映画振興に関する懇談会(第2回)議事要旨

1. 日時 平成14年6月20日(木)15:02〜17:10

2. 場所 東京国立近代美術館フィルムセンター内会議室(6階)

3. 出席者
(協力者) 横川座長代理,飯田,岡田,児玉,迫本,新藤,鈴木,砂川,関口,高村,中谷,奈良,長谷川,福田,北條各委員
 
(文化庁) 河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,遠藤文化部長,河村芸術文化課長,山田主任芸術文化調査官,清水芸術文化活動支援専門官,坪田芸術文化課課長補佐,堀野著作権課課長補佐,尾野美術学芸課施設係長,東京国立近代美術館フィルムセンター大場主幹,生島主幹補佐 外
 
(関係省) 寺脇文部科学省大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)
大橋総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室長
境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐
惟村国土交通省観光部惟村観光地域振興課課長
井上国土交通省観光部観光地域振興専門官 外


4.概要
(1) 河村芸術文化課長より,第1回懇談会欠席者の紹介・関係省庁の紹介が行なわれた。
(2) 河村芸術文化課長より,資料の説明が行われた。
(3) 横川座長代理より,河島先生と金院長の簡単な経歴・現職の紹介をいただいた後,まず河島先生より以下のような説明をいただいた。
最初に,なぜフランス・イギリスが国家的な取り組みとして文化政策の中で映画振興に力を入れているかであるが,基本的にフランスは自国のアイデンティティー,文化をいかに守るか,それをヨーロッパの中でいかに強めるかに常に高い関心をおき,頑張っている。しかし,市場売上を見ると圧倒的にハリウッドのメジャー映画が強く実際フランスでもハリウッドには及ばない。イギリスは同じ英語圏であるため,余計にハリウッドの映画・アメリカ的,アングロサクソン的文化に対する親和性が強く,放っておくとハリウッドー色になってしまう。また最近のイギリスの場合,映画は産業政策と強く考えていて,必ずしも文化,アートの保護だけでなく,文化的産業が今後のイギリス経済・産業を引っ張る1つではないのかとの考えが出てきたことから文化政策の中でも関係者から最も注目されている。年間製作本数は,フランスが150本前後,日本が200〜300本。フランスの製作本数はヨーロッパの中でもかなり多い方であるが,大体ハリウッドのメジャー5社全部を合わせた本数とほぼ同じ数である。なおイギリスの年間製作本数は50から100くらいである。映画鑑賞人口は,フランスの人口が6,000万人であるため,2人に1人は年間最低1回は映画館に映画を見に行ったことになる。その中でもヘビーに何度も見に行く人もいるから,平均すると1人当たりで年間5.2回も行っていることになり,300万人×5.2回で1億6,500万人となる。イギリスでもほぼ変わらない状況だが,どちらの国においても日本とは映画に対する親しみが違うような印象がある。映画はヒット作があるから見ると言うのではなく,常に映画情報に気を配り,気軽に見に行くのではないだろうか。ところが見ている映画は圧倒的にハリウッドもの。各々の映画鑑賞市場における白国の映画売り上げべ一スのシェアがどれほどかというと,フランスで28.5%,イギリスは20%。イギリスの20%というのは比較的多い年の方であり,平均べ一スでもう少し小さい。これはフランス,イギリスだけでなくベルギー,スペイン,オーストリア,北欧諸国,大体その辺りの国だと映画売り上げの8割以上がアメリカ映画で,自国で頑張って映画を作っても,フランス映画を輸入することはほとんどない。
