電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第10回)議事録

1.日時
平成23年7月11日(月)  17:00〜19:00
2.場所
グランドアーク半蔵門 光の間
3.議事
  1. (1)「出版者への権利付与に関する事項」について
    1. [1]諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査について
    2. [2]海外の出版契約の実態について
    3. [3]出版者への権利付与等について
  2. (2)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,片寄聰,金原優,里中満智子,渋谷達紀,杉本重雄,瀬尾太一,田中久徳,中村伊知哉,前田哲男,三田誠広

平成23年7月11日

【渋谷座長】
それでは,ただいまから電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議第10回を開催いたします。
本日は,ご多忙の中,また,この暑い中ご出席をいただきましてまことにありがとうございます。
議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところですが,特にご異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
なお,カメラ撮りにつきましては,会議の冒頭までとさせていただきますので,ご了承願います。
まず,事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,議事次第に書いてありますとおり,配布資料の確認をさせていただきます。
まず,資料1といたしまして,検討会議第10回の進め方について。
資料2といたしまして,諸外国における著作権法等に関する出版者の権利の調査報告,イギリス,オーストラリア,アメリカの資料です。
資料3といたしまして,出版者の権利および出版契約についての資料です。
資料4−1といたしまして,欧米における出版契約の実態についての資料です。
資料4−2,欧州3カ国における出版契約の概要。
資料5,出版者への権利付与に関しての1枚物の資料です。
資料6,インターネット上の主に漫画についての権利侵害状況報告と題しました資料。
そして資料6(別紙)としまして,カラー刷りの資料を用意しております。
また,参考資料といたしまして,本検討会議の構成員名簿を配布させていただいております。
また,メーンテーブルの方たちにつきましては,文化庁委託事業として行いました最初に報告させていただきます調査研究の報告書本体を配布させていただいております。
また,前回の会議で検討の論点の資料についてご意見をいただきまして,修正後,次回に提出させていただくというお話をさせていただきましたが,議論の論点の資料につきましては,本日の意見交換なり質疑応答などの結果を踏まえた上で次回に提出させていただきたいというふうに考えております。
配布資料につきましては以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
よろしゅうございましょうか。
それでは,本日の議事に入りたいと思いますけれども,本日は,議事次第にもありますように,昨年度,文化庁と日本書籍出版者協会におきまして実施いたしました「海外の出版者の権利等に関する調査研究」というものがございますが,これにつきまして,学者の先生お二方と,それから出版関係の代表者お三方に報告をしていただきたいと思っております。
それではまず,事務局のほうから,本日のご報告の進め方について説明をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,まず資料1をごらんいただきたいと思います。本日は大きく3点につきまして,報告,説明をいただきまして,それにつきまして質疑応答,意見交換をというふうに考えております。
まず最初に,諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査研究につきまして,明治大学,今村准教授,それから国士舘大学,三浦教授に,それぞれ15分程度ずつご説明をいただいた後,約30分程度,質疑応答と意見交換をお願いできればと思っております。
そして続きまして,海外の出版契約の実態につきまして,日本書籍出版協会,樋口事務局長からご説明いただいた後,質疑応答,意見交換をというふうに進めていければと思います。
そして最後に,出版者への権利付与についてということで,日本書籍出版協会から資料を提出していただいておりますので,これにつきまして,酒井様,それから恩穂井様から,ご説明,補足説明をしていただければと思います。
また,3番の説明につきましては,その後の意見交換の補助者といたしまして,平井様,それからおくれておりますが村瀬様にも席に座っていただいております。
以上のような形で進めていければというふうに考えております。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,早速,今村様よりご説明をお願いします。
【明治大学今村准教授】
明治大学情報コミュニケーション学部の今村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
まず,私の報告では,「諸外国の著作権法等における出版者の権利及び出版契約に関連した契約規定に関する調査研究」を行った中で調べましたイギリス,オーストラリア,アメリカの部分につきまして,ご報告したいと思います。
時間の関係上,詳細は配布いたしました報告書本文の記述と,それに記載されている参考文献等に譲ることといたしまして,ここでは,これらの3カ国の制度の大枠について,レジュメで申しますと1ページ目の出版者固有の利益の保護という点と,2ページ目の下のほうにあります被許諾者等の訴権という部分の2つに分けてご紹介申し上げたいと思います。
まず,出版者固有の利益の保護でございます。イギリスについて説明をしていきます。
イギリスでは,まず第一に,発行された版の印刷配列の保護がございます。その沿革は,ここにある次のとおりなのですけれども,まず,1880年から1920年にかけて,イギリスでは,アーツ・アンド・クラフツ運動が高まり,活版印刷のデザインそのものに発展がありました。
そして,第一次世界大戦以降は,いわゆるフォトリソグラフィ技術の発展に伴い,いろいろな問題が生じてきたところでございます。
石版術,このフォトリソグラフィのリトグラフというのは,水と油の反発利用を利用した版画の一種であって,磨いた石の版材に油脂分の多い墨で描写し,脂肪性のインクを加えて印刷する印刷法なわけでございますけれども,フォトリソグラフィ技術というものは,版に文字をかいていく作業を写真の技術で代替した結果,簡易に版を製作して製版を行い印刷に用いることが可能となったということのようでございます。
このフォトリソグラフィ技術の発展によりまして,出版業界では,活版印刷技術の技術や労力が他者に流用されるという状況が生じたわけでございます。その後,法的な保護に向けた具体的な動きが生じまして,まず,1935年に出版者協会の証言に基づいて,イギリスの国際著作権部門別委員会が,活版印刷のデザイン保護を,これはベルヌ条約に導入するべきであるというような勧告を行いました。もっとも,これはベルヌ条約に導入されてはいないんですけれども,そのような動きがありました。
具体的な法制化の動きが実現したのは,1952年の著作権委員会,これは通称グレゴリー委員会と申しますが,この報告書に基づく1956年の著作権法15条でございます。同法の規定は,その後の1988年の著作権意匠特許法,以下CDPAというふうに申し上げますけれども,このCDPA8条において,発行された版の印刷配列の保護として引き継がれている状況でございます。
発行された版の印刷配列は,まさに書物で言えば,その版面について出版者が固有の権利を有するということで,仮に版面の印刷等について権利処理をするとしたら,出版者の固有の権利と著作者の権利,両方の権利を処理するということが生じるというわけでございますが,まず,この発行された版の印刷配列の保護の保護対象ですけれども,保護される版には,一定類型の著作物を含むことが必要となっております。
具体的には,文芸,演劇または音楽の著作物を含む必要がありまして,この中には美術の著作物が含まれていないという特徴がございます。
また,既存の版をコピーしたとしても,発行された版の保護が与えられるということはございません。
発行された版の印刷配列の権利は,その発行者に帰属するということになります。
その発行された版が侵害されるその保護範囲ということになりますと,実質的な部分か複製された場合に侵害が成立すると考えられておりまして,この実質的範囲がどこなのかということが問題になるわけですけれども,量的な問題よりも,むしろ質的に行われるというふうにしている裁判例があります。
具体的には,版の体裁やレイアウトに関する技能や労力の投資の保護や補償といった著作権保護が与えられている趣旨というか,理由を考慮して,その実質的な部分の複製かどうかということを質的に判断するということのようです。
この発行された版の印刷配列の保護期間ですが,最初の発行から25年間となってございます。
権利の内容については,この発行された版の印刷配列に関する権利は,イギリスでもコピーライトというふうに位置づけられているんですけれども,その権利の内容は,通常の著作物のコピーライトとは異なり,複製と複製物の公衆への頒布という形で限定がなされています。ここでいう複製というのは,その配列のファクシミリ複製物を作成することでありまして,ここでいうファクシミリ複製物というのは,縮小され,または拡大された複製物を含むとされております。
そして,教科書などの記述を読みますと,複写,写真複写,デジタルスキャン,ファクスや,それに類する限られたものによる複製に限定されると考えておりまして,他方,原稿を再入力すると侵害は避けられるというふうに教科書などには書かれていたりします。
発行された版の印刷配列の利用料や集中処理機構についても,これを報告書の記述のほうに譲りたいと思うんですけれども,発行された版の印刷配列を利用する場合には,内容を成す著作物とは別途の権利処理が必要となりますし,この発行された版の印刷配列の権利に関しても,イギリスでは集中処理機構などによって管理がなされているところでございます。
そのほか出版者が取得することができる固有の権利として,次に述べるパブリケーションライツというものもございます。この権利は,著作権の保護期間消滅後に,それまで発行されたことのない著作物を発行した者に対して与えられる権利でございます。この権利の導入は,ECの保護期間ディレクティブ,これは1993年のものですが,ここにパブリケーションライツという権利が定められたところ,イギリスにおいても1996年の著作権及び関連権規則というものにおいて,このパブリケーションライツを導入したというのがその沿革になっております。
パブリケーションライツの保護要件は,著作権があくまで終了した,かつ未発行の著作物を発行したということになっております。要件の詳細については報告書をごらんいただければと存じますが,その他のパブリケーションライツは発行者に帰属すること,あるいは,保護期間は最初の発行から25年ということになっております。
このパブリケーションライツの権利の内容なんですけれども,こちらは通常のコピーライトの場合と同様ということで,先ほどの発行された版の印刷配列のような限定はないということになります。ただ,他方で,イギリスでも保護のありますモラルライツに関しては,パブリケーションライツには含まれておりませんので,モラルライツについては権利行使ができないということになります。
次に,オーストラリアの立法例のほうに入ってまいりたいと思います。オーストラリアの著作物の発行された版の著作権というものでございます。
この権利の沿革でございますが,これは1959年にオーストラリアのSpicer委員会の報告書によって,発行された版の保護に関する勧告がなされたと。これが1968年に制定された著作権法に導入されたという経緯でございます。
この導入の経緯なんですけれども,Spicer委員会のほうでは,イギリスの1956年の著作権法を引き合いに出しまして,これと同様の方針で発行された版に関する著作権保護を導入したということになっております。したがいまして,大体の内容はイギリスの場合と同じということになるんですけれども,若干違う部分もございますので,その点なども踏まえてご説明をしたいと思います。
オーストラリアの発行された版の保護なんですけれども,その保護対象は,言語,演劇,音楽または美術の著作物の版ということになってございまして,イギリスの場合と異なり美術の著作物も条文上は入っているというところが違うようでございます。
また,イギリスと同じ点としましては,既存の版をコピーしてもこの権利は与えられないとなっております。
この権利は,発行者に帰属いたします。
また,保護範囲は,イギリスの場合と同様,実質的な部分の複製により侵害が成立するとされております。
保護期間は,最初の発行から25年。
権利の内容でございますが,これは著作物の発行された版の著作権については,オーストラリアでもコピーライトというふうに位置づけられているんですけれども,その権利の内容は,複写コピーを作成する排他的権利に限定されております。
