議事要旨

新国立劇場及び国立劇場おきなわの運営の在り方に関する検討会
(第3回)議事要旨

1.日時

平成23年6月3日(金)14:00~16:00

2.場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3.出席者

(委員)

渡邉座長,田村座長代理,伊藤委員,大城委員,樫谷委員,田中委員,中山委員,西川委員,牧委員,吉本委員

(文化庁)

近藤文化庁長官(途中退席),吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,大木文化庁政策課長,山﨑芸術文化課長,湊屋伝統文化課長,高比良文化庁政策課独立行政法人支援室長,滝波文化庁政策課企画調整官,牛尾大臣官房総務課行政改革推進室長

(オブザーバー)

白石内閣官房行政改革推進室内閣参事官,崎谷日本芸術文化振興会理事,韮澤新国立劇場運営財団常務理事,宜保国立劇場おきなわ運営財団常務理事

4.議事内容

(1)開会,議事の進め方

 渡邉座長から開会宣言後,本日は資料2及び3を中心に検討すること,本日の後もう1回検討会を開催することを前提に本日の議事を進めることについて説明があった。
 続いて渡邉座長から,本日の議事は,前回の大きな論点である[1]運営形態ごとの収支比較(特に統合する場合の寄附金・繰越金減収,合理化余地の有無),[2]芸術監督(役割や理事長・常務理事との関係),[3]おきなわ財団の在り方(財団である理由,沖縄全体で支える体制,職員の育成等),[4]国立劇場等を振興会直営とする理由――の4点について考え方の整理を行い,その後あるべき運営形態に関する意見交換を行う旨説明があった。
 続いて事務局から資料1~3に基づき概括説明があった。

(2)運営形態ごとの収支比較表

 崎谷日本芸術文化振興会理事から,資料2の14頁「各運営形態の収支比較表」について説明後,以下の意見交換が行われた。

【樫谷委員】

 新国立劇場は,財団の方が寄附金も集まりやすい,コスト構造も安い,繰越金も使えると理解したが,そうすると伝統芸能も含め振興会も財団にした方が,寄附が集まりやすい,コスト構造が安くなって良いということになるがどうか。

【崎谷理事】

 基本的な設置形態の在り方は国全体で考えるべき。100余の全ての独立行政法人に独立行政法人通則法が適用されているが,独立行政法人とは,国の政策として公共的な見地から行わなければならないもので,国が直接行うのは必ずしも適当でないか必要はないもので,民間に任せてはうまくいかないものについて,自立した組織を作り,国も支援しながら効率的・効果的な運営を図れるようにするもの。この制度ができてから独立行政法人日本芸術文化振興会法ができたが,それ以前の昭和41年の特殊法人設立時から,法律で国立劇場が設置されており,それが日本芸術文化振興会に変わった。日本芸術文化振興会は,伝統芸能の保存・振興,現代舞台芸術の振興・普及,基金による多様な芸術文化活動に対する助成の3つの使命がある。法律に基づき使命が定められ,文化政策の一環として業務を行っている。
 新国立劇場は本来独立行政法人でも良いが,劇場設置に当たり,公演事業について欧米等では寄附金等で賄っているが,足りない7億円を国が全部補填できるのかという議論もあった。より柔軟に運営できる仕組みを考え,財団を作り,そこに振興会から委託することとし,法律で設立された振興会が最終責任を持ち,文化庁に対し説明する。その中で財団がある。

【樫谷委員】

 国民から見ると安くて良いものを提供するのが一番良く,そのために法律改正することは問題ない。ただ財団法人の方がより柔軟な運営がしやすいという理解ではないのか。

【崎谷理事】

 財団の方が繰越金を取崩せるとか,柔軟に動けるという要素はある。

【樫谷委員】

 財団であることで寄附も含めて大胆かつ柔軟に運用されていると評価している。逆の発想で,では振興会もそうすれば良いとなるので,それについて根本的な説明が必要ではないか。