表1はフランスの映画館でのチケット売り上げはどこの国のものがどういうふうに売れているかということだが,フランス映画は30%前後,その他は圧倒的にアメリカ映画であり,ヨーロッパの他の国のものはあまり観ていないことがわかる。昔から現在のような状況だったわけではなく,1965年時点では,ヨーロッパで上映される映画の6割がヨーロッパのものだった。それが,ハリウッドの市場攻略のための戦略とコングロマリット化等があり,ハリウッドが世界市場を席巻するようになり,今ではEU内でのヨーロッパ市場全部を見たときの映画のシェアはフランスでようやく5.8%,イギリスで11%である。もちろんこのような数字をフランス・イギリスの映画製作担当者たちは良く知っているから,ますますハリウッドが強くなることに危機意識を持っている。またフランスの場合は第3世界の諸国の映画も進んで振興しているので,とにかくアメリカ一色でない映画産業,映画文化の在り方を築くためにどうしたら良いかを考えている。具体的に何をしているかというと,フランスの場合,そもそも文化政策に関しては文化コミュニケーション省があり,包括的に中央から地方までの文化の仕組みと,実際の劇場,センター全部をその省で担当する。極端に言えば,非常に中央官庁主導の形で,(地方自治体ももちろんお金は出しているが)総合的な文化政策を展開している。その中で,映画関係については,CNCというフランス国立映画センター(CNC)がほぼ中心的な役割を担っている。その他,教育省は映画人を育成するための専門機関へ,外務省は海外との文化交流へ予算を出している。また,映画関係の仕事はプロジェクト単位で動くものであり,年間の雇用が不安定になりがちで,俳優も製作者も一つのプロジェクトに携わった後,仕事がない状態が続くという不定期性,不安定性が否めない。そこで厚生労働省にあたるような省庁が,社会政策としてある一定期間失業保険の給付を行うことで,不安定だが魅力的な仕事に関係者が安心して取り組める状況を作り出している。その例として,フランスで映画監督をしている人の話がある。失業保険をもらっている期間は最低限のお金には困らないが仕事はしたいという気持ちがある場合,商業的な成功,ギャラはないが,面白いプロジェクトがあればボランティアで俳優,映画関係者が集まって,物作りをする。このような事が総合的に組み合わさって,フランスの映画振興政策が今日ある。CNCは年間22億フラン以上の予算があるが,フランスの文化政策の中においてはそれ程大きな額ではない。CNCの予算の9割くらいはテレビ局,ビデオ・テープ売り上げ等の各種特定目的税を財源として徴収している。仮に文化コミュニケーション省が2億フランの予算をCNCに出してもそれは予算のわずか12%に過ぎない。金額面からしても,映画振興・映画製作は,国家予算をつぎ込んで行われてはいないが,多角的にいろいろなことをしていると言える。文化の生産から流通,そして消費に至るまでの過程,つまり映画でいう製作,流通・配給,興行から鑑賞までの映画振興策についても同様である。もちろんそれ以前に,研究開発も必要だし,ただ単に作って流して消費していくのではなく,保存・修復して継承していくという総合的なサイクルで動くものと考えられるが,それぞれの過程においてハードウェア的部分の整備,ソフトウェアヘの投資,そして人材育成に関わる映画振興策がある。ハード部分では,映画で言う研究開発部分の企画一脚本開発に対する助成金,製作への資金助成・ファイナンスの仕組みがフランス,イギリスにはある。そして映画を流通・配給に乗せる仕組みとして,フランス・イギリスでは(特にフランスの場合)大都市に集中してしまう公共の映画館を,地方にも置くということを基本としている。どんなに田舎で交通アクセスが悪くても映画鑑賞の機会は平等でなければいけないという考え方があるから,例え商売として成り立ちにくくても,興行収入が確保できない映画館に助成金を出す。また特にマイナー映画に対しては,プリントの本数が限られ,全国を巡回しにくいため,プリント製作への助成も行っている。そしてソフト部分では,配給会社に助成金を出したり,テレビ放映の中で,映画の枠の確保などを行っている。映画祭への支援もある。
