電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議(第14回)議事録

1.日時
平成23年12月21日(水)  16:00〜18:00
2.場所
文部科学省旧庁舎6階第2講堂
3.議事
  1. (1)「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議報告(案)」について
  2. (2)その他
4.出席者(敬称略)
糸賀雅児,大渕哲也,片寄聰,金原優,里中満智子,渋谷達紀,瀬尾太一,田中久徳,常世田良,中村伊知哉,別所直哉,前田哲男,三田誠広
【渋谷座長】
それでは,ただいまから電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議第14回を開催いたします。
本日は,ご多忙の中ご出席いただきましてまことにありがとうございます。
議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところであります。特にご異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【渋谷座長】
それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにいたします。なお,カメラ撮りにつきましては,会議の冒頭までとさせていただきますので,配付資料の確認までということでご了承願います。
本日はご多忙の中,森副大臣が出席されておりますので,開会に当たりまして一言ごあいさつをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【森副大臣】
構成員の皆様方におかれましては,ご多用の中本検討会議へのご参加を賜り,まことにありがとうございます。
本日,これまでご議論を賜ってまいりました各検討事項につきまして,お取りまとめをいただくことになりますが,まずはこれまでの各構成員の皆様方の精力的なご議論,ご協力につきまして,深く感謝の意を述べさせていただきたいと思います。大変にありがとうございました。
昨日,作家の方々が自炊代行業者に対してスキャン行為の差しとめを求める提訴をされたとの新聞報道がされました。この問題もデジタル化技術の発展に伴う出版物の利活用のあり方にかかわるものであり,その意味でも本検討会議での議論は重要なものと思っております。
報告案におきましては,これまでのご議論の成果として,国立国会図書館におけるデジタル化資料のさらなる活用方策や権利処理の円滑化及び出版者への権利付与といった,デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進のための重要課題について一定の方向性が示されており,大変意義深いご提言であると認識しております。
今後につきましては,国立国会図書館,出版者等の関係者におかれまして,具体的な取り組みの実現に向けた積極的な検討が進められることを期待いたしますとともに,文化庁といたしましても,お示しされました方向性に基づき,著作権法の改正に向けた準備作業及び出版者への権利付与に係る法制面における検討などについて,さらなる尽力をしてまいりたいと思います。
最後になりましたが,改めて感謝の意を述べさせていただきまして,私のあいさつとさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【渋谷座長】
大変ありがとうございました。
それでは,まず,事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の中ほどに書いてありますが,本日は資料は2点でございます。電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議報告(案)の概要,そして,資料2といたしまして,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議報告(案)の2点でございます。不足等ございましたら,事務局に申しつけていただければと思います。
以上です。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,これから議事に入りたいと思いますけれども,本日は,これまでの検討会議におきまして,3つございましたけれども,精力的なご議論を賜ってまいりました各検討事項に係るご議論の内容を整理した報告案を事務局におきまして作成しているわけであります。本日はその報告案につきましてご議論いただいた上で,お取りまとめいただければと存じます。
それでは,まず,報告案につきまして,再び事務局より説明をお願いします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
それでは,配付資料の内容について説明させていただきます。資料1の概要及び試料2の本体です,それをそれぞれ関係する部分のポイントについて説明させていただきたいと思います。
まず,概要の2枚目にございますけれども,検討事項1,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスのあり方に関する事項といたしまして,議論の結果を整理させていただいております。図書館からの送信サービスの実施について,そして,図書館の蔵書を対象とした検索サービスの実施について,デジタル化資料の民間事業者等への提供について,それぞれご議論いただいた内容について概略を整理させていただいておりますが,この検討事項1につきましては,8月26日の検討会議において一定のまとめをしておりまして,基本的にはその内容と同様となっておりますが,最初にこの報告をまとめるに当たって,内容を変更しておるところがございますので,そこのポイントについて説明させていただきたいと思います。
報告案のほうです。資料2の9ページをごらんいただきたいと思います。国会図書館からの送信先等を限定した上でのサービスの実施についてといたしまして,3,国会図書館から送信データの利用方法の限定についてでございます。1番目の丸のところにありますように,具体的には所蔵冊数を超える同時閲覧の可否及びプリントアウトなどの複製の可否について検討が進められたというところになっております。そして,1については,「同時閲覧に係る特段の制限をしないことが適当であると考えられる」。そして,2については,「送信先における対象出版物を複製可能とした場合,出版物の需要に一定程度の影響を与える可能性が問題であるとの指摘があった一方,利用者からのプリントアウトに係る要望がなされるものと想定されることから,認めてもよいのではないかとの意見もあった」。
そして,次のページをごらんいただきたいと思います。一番上の丸ですけれども,「この点については,送信サービスの対象出版物の範囲が絶版など市場において入手することが困難なものに限定されていることから,著作権法31条1項1号と同様の複製目的や分量を制限するとともに,ルールに沿った運用が担保できる公立図書館等における実施に限定されるという条件のもとであれば,プリントアウトを認めることは適当であると考えられる」という形でこの内容をまとめさせていただいておるところでございます。この部分につきましては,8月にまとめという形で整理させていただいた以降,意見募集も行い,そこで出されました意見などを踏まえました上で,座長,さらには各構成員ともご相談させていただいた上でこの内容という形で整理させていただきました。
