議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第9回)

平成23年10月31日

【大川芸術文化課課長補佐】  お時間になりましたので,会議を始めさせていただきたいと思います。

<配付資料の確認>

【田村座長】  ありがとうございました。 皆様おそろいでいらっしゃいましょうか。
 それではただいまより,第9回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催したいと思います。委員の皆様におかれましては,御多忙のところ御出席いただき,ありがとうございます。
 さて,本検討会においては,前回までそれぞれの論点について様々な御意見を伺ってまいりました。本日は,前回までに出されました各委員の御意見,それから地方公共団体及び各種文化芸術団体からのヒアリングを踏まえまして,事務局において報告書のたたき台を作成してもらいました。この内容について検討したいと思っております。
 また今回,先ほど資料の御紹介もありましたが,事務局において諸外国の劇場・音楽堂等の現状を調査したということでございますので,これについて御説明してもらいたいと思います。
 その後,諸外国の劇場・音楽堂の現状も踏まえながら,報告書のたたき台について議論を深めたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは事務局から,まず諸外国の劇場・音楽堂等にかかわる現状についてお願いいたします。

<資料1の説明>

【田村座長】  どうもありがとうございました。
 諸外国と言いましても様々な形態がございまして,それぞれの国の歴史や文化に対する態度によって,取組は異なっているのではないかと思います。また,今回はっきりしましたように,日本は欧米とも背景が大きく異なるという状況にあると思うのです。こうした我が国における現状を踏まえた上で,劇場・音楽堂等いわゆる公立文化施設の,公共文化施設でしょうか,機能をより一層生かすためにはどのようにしたらよいかを考えなくてはならないのではないかと思います。
 今御説明いただきました諸外国における劇場・音楽堂の調査に対して何か御意見がございましたら,質問なども含めましてございましたら,先生方,よろしくお願いいたします。
 はい,片山先生。

【片山委員】  諸外国の状況を比較するという意味では,大変参考になる情報だったかと思うのですが,今回お調べいただいたところから抜けている国としてドイツがあります。ドイツの場合は,御承知のとおり非常に分権的なシステムの中で,劇場・音楽堂と言いますか,文化施設も基本的には州政府ないし地方政府が設置していて,かつ,最近はそれらの民営化が急速に進展している状態です。例えばベルリンのオペラハウスなども財団化されましたし,放送局のオーケストラが有限会社化されるといったことが進んでいます。地方自治体が施設を設置し,かつプライバダイゼーションが進んでいるという意味では,日本にとってはある意味一番参考にしやすい面もあったのかなとは思います。その辺を今後,少し調べていくような可能性を視野に入れてはどうかと思いました。
ただ,ドイツの場合は州によって制度が違いますので,それらを全部調べるとなるとかなり難しいですし,旧東ドイツ側を調べて意味があるかという話もあるかもしれません。したがって,幾つかピックアップしてということにはなるかと思うのですが,国レベルではなくて地方レベルが持っていたものをどう規定し,どう運営していくのかということについて,多少ドイツのことも視野に入れてはどうかと思いました。

【田村座長】  ほかの先生方はいかがでいらっしゃいますでしょうか。
 今,片山先生がおっしゃったように,ドイツは民営化の傾向にあって,というのは,国が70%保障していたものを50%になったという記憶がございます。

【片山委員】  国ではなくて,州ないし,地方ですね。連邦はほとんどお金を出していないと言われています。

【田村座長】  そうですね。ただ,そうなったときに,いわゆる民間というか,企業がものすごい勢いで寄附する土壌があるというのは,すごく日本と違うかなと思います。そのときはどんどん40%ずつ増えていると,ちょっと今はわかりませんけれども,そういうことを聞いたことはございます。

【大川芸術文化課課長補佐】  皆さんのお知恵も拝借しながら,是非いろいろ教えていただければと思います。

【田村座長】  はい。ということで,参考にさせていただいて,では,次の議題に移ってよろしゅうございますか。この各国のものを念頭に置きながら,次の議題に移りたいと思います。
 冒頭にも申し上げましたとおり,前回までに出されました各委員の御意見,地方公共団体及び各種文化・芸術団体からのヒアリングを踏まえまして,事務局において報告書のたたき台を作成していただきました。本日は,この内容について検討したいと思います。
 それでは,まず,この報告書を事務局から御説明をお願いいたします。

<資料2の説明>

【田村座長】  ありがとうございました。今まで御議論いただいたことをまとめていただきました。それでは,各項目,御意見がございましたら,頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
 これは中間まとめであって,検討会でこういうことが要望されたという報告書として出るということでございますか。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。中間的なまとめとして整理をさせていただいて,この検討会として今までのところこういう事項が考えられるのではないかという形で整理させていただければと思います。

