映画振興に関する懇談会(第5回)議事要旨

1. 日時 平成14年12月12日(木)10:30〜13:00

2. 場所 霞が関東京會舘(霞が関ビル35階) 「ゴールドスタールーム」

3. 出席者
(協力者) 高野座長,大林,岡田,小田島,児玉,阪本(代理:成田),迫本,新藤,砂川,関口,髙村,司,奈良,長谷川,福田,北條,矢内各委員
 
(文化庁) 銭谷文化庁次長,寺脇文化部長,河村芸術文化課長,山田主任芸術文化調査官,坪田芸術文化課課長補佐,佐伯東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究官 外
 
(関係省) 境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐


4.概要
(1) 配布資料の確認があり,前回の議事要旨について意見がある場合は,明日中に事務局に連絡することとした。
(2) (1)第1分科会から第4分科会までの各主査(欠席の横川主査に代わっては,河村芸術文化課長)より,各分科会の報告が行われるとともに,(2)財団法人日本総合研究所より資料7「国内外の主な映画撮影所に関する実態調査(暫定要約版)(案)」について説明が行われた後,大要以下のような議論が行われた。
[○:委員,△:事務局]
撮影所調査に関して,アメリカでの調査は,西海岸中心だったようだが,人材養成の観点から言えば,ジ・アクターズスタジオというものが東海岸にあるので,東海岸側での調査も必要だったのではないか。
先の会議で事務局からは,「映画関係者の思いのたけを記したい。外への説明は文化庁の役割」という話があったが,その点より,2つ気になる点がある。一つ目は,一般国民にとって,「ハンドスタッフ」や「プリセールス」,「リスクヘッジ」等の業界用語はわかりにくいということである。
また二つ目は,第3分科会報告には,「公立文化施設・社会教育施設において,借りようとする事業者が営利法人であるとか,入場料を取るとかのみで営利性があるので貸せないと一律に機械的に判断すべきでない」旨の考え方は,映画上映に限るものか,あるいは他の音楽,スポーツ等の利用に対しても同様なのか。
用語については,各主査からの分科会報告であることから,足りないところがあるが,提言などとして対外的にまとめる際には修正する。
また,公立文化施設や社会教育施設に関しては,その利用全般について硬直的な取り扱いがあると聞いており,その利用制限を緩和してもらおうと考えている。平成7年の「社会教育法における民間営利社会教育事業者に関する解釈について」の行政実例を踏まえ,実際上,映画上映利用への提供を契機として適正な運用がなされるよう周知したい。
今まで,公立施設は利益を求めるものには貸せないという思い込みが役人にはあり,慣習的に杓子定規に取り扱われていた。
国として行なって欲しいもの,業界が努力するべきものを聞きたい。
今回の報告は,非常に掘り下げて議論ができたものとなっている。
映画がいい方向に向かっていくためには,映画に携わる者皆が協力する。そして自助努力で観客に喜んでいただくものを作ることが基本であるが,国には不足している部分,インフラ整備等に対して支援してもらいたい。
規制緩和の中で,なぜ映画だけに関与と支援を強めるのかという話になる。各国は,映画に対する支援をしているが,その理由は二つあり,映画は文化財であるから保護すべきであるということ。もう一つは,国家の事業的戦略上国益にかなうからということである。
アメリカが映画によって,政治家,外交官による努力よりも対外戦略上国益を得ていることで明らかである。
最初,国が助成を行い,業界が一人立ちできた段階で徐々に民間に任せ,業界の自助努力を促していけばいい。また,国の支援は重点的に行なうべきであり,コンテンツ不足に対するコンテンツ産業の活性化支援は大きな意味がある。
第1,第2,第4分科会報告にあるような映画を支援する組織づくりについては,今までにないすばらしい意見であるが,その具体的な議論はどこでもなされていない。今後,本懇談会で議論できる機会があればいい。
また,縦割り行政の除去は有難い。字幕助成でも各省が連携をとって,文化庁の助成額が増す方向であると聞いている。
国に行なって欲しいのは,正に法律や組織の問題である。
各分科会の中から出てきた意見の具体化については,短期的に可能なものと,中長期的に考えていくものとに分けて道筋を示すべく検討させていただく。
各分科会報告では,テレビを敵視している記述が多く見られる。他の業界も含めて映画を考えるべきであり,テレビとの関わりも含め,まとめる段階で関係者の総意が必要であるとの協力関係を中間まとめに記述すべきである。
