議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第1回)

1 日時

平成22年12月24日(金)9:00~11:00

2 場所

文部科学省旧文部省庁舎5階 文化庁特別会議室

3 議題

  1. 1)座長の選任について
  2. 2)本検討会の運営について
  3. 3)劇場・音楽堂の現状と課題について
  4. 4)その他

4 出席者

(委員)太下委員,片山委員,田村委員,根木委員,三好委員

(事務局)近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,山崎芸術文化課長,門岡芸術文化課文化活動振興室長,
鈴木芸術文化課課長補佐ほか

(配付資料)

  1. 1.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会について
    (平成22年12月6日文化庁長官決定)
  2. 2.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会の議事等の公開について(案)
  3. 3.文化芸術振興基本法及び文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次方針)(抜粋)
  4. 4.文化審議会文化政策部会「審議経過報告」(平成22年6月7日)(抜粋)
  5. 5.劇場・音楽堂等に関する基礎データ
  6. 6.劇場・音楽堂等に対する国の支援
  7. 7.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会における論点(案)
  8. 8.社団法人日本芸能実演家団体協議会「実演芸術の将来ビジョン2010」(平成22年6月)(抜粋)
  9. 9.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会 当面の開催予定

○鈴木文化庁芸術文化課課長補佐

 開会に先立ちまして,まず配付資料の確認をさせていただきます。

<配付資料の確認>

 それでは,ただいまより劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催いたします。
 本日は,御多忙の中御出席いただきまして誠にありがとうございます。私,文化庁文化部芸術文化課課長補佐をしております鈴木と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は,検討会の第1回目ですので,後ほど座長を選出していただく必要がございますが,それまでの間,私が議事を進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 初めに,本検討会の委員の方々を御紹介させていただきます。

<委員紹介>

 続きまして,本日の会議に出席しております文化庁の関係者を御紹介させていただきます。

<文化庁の関係者を紹介>

 それでは続きまして,本検討会の座長の選任に移りたいと思います。
※議長に田村委員が選ばれた。

○田村座長

 田村でございます。よろしくお願いいたします。
 まず本検討会の概要について,事務局から簡単に御説明を頂き,検討会の運営に必要な事項として議事の公開などについて決定したいと思います。それでは,事務局より御説明をお願いいたします。

<資料1及び2について説明>

○田村座長

 ありがとうございました。ただいまの内容について,委員の皆様から御質問などがございましたら,お願いいたします。
 それでは,本検討会運営規則及び議事の公開について,配付資料の案のとおりで検討会の決定といたしたいと思います。いかがでございましょうか。

(異議なしの声)

○田村座長

 ありがとうございました。御異議がないようですので,決定とさせていただきます。それでは,これより会議を公開といたします。
 事務局の方,傍聴者の方の誘導をお願いいたします。

<傍聴者の入室>

 それでは,近藤文化庁長官より,ごあいさつをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○近藤文化庁長官

 改めまして,近藤でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は,皆様方,大変お忙しい中,またもう年末,今年も押し詰まってまいりまして,何かと忙しいときと思いますが,この委員をお引き受けくださり,そして本日御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 田村先生には,政策部会でも委員をお願いし,また部会長代理ということで,大変なお時間とお知恵を頂いておりますが,それに加えて,またこちらの方のこともどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 これからの文化政策をどうしていくか,日本にあるすばらしい人材や文化遺産などをフルに活用して,日本社会の活性化を図り,子供の教育を充実し,明るい日本をつくっていく上で,どういうふうにするのが一番いいかという議論が始まっております。その中で,これまで美術館,図書館,博物館等に比べ,法的な枠組みや,社会的な認識や,支援・サポートが定まっていなかった劇場・音楽堂について,しっかりとした体制を整備していくことが重要なポイントになっております。それによって,劇場・音楽堂の地方の拠点としての位置づけをはっきりさせていくことが大事であろうと思います。そして政策部会でも議論がなされ,今回,先生方に御審議をお願いすることになった次第でございます。
 私もまだ就任して5か月ぐらいですが,これからの日本の基本的な国家戦略の中で,文化芸術分野というのをもっとしっかりと位置づけていくことが必要だと個人的に確信しておりますし,また今のポジションについてますますその確信を深めております。そういう中で,先生方に劇場・音楽堂の在り方について,いい御提言をいただけることを心から期待をしております。どうか忌たんのない御意見を頂きまして,今後の文化政策に是非役立てさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いを申し上げます。

