議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第7回)

平成23年7月25日

【田村座長】  それでは始めさせていただきます。
 開会に先立ちまして,配付資料の確認をさせていただきます。

【大川芸術文化課課長補佐】  失礼します。お手元の資料,御確認をいただければと思います。

<配付資料の確認>

【田村座長】  よろしゅうございますか。それではただいまより,第7回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催したいと思います。委員の皆様には,御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございました。前回は論点の整理を確認した上で,今後の検討に向けた方針について議論し,あわせて検討事項を御議論いただきました。前回お願いしましたとおり,これらを事務局において整理していただきましたので,事務局から説明をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】  失礼します。お手元の資料1から3につきまして御説明をさせていただければと思います。

<資料1,2,3の説明>

【田村座長】 ありがとうございました。前回御検討いただいたように,今後の議論から劇場・音楽堂等を拠点として,どのように舞台芸術を振興していくかという観点から論点を整理し,劇場・音楽堂等の在り方について検討することなどを確認したわけでございますが,ちょっとその前に1つお伺いしたいのでございますけれど,私,第1次基本方針,第2次基本方針,第3次基本方針において,法整備については,どう記載されているのかをちょっと見てみたんでございます。その問題と,この検討会で扱う問題は違うというお話なら別だと思うんですけれど,ここでは優れた舞台芸術とはどれも書いていないんですね。優れた文化芸術の創造・交流・発信の拠点や地域住民の身近な文化芸術活動の場として積極的に活用され,というふうに第1次基本方針も第2次基本方針も第3次基本方針もそのように書かれています。それで法整備が必要であるということが書かれていたように思うんでございますけれど,これの延長上にこの検討会があるのではないかと私は理解いたしましたのですけれど,今,舞台芸術の振興と限っていらっしゃいますよね。これを委員の皆様がそうすべきだという御意見もおありかとも思いますけれど,第1次基本方針も第2次基本方針も第3次基本方針も,舞台芸術の振興とは書かれていないのでございます。そこのところの御見解をちょっとまず伺っておきたいなと思いました。

【山﨑芸術文化課長】 第1次基本方針の記載も第2次基本方針の記載も劇場・音楽堂の法的整備に関する記載ではありますね。

【田村座長】  そうです。例えば,第1次基本方針で劇場・音楽堂等の充実に関する記載がありまして,そこに「劇場・音楽堂等が優れた文化芸術の創造・交流・発信の拠点や,地域住民の身近な文化芸術活動の場として積極的に活用され,その機能・役割が十分に発揮されるよう,次の施策を講じる」と記載されています。そして一番最初に「法的基盤の整備や…」と書いてあります。
 これが,変わってきたのかなと実は思ったのでちょっと見てみましたんですけれども,第2次基本方針もそのように書かれているんです。第3次基本方針もそうなんです。

【山﨑芸術文化課長】 位置づけとしては第1次基本方針から同じでございます。

【田村座長】 ということはここ,今ちょっと舞台芸術の振興という方向で議論するという方針と,基本方針における劇場・音楽堂等の充実という記載と整合性がちょっとないののではないかと思います。このお話を申し上げたときに,やっぱりこの検討会が舞台芸術の振興の云々(うんぬん)と思ってらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんので,それが賛成かどうかは別といたしまして,発言させていただいたわけでございます。

【大川芸術文化課課長補佐】  よろしいですか。今回の議論,特にこの検討会は第3次基本方針に基づいて御議論を頂いておるところでございます。もともと,第1次第2次もあるわけですが,第3次基本方針をまとめるに当たりましては,文化政策部会に舞台芸術ワーキンググループというものを置きまして,演劇・音楽・舞踊等の舞台芸術の振興について,その意義を踏まえた上で現状の課題を改善するため今後どのような方向性,どのような具体政策について,どういう具体策をとっていったらいいだろうかという御議論をしていただいたところでございます。
 そうした中で,1つの柱といたしましては,舞台芸術の振興に向けた重点施策ということで4点挙げられたところであります。1点目が地域の核となる文化芸術拠点の充実とそのための法的基盤の整備。2点目が専門家による審査・評価の仕組みの導入の検討と支援制度の抜本的見直し。3点目が,子供たちが優れた舞台芸術に触れる機会の拡充。4点目が舞台芸術の国際交流と海外発信の強化といった4点で,今後の重点施策というものが挙げられたわけでございます。その中の1つといたしまして,先ほど一番最初に申し上げた法的基盤の整備といったところが挙げられておるところでございます。この中には地域の文化芸術拠点において,舞台芸術が創造発信され,地域住民がそれらを享受できるよう,地域の核となる文化芸術拠点への支援を拡充する必要がある。また,その法的基盤の整備については早急に具体的な検討を行う必要があると示されておるところでございます。
 こうしたワーキングからの流れを考えれば,第3次基本方針につきましては舞台芸術の振興という中での御議論を頂いて,閣議決定につながったものと認識をしているところであります。

【田村座長】 でも,第3次基本方針のうち重点戦略1にも文化芸術活動に関する効果的な支援ですよね。舞台芸術活動とは書いていないですよね。

【大川芸術文化課課長補佐】  そうですね,重点戦略1には,文化芸術拠点の充実という記載がございます。

【田村座長】  第3次基本方針の冊子の5ページの一番下に,「法的基盤のない劇場・音楽堂等が優れた文化芸術の創造発信等に係る機能を…」と書いてあります。
【山﨑芸術文化課長】  確かに第1次基本方針も第2次基本方針も,舞台芸術よりももうちょっと広い概念としての文化芸術という言葉を使っています。ただ,そもそも劇場・音楽堂というのは何のための施設かというと,それはやはり舞台芸術をするための施設なので,実質的にはほぼ同じではないかと思います。舞台芸術以外のことを主に行う劇場・音楽堂というのがあるんでしょうか。

【田村座長】  それは施設という意味では全く変わってくると思います。その施設の取り組み方次第では。それは多分,地域性ということも関連してくると思います。でもあえてここでも「文化芸術の創造発信等にかかわる…」と記載していますが,文化芸術という言葉は舞台芸術よりもっと広い意味ですよね。

【山﨑芸術文化課長】  概念的には確かにそうですけれど,劇場・音楽堂と言った場合,やはり中心となるのは舞台芸術なのではないですか。

 舞台芸術に取り組まない劇場・音楽堂というのは,逆に言うと劇場・音楽堂と呼べるのかなという気もしますけれどもいかがでしょう。

【田村座長】  そうですけれど,地域によってはそれのみに限らないと思います。

【山﨑芸術文化課長】  もちろん,舞台芸術を中心としたアウトリーチ活動であるとか,周辺領域は当然あると思うんですけれども,舞台芸術を抜きにしたものはそれは果たして劇場とか音楽堂というんですか。

