議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第3回)

1 日時

平成23年2月2日(水) 14:00~17:10

2 場所

文部科学省 東館 3F1特別会議室

3 議題

  1. (1)関係団体等からのヒアリング
  2. (2)その他

4 出席者

(委員)太下委員,片山委員,田村委員,根木委員,三好委員

(事務局)近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,山崎芸術文化課長,鈴木芸術文化課課長補佐ほか

(参与)平田内閣官房参与,福原文部科学省参与

(配付資料)

  1. 1.関係団体等ヒアリング進行案
  2. 2.関係団体等からの御意見
  3. 3.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会 当面の開催予定

【参考資料】

  1. 1.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会 委員名簿
  2. 2.劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会における論点(案)
    (平成22年12月24日 第1回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会配付資料)

【机上配付資料】

  1. 劇場・音楽堂等に関する基礎データ

○鈴木芸術文化課長補佐

 開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきます。

<配付資料の確認>

○田村座長

 御多忙のところ御出席いただきまして,ありがとうございます。
 本日は第3回の劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会として,有識者・関係団体からのヒアリングを行いたいと思います。有識者・関係団体の皆様におかれましては,御多忙のところを御協力いただきまして,ありがとうございます。
 それでは,まず事務局よりヒアリングの進め方について説明をお願いいたします。

○鈴木芸術文化課長補佐

<資料1について説明>

○田村座長

 それでは,進行予定表に従って順次ヒアリングを行っていきたいと思います。
 最初に,指揮者であり兵庫県立芸術文化センター芸術監督でもいらっしゃる佐渡裕樣より,資料に基づいて15分程度で御意見発表を頂いた後,質疑,意見交換をお願いしたいと思います。佐渡様,よろしくお願いいたします。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

 佐渡裕です。今日は貴重な場に呼んでいただきまして,ありがとうございます。
 僕の指揮者という人生の中でも初めての芸術監督という立場を兵庫県で引き受けることになりました。40歳になってすぐのころでしたので,40代という年齢をどういうふうに過ごすのかという意味でも,非常にこの10年間を時間的にも拘束されるし,本当に悩みましたが,色んな縁があって,兵庫県の前知事の貝原さん,現知事の井戸さんと,そういう流れの中で,震災のあった町で,更に心豊かでたくましいまちづくりのために,舞台から色んなエネルギーを発信してほしいという言葉に僕は非常に感激いたしまして,音楽家として,社会で音楽が必要とされるという原点のことを考え,もう一度挑戦するという大きなミッションを頂いたと思いました。
 今年で10年目になります。ホールはオープンして5年,6年目という時になるのですが,今,平均入場者数が50万人,250万という観客動員数を達成することができました。できましたが,設計の段階からこの仕事を引き受けて,震災から10年という年を目指してこの劇場をオープンしていくのですが,今,僕はテレビの番組も持っているので,町の人が「ああ,指揮者の人や」とか「佐渡さん」と声をかけてくれるようになったんですけれども,10年前というのは知っている人は知っているという程度で,更地のこの場所にたくさんのお金がかかった劇場ができて,何になるんだろうというのがその時の町の人の正直な感想だったと思います。
 そして,どういうことから始めたかと言いますと,「こんにちは,佐渡裕です」というプロジェクトを立ち上げました。西宮市の小学校の授業,あるいは,地元の吹奏楽団,あるいは,町の人たちに集まっていただいて,舞台の面白さであるとか,こんなことをしていきたいという話を何十人単位という形でさせていただきました。また,設計の段階でかかわることができたので,例えば西宮市と協力して,ホールのエントランスには公園がありますが,公園が西宮市のホールの玄関口になるようであってほしい。それから,年末にはクリスマスツリーの点灯式をして,皆さんでそういうことを祝うというか楽しみたいので,クリスマスツリーをどうしても入れてほしい。あるいは,大,中,小のホールを持っているんですけれども,それぞれの役目があります。大ホールはオペラもバレエもオーケストラも演奏できる2,000人のホール,中ホールはお芝居を中心とした800人のホール,それから,室内楽,リサイタルを中心とした400人のホール,このホールそれぞれのお客さんが一つのロビーを通って出会うと,こういう設計にまでもかかわることができたのは非常に幸運だったと思います。
 そうしたことからスタートしていったわけですけれども,まず,震災があって,復興のシンボルとしてスタートすることは非常に考えざるを得ない。まだその当時,家のローンが残っていたり,友人を失った,家族を失ったという傷がまだまだ深く残っている時でした。ですが,水が復活し,ガスが通り,電気がつき,みんなが生活を取り戻していったら,歌を歌いたい,あるいは,温かいお湯でコーヒーを飲みたい,そういうことをよく知っている人たちなんですね。今劇場では大きなオペラ公演もしますし,オーケストラ,マーラーも,ベートーベンも演奏します。ですが,ここの活動の根っこにあるものは,人が集まって歌を歌う,その歌のすばらしさ。自分たちの歌のすばらしさ,ギター1台あればみんなが歌を歌える,たて笛があったらみんなで合奏ができる,みんなでダンスができる。50万人という数字は大きな数字なんですが,この劇場の周りの地域の人たちとの関係性というのは非常に大きな役割を持っていると思います。
 1年間の中で最も大きな看板商品になるのはオペラ公演なんですが,関西で1つのキャストで2日間をやるというのはなかなか難しいとされていました。それが,『メリーウィドー』という作品をやった時には,12回公演を行いました。去年はバーンスタイン没後20年でしたので,『キャンディード』という非常に珍しい作品を西宮で9回,そして,東京の方で3回という公演回数を行いました。最初にオペラの公演をやった時には,アンケートによりますと,約6割の人たちが初めてオペラを観る人でした。それが今,うちの劇場は5年たちますから毎年夏に新しい作品を持っていくわけですが,当然リピーターが多いので,その率が減って今はもう4割ぐらいでしょうか。

○藤村事務局長

 15%ぐらいですね。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

 今は15%という形になりました。ですから,みんながすごく根っこのところで音楽を楽しむからこそ,またこんなにも想像力がかきたてられる舞台を夏に観られる。たくさんの人がオペラを観てくださり,最初は6割もあった初めてのお客さんたちが,今もリピーターとして,あるいはたくさんの方を連れてきてくださっているように思います。今,僕らの中ではあと4年後の,開館から10年というところで大きな計画を立てています。ずっと観てくださっている方がこういうのも観た,ああいうのも観たというように,一つ一つ全く性格の違う作品が,点と点が線になって面になっていく,そういう計画まで構想しています。
 僕は音楽家ですから,お金のことは非常に疎いんですが,どういうスタッフと連携しているのかというのが非常に重要なことになってきます。兵庫芸術文化センターでは知事が館長をしてくださっていて,副館長がいて,今隣に座っている藤村事務局長がいてそれから,林総支配人がいます。どういうプログラミングを立てるか,それをどうチケッティングするのか,どう宣伝していくのか。県からのお金であったり助成金をどうしていくのか,といったそれぞれのメンバーの専門分野があるわけですが,このチームが非常に重要になってくると思います。あるいは,楽団部には,楽譜を担当している専門職の人間がいる,ステージを担当する者がいる,それぞれの部署に様々なスタッフがいるわけです。
 『メリーウィドー』という演目は,最初はチケットが余っていたんですが,初日を終えた時にものすごくうまくいったという感触がありました。するとすぐさまうちのスタッフが模造紙に書いた座席の空白表をロビーに張り出してくれました。そうすると,お客さんたちがそれをケータイの写真で撮って,何日に誰々(だれだれ)を連れてもう一回来ようと。結果的には最終日は超満員で,12回の公演を大成功で終えることができました。そうした工夫というのは,スタッフのそれぞれの発想力とか,そういう思いというのは非常に重要だと思います。
 それから,横にいる藤村事務局長は主に県とこの劇場の運営の間に立ってくれる人間ですけれども,僕は彼にこういうものを創りたい,何とかしてくださいと言います。彼は色んなことをしてくれているわけですが,ものすごく自信を持って言えることは,それぞれの専門職の人間が一番重要なことは,いい舞台をつくって,それをお客さんが楽しんでくれる。しかも,それだけにとどまらず,この劇場の周りの人たちも,今この劇場ですごく面白いことが行われているんだと注目できるような,注目してもらえるよう意識して動いてくれています。
 ですから,知事である館長も大きな公演には必ず足を運ぶようにしてくださっていますし,副館長,事務局長,総支配人,彼らがロビーでぶらぶらしていることはまずありません。何よりも彼らがうちの劇場のファンでありますし,いい舞台が創られたかどうか,お客さんが本当に満足した顔で帰っていらっしゃるかなど,そうしたことを常に見て,その上で大きな予算を獲得したり,次のプログラムを考えたり,この劇場にできることの可能性というのは何なのかということを常に話し合える場ができている。このことは非常に誇りに思っております。
 音楽,それから,舞台芸術というのは,すごくシンプルなものであり,だからこそ様々な演奏家が,あるいは,偉大な作曲家が残してくれた大きな創造物に対してまた敬意を表するものだと思います。ですから,みんなで歌った自分たちの童謡やお母さんからの歌と大きなオペラというのはつながっているように僕は思っています。劇場というのは多くのビタミンを心に届けるものだと思います。世の中はビタミンゼロのものもたくさん飲まれています。なかなかここは難しいところなのですが,本当に生の演奏,目の前の空気が振動する喜びに触れてもらって,それがすばらしいものであったら,ここに出会わない人生というのは非常につまらない気がします。
 それから,CD,あるいはもう一つ前の時代でしたらレコードなどで世界最高のものに触れるという音楽環境というのがありました。もちろん海外の演奏団体が日本に来てすばらしい演奏をする,それに触れてみたい,その気持ちも僕の中にも非常にあります。これからもそれは続いていくでしょう。ワインと一緒で,これは世界最高のワインですよというものは一回は口にしてみたいと思います。ですが,これからは,本当に自分たちの町の自分たちの劇場でどうしたものがつくられて,そこに大きな感動があるんだ,ここを目指していくべきではないでしょうか。これはテレビではなく,CDではなく,家の中で,そうして鑑賞できる環境がいっぱい整ってきましたけれども,仮に音響がよくなかったとしても,劇場が自分の町の自分の宝物になることは可能だと思います。
 うちのオーケストラをこの劇場に持っていまして,このオーケストラをやっていく中で大きな3つの柱をつくりました。一つは,定期演奏会,オペラ公演をはじめとする大きな舞台を成功させること。もう一つは,教育の場としてオーケストラが貢献すること。今,兵庫県の中学1年生が全員,西宮の芸術文化センターに聴きにくる鑑賞教室を行っております。もう5年たったわけですから,あと数年もすると成人式を迎える若者たちは,全部この芸術文化センターのホールを訪ねたことになり,オーケストラを聴いたことになります。
 これは同時に非常に重要なコンサートであるとオーケストラにも何度も言っています。これによってまたオーケストラを聴いてみたい,また劇場に足を運んでみたい,そういう人がふえることも減ることも考えられるわけですね。兵庫県の教育委員会の方には本当に感謝しております。これは僕が就任してすぐに言ったことですけれども,遠いところは日本海から長い時間バスに乗って西宮まで来てもらわなければいけないわけですから,大変な努力だったと思うんですが,非常に早く,ホールがオープンした次の年にはもう活動は開始されました。
 それから,3つ目はアウトリーチ活動。これは,劇場を飛び出して,出前コンサートというんでしょうか,色んなところに出かけていって演奏を届けるものです。この活動も今は少しずつふえていくという形で,例えばクリスマスツリーの点灯式があったら,トランペットのファンファーレがあるとか,あるいは学校を訪ねていって授業をする。それから,地方都市でオーケストラの演奏会がある,事前に室内楽コンサートを行って,そのメンバーがその演奏会をオーケストラでのっていると,そういうことも含めてやっております。
 まとまりのない話で申し訳ないんですが,オペラは今年は『コウモリ』を行います。これは宝塚歌劇の舞台を少し意識しまして,今回は西宮だけで8公演という公演を行うんですが,去年は東京公演があった,その前,『カルメン』は名古屋公演もありましたが,今年は西宮限定にしまして,西宮に是非皆さんに聴きに来ていただきたい。舞台は,宝塚の舞台を意識した,オーケストラピットの周りに舞台をつくって,実際に宝塚出身の方にもこの配役の中で,出ていただきます。あるいは,桂ざこばさんという落語家の方がフロシュット役で,全公演登場してくださいます。本当に関西でしかできない『コウモリ』というのを実現します。
 オーケストラにはウィーンの国立歌劇場のメンバー,目をつぶっていても『コウモリ』は弾(ひ)けるという人たちにトップに座っていただいて,オーケストラもウィーンの匂(にお)いが溢(あふ)れるものをつくっていきたいと思います。オペラに関しても,事前にレクチャーコンサートみたいなものも随分開かれますし,例えばモーツァルトの『魔笛』をやった時は,僕が縦笛を吹いて笛のコンサートを行いました。これは全然予算がかかりません。僕が縦笛を吹いて1時間ちょっとのコンサートをやるんですけれども,曲は『魔笛』のアリアからやって,僕は歌も歌いました。
 面白かったのは,来てくださるお客さんに楽譜を配りまして,縦笛を持ってきてくださいと,1日2回公演をやって,4,000人のお客さんが来たんですけれども,8割の方が縦笛を持ってこられた。楽譜にも,パパゲーのコースという非常にやさしいコースと,タミーのコースというメロディを吹くコースと,夜の女王コースという超難しいコースとつくりました。うちのスタッフがそういうことをいろいろ考えてくれるわけですが,チラシがテープになっていて,前の座席に貼ると譜面台代わりになると。そういうことで,縦笛で大変盛り上がりました。1人500円のチケットだったんですけれども,出演者に予算もかからず,これは成功した一例ではないかと思います。
 あるいは,町の人たちが魔笛隊というのを披露してくれたり,『魔笛』に限らず,全(すべ)てのオペラの会がそうなんですけれども,前夜祭というのを町の人たちが中心になって,音楽祭的な雰囲気を盛り上げてくれています。あるいは,この劇場の周りのタクシーの運転手さんがすごく重要で,お客さんを乗せてどこそこに連れていかれる。そうしたタクシーの運転手さんたちがうちの劇場の何かの舞台を楽しんでもらえるような機会をできるだけ作ろうとしています。あるいは,近くのおでん屋さんにはうちのオペラのポスターが貼(は)ってある。僕のサインがしてある。定食屋さんには,うちのチケットセンターよりもポスターを貼(は)ってあるのではないかというぐらいになっております。そうしたことが,たくさんの人に扉が開かれて,一度行ってみたいということにつながっていったのではないでしょうか。
 もう時間ですね。すみません。

