国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第4回)
議事録

1. 日時

平成21年7月17日(金) 15:00~17:00

2. 場所

旧文部省庁舎 講堂(6階)

3.議題

  1. (1)提案内容について
  2. (2)その他

4. 出席者

(委員)

安藤委員,石原委員,神村委員,さいとう委員,中谷委員,布川委員, 浜野委員,林委員,古川委員,森山委員

(オブザーバー)

阿部氏,石川氏,岡島氏,甲野氏

(事務局)

玉井文化庁長官,合田文化庁次長,清木文化部長,戸渡長官官房審議官, 清水芸術文化課長, 外務省文化交流課, 経済産業省文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課), 観光庁国際交流推進課

(欠席委員)

植松委員,里中委員,土佐委員,水口委員

○浜野座長

 ただいまから国立メディア芸術総合センター(仮称)設立準備委員会(第4回)を開催いたします。
 本日はご多忙のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は各委員からの提出されました提案内容,文化庁のホームページで募集しました一般の方々からの提案内容などを踏まえまして,基本計画案作成のための議論を行ってまいりたいと思います。
 なお,カメラの冒頭撮りは配付資料の確認までとさせていただきます。
 まず初めに,文化庁に人事異動があったということでございますので,事務局からご紹介をお願いいたします。よろしくお願いします。

○清水芸術文化課長



 〈7月14日付の人事異動の紹介〉

 それでは,引き続きまして玉井文化庁長官からの一言ごあいさつを申し上げます。

○玉井文化庁長官

 一言ごあいさつを申し上げます。この7月14日付で文化庁の長官に参りました玉井でございます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 文化芸術の振興に全力を挙げたいと,かように思っておりますので,どうぞ皆様とともに一緒に進ませていただければ大変ありがたいと,かように思っております。
 この委員会は第4回でございますけれども,この日本のメディア芸術が大変すぐれているということは世界に誇るべきものだと,かように思っておりますし,そのすぐれたものをすぐれた文化として国内外にやはり発信していくと。そして,今よく言われますけれども,日本ブランドをしっかり確立しようではないかと,そういう中長期的な戦略,こういうものが大変重要になっているわけでございますので,その意味での国立メディア芸術総合センターというのはやはり戦略的な拠点という形でぜひ整備させていただきたいと,かように思っております。
 実は,前長官の青木さんからは私は官房長時代からずっとご一緒にいろいろな仕事をさせていただいておりましたけれども,このソフトパワーとしての文化力,これは今日本が強いと,でもいずれほかの国々もすぐ追いついてしまうんではないかと,このまだ優位性を持っている時期に次のステップを我が国は踏むべきだということを大変青木前長官が熱っぽく語っていらっしゃったことを,今この場で再び思い出させていただいております。私も全く同じ考えであります。
 この設立準備委員会の皆様方におかれましては,今もう既にメディア芸術の各分野の有識者からのヒアリング等を通じまして,センターの基礎となりますこの基本計画の策定に向けて活発なご意見をいただいてきているというふうに聞いております。このセンターにつきましては,賛成する意見とともに,さまざまなご懸念も寄せられていることも事実であります。したがって,この基本計画はこれらの懸念を払拭し,そして国民の多くの皆様方にご理解とご協力をいただく,そういう観点からしっかりしたものにしていきたいと,かように思っております。どうぞ引き続き活発なご議論をしていただければと,かように思います。
 文化庁といたしましては,今後策定いただきますこの基本計画を踏まえて,我が国が世界に誇ることのできるような,そういうメディア芸術の拠点というものをぜひつくり上げていきたい。そのために全力を尽くしますということを申し上げまして,就任のごあいさつとさせていただきます。
 どうぞよろしくお願いを申し上げます。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 前回,VIPOの石川さんと布川さんにもフランスのジャパンエキスポのことを語っていただきましたが,正式のデータが発表になってい,ます。4日間で16万4,000人の集客があって,前年の13万4,000人から,二十数%増でした。長官がおっしゃったように,日本のソフトパワーが海外で認められている実例として前回お話しいただいたのですが,正式入場者数がジャパンエキスポのホームページで最近公表になりましたので,ご紹介いたしました。
 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○清水芸術文化課長



 〈配付資料の確認・説明〉

 それでは,カメラの方はここまでということで,よろしくお願いしたいと思います。

○浜野座長

 では,議題に入りたいと思います。
 この設立準備委員会では,国立メディア芸術総合センター(仮称)の基本計画を策定することを目的にして,これまで3回ほど会議を行っているところでありますが,今後基本計画の策定に向けて具体的な作業段階に入りますので,今までの皆様の意見を踏まえて配付資料2,基本計画の策定に向けて(案)を作成させていただきました。さまざまな誤解とか憶測とか,そういったものが流れていますので,一応文字にしてそれを確認したいということで案をつくりましたので,事務局から説明をお願いして,皆様のご意見も入れて,これを基本的な方針として進めたいと思いますので,事務局からご説明をお願いいたします。

