(第1回)議事録

メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会(第1回)議事録

1. 日時

平成20年8月4日(月) 15:00~17:00

2. 場所

文部科学省 東館3階 第1会議室

3. 出席者

(委員)

安藤委員 石原委員 さいとう委員 浜野委員 林委員 古川委員

(オブザーバー)

阿部氏 石川氏 岡島氏 甲野氏

(事務局)

青木文化庁長官 高塩文化庁次長 関長官官房審議官 清木文化部長 清水芸術文化課長  他

(欠席委員)

中谷委員

議題

  1. (1)座長等の選任
  2. (2)自由討議
  3. (3)その他

○清水芸術文化課長

 ただいまから,メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会を始めたいと思います。
 本日は,お忙しい中,委員の先生方ご出席いただきまして,まことにありがとうございます。本日は第1回目の検討会ということでございますので,座長が選任されるまで進行役を務めさせていただきたいと思います。
 それでは,最初に私から本検討会の委員それからオブザーバーとして参加いただいております皆様方をご紹介させていただきます。<座席順(あいうえお順)に紹介>。
 続きまして,本会議に出席しております文化庁の関係者を紹介させていただきます。<青木文化庁長官,高塩文化庁次長,関長官官房審議官,清木文化部長>
 まず初めに青木長官からごあいさつをいただきたいと思います。

○青木文化庁長官

 第1回メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会にお忙しい中をご出席くださいまして,まことにありがとうございます。今日,メディア芸術,特に日本のメディア芸術は世界的に大変高い評価を受けておりまして,皆様もご存じのように,日本の現代文化がこれほど世界で広く重要され,また関心の的となっている時代はこれまでなかったと思いますが,中でもメディア芸術は大変な人気であり,また関心が高いわけでございますが,かねてからメディア芸術に関して国際的な拠点の整備を図ることは非常に重要だと思っていまして,このことは重要かつ緊急の課題ではないかとも思います。メディア芸術は,アニメ,マンガ,映画を初めとしまして,大変広い範囲にわたっておりますけれども,これまで外国の方が来ても国際的な拠点と言えるようなものがなかなか日本国内にも整備されていなかった。もちろん京都国際マンガミュージアムあるいは東京アニメセンターなどいろいろとございますけれども,それらを効果的に世界に示すような拠点というものが弱かったと言えるかと思います。
 また,この日本のメディア芸術が世界であるいは国際社会で果たしている役割も非常に大きなものがございまして,これについて私は今諸外国との関係で実際に経験していることでございます。アジアでもこれまで反日を叫んでいた若い人たちや中年の人たちが,日本人だと思うとにっこりするということがありました。私は,40年以上アジアに行っておりますので,肌で実感しております。これと申しますのは,各国でアニメ世代が育ってきていて,日本といえばまずアニメ,マンガ,それから映画,音楽といったところが出てくるのです。私が最初に行ったころは1965年ですけれども,専ら戦争の記憶,それから70年代は経済侵略と言われましたけれども,今や逆でありまして,文化のイメージが非常に高い日本ということが定着したのではないかと考えております。
 また,さまざまな文化的な機関や施設というものが外交においてもたらす大きな役割というものも指摘されておりまして,フランスがアブダビにルーブル美術館を建設したり,あるいはアメリカ,ニューヨークのグッゲンハイム美術館がビルバオに出展して大成功をしてアブダビにも建設し,今度は中国にも建設したりするというようなことが一種の文化外交としても大きな意味を持つような時代になりました。そこにおいて皆様から日本のメディア芸術の国際的な拠点をどう整備したらいいか,お知恵をお借りしまして文化庁ができることをいたしたいというのがこの検討会の趣旨でございます。これは国だけでできるものではございませんので,皆様のお知恵,お力をお借りして,官民あるいは財学といったものを結集しながらやり抜くことができればと思います。
 今日の日経新聞のコラムを見ていましたら,日本のキャラクターグッズが欧米で大きな関心を呼んで,それが大きな取引きにもつながっている。キャラクターグッズをみんなが欲しがって,購入するということがあって,それを東京大学の浜野先生のところでキャラクターグッズについての講義が始まったという話が書いてありました。
 それから,もちろんキャラクターグッズが単にかわいい愛好品というだけではなくて,例えば村上隆のような現代芸術のトップをいくような人の一つのモチーフになっていることもございます。いろいろな面で皆様のそれぞれの分野あるいはご専門から知恵を出していただきまして,この検討会を成功させたいと思います。
 お忙しいところ本当にありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

○清水芸術文化課長

 それでは,ここで本検討会の座長をお選びいただきたいと思います。<座長の選任> ※座長については,浜野委員が委員の互選により選出された。

○浜野座長

 私個人としても大変大事な会議だと思っております。よろしくお願いいたします。<座長代理の選任> ※座長代理については,古川委員が選出された。

○浜野座長

 まず,事務局から配付資料について説明していただき,その後,第1回目でございますので,委員の皆様による自由討議とさせていただきたいと思います。それでは,よろしくお願いいたします。

○清水芸術文化課長

 それでは,資料の確認に引き続きまして資料の説明をすべてまとめて私からさせていただきたいと思います。<配布資料の確認および説明>

○浜野座長

 清水課長のご説明に何かご質問ございませんか。座長から聞いて申しわけないですけれども,資料2の検討内容の最初の「我が国における」というのは,メディア芸術にかかっているのか,拠点にかかっているのかどちらですか。国際的な拠点というと,国内にそういうものをつくるというのと,海外にもつくる。理想は両方あったほうがいいと思うのですが,これは両方検討していいということでしょうか。

○清水芸術文化課長

 主体としては国内にあるものと考えておったのですけれども,もちろん発信していくということでございますので,海外のことまで含めてのご議論になっていくということは意義があることだと思うのですが,資料の作成者といたしましては国際的に発信するための国内的な拠点というイメージで書いておりました。

○浜野座長

 それでは,多様なご経験をお持ちの委員の方々なので,ご経験も含めて自由にご議論いただきたいと思います。

○安藤委員

 質問になるかもしれないのですが,拠点という言葉についてどういうイメージを持っていらっしゃるか。つまり,具体的な場所とか,設備とか,そういうようなイメージをお持ちなのか,ある種の団体みたいなものをイメージされているのか。当然ながら場所みたいなものも必要だろうと思うし,そのためには予算がかなり大きくかかわってくるものだろうと思うのですが。

○清水芸術文化課長

 拠点のあり方についてご検討いただきたいということなので,これから議論していただきたいとは思っておるのですけれども,事務局として考えておりますのは,メディア芸術の横断的な拠点といわれるものがないということではございますけれども,例えば映画についてはフィルムセンターが収集保存等を行ってきておりますし,またさまざまな機能を持っております。マンガは京都国際マンガミュージアムがあり,これは地方自治体と大学との協働という形態でございます。アニメ等については民間主体で東京アニメセンター等々いろいろな施設がございますので,すべての機能を一つのものに集約していくという考え方もあるかとは思いますが,既存のさまざまな拠点の機能があるということであればやはりそれは生かしながらやっていくといったことが必要なのではないかなと思っているところではございます。