【田村座長】  あえて伺ったのは,劇場・音楽堂等という言葉がずっとあるがために,相当これに対して全国の施設の方もシビアになっていらっしゃると思うからなのですね。ここでまた舞台芸術の創造発信ということになると,またそこで限定してくるような気はいたします。そういう意味で,国としてどうお考えなのかというのはちょっと伺ってみた次第です。
 あえてこの第3次基本方針に至るまで文化芸術とわざわざ書いてあるんです。重点戦略1というところも舞台芸術活動に関する効果的な支援ではなく,文化芸術活動に関する効果的な支援と書いてあります。

【大川芸術文化課課長補佐】  すいません,その点につきましてはこの劇場・音楽堂の法的の整備といったものだけではなくて,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みですとか,それから優れた文化芸術が創造され,国内外に発信されるよう,その活動についての重点支援を充実するとか,その他の分野も含めての表現ですので,そういう記載になっているかと思います。

【田村座長】  いえ,ですからその法的基盤のないというところも文化芸術と書いてあります。法整備についても「文化芸術の」と。あえてここでは舞台芸術という言葉は使ってないですよね。

【小松文化部長】  すいません,座長が何が漏れているとお考えかというのを教えていただければ有り難いのですがいかがでしょう。

【根木委員】  第3次基本方針の20ページの美術館・博物館・図書館等の充実ということですね。

【田村座長】 はい。

【根木委員】  これも優れた文化芸術の保存・継承云々(うんぬん)という記載になっています。つまり,美術作品の収集保存とか,文化財の保存継承といった言い方ではなく,文化芸術という一般的な概念になっており,劇場・音楽堂等についても,美術館・博物館等についても,同じ言葉を使っているのだと思います。したがって,美術館,博物館,図書館に即して言えば,美術作品なり,文化財なり,文学作品なりが,それぞれの文化芸術の中身として限定されるということではないかと思います。同じように,劇場・音楽堂等という場合は,舞台芸術というものに限定されるのではないか。したがって,本検討会では,舞台芸術ということに焦点を当てることでよいのではないかという感じがします。

【太下委員】  よろしいですか。過去のこの検討会において,劇場・音楽堂というものの捕らえ方について議論があったと思うのです。その際に,劇場・音楽堂という言葉の響きはハードのイメージが大分強いのではないかという意見が出ていたと思います。しかし,劇場・音楽堂というものをハードとしてとらえるのではなくて,組織体,ソフトという形でとらえていった方がより適切なのではないかという議論がありました。その組織体,ソフトとしての劇場・音楽堂では一体どういう事業が行われているのかと考えると,今日事務局の方で御整理いただいた検討事項等案の最初の項目にある通り,やはり舞台芸術を中心とした様々なことが行われているのだという流れで,整理していただいたのかなと,こういうふうに私は理解していました。

【田村座長】  ということは日本の文化芸術振興のためにその方がいいという,太下委員としてはお考えということでしょうか。

【太下委員】  文化振興という大きな枠組みかどうかは別にしても,この委員会の中で議論として焦点を当てるのは,現在の流れが適切だと思います。

【田村座長】  基本方針より,もっと狭めた内容でいいということでしょうか。

【太下委員】  いえ,基本方針と整合しているように思いますけれどもいかがでしょう。

【田村座長】  私は舞台芸術というのは文化芸術の1つであるということは確かだと思います。法整備ということを考えたときに,それだけを検討するということでいいのかなという気がいたします。この第1次,第2次,第3次の基本方針があることを踏まえての検討会と理解しております。

【根木委員】  劇場ホールや美術館・博物館でも,他分野とのコラボレーションといったことが最近行われています。ですから,劇場ホールに関しても,美術と相互に連携した形での何らかの催しといったようなものが当然この中には含まれるということでよろしいのではないでしょうか。となると,本来の意味の舞台芸術からはみ出すので,それを包括して概念化するとなると,文化芸術という一般的用語でもって置きかえざるを得ないのではないかという感じがします。

【田村座長】  片山先生,どうぞ。

【片山委員】  劇場・音楽堂においてどのような事業が行われるかという話と,劇場・音楽堂「等」の範囲をどうするかという議論とがありまして,この基本方針においてもこの検討会の設置目的においても,一応「等」がついた形で定義されているということで,だから劇場・音楽堂に限定されないということだとすると,座長がおっしゃるように文化芸術と広くとらえておく方が整合性があるのではないかと思うところです。

【根木委員】  劇場・音楽堂等の範囲をどこまでにすべきか,という問題と関連するだろうと思います。劇場・音楽堂ということになると,一定の舞台機構を備えたものということが大前提になろうかと思いますが,それに必ずしもとらわれず,舞台芸術あるいはその延長線上の何らかのパフォーマンスが実施できるような,そういう空間というとらえ方でもよろしいのではないでしょうか。それが「等」の範囲に入るのではないかと思います。ただ,余りたがを外すと拡散してしまいますので,一応舞台機構を備えた施設を中心に,それに準ずるパフォーミングアーツが上演できるような空間といったとらえ方でいかがかという感じがします。