続きまして,検討事項2のポイントです。概要は3枚目でございまして,報告案につきましては,15ページ以降ということになります。出版物の権利処理の円滑化に関する事項につきましては,出版物の権利処理の円滑化を図るための方策の必要性について,どのような必要性があるのかというところをまず整理いたしました。市場で流通している出版物,そして,いわゆる孤児作品などの権利処理が困難となることが想定される出版物それぞれにおいて,流通の状況ですとか,その必要性,必要とされる内容がどういったものであるのかというところを整理しているものです。
報告書といたしましては,その内容は16ページ以降に書かれておりますが,概要のほうを見ていただければと思います。さらなる電子書籍市場の発展に向けた出版物に係る権利処理の円滑化のため,そして,中小出版者や配信事業者など多様な主体によるビジネス展開の実現,2つ目といたしまして,孤児作品などの権利処理の円滑化を目的とした権利処理を円滑に行うための仕組みを整理することが必要とまとめられております。そして,具体的な方策のあり方としまして3点提案されておるところです。1つ目としまして,出版物に関する情報を集中的に管理する取り組み。そして,権利処理の窓口的な機能を果たす取り組み。さらには,権利処理に係る紛争の処理に関する取り組みについて提案されておるところでございます。そして,その実現に向けては,権利者,出版者,配信事業者など,関係者間の具体的な協議を行うとともに,関係省庁が積極的な関与,支援をすることが重要であると整理されておるところでございます。
続きまして,検討事項3,出版者への権利付与に関する事項でございます。概要は4枚目,そして,報告書本体は25ページ以降ということになっております。まず,出版者への権利付与の意義,そして必要性についてですが,これらにつきましては,出版者から電子書籍の流通と利用の促進,そして,出版物に係る権利侵害への対抗の2つの観点からその必要性が主張されたところでございます。そして,電子書籍の流通と利用の促進の観点,出版物に係る権利侵害への対抗の観点,それぞれの観点につきまして議論が行われたところでございます。
流通と利用の促進の観点におきましては,積極的な意見といたしまして,権利情報の管理や権利処理に係る取り組みが進められることなどにより,電子書籍の流通,利用の促進が進むというご意見があった一方で,新たな権利者が増えることは配信事業者等の電子書籍市場への新規参入を阻む可能性も存在すること,さらに,電子書籍市場に与える影響について経済的,社会的検証を行うことが必要ではないかといったご意見があったところです。
出版物に係る権利侵害への対抗の観点といたしましては,権利侵害に対して出版者が主体的に対抗措置をとることの必要性については意見の一致がなされたところでございます。具体的な対応方策としましては,出版者への権利付与,そして,現行制度における対応,現行の著作権法の出版権の改正などによる対応が考えられるという形で案が示されておるところですが,具体的な検討につきましては,引き続き検討していく必要があるという形で整理されておるところでございます。そして,出版者への権利付与に関する事項につきましては,これらの検討の結果を踏まえて,出版者等が中心となり,電子書籍市場に与える全般的な影響について検証が必要である。また,法制面における課題の整理につきましては,文化庁において専門的な検討を実施する必要があるという形で整理されておるところです。
そして,その上で電子書籍市場の動向を注視しつつ,国民各層にわたる幅広い立場からの意見を踏まえ,制度的対応も含め,早急な検討を行うことが適当であると整理させていただいたところでございます。
概略ですけれども,配付資料の説明は以上でございます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,報告案のうち,検討事項1,デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスのあり方に関する事項につきまして,ただいまの説明に対するご質問も含めまして,ご意見等ございましたらお願いしたいと思います。この検討事項1,検討事項2,3と,こういう順序で取り上げていきたいと思っております。
そこで,まず,検討事項1についてご意見等ございましたらお願いします。どなたからでも結構ですので。はい。
【糸賀構成員】
事務局のほうのまとめもありまして,これまでの議論をうまく整理していただいたとは思います。ただ,今回改めてこの報告の案が出てきて,今までの議論のほかに,おそらくこれは理解を助けるための資料というのも添えられた結果,本文をどう読むべきかというところで改めてちょっと疑問がわいたんですが。
と申しますのは,今日の報告案の5ページのところに図1として,国会図書館におけるデジタル化の状況というのが具体的に示されております。これを拝見しますと,図書について約88万冊が1968年までのものについてデジタル化が既に終わっている。この会議は電子書籍の流通と利用の円滑化ということでしたので,主に電子書籍のことを専ら考えてきたわけなんですが,ここには国内の刊行雑誌も既に2000年までデジタル化が完了しているということが示されております。
そういう意味で,この本体のほうの対象の出版物,9ページに国会図書館からの送信サービスに係る対象出版物の限定というくだりがございます。ここでは電子書籍市場の形成や発展を阻害しない,あるいは利益を不当に害することがないようにという,これは当然のことなんですけれども,ただ,これでずっと読んでいくと,「基本的には相当期間重版していないものであるとともに,電子書籍として配信されていないなど,一般的にその出版物の存在の確認が困難である市場における入手が困難な出版物」。そうしますと,雑誌というのは,刊行されて数カ月か,1年たつかたたないかで市場における入手は困難な出版物になるわけなんです。しかもこれは電子書籍として配信されていないと書いてありますから,もちろん電子雑誌は電子書籍としては配信されていないわけなので,多くの国民からすれば,新刊の雑誌が書店で売られている期間を過ぎたら,これをどうやって入手するかというと,多くの場合図書館が保存しているバックナンバーを使うわけなんです。
そう考えると,逐次刊行物といいますか,雑誌についてもこの書籍と同じように考えられるのか,考えていいのか。あるいは,そこはやはり今後継続して協議の対象として考えていくべきなのかというようなところが,いずれこれの全体を読んでいくと,今の国会図書館のデジタル化の状況等加味して,国民は,では,古い雑誌についても国会から送信していただけるようにも読めてしまうように思いました。そこらあたりをあえて書かないという考え方もできるし,簡単に触れておいたほうがいいのかというふうにも思いました。
なお,今私が読み上げた9ページの一番上の丸ですけれども,「市場における入手が困難な出版物とするのが適当だ」という,これはこれで結構なんですが,その前にある「その出版物の存在の確認が困難である」という表現は,存在自体は確認できるんだと思います。ただ,やはり入手が困難なのであって,存在の確認そのものも困難なものをここで我々は想定していたわけではないと思いますので,ここらあたりの表現もちょっと見直したほうがいいのではないか。本来指しているものを的確に表現するようにしたほうがよいように感じました。
なお,発言の機会が与えられましたので,もう1点。前の8ページのところの下から3番目の丸なんですけれども,ここに,大学では学生が使う,したがって国会図書館にしかない希少な出版物が利用できる利点が大きい。最後のところに,これは私がこの会議で繰り返し申し上げてきましたが,学校図書館についても対象とすべきではないかとの意見があった。こういうふうに書いていただいて大変ありがたいんですが,これはやはり学校図書館の関係者,とりわけ高等学校の関係者にこの話をすると,それはぜひ必要だ。やはり高校2年生とか3年生で,今ある程度長い論文,レポートを書かせる学校がほんとうに高校で増えてきております。これは文科省さんはちゃんと把握していると思いますが,学習指導要領の改訂に伴って,探究型学習と言い始めたときに,場合によっては中学生とかでもいろいろと調べて,その成果を複数の生徒で取りまとめたりとか,1人の生徒がそれを論文としてまとめるということを行うところがほんとうに増えてきております。そういったときに,とても地元の,自分の学校図書館だけでは十分に調べものができない,公共図書館に行ったり,県立図書館にしていますが,国会図書館にしかないようなものがやはり学校図書館で利用できると,この利点は,大学生もさることながら,高校2年生,3年生にとっても大きな利点があるだろうと思います。
