フィルムセンターの在り方に関する検討会(第1回)議事要旨

1. 日時 平成16年2月2日(月)14:00〜16:00

2. 場所 文部科学省ビル3階 特別会議室

3. 出席者
(協力者) 横川座長,岡田,河原畑,迫本,高村,西村,松本各委員
 
(オブザーバー) 高野悦子 東京国立近代美術館フィルムセンター名誉館長
辻村哲夫 独立行政法人国立美術館理事長,東京国立近代美術館長
 
(文化庁) 素川文化庁次長,寺脇文化部長,木曽文化財部長,西阪芸術文化課長,湯山美術学芸課長,冨岡美術学芸課美術館・歴史博物館室長,佐伯芸術文化調査官 外


4.概要
横川委員を座長に選任後,事務局より資料の説明が行われ,その後,委員から以下のような議論が行われた。
映画の専門機関の存在は必要であると考えるが,そのような機関を設立することは,現在の行政改革などの流れの中では現実的ではない。まずは,今のフィルムセンターを基本として,その中でどのような機能を付与していくかを考えていく必要がある。
フィルムセンターの職員が11名しかいない現状の中では,実現可能な取組は限られている。フィルムセンターの担うべき機能について,優先順位をつけていく必要がある。
国家戦略として映画を振興することは国益に資する。一方,映画は経済的側面も持ち合わせているので,民間でできる部分は民間で担い,インフラの整備等民間で難しい役割については国に担って欲しい。
映画フィルムの保存については,フィルムセンターは少ない予算にもかかわらず,重要な役割を果たしてきている。
小津安二郎生誕100周年記念イベントでは,民間とフィルムセンターが互いに機能し合い,成功を収めることができた。今後もこのように連携する知恵を出していくことができれば,民間と国との連携が生まれてくるのではないか。
現段階において実現可能な取組として,映画フィルムのデジタルアーカイブ化を進めるべきであり,収集作品を自由に見れるようなシステム,例えば,映画フィルムをDVD化するなどして,それを一般の方が広く閲覧できるようなシステムを設けるべきである。
映画を上映する際には,上映する側だけでなく,鑑賞する側の存在も必要であり,お互いが交流することができるような環境を整備する必要がある。
また,現在,日本映像職能連合では,撮影現場で撮影助手を養成しており,彼らを現場で継続的に養成することのできるような仕組を考えるべきである。
しかし,これらを一度にフィルムセンターが担うことは困難であるため,優先順位を設けながら,フィルムセンターの担うべき機能について議論していきたい。
映画関係の職業に携わる人々は,映画と社会をつなぐ役割を果たしているにもかかわらず,社会的認知が低い状況にある。どのようにして彼らの社会的認知を高めていくのかについても考えていくべき。
今必要なのは,多くの映画作品が上映され,それを多くの人が鑑賞していくことである。その中で,シネマリテラシー(映画の技法や話法を理解するための知識)が浸透していく。
フィルムセンターは我が国の映画専門機関として期待が大きく,将来的にはCNC(フランス国立映画センター)に近いものになることを期待している。
既に映画の振興に早くから取組んでいる国があるが,日本はまだこれからという段階である。現在立ち遅れていても,将来的には希望のレベルに達してくれるものと思う。どれだけ実現できるかは分からないが,フィルムセンターの担うべき機能について,本検討会で議論して欲しい。
現行制度では,国立国会図書館法で国立国会図書館に映画フィルムの納入義務が設けられているにもかかわらず,同附則で免除規定が設けられている。フィルムセンターがその状況を見るに見かねて,少ない予算の中で,映画フィルムの保存という役割を担ってきた。フィルムセンターに納入義務を課すとすると,立法府の問題等が生じてくるが,国の責務として文化遺産である映画フィルムを保存していくべきかどうか,そのあたりを踏まえて議論していただきたい。
社団法人日本経済団体連合会や,経済産業省でもコンテンツの振興の話をしている。また,映画議員連盟でも映画の基本法を出そうとしており,ようやく映画が日の目を見始めたところと思っている。コンテンツや映画に対し,国が支援することを明確にするだけでも意味のあることである。
また,地域で映画のロケーション活動を行うことは,地域の活性化にもつながる。
人材養成は,映画を製作する側のみならず,鑑賞する側の存在も必要である。両者の結びつきを強めるための鑑賞の方法を考えて欲しい。
映画製作者は,製作する際にコントラストなどを考えている。複製する際には,質が低下しないような対策も考えていく必要がある。
また,「銀座4丁目」のように,フィルムセンターに収集されていないものがあるので,これらを収集・保存することができる窓口としての機能をフィルムセンターが担って欲しい。
国立国会図書館法の法改正については,映画議員連盟がいつでも相談にきて欲しいと言っていた。国立国会図書館法の改正がどういうものかはわからないが,フィルムセンターに文化遺産である映画フィルムが保存されることは重要であり,国の後ろ盾があれば,映画の向上にもつながる。
しかし,国立国会図書館法の下で,フィルムセンターに映画フィルムの納入義務を課すとすると,フィルムセンターが国立国会図書館の下請けのような存在になるのではないかという不安を抱えている。
国立国会図書館への映画フィルムの納入が免除されている根拠はどういうものか。
書籍と異なり,映画フィルムの保存は,湿度調節の必要性や,可燃性の問題などがあり,それらが原因で免除されていると聞いている。
現在映画フィルムは不燃性のものに置き換えられてきているが,置き換えの際には,映画フィルムの質を落とさないよう気をつけるべきである。
フィルムセンターで現在行われている事業は,フィルムの保存,修復,研究,発表である。フィルムセンター設立当初の人たちが考えていたものがようやくここまでのものになってきた。
しかし,変化する社会の中で,これまでの事業に特化したままでいいのか。この検討会のスタートとして,優先順位を設けずに,フィルムセンターが担うべき機能について議論すべき。
保存といっても,ポジフィルムとネガフィルムの問題がある。ネガフィルムであれば,フィルムの修復も可能である。
フィルムセンターに求めることは,収集したフィルムをDVD化するなどして,自由に閲覧できる環境を作り,それを人材養成につなげる事業を行っていくことである。
フィルムセンターに日本映画が集まりつつあると思うが,国立国会図書館法でフィルムセンターに納入させる義務を付す必要があるのだろうか。
収集可能な作品,収集できていない作品が現在どれほどあって,どの程度のペースであれば,フィルムセンターで収集・保存することができるのか。

5.今後の日程
次回以降の日程は,各委員に配布した日程調整表を基に,調整次第連絡する旨伝えて閉会した。

以上

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