議事録

劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会(第10回)

平成23年12月19日

【大川芸術文化課課長補佐】  それでは時間になりましたので,劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会第10回を始めさせていただければと思います。
 会議冒頭に当たりまして,1点,座長に御報告がございます。本日,撮影をしたいと御希望の方がおられましたので,座長,いかがいたしましょう。

【田村座長】  皆様,よろしいですか。それではどうぞ。

【大川芸術文化課課長補佐】 では同時並行で資料の確認をしたいと思います。

<配付資料の確認>

【田村座長】  ありがとうございました。それでは,ただいまより第10回劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催したいと思います。委員の皆様におかれましては,御多忙のところをありがとうございました。
 さて,本検討会の中間まとめ(案)につきましては,去る11月15日から12月6日までの3週間,国民の皆様からの御意見を広く募集いたしました。本日は,意見募集の結果について事務局から御報告いただくとともに,意見募集で頂いた御意見を踏まえまして,中間まとめ(案)の内容について検討いたしたいと思います。
 それでは,中間まとめ(案)について,頂いた主な御意見などについて,事務局から御報告をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】

<資料1及び資料2について説明>

【田村座長】  ありがとうございました。事務局から御説明いただいたように,意見募集では211件,多いのか少ないのかあれでございますけれども,御意見が寄せられ,多くの参考となる御意見を頂いたと思います。
 それでは,ただいま事務局から提案がありました中間まとめの修正案について,御意見をいただければと存じます。

【三好委員】  どこからでもよろしいのですか。順番はどこでもいいのですか。

【田村座長】  わかりました。それでは,頭からまいりましょうか。1という,劇場,音楽堂等に現状,課題というところで修正がたくさんございましたので,そこに御意見がおありでしたら,どうぞ。
 1と2がたくさんございます。1についてはよろしゅうございますか。特に御意見等は。1ページでございます。
 ちょっと質問してよろしゅうございますか。本まとめで記載する「劇場」は,都市計画法等で規定される劇場とは同一ではないとここに書いてありますけれども,劇場という言葉が書かれたときに,そういうことをおっしゃる方は出てくることはないのでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  そのあたりは,都市計画法ですとかは法律で記載されている内容です。今後どうなるかはわかりませんけれども,これをもとに同じような法律をつくるということになれば,そのときにきちっと整理する必要があるということだと思います。

【田村座長】  そうですね。これに書く必要が出てくるということですよね。

【大川芸術文化課課長補佐】  ここでは混乱がないように,いわゆる都市計画法等では劇場を設備,箱として認識しております。一方この検討会ではいろいろ御議論いただきましたけれども,人的配置なり,組織的,機関的な機能をもつものであるといった御意見を頂いておりますので,同じ言葉であっても意味が全く合致するものではないということで注意書きをさせていただいておるところでございます。

【田村座長】  ということは,このまとめについて,文化庁としてはそうではないといたしますということで,ここに書いてあるという意味でございますか。

【大川芸術文化課課長補佐】  都市計画法と違うということであれば,そういうことでございます。

【田村座長】  この検討の劇場というのは違うものですということを,文化庁としてきちんとお書きになったという意味でのということで考えてよろしいですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。

【田村座長】  わかりました。

【山﨑芸術文化課長】  都市計画法や建築基準法により,第一種住居専用地域等,用途地域によっては,建築基準法上で言う劇場が建てられないという制約があります。

【田村座長】  そうですね。

【山﨑芸術文化課長】  現在,個々の施設については,劇場ではない,例えば公会堂などの名目で建てられている状況があります。この中間まとめにおける劇場の定義を,建築基準法や都市計画法上の劇場と同じ概念だとしてしまうと,現在存在している文化施設がそもそも劇場に当たらないのではないかということになりかねないので,この中間まとめ(案)ではあえて,そうではないことを念押しするために注意書きを書いたということです。

【三好委員】  今の点ですけれども,今の山﨑課長がおっしゃる意味で注書きを入れるのはいいと思うのですが,ここに唐突に出てくると,今,座長の御質問のように,何のためにここに注が入っているのかがわからなくなるのではないかと思います。むしろ今回のは,名称のいかんにかかわらず,劇場,音楽堂の機能を持っているところについて論じているという整理をしているので,そういう機能を持ったものという意味での劇場ですという言い方にした方が,もう少しわかりやすくなると思うのです。単に1ページのこの箇所の注にただつけただけでは,何のことやらわかりにくいと思うので,このまとめの中では機能ということに着目して整理しているので,必ずしも建物としての劇場とイコールではないとした方がわかりやすいのではないでしょうか。

【田村座長】  そうですね。また劇場という言葉が一人歩きするような気がする。

【三好委員】  違う言葉の劇場というのがまた出てきてしまうので,そこの機能のところとの関連を少し説明をつけた方がわかりやすくなると思います。多分,意図はそういうことだと思うので,そういうふうに少し書き足しておいた方がいいと思います。

【田村座長】  では,1ページ目についてはよろしゅうございますでしょうか。

 では2ページ目の「基本的考え方」のところは大分修正が入っておりますので,そこについて御意見のおありになる方は。先生方,よろしくお願いいたします。

【太下委員】  文言を直してほしいということではなくて,今日お持ちした参考資料に沿う形でコメントさせていただきたいと思います。
劇場,音楽堂の機能は,当然のことですけれども,狭い意味での文化芸術振興ということだけではなく,広い意味での文化振興ということで,社会的包摂の機能ですとか教育機能とか,そういった非常に幅広い役割が重要ではないかと考えています。本検討会も今回で10回目ということで,途中議論に紆余曲折(うよきょくせつ)があったことも背景として,どちらかと言うと議論が狭義の文化振興に偏った部分があったのではないか,と委員の1人として反省もあり,逆に今回パブリックコメントの中で,そういう社会的包摂機能の重要性を御指摘いただいて,大変よかったと思っております。
 このうち,教育という視点に関しては,この検討会の中でも文化振興に携わる人材の教育を担う機関として,劇場,音楽堂については議論が深まったかと思うのですけれども,より深い教育機能というものも劇場,音楽堂においては重要ではないかと思っております。
 参考で配らせていただいていますのが,愛媛県の坊っちゃん劇場の事例で,県内の小中高生がこちらの劇場で観劇する際には交通費などを支援する制度も整備されている事例なのですけれども,文化庁さんとしても学校に芸術家を派遣する非常に有意義な制度はお持ちですが,今後は劇場・音楽堂もこういう教育機能の担い手としての役割もよりきちんと認識していくことが非常に重要ではないかと思います。
 以上,持参した資料に関連してコメントさせていただきました。