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは会議が始まりまして,私も座長を引き受けさせていただいたということで,一言ごあいさつさせていただきます。
 私は,公共の文化施設の館長をしております。私が今お引受けさせていただいている静岡県は先進的な文化政策をとっております。にもかかわらず,私が実際に文化施設をお引受けさせていただいたら,問題がたくさんございます。それで文化施設の職員につきましても,法的な整備がされていないということと指定管理者制度,公益法人改革など,非常に公共の文化施設は抱えている問題が大きく,制度的な在り方は早急に解決しなくてはいけないと実感しております。
 実際携わっている方,そして周りから御覧になっている方の積極的な御意見を頂いて,日本に3,000近くあるという公共の文化施設が有効に生きるような方法を,皆様とともに検討できる場になれば,そして最終的には,日本が文化的に環境豊かな土地になればと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは,ここで事務局よりこれまでの経緯と,劇場・音楽堂などの基礎データ,国の支援,本検討会で議論する論点などについて,説明をお願いいたします。

<鈴木文化庁芸術文化課長補佐から資料3~8について説明>

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,初めに,御参加いただいている委員の皆様から,劇場・音楽堂をめぐる現状と課題について,自由に御意見を頂戴(ちょうだい)したいと思います。事務局から御説明のありました資料7の論点案も御覧いただきながら,御発言をお願いしたいと思います。太下先生。

○太下委員

 民間シンクタンクで文化政策を研究しております太下です。
 論点案の前段階の話ですが,この検討会が開催された背景には世の中で言われている劇場法の議論があると考えています。ただ,この劇場法をめぐる議論自体が,この劇場・音楽堂の在り方をめぐる課題を象徴している気がします。といいますのは,劇場法について,非常に一部で活発な議論はありますけれども,議論されている方というのは,主に現役の演劇人又は音楽関係者などの非常に狭い範囲に限られているように思います。
 一方で,国民的に議論が起こっているかというと,残念ながらそういう状況は見受けられません。翻って考えてみて,文化庁は劇場・音楽堂以外に美術館とか博物館,図書館など様々な文化施設を所管されていますけれども,ほかの文化施設については,かなり社会的な機能,例えば教育機能や福祉的な機能が非常に進化していると思います。特に,美術館などについては,美術,アートというものが持つ社会的な意義というものを積極的に認めて,社会との接点を増やしていこうと関係者は非常に努力していると思います。
 そういった観点で申し上げますと,今後の劇場・音楽堂の在り方を考える上でも,それぞれ演劇や音楽,そういうパフォーミングアーツの文化の振興の拠点が持つ社会的・教育的・福祉的な機能,またはまちづくりに貢献する機能を見据えた新しい劇場・音楽堂の在り方を視野に入れながら,議論できればと考えております。

○田村座長

 ありがとうございます。片山先生。

○片山委員

 静岡文化芸術大学の片山です。
 私は文化政策のうち,補助金制度やアートマネジメントを研究しており,教育・研究に従事している立場から参加させていただければと思っております。
 基本的にはこの問題は,地方自治体が自らの地域の文化振興などの政策目的を果たすための手段として,その施設をどう位置づけるかという問題であって,自治体が自ら考えるということが大原則と思っております。
 ただ残念ながら,現状の地方自治体の文化政策の立案能力が不十分で,劇場・音楽堂の創造的な側面を生かすことについて,残念ながらまだ十分ではないという点があろうかと思います。
 長期的には各自治体が解決していくべき問題ですが,現状を考えれば,特にその創造・発信にかかわる部分については,国として何らかの関与をすることは必要なのではないか。そして創造活動が東京圏に集中しているという現状を考えると,それを全国に広げていくことは国の政策としては重要と思っております。
 ただ,自治体が設置した劇場・音楽堂を,国が何らかの形で規制を強めて,自治体が上で民間団体がある意味下請といった構造を定着させてしまうのは,新しい公共という流れからすると,逆行する側面もあります。その補助金の出し方について,かなり慎重に議論を進めていく必要があると思います。
 そして今,公益法人改革なども進められている中で,地域の文化財団,楽団や劇団などが,継続的な創造活動を推進していくための支援というのをやっていくという観点でとらえていくのが重要だと思っております。
 90年代半ばに,文化庁が「アーツプラン21」で我が国の芸術水準を高めるための牽引(けんいん)力となる団体を継続的,重点的に支援するということで,団体支援を一応始めましたが,その地域の劇場や音楽堂を利用して,そこで創造活動を継続的にやる文化財団や劇団・楽団などを支援していくようなスキームを考えられないかと,今個人的には考えているところです。
 最後に1つだけ,言葉の問題で申し上げておきたい点があります。アートマネジメントという言葉が90年代に日本に入ってきたときに,コンサートや展覧会や,演劇の公演をやる事業推進をする仕事をアートマネジメントと呼んできた傾向がありまして,文化庁のアートマネジメント人材プログラムの中でのアートマネジメントの定義も,そういった事業推進をする人という定義がありました。しかし本来,アートマネジメントというのはアメリカなどで発展してきた流れでいえば,単発の事業ではなく,事業を継続的に続けて,芸術で公共的なミッションを達成するための組織のマネジメント,オーガニゼーションのマネジメントのことをアートマネジメントというふうに位置づけております。ですので,単発な事業の運営ができることではなくて,その事業を持続的にやっていける組織のマネジメント,そちらの観点でアートマネジメントという言葉は使っていただきたいと思います。今の日本でも,単発の事業をやれることではなくて,持続的に公的なミッションを果たすために資金など支援も集めながらやっていく組織の問題としてとらえていく必要がありますし,公益法人改革を進めている財団などにも,公立館であっても,やはりそのアカウンタビリティを果たして,それを持続していくということが重要な組織マネジメントだと思いますので,是非そういう言葉の定義でアートマネジメントという言葉をここの場で使っていただけたらなというふうに思っています。