法改正なりをいずれ行うときには,やはりぜひ学校図書館へも一定の配慮はしていただきたい。そういうふうなことは機会あるごとに,私もいろいろやりますけれども,文化庁さんからもいろいろ機会ごとに働きかけをお願いしたいと思います。
以上2点です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
そうしますと,報告書に先生のご意見,ニュアンス程度かもしれませんけれども,つけ加えたほうがよろしいという,そういう筋のご意見。
【糸賀構成員】
今,2点申し上げたうちのどちらのほうに関してですか。
【渋谷座長】
両方ですが。
【糸賀構成員】
特に私は1点目のほうの,要するに,雑誌です。国内刊行雑誌については,これについても送信していい。つまり,市場における入手困難という条件があれば,これは入手困難な出版物に相当しますから,国内雑誌についてもやはり送信できたほうがいいと思います。そういう議論は,この場ではあくまで電子書籍の議論だったので,実はあまり時間をかけてしていないんです。ですが,この資料とこの文面を読む限り,電子雑誌といいますか,もともとは電子雑誌としか出ていません,ちょっと語弊がありますが,紙に印刷された雑誌として出ているものについて,市場ではもう出回っていない,しかも国会図書館ではそれがデジタル化されている。とすれば,これについても電子書籍に準じて同じように考えて送信可能というふうにしていただければ,図書館や国民は喜ぶだろうと思います。
とりわけ,そういった雑誌については,本には載っていない情報がいろいろと載っているわけですので,これは国民にとっては大きな利益につながっていくだろうと思います。そういう意味では,簡単に触れるなり,場合によってはそれについては別途引き続き検討の場を設けることが必要であるというような指摘があってもいいのではないかと感じました。
【渋谷座長】
学校図書館はどういたしますか。
【糸賀構成員】
学校図書館については,ここを強調していただくなり,ほんとうは構築か何かにしてもらいたいところですが,そうはいかないでしょうから,やはり学校図書館における探究型学習を進めていく上でもこれを対象とすべきではないかというふうな文言を多少詳しく,幾つかの言葉をつけ足していただければ,それはそれで構いません。
【渋谷座長】
そうですか。わかりました。
雑誌のことはこの検討会では,いわば盲点になっていたように思います。そうしますと,今からその問題について何か書き加えるというと,新たにここで皆さんに検討していただいてというようなことになりますが,どうでしょうか,修文程度の修正で,雑誌のこともありますよというようなことをほのめかすというか,指摘するというか,そういうことではいかがでしょうか。
【糸賀構成員】
それで結構ですけれども,5ページにとにかくこういうデジタル化の状況が載るとなりますと,ここには図書と国内刊行物,あと実は博士論文というのもあるんですけれども,これは今全国の,私の大学もそうですけれども,国会図書館のほうでデジタル化していただけるということで,博士論文を提供しております。本来,どれだけ利用があるかわかりませんけれども,当然これについても国内で必要な方が見られるようになったほうがいいと思います。そういう意味では,先ほど9ページの記述のままでもいいのかもしれません。ただ,読み解釈,この読み取り方として電子化された雑誌であるとか,博士論文についても市場における入手が困難ですから,それに準じて扱われるという了解でよければ,それで構いません。
【田中構成員】 
ただいまの糸賀先生のご指摘の部分なんですけれども,雑誌も含めて,送信対象の範囲については私どもまた今後これを受けて協議をさせていただければというふうに考えておりますが,雑誌の中には,今そもそもデジタル化の対象にするしないの判断の際にも,法律とか医学とかデータベース化されて提供されている雑誌というのも,それはジャーナルですけれども,非常にたくさんありますので,そういったことも当然考慮するということが大事だと思っておりますし,それから,2のところの3つ目のところで,学術関連の出版物や公的機関の調査研究報告書のようなものを優先的にとありますけれども,実際のところ,こういった資料の多くは,実は単行書ではなくて,国会図書館では雑誌として扱われている。今回デジタル化したもののうち相当部分は,実はこの公的機関等の調査研究報告書に類するものが雑誌となっておりますので,そういったものを中心に商業的な出版とすみ分けながら送信対象というのを具体的に協議,検討させていただければというふうに。ここでの表現の扱いとはまた別の話かもしれませんけれども,そういったことが念頭にあるということはどうぞご説明いただけます。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【田中構成員】
済みません,別のことなんですけれども。  最終報告書がまとまった段階で申し上げるのはちょっと恐縮なんですが,今後のことにつきまして,確認を含めてちょっと1点確認させていただければと思うんですけれども,この取りまとめのほうに,検索サービスの実施について,本文検索サービスの提供が必要である,そのためにはテキスト化することが必要であるというような取りまとめをしていただいておるところなんですけれども,実際の12ページの記述のところ。検索結果の表示とテキスト化が1,2と分かれておりまして,2の結果の表示については,関係者の合意形成を今後図っていく。さらにその協議の結果を踏まえた上で制度改正の必要等が別途検討されるべきであるということで,こちらについては今後どのようにこの部分についての扱いを進めていくかというのはわりあい明確になっているというふうに読めるんですけれども,1のところ,この検索サービスそのものが必要であるとされているんですが,では,そのまとめのところで,不当に害することにはならないというふうなご判断というか,まとめにはなっておるんですけれども,その前のくだりのところで,「著作権法において許諾が必要となる行為か否かについては十分な整理が必要であるが」というふうになっております。
このところについて,私どもは当然法律の解釈をする機関ではありませんので,現行法における許諾が必要か否かというのはどこかでご判断いただかない限りは,実際の実施もできないですけれども,この部分につきましては,今後この報告をもって,さらに著作権分科会等でご審議いただけるというような,あるいは別途著作権課様のほうで何か方向性が示されるなり,それで,逆に許諾が必要になるということになれば,またそれを前提に今後考えていかなければいけませんので,サービスは必要であるとなっていて,それで,法的な扱いがどうであるかということがまだはっきりしないということでこの報告書は終わっているものですから,今後についてどのように考えればいいのか,質問という形で申しわけないんですけれども,ちょっと確認させていただければというところでございます。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