○清水芸術文化課長

 では,資料2につきましてご説明をいたします。

 〈配付資料2の説明〉

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 今ご説明のあった1のほうは皆様の思想的な部分を反映されていると思いますが,2の部分は誤解を生んでいたところを文字として,委員の方々の意見が反映するように文章化したものです。既存の施設の改修とか,一個の独立した新しい建物にこだわらないということをこの文面に入っているわけですが,重要な方針ですので,この配付資料2の基本計画の策定に向けて(案)につきましてご意見がございましたら,ここで議論していただいてその意見も踏まえてこの基本方針に盛り込みたいと思いますが,いかがでしょうか。
 安藤先生,どうぞ。

○安藤委員

 1のほうなんですけれども,施設の必要性と機能という形,このくらい具体的に書いたほうがいいのか,もうちょっと思想的に書いたほうがいいのかということがあるんですが,この前段階としての目的,つまり分野横断的なメディアという特性を生かした形でのいわゆる保存,育成,創造,発信のようなものをはっきりと打ち出していくような拠点みたいなことをきちっと書いて,そのことが具体的になるときにライブラリーなのか,ショールームなのか,あるいは展示なのか,あるいはイベントなのかというような形の事柄というのはそれについてくるというような形で,もうちょっと大きな形でこの1番を書かれたらいかがかなという気がいたしますが,いかがでしょうか。

○浜野座長

 ほかの委員の方々,ちょっと唐突に具体的なことが出ているのは,先生のご指摘のとおりだと思うので。

○安藤委員

 つまり,新しい表現分野ですから,前回に来られたゲストの方々のご意見なんかでも,何か新しいそういうクリエーターたちが集まることによって,ファクトリーのような形から新しい何かメディアが創造されたというご意見があったと思うんですが,その辺を吸収するような,もうちょっときっちりとした思想的な哲学的な部分で日本の文化みたいなものをきちっと守りながら,そういうものが発信されるような拠点であるという形をうたってから,それに対して具体的な部分を探していってはいかがでしょうか。

○浜野座長

 布川さん,いかがですか。

○布川委員

 同感です。

○浜野座長

 さいとう先生も何かご意見ありそうですが。

○さいとう委員

 これはホームページにぱっとこれが載るわけですかとか,どういうところに。

○浜野座長

 扱いですね。

○さいとう委員

 はい,確かに。

○清水芸術文化課長

 こちらで決定いただきましたら,この会議もオープンでありますので,ここでオープンではございますけれども,文化庁のホームページでもこの設立準備委員会の関係のところでこういった方針がきょう定められて,またこの方針に沿って今後基本計画の策定が進められていくということを広報していきたいと思っております。

○さいとう委員

 私たちはずっと経緯を見ているので,大体わかってはいるんですけれども,ここからもしかしてぱっと見た方は多分よくわからないので,先ほどのご意見のように,まず大きな夢というか,基本理念みたいなものをまずぽっと置いていただいたほうがよりわかりやすいというか,これだけだとかなり難しい感じがしてしまうので,そこの辺をお願いしたいと思います。

○浜野座長

 ほかにいかがでしょうか。

○森山委員

 東京都現代美術館の森山です。
 ほかの先生方の意見とほぼ同じなんですけれども,今1番の1として「ライブラリーとしての機能に加えてショールームの機能も」と書いていただいているところについて。ショールームの機能なんですが,いろいろな概念の外在化としての「展示」で見せていく施設である。ただアーカイブだけではないというのがわかりやすいような表現をもう少しこの項目には付与されたらいいかなと感じました。
 もう一つは,この前に入るゼロ番として,やはり「日本の表現力を提言するような施設にする」とか,要するに施設の目的という項目を入れたほうがいいと思いました。
 今この段階で具体的に文言として入れるかどうかは別として,この施設が対象とする領域=(イコール)オリジナルな概念としてのメディア芸術というものを,日本的な意味合いを含めて海外に発信していくのですから,誤解を解く意味も含めて,施設の目的とともに対象とする分野を入れたほうがいい。主にメディア芸術祭で取り上げられていた4つの部門というようにきちんと書いていくんでしょうけれども,どこかの段階でそれを入れられたほうがいいと思います。先ほどの展示のほうも,「温故知新的な意味も含めて展示をする,最新のものだけをショールーム的に見せるのではない」というような形の非常に短い端的な表現で結構ですから,入ったらいいと思いました。