【田村座長】  いかがでいらっしゃいますか。太下先生。

【太下委員】  2点お話しさせていただきたいと思います。1点目は「[8]劇場,音楽堂等のより良い運用に向けた指針の作成」ということで,文化庁さんとしての指針を作成される方向性をお示しいただいたことは,非常にすばらしいことではないかというふうに思っております。と言いますのは,振り返りますと,そもそもこの検討会といいますものが,もともと3次基本方針の中で,劇場・音楽堂等の法的基盤の整備について早急に具体的な検討を進めると,こう決定されたことを受けて始まっているわけですけれども,この法的基盤というものはある意味,目的と手段で言いますと手段のようなものではないかなというふうに認識しております。この3次基本方針の中でも法的基盤を進める目的として振り返って再度お伝えしますと,現在法的基盤のない劇場・音楽堂等がすぐれた文化芸術の創造,発信などに係る機能を十分に発揮できるようにするためという目的がきちんと明記されておりますので,やはりこの点を忘れてはいけないと思います。
 その意味では,法的基盤の整備という答申がなされたことに対しての答えだけではなく,プラスして,こういった指針の形で実効性のあることを発信していくことと,さらには,次にお伝えしたいのですけれども,文化庁さんとしてこの劇場・音楽堂等にかかわる舞台芸術の創造・発信に関して今後どういうふうに取り組んでいかれるのかということ,ここをきちんと提言していくべきではないかと思っております。
 2点目は,国として今後何に力を入れていくべきかという点では,これも既にこの中に書かれているので,このとおりかと思いますけれども,やはり人づくりというところが非常に大事になってくるのだろうと思います。私が今申し上げようとしている人づくりというのは2つの面がありまして,1つ目は,専門人材の育成ということです。これは,御用意いただいた資料で言いますと,4.[5]に「劇場,音楽堂等の機能を十分に発揮するための人材育成」という形できちんと明記されているかと思います。
 私が申したい人づくりという内容はもう1つありまして,ここで書かれているものは供給サイドの側(がわ)の人材育成になろうかと思います。もちろんこれも従来は各劇場,各団体等で個別に取り組まれてきたものを,きちんと国として手当しようということですので,是非とも必要かと思いますけれども,もう一方で,需要サイドの人づくりが非常に重要だと考えています。「[7]鑑賞者拡大のための取組」にも書かれていますが,鑑賞者の拡大というものは非常にファンダメンタルな部分ですけれども,やはりこの検討会のヒアリング等でも観客の減少ということは非常に大きな課題として挙げられておりまして,これは,若年人口等が減少していく中で,どうしても仕方のない部分はあるのですが,一方で,これは仕方がない,構造的なことなんだよと言って看過していては,文化団体等の活動の場がだんだん悪循環で弱くなってきてしまうということもありますので,ここは是非国として力を入れて,改めての観客創造,鑑賞者創造というものをやっていかれる必要があるのではないかと考えます。
 その意味で,いわゆるグッドプラクティスづくりを全国的に実施されるような形での国としての鑑賞者育成というものに,是非取り組んでいただければというふうに思います。
 以上,2点です。

【田村座長】  ありがとうございました。  ほかに先生方はいかがでいらっしゃいましょうか。はい,三好先生。

【三好委員】  2点ほど申し上げたいのですが,まず,中間まとめということで非常に今までのところをよく整理していただいたので,改めて問題点がかなりはっきりしてきたかなというふうに思います。
 まず1点目としては,現状という,ここがまさにこの議論の出発点でもあり,何を考えるべきかの到達点,目標地点であると思いますけれども,特に最初の1ページの一番上の項目で目的と設備と職員という3つが劇場・音楽堂の基本的な構成要素であると整理して,なおかつそれが「想定される」と記載されています。だから「本来そうであるべきなのだろうけれども」というあたりからが問題の発端だというのが非常によくわかって,いい言葉ではないかというふうに思いました。
 それともう1つ,2つ目の項目では,そういう機能に着目しつつ,劇場・音楽堂という機能を発揮すべき部分と,それからそれ以外の部分というのをあわせ持ったものがいわゆる文化施設だということがはっきりしてくるのではないかというふうに思います。そこが出発点として非常によく整理されてきたかなというふうに思います。
 次に,「4.法的基盤の内容として考えられる事項」において,国及び地方公共団体の責務を記載し,もちろん設置者の判断が中心とはなるのだけれども,国及び地方公共団体の役割を更に明確にしていこうという,ここの考え方は非常にいいのではないかというふうに思います。
 そしてそういう前提の上で,私としては,今回の議論の到達点として,是非強調していただきたいなと思うことが幾つかあります。1つは国が果たすべき機能について,まさに国としては国立劇場・新国立劇場等の機能を生かすとともに,そこを使いつつ,他(ほか)の文化施設,そういう劇場型の機能を持った施設に対しても,内容の充実,あるいは活性化に寄与するという内容をもう1歩,2歩踏み込んで記載していただいてもいいのかなと思います。つまり,具体的に言うと,公立文化施設あるいは民間事業者の設置者の判断というところと,この国の責務というところの関係を,もう少し明確にしていただいてもいいのではないか。もっと言うならば,要するに国の果たすべき責務というのは,そういう公立文化施設あるいは民間の施設に関しても一定程度国として,やはり文化芸術の振興を図るというための責務があるのではないかという内容を,ある程度もう少し踏み込んでいただいた方がいいのではないかというのが1点あります。
 それから2点目としては,地方公共団体の責務についてはこんなものかなという気もしますが,劇場・音楽堂の機能を十分生かすということをもっと明確にしていただいた方がいいのではないかと思います。
 そして,これはちょっと細かい話なのですが,「1.劇場,音楽堂に係る現状と課題」のうち,課題について,「文化施設の大半は・・・予算が減少している中」と書かれていて,何かいかにも予算のことが主たる原因であるかのごとく読めてしまいます。しかし,これは必ずしもそうではなくて,たまたま今予算は減っているかもしれませんが,もともとの問題は予算の減少にあるわけではないので,ここの表現はもう少し考えていただいた方がいいかなと思います。そして,それと相矛盾するかのようなのですが,一番最後にある国の財政上の措置というところについては,これは,せっかく書くのであれば,それは国の財政上の措置はもちろん必要なことなので,もう少し書いた方がいいかなと思います。それは,「4.法的基盤の内容として考えられる事項」に記載されている国の責務を明確にしていただきたいという意味です。
 それから,もう1点申し上げたいのは,「4.の[8]劇場,音楽堂等のより良い運用に向けた指針の作成」にある,「指針」という言い方です。指針の作成をせっかく国の責務というのを明確にするのであれば,例えば国が指針を示すということは,それはそれであってもいいかなというふうに思っています。そのときに,今はこの資料に書かれている内容は人材確保と,人材に係る資格と,指定管理者という,いわば劇場側,施設側の話が主になっていますが,やはり指針という場合には,それに対する国の方の指針が必要ではないか。これはもしかすると第3次基本方針にもう既に記載されているかもしれませんが,もし第3次基本方針の中に記載されているとしても,それをもう1度ここでも記載出していただくことが必要ではないか。つまり,同じ指針の中に,国に向けているものと,公立文化施設や民間の文化施設に対してのものと,両方記載することが必要なのではないかと思います。