○青木文化庁長官

 先ほど座長もおっしゃいましたけれども,清水課長が申し上げたことはもちろん現実問題としてございますが,同時に理想的なレベルで,今メディア芸術拠点といったらどういうものが必要か,そういう議論もちゃんと出していただきたいと思っております。つまり,現実にできることという議論と理想的な議論の2つお願いできたらと思います。

○安藤委員

 なぜそういうことをお聞きしたかといいますと,その事柄と,もう一つメディア芸術という言葉の問題とがあり,何をもってメディア芸術といったらいいか非常に難しいのではないかと思うのです。漠然とした形で我々はみな「メディア芸術」という言葉を使っていますが,片方に映画があり,もう一方にゲームがあって,その間に,もしかしたら間じゃないかもしれないけれども,マンガとアニメーションとかがあります。また,恐らく,ここには書いてないけれども,テレビもあるのかもしれません。そうすると,そういうものをどのような形である種の文化としてひっくるめていくかがあると思います。そして恐らく,そのひっくるめられたものがメディアというものなのかもしれないと思うわけなのです。つまり,今,いろいろな形で作品自身も多様に変容していますし,当然ながらそれらに関してこれからは個々の人間がそれぞれの作品をつくるような形にどんどん変わってきていくと思います。だからこそ実はそれらがどこかでうまく統合されたり,ある種うまいコミュニケーションを持ちながら力が発揮されたりするような場が必要であろうというふうにより感じるわけです。
 つまり,どこかのだれかさんが自分の四畳半の部屋で作ったものが実は世界に発信できるような作品で世界に出ていってしまうということはこれからはあり得ることであるのではないかと思うのです,そして,その方がほかのメディアの方々とも何かの形でうまく結びついて,もっと大きなものとして発信できるような形がこれから必要だろうなというふうに思っております。これは恐らく,創造においてもそうであろうし,人材育成という形でもそうであろうというような気がしています。
 漠然としたイメージとしては,そういうものもひっくるめた拠点というものが特にこれからは望ましいのではないかと思っております。
 もっと話せばまだありますが,例えば映画に関していえば,映画を3本見るとその国の文化とか政治とか経済がわかるというふうにいわれているぐらいのものであります。一方で例えばゲームのような相互の形があるメディアがあったりする。だから,文化発信としてはそれら両方ともが非常に必要なものであると思います。今はゲームとか,マンガという語り口があって,日本の文化も相当発信できると思いますし,それらが日本の政治とか経済とか文化というものをきちんと語れる形でどういうふうにでき上がっていくかということを発信していくことが重要だと思います。そうでないと日本というものがなかなか外国に対して理解されないのではないかと思います。そういう形のことも含めて考えたほうがいいのではないかというふうに考えております。

○浜野座長

 石原さんはビジネスで海外にもいろいろセンターをお持ちなのでご経験が多いと思いますけれども,それも含めて,ご紹介も含めてご発言をお願いします。

○石原委員

 株式会社ポケモンという会社でポケモンを世界に広げていくビジネスをやっております。きょうお話がいろいろあった中で2つ興味を持ったことがありまして,1つは拠点の整備というのは非常に具体的なことが既にテーマとして掲げられているので,これはいいなと思っております。そのテーマが,では場所なのか,人なのか,建物なのか,箱なのかということをあいまいにしてしまうとよくないと思いますので,せっかく拠点の整備とわかりやすくした以上,できるだけ拠点はこれですということが結果としてまとまると一番いいのではないかというふうに思いました。そういう意味でいうと,僕の拠点の整備ということのイメージは,かなり具体的な箱であったり,建築物であったりというイメージのほうがむしろ強いかなという感じです。
 ですので,先ほど青木長官がおっしゃいましたようなビルバオとかアブダビなどの新しい美術館や建物の試みなどのお話は,それらを見にいくためにサクラダパビリオンを見るのではなくて,むしろビルバオにある建築物を楽しみながら観光するような人が100万人もふえたとか,そういう話を聞くと,新たにつくられた拠点が物すごく新しい磁力となって人を集めていくような,そういう方向性に何かある種メディアセンターの理想のようなものを感じました。一方で,日本でそういったものを国際的に手がけておられる建築家の安藤忠雄さんとか谷口吉生さんとか,そういった方々の空間の表現力とか建物の魅力というものも,僕のイメージの中では拠点といわれたときに,ではどんな建物ができるとおもしろいというような方向性,それはすごくイメージがしやすいし,議論するのも楽しそうだなと思っております。
 もう一方で,それをもっと抽象化して,それは具体的な空間や場所を示すのではなくて,例えばそれはサーバーのことであるとか,あるいはネットワーク上にあればよいのだというふうな方向軸にふっていけば,それはそれで我々が得意としている分野をいろいろ語れる部分もあるのかなというふうにも思いました。もちろん理想はいろいろ広げていいのですけれども,どちらかの方向軸を明確にしていくとすごく議論がしやすいなというふうに感じました。
 商売でいうと,自分はやはり芸術というものを意識して物をつくってきたりプロデュースしてきたりしているのではないので,どうしても作品ではなくて商品をつくってきているというところから見て,こういった我々の仕事の仕方や表現の仕方や物のあり方についての考え方といったものがこのメディア芸術というものに対しての考え方に対してどういうような受けとめられ方をするのかということについてはすごく興味を持っているので,我々にとってこれは商品ですよというのですけれども,それはリーダー芸術の一つとして正しく評価してプレゼンテーションをすべきだというふうなことももちろん一方であるような気がしています。ただ,つくり手や送り出し手は,そこを全くこれまで意識してこなかったので,そういったものをどうとらえていけばいいのかなということについて興味があります。

○浜野座長

 石原さんは海外にいっぱい行かれて,何か参考になるような事例とか,例えばゲームだけでもいいのですけれども,何かありますか。

○石原委員

 ゲームに関してはゲームミュージアムというものについて日本でやったものを海外で巡回するということに協力したことはありますけれども,まだやはりゲームで一個の表現の世界とか,あるいはミュージアム的価値で成立しているものというのはあまり見たことがないです。

○浜野座長

 先週外務省の国際漫画賞の報告を聞いたのですが,第1回が世界から150編ぐらい応募があったのですけれども,今年は350編ぐらい日本のテーストのストーリーマンガの応募があって,聞いたこともないような国も含めて,四十何カ国から日本のマンガ家の先生に審査を受けたいということであったという報告を受けました。そのような意味でもマンガというのは大変重要なジャンルだと思います。