なお,この「複写コピーを作成する」という文言については,1999年の法改正で変更したものでありまして,1968年の著作権法では,写真工程を含む手段によって版の複製物を作成する排他的権利とされていたものが,技術の発展に対応するために版の複写コピーを作成する排他的権利という形に拡大されたようでございます。
この1999年の法改正に先立って,著作権リフォーム委員会でこの著作物の発行された版の保護に関する議論が幾つかありまして,一方では保護を拡大する議論,他方では保護を縮小する議論があり,保護を拡大する議論としましては,先ほど申し上げましたように,「写真工程を含む手段」という文言について,単に版の複写コピーを作成するという形で変更してみたり,あるいは,この権利はより広いものであるという含意なのかもしれませんが,同委員会の報告書の認識としては,発行された版の保護はいわゆる著作隣接権(neighbouring right)であるというような記述もこの委員会の報告書にはあったりしております。
他方で,保護を縮小する方向の議論とレジュメには書いているんですけれども,これはまず正当化根拠などというようなことで,技術も発展したということもありまして,この権利の正当化理由はまだ維持されているのかどうかということも取り上げられたようでございますが,同委員会の審議項目ではないということで,ほとんど議論せずに素通りしてございます。
あと,限定する方法としては,著作権が存続している場合への限定や,あるいは,一定のサービスのメディアモニタリングサービス,これは新聞などのコピーの切り抜きを提供するというサービスなんですけれども,これに関して版面の利用に関する強制利用許諾を与えるべきなのではないかというような議論もございましたが,これらは実現はされていないということになっております。
最後に,被許諾者等の訴権という部分に入ります。被許諾者というのは,ライセンサーに対するライセンシーということで,著作物を利用する被許諾者ということになります。ここはざっと見たいと思うんですけれども,著作権の譲受人は,アメリカ,イギリス,オーストラリアいずれの国でも当然訴権を有するということになります。また,これらの3国では,独占的な被許諾者,独占的ランセンシーも訴権を有するということになっております。
基本的に契約条項第三者不適用の法理がございまして,この排他性は第三者に及ばないというのが原則なわけですけれども,これは法律の規定に基づいて,特に独占的な被許諾者に訴権を与えるという枠組みを用意することによって例外を設けているということになります。
他方,非独占的被許諾者,これは独占的ではないランセンシーというものなんですけれども,アメリカとオーストラリアでは,非独占的被許諾者には訴権がないのですが,イギリスでは一定の要件を満たしている非独占的被許諾者には訴権が与えられるという枠組みになっておりまして,これはアメリカやオーストラリアとは違う部分ということになります。
以上,非常に短い報告ではありましたが,私のほうからはこの3国に関するご報告をさせていただいた次第でございます。
【渋谷座長】
大変ありがとうございました。
それでは,引き続きまして,三浦様よりご説明をお願いします。
【国士舘大学三浦教授】
国士舘大学法学部の三浦正広と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私の担当は,大陸法,成文法系のドイツ,フランス,イタリア,スペインでございます。各論はお配りされております報告書にゆだねることにいたしまして,今日は時間も限られてございますので,全体の概要,あるいは総論的な部分についてご報告させていただきたいというふうに思います。
調査しました項目としましては,出版者の権利,出版契約ということで調査いたしました。その出版者の権利についての調査ということで,項目としても,出版者の権利を挙げておりますけれども,ここでいう出版者の権利と言いますのは,先ほどから話がありますように,1993年のEU保護期間指令に基づいて設けられている権利に関するものということになりまして,ここで出版者の権利という表現は必ずしも適切ではないかもしれません。そのEU保護期間指令で出版者の権利と思われる関連する規定は,4条と5条にございまして,これは今日お配りしましたレジュメの1枚目のドイツの中に入れてあるんですが,4条では,未発行の著作物の保護について,5条では,批評的及び学術的著作物の保護に関する規定です。
4条の規定は,これは先ほどから今村先生からお話がありましたように,著作権の保護期間が満了した未発行の著作物を適法に発行し,または適法に公に伝達するものは著作者の経済的権利と同等の保護を受ける。この権利の保護期間は,著作物が最初に発行され,または最初に適法に公に伝達されたときから25年とするという規定でございます。
この4条の規定は,EU加盟国が国内法で規定することが義務づけられている規定でありますので,今回対象の4カ国はすべて4条の規定を国内法で規定しております。
5条ですけれども,批評的および学術的著作物,これは,「加盟国は,公有に帰した著作物の批評的および学術出版物を保護することができる。この権利の最長の保護期間は,出版物が最初に適法に発行された時から30年とする」という規定であります。
この規定を導入するかどうかは国内法にゆだねられているということになっておりますので,ドイツ,イタリアは5条の規定を国内法で具体化して規定しておりますけれども,フランス,スペインは5条については規定しておりません。
4条に関しましては,発行者の権利,未発行著作物の発行者の権利ということでいいと思うんですが,5条に関しましては,単に発行者ということではなくて,例えば学術的著作物などを見ますと,これはドイツの例なんですが,古い学術的な文章に注を施して発行するとか,内容を編集し直して発行するというような,ある程度,学術的な修正などが施されて発行されるということが前提となっておりまして,単なる発行者ではなくて,学術的著作物の作成者に権利が認められるというような規定が置かれております。
次に,出版契約に関してですが,我が国の著作権法では,ご存じのように,出版権に関する規定は置かれておりますけれども,出版契約そのものに関する規定があるわけではありません。これは大陸法系諸国の著作権法の特徴としては,この出版契約が著作権法の中に規定されているということでございます。ドイツ法は1901年に旧著作権法が制定されまして,その1901年の旧著作権法とペアで出版法という法律が制定されておりまして,著作権法本体の中に出版契約に関する規定が含まれているわけではありませんけれども,ほぼ同様の構成であるというふうに考えてよいかと思います。
出版契約が著作権法の中に規定されているということの意味ですけれども,本来,契約については,民法典に規定がございます。我が国の場合も,民法典の中には13の典型契約がございます。が,もちろん出版契約はその典型契約には含まれておりません。有斐閣が出版しております『注釈民法』では,旧版でありますけれども,出版契約は特殊な契約という位置づけになっております。そのように出版契約は特殊な契約の類型であると。
何が特殊かといいますと,本来,契約の原則としましては,契約自由ということになりまして,出版契約に関しては,著作者と出版者の間で相手方の選択,あるいは内容の決定など自由に決定するができるというのが本来の契約なんですが,出版契約ということになりますと,これは4カ国ともにそうなんですが,著作者契約という考え方が用いられておりまして,契約内容が不十分であったり,契約内容に不備があった場合には,著作者保護の原理が働く,すなわち契約の自由が制限されているというのが大きな特徴であります。
契約でありますので,基本的には出版者の義務,あるいは著作者の義務というものが規定されております。
大きな特徴といたしましては,出版契約によって出版権が設定されて,それが出版者に移転するという構成がとられるんですが,ドイツ法に関しましては,我が国の出版権と同じように,排他的な権利であるというふうに構成されておりますけれども,フランス,イタリア,スペインの場合は,出版契約によって出版権が設定されるということになっていますが,その出版権の性質としましては,必ずしも排他性を有するものではないという構成になっております。排他性を有するかどうかは,当事者間,著作者と出版者の契約によって定まるというような規定が置かれております。
以上が概論でありまして,次に各国のそれぞれの出版者の権利,出版契約の特徴を1つ1つ見てまいりたいと思います。
まずドイツ法ですけれども,各国それぞれ契約規定あるいは契約慣行に違いがありますので,そのままストレートに比較するということはもちろんできないわけでありますが,ドイツ著作権法の特徴としましては,1965年に現行著作権法が制定されますが,その際に,著作権一元論という考え方が採用されております。これは,著作者の権利は,著作者人格権と財産権としての著作権が渾然一体となった1つの権利として構成されているというところに特徴があります。したがいまして,著作者の権利は譲渡することができないというふうに構成されます。出版権,複製権など,個別的に契約当事者の間で設定的移転の契約が行われるということになります。
そのような理論のもとで,出版者の権利がドイツ著作権法71条に未発行著作物の権利,70条で学術的発行物の保護について規定がございますが,ドイツ法では,これらの権利は著作隣接権というふうな位置づけになっております。
次にフランス法でありますけれども,フランス法は,ドイツ著作権とは異なりまして,著作権二元論という考え方が採用されておりまして,著作者の権利は,著作者人格権と財産権としての著作権,2つの権利が融合した権利,2つの権利を合わせて著作者の権利というふうに称します。したがいまして,著作者人格権は一身専属的な権利でありますので譲渡することができませんが,著作権はその全部または部分を譲渡することが可能ということになります。フランスの場合は,著作権を出版者に譲渡するということによって出版者が出版を行うということが行われているようであります。
フランスにおいてもドイツ法などと同じように,出版契約に関しては,著作者保護の観点から,立法により出版者の契約の自由が制限されております。
フランス法の文献の中で解説されていたことでありますけれども,この出版契約及び出版権は,あくまで著作者の保護を目的とするものであって,著作者の権利より優先して出版者の権利を保護することを目的とするものではないということが書かれてありました。
この辺,特にフランス法はドイツ法と比べまして二元論を採用しておりますけれども,逆に一元論を採用しているほうが著作者保護に厚いというふうに考えることができますけれども,二元論を採用しているフランスにおいて,さらに著作者保護を強調しているということになろうかと思います。
次にイタリア法でありますけれども,イタリア法に関しましては,ドイツ法と同じように公有となった未発行の著作物の権利,さらに学術的な刊行物の権利がやはり著作隣接権として位置づけられて規定されております。これはEU保護期間指令の4条及び5条の規定を受けたものであります。
あと,イタリアの出版契約に関しましては,先ほども申し上げましたように,出版権は排他的権利であると推定されるにとどまります。当事者の書面による合意により,この排他性を排除することは可能であると。著作者保護の観点から契約の自由が制限され,契約内容や取り決めが不明確である場合は,著作者に有利な解釈がとられることになるということであります。
スペイン法でありますけれども,スペイン法は,これも先ほども申し上げましたように,フランス法と大分似ておりまして,EU指令4条の未発行の著作物に関しては発行者の権利を保護しておりますけれども,5条の学術的刊行物に関する規定は置いていません。
スペイン法の特徴といたしましては,EU指令4条の発行者の保護に加えて,著作権の保護対象とならない出版物の印刷配列やレイアウトに独自性が認められる場合には,その発行者に排他的な権利を認めているという規定がございます。
スペインの出版契約に関しましてですが,出版権の排他性は,出版契約における両当事者の合意により定められなければならない。必要的記載事項となっているということがスペイン法の特徴でございます。
出版契約は,基本的契約は当事者の合意により成立するということになりますけれども,出版契約においては,著作者保護の観点から書面において行わなければならないということでございます。
今回の調査を通じまして強く印象を受けましたことは,出版者の権利,出版契約といいましても,基本的には著作者の権利を保護するものであるというところが強く認識されているところだというふうに思います。
あと1つ,比較的新しい動きといたしましては,2002年にドイツ著作権法が改正されております。これは著作者の契約的地位の向上を図るということの改正なんですが,その関連で,ドイツ出版法の28条に,出版者の権利の譲渡可能性に関する規定があったんですが,2002年の法改正によって出版者の権利の譲渡可能性に関する出版法28条の規定が削除されております。
これはどういうことかといいますと,原則として認められていたものが,原則は認められない,原則は著作者の許諾なくして譲渡することができないというふうに改正されたということになります。
簡単ではございますが,私からの報告は以上でございます。
【渋谷座長】
大変ありがとうございました。
それでは,ただいまのお二方のご説明につきまして,ご質問やご意見がありましたら,ご自由にご発言願いたいと思います。どうぞ,どなたからでも結構ですので,お願いいたします。