今のご質問のところですけれども,画像ファイルからのテキスト化をする行為がどう評価できるのかというところ。これについてここの記述では許諾が必要なのかどうなのかということを明確に記載しておりませんが,その作業を行う行為がどういう形で今後国会図書館のほうで進められていこうとするのか,さらには,それは検索結果の表示をどのようにするのか。それによって国会図書館における検索サービスをどのようなスケジューリングで進めていくのかというところとも関連してくるものであるかと思っておりますので,そこが明確になってきた時点をもって,改めてその表示の方法とテキスト化を行う行為の評価ということを整理すべきではないかというところで,この検討会議においても具体的にテキスト化の行為について特段言及がなされなかったと考えております。
【田中構成員】
済みません,こだわって恐縮なんですけれども,結果の表示の検討は今後されていくので,その中であわせてテキスト化の可否についても一緒に扱えばよいというようなことでは,確かにそうではあると思うんですけれども,ただ,結果の表示いかんにかかわらず,検索して,結果は表示せずとも本文を対象にした検索サービスを実施するということ自体は,中での検討でもありましたように,それ自体は独立して可能なことでありますので,そういう意味で,表示のいかんにかかわらず,つまり本文を表示せずとも当該の検索対象としてまずこの検索データを整備すること自体は独立しても存在し得るのかというところなんですが,それもやはり一緒に検索サービスの提供は実施を含めたセットでの今後検討という,そういう想定でここの検討がなされているということでございますか。済みません,改めてで恐縮ですけれども。
【永山著作権課長】
現在の結果の表示の方法について,今関係者間でいろいろご協議が行われていると思います。その結果が出て,いついつぐらいから大体実施しようをということはある程度見えた段階で,当然公的には両方,要するに,前者の蓄積のところをどう評価していくのか,現行法で対応が可能なのかどうか,やはり法改正が必要なのかどうかという点と,仮に著作物性のあるような表示をやろうという方向になれば,そこの手当てをどうするのかという,この全体を必要な時期までにあわせて検討させていただきたいとは思っています。
【渋谷座長】
よろしゅうございますか。
【田中構成員】
はい。
【渋谷座長】
ほかに検討事項1。三田構成員。
【三田構成員】
今の糸賀先生のほうから誤解というか,拡大解釈のようなご意見と御要望が出されましたので,一言申し上げておきます。
今国会図書館では,関係者を集めた実務者会議というものが開かれておりまして,実際にどのように送信するか。送信すべきものとそうでないものとをどういうふうに分けていくのかということは現在検討中でありまして,実は今日も午前中はそういう会議をやっておりました。この会議は今後ともかなり密度高くやっていって,最終的などういう形で実行するのかということが決まってくるだろうと思いますが,その点については,もうこの会議では全くやってこなかったわけであります。
今糸賀先生が言われたような誤解を,今日いらしているマスコミの方がそのまま鵜呑みにしてしまうといけないので,一言申し上げておきますと,例えば国会図書館で紙の現物の雑誌の閲覧を求められる回数の多いコンテンツベスト100をとりますと,そのほとんどが『少年ジャンプ』と『少年サンデー』になってしまいます。そういうものをばんばん送信するということではありません。なぜかというと,雑誌というものはコンテンツの集合体であります。そこにコンテンツを寄せる漫画家の皆さんや作家や写真家,美術家というものは,雑誌がアーカイブされるということは想定外でコンテンツを寄せているわけであります。
雑誌というものはやがて古びて滅びてしまう。そこで,雑誌に連載したようなものを改めて単行本として出版する。その踏み台として雑誌というものを使っておりますので,アーカイブされた雑誌がどんどん送信されて便利になるということは,利用者にとっては大変便利ではありますが,利用者が便利だというのは著作者や出版者の不利益になることは確実でありますので,そのようなことは起こらないというふうにご理解いただきたいと思います。そういう単行本になるようなコンテンツがたくさんあるような雑誌は,ここにある雑誌の範疇には入らない。もっと地味は学術書のようなものをとりあえず研究者のために利用可能にするということであります。
そういういろいろなコンテンツを含んでいるものについて今後どうするのかということはまた改めて,権利処理の機関をつくって,ちょっとだけお金をいただいて配信するとか,そういうことも今後早急に検討されなければならないと思いますけれども,今の時点でできるということには入らないんだ。だから,それほど便利にはならないということをご理解いただきたいというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
【糸賀構成員】
基本的には逐次刊行物とか雑誌についてはここでの議論の対象外だ。ここの報告書でもそれについてはあえて触れていないといいますか。したがって,それが今後どういうふうに運用されるか。国会図書館のほうでは既に電子化されているわけですから,それをどう運用するかについては,この報告書が出た後,それに準じてなり,今のお話のような国会図書館の中での協議の場で,切り分けといいますか,分けられていくんだろうと思います。
ただ,先ほど田中構成員も言われたように,9ページの上から3番目の趣旨からすると,学術文献あるいは学術関連の出版物の中には学術雑誌として刊行されているものも当然あるわけです。そういうものについては市場では入手困難です。そういうものについても一定の配慮がされた上で国民の方々に使っていただけるようにしていただけるような配慮がなされるんだろうと思います。そういうふうな議論がここであったということが確認できればそれでよろしいかと思います。
あと,この部分に関して,私のほうから,全体としては文章が長くて,最後のところにみんな「考えられる」「考えられる」とついているのがほんとうに必要なのかどうかというふうに思いました。例えば13ページのところに,ご丁寧に上から全部文末は「考えられる」「実施されるべきだと考えられる」「必要であると考えられる」「検討することが必要であると考えられる」,ずっとあるんですが,ものによっては私はすっきりと「必要である」というふうに言い切っていいようにも思います。この辺ちょっと後で改めて精査していただければと思います。
なお,14ページのところなんですが,特に今後公立図書館における電子書籍の利活用の促進についても触れていただいていますので,これでいいかと思うんですが,14ページの上から2番目の丸なんですけれども,ここに図書館と電子書籍市場が相互補完的だと。ここに「両者が競合することなく発展していくための関係者間の協議促進のための場」ということで,「ための」「ための」「場」が2回出てくるんです。ちょっと言葉尻をとらえるようで申しわけないんですけれども,趣旨は大変これでいいと思うんですけれども,こういうふうな表現については少し精査していただいたほうがいいかと思います。おそらくこれは「両者が競合することなく発展に向けて関係者間の協議の場を文化庁が設置する」というような趣旨なんだろうと思います。
ほかにもちょっと言葉だけの問題です。趣旨はこれで結構だと思いますけれども,ほかにも幾つか細かいところでは表現にやや読みにくい箇所もあるように思いますので,その辺は事務局のほうできちんと精査していただいて,基本的には私は必要がなければ最後の,至るところに「考えられる」となっていますけれども,特に「必要である」というふうに言っているところは合意が得られているものについては「必要である」というふうに言い切ったほうが読みやすいと感じました。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
はい。
【瀬尾構成員】
