国立文化施設等に関する検討会(第7回) 議事要旨
1.出席者
(委員)
福原座長,竹内座長代理,織田委員,町田委員,水嶋委員,宮島委員,宮田委員,山下委員,吉本委員
(独立行政法人)
加茂川国立近代美術館東京国立近代美術館館長,遠藤国立文化財機構理事,崎谷日本芸術文化振興会理事,折原国立科学博物館理事
(事務局)
笹木文部科学副大臣,近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,田中政策評価審議官,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,伊藤大臣官房審議官,大木文化庁政策課長,塩見社会教育課長,滝波文化庁政策課企画調整官,高比良文化庁政策課独立行政法人支援室長,岩佐社会教育課企画官
2.開会
開会に当たり,笹木副大臣から以下の挨拶があった。
【笹木副大臣】
国立文化施設は,独立行政法人制度の下で予算・人員の削減,評価疲れ等の課題があり,本検討会でも種々議論され,機動的な美術品等の購入が可能となる仕組みも含めご検討頂いてきた。今後各施設がより主体的に望ましい運営ができる仕組みについてご提言頂けたら有難い。
新しい政権として,文化芸術あるいは科学技術も含めたソフトパワーを日本からもっと発信したい。国立文化施設はその拠点でもあり,もっと意欲的なこともしていかなければならないが,予算がきついとか,行政刷新会議から良い指摘もあるがそうでないのもあるかもしれない。こうした議論を我々自身,深化させたい。制度の見直しや改善を含め,知恵と提案を頂ければ有難い。
3.議事内容
続いて,事務局より前回の論点整理(素案)からの修正点を中心に配付資料について説明が行われ,その後,次のとおり意見交換が行われた。
(1)論点整理(案)について
【織田委員】
「文化に関する価値」は分かりにくい。時代,歴史,地域,表現の仕方の違う諸々の日本の文化の多様な価値観に関わるという意味で捉えるべきで,そのような言葉に置き換えられないだろうか。よい智慧があれば伺いたい。
【水嶋委員】
本日「インターネット・ミュージアム」から「一度はぜひ!と人にすすめたいミュージアム」ランキング結果発表があったが,それによると,1位:東京国立博物館,2位:国立新美術館,3位:国立科学博物館,4位:国立西洋美術館で,上位4位は全て国立であり,以下5位:東京都庭園美術館,6位:江戸東京博物館,7位:根津美術館となっている。国民から見れば,ぜひ勧めたいミュージアムとしては国立が多く,国はこうしたデータを利用し,主張すべきは主張して欲しい。
【遠藤国立文化財機構理事】
「独法制度の問題点」の最後の○「特別展関係」は,現在の仕組みが日本独特のやり方で,文化事業に力を入れているマスコミと,資力的に乏しい法人とが協力して大規模な展覧会を開催する協力の方式として,一定の成果を上げてきたという趣旨を入れて欲しい。
【町田委員】
特別展の開催に関する今までのやり方は悪いものではないが,様々な状況の中で工夫する余地が出てきている。
【宮島委員】
「(2)法人の目標設定及び評価」で,評価に当たっての文化政策との連携に関し,第三者専門的評価機関として文化審議会の例示があるが,文化政策を担っている重要な機関である審議会を第三者の例示に入れて良いのか。個人的には明らかに第三者ではないと思う。
【滝波企画調整官】
国立文化施設等は国の文化政策の中核を担う機関であり,国の文化政策との連携が図れるような枠組みを検討すべきと考え,文化審議会が持っている機能を何らか活用できる局面がないかと例示しているもの。
【宮島委員】
第三者の専門的評価機関と,文化政策との連携を図る機関とは別だと思う。第三者の専門的評価機関が独立的な機関であることが明確となる表現にして欲しい。
【吉本委員】
文化審議会は大臣から諮問を受けて審議をしているものであり,文化審議会は第三者機関であると言えると理解している。
【宮島委員】
文化審議会は文化政策を立案する機関であり,そこが法人を評価すると自己評価につながる。文化政策と連携するのは当然だが,そこは分けて考えるべき。
【加茂川国立美術館東近美館長】
審議会は行政組織の中に法令上位置付けられているが,行政に対する第三者的な立場からの提言や建議を求められている。行政的な組織としての位置付けられているものの,その機能面から見て,第三者性は担保されていると思う。
【田中政策評価審議官】
文化審議会が第三者機関であることは間違いないが,第三者専門的評価機関とは言えないと思う。科学技術など他の分野でも専門的評価機関は別に独自の機関として独立行政法人評価委員会がある。そこと連携する場としての文化審議会は良いと思うが,専門的評価機関とは一線を画すべき。