○さいとう委員

 確かに私の作品もかなりたくさんの国で翻訳されていまして,翻訳されるたびにそこからマンガが送られてきまして,全然わからない言葉の自分の作品をいっぱい見ることができるのでとてもおもしろいのですけれども。こんな国にマンガがいくのかと驚くような国から翻訳の許可などがくるので,海外,特にマンガというのは一人で書いて,それを編集者とやりとりしてという本当に個人的に四畳半的なスペースでつくっているものですから,それが突然知らない国で読まれていて,サイン会に呼ばれたり,いろいろなコンベンションに呼ばれたりということがありまして行くと,自分が書いているものがものすごい,世界的な広がりというより,もちろんすごく局地的に受けているだけなんですけれども,大変びっくりすることが多くあります。
 先ほどのいろいろな国からのマンガを書いている人から日本に審査をしてほしいと言われるというお話はすごく興味深いです。ですが,確かにマンガというのは自分が書きたいという人と,楽しみたいという人がいて,かなりの数のコミケがあり,個人的に直接同人誌を出して全く出版社を通さないで販売するという形式も非常に多いので,マンガを書いている人も非常に多いのです。海外でも自分の範囲内でできてしまうことなので,マンガを書きたいという人は物すごく多いと思うのです。日本はマンガ先進国ですので,海外の人たちに対して何か日本がイニシアチブをとってできることがないかなというのは私も海外に行ってよく感じることです。ですので,これを機会に映画祭みたいな形でマンガの賞みたいなものでもいいんですけれども,何かそういうものが発信できたらいいなというのは前から思っていたので,拠点づくりというのはまだ漠然としていてよくわからないんですけれども,確かにマンガを何かそういうふうに海外に発信することをもう少し積極的にやっていただければありがたいなとは思っています。

○浜野座長

 では,林委員,よろしくお願いいたします。

○林委員

 私は,日本が,少し大上段にいえば21世紀に,メディア芸術とかあるいは文化芸術というものを振興することによってグローバルに認められる文化国家になっていかなければいけないという大きな命題を抱えていると思います。また,経済産業省的な観点とか,あるいは内閣府の知財推進計画の観点からいえばエンターテインメントコンテンツというような言葉になったりしますけれども,同じようにメディア芸術,あるいはエンターテインメントコンテンツというのが産業として21世紀の日本を経済的に支えていくであろうということで,国を挙げて文化という観点と,それからコンテンツ産業という観点,両方の観点で今いろいろな活動が行われてきているというふうに思います。そういう中にあって,メディア芸術の国際的な拠点を整備するということは,とても重要かつ早期にやるべきテーマだと思います。
 私は,メディア芸術の国際的な拠点というのはどういうイメージかといいますと,要するにまず場所です。場所であり空間なのですが,そこへ行くと日本の映画,アニメ,ゲームといった,いわゆるジャパン・クールも含めた映画を中心としたさまざまな日本の文化に触れることができる。つまり,そこに行けば見ることができたり,あるいは体験することができたり,そしてまたそれは日本人だけではなくて,海外から来た外国人の観光客,観光産業は日本にとっては重要なのですが,外国人観光客をふやすという観点からいっても,外国人がいらしたときにここに行けば日本の映画を体験できる。ゲームが体験できる。アニメが体験できる。それが今分散化されている状態で個別には若干あるんですが,それが総合的に一つの場所の中で存在するというようなものが,立地的にも便利な場所,例えば東京国際フォーラムみたいなところが,あんなに大きくなくていいかもしれませんが,そういう機能を果たしていくということで,国内あるいは外国人にとっても日本のメディア芸術を発信あるいは享受できる場所というものが早急に整備されるべきだというふうに思っております。
 そのためにはどうしていくかということがこの検討会の議論のポイントになるかと思うのですが,私は先ほどご説明いただいたものを見ましても,実はこの議論というのはいきなりゼロから突発的に出てきていることでも何でもなくて,既に5年以上の歳月を費やしていると思うのです。平成15年の映画振興に関する懇談会の提言から始まっておりますが,恐らく,その前提となったのは平成13年に制定された文化芸術振興基本法がまずベースだと思うのです。そこで映画あるいはアニメ,マンガといったものを振興させようという法律ができているわけです。その法律に基づいて平成15年に日本映画の振興,それからフィルムセンターの独立というぐあいに,映画から始まっていって,それが文化芸術の振興に関する基本方針の第2次方針を見ますと,今度は映画にとどまらず,映画に加えてアニメ,マンガといったようなジャパン・クールと呼ばれるものにまで幅を広げていくべきではないかとうたわれ,さらにアジアゲートウエイ構想の中でもそれがメディア芸術という言葉で展開され,知財推進計画2008の中でも同じような言葉,つまり日本のマンガ,アニメ等のメディア芸術の国際的拠点が必要だということであり,またこの最後の文化発信戦略に関する懇談会でも同じようなことがうたわれている。
 恐らく,この5年にわたる議論を見ますと,映画というものをスタートにしながら,それをメディア芸術に広げてきている。なぜメディア芸術に広げてきているかというと,日本全体がそれを求めているからだと思います。ですけれども,映画がその中心になることは変わりないのではないか。それは文化庁の予算の配分を見ても全体の4分の3は映画ですし,残りの4分の1が今のところメディア芸術なのですが,恐らく,そのぐらいの比重なのではないかなと個人的には思っています。
 当初フィルムセンターの独立ということでうたわれておりますが,フィルムセンター一つとってみても,現在例えばフランスやイギリスの映画センターに比べますと日本の場合には非常に少ない予算,少ない体制の中で頑張っていらっしゃるという状況にあるわけです。フィルムセンターは現在東京国立近代美術館の一部門として東京国立近代美術館の中にフィルムセンターがあるのですが,これをほかの京都国立美術館あるいは国立西洋美術館,国立国際美術館,国立新美術館に並ぶ6つ目の機能として独立させるべきではないかということがうたわれているわけです。これはなぜ独立させるべきかというと,フィルムセンターの機能をもっと充実させるためにはそういう立場にフィルムセンターを置いて,そこにしかるべき予算なり,人員なりを投下することによって,保存機能,普及・上映機能等を強化させるということが,5年前にうたわれているにもかかわらず今現在まだそれが実現していないというような状態であるからです。
 ですから,私は議論のアプローチとしては,フィルムセンターをどういう方向にもっていくかということがあると思います。それに加えて映画だけではなくて,そこにマンガやアニメやCGやゲームといったものをどのように付加させていって,最終的にあるイメージの箱あるいは場所,空間というものをつくり上げていくかということを拠点づくりということで考えていくことが,この5年間の議論の延長線上にある議論という形でもって,流れをつくっていくことがポイントではないかなと思っております。