【崎谷理事】

 昨年,独立行政法人に位置付けられる振興会,国立美術館,国立文化財機構等を対象として「国立文化施設等に関する検討会」を文化庁が開催し,より柔軟な運営ができ,文化の特性に応じて安定的・継続的な支援ができる仕組みとすべきとの議論がされた。固定的な独立行政法人が良いという訳ではなく,柔軟に変えられるものは変えて欲しいと考えている。

【樫谷委員】

 「収支比較表」のDの国から財団への直接委託について,国が運営責任を持つと自由な創造活動が制限されると読めるが,振興会についても同じではないか。そういうことのない制度設計に変えてくださいとなるのかも知れないが。
 公益法人への支出抑制方針は,振興会の下にある公益法人でも基本的に同じで,国直接だと支出が制限され,独立行政法人の下にあると制限されない訳ではないのではないか。

【崎谷理事】

 公益法人への支出抑制方針は,数年前に財団法人,社団法人等へ国が支出しているお金の3割削減が示され,今もその考え方がある。政府の方針で独立行政法人にも厳しい考え方が示されており,政府全体で考えるべきこと。国が運営責任を持つことにより,自由な創造活動が制限されるおそれがあるのは当然で,文化庁が国立劇場,新国立劇場のような芸術文化の運営について,直轄的に指示するのは不適当。国が大きな枠組みを示し支援する中で,振興会は伝統を守り,復活し,通し狂言をし,新たな脚本も考えながら,国からの直接的な指示等は受けずに自立して運営してきた。文化庁が直接責任を持つのではなく,芸術文化についてはできるだけ抑制的な姿勢で芸術界,芸術団体,芸術文化に携わる人たちが自由闊達に創造していけるよう,文化庁はそれを支援していくことが大事。

【樫谷委員】

 国が運営責任を持つのは問題であり,文化庁は劇場運営のノウハウがない。能力のない国が責任を持つと自由な創造活動が制限されるおそれがあると言うなら分かる。要するにプロに任せるべきと読めば良い。

【中山委員】

 新国財団が公益財団法人に移行したら文化庁直轄でなくなり内閣府にぶら下がる。助成は文化庁から得るが,公益財団法人の所管は内閣府となる。運営のガイドラインがなく試行錯誤の状況。公益財団法人になっても相変わらず文化庁にぶら下がる印象を持つがどうか。

【崎谷理事】

 移行後は内閣府所管になるが,財団法人が文化行政の推進の必要性から直接国からお金をもらうなら,お金を渡すところが直接物を言うはずで,その際に自律性を損なうようなことは避けなければいけないとの趣旨。

【渡邉座長】

 文化行政と法人管理は違う。直接国から財団をぶら下げると,民間が運営しているなら民間はもっと独立しろとなり,文化への国の支出に影響が出るのではないか。今の財政状況からいけば国はそういうもので,新国立劇場の委託費確保も危うくなるのではないか。文化行政の盾である振興会が直接運営するより財団形態の方が良いというのが今までやってきたこと。

(3)芸術監督問題

 韮澤新国立劇場運営財団常務理事から,資料3の12~15頁に基づき芸術監督について説明後,以下の意見交換が行われた。

【西川委員】

 資料3の15頁の基本構想,演目,基本コンセプトの段階で,理事長や理事が入るのか,それとも芸術面は任せるから,細かい実務的な経費や演出家等を誰にするかなど聞いた上で理事長が承認するのか。

【韮澤理事】

 理事長によって多少違いがあるが,芸術監督に基本的にお任せしている。例えばオペラなら約3年先まで決めているので,芸術監督が理事長に3年後のオペラの演目について説明し,質疑があった上でそれでお願いしている。

【西川委員】

 経営的にうまくいかない,芸術的成果が上がらない,世の中から批判があったとき,芸術監督の責任だと偏ってしまう。欧米の国立劇場等では経営面で責任を持つライセンサーと芸術監督が二人三脚で,芸術的又は経営的に失敗した場合,2人が責任をとる。新国の場合は3部門あることで運営的組織的にややこしいが,担当理事が基本コンセプトに最初から入り,経営,芸術面と一緒に検討した上で,問題が起こった場合,両方で責任をとる形にできないか。そういう改革により運営が透明になり責任の所在もはっきりするのではないか。