【田村座長】  三好先生,いかがでしょう。

【三好委員】  今,座長の御指摘のあった問題というのがまさにこの検討会が制度的な在り方といったときのその「制度的な」をどうとらえるかという話になるのではないかと思います。それで今日お配りいただいている資料の中でいうと参考資料3で挙げていただいた,自治体が既に作っている条例について確認しますと,少なくともここに挙がっているものはたまたま全部舞台芸術なんですよね。条例では舞台芸術に限っているということと,それからもう1つ,同じく参考資料の1で配っていただいた,今の,3次の基本方針では「劇場・音楽堂等が…発揮できるようにするため」という書き方をしているんです。一方,参考資料1の下段の文化政策部会舞台芸術ワーキンググループのまとめでは,「文化芸術拠点」という,また違った言葉の使い方をしてきているんです。
 何が言いたいかというと,結局,漠然と「文化施設」と言った中で,まさに制度的な在り方を検討しなければいけないのがどこなのかということではないかと私は思っています。だからどこにターゲットを絞っていくのかというのはまさに検討会の仕事であり,むしろ基本方針の方はいわば広めにターゲットをとっておいて,その中から制度的な在り方が必要な部分をある程度絞って検討しなさいというのがこの基本方針ではないかと,私は読んでいるんです。ですから,それはまさに検討会にゆだねられている部分というか,我々がまさにそこは議論すべき問題ではないかと思います。
 そこで私の意見を言いますと,そうした場合に何をここで取り上げるべきかというと多分,施設の側(がわ)から見ると3つのパターンあると思います。1つは,まさにこの参考資料3に挙げられたような,専ら舞台や演劇とか音楽をターゲットにして,それを主としてやると自ら宣言している施設,ですからもちろんそれ以外に使わないとまでは言わないのかもしれませんが,専らそれを主としている施設ということです。これは施設と,多分舞台芸術なんでしょうけれどもそこで行われる文化芸術がほぼ重なっているものというのがまず1つのパターンであろうと思います。
 それからもう1つのパターンは,文化施設の中でいろいろな使われ方をしていて,例えば舞台芸術にも使うし,それ以外の市民講演会にも使うし,村祭りにも使いますという,そういう使い方をされるいわゆる施設です。その場合はどこにターゲットを絞って制度を考えるかという問題が出てくるだろうと思います。
 それから3番目のパターンとしては,まさに文化芸術あるいは舞台芸術を中心に考えていって,それをやるために必要な施設ということで絞り込んでいくということです。
 私の側(がわ)の整理で言うと同じ施設といってもどこから入り込んでいくかによって少し整理が違うのかなと思います。まさに参考資料3の条例にあげられているような施設に絞り込んで議論するのも1つの考え方でしょう。そうではなくておよそ文化施設といわれるものを広くとらえて,その中ですべての活動について議論の対象にするのか,施設としてはいろいろな使われ方をするんだけれども,それをある程度,文化芸術のターゲットを決めて,ある程度絞り込んで議論をするのも1つの考え方でしょう。そこはまさにそこの議論の決め方ではないかと思います。ですから結論的に言うと,確かに入り口は文化芸術なんですが,それをあえて文化施設という広いとらえ方の上で,舞台芸術に絞り込むのか,あるいはもう,参考資料3にあるようなところに施設そのものを絞り込んでいくのか,そこはまさに,どちらの議論に考えていくかということではないかと思います。以上が私のとらえ方です。

【田村座長】  はい,どうぞ。

【大川芸術文化課課長補佐】  今,三好委員にちょっと整理をしていただきましたがここで御議論いただくに当たっては,今回の設置の趣旨から申し上げるようと思います。
 本検討会は,平成22年の12月6日に決定され,その後開催されているわけでございますけれども,その最初の趣旨というところで「文化審議会文化政策部会の「審議経過報告」を踏まえ,劇場・音楽堂等が優れた舞台芸術の創造・発信等に係る機能を十分に発揮できるようにするため,劇場・音楽堂等の現状と課題について整理するとともに,その制度的な在り方について検討する」というふうにこの会の権能を記させていただいておるところでございますので,この範囲で御検討いただくということになると理解をしております。ですので,三好委員さっきおっしゃっていただいたように閣議決定を踏まえ,この検討会を行う場合には,こういう範ちゅうのもとで御検討いただくという形で進めさせていただければと考えております。

【田村座長】  ということは,要するに第3次基本方針に対して文化庁としてこうお考えになっているという,それの検討をしてくださいということなのでしょうか。はっきり委員の皆様方が,法整備について,いわゆる文化芸術振興基本法の精神や理念を生かすための根拠法とお考えなのでしょうか。要するに視点が違うと思うんです。舞台芸術の振興について検討するというのは,どちらかというと芸術家寄りの考え方だと思うんです。あえて伺ったのは,いわゆる文化施設というものをどうとらえるかということにかかわってくるかなと思ったためですけれども,文化芸術活動をすることによって,地域住民が文化的に豊かな環境になるということを目的とした法整備をねらっていらっしゃるのかというところにかかわってくると思います。舞台芸術活動というと,文化芸術活動というものをどうとらえるかがちょっと変わってくると思いますので,文化芸術振興基本法に基づいた理念を生かすための根拠法として検討をするということなのか,文化庁だから文化芸術振興というか,舞台芸術,芸術家等の活動が豊かになり,世界に発信できるようにということをねらっての法整備を検討をするということなのか,私は両方にとれるのではないかと考えるのでちょっとそこのスタンスを伺った次第です。そういたしますと今全国で起きているような議論というのがちょっと変わってくるのではないかなと思います。

【小松文化部長】  座長は,舞台芸術を,いわゆるアーティストが行う活動に限って文化庁が考えているのではないかというニュアンスでおっしゃったと理解したのですけれども,舞台芸術の主体はアーティストでもあり,地域住民でもあると思います。それでこの文化施設に関する議論は,もう実態として既に各地に文化施設ができていて,その中で,法的基盤を整備してはどうかという,そういう流れだと思うんです。
 つまり美術館や博物館,図書館についてはその活動をするために規制も含めて法的な基盤があるけれども,舞台芸術関係の分野については,法的基盤がないということをずっと問題にしてきたのだと思います。

【山﨑芸術文化課長】  舞台芸術の振興と言ったときに,必ずしもプロの,演じる側(がわ)だけの問題ではなくて,当然演じる者もいればそれを鑑賞する側(がわ)もあり,一般住民の方,さらには市民レベルの舞台芸術の活動というのもあります。そういったものをひっくるめて舞台芸術の振興という概念なのではないかなと思うんです。ですから,この第3次基本方針では文化芸術の振興という言い方をしておりますが,実質的にはそれほど差がないのではないかなと思うんです。舞台芸術の振興と言ったのは,より具体的にこの劇場・音楽堂における文化芸術の振興を敷延していっているのです。ちょっと私,座長が御懸念されるような話ではないのではないかと思うのですけれどもいかがでしょう。

【根木委員】  市民文化活動の場も含まれるということではないかと思います。舞台芸術というと,いかにもハイレベルのプロのやるものという意味だけにとらえられがちですが,そうではなく,市民が舞台に上って日ごろ練習したことを発表するアマチュアの活動も含まれるわけで,舞台芸術の範囲をそういう意味で広くとらえればよろしいのではないかという感じがします。

【田村座長】  はい。でもどちらの立場を始点にして,法整備が必要と考えられるのかという問題がございます。法整備といったときには文化芸術振興基本法の理念に基づいた法整備の1つとして根拠法があるべきということで,日本に世界の例にないほど公共文化施設というものがたくさんありますが,常に美術館・博物館・図書館等も文化施設というくくりになっています。けれど,実際問題として文化施設ではありませんとおっしゃる方もいらっしゃいます。社会教育施設です,とおっしゃることが多いですね。文化施設という言葉のイメージが違うみたいなんですね。図書館が文化施設の1つでしょうと申し上げても「いえ,違います」という認識なんですね。