【田村座長】  ありがとうございました。
 一応,皆様の御意見をお伺いしたいと思います。はい,片山先生。

【片山委員】 「2.基本的考え方」の下から2つ目の項目で「今回の報告のねらいは,文化の振興を目的として設置され」という記載がありますが,実態を見ますと,公立の文化施設の場合は,設置目的には必ずしもそういうことは書いていなくても,集会施設としてつくられたものであっても,実態としては芸術や文化の活動も行われているという施設もあるのです。設置目的が文化振興だと設定したものだけをこの法整備の対象にしていくという区分けをしていくという考え方でよろしいのかということをお伺いしたいと思います。そしてもしそうだとすれば,今,公立の施設は建てかえとか改装の時期を迎えていて,設置条例を見直している自治体が非常に多い状態です。私自身も1つかかわっているのですが,当初は公会堂として建てられて集会施設だったものが,これから文化の目的でももっと使おうということで,目的の書きかえをこの自治体はすることになると思うのです。このように自治体が設置目的をこういうふうに文化の振興だということで書きかえることで,新しくできる法整備の対象になってくるという理解してよいかということを確認したいと思います。設置目的をどう設定するかということは,指定管理者を選ぶ問題と非常に大きく関(かか)わってくると思うのです。平成15年の地方自治法の改正後,指定管理者制度への移行が3年以内ということで,ものすごく急ぎ足で進んだわけですけれども,そのときに指定管理者に何をゆだねるのかということや,設置目的などが非常にあいまいであったために,経費節減が最重要目的であるかのような形で運用されてしまったという実態もありました。
 そういう実態を踏まえると,この設置目的のところをきちんと書き込むことで,この法律の対象にもなりますし,その設置目的をきちんと果たす指定管理者を選ぶべきであるというふうに書き込むことで,公の施設がたくさんある中で,どれがこの法整備の対象になるかということを明確にすることができるのかなと思った次第です。
「(3)指定管理者の運用」のうち,指定管理者の選定に関する記述(ⅰ )に,「コスト削減といった財政上の効率性だけを考慮せず・・・質の高い事業内容を提供できる指定管理者を選定するよう意識を更に高めること」とあるのですが,ここにやはり設置目的という言葉を明確に書き込んでおいた方がいいのではないかと思いました。以上です。

【田村座長】  ありがとうございました。根木先生,今回これをお読みいただいて,何かございますか。

【根木委員】  私も,よくまとめておられると思いますが,先ほど三好委員が言われたように,国の責務にもう少し踏み込むことができるのであれば,やはりいま少し書いておいた方がいいのではなかろうかという感じがします。
 また,文化の振興を目的とするということは,最低限きちんと押さえておくべきではないかと思います。
 いま一つ,指針の法律上の位置づけは,どのような形になりますか。文化庁がおつくりになるのでしょうが,法律とは関係なく指針を作成して,一般に周知させるといったことになるのでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  今先生がおっしゃったように,いろいろな議論の後,単独で政府として出すということも1つの考えとしては考えられるでしょうし,何か法律に基づいたものになるということも考えられると思います。今の段階でどうなるというのは,ちょっと明言できないという状況だと思います。

【根木委員】  いずれにしても,指針という形でこのようなものを示してはどうかということなのですね。

【田村座長】  皆様からおまとめいただいたものについて一応御意見を頂きましたのですが,先ほど片山先生がおっしゃった,地方自治体も設置目的をきちんと持っているところということを書いていただくということは,もしかしたらすごく,設置条例があるのかないのか,結構アバウトな内容の設置条例である場合もありますので,そのことはどこかに書いていただいた方が,片山先生がおっしゃるようにいいとは思います。

【大川芸術文化課課長補佐】  片山委員から今御指摘いただいた点について,まず「2.基本的考え方」において,「・・・文化の振興を目的として・・・」と限定させていただいたのは,例えば地方公共団体で考えた場合に,設置者である地方公共団体自身が文化のための施設と考えていないものについてなかなか国が文化活動をしなさいというのは,ちょっと越権に当たるのではないかというふうに考えております。たまたまその活動の仕方として文化活動に使われたという分においてはいいと思うのですが,そこまで旗が振り切れるかという点について,ちょっと懸念があると思います。
 片山委員がおっしゃっていただきましたように,今,地方自治体で,施設の在り方を見直しておられて,文化の振興を目的とする施設となり,何らかの対応がとられるということになれば誘導できるのではないかという点については,主たる判断者は地方公共団体ですので,副次的になるかもしれませんが,そういうふうになっていただければ有り難いなというふうには考えております。
 以上でございます。

【田村座長】  それと,皆様がおっしゃった「国として」という御意見が何人かの方から出ておりますけれども,まず,こちらの皆様の御希望もあると思うのですが,今回文化庁としては国として何を一番目的とされるというか,お心づもりはおありでございましょう。

【大川芸術文化課課長補佐】  その点につきましては,是非会議の方でも皆さんの意見をまず伺いたいというふうに思っております。
 これのベースとなることといたしまして,今「国として」と座長がおっしゃっていただきましたが,国としてどういう役割や責務が劇場・音楽堂等に対してあるのかということについて,御意見を頂きながら我々も考えていきたいというふうに思っておりますので,是非御意見をいただければというふうに思います。

【田村座長】  三好委員,どうぞ。

【三好委員】  私も先ほど国としてもう少し踏み込んだ方がいいのではないかと申し上げたのですが,提案として1つ考えるのならば,国の責務に関して,「…国立劇場及び新国立劇場等……」とありますが,「等」というのは国立と新国立と大阪の文楽劇場ですか。