○田村座長

 ありがとうございました。
 自治体の政策目的であるべきというお話がございましたけれども,国はそういう意味できちんと政策目的がはっきりしているというふうにお考えでいらっしゃいますか。

○片山委員

 はい。国として,国は基本方針も決定していく中では,創造的なものを発信していくということは,日本が今後発展していく上で重要なことですし,それについて何らかのかかわりをすることは国の責務であるということについては,少なくとも明確になっているのではないかと思います。

○田村座長

 基本法があるということで。

○片山委員

 基本法もそうですし,それをもとに文化審議会文化政策部会などでも議論され,基本方針も示されてきていますし,90年ごろからずっと言われてきたこととして,やはり創造的なものをつくっていくと。創造的なものを発信していく重要性というのは,国の政策としては,合意され得る部分なのではないかというふうに思っております。

○田村座長

 わかりました。ありがとうございます。では,根木先生は。

○根木委員

 この検討会は,法制化も念頭において進めていくのだろうと思います。劇場・音楽堂に関しては,確かに社会性とか公共性とかは重要であるし,規制に関しても慎重に考えなければいけないと思いますが,法制を検討するに当たっては,少なくとも劇場・音楽堂の幾つかの機能を分類した上で,つまり劇場が持っている機能に関し国として関(かか)わるべき部分をある程度想定した上で,これに国としてどう関(かか)わるかということになってこようかと思います。その際,基本的には,劇場・音楽堂は単なる施設ではなく,人がその中にいて施設を動かすものという認識が必要であると思っております。
 地方自治法に「公の施設」という概念が,昭和38年に導入されましたが,それ以前には,営造物という概念でした。営造物というのは,もともとは人的な手段と物的な施設の総合体という,ある種の機能体としてとらえられていたはずなのです。ただ当時,営造物の概念が非常に多義的だったため,自治法上は,「公の施設」ですっきりさせたという経緯があったようです。しかし,施設を中心とした概念が先行したために,施設の管理ということが第一義に置かれ,本来それが持っている公の目的のための営為,機能体としての認識が希薄になったのではなかろうかと思われます。また,住民の施設の利用関係ということが中心であり,このため,貸し館などの施設提供ということが第一義に置かれ,サービス活動の実質をつくり上げるといった,営為に関する認識が希薄になったように感じられます。
 そして,公立の文化施設は,「公の施設」という概念が導入されて以後に多くつくられたため,創造活動のような営為は,余り想定せずに今日に至っていると思われます。
 そういったことから,古い営造物という概念を持ち出すのもいかがかとは思いますが,やはりその根底を流れているものの考え方は,今後の劇場・音楽堂の運営に当たって考えるべき事柄であろうし,法律制定ということになれば,ある程度言葉の本来の意味を背景に置きながら,考えていく必要があるのではなかろうか。つまり,単なる施設,ファシリティではなく,ある種の機関,インスティチューションとしてそれをとらえていくことが必要ではないかなと思われます。
 それからもう一つ,芸団協も公文協も,公立の劇場・ホールを最近では4つに分類をしておられます。芸団協は,この中で,特に創造型と提供型というカテゴリーに属するものを,今後国として考えなければいけないというお考えと思われます。どこまでカバーするかは別として,法制に当たっては,類型化とそれに伴う機能を念頭に置いて具体化していくのが適当ではなかろうかと考えられます。

