映画振興に関する懇談会(第6回)議事要旨

1. 日時 平成15年1月16日(木)13:00〜15:00

2. 場所 赤坂プリンスホテル 「サファイアホール」(旧館2階)

3. 出席者
(協力者) 高野座長,横川座長代理,飯田,児玉,迫本,新藤,鈴木(代理 原田),砂川,関口,髙村,中谷,奈良,長谷川,北條,矢内(代理 林)各委員
 
(文化庁) 河合文化庁長官,銭谷文化庁次長,寺脇文化部長,河村芸術文化課長,山田主任芸術文化調査官,坪田芸術文化課課長補佐,富岡美術学芸課美術館歴史博物館室長,延原美術学芸課美術館歴史博物館室室長補佐,佐伯東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究官 外
 
(関係省) 境経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課課長補佐


4.概要
(1) 配布資料の確認があり,前回の議事要旨について意見がある場合は,明日中に事務局に連絡することとした。
(2) 文化庁における平成15年度の映画振興関係施策について,資料3「平成15年度の映画振興関係施策(予定)」を基に説明が行われた。
(3) 映画振興に関する提言(中間まとめ)(案)について説明が行われた後,大要以下のような議論が行なわれた。
[以下,○:委員,△:事務局]
国立映画大学,国立映画撮影所についてどのように考えるとよいのか。
前2回の懇談会で,国立の映画大学,国立撮影所について話が出ていたため,そのような期待が寄せられるものと考えるが,今回は全く違うコンセプトで議論が進められている。そもそも国立を無くそうという行政改革の中では,既存の国立大学もなくなる。今ある映画人材養成機関をコンソーシアムという大きな連合体をつくる方向でまとめているが,プロデューサー養成のための専門職大学院は国公私立を問わずありうるかもということ。財政難というよりは,現時点では国立の映画大学,撮影所が国民の合意を得られにくい状況にある。
各国の状況も踏まえ,いずれも実施可能な形で行うことを考えており,今回の整理では,国立の映画大学,撮影所という提言はないが,実質的に同じ役割を果たすものを考慮するということを報告書の行間から読み取っていただきたい。
分科会で議論された内容がほぼ含まれているが,今回の議論で特徴的なものは2点あり,一点目はフィルムセンターを拡充させて,映画をつかさどる機関を作ること。二点目は現在の助成制度を発展させて,映画業界の自助努力を前提とする融資制度をつくるということである。しかし,これらが中間まとめの中では軽んじて書かれている。これでは,外部の人たちは今まで議論してきた融資制度等は,結局行わないものだと考える。もっとこれらの案に重点を置いて欲しい。
現在は小さい政府を目指すべく,国が関わることも徐々に減らす方向にあるな中で映画振興に国がどのように関わっていくかを考えなければならない。
中間まとめというものの多くは,最終報告に近いものであるが,この中間まとめは最終報告とは少し遠いものになっている感がある。第2部では今までの提案が羅列されているだけである。
私は今回の中間まとめを作る際の構成として,日本映画を振興するのに今行わなければいけないものを中心に骨格をいくつか作り,それに細かいものを附随させるべきと考える。テストに例えると,20点の問題を4問と1点の問題を20問作るということである。行わなければならないことを明確にし,メリハリをつけるべきである。
今回の議論の骨格はフィルムセンターの独立と保存・製作に関する施策であるので,最終報告ではこれらを骨格にして作成して欲しい。
また,何故映画を国が支援するのかを明確にしなければならないと言ってきたが,第1部でしっかりと書かれているようである。ただ,現在の社会において「物の豊かさより心の豊かさを求める」というような書き方はどうか。現在の社会状況に則して書くなら,「映画は金銭的に安く心の豊かさを得ることができ,大きな意義をもつ」というような書き方が望ましいのではないか。
今後はこれらの提言をどのように実行していくかが重要になる。
映画は国益に適うものであり,1本の映画が当たることによって,周辺産業への波及効果は大きく,映画への支援は日本のサービス産業全体を活性化させることになる。最初はスピードをもって大胆に助成し,それから少しずつ引いていく形でないと創造サイクルはできていかない。
製作への支援に関しては,助成と融資に力を入れるべきであるという意見であったが,分科会で議論された国立の映画撮影所に関してはどうするか。
国立の映画撮影所については映画会社によって事情が異なり,スタンスが違うので,製作支援を充実する方が同じ土俵に立つので良い。
並べている施策に強弱をつけるべき。「短期」と「中長期」に分けるなど。
書かれている施策についてメリハリをつけるべきだという意見があったが,事務局がメリハリをつけるのはおかしい。どれを前面に出していくかということは懇談会で決めていただきたい。
また,役所が作る中間まとめには確かに最終報告と何ら変わらないものが多いが,懇談会は後少なくとも5回は開催する予定であり,現場の方の意見も聞いて,提言をまとめていくこととしており,やわらかい性格のものであると考えて欲しい。
助成から融資への転換に関しては短期的には助成も必要であり,来年度の予算でも助成の充実も要望している。助成をやめろと言われないよう,工夫して書いてある。