見本市的な商売を兼ね備えたものから,芸術としての評価があるものと,それ以外の幅広いタイプのものがあるが,作品が普及していくためにはこのような支援が欠かせない。また,フランス,イギリスでの興行・上映・鑑賞に関する政策として,映画センターでの上映会及ぴ運営がある。フランスでの面白い例として,地方の映画館,特に非商業的な映画を上映するようなアートハウス的なシネマなど放っておくと潰れるかもしれない映画館に対して,施設面をグレードアップする際の改築費用の助成がある。一方,ソフトの部分では,評論家・監督が地方の映画館に行ってトーク,レクチャー等をする場合には助成金が出るというような,上映に関わる付随的なサービスヘの支援をして,普及に心掛けている。他の文化政策と同じで,映画振興策についても満遍なく上手く流れるサイクルを作っていくことが重要である。特に重要なものとして,フランスにおける製作費に対する助成と融資がある。まず1つは,フランス語そのままの翻訳で,「自動的」言われている支援がある。金額から言うと,60億円相当(3億5千万フラン→1フラン=20円)で,ハリウッドの映画1本の製作費にも及ばない額で,それ程多くはない。ただこれはフランスでCNCに登録した監督,プロデューサー達は,申請すれば実績に応じて必ず製作費の何%はもらえるということになる。クオリティーの面で芸術的か否かは全く関係なく,商業性の強い映画であっても構わない。これについては,産業としてのフランス映画を作る際,財源の確保に当たって,製作費を必ずもらえるありがたい保証金という感じで受け取られている。これ対して「選択的」と言われている支援がある。これは,新進作家たち並びに商業性がないであろうドキュメンタリー映画,アート的な映画,短編映画などを対象にしている支援であるが,これにはクオリティー審査が入ってくる。フランス映画全体の中でこの援助をもらっているものは本数べ一スで20%程度。金額面では,フランスの映画製作に係る金額全体の場合であり,「選択的」援助をもらわない80%の映画も含めた平均だが,全体から見れば3〜5%程度であり,あまり大きな額ではない。この「選択的」援助は,「興行成績の前渡し金」であり,商業的に成功した場合は,返さなければならない。だが,実際成功するのは援助を受けるのは10%だけであり,実質的には補助金という位置付けになっている。次にSOFICAという,特に裕福な個入,企業からの映画投資を呼び込むために設けられたもので,裕福な人たちの税制対策としての投資組合の仕組みがある。このファンドがいくつかあり,その中で何本かに投資していくが,投資を受けた作品にとっては全体のファイナンスの13%の費用に上るので相当大きい意味はあるが,フランスでの映画製作全休としては大した意味はない。面白いのが,テレビ局の放映権の前売りである。3割以上がテレビ局からの放映権の前売りでお金を取り,ファイナンスに充てている。なぜテレビ局が映画製作に投資するかというと,義務だからである。地上波のテレビ局の場合,売上高の3%を放映権の前売りで,または権利関係の違いにより共同製作費という形で,映画作りにお金を流すことが法律で決まっている。また,ケーブルテレビのスポーツや映画専門チャンネルは,売上高の20%を充てることが義務付けられている。ここまでは製作費用のファイナンスにおける特徴だったが,流通・配給の部分でのフランスがとる政策を話したい。地上波のテレビ放送において,映画の上映はよくあるが,放映時間が1年分あるうちのある一定時間映画を上映する場合,アメリカ映画ばかりを流して視聴率を取ってはいけないとなっている。フランス物に限らず,ヨーロッパ映画を放映時間の60%,フランス映画は最低40%などという決まりがある。最後にフランス映画振興への批判と課題について指摘されている問題について話をしたいと思う。1つ目は,企画開発に掛ける時間と費用が少ないこと。製作費が比較的簡単につくため,企画を十分に練らずに政策に飛びつく傾向が強いため,良い映画ができない。よって,売れない。その点ハリウッド映画は,国家的補助はないが,100億円近い金額をかけ,一か八かの賭けを毎回やるわけだから,製作費の10%くらいを企画にかけ何10回も脚本を書き直す。2つ目は,テレビ放送において,フランス映画の放映が義務付けられているために,テレビ指向になると言われてる。大きなスクリーンで劇場向けに作るより,テレビでの見栄えを重視した作りに走ることが問題にされている。3つ目は,文化省が頼んでいる委員の批評家,文化人の価値観が偏りがちで,大衆が求めるものとの相違がある。4つ目は,CNCの財源についてであるが,CNCはアメリカ映画の上映収入の一部も入るため,アメリカ映画が売れれば売れるほどフランス映画にお金が回る仕組みとなっている。このように,文化政策と産業政策とが整合しておらず,自己矛盾的な部分が問題である。