○田村座長

 ありがとうございました。
 地方自治法の公の施設というのと,もう一つ社会教育法の中に公民館というところが相当きちんと書かれていらっしゃいますよね。

○根木委員

 公民館は社会教育施設ですので,とりあえず射程外ということでいいのではなかろうかという感じがします。

○田村座長

 そうですか。

○根木委員

 ある一定の舞台機構を持った劇場・音楽堂は,単なるホールとは違う機能を持っているのだということが暗黙の前提になっているのではなかろうか。そういった意味からも,公民館まで入れてしまうと少し混乱するのではなかろうかと思われます。したがって,舞台機構を持った一定の水準にあるものに,当面は焦点を当ててもよろしいのではないでしょうか。その上で,そこからどのように範囲を広げていくかということを考えるべきではないかと思われます。

○田村座長

 わかりました。私などは,社会教育法にも関連する規程があるというふうに相当思っております。あの法律もしっかり読めば,法律を利用しながらきちんと地方自治体の考え方によっては本当は創造型の劇場もできるのではないかというように感じたこともあったものですから,伺いました。

○根木委員

 公民館は,どちらかというと講座や集会を中心とする施設としての側面が非常に強いと思うのです。しかも社会教育法の中に位置づけられているという性格のものですから,そこまで取り込むというのはなかなかしんどいかなという感じはします。

○田村座長

 わかりました。ありがとうございました。
 それでは三好先生,お願いいたします。

○三好委員

 三好と申します。
 私は,長年地方行政にかかわってきていまして,その中で制度の企画立案とか,実際の地方行政の運営という立場でやってまいりました。都道府県の文化政策,あるいは都道府県が設置する館の運営を直接担当したこともございますので,そういった観点で,お話をさせていただきたいと思います。
 現在は,大学の建築学部で,まちづくりということで公共政策や危機管理を,特任教授という形で担当しておるところでございます。
 資料7で論点をたくさんお示しいただいていますので,逐一については,これから議論がされていくと思います。まず地方行政に長くかかわってきたという観点で,文化行政について4点ばかり私なりの整理をしていきたいと思います。
 まず1点目としては,文化行政についてです。行政分野というのは様々あります。教育とか福祉とか,道路行政とか,いろいろな行政活動がある中で,特に文化行政に関して言えば,地方の立場で見たときに,国と地方の役割分担というのが明確にされていない。文化芸術基本法はそれぞれが何をやるということであって,国と地方お互いの関係性というものがそれほど明確にされているわけではない。国と地方との分担が明確になっていないということが,まずこの議論の出発点だろうというふうに考えます。そうすると,もし法律をつくるとした場合に,そういう役割分担までを議論するような,行政制度の法として考えるのか,あるいは劇場なり音楽堂で行う事業,活動についての事業の法として考えるのか,ここが一つ大きな入り口の議論であろうかと思います。
 この際,役割分担に立ち至って行政の制度として議論するということが,本来であればいいのかと思いますが,先ほどの議論の範囲,つまり,行政分野全般を広く考えた上での議論にするのか,あるいは国民的議論になるのかというあたりとも関連し,制度面全体にわたっての議論というのは難しいかもしれませんが,根底としては考えておくべきことだと思いますというのが,1点目です。
 2点目としては,地方の文化行政がどういうことなのかが,はっきりとは見えてこないのですけれども,少なくとも現象面として見えているのは,地方の文化行政とひとくくりに言ったときに,相当程度自治体によって相当程度差が大きい。大都市と地方という差もありますけれども,同じ地方の中でも自治体によってかなり差が大きい。もっと言えば,文化政策と意識して考えている自治体もあれば,いろいろな要望に応(こた)えるという形で事業を組み立てている自治体もある。もちろん,事業としては皆さんやっておられるのですけれども,それがいわゆる文化行政という形としてとらえたときに,考え方のギャップがかなり大きいのだろうなと。そうすると,今回そういうことを考えた場合に,果たしてどこまで自治体の中での公平性なりということに踏み込めるのか。もし国が自治体の文化行政に関して何か物を言おうとしたときに,自治体同士で,差が大きいということに関して国はどう見るのかという問題を,考えておかなければいけないのだろうと思います。
 自治体で何でそんなことになっているかというと,多くの自治体においてはそういう議論をする場がない。文化行政について議論というのは,私の経験でも,議会でもほとんど出てきませんし,文化団体の方の議論というのは確かにあるのですが,自治体の政策としての議論というのは,余り行われていない。それぞれにはいろいろなビジョンや計画を作ったりしていますけれども,それはごく一部のところで作られているにすぎない。そういう意味で,今自治体が行っている文化行政というのは,住民自治という観点で見た場合に,どの程度住民の意向が反映されているのか。いわば政策としての正当性があるのかというあたりも少し疑問があるなと思います。この検討会の中で法制度として考えたときに,どこまでそのことを踏まえてやるのかというのが2つ目の議論かと思います。  それから3つ目には,文化政策といったとおり,それが計画的に行われているのか。確かに,そういういろいろな計画とかビジョンというものは形としてはあるのですが,例えば,計画ですから当然目標があってしかるべきなのですけれども,そこでの目標は何か。私もあるところでビジョンを決定する委員会をやったときにも,この目標というのがなかなか出てこないのです。何人来ましたとか,幾らやりましたという,そういうのは出てくるのですけれども,ではそれが果たしてどういう意味を持つのかということについての議論というのがほとんどできない状態かと思います。
 しかも地方自治体の財政も今非常に厳しい状況の中で,財政状況に非常に左右される。特に自治体の経費と言うと3つあると思うのです。大きく言うと2つ,通常でいう投資的経費と経常経費。更に経常経費の中でも,固定費と,ある程度政策的に自由に使える政策的経費です。先ほどの自主事業というのは,多分この一番最後の政策的経費に分類されていると思うのですが,ここが一番財政状況に影響されやすいところです。固定費は払わざるを得ない。そうすると必然的に,政策的経費のところにしわ寄せが来てしまう。その中でも,特に文化行政は,もともとの計画があいまいなだけに,予算をつくる立場からいうと,非常に調整枠に持っていきやすい現状というものがあるので,ここをどう踏まえるかということが3つ目の論点。
 4つ目は,先ほど根木先生から公の施設,営造物から公の施設にという御議論がございましたけれども,今の自治法というのは,公の施設というくくりの中ですべての施設を,行政財産だからいろいろな制約を課しながら,なおかつそれを公の施設ということで,更に制約を課しているというのが現状の地方自治法の考え方だと思います。
 この法律を改正した平成15年には,施設の管理としてどうあるべきかという観点から,今の指定管理者という制度は出てきているということからすると,自治法は一般法ですからそれはある意味やむを得ないので,もしそこを劇場や音楽堂の側(がわ)において何か問題があるのであれば,特別な法律をつくって,それを自治法に対して特別法の立場で議論していくということは必要でしょう。ですから,それがどこまで地方自治体の関係者に,先ほど述べた現状の中で理解を得て制度化できるかというところに議論があるというふうに思っております。というのが私の基本的な考え方です。
 それで,資料についての御質問をよろしいですか。