昭和63年に同様の映画振興の懇談会があったが,当時の文相の発言で,「映画は動く映像の原点であり,映画が廃れれば他の映像も廃れてしまうため,国として支援したい」ということであった。
各分科会報告の具体化については,直接係わる現場スタッフを集め,どのように対応すべきか討議できる場を設け,最終報告に盛り込むべきである。
日本映画については,国の支援が,アメリカやフランスから遅れをとっている。今後,これを機に支援を増やすべきである。
映画振興のためには今後,ビデオ・DVD化・インターネット配信などの二次利用を考えなければならない。インターネット配信により簡単に海外でも見ることができるため,海外は発信される産業として振興が必要であり,その点を配慮すべきである。
各分科会報告の実現に当たっては,その予算規模は数千億円にもなり,どの施策を優先的に行っていくのか具体的に絞り込みながら議論していく必要がある。
各分科会報告に現状の問題点,議論すべき方向性に関しては網羅されているが,全てを実行することは不可能であり,各分科会の緊急課題に絞り込んで実行に向けた検討会を立ち上げてもらいたい。
東京国際映画祭の運営についてメディアからの批判があり,心配されている関係者も多いので,経済産業省としてはどう考えているのか伺いたい。
東京国際映画祭は映像分野に対して大変意義がある。確かに支援が少なくなっており,業界で支えるところを見つけ,しっかりした支援体制を再生する必要がある。映画だけでなく,CG等も対象として,一般の視聴者からも面白いと思えるものであるべきであり,どのような協力者が相応しいか考えている。文化庁にも支援をお願いしたい。
また,個別に改めていかなければならない部分もあるので,是非映画界の方にご相談させて欲しい。
文化庁としても関与について積極的に検討してまいりたい。
分科会報告の中に「映画の広場」と「フィルムセンターの拡充」という似通ったものが書かれているが,経済産業省と文化庁でそれぞれ担うべきもの担い,ブロードバンド環境なども含め総合的に考える必要がある。
今できることも必要だが,映画を真剣に考える機関を作り,そこで中長期的な施策を考えるべきである。
テレビが敵視されているという話があったが,演劇も映画やテレビとライバル関係にあり,相互に関連している。
映画が国家戦略であると分かるのは,ヨーロッパの演劇人が影響を受けたものとして黒澤映画の「蜘蛛巣城」があり,蜷川幸雄が影響を受けた作品として「マクベス」がある。また,アジアを中心にして「おしん」が広く見られている。演劇も映画もテレビも日本文化をアピールしていることは確かである。映画を振興していくということはこのように色々な文化芸術を振興していくことにもつながる。
フィルムセンターの独立については賛成だが,フィルムセンターにはお金も人も十分ではなく,日本を代表して映画に係る全てを担うことはできるだろうか。フィルムセンターが名実ともに代表的機関となる方向に進むことを希望する。
フィルムセンターだけでなく,現在ある民間団体を活用し成長させ,指導する必要がある。予算を少なくしても,民間を活用することで大きな効用を得ることができるのではないか。
各分科会報告については意見が多すぎて,何から手をつけていいかわからないが,まず実現のために何から進めていくかを考えていくことが重要である。
課題があまりにも多すぎるため,強弱をつけた支援,映画界が背負う支援,現在の問題,将来の問題があり,長期的な解決策を示すことで国民に分かりやすく提示できるのではないか。
映画は国家戦略につながるということを文面に盛り込んでもらいたい。
これまでは合理化が求められていたが,21世紀はゆとりある社会,非合理的なものを受け入れる社会になる。それが芸術やレジャーなどであり,映画の役割はますます大きくなる。
過去には,映画は,文化と産業の二元論で論じられてきたが,懇談会,分科会では,文化と産業が重なり合って議論できたので,将来的あるいは本質的なテーマで今後の対応策を考えていくべきである。
国が映画を振興していく理由を国民にわかりやすく示す必要があり,また,各省庁の分担と協力についても考えていく必要がある。
提言のとりまとめに向けては,緊急に行うべきもの,中長期的に行うべきもの,税制などの制度も含めて改善策を考え,対処してまいりたい。
各分科会報告については,中間まとめとして各分科会主査と事務局で次回までに起草したいので,各分科会報告に対しての発言漏れ等あれば,主査まで連絡をいただきたい。関係者からの本懇談会報告に対する意見聴取については,次回までに検討し,報告したい。
(以上)
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