○古川委員

 アニメーションでいいますと,いわゆるプロダクションで制作されているアニメと,割と個人的にといいますか,作家がつくってきたアニメーションと2つの流れがこれまでずっと日本の中にもあったわけですが,本当ならばこういう席にぜひプロダクション関係のアニメーションの監督がもう一人来ていて,私とちょうど全く違った立場でお互いに話し合っていって,何かやっていきたいなと思っておりました。何もなかったところから日本のアニメ,はすごく頑張って,今まで大きくなってきました。ですから,おれたちはおれたちでやっているからいいよみたいな部分がちょっとありまして,そこら辺のところをもう少し大きな会社の監督たちと一緒に話をしていきたいなと思ってはいます。
 それから,先ほど安藤委員もおっしゃっていましたが,今,特に若い世代を見ていますと,あるときは映画を監督したり,あるときはアニメーションをつくっていたり,あるときはゲームをやったり,一人の作家の中での境界線がどんどん薄らいできていると思うのです。しかも,物すごい大金を投与したところで莫大な予算でつくっているかといったら,先ほど安藤委員がおっしゃったように四畳半のような,カップラーメンをすすりながら,これがすごいものをつくっていたりするのです。今まではともすると支援というのは実績があるプロダクションなりに目を向けられがちだったんですが,今から次の世代の,商業アニメーションの監督を育てるにしても,そこの辺の優秀な才能に目を向けていかないとせっかくのおもしろい才能を見落としていくような可能性があるような気がしています。ぜひそういうところをうまいこと取り込みながら,そういう人たちも集まってこられるような拠点を整備していくべきだと思っています。単にお客さんに来てもらって見てもらうショーケースみたいな場所だけではなくて,実際の現場の制作者たちが入り乱れていろいろなことが生まれてくるような場所になってほしいと思います。

○浜野座長

 2010年がちょうど黒澤明の生誕100年なので今資料を整理しているんですが,彼の発言をずっとあらっていると,ちょうど1950年代の末ごろにイギリスで王立映画館ができたときに世界の映画に寄与した5人に選ばれて呼ばれて,帰ってきて彼はすごく啓発されて,女王陛下も来ていて国が映画という表現を支援している,日本もやらなければいけないと,延々繰り返し亡くなるまでおっしゃっていたのです。先ほど紹介されたのは最近ですけれども,ですから表現者の中でこういう施設が大変必要だという議論というのは昔からあったと思うのです。それで,私が一番触発された発言というのは,戦後すぐに復興院の院長に東宝の小林一三さんが選ばれて,数カ月だけ復興院の初代院長になったのです。公職追放で辞任されたのですが,そのときに彼は,日本は今は何もない,哀れみを受ける国だけれども,二段目はかわいがられる国になって,最後は敬意を受ける国にならなければいけないという発言をされていて,私はそれはとてもすばらしい発言だと思うんです。今のポップカルチャーが好きだというのは,ある意味かわいがられている部分でとどまっているのではないかと思います。ビジネスとして,小林一三は東宝の大創業者ですからビジネスも考えていたのですが,長い目で見ると敬意を受けるということが非常に大事で,ですから,石原さんのご努力により世界じゅうでポケモンの親和性が非常に高いのですが,それをきっかけに幅広い日本文化につないでいく横の連携,ポケモンからマンガとか,マンガからまた浮世絵とか,アニメーションとか,そういったことがこの拠点という中には含まれているのではないかと期待をしています。
 今やらないとやれないと思っています。なぜかというと,日本は頑張ってきたのだけれども,考えてみると食料資源も4割ぐらいになって,エネルギーはほとんどない。ある資源は文化だけではないかと私は常に思っているのですが,そこのところで非常に頑張っているし,すぐれた作品を作家の先生方がどんどん生み出して,石原さんみたいな天才的なビジネスマンが大きく展開されているわけですから,今のチャンスを逃すとこういうことがもうできないのではないかとかなり危惧をしています。
 この時期に親和性の高いポップカルチャーをきっかけとしてかなりきちんとした日本文化までつないでいくことは重要ではないかと思います。伝統文化も上野にいっぱいよいものがあるわけですから,それを連携させるような窓口にもなり,観光資源にもなり,人材育成の取っかかり,になっていけばよいのではないかと思います。例えば,さいとう先生のところとか,ポケモンの会社で働きたいという外国人の方がいっぱいいらっしゃるのですが,みんな個別な窓口しかなくて,私のところにもたくさんアニメーションの分野で働きたいという海外からの連絡が来て対応し切れないんです。そういったことを考えると,たまたま映画はフィルムセンターがあるので窓口として海外から見えるわけですが,ぜひ様々なジャンルを連携させる窓口のようなものをつくっていただくといいなと思います。
 もう一つは,最初私が聞いたように,例えばフランスに日本文化センターがあり,今度シンガポール政府からそういうセンターをつくってほしいという依頼があって,中国の華国鋒さんとも相互に文化センターをつくるという提携書を交換しましたけれども,そのような日本の文化の窓口となるような機運があるので,ぜひこういうところが核となっていってほしいと思っています。ただ,海外につくって放ったらかすのではなくて,トータルな人材とかネットワークを持っているこういうものがないと個別の努力で終わってしまいますから,継続的で組織的でよいプログラムの展示会をやるためには,やはり核となるセンターの機能を担うと大変いいかと思うんです。ブリティッシュカウンシルとか,アテネフランセの歴史を考えるとちょっと遅過ぎるのではないかと思うのですけれども,こういう議論が出てきただけでもとてもうれしいと思いますので,言い出すだけではなくて,何か一歩形あるものにぜひしていただきたいと思っております。
 例えば,いろいろな方々からあったのですが,任天堂の宮本さんはアメリカのゲーム殿堂第1号ですけれども,それは産業でたたえているのか文化でたたえているのかよくわかりませんけれども,赤塚先生は亡くなったときに紫綬褒章をとられていてよかったとほっとしました。とってなかったから文化庁にクレームしようかと思ったぐらいなのですけれども,ちゃんとあげていたからよかったと思います。きちんと文化として認める何か,それが勲章だったらそれで終わってしまうんですけれども,何か形で残るところとしてもこういうのを活用できないかなというふうに思います。ですから,これがあればいろいろな展開が具体的に可能だと思うので,期待も大きくて周りからいろいろな要望もあると思いますけれども,ぜひ何か形ある一歩にしていただければと思います。私は大変期待をしておりますので,よろしくお願いいたします。

○青木文化庁長官

 確かに現実的なことを考えてしまうと,既にある拠点を整備してというような話になるのですけれども,先ほど石原さんもおっしゃいましたけれども,日本の東京に,メディア芸術の非常に大きな世界に誇るセンターをつくって,そこに行けば何でもわかるようにすべきという議論もあると思うのです。いろいろな知識も情報も全部あって,それからそこで実際に見て,ワークショップもあるとか,そういうものがメディア芸術全般にとって今非常に求められているところでもあります。
 例えばワシントンDCにスミソニアン博物館があります。ゼロ戦に始まり全部飾っていて,世界じゅうの子供も大人もみんな行きます。メディア芸術に関するこういったああいうものが日本にあれば,アジアの子供たちもみんな来るのではないかとも感じます。さいとう先生のところにいろいろなアプローチがあるのをメディアセンターにアプローチすればさいとう先生にも連絡がいって,さいとう先生のワークショップもできる,そのような機能が付与されれば素晴らしいと思います。
 黒澤明さんがそのように言っているというのは今日初めて先生からお聞きしましたけれども,やはり炯眼の人,あれはロイヤル・インセプト・フィルムというものでしょう。ですので,王立フィルム協会というものがあって,そういうものができたときに行くとイギリス政府はそこを中心にしてイギリスの映画産業振興,それから映画人の養成など全部やるのです。上映もやりますし,もちろんフランスはもっとやっていますし,ドイツもあります。日本にはそういうものがないので,現在だとフィルムだけではなくて,いろいろなものを含めた総合的なセンターができれば,日本のIT技術その他を駆使して世界に冠たるものが出てくるのではないかと思います。