○田村座長

 はい,どうぞ。

○三好委員

 資料5の35ページに,指定管理者の中で一番多いのは「公共的団体」と書かれています。普通「公共的団体」というと第三セクターをイメージしがちですが,公共的団体という意味が第三セクターという意味なのか,それとも例えば民間企業が文化関係の事業をやるために財団をつくっているケースは公共的団体に含まれるのか,民間事業の方に含まれるのか,質問しておきたいのです。もう一点は,文化庁の資料なのですが,資料6で,申請者の要件のところに指定管理者制度の場合には,設置者及び指定管理者の連名とありますが,地方公共団体が必須(ひっす)なのか。あるいは,実行委員会の中に地方公共団体がありますが,これは必須(ひっす)なのかどうか。つまり,必ず地方公共団体が,自ら申請者の中に出ていなければいけないのかどうか。これは実際の運営面との関係で,制約がかかる場合もあり得るので,お考えを教えていただきたいと思います。

○田村座長

 よろしくお願いします。

○門岡文化庁芸術文化課室長

 文化活動振興室長の門岡ですが,指定管理者の種別のところの公共的団体,ここは設置者がつくった財団の関連です。

○三好委員

 そうですか,わかりました。

○門岡文化庁芸術文化課室長

 劇場・音楽堂に対する国の事業については,国だけが支えるという形ではなく,設置者がきちっとしたビジョンを持ってやっていただくということが大事だと考えていますので,必ずその設置者が一緒に議論をして申請書を出していただくという形をとりたいので,連名ということになっています。