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,ただいまのお話を受けて,委員の先生方,御質問とか御意見ございましたら,よろしくお願いいたします。
 三好先生,どうぞ。

○三好委員

 大変ありがとうございました。兵庫県の芸術文化センターの活動,非常によく勉強させていただきました。改めて今回の検討テーマとの関係でお伺いしたいんですけれども,二点だけ最初に御質問させていただきたいと思います。
 一つは,佐渡さんご自身が芸術監督ですけれども,芸術監督がそこにいることの意味を教えていただきたいというのが一つ。それから,もう一つは,今のお話にもございましたように,兵庫県立芸術センターの場合にはいわばリードタイムが非常に長くて,そこから建物を建ち上げたという極めて珍しい事例かと思います。当初から芸術監督として関(かか)わっておられたので,いわば建物とそこで行われるものというのを一体的に御覧になったと思うんですが,多くのホールというのは既にでき上がったホールをどう使うかというところから話が始まってしまうので,そうした場合に芸術監督の方の役割がどういうふうに変わるのかということについて,できればお話しいただければと思います。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

 わかりました。芸術監督というのは,例えばプログラムを決めていくということは重要なことですね。例えばお客様は2月2日の公演を観たという一つの点でしかないんだけれども,それが誰(だれ)かの話を聞いたり,また来た時に,自分の中で,例えば5月の何日なのか,次の年の何月なのか,何年なのか,そうした点と点がつながっていくようなプログラミングをしていかなければいけない。そういうことをまず組んでいくのが芸術監督としては非常に大きな役割ではないかなと思います。あるいは,そこにどういう指揮者を持ってくるのか,どういうゲストを持ってくるのか。予算のことも当然あります。いい人に来てほしいんですけれども,全(すべ)ての人が安いギャラで来てくれるとは限らないので,その辺のバランスのことも当然あります。
 それだけで終わっては駄目なんですね。それに伴って更に,例えば教育の場として何か使えることはないのか,広がりがもっと考えられないか,そういうことも常に頭にあります。それから,ジャンルも一つのことに偏らないでありたいと僕は思っています。特に兵庫の場合は,初めて劇場に足を運ぶ方が多い。これは劇場によって様々な形を選ぶべきだと思いますけれども,すごくマニアックにやるのも一つの方法でしょうし,ここでしか聴けない作品を取り上げるというのも一つの方法でしょうし。ただ,うちの劇場に関しては,オペラというのはこんな面白い世界ですよ,交響曲というのはこんなに面白い世界ですよということを,まず伝えることが重要だと僕は思っています。
 これは僕の考えの中では非常にはっきりしているのですが,たくさんの人にいいと言わせることがものすごく重要なことだと思っています。これはバーンスタインから僕に対する教えでもあるんですけれども,「人が毎日食べるような音楽をお前は創(つく)れる」と言われたことが,僕の宿題としてすごく大きく残っているんですね。これは人によって違います。人によってタイプは違いますが,まずこの劇場を様々な形であるとはいえたくさんの方が来ていただく,このことは非常に重要だと思っております。
 同時に,監督業を進めるためには,先ほどもお話しましたように,事務局長であるとか,総支配人であるとか,どうチケットを売っていくのか,どう人に印象づけていくのか,あるいは,企業からどうお金を頂く,あるいは,県からの援助を頂く,こうした専門スタッフも非常に重要になってきますね。ここが連携しないと,僕だけが一人でやっていたとしたら,すぐにこの劇場はつぶれてしまいます。「それは無理ですよ」と言う人も必要になってきます。
 与えられた中で精いっぱいいいものを創(つく)っていく,それが劇場の外にも広がっていく。支配人も事務局長も芸術監督もいいものを創(つく)ることにみんな向かっていることですね。これは一番重要なことだと思います。「いや,数字上そんなことは困ります」。事務局長ですから,ずっと事務所の中にいてもいいんですけれども,一緒に席に座ってこの舞台をつくってきた一人としてこれを観(み)てくれている,先を一緒に考えてくれている。このチケットを売った人間がいっぱい期待感を持ってチケットを売って,いっぱいいいポスターをつくって,客席が期待した,空気が膨張しているような状態で演奏家が舞台に上がれる,これもすごく重要なことだと思いますね。
 建物のことですけれども,確かに早い段階から僕はこのプロジェクトに関(かか)われて,本当に恵まれた環境の中で色んなことを展開させてもらっています。それは本当に有り難いと思います。ただ,僕は京都育ちなので,路地で遊ぶというのが僕の中では非常に大きな財産なんですね。路地というのは人が行き来する公道なわけです。狭い道幅しかないんです。ただ,ここで遊ばなければいけないんです。それは子供たちにとっては遊び場ですが,社会的に人が通行する場であります。その狭いところでも,ボール1個あればサッカーもできれば,野球もしていた。そして色んなルールを見つけていきます。山田さんの植木に当たったらアウトとか,どこの樋にボールが止まったらチェンジとか,それぞれの路地の中で色んなルールを作っていくわけですね。人が通行されたら,その時点でゲームはストップするとか。路地は野球場ではないし,サッカー場でもない。ただそこでどんどん面白さというものをみんなで工夫して考えて作ってきた背景が僕にはあります。
 今,この芸術文化センターにしろ,ヨーロッパの名ホールにしろ,そこの指揮台に上がれるということは,僕にとっては非常に光栄なことですけれども,同時に,向かいの公園であっても,ロビーであっても,様々な形で僕は音楽をすることができます。普通の授業をしに小学校を訪ねるんですけれども,そこでも子供たちと即席で何かを創るということはできます。ですから,劇場というのが,色んな形があるんでしょうけれども,それぞれの空間をどう生かしていくか,ここの工夫にものすごく喜びがあるのではないかと思います。自分の劇場がすごく恵まれているので,自分たちの劇場に対して何も不満はないんですが,様々な劇場の在り方というものの工夫が非常に重要なのではないでしょうか。

○片山委員

 貴重なお話,どうもありがとうございました。静岡文化芸術大学の片山と申します。一つ,私も芸術監督についてお伺いしたいんですが,佐渡先生の場合は,開館準備の段階からかかわられていたということで,この劇場のミッションについては十分共有された中で進まれているわけですが,もし後任の芸術監督を選ぶという場面になったとき,後任の方はどういう仕組みで,だれを選んでいくのが,劇場にとって望ましいとお考えになりますか。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

 そうですね,非常に重要なことですよね。これはヨーロッパのオーケストラとか劇場の例を考えるとわかりやすいんでしょうけれども,ヨーロッパの劇場などは芸術監督が替わるとスタッフまで替わってしまいます。そういう意味では全く方針の違うものになっていく。うちの劇場もまだまだやらなければいけないミッションがあるので,具体的に次のことを今考えているわけではないのですが,次のバトンタッチをする時というのは,新しい芸術監督になる人間がこの劇場で何ができるのかという,また違うスタイルを打ち出していくということは非常に大事なことでしょうね。
 例えばわかりやすいのは,ベルリンフィルのカラヤンがいなくなってアバドになって,今,サイモン・ラトルという時代になって,今までのレパートリーから随分と曲の幅が広がりました。ベートーベンあるいはブラームスを演奏していたベルリンフィルが,こんなジャズみたいな曲も演奏するのかとか,あるいは,メディアの出方ですね。いち早く劇場の中に14台ものカメラを入れて,インターネットで演奏会を中継で流すみたいなことをやりました。カラヤンが長く生きていたら,カラヤンはカラヤンで考えていたでしょうけれども,伝統のあるオーケストラという世界の中で,すぐそういうな対応をしていった能力というのも非常に高いでしょう。そして,芸術監督が替わるたびに事務局長も替わり,賛同できないメンバーは離れていったりということは繰り返されていくとは言えるかなと思います。
 僕は今は具体的にやめてくれとも言われていないし,僕も今は離れようという気がないので,現実的ではないのですけれども,どこかでそういう時がくるとしたら,できるだけ次の人が創造的な新しい方法を探して特色のある劇場としてやり方はいっぱいあると思います。僕もまだまだやりたいと思っているんですけれども。一つ面白いことがあって,僕の監督室に一枚,額が飾ってあるんですけれども,「去る時は美しく去ろう」という言葉がそこには書いてあります。いつ去ると僕は決めているわけではありませんけれども,精いっぱいのことをやって,次の人に渡したいなと思っております。

○根木委員

 兵庫県立芸術文化センターさんは,マネジメントに関しては,ある種の理念的なモデルを提示しておられると思っていますが,それは,人的組織がきちんと充実していることにあろうかと思われます。また,そのことは,兵庫県当局の相当の理解が背景にあると思います。いずれにしても,兵庫県立芸術文化センターの場合は,かなり例外的な存在ではなかろうかと思われます。したがって,そのような人的組織についての制度的な仕組みをほかの館も作る必要があるのか,それとも,それはそれぞれの館に任せていていいのか。また,国としてそれに対して,特に事業などに関してどういう支援をしたらいいのか。そういった点をお伺いしたいのですが,いかがでしょうか。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

  •  そういうことに関して自分の中で考えがあるわけではないので,ここで何かいいアドバイスができるとは思えないのですが,兵庫の場合に関しては,こういうことをやりたい,こういうことをしたいということは相当言いました。館長である知事と直接話をするということも何回もありましたし,スタッフが監督が思っていることをするためにこれだけの予算も必要ですという話合いは相当ありました。ですから,最初の段階から,劇場がオープンしてからも,予算がこれだけ必要になってくる。例えば計画を立てたのが100としたら,それが80で済むことはなくて,大体120とかになっていったりするわけですね。
     今回も,『コウモリ』の舞台装置の写真が出ていると思うんですけれども,第2幕の舞踏会のところは,大きなシャンパンタワーを舞台につくりたいと思うんですけれども,これだけでも相当予算がかかる。ただ,「写真に載せてくれ,記者会見でシャンパンタワーを作ると言うから。そうしたら作らなければいけなくなってくる」というやり方も非常に重要だと思うんですね。
     そういう意味で,県の理解も求めなければいけないし,同時に演奏家も町の援助を受けている,町の支援を受けている。それでこのオペラは成り立っている,この公演が成り立っているという意識を持つこともとても大事だなと思います。僕は知事に対して直接話をする機会,あるいは,スタッフとこういう予算が必要と話し合う機会は絶対必要だと思っていました。
     ですから,今も開館10年のオペラ公演のことまで考えているわけです。というのは,前の年になって,来年こんなオペラを創(つく)るからと言っても無理です。そのためには,スポンサーを勝ち得るのか,県から特別な予算を頂くのか,お客さんのチケットの値段を上げるのか,そんなことまで含めて考えていかなければ無理です。スタッフは「監督,全然わかってないわ」と言うと思いますけれども,スタッフはやり繰りし,やり繰りして次の舞台を成功させようということの繰り返しだと思います。
     ただ,国からの援助に関しても,大きな舞台を作るというのは相当な金額がかかってきます。それはあるに越したことはないです。ただ,500円で聴ける演奏会みたいなものをいっぱい創(つく)っていて,さっきも言った鑑賞教室だけでも40公演やっているんです。それから,ワンコインコンサート,色んなコンサートをやって,そこで入った収入をこのオペラで使います。だから,これはある種看板商品です。
     年に一つこういうオペラプロダクションをやって,ここでお金も集めてきていただいて,自分たちもふだんやっている予算もそこに注(つ)ぎ込んでこのオペラを創(つく)っています。この劇場がここまでクオリティを求めているんだということを見せる必要もありますから。そういうことも含めて,できることなら日本の色んな劇場の施設を持ったところと協力してこれからやっていきたいと思いますし,そのことに関しては国や援助していただく力が必要と言いたいと思います。
     もう一つ,同時に,この先考えていることなんですけれども,大きな舞台だけでオペラをするのではなくて,この先,小回りのきいたオペラも制作しようと思っています。兵庫県内中心になると思いますが,うちの町にオペラなんか来たことないというところにも,身軽にオペラを届けるような活動も同時に行おうと思っております。

○田村座長

 ありがとうございました。せっかく事務局長がいらっしゃっていますので,一言,何か,事務局長のお立場でおっしゃることがありましたら,よろしくお願いします。

○藤村事務局長

 ありがとうございます。こんなふうに芸術監督のことを直接しゃべる言葉で聞いていただけるのをとてもうれしいなと思っています。本当にこの芸術監督あってこその町だし劇場だと思っていますし,芸術監督自体も,町があって,スタッフがいて,自分がいると思ってくださる。こんな劇場を,芸術家と劇場をつなぐ行政と,それから町の人々と,震災の復興から始まったんですけれども,ずっと続くような劇場を創(つく)っていきたいと思っています。もちろん国の御支援もどうぞよろしくお願いいたします。