【小松文化部長】  それはもう単に言葉上の問題だけだと思いますけれども。

【田村座長】  そうです。それはもちろんそうなんです。
 そういう意味で,現在いわゆる基本法が一番対象となっている文化施設が,世界に例のないような文化施設が有効に生きるための多分法整備ということが一番の目的ではないかなと私は理解いたしておりますのですけれど,この検討会ではどちらとお考えなのかというのはちょっと伺っておいた方がよろしいかなと思います。

【小松文化部長】  多機能なものについて法技術的にどこまで書けるかわからなのですが,御承知のように法律というのは何かを振興するだけでなくて,ある程度規制もかけるわけですから,これまで自由にやってきたものに対して,どこまで枠をはめる必要があるかという点も考える必要があると思います。
 それで,第3次基本方針を策定するときに,結局,振興の対象としては地域の核となる文化芸術拠点すべてを対象にしました。その中で,特に法的基盤のない,先ほど根木先生がおっしゃったような舞台機構を持つ劇場・音楽堂については,法的基盤の整備を検討すべきじゃないかという議論になりました。ですから地域の文化施設について文化庁が全く目配りをしないということではなくて,当然必要なものに対する目配りはしていきますけれども,その中である一定の決め事をしておいた方がいい分野があるんじゃないか,それが舞台芸術だということだと理解しています。

【田村座長】  舞台芸術にそれが必要だというのはやぶさかではないのでございますけれども,実際携わっている身としては,単に舞台芸術をつくるというところでないところに対しても,文化施設がどういうものかという根拠法がないというところがやはり一番問題ではないかなと,私などは実際携わってみて,いろいろなところを見て感じます。
 そこは今回は舞台芸術を主とするというふうに限定してということでございましょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  文化庁としてこの検討会を設置するに当たっては,そういう形で考えて,舞台芸術の振興に資する劇場・音楽堂の在り方というものについて御検討いただきたいということで設けさせていただいたと考えております。

【田村座長】  今,方向性について,今,文化庁から意見を頂きましたが,先生方はどうお考えなのか,意見をお伺いさせていただきたいと思います。

【片山委員】  今,田村座長から問題提起があったこととも関係するのですが,この検討会が最初始まったときは,確かに,選ばれた幾つかの劇場・音楽堂等が優れた舞台芸術の発信をするところにかなり焦点といいますか,関心がいっていたと思います。しかし,現在の議論の中では必ずしも,つくる劇場だけではなくて,見る劇場,それから市民がそこでいろいろな活動をするようなところも含めて対象にするというところでほぼ合意に至ってきたと思ういます。それを舞台芸術という言葉で,範囲を広げて含めてしまうのが適切かという言葉の問題はあるかもしれませんけれども,内容としてはそういうふうになってきたのではないかと理解しております。見る劇場,それから市民がそこでいろいろな活動をするようなところがこの劇場・音楽堂等の「等」というところに恐らく含まれるのではないかと思います。
 そして,つくる劇場,あるいは一部のトップレベルのものを鑑賞する劇場についてはいろいろな施策が必要だけれども,他(ほか)の劇場については余り国で施策をやらなくてもいいのではないかという議論も一部でなされる中で,そうではなくて,地域の人たちが活動するようなところでも,文化施設であるからには単にハードだけではなくて人的な配置をすべきだという議論になってきました。先ほど太下委員も御指摘ありましたけれども,やはり法整備の論点は,単なるハードとしての施設が本来の文化施設となるために,人的な配置を行い組織をつくっていくところに焦点が合ってきたと認識しています。その対象は,いわゆるつくる劇場,あるいはトップレベルのものを鑑賞するところだけに限らず,コミュニティーレベルのいろいろな活動をエンカレッジしていくような施設においても,人の配置をきちんとしていくというところについては同じなのではないか。その基盤をつくるということに立法化の意義がある,というあたりのところまでは概(おおむ)ねまとまってきたのではないかと認識をしているところです。ただ次に人的な配置をするというときに,それを規制によって何人置きなさいと,いったかたちで行うことは今の時代はできないことでしょうから,それをどういうふうに書き込んで実現していくか,そこが次の論点として議論すべきところだととらえているところです。

【田村座長】  他(ほか)に御意見はよろしいでしょうか。

【太下委員】  今日御整理いただいた資料3で,冒頭にどういう事業が行われるのかという整理していただいていまして,ここに人材育成の話が出てまいりますが,やはり人材育成ということは今,片山委員がおっしゃったように,非常に大事な要素だと思っています。現状だと人材育成に関する講演会,研修会などを開催すると書かれていて,要は講演会,研修会を通じて人材育成という表現になっていますけれども,先ほども申し上げたとおり,劇場というものが機能であり組織体であると考えると,舞台芸術公演なり様々な文化的なアクティビティーを実践するというOJTを通じて,そこに配置された人材を育成していくという機能もあると思います。また,その地域での文化的なリーダーを育成していく機能や役割も担うべきではないかと考えています。
 そういった意味で考えると,人材育成等について,資料にまとめていただいていること以外に考えられることとしては,たまたま委員の皆さんの中に大学でアートマネジメント等にかかわっている方もいらっしゃるわけですが,そういう高等教育機関と地域の劇場・音楽堂等との連携というのは今よりももっとあってもいいのではないかと考えています。
 思いつくのは,授業の一環として行われるインターンシップみたいなことを,政策的な枠組みの中でよりやりやすくする方法や,高等教育機関と劇場・音楽堂との連携というのを制度的なものとしてつくりあげていってもいいのではないかと思います。
 また,参考資料にありますとおり,既に人材育成のためのプログラムを文化庁が取り組んでいますけれども,例えば劇場・音楽堂に関(かか)わる中堅レベルの人材については,各地域の個々の館の中ではなかなか育成する術がないという現実がもあるのではないかと想像しています。そこで,例えばそういった中堅レベルの人材については,国立の劇場が最低1年ぐらいの一定期間受け入れて,より高度なレベルのOJTを行っていく等,国全体での人材育成の体制づくり考えられるのではないかと思っています。
 それを実現するに当たっては,先ほど片山委員もおっしゃいましたけれども,やはり規制で行うのではなくて,昔話の北風と太陽の寓話(ぐうわ)になぞらえて言えば,北風という規制ではなくて太陽にあたるような,文化庁がこれからより拡充されるようなプログラムというものがあると,より望ましいのではないかと思います。

【田村座長】  恐れ入ります。ちょっと人材育成に関するお話も頂いたんでございますけれども,先ほどのお話については,皆様は先ほど文化庁の御説明になったような方向でお考えでいらっしゃいましょうか。
 そこについては,御意見がないということでしたら次のところに伺います。はい,どうぞ。