○三好委員

 わかりました。ありがとうございます。

○田村座長

 本当に指定管理者が増えている中で,公共的団体60%以上というのは,随分多いんだなと思ったのは正直な気持ちでございます。

○太下委員

 今の指定管理者の議論に関連してですけれども,この基礎データの中の38ページ目で,利用料金制度の御紹介があります。指定管理者制度の利用料金制度については,指定管理者制度のポジティブな面として紹介されるケースが多いですが,私は違う考え方を持っています。もちろんこの利用料金制度については,比較的自由に使いやすい財源という新しいメリットはあったのではないかなと思っています。
 ただ,その一方で,3つぐらい課題はあると思っていまして,そのうち1つは,利用料金ができたことによって,本来自治体が負担すべき財源の方を減らされてしまうという現象が全国の公立の公共団体で起こっているというふうに聞いております。あってはならないことですが実態面としてはあります。
 2点目以降は,この利用料金というものがあるが故に,効率的な経営を心がけた結果,ここでやる演目等がどうしても売上げ偏重になりポピュリズムに流れがちの部分があるのではないかなと,こういう点は懸念があるかと思います。
 3点目は,なかなか公演ではそんなにもうからない。もし公演でもうかるのだったら,公立劇場の議論をここでする必要はなくて,民間が全部やればいい話なのです。公立劇場で利用料金収入というのは,実は駐車場料金とか売店の料金なのです。実際私自身が関(かか)わっているある自治体の劇場の自主制作のファンドというのは,かなりの部分が駐車場料金,それから売店の収入で賄われております。見た目は,非常に安定しているのですけれども,仮に,今後車社会ではなくなって,駐車場の利用が少なくなったら,その劇場は自主制作ができなくなるのです。そういう劇場でいいのかという本質的な議論が,実はこの利用料金制度には,抜け落ちていると思います。利用料金という非常に使い勝手のいいお財布を1つ作ったことによって,うまく施設内でお金が回る仕組みができたのですけれども,だれが文化支援を支えていくのかというより本質的な議論が,ちょっとおざなりになってしまったという懸念があります。是非そういったところも視点に入れながら,この劇場・音楽堂の今後の在り方を議論していきたいなというふうに考えております。

○田村座長

 多分,皆様がおっしゃっていらっしゃる自治体の文化政策が何なのか,何のための,だれのためのものかというところがはっきり議論されていないという三好先生のお話にもございましたけれども,そういうことかなと思います。
 先生方からいろいろ御意見が出ましたのですが,文化庁としていかがお考えか。とても文化庁が積極的に各地の芸術団体や公共文化施設の方の意見を聞いてくださったり長官が自身で各地を回り実態をつかもうとしているので,文化庁としてどうお感じになったか,今日は検討会の第一回でございますので,御意見を伺えたらと思います。

○近藤文化庁長官

 大変貴重な御意見ありがとうございました。
 事は劇場・音楽堂をどうマネージするかというだけではなくて,今後の日本の国の在り方,言いかえれば国と地方,公と民,NPOを含めた,それらがどういう枠組みをつくり,だれがどこまでの責任を持ち,国をつくっていくのか。そして,その中で文化芸術の振興による創造的な国をつくり国民の方々にそういう場を提供していくのかという,極めて大きな国家ビジョンの話に直接かかわってくる話だと思います。新しい公共についても具体的にどうしたらいいのかというところは,まだ詰まった議論がないと思います。恐らく,今後5年,10年,20年かけて,国民的なコンセンサスを得ながらある方向性を決めていくという,かなり長いスパンの話の一翼を担うことになる,ほかの議論の行く末にも強い影響力のある分野での御審議を頂くことになると思います。
 あまり大きな議論にしてしまうと,もちろん的が絞れませんし,大きな方向性が決まらないとこちらが決まらないとか言っていたのではいつまでも議論が進まない。特に現状からよりクリアなビジョンに持っていっていただくことで,公共というのは,こうやってつくっていくのだという1つの具体例として,より大きな議論が更に進むきっかけになるのではないかと思います。そういうことも視野に置いていただいて,的を絞った御提言をまとめていただければと思っております。
 また,事務方と致しましても,できる限り情報や政策の方向性など御紹介していきたいと思います。その中で,具体的な分野として,その方向性を国民の方々に示して判断していただく。各市民の生活の一部にある劇場・音楽堂なわけですから,抽象論ではなくて具体論として新しい公共とは何かということを国民の方々には自分の問題として考えていただく。是非先生方のお知恵を,そういった観点で頂きたいと思います。