【田村座長】  ありがとうございました。

【根木委員】  私はこれで結構と思います。ただ,細かいことで恐縮ですが,(1)の2つ目の丸に「これらの文化芸術は人々を惹(ひ)き付ける魅力や社会への「ソフトパワー」であり」とあります。これは,文化芸術の振興に関する基本的な方針から引っ張ってこられたのでしょうが,「社会への影響力を持つ」という言葉が抜けているのではないかと思います。
 また,3つ目の丸ですが,後でくっつけられたものだから文章がごちゃごちゃしている感じです。1行目の後半の「我が国の魅力を高めることであるとともに」の「ことである」を取り,「我が国の魅力を高めるとともに,コミュニティの創造,地域振興」の後に「に寄与し」といった言葉を入れ,「ひいては,我が国の国力を高めることにつながる」とした表現の方が適当ではないかと思いますので,御検討ください。

【田村座長】  今御指摘いただいた以外にございますでしょうか。

【根木委員】  それからもう1つ,最初の丸の「国民全体の社会的財産である」という表現です。これはこのとおりで結構なのですが,後に出てくる言葉の中に「国民共有の財産」とか,伝統芸能に関しても「国民の財産」とか,用語がいろいろ違っていますので,統一した方がよいのではないかという感じがします。

【田村座長】  ありがとうございました。三好先生。

【三好委員】  (2)の機能等のところですけれども,1つ目の丸で「年齢や性別,障害の有無,社会的,経済的状況にかかわらず」という意味が非常にわかりにくいのですけれども,あえてこういう「役割を果たす拠点であり,心豊かな国民生活を」とすんなり言った方がわかりやすいような気がするのです。あえて,何とかにかかわらずということにも配慮しなさいということが言いたいのかもしれないのですが,機能のところにそれを書いてしまうと非常にわかりにくくなってしまう気がします。それから「活力ある社会を構築する社会的な機関」というと,これもまた同じことの繰り返しのように聞こえて,間違って受け取られそうな気もしそうなので,あえて社会的なという言葉は必要かどうかは疑問です。
 今回,全体にいろいろな意見もあって文章が増えていることもあって,必要なことは入れてもいいのですけれども,逆に読みづらくなっているというかポイントがわかりにくくなっているところが何箇所か見られるので,そこはむしろもうちょっと絞った方がいいのではないかと思いますので,そういう意味で,今の「年齢や」から「かかわらず」までと,「社会的な」という言葉はそもそも必要なのでしょうかというのが疑問です。

【田村座長】  どうぞ。

【大川芸術文化課課長補佐】  ここは御意見を頂いて,ない方がすっきりするのは確かにそうなのですが,社会包摂機能と言ったときに,なかなか社会包摂をかみ砕いた言葉がないかと思って加えたのですけれども,なくていいということであればすっきりさせておこうかと思います。趣旨としては変わりませんので,御指摘の形で修正させていただければと思います。

【三好委員】  そういうことを使うのであれば,それは機能というよりも,むしろ上のそもそもの芸術文化の役割そのものの方ではないかという気がします。劇場,音楽堂の機能という議論ではなくて,そもそも文化芸術はそういう使命を持っているものだから,それが結局人々の満足感を高めるとか魅力ある社会づくりになるのだという,むしろ(1)の方の文脈ではないかと思います。

【田村座長】  そうですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  そこは検討させていただきます。

【根木委員】  (1)では文化芸術振興基本法を引っ張ってきておられ,この中に,文化芸術に関してですが,社会包摂といったことが暗々裏に含まれていると思います。あえて(2)で述べるとちぐはぐな感じがしないでもないので,すんなりした方がよろしいかと思います。

【田村座長】  片山先生は何か。

【片山委員】  私もこの(2)のところについては,確かに(1)をかなり書き足しましたので,シンプルにしてもいいのではないかと思います。

【田村座長】  私が質問してもよろしいですか。2.(2)の3つ目の丸に,「これらの機能を有している」とありますが,「これら」というのはどういった意味でしょうか。

【根木委員】  私も引っかかっていたのですが,恐らく「劇場,音楽堂の」ということなので,はっきり書いた方がわかりやすいと思われます。

【大川芸術文化課課長補佐】  ここの「これら」2.(2)の2つ目の丸の4つの機能という意味を指しています。

【田村座長】 それでは,(3)についてはよろしゅうございますね。

 では3の「検討対象」。

【片山委員】  よろしいでしょうか。

【田村座長】  はい。

【片山委員】  改めて見てすごく気になったのが,「民間事業者による活動を通じて,文化芸術の振興を図ること「も」重要である」という書き方をしていまして,それで,「民間事業者立の施設「も」検討対象とする」と書かれています。つまり,公立のものがメーンであって,それを民が補完するという形の書きぶりになっているのです。ただ,これから日本が目指そうとする社会システムの理論的な考え方から言えば,まず民があって,民のないところを国であれ地方自治体であれ補うという考え方だと思いますし,伝統芸能にしても,舞台芸術の分野に関して言えば,歴史的にもまず民がやっていて,公立文化施設はむしろ後発組で,1960年代ぐらいから急速に施設をつくって,後発組でありながらシェアのトップを取ってしまったということがあるかと思いますので,ここだけの「てにをは」で直せるかどうかはわからないのですが,書きぶりとしてやはり民があって,その足りないところを公立施設や国が補うのだという書きぶりにしていった方がいいのではないかと思ったところです。