○浜野座長

 岡島さん,いかがですか。フィルムセンターのことがよく出てきますが。

○岡島

 私は世界じゅうのさまざまを同種機関についての情報,知識をたくさん持っておりますので,この会が進行していく中で何かそういうことが知りたいということでございましたら数字を上げつつ説明をするということはいろいろできると思っております。
 フィルムセンターの国際発信に関して言いますと,この5年ぐらい特にそうですけれども,非常に盛んになってまいりまして,来月,9月にもサンセバスチャン映画祭,これは世界の十二大映画祭の一つですけれども,ここがおよそ40本の日本映画を連続上映する。これはフィルムノワールというくくりで日本映画を上映するわけですけれども,そこで映画会社から半分ぐらい,それからフィルムセンターしかプリントがないものが半分ぐらい出ていって,公的なアーカイブであるフィルムセンターと各映画会社のストックフィルムが一緒になって映画祭を構成するということになっております。こうしたことはどんどんふえておりますので,そういう意味では映画に関する国際発信というのはメディアの問題,メディアというのはつまり情報ののっているキャリアの問題を別にすれば非常に順調に進んでいるのだろうと思います。
 ただ,今,映画そのものがキャリアを変えつつあるというところでございますから,そこの難しさについては十分に考えていく必要があろうかと思います。我々は今までフィルムを扱ってまいりましたけれども,今後フィルムアーカイブが扱う対象は3つにふえるというふうにいわれています。それはまずフィルム,これまでのフィルム,そしてこれはなくさない。それから,2番目がデジタル化された,もとはフィルムだったけれども,デジタル化されたもと映画,それから3番目がカメラで撮られたところから既にデジタルである。つまり,ボーンデジタルという,この3つの媒体を管理していく,そして,そういうものをアーカイビングできる人材を採用していくということも含めて拡大していかざるを得ないという地点にきているのだろうと思っております。
 発信の拠点であるということが保存の拠点であるということとどういうふうに交差しているのかというのも大変大きな問題でありまして,例えば韓国ですと映画振興のKOFIC(コフィック)には100人のスタッフがいて,映像資料院KOFA(コーファ),つまり保存機関には30人のスタッフがいる。振興を100人でやり,30人で保存をやっているというのがお隣韓国の現状でございまして,フィルムセンターですと11人のスタッフで保存から発信までをできる限りのところでやっているという現状がございます。
 恐らく我々が今一番考えなければならないのは,保存の拠点と発信の拠点というものをどう整理して,人材をどう振り分けていくべきかということなのではないかと,個人的に考えています。
 ニューヨーク近代美術館の映画部というものをフィルムセンターは長年にわたってある種の理想としてさまざまなノウハウを獲得するということも含めて目標にしてやってまいりました。そのニューヨーク近代美術館の映画部は1935年にできてから長らく映画部として,英語でいえばまさにフィルム部としてやってきたわけでございますけれども,80年代に入ってビデオアートをどう扱うべきかということを考えたときに,フィルム・ビデオ部,映画・ビデオ部という名前に変わりました。もちろん新しいキュレーターを入れて変えたわけです。
 そして,その後さらにそのビデオ部分が大きくなってきたということで,2001年に映画メディア部ということになりました。それで大体35人ぐらいのスタッフがいるのだと思いますけれども,そして,おととしにいったん映画メディア部になったものをまた分裂して,今は映画部とメディア部というふうに分かれて活動をするということになりました。何を申し上げたいかというと,今,世界じゅうでメディアシフトとデジタルシフトが起きており,それにあわせた形でのシフトが必要なことは明らかなのですけれども,それに見合った完全に成功をしているモデルというものはないということなのです。オーストラリアの例などさまざまな例を出すことができますけれども,完璧に成功している例はないというところで,この議論のときには私たちは恐らく,最もいいモデルをそういう中で探していくんだろうというふうに思っております。

○浜野座長

 それでは,施設がなく頑張っているメディア芸術祭の阿部さん,施設がないのに大阪にマルス・エレクトロニカの施設ができそうという,何か皮肉なことも,そういった状況を紹介していただけますか。

○阿部

 メディア芸術祭を12年間携わらせていただいている観点から少しお話ししたいと思います。メディア芸術とは関係なしに,日本の美術館の人気のある展覧会を考えると,ルーブル美術館展,オルセー美術館展,ポンピドゥー・センター展というふうに,海外の美術館の名前を冠した展覧会が非常に人気があります。これというのはすごくおかしなことだと思います。日本にいながら海外のそうそうたる展覧会,美術館の展覧会の内容を見ることができるということはすばらしいことなのですけれども,では,その逆はあるのかというと,私の知る限りではありません。日本の美術館の名前を冠した展覧会が海外で行われたといったことを聞いたことがないのです。もしできるとしたら正倉院展ぐらいはできるかもしれないですけれども,なかなか難しいようです。
 フェスティバルに置きかえますと,ようやくメディア芸術祭という日本のフェスティバルの名前を冠したフェスティバルが海外で巡回展をすることができるようになりました。これは文化庁のおかげなのですけれども,海外で日本のフェスティバル名の展覧会ができるというには,これは画期的なことなんです。日本とかアジアはどうしても欧米の名前のついているものをもってきたものをすごくありがたがる傾向があります。それの一つの例が今度大阪にできるアルス・エレクトロニカセンターというものだと思います。
 アルス・エレクトロニカというのは,世界じゅうで一番歴史の古いメディアアートのフェスティバルです。来年で30周年を迎えるフェスティバルで,オーストリアで毎年9月に開催されています。リンツで行われているのですけれども,鉄のまちで,鉄から違うものをやらないといけないということで,これからは電子芸術だということでできたところなのですけれども,そこもそもそもまちおこしでフェスティバルを行っていたのが何回か経てセンターができました。そのセンターがやはりフェスティバルの機能を補う形で成長しまして,それが世界から非常に注目をされて,今度大阪でその分室のようなものができるそうです。
 メディアアート,メディア芸術,これも似て非なる部分があるのですけれども,アルス・エレクトロニカセンターで飾られているものは何だというと,かなりの部分が日本のアーティストの作品なのです。それは非常におかしなことで,アルス・エレクトロニカで評価されて大阪でセンターができるが,そこで展示されるのは日本人のアーティストという逆輸入と呼べるような非常におかしな形になっています。
 でも,そういったものが何かできるということは,一つのきっかけになっていいことかもしれないのですけれども,海外に評価をゆだねて,その評価軸みたいなものを日本にもってくるのは日本がこれから文化発信をしていく上で問題としてはあるのではないかと考えます。
 最後にもう一つ申し上げたいのが,文化庁メディア芸術祭は始まった当初,海外からの応募は皆無でした。それが年々海外からの応募がふえ,去年は42の国と地域から500作品近くの応募がありました。受賞された方や,受賞しなくてもぜひ見にいきたいということで,大勢の海外の方がいらっしゃられます。そこで聞かれることが2つぐらいあります。1つはこの美術館の常設展示,当然メディア芸術のものがあると思うがどこに行けば見られるんですかということです。去年からですと国立新美術館,それまでですと東京都写真美術館,常設でメディア芸術を見せる場所というのは持っていないわけです。ではどこに行ったら見られるのかと聞かれるので,浜野先生にご協力いただいてジブリ美術館にご案内をしたり,中野ブロードウエイに連れていったり,秋葉原をご案内したりとか,そういった形ですごく単発的な紹介しかできないというのが非常に問題であって,海外の人達は美術館と組んでやっていたら,当然そこの美術館というのは常設でメディア芸術をアーカイブとして持っていて,それを見せる機能も持っているでしょうというような判断をされるんですが,それに今のところは答え切れていないといったところです。