中間まとめに書かれている施策は方向性であり,これを具体化していくためには,ワーキンググループを新たに作る必要があると考える。また,問題を抱えているのは現場であるのだから,彼らの意見を聞き,実効性のあるものを作っていく必要がある。
中間まとめの公表後,2月中に3回ほどヒアリングを行うこととしている。また,今回の中間まとめを関口委員の協力を得て,「キネマ旬報」に載せて,読者からの意見を募ることとしている。
また,最終報告を出した後もこれらの施策について考えていく必要がある。最終報告公表後も平成15年度以降,映画製作支援をどうするかの会議,フィルムセンターをどう具体的に考えていくかの会議を開く必要がある。
映画に携わる人の権利を守るため著作権についての記述は重要であり,反対ではないが,そこに踏み込んでしまうと他の問題の議論がおろそかになる。
また,メリハリをつけることについては,事務局からの提案通り,皆で考える必要がある。
13ページの5行目に「鑑賞者の発意」とあるが,これを「上映者の発意」についても触れてもらいたい。映画を見せる側にも責任があるということを明確にすべきである。そのことは,非映画館で上映する人への支援にもなる。
また,興行を透明化するとあるが,実態調査をすれば,自然に透明化するのではないか。ここではむしろ,映画館においてどれほどの本数が上映されているのか。どれほどの観客が入っているのかを調査するべきである。
配給において重要なことは,上映作品の多様性の確保と資金回収についてである。
透明化とは客観性を拡大させることであり,この表現を弱めることは受容れられない。興行側とこれまでの議論で改善すると言っているし,はっきりさせるべき。
実際,興行がごまかすということが過去にはあった。今後,製作側も興行側も透明化を進め,信頼関係を構築しなければ融資制度は築けない。
前回の懇談会で発言のあった東京国際映画祭について改革の動きを感じた。世界の12大国際映画祭であることと映画祭が国家にとって資産であるということを考慮すると国又は公的機関からのバックアップを受けながらの改革が必要である。釜山や上海に東京が追い上げられている現状において公的な支援をどのように行っていくのか。
今月にも経済産業省内で議論をしたいと考えている。その際には文化庁からも参加いただきたい。東京国際映画祭は,映画産業,又は映画という文化活動として大切な財産であり,我々としても活用の価値があるものと考えているので,映画界又は映像産業全体で支えていただきたい。また,文化庁を含めた各政府部門からの協力もいただきたい。
公立文化会館等での上映支援であるが,これは何を指すのか。この前のページで子どもに映画館で映画を見せるための取組を行うとあるが,これと矛盾することにならないか。公立文化会館等での上映支援については,このような施設においても映画館と変わらず上映できるように設備を整えるということなのか。それとも,映画館が無いような地域において,代わりに公立文化会館等を利用するという意図か。それとも映画館で上映されないようなものを公立文化会館等で上映するということか。
映画館が無い地域で基本とすることが一つ,次に現在調査中であるが,映画館並みの大スクリーンなどの上映設備のある会館等はかなりと考えるで矛盾しない。実際に,これで施設の人間に映画上映をしない理由を聞くと,「法外なプリント代を請求される。」などの刷り込みが施設関係者にはあり,これを払拭しようという意図もある。
それは少し前の話であり,現在は,興行者が公立文化会館等で上映する際の障害にはなってないと思う。いずれにしろ,映画は娯楽としての一面もあるため,繁華街に行くからワクワクして楽しいのであり,周囲の環境のいい公立文化会館等で見ても面白くないのでないか。
フィルムセンターについて,プリントの納入義務やネガの寄贈促進を記述しているが,納められたプリントやネガはどのように利用するつもりなのか。
分科会での議論においては国立国会図書館法などを改正して,納入を義務付け,代償としてプリント代を払うというものである。著作権は移さず,利用制限に係る規定も設けるとういうことになった。詳しくは,今後映画関係者からのヒアリングを通して詰めていきたい。
子どもに映画を観せるためには,総務省の教育コンテンツの活用や学校へのビデオ持込の規制をどうするかがある。また,最終提言は骨太のものであるべきと考える。
15ページ1行目のプリント代の低廉化とは,どういう意味か。
これは実態としてある話であり,例えば役所が映画祭等を行い,プリントを借りる際には高く請求されるなど,相場が曖昧であり,困っているという状況を言っている。
プリント代は上映事業の収支計画が作品によってケースバイケースである。また,プリント貸しは製作会社の経営上大きなウェイトを占めるものであり,一律に値段を決めるのは難しい。
興行の透明化と同様であり,曖昧にすべきでない。
興行者は支援を受けず,製作者は支援を受けているのだから,むしろ製作者側が透明化を進めるべきである。 また,映画の料金については,分率とフラットがあり,分率では洋画は70%,邦画は60から40%である。フラットについては,1万円から100万,200万まであり,価格差が大きい。よって,フラットで予算上借りられない場合は分率で借りればいい。
金融機関など外部から資金を入れていく際に,このような産業構造の透明化が必要になる。データで見て,上映事業の条件によってプリントの値段のいくらぐらいという目安があると,上映会が行いやすい。