【根木委員】  よろしいですか。

【田村座長】  どうぞ。

【根木委員】  確かに芸術活動は民が主体なのですが,施設は「公立」の文化会館が圧倒的多数を占めているわけです。したがって,ここは劇場,音楽堂の話でしょうから,やはり公立施設中心に書いた方がよろしいのではないかという感じがします。

【田村座長】  太下先生はこれにつきましてはどう思われますでしょうか。

【太下委員】  私はどちらかと言うと片山委員の考え方に近いです。書きぶりの問題かという気もしますが,「も」という言葉が持っている響きが,あたかもわき役的なニュアンスが込められてしまうというか,そう受けとめられてしまうとよくないのではないかと思うので,書きぶりを工夫していただければ多分解決するような気がいたします。

【田村座長】  三好先生,これについていかがでしょう。

【三好委員】  今,太下委員がおっしゃったように,別にそこにあえて意識的に差をつけようというつもりがないのであれば,それは文言上のことですし,そもそもだからそこは内容的にどうなのかという。どっちが重要かの話ではなくて,ここで取り上げるものとして,文化芸術全体からいうと,民間事業者の活動は確かに多いのですけれども,今回の検討の中で取り上げようとしているものに限って言うと,民間のものはどこまで対象となるのかというところが,必ずしも明らかでないところがあるので,要するに公立施設と民間施設をあえて差をつけていないというぐらいのことであれば,それはそれでいいかと思います。積極的に民間の施設についてまでも,国はいろいろ制度的なことを言いますという趣旨をあえて宣言しているのかどうかという議論だと思うのです。むしろ中身の方の問題なので。そこは今まで議論の中でも余りなかったと思うのですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  ここを申した趣旨は,三好委員に御指摘いただきましたが,以前,民間事業者の役割をここで議論するかどうか,芸術文化振興法第2条第3項に規定されるような,文化芸術に触れる機会を平等に得るという内容に際して,民間事業者をこの検討の対象にするかしないかという問題があります。国及び地方公共団体は,法的基盤を考えたときに対象にし得るのは,今までの前例でも明らかであります。民間についてはケース・バイ・ケースで,基本的には文化芸術活動は,民間がまず中心となってやっていく。その中で,制度的な在り方というと,ある意味,枠組みをはめていくような感じになりますので,そのときに民間事業者を対象にすべきなのかどうかという御議論をさせていただいたと思います。その際には,繰り返しになりますが,基本法の第2条第3項にあるような規定も踏まえて入れてもいいのではないかということで,そういう意味で若干付加的に聞こえますが,「も」という言葉にさせていただいた次第であります。積極的に,例えば「が」とかいうことでよければそれはそれでそういう修正をさせていただければと思っております。

【田村座長】  民間で十分だったら検討しなくてもいいということもあるわけでございますから,そういう意味では残念ながらまだ日本全国が文化的に豊かになっているとは言い難い,だけど一方,公立文化施設が山のように全国にあるということでこれが検討されているということで,ただ,そのときに民間も排除しないという意味でございますよね。要するに公立だけを対象にしているだけではないということでございますよね。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。

【田村座長】  ほかの分野はよろしゅうございますか。恐れ入りますが3.「検討対象」の2つ目の丸の(Ⅴ)に「必要な人材を養成すること」とありますが,これはもちろん芸術家も含まれるという意味ですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  含まれておりますし,芸術家のみならずという意味です。

【田村座長】  ほかには検討対象のところはよろしゅうございますか。
 では,「法的基盤の内容として考えられる事項」というところに移ります。どうぞ。

【三好委員】 4のタイトルなのですが,もともと検討会自体は劇場・音楽堂の制度的在り方と言っているところ,ここでいきなり法的基盤という言葉が唐突に出てきてしまうのですね。多分,文脈からするならば,同じ3ページのさっきの3の検討対象の前の丸に「これを実現するには,云々」と書いてありますけれども,ここに多分法制化に関することが述べられて,それを受けて4で法的基盤という言葉が出てくるという順番の方がいいのではないかと思います。今の「これを実現するには」のところを見ると,法制化のことが一切触れられていないので,いきなり法的基盤と言われると文章がつながっていかない感じがするのです。あるいはそれはもう基本指針なりで自明のことというつもりで書いていないのかもしれませんが,もしそうであるならば,もともとこの検討会自身が法的基盤のの在り方という名称であるべきだったはずなので,そこの検討会の設置目的と中身との関係でいくと,そこのつなぎが必要なような気がしています。

【根木委員】  せっかく三好先生もおっしゃっているのですから,そこに法的基盤という言葉を入れるとよいのではないでしょうか。

【田村座長】  3の上ぐらいに法的基盤について記載するということですね。

【三好委員】  はい。

【田村座長】  ほかはいかがでいらっしゃいましょうか。まず,4.「法的基盤の内容として考えられる事項」のうち,総論についてはよろしゅうございますか。

【三好委員】  やっぱり,総論の[1]「劇場,音楽堂等の機能を生かした文化芸術の振興に関する国及び地方公共団体の責務 」のうち,1番目の丸が「国が…」と書かれていて,2番目の丸も「…国としての責務である」と書かれていて,3つ目の丸で「地方公共団体の責務は…」と書いて,次の5ページの4つ目の丸で「国及び地方公共団体が…」ということになっています。ここでは,「それぞれ設置する劇場,音楽堂を十分活用する」,「今まで以上に国及び地方公共団体において生かす意識が高まり」うんぬんかんぬんと書かれているのですが,やはり国と地方公共団体との間に相互に協力し合うということをどこかにもう少し明記してほしいのです。今の,一番最初の丸で言うと,「国際的に比肩しうる…」というところで「劇場,音楽堂の機能を生かし…」とあります。ここで言う劇場,音楽堂の機能というのが,この検討対象になっている,さっきの公立とか民間までを含めた劇場,音楽堂のことを言っているのかどうかが,今ひとつ定かでないのです。そこで,あえて言うならば,国の責務として地方の施設と協力し合うことによって,全体としての,国としての文化芸術の振興が図れるということを,もう少しどこかに入れていただきたいと思います。
 もう1つ言うと,前から申し上げているように,お互いに協力し合う関係をもう少し具体的に構築していきたいと思っているので,まずここで一言,やっぱり国と地方公共団体あるいは民間が協力しながらやるということをどこかに入れてほしいというのが私の意見です