【関文化財部長】
今後どういう制度設計,どういう機関が評価するのが適当かという判断の問題。独法評価委員会も文化審議会も国の審議会であるが,文化審議会は国の政策に深く関わってい て,その機関がその政策の中核を担う機関である国立文化施設等の評価もやって良いかという,兼職,兼ね方の問題と思う。新しい制度を作る際,どの側面を強調して考えるかに関わる。
【福原座長】
普通の第三者評価機関の全く畑の違う者が価値観の違う形で評価すると役に立たない。そこで,文化に対する見識がある者が評価することが前提になる。
【織田委員】
11頁。新国立劇場の海外公演への支援について,具体的に財政的,人的な組織体制整備も必要であり,ぜひ追記頂きたい。
「おわりに」は,もう少し強い表現で提言できないか。芸団協の文化予算削減反対署名が60万人以上集まり,来年早々には国会に提出すると聞く。関係団体,議員連盟との提携も含め,それらへの働き掛けを強めることを盛り込めるかどうか検討すべき。
【山下委員】
「おわりに」末尾は,「期待する」では弱いので「切望する」など強い言葉に変えたら良い。
【織田委員】
「おわりに」は,「国家と国民のために望ましい体制・仕組みが可及的速やかにそして着実に整備されていくことを強く望む」など,アピール性のある文言にすべき。
【宮田委員】
国民の広く,確実な支持が既に得ているからこそ「強く切望する」などが良い。
【町田委員】
8頁「自己収入増に向けたインセンティブが働く仕組み」の3つ目の○は,「(4)収蔵品等の充実」と連関できるよう,美術品など収蔵品のコレクションの充実等の例示が含まれると良い。
【宮田委員】
10頁「アーツカウンシル」は,文化審議会文化政策部会でも同時に審議しており大変有難いが,「評価・選定するような仕組み」の部分は,「実行する」ぐらいの強さがあって良い。なお,同部会では「日本版アーツカウンシル」という言葉で大変苦労した。
【崎谷日本芸術文化振興会理事】
「日本版アーツカウンシル」は,適当な言葉でないので使わないで頂きたい。芸術文化振興基金をしっかり拡充し,名実ともに「アーツカウンシル」になって,いずれ日本芸術文化振興会から飛び出しても良いぐらいの趣旨が通るように書いて頂きたい。
【宮田委員】
「アーツカウンシル」という言葉については,文化審議会文化政策部会でも行く行くは良い適切な日本語にしたいという議論をした。
概要は,もう少し少ない方が受けるのではないか。まだ文字数が多い。
【水嶋委員】
8頁「建築関係資料」は,特に建築を取り出すよりは,産業遺産,近代化遺産,産業・技術関係資料などの言葉が良いかと思う。
【山下委員】
7頁「例えば文化審議会等も活用し」は,「参考にし」とすれば,利用するわけではなく表現が弱まって,「文化審議会」も出るので良いのではないか。
【吉本委員】
「おわりに」は,最後が「切望する」など強い表現に変わることになったのは良かった。
【竹内座長代理】
11頁。新国立劇場の地方公演,海外公演について,必要な支援として体制整備について発言があったが,具体的には何か。お金の問題。
【織田委員】
具体的には,必要な財政的処置及び組織体制整備を行うべき。お金とそれを扱う体制の整備も併せて行う必要がある。
(2)論点整理「概要」について
【吉本委員】
資料のタイトルが「論点整理」となっているが,一言で何が言いたいかが出せないか。例えば,基本認識の2つ目の○にあるとおり,このままでは我が国の文化破壊につながりかねないので,独立行政法人制度を見直して新たな法人制度も検討すべきであるなど,一文で難しければ三文ぐらいでも文言があると良い。ただ,余り集約すると漏れがあって誤解を受けるおそれもある点に十分に注意しなくてはいけない。私の理解としては,国立文化施設は現行の独立行政法人制度の中ではもう立ち行かなくなっていて,それを抜本的に見直し,国の顔としての国立文化施設にすべきであることが我々の議論の結論だと思うので,その趣旨の一文があると良い。個別の内容は,ここに列記されている。
【山下委員】
「論点整理」は決まった単語か。分からない人が見ると「論点整理」とは何かと思う。
【福原座長】
例えば要約版の前に2,3行「国立文化施設は国の根幹で,それが今のままでは衰退していく可能性があるので下記のようなことを議論し,緊急に○○が必要だ」と書いたらどうか。
【竹内座長代理】
概要の案は短かったが,議論していく中で,これも足りないあれも足りないと,フォローの全体性が頭にあって,書かないと指摘を受けるのではないかと。
【宮田委員】
概要中の「検討する」は何もしないことになりそうなので,言い切りにして欲しい。
【福原座長】
概要の要点2で「各法人が外部資金獲得を含め自己収入の一層の拡大に努力」とあるが,これは既定の事実で,ここに書くことが必要か。