○浜野座長

 私の理解が間違っていたらご指摘いただきたいんですが,整理すると,やはり最初の経緯についての理解がなく,これを突然に見られる方もあるので,どういう思想的,哲学的なところが出たのかというのを初めに書いて,2番目にやはりメディア芸術ということに関する分野のことについての簡単な紹介をやって,3番目にライブラリーとか先ほどご指摘があったショールームと具体的に書かないと機能として収集とか保存とか,ライブラリーとか物としてじゃなくて,機能の言葉で書き直すということで,大体その3点でリライトして,それで私に一任していただきたいと思います。私が事務局とリライトしますので,先生方にまたお送りして,ご意見をいただいて,その手順を踏んで発表しますが,その3点を注意してリライトするようにいたします。林委員いかがですか。

○林委員

 今回基本計画の策定に向けて一歩踏み込んでいただいたというか,ソフトの充実ですとか,それから建物を必ずしも新設にこだわらないというのはこの間のいろいろな経緯の中で非常に大きな方針の修正だと思うんですね。
 ただ,この書類は「基本計画の策定に向けて」ということですから,今皆さんがおっしゃられている話というのは基本計画そのものの話じゃないかなと。つまり基本計画を定めるときに,おそらく長官がさっきおっしゃったような目的から始まって,安藤先生が言われるような哲学的な趣旨,方針みたいなことが入っていくのだと思います。結局最終的にできる基本計画の中ですべてを表現すればいいわけで,そこに向かっていく委員会の作業プロセスの中でこういう観点で検討していきましょうということは,それ自体を公表する意味があるのかどうかというか,基本計画で発表されればいいのかなと今思ったことが一つです。
 それから,もう一つは基本計画がどういうものになるかわかりませんが,その先には今度は民間も含めた公募型の競争入札という段階に入る。その時点では,建物のことだけじゃなくて,事業プランですとか,そういったこともかなり踏み込んだ形で提案を受けるというスケジュールになっていますので,そのときに提案をする側が余り規制されないで,なるべくフレキシブルにいろいろな提案ができるような内容にしておいていただく必要性があるのではということを思っております。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 経緯は知っていただければ誤解がないだろうと思っていても誤解があるので,意識が統一された段階の小出しでもいいのでフォーマルに出していきたいと思います。議事録を全部読んでくださる方というのは少ないので,意思統一ができた方針は出していってご理解をいただくというプロセスは踏みたいと思っています。これは最初の試みで,そういうものを可能であれば,皆さんのご了解が得られれば,特に建物についてすごく議論が多いので,誤解のないように私としては出したいと思うんですけれども。

○林委員

 座長の判断にお任せします。

○浜野座長

 そうですか。
 そういったので,皆さんももう一度見ていただくようにしますので,ぜひよろしくお願いいたします。では,そういった形で進めたいと思います。作業ばかりお願いして心苦しいんですが,またよろしくお願いします。
 それでは,そのほかの配付資料につきまして,事務局からご説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。

○清水芸術文化課長



 〈配付資料3,4の説明〉

○浜野座長

 7月13日まで委員の方々から提案内容とか,ホームページで一般の人々からの大量の提案内容を踏まえて議論に入りたいと思いますが,大量の資料なのでここで延々と議論はできないので,今後ワーキンググループで作業を進めたいと思います。そこで委員の方々の主たる意見の共通理解をつくっておくために,項目ごとに非常に短い時間しかないのですが,ポイントを本当に申しわけないんですが,議論して共通理解としたいと思っております。
 前半は事業内容につきまして手元資料があります。後半は施設管理,運営等について議論をしたいと思います。
 もちろんここに書かれたことだけではなくて,補足したい内容がございましたら,それについても追加しながら,数分ずつ要点をお話しいただいて共通理解としたいと思います。各委員の意見を持ち帰って全部読めといってもなかなか読めませんので,ポイントをお願いしたいと思います。
 それでは,まず事業内容につきまして,いつもいつも安藤先生からお願いするのは心づらいんですが,まず先生に発表のスタイルを。