文言の修正等ではなくて確認なんですが,先ほどの話にちょっと戻りますが,全文検索を可能とするということは結論としてあったかと思います。それはあったんですが,それをスニペットとして出すことに関しては検討すべき問題があるということがあったかと思います。
私は今回のデジタル化については,電子的に資料を非常に利活用することができるという利点もあるかとは思いますが,全文検索できる,つまり言葉で全文検索をして国会図書館の書籍データの中からいろいろな情報を得るためのツールとして生きるというのは,実は別の目的,独立した1つの重要な要素であろうかというふうに思っていますし,より広く国民のみんなが利用できる重要な機能だと思います。
例えば,私が実際に使う場合にしても図書館間の資料を,私は東京におりますので,見にいけばいいんですけれども,そうではなかったとしても,実際に図書館の資料を借りるよりは,この全文検索を利用してどういう書籍に何が書いてあって,どれだけのヒントがあるかというのを見るほうが多分利用する率としては多いのではないかというふうに思います。それでこれをやるべしということだったんですが,先ほどの中で,スニペットや何かの検討とともに,それももう少し検討を重ねるというようなニュアンスがあったものですので,その辺について伺いたい。
といいますのは,やはり私としては,国会図書館のデジタル化を中心にした書籍のデジタル化は一遍にばっと使えるというよりは少しずつでも利便性がどんどん高まっていく姿を見せていくべきだろうと思っているんです。だから,できることからでも実施していって,法改正で,せいの,どんではなくて,できることからでも徐々にやっていき,少しずつでもみんなに利用の価値を認めてもらえるような公開の仕方が望ましいと私は思っておりますので,でき得れば,全文検索の結論については,スニペット表示なし,頻度表示だけでも結構ですからやるというふうなことだったのではないかと思いますので,それを確認したいというふうに思います。
あともう1点。これは実は先ほど三田構成員のおっしゃった午前中の会議でも出たんですが,15ページの丸2つの,ごめんなさい,違うかな。要するに入手不可能という話。入手不可能って,一般的に行くと,例えばアマゾンで検索して中古だろうが何だろうが出てきてしまって,たくさん安く売っていたら,普通は入手可能と思いますよね。でも,実際それは図書館資料にはなり得ないわけです。ということは,やはり新刊の市場にあって,図書館の資料とできるものだけ対象にしないと,どんなにデジタル化といっても,アマゾンで売っていたら,これは貸せませんといったら,何も使えなくなってしまうわけだから,通常の図書館資料として使えないものは入手困難と認めて電送可能にするんだというような意味合いをきちんとしておかないと,アマゾンであったから,これは入手可能ですとかというと,ほとんどのものが出てきてしまうと,制度上死んでしまうような感じがする。
なので,わかりやすく,これは図書館資料として一般的に入手できないもの以外は対象になるんだというふうな部分とかをある程度確認していただきたいかというふうに思います。ちょっとわかりにくい部分かというふうに思うので。
2つについて。これは本文の変更を言おうとするわけではなくて,意見,確認として申し上げました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,検討事項1についてのご議論はこのあたりで。もう1つありますか。
【金原構成員】
済みません,簡潔に言います。プリントアウトの問題なんですが,9ページの一番下です。プリントアウトを認めてもいいのではないかという意見があったということなんですが,この検討会議で私は記憶している限りは,こういう意見が直接出たというふうには記憶しておりません。記憶が100%正しいかどうかもわかりませんが,こういうことは多分なかったのではないかと思います。その上で,その2つ上に,所蔵冊数を超える同時閲覧の問題ですが,私どもの理解としては,プリントアウトはしないという前提ならば所蔵冊数を超える同時閲覧というものもあり得るのかということは考えておりましたが,プリントアウトを認めるということになると,こういう所蔵冊数を超える閲覧というものも問題になり得るのかというふうに考えております。
ここのまとめの段階ですから,今からどうのこうのということにはならないのかもしれないんですが,出版としてはそういう意見を持ったということをお話ししておきたいと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,まだご議論の余地があるかとは思いますが,時間の都合がございますので,次に検討事項2についての議論をしていきたいと思います。出版物の権利処理の円滑化に関する事項ということですけれども,この件についてはいかがでしょうか。はい。
【瀬尾構成員】
こちらについて特別異論もなく,皆さんの意見が比較的スムーズに集約されているような気がしますし,非常に今後重要な部分であろうと思います。ただ,最後のまとめの中で,やはり「支援を行うことが重要である」,「協議が実施されることが重要である」と結論が確実に求められているのですから,これに対してきちんと具体的な道筋,次はどうするのか,具体的なプロセスをして実現化するようなことを考えていかないと,単なる,ここで結論が出ました,だけれども,主体はどこだとか,そういうことは決まっていないので,このまま途切れてしまうのではなくて,制度をきちんと進めるというお話ですので,ぜひこの結論を受けて,次の具体的な進捗のプランを,特に急いで求められている部分だと思いますので,具体的なプランというのをお考えいただきたい。この結論をとったまま終わってしまうというのでは大変残念ですし,しかも時間的にも早急になさっていただきたいというふうに思いますので,要望として申し上げました。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
「重要である」という表現と「必要である」という表現,それから「必要と考えられる」という表現があるわけですけれども,内容は違うわけですね。特に「重要である」というのと「必要である」というのは何か使い分けられているように思うんですけれども。気持ちの上で多少の差があるというふうに,我々は受け取るんですが,そういうことでよろしいでしょうかね。何か事務局を追い詰めているような感じがしてよろしくないんですけれども,一言だけ。
【山中著作物流通推進室長】
あまり意図的に「重要である」と「必要である」というのを使い分けているということでもないんですけれども,文章をまとめるに当たって,先ほどの「考えられる」というのが非常に多いというようなご意見もございますので,再度精査させていただきたいと思います。
【渋谷座長】
それがいいと思います。文章を書いていると,つい筆が走っていろいろなことが起こるものですから。それでは,その検討は事務局で後でよろしくお願いします。
検討事項2についてはほかにいかがでしょうか。はい,三田構成員。
【三田構成員】
昔,書籍の貸与権という問題がテーマになったときに,既に出版者と著作者が一体となって貸与権センターというものをつくろうという動きが出ておりまして,それに関して法律が改正されたというふうに具体的なものと法律の改正がシンクロして進行したという記憶があります。
今回の権利処理の問題というのは,当面国会図書館の1968年までのものがアーカイブされているのを,例えば各家庭に有料配信したらどうかというような話の中で権利処理が必要だという話になったんですが,出版者の皆さんに私のほうからもいろいろ提案をしたんですけれども,それではそれほど儲かるものでもないようで,出版者の側が自発的にシステムをつくって対応するという話にはなりにくいというのが現状であります。