○佐渡兵庫県立芸術文化センター芸術監督

 どうもありがとうございました。

○田村座長

 一番特色的なことは,40公演の鑑賞教室の費用を教育委員会が全部持っていらっしゃるということですね。公演費用も持っていらっしゃるところが全く他(ほか)と違うというふうに思います。ありがとうございました。
 それでは,次に,社団法人日本芸能実演家団体協議会参与,大和滋さんのお話をお願いいたします。15分程度で意見発表をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 芸団協の大和と申します。このような機会を与えていただきましてありがとうございます。
 芸団協は,2009年に劇場・音楽堂等の法的基盤の整備するために法制定の提案を具体的にさせていただきました。発言するに当たって,私どもは劇場・音楽堂というと民間を含めての概念だろうと思っていて,今日はその中でも特に公立文化施設を中心に,その問題点等を含めてお話したいと思っております。劇場・音楽堂とは広く演劇,音楽,舞踊,演芸,伝統芸能を含めて,実演芸術の価値,力を社会に生かしていく機関というふうに私どもは考えています。色んな議論を聞いていると,演劇と音楽だけに触れている感じがあるんですが,公立文化施設の中では,能楽堂も演芸場も含めてあり,多彩な展開をしているということで,イメージをまず広げていただければと思っています。
 まず,劇場・音楽堂等の現状という問いでございますけれども,芸団協で提言をした背景になっているのは社会の変化,劇場・音楽堂の状況推移の問題だと思います。それは2001年をポイントにして様々な要因があった。市町村合併とか地方財政の逼迫(ひっぱく)というようなことで,2,000から3,000あると言われる公立文化会館の中で芸術事業をやっている館が10年前は1,100程度あったものが,940ぐらいまで急減すると,事業をやめてしまう館が出てきているというような状況がある。それから,事業の規模も小粒なものがふえていくというような,財政逼迫(ひっぱく)の問題がある。
 もう一点,供給の問題だけでなく,鑑賞サイドのデータを見ると,これも2001年をピークに,社会生活基本調査でいうと鑑賞行動率,1年間に何人が鑑賞したかの割合が減る傾向に入っているということ,それと地域間の格差が出てくるというような形で,全体に国民が芸術を鑑賞する場が減っていくというような状況があって,これをどうにかしていかなければいけない,ということもあって提言をしたという背景がございます。
 そして,もう一点,機関の問題です。私どもはこの劇場・音楽堂というのは機関と考えているんですけれども,公立文化会館の問題を中心に考えますと,これができてきた背景というのは,地域でライブの芸術を鑑賞したいという文化団体とか,様々な文化活動をしている人たちの要求でできてきたことは間違いないだろうと私は思っています。それの果たしてきた役割というのはそれなりにあったと考えています。
 ただ,公立文化会館の定義が,どこにもちゃんとしたものはないんですけれども,公文協さんが言っているのが「自治体が設置した実演芸術の上演が可能な設備を有する施設」というぐらいの定義しかない。基本は集会所として法的には位置づけられ,文化会館といった時に機関としてではなく単なる施設として考えてしまう傾向がある。施設を設置してそれで終わり。人的な手段も含めた造営物というような概念での設置はされていないということが言われてきています。
 私どもは,舞台に立つ側(がわ)やスタッフ等の舞台芸術にかかわる人間でよく議論になってきたもの,実演家の肌感覚と言うものがあります。会長の野村萬も公演に招かれ楽屋に入ると,「今日やる舞台の反応も含めて成功するかどうかは楽屋の人を見ればわかると,担当者の顔と反応を見ればわかる」というようなことをよく言います。
 スタッフなどで盛り上がる議論は,「撤収をやっていたら,時間がきたので電気を消された」というような議論から始まって,「釘(くぎ)を打つのもやめてくれと言われる」,「芸術目的の施設なのに何で集会と同列に抽選になるんだ」といったものだったり,「多目的は無目的」というような議論が今までさんざんされたんだろうと思います。
 その中でどういう議論をしていくか,これは根本的な問題が違うんだろう。批判は必要なんだけれども,違った角度から検討しなければいけないだろう。そこで突き当たったのが,地方自治法の「公の施設」という問題であったと思います。公の施設を造るため,条例に書かれた目的が非常に抽象的である。実演芸術の上演の施設として造っているのに,文化の振興は書いてあるんですが,具体的に事業で公演を創るとか公演を実施するとかは書いてないんです。施設を貸すということがメインになって,利用手続と利用料金が書かれている,この問題が大きいと思います。貸すのが主事業である以上,職員は管理主義的になっていくことは当然であって,これは制度論的な問題があるだろうと思います。運営する組織自体の目的意識というものが,実演芸術の振興という観点ではつくられていないというのが第一点だろうと思います。
 もう一点は,貸館だけではなく自主事業という形でやられていますが,職員が行政から来て,3年いたらいなくなってしまう人事異動があり,ノウハウが組織として蓄積ができていかないという問題が次の点にあったと思います。
 次に,財団法人を作って運営しようというようなことになってきたんですが,内実は多くは設置自治体からの派遣と余り変わっていなかったというような実態があるということです。一部に,兵庫芸術センターのようなモデルもできてきてはいますが,基本的には多分変わっていない。歴史的に見て色んな考え方の施設が併存していて様々な運営がされている。
 もう一つ,サービス業基本調査によると,会館の設置目的は約2,200館のうちの2,000館は集会所としてつくっている。芸術上演のために造っていると自ら答えたのは200館程度しかないというような状況がありました。
 次に制度的な問題を言いますと,「公の施設」で二千数百館ある多様な公立文化施設が同じルールで従うということで,一番の問題は,先ほど抽選と言いましたけれども,利用の差別的な扱いができないとか,不当な利用制限をしてはいけないというような,ある特定の団体を優先して基本的には貸せないという大原則があることです。
 その場合,そこで作品を創(つく)っていったり,あるいは,公演団体に長期利用をさせるとか,優先利用,更にフランチャイズ団体を置くとか,今,オーケストラで幾つかあります。これについてもかなり工夫してやられている。かなり積極的にやっている会館でも,この問題については微妙な政治的バランスの上に立っていて,表立って言うと何か事件が起こるのではないかというようなことをおっしゃっていた方もいるぐらいで,その辺の法律論としての「公の施設」の規定をどうするかという課題があるんだろうと思います。
 次に,指定管理者制度が導入されたということで,指定の方法とか,期間の問題で,雇用の不安定化というような問題が取りざたされており,機関としての蓄積,継続性ということについて問題があるだろうと言えます。以上が問題点ということで申し上げました。
 制度的な在り方ということで言いますと,施設自体は,実演芸術の上演に適したものとしてつくってきているという経緯がありますので,国か法律が作る,制度的基盤を作るということになりますと,全国的な視野で実演芸術の振興,実演芸術を地域づくりに生かした政策を実現するという観点から,法的基盤が必要であるということです。
 そして,もう一点,2001年からの改革で官から民へ,民が担う公共というものがまずスタートして,まず指定管理者制度が導入されて民に開放するんだという考え方が出てきた。それが指定管理者制度の一部の流れに影響を与えて,公立文化会館に与えたいい影響もあるかもしれませんけれども,負の影響というものがあった。 
 その次に,昨今,新しい公共という考え方で,公益法人制度が税制等も非常に充実してきました。これら2つの制度改革を受けて,実演芸術振興のための特別法として,あるいは,文化芸術振興基本法の具体化のための個別法という考え方で法的基盤を作る必要があるのではないか。既にある公立文化会館,及び今後,数十年前に建設された施設で更新期に入る施設もあり,これらの会館に会館としてのあり方の指針と選択肢を与えていくという方向性を考えていただきたい。
 あとは,単なる公の施設ではなく,実演芸術を振興する機関としての法的基盤を与えるものであるということと,地方自治法の定めという公の施設との関係をどうするのか。ここには,劇場・音楽堂を「公の施設」から外すとか,特定の団体を優先して基本的には貸せないという大原則を外すとか,幾つかの考え方があると思います。
 そして,劇場・音楽堂は実演芸術の創造・公演の享受機会を国民に提供する機関であるというふうな位置づけを与える。貸館を拒むものではなくて,国民に芸術的な享受の機会を与えるのが主目的である機関だということを明確に打ち出すということ。そして,2,000施設も設置されている中で,活発な実演芸術事業を地域でやりたいというところを認定していくというような考え方がいいのではないか。
 先ほど公益法人改革を生かすという言い方をしましたけれども,独立の組織として施設を利用して,そこで事業を展開する自律的な組織にしていく。そこには専門人材と,特定の芸術団体も含めて芸術家・芸術団体との連携をつくっていけるような仕組みが必要ではないか。地方自治体がつくった「公の施設」であるということが基本にあって,その上で国が,全国的な視点で実演芸術を振興する機関として,国と地方公共団体が協働して地域の機関を育てていくことが必要ではないか。あと,いろいろ議論されている助成の話でいうと,国の劇場法とは別の基準で助成は実施されるべきだろうと思っています。
 次に,留意点ということで幾つか資料に書かせていただきました。私どもは劇場・音楽堂の法的基盤が整備されるだけで全(すべ)て解決するとは思っていません。劇場の基盤確立というのはかなり時間を要する問題だろうと思います。中期的な視点で計画して運用していく。例えば,人材一つとってもかなりの力がつくには,10年ほどその現場で働いたキャリアがないとちゃんとしたトップに立てるような人間は育っていかないだろうということがあります。
 公立館ができた当初は,民間からかなり制作者,技術者が流れていった時期があって,ここ10年,新国立劇場その他公共劇場ができてきた以降は大分人材が育ってきて,最近できている神奈川やいわきにはそういうところで育った人間が流れていくようになった。技術,制作を含めてそういうところで育った人間が担っていくと,そういう人の循環もでき始めてきている。だから,10年計画程度ぐらいで人材を増やしていくという長期的展望を持った政策展開をお願いしたい。
 もう一つは,長期的に考えて,日本の国の多様性や地域の歴史的蓄積ということを考えると,全国で地域の文化的な蓄積を生かしていく,あるいは,人材を生かしていくというような雇用政策というようなことも,並行して考えられていなければいけないでしょう。
 もう一点重要なのは,都道府県レベルの文化芸術政策の奨励というか,広域的に考えた政策の奨励は必要だということを思っています。文化庁の巡回公演支援がなくなってしまいましたし。更に今,芸団協で技術者の育成システムを関係者挙げて作ろうとしており,この仕組みへの支援も検討いただきたい。
この公立の劇場・音楽堂に関する考え方がはっきりしてきた時,これらとの関係の中で,国立劇場群の在り方を再検討する必要があるのではないかということと,更に,民間劇場の振興の仕方を考えていきたいし,文化庁としても検討していただきたい。
 最後に,今,支援をめぐって「新しい仕組みの導入」の検討が独立行政法人日本芸術文化振興会で開始されております。文化庁は国立劇場とかその他の直接文化事業を多く展開していますが,その中で民間の非営利の芸術団体や劇場・音楽堂の運営組織を育て,助成していく原則の方向性を確立して,助成方法の開発とか,審査体制をきちっとしていくことを是非並行して進めていただきたいということです。
 以上,長くなりました。

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,御意見,御質問などございましたら,よろしくお願いいたします。太下さん。

○太下委員

 大和さん,どうもありがとうございました。今頂いた御意見,おおむね私もそのとおりだなと思ってお伺いしておりました。御意見をお伺いしたい点が一点あります。御意見のうち,目的を達成できる専門人材の配置についての御意見がありまして,さらっと読むと確かにそのとおりかなと思うのですが,この表現ですと,あたかも受け入れる側(がわ)の劇場・音楽堂に受入れの母体があるようなイメージで受けとめてしまうんです。御案内のとおり指定管理者制度が導入されて以降は,いわゆる劇場・音楽堂というハードと,それの運営,マネジメントを担うソフトというのが完全に切り離された状況にありますので,配置を持っていく劇場には何も受入れの組織がないという空っぽの状況がベースとしてあると思うのですね。
 その運営はどこが担っているかというと,自治体が設立した公益財団であったり,又はプロフェッショナルな力量のアートNPOだったり,逆にマネジメント能力のある芸術団体が担っているという状況が現状だと思います。そういった現状では,人材の配置という考え方以外に,既にある団体とハードの劇場を指定管理者制度とは違う仕組みで結びつけるという考え方もあり得ると思うのですけれども,こうした点についてもし御意見があればお伺いしたいと思います。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 先ほど公の施設を特別法でどう外すかということを申し上げたんですけれども,私どもの考えは,存在する指定管理者を生かして,単に施設を指定するのではなく,組織が劇場を運営し事業を行っているから,組織を指定の対象にするという考え方がいいのではないかというふうに思っています。
 劇場・音楽堂を「公の施設」から外すとか,公の施設を2つの考え方にしろとかいう研究者もいらっしゃいますけれども,そこまでやるとなると,どこで切るかというのが非常に難しい問題で,この説明をした時にある政治家の方から言われたのが「なぜ劇場だけなのか」ということになる。そういう議論が必ず返ってくる幅広い議論で難しい問題です。
 劇場・音楽堂をまず変えるという観点から,指定管理者制度を活かし,指定対象を公益法人にと,あえて言っているんです。実際,公立館については公益法人が多いわけです。そこの中を更に芸術機関的なものに変えていく方向性を持った考え方がいいのではないかと,第一歩として考えたんです。

○根木委員

 具体的な話として,一つは劇場・音楽堂の定義をどう考えるかということがあろうかと思います。頭に置いておられる法律が,例えば人的組織をきちんと持つべしという義務づけをするところまでいくのか,それとも一定の人的組織があり,ある種の事業を展開している劇場・音楽堂については,その事業に対して助成するという振興法的な考え方でいくのか。そこは,どういうお考えなのでしょうか。
 もう一つ,先ほどの長期独占的な使用の問題です。これは現在でも議会の3分の2以上の議決があれば,一応例外措置が認められるということがありますが,それを一般化するのか。また,長期独占的使用というのは,特定の芸術団体に対して使わせるということになってくると思いますが,それをかなりの程度想定したものとして,公の施設の枠を外すとお考えなのか。その辺についてお聞きしたいと思います。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 前段としては,組織が運営する以上はそういう人材を持つべしという考え方に立っていて,助成については,国の助成政策として芸術団体及びそういう施設の運営機関に対する支援を考えるということが必要だろうと思っています。
先ほど例外措置というのは,議会の特別決議で1か月間ある団体に貸して公演した例が1例か2例あるんです。それは施設を芸術団体一つになら貸すことができるんですけれども,ある運営団体に特別決議で貸すと,それを更に他(ほか)の団体に貸すことができなくなるという考え方があります。運営機関が全部使うんだったらいいんですけれども。現状は,ちょっと違うやり方で,例えば条例上の工夫や,運用上の工夫でやっているかと思いますけれども,特別決議の規定というよりも,私は地方自治法の「公の施設」の定義の中にある「法律の別段の定めがある場合は」という定めの方で,特別法の位置づけるのかなと考えたんです。