【田村座長】  ありがとうございます。よく言われることは,国が助成すると地方は手を引くということです。そうあってほしくないということは国が,文化庁がよくおっしゃるのですけれども,それが現実でありますので,それは三好先生がおっしゃったような関係が必要かなと思います。

【根木委員】  それぞれの責務についての規定ですから,協力関係というのはどうでしょうか。

【三好委員】  だから私が申し上げているのは,それぞれの責務として,協力するというのも1つの責務だととらえたいのです。両方がお互いに協力し合ってやることも必要な責務だという認識がないといけないと思うのです。

【根木委員】  責務は,舞台芸術の創造・発展なり伝統芸能の保存・継承に関(かか)わるもので,協力は次元の違う話のような気がします。協力し合うということまで責務の中に含まれるのかどうか。責務のとらえ方でしょうが,やはり基本的には,劇場,音楽堂を通じて舞台芸術,伝統芸能の創造・発展,保存・継承が直接的な責務なのではないのでしょうか。

【三好委員】  あえてそれを申し上げているのは,5ページの一番上の丸のところで,「国及び地方公共団体がそれぞれ」という言葉がありますがこれが気になってしまうからなのです。要するにそれぞれやればいいのだということだけで終わってしまう。だからこの文章がなければまだ根木先生がおっしゃる意味もわかるのですが,この文章が入ってしまうと,それぞれにやればいいのですねということに逆にとられてしまうし,あるいは座長がおっしゃるように,国がやれば地方は「国がやってくれるのだから,自分たちはいいよ」と逆に引き下がってしまうかもしれません。それでは意味がないので,そこは両方がちゃんとやるということを,「それぞれが」という言葉につなげてほしいと思ったのです。

【田村座長】  片山先生,どう思われます。

【片山委員】  そうですね。責務というところでいくと,根木先生がおっしゃったような書きぶりの方が自然なのかとは思いました。むしろその後で,施策として連携するとかそういうことをうたっていく方がしっくりくるかという印象を持っています。

【田村座長】  太下先生はいかがでしょうか。

【太下委員】  私も文言というよりは実を取った方がいいかという気もしていますので,施策の方向性をどう充実したものにするのかというところに,より議論の時間を割いた方がいいかと思います。

【田村座長】  では,よろしゅうございますでしょうか。

【三好委員】  では,そちらの方でお願いします。

【片山委員】  すいません,総論の[2]「劇場,音楽堂等を設置又は運営する民間事業者の役割」のところで気になるところがございます。頂いた意見の中にも民間事業者の役割というところで,指定管理者も含まれるのかという話と,あと地方自治体が設置し資金を拠出している自治体文化財団等が入るのかという質問が来ていました。今の[2]の書きぶりは今回修正されていない部分かと思うのですが,「劇場,音楽堂等を設置又は運営する民間事業者…原則自主的かつ自由に行われるものであるが」あります。例えば日生劇場とかいずみホールとかがそうであるのはいいと思うのですけれども,例えば鎌倉芸術館を運営するサントリーパブリシティサービスはそれと同じかというと,ちょっと違うようにも思うのです。指定管理として担っている民間事業者は,自治体文化財団であれ,民間のSPSさんのような企業であれ,むしろ公立の自治体の責務,設置者の方にかかわってくるところも多いですので,ここの書きぶりは,指定管理者として担っている民間事業者の場合と,そもそも設置者が民間である施設の場合と書き分ける必要があると思います。

【大川芸術文化課課長補佐】  その点,我々も工夫しようと思っておるのですが,まだちょっとわかりにくいのかなと今御指摘ありましたので思っておるのですけれども,指定管理者は基本的にはここには入れないという整理にしたいと思うのです。指定管理者については基本的に地方公共団体がやるべき施設の機能を提供できるところを選んでやってもらうという意味では,ある意味地方公共団体のやるべきことを肩がわりしていただいているところがあると思います。ということで,[2]で言うところの民間事業者の「民間事業者」には指定管理者は含まないという整理で考えております。また,御指摘がありましたように日生劇場さんやいずみホールさん等のように設置者と運営者が民間同士で異なるという場合が結構多いとき,実質設置者だけがやればいいのかというと,そういうわけでもないことも踏まえて,「又は」という整理にさせていただいております。「指定管理者は」という意見もございましたけれども,指定管理者はここには入れない形で御理解をいただければと思います。「(指定管理者は含まない)」と書くかどうか事務局でも検討してみたのですが,逆に煩わしいのではないかという意見もありまして,こういう形にしております。ざっくばらんに御意見いただければ,わかりやすい方がいいと思いますので,整理を御指摘いただければと思います。

【根木委員】  私は「又は」があったものだから,指定管理者も当然入るのだろうと思っていたのですが,そういう意味にもとれてしまうので,何か括弧書きで入れておいた方がよろしいかという感じがします。

【田村座長】  ありがとうございました。では,この部分はよろしゅうございますか。  では,「4.法的基盤の内容として考えられる事項(2)基本的施策」について,よろしくお願いいたします。

【三好委員】  そもそも「3.検討対象」のところで,「国立劇場については,我が国の中核的な劇場として対象とすべきであるが,具体的な実施方針等が別に定められていることに留意する必要がある」といって,このマル1が出てきているというのが実はわかりにくくて,つまりこれは具体的な実施方針等が何らかの法令に規定されていることを指しているのか,あるいはこの検討会として言っていることなのか,どちらなのでしょうかという質問をさせていただきたいと思います。その上で,だからまずここに書かれていること自身は,本検討会のまとめなのか,それとも別途定められている方針のことを書いてあるのか,どちらなのでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  留意事項については,要は法律に基づく振興会の権限や範疇(はんちゅう)があるので,今回,提言をするに当たってはそれを超えない範囲でやる必要があるという意味で,留意事項について記載させていただいています。ですので,ここについてはその範囲内で本検討会としてこういうことをやり得るのではないかという位置づけであります。