【大川委員】  沖縄に国立劇場おきなわがあります。

【三好委員】  「国が果たすべき責務は,…の機能を十分に生かし,質の高い…制作,公演,又は公開するとともに,必要な人材を育成すること…」とあります。ですから,制作,公演,公開といういわゆる芸術鑑賞の部分,制作及び鑑賞の部分は国立劇場と新国立劇場だけで終わってしまっていて,あとはいきなり人材育成という話になっていくので,例えばここにもう1つ入れられないかというのが私の提案なのです。
 例えば,やはり国が関与して積極的に制作,鑑賞の場として提供できるような場所というのがもう少しあった方がいいのではないか,国が関与する場所というのが,もう少しあった方がいいのではないかと思います。例えば劇場・音楽堂の機能を持った施設というのがどれくらいあるかわかりませんが,全国に相当数あるとするならば,例えば国とそういう劇場の設置者,地方自治体なり民間の設置者との間で協定や,お互いに約束をして,そこを国として一定期間,一定の目的で使うといった仕組みというのも是非考えた方がいいのではないかと思います。
 具体的に,法制度としてどこまで盛り込めるかということはさて置くとして,少なくとも国がやる場合において,国立劇場,新国立劇場等の3つか4つの劇場だけに限定するのではなくて,もう少し幾つかそういう場所というのを国として持っておく。それは設置者側から言うと,もちろんこれは設置者が自ら判断することですから,別にそれは無理にそうしろということではないので,国と設置者のどちらからでもそういう申出ができるというやり方が1つあるのではないかと思います。
 今現に,国なり芸術文化振興会ではいろいろ補助金とか,助成事業をやっておられますけれども,やはり一方的に何かを助成するというのと,そういう一緒になって場を提供するというのはちょっと違うのではないかというふうに思いますので,是非そういうことも1つの提案として御検討いただけると有り難いと思っています。
 それが結果的には,先ほどのいろいろな施設の見直しの中で,もし国がそういう制度を,国と一緒になってある目的のために使えるということであるならば,そこに積極的に応じようという設置者,自治体なり民間の方というのは,多分出てくるのではないかと思います。どれくらいの数にするかは,多分これは予算とか人を伴う話になってくるので,そことの関係もありますが,そういうものも一緒に考えてみるというのが,国全体としての文化振興に関する国の責務の1つの表現の仕方としてはあり得るし,逆に地方の側(がわ)から見れば,それはそういう国の力を自分たちも一緒に合わせてやれるという意味では非常に有効ではないかというので,1つ提案をさせていただきたいと思います。

【田村座長】  おっしゃったのは,フランスのような方法をというふうにお考えなのか,現在,例えば共同制作という形で,実際問題として,今でも国立劇場と共同制作というのが全くできないわけではないですよね。

【三好委員】  例えばフランスの場合ですと,ディレクターがいわば中心になる制度ですし,それから今の座長がおっしゃる共同制作というのは,どちらかというと事業が中心の話だと思います。私が申し上げているのは,むしろ設置者の問題だと思います。具体的には,設置者自身が例えばある一定期間は国と一緒にここでこういう活動をしますよということを,設置者自ら宣言すれば,その意味は大きいと考えているのです。
 だから個別の事業とか人の問題ではなくて,むしろ施設そのものをそういうふうに使えるんだということを,設置者自身が自らやはりちゃんと認識をするというところに1つ大きな意味があるのではないかということで,提案です。

【田村座長】  なるほど。現在頑張っている劇場は幾つかできてきていると思うのですけれども,設置者が,公立文化施設がどういうものかという意識を持っているところがどのくらいあるかというのは相当大きな問題であると思います。今回ヒアリングをしていただきましたので,どのように大川さんはお感じになったかお聞かせ願えますか。

【大川芸術文化課課長補佐】  この場で個人的見解を申し上げるのはふさわしくないと思うので,前回の感想というよりは,実態といたしましては,設置者において,地方公共団体において様々な考えのもとで各種施設を設置し,運営がなされているということがわかったということだと思います。

【小松文化部長】  今の三好先生の御意見にちょっと戻るのですけれども,前回もそういう協定という形もあるのではないかという御提言を頂いて,私たちもいろいろ考えたのです。それで,その場合,国の責務というか,国が今,この文化振興,特に舞台芸術の振興に関して何をやらなければならないかということをよく考えないと,国がやるべきことについて協定を結ぶということになると思うのです。
 国がやるべきことも多分時代の変化によって変わってくると思うのですけれども,今やるべきことは何かなと,いろいろ考えまして,それで1つは非常に水準の高い作品を創作して,海外にも発信するということがあるし,それから先ほど太下委員がおっしゃったような人材養成,専門的人材と鑑賞者を増やすということもあるし,それからあと,フランスのことをちょっと勉強して,フランスの人とお話ししていて思ったのですけれども,日本で余り巡回させるというのをやっていないのですが,フランスは国として作品を巡回させるということを国の仕事としてやっているということをおっしゃって,そういうのもありかなと思ったのですが,今の時代に何をやるために協定を結んだらいいか。水準の高いものなのかということを考えたときに,ではその水準はどこなのか,どこで線を引くかというのはとても難しくて,その点についてはやはり国立劇場,新国立劇場というところで国の責務を果たすのかなと。
 あと,それに比肩するような水準のものをつくっていらっしゃる劇場はあると思います。公立でも私立でもあると思いますけれども,それはそれでお任せするとして,助成をするというやり方でも国の責務を果たせると思うのです。
 本当に国としてやらなければならないことは何かというのを考えて,考えたときに,なかなか難しくて,ちょっと協定というところはここに入れられなかったのです。どんなことがあると思われますか。

