますので,そういう形での議論の順番を少し整理いただくと有り難いなと思います。
【渋谷座長】
ありがとうございます。
それでは,三田構成員,お願いします。
【三田構成員】
きょうは,もう時間がないので,これ以上話は進まないだろうと思いますが,一言だけ申し上げておきます。
デジタルの時代なり,ネットが発達することによってコピーが流出するということが,もう現に起こっております。いろいろな物を売るサイトに違法のコピー,紙の本をスキャナーで撮ったようなものが多いのですけれども,そういうものが出ております。
現状では,例えば外国のサイトにそういうものが出ていますと,日本の法律だけでは対応できない状況になっております。そういうときに,アメリカとの出版契約,それから流通のシステムとか,そういうものと,日本がこれまでガラパゴス的にやってきたこととは随分違います。その違うという点があって,流出等に対して,アメリカの出版者ならばすぐ差しとめができるのに,日本の出版者ではできないということが現実に起こっております。これは何とかしなければならないことでありまして,これは著作者にとっても,出版者さんに権利を持っていただいて対応する以外に,著作者が個人でこれに対して問題提起をするということは,現実的に不可能であります。
ただ,アメリカとそっくり同じようなシステムを導入すればいいのかというと,私の知る限り,日本のシステムは,これまでのガラパゴス的なシステムは,出版を繁栄させるという意味では,非常に有効に機能してきたんですね。ですから,次回以降,アメリカのシステムと日本のシステム,どこがどう違って,現実に起こっている流出等の問題に対して,こういう対処の違いがあるんだということを踏まえた上で,よいところと,これは困るというところを突き合わせながら,みんなで議論をしていくことが必要だろうと思います。
しかし,何らかの形で出版者さんに権利を持っていただかないと,これからの時代は対応できないということは,著作者の側(がわ)も理解をしておりますので。出版者に権利が必要かといったときに,いや,要らないだろうという議論は私はしませんし,もっと出版者に,どういう形で権利を与えるのかについて,前向きに議論を進めていただきたいと考えます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
はい。
【糸賀構成員】
今,いろいろな方が言われて,やはり,この問題,扱うアプローチって,なかなか難しいなと思いますね。
1つは,瀬尾構成員言われるように,定義の問題でして,この場合,デジタル化,ネットワーク化が進んだときに,出版者という概念は,どういうふうになるのか。そもそも電子出版は,個人でPDFをホームページにアップした時点で,もう出版なのかということにもなるわけなので,まず議論の範囲をある程度限定しないと,拡散するだけのような気は,私もいたします。
それと,ここでのこの場の議論は,権利付与と言ったからには,これは法改正を伴って法的な権利を付与するという意味なのか。そうではなくて,ここには出版契約が促進される可能性があるとも,一番初めの三省懇の方向性で書いてあります。だったら,私は,当事者間の出版契約で,そういうことを盛り込めば済む話なのではないかという気も,一方でするわけです。
ただ,私によくわからないのはこうやって権利付与を明確にすると,出版契約は本当に促進されるんですかね。むしろ,権利付与がはっきりすれば,何も契約交わさなくても,もう,ちゃんとその権利は与えられているということにもなるので,その辺の関係が,よくわかりません。
だから,今,法律の世界で,ハードローでいくのか,ソフトローでいくのかといわれていますが,これはハードローの話をしようとしているんだろうか。果たして,そうしたときに,こういう集まりで,ハードローの改正の話ができるんだろうか。
一方で,何らかの出版者――出版者の定義はともかくとして,出版者に何らかの権限を与えるような契約を促進すると。これは,著者と出版者,そうした世界での一定のスタンダードというか,やはり標準的なものをつくり上げていこうと,そういう方向性なのか。つまり,ソフトローの方ですよね。それとも,いずれは法改正にもっていくハードローの話なのか。それによっては,大分議論の組立ても変わってくるだろうし,そうではなくて,当事者間で民間と民間との間での契約ベースで済むのであれば,そういう方向の議論も成り立ち得るように思います。
ちょっと素人考えかもしれませんが,やはり議論のこのアプローチの仕方というのは,なかなか難しそうに感じました。
【渋谷座長】
ただいまの御意見,このペーパーですと,2ページの[4]の出版者への権利付与以外の方法というのがありますね。[4],2ページ。
【糸賀構成員】
[4]?
【渋谷座長】
3の論点のところの[4]。
【糸賀構成員】
はい。
【渋谷座長】
そのあたりに関連する御指摘ですね。
【糸賀構成員】
そうですね。だから,この場合の権利付与というのは,法的にちゃんと権利を与えると,そういうことですね。いわゆる著作隣接権の何か与えると。
【渋谷座長】
ありがとうございます。
はい。
【金原構成員】
きょうは,もう時間もありませんので,内容的には踏み込まない方がいいと思いますが,先ほどから話が出ています,この順番の問題で,必要性と意義の入れかえた方がいいということについてですが,その必要性のところについては,紙媒体なのか何なのかという話がありましたけれども,基本的には,この第三者による利用に対する対応ということから言えば,紙でも,電子でも,私は同じだと思います。
紙で,今どういう問題が,これまであったのか。それから,今ここで議論しているのは電子ですから,電子になったら,更にこういう問題がつけ加わって出てくると思います。
先ほど三田先生もおっしゃっていましたけれども,違法配信。これは紙にはないことですけれども,電子ではそういうことが起きやすいので,更に,これまでの問題に加えて,出版者が果たすべき役割,あるいは責任について,それを議論した上で,ついては何らかの法的背景が必要なのではないかという議論に結びつけていくのが順番ではないかなと思いますので,やはり,この現在の1番と2番の間に,必要性,現状,問題点,ついては,どう対応すべきかということを少し,私ども出版界から提示させていただくことが,わかりやすくなるのではないかなと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
では,そのように論点を組み立てて,そして会議の進行を図っていくことにしたいと思いますが,事務局の方は,今のような議論でよろしいでしょうか。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
はい。今頂いた御意見を踏まえまして,このペーパーとしての整理は,場合によっては,次回また御確認いただいた上で,フィックスなりできるような形をしていければと思いますが,頂いた御意見をうまく反映できるような形で,論点の項目立てをしたいと思っております。
【渋谷座長】
そういうことでございますので,よろしゅうございますね。
それでは,大変ありがとうございました。そろそろ時刻が参っておりますので,本日は,このぐらいにいたしたいと思います。
事務局から連絡事項がございましたら,よろしくお願いします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,次回ですけれども,既に御案内しておりますとおり,7月11日(月),場所は本日と同じくグランドアーク半蔵門,17:00からということです。よろしくお願いいたします。
また,次回の検討会議での扱います内容ですけれども,本日,現状ですとか背景,そういったものからというお話がございました。私の方からも途中ちょっと触れさせてもいただきましたが,昨年度,文化庁の方で諸外国の法制度についての調査を行いましたので,その内容の報告。それから,書籍協会さんの方に海外の出版契約の動向などについての調査もお願いしておったところでございます。片寄構成員からお話のあった部分かと思いますので,そのあたりの報告を次回させていただいた上で,現状といいますか,を踏まえ,そして具体的な議論に入っていければと考えております。よろしくお願いいたします。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,これをもちまして第9回の会議を終わらせていただきます。本日は大変ありがとうございました。

── 了 ──

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