【渡邉座長】

 新国立劇場では,芸術監督の役割が芸術面の制作だけで,貴重なお金をどう上手に使って良い作品を作るのかというプロデュース責任は理事に任されている。理事は個々の演目にどの程度関与しているのか。内部会計的にバレエ,演劇,オペラにどうお金を配分しているのか。3年計画の立案時,このやり方ではこれだけコストがかかる,どうやって良いペイを払ってもらうかについて芸術監督が責任を持たなくて良いか。指摘の内容は,全部理事が持っているのではないかというもの。次回までに事務局と打合せて欲しい。芸術監督の役割は,運営交付金を最大限有効に使うため,興行におけるコストや入場者数などの責任を託されていること,それを全体としてチェックするのが理事などのガバナンス,そのためには財団形態の方が良い。

【牧委員】

 新国立劇場のバレエ団員は60数人で全部スタッフが教え,各ダンサーに一番可能性のあるレパートリーを選ぶ。バレエ監督の仕事の一つは,ダンサーを育て,レベルを高くし,より良いものを踊らせること。
 年にバレエ6本と決まった場合,例えば秋の芸術祭近くにメーンを持ってきて,春には有名なレパートリー化された作品を入れて観客動員の助けになる。ダンサーは何を踊っても勉強になるが,舞台がないとダンサーは錆びてしまう。劇場が成り立つようマーケティングを考えてプログラムを立て,その中で必ず良いものを入れていかねばならない。それを制作部門で決め,チーフプロデューサーと決め,それから常務理事に相談し,ほとんど通してもらっている。予算が減っていく中でも経営していけるプログラムの制作,良いアーティストを取り上げられる振付家の招聘等は,全て芸術監督の責任。失敗があれば責任を感じ,次の年により良く行う必要がある。制作部門が先に決め,上へ上げて許可を頂きたい。

【渡邉座長】

 新国財団はお金を受けて経営しているから,経営の責任体制を明確にした方が良い。

【伊藤委員】

 寄附行為上,総監督や副監督を置くことができるが,当面総監督を置く意思はないのか。

【韮澤理事】

 適任者がいれば総監督を置くことはあり得るが,オペラ,バレエ,演劇の全3分野について,芸術的に分かる人物がほとんどいないこともあって,現実には置いていない状況。

【伊藤委員】

 総監督をもし置く場合,必ずしも3部門の芸術について全てチェックできる人である必要はないが,全体の運営,特に事業に関し責任を持つため,新公益法人になれば理事の一員とすべき。部門の監督が,演劇,バレエ,オペラのそれぞれの専門の制作に対し責任を持つ今の在り方は問題ない。理事会,理事長との関係から言うと,2頭立ての責任体制を持つには,総監督的なものが必要になってくる。3部門全てについてのプロはいないので,総合プロデューサー的なインテンダントのようなものであった方が良い。先の展望として考えているか。

【韮澤理事】

 その場合,総監督と監督はどういう関係か,例えば総監督の考えとオペラ監督の考えがどう整理されるか,総監督の役割と理事又は理事長の関係はどうなるかなど整理が必要。

【渡邉座長】

 映画制作ではプロデューサーと監督は明確に機能が分かれており,ものをつくるとはそういうもの。新国財団の場合,総監督がプロデューサーなのか担当理事がプロデューサーなのか。後者だと全体の運営によりコミットし責任を持つべきということではないか。組織がお金を使うに当たり吟味され,評価され,常に良い方向に生かされていないと世間から評価は受けない。芸術監督が芸術だけやるのは良いが,映画でいうプロデューサーの責任は理事が負うのか。