○田村座長

 ありがとうございます。
 ほかに文化庁として,今実際にお感じになっていらっしゃるところ。

○吉田文化庁次長

 基本的な姿勢は,今長官の方からお話があったとおりなのですけれども,この検討会の目的としては,制度的な在り方について検討するという形になっております。ですから,劇場に対する支援方策というのは様々なものがあって,これまでもとられているものもあるし,まだまだ不十分なものもあります。しかしながら,三好委員の方から御示唆があった,いわゆる制度法にするのか,事業法にするのかという話が先ほどございました。その事業支援ということだけであれば,実は,その予算措置だけでも足りるのかもしれません。ですから,いわゆる予算措置だけではなく,何か制度的な何か支援をするといったときに何を核にすべきなのか。一般的には,例えば税制などもありますが,その前に全国2,000から3,000と言われている劇場について何か類型といったものに着目して制度的な仕組みを整えていくという具体的なところが必要になってくると思います。私どもとしても,その点また事務的な調査や関係の団体などからのヒアリングなどもしながら,もう少し議論を煮詰めていきたいと思いますけれども,そのあたりを頭の片隅に置きながら議論を重ねていくことが大事なのかなと思います。

○田村座長

 ありがとうございました。

○小松文化庁文化部長

 先ほど,地方の文化行政は様々で,国の文化行政はどうかという御議論がありました。それで,来年度の予算の中で,アーツカウンシルという,芸術団体とか劇場・音楽堂等に対する支援の仕組みをより明確かつ効果的なものにしていくという施策を要求しています。先ほど片山委員が支援の仕方について,当初は団体の経営支援という根本的なところを支援する,そういう発想で始まったけれども,途中で事業支援に変わってしまって,それを元に戻せなかった。そういった議論もまた出てくると思うのですけれども,恐らくこの劇場・音楽堂についても御検討していただく中で,特に補助金をどういうふうに出していくかというようなことについては,アーツカウンシルの議論とも並行してすり合わせをしながらやっていっていただく必要もあるかと思います。そういった情報もきちんと御提供をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。

○田村座長

 ありがとうございました。

○関文化庁文化財部長

 若干個人的な感想めいたことを申し上げさせていただきますと,私も一番申し上げたかった点は,先ほど次長が申し上げた点と同じでございまして,本当に法律をつくるのであれば,どういう法律をつくっていくのかというところをきちんと御議論していただきたいなと思っております。更に個人的な感想ということで言わせていただきますと,こういう議論が文化庁の場でもできるようになったということが,やはり随分状況が変わってきたのかなというふうに思っております。文化庁の法律というのが,実は余り数が少ない。文化芸術振興基本法というのは平成13年にできましたが,それ以前の状況というのを見てみると,著作権法とか文化財保護法とか宗教法人法とか,そういう分野ごとの法律というのはあったわけでございますけれども,いわゆる文化芸術,芸術文化の部分については基本となる法律がございませんでしたので,今回,この劇場・音楽堂ということをテーマにして,法律ということも視野に入れた議論ができるということは,そのこと自身が非常に大きな意味を持つと,率直な感想として思っておりました。

○田村座長

 ありがとうございました。
 第1次基本方針のときから制度的な整備の検討ということは言われていながら8年がたっているというのが現状です。そういう意味で,今回このような検討会が運営されることは,最終的には豊かな文化環境になるようにという基本法に基づいた,国民にとってよりよい文化環境を目指せるツールとなるような制度であればいいというふうに,個人的には思っておりますが,課長,いかがでいらっしゃいますか。

○山﨑文化庁芸術文化課長

 今回のこの検討会,劇場法とか法律をつくるということは明記してはおりませんが,文化政策部会で劇場・音楽堂等について法的基盤の整備の検討ということが提言されたことを受けて検討しているわけなので,最終的にはそれこそ法案をつくるという可能性も念頭に置いた御議論でございます。
 博物館には博物館法,図書館には図書館法という法律があるけれども,劇場・音楽堂についてはそういった法律がないではないかと劇場関係者の方々がこれまでもよく言われていました。それからまた,劇場・音楽堂というのは,これまでも法律で幾つかそういった文言が出てくる場面があるのですが,これはハードとしての施設をとらまえた概念として出てきており,機能としての概念である劇場・音楽堂をあらわす法的な概念がない中で,仮に法令をつくるとなるとした場合,そういった概念をどう構築していくのかということが大きな課題ではないかなと思います。
 仮に法案をつくるとした場合に,劇場・音楽堂という名称,あるいはそれにかわる概念,名称をどう構築するのかといったようなことも含めて,課題が非常に多々あるのではないかと思います。
 これから次回以降,ヒアリングを踏まえて御議論を順次論点に沿ってしていっていただき,委員の先生方と一緒に勉強をさせていただきながら検討をさせていただければと思いますので,よろしくお願いします。