そういう状況でありますので,これは国なり文化庁なりがちょっとだけ肩を押してくださるような,そういう試みがないと一歩も進まない可能性があるかというふうに私は危惧しております。これについては我々も来シーズン,より具体的な提案ができるように努力したいというふうに考えておりますので,文化庁さんも一緒になって頑張ろうというような姿勢を見せていただきたいということを要望したいと思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,検討事項2はこのあたりにいたしまして,次,検討事項3です。出版者への権利付与に関する事項ですが,この項目についてご意見等ございましたらお願いいたします。はい。
【金原構成員】
3つ目の問題についてもかなりこの検討会議で時間をとって皆様に検討していただきまして,それをもとに事務局としてまとめていただいたことに感謝を申し上げます。その上で,やはり重要なのはこのまとめの部分だろうと思いますが,まとめは33ページから34ページのところで,34ページの最後のところですが,最後の丸に至るまでにさまざまなことをやらなければならないわけで,我々も出版者等の関係者が中心となって検討を加えなければいけないんですが,最後のところで,ほんとうの最後の行で「官民一体となった早急な検討を行うことが適当であると考えられる」ということでまとめられております。
これについて,文化庁としては,これはまだ先の話なのかもしれないですが,どのようにこれを官民一体となって検討を進めるという段取りをお考えになっておられるか。その官民というのは一体,官というのははっきりしているんですが,民というのは一体どの辺までを含めて民ということでお考えになるか,その辺のことについて大体の方向性を,もし何かあればお聞かせいただきたいと思うんですが,いかがでしょうか。
【永山著作権課長】
このまとめにあるように,まずは特に法制面における具体的な課題の整理についてまず優先的に,まず第一歩としてそれについて検討する専門的な検討の場は,このまとめで今日ご了解いただけるということであれば,早急に我々としては検討の場を設け,検討に着手させていただきたいというふうに考えております。
その上で,また出版者を中心に,経済的,社会的な観点から全般的な影響についての検証を行っていただける,我々も協力した上で行っていただくということになろうかと思いますので,その両方の結論を受けた上で,審議会の場になるのか,どういう場になるのかはこれからの検討でございますけれども,我々役所だけではなくて,民間の,こういう出版者とか権利者の方だけではなくて,利用者の視点が重要だというご指摘もございましたので,そういうことを含めた検討の場というものを設置することを考えていきたいと思っています。
【片寄構成員】
文言に早急にというような表現があるんですが,大変答えにくい質問ではあるんですけれども,やはり経済的,社会的検証を行う必要があるというふうに書かれておりますので,我々出版者側としては既にその準備に入っておりまして,年明けたらすぐに具体的な作業をしようというところまで今進めておりますけれども,文化庁さんのその専門的な検証については,大体どのぐらいのめどでお考えになっているのか。それによって,今早目に結論をつくりたいというか,対策を練りたいというふうに思っておりますので,ある程度のめどをもし考えていらっしゃるのであればお聞かせいただければというふうに思っております。
【永山著作権課長】
具体的な取り組みについては上とも,上というのは政務を含めて相談する必要がありますので,明確にいつからということは率直には申し上げられませんが,当然今日こういう形でご了解いただいて最終報告がまとめられれば,当然数カ月単位の近いうちに,できるだけ早急にそういう場が設置できるように我々としては準備を進めていきたい。準備をしてそれほど遠くない数カ月の単位のときには具体的な場を設置したいというふうに思っています。
【渋谷座長】
よろしいでしょうか。なかなか答えにくい問題について質問されましたので。それでは,三田構成員,お願いします。
【三田構成員】
どうも文化庁さんの腰が重いので,一言申し上げておきます。今私たち著作者が何を一番懸念しているのかということを申し上げますと,まず,何年か後にTPPという巨大な津波がやってきます。これはあらゆるシステムをアメリカと同じにしようというようなものすごいパワーが押し寄せてくるわけです。
ところが,アメリカの出版界よりも日本の出版界のほうが盛んですし,内容のレベルも高いですし,よいコンテンツもたくさんつくっているだろうというふうに私は考えております。なぜそれが可能なのか。例えば文芸雑誌というものがこれほど盛んなのは日本しかないんです。なぜそれができるのかというと,いろいろな日本独自のシステムであります。例えば本屋さんに委託販売していただいているんだということもありますし,それから再販制度というものもあります。それから,著作権を著作者が持っているんだ。これもそのシステムの1つなんです。どれ一つとしてアメリカに言ったら,そんなものはだめだと言うものだと思います。このままで津波がやってきますと,日本の出版システムは壊滅的打撃を受けるだろうというふうに考えられますし,町の本屋さんはなくなってしまうだろうという危機感を私は持っております。
今話題になっているのは電子書籍なんですけれども,電子書籍というのは,地震の最初の初期微動のようなものであります。これから本物の津波がやってくるんです。その津波が来る前に防波堤をつくらなければならないというのが私の考えでありまして,現在提案されている出版者さんに何らかの権利を持っていただいて,それを防波堤にしようと言えば,これは出版者の要望だけではなくて,著作者自身が持っている要望であります。この防波堤を一刻も早くつくっていただきたいというのが切実な要望であります。もう目の前に津波の波頭が見えているというような状態で,数カ月かかって準備をしましょうというような,悠然とした態度でやられているということは危機感がないんじゃないかというふうに私は考えております。一刻も早く対応策を練って対処しなければ,日本の出版文化,文芸文化がぶっつぶれるというぐらいの危機感を持って対応していただきたいというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。この早急な検討の「早急」のところに力を込めてやってもらいたいというご意見のようです。  ほかにいかがでしょうか。
【金原構成員】
実は今日の午前中に私ども日本の出版界が属しておりますIPA,International Publishers Associationという団体があるわけですが,そこの会長が私どもの社に来ました。それで,今後日本の出版界に期待すること,これはもちろん情報の発信源としての日本の役割というものも非常に期待している,という話がありました。しかし,それができるかどうかは出版界が著作者の方々と手を組んで,いかにそれを正しい形で伝達できるかどうかにかかっている。つまり,今後の問題はこういう技術が進んできた状況においてさまざまな利用が考えられる,そのさまざまな利用が正しい方向ならばいいけれども,先ほど森副大臣もおっしゃったように,国民が無許諾で電子的な,あるいは技術的な対応で著作物を複製して勝手に利用するというようなことが起きると,今三田構成員もおっしゃったように,やはり出版と著作の芽を摘んでしまうことになります。それは国民にとって必ずマイナスになる。出版全体の問題としてマイナスにもなるけれども,それは読者の損失にもなるんだという話をして帰りました。