それぞれの国の事情があるが,フランスは長い歴史の中で映画振興の枠組みや産業性を検討してきたことがわかった。日本でも文化庁を中心として,映画支援,映画祭に関する支援,そして映画人育成・研修のための海外の芸術家派遣等,様々な分野で資金的には援助している。
流通・配給に関しての話で,地上波テレビ放送で60%以上の放映時間のチャンネルはどういった形態で運営されてるテレビ局なのか。
正確に言うと,全放映時間の中ではなく,映画放送時間の中で60%ということであり,国営放送も,民間のテレビ放送局も全てがこの枠組みに入っている。
目的税,指名制度と財源の詳細はどのようなものか。具体的な目的税の種類や,実態はどうか。
「芸術創造推進事業中間報告書」の61ぺ一ジのCNCの予算(2000年)というところにあるように,収入映画&ビデオ関連,映画チケットヘの税金,テレビ放映税,ビデオ販売税となっている。テレビ税は局の所得法人税の中から直接に一部を徴収する仕組みである。。
放送局的に言うと,ヨーロッパでは1980年代まで国営放送しかなかったため,国営放送の中でCMが流れている。したがって,文化政策全般も国レベルでのコントロールがしやすかった。それで,受信料+CM収入に対するある種の映画振興なり文化振興に対するパーセンテージがあった。日本の場合とは異なる。
前回非映画的な立場から,国,公的な期問が映画を振興する理由を明確にしなければ前に進みにくいと思うと発言したが,フランスの状況を中心に興味深い話を聞いて,なぜフランス政府は自国の映画を何とかするのか,また振興のためのお金を使わなければならないのかというところに,フランスが国自ら文化を大切にするという印象を持つと同時に,日本的な日本入の感覚でこのことが受け入れられるかという思いを持った。一般のフランス人は誇り高き自国の文化という共通の認識が強いからこそ,受け入れるのだろう。だが,そのような国でありながら,多くの予算のうち9割が,映画を脅かす存在でもあるテレビからの財源であり,それを元に人々は映画というソフトを楽しんでいる。負担するところから負担されるという,特定目的税の仕組みになっているという観点からみると,フランスの映画振興を考えるときに,こんな時代に我が国で新しい税金をつくれるのかという持論はあるが,楽しむ人が中心になって文化的なものを支えていくという考えは参考になる気がする。
放映時間の60%というような数量規制的考えは諸外国でみられるが,文化政策上の有効性が本当にあるのかどうか。また,フランス,イギリス等で独自に行っている文化政策がEU統合後のオールヨーロッパといった場合に,今後どのようになるのか。
もともと民放がなかったフランスではテレビ放映の数量規制はしやすかったが,興行面はおさえられない。だからテレビではフランス映画をよく放送してる感じだが,作った映画は,テレビ向けになってしまう。「アメリ」のように売れるものは別だが,極論を言えば,実際興行主たちは,フランス映画を上映しても人が来ないのでやりたくない。売れるものであれぱ,テレビ向けであろうとなかろうと,作ってもらえる。つまりマーケットが違うわけである。フランスの人にしてみると,ハリウッドに対抗しても無理だとわかっているが,映画には多様性があると感じている。もう1点はEUの中での映画への投資や,配給会社を育てるということである。
フランスは映画に対して,アメリカ産業的,文化的そして歴史背景を基にいろいろな視点で捉えている,ということが今日まで続いているということだと思う。次は韓国の総合文化紹介センターで映像だけに限らず,芸術・芸能分野全体に造詣の深い金院長に韓国の映画事情についてお話をいただく。