○安藤委員

 実は,僕はこの書き方というのが非常に難しかった。つまり,前半の事業内容というよりも,後半の組織のあり方とか,そういうことがある部分イメージされていないとどういうふうにそれをしようか。つまり例えばメディアアートなんかの収集・保存ということになると,非常に大変なことが起こってくるだろうとか,アニメーションというのをフィルムセンターでフィルムの場合にはもう預かっているはずであると。それを全部こっちに移管するのか,つまりフィルムの保管というのは非常に大変なわけだけれども,今それのノウハウその他も岡島さんがいらっしゃるからあちらが専門ですが,そういうところに任せるという考え方をきっちりとするというような,つまりシステムをきっちり構築できるのかどうか。
 ですから,僕はイメージとして例えばなんですけれども,これは僕の勝手な意見だと思っていただければいいですが,例えばフィルムセンターというのをきちっと日本の文化の映画というものが根幹であるとしたら独立させると,そういうことも含めてここの中で議論できるのかどうか。独立させた場合にそういうフィルム的なアニメーション,あるいはビデオアートをどうするのか,ビデオアートみたいなものはテレビ局も保存していないし,どこで保存するか。恐らくフィルムセンターみたいなところに,要するに映画部門と映像部門という,あるいはメディア部門という,そういうような部門をつくる形の中で保存されるのが一番整理はつきやすいだろうと,保存だけを考えたときにね。
 そういうようなところと連携しないと,また新たにここにフィルムの保存する場所を設けて,あのフィルムはフィルムセンターにあるんだ,このフィルムはメディア芸術センターにあるんだということじゃ余りよろしくないんではないかと。そうすると,収集・保存,展示・上映,いろいろな形の中でどうそことうまく連携をするか,どういう組織体にするかということが重要なのかなというふうに考えたものですから,逆に僕は組織体のほうから先に考えてこちらを書いたという形なんです。
 ですから,こっちから読むとちょっと僕の意見としたらば前後してしまうんですが,フィルムセンターが何か映画,映像何とかセンターになって,そこのところのメディア部門で扱うようなことも考えました。
 それから,国立新美術館という独立行政法人がある。ここでメディア芸術祭やメディアアートの展示会その他をやった。そういう意味では,世間にもある意味でメディアのいろいろなことも国立新美術館でやれるんではないかというイメージがあったりする。そうすると,そこのところとくっつけたりすることが必要なのかどうか。
 アニメーションとかメディアアートとか,ビデオだとか,を考えると,テレビのアニメーションはテレビ局にお願いして,そことうまく連携をするとか,つまりそれを膨大に全部保存をこちらでもするということが本当に正しいのかどうか。
 マンガというと,マンガミュージアムというのがあったりしますけれども,原画のこの間お話があったような松本零士さんや何かが失われる。そういうものだけを保存したらどうか。そうすると,国立新美術館とここが結びつくのであれば国立新美術館に保存する機能をこういうものに限ってつくるのかどうか。そういうようなことを連動して提案することがある意味で 非常に重要かなと。
 だから,個々にあれも保存する,これも保存するといろいろ言うと,膨大になってしまう可能性もあるし,その辺の切り分けが必要なのかなというのがこの事業のところでの一つのポイントです。
 ただし,ここでやろうとしていることは収集・保存という部分もある部分重要ですが,ちょうど森山先生と同じ意図で逆の言い方ですけれども,要するに,立ち位置は発信というところに置いていくほうがいいのかなと。なぜなら,温故知新という部分をどういうふうにこれまでの部分と積み重ねてうまく連携し,その上に立ったものとするか,ということが重要かなというふうに思っています。
 すみません,ちょっと長くなりました。

○浜野座長

 石原さん。

○石原委員

 たくさん資料があって,皆さんの意見や発言をできるだけ読んでからお話ができればと思っていたんですけれども,非常に量が多くて読み切れていないんですが,どうしてもマンガ世代なものですから,マンガつきの土佐さんのアイデア提案をまず最初に全部読んで,非常に楽しい気持ちになりながら,今,テキストを一生懸命,見ております。安藤先生がおっしゃったように,この資料は,私も書くのに非常に苦労しました。書こうと思っている意図と全く逆に項目が並んでいて,まず全体を書き,そして組織のあり方を書き,そして各機能がどうあるべきかというふうに順番に書いて,そして最後に議論していくという流れをイメージしていたので,全部逆の書き方になっていて,非常にやりにくかったです。
 私の意見を端的に繰り返しておりますけれども,現状策定されていますスケジュール,予算,そしてカテゴリーから考えて,どういうものが一番考えやすく,かつ私にとってしっくり来るか,私自身が幾つか書いている中で一番強調したい部分かというと,これまで文化庁メディア芸術祭という歴史,そしてその新しい文化のカテゴリーの考え方,それはいろいろ不備もあり,難しく,矛盾している部分や分野分けもあると思うんですけれども,その歴史の中で12,3年間続いてきた実績をしっかりと確証していくための考え方や集め方を基本にすべきではないだろうかということです。2011年竣工ということを大きく重要なゴールにするのであれば,かなり具体的な目標を持って,もちろん大きな夢やビジョンもいいんですけれども,ゴールのわかりやすい設定をしていくべきではないかなと。
 一番私が好きだった意見は,古川先生の「ケチな事考えないで,向こう50年くらい国でめんどうみてください。その間に必ずやスゴい財源が生まれるでしょう」という1行で,とても幸せな気分になりました。
 以上です。