まさにそのとおりだと私も思います。これから経済的な検証というものをやるということで,それが出版者の権利問題付与の前提になるということではありますけれども,その過程で,違法な,著作者の権利を得ずに技術的に対応可能なことが出版者の権利によって抑制されることは,ややもするとそれは国民のマイナスだというふうにも理解される,あるいはそういうふうに理解する人が出てくるかもしれませんけれども,それは長い目で見れば必ず国民のマイナスになります。そういうようなことで,私どもは方向性を間違えないようにしなければなりません。あるいはこれから検討する官民一体となった検討の場においてもその方向性を間違えないようにしなければならないというふうに思いますので,私も自分の肝に銘じていると同時に,今後この検討に携わる,文化庁も含めて,やはり正しい形で著作物が伝達され,著作物の創造性がさらに促進されること。それで,これは当然ですけれども,著作者の権利と利益を守る。それから出版者も利益がなければ創造されたものを世に送り出す作業あるいはその回転ができないわけですから,その辺を間違えないように今後検討していかなければならないことであるというふうに思います。その旨,ぜひ皆様方のご理解をいただきたいというふうに思います。
以上です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
承っておりますと,この取りまとめに直接関係するご意見と,それから取りまとめられた内容に則って,今後文化庁はじめ我々がなすべき事柄についてのご意見と二通りあったように思います。前者については,できれば事務局と私のほうに修文などの点,お任せ願えればと思うのでございますけれども,そんなところでよろしゅうございましょうか。
【糸賀構成員】
今座長の言われるように,修文については座長と事務局にお任せいたしますが,ただ,私はずっとこれを読んできて,先ほどもちょっと申し上げたように文言としてわかりにくいところが数カ所あります。特に,これは言葉にかかわる仕事をされている方が私自身も含めて複数いらっしゃる会合で,28ページの下のほうの出版者への権利付与のところで,28ページの下から2つ目の丸がつけられているところなんですが,この2行目に「電子書籍の流通と利用の円滑化のための主要な要件として想定される電子書籍の流通と利用の促進」というくだりは,電子書籍の流通と利用の円滑化のための要件に電子書籍の流通と利用の促進があるというのは,ほとんど同じことを言っていて何だかわからないと思うんです。
もう一方の「出版物に係る権利侵害への対抗」はわかるんです。円滑化のために不当な侵害があると,これに対しては,これはたしか当初は「対抗」と言っていたのが,この報告書全体では全部「対応」と言いかえていると思うんです。この会議の場は当初「対抗」だったんです。それが全部「対応」になっていますから,ここも「対応」だと思いますけれども,この部分はぜひ直していただかないと,円滑化のための要件が促進だというのは,それは当たり前でしょうということになりますので,この辺はいずれご検討いただきたいと思います。
それから,私,ほんとうにあとは細かいことばかりになってしまうんですけれども,読んでいて,私はこれでいいのかなというふうに読んだのは,31ページなんですけれども,債権者代理権の行使による対応というのも,確かに選択肢としては考えられるわけです。31ページの(2)の1です。ただ,ここに,これはそれこそ渋谷座長にもお聞きしたいんですが,「当該出版者は権利侵害者に対し差しとめ請求を行うことが可能であるとする見解が学説上は有力であると言える」と言い切っていますね。私は専門がちょっと違うのでわかりませんが,ここはそれこそ「学説上は有力であると考えられる」,ここは「考えられる」ではなくて「言える」と言い切っているんです。だから,これはほんとうに大丈夫なのかというのは素人考えですけれども,感じました。
あわせて,今度はその次の32ページです。32ページで,真ん中あたりの3,他の制度に基づく対応の2番目の丸です。なぜかよくわからないんですが,ここだけこの表現の最後に,「これこれこういう意見が出版者から示された」というふうにかなり具体的に書かれているんです。ほかのところはこの会議で出てきたことについて,「という意見もあった」とか,「何々のように思われる」とか,「何々が必要である」というふうに書かれていますが,ここだけは何か特定の出版者からこういう意見が示されたということで,ここも断定的に言い切っているので,これはこれでいいんでしょうかというのが,ほんとうにこれは私の確認です。もしもこういう表現がほかでも許されるのであれば,確かにそれは,例えば出版者からとか,あるいは著作者から示されたとか,場合のよっては,図書館側から出されたとかというふうに書けば,どの立場の人からこういう意見が出たのかはわかるんです。でも,報告書全体としては単にこういう意見があったとか,こういう指摘があったとかというふうになっていますので,ちょっとここに違和感が感じられました。
多分32ページの一番上にある意見も,これは出版者の方からの意見だったようには思います。そういう意味で,ちょっとその辺の統一がとれていないということを全体を通読して感じましたので,先ほど言われたような修文をされる段階にはその辺にもご配慮いただきたいと思います。
以上です。
【渋谷座長】
わかりました。では,そのように行いたいと思います。
【片寄構成員】
この文言修正等々も座長,事務局今までずっと問題ないんですが,ちょっと確認なんですけれども,先ほどから何度から出ておりますけれども,電子書籍という言葉の定義,これもずっとこの検討会議で言われていたことなんですが,雑誌が入るのか入らないのかというようなことも含めて,電子書籍の定義というものをやはりきちんとどこかで入れるべきではないか。雑誌については基本的には一度も議論されていないので,それを踏まえた文言であるべきではないかということと,先ほど金原構成員のほうからも出ましたけれども,プリントアウトに伴う制限については,ここに「同時閲覧にかかわる特段の制限をすることが適当であると考えられる」というふうに表現されていますけれども,これについては,プリントアウトをしないという前提で制限をしないというような議論だったと思いますので,プリントアウトをするということであれば,今金原さんがおっしゃったような意見も出てきているわけで,この適当であるという表現等々についてももう一度ご検討いただければというふうに思います。
【瀬尾構成員】
取りまとめとしては非常によくまとまってきていて,ほんとうに事務局もご苦労されたんだと思います。ただ,権利付与に関して,先ほど実は幾つかの意見がある中で,私も非常に強く思っていることは,先ほどのTPPの話もそうなんですが,やはりこれから日本もしくはアジアが新しい出版なり文化のシステムをつくって,こちらのカードというものをつくっていかないと,こちらはカードを押しつけられるだけで,TPPで向こうのカードを飲むか飲まないかだけになってしまうような気がするんです。やはりそのカードによって,必ずしもいい結果が出る場合ばかりではないと思います。
逆に,先ほど三田構成員がおっしゃったような,アメリカ的なシステムの移譲とすると,一瞬権利保護のように見える条項であっても,基本的に1つずつおいしくぱくぱくそれを食べていってしまうとアメリカ的なシステムを導入することになって,逆に権利譲渡をしなければならなくなってしまうとか,そういう危険性を非常にはらんでいるような状況にあるというふうに思っています。
何度も繰り返しこの会議で出たことですけれども,日本でやはり出版者と著作者というのは大変近しく同じ創作に当たってつくってきた文化がある。その文化を守っていくためにどうするのかという観点で,この出版者の権利付与をお考えいただきたいと私は思います。
ただ,この場ではやはりプレーヤーが偏っている可能性もあります。ですから,これをより広い広義に出て,そしてまたこの考えを社会的にどうやってコンセンサスをとっていかれるのか。それが今度大きな議題になるかと思うんですけれども,ただ,何せ環境というのはちょくちょく進んでいますから,具体化してはっきりとステージアップをして検討していかないと,今までのようなスピードでは多分これは追いつかないし,それともう1つは,単なる経済的な利益だけではなくて,こういうふうな日本の文化とか,そういう文化論の中で考えていくということ,そういう視点をやはり皆さんの中で共有していったり,いろいろな意見をいただいたりすることが大変重要になってくると思います。今後の著作権関係のいろいろな議論の中で,多分日本の文化はどうなのかとか,そういうことがベースになってくる時代になったのではないかというのを強く感じます。