○安藤委員

 もっと整理していかないといけないだろうという感じがしました。例えば先ほど林さんがおっしゃったように,経済的な切り口でいいますと,基本的には外国の方々が非常に目を向けているという意味である種ビジネスになる部分がある。そのような石原さんがおっしゃっている部分と,それからもう一方で岡島さんがおっしゃっているような部分,つまり文化として日本の映画をどこどこの映画祭などに発信していくということとはその両輪がうまく合っていくことだと思うのです。ですから,僕はアーカイブ的な考え方と,それから発信,創造していく考え方,人材育成みたいな部分などをどういうふうに整理していくかということだろうと思います。それとビジネスと文化発信という部分,そこをきちんとうまく整理させながらコネクションを持たせないといけないだろうと思います。
 だから,一つの例でいえば,先ほど岡島さんがおっしゃっていたような,アーカイブするのか,発信するのかということだと思います。岡島さんの中にきっとイメージがあると思うので,もっと具体的に言っていけばきっと出てくるだろうと思います。それが恐らく,フィルムからデジタルへとなっていくと思います。それがデジタルになっていったときに浜野先生のおっしゃるポップカルチャーとおっしゃった。ポップカルチャーというものと映画というものがどういうふうに一体化するかわかりませんけれども,例えばアーカイブする中のデジタルという部分においては,もしかしたら同じ場所に置けるかもしれない。デジタルで同じ場所に置ければアーカイブすることと発信することを一緒にできるかもしれない。もしかしたらネットワークを通じてアクセスすれば直接そこからショーケースができるかもしれない。
 その辺はこの美術館的な部分との考え方なのですが,それから,もちろん今フィルムセンターは僕も当然ながら第五の美術館に独立すべきだと思って盛んに申し上げてはいるのですけれども,そうなったときにそこがアーカイブと一緒にデジタルとして,これは岡島さんが先ほど3つのメディアの分け方があったのですが,私のいる早稲田大学ではデジタルの映画制作の場所を持っておりまして,今も「私は貝になりたい」という新しい映画,それから「容疑者X」,この間までは「マジックアワー」とか,「西遊記」とか,ほとんどデジタルで,もちろん最初のシューティングがフィルムであったり,デジタルであったりするんですが,もう途中からは全部デジタルになりました。そうすると,それらをどういうふうにアーカイブするかが重要だと思います。マスターはデジタルなのです。そのマスターからどういうふうにすればフィルム化されるか。どういうふうにすればDVDになるのか。つまり,デジタルインターメディエートのマスターはデジタルなので,それをどういうふうにアーカイブするかということを考えれば,これは文化庁だけではなくて,恐らく民間も経産省も含めてどこかに新しいフィルムセンター的なアーカイブを考えなければいけないだろうと思います。それが恐らく,メディアアートも含めて,メディア芸術のいろいろな部分,アニメーションなども含めて重要だと思います。今,アニメーションもアーカイブされているのですね。そうだとすると,当然ながらどんどんデジタルのものがふえてくるだろうと思いますし,そうすると,それらも含めてまず一つアーカイブだとしたらそういう形の考え方がありますね。そうすると,そこの場所というのはショーケースの場所とどういうふうにネットワークでつなぐかという話で解決すると思います。
 それから,ショーケースの部分でいえば,例えば国立新美術館は作品を所蔵できるわけではないから,何かそういう常に展示できるような形があるのか,ないのか。また,例えば,新しいメディア芸術に関してショーケースのような形の常設ができるのか,できないのか。常設という考え方が国立新美術館はないですが,そういうもの,あるいはそれにかわるものがどこかに附帯できるのか。そういうようなことも含めて切り分けなければいけないだろうと思います。
 それから,もう一方で,ビジネスというところと文化というものをどういうふうに相互乗り入れしながらやっていくかということもあるかと思います。それから,それは作品としての考え方もそうなのですけれども,人材という部分でも,先ほど古川さんがおっしゃっていたところでもありますが,どういうふうにそれらをごちゃまぜにできるかというのがあるかと思います。つまり映画がだめになったときに才能がある人はマンガ家になったわけです。我々はマンガ家の方がうらやましくて,あの人は映画がすごく好きで,すごくいい才能を持っているのにという人たちがみんなマンガ家になってしまうわけです。脚本書いたらすばらしいのにという人がみんなマンガ家になる。そのときにビジネスとしてある部分いいからマンガ家になるけれども,そういう方々がまた映画にかえってくるかもしれないし,アニメーションになるかもしれない。そういう部分というのが今のこのメディア芸術に関して新しい作品をつくるクリエーティビティの中にあるんじゃないかなと思っています。ですから,できるだけそういう方々同士を拠点という場所で遭遇させたいと思うのです。例えば,ジブリの作品を見ても,温故知新ではないですけれども実は確固たる日本の思想が流れていると思うのです。そういうもの,あるいはそれの新しい形のものが,ポップなマンガ家の方のストーリーの中にも非常に流れていると思います。それをどういうふうに我々がちゃんと後世に継承できるかが重要なのではないかと思います。外国の方がさいとうさんのところに来られるのは素晴らしいことだけれども,むしろ日本人はきちんと思想ができ上がっていて,そういう日本人が外に文化を発信していく。それの影響で,その技術を学びに外国の人が来る。やはり日本人が日本の文化を発信できるだろうといます。外国の方ばかりが,アニメーションのテクニックを覚えてしまって,フランスの人たちはすごく才能があるから,すっかりフランスのアニメーションができてしまうわけです。だけれども,そうではない部分をきちんと僕らは確保しておかなければいけない。それは日本という文化の中で確保しておくべきだろうという気がしています。

○浜野座長

 アーカイブをどうするかということはコストも手間もスペースもないものであるし,阿部さんがおっしゃるようにメディア芸術のアーカイブも考えると頭の痛い問題ですね。

○安藤委員

 でも,きっとアーカイブが結局発信拠点になりますよ。それを持っておかないと,原点がわからなくなりそうな気がします。

○浜野座長

 それと,センターそのものがクリエーティブな機能を持つという,非常に大事なご指摘がありました。
 一つ,このご時勢なので,拠点そのものがお金を生まないと継続できないと思うのです。入場料であれ,何かイベントであれ。全部韓国とかフランスみたいに税金でやってしまえということは韓国だって将来できないだろうと思うし,フランスもいろいろな制度を今取りやめていますから,この拠点自体が何らかのお金を生むようにしておかないと理想は高くても続かないと思うので,何かそういう仕掛けは必要かなとは個人的には思っております。