【崎谷日本芸術文化振興会理事】
そこは,法人が努力することが先に出るのではなく,まず国が予算措置することをきちんと書いてもらいたい。
【竹内座長代理】
国の方針として,国の予算を増やさないで充実しなさいという禅問答のような課題があるので,それを無視して金がないから寄越せというのは説得力がない。ここは,政府方針を知っていることをきちんと明記したというニュアンスがある。
【宮島委員】
「背景」の「Ⅲ基本認識」が「責任をもって必要予算の拡充を」で終わっている。趣旨は分かるが尻切れトンボなので,もっと強く言った方が良い。
【吉本委員】
これを公表したときにきちんと報道して頂きたい。短く,何を言っているかが分かるものがあれば新聞機関等が取り上げやすい。
【竹内座長代理】
要約することと,世間にアピールするプレスリリースの要素も欲しい,あるいはキャッチコピーも欲しい。しかし世間にアピールする機能をこの概要に全部持っていくのもどう かと思うので,やはり分けないといけない。
【福原座長】
本体の表紙にこの要約を2,3行入れれば良いと思う。
【宮田委員】
謳い文句,キャッチコピー。国立大学も似たケースで議論しており,「光る人材,強い大学,元気な日本」という3つの表題を作って,論文の前に大きく書いて見せたら,ある知事が下は何も見ないでその部分だけ何回も言ったので,しめたと思った。福原座長がおっしゃったように,表紙に適切な表現を入れたら読者が段階的に入っていきやすい。
(3)公表及び公表後の取扱いについて
【吉本委員】
論点整理が公表されたら,ぜひ行ってみたい美術館・博物館の上位4館に置いて,来館者に届く仕組みを検討できないか。ホームページで当然公開されると思うが,美術館・博物館,あるいは劇場の来館者に,日本の文化政策,文化予算が少ないとか,国立文化施設が独立行政法人の中で非常に困っていることを直接訴えることも工夫して良い。それが「おわりに」の「国民の幅広い支持」を得るための方法にもなるので,検討してはどうか。
【福原座長】
国民の幅広い支持を得るのは,これから得るのでなく,既に得ているからということ。
【宮田委員】
支持を得ていないのは国だけだ。
【福原座長】
長く議論して頂いたが,ほぼ議論は尽きていて,表現をどうするかに絞られる。座長,座長代理と事務局でこの辺を考えることにして,取扱いをどうするかも含めて次の段階に進みたいと思うが,いかがか。報告書ができたら取扱いはどうするのか。
【滝波企画調整官】
9月にこの議論のスタートを切るとき,文化審議会文化政策部会で宮田部会長から国立の検討をしようという話があって検討に着手した経過があるため,文化政策部会が開かれる折に,本検討会の成果物をご報告頂くことが必要と思う。実務的には文化政策部会が来週20日に予定されており,福原座長が文部科学省参与の立場でもあるので,その折に福原参与から論点整理についてご報告頂ければ,これからの後押しになると思う。
【福原座長】
そのときまでにこの表現が直るという条件付きで,お陰様でこのような提言ができたことをご報告すべきと思っている。文化政策部会に報告した後はどうなるのか。また,マスコミ発表はどうするか。肝腎の4施設の皆さんに対する徹底,周知はどうするか。
【滝波企画調整官】
独立行政法人の見直しは政府全体で引き続き取り組むが,今後は第2段階として,独立行政法人の制度・組織の見直しの検討を進めていくとされている。具体的な検討はこれからだと思うが,我々としては本検討会の提言事項をなるべく政府全体の検討の場にぶつけていきたい。
公表については,20日に文化政策部会があるので,その時点で成果物として取りまとめたものを同時に公表していきたい。
各法人から本検討会に毎回ご出席頂き,力強くご意見も頂いたので,各法人への周知は大丈夫と思う。
4.閉会
近藤文化庁長官より以下のとおり閉会挨拶があった。
【近藤文化庁長官】
大変良い論点整理ができつつある。分かりやすく短いフレーズでアピールし,世の中の支持を得て,実行することが一番大事。文化政策部会でも文化芸術振興基本方針についてご審議頂いており,国立文化施設が強固な基盤の下に日本の文化芸術振興の中心になっていくよう,2つの提言が組合わさっていく仕組み,工夫,アピール,働きかけ,我々自身による実施が必要。提言で終わりでなくこれが始まりであるので,引き続きご指導を頂きたい。
最後に,座長より,論点整理の修文について座長・座長代理に一任願いたいこと,来る文化政策部会に報告・公表すること,独立行政法人の制度・組織の見直しの検討に論点整理の提言を適切に反映すべきことについて説明があり,これまでの委員の協力に対する謝辞の後,閉会した。
(以上)