ですので,今回も単純に本が電子化して流通したら経済が発展するとか,単純に,例えば出版者にしてもお金が儲かる,儲からないとか,そういう話ではない。そういう部分をきちんとお考えいただいて,でき得れば今回の施策は具体的な何かに落とし込めるような方向性を,それはどういう形かは議論の先ですけれども,具体的な形としてすべてこの3つが出てくるような,一般の人にわかるような,そういうふうな結論に早急に導いていただきたい。それの旗振りと船頭の役というのをやはり文化庁さんがなさっていらっしゃるわけなので,大変強く期待しますとともに,文化的な視点ということを,しかも切羽詰まった文化的視点ということをご考慮いただいて今後進めていただきたいというふうに思います。一応この結論に対しては私はこれでもよろしいかというふうに思っていますので,文言に関してはお任せすることにやぶさかではないということです。意見です。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
それでは,このあたりでこの会議を閉じたいと思いますけれども,よろしゅうございましょうか。
【里中構成員】
済みません。全体のことでよろしければ,ちょっと今後のお願いなんですけれども,例えば,図書館でのデジタルデータ,国会図書館からのデータ送信あるいはプリントアウトについてなんですけれども,おそらく国民の側からすると,税金で行っていることなんだから,国民が利用する権利はあるはずだと出発点はそこになってしまうと思うんです。どうすれば便利かということを考えますと,最終的にはすべてのデータを自由に各家庭で閲覧できて,なおかつプリントアウトもできるというのが理想の文化的環境だと思います。おそらく税金を払っている側はそういうことを思うだろうと思います。
ただ,やはりここでちょっと危惧するんですけれども,民の声というものに押されていっては,どこまでもやはり,正義は何かではないんですけれども,お金をとるとか,制約するということは言いにくくなってしまうと思うんです。ですから,国会図書館のデジタル化資料,これを民間事業者と協力して有料サービスとかそういうのも,おそらく民間からは,ユーザーからはなぜ金をとるんだとか,税金でつくったデータからどうして金をとるんだとか,絶対そういう声がたくさん出てきます。今も意見募集だったら,やはりプリントアウトは際限なくしたいという意見が出てきておりますので,やはり文化庁としてはそういうことは無視できないと思うんです。
どうか受益者負担ということで,何でもただなら文化かというところで,何か言われるかもしれませんけれども,ちょっと頑張っていただきたいとお願いする次第です。必要とされる有償,これだけ払ってもこの利便性を買いたいという人たちに見ていただければ,プリントアウトしていただければと思うんです。制限ばかりかけていては,せっかくデジタルデータ化したデジタルの意味がなくなってしまいますので,やはり最終的には各家庭への送信,プリントアウト,これはやはり動けない方とか,過疎地の方とか,出かけられない方のことを考えますとやはり必要だと思いますし,そういう声は大きいと思います。そのときに有料化ということが前提としてあれば,かなりの問題が解決しやすくなるのではないかと思うんです。つまり権利侵害とみなされる著作権者たちに対する見返りも含めて。
だから,それには今の図書館のあり方も考えていかなければいけないかもしれないんですけれども,今後,特にデジタルというと,世界に向いておりますので,世界中のどこからでもアクセスできて,なおかつ無料で日本の国会図書館のデジタルデータを閲覧できるとなりますと,これはこれで税金を払っていない国や地域の人たちもそれを享受していいのかという,そういう議論も起きてくると思います。だから,有償化ということを怖がらないで前面に出して将来の構築をしていただければうれしいなと思います。これはお願いでしかありませんけれども,ほんとうに税金という言葉,国民のためという言葉,公平とか隅々までという言葉が出てくると,ついこの辺腰が引けてしまうんですけれども,よろしくお願いいたします。ほんとうにTPPは何がどうなるかほんとうにわかりません。最後にどんでん返しで,日本なんか仲間に入れてやらないよと言われて,何か知らないけれども,強制鎖国のようなことになるか,何が起きるかほんとうにわからないんです。わからないということは相手のほんとうの意図がわからないから,何が起きるのか私にはわかりません。
ただ,必要なのは,やはり文化を守るという誇りであると思いますので,その辺よろしくお願いしたいと思います。
【渋谷座長】
どうもありがとうございました。
ほか,よろしゅうございましょうか。
それでは,この報告書の案につきまして,本日ちょうだいしました種々のご意見に係る修正を行った上で取りまとめをしていくということにいたしたいと思います。具体的な修正のあり方については事務局と,それから私にご一任いただくということにさせていただければと思いますけれども,それでよろしゅうございましょうか。
では,そのように運ばせていただきます。どうもありがとうございました。
それから,この報告に基づいて今後いろいろな関係者であるとか,文化庁が対応していかなければいけない課題も発見されたわけですので,そちらのほうの仕事といいますか,それも今後進めていくことができればと思います。
それでは,本日はこのくらいにしたいと思いますけれども,閉会に当たりまして,一言私から皆様方にお礼の言葉を申し上げたいと思います。ほぼ一年間にわたりまして,幾度もこの検討会議を開かせていただきましたが,お忙しいところお集まりいただきました構成員の皆様方に厚く御礼を申し上げます。このチームを本日解散しなければいけないということに,名残惜しい思いもしております。今後もいろいろと意見を交換する機会があるかと思いますけれども,その節はよろしくお願いいたします。
それから,この会議を実質的に支えてくださった事務局の皆さん方にも厚く御礼申し上げます。さらにはまた,傍聴者の方々,毎回大勢の方々に傍聴していただきました。私は発言するときに正面を向くわけですけれども,そうすると,傍聴者のお顔がわっと迫ってきまして,大変プレッシャーを感じておりました。しかし,傍聴者の方々がおられることによって,何かこの会議に一種の緊張感が走りまして,そのためにきちんとした議論ができたのではないかと思っております。傍聴者の方々にもお礼を申し上げます。
それでは,以上をもちまして,この検討会議をお開きとさせていただきたいと思います。事務局から連絡事項がございましたら,どうぞよろしくお願いします。
【鈴木著作物流通推進室室長補佐】
構成員の皆様におかれましては,熱心なご議論ありがとうございました。先ほど座長からもございましたが,本日のご意見,修正の指摘,確認の指摘など,多数受けてしまって申しわけありませんでした。これにつきましては,早急に文章,内容を整えまして,座長とご相談させていただいた上で最終案の形で改めて各構成員にはご提示させていただければというふうに思っております。
以上でございます。
【渋谷座長】
ありがとうございました。
それでは,以上をもちまして,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議を終わらせていただきます。長期にわたるご議論,ご協力ありがとうございました。

── 了 ──

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