最近韓国の映画産業は「ルネッサンス時代」と呼ばれる程,めざましい成長を繰り返している。`99「シュリ」,`00「共同警備区域JSA」,`01「チング〜友へ〜」の興行新記録の更新が躍進を導いた原動力であると思う。韓国映画興行の成功により,1998年依頼国内での市場占有率は飛躍的に高くなり,2001年度は51%を超える程になった。世界的に見て,自国映画の観客占有率が30%ラインを維持しているのは日本とフランスの2カ国だが,`01年度を基準にした時,韓国はアメリカを除けば世界1位の市場占有率である。また,ヴェニス,ベルリン等の映画祭にも進出している。韓国映画が発展するとともに,映画館が自国映画の確保に力を入れるようになり,競争が激しくなる事で,より発展している。中でも「シネマサービス」ぱ制作や配給において,直接映画を制作することはもちろん,系列下においた映画会社を通じて制作を拡張させ,制作分野での主導権を握るなど,独自的に1歩進んだ展開をみせている。韓国映画の外形的成長は,内部の市場主導力と関連していて,善い循環構造を作り出している。他に,韓国映画に自信と活気を与えた要因は,観客が望むものを見極めたこと,政府の支援制作が見事に融合したことが挙げられる。また,フリーの独立映画製作者の出現と,映画アカデミーの人材輩出により,人的資源が豊富になり,映像専門投資組合の結成及び,投資活性化により安定的な映画製作資本が備わったことも主な要因である。流通面てば,「シネマサービス」,「CJユンターテイメント」,「コリアピクチャーズ」,等の大型配給会社の出現と1998年以降に登場したシネマコンプレックスの増加をあげることができる。次に韓国の映画製作について。過去に映画の成長期,沈滞期,などを繰り返してきた韓国映画も,1984年は映画製作が規制から振興へ方向転換する重要な時期になった。この年に,映画検閲制を審議制に転換し,映画制作業者としての登録がなくても映画制作が可能な独立映画制作制度等を新設した。これは韓国映画の政策及び流通構造に大きな変化をもたらす基礎となり,1995年の映画法に代わる映画振興法は政府次元でより積極的に振興していくという意思を反映したものとなった。長く韓国映画は国内市場において苦戦してきた。観客は韓国映画に対する不信感があり,アメリカ映画との競争において萎縮していた。1998年外国映画の輸入が自由化になり,直接興行を防ぐため,全ての劇場で年間5分の2以上の日数分韓国映画を上映する義務(スクリーンクオーター制)を設けたりしたが,市場占有率は40%から15%にまで落ち込んだ。だが,市場開放以後から韓国映画の競争力は大きくなった。年間3,400本も押し寄せる外国映画を現実に,観客の目は養われ,制作者は観客が求めている物を探す努力を始めた。このことにより,外国映画に対する漠然とした憧れが減少し,自国映画に対する評価が上向きになっていった。次に政策についてであるが,政策は大きく分けて?政府の積極的な介入型?最小限の義務だけを担当する消極的管理型?全てを業界の自立的市場の機能に任せる放任型にわけられる。韓国の映画振興委員会(KOFIC)は政府と協力して映画振興政策を執行する機構で,振興に必要な政策を開発し,各種の支援作業を執行している。創意的で芸術性が高い優秀なシナリオを選定し,製作費を支援する。海外映画祭の参加支援及び受賞者に対する褒章,映画人の要請,撮影所の施設の運営及び現像,録音等に必要な技術と施設の向上に努力をかたむけている。つまり,大きく分類すると?直接支援(=独立映画および芸術映画の制作に必要な制作費を支援する)と?間接支援(=各種基盤施設の提供,人力の養成等,長期的に韓国映画の基盤を強化するための支援)がある。これからの政府の映画振興政策は?人材養成?フィルム・アーカイブ活動への支援?制作に必要な基礎施設の現代化と支援拡大等,間接支援部門に大きな比重を置く必要がある。民間部門で自立的に解決できない部門の支援が必要と考える。次に映画産業と映像文化の調和した発展の誘導について。