【田村座長】  はい,三好先生。

【三好委員】  質が高いかどうかというのはなかなか難しいことだと思うのですけれども,いわば積極的にそういう創造とか鑑賞の場,まさにここで言うそういう機能を持たせたいというところについて,助成とか,ここで言っている人材育成とか,例えば新国立劇場に一定期間来て,そこで人材育成をするとか,あるいはどこかの団体で人材育成をするというのはあるのでしょうけれども,まさに例えば国立劇場とか新国立劇場と一緒になって,そこでその地方の劇場が公演をつくって公演をするということについて,それをそこのより具体的なところに国のそういう専門的な知識を入れていただくというのが,多分具体的な話にはなっていくのだろうなというふうに思います。
 もちろん,それが今のいろいろな研修施設の中でできないかと言えば,多分できなくはないのでしょうけれども,よりそこに入り込んでやっていただくための,いわば協定という,そういうことを考えたらどうかということなのですけれどもいかがでしょうか。

【小松文化部長】  より取り込むという意味。

【三好委員】  そういうことですね。
 逆に国の側(がわ)から言うと,大都市,特に東京に極めて集中しているという現状の中で,国としてもやはり地方でのそういう場所をもう少し整備をしていく。ですから,本当は国立劇場を全国に置くというのが一番いいのかもしれないけれども,それは無理でしょうから,国立劇場を置くのではなくて,既存の劇場に国としてもある関与をもって,機能をもっと発揮できるように考えていただくということも必要ではないかという提案です。
 諸外国の場合には,既に,お調べいただいたとおり,諸外国の場合は多分施設というよりも,もう既に活動が活発にやられていることがまず先にあるわけですね。日本の場合は,施設があるけれども,活動が活発にやられている状況ではないし,それだけの人材も必ずしも十分とは言えないので,比較がちょっとしにくいと思うのですが,日本の場合だと,先ほど言った,まず設置者にも必要性をわかってもらって,設置者を介して国としてもっと積極的な関与をするという,その1つのやり方として,対等に協定をするということがいいのではないかという,そういう提案です。いろいろな御意見はあるかと思いますが,1つそういうことも考えるというのも,今の振興という中ではあり得るのかなというふうに思っています。

【田村座長】  ということは,国の施設はきちんと人材がそろっているというふうに,それできちんといいものが上演されているという,発信されているというふうにお考えでしょうか。

【三好委員】  現状がどうかということを言っているつもりはありません。当然国はそうされるのでしょうというふうに書いてありますので。

【田村座長】  なるほど。

【根木委員】  よろしいですか。

【田村座長】  はい。

【根木委員】  今の国が果たすべき責務の項目ですが,これを拝見しますと,国立・新国立の「・・・公演又は公開するとともに」の後が,「・・・人材を育成すること等によって」というやや限定された書き方になっています。まず,「我が国の文化芸術の水準を高め,国際的に比肩し得る水準の文化芸術を振興する」ことが国の責務だと言い切ってしまえば,先ほど三好先生のおっしゃったことも抽象的にこの中に含まれるのではないかという感じがします。
 つまり,三好先生がおっしゃったことは,ある意味で運用上の話という感じもしますので,もし,法律に入れるのが技術的に難しいということであれば,今申し上げたように,責務,理念の中に一般化して書いておいた方がよいのではないかと思われます。国立,新国立のくだりは,その後に回して,順序を逆転させてはどうでしょうか。

【片山委員】  すみません。ちょっと違う視点のことに行ってもよろしいでしょうか。
 今回の中間報告の柱のところが,人材を確保していくというか,人の問題を整えていくことにあるというのが,単なる劇場・音楽堂が箱ではなくてインスティテューションとして機能するために,不可欠であり,非常に重要だと思うのです。先ほど太下委員が御指摘になられたのですが,確かに研修とか,教育を充実することは重要で,それに加えて人事交流などもありますので,かなり進む面はあるかと思うのですが,やはり1つ気になりますのが,そもそも研修される,あるいは教育を受ける対象の人がいないことには始まらないという点です。以前この検討会で雇用の確保が実は一番大事だということを申し上げたときに,それは文化庁としては書きにくいというお話だったのですが,雇用まで書けなくても,そこの分野に入ってくる人たちを増やすような促進策を講じることは必要だろうと思うのです。そもそも意欲的で優秀な人が入ってきてくれないと,研修する相手もいないということになってきます。
 そのときにやはり非常に問題だと思うのが,こういう劇場・音楽堂等で働いている人たちは非常に意欲的で頑張っている人はいらっしゃるわけですけれども,労働条件とかを見ますと,位置づけとしては周辺労働の形に位置づけられています。賃金にしても低い水準ですし,退職金とか,社会保険なので面でも非常に不利な立場にあったり,労働時間なども労働基準法をかなり逸脱している水準にあるということも多くあります。これらがこういう分野に優秀な人が集まってくることを阻害している部分もあると思うのです。
 その実態自体も,実は余り明確に示されてはいません。今,私の研究室でも院生が調査をして,断片的にはいろいろ実態が明らかになってきてはいますが,国としてやはりそういう分野の人材確保をしたいというのであれば,そういうところで働く人の労働条件をきちんと示し,設置者あるいは施設を運営している指定管理者などがその水準を見ながら,それを高めていくような努力をしていくような環境づくりをしていくことは,非常に重要なのではないかと思います。厚生労働省の所掌に関(かか)わる部分があるので,どういう表現で書くのが今回の法整備の中で適切かというのは,私もわからないのですが,人材が確保できるような環境整備に関する項目を,研修とか,教育に加えて1つ入れられるといいなと思った次第です。

【根木委員】  片山先生とは逆のことを言うかもしれませんが,労働条件は確かに悪いにしても,行きたい人は山ほどおります。ところが,使ってくれない,就職できないので行けないというのが実態ではないかと思われます。
 私の大学の卒業生なども,ホールに行きたいのですが,募集がないからやむを得ず諦(あきら)めるというケースが多く,今確かに労働条件がよくないかもわかりませんが,それ以前の問題として雇用の場がないから行けないという状況です。多少労働条件がよくなくても行きたいという学生が相当数おります。それがかなわないのは,やはり指定管理者制度で雇用を抑制しているということが一番の原因ではないかと思われます。
 とは言っても,指定管理者制度はもう制度として定着しており,そのこと自体をどうこう言うわけにはいかないのですが,大学などでの後継者育成の状況を踏まえて,そういう人材が劇場,音楽堂で職を得ることができるような一文でも入れていただければ大変有り難いと思います。