【三好委員】  制度的な在り方に関する検討ということに関して考えてみると,ちょっと話が先に行き過ぎるかもしれませんが,法律でもし書くとするならば,多分目的を書くんでしょうけれども,今の文化芸術振興基本法とは何か違う内容が途中に入ってくるんだろうと思います。それがまさに,「何らかの施設を使って,施設がこうあることによって国民の文化的欲求がより高まる,寄与する」といった表現になるんだろうと思います。ですから,ここの部分はある意味では手段だと思うんです。これ自身が目的ではなくて,さっきの座長の御懸念でいうと,文化芸術関係者や演劇人だけのための法律ではなくて,それはあくまでも手段,それも含めて手段だと理解をするんですね。
 では,その手段として,何を使えるかといったときに,ここではやっぱり施設をどう使うかということが多分主たる目的です。ですから,いろいろな手段がもちろんあるんでしょうけれども,その中で特にこの検討会で検討していきたいというのはやはり,施設を専らどう使うかという話ですから,そこは施設がどうあることによって,結果として国民にとってアプローチしやすいものになるかという方向に議論を持っていくのだろうなと思います。だからそこのときに舞台芸術という言葉を使った方がよりなじみが深いのか,あるいはやっぱりそこは文化芸術と言っておいた方が国民の側(がわ)にとってはよりなじみが深いのか,という議論かなとは思います。結論は言っていませんが。ですからあくまでもそこは手段だということでとらえるべきだとは思います。

【根木委員】 三好委員のおっしゃったことと少し矛盾するかもしれませんが,施設をどう使うかということはもちろんありますが,施設がどういう活動をするかということもあるわけです。この資料3の1.の[1]の「舞台芸術の企画,制作並びに公演,公開の活動を行うこと」というのは,まさに施設自体が能動的に何をやるかということについてであろうと思います。そして,[2]「舞台芸術を鑑賞し,創作し・・」という部分は,一般住民その他に開放して,貸し館としてこれを提供するということであろうかと思います。平たく言えば,[1]と[2]は施設をどう使うかということと,施設がどういう活動をするかという両面を含めた,舞台芸術の創造発信,あるいは鑑賞機会の提供,住民の創造の場の提供についての規定ということができる。条例レベルでは大体こういった言い方をしているということであろうかと思います。それから[3]から[5]に関しては,教育普及や人材育成,調査研究,資料収集,情報提供といった一般的な事柄を盛り込んでいるということではないかと思われます。
 そういったことで,[1],[2]の表現自体は,それぞれの設置条例などでこういう言い方をしているということであれば,大体これでよいのではないかという感じします。

【田村座長】  貸し館という言葉に代表されるものに,いかに施設側にプロがいないためにどういう惨状になっているかということはやっぱりもう一度考えてくれるべきことの1つだとも私は思うものですから,そういう意味で舞台芸術をつくっているところだけではない,さっき三好委員がおっしゃったように,国民の目線に立って,その施設がどう使うかということは,考えられるべきではないかなと,私が実際今携わっている静岡県内の状況を見てそう思いますんですけれどもいかがでしょうか。

【片山委員】  代表的な公立の文化施設の条例を,参考資料3に引用してきていただいて,それをベースに資料3の方の劇場・音楽堂で何が行われているかということを整理いただいたと思うのですけれども,やはり重要なのは,この舞台芸術をやるということは手段であって,目的として実は条例を見ると,石川県立音楽堂条例でも「…音楽,邦楽,演劇その他の舞台芸術を振興し,県民文化の向上を図るというため…」と書いてあるのです。静岡のSPACに関する条例でも「…舞台芸術の振興と県民文化の向上に寄与することを目的として…」と書かれております。ただ,その県民文化の向上とは何かというのがどこかに答えが書いてあるような簡単な話ではなくて,まさにそこが文化振興の公共性のところだと思うのです。やはり公的な文化振興,地域振興のミッションのためにこれをやるのだ,ということが担保されないといけません。単に公演をやっていればいいということではないということを,少しこの検討会の中でも定義しておいた方が良いのではないかと思います。要は単にお金儲(もう)けのために儲(もう)けの出やすい公演をやるということでも良いのだという話になってしまうと,たとえ,そこで演劇や音楽が行われていても,多分,それえは公立の文化施設のミッションとは違ってくるということだと思います。高度な舞台芸術をやるというのも,あくまでもその地域の何らかの発展のためにやるのだという公的な目的が必要だということをここに書き込んでおくことで,それがより明確になるのではないかなと思います。
 ただその目的が何か,ということは,どこかに模範解答がある話ではないということも重要です。しかし,そこをやはり入れておく必要があるのかなと思ったところです。

【田村座長】  資料をずっと整理していただいておりますんですけれど,すみません,時間が押してまいりましたので,先ほど太下委員からもお話のありました,人材配置や,人材育成の点についてもし御意見はおありですか。資料3の3ページに片山先生の御提言なさった,人材は以下のとおり分類できないかというのがございますけれどいかがでしょうか。

【片山委員】 よろしいでしょうか。私ばかりしゃべってしまって恐縮なのですが,人材のことについて,在り方についても少し私見を述べさせていただければと思います。今日の資料の検討事項の整理の中では,人材育成が重要で,研修等を充実するということが書かれてはいるのですけれども,確かに人材育成については研修とか学校教育などというのも重要ではありますが,やはり現場で経験を積んだ人をどれだけ厚みを持たせられるかということが重要であって,なかなかこの文化庁の検討会では難しいかもしれませんけれども,結局はポスト,雇用機会をつくっていく中で人を育てていくということなのだろうと思っております。ただそれをいきなり雇いなさいと書くのは法律としても難しいということであれば,現場における研修機会を充実させるような支援の充実というのが現実的なのではないかと思っております。
 参考資料4の中でも「[2]劇場・音楽堂スタッフ人材育成交流事業」というのが既に行われているところですけれども,自分の職場を離れて,より高度な活動をしているような施設などで最低1年から2年くらい研修するという機会を得られることで人材育成と,人脈というかネットワークができてくるということなども期待できるだろうと思います。
 ただそういったところに人を送り出す余裕のある施設というのも非常に限られているとと思いますし,近年は,指定管理者制度がとられる中で,例えば長くても7年とかいった期間で管理運営を担っている民間の財団や企業にしても,人材を育てるために短い指定期間のうちの2年間を研修のために職員を送り出すというのはなかなか人的投資として難しい面というのがあるかと思います。そういう人的投資については国全体,社会全体としてやっていくという考え方があってもいいのではないかと思います。ですからその2年間研修に行っている間のフェローシップといいますか,ある程度の生活費は奨学金のような形で持ってあげて,その分浮いた人件費で,送り出した方の組織としては,別の代替人材を雇用することができれば,その人にまた新たな雇用の機会を与えるということにもなるかと思います。研修受講料をただにするから手弁当で来なさいと言うだけでは,今の指定管理者制度が中心となる環境の中では人的投資がなかなか期待しにくいところがあります。研修のコスト,特に人件費分といいますか,生活費とか,そういったところを支援するといったことは,国全体の施策の中で考えられるのではないかなと思う次第です。