映像文化の発展の尺度として認識されるものは,映像資料の保存と活用である。政府は映像資料の保存の重要性を認識して,2001年度に映画振興法を改正し,韓国映像資料院を法定機関とし,国内映画のみならず輸入映画も,フィルムを映像資料院に義務的に提出するようにした。また,収集した資料の体系的で科学的な保存のための空間として,総合映像資料保存センターを設立できるよう,積極的に支援する予定である。活用の側面では,民間の映画運動を通じて,映画愛好家の底辺を拡大し,韓国映画が持続的に成長できる基盤を醸成していく。また映像メディアセンターをソウルに続いて,各主要地方都市に設置していくことも映画産業の底辺を拡大する重要な方策になると思う。韓国政府は21世紀デジタル時代を迎え,映画においてもシステムを構築して多方面から支援していく。
具体的に韓国の映画界の流れ,現在に至るまでの政策・配給・興行・観客について,また収集・保存・シネマテックと非常に多岐にわたった説明をいただいた。
「シュリ」がヒットした原因が何かを話しているとき,政府の支援の2つが成功したと聞いた。1つは,劇場での観客数の把握を自動化する具体政策をとったこと。もう1つは,プサンを映画のメッカとするため,映画祭を持ったこと。そのことが成功につながったとすると,本当にカンフル剤的に政府や官が民を助けるということの意義があると思う。この2点が本当に特化した政策として韓国政府として行われたのか。
間接的な援助の施策ではスクリ一ンクォーター制が目立つと思う。だが,2001年に51%のシェアだと,この制度は今後必要ではないと思う。総合撮影所,ファンドに政府系の支援があると聞くし,この制度は少し保守的ではないのだろうか。
この制度は必要だと思う。いくら規制力を持っていても,作った映画が必ず映画館で上映されるという自信がなければ映画は作れない。映画の振興,芸術,特に商業映画のためにこの制度は必要だ。
1996年に映画を産業として認めたと言ったが,決めた一番の理由は何だったのか。また,それまでは産業として成り立ってなかったのか。
政府は当初,映画には芸術性が一番大切だと思っていたが,映画がお金をもうける手段として大切だと思ったのではないか。映画が産業として成り立つようになったのは,映画振興法ができてからだと思う。映画について韓国人の関心は高い。そもそも映画が好きなのではないか。
まず懇談会をどのように進めていくかが問題だと思う。映画会社,映画に携わる人々,関係者が基本的には努力していく。今の韓国の話を聞いても,マーケットに目を向けて市場に受け入れられる物を作るのが基本であり重大であると認識した。しかしながら,映画に係る著作権法等の法的整備,制度的な基盤の整備など,民間企業では及ばない文化芸術・教育的な側面への補助が不可欠だと思う。それを考えた場合,全体会議とは別に個別に集中して行う分科会が必要になるのではないか。
今の現状で日本映画の製作支援を考えるにあたり,まず撮影環境の整備が大きな問題だと思う。映画の製作資金という観点ではなく,間接的な支援方式を全体として考えるべきだ。それはまず設備,人材育成,資本の問題等であるが,その点を実効性ある提案の中で前向きに検討されるべきではないか。
その部分はまたいろいろ検討してもらいたい。今日2人の先生には,大変示唆に富んだ話をしていただき勉強になった。。
日本では小・中学校・高校生と学校教育の一員として映画を見るが,韓国はそのようなことぱしているのだろうか。
今はもうない。
映画自体の製作方法,興行の問題を考えることも大切だか,観客側の育成も大切なのではないか。映画か興味ある存在として子供へ伝えることで,大きな意味での人材育成になるのではないか。
底辺をどう掘り起こしていくかも考えるべきだと思う。

5.今後の日程
第3回の懇談会は,7月中旬頃を予定している。次回はアメリカの様子を中心に情報提供していきたい。また前回,今回指摘があったように,これまで文化庁で映画振興を一検討した際の提言に対しての現状を整理して,議論の素材に出したいと思う。
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