○田村座長

 ありがとうございました。どうしても伺っておきたいことがおありでしたらどうぞ。

○三好委員

 三好です。事業をやめるところや,2001年をピークに自主事業の規模が縮小している。そういうことを前提に踏まえて,御提案の中では国が認定を行うための劇場法という概念と助成は別だとあえておっしゃっているわけですけれども,そうすると,劇場法で行う部分だけが強化されてしまうのではないか。先ほどの兵庫県のように知事以下熱心にやっておられるところはいいんですけれども,むしろ手を引こうという自治体が出てくるのではないか。逆にいうと,全体の芸術文化振興を今やっているところがむしろ少なくなっていく。ある部分ではレベルは確かに上がるかもしれないですけれども,いわゆる底辺の部分はむしろ少なくなっていくという懸念もあるのではないかと思うんですが,いかがお考えでございましょうか。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 この劇場法で全(すべ)てを解決できる問題でないと思います。できた劇場法の拠点となるところがどういう役割を果たすかというような国の政策上の問題と,地方自治体レベルでの政策を振興していかなければいけないということがあって,そこをいかに強化できるかという問題があるんだろうと思います。そっちに期待せざるを得ないのかなと思います。
 先ほど申したように,実際上二千数百館のうち千数百館は何も事業をやっていないという状況で,事業をやっているのは1,000館を切るぐらいです。そういう中で,振興策をとった時に,一定のレベルの劇場を強化していって,モデルをちゃんと示して,そのモデルを波及させるという政策を考えた方が,全部を底上げするという政策よりも,人材育成の問題も含めて効果があるだろうと思います。人材を育成していかなければいけないという問題があって,人材育成のことを考えると,ちゃんとそういう人たちが育っていって,その地域の政策をはっきりすることによって,それが波及していくという考え方に立って提案をしました。

○三好委員

 一点だけ手短に確認させていただきます。そうすると,法整備が全(すべ)てではないとおっしゃっている意味は,例えば法律が適用される施設というものがかなり限定的であってもかまわないということでしょうか。つまり,他(ほか)の施設にはその法律は適用されないと,そういう法律であってもいいというお考えでしょうか。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 実情として地方公共団体にある施設はほとんどが集会所としてつくっているということがあって,地方公共団体がつくってきた施設の中で,ある程度芸術を生かしていくと考えている施設は限定的になってきているということで,最低限そういうことはあり得るだろうとは考えました。それ以外のところに何か義務を課すということについては,地域でそういう意思があるところがまず劇場としての基準を満たしていくという考え方に立つのがいいのかなと考えたということです。

○田村座長

 どうもありがとうございました。申し訳ございません。お時間になりましたので,次,よろしくお願いいたします。

○大和日本芸能実演家団体協議会参与

 ありがとうございました。

○田村座長

 続いて,社団法人全国公立文化施設協会常務理事,松本辰明様に15分ほどで意見発表をしていただいた上で,質疑応答に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○松本全国公立文化施設協会常務理事

 社団法人全国公立文化施設協会常務理事の松本でございます。本日は意見表明をさせていただく機会を頂きまして,ありがとうございました。
 ちょっと前置きですが,今の日本社会をどうとらえるかというところで,非常に景気が停滞しておりまして,社会全体が活力を失って,地域社会も非常に衰退していて,先行きが見えないような状況になってきています。少子高齢化も世界的にも稀有(けう)な形で進んでいるという状況でございます。文化行政において「文化芸術立国」ということが標ぼうされておりますが,その足元から少しずつ人が壊れていくような,そんな日本社会を今,目にしているような感じがいたします。
 そういう現状に対しまして,文化,私どもに関(かか)わりがある舞台芸術や音楽がどんな意味や効用があるのか,そういったところをちょっと考えていく必要もあるのかなと思っています。劇場・音楽堂等という言葉がつかわれますが,あえて「文化施設」と申し上げます。先ほど申し上げた現状の中で,文化施設がどのような役割を担っていくのかということを,法基盤の整備をするに当たっての前提として十分検討する必要があるかなと思っております。
 公共ホール,劇場・音楽堂というのは何だろうか,文化装置というふうに言えると思いますが,最近,私は「感動装置」というふうに思いつきまして非常に気に入っております。そういうホールでは,人々が集い,交流し,芸術,芸能を鑑賞し,そこで創造する。そういう中で感動を共有する空間であると,文化施設は感動装置であるということが言えると思っております。感動こそが意欲や活動の源泉であります。感動を生み出す場,すなわち感動装置としてのホール,文化施設が十全の機能を発揮させるような後ろ盾になる,これが法的基盤整備の意義ではないかなと思っているところでございます。
 私どもでいう公立文化施設は,劇場・音楽堂と同じでございますが,基本的には舞台面と客席を備えた自治体等の公的団体が設置する施設というふうに定義しております。中には,展示施設等も備えた総合的な大規模な施設から,集会等を主な用途とした小規模な施設まで,規模とか設備,設置目的等実に多様な形で全国に点在しているという状況でございます。運営に当たっていろいろ課題があるのも事実でございます。先ほど単に集会所としてしか機能していないというような御指摘もありましたが,スタッフもいない中で何とかやり繰りしているといったところもございますが,そういう形で全国に点在しております。
 全国に約2,200の劇場・音楽堂等がございます。舞台芸術や音楽等の鑑賞,地域住民の活動,あるいは,交流の場として活用されております。ただ,規模の大小はいろいろあっても,現在,自治体が1,700から1,800ぐらいございます。都道府県,市区町村,いろいろ加えますと,1,700半ばぐらいの数字でございますが,2,200と1,700というのを考えますと,現在ある文化施設というのは,各圏域,地域における一つの舞台芸術文化の拠点として機能しているのではないかなと言えると思います。
 ただ,現在の施設はこれまで法的基盤がない,根拠がないということで,設置者の意向とか,あるいは,環境の変化によって,非常に不安定な運営を余儀なくされているということも事実でございます。特に指定管理者制度が導入されて以来,行き過ぎた経済効率等々が求められまして,施設運営とか人材育成の面で弊害が指摘されております。
 そういう大きな変化の中で,地域の芸術文化施設の本来の役割と目指すべき方向を明確にするために,法的基盤の整備を行うということは,私どもとして非常に時宜を得たものであると考えております。基本法で法的整備が謳(うた)われて10年ぐらいたっておりますが,むしろ遅きに失したという意見もございますが,是非法的整備を進めていく必要があるだろうという認識でおります。
 私ども公文協といたしましても,課題検討委員会を設置して,内部でこの問題についていろいろ議論をしているところでございます。まだ十分まとめきれてはございませんが,現在の意見をまとめますと,資料に掲げてあるように,在り方については地域の文化施設の果たすべき役割や使命を明確に示すということ。
 それから,文化芸術の受け手である国民の視点に立った法整備であること。
 それから,地域の文化施設の設置主体としての自治体,それから国が果たすべき役割と責務を明文化すること。
 それから,地域の文化施設の機能を維持・発展させるために,専門人材の活用と育成の必要性をしっかり示してほしいということ。
 最後に,色んな公的な支援を頂きながら事業展開をすることもございますので,説明責任を果たし得る評価制度を確立してほしいということ。
 まだこれ以外にもいろいろな視点はございますが,そういった形で法的整備に当たっての視点を考えているところでございます。
 意見記載欄にも書いてありますが,要は,公立文化施設が地域に密着したコミュニティ施設から,創造・発信型施設まで多彩で特色ある拠点施設が多く点在して,それぞれの地域文化の特性が生かされた事業を展開している。不十分な点は多々ございますが,法的整備に当たっては対象となる施設を,先ほどの意見の中にもございましたが,2,200あるうちから一部の施設を選別して,そこに重点的な支援をしていくという在り方ではなくて,2,200ある施設には,いろいろ濃淡はございますし,規模の違いもありますし,問題点も多々抱えておりますが,それぞれの施設が将来に向かって夢が持てるような,あるいは,自分たちの取組を積極的に進めていけるような,そういうインセンティブになる法的な整備が望まれるのではないかなと考えております。
 資料2のうち3番のところで,検討するに当たって留意すべき点は何ですかということで,ちょっと細かい点で述べさせていただいております。法律の制定の必要性をどう考えるか,法整備によって何が改善するのかといったところを,それぞれの色んな視点,市民(鑑賞者)の視点,施設側の視点,芸術文化団体の視点,自治体の視点,国の視点というようなことで検証して,しっかりと位置づける必要があると思います。
 それから,法律の名称はどのようなものにするかいったところでございますが,これも舞台芸術,音楽等の地域における振興といったことと,その拠点となる施設の活性化ないしは整備といった視点での名称を検討するべきと思います。したがいまして,例えば劇場法という形で一部の機能に特化したような名称は避けるべきではないかなと私どもは考えております。
 それから,法律の目的は何かといったところで,先ほどもちょっと申し上げましたが,創造発信系の事業をやっている,大きな恵まれた施設のみを支援する法律であってはならないというふうに考えております。もちろん,創造発信系の充実強化を後押しするということも当然重要でございます。同時に,非常に足腰が弱っている施設の活性化を図ると,そういう両面から支援することが必要なのではないかと思います。
 それから,施設の機能を十全に発揮するために必要な責任者と職員の配置をどのように規定するか。非常に細かい話になってしまいますが,色んな責任者が必要であろうと思いますが,それは事業の規模とか事業の性格によっていろいろ違いがあろうと思います。そのあたりは柔軟性を持たせる必要があるかなと考えております。
 必要な職員等の資格については,責任者につきましては,キャリアと実績というところから選任するということになろうかと思います。アートマネジメント人材でございますが,将来的には認定検定制度あるいは公的機関の講習会等での認定等を検討するべきではないかなと思っています。
 その他いろいろ課題がございます。それについても今私どもの内部で検討しているところでございます。
 それから,資料のうち自由記述のところに掲げさせていただいておりますが,財政支援をするための法的整備であってはならないと私どもは考えています。法整備に当たってはもっと本質論的な議論をしっかりして全体の仕組みを構築するべきだということです。お金が絡むと事業のメニューとか考え方といったものが少し歪(ゆが)んでくるのではないかなと思いますので,それは別に議論していくべきと思っています。
 舞台芸術,文化の振興ということで,創造発信系をどんどん高めて,外国に匹敵するような館をつくっていくということも重要でございます。そういう理想主義というのを持つべきだろう。しかし,一方で,今2,200の施設がございますが,これを活用しないでいるのはもったいないのではないかなと私は思っております。ドン・キホーテ的な理想主義と,サンチョパンサ的な現実主義,この両面を持って法的整備を検討していただければなと思っております。

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,何か御質問等ございましたら,お願いいたします。片山さん。

○片山委員

 貴重な御意見,ありがとうございました。現状認識のところで,図書館,博物館などの法的基盤がないことから,設置者の意向によって劇場・音楽堂については不安定な状況にあるということで,法整備が必要といわれているわけですけれども,御意見のところで,地方自治体の役割と責務について明文化することが述べられています。それはそういう施設,例えば創造活動をする施設を設置すべきであるというようなことまで明文化するというようなイメージなのでしょうか。それとも,それをやろうという意思のある自治体については別な法律を適用することもできるという,自治体側に選択肢を持たせるようなイメージなのでしょうか。その辺について少し御意見を頂きたいと思います。

○松本全国公立文化施設協会常務理事

 どちらかというと後者ではないかなと思っています。自治体は自治体なりの判断や考え方を保証すべきではないかなと思いますし,国として全体として自治体がいろいろ考えたり判断したりする際の指針みたいなものを法で示すということになるのではないかなと思っております。

○片山委員

 ありがとうございます。そうしますと,今,財政が厳しい中で,かつ,自治体の中では必ずしも積極的な劇場・音楽堂を使った活動に取り組んでいない自治体も多いわけですけれども,むしろ最初から図書館や博物館のようなものではない形にしてしまうという方向に自治体側がいってしまうということにはならないでしょうか。

○松本全国公立文化施設協会常務理事

 それは懸念されるところだと思いますけれども,こうあるべきということで指針を示し,それを後押しするような何らかの制度上の支援と言いますか,インセンティブを加えるという形で何かできないかなというふうに思っております。

○田村座長

 根木先生,どうぞ。

○根木委員

 先ほど芸団協さんのお話と両方拝聴いたしますと,芸団協さんは選択主義で,公文協さんは網羅主義というように伺いました。そして,公文協さんの場合は,具体的には,公の施設について何らかの例外的なものを,何か指針といったような形にした方がいいというお考えのように受け取りました。
 ただ,このことは,法律事項が何かということに関連してくると思われます。国民の権利義務に関(かか)わる場合はもちろん法律の留保が必要ですが,ある種の振興を図るという場合にも,やはり法律の根拠があって,それを基礎した方がスムーズに行えます。ただ,その場合,一般的な指針とか,マニュアル的なものを法律で規定しても,余り意味がないというか,何のためにそのような法律を作るのかということになってくると思います。
 また,2,000館全部について,創造型の劇場からコミュニティセンターまで全部を引っくるめて,一義的に何らかの基準設定を行うということが果たして可能なのかどうなのか。劇場・音楽堂といった場合は,一定のイメージが湧(わ)いてきますが,コミュニティセンター的な館については,劇場・音楽堂の概念とは全く違うものではないかと思われます。コミュニティセンターについて必要性が問われていないというわけではないのですが,特に今その必要性が云々(うんぬん)されているのが,劇場・音楽堂という~まだ定義づけができていないのですが~類のものではなかろうかと思われます。そういった中で,全部を網羅的に中に取り込むということが可能かどうかということなのですが,この点はいかがでしょうか。