【田村座長】 ありがとうございます。
 根木先生,文化政策を大学でお教えいただいている立場で,アートマネジメント人材,文化施設に携わる専門家のいわゆるカリキュラムというか,最低限のガイドラインというか,そういうことが現在の大学の教育の中できちんと整備されているのでしょうか。現在多分大学では100校以上で教えられていると思います。

【根木委員】  今回の法律と関係するかどうかわかりませんが,以前に文化庁から委託を受けてアートマネジメント人材の育成に関する調査研究を行い,その報告書の中で人材育成の方向性を提案させていただきました。
例えば高等教育機関との連携では,劇場・音楽堂等と協同したインターンシップの受入れ制度や,劇場・ホールの職員が大学に行って講義を受け持つこと,あるいは学生の鑑賞機会の増加のためのエデュケーションチケットの創設といったことがあり得るのではないか。また,職員の方々の大学でのリカレント教育ということもあってしかるべきではないか。更に,現職者教育を拡大する意味で,同業種組織間,例えば大規模ホールと小規模ホールの間や,異業種間,例えばホールと設置の自治体との間での派遣研修ということがあるのではないか。またそれ以外の,例えば芸団協や公文協といった第三者機関との連携を図るということもあるのではないか。更に,共通テキストの開発も必要になってくるのではないか。また,現場経験に応じた研修の仕組み,すなわち初任者,3年次,5年次,10次などの経験に応じた仕組みも考える必要があるのではないか。また,先に人材バンクの話が出ていましたが,全体の人事の流れをどこかにプールして,うまくそれを流していくために,そういう人材バンクの必要性もあるのではないか,などなどのことを提案させていただきました。
これらのことは,一朝一夕にできる筋合いのものではありませんし,今回の法律の中にそういう専門研修的なことをどこまで入れられるのかということもあろうかと思います。劇場・音楽堂を拠点とする舞台芸術の振興といった振興法的な形にするとしても,人材育成は大きな話だろうと思います。そういう意味で,片山委員のおっしゃったことはよくわかしますが,どこまで一体取り組めるかということもあろうかと思います。また,キャリアアップの制度ないしシステムをどうするかという問題もあります。資格制度とも結びついてきますし,資格といわず専門性の認証制度といった対応の仕方もあろうかと思います。そういったことまで一切合財を考えていきますと,恐らくこの検討会の直接の目的からかなり逸脱することにもなり,軽く触れる程度にとどめておいた方が適当ではないかという感じがしております。

【田村座長】  ということは,先ほど共通テキストの作成について触れられましたが,共通テキストというのはまだ存在しないということでしょうか。

【根木委員】  共通テキストは,残念ながらまだありません。そういったものをどこかで開発をする必要があるという感じはしますが,研修のレベルによって随分違ってきますし,分野によってもまた違ってきます。音楽なら音楽だけ取り出してみればある程度開発可能かと思いますけれども,舞台芸術全般ということになると,またこれが非常に難しい感じがいたします。

【田村座長】  ただ,分野によって違うということをよく言われますのですけれど,専門的知識としては,分野は違うと思うんでございますけれど,マネジメントという施設というか活動の人材という意味では,私はある意味では共通するものだという気もします。

【根木委員】  小規模の現場では,恐らく若手の人は音楽担当もやれば,演劇担当をやらざるを得ないでしょうが,大規模な施設では,分野により分かれているのではないかと思います。ただ,次第に長ずるに及んで管理職,さらには全般的なマネジメントをやらなければならない立場になるものと思います。その意味で,年齢や分野に応じて,職務の内容は異なってくるのではないでしょうか。
 大学卒の時点について言いますと,一般大学の場合と,私どものような音楽大学の場合とは,同じアートマネジメントコースといっても,トレーニングの内容・質が違うと思います。私どもの大学では,在学中を通じ,音楽系の企画制作を中心に,かなり集中してやらせるようにしています。また,そこから徐々に顧客管理であるとか,ファンドレイジングであるとか,地域連携であるとか,そういう周辺事項も身につけさせるようにしています。ただ,大学4年では大したことはできないわけですので,やはり年輪を重ねるにつれて成長していくことになろうとは思います。

【田村座長】  図書館に司書っていらっしゃって,あれは国家資格ですね。でもよく言われますのは,司書であっても経験を10年は積まないと司書として育成はできないということは言われていますけれど,それはある意味ではどの分野も同じかなという気はします。

【片山委員】  よろしいですか。
 今カリキュラムの話が出ましたのでちょっと補足させていただければと思うんですが,国際的といっても英米中心とした英語圏の議論ですが,アートマネジメント分野のカリキュラムについては協会組織があって,そこがスタンダードを示すということをやってきております。ただ基本的には大学院のレベルでそもそもこういう分野ってスタートしていますので,そういう中でつくられてきていまして,組織論的なものとか,ファイナンスやアカウンティングに関するもの,マーケティングに関するもの,それからファンドレイジングに関するもの,それからアートのプロダクションに関するものとか,幾つか領域があって,こういうものを満たしなさいということは示しておりまして,昨年,私どものところの大学院がそこのメンバーになったところなのですが,MBAのカリキュラムのスタンダードに近いような形で考えられているかなと思います。アメリカ等の大学院の場合は既に現場にいる人,つまり劇場とか美術館で働いている人が,自分のキャリアアップのために在職のまま入ってきて入学してくることが中心ですから,芸術のことはすでい現場でよく知っていて,大学院ではその人にプロフェッショナルなマネジメントの能力を身につけさせるということがカリキュラムが中心になっています。
 ただ,その協会組織でも学部レベルでは,どういう教育をするのかというのはかなり問題になっていまして,そちらも一応スタンダードはつくられています。実は今,根木先生がいらっしゃる昭和音楽大学さんが日本で一番最初にメンバーになっておられ,つい最近私どもの学部の方もメンバーになったところなのですが,AAAE,アソシエーション・オブ・アーツ・アドミニストレーション・エデュケーターズという組織です。一応のスタンダードはつくられているものの,まだ試行錯誤の段階と言っていいのではないかなとは思います。
 やっぱり高校を出たばかりの人たちにマネジメントを教えても,それは経営学部を出た人がすぐに経営者になれないのと同じでして,いきなり文化施設の運営ができるわけではないですので,まずは,最初に職を得るためにどういうことを身につけさせておくのが良いのか,というようなことを試行錯誤しているのが実態なのではないかと思います。