値段を決めるのは難しい問題である。フィルムの上映中と,上映が終わってビデオ販売中,当該地域の劇場で上映中などタイミングと地域によって値段は変わるものであり,標準価格も決めにくい。
私としては,「たそがれ清兵衛」のように興行的に成功した作品に対して報奨金のようなものを出してもいいのではないかと考える。
第2部は羅列的に網羅されている印象を受ける。人材養成の中でも製作や配給・興行上の課題,フィルムセンターの独立のところに入れるべき課題があるのであり,四分科会のカテゴリーで分類するよりも,違ったものにすべきでないか。文化庁として個々の提案の時間軸と優先順位を示すべきである。
第1部と第2部に重複があれば,第1部の10の方策に「当面取り組むべき」という言葉を使ってしまうと,真意と異なり,第2部にある他の施策は後回しと思われてしまう。
とりあえず,懇談会としての意見を外に示すことが大事である。分野間で重なる事柄が多いのは,当初からの必然であり,今後詰めていくべきものである。
インターンシップ制度を確立して欲しい。現場に出て誰が若手を育成するかということが重要である。昔は撮影所があったが,今は場も時間もない。
日本撮影監督協会では青年部に学生を入れ,現場で指導しているが,金銭的な支援がないと厳しい。
「新しい才能の開花」という記述があるが,学校教育の中で鑑賞するだけでなく,伝える能力を高めることが重要である。
人材養成機関間のネットワーク化推進とは,新しくネットワークを作るということか,それとも現在作られつつあるものを支援していくということか。
そのようなネットワークを作る動きはあるし,新しく作ることも考えている。ただ大学の自治というものがあり,命令はできないが,インセンティブを与えるやり方,例えば私学助成とか文化庁の支援とかメリットを示し,他と組むことはいいことがあるとなるよう推奨していくことはできる。
現に大学でも,動きは進んでおり,いずれは養成機関間のネットワーク化がなされることを期待している。
4頁にフィルムセンターの独立に際し,漫画等も広く対象とすべきかとあるがどういうことか。
映画に特化するか,広げるかは重要な論点であり,総会での宿題である。
10頁の1の最後の方にある,「さらに家庭用ビデオにより,〜」という文章については理解できるが,なぜここに入ってくるのか。それまでずっと映画について書かれているにも関わらず,ビデオしかもプライベートフィルムたるビデオが入っている意味を書かないと誤解を招くのではないか。
冒頭に書いてある通り,映画は苦しんでいて保護しなければならないものではない。再生の可能性があり,国民が親しんでいるものである。そうであるなら,これまで観客の立場からの考え方が抜けている。そのことから,今回の総論には観客の育成と言う観点から,記述を入れてあるが,そこのところは分かりやすくする。
2月5日発売のキネマ旬報でこの中間報告を掲載し,広く観客の方々に内容を問う予定である。要するに,観客にとってはいい作品が見たい,面白い作品が見たいということが欲求であり,そのためにどのような方法で見るのか。そのためにどのような人たちが,どういう映画を作れるのかということなど,これまでの懇談会の議論とは逆の発想からの意見が出てくると思われる。映画振興が良い方向になると思われる意見があれば,これを提案し,議論が活性化することを期待している。
我々が始めて5年目になる文化記録映画祭は,テーマが明確で,そのテーマごとに観客がグループ化される。 例えば建築に関する映画なら建築に興味がある方,伝統芸能に関する映画であれば,伝統芸能に詳しい方々が訪れるなど観客の中に専門家が集まりやすい。我々は,映画祭に際していろいろ手を尽くしてテーマ毎のスペシャリストを呼ぶ。観客もその分野のプロであるという中で,ゲストは自分の映画がどのように咀嚼されていくかを考えながら,映画を通して大学教室のようなものをつくることになる。自分の専門分野で興味をもった映画を上映し,ゲストになりつづけることによって,そのようなグループが生まれ,映画の可能性を広げる,そのような映画祭を行いたい。
懇談会は劇場における上映,配給事業などの普及が中心になっており,個々の問題を積み上げていく過程で問題点が製作,興行,配給に集中している。ビデオのビジネスでは,ビデオは,映画の著作物であり,ビデオ鑑賞,劇場公開,テレビ放映は,それぞれが助け合い,相関しており,結局映画がビデオあるいはテレビも振興している。衛星放送などでは映画を愛好する方たちに特化したものを流している番組もあり,今後の審議においては,ビデオも一緒に振興するというような大きなアプローチで振興策をまとめて欲しい。
本日は第2部を中心に議論したが,これを基にして第1部も修正していきたい。また,やわらかい中間まとめであるので,今後幅広く現場の意見を聴くなどしていきたい。また,関係団体に中間まとめを送付し,意見を募る。「当面取り組むべき10の方策」についても再構成する。大事なことは,本文の前の四行の文章がこれでいいかである。
フィルムセンターが独立することは,知名度を向上させるものであり,映画に関してしっかり取り組んでいくという意味で良いことである。「映画の広場」については,国立撮影所を構想しないのなら,フィルムセンターで良いと考える。
中間まとめは座長,主査,副主査の方々に集まっていただき,確定していだくこととなる。
(以上)
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