○松本全国公立文化施設協会常務理事

 私どもでも昨年度,劇場・音楽堂等の活動の基準に関する調査研究を行いまして,4つぐらいの類型に分けまして,その中でそれぞれ果たすべき機能とか,備えるべき要件といったことを示しています。それで少し濃淡がそれぞれ出てくるだろうというふうには思っておりますが,それを何らかの形で法律の中でどういう規定ができるのかというのは,今後の課題だと思いますけれども,単純にコミュニティセンターというだけで,これから外すというわけではなくて,コミュニティセンターでの取組の方針とか意欲,積極的に何らかの形で取り組みたいという館があれば,そういったものは,法律の対象になり得るような仕組みが必要ではないかなと思っています。そこら辺はメリハリがある規定ということになるのかなと思っておりますが,今後,私ども内部でもそこはしっかり議論していかなければいけないと思っています。

○田村座長

 ありがとうございました。松本さん,ありがとうございました。
 それでは,続いて,財団法人地域創造常務理事,下河内司様よりお願いいたします。
 15分ほどで意見発表をお願いいたしまして,その後,質疑応答とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○下河内地域創造常務理事

 地域創造の下河内でございます。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。私どもの財団は地方自治体あるいは公共ホールの皆さんと一緒に事業をやらせていただいているという意味では,共同で事業をやっているという立場で御説明をさせていただきたいと思っております。
 最初に現状について,私どもで調査している結果につきまして,簡単に御説明させていただきたいと思います。資料の8ページを御覧いただきたいと思います。平成19年度に私どもで地域の公立文化施設実態調査を行っております。調査対象を簡単に触れさせていただきますと,(1)の6行目ぐらいにございます「専用ホール」ということですが,この専用ホールにつきましては,コンサートホールとか劇場,多目的ホール等の舞台芸術の公演等を主用途とする施設という意味です。これ以外に,「その他ホール」は,アリーナとか体育館等で舞台及び客席を有しているものでございます。
 本調査の対象といたしました,調査対象の専用ホールは1,254,その他ホールが2,029ということで,私どもは主としてこの専用ホールの1,254につきまして今回分析等をしております。
 10ページを御覧いただきたいと思います。専用ホールの状況について,一番右を御覧いただきますと,管理運営形態ということで,平成19年度の時点で指定管理は52.1%といった状況でございましたけれども,最近行ったフォローアップの調査では,直営は33.1%,指定管理64.7%ということで,着実に指定管理が進んでいるという状況でございます。うち,公募型,非公募型でございますけれども,公募型が多くなってきているという状況でございます。
 この専用ホール千二百幾つの中には,専用ホールの中に複数のホールを持っているものもございまして,この複数のホールのホール数をカウントしたものは1,711といった状況でございます。
 客席数につきましては,11ページの一番下のところを御覧いただければと思います。左側が300席未満のところから600,1,000まで,それから1,000席以上といったところでございますけれども,都道府県,政令市の施設といったものが客席数をたくさん持っているという現状でございます。
 12ページにまいりまして,個別ホールの用途でございます。多目的が一番多いわけでございますけれども,一番上のクラシック,演劇,舞踏,それから,ポップスなり映像といったことで,用途が定められております。
 一番下の課題のところに書いてございますけれども,専用ホールにつきましては,実態としては音楽,演劇など複数の用途を持っているホールもございまして,多目的な施設につきましては演劇の中核あるいは重点,これは音楽堂の中核あるいは重点という整理することは若干難しいということで,多目的と整理したということでございます。
 それから,13ページにまいりまして,スタッフの数でございます。平均スタッフ数,平均人員が約10名,10.2名でございます。この10.2名の内訳を職種別で見ますと,事業系のスタッフが3.1人,施設管理系のスタッフは4.2人,舞台技術系が3.0,総務スタッフ系が2.7ということで,按分(あんぶん)しておりますので足し算しますと10.2になりませんけれども,全体で見ますと10.2ということで職員数もかなり少ないという状況にございます。
 それから,設置ホール別に御覧いただきますと,都道府県の施設,政令市の施設につきましては,平均人員が,都道府県は21.7,政令市は17.9ということで多くなってございます。
 それから,事業系スタッフでございますけれども,都道府県の施設で事業を行っているスタッフは6.2人,政令市でも5.5人ということで,都道府県,政令市の施設も,5~6人で事業を担っているという状況でございます。
 続きまして,次のページを御覧いただきたいと思います。館長とか芸術監督でございますけれども,19年の時点では専用ホールは1,250ぐらいございますけれども,全体では芸術系専門職の占める割合は3.3%,都道府県施設では7.0%とやや多くなっておりますけれども,市区町村施設では2.8という状況にございます。芸術監督は2.6%,プロデューサーが4.2%といった状況にございます。
 次のページを御覧いただきますと,22年度の状況でございます。最近の状況をみますと,常勤の館長,芸術監督,プロデューサー等の芸術専門領域の専門職員の比率はそれほど多くないわけでございますけれども,常勤の芸術監督は19年度の6名に比べまして,10名ということで増えてきています。また,平成22年度の常勤のプロデューサーは34名となってございます。芸術監督の場合には,非常勤の方も多うございまして名です。それから,プロデューサーの場合には,逆に非常勤は少なくて13名で,芸術・文化領域の専門職員の配置はふえてきているという状況にあるわけでございます。
 それから,16ページを御覧いただきますと,自主事業の状況でございますけれども,自主事業を実施していると回答された専用ホールは84.7%,1,026施設でございます。
 17ページを御覧いただきますと,自主事業の数でございますけれども,専用ホール全体でみますと,5件以下は36.9%で,団体の規模に従って自主事業の数がだんだん多くなってきております。都道府県,政令市の施設の方が自主事業の件数が多くなっているということでございます。
 それから,次の18ページは,棒グラフの上の段が実際に行われた事業,下の斜線が入っておりますのが,やってみたいと思っている事業でございます。現実に行われておりますのは,買取り型の鑑賞機会を提供する事業で72%,それから,子供を対象とした事業とか,地元のアーティストの育成・支援を目的とした事業,あるいは,体験型のワークショップの事業が行われているという現状でございます。
 それから,やってみたいと答えられている事業は,地元のアーティストを起用したプロデュース公演とか,あるいは,バリアフリー型の事業,あるいは,連携・協働型のアウトリーチといったものも実施したいという御回答を頂いております。
 最後の19ページでございますけれども,今度は都道府県等の地方自治体の文化担当部局の皆さんが現状における課題をどう把握しておられるかということでございます。一番多かったのが,文化行政を実現させるための組織とか体制の整備,それから,基本的な方針とかアクションプラン,それから,大規模な改修等が必要になってきているものもございます。それから,その2つぐらい下ですけれども,文化と福祉との他分野専門家と地域などをつなぐコーディネーターの育成といった,人材の養成といったものについても御回答いただいております。
 それでは,意見を申し上げたいと思います。
 まず,現状と課題でございますけれども,今,若干,資料でも申し上げましたけように,非常に地方の財政状況は厳しゅうございまして,地方公共団体におきます芸術・文化事業の予算を確保したり,あるいは,公共事業における自主事業の実施は大変厳しい状況にあると思っております。
 また,指定管理制度が導入されたところでは,民間のノウハウの活用とか経費の効率的使用が進むというプラス面もある一方で,指定管理期間を超えた事業の企画が難しくなるということで,指定管理期間は5年ぐらいが多うございますけれども,5年の切れ目ということになりますと,2年先,3年先の事業の企画がなかなかできないといった悩みを抱えておられるところもございます。
 それから,必要なスタッフにつきましても,常勤で終身雇用というのはなかなか難しくなっておりますので,指定管理の期間に合わせたような任期付きの任用とか,あるいは,非常勤での雇用に移行せざるを得なくなっているようなこともございます。
 それから,地方の公共ホールにおきましては,芸術・文化の専門的な人材は不足してございます。非常に厳しい状況でございますけれども,公共ホールとして,住民に身近な場所で質の高い芸術文化事業を企画し,実施していくことが求められていると考えております。
 それから,2番目の制度的な在り方でございますけれども,住民の身近な場所で芸術・文化を企画し,実施すること,そのための制度が必要であるというふうに考えております。そのためには住民に身近な市町村ホールの支援・育成が必要であると考えておりまして,地域において中核となる劇場・音楽堂等を都道府県単位で育成して,都道府県内の拠点として,都道府県内の市町村ホールに対する人材育成の支援,財政支援を行うことが望まれるというふうに考えております。
 中核となる劇場・音楽堂等が首都圏等を中心にございましても,なかなか地方の住民の皆様方がそういった機会に触れる機会が少ないということを考えますと,都道府県に1つ中核となるホール等があって,周りを支援していくといったことが望まれると考えております。
 続きまして,留意すべき点については,芸術・文化というのは本来自主的に取り組まれるべきものではないかと考えております。ということで,制度や資格の義務付けというのはできるだけ慎重に対応していただきたいと思っております。
 それから,芸術・文化分野の専門的な人材の育成ということにつきましては,当然,中核となるホール等もやらなければいけないわけですけれども,国におきましても,直接,必要な中核的な人材の養成を是非お願いしたいと考えているところでございます。
 その他の意見でございますけれども,国全体の文化政策として国として行っていただくもの,それから,地域の実情に応じて地方団体が行うべきものとの区分,国と地方の役割分担について検討する必要があると考えているところでございます。
 それから,地方の公共ホールは,より質の高い芸術・文化事業も当然必要ですけれども,その地域における地域活動の拠点といたしまして,いわば地域の広場的な役割を担っているところでございます。地域創造はできるだけそういったところで共同で事業を実施しているわけでございますけれども,現状において非常に心配しておりますのは,地域において中核となる劇場・音楽堂が育つ前に,細々と予算計上している小さな市町村ホールの自主事業の火が消えてしまわないかということを非常に心配している状況でございます。
 簡単でございますが,以上でございます。

○田村座長

 ありがとうございました。
 それでは,御質問などございましたら,よろしくお願いいたします。三好先生。

○三好委員

 ありがとうございます。幾つか御質問したいことがありまして,一つは,都道府県単位で中核的なものを拠点として育成するということなんですが,現状において都道府県単位でそういう拠点となるべきものが,もう既にあるとお考えなのか,まだまだこれからかなりてこ入れをしなければいけないとお考えなのかというのがまず一点。
 それから,都道府県内の拠点から市町村のホールへというふうにお考えだと思うんですけれども,実際に都道府県のホールが市町村のホールを育成するということが可能なのか。あるいは,逆に都道府県のホールを中心として,巡回公演のような形や鑑賞教室のような形で,市町村はついてくるところがあればついてくるというぐらいにするのか,あるいは,それぞれの市町村の拠点までも県が育成していくべきとお考えなのか。その辺をお聞かせいただければと思います。

○下河内地域創造常務理事

 まず一点目でございますけれども,まだ都道府県単位で中核となるような劇場が周りを支援してうまくやっているというところはそれほど多くはないのではないかと思っております。例えば,熊本県の熊本県立劇場等につきましては,県が市町村と連携されまして,色んな事業を提携してやっていただいております。
 他(ほか)にも幾つかうまく連携していただいているところは,しっかりした県のホールが周りを支援していただいているという状況でございます。県によりましては,コンサートホールとか,演劇の小さなホールなどの専用目的のホールしか持っておられないで,中核能力のないところもございます。幾つかはそういったところがございます。
 それから,もう一点でございますけれども,都道府県のホールを中心にして,同一都道府県内の方にホールで色んな事業を見ていただくという方法と,それから,地元の市町村のホールと連携する方法がございます。私どもとしては,年に何回か県のホールや中核のホールで,芸術とか文化に触れていただくだけではなくて,日ごろの生活の中で,そこに行けば地元のアーティストの皆さんと触れ合えたり,色んな文化事業を企画されているという状況をつくり出していきたいと考えておりまして,県に1つではなくて,県のホールを中心にしてできるだけ身近な市町村のホールでそういった事業をやらせていただければというふうに考えております。
 私どもの事業の中では,都道府県のホールと一緒に,県内の複数の市町村のホールで事業を実施するといった事業もやらせていただいておりまして,例えば,いわゆるアウトリーチ系の事業につきましては,県のホールが中心になって企画いたしましてアウトリーチ先として複数の市町村にアーティストを回していくという方法が現実的には可能であろうと思います。非常に有用な取組になるだろうと思っております。ただ,例えばアウトリーチとか色んな人材の育成の支援ということなど,都道府県のホールでしかできないものもあろうかと思っております。
 質の高い芸術・文化事業といったものにつきましては,質が高いということと同時に,市場のエリアから見まして,県内の複数のホールで行いましてもお客さんがなかなか入らないということで,都道府県内で1つ公演をやるということは意義があるだろうと思っております。そういった意味では,連携できるものについては,できるだけ身近な市町村のホールでやっていただくということは非常に重要ではないかと考えているところでございます。

○田村座長

 太下先生,どうぞ。

○太下委員

 どうも御報告ありがとうございました。御意見の中で,人材の養成や育成というものに非常に注目されていて,この辺本当に同感いたします。一方で,地方の劇場・音楽堂の運営を担っている文化財団の状況を考えますと,大きく二層の人材がいらっしゃるのではないかなと思うんです。一つは親元の自治体から出向で来ていただいているような管理能力の高い職員の方,もう一つはプロパーの職員の方で非常に若くて意欲のあるような方,こういう2つのパターンの方がいらっしゃるのが典型的なパターンではないかなと想像いたします。
 この組合せが非常にうまくいっている例というのは,兵庫県立芸術センターのような,どちらかというとオープンして10年ぐらいの時期はこの組合せは非常にうまくいくのではないのかなと思うのですが,例えば10年20年という長いスパンで組織のことを考えた場合,恐らくキャリア・デベロップメントのモデルが成立していないのではないかと思います。10年ぐらいたって中堅になったプロパー職員が,次にどういうステージを考えたらいいのかというモデルはないと思うのですね。
 そうした際に,ここで書かれているような中核人材の養成を国が行うということも非常に大事だと思うのです。これはいわゆる研修のような "Off the job training"だと思うのですけれども,人材の養成を考えると"On the job",OJTが中心になろうかと思いますので,より正確にいうと,それを担っている文化機関同士の人事交流になろうかと思いますけれども,これを国がコーディネートしたり支援などをするということは,今後の劇場・音楽堂の在り方において非常に意義が高いのではないかなと,個人的には考えておりますが,こうした点についてはいかがでございましょうか。