【田村座長】  恐れ入ります,余り時間がなくなってまいりましたんですけれども,指定管理者制度についてというのが,切りかえ時期に差しかかっているところが非常に多いと思いますのですが,文化施設が一番抱える,根拠法とどう絡むかということはございます。図書館においてすら,片山総務大臣が図書館は指定管理者制度になじまないという発言をこないだなさっていたのをどこかで拝見いたしました。
 あと,まとめていただいた国の支援の在り方とか,他(ほか)の部分についても御意見,余り時間がございませんが,特に御希望の発言がありましたらよろしくお願いいたします。

【根木委員】  指定管理者制度については,功罪両面があろうかと思います。ただ,全くのマイナス面ばかりではなく,また少なくとも制度として定着しつつありますので,これを前提に考えざるを得ないのではないかと思います。
一番のマイナス面は,人を雇う余裕がなくなったということです。指定管理者制度が導入されてから,雇用を抑制する傾向が非常に強く,私どもの卒業生もなかなか行けません。そういったこともあって,将来的には人材バンクといったものもあってよいのではないかと思いますが,それはかなり先のことになろうと思います。
 指定管理者の今一つの課題に,応募者の選考の仕方があります。これが,経済性や効率性ばかりを念頭に置いて,つまりどの程度経費削減をしたかによって評価する傾向が強く,特に,経費削減について100点満点のうちの20点とか30点を配分するといったようなところもあり,ナンセンスとしか言いようがありません。国として直接これについてどうこうということはなかなか難しいでしょうが,選考の審査基準などを案として示すことはあり得るのではないかと思います。ただ,これは法律事項とは別の話だろうと思います。
 また,チェックポイントもある程度明確化し,マニュアル的なものとして全国に示すこともあっていいのではないかと思います。

【田村座長】  まとめていただいた資料2のところに「地方公共団体において…施設の役割が不明確である」ということがございますが,それをはっきり提示すべきということでございますね。

【三好委員】  私は文化政策をそういうアートマネジメントとかいった観点ではなくて,むしろ地域政策という観点から取り扱っているものですから,そういう見方で言うと,今の座長御指摘の役割のところもそうなんですが,特にいわゆる地方の公立文化施設について見ると,貸し館も含めて本当の意味での,どこまでとるかというのは根木先生の御議論がございますけれど,実際に本当の意味での文化芸術活動として使われているのがどの程度あるのかという問題がございます。かつそこに例えば人材の話をしたときに,もちろんかかわらなければいけない部分,時ももちろんあるのでしょうけれども,それが例えば年間何日あるかと。稼働率という数字は単純に出ていますけれども,結局そこの人材がなかなかそこでうまく育っていかない,あるいは人が減らされていく,指定管理になるとどこに行くかわからないという問題があります。どっちが先かの議論ももちろんあるんですけれども,やっぱり地方での現状からすると,なかなか文化芸術ということに特化し切れないというのがかなり大きいと思うんです。だからそこをどう変えていけるのかということをやっぱりこの中に盛り込んでいかないと,現状の公立文化施設のままでそこに人材とか指定管理の問題を議論していっても,それはなかなか先が見えない話になってしまうのではないかと思います。ですから少なくともさっきの最初の議論に戻ると,言葉はともかくとしてそこをちゃんと文化芸術,あるいは舞台芸術の場としてもっとちゃんと有効活用すると打ち出す必要があると思います。私はあえて活用という言葉を使っていますけれども,有効活用するんだということをはっきり打ち出していかないと,大都市ではいいかもしれませんが,地方の公立文化施設ではなかなか乗っていけないんじゃないかと思います。たとえそういうガイドラインを出すにせよ,資格制度をもし作るにせよ,そこに乗っていけないところの方がたくさん出てきちゃうのではないか,要するにたくさん漏れてしまうのではないかということの方がむしろ懸念されるというのが私の実感です。
 だから理想論としてはもちろんあった方がいいんだけれども,やっぱりそれだけでは現実に対応しろといってもなかなか難しいのではないかという気がします。

【田村座長】  施設側としてというか,地方公共団体側,設置者側としてはそういった問題があるということですね。

【三好委員】  施設側,設置者側としてですね。

【根木委員】  地方公共団体の責務も関(かか)わってくると思われます。自治体の側(がわ)には,さっき三好委員がおっしゃった一般的な責務として,地域文化の振興を図るということは多分あるだろうと思います。しかし,地域舞台芸術の振興を図ることまで一般的な責務として負っているかどうかは,一概には言えないだろうと思います。
 ただ,一定の舞台機構を持った劇場・音楽堂を作る行為があった後は,当然ながら,そういった劇場・音楽堂を拠点として地域舞台芸術の振興を図るということが暗黙の前提としてあるのではなかろうか。そうすると,そのような劇場・音楽堂を作った限りにおいて,地方公共団体として,地域舞台芸術の振興を図る責務をその時点で負ったものとみなしていいのではないかと思われます。
 一方,国の場合はそれが元々あると考えてよろしいのではないか。
また,私立の場合ですと,これはなかなか難しい話でしょうが,公序良俗に反するようなものをやる場合や,極端な商業主義に偏したものをやる場合は別として,一応平均的な舞台芸術を一般の国民に提供するという場合は,舞台芸術そのものは文化芸術の一部であり,文化芸術そのものは文化芸術振興基本法を基に策定をされた基本方針で社会的財産であると明言されていることから,ある程度公益性というものを認めてよろしいのではないか。となると,私立の劇場・音楽堂に関しても,そういった公演活動を提供することに関して一定の責務を負っているというふうに,一般論として考えてもいいのではなかろうか。 公私を通じて,その意味で,ある程度の役割,責務というものを法律事項として中に盛り込むことが適当ではないかという感じがします。

【田村座長】  他(ほか)にいかがでしょう。時間も残り少なくなってまいりましたので,このまとめていただいた中で何かこれだけはという御意見がおありでしたら是非どうぞ。