【三好委員】  そこはやや議論したいところなのですが,もちろんこちらの検討会は,公立施設なり民間施設の側(がわ)からの議論なのですけれども,逆に国立劇場から提案する内容が,例えば「日本芸術文化振興会法上,対象にしていませんから議論しても無駄です」と言われてしまうと,こちらとしては議論がしにくくなるところがあります。「3.検討対象」における,「留意する」という意味は,あくまでも国立劇場で決めるべきことは本来的にはそちらで決めるのだけれども,例えば公立文化施設の側(がわ)から,「もう少しこういうことについても協力してほしい」という意見があれば,そこはいずれ法改正するのであれば一緒に法改正してもらうという余地はあるのかということを確認しておきたいのですけれどもいかがでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  余地としては,検討する必要はあると思います。まず,御提案いただいた具体的な内容を踏まえて,法律の範囲なのか範囲ではないのかというのは検討する必要があると思います。

【三好委員】  そうすると具体的な話になるのですが,「トップレベルの創造活動」という言葉が引っかかるのです。この表現がいいかどうかはもうひとつ置くとして,「新国立劇場を始めとする国立の劇場が劇場,音楽堂等を支援し」という記載のうち,「劇場,音楽堂を支援する」というのは,国は国立劇場を十分活用するとともに,劇場,音楽堂を支援するということでよろしいですね。

【大川芸術文化課課長補佐】  はい。

【三好委員】  国は国立劇場を自ら運営すると同時に,国立劇場が持っている資源も使って,公立,民間の劇場,音楽堂を支援するということについてこの検討会で議論することが可能なのですよねということを確認したいのですがいかがでしょう。

【大川芸術文化課課長補佐】  可能だと思います。新国立劇場で行う公演を例えば地方公演することによって,その公演に当たるいろいろなマネジメントだとかいうことも学ぶ機会になるでしょうし,舞台技術の提供にもいろいろとノウハウを提供できるような環境を整えられればとは思っております。もちろん,財政的にできるできないという問題はあるかもしれないですけれども,御検討は是非いただければと思っております。

【三好委員】  今のまさに大川さんがおっしゃるところにこだわっているわけです。人材育成だけでなくて,具体的に言えば,例えば舞台公演とか技術者そのものの貸出しも場合によったら可能なのですよねということを言おうとしているのです。もっとも,直ちに全部やれということではもちろんないですけれども,必要があれば,公演そのものを貸し出すとか,人を貸し出すとか,単に人材養成だけではなくて,もう一歩踏み込んだ支援ということがあり得るのではないかということをあえてここで提案しておきたいのですけれどもいかがでしょう。

【根木委員】 日本芸術文化振興会法で規定されていることは,ある意味抽象的なもので,今ここで言わんとしていることは具体的な中身の話だろうと思います。したがって,振興会法の規定はそのままで,内容について言及してもいいのではないか。また,人を貸すということは,派遣ということなのか,公演に付随してなのか,あるいは巡回公演のことを意味するのでしょうか。

【三好委員】  多分,現実的には巡回公演のことをイメージしています。

【根木委員】  巡回公演に加えて共同制作という話も出てくるだろうと思いますが,それは内容に関する事柄ですので,制度論に直(じか)に結びつく話ではないような感じがします。

【田村座長】  今のお話ですと,国立劇場,新国立劇場は劇場,音楽堂等の機能を十分に果たして,整備されているということになるという意味でしょうか。

【根木委員】  国際的に比肩し得る水準の文化芸術の振興を国立劇場で図るということであり,そのために新国立劇場を十分に活用して創造発信活動等を行うということが1つあると思います。その後に「とともに」とありますので,その先の文面では,国がやる場合もあるでしょうし,国立劇場,新国立劇場を通じて行う場合もあると考えられ,いわば二様に理解できるのですが,この点はどうなのでしょうか。

【小松文化部長】  国立の劇場だけではなくて,公立・私立の劇場も含めて非常に水準の高い活動を支援するということと,地域でも中核になって,様々な鑑賞や活動の機会を提供できる劇場,音楽堂を支援するということをセットで書いています。三好先生がおっしゃった国立の劇場が公私立の劇場に対して支援するというのはおこがましいかもしれないのですけれども,人材養成以外についても連携を図ることについて,どこに書くか検討させていただいてよろしいですか。

【根木委員】  つまり,トップレベルのものを新国立劇場でもやり,地方の劇場でもやるということを言っているわけですね。

【三好委員】 今,言葉として出てきているのは,さっきのマル4の人材育成とマル5の鑑賞者拡大という,ある意味限定的には書いていただいているのですが,何となくタイトルが上についてしまっているものだから,非常に限定的にしか受け取れない感じもしてしまうので,まさに共同制作なりお互いに持っている資源を有効活用するという意味で,国立は別ですと言わないでいただきたいと思います。だから国立も公立も場合によっては民間も一緒になって,みんなでお互いに融通し合いましょうということが可能であるならば,そこは是非やっていただきたいと思います。国立の劇場と公立の劇場についてヒエラルキーを作れと言っているつもりは全くないのですが,例えば公立の中ではそういう事業ができるところはある程度限られてくると思うので,ある程度地方の中でもそういうことに積極的にやれるようなところと,国立なりあるいは公立の施設同士のネットワークは是非つくっていただきたいと思うので,もし可能であるならば,項目を1つ起こしてでもいただけると非常に有り難いと思います。