【韮澤理事】

 芸術監督は芸術上の責任,理事は事務上の責任を負う。芸術監督が上映の演目を決めるときに営業を考えずに自分の好きなものを決めることはない。最高の経営戦略等を考える幹部会議が月1回あり,監督も出席し,毎月各演目の入場率等のデータを出し,監督もそれを見て経営面も考えながら決めていると考えている。日常的にも理事と話しながらやっており,2つがばらばらということはない。

【渡邉座長】

 理事会が最終的には全て責任を負うが,その前に会議で何となく決めているというのでは,納得しないと思うので,そこを考えて欲しい。

(4)おきなわ財団の在り方

 宜保国立劇場おきなわ運営財団常務理事から,おきなわ財団の在り方について説明後,以下の意見交換が行われた。

【樫谷委員】

 おきなわ財団は,財政規模が小さく一生懸命やっても厳しい。沖縄県民も寄附を出しやすいし,地元企業も財団収入の1/10を負担しているが,最低限運営でき,本来の目的が達成できるためには国や振興会がどれぐらいお金を出せば何とかなるのか。沢山あれば良いに越したことはないが,国の財政も振興会も厳しい。

【宜保理事】

 国立劇場おきなわの企画制作の演出家は50%しか仕事をしていないと言う。伝統を受け継いでそれを公開するだけになっていて,新しい組踊を創作するための費用,作品の募集,舞踊や沖縄芝居の新しい作品を作るところに予算が回らない。今のところ7,000万円ぐらいなので,1億円ぐらい稼げば考えている仕事ができる。

【樫谷委員】

 プラス1億円欲しいと。

【渡邉座長】

 国立劇場おきなわの観客は年間1.6万人,助成が7億円。職員が育たない,地元からお金が集まらないではなく,7億円をもっと有効に,演出の充実,芸能の文化の保存度,認知度の向上とか,むしろ質の面,芸能面によりお金をかけるとか,存在性がないといつまでもサポートを受けられない。根本的な建て直しにはどういう形態が良いか。今のままの形態が良いか振興会直営が良いか。直営ではますます遠くなる可能性もある。組踊の伝統芸能としての価値と存在性を高めるには,お金の使い方を含め人員構成・組織の改革が必要。振興会直営にしても今の形態を保つにしても,同情だけで維持されることは検討が必要。

【田村座長代理】

 以前佐藤太圭子さんをお願いしたが,保存会の人たちが組踊など伝統芸能を支えることを本職としているのか。佐藤さんも市の職員だった。日本のバレエ界はお教室を持って成立させ,オーケストラはオーケストラ活動でプロ活動をしているが,沖縄の特殊な芸術,伝統芸能を支える人の状況はどうなっているか。

【宜保理事】

 組踊は琉球王府時代にその役目は終えており,組踊だけで生活している役者はいなかった。琉球方言で芝居や舞踊をし,組踊はイベントでやる程度のもの。組踊を興行として成功させるための知恵をこれから考える必要。名作もあまり決まっておらず,王府時代に演じられたがその後1回も演じられていないものも復活公演しているが,面白くないから演じられていない面もある。名作を県民,国民に見せ,組踊の認知度を高めるため,当劇場では中高校生向け鑑賞会,父兄と子供の鑑賞会を設け普及に努めている。開場から10年足らず,これから良い方法を考えていきたい。入場率60%の観客を達成の目安としているが,近頃は64~65%。更に70~80%に近付けるよう努力目標を設定している。
 協賛金も開場時は800~1,000万円集まったが,その後中だるみがある。経済界も応分の負担をする形で劇場が設置されたのだから,経済界もやってもらわなければいけないということで,姿勢を立て直し,協賛金を増やそうと考えている。1億円ぐらいの後援のお金があれば,理想的な形になると考えている。

【渡邉座長】

 NHK取材の放送とか,東京の国立劇場小劇場で上演しているのはどれくらいあるか。

【宜保理事】

 創立5周年までは自分でプログラムを組み試行錯誤しながらやってきた。地元公演だけでは意気が上がらないので,6年目から年2回ぐらい,国立劇場と連携して国立劇場で公演している。懸命に稽古し演劇に集中し,国民全体に紹介できる方法として,3,4年ほどこの企画が続いており,大変好評。