○田村座長

 ありがとうございます。
 1つ,先ほど根木委員から,地方自治法で営造物,公の施設をというお話がありました。そうなった場合,この公共の文化施設というか,管轄はどこということになるということはございますか。例えば,総務省であるとか。私は,実は社会教育法というのが割合かかわる法律かなというふうにちょっと思ったものですから,そうすると文部科学省というか文化庁ということはあり得るかなと思ったのですけれども。

○山﨑文化庁芸術文化課長

 すみません,公民館は社会教育法の中に入っているのですが,その法律の中でどういうふうに所管をするかということで変わってくるのだと思うのです。地方自治法上の公の施設というくくりでは,当然総務省が所管になるわけですが,それとは別の制度設計をして,例えば博物館法上の博物館というのは文部科学省の所管でございますし,公民館は社会教育法を所管している文部科学省の所管でございます。そういった制度設計いかんによると思います。

○田村座長

 なるほど。

○三好委員

 今の座長の御指摘の点は,まさにこの制度的な在り方というのがどこまでの議論で,最終的に法律の形にした場合に,どの部分を法律にするのか,先ほど次長のお話だと,事業支援の部分は予算でもできるのだろうとおっしゃっているのですが,例えばその部分もあえて法律に書き込むのか書き込まないのか。
 それから先ほど申し上げたのは,公の施設に関して何らかの特例を設けるということであれば,それは当然地方自治法の特例という形になるのですが,多分ここで意図されているのは,そういう施設の管理だけではなくて,施設をどう使い,だれが運用し,どういう仕組みが必要なのかというところまでも,議論の対象だろうと思います。それは現在の地方自治法が予定している範囲を超える部分ですから,地方自治法との関係云々(うんぬん)という議論には,必ずしもならないかもしれない。ただその中で,当然今の地方自治法が想定している部分,いわゆる行政財産としての公の施設としての制約条件を突破しているといったことを法律に書くかといったことになると地方自治法との関係というのは出てくるので,そこはまさに今回の制度的検討に大きくかかわってくるのではないのかと思います。
 それに関連して1つだけ論点に関して申し上げると,論点3で人材のことをお書きいただいていて,特に専門的な人材云々(うんぬん)については,劇場の運営にはどのような人材が必要であるかといったときに,これも今のように劇場の中だけで考えるのか,あるいは,例えば国で言うと文化審議会やアーツカウンシルのようなものを含めた地方自治体の文化行政全体の中で劇場の位置づけを考えるのかどうかというところも一つ議論かなと思います。ここに書かれているのは,多分,館の運営としての人材ということだと思うのですけれども,館の運営だけの問題ではないので,そういう広く館の利用なり運営に関して議論できるような場が今欠けているのではないかというのが,私の一番の問題意識なので,そこまでも含めて考えていただいた方がいいのではないかと思って,本来であれば議会とかがやるべき問題ですけれども意見をちょっと申し上げました。

○田村座長

 そうでございますね。ありがとうございました。
 何かございますか,片山委員。

○片山委員

 ちょっと申し添えたいと思った点なのですが,何を対象とするのかというところを明確にするのは非常に重要なことだと思うのですが,この検討会のそもそもの趣旨として創造・発信というところが掲げられておりまして,そういう意味でいくと,そこがある意味で対象ということになってくると思うんです。
 これを対象にするということになった場合,最初にこの劇場,ホールの個別の館の建物からスタートするという必要はないのではないかと思っているのです。地域において劇場やホールを使って,創造活動をうまく行われるようにするということが目的であるのだとすれば,劇場ありきではなくて,その劇場を使う主体を対象にするという考え方があってよい。例えばある財団が複数の施設を使って創造活動をするというのも対象になり得るわけですし,あるいは立派な何百席以上の施設みたいなところが拠点だということを言う必要は必ずしもなくて,オルタナティブ・スペースを使って計画的にいい活動をしている組織というのはありますし,それから分野によっては本当に100席ぐらいのところでいい活動をやるということもあり得るわけですので,最初から大規模劇場の在り方を考えるみたいにしない方がよいのではないかというふうに思ったところでございます。

○田村座長

 それぞれのお立場でいろいろなお考えというのもおありかと思いますけれども,本日は時間になってしまいましたので,最初ということで相当重い課題だなというのが正直な気持ちでございました。ありがとうございました。
 それでは,時間となりましたので,本日の討議はこれにて終了させていただきます。今後の日程につきまして,事務局より御案内をお願いいたします。

○鈴木文化庁芸術文化課課長補佐

  

<資料9について説明>

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,これで本検討会の第1回を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

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