○浜野座長

 神村さん。

○神村委員

 商業アニメーターの立場からこの提案に書き込んだんですが,要点は2つで機能としてなんですけれども,収蔵と人材育成機能というのを提案しました。
 収蔵に関しては,展示と研究のために使われるというふうに考えます。国内外のファンが見に来て満足できる内容と量と質,そういうものがないので,それをしたい。
 それから,機能のもう一つのほうで人材育成に関しては,アニメーション業界の産業全体の活性化につながるような施策としての人材育成機能を提案しました。
 要点としては以上です。

○浜野座長

 さいとう先生。

○さいとう委員

 マンガに関しては,非常に恵まれている立場だと私は思っているので,各地に美術館なども,個人の美術館もたくさんありますし,教育機関もありますし,既に保存されている,有名な先生方のはかなり保存されておりますので,ここで余り無理やり集めるということをしなくても,協力を求めて貸し出していただくというようなことで訪れた人たちがこれもある,あれもあるというふうに満足できるものをとにかくそこを優先にして集めて展示して,それをすばらしく見せてほしいというのがまず展示については私の要望です。
 収集に関しても,かなりいろいろな大学とか本当に京都のミュージアムとか,いろいろなところで既にありますので,そこに協力を求めるという形でいいような気もしています。
 原画に関しては,ここで保存していただきたいと,このままではなくなってしまうというようなものもありますから,それはここできちんと収集・保存をしていただきたいというふうに思っています。

○浜野座長

 中谷さん。

○中谷委員

 中谷です。
 今回の提案につきまして,私は以前に申し上げたことで,要するに全体をどこまでやるのか,何をやるのかということをもっとはっきりと大きな構造として決めてから細かい項目というのを決めていかないと,それぞれの柱がたくさんあるものですから,結局何を選んでいくのかというのは非常に煩雑な仕事になってしまって,この限られた期間にまとめ上げるのは至難の業だなというふうに思っていたんですけれども,私としてはかなり今回の提案をこうやって拝見して,僕の中で恐れていた現実がここに出ていて,それはそうだよなというのがたくさん並べられているわけですね。
 ですから,私は今回の提案の細かい項目については今回書かなかったんです。全体についての意見を書いたんですね。それはまず基本計画の策定というのがまだできていない状況で,こういう細かい提案を考えるよりも,せっかく集めたので,これに対してはいいと思うんですが,これはとりあえずちょっと置いておいて,何をどこまでやるか,全体から入ったほうがいいんじゃないかなというふうに思っています。今この案を読めば読むほどどうするんだろうというのが私もわからなくなってしまうぐらい大変な作業になっていますので,とりあえず進め方を考えていただければなというふうに思っています。