○下河内地域創造常務理事

 お話がございましたように,芸術監督とかプロデューサーにしましても仕事の中でノウハウを培った方でないと,なかなか簡単には育たないと思っております。水戸の芸術劇場では平成元年からスタッフがずっと同じように事業をやってきて,長く事業を継続的にやっていただく中でキャリアアップを積んでいただくという形で運営されており,少し長期的にホールなり財団で運営していただくと非常にいい人材が育ってくると思います。
 それから,常勤の方の中には地元に愛着を感じて勤務していただいている方もございます。逆に,プロデューサーになりますと,かなりの方は地元のホールで育って,そこで企画をやって,事業を企画する課長なり,そういう責任ある立場になっている方もおられる。そういう意味では,今後そういった人材をうまくマッチングするためには,劇場・音楽堂でもある程度事業をやっていかないと,受け入れた人材の活躍する場がないと思われます。
 それから,今御質問がございましたが,"On the job training"の中での育成という面で,非常に難しいと私が思うのは,スタッフが何名かおりまして,その中に中核的なプロデューサーとか人材がいた時に,その人を"On the job"でどこか他(ほか)のホールに派遣したりといった場合には,その人が例えば半年間とか1年いなくなると,その間の事業をどうするのだというところは非常に気にされる面もあろうかと思います。
 そういう意味では,うまくそれぞれの館で活躍されているプロデューサーなりスタッフの方が入れ替わって,研修先の館で同じような企画なり働きをしていただければ,その館で全く企画する人間がいなくなるということはなくなると思いますので,うまく人材の交換なりマッチングができれば,御指摘のようにうまくいくかなとは思っておりますけれども,継続的に事業企画を行っている枢要な人材の交流ということになりますと,非常に難しい面があるかなと思います。逆に,そういった枢要なスタッフに育つ前に,中堅の方とか若い方々から育てていくと,立派な企画をされる人材が育っていくのではないかと思っております。確かにお話がございましたように,国でそういった仕組みをつくっていただいて,うまくマッチングするとか,"On the job"でできるような仕組みができれば,うまくいくのではないかというふうに思いますけれども。

○田村座長

 ありがとうございます。では,短くお願いいたします。

○片山委員

 静岡音楽芸術大学の片山と申します。ありがとうございました。これまでのお話では,人材については主に事業関係の人材のことをお話されたと思うんですけれども,もう一つ,マネジメントの人材はどうでしょうか。総務,管理系,事務局長をやるような人たちは,特に公立の施設の場合,自治体から来られた方などが多くて,他(ほか)の県に異動していくことはまず考えにくいような状況があるかと思います。今,劇場,ホールの継続的な発展を考えると,ファンドレイジングをしたり,説明責任を果たしたりとか,管理部門の責任と言いますか,能力が求められている状況にあると思うんですけれども,そういった人たちの人材育成について何かお考えがあればお聞かせいただきたく思います。

○下河内地域創造常務理事

 財団なり指定管理,プロパーのそういった方が育つというのがベストでございますけれども,現実には事務の方が転勤で来られるという場合もございますので,私どもとしては,そういった方が来られた場合にもできるだけ事業の現場を御覧いただいたりして,管理部門の能力に合わせて,管理部門として必要な芸術とか文化の基礎的な知識といったものは,できるだけ学ぶような機会を持っていただければと思います。私どもの財団の中でも管理者向けの研修コースは持ってございますけれども,そういった機会を是非積極的に御活用いただければと思ってございます。本当はそういった人材が若いころから育つのがいいのではないかと思うんですけれども,現状としてはなかなかできていないかもしれません。

○田村座長

 ありがとうございました。
 まだお聞きしたいことはございますけれども,大変申し訳ございませんが,ここで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,休憩をちょっととらせていただきます。15分に再開ということにさせていただきます。よろしくお願いいたします。

<休憩>

<再開>

○田村座長

 それでは,引き続きヒアリングを行っていきたいと思います。
 富山県生活環境文化部次長,村椿晃様にお願いいたします。15分程度で意見発表を頂きたいと思います。その後に質疑応答させていただきます。よろしくお願いいたします。

○村椿富山県生活環境文化部次長

 富山県庁の生活環境文化部の村椿と申します。本県の取組,特に利賀を含めてそういった現状,実情をお話しいただければということでしたので,御説明をさせていただきたいと思います。
 資料に沿って御説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料の1番,現状と課題を御覧ください。本県の文化ホールの現状につきましては,30館程度ありまして,ほとんどが貸館がメインという現状にございます。館が主体となった独自事業を展開している場合もございますけれども,割合的にはほんの数パーセントといったところが現状でございます。
 その中で利賀芸術公園について少しお話をしたいと思います。県や指定管理者の主催・共催事業をメインの利用という形で事業展開が行われております。具体的には,昭和51年,利賀村に入村された演出家の鈴木忠志氏が,合掌造りの建造物を活用しまして舞台とか野外劇場などもろもろの設備を整備してこられました。こういった公園設備を鈴木氏主宰の劇団SCOTの本拠地といたしまして,活動を積み重ねてこられたという状況でございます。鈴木氏の助言を受けまして,世界演劇祭などをこの利賀芸術公園で開催しているということでございまして,県ではこれらの芸術公園におけます様々な創造的な文化事業の展開につきまして,鈴木氏やプロデューサーの斉藤郁子氏のお二方の御指導の下,様々な事業を行っているという状況でございます。
 別紙を少し御説明したいと思います。22ページを御覧ください。22ページに利賀芸術公園の歩みを簡単にプロットしてございます。今お話したとおり,昭和51年に入村,演劇活動を開始いたしまして,昭和57年には利賀村の原点とも言えます第1回の利賀フェスティバルを開催しております。
 その後色んな取組を重ねてきております。例えば平成13年のところを見てください。第8回のBeSeTo演劇祭を利賀で初めて開催ということで,海外に向けた活動というものが広がってきているという経過をとっております。
 その後,モスクワとの連携等もありまして,都道府県からのアクションという意味でいけば,2006年(平成18年),「舞台芸術特区TOGA」ということで,特区制度を活用した取組が行われました。一番下の※4に芸術特区の説明が書いてございます。施設も芸術創造空間の一部という考え方の下に,誘導灯の撤去といった規制緩和を行ったと。こういった取組が全国に広がったというふうな経過がございます。
 同じく平成18年には,「日露文化フォーラム」という形で,ロシアと連携した取組を行う。この際にロシアの文化映画庁のシュビトコイ長官が利賀を訪問されたということがございました。その後,ロシアとか韓国との舞台の共同制作という取組も重ねまして,進めてきている。
 平成21年には,韓国の柳文化体育観光部長官なども御訪問になって,シンポジウムに出ていただいているという状況でございます。
 次のページの23ページを御覧いただきたいと思います。これは利賀芸術公園の体制のプロット図でございますけれども,この体制は平成18年に指定管理者制度を導入し,翌年の19年からこのフレームで動いているというものでございます。富山県国際交流・芸術文化顧問として鈴木忠志氏に顧問に就任していただいております。更に,その下には,芸術プロデューサーとして斉藤郁子氏に就任いただいております。このお二方の指導の下に,利賀に拠点を置く劇団SCOTと一体となった活動を行ってきているというものでございます。
 下の大きなくくりの中は,指定管理先の団体,文化振興財団と左側の枠には書いてありますけれども,こちら側が指定管理の委託先,委託財団ということになります。ソフト事業についてはSCOT等と共同でやっていく。そして,施設の管理は財団がやるという形なんですけれども,特徴的なところでいけば,練習ホールとか訓練の施設,あるいは,宿泊とか生活関係の施設,こういった新しく劇をつくっていくために使うような施設につきましては,長期使用施設という形で位置づけを行っています。このフレームにつきましては,県と指定管理団体の間で,仕様書の中にこういったような共同事業を行っていくということを位置づけた上で,指定管理を受けている財団と劇団との間で協定を結ぶと,そういったような形で新しくものをつくっていく時の仕様を明確に根拠づけるという取組をしているところでございます。
 このあとの課題ということになりますと,これまで優秀なリーダーの下に色んな活動をしているわけですけれども,この後どうやってそれをつないでいくかという形,いわゆる後継人材の育成と言いますか,スタッフも含めた人材の面の話が出てくるかと思います。現在は,今後更にもっといい形で事業展開できないかということにつきまして,財団なり劇団と協議をしているという形でございます。まだこれからに向けての協議ということなので,今の段階で明確な形があるわけではございません。
 20ページをお願いします。真ん中の「別紙のとおり」というところまで御説明させていただきましたけれども,その下で「一方」と書いてありまして,利賀芸術公園以外の県立ホールにつきましては,先ほどから話がありますとおり,貸館メインということなんですけれども,利用率は60%程度ですけれども,ある程度ございます。ただ,特にクリエイティブをするような人的な余裕がないということで,館主催・共催は少ないという状況は先ほど申し上げたとおりでございます。
 今後,国の支援の方向につきましては,劇場・音楽堂が単なる貸館にとどまらないで,舞台芸術の創造・発信といったものに力を入れていくことが求められているということに鑑(かんが)みますと,私ども自治体にとりましても,各ホールの果たすべき役割ですとか機能,その位置づけにつきまして,それを考えるきっかけ,機会なのかと受けとめているところでございます。
 資料の2番の方を簡単に触れたいと思います。私どもは自治体で,施設を管理運営する立場なものですから,皆さんとは違うとり方をしてしまったようで,「制度的な在り方についてどのように考えますか」と書いてありますけれども,ここは現在の指定管理者制度に伴う課題というふうなものを整理してプロットいたしました。特に貸館という形でいきますと,いかに効率的な運営を図るかということで,経費節減への圧力がかかるのは間違いないところでございます。
 あと,指定管理の場合は,期間が限られますので,事業の継続性というものをどうやって図っていくか。更に,それの延長にもなりますけれども,周辺地域とのネットワークの蓄積といったものも課題になるのだろうなと考えておりまして,最大の点は人材の問題というふうに考えております。
 こういったものについての改善策を検討,実施していくべきではないかなと思いまして,その下に3つほど意見を書いてあります。例えば,もう少し何か違う評価の尺度ができないのかなと思います。あるいは,安定的な管理を行うための期間の工夫ができないか。そして,仮に指定管理者が変更した場合でも,ノウハウや人がつなげるようなことができないかというふうなことを思っております。
 21ページも少し触れたいと思います。制度的な在り方の検討に当たっての留意点ということですけれども,今,劇場法の関係につきましては,劇場の分類化,例えば創造中心ですとか,鑑賞機能中心ですとか,あるいは,地域住民の方々が実際にその場で活動するものが中心とか,そういうような形の幾つかの整理をされております。その際には,専門人材を配置する考え方も議論されている現状にありまして,これらによって劇場が活性化されるということは非常に良いことだと思うんですけれども,類型分類のための基準を余り細かくというか,きちんと法律で縛ってしまいますと,地方の実情や具体の展開もいろいろあるものですから,いかがなものかなと思います。こういった文化を育てていく場所にスポットを当てるという意味で,何らかの枠組みをするという意味はあると思うんですけれども,実際に運用する部分はある程度弾力的に都道府県なりの考えも生かせるようなフレームや仕組みができればいいのではないかなと考えております。
 あと,支援の問題のうち,特に「利益等(地域振興,雇用確保)」と書いてあるところの補足をしたいと思います。単に,観光とか経済面という意味よりは,劇場なり地域でそういう活動が行われていくことによって,それに携わる劇団員の方とかスタッフの雇用という意味もございます。それから,小さな子供たちがそういったものを観(み)てきて,やがてそういう道に入るかどうかわかりませんけれども,人材の育成につながっていくかもしれない。そういった面も含めて地域振興とか雇用という感じでとらえております。
 4点目は,直截(ちょくせつ)な書き方をしてありますけれども,この制度で評価というものを考えた場合には,例えば入れ込み客数とか,金額で幾ら以上みたいな考え方も,尺度としてはわかりやすくていいのですけれども,我々が利賀で実際に展開してきていることなども考え合わせますと,山間僻地(へきち)ということで地理的に不利な条件もあるんですがむしろ内容面をきちんと見ていくようなことを考えていただければなと思います。例えば,ものの評価はいろいろあるかと思いますけれども,先駆性とか国際性といった,他(ほか)から見ても質がある程度評価できるような尺度もあると思いますので,そういったことをきちんと見ていくという視点も大事なのではないかなと思っております。以上でございます。

○田村座長

 ありがとうございました。それでは,御質問などございましたら,よろしくお願いいたします。太下先生。

○太下委員

 御説明,ありがとうございました。私も第1回目のTOGAフェスティバルに行って,人生の中でも非常に大きな経験だったことを懐かしく思い出しました。特に後半,利賀の芸術公園についてのお話中心に頂きましたけれども,私の記憶では,最初,利賀村さんが中心的に進められた事業,これが富山県立という形に位置づけが変化したわけですよね。人間が年齢とともに成長したり所属が替わったりするように,劇場や音楽堂ももしかしたら年月とともに,その位置づけとか在り方が変わるかもしれないという,一つの代表的な事例かもしれないなと思ってお話を聞いておりました。
 その観点から,県の文化施設となってからの大きな変化,例えば県内の他(ほか)の文化施設や文化機関とのネットワークが進展したとか,又は国際的な文化交流がより活発になったとか,そういった点がありましたら,お話をお聞かせいただきたいのですけれどもいかがでしょう。

○村椿富山県生活環境文化部次長

 私の知る範囲でいけば,今,先生から御指摘あったように,単に山の中といいますか,山間のそこだけで特定の劇団がやるというだけでなくて,そこの舞台を活用した取組,舞台芸術の取組というようなものも行われるようになっております。県下の芸術文化の団体が利賀の施設を使って舞台を打つというふうな取組も行われるようになったということはございます。

○石浦富山県生活環境文化部文化振興課主幹

 県立化することに伴って,これはいいことかどうかわからないんですけれども,他(ほか)の県民会館とか他(ほか)の施設がこの文化振興財団というところでやっておりまして,そういったところとのネットワーク的なこともやっております。例えば利賀のものを高岡文化ホールでやるなどの活動も広がってきていると思っております。