(5)国立劇場等を振興会直営とする理由その他両劇場の運営形態全般

 事務局から資料2の15頁に基づき国立劇場等を振興会直営とする理由について説明後,以下の意見交換が行われた。

【吉本委員】

 資料全体について確認したい。「見直しの基本方針」では「将来の運営体制について検討を行い結論を得る」とされているが,この文案では全て「運営形態」とされ,結論が「運営形態に由来しない」となると言葉が矛盾している。運営体制について運営形態と表現しているとの説明や言葉の整理が必要。
 新国立劇場は財団運営の方が民間資金の導入,柔軟な運営等で相応しいことは分かる。ところが,国立劇場等を民間団体に任せると不具合が生じるとあるが,例えば振興会の国立劇場担当者全員が新国立財団に移れば,その財団で運営できるのではないか。新国財団の方が柔軟な運営ができ,民間の資金も活用できる。独立行政法人である国立劇場は民間資金が活用できないとすると,国立劇場は民間資金を活用しなくて良いのか。振興会から新国立財団に15人出向し,新国財団の10分の1は振興会職員が働いていて,組織融合は既に起こっている。国立劇場の組織を全部財団に移管した方が全体として効率的な運営ができるのではないか。
  施設整備は振興会が直接行うが,メンテナンスは財団から外部委託しているのならば,振興会が行う施設整備業務の内容は何か。施設整備も財団に移した方が効果的ではないか。
 独立行政法人だと民間資金の寄附を集めるのは難しいと思うが,独立行政法人が直接運営する国立美術館も民間資金を活用していると思う。国立美術館では民間資金をどれぐらい活用しているか,民間資金の導入に当たり不具合があるか,事務局で調べて欲しい。

【滝波企画調整官】

 運営形態と運営体制の言葉は整理し直したい。

【崎谷理事】

 行政の一環としてやるべき仕事は責任ある法人が行う前提で,国の関与の下に特殊法人として国立劇場が設立された。調査研究経費,養成経費,人件費などの一般的管理費のように利益を生まない部分は国から補助金を得,公演事業は入場料収入や貸劇場収入で賄うというルールを作り,ぎりぎり成り立ってきた。民間会社から公演プログラムの広告料など資金をもらい,芸術祭主催公演は国から援助をもらう面もあるが,公演は国の支援なく実施できている。
 国の文化財指定を前提に,歌舞伎の場合,松竹では見取りの狂言しかできないところを復活し,通し狂言もやる。文楽は松竹も手を引き,現在興行として公演しているのは国立劇場(小劇場)と国立文楽劇場のみ。それらを一般管理費や人件費が厳しい中やっている。
 新国立劇場開場時,取り扱うものの性格から最終責任は国の行政の一環として振興会が責任を持つが,一歩緩やかな形で自由闊達にした方が良く,柔軟に寄附金も集めることができる仕組みが考えられた。別の独立行政法人にして国のお金をよりつぎ込むか寄附税制を改善してより寄附がもらえるようにする選択肢があったかも知れないが,財団法人で頑張っている。
 国立劇場おきなわの場合,組踊も琉球舞踊も日本にとって大事な芸能で国立劇場でもこれまでやっていて,伝統芸能の大きな枠組みで振興会直轄にできたかも知れないが,沖縄で育った無形文化財の拠点が必要と国が考えて作った。沖縄の人々が中心になって動かさなければいけないが,既に新国財団のやり方があったので,伝統芸能ではあるがそのやり方で,沖縄県との交流により人材を育て沖縄の支援も受けながら,6年間やってきた。それなりに定着しており,この形態を続ける必要がある。
 財団職員は制作や営業,技術についてよく知っているが,建物の整備や舞台機構の修理等は,手続,契約,管理監督が大変なため,振興会が直轄で行うよう分担している。
 新国財団は規模が小さく,毎年職員採用できないが,振興会採用の職員で財団にも適任と思われる職員を交流させているが,将来財団幹部に育っていく職員が出る前提で考えている。現在,財団の幹部は他の劇団等で働いていた人がまだ上にいるが,下が段々育っている。