【大渕構成員】
どなたもいらっしゃらないので,若干だけお伺いできればと思いますけれども,この手の質問は不存在立証的なのでお答えになりにくいかとは思うんですが,先ほど,今村先生のほうから,イギリス,それからオーストラリアの立法例として,この発行された版の印刷配列という,こういう構成についてご説明があったんですが,こういうものがほかの国ではどう扱われているのかというのが,要するに,まずは今村先生自身に対してはアメリカではどうなっていますかという質問ですし,それから,三浦先生については,ドイツなどでは,どうなっていますかというようなご説明がないところを見ると,こういうものは採用されていないということだと思われるんですけれども,こういうものを採用すべしという議論があるのかないのか,あるいは,現状としては採用されていないということだと思われますが,その場合には何か理由があるのかないのかというあたり,お二人にそれぞれお伺いできればと思いますが。アメリカで採用していない理由,あるいはドイツで採用していない理由について。
【明治大学今村准教授】
ご質問ありがとうございます。
まず,アメリカでは,この発行された版の印刷配列等の権利は,コピーライトとしてはないわけでございますが,私の読んだ出版契約の本には,イギリスの出版者がアメリカの出版者と契約するときには,こういう権利を契約上の権利として出版契約に明記しておくべきだというような言及はなされておりましたので,出版者同士が契約するときには,当事者間で利益をいろいろ契約の中で調整するという,実務はわからないですけれども,そういう提案が出版契約の教科書には書かれておりました。
その次に,アメリカにはそういう権利がない理由についてなんですけれども,その点は,イギリスの発行された版の印刷配列に関する保護については,非常に沿革的な理由が大きいと思うんです。20世紀の初期あるいは中ごろで印刷配列の流用がなされる。その時代にアメリカでそういう需要というか,そういう求めが出版者の側からあまり起きなかったということはまずあるのではないかと思うんです。それが1点。
先ほど,私のこの主な研究調査のテーマではなかったのでよく調べてはいないんですけれども,アメリカのほうでは,出版者と著者との間の契約関係で出版者側の利益が適切に調整されているのではないかなと思います。契約上の処理で出版者が満足できるそういう枠組みが既に用意されているのではないかと思いますが,私がそう考えただけで,実際はどうなのかということはちょっとわからない部分でございます。
以上でございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
三浦さん,どうですか。
【国士舘大学三浦教授】
大陸法は共通していると思いますけれども,やはり基本的に出版者の権利は,出版契約,著作者と出版者の出版契約によって保護されているということだろうと思います。これはドイツではなくてフランスの文献に書かれていた記述ですけれども,先ほどもちょっと申し上げましたが,出版契約とか出版権というのは,あくまでも著作者の保護を目的とするものであって,著作者の権利を優先して出版者の権利を保護することを目的とするものではない。出版者としては,この出版契約制度の恩恵を受けるために,出版契約法を確実に遵守することが要求されるというような解説があるということから推定しましても,やはり出版契約によって著作者と出版者お互いの利益を保護しようという思想が出版社の権利の中に,あるいは出版契約の中にあらわれているのではないかというふうに考えることができるかと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
ほかにどなたか。
【大渕構成員】
今のでちょっと確認だけお二人に。
要するに,お二人とも,契約で処理されているから固有の権利は必要ないというご趣旨ではないかと思います。あとプラスして,イギリスの場合には,沿革的理由というのがあるから,歴史的なものという,イギリスのほうではよく出てくる特別なファクターがある,それもわかるのですが,先ほど言われた契約で処理できるというのは,今村先生が後半で説明された被許諾者の,これは1つ重要な点だと思うんですが,被許諾者等の訴権というこの2ページの下のほうにある,これ,例えば独占的ライセンシーだったら出版者のほうが契約で訴権を得るから,その点でも固有の権利が必要ないという,そういうところにもつながってくるわけですか。
ということでお聞きした上で,念のために,ドイツのほうは訴権云々のご説明はあまりなかったのですが,同様のことなのでしょうかというところをちょっと確認できればと思います。契約で出版権の訴権を受ければ,出版者のほうは訴権も得るから固有の権利が必要ないという,そういうご趣旨なのでしょうか。
【渋谷座長】
三浦さんですね,お願いします。
【国士舘大学三浦教授】
ドイツ法ということですか。
ドイツ法に関しましては,ドイツ出版法8条に,出版契約において制定される出版権は排他的な権利であるという説明がありますので,これは出版者が出版権を共有いたしますので,訴権という言葉の意味にもよりますけれども,出版社が著作者にかわってといいますか,著作者の利益を著作者にかわって訴訟などを提起することができるということになろうかと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【大渕構成員】
1点だけ。それをお聞きすると,先ほどちょっと言われたドイツのほうは排他的であると,フランスのほうは,排他的にするか,非排他的にするかは契約で決まるというご説明だったと思うのですが,それはドイツと同じようなもので持ってくるとしたら,契約の決め方で排他的な出版契約にすれば訴権があるとか,そういう話に,要するに,フランスに関しては,訴権を得たいのだったら排他的にすればいいよという,そういう契約的な種類で決まるような話なのでしょうか。
【国士舘大学三浦教授】
ええ,フランス,スペイン,イタリア,同じだと思いますけれども,出版権の性質は,当事者間の契約によって定まるということですので,今回は契約実態,契約慣行は調査しておりませんので,実態的にどうなっているかということはわかりませんけれども,少なくとも規定上,理論上は当事者間で自由に設定することができるということになろうかと思います。
【大渕構成員】
結構です。ありがとうございました。
【前田構成員】
今村先生に1点と,三浦先生に1点,質問させていただければと思います。
まず,今村先生への質問なんですが,先ほど,被許諾者等の訴権ということでご説明いただきましたけれども,この訴権というのは,差止請求権及び損害賠償請求権の両方ということになるのでしょうか。つまり,ここで丸がついているのは,その両方があり,バツがついているのは両方がないということになるのでしょうかというのが今村先生にお尋ねさせていただければと思います。
それから三浦先生に対する質問なんですが,今,ドイツの出版契約について,その出版契約が締結されたときには,その出版契約に基づいて,日本における現在の出版権者と同様に第三者に対して訴えることができるというご説明をいただいたかと思うんですが,その場合に,例えば電子出版物に関しても,その出版契約の中で電子出版もこの出版契約の対象に含めれば,無断で電子出版している者に対してその出版権者が訴えることができるということになっているのでしょうか。
【渋谷座長】
それでは,今村さんからまずお願いします。
【明治大学今村准教授】
前田先生からのご質問ですけれども,被許諾者等が訴権を有する場合の権利行使ができる差止,損害賠償という形になっているのかというお話でございますが,その点につきましては,特に条文上こういうふうに制限するというようなはなしがございませんので,救済として,差止及び損害賠償を請求することができるのだというふうに私は理解しています。ただ,その損害がどこまでなのかというようなことについては,賠償の範囲とか,この辺についてはまたいろいろ議論があるところだと思います。けれども,この条文を読む限り,請求できる権利が差止に限定されるとか,損害賠償しかないとか,そういうことはございませんし,ないようだというのが私のお答えでございます。
ただ,アメリカ,イギリス,オーストラリア,それぞれ共通の部分はあるだろうと思うんですけれども,ちょっとした何らかの違いがあるかもしれません。その点はまたさらに調査をしたいと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【国士舘大学三浦教授】
ドイツ法に関しましても,先ほど,出版法に基づいて当事者間で自由に契約することができると申し上げましたが,これも文献の記述ではございますけれども,やはりドイツの場合も実務上はほとんどの出版契約が普通取引約款によって行われるということがございますので,その著作者と出版者の間の契約内容は,その都度,規約に従うということになっているようでございますので,新しい電子書籍が出てきたとしても,基本的にはこれまでの同じような,これからも同じように処理されるのではないかということが推測されるんだとは思います。
【渋谷座長】
よろしいですか。どうもありがとうございます。
ほかにどなたかございませんか。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
有斐閣の酒井でございます。1点だけお伺いしたいんですが,三浦先生,それから今村先生,各国の著作権法は,各国の数だけあるというようによく言われますけれども,今教えていただいたいろいろな法改正,沿革によるものとか,あるいはいろいろな時代の影響を受けてというものがあろうかと思うんですけれども,それぞれの国の知財戦略といいますか,そういう背景といいますか,自国の文化的なものをしっかり守っていこうというような意味合いでの改正というのは,具体的に何か背景として,あるいは法改正の制度設計としてあるのでしょうか。教えていただければと思います。
【渋谷座長】
それでは,お答えできる方からどうぞ。
【明治大学今村准教授】
まず,私がいろいろ調べましたイギリス,アメリカ,特にイギリスについて考えてみた場合に,ほかの国と比べて出版者の権利が比較的手厚く保護はされているように見受けられることから,この権利を導入した際に出版者の正当な利益を保護するというような発想があったと思います。ただ,今のご質問は結構大きな質問でございましたので,私の小さな頭ではなかなか全体像が把握できない部分もありまして,もう少し論点を絞るとお答えできるかもしれないんですけれども,具体的には改正に際して文化的な……。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
例えば,アメリカでしたら,それは州によるのかもしれませんが,保護期間を遵守して国際的な戦略を立てていくとか,いろいろ言われておりますけれども,何かご報告されたそれぞれの国で特徴的な法改正なり,立法の背景というものが,つまり,自国の文化を保護していくという意味合いでの法改正なりという,そういう動向みたいなものがあるのかどうかと。もしあれば教えていただければと。
【明治大学今村准教授】
自国の出版者の権利等を特に国益として保護するという形で何か権利を設定するとか,そういう思想はあまりなく,例えばイギリスなどで出版者の版に関する印刷配列の保護は,この報告書にも書いてあるんですけれども,発行された版の保護について相互主義は採用されていないとかということになっておりますので,結構幅広い権利保護を満遍なく与えているということになります。もちろん各国のいろいろな政策に基づいて権利を与えたり,配分したりするということはありますので,そういう背景もあるのかもしれませんけれども,とくにイギリスにおいて発行された版の保護が当初導入されたのは,ある戦略に基づいて何か権利を与えるとか与えないとか,保護するとかしないとか,そういうことよりも,保護のない状況がある中で生じていた競業者の不当な行為を防止するとか,特に既につくられている版を同業者が無断で流用してただ乗りしてしまうということの競争の不正さというか,そういう点から導入されたということで,何か戦略として権利を設けるとか,そういうことではないというふうに私はみました。けれども,それは実際のところは権利等を導入したときの議論をもう少し深く見ないといけないかと思います。
【国士舘大学三浦教授】
難しいご質問ですので,お答えになるかどうかわかりませんけれども,これは著作権法の考え方あるいは思想の違いによるのかと思いますけれども,どちらかといいますと,営業的な権利,あるいはビジネス的な権利としてとらえる英米法系とは違いまして,大陸法系の著作権法は,著作者の権利,著作者の利益を保護するということが主眼に置かれておりますので,著作者人格権が規定されているということもそうですし,ドイツ法などでは著作権一元論という考え方が採用されているということからも,著作者の利益を保護することが,おそらく自分の国の発展,文化の発展,学術の発展につながるということが念頭に置かれているのではないかというふうに思います。
日本の著作権法ですと,1条の目的規定の中で,文化の発展に寄与することを目的とすると規定されておりますけれども,ドイツ著作権はそのような規定はありません。ただやみくもに著作者の利益を保護するということしかないです。もちろん決して消費者の利益を保護するものでもありません。一出版者の利益を保護するものでもない。ただ単に著作者の利益を保護するということに尽きるのだと思います。これがドイツを中心としたヨーロッパの著作権法思想ではないかというふうに私は考えております。