【大川芸術文化課課長補佐】  三好委員は,もうちょっと具体的に国立の劇場の役割という意味でおっしゃっているのかもしませんけれども,劇場相互の連携というのは,様々な形でやっぱりあると思っておりますので,総論としては今おっしゃっていただいたような連携はここに含められると考えて記載しております。それを総論として踏まえた上で,もし記載するのであれば,具体に書くことになるのかなとは思っております

【三好委員】  施策として目に見える形にしていただければ有り難いというのが私の希望です。ここに入っていますという話でなくて,やっぱり読んだ人が,国立の劇場も公立と一緒になって何かをやるのだというのが見えるようにしていただけると一番有り難いし,前も申し上げたことで言うと,そういうことを国と自治体との間で提携関係が結べるようなことができれば更にいいかと思っていますので,そういうことができるような取っかかりを作っておいていただきたいという希望です。是非お願いします。

【田村座長】  すみません,「[1]我が国の文化芸術の水準を高めるトップレベルの活動の支援等」のところに,「新国立劇場を活用し,・・・展開する必要がある」と書いてあるのですが,国立劇場についてはそう書いていません。国立劇場のものも私は地方展開があった方がいいと思っていますが,いかがでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  そこは検討させてもらいます。

【田村座長】  ほかに先生方,いかがでいらっしゃいましょうか。

【三好委員】  「[6]子供が文化芸術を鑑賞し,体験する機会の提供」について,3行目くらいまではそのままでそのとおりだと思うのですが,「このため」の後のところで,どうも「学校だけでなく」という言葉が引っかかっているのです。その意味は2つあって,1つ目の理由は,以前からある意見として,1つは,学校は単に鑑賞だけではなくて,学校教育の中でもっと文化芸術に関して積極的に取り入れるべきだという文化行政を考える上では,単に「学校だけでなく」と言ってしまうと,今学校でやっていることはそれでいいのだととらえられてしまうので,そこはまず疑問があります。できれば,きちっと学校教育ということを,はっきりうたっていただきたいと思います。
 それから,学校という立場でいうと,もう少しやるべきことがあるので,単に鑑賞だけの問題ではないように思います。また,鑑賞という側(がわ)から言うならば,これは別にいろいろな学校行事だけでなくて,もっと劇場側からのいろいろなアプローチやアウトリーチのようなことがありますので,あえて学校という言葉を使う必要はないという気がしました。

【田村座長】  どちらかといえば,足りない部分を劇場,音楽堂等が担うということだったらいいとは思いますけれども。例えばニューヨーク・フィルなどは,学校が費用を負担していないところには行かない,アウトリーチ活動はしないとはっきり決めています。

【三好委員】  むしろ学校としては,そういうことも含めてもっと積極的にやるべきだということをまず書いて,その上で鑑賞の部分に限って言えばほかの劇場とかも一緒にやりましょうという記載はいかがでしょう。そういうふうに,学校の役割と,劇場,音楽堂の役割はもう少し分けた方がいい気がするのです。そこは文化庁さんのお立場としては難しいかもしれないですが御検討いただければと思います。

【太下委員】  今の三好先生の意見に関連して,もし学校のことを触れるとすると,本筋とずれるようなニュアンスも出てきてしまうので,あくまで本筋の中で触れていった方がいいかと思います。例えばミュージアムが子供たち向けの教育をどうやっているのかということを考えてみると,いきなり子供たちにアウトリーチするというよりは,ティーチャーズキットをつくって,まず教師との接点を深く持とうというステップを踏んでいるのです。そういう意味でいうと,学校をもし別立てで書くのだとすると,劇場,音楽堂という機能がまず学校や教師というものに働きかけて,もっとパフォーミングアーツとか演劇とか舞台芸術に対して理解を深めるような機能を担う,それを通じて子供たちへの教育をもっと充実したものを考えていくという書きぶりだと,この検討会の本筋から余り離れずに,学校にもアウトリーチできるようになるのではないかと思っています。表現の方はお考えいただければと思います。

【田村座長】  なかなか難しいのは現実でございまして,教育委員会のしがらみとか,アウトリーチを積極的にやろうとしても受入れ側の学校がなかなか難しいことは事実でございます。グランシップでも,連詩の会という取組があります。詩人に学校に行っていただいてワークショップをして,教室で連詩をつくるという取組です。その隣には能楽師の方が教室で授業をし,この後,体育館で「柿山伏」を衣装をつけて目の前でやっていただくということをやります。これはやっぱり学校の先生が積極的だったときにこういうことが可能になる。こういうことをしますといって,学校や何かに教育委員会を通じてもなかなか難しいのは現実でございます。「学校だけではなく」という記載では,三好先生がおっしゃったように,結構逃げ道を更につくってしまう気がいたします。打破していくにはやっぱりここの書きぶりを変えていただければと思います。

【三好委員】  「[6]子供が文化芸術を鑑賞し,体験する機会の提供」について,「心豊かな子供や若者」という「若者」という言葉が出てきているのですけれども,最近こういう言い方はよくするのでしょうが,若者というのが一体どこまでの範囲なのかさっぱり分からなくて,とにかく情緒的,文学的にこう言っているきらいがあるのですね。もうちょっと限定するのであれば,青少年とか何か同じくらい使っている言葉を使った方が適当ではなかろうかという感じがするのですけれども,そこも工夫されてはいかがでしょうか。

【田村座長】 続いて,「5.劇場・音楽堂等の運営に係る留意事項等」について,御意見があればどうぞ。

【片山委員】 8ページの一番下の丸の記述において,まず1つは「施設の利用目的等」とあるのですけれども,「利用目的」というよりは「設置目的」の方が適切なのではないかと思います。それから,「委嘱や派遣,非常勤等の採用形態を工夫しながら」と書いてあるのですけれども,何となく,予算がない中,綱渡りで人を何とか確保しなさいというふうにも読めるのです。頂いた御意見の中でも,指定管理者制度導入以降,職員の雇用が非常に不安定になっていて,人材育成などにも影響が出ているという御意見がありますので,むしろこの書きぶりは,人材育成や能力発揮ができるような雇用形態を工夫すべきだという書き方にした方が,積極的な形になっていいのではないかと思います。雇用を確保することが重要だというと,所掌の問題もありますし,書くのが難しいかもしれませんが,工夫していただけたらと思います。