【田村座長】  本当に実際問題として,指定管理者制度との関連で雇用の問題というのは非常に難しいということは確かでございます。ただ,多分文化施設に限らないことだとは思うのですけれども,労働に対する意欲というか,覚悟というか,それの変化というのも非常に影響しているという感じは,正直言ってあります。
 最終的に文化施設に優秀な人材を雇用していけるようにするためには,設置者自身や文化施設側が,いわゆる文化振興ということがどれだけ必要なことなのかということをきちんと問うていくということがすごく大切で,その辺も含めての問題ではあるかとは思うのです。実際問題としては,片山先生がおっしゃったように,地方によっては労働条件の問題はあると思います。

【太下委員】  よろしいでしょうか。

【田村座長】  はい。

【太下委員】  国の責務ということについて,先ほど人づくりということでお話をしたのですけれども,巡回公演というのにもっと国としても力を入れていただいてもいいのではないかというふうに思いました。
 ただし,単なる巡回ということでなく,より細かく言うと,中央から地方へではなく,地方発の創造型の巡回事業というものがもっと興ってくるといいのではないかなと思います。現状でも,例えば仙北市のわらび座さん,可児市文化芸術センターさん等,個々の劇場や団体では既にいろいろな取組がなされているかと思います。これを,先ほど出たような協定でもいいですし,委託・委任という形でもいいのでしょうけれども,国できれば公募で競争型の企画を募るような形で,より国としての目的に合致するようなところにきちんと支援をしていく。その際に,制作費や人件費も含めた支援をしていくようにすれば,若干なりとも地域の劇場における雇用の促進にもつながるのではないかと思います。やはり専門人材の育成においても仕事がないとなかなか動かないというところもあるでしょうし,再三片山委員から御意見が出ているように雇用がないといけないということもあろうかと思いますので,文化庁の支援が地域での創造と雇用につながるような,大きなストラクチャーの中での地域発創造型の巡回事業というものを是非御検討いただければと思います。
 もちろん,この提言の中には,個別具体的な話なのでなじまないかもしれませんけれども,この検討会の中でいろいろアイデアとしては出ていることがあるかと思いますので,きちんと国の政策として取り上げていただければと思います。

【田村座長】  ここに幾つか書かれていますけれども,国立劇場と新国立劇場,ほかの劇場も含めて,国側から回すというのではなくて,地方側からこれが来てほしいと思えるようなものをつくっていただきたいというのが正直なところでございます。
 やはり地方公演は増えてきていることは確かだと思うのですけれども,新国立劇場がスタートしてもう相当経(た)っておりますね。受け手側である地方の劇場が来てほしいと思えるようなものが出てくるということがすごく大切かなと思います。
 それともう1つ,地方にはいろいろな条件がございます。海外公演でしたらそこに交通費などは含まれた状態になっているのです。でも,なかなか日本の団体ですと,食事代や交通費が全部かかってしまうわけですので,それで費用が何倍かになってしまうというのが現状なので,海外の公演の方がはるかに安いという現状です。でもその辺は本当に欲しいと思われるようなものが出てくるということが一番大切だと思いますし,そういう意味で,国の,国立劇場の果たす役割というのは大きいのではないかと思います。
 国立劇場が子供のためにどれだけのものをつくってきたかということも。オペラは2作品か,3作品ありますね。バレエが1作品ですね。演劇は,まだ1つもつくっていないのです。国として,将来の鑑賞者のために施策を検討するということであるならば,そういうところにも視野に入れていただくというのは必要かなという気はちょっといたします。
 もう1つ,「[6]子供への文化芸術を鑑賞する機会の提供」において,「文化芸術団体は連携協力し,学校だけでなく,劇場,音楽堂等においても…」という記載がございます。私どもはアウトリーチ活動をいろいろなところでやっておりますけれども,一番難しいのは学校と教育委員会の理解が乏しいということです。非常に積極的な先生がいらっしゃる学校は本当にうらやましいような状況をつくり出しています。でも,なかなかそうはいかないというのが多くの関係者や,全国芸術団体の方や,公立文化施設の方等皆様が抱えていらっしゃる大きな問題かなとは思います。

【小松文化部長】  私どもがやっております学校への巡回事業でも,まだやったことのない近隣の学校の校長先生に見にきてくださいと言って,こんなにすばらしいのですよというのを見ていただいたりして,なるべく広げるような努力はしていますので,それはまたこの検討会ではなく別の問題として引き取らせていただければと思います。

【田村座長】  はい。

【片山委員】  1つよろしいでしょうか。

【田村座長】  はい,どうぞ。

【片山委員】  国の責務という,国の役割ということで議論が出ていたのですけれども,やはり個別の設置者では解決できない問題こそが,国がやるべきこととして意味が大きいと思うのです。そのときに,余り日本では進んでいないなと思うのが,複数の自治体というか,自治体にまたがるような連携ということです。確かにびわ湖ホールと神奈川県民ホールがオペラなどを共同で制作したりとかいう,事業レベルでは連携の事例がありますけれども,そもそも施設レベルで,一緒にやるようなことというのが進んでいないように思います。
 例えばドイツだと,デュイスブルクとデュッセルブルクは,2つの都市で1つのオペラハウスを運営して,両方の街で公演するようなことをやっていますけれども,最初からソフト部分について,複数の自治体が壁を越えて取り組むようなことというのができると,かなり効率的な運用ができる可能性もあると思うのです。しかし,どうしてもそれぞれの施設は設置条例で設置していて,それぞれの議会で決めているということになるので,なかなか自治体同士が壁を越えたそういう組織というのはやりにくいと思うのです。そういった連携を支援するみたいなことは,国の仕事として位置づけられるのではないかなというふうに思います。
 具体的にどういう制度をつくればいいというところまで,今はイメージはないのですが,その辺は場合によっては少し触れておいてもいいと思いました。