特に,先ほど紹介いたしましたが,最近のドイツの改正,2002年の改正なんですが,これは著作者の契約上の地位の強化に関する法律というものでして,社会的弱者,あるいは経済的弱者である著作者の保護を図る法律でありまして,ドイツにおいても,その産業界,出版業界も含めてなんですが,産業界から強い反発がありましたけれども,ようやく改正にたどり着いたということがございまして,日本の今の現状から見ますと,時代に逆行するような法改正であるような気がするんですけれども,それをあえて行ったというところにドイツ法の特徴といいますか,ドイツの考え方が反映されているのではないかというふうに思います。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
ありがとうございました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
出版文化のことというのは,これまでの我々にとっては空気みたいなもので,あまり問題意識を覚えるということがなかったんですけれども,昨年あたりからは,国では電子書籍の出版の元年であるというようなことを言われまして,急に問題意識が高まってきたわけですね。
そこで,お二方にお願いした各国の調査研究においても,電子書籍時代を迎えて,問題意識というものが高まっていないだろうか。こういった時代を迎えて出版者の利益をどのように保護していくか,そういった問題意識が出てきてているのではないか,それを把握したいと思って調査研究を進めたのですけれども,しかし,問題が出てきたのが近年のことですので,調査研究の対象とした国々でも,我が国とほとんど同じだと思うのですけれども,書かれたものにはこの問題意識らしいものはあらわれていなかったように思うんです。ですから,これまでの既存の紙媒体の出版文化において形成されたいろいろな考え方というものを,これからの電子書籍時代に類推していくしかないだろうと,そういう認識を私個人は持ったわけです。
その意味では,例えば,今村先生の報告の中にありましたけれども,出版者が著作権を譲り受けて,そして自分の権利を保護すればいいではないかとか,独占的なライセンスを受けてやはり自分の権利を保護したらどうか,そんなことが出てまいりましたけれども,そういったことから,電子書籍の剽窃といいますか,海賊版の出版に対して,これから出版者は対応していかなくてはいけない。
それから,ついでに申せば,我が国の場合は,無名(変名)の著作物の場合ですと,法定信託といいますか,発行者が著作者にかわって訴訟を起こせるというような規定が,118条でしたか置かれておりますね。これはライセンスというようなものではない。利用許諾を受けたからやるというものではなくて,法律上当然に原告としての適格を得ることができるというような規定がありますから,そんな規定も1つ手がかりになるのではないか。いろいろの問題を考えていく,その種になる事柄は,これまでの著作権法にもあるわけですので,それをどのようにこなしてこれからの時代に対応していくか,そのあたり,我々も考えますけれども,出版社の方々もみずからの問題としてお考え願いたいと,そういうふうに思っているわけです。
酒井様のご質問に対するお答えにはなっていないのですけれども,この調査研究に当たった当事者としては,そのようなことまでは言えるけれども,それ以上のことは言えないという,こういう状況です。
【大渕構成員】
済みません,さっきはちょっと気が引けたので割愛してしまいましたが,結構重要な点かと思いますので,2点。これは今村先生のほうに。1つめは,レジュメの1ページのところにあって,注15がついているあたりですが,原稿を再入力すれば侵害が避けられるという,これはどこかの記述を引いてきているので,これだけ見ると,わかったようなわからないような感じがするのですが,これは趣旨としては,これ,レイアウトを保護する場合に,テキスト的な文字を入力するだけだったら侵害が避けられるというのは,そういう意味であることは間違いないと思うのですが,それに尽きているのか,それとも原稿を再入力というのは,原稿どおりに自分でゼロックスコピーするのではなくて,版もつくってみたときとかでも避けられるのかというあたりは,版の範囲がどこまでかというところが具体的に権利内容を考える際には重要かもしれないのでお聞きできればというのが1点です。
それからもう1点は,もうちょっと上のほうにある注11がついているあたりなのですが,そもそもこのあたりを見出すと,著作権保護が与えられている理由という直前のところを見ますと,技能や労力の投資の保護というような,もともと著作権と言っても,日本のような創作性的なものというよりは,もっと「額に汗」とか,投資とか,労力とか,そういう保護,日本の隣接権だとむしろ伝達に重要な役割を果たすとか,そういう別の話なのでしょうけれども,そのあたりの日本法的な発想との違いというのはどの程度このあたりにきいてきているのかというあたりが,あまり関係のない話なのか,それは結構いろいろな形で発行された版の印刷配列というあたりも,技能,労力と言い出すと,かなりそういうものが直接的に当てはまってくるようなことでもあるので,そういう基本的な広い意味での著作権というか,コピーライトというか,そういうものについての基本的な法思想みたいなものの差というのがあるのかないのか,ないしは,それがこのあたりにどの程度影響を与えているのかというのは,いかがでしょうか。
【渋谷座長】
ちょっとお待ちください。そろそろ持ち時間が切れそうなんですね。大渕さん,いかがでしょうか。今の問題,非常に法律的な問題ですので,この会議が終わってからでもお二人にお尋ねになるというようなことで,ちょっとこれをスキップさせていただけるとありがたいのですが。今日はほかに報告していただく方がお三方おりますので,時間がちょっと窮屈なんですね。大渕さん,ちょっとその点,ご容赦……。
【大渕構成員】
お任せします。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。ご無理をお願いしまして。
それから,もう1つご質問があったのですが,これは,この後,書籍関係の方にご報告願った後にご意見なりご質問をいただくということで,そうさせていただきたいと思います。どうも申しわけありません。
それでは,先へ進ませていただきます。
続きまして,日本書籍出版協会より,海外の出版契約の実態につきましてご説明をお願いしたいと思います。
それでは,樋口様より説明をお願いいたします。
【社団法人日本書籍出版協会樋口事務局長】
日本書籍出版協会の樋口でございます。本日は,報告の機会をいただきましてありがとうございます。
今,両先生から各国の法制度についてのご報告をいただいたわけでございますが,その中で実際にどのような形で出版契約が行われているかということについてご報告いたします。実際に私どもが聞き取りをしたり,資料を手にしたのは,主に各国の出版協会サイド,あるいは出版者のサイドからでございますので,いきおい出版者の立場で話を聞いてきたというところが多分にございます。
また,こちらが入手いたしました出版契約書のモデルも,各国の出版協会が作成をしたり,あるいは,先ほどのイギリスのケースでは,言及がございましたチャールズ・クラーク氏の『Publishing Agreement』という本に載っているモデルです。チャールズ・クラーク氏は,長年,イギリス出版協会の法律顧問をやっていた人物でございますので,そういった側面が多いかなとは思います。
実際に各国の出版協会が作成しております出版契約のモデルが,どの程度そのままの形で,実際の出版者と著者との契約に使われているかということについても十分調査をしておりませんので,そこも何とも言えない部分がございます。そういった前提でお聞きいただければと思います。
本日のレジュメにございますとおりに,各国において法制度の違いがどうであれ,こちらで特に調査いたしました英,米,独,仏の中では,出版契約のあり方というのは,基本的に非常に似通っております。その基本というのが,まず著者から出版者に対して著作権が実質的に譲渡されているということでございます。法律的なほんとうの意味で譲渡ということがあるかどうか,その辺はちょっとなかなか私どもも専門家ではございませんのでわかりませんが,実質的に著作権が譲渡されていると同等の効果が出版契約によってもたらされているというのが,欧米における出版契約の実態であるというふうに認識をしております。
その契約期間につきましても,モデル契約の中では,譲渡の期間というのは,基本的に著作権の存続期間中というふうに書かれております。したがいまして,仮にこれがいわゆるライセンスであったとしても,存続期間中ライセンスということになりますと,実質的に譲渡と,効果としては変わらないのではないかというようなことでございます。
日本における出版契約というのは,基本的には紙の本を出版者が許諾を得て作成,頒布をするというところが中心なわけでございますが,欧米におきましては,当初の出版契約の中で,紙の本の出版物の発行ということだけではなく,それ以外のほとんどすべての二次利用の権利,例えばこの中には,他の言語への翻訳出版ということも含まれますし,それから,例えばハードカバー版に対してペーパーバック版というような二次出版の許諾,それからダイジェスト版の作成,さらには他の媒体への変換,あるいは翻案といったようなさまざまな二次利用についても,当初の出版契約の中で出版者に権利が移転をしているというケースが多いということでございます。
その当初の出版契約の中で,そういった権利の移転について定めると同時に,それらの権利が動いて実際に二次利用が行われた場合に,著作権者と出版者がどのような収益の分配をするかということについても,あらかじめ取り決めがなされているというケースが多いということでございます。
そこにありますように,もちろん出版契約で合意されるのは,先ほどの三浦先生のお話にございますように,著者の権利に基づいて著者の作成した著作物が頒布され,そこから利益を得るということであり,その出版物の利用による収益は,基本的には出版者を通して著作権者に配分されるという形であります。
この中で,今,そのほとんどすべての二次利用と申しましたが,国によっては,映像化の権利,例えば映画化の権利については別であるとか,そういったような細かい差はあろうかと思います。
さらに近年の電子書籍の発行につきましては,各国でややニュアンスが違っております。フランスでは,現行の出版契約の中に電子書籍の許諾も含まれると考えるという回答をしております。実際にフランスの出版契約の中では,創作にかかる作品に帰属する複製権及び公衆に著作物を伝達する権利を独占的に譲渡しという書かれ方をしておりますので,このフランス法の中で公衆への著作物の伝達権ということは,おそらく日本における公衆送信権というものと同等ではないかと思います。こういった形でフランス法では読めるということで,フランスの出版契約のモデルは電子書籍も含められると思われます。
ただし,そこはなかなか著者との間で,あるいはジャンルによって,あるいは著作物の種類によって,あまりはっきりはしていない部分もあるので,確認的な追加条項ということが望ましいと我々も考えているとフランスの出版業界の人間は言っておりました。
それから,イギリス等におきましても,先ほど,チャールズ・クラークのモデルでも,1997年の第5版におきまして,既に電子書籍についての,先ほどのような出版契約の時点において,電子書籍についての著者と出版者相互の収益の分配についての項目が加えられております。97年の段階ではまだ電子書籍というのは本格的なものになっておりませんけれども,その段階から出版契約の中で電子書籍も見ていこうというような気運があり,実際にすべての契約書にそういう形になっているかどうかということは現状でもまだはっきりしておりませんけれども,徐々にこの電子的利用に関する権利も含めて,当初の出版契約の中で契約を結ぼうということに動きが,少なくとも出版者としての動きとしては出てきているということはいえようかと思います。
個別の国について若干補足させていただきますが,次のページでございますが,イギリスにおける典型的な出版契約ということでございます。
今までお話がございましたとおりに,イギリスにおいては,版面構成に関する権利が著作権の一種として規定されているわけでございますけれども,ただ,どうも話を聞いてみますと,もともとイギリスにおける出版契約も,出版に関する契約を結ぶ際には,出版者への権利譲渡ということが包括的な形で行われていたということであります。したがいまして,必ずしも版面の権利というものがない場合でも,他のドイツ,フランスと同様の出版契約が結ばれていたわけであるということでありますが,ただ,その中で特にシェークスピア等の著作権保護期間の経過をしたものについての出版が特にイギリスでは盛んであったと。そこの出版物が無断で複製をされるということが起きたために,その部分の手当てのために,特に版面の権利というものを要望して,これが法制化されたということのようであります。
電子書籍については,版面構成の権利が適用されるかどうかということについては,同一のレイアウトのみについては版面の権利が及ぶと出版界としては考えているというようなことでございました。
それから,ドイツの場合も同様に,電子書籍の契約につきましては,下にちょっと解説が書いてございますけれども,1966年から2007年に結ばれた出版契約においては,その著作権者による電子書籍の撤回がない限りは,出版者が電子書籍の契約を持っているというような形で実務的な取り決めがされている。ただし,それを確実にするためには明文の追加契約が結ばれることが望ましいというような話がありました。