【田村座長】 公文協の課題検討会でも,ここが後ろ向きのように感じるという意見がありました。

【根木委員】「(ⅲ )舞台設備等の利用に係る技術力」のところで,「それらの設備を安全に運用し,演出等に的確に利用できる技術力」と書かれていますが,確かに設備の安全な運用は必要なのですけれども,それだけが独立してあるのかという感じがしますので,「演出等に的確かつ安全に運用できる技術力」とした方が適当ではないかと思われます。工夫していただきたいと思いますが,そうなりますと,(ⅲ )の表題は,「舞台設備等の運用」あるいは「運用等に係る技術力」とし,積極的な意味合いを込めて「運用」という言葉を使った方が適切ではないかという感じがいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】 御指摘いただいたところ,検討したいと思います。

【田村座長】 他(ほか)に御意見はありますでしょうか。

【福原参与】 「(3)指定管理者制度の運用」のところについては「それぞれの運用目的に沿った創意工夫のもとに,様々な取組がなされている」というのだけれども,これは「なされるべきである」ということですか。もうしているから構わないではないかということなのでしょうか。丸投げではいけないということなのかしら。つまり,それは丸投げだと問題が起こるので,指定管理者制度を運用する部分をうまく考えてやりなさいということなのかしら。記述の趣旨が読めないのですけれども,いかがでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】  この点につきましては,将来,法律ができればということではありますが,指針の作成の際に1つテーマになるのかなと思っております。実際問題,我々も地方公共団体にヒアリングした際の率直な感想を申し上げると,本当に一生懸命にやられているところとそうでないところと,温度差はございます。ただその中で,全部の劇場が指定管理者制度の下できっちりやってないのだということを言うのは,状態としてはおかしいと思っておりますので,やっているところもあれば,運用としてなかなか難しいという不十分な状況になっているようなところもあるという記載をさせていただきました。今後,指定管理者制度を導入するかしないかについては,地方公共団体が考えるべきことでございますので,国がまず一義的にどうすべしというものではないと思っております。ただ,そうした中で,国としてもなるべくその趣旨に適した運用がなされることを期待しているということがございますので,先ほど申し上げたような指針の中で,今後いろいろな運用の仕方について示していきたいと思っております。その前段といたしまして,このまとめにおいては,こういうやり方がいいのではないかという提案をいろいろ示させていただいているという位置づけでございます。

【福原参与】 大体わかるのですけれども「なされている」といる書き方はどうなのでしょうか。

【大川芸術文化課課長補佐】 もう十分だというふうに聞こえるということでございますか。

【福原参与】 「なされている」のならそのように聞こえますね。あるいは,「なされていない」のだったら,もっとなされるべきであるということなのかと聞こえます。
【大川芸術文化課課長補佐】 わかりました。1段落目と2段落目との対比の中で,3段落目という形でつくっておりますが,今御指摘いただきましたので,書きぶりは検討したいと思います。我々が思っていることは先ほど申し上げました,ちゃんとやっているところもあれば,ちょっとどうかなというところもあるという中で,両論併記ではないですけれども,実態としては2つの側面があって,制度の運用に当たっては,全国なるべくいい形で取り組まれることが望ましいと考えておりますので,今の御指摘を踏まえた修正ができれば,検討させていただければと思います。

【片山委員】  「様々な取組も見られる」くらいにしておくといいのではないでしょうか。

【三好委員】  「(3)指定管理者制度の運用」の一番最後に「指定管理者の評価」という項目が新しく入ってきています。項目を追加すること自体はあえて反対はしませんが,評価という言葉をここで使うのが適切かどうかということについてお伺いしたいと思います。また,ここで書こうとしていることは,別に指定管理だけの問題ではなくて,そもそも文化芸術における政策評価とかかわってくることになってくると思います。ただ単にここに指定管理の評価というだけで,例えばそういう定性的な評価手法が設定し云々(うんぬん)という内容でいいのかどうかという点についてお伺いしたいと思います。この分野はむしろ太下委員の方が詳しいと思いますので,御意見を更にいただければと思うのですけどもいかがでしょうか。

【太下委員】  今,御意見をお聞きして,まさにそのとおりだなと思いました。改めて見てみると,確かに指定管理だけの問題ではなくて,劇場,音楽堂の機能がよりよくなっていくためにPDCAサイクルを回していく必要性があることを考えると,むしろ指定管理者の評価については,総論部分,具体的には4ページ,5ページ目あたりに記載した方がしっくり来ると思いました。劇場,音楽堂の評価を行う中で,当然そこは指定管理者制度を導入していれば,指定管理者の評価もあわせて行うということになるかと思います。

【三好委員】 更に言えば,文化芸術に関連する施設としての評価の在り方みたいなことは,それはそれとして一つ重要なこととして,別途考えてもいいではないか,もう少し幅広く議論の対象としてもいいのではないかと思います。自治体が直接やるよりも,より専門性のある事業者にやってもらおうというのが本来指定管理の意義のはずです。

【根木委員】  定量的な評価ばかりやっていると,指定管理者にとってマイナスの評価になることもあると思います。そうではなく,その施設の設置目的に即した事業展開をするのであれば積極評価をしていいのではないかという意味合いで,ここに置かれたのだろうと思います。したがって,むしろこの記述のあった方が,指定管理者にとってはベターではなかろうかという感じがしますが,いかがでしょうか。

【三好委員】  あえて記載がこの部分にいらないと言っているのではなくて,この部分だけの問題ではないと考えました。今,根木先生がおっしゃるように,むしろ指定管理者が運営することによって,よりプラスになったところを積極的に評価するという姿勢を出してあげればいいと思うのです。