【太下委員】  今の御意見に関連して,もしかしたらこの検討会の枠組みを超えてしまうので,文化審議会などで御議論いただいた方がいいのかもしれませんけれども,3月11日の大震災を経て,結構全国の自治体間の防災協定を結ぶという動きがにわかに活発化しているのです。その際に,同じ地域だと同時被災の危険性があるので,かなり離れた地域,ふだん交流がないような自治体同士の提携というものが急速に見られるようになってきています。ただ,そういう協定は結んでも,日ごろから一緒に防災訓練をやるわけでもないわけです。そういう際に,日ごろの交流の1つの在り方として文化交流が大事ではないかと思っています。劇場・音楽堂というテーマを越えてしまうかもしれませんけれども,そういう自治体間のいろいろな交流を進めていく中で,劇場・音楽堂が公的な役割を果たすというフレームも,今後は視野に入れて御検討いただければと思います。

【田村座長】  離れたところでやることによって,ある意味異文化を理解するというきっかけにもなるという,たしか沖縄の読谷村祭はそうしていらしたと思います。ほかに何かございますか。

【三好委員】 これもちょっと難しい話かなと思いつつ,ちょっといろいろこの前から考えているのですが,その最後の指定管理者のところなのですが,いろいろお書きいただいている内容はそれぞれによく,よくでもないけれども,一通りわかるのですが,どちらかというと,今書いていただいている内容は今現に指定管理をやっているところがいろいろ言っている意見が大多数かというふうに思われます。しかしやはり指定管理者になる人たちをどう育てるかというのも,もう1つこのポイントの中にあるのではないかという気がします。それは先ほどの人材育成というところとも多少関係はするのかもしれませんけれども,どういう人が指定管理者となり得るのかというところについて,ガイドラインはちょっと難しいかもしれませんが,何か基本的な考え方があった方が良いのではないかと思います。
 具体的に言えば,先ほどの人材育成とか,あるいは今の,そもそも指定管理者として何をやるべきかということが果たしてちゃんと理解しているのかどうかということです。つまり,文化の振興のためにそこの機能を最大限発揮させるというのが指定管理者の使命のはずなので,まずミッションは何か,そのためには何をすべきかというあたりを少し指定管理者の側(がわ)にも認識をしてもらう必要があるのではないかと思います。それを,あえて指針の中に指定管理者制度の運用という項目を入れるのであれば,やはりそこのところは触れた方がいいのではないかと思います。
 現実に,ではそれをどう運用するのかということになると,非常に難しいかもしれませんけれども,それは逆に言うと,指定管理者を募集する設置者の側(がわ)においても,やはりそういう認識を持ってもらわなければ困るということを裏返しで言っているので,設置者にああしなさい,こうしなさいというよりも,むしろ指定管理者たるもの,こういうものですよと示して,設置者もそのことを理解して劇場に関する業務に取り組んでいただくという,そういうやり方の方がいいと思いましたので,ちょっと申し上げたのです。

【田村座長】  はい。

【三好委員】  指定管理にどこまで条件をつけられるのかという議論はもちろんあるでしょうけれども,やはり少なくとも,せっかくここまで方針を立てるのであれば,指定管理者について最低限必要なミッションと,ミッションを行うため必要な人的・物的な資源はどういうものかというところまでは,言ってもいいのではないかと思います。

【根木委員】  三好先生の御意見に賛成です。確かに指定管理者制度で応募してくる団体を見ますと,かなりむちゃなのもあります。そういう意味で,マニュアルとまではいかなくても,少なくとも理念とか目標などの形で指針の中に入れ込むことができれば,ある程度抽象的でもよろしいので,それに越したことはないと思います。
 それから,先ほど片山先生がおっしゃっていた劇場間の連携についてですが,これはなかなか制度論としてというのは難しいと思います。共同制作に対する予算措置などは徐々に進みつつあり,今度の法律をてこにして更に取組を進めるということは当然あっていいと思いますが,具体的にそれをどのように書けるかというと,国と地方の行政制度そのものが諸外国とは違うこと,地方分権の折柄(おりから)一体どこまで言及できるかということ,などの問題があろうかと思います。したがって,連携という言葉で,うまくそれを実務に落とし込んでいく形になるのではないかという感じがします。

【田村座長】  他施設,学校,医療団体,学校,福祉施設との連携とかいうことはよく言われることでございますけれども,なかなか難しいのも現実でございます。

【片山委員】 いいですか。

【田村座長】  はい。

【片山委員】  確かに制度でどう書き込むかという問題はありますけれども,ただ,例えば公立大学の設置などでは地方自治法上の広域連合を使って設置しているような例もあるかと思うのです。ですから,一部事務組合でいいのか,広域連合まで広げるのがいいのかという問題はありますけれども,そういう形で文化施設を設置し,運営するというのは,私の浅はかな法律の知識ではできるような気もするのですがいかがでしょうか。文化施設では,今そのような例はないように思うのですけれども,そういうものをエンカレッジするというのは,制度としてはどうなのでしょうか。

【根木委員】 連合大学院などの形で大学同士が結びつくということはありますが,この場合はどうでしょうか。

【片山委員】  公立はこだて未来大学はたしか広域連合でつくっているのではないかと思うのです。

【根木委員】  それは一定のエリアでということなのですか。

【片山委員】  いえ,違います。近隣自治体が複数で広域連合をつくって,そこが設置者となって公立大学を設置しているということです。

【根木委員】  それは一部事務組合みたいな発想なのでしょうか。

【片山委員】  広域連合は,一部事務組合が更に発展したもので,複数の領域の業務ができるとか,あと,市町村と都道府県が一緒に連合を組めるとかいう,そういうもので,平成6年の地方自治法の改正でできた制度かとは思うのですが。