先ほど三浦先生からもお話がありましたように,出版契約はあくまで著作者の権利を保護するという,そういう建て前から,その権利の移転に関して拡大解釈は行わないようにすべきであるというようなコメントもございました。
それから,フランス出版協会でございますけれども,今申しましたように,電子出版に関する権利も当然に現行の出版契約のモデルの中に含むと考えられているということであります。
かつては映画化の権利というのも85年以前には出版契約のモデルの中で付与されていた,著作権者から出版者譲渡があるということにされていたのですが,これについては85年以降は,追加の条項がある場合に限って映画化の権利が移るという形に変更されたということでございます。
それから,最初の出版物が仮に絶版になっていたとしても,その後のペーパーバック等のサブライセンス権については引き続き最初の出版者が持っているということであるということでございます。
ただし,絶版の状態が長く続いた場合に,著者からのクレームがあって,それでもなお出版者が再版をしない場合には,著者のほうに権利が戻るということは実務的に行われているということでございます。
アメリカでございますが,アメリカは基本的にイギリスの出版契約と似ていると思います。もちろん出版者の版面に関する権利というものは先ほどのお話のようにございませんけれども,これも典型的な契約の中では,下にございますように,あらゆるフォーマット,あらゆる言語によって当該著作物を複製し頒布する権利,及び第三者にそれを許諾する権利,これを現在及び将来の法律における著作権保護期間及び更新期間のすべてにわたって譲渡する。譲渡は「grant」という言葉が使われております。
一番下にございますけれども,書面によって当該出版物の増刷を求めたとき,出版者は1年のうちに増刷を行うか,すべての権利を著者に返還するかを90日以内に決定をするというような条項が入っております。これは幾つか見ましたが,同様の条項がいずれの契約書にも書かれておりました。
ということで,欧米では出版者が著作者からかなりの部分の著作権の実質的な譲渡を受けるということが伝統的に行われているようでございます。
なぜそういう状況になったのかということを聞いても,昔からそうだったということで,要するに,彼らはそれが当たり前な状況であるというふうにどうも思っているようでございます。ひるがえって日本の出版契約を考えますと,先ほど申しましたように,そういった形ではなく,出版権の規定に基づきまして,紙の出版についての契約ということでございまして,二次利用につきましては,例えば優先的な権利ですとか,窓口的な権利ということを認めていただくように限られているというような状況であります。電子出版の契約につきましても当然に含まれるということではなく,特別な追加的な条項によって権利を認めていただいているという状況があるということで,その辺が欧米と日本の出版契約の大きな違いではないかというふうに考えております。
簡単でございますが,以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
そこで,議事の進行についてご相談なんですけれども,冒頭で事務局から説明があったように,樋口様の報告をいただいて,そこで15分程度の質疑応答,意見交換を行うと,こうあるのですけれども,これはいかがでしょうか,次に酒井様と恩穂井様,引き続いてご報告いただいて,その後に質疑応答の時間をまとめてとりたいと思うのですけれども,そのように運ばせていただいてよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
ありがとうございます。
では,次に,酒井様,ご報告よろしくお願いいたします。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
有斐閣の酒井です。今日はこういう説明をさせていただく機会を与えていただきましてありがとうございます。
お手元の資料を順番に説明いたしますと時間が足りませんので,かいつまんで私どもがこの点だけは主張しておきたいというところを中心に説明させていただければというふうに思います。
紙の本の時代から電子書籍の時代へ大きく変わってきたわけですけれども,その結果いろいろなことが,技術的にもいろいろな出版の形態という面でも変わってきたように思います。出版においては,例えば企画から編集,校閲プロセスを経て,取り次ぎへ流して書店で本が並ぶということから,まず企画面で電子書籍を発行する場合には,公衆送信権という権利の処理をしなければいけなくなった。それから,編集,校閲の過程では,デジタル的な加工をしなければいけなくなった。まだ自前でデジタル加工をすべてやれる出版者というのは非常に少のうございますので,デジタル加工の業者にお願いしている。その際には,かなり複雑な契約をしなければいけない。従来ですと,取り次ぎ基本契約を結んでいれば,特に取り次ぎとの契約云々というのは全然問題にならないわけですけれども,電子書籍を配信する場合には,配信ストアとのいろいろな条件交渉等をやらなければいけないという意味で,企画から編集,校閲,それから配信,発行までのプロセスが,従来に加えて複雑になってきているのかなというふうに思います。
それから,一番顕著な事柄は,従来ですと,著者と出版者との契約が主にスポットライトが当たるわけですけれども,そこでいろいろな条件について取り決めをすればいい。もし不適切な出版物が発行された場合には出版をやめる。それから回収するというようなこと,比較的単純なプロセスを想定すればよろしかったのですが,現在の電子書籍の場合は,まず著者との契約をする,それから加工業者と契約をする,それから配信ストアとの契約をするという多面的な契約が必要になってきます。万が一電子書籍としての著作物に瑕疵がある,不適切な出版物であるという場合には,データ削除をやらなければいけない。これは一見簡単そうに見えるのですが,なかなかややこしい問題があります。契約に携わった各事業者とすべて交渉をする,契約内容としてもそういう契約を盛り込んでいく必要があります。
そうすると,どういうことが起こるかといいますと,通常,契約というのは当事者間だけを拘束するものですが,例えば著者と出版者との契約を守るために,配信ストアが顧客と結んでいる契約に介入せざるを得ない局面が出てくるという事態が起こります。どういうことかといいますと,例えば削除要求をしたときに,既に配信ストアと顧客との間で何がしかのサービスをするという契約がされている場合には,それを問題にせざるを得ないという状況が出てきます。こういったことを変えることが可能かどうかというのは,法律的にはなかなか難しい問題がありますので,今後の重要な問題になるかなというふうに思っています。このように変わってきておりますけれども,基本的に出版者の役割というのは,やはり編集,校閲プロセスで,知的,文化的創造物としての質を維持するという役割は変わらなく重要であるというふうに思います。
具体的には,日本語表記としての適切さであったり,文化的伝達物としての視覚的,技術的工夫であったり,例えば学術分野ですと,内容の正確さや信頼度への寄与,関与であったり,そういったことによって社会に責任を持った頒布物として提供する責任を出版者は果たしているのではなかろうかというふうに思います。
こうした中で,私,今,個人的なことかもしれませんが,信じられない現象が起こってきているように思います。昔の侵害行為ですと,コピーをとって束ねてというようなこととか,アジアの国へ行った著者の方がお土産に海賊版の分厚い本を持って帰ってくるという比較的そういう程度で終わっていたのですが,最近は,冒頭に言いましたように,信じられない現象が起こっているということになっています。
どういうことかといいますと,例えば教育現場で学生から内部告発が起こってくる。ある教育機関からのケースで,これは係争事項になる可能性がありますので,あまり中身を詳しくは言えませんけれども,分厚いPDFをプリントアウトしたものとか,パソコンでPDFをアップしておいて,それが自由に見られるようになる。それは,プリントアウトしたものを学生が送ってきて,こういうことが今許されるのでしょうかというような内部告発がありました。これは35条を明らかに超えた大きな違反なんですけれども,こういった問題をどうするかということが1つあります。
それから,後ほど恩穂井さんのほうから海賊版等について詳しい説明をされると思いますけれども,非常に違法なアップロードが多いと。漏れ聞くところによりますと,雑誌等では,発売前に,発売の1週間前なんでしょうか,四,五日前でしょうか,ちょっとわかりませんけれども,違法アップロードがされている。それから,私は笑ってしまったのは,裁断機が爆発的に売れているとか,そういうようなことが起こっていると。一体どうなっているのかなというふうに思ったりしているのですが,こういった事柄は,まだ我が国でもないと思うのですが,基本的には文化を劣化させていくということにつながるのではなかろうかというふうに思っております。
このことが原因であるというふうに100%言うつもりはありませんけれども,出版界の経済的なダメージもやや顕著になりつつあるのかなと,これはもちろん出版界の努力不足もありますけれども,出版科学研究所が出しております「2011年出版指標年報」によりますと,1996年をピークにして,2010年には29%,これは雑誌書籍の販売額ですけれども,29%,7,700億円のダウンになっているというようなことになっております。このことは,やはり非常に多様に起こっている侵害行為も明らかに一因になっているのではなかろうかというふうに思われます。
しかるに,我が国の知財の法制はどうなっているかといいますと,著作権法で文化の発展に寄与するということと,それに著作権者に対して一定の保護を与えて著作者の創作意欲を駆り立てるというような仕組み。それから,特許法ですと,発明者の開発意欲を駆り立てる,インセンティブを保証していくというような形になっております。
これからそういったものだけで対処できることではありませんので,侵害行為や侵害対応に対してどういうふうに対応していくべきかということが問題になるんですけれども,1つには契約でという話になるわけですけれども,契約も,例えば一番シンプルに考えると,訴訟委任ということになるんですけれども,これも弁護士法批判でなかなか難しいと。それから,訴訟信託も,これも民事訴訟法上難しいと。それから,契約で,先ほど少し諸外国でも出ておりましたけれども,代位権構成をするとか,独占的契約を結んで,そこから差止請求を行うということは,私どもも実務家の方や研究者の方にいろいろ意見を伺ったりはしているのですが,なかなかすべての方がそれはそれで大丈夫ですよという返事はいただけないということになっております。
それから,代位権構成,債権者代位権を使った保護策というようなことも考えられるのですが,これもなかなか難しいと。なお,近時の民法の改正の中で,債権者代位権が必要かどうかという,不要ではないかという論議もされているというようなこともありますので,契約でということもなかなか実態として難しい側面があるかなというふうに思います。
やはりこういったいろいろな侵害や,その他の問題に対処していく上でも,隣接権としての出版者の権利を考えていく時期に来たのではないかなというふうに思っております。
特にグローバル時代になってきておりますので,それぞれの国でいろいろな侵害問題が起こったとしますと,例えば我が国でしっかりした著作権法ができているということは非常に重要なことだろうと思いますので,出版者の権利を何とか具体的な形にできればなというふうに思っております。
具体的な法律的な考え方としては,いろいろな考え方があろうかと思いますが,今日は法律的な細かい話というよりも,実態をかいつまんで説明させていただくということが中心ですので,以上で報告を終わらせていただきます。また後で質疑の中でお答えさせていただきます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,引き続きまして,恩穂井様にお願いいたします。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会恩穂井幹事】
集英社の恩穂井と申します。漫画を中心に,インターネット上の権利侵害の現状報告ということでお話しさせていただきます。時間も限られておりますので,インターネット上の下世話な用語が頻発していますけれども,わからない用語などはお手元の資料をご参照いただければと思います。
まず,漫画について,端的な侵害の例ということで,ちょっと資料としては古いんですけれども,資料6の(別紙)の資料1というものがございます。2010年2月22日,昨年の2月22日に,「ワンピース 575」というワードでYouTube上で検索した検索結果のこれはほんの一部です。『ONE PIECE』の575話は,弊社が発行しています『週刊少年ジャンプ』12号の公式発売日が2月22日のものに掲載された漫画,資料はそのスキャンのスライドショーです。この日だけで101本動画を削除いたしまして,最大閲覧回数というのが資料2のところの最初にあります,ちょっと見づらいですけれども,105万3,143回,1つの動画で100万以上の閲覧回数を稼いでいます。