【根木委員】  私は,そういう姿勢が出ていると読み取っていたのですが。

【三好委員】  そうですか。失礼しました。

【根木委員】  そうかどうかよくわからないけれども。

【福原参与】  全くそのとおりなのですが,例えば評価して毎回CとかDがついていた場合,どうするのですか。

【大川芸術文化課課長補佐】  地方自治体の判断にはなると思いますが,次の選定委員会の際にそれを踏まえた選定をすることになると思います。国から地方自治体に対してこうしろという権限はありませんので,そういう状況であることを踏まえた上での自治体の指定管理者更新のときの判断になるのかなと思います。

【福原参与】  そうするとやっぱり選定した人にも責任がありますね。何年かさかのぼって。選定についてもPDCAサイクルが回らないと駄目なのですよね。

【太下委員】  そうですね。指定管理者制度が恐らく参考にしたと思われるイギリスのPFIという事例においては,10年,20年とか期間が長期なものですから,やはり必ずうまくいくとも限らないという状況なのですが,その期間の途中で設置者側がその事業者に介入できる権利があるのです。これは設置者側の義務でもあるのです。今は指定管理期間がだんだん長期化している傾向があります。これ自体は私はいいことだと思うのですけれども,長期化した場合は必要があれば設置者が事業に介入できるような権利と義務がより明確になってくるのではないかと思います。

【福原参与】  太下さんが,ロイヤル・アーマリーズ・ミュージアムというので,とてもすごい論文を書かれています。

【太下委員】  今御紹介いただいたのはイギリスのPFIの失敗事例についての論文です。新自由主義的な考え方で文化施設を経営することがいいことではない,ということを書いています。

【片山委員】 指定管理者の評価というところでいきますと,指定管理者制度を導入したときに,大幅な規制緩和で指定管理者の範囲を,法人,その他の団体で,個人以外だったら何でもいいというところまで広げたのですけれども,もう1つ,地方自治法の中で,指定管理者は議会で議決をしなければいけないということを決めているのです。これはかなり大事なことです。民主的なコントロールが入るということですので,行政がもしお手盛りで審査会をやって選んでいても,それを民主的なチェックによって,きちんと担保しようというところがあります。地方行政の中では議会をある意味骨抜きにするというのが多いですけれども,議会に対して,指定管理の状況に関する情報の開示をしていく必要があるのではないかと思います。そうすると,行政が評価を行い,それが議会で議決をする段階でもチェックが入るという形になります。これがきちんと運用されるように,議員のレベルを高めなさいと書くわけにはいかないと思いますけれども,情報開示とか議会に対する説明をきちんとしましょうということを書くことも必要なのではないかと思います。

【根木委員】  もう1つ,よろしいでしょうか。「指定管理の期間」の項目上に「企画提案型の募集を行うなどの工夫をすることが重要である」とありますが,実際の公募では大体が企画提案型になっているので,「企画提案型の募集に重点を置くなど」といったような書き方にした方が適当という感じがいたします。
 それからもう1点,「(2)劇場,音楽堂等に配置される人材に係る資格」のところですが,最初の2つの項目と真ん中の2つの項目が,それぞれ舞台技術者とマネジメント人材について,最後の項目がまた舞台技術者についてのことだと思います。したがって,最後の項目を上の2つの項目に近づけるような形で,もう一度再整理していただいた方がよろしいのではないかと思います。

【田村座長】  私の立場で言わせていただくのは恐縮でございますけれど,4つ目の項目のところで,「必要性や効果,今後の劇場,音楽堂を取り巻く状況の変化などを踏まえ,更に検討する必要がある」となっております。資格ということは,将来的にそれが国がということにはならないとしても,私は将来的にある意味では最低限は必要ではないかと思います。そうでなければ向上は望めないと現状感じています。図書館では,上級司書を設けました。要するに,経験10年,論文,それから社会貢献を見て上級司書を決めることになっています。そうしないと図書館司書の向上は望めないという,ことでそうなってきたみたいです。というのは,5.(1)に,「人材に求められる資質や能力は…分野によって異なる場合があること」と記載されていますけれど,私は,芸術の分野の知識は違っていてもマネジメント能力は同じだと思います。どれ一つの分野しかわからないスタッフではやっぱり困るのです。特に各地の文化施設ではそうだと思います。1分野しかわからない人は,やはり公立文化施設を管理,運営していく上では非常に困るというのは現実でございます。
 ほかに意見はございませんでしょうか。どうぞ。

【太下委員】  今から述べる意見については,どこかに書いた方がいいのか,又は書かなくてもいいのか御検討いただければと思います。この検討会でヒアリングを連続してさせていただいたときに,劇場・音楽堂がつくっている作品を映像としてきちんと保管して,それを配信しているという事例のお話がありました。これは人材とか資金が非常にかかる話で,一朝一夕には行かないのでしょうけれども,やっぱりこれからの劇場・音楽堂はそういうアーカイブ的な機能というものも非常に重要になってくるのではないかと思います。改めて言うまでもないことですけれども,劇場というのは常にその場でパフォーミングアーツが生まれて消えていくわけですけれども,アーカイブ機能があれば,時間的,空間的な制約から解き放たれて,特に公立文化施設でつくられたものについては,その場にいなかった人たちや,後世の人たちにも提供できるということで,全く新しい劇場,音楽堂の事業展開ももしかしたら開けてくるかもしれないと思います。劇場・音楽堂がフローからストックというか,よりミュージアム的な機能というのでしょうか,そういったところにも将来的には目配せしていく必要があるのではないかと思います。

【田村座長】  よろしゅうございますか。では,まだ御意見がおありのようでしたら,どうぞ文化庁に御提出くださいませ。
 それでは,次回の取りまとめに向けて事務局において再度整理していただきたいと思います。今後の日程などについて,事務局より御案内をお願いいたします。

【大川芸術文化課課長補佐】  本日は大変御議論いただきまして,ありがとうございました。
 次回の日程につきましては,1月の中旬あたりで今,調整をしておりますので,おってご連絡をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【田村座長】  それでは,本日はこれで閉会にいたします。ありがとうございました。

ページの先頭に移動