○浜野座長

 それは後半でまた出てくると思うんで。

○布川委員

 先ほど浜野先生からお話があったパリのジャパンエキスポというのがこういう形ではなく,あくまでもあれは一つの大イベントです。このイベントにはアニメーションだけではなく,いろいろな日本の文化を学ぼう,見ようとかという人たちも大勢います。また,いわゆるコスプレをやっている人たちが凄く多かったのですが,このコスプレというのもよくよく彼らを見ていますと,必ずしもアニメファンでもないですね。いわゆるコスプレファンの人たちの一つの群れみたいなものができています。先ほど言った16万人という方々がすべて日本のアニメーションに興味を示しているとは私は少し考えづらいのですが,その辺は前置きしておきます。
 今回,我々としてはあくまでもアニメーションという立場からご提案申し上げます。ほぼ半世紀近くわたって,我々のアニメーションという一つの事業が形成されてきたわけですが,我々協会がメディアセンターに寄せる一番のことはアーカイブの保存です。ご存じのように,これから先いろいろな形でメディアが大きくデジタル化していきます。古い作品のアーカイブ保存というのは非常に危機的な状況にもあります。昔35ミリ,16ミリで撮影した作品などはかなり原板が傷んでおりますし,それは先ほど安藤先生からもお話があった映画の世界でもまさしくそうなのですが,こういうのを一元化としてデジタル保存していくという部分をぜひこのメディアセンターにお願いしたいというのが一つございます。
 また,このメディアセンターが建ったら,恐らく日本の観客よりも外国からの観客が非常に多くなるのではないかと思います。というのも,いろいろな国,さまざまな方から「何で日本にそういう集結地がないんだ」というような質問を随分受けます。もちろん漫画家の方たち個人のミュージアム等はございますね。また,東京にはジブリ美術館がございますが,日本のアニメーションを総じてのミュージアムといよりも,宮崎駿先生のミュージアムと言っていいと思います。個人のいろいろなミュージアムは沢山ございますが,ゲーム,漫画,アニメーションという,そういうかかわりを持つ大きな産業のアーカイブセンターがないというのは,いかがなものかなと思う時があります。
 また,この業界に携わっておりますので,いろいろな切り口のお話はあるのですが,かいつまんでお話ししますと,一つの展示の見せ方という部分ではこの3つの切り口を一つにまとめるという面では,一つのキャラクターを利用できないんだろうかと思います。我々のような商業ベースとしてずっとやってきた人からすると,もちろん芸術性という部分の見せ方というのも大事だと思いますが,やはり我々はおもしろくなければ人は来ないのではないかとも思います。いかに見る人たちが楽しく見て,幸せに思って,日本の漫画,アニメ,ゲームというのはすごい産業だな,すごい芸術だなというふうに感じて帰って頂きたいと思います。
 実は弊社は三鷹にあるので,ジブリ美術館が近いのですが,ジブリ美術館から帰ってくる人たちみんなが本当に幸福な顔をして帰ってきます。いずれもジブリ美術館の袋を持って。最近は外国の方が本当に多いです。そういった方々が三鷹の駅まで帰る姿というのを想像しますと,こういうセンターが本当に漫画,アニメ,ゲームを集結したものであったらいいなと常々思っております。例えばアニメーションならば,以前はおもちゃ屋さんが非常に全盛だったころ,おもちゃ屋さんを中心としてオリジナル作品をつくってきました。その代表であるのがガンダム等ですね。そこからいろいろな漫画が展開していったり,アニメーションが展開していったり,ゲームに展開していきました, もう一つは漫画という文化。前にもお話ししましたが,もともとの日本のアニメーションのルーツは手塚治虫先生を初め,漫画家の皆さんが自分たちの映像をつくりたいという思いで,アニメプロダクションをつくったという歴史もございます。そういう面からすると,漫画とアニメーションというのは非常に密接な関係にあります。
 例えば最近少し部数は落ちましたけれども,「少年ジャンプ」という,一時700万部を誇るような怪物雑誌がございました。そこから一つのキャラクターが生まれ,アニメーションが制作され,ゲームになっていくという一連性があった等,なさまざまな切り口というのは一つのキャラクターから発想できるのではないかと思います。
 石原さんがいらっしゃいますけれども,ポケモンにしても,ポケモンというゲーム的キャラクターから生まれ,そこから雑誌になり,漫画になり,アニメーションになって,映画になって,世界戦略を果たしていったという経緯もございます。キャラクターというものを一つの軸にした見せ方というのは,いろいろな興味を引くのではなかろうかと思います。こういうことを一つの柱にすると,いろいろな知恵も出てくるのではないかと思います。民間からのいろいろな知恵,アイデア,それを一つのプロモーションとしての何か話題性や,財源的なものもそこから生まれてくるのではないかと思います。それは逆に言うと,それをどんどん新しく変えていってもいいわけですし,非常に常設的なものですと,日本のさまざまな3つの分野の歴史を語るものとでもいいと思います。現在に至るまで,このようにして日本のこの3つの産業が大きくなり,世界の文化に羽ばたいているという何か活気がある姿を見せたいなと思っております。
 それと,もう一つ。少しお話が長くなってしまいすみません。
 私は1回目から出ていなかったのですが,草原さんのレポートを読んで非常に感心しました。といいいますと,私もアニメーションだけでなく,いろいろなミュージアムに行ったときに,共通していいなと思うものがあります。それは,非常にオープンなスペースがあるということです。
 3回目のときに,筑波大学の先生からのお話がございましたよね。キャンパスでのいろいろな才能がそこにいろいろな活力として出たという,そういうものの場が本当に欲しいなと思います。
 また,カフェ,レストラン,ミュージアムショップ,ブックストアが非常に充実しているのも,重要なキーなのではないかとも考えます。もっと一つ一つの分野に分かれて細かいものがあれば,もっといろいろな細かい発言をしていきたいなと思っておりますが,とりあえず少々長くなってしまいすみません。