○田村座長

 他(ほか)の先生方,何か。三好先生,どうぞ。

○三好委員

 ありがとうございます。今回,富山県さんという,前回ときょうのヒアリングの中で唯一,自治体設置者側の機会ということでお聞かせいただきたいんですけれども,今回,制度的な検討ということになっていまして,法律も視野に含めて検討することになっているんですが,現行は,県などの自治体の文化振興条例とか,あるいは,施設の設置条例の中で,目的などをうたっていくということが通常今でもやっておられるし,よりわかりやすく芸術振興の内容をもう少し絞っていくとか,あるいは,内容を高めていくという,いわば条例で手当することもかなり可能な部分はあると思うし,実際に設置者の立場としてもそうしていかなければいけないというところがあると思うんです。
 一方で,法律の議論となった時にその法律で何をそこに規定するのか,あるいは,設置者の側(がわ)として法律を作るという動きが出た時にそこに何を期待するのかという立場で,さっきから指定管理の話がいろいろ出ていますけれども,手続,あるいは箱物としての部分と,あるいは,例えば法律に基づいて事業をやるとか,法律の中でそういう事業に対して何らかの規定があるということが,設置者の側(がわ)から見た時に本当に有益なのか。あるいは,それはむしろ条例で規定するから,放っておいてほしいということなのか。県の御意見ではなく村椿さんご自身の御見解で結構ですので,ちょっとお聞かせいただけると有り難いと思います。

○村椿富山県生活環境文化部次長

 法律でどこまでものを書くのかということになるんだろうと思いますけれども,事業の中身まで法律で律するというのはどうかなというのは確かに思います。ただ,僕らが実際に直面している問題としては,現在,富山県において文化振興計画の中できちんと位置づけている3つの大きな柱が,質の高い文化の創造と世界への発信,更にそのトップにきているのが優れた舞台芸術の創造と世界への発信と,こういう柱立てがあります。それに基づいて利賀をはじめとした舞台芸術の事業を展開するというのが我々のフレームで,条例の世界からいきますと,条例にも実際は事細かに個別の事業を列記しているのではなくて,こういった目的に沿った場としての利賀公園を整備するというふうな形になっている。したがって,事業の中身そのものまで規定するのはどうかと思います。ただ,我々とすれば,ある意味特色があって,世界にも誇れるようなものをきちんと位置づけるようなバックボーンがあればという思いは正直あります。そうすることによって,人数や観客数だけでないようなところにも行政としてきちんとコミットしていけるのではないかという思いはあります。なかなか答えにならなくてすみませんが以上です。

○田村座長

 根木先生。

○根木委員

 富山県には,オーバードホールなどの随分立派なホールがあり,世界に向けて発信するという先ほどのお話のようなことを,多分理想としてお持ちなのではなかろうかと思います。また,地方分権の流れからして,条例で規定することが大原則であろうと思います。ただ,今まで,公立の文化ホールに関して一番欠けていたのが人的組織だろうと思われます。それが,更に,指定管理者制度の導入でスタッフの新規採用がなかなかできないということもあり,非常に窮屈になっているということが現実としてあろうかと思います。仮に,そういった人的組織を何らかの形で保有すべきであるといった義務づけを法律でした場合,県としては,設置者の立場で何らかの対応ができるのかどうなのか。難しいのか,又は必要ないのか。個人的な御意見で結構ですから,お聞かせいただければと思います。

○村椿富山県生活環境文化部次長

 イエス・ノーという話でいくと非常に答えにくい話ですが,これまでの議論の中でもあったと思いますけれども,我々とすれば実際に地域の特性を生かした場づくりとか,システムをつくっていかなければいけない。全く何もなくて自由にやれという話もあるんだろうと思いますけれども,ある程度のフレームや枠の中があるという形であれば対応できると思います。例えば全部職員で置くのかどうかと,細かい話からいけばあると思うんですけれども,きちんとした芸術をつくっていく場として最低こういうふうなものはあった方がいいのではないかなというものがあって,それに対してどういう方法で対応できるかという部分に僕らに考えさせていただく余地があればいいというのが正直なところだと思います。

○田村座長

 どうもありがとうございました。まだお伺いしたいことはございますけれども,お時間になってしまいましたので終了させていただきます。ありがとうございました。

○村椿富山県生活環境文化部次長

 ありがとうございました。

○田村座長

 それでは,続きまして,日本舞台音響家協会理事長,渡邉邦男様にお願いいたします。15分程度で意見発表をしていただき,その上で質疑応答をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○渡邉日本舞台音響家協会理事長

 日本舞台音響家協会理事長の渡邉です。本日は,短い時間ですが,よろしくお願いします。
 日本舞台音響家協会は,1975年創設の日本演劇音響効果家協会と,1977年に設立された日本PA技術者協議会が合同して2000年に発足した協会です。名前のとおり舞台音響家の個人的な集まりの協会で,会員数は約500名強です。90%の人たちが舞台音響に従事するオペレーターやプランナーで,残りの10%が音響事業者や音響メーカー,学校関係の人たちで構成されています。
 では,早速,意見発表に入りたいと思います。まず劇場や音楽堂等の現状と課題について,どのように認識しているかをお話したいと思います。
 劇場や音楽堂というと,全国各地にある公立や民間の全(すべ)ての文化会館の中で,舞台芸術の振興と発信の拠点となれる機能を持つか,若しくはこの可能性が高いところで,なおかつ地域経済活性化の力となれる機関だと認識しています。つまり,地域に根付いた劇場で市民に求められている舞台芸術を企画し発信していくことが劇場や音楽堂の普遍的な役割と言えるでしょう。
 まず舞台芸術の振興に関しては,戦後長きにわたって様々な手段がとられてきましたが,公共の劇場や音楽堂では専門の人材を十分に配置している機関が少なく,配置していても人数が足りず,管理だけで目一杯,とても公演の中身まで助けられないという劇場がほとんどです。また職種としても,他(ほか)の職域からむりやりの配置転換や定期異動に加え,指定管理者制度の悪影響もあり,舞台スタッフの育成はおろか,文化事業のノウハウの蓄積とか継承ができていないというのが現状ではないでしょうか。
 発信については,最近,「創造する劇場」とスタンスを変えてきてはいますが,その具体的な活動が地域の住民にとって納得,支持されている内容なのかどうかをリサーチし検証することが難しいこともありますが,効果が上がっているとは思えません。地域経済活性化の一助になろうという積極的な姿勢も,スポーツ振興に比べると格段に低いのではないかと感じます。  残念ながら劇場が持つべき普遍的な役割が今もって完全には担いきれていないのではないかと思っています。
 次に,劇場・音楽堂の制度的な在り方についてです。スポーツの振興は,市民へのフィードバックや,地域の経済活性化に結びつくことがわかりやすく,一般市民から見るととても支持されやすいものになっています。これに対して,文化振興の活動はそれそのものが多種多様ですから,市民から見てわかりづらく,一般市民の支持率はスポーツの次になってしまっています。この支持率がそのまま予算の確保にも影響していると言えるでしょう。文化振興もスポーツと同様に,市民にとって判(わか)り易(やす)い還元のされかたをしなければ,幾ら文化芸術の素晴らしさを謳(うた)っても支持には結びつきませんし,予算枠の拡大も難しいのではないでしょうか。
 そこで,舞台音響と映像を使った,文化芸術の発信を提案します。
 先ほどもふれましたが,近年,公共の劇場が「創造する劇場」という看板を掲げ,芸術監督を招へいして個性的な企画を実行しています。これは文化芸術の観点から価値のあるすばらしい創造活動だと思っています。しかし,その一連の活動が本当に一般市民にとって,地域にとって,どの程度有意義なものであったかというところが問題なのです。劇場や音楽堂の自主企画の公演で,幾ら質の高い作品をやっても,興味のない市民にとってはただの打ち上げ花火のようになってしまうのではないか。例え公演の評判を聞きつけてから行きたいと思っても後の祭り。公演が終わってしまうと後には何も残らないということが繰り返されています。
 そこで,これを少しでも有意義なものにするために,技術スタッフの立場から市民へ貢献できるサービスとして,「ネットワーク,サーバー,アーカイブ」,この3つを使った配信のサービスを提案します。ここでいう「ネットワーク」というのは,劇場内のLANではなく,劇場から外へ向かって開かれるWANです。このネットワークによって劇場が外へ開かれ,地域と結びついていくという運用方法です。
 劇場や音楽堂は,いうまでもなく「訪れる」ことに価値がある場所です。舞台作品は出演者と観客が時間と空間を共有することで生まれる芸術であることは論を俟ちません。その大前提を踏まえた上で,「来たくても来られない」人々に対してのネットワークの活用です。例えば病院とかホスピス,老人ホームと劇場がネットワークで繋(つな)がれ,劇場で企画した落語やコンサートの公演が,リアルタイムで配信される・・・どうでしょうか。それがNGNネットワークなど高精度のものであれば,等身大ディスプレイとサラウンド音響で臨場感のある上映が可能になります。そしてそれが,「本当は劇場へ行きたいのに行けない」という人たちへの還元となります。これは決して「劇場へ行かなくてもいい」ではありません。いつか必ずうちの傍(そば)のあの劇場へ行って観(み)たい,聴きたい」と思ってもらえる,劇場や音楽堂の本質を崩すことのない運用となるでしょう。
 また,公演はすべて録画されアーカイブ化されて,希望する市民へはいつでも配信されます。公演記録の映像データ,音声データに加え,台本,スコア,美術,衣装,照明,音響のデータまでも,アーカイブ化しておけば,それらはすべて市民の財産となり,劇場や図書館,学校など,決められた場所で自由に閲覧し,使用することも可能になると思います。ここまでやって初めて,劇場や音楽堂の自主公演が地域の住民,市民のものとなり,還元されていることが,目に見える形でわかりやすく伝わります。それが文化芸術活動の発信となって,市民の支持につながると考えます。
 これを実現するには,技術スタッフの人材確保や,設備投資,配信先の選定,出演者との契約などが必要だと思いますが,国民や地域の住民への芸術文化の発信サービスですから,そのあたりをしっかりと支えていただきたいと思います。今の社会情勢を考えれば,行う価値が十分にあることですから,なるべく早く,一定の基準で認定した国立も含めた公立劇場や音楽堂からやり始め,徐々に計画的に各地域の核となる劇場に広めていくことを提案します。
 次に,劇場が地域経済活性化への助けになるには,親から子,子から孫へとつながっていく,親子でリーズナブルに鑑賞できる質の高い公演の長期継続的な企画や,劇場と商店街と市民とが一体となるイベントの企画と実行。そういった企画や作品に対して一本ずつ助成をするだけではなく,毎年同じ世代の子供たちにとその親に観(み)てもらうなどの長期に亘る定期公演や全国を巡回できるような手厚い助成が必要なのではないかと思います。
 あとは,地域にある劇場を開かれた劇場として,予約なしで自由に利用活用できるスペースや,商店街との連携みたいなことはまだまだ足りないのかなと思います。それから,劇場の見学とか,例えば私たち舞台技術の入門などという講座を通じて,劇場の探検でもいいのですが,そういった企画を通じて,劇場を子供たちや地域住民の身近なものにするということも大事なことではないかと思います。体育館と劇場の違いというのを小さいころから感じ取ってもらう。繰り返しになってしまうかもしれませんが,地域の小中高すべての青少年に鑑賞の機会と創造の機会をつくる。劇場を体験するということが大切なのではないかと思います。
 また,まちづくりを含め,劇場や音楽堂の立地を見直すとか,大きく言うとそういう地域も数多くあるのではないでしょうか。あとづけの劇場が多い日本では,長期的な視野に立ったインフラの整備も必要だというふうに思っています。いずれにせよ劇場や音楽堂を身近なものにするということが何よりも一番の経済効果ではないかと思います。
 次に,制度的な在り方について検討する場合の留意点ということですが,これには3つあります。1つ目はホール関連の協会についてです。全国にある劇場や音楽堂の中で公立の施設には,全国公立文化施設協会という横のつながりをとりもつ組織があります。民間のホールでは,2004年に全国ホール協会が解散してしまった後,情報の交換の場が全く無くなってしまいました。昨今のこういう情勢を考えると,舞台芸術とか地域振興のために我々舞台スタッフはどのような貢献できるのかを語れるような,公民一体の大きい枠組みの,新たなホール関連の協会が誕生するといいと,そういう声も出ています。いずれにしても,民間ホールの意見が蚊帳の外にならないような配慮が必要だと思います。
 次に技術スタッフの雇用形態や員数についてです。劇場・音楽堂の技術スタッフには,技術力と専門知識はもちろんのこと,デザイナーとしての力量も必要になってきます。個人の努力と才能以外の大切なもの。人が人を育てるということが,創造・発信する劇場の一流の技術スタッフに育っていくということです。いつ契約が切られるかわからない指定管理者制度による委託とか,一括契約のスタッフでは,人材育成とか技術の継承はできません。人の顔が見える雇用形態,つながっていく雇用形態へと見直していくことが大切ではないかなと思っています。また,技術スタッフの人員も,作品を創(つく)るとなるとかなりの人数が要るけれども,現状,皆さんが認識している人数というのはかなり少ないのではないかという思いがあります。
 最後に舞台技術者の育成についてです。舞台音響に関しては協会独自の専門的講習会を開いていますが,それ以外に,舞台技術全般の知識を学び体験してスキルを上げるという,二つの切り口で実行しています。そこに新たに,優れた高齢舞台技術者を指導員とする「伝え・学ぶ」という伝承を大切にした舞台技術者育成システムの実現を目指しています。
 また,舞台技術者全体の育成では,舞台スタッフの関連団体が集まって知恵を絞っています。こうした育成や養成のカリキュラムは,短い期間で結果を求めるのではなく,長期間の支援と助成が必要です。実行のための支援と協力をお願いするとともに,舞台芸術の国立大学が設立され,舞台技術の学部ができることを望みます。その中で私たちも舞台技術の勉強ができる日がくれば,とてもうれしいと思います。
 以上で日本舞台音響家協会の意見発表を終わります。

