映画振興に関する懇談会(第4回)議事要旨

1. 日時 平成14年8月8日(火)13:00〜15:00

2. 場所 東海大学校友会館 「富士の間」

3. 出席者
(協力者) 高野座長,横川座長代理,飯田,大林,小田島,児玉,阪本,迫本,新藤,砂川,関口,髙村,司,中谷,奈良,長谷川,福田,北條各委員
 
(文化庁) 河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,寺脇文化部長,河村芸術文化課長,岡本著作権課長,山田主任芸術文化調査官,坪田芸術文化課課長補佐,清水芸術文化活動支援専門官,長坂美術学芸課美術館歴史博物館室長,東京国立近代美術館フィルムセンター岡島主任研究官,同センター佐伯主任研究官 外
 
(関係省) 大橋総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室長,
境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐,
井上国土交通省観光部観光地域振興課専門官 外


4.概要
(1) 配布資料の確認があり,前回の議事要旨について意見がある場合は,明日中に事務局に連絡することとした。
(2) 映画に関連する施策について,文化庁著作権課より資料2「著作権政策の『戦略5分野』」に基づいて説明が行われるとともに,総務省,経済産業省,及び国土交通省からそれぞれ関係資料に基づいて説明が行われた後,大要以下のような議論が行われた。
[○:委員,△:事務局]
唯一望むことは,いい映画が再び日本で作られるようになること。地方でも地方公共団体が関わって映画を製作する動きがあり,このような新しい流れを支援することが大事である。
映画監督は印税のために映画を作っているわけではない。また,資料の中で「財産権」という言葉を使っているが,テレビで映画が放映される場合,勝手にサイズが変更されたり,編集されたりしているので,こういうことはやめてほしいという意味での「許諾権」の問題であると考えている。
文芸の二次的著作物が映画であるという考え方が問題であるし,現状にそぐわない。原作を映像化する時に脚本家も原作権を持っているが,カメラマンや照明担当にはないというのは,権利の在り方としてアンバランスである。多くの人で作るという映像著作物の特異性というものを考えて対処して欲しい。これが改善されれば作り手の意欲は増すはず。また,個人間で契約を結べと言うことだが,原作者に一番強い権利がある状態で対等に契約など結べるわけがない。権利のあるものが権利を手放すようなことはないからである。
映画は多くのスタッフで作る共同著作物であり,作った人全てが共同著作者となっているが,著作権法では映画だけは映画を作るということで契約すると,著作権は製作会社のものになるとなっている。こういったことがある以上,契約が上手く結べるわけがないと考えるのである。映画を作った人にまず権利を与えた上で,その権利が契約で移動できるような形にするのが望ましい。
著作権の保護期間に関しては,日本は欧米に比して短いため,これを延長すべきということが,本懇談会の共通認識だと私は考えている。しかし保護期間をどのくらい延長するかというのは難しい問題である。日本映画の振興のためにもマーケットを世界に広げる必要があり,日本でもアメリカと同様にせめて70年程度に延長していくことが考えられる。要は,アメリカの映画に負けず,日本の映画を振興していくのは,ますは民間の自助努力に任せていくべきであるが,それでも補い切れない部分を国には支援してもらいたい。
今の議論でも賛成意見と反対意見と割れていたように,ルール作りは当事者間でしていかなければならない。契約で上手くいかないからといって法律で行うというのは無理。
著作権に関しては「映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会」(映像懇)で全ての人の同意の下にルール改正まで視野に入れて議論されている。著作権の保護期間の延長については,経済産業省からも保護強化の意見が来ており,今後前向きに検討していく予定である。
映画に関することでも著作権に係る事柄は映像懇の方で議論していくということで,この懇談会では理解したい。
(3) 今後の映画振興に関する懇談会の在り方について,高野座長より,テーマ1として「人材養成」,テーマ2として「製作」,テーマ3として「配給・興行」,テーマ4として「保存・普及」を考えている。これらテーマごとに分科会を設け,議論を進めてはどうかとの案が行われ,大要以下のような議論が行われた。
人を育てるということが第1テーマになると思うが,映画を作る人だけでなく観る人も育てなければならない。また,育てるだけではだめで,その人たちが活躍できる場所を整備しなければならない。そしてそれを保存していく体制が重要である。この分科会の分け方は賛成できるが,これらのテーマは全て相互に関係があるということを忘れるべきではない。
我が国の実際の映画の利用をみると,ビデオ等の二次利用の比率が大きくなっている。今までも映画製作費の50%はビデオで回収している。映画振興において,他のメディアへの進出を考えることも重要。興行をテーマとする分科会で二次利用・三次利用についても考えていくべき。
各委員が共に賛同できる点を提言化していくことが大事。こういった懇談会は討論に時間を費やすだけで,現実の成果がなく終わってしまうことが多いので,各分科会でしっかりとしたたたき台となる報告を作り,実のあるものにするべきである。
今回は国会の映画振興議員連盟に属する議員の方もこの懇談会に対して興味を持っていて,議員立法を作ることも辞さないといった感じである。実現されるかどうかは別として,こうあるべきだという姿をしっかり残すべきである。
これまでの懇談会で映画に関する問題点が多角的に見えてきたが厳しい財務状況の中では,国民に映画を特に取り出して振興策を考えなくてはならない理由を説明するための哲学と具体的ターゲットが必要。昭和63年の懇談会ではフィルムセンターに関する問題が多く出てきて,その後実際に新しく現在のフィルムセンターが設置されるまでに至った。そういう意味で大成功だったと思う。今回も前回の懇談会のように論点を絞って,成果を残すべきである。
確かに提言をまとめる際には,しっかりとした哲学と文化論が必要である。
映画を個人で観る機会はむしろ増えてきているが,映画館で観る機会が減ってきている。CDで音楽を聴くのとコンサートで実際に聴くのと違うように,一人の食事とレストランでの食事が違うように,個人の場でなく,みんなで映画館で映画を観る機会を増やしていくことが映画振興になる。映画祭はそのために作ったものである。みんなで観るからみんなの共同体験になる。これが映画の役割。
また,こういった会議では時間が限られているので,事務局の方が委員のところに来て,意見の聞き取りをすることも考えて欲しい。
良質な映画を作って満足してもらう必要があるが,そのためには疲弊しきっている設備を整えなければならない。
テーマ1からテーマ4までをそれぞれ,第1分科会のテーマから第4分科会のテーマとすることとなったと考える。各委員にはどの分科会に参加するかの回答と,各分科会の詳細についての提案を事務局に早めにいただきたい。分科会は9月から10月の2ヶ月に集中して開催することとなるが,その日程については,後日連絡を差し上げたい。また,分科会と同時に国内外の主な映画撮影所に関する調査を9月から10月にかけて行うので,その報告を次回行いたい。
(以上)
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