○浜野座長

 林さん。

○林委員

 この会合が1年近く行われている中で,随分いろいろ周りの環境が変化しつつありますので,私が一番恐れていることは,こういう構想が何らかの事情によってぽしゃってしまったり,なくなってしまったりしたら,本当に先行き,永久とは言わないまでも当面そういうものが日本ではつくられないのではないかと,そのためには実現させるために今何をしなければいけないのかということを特にポイントとして考えました。
 私は,従いまして,各論で事業内容をどうするかとか,展示がどうかとかいうことではなくて,全体の方向性をどの視点で考えると実現の方向に向かっていくことが可能なのかと。特にその中で前提として2つのことを危惧しておりまして,今こういうことを言うのもなんですが,1つは政権の動きがどうなるかわからないという中で,どういう政権になっても政治家の間で皆さんに合意していただけるような中身にしなきゃいけないだろうということが一つ。2つ目は,国民の批判が非常に多いということもありますので,世論として国民がどうすれば合意していただけるような中身になるんだろうかということを考えなければいけないんではないかということです。
 きょうの資料で11ページの「全体」の中にまとめましたが,私は基本的な考え方として3つのことを思っています。
 1点目は国営巨大マンガ喫茶とか,国立アニメの殿堂といった風評があるということで,これをどう払拭させるのかという点です。
 今回,国民の皆さんのアンケート結果を見ていても,この施設はマンガとアニメだけに国民の皆さんの目がいっている。つまりそういうぐあいに受けとめられているのではと思うわけですが,本来これは日本のメディア芸術全般ということですので,映画,メディアアート,それからアニメといってもテレビアニメ的なものだけじゃなくて,古川先生なんかがずっとおやりになっているような芸術作品としてのアニメーション,そういった映像文化というものをもう少し前面に持ってこないと,どこかで誤解というものがあるなという感じがしています。
 それから,2つ目は税金の無駄遣いということがどうしても国民から出てくる声としてありますので,そこに対してはこれは最初から余り理想論を追求せずに,段階的に実現させていくべきではないかなと。
 すなわち第1ステップとしては,緊急経済対策として補正予算が組まれたわけですから,緊急経済対策,つまり緊急的な経済対策になっているようなものを事業内容として精査していくことです。場合によっては,117億円の予算がついてはいますが,そういうものに縛られない予算の修正,あるいは場合によっては縮小,つまり117億円も税金使うのかということに対して,いやいやそうじゃなくて,こういうぐあいに工夫すればこういうレベルの予算でいけますというような提案まであっていいんではないかなというのが2つ目です。
 3点目には,箱物行政の是正というか,これも誤解を受けているわけですが,117億円が建物の建設と土地の購入だけについているという,その箱物行政と言われている指摘をどう是正するか。それから,国立のメディア芸術センターであるにも関わらず,一方で運営が民間委託だというところで,何となく民間に丸投げしてしまっているようなイメージをどう払拭するか。こういった観点からいきますと,3つのことを考えたい。
 1点目は,今日の冒頭の「基本計画策定に向けて」の中で,非常に踏み込んでいただいた方針の一部修正が出ましたので,その部分では非常に心強いんですが,ここに書きましたように,箱物といういわゆる土地,建物というものと,それから中身,内容の部分,例えば,初期におけるアーカイブのための保存・収集,それから人材育成,あるいは学芸員などの人件費といった,ハードとソフト,あるいは箱物と中身の両方へ適切な予算配分を行って,全体でどういう予算にするかということが必要だということです。
 それから,2つ目は何もゼロから新しいものを建てなくていいじゃないかと。既存施設で有効活用できるものはできる限り活用する。それによってコストの圧縮をするとか,それからたまたま京都国際マンガミュージアムの話がこの間出てきてますが,このメディア芸術センターも東京へ一極集中させるのではなくて,日本の二大文化・観光エリアと言える東京,京都という二極展開を考えるということもあるのではないかと。
 3つ目は,年間の運営費についても,国が相応の予算を手当てして,その上で民間運営による入場料その他の事業収益や企業協賛等を加えて,国の予算と民間の事業収益というものとのバランスを考えながら,収支をとっていくようなものであってほしいと思っています。
 そこから下は,かなり踏み込んだ具体的な提案になっているんですが,余りここを説明していますと時間がかかるので,とりあえず基本的な考え方の部分だけ述べさせていただきました。