【吉本委員】

 私が確認したかったのは,国立劇場の組織そのものを財団に移した方が国立劇場もより柔軟な運営ができるのではないか。振興会の施設整備の担当者5人が残っている意味はなく財団に移って一緒になった方が良いのではないか,ということだが。

【崎谷理事】

 大規模な施設整備を行うため振興会が直接的な責任を持って実施している。財団は,公演,研修,調査研究等の事業と劇場施設の運営を包括的,一体的に行っている。役割分担は明確である。現在の振興会はお金の面で不自由はあるが,独立行政法人として文化庁から自立して柔軟にやっていると思っており,振興会を財団とする必要性を感じない。

【渡邉座長】

 振興会が両劇場の施設を所有し,財団が施設を使っている。メンテナンスは全て財団で行うが,大型補修等は国の予算との関係があるから振興会がやっている。日々のメンテナンスのために振興会に人は必要なのか。

【崎谷理事】

 日常のメンテナンスは財団で行い,その経費も委託費の中に入っている。

【渡邉座長】

 施設に関する事務が振興会と財団の両方に跨っているように聞こえるのはまずい。独立行政法人は国の義務があるが,財団で民間主体になるから民間でやれとなると,政府による財政の展望が違ってくる。文化を支えるために国が一定金額を支出する場合,独立行政法人に支出するのが良いか,財団法人に補助を直接出すのが良いかになる。政府の文化財政支出と行政面で守らなくてはいけない文化の葛藤を見る気がする。国は積極的に財政補助を増やし,あるいは減らさないが,支出の形態は,独立行政法人を減らして財団へ直接お金を投入するとするなら,そういう問題を前提に考えなくてはならない。
 6頁「入場収入が平均80%の高水準を維持しており,一定の支持を得ている」とあるが,新国財団の運営を評価しているということで良いか。
 18頁「結論(骨子案)」は決定ではなく,改善すべきものは改善する前提だが,大方賛成で良いか。

【樫谷委員】

 「結論」の後半は,独立行政法人制度の見直しがされるので改めて望ましい形態を検討する,その間に業務全般の改善に努める,制度設計が見えないので慌てて検討しても仕方ないので,中身の充実をまずやろうということか。

【滝波企画調整官】

 独立行政法人制度の見直し検討は閣議決定されているが具体的な検討はこれから。一方,本検討会では様々な業務改善に向けた意見が出ており,それはしっかり対応頂くということ。

【渡邉座長】

 現政権の元々の考え方は独立行政法人全廃というものだが,全廃した場合に国の文化行政が関与しない訳にはいかない。文化に政府がどう関わりながら民間主体を取り入れ,どういう形態にすれば国民の支持の下,活性化が行われ,財政的に効率良い使い方がされるかは,この「結論骨子案」の3つめの○にかかっている。独立行政法人や財団に関して国の意思が示されれば検討はやりやすい。独立行政法人の新設はいけない,財団は減らす,国のお金は入れたくないという政府の意向を酌み取れば,うっかりした形態変化は怖くてできない。

【伊藤委員】

 振興会の改革を念頭に独立行政法人の在り方について,本検討会でこのような方向を考えて欲しいと要望することは可能か。本検討会のマターではないのか。国立大学法人は広義の独立行政法人だが,教育という特殊性を考えて違った運営形態を採っているが,そんな要望ができないか。

【滝波企画調整官】

 ご意見があれば書くことは可能。政府全体の独立行政法人制度改革に関する検討に当たって参考材料になる。

(6)今後の日程,閉会

 渡邉座長より,次回を最終回とし,その前に委員に案文について意見照会を行うこと,事務局より,次回は6月22日(水)午前,詳細は後日連絡することについて説明後,閉会した。

(以上)

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