○石原委員

 私はあえてアーカイブはやめて,新しいことをやりましょうという立場をとりたいと思います。要するに,諸外国に倣って既にあるものをもっと機能するようにしようと考えるか,あるいは今日本がアピールできる新しいものを中心に新しいことをやろうと思うかによって方針は変わってくると思います。それを今はできるだけ広い議論で何でもできるようにしようということがスタート地点だとは思うのですけれども,私はアプローチとしては拠点の名前を決めたらやることは決まるのではないか。要するに,やることを決めたら自然に拠点の名前は決まるという考え方もあるのですけれども,とりあえず拠点の名前を最初に決めるとやることは決まるのではないか,その名前がしっかりしていれば,保存するのか,発信するのかということもわかりやすくなるのではないかという気はしました。要するにその名前に何が入って,何が入らないのかということを考えてみるというのが一つのアプローチかなと思います。
 いい名前ではないですけれども,例えば日本マンガアニメゲームセンターと書いてあったら映画は入らないのですというのが私の立場かなと思っています。そこでメディアアートセンターとかメディアセンターというのは,大衆的な視点から見るとわかりにくいと思います。メディアアートとは何だろうということと,マンガはメディアアートに入るのだろうかとか,建築はメディアアートなのだろうかとか,いろいろなことを自分たちが思い悩んでいる以上に普通の人はもっとわからないので,ここは何のセンターですかと言われたときにここはマンガアニメゲームセンターですと書いてあると非常にわかりやすいし,それを求めてきた人々はそれに対してアクセスできるということになるので,とりあえず私の提案としては拠点をつくるときには,場所の名前を決めて,そしてそれをどうするかを考えるといいのではないかと思います。浜野先生と最も正反対の立場をとるとは思うのですけれども,そういうものをつくったらどうでしょうか。

○浜野座長

 石原さん的な発想の人がいないといつもお金のことが置き去りになってしまうので,さいとう先生,いかがですか。

○さいとう委員

 今の石原さんのお話はすごくわかりやすかったのですが,確かにメディアアートといわれて私もこの委員会に出席してくださいといわれて何のことだろうと思って,全然わからなかったので,確かにそれはいい考えですね。

○さいとう委員

 美術展がお金になる,注目を浴びるものをやるというのはとても必要なことだと思うのですけれども,バカボンドの作者,井上雄彦さんが確か美術展をやっていまして,前を通ったらものすごい人が並んでいて,入場者数も相当いたんじゃないかと思うんです。ああいう催しをあそこで終わりにしてしまうのはもったいないと思いました。あれがもし今度の拠点というところに巨大壁画ふうにあったらそれだけでも見たいという人はいっぱいいると思います。何かそういう目玉になるような常設展示でもいいですし,何かメインになるものが探すとわりといっぱいあると思うのです。ジブリ美術館なども私も行ってみたいと思っているのですけれどもなかなか行くのが大変みたいで,そういう,海外の人たちが行きたい,または国内の若い人たちが見にいきたいと思っているものは,実はすごく多いと思います。そういうものをできれば文化庁のこの箱物の中にもってきてくだされば,かなり強力なPR力は発揮するのではないかというふうに思っています。
 先ほど安藤さんがおっしゃっていた,割と日本人としての核がしっかりしていないいけないというお話をすごく興味深く聞いていたんですけれども,私がふだんはマンガ家をやっているんですけれども,10年前ぐらいに少女革命ウテナというアニメをセーラームーンのアニメーション監督と一緒につくったことがありました。そのときに彼が,私のマンガが少女マンガの王道をいっているので,少女マンガというものをある種総括したいというようなことを言っていました。少女マンガとは何かといったら,お亡くなりになったばかりの赤塚先生もそうですし,手塚先生もそうですし,最初は少女マンガで腕をふるってくださった方たちがつくった道でもあるし,もっともっとさかのぼれば鳥獣戯画,あそこまでマンガのルーツはさかのぼると言われています。戦後の人たちが映画をつくりたくてもつくれなくて,お金がなくて何もなくてみんなマンガ家の道にきたんだと思います。そこから日本ではマンガが爆発的に発展したと思います。
 私もすごく映画が好きで,映画をいっぱい見ました。古い映画,日本の映画も海外の映画もすごくいっぱい見ましたが,そういうものを表現したいというのがあります。日本の黒澤作品もいっぱい見ましたし,そういうものから私の核ができています。いろいろな少女マンガ家の方がいらっしゃったのですけれども,そういう方たちのいいところを全部勉強して,それで少女マンガの王道を書きたいと思って書いていたのを,セーラームーンの監督が見つけてくださった。セーラームーンの監督は舞台の寺山修二さんなど,非常にアーティスティックな舞台からも影響を受けていて,いろいろな文化を総括したいという意味で非常に前衛的なものをつくったんですけれども,その作品は余りにもアート的なものでしたので,商業的に大成功というわけにはいきませんでした。今でもウテナのファンの方はいっぱい海外にもいらっしゃって,そのおかげで私も海外に呼ばれたりするのです。そういうふうに異文化同士が出会ってぶつかって新しいものがこんなふうにでき上がるんだなと,私はアニメーションをつくったときにすごくびっくりしました。いろいろなものが組み合わさってこんなふうに化学反応を起こして全く今まで見たことのなかったアニメーションができたので,とてもびっくりしたのです。そういう出会いの場というのもこの中でできればいいなというふうに,今,お話を伺っていて思いました。

○浜野座長

 ジョン・レノンの息子のショーン・レノンがウテナのファンで,幾原さんに会いに日本までわざわざきました。そういうのは個別で終わって蓄積していかないんでもったいないです。