【太下委員】 ちょっと細かな点になってしまいますけれども,資料3の5.に「劇場・音楽堂等と文化芸術団体との連携」という項目が書かれていて,確かにここに書かれているとおりもっと連携強化を進めていくのがいいのではないかと思います。ただし,例えば「…フランチャイズの仕組みが考えられるが…」と書かれていますけれども,恐らくこれはオーケストラでのケースを念頭に置かれて書かれているのかなと思うのです。オーケストラの場合は,日本でも団体が非常に組織として成熟しているという背景がありますし,プロの楽団の数が適度に少ないという条件もあって,うまく施設側とマッチングした,こういうフランチャイズの仕組みを考えやすいのかと思いますけれども,例えばいわゆる演劇等の分野で考えた場合,フランチャイズとはなかなか一概にいかない部分もあるのではないかと思います。文化芸術団体と劇場・音楽堂等との連携を考えた場合,いきなりフランチャイズということではなく,例えば貸し館も含めた劇場側のプロデュース機能の強化の方がその手前にもっと来る話ではないかという気もいたします。また,演劇分野においては,団体の数が多く,いわゆるマネジメント的な部分でオーケストラに比べると成熟していないということを考えると,そういう小さな個々の劇団のショーケース的なものをパッケージとして地方も含めて,どのように見せていくのかという具体的な政策の方が,現時点ではより適切ではないかと考えます。そういったことも含めた形で,文化芸術団体と施設側が連携していくような方策をうまく策定できるといいかと思います。

【田村座長】  他(ほか)にございますか。

【三好委員】  国の支援,最後の国の支援の在り方のところに入るのかどうか分かりませんが,例えば学校教育の場において,そういう文化芸術に関してやっぱりもう少しきちっと,特に子供たちに対して劇場側がいろいろやることはもちろんあるんでしょうけれども,やっぱりむしろ学校教育という立場において,文化芸術をきちっと教えるというか,教育の一環としてそういうことをちゃんと位置づけを明確にして,それを劇場というのか文化施設側と一緒にやっていくという,そういうことをはっきりやっぱり出していくべきではないかと思います。今でもやっておられるとは思うんですが。
 だからそういうことをやるためにどうすればいいのかというのを,例えば,文化庁さんの立場としてはむしろ本省との関係もあるのかもしれませんが,学校教育の場においてやっぱりそういうことがきちんとできるようなことを国として明確にしておくというのは,むしろ施設側からすれば取組がしやすくなるのではないかと思いますので,是非入れていただけるといいのではないかと思います。

【田村座長】  ありがとう。他(ほか)にございますでしょうか。

【根木委員】  人材の分類について,企画担当の人材,マーケティング担当の人材,ファンドレイジング担当の人材という分け方もあろうとは思いますが,企画制作機能の延長線上に,広報宣伝とか,顧客管理とか,そういったものも当然付随してくるわけです。マーケティングも当然その中にもっと入ってくるはずです。また,大規模館,小規模館,それからその人の年齢によっても,随分違ってくるため,むしろこれらは機能としてとらえる方が,いかようにも組み合わせられるという意味で,ベターではないかという感じがします。
 また,ファンドレイジングを担当する人材の前段の説明は,アカウンタビリティーのことと思われます。アカウンタビリティーは,ファンドレイジングとも関連してきますが,むしろ地域連携と絡んでくるのではないでしょうか。そういったことで,もう少し細かく分類した方がよいのではないか。また,いずれにしても,それぞれの人材というよりは,機能の類型としてとらえた方が適当ではないかという感じがします。

【田村座長】  ありがとうございます。お時間になりましたので最後1つだけ,申し訳ございませんが私が申し上げるべきではないかもしれないのですが,資料3の4ページの一番上に,安全管理者とか衛生管理者とか危険物に関する記載がございますけれど,これとはまたやはり別に舞台技術の向上のために,ひいてはそれが舞台芸術そのものの向上を図るという意味も含めて,やはり舞台芸術の専門家というものが配置されることが,最終的には舞台芸術の振興のため,向上のためにも必要であるという視点は必要かなと思います。単なる安全のために技術が理解できているという意味だけではないというところも必要かなとちょっと思いましたので言わせていただきました。
 恐れ入りますが,全般にわたってというところまでまいりませんでしたけれども,ありがとうございました。

【山﨑芸術文化課長】  すみません,念のため1つ確認をしておきたいのですが,最初の資料1で劇場・音楽堂等を拠点とした舞台芸術の振興という方向で検討すべきであるという部分については,これで確認をしていただくということでよろしいですね。
 もう一度説明しますと,ここの趣旨は,劇場・音楽堂等の制度的な在り方を検討する際に,単なるハードとしての施設面のみに注目した法的基盤の整備ということではなくて,劇場・音楽堂等が何をするところなのかという部分に焦点を当てて検討をする必要があるという意味合いでこの文章は書いているわけです。決してこれまでの議論の流れを方向転換するとか,あるいは更に何かターゲットを絞るということに意味があるわけではないので,そこは御理解いただきたいのですが,いかがでしょう。

【田村座長】  多分さっき三好先生と片山先生がおっしゃったように,どこに目的があるのかということだと思うんです。施設をどう使うかという意味での制度的な在り方ということとおっしゃったと理解しております。

【山﨑芸術文化課長】  よろしいですか。

【田村座長】  はい。あくまでも文化芸術振興基本法の理念に基づいたということですよね。

【山﨑芸術文化課長】  もちろんそうです。文化芸術振興基本法というのは,文化芸術の行政を進めていく上での大前提ですので,これを基本とするというのは変わりません。それを大前提とした上で,この検討を進めるということでございます。

【田村座長】  そうですね。国民の文化権というところだと思うのでございます。そのための個別法,それを振興するための個別法であるのが望ましいというふうにおっしゃったのかなと理解しております。
 よろしゅうございますか。ありがとうございました。長時間にわたりまして検討事項について御意見を頂きました。本日頂いた御意見を改めて事務局において整理していただければと。おっしゃらなかった部分については事務局の方にどうぞ御提案くださいませ。また,今後の予定についてでございますけれど,一度文化施設の主な設置者である地方公共団体の担当部局の意見も踏まえていく必要があると思います。それから,公立文化施設協会が先日,劇場法案と言われているものに関する取りまとめをしましたということですので,公文協からもヒアリングをする機会を設けたいと思っております。こうした機会について,何らかの形で対応できるよう事務局と相談しながら進めてまいりたいと思いますが,委員の皆様いかがでいらっしゃいましょうか。地方公共団体と公共文化施設の意見と。ありがとうございました。それでは事務局と調節していきたいと思っております。では,今後の検討会の日程について,事務局より御連絡いただきます。

【大川芸術文化課課長補佐】  失礼します。今後の日程につきましては委員の皆様の調整をしておりますので,またおって御連絡させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。以上でございます。

【田村座長】  それでは本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。

ページの先頭に移動