○田村座長

 ありがとうございました。何か御質問などございましたら,よろしくお願いいたします。

○根木委員

 前回,日本照明家協会さんが劇場・ホールには専門スタッフを置くよう配慮すべきであるとおっしゃっていましたが,音響関係のスタッフについても同様な御意見と理解してよろしいでしょうか。

○渡邉日本舞台音響家協会理事長

 ええ,もちろんそのとおりですね。劇場それぞれ,ただただ管理をしているとか,作品について言われた仕事をしているということではありませんで,その劇場の特性なり特色を加味して,つくっていく作業ですから,ただ専門家を雇ってきてやればいいとか,スタッフとしての人数だけそろえればいいというものではないと思っています。
 また,劇場によっても違いますが,舞台で公演をしている時に,同事に次の作品の準備をし,音つくりをし,稽古(けいこ)場で音出しをしているということが常ですので,舞台の現場に付く人数だけでは全然足りないのと,劇場やホールの特性や欠点を知っている専門の職員としてそこに根づいていた方がいいと思います。

○田村座長

 どうしても伺いたいということがありましたら,お願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 それでは,最後に,社団法人日本オーケストラ連盟常務理事,支倉二二男様にお願いいたします。15分程度で御説明いただいて,その後質疑応答をしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 日本オーケストラ連盟,支倉でございます。申し述べたいことは資料にあるとおりでございますけれども,他(ほか)の団体の皆さんから述べられたこととほとんど重複すると思いますので,先生方のお求めのこととはちょっと違うとは存じますが,フランチャイズに関連して少し別な観点から申し上げて御理解を賜りたいと存じます。
 欧米的にオーケストラといった時に,その前提となるのは確固たる事務局組織と専門スタッフの存在とともに拠点ホールの存在があります。ところが,我が国の場合,ほとんどのオーケストラはリハーサルと演奏会は別の場所で行うという,欧米の理解を超えたところにあります。オーケストラに重要なのは,よい楽員とよい指揮者とよいホールで,音響的に環境の整ったよいホールで十分に音づくり,リハーサルをして,その条件下で観衆に聴いてもらうことが肝要で,ホールも楽器の一部と言われるゆえんでございます。
 一部のオーケストラは,自治体とフランチャイズ契約を締結し,このようないわば当たり前のことが実現しています。当然,自治体がホールとオーケストラを持っているところは,一部実現しています。よい環境で日常的にリハーサルをやり,演奏会をやることによって,オーケストラの質は格段に向上し,それが聴衆により深い感動をもたらしています。その芸術性のメリットは計り知れません。これは,オーケストラに限らず,他(ほか)の芸術団体にも同じことと思います。このようにホールと芸術団体が一体となれば,まずオーケストラ,芸術団体の質を格段に向上させることができます。
 もちろんそれだけにはとどまりません。ホールとその地域住民にも大きなメリットを与えています。オーケストラが様々な演奏会を提供し,それを享受するのはもちろん,リハーサルの公開,学校へ楽員を派遣して授業に参加する,病院・施設にアンサンブルを派遣する,吹奏楽やジュニアオーケストラの指導や共演,合唱団との共演等々,様々なことを提供し,草の根的な仕事をして,地域社会と深くコミットしています。
 また,最近は平日の昼間のコンサートも多くなり,お年寄りや家庭にいる主婦などが出やすい環境をつくっております。そして,地域のマスコミへの登場もふえ,多くの情報発信がなされています。もちろんコンサートの前後の食事やショッピングなどでの経済効果もございます。ホールには,減額されてはいますが,使用料は支払います。使用料は一たん自治体に入りますが,別な形,事業費などでオーケストラに還元されることになります。すなわちホールが主催する事業に出演し演奏料を頂くなど,これらを基に前述の様々な活動を行うわけです。また,共催で意欲的なものに取り組むことができるなど,よい循環が生まれております。そして,拠点となるホールだけではなく,他(ほか)の都市のホールと準フランチャイズの取決めをして,定期的に公演をするとともに,その前後でアウトリーチ活動を行うなど,効率よい活動を展開しています。
 意見書のその他の欄で触れておりますが,いわゆるジャパンシンドロームという大問題があるとともに,引きこもりの問題もございます。文化庁の資料によれば,「文化芸術の直接経験について,鑑賞したものがない」が,前回調査より少なくなっているものの,実に36.9%になっています。このようなことへの芸術文化でできる療法は,劇場・音楽堂と芸術団体の連携であると思います。芸術団体は拠点となる劇場・音楽堂において質の高い創造活動を行い,それを地元のみならずネットワークするホールにも提供し感動を与える。また,それに付随する様々な活動によって,地域の子供からお年寄りまでを巻き込んで活性化につなぐことができる等々,このような制度を構築し,更に活発に各地で持続して展開することが必要であると思います。
 もちろん制度ができても簡単にフランチャイズができるとは思われません。それぞれの地域の事情,施設の事情もございます。現在,フランチャイズがうまくいっているオーケストラの場合は,施設がオープンするずっと前から自治体側とオーケストラが協議を重ねた結果であります。また,オープンまでの間,オーケストラは地元の学校の体育館などで演奏会をやる,施設などでアンサンブルをやるなど,草の根活動を繰り返し,オープンした時には既になじみの顔になっていたということがあります。また,条例できちんと位置づけられております。
 したがって,首都圏のフランチャイズしているオーケストラは,年間でリハーサルに100日ぐらい,演奏会で10日から30日程度,すなわち年間の3分の1を優先使用しています。既存の施設との新たなフランチャイズは,ホールなど施設の稼働率等との関係で,そこまでは無理というところが多いかもしれません。そのため,施設と芸術団体それぞれの事情に合わせてフランチャイズ,準フランチャイズ,優先使用という,可能なところから段階的な連携を促進させるということになるかと思われます。
 何よりも劇場・音楽堂も芸術文化のつくり手であり,地域社会の健全化に資するということを意識することであると思います。このように我々芸術文化関係団体が元気な日本復活に貢献するためには,劇場・音楽堂の基盤を整備し,実演芸術を振興することであると思います。喧しい議論が飛び交っておりますが,先生方におかれましては,ここは「国家百年の大計」という観点で是非ともよろしく推し進めていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 とりあえず時間でございますので,以上でございます。

○田村座長

 ありがとうございました。御質問等ございましたら,お願いいたします。

○片山委員

 どうもありがとうございました。フランチャイズ化のことを中心にお話しいただいたかと思います。フランチャイズ化をもっと促進しようとする時,現在実現しているところは条例でそれをやっているということなのですが,それを法律によって,よりやりやすくするためには,具体的にはどういう規定が必要でしょうか。何らかの規制を緩和するということなのか,あるいは,何か新たな規制をするということなのか,どういう規定なり制度があったらフランチャイズ化を促進しやすくなるというふうにお考えでしょうか。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 ごめんなさい,私,連盟の中でオーケストラの意見は聞いているんですが,そこまで考えはいっていないと存じます。ただ,私どもが今申し上げたのは,まず法律ありきということではなくて,芸術団体の振興,実演芸術の振興と地域の活性化ということをするには,こういう法律も必要だというふうに思っております。ですから,条例との関連とか何とかという専門的なことまで思いがよらないんですけれども,うまくいっているのは条例でやっているということです。それから,各地域の自治体にそういう意識を持ってもらうということが大切だと思うんですね。
 ですから,意見書の中に書きましたけれども,文化振興のための条例というのは,全国の都道府県四十幾つのうちたった半分しか制定していないとか,政令都市であるとか中核都市などを入れても,全部で確か54ぐらいしかないはずです。先ほど言ったように,ジャパンシンドロームというようなことも,直近に迫った危機というか,閉塞(へいそく)感というのはあるわけですから,そこら辺は,我々芸術団体でできることといったら,今申し上げたようなことから手をつけて,もっともっとやるべきだろうと思います。
 もちろん先ほど言っているような,オーケストラで言えば活動というのは多かれ少なかれ今やっています。必死になってやっていますけれども,もっともっと活発化させるため,もうちょっと制度的にもしっかりして,もっと多くできるようなことにしていただければと思うわけです。ですから,先ほど根木先生がおっしゃったように,どちらかというと振興法みたいなことで僕はイメージしていたんです。それだとすると法律は要らないかもしれないというような意見もあるかもしれないけれども,そうではなくて,国民にはっきり説明責任というか,指し示すということであれば,是非ともこれは法律にしていただきたい。余り細かいことを規定するのではなくて,大ざっぱなところで結構ですから,是非法律にしていただいて,国民にもちゃんと指し示すというようなことをしていただくべきではないか。それが文化立国を目指す日本のあるべき姿の一つではないかと思っております。

○田村座長

 三好先生,どうぞ。

○三好委員

 フランチャイズということについてお伺いしたいんですが,オーケストラの場合には,演奏家の方もある程度人数が必要ですし,さっきの音響ですとか舞台照明,舞台関係のことも含めて考えると相当な人数が必要になるわけですので,フランチャイズということになると,現実的には大都市あるいは大都市の周辺部分に限られてしまうのではないかというふうに思うわけです。
 今回の議論の中では,全国にたくさんある公立文化施設をどうしていくのかということも視野にあるわけですけれども,フランチャイズということになると大都市ということに限られてしまうのか。あるいは,それとの関連で,例えば準フランチャイズとか優先使用とかおっしゃっているのが,いわゆる巡回公演などとどう違うのかというあたりを少し御説明いただきたいと思います。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 私,オーケストラのことを主に申し上げたんですけれども,オーケストラの場合は,ある以上の容積を持ったホールがないといい音響がないわけです。そうなると大都市ということになると思います。ですから,先ほど申し上げたように,オーケストラ以外の劇団などの芸術団体もそうあるべきだと思うわけです。
 それと,フランチャイズということと,先生おっしゃったように巡回公演,準フランチャイズして,それをうまくネットワークして回る,巡回公演するということをうまく組み合わせて,有機的にやるということで,何度も申し上げるように各地域の津々浦々まで元気づけるべきではないかなと思います。

○太下委員

 御意見ありがとうございました。御提案いただいた資料の中に,「聴衆の先細り」という表現がありまして,私も非常に気になるところなのですけれども,今こうやって制度の在り方等を検討していることが,法制度的なこともにらみながらの検討だということを考えると,一部の関係者だけの議論ということではなくて,国民的な議論というものになっていくことが望ましいのではないかなと思います。そう考えた時に,この「聴衆の先細り」ということはより大きな課題として我々の前にあるような気がいたします。どちらかと言いますと,演劇とかダンスとか幾つかの分野の中で見ていましても,特にオーケストラの分野の方が高齢化という問題にも非常に先進的に取り組まれている部分もあろうかと思います。
 先ほど日本舞台音響家協会さんのプレゼンでありましたけれども,映像配信的なことは,イギリスのロイヤルオペラなどでも取り組まれていますけれども,新しいアウトリーチの形として大変興味深くお聞きしていました。恐らく構造的な聴衆の先細りということを企業的な観点で考えると,今までのマーケティングとかプロモーションでは駄目だということも言えるのではないかと思うのですが,今後こういうことに対してどう取り組まれようとされているのか,又は,そのためにこの制度的な在り方に対して期待することで何か御意見があったら是非お伺いしたいと思います。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 先細りというのは,オーケストラの場合ですけれども,顕著に減ってきているということではなくて,人口が少なくなるわけですから,そうなるだろうということでここに書きました。そのためには,来ていない人を何とか掘り起こさなくてはいけないということで,例えば昼間やってみるとか,兵庫あたりは昔からやっていますけれども,お年寄りなどが寒くなり夜にはなかなか出にくいという時に午前中にやるとか,主婦の方の暇な時にやるとか,そういうことをいろいろ工夫して,昔聴いたんだけれども,今はなかなか来られないという人を呼び戻す。
 それから,一度も聴いたことのない人に対して,学校などに行って授業に参加するとかいうことをやって,掘り起こすというか,それの繰り返し,地道に繰り返していくというようなことしか方法はないと僕は思う。ですから,何かうまいことをやればバーンと聴衆がふえるということがあるんだったら,お聞きしたいぐらいな問題だと思いますけれども,そういうふうな地道なことをやるしかないと僕は思っております。

○田村座長

 根木先生。

○根木委員

 フランチャイズの話ですが,オーケストラの側(がわ)からすれば,活動の拠点ができるということで非常に大きなメリットがあると思います。一方,劇場の側(がわ)からは,ある種の「創造」という実体を形成するために,その組織を劇場の中に取り込むという認識でよろしいでしょうか。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 ええ,そうだと思います。そこで創造し,発信し,地元の人たちにもメリットを与えることができるということだと思います。

○根木委員

 だから,フランチャイズそのものを法律でもって規定するというわけにはいかないように思いますが…。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 もちろん法律に落とし込む余地があるんだったら落とし込んでいただきたいんですけれども,そこまで法律に落とし込んでくれということではなくて,そういうことがやりやすいような劇場法にしてほしいという希望を述べたつもりでございます。

○根木委員

 強いて考えれば,人的組織の延長線上に,事業の有様との絡みで,フランチャイズというものがあり得るのではないかと思われますがいかがでしょうか。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 一方で指定管理者制度であるとか,条例がないところは,一団体にそんなに貸せませんよとか,そういう弊害というか,やりにくい環境がたくさんあります。ですから,そこら辺を取り除いてほしいと,法律によって取り除くような突破口を頂きたいなというふうに思っております。

○根木委員

 劇場が創造組織を持つ,あるいはそれを持つべきである,又は持つことを期待するといった観点から,フランチャイズに結びついていくということはあり得ると思うのですが,そのような認識でもよろしいでしょうか。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 そうですね。

○田村座長

 どうもありがとうございました。

○支倉日本オーケストラ連盟常務理事

 では失礼いたします。ありがとうございました。

○田村座長

 ちょっと時間を超過してしまいました。大変失礼いたしました。
 本日のヒアリングは以上となります。御発表いただいた有識者,関係団体の皆様に重ねてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 それでは,事務局より次回の日程の説明をお願いいたします。

○鈴木芸術文化課長補佐

<資料3について説明>

○田村座長

 それでは,本日はこれで閉会させていただきます。ありがとうございました。

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