【田村座長】  昭和音大と,それから東京音大と,神戸女学院,その3大学が連携していわゆる地域とコミュニティとどうあるべきかという研究をずっとこの3年間やっていらっしゃいますし,実際問題公立文化施設とも提携してやるような事業もしているところもあります。
 だから,全くないわけではない。東京芸大もスカイツリーに関して,地域と一緒に取組をやっていらっしゃると思いますし,そういう取組をしているところが増えてきていることは事実だとは思いますけれども,なかなか難しいということも現実かと思います。
 先ほどあえて文部科学省にと申し上げたのは,これはまだ検討の最中なのであえてあれでございますけれども,静岡県は教育の分野,人づくりの分野で,「文・武・芸三道を」と言っています。文武両道というのは普通言われることでございます。あえてそこに「芸」という言葉を入れてくださった。文化芸術振興基本法にも,基本方針にも,心の豊かさをはぐくむためにとか,人間にとって云々(うんぬん)ということは書かれていますけれども,本当にそれをどれだけ皆様が理解なさっているかというところが,それぞれの立場で難しい立場に置かれるというのが現実だと思います。その参考までに申し上げたのですけれども,教育に関しては「文武芸三道で」ということをきちんと謳(うた)っていただけるのは大変有り難いなと思っています。そういうことを主張していただけるのは,やはり国かなというふうに思います。
 「[8]劇場,音楽堂等のより良い運用に向けた指針の作成」について,「専門的な人材の配置に当たっては」という項目がございます。そこに「(ⅰ)…機能等によって必要となる人材が異なること」,「(ⅱ)人材に求められる資質や能力は…分野ごとでそれぞれ異なること」というふうに書かれています。確かに細かい点や芸術団体の人材の場合はそうかもしれませんけれども,私は,基本的には文化施設に配置される人材は本質的には違わないと思っています。そこを,例えば演劇だから音楽とは違うのですとか言うと,文化施設にとってはそれはマイナスだと思います。
 ほかに先生方はございますか。あと,もうそろそろ時間になってしまいましたけれども,もう1つ,これを,人材を育成しているのは大学の文化政策学科というのがございますけれども,文化政策学を教えていらっしゃる先生がお二人いらっしゃって,何か太下先生と,三好先生から,御意見はございますか。

【片山委員】  これについてはもう今からつけ加えることは余りないのですけれども,大学の場合は実務を教えているわけではありませんので,例えば経営学を学んだ学生が卒業してすぐに社長になったり,経営者になるわけではないので,要するにそこに至るまでの雇用が確保されないと,結局学んだものは生かせないということになってくるのかと思うのです。文化政策学でも同様です。
 それから,大きな誤解があるのは,日本にアートマネジメントという言葉が90年代に入ってきたときに,施設がいっぱいできた時代だったので,そこで事業を推進する人をアートマネジメントの人材というふうにとらえてしまったのですが,そうではなくて,その事業をやることも含めた組織の運営をする人が必要であるということです。たとえれば,自動車工場で自動車をつくれる人ではなくて,自動車会社の経営をできる人が求められているということです。要するに,予算があれば公演とか事業が打てる人は,かなり育ってきたとは思いますが,今は,予算を行政や議会と交渉して取ってこられる力を持っている人が求められるということですので,やはりそちらの組織全体の,劇場の経営ができる人が必要です。
 そういう意味でいくと,先ほど座長がおっしゃったように,分野間の違いというよりは,やはりそこで行われている活動の地域における公共性がきちんと理解できて説明できる人が必要だろうということだと思います。

【根木委員】  片山先生の御意見には少し異論があります。今の実態を御紹介しますと,アートマネジメントコースを置いている大学は,専門学校を入れて約40あります。その中で,特に音楽系とか演劇系は,企画制作ということを中核に置いています。一方,一般大学や教育系大学の場合は,地域社会とか,まちづくりとか,場合によっては生涯学習,教育普及が中心になっています。この点が,芸術系大学と一般大学のかなり違うところといえます。
 もちろん,ホールの全般的な管理運営ということも必要なのですが,まずは,音楽会を具体的にどうつくり上げるか,オペラの公演をどう企画制作するか,といったことに取り組む人材が必要なのではなかろうかと思います。音楽系や演劇系の大学は,そこにポイントを置いていますので,その点をきちんと踏まえた上で,人材育成を考えていく必要があると思っています。

【田村座長】  ありがとうございました。
 それでは,時間になりましたので,申し訳ございません。本日出されました意見を踏まえまして,まだ御意見がおありのようでしたら,事務局の方にどうぞお出しいただき,事務局において再度整理していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 また,次回の会議に向けまして,今回の案について広く国民から意見の募集を行いたいと思っております。いかがでございましょうか。

【三好委員】  それは,この議案の素案の形でということですか。何か修正されるのですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  一部修正いたします。

【田村座長】  よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは,今後の日程などにつきまして,事務局より御案内を頂きます。

【大川芸術文化課課長補佐】  長時間にわたり御議論をありがとうございました。次回ですが,次回は12月5日を予定しております。また詳しいことは御連絡をさせていただければというふうに思っております。
 今,座長からお話のございました意見募集につきましては,手続を終了し次第,またホームページの方に掲載したいと思いますので,御連絡させていただこうと思います。  以上でございます。

【片山委員】  12月5日との関係はどうなるのですか。パブリックコメントは,12月5日を経てやるということですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  そこはちょっと調整をさせてください。内部の手続等がありますので,またおってその辺も含めて御連絡させていただきたいと思います。

【田村座長】  ありがとうございました。それでは,時間になりました。本日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。

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