当時,いわゆる早売り・ネタバレのスライドショーというものが,YouTubeをはじめ動画投稿サイトに多数投稿されておりまして,毎週毎週,我々は100本から200本の動画の削除を行っておりました。ですから,各漫画について数百万単位での閲覧がなされていたということです。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども,YouTube上では逮捕者も出してしまいまして,我々としても,この1年間,動画投稿サイトでのスライドショー対策にかなり力を入れてきました。
目視での検索は,時間的にも労力的にも非常に限界がありますので,我々は指紋認証検索システムを導入いたしました。その上で,数名のスタッフによる毎週毎週の目視による検索のフォローをした結果,現在は,このネタバレ,スライドショーはかなり激減しておりま。ある程度の成果を上げております。
ただ,このスライドショーは,ネット侵害におけるいろいろな侵害のタイプの中で言えば,最終形と言えるものでして,そのプロセスの中でさまざまな侵害がなされております。お手元の資料の中にありますけれども,早売り
ネタバレは必ず,雑誌のスキャンからスタートしますので,当然,発売日より以前に何らかの形で入手した雑誌からスキャンしたRaw Mangaといわれるデータがございます。これが何からの形でネットに流出します。それをまただれもがダウンロードできる形になりますので,そのダウンロードしたものに,また世界各国で勝手に翻訳をつける,そしてそれをまた漫画としてデータ化したものがスキャンレーションといわれるデータです。これがまたウェブ上に氾濫して,それをさらにダウンロードしてスライドショーというデータにして上げたものが動画投稿サイトのスライドショーということになります。
この段階で非常に複合的な侵害を受けておりますけれども,先ほどご報告した数,スライドショーの数,閲覧数だけをとっても,いかに侵害の数が圧倒的かおわかりいただけると思います。これは当然,制度上予定されております侵害の対策をとるべき著作権者の手に負えるものではありませんで,我々出版者に期待と大きな責任がかかってきているという状況でございます。
とはいえ,先ほどから何度もご報告しているとおり,出版者は,制度上は権利者ではございませんので,これまで何年間もかけた粘り強い交渉によってある程度違法コンテンツを削除することができる今の状況まで持ってきてはいるんですけれども,それはなかなか平坦な道ではありませんでした。現在,日本,アメリカ,あるいはECの大手のISPとか,動画共有サイト,サイバーロッカー等は,比較的出版者としての発言に重きを置いてくれています。具体的に言えば,削除要請に対してある程度の対応を,程度の違いはありますけれども,対応はしてくれております。これも正式なルートというよりも,はっきり言えば,ビジネスチャンネルを利用した形で,かなり水面下での交渉を繰り返した上で,やっと得た成果でありまして,あと,大手のプラットホーム自身の意識の変化といいますか,やはりコンテンツ保護,著作権の保護については我々の意見を尊重すべきというふうにここ数年で変わってきた成果ではないかと思います。
ただ,今のところ,それによって,例えばサーバを自主管理してドメインをみずから取得してサイトを運営するという,いわゆる独立系のファンサブといわれるサイトは,コンプライアンスという意識もないですし,我々が有効な対策がとれないまま,侵害コンテンツが集中して,結果的に非常に勢力を増した存在として目立つ状況になってきております。
その端的な例として,また1つご紹介しますと,デジタルコミック協議会というものがございまして,漫画の電子配信業務を推進している会社が集まっている団体でございますけれども,そこがやはり昨年2010年の初頭に,当時の非常に悪質な海外のファンサブ6サイトに対して警告書を送りました。それに対して,4サイトは回答さえありませんでした。回答があった2サイトも,Manga Helpersは,「あなたたちが権利者ならDMCAを準拠して削除要請しなさい。自分たちはみずからはデータをアップロードしていない」という責任回避の回答をしてきました。Manga Toshokanというところは,「じゃあ,日本からのアクセスだけは制限します」,つまり海外はそのまま放置するというような回答をよこしてきました。それに対しては我々もそれ以上の法的なアクションを起こせないまま現在にいたっております。その後,日米50社以上の出版社による共同プレスリリース等のいろいろな試みによって,大きなファンサブ二,三個が,閉鎖なり,データ削除なりに応じたところもあるんですけれども,現在も,主だったものでも,お手元の資料のような主な悪質サイトが現在も猛威を振るっております。
その中でも特筆すべきは,アメリカのMangastreamといわれるところで,ここは今,スピード,規模ともに世界一ではないかと思います。Mangastreamというところは,自分たちでアップロードしたデータには,Mangastreamという署名といいますか,ロゴをつけています。  これがもとになってさらに侵害データが氾濫していく場合に,例えば先ほどご説明したスライドショーなんかでも,ここをもとにしているというのが非常にわかりやすくて,某調査会社の調査では,Mangastreamのデータをもとにした各国スキャンレーションが数百出回っているというふうな報告を得ています。また,ここは月額で2億円ぐらいの広告収入を得ているというふうにも聞いております。
そのほか幾つか資料に悪質で大規模なサイトを挙げておりますけれども,特に中国のManhua.178とか,Gonlineは,発見したのも昨年で,おそらく昨年できたサイトではないかと思いますが,非常な勢いで急成長しておりまして,その侵害しているコンテンツは,お暇なときに検索いただければと思いますけれども,膨大な数に上っております。
最後に,漫画全巻トレントジップについては補足でご説明したほうがいいと思うんですけれども,それはFC2という,米資本ですけれども,日本でも公式のサービスをしているちゃんとしたISPです。去年までかなりオープンに日本でも見受けられましたいわゆるリーチサイトという違法データを外部サーバに保存してリンクして見せるという,これもストレートな法的なアクションを避けるというような知恵だったみたいですけれども,これが今,大手のISPさんはリンク切断等もやってくれますので,それによって日本ではリーチサイトは激減しました。しかし,この漫画全巻トレントジップというのは,データ保存をBit-trentというファイル共有ソフトに負っています。ファイル共有ソフトというのはウイルスの頻度が高いので,我々もアクセスさえできない状況で,漫画全巻トレントジップがリンクしているファイルの侵害を確認できないということで,削除要請等の有効な手がとれないタイプです。これは本日のテーマである権利というよりもテクニカルな問題が大きいんですけれども,まだ日本でもこういう漫画の侵害サイトが堂々と運営しているということはご確認いただければと思います。
このように,毎年毎年,技術の進歩と次々とISPさんが新しいサービスを提供なさいますけれども,それを組み合わせる形で常に違法な侵害の形態が生まれておりまして,もう毎年毎年我々はいろいろな手を考えつつ対応しているんですけれども,結果的に後手後手に回ってきているというふうな状況です。
最後に,インターネット上での,これは漫画に限らないことですけれども,特に漫画では顕著な侵害,著作権侵害の特徴ということでまとめておりますが,まず,漫画は短時間で閲覧できてしまいます。閲覧で大体消費衝動は完結しますので,もう本を買わなくていいやというような状況になりがちなものです。
2番目としては,先ほど申しましたとおり,今のインターネット上における著作権侵害の状況というのは,著作権者が個々に対応できる規模では全くないということです。  それと,逆に侵害している者が,先ほどの,特にファンサブなんかもそうですけれども,個人の集まりで,ほとんど訴訟等,損害賠償を請求したとしても,損害をおそらく回収はできないだろうというような侵害者がほとんどです。
そういう中で,著作権者及び我々出版者は,著作権侵害によって直接的な被害を受けています。先ほど申しましたとおり,閲覧されることによって本は売れませんし,中国では,はっきり言えば,もう市場そのものを失っているというふうに我々は認識しています。にもかかわらず,検索,削除,あるいは最悪の場合,訴訟という形で侵害対策のコストもかけております。つまり,二重に我々はコストを払っているという状況です。
最後に,クールジャパンと言われるように,実は漫画,アニメ等に関するいわゆるソフトパワーについては,米国,中国,ヨーロッパ各国から,日本は一方的に侵害されている状況です。つまり,はっきり言えば,諸外国にとってみれば,少なくともソフトパワーの保護ということは,まだシリアスな問題ではないはずです。会の冒頭で渋谷先生もお話になった問題意識という意味で言うと,はっきり言って,我々ほどに諸外国の方々がその問題意識を持っているとは正直思えません。したがって,このソフトパワーを守るということにおいては,ある意味,もちろん諸外国の制度の研究,契約の研究というのも非常に重要ですけれども,特に日本固有のテーマであるということもご留意いただければというふうに考えております。以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,今,出版関係のお三方からいただいたご説明につきまして,ご質問やご意見がありましたら,ご自由にご発言いただきたいと思います。
学者のお二方の報告の後に手を挙げておられた総務省の方,今ご発言なさいますか。何かおありでしたらまずお願いします。
【松田補佐官】
済みません,前へ戻って恐縮なんですけれども,総務省の松田でございます。
今村先生のご発表,あるいは書協樋口様のご発表で,諸外国の出版にかかる権利関係が非常に明らかになったと思うんですけれども,単純な質問でございますけれども,今村先生の記述でありますと,例えばイギリスの立法例として,発行された版の印刷配列とありまして,保護対象は印刷されたものということが前提というふうに確認させていただければと思います。
といいますのも,例えば,最近では電子書籍としてのみ流通するような電子書籍がありますので,例えば,紙の書籍に先がけて今後は電子書籍での発行が先行するといったようなビジネスモデルも想定されます。例えば,携帯小説のように,電子書籍で販売してみて,売れたもののみを紙で印刷して販売するということも考えられるかと思うんですが,そういったここのイギリスの立法例でありますものは,あくまで紙で印刷された出版,それがありきのものなのか,それとも電子書籍のみの流通も想定されているのか,この点について確認させていただければということです。
【渋谷座長】
イエスかノーかぐらいでお答え願いたいと思います。
【明治大学今村准教授】
わかりました。
その点に関しては,いろいろ調べたところ,報告書の10ページにある部分だと思うんですけれども,発行された版の保護が生じる発行は,公衆への配布か,あるいは文芸,演劇,音楽の著作物の場合には,電子情報検索システムを用いて著作物を公衆に提供することを含むとあります。したがって,その電子情報検索システムを通して公衆に提供するという形も発行になりますから,具体的にはオンラインのデータベースなんかがこの例として挙げられているんですけれども,その限りではイエスといえます。オンラインのデータベースというようなものは電子情報検索システムの例として教科書の中に挙がっていたので,これで発行ということになり,もとの紙の版がなくても発行したということで版の保護が与えられます。しかし,電子情報検索システムがインターネット全体を含むかと言われると,ちょっと資料が不足しております。当然,インターネットで公開されているオンラインデータベースだったら,そこで初めて発行されたということになれば,発行された版の保護が与えられるということになります。もちろん版があればということですけれども。その限りでお答えということにさせていただければというふうに思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは。
【糸賀構成員】
よろしいですか。
【渋谷座長】
はい。
【糸賀構成員】
全般を通じて2点質問させていただきたいんですけれども,1つは,今,5人の方の発表をずっと伺っていますと,基本的には海賊版対策といいますか,違法な出版に対する対抗措置としての権利付与,特に隣接権の付与ないしは出版契約のもう少し内容を充実させた契約のあり方ということが問われているのだろうと思います。そのときに,私,単純な疑問ですけれども,先ほどの書協の方の報告でも,欧米では基本的には出版契約によってこれに対応している。なぜそれを法律上の隣接権の付与ということを求めるのか,そこのロジックがもう少し明確でないと,これやはり法律にする上での説得力がやや欠けると思うんです。つまり,欧米では,先ほど,資料4−1にもありますが,出版者に対する著作権の実質的な譲渡契約である,こういうふうな慣行が日本の出版界においても行われれば,私は基本的には契約によって対応できるのではないかというふうに考えます。いずれにしましても,法律による隣接権なのか,あるいは契約なのか,それが本来の目的である海賊版対策としてほんとうに有効なのかどうかというようなところをちょっと確認させていただきたい。これは法律の専門家の方でも結構ですし,出版者の方でも結構です。ほんとうにこれが当初の目的を達成するのに必要かつ十分な手段なのかどうかというところを確認させていただきたいと思います。それが1点。