○林委員

 メディア芸術の国際的な拠点を整備しようということに多分反対の意見というのはないと思うんです。恐らく,やるべきであるということになる。理想的にはどういうものをつくるかという,理想をまずビジョンとして並べていくべきだと思うのですが,そのビジョンと,それから現実,つまりフィルムセンター一つとっても,先ほどの岡島さんの話のように,フィルムセンターの中のさらにアーカイブの機能一つとっても,時代に対応していくべく人員とか体制とかという問題があるという,そういう現実を埋めていくということが一方であると思います。このビジョンをどうつくるかということとビジョン形成と現実の問題をどう解消していくかという,相反するような2つの課題を詰めていくべきだというふうに思うんです。
 私は,その理想的なビジョンは,ネーミングはともかくとしまして,日本文化のナショナルセンターを作ることだと思います。このナショナルセンターをどのようにつくっていくかということについては,今一番のお手本というのはフィルムセンターではないかと思います。フィルムセンターの機能というのは4つある。この4つの機能が恐らくマンガでもゲームでもどのカテゴリーでも通用するのだろうと思います。1つは保存機能,アーカイブということが文化を維持発展させていくためにはまず重要である。したがって,映画のみならず,ゲームやマンガやCGアートというところにもアーカイブ機能を果たしていくということが必要になってくると思うのです。
 2つ目には,普及・上映機能,これは映画ですから普及・上映ということになりますが,マンガも入れると展示機能というのが入るのでしょうか。つまり,普及・上映・展示機能というものがあることによって,そこに集客あるいは外国人に対する発信ということができてくる。
 さらに加えると,3番目の人材養成機能という,新しい人材を各ジャンルごとに育てていく機能が必要になってくる。
 それから,4つ目には制作支援機能,クリエーター側の制作支援の機能をサポートし,支援する機能があると思います。その4つをフィルムセンターが担っています。マンガとかゲームとかそれぞれの分野でそのような機能がナショナルセンターに行けば存在しているというのが理想的であろうと思います。
 結果として,それら4つの機能を果たせていれば,5つ目にあえてつけ加えれば情報発信機能というものが加わってくるのかなというふうに思います。
 そういった理想のビジョンに向けてステップをどう踏むかということだと思うのです。時間軸のステップではないのですが,やはりここのここ5年間の議論にもうたわれていますように,フィルムセンターの独立化という問題,あるいは独立化に伴う強化拡充というテーマをまずどう解消していくのかということが一つの議論のステップとしてあって,もう一つの議論のステップが映画以外の,今日メディア芸術と呼ばれているマンガ,アニメ,ゲーム,CGアート,あるいは写真まで入っていますが,そういったものまで含めたものをどういうタイミングで付加されていくのかということが議論のプロセスにあり,最終的にそれらが統合されたときに日本文化のナショナルセンターができ上がっていくというような議論になっていけばいいのではないかと思います。
 ただ,一方で現実申し上げましたのは,先ほど岡島さんの話にもありましたけれども,フィルムセンターに対して文化庁が持っている予算が約20億円ということでフランスや韓国と比べても非常に小さい。フランスとか韓国は映画だけで数百億の世界ですから,いい,悪いは別にして,全然違うわけです。ですから,先ほど浜野先生がビジネスという視点も必要だということをおっしゃいましたけれども,ビジネスということも考えなければいけませんし,またそのフランスの国立映画センターみたいに,財源を業界からもってくるというような方法論も考えなければいけないでしょうし,そういった財源の裏づけを持ちながら現実課題を解消していくということをしていきながら,あるべきビジョンに近づけるという,そういう議論が健全に進むことをこの後の会合の中で期待していきたいと思っております。

○古川委員

 どこまで具体的なイメージを持って話を進めていったほうがいいのかというのはあるかと思います。すごく期待を抱いてものすごく格好いいメディアセンターができると思って僕は話を進めていけばいいのか,今あるフィルムセンターがベースになってそこから何とか考えていくという話なのか,もう少し具体的にイメージできるとうれしい感じがします。

○清水芸術文化課長

 長官からもございましたように,やはり理想的なところを議論していただくというのが一つはあるかとは思うんですけれども,ただ確かに文化庁予算全体が限られているところでもありますので,現実的な選択肢としてということで考えていきますと,一つは今あるさまざまな施設と連携していくということがあるかと思います。もちろん,フィルムセンターは国立であり,映画というメディア芸術の中で非常に重要なものを持って今までやってきておりますので,既存の関連施設としては非常に大きな重要な施設だと思っておりますけれども,フィルムセンターのことだけに限って議論していただこうという趣旨ではありませんで,やはり理想的なものを語っていただいて,ただ現実的なものを語る中でフィルムセンターの役割というのはやはり重要なところにあるのではないかとは思っております。

○浜野座長

 余談なことを最後に言わせていただきたいのですが,シナリオ作家協会という赤坂にあるビルができたときのいきさつでとても感動的なものでした。シナリオ作家は文化庁の管轄ですけれどもお金がないから社団と組合をつくるときに根城を持たないと将来だめだというので,そのときに加わった作家の方が全部1本ずつシナリオを書いて,作家協会に寄贈されて,それを事務局が売り回ってビルを建てたのです。村上さんのフィギュアが1個売れたら16億円と思うわけですから,メディア芸術の作家の人とか,さいとう先生とか,全員に1個ずつ作品を寄贈していただいて,世界的な規模のオークションをやって,井上雄彦さんとか,映画人もみんなでビルを建てればいいじゃないかと僕は思っています。半分冗談ですけれども,半分本気で考えています。村上さんが一人出してくれれば10億円ぐらいになる。そしたら建つじゃないかという気持ちもあるのです。そうしたらシンボルになるし,自分たちが建てたというので,よりコミットメントが高くなる。そういうことをやったらいいじゃないかと思います。日本の作家はそれぐらいの力はあるし,石原さんが持っているポケモンのフィギュアもすごく高い。そういうぐらいのコミットメントを作家の人もしないといけないと思います。そういうことで自分たちがつくって,自分たちが運営していくのだという気分が出てくると思うのです。ですから,シナリオ作家協会の例を考えると本気になればできるわけだから,文化庁としてそんなことをやっていいのかどうかわからないのですけれども,私はそれを本気で考えてみて,作品を集めて,何かネットで公開してオークションをやればビルと土地ぐらいはすぐ買えるのではないかと思っています。そういうことも可能性としてふさわしいのではないかと思うのです。
 これは半分冗談ですけれども,やってみる価値はあるのではないかと思います。ただ失敗すると格好悪い。そこはありますが,そういったやり方は幾らでも今力があるからできるんじゃないかと思っております。
 時間が来まして非常に多岐にわたった議論になってしまいましたけれども,最後に青木先生何か。

○青木文化庁長官

 さまざまな議論を今日も聞かせていただきまして大変参考になりました。今,最後に浜野先生がおっしゃったことも本当に重要です。先ほどビジネスとおっしゃいましたけれども,最近ミッドタウンができました。サントリー美術館が入っていますけれども,ああいうときの目玉に文化芸術に関するものをもってくるという発想がもっと出てくると良いと思います。
 確かに日本は韓国と比べてもお金がありません。ただ,そういう現状の中で手をこまねいてできないと言っていても仕方がないと思います。これまでの議論の中で先生方,委員の方々も色々とアイデアを出したいという気持ちが言葉の端々に出てきているわけですから,そういうものも出していただいて,それを実現するにはどうしたらいいかというのを今度民間企業などと組みながらやっていく方向を探らないと今の日本状況では恐らくなかなかできないだろうとは実感として思っております。国の財政は厳しいのですが,今の日本の状況でビジョンを持たないともう先がないと思います。先生がおっしゃったように文化で国を立てていくよりしようがないというところも一つあるわけですから,いろいろとアイデアを出していただきたいなと思います。

○浜野座長

 1回目なので自由にご議論いただきましたが,時間となりましたので,本日の討議はこれで終了したいと思います。今後の日程につきまして事務局よりご説明をお願いいたします。<清水芸術文化課長から今後の日程について説明>

○浜野座長

 それでは,これにて閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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