「映画振興に関する懇談会」中間まとめ概要

映画振興に関する懇談会では,本年3月末に向けて幅広い視野で議論を進めているが,今後映画関係者等に広く意見を聴くため,これまで出された提案等を現時点でまとめたものが,本「中間まとめ」である。

第1部 今,日本映画を再生するために

映画の製作配給・興行保存・普及人材養成という4つの分野で議論を進め,それらを通じて特に望まれる方策として出された12の構想は以下のとおり。

1 特に望まれる12の構想
(1) すべての日本映画フィルムの保存・継承を行う制度の創設
  フィルムセンターへの納入を義務付けるための法制等の整備

(2) 新たな製作支援形態の導入
  助成の充実を図りつつも,中長期的には,投融資などを導入

(3) 新映画流通市場の創設
  中小の映画製作会社や若手製作者の作品の流通促進

(4) デジタル映像編集スタジオの整備
  最新のデジタル機器等を備えた,映像編集所の整備支援

(5) プロデューサー等養成のための大学院の創設
  専門職大学院の創設への文化庁の協力

(6) 人材養成機関の連合体の形成
  大学,専門学校など(30以上)の連携促進,拠点校支援

(7) 出会い・交流・顕彰の場としての「映画の広場」(仮称)の創設
  製作者,鑑賞者等の交流による啓発,知識伝承の場

(8) 地域における野外ロケーション誘致の支援
  野外ロケ誘致の際の施設使用許可に関する共通指針づくり等

(9) 非映画館を活用した上映支援
  映画祭や上映会などでの公立文化施設,公民館等の積極活用

(10) 子どもの映画鑑賞普及の推進
  映画館などでの子供の映画鑑賞機会の提供推進

(11) 海外展開への支援
  海外映画祭出品のための字幕作成等への助成,国内の国際映画祭等支援

(12) フィルムセンターの独立
  我が国唯一の国立の映画専門機関であるフィルムセンターが,保存・普及,上映機能の抜本的拡充とともに,人材養成,製作支援の機能を新たに担う必要。そのため同センターの組織は拡充を要し,東京国立近代美術館から独立させることも視野に入れるべき。

2 検討の背景と基本的方向
(1)背景−映画の今日的意味−
総合芸術としての映画
国民生活における映画
IT時代の有力映像作品としての映画
海外への日本文化の発信手段としての映画

(2)今後の映画振興の基本的方向
自律的な創造サイクルの確立
  日本映画の創造活動を活性化させ,多様で優れた作品の生産を継続し得る製作・上映のサイクルの確立が基本=映画の産業的側面を考慮した支援策を講ずるべき。海外市場も重要。
人材養成の重要性
  総合プロデューサーの養成,若手監督,シナリオ作家,編集作業者などに適する優れた才能の早期発見と育成,海外展開や普及上映活動を担う人材の養成など,総合的な方策が必要。
映画フィルムの保存・継承
  フィルムセンターは,劇場公開された日本映画の半分も収蔵していない現状。製作会社における保存は,企業負担が大きく,保存状態によっては早晩修復不能に陥るフィルムも発生し,文化遺産保護の観点から問題。国が責任を持って映画作品の保存・継承を図るべき。

第2部 映画振興の分野別施策

1 映画の現状
<長期的傾向>
昭和30年代半ばの全盛期からみると,映画館数や映画館入場者数は激減。
一方,テレビ放送やビデオによる鑑賞,DVDの活用は,気軽な映画の楽しみ方を提供するなど普及面に寄与し,また,二次利用収入による資金回収の道を拡大。
<近年の特徴的な傾向>
複数のスクリーンを有するシネマコンプレックス型映画館の大幅増により,館数,入場者数共に微増。また,一部大手映画会社の系列取引からの離脱などもあり,配給・興行の形態が変化。製作面では,大手の自社製作の減少が進行。邦画・洋画の別や規模を問わず,ビジネス舞台での大競争時代が到来しつつある状況。

2 分野別施策
(1)製作
新たな製作支援形態の導入
  国は,製作支援形態の在り方として,当面,既存の助成事業の統合・メニュー化,助成額の充実を図りつつも,中長期的には,公的融資や民間からの投融資促進など製作支援の新たな形態を導入する。
 
a. 市場性のある劇場用長編映画への公的融資,投資促進
b. a.以外に対する公的助成の充実,CG製作に対する公的助成の創設
国の支援による最新のデジタル映像編集スタジオの整備
  国は,中小の映画製作会社や若手製作者,映画製作を学ぶ者が低廉な費用で利用できる最新のデジタル編集機器等を備えたスタジオ(撮影後の加工・編集・調整などの仕上げ段階のスタジオ)の整備について支援する。
地域における野外ロケ誘致の支援
  国は,フィルムコミッション(自治体等を中心に設立されたロケーション(野外撮影)を誘致する非営利組織。略称:FC)の行うロケーション誘致の取組に関し,規制緩和の推進,歴史的建造物等の管理者に対する協力促進の働き掛け,許諾の指針作り,データベースの開設・運用などを行うことにより,支援する。
字幕作成助成,海外見本市へのブース出展助成,国内の国際映画祭支援など海外展開支援

(2)配給・興行
非映画館を活用した上映支援による多様な映画作品の上映機会拡大
  国は,映画上映に係る地理的偏在の是正,上映作品の多様性の確保,鑑賞者の便宜などを図るため,映画祭や公共上映などにおける公立文化施設,公民館等の非映画館の積極的な活用を図るための上映支援を行う。
新映画流通市場の創設への支援
  国は,中小の映画製作会社や若手製作者,映画製作を学ぶ者の作品が低廉な費用で効率的に流通していくことを促進する新映画流通市場の創設を,インターネットの活用等により促進する。 等

(3)保存・普及
国の責任による保存・継承
  国内で製作された全映画のポジ・フィルムのフィルムセンターへの納入を義務付けるため,必要な法規の改正等を行う。
子どもへの映画鑑賞普及の促進
  生涯にわたって主体的に映画鑑賞する素地を培い,同時に優れた鑑賞者を育てるため,市町村教育委員会は,学校教育・社会教育を通じ,子どもの映画館等での映画鑑賞機会の提供に努める。 等

(4)人材養成
成長段階ごとの支援策から成る「人材養成総合システム」の構築
プロデューサー等養成のための大学院の創設
  映画の企画から脚本の作成,組織作りから撮影,編集,完成,配給までを統括し,同時に製作に必要な資金調達から,作品の内外への売り込みまでこなせる,財務会計,契約実務等にもたけたプロデューサー等養成のための専門職大学院の創設に向けて,文化庁は協力を行う。
人材養成機関の連合体の形成
  映画人材の養成を行っている大学,専門学校などの機関が相互に連携し合い,施設・設備の共同利用や授業・講座の共同実施,大学間の単位互換等を進めることにより,我が国全体の人材養成機能を高めるため,人材養成機関によるコンソーシアム(連合体)の形成を図ることとし,文化庁は,このような動きを促進するため,拠点校に支援をする。
映画関係者と映画鑑賞者の交流の場「映画の広場」(仮称)創設国等は,映画に携わる者,映画界を目指す者,映画鑑賞者などの出会いの場を提供し,交流による啓発,知識伝承などの人材養成機能の形成を図るため,交流空間,展示空間,試写室,貸出機材と,撮影環境及び映画人材に関するデータベース等を備えた「映画の広場」(仮称)を創設する。 等
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