もう1点は,これはこういう方法によって,確かに不法な違法な出版が減少するかもしれません。ところが,そのときにその目的だけ達成できれば,要するに,ピンポイントで効果があればいいんですが,同時に副作用が出てくる可能性も私はあるのではないかというふうに思います。単純に考えて,出版にかかわるプレーヤーが新たに参入してくるわけですから,この会議の本題である流通と利用の円滑化にとっては,間違いなく障害が1つ増えることになるのではないか。したがって,その違法な出版物の取り締まりへの効果はあるにしても,同時に副作用,それが心配されるところであります。
例えば,また資料4−1に戻りますけれども,欧米の出版契約では,ほとんどすべての二次利用についての権利も出版者に移転というふうになっております。それをやった場合に,ほかの公正利用を目指すような二次利用者が,著作者はオーケーしているんだけれども,出版者がよしとしないというふうなことで,情報の円滑な利用にとっても,また1つのハードルができてしまうのではないかということを私は単純に心配いたします。
この辺は法律の専門家の方から見て,そういうふうな副作用の可能性というのがどうなのか。とりわけ著作物の文化の発展への寄与ということを考えた場合に,利潤追求型の出版者がそこにプレーヤーとして加わることによる弊害といいますか,これは出版者の方は気を悪くされないで,出版者が利益追求するのは当然なので,それによる副作用のようなことがあり得るのではないか,この辺についての見解を伺いたいと思います。
【渋谷座長】
いかがですか。樋口様にまずお尋ねになるということなので。
【糸賀構成員】
いや,どなたでも結構ですし,今村先生や三浦先生でも結構です。
【渋谷座長】
樋口様,お願いいたします。
【社団法人日本書籍出版協会樋口事務局長】
どうもありがとうございます。
確かに欧米では出版契約によって対応しているということは確かでございますが,ただ,この欧米のような著者の方からの実質的な譲渡契約ということを日本の著者の皆さんが果たして望んでいるのだろうかということが非常に大きな問題であると思います。
何で欧米でそれができて,日本ではそうなっていないのかということは,これは近代的な著作権制度が日本に導入されるときに何が起きたかということで,それは大きなテーマだと思いますけれども,ただ,いずれにしても,今,現状では,日本ほど著作権者の皆さんの自立的な意思が発揮されているところはないわけでございまして,それが欧米的な出版契約というものが,もしかしたらそれがいいという一面もあるかもしれませんけれども,それはむしろ日本の著作者の皆様にそういった状況になることをお望みですかということを逆にお聞きしたいというところはございます。
それから,違法な出版が減少することの副作用ということでございますけれども,私ども一番心配しておりますのは,合法的な市場ができる前に違法なものがはびこってしまって,それが適法な正規なビジネスとしての電子書籍の流通を発展しにくくさせてしまっている,そういう状況になってしまいますと,結局,違法なものばかりが世の中にはびこり,正規なビジネスが発展しないという状況になることを我々は非常に懸念をしているということでございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
今のご発言は,譲渡でなければ隣接権でという,そういうご趣旨でしょうか。背後にあるお考えですが。
【社団法人日本書籍出版協会樋口事務局長】
そうですね。隣接権かどうかは別としましても。つまり,すべての二次利用を,今,日本の出版社が著者の方から出版契約によって譲り受けるというような契約慣行を日本の中で実現するということは非常に困難であろうというふうな実質的な認識を持ちます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【糸賀構成員】
私のお尋ねしたのはロジックなんです。つまり,今言われるのは,著作者がそれを望んでいるかという話ですよね。これは著作者に聞かなくてはいけませんよね。理論として,法理として,どういうロジックで権利付与が必要なのかというところなんです。そこが説得力がないと,私はなかなか立法のほうには踏み切れないのではないかというふうに思います。
それから,今言われたそういう違法の出版物が増えることによって,本来の出版物が出しにくくなる,これはよくわかります。いわゆる悪貨が良貨を駆逐するのであって,言ってみれば,悪法が良法を駆逐してしまう可能性がありますね。ですから,私もこういう違法行為は極力排除したいし,少なくしたいと思います。ただ,そのための方法として,さっきも言いました,必要かつ十分な方法なのかどうかというところが問われるのだと思います。それがなければ,やはり立法ということはなかなか私は説得力がないのではないかと。
【渋谷座長】
酒井様,よろしいですか。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
やや法理的なことで言いますと,例えば有体物の所有権を考えますと,所有権がこの世界で広く利用されるためには,じゃあ,所有権をめぐる不動産売買契約か賃貸契約がさらに促進されれば,所有権の流動化なり利用がどんどん進むだろうかというふうに言いますと,これはやはり逆ではなかろうかと。つまり,これは世界各国がそうかどうかはわかりませんけれども,所有権については,小売り制度があって,だれが所有権かがはっきりわかる。それから,二重譲渡の場合は,登記をすればだれが優先権かがわかるということで,安心をしてその所有権に対して売買なり賃貸なりができる。つまり,安心の上に利用が広がっていくという仕組みが設計されているのだろうと思います。
出版において,もし契約において,ある契約が譲渡されている,ある契約は譲渡されていない,共同著作物について,5人いたら,2人は譲渡していなくて3人が譲渡している,こういうことになると,所有権の例で言いましたように,安定的な基盤というのがないというのに等しいのではなかろうかというふうに思うんです。したがって,そういうところには利用促進というのはなかなか難しいのではないか。我々も生産者であるとともに利用者なわけです。いろいろな機会に著作権の調査をしますけれども,やはり非常にやりにくいというふうなことを利用者として実感しております。経験談が中心になりましたけれども,お答えになったかどうか。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
それでは,金原構成員。
【金原構成員】
私も出版の中にいる人間ですので,先ほどの糸賀構成員のご質問に若干コメントとして申し上げたいんですが,日本の著作権法には出版権の設定という,79条という非常に便利な項目があります。長年日本の出版界は著作者の先生方とこの出版権の設定ということで,出版物の発行にかかる権利のみ契約をしてきたわけです。つまり,申し上げたいことは,長年の慣習でありまして,出版権を設定すれば,これまではすべて対応できていたわけです。したがって,欧米の出版契約のように,複製であるとか,あるいは二次利用であるとかということを考えないでも済んできてしまったんですが,欧米,少なくとも私の知っている限りでは,この出版権の設定という,そういう項目は海外の著作権法にはないのではないかと思います。
つまり,どういうことかというと,出版にかかる項目をすべて羅列した上で権利の移転を図らなければ出版ができない。糸賀構成員がおっしゃるように,契約で対応できると思います。しかし,日本のこれまでの慣習と長年の著者の先生方との権利の移転問題について,そういう認識がまだ日本にはないので,それに対応するために,じゃあ,もうちょっと言いますが,先生方から権利の移転が行える,そういう状況に現在日本があるかというと,それは非常に難しいであろう。つまり,それは出版権の設定ということだけで十分お互いに満足してきてしまったから。ここで新たな慣習をつくれば,それは契約で対応はできるかもしれませんけれども,でも,それが現実の問題としては非常に難しいので,違法複製,その他に対応するための出版者としての版面にかかる権利というものをつくり上げることによって,著者の先生方から権利の移転がなくても対応できる体制ができるのではないかということではないかと思っています。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【瀬尾構成員】
今のいろいろお話をありがとうございました。いろいろお伺いして,今まで一構成員としていろいろな意見を言わせていただいてきました。ただ,今日はちょっとこれは写真という固有の分野についてお話をさせていただこうと思います。
日本は非常に写真が豊かで,多くの写真が使われていて,文化としても定着しているし,また,産業としてもカメラ産業は非常に大きなものがあります。また,広いアマチュア層,プロ,それからファンがいて,日本の中で写真というジャンルは非常に栄えていた。これは欧米と比べてみても非常にプロの数,それから写真展の数,いろいろな意味でも非常に上質な文化を提示していると,私はそう思っています。
何で写真がそういうふうに繁栄したかの1つに,著作権譲渡がないからなんです。写真というのは,撮って,20年,30年持っていて初めて価値が出るんです。例えば,その撮ったときに驚きもあって,そこで価値が全くないとは言いません。でも,何でもない町の風景が,20年あったときに写真家の風景になるんです。例えば,今回,大震災があった,そのときに,あそこの町をたくさん撮っている方たちが実はいるんです。もう失われて二度と戻らないんです。私たちはそれをきちんと残して伝えることに誇りを持っているし,そういう文化の形をしている。今日のお話を伺っていると,譲渡契約を前提とするということに関しては,写真という職業自体を否定することに近いんです。ですから,職業として,アメリカ,それから欧米,決して弱いとは言いませんけれども,日本ほどきちんとしたいろいろなものは確立はしていない。これを譲渡契約によってすべて撮ったものを譲渡してしまうことを前提とすると,写真家は30年たったときに,二十歳のときに撮った写真を50になって使おうと思っても使えないんですね。つまり,それはもうすべて埋もれたままになってしまう可能性がある。
そういうふうな中で,やはり少なくとも写真という経年によって価値が増してきたり,文化として生きていく分野としては,譲渡ということは困る。これはほんとうに職業としてのサイクルを非常に根本的に壊すことで,これについて雑誌協会さんとのライフラインをつくったときでも,譲渡契約になってしまうのであれば,どうしたら避けられるかということを一生懸命考えていました。もし今,出版さんたちがお考えになっていることで残る道が,例えば法的な何らかの裏づけがあるか,もしくは譲渡契約しかないとすると,法的な裏づけを考えていただいてでも譲渡契約は避けていただきたい。それは1つの写真というジャンルをほんとうにつぶすことに近いです。それをスタンダードとするのであれば。やはりそういうふうな,これはほんとうに写真という固有の事情なのかもしれないし,正直,電子書籍の流通にどこまでかかわるか,正直言って疑問です。電子書籍は関係なく,写真家は今,譲渡契約を実は迫られてきつつあるんです。そうすると,若い写真家が全く自分の写真を10年やっても残せない状態が来て,これを何とかして阻止して,写真という文化を日本で残していきたいということをしてきています。
ですので,全体論とか,いろいろ流れとか,そういうこともあるかもしれませんけれども,今日は写真という立場からすると,譲渡がいかに困るかということを申し上げるとともに,それを避けられる手段があれば,いろいろなことをどんな手を使ってでもと言ってはおかしいですけれども,何らかの措置を講じてでも譲渡契約が一般化することだけは避けていただきたい,これは切に思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
里中構成員。
【里中構成員】
創作者の立場として,写真と漫画とで違いはありますけれども,私からも一言と思いますのは,海外において漫画というものがなぜ日本ほど発展しなかったかという理由に,この著作権を作者が持っている,すべて著作者が持っている日本のあり方というのは大きく関係していると思っております。
アメリカではアメリカンコミック,出版者が著作権を持って,それによって何が起きているかといいますと,作者,元の原漫画家が亡くなった後も,その画像は自由に使えるわけですね。また,その作品を出版者の意図で自由に演出できるわけです。元ネタがいいなとなると,出版者が脚本をだれかに依頼する,あるいは相手役の女性はほかの漫画家のほうがいいだろうからそっちに頼むとか,映画による分業制作のような形で長年アメリカンコミックはつくられてきました。
その際に見事なまでに発展したのが職人芸だと思っております。作者が亡くなっても,同じキャラクターをかける絵かきとしてのすばらしい漫画家はたくさんいるわけですね。しかし,作品性ということはどうだったのかなと,過去50年,60年を振り返ったときに,我が国においては,その作者の持っている作品性そのものが作者のすべてでしたし,著作権も譲れないというか,譲らない。だからこそ生きている限り,その作者がかくわけです。亡くなったら,アニメーションは出ますけれども,作者が亡くなったら,もう作品は二度と新しくつくられないわけです。ドラえもんのアニメはつくれます。鉄腕アトムのアニメもつくります。ただし,作者個人がかこうとする作品はもう二度と出ないわけですね。それに比べまして,アメリカでは,スーパーマンならスーパーマン,バットマンならバットマン,実は何代も漫画家が入れ代わってかいております。これは出版者の意図でどのようにでも仕事の発注ができるからなんです。脚本はこの人,相手役はこの人,書き文字はこの人というふうにやってきました。
それによって,日本とアメリカとだけを比べるわけにはいきませんが,世界で日本の漫画がこれだけ個性にあふれて,作品世界も広く,ジャンルも広く,テーマも広く扱われてきて,発表されてきたのは,やはり作者自身の個性と,自分の作品だという誇りゆえに幅広がってきた,また作品であるから,出版者の意図と関係なく,一か八かで自分のテーマをぶつけることができるわけですね。ですから,大化けする作品もあれば,一般的に見るとどうかなと思っても,異常なまでに変化を遂げて読者の評価を得られる作品も出てくるわけです。だから,デッサン力がなくとも,多少へんてこと言ったらおかしいんですけれども,そういうものでも読者の共感を得られれば,ありとあらゆる作品がヒットする可能性を持ち続けてここまで来たということがいえます。これは果たして著作権を預けてしまって,その預ける話ばかり,あるいは著作隣接権を持つ話ばかりにどうも行ってしまうんですが,それに伴う責任というのがやはり出版者にも生じると思うんです。アメリカの例にあるように,著作者のほうから増刷を要求された場合に,増刷しなければいけない,こんなおそろしい事態が生じるわけです。がんじがらめになってしまっている。
確かに,海賊版,違法コピーというのはゆゆしき一大事です。社会全体で正義と確固たる理念を持って立ち向かわなければいけませんが,おっしゃるように,著作隣接権を持つ,あるいは権利の譲渡だけでほんとうに解決できるのか。この会議で私はずっと心配していたのは,私が心配性なせいかもしれませんけれども,一応手法として出版者が権利を持てば,海賊版対策が可能になるという言い方をされてきましたが,もし仮に,著作隣接権あるいは著作権の譲渡があったとして,それでも結果的に違法コピーが撲滅されなかったときにどうなるんでしょうか。何かほんとうにこのことによって新しい法をつくることによって,違法コピーが撲滅されると自信とかがおありなんでしょうか。すごく不安なんです。権利を持っていただいた,じゃあ,それで違法コピーに対して対抗策ができたと。でも,結果,数字として違法コピーが減らなかった場合に,社会に対して何かもう答えを用意されているのでしょうか。それはとても心配です。
私,個人的には,いくら著作権法を改正して,例えば,いくら著作権譲渡したとしても,本気で違法コピーをやって金もうけだけが目的で一生懸命違法コピーを広めている人たちに対して,全く効き目がないと思っています。絶望的な気持ちになっております。だから,むしろ違法コピーを防ぐ有効な手段がデジタルにはデジタルで対応するしかないじゃないかと思っております。つまり,デジタル出版を先行させて,そこに国は全力をかけて違法コピーができないような,すかしなり何なり,これはいたちごっこになりますけれども,それによって新規の読者,早く続きが見たいという読者をデジタル上でまず見せてしまうという,それによって違法コピーによるもうけを減らしていくという対策しかないんじゃないかなと個人的には思っております。
個人の感想も含めてで申しわけないんですけれども,この先,いろいろなことがもし法的に決められた暁には,ほんとうに違法コピー対策はそれで完璧に有効,何%という目安でもいいんですけれども,おありなのかなという疑問にどなたかお答えしていただければすごくうれしいなと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
先ほどの金原構成員のご意見と合わせると,何やら現状でよろしいというようなご意見になるのかとも思いますけれども,せいぜいのところ,出版権の設定というようなことでこれまでどうにかやってきたんですけれども,制度としてはそういうもので対応していかざるを得ないのではないかという。何かお二人のご意見を伺っていると,そのあたりになるのかなというような気もしましたが。
【金原構成員】
私の意見はちょっと違うんです。
【渋谷座長】
違うのですか。
【金原構成員】
違います。私の意見は,先ほどの糸賀先生のご質問にお答えする形で説明したわけでありまして,里中構成員も,とにかく違法なものは撲滅しなければいけないというお考えは,これは我々,共通した認識だと思うんです。我々としては,やはり何らかの権利がないと,違法利用にも対応できない,でも,里中先生はそれがあってもほんとうに撲滅できるのかという,そういう疑問をお持ちなんですが,我々としては,ほんとうにやりたいんです,やりたいんだけれども,いざそういう場面に行くと,あんた方,権利を持っているのかと門前払いになってしまう。とにかくやってみなければわからないという要素は若干ありますけれども,そういう違法な利用については法的な対応をとるということも絶対に必要だろうと思います。そうしなければ,多分なくすことはできない。しかし,我々としては,指をくわえて見ているだけに近い,いろいろ言うことは言いますけれども,でも,だからといって権利者でないものが言ってもなかなか効果は薄いかなと。ですから,それはもう里中先生のご懸念のとおり,我々は一生懸命やらなければいけないと思いますし,撲滅するように最大の努力をいたしますが,その前提をつくっていただきたい,そういうことです。
【渋谷座長】
片寄構成員。
【片寄構成員】
里中先生が出版者に権利を付与したときに,違法サイトが100%なくなるのかということですが,それについてはきちんと明瞭に今答えられることはできないと思いますが,先ほど,恩穂井さんが言ったように,この問題は,出版者が訴権を持ったからそれで100%なくなるというものではなく,国全体がこの違法サイトをどうするかというようなことを含めて考えていかないといけない問題だと思います。
違法サイト等々をなくしていくことによって,著作者にも出版者にも利益が還元されて,創作基盤がより安定していくんだろうという視点で考えていかなければならないと思います。将来がどれだけ保証されるか,不安がどれだけ解消されるか,違法サイト対策をどうやっていくのか,出版者が安心して電子書籍の促進,流通に頑張れるのか,というようなことを,まず議論しなければいけないのではないかというふうに思っております。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
三田構成員,お願いします。
【三田構成員】
日本の出版というのは,世界と比べても非常に発展をしてきたし,出版文化というものも世界に誇れるものだろうと思っております。
日本では,ほとんど契約書というようなものも結ばずにやってきたんですね。それはなぜ可能だったかというと,これは著作権法がしっかりしていたということと,それから,慣行というものがあって,みんながそれに従うという非常によきモラルがあったからだろうというふうに思います。
これを全部契約でやれと言われても,各作家が全部弁護士をつけて,その都度,契約の条件を吟味するというようなことをやっていると,もう創作の時間がなくなってしまいます。今までと同じように非常にシンプルに慣例に従ってみんなでやればいいというようなもの,そういう状況をつくることがこれからのクリエイティブな作家保護の能力を発展させることにつながるだろうというふうに思います。
それで私は一番問題なのは,出版権という言葉が著作権法に書いてあります。これはどう読んでも,紙の本を前提とした出版権でしかないんですね。ですから,これをもっと拡大する必要があるだろうと思います。出版者にもっと大きな権利を与え,権利を与えるということは,同時に責任も負ってもらうということをみんなでコンセンサスを持って法律を改正する必要があるだろうと思います。今,隣接権という言葉にこだわっているんです,それは何だかわからないから今のままでいいんじゃないかという議論に対しては,私は反対をします。何らかの形で法律を改正するんだというコンセンサスを持って,こういうふうに法律を変えたらこうなるんだというシミュレーションをしながら,よりよき法律の改正ということを考えていく必要があるんじゃないかなと。今の出版者の提案を,それはだめだと門前払いするのではなくて,ほんとうに日本の出版文化を守るために何が必要なのかということをちゃんと考える必要があるのだろうというふうに思います。以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,短くお願いします。この部屋,10分か15分くらいは延ばしてもいいと言われているのですが,もう15分は超過していますので,どうぞよろしくお願いします。
【前田構成員】
わかりました。
今,三田先生がおっしゃった現在の出版権を電子媒体にも広げるということと,新たに著作隣接権に相当する権利を設けるということとは全く別のことだと思います。出版者から,本日,プレゼンテーションがありましたのは,これはどちらの求めということになるのでしょうか。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会酒井副委員長】
隣接権のほうを考えているということです。私どもも書協の中で,いろいろな手立てが考えられないかということを議論をしておりまして,当面,やはり隣接権で対応するということで法的な安定性が築き上げられるのではなかろうかというふうに思います。
先ほどの里中先生のお話ですと,例えば,著作権法には刑事罰も既に用意されているわけですね。刑事罰が用意されているのにもかかわらず著作権侵害が起こっている。これは一体だれが責任を負っているのかという話も一方ではあるのかなというふうに思います。
出版者,我々が出版界全体として隣接権を持って違法なものに差止請求を権利を背景にしてやっていこうというのは,我々のある意味では著作者,著作権,出版物を守っていこうという決意の表明でもあるわけですので,ぜひ著作者の方々と一緒になって撲滅していきたいというふうに思っているということが基本的な考え方なんです。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,短くお願いします。
【社団法人日本書籍出版協会知的財産権委員会平井副委員長】
短く補足させていただきます。
出版権と申しますのは,これはあくまでも著者と出版者との契約によって設定されるものです。我々日本の出版社は,著者の皆様から著作権を取り上げるようなこと,没後50年にわたって著作権を取り上げるというふうな内容の契約をよしとしてきませんでした。これからも,仮に必要になったとしても,少なくとも先生方が嫌だというものを無理にやれというようなつもりは毛頭ございません。
そうした前提に立ちまして,著作者の先生方が今お持ちの権利をそのまま持っていただいたまま,我々が侵害行為に対して効果のあるタスクフォースを行う,あるいは,今いろいろ環境がごちゃごちゃして,デジタルで何をやるにしてもすべてが実験であるような状況の中で,それを交通整理しながらパブリッシャーとして責任を持ってジタルの世界でもパブリッシュしていく。そのことのために著作者の先生方の権利に何ら影響を与えない著作隣接権のような権利を出版者にも少ないながらいただければ,というふうな趣旨で今日のご提案をさせていただいております。以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございます。
【糸賀構成員】
2分で終わります。
私,先ほど,瀬尾構成員が言われたように,著作者の中には,やっぱり譲渡は好ましくないというふうにお考えの方もいらっしゃるのはよくわかります。ただ,今日いただいたこの調査研究報告書を拝見すると,ここには契約のテキストという表現をされていますが,要するに,ひな型はいろいろありまして,その中で当然オプションで,これは含む,これは含まないという選択ができるわけですから,今まさに言われたような点も含めて,自由度が高いのは,やはり私はこれは契約によって実現できるのではないかと思います。法律によりますと,すべての出版者に一律に権利が与えられることになりますので,そういう意味での自由度は契約のほうが高いのではないかというふうに考えます。
それから,先ほど私が副作用,権利を与えた場合の副作用について,法律の専門家の方にぜひご意見を伺いたいというふうに申し上げましたら,里中構成員から極めて具体的にその副作用に当たるようなものをご説明いただきました。それで私は一応,それも1つの副作用として起き得るんだなというふうに理解いたしました。どうもありがとうございました。以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,議論が尽きないようなのですが,二十数分超過してしまいました。これでお開きにするのはもったいないような気がするのですが,時刻が参りましたので,このあたりとさせていただきたいと思います。大変どうもありがとうございました。
それでは,事務局から連絡事項がありましたら,お願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
長時間のご議論ありがとうございました。
本日出ました意見も含めまして,検討のための論点を整理させて次回に提出させていただければと考えております。
また,次回は8月26日を予定しておりますが,また詳細につきましては,決まり次第連絡させていただきたいと思います。
事務局からは以上でございます。
【渋谷座長】
それでは,これで本日の会議を終わらせていただきます。本日は大変ありがとうございました。

── 了 ──

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