○浜野座長

 運営はまた後でもう一巡しますので,また補足してください。
 森山さん。

○森山委員

 ありがとうございます。
 先ほどジブリさんの話が出たので,お話をしますと,ちょうど本日の14:00に東京都現代美術館で毎年現美とスタジオジブリさんと日本テレビさんで総力を挙げてやっているアニメーション領域の一大企画展がことしも無事開幕し,いま式典の最中です。開幕したところを見届けてやってまいりました。ことしはメアリー・ブレア展というウォルト・ディズニーのためにカラースタイリストとして働いたアニメーターの特集展です。貴重な原画がたくさん出ております。
 今年も多数の方が来てくれると思いますし,関係者が今一堂に集っているわけなんですが,昨年は同じく担当した「スタジオジブリ・レイアウト展」で,アニメーションの制作過程にかかわるものを特集したんですけれども,こちらもやはり日本の表現力として重要な領域,アニメーションが題材だけれども,展示手法はメディアアートを活用したりしています。男鹿和雄さんの展示などは一昨年約28万人,昨年の「スタジオジブリ・レイアウト展」は約12万5,000人の実績があります。ことしはスタートしたばかりです。先ほどの皆様方のお話と重なりますが,関係者たちは,私たちがここで検討しているような本来のこの施設の目的というのをご存じないですね。
 報道によって,4つの部門のうち2つしか取り上げられなかったり,情報量が足りなくて間違って伝わるということによって,センターの本当の目的をご存じありません。だから宮崎駿さんにしろ,鈴木敏夫さんにしろ,ディズニーの関係者もまだ何もコメントされていません。だけれども,本来の目的はこうなんだということをお伝えすると,皆さん,それは必要であるとかいうふうにいろいろ意見を言ってくださるのではないかと思います。その点誤解を省いていくというのが大事だと思います。
 前置きがちょっと長くなりました。この表のほうをご覧ください。いただいた資料の書式がA4の横位置でたまたまマトリックスになっていた大変小さい表だったので,私のほうからは各領域をここは非常に今までも割と充実しているんじゃないか,ここの領域がマトリックスの中で見ると足りないんじゃないかというふうにごく簡潔にマークをつけました。丸,三角,それから四角,重点領域だとか少数の前例がありますとか,ややここは充実しているから,それを活用したらいいんじゃないかという表をつくったので,それをごらんいただければと思います。
 このA3の表のほうよりも,縦位置のA4の表のほうでご説明したいと思いますので,A3のほうはざっとめくっていただいて結構です。2ページにある調査研究の領域では,体系化,この領域を体系化して,日本の表現力としての紀元前からの歴史を確立させる。次世代としては教材,ITプロダクト,デジタルパブリックアートあたりが社会への貢献する領域としてくるんじゃないかというような事業対象領域に注目をいただければいいと思います。それ以降の主な考え方としては,6ページにあります安藤先生から出たのと同じことなんですけれども,ヘッドクォータービルというのをつくるとしたら,それ自体は大規模なものでなくても造形的にもモニュメンタルなものとして成立させるんですが,この施設の各部門とか機能の一つ一つをモジュールとしてとらえて,アネックスとかサテライトとかという形で,時間的にも段階的に短期,中期,長期に実現していく計画として複合的に展開するという形で各部門の領域を実現していき,スケーラブルなものにしていくということがいいんじゃないかと思います。
 次のページにありますが,7ページ,「その他」のところです。従来型のミュージアムというよりも,展示,研究,収集・保存などの部門別の機能に沿って国内の各所にそれこそいろいろな施設が偏在していますので,そことの連携という形で多様な規模の施設が集まった拠点として成立させるのがいいんじゃないかという考えに基づいています。実際に大阪にも2012年にはナレッジキャピタルという名称でメディアアートの都市計画が進んでいますし,そういったものと連携して今からご説明するA4の縦位置の資料のほうを検討していただければと思います。
 カラーの「第5章 分析・提言~わが国において取り組むべき方策の分析」と書いてある資料,お手元にありますでしょうか。これをごらんください。
 これは本来ならこの間お配りになったマトリックスの中に入れるべきことが満載されている報告書というのがありまして,こちらの厚い本です。2004年から2005年に科学技術政策提言調査報告書として,「先端科学技術研究をメディア芸術へと文化的価値を高めるための施政のあり方」という調査を行いました。このメディア芸術総合センターをつくるためにやったような調査でございます。
 これの中に1枚目にありますメディア芸術の現状調査,たくさんの専門家や国内,海外施設にリサーチした結果が調査として入っており,2番目としてメディア芸術の基盤技術調査,その展示したりアーカイブするための技術はどういうものがあるのかという調査が入っており,3番目に海外の政策や現状は日本の状況と引き比べてどうかというので入っています。4番目には,既存のメディアアートセンターとどのような連携ができるかというデータも入っております。最後の5番目のところに,これから取り組むべき提案という形で入っているのが,このパワーポイントの資料になります。
 1ページ目の下半分にありますけれども,私がこのセンターに提案としてこのときから引き続き考えたいのは,この5つの柱(科学・芸術・産業の融合/文化芸術産業支援システムの構築/高度な専門人材育成の強化/専門的な学術組織の確立/メディア芸術総合センターの設立)になります。
 この中に,メディア芸術科学センターとこのときは呼んでいますけれども,そういうものの設立も入っております。
 目的の1つは,4つのさまざまな領域がカオス的にある領域だとはいえ,科学,芸術,産業の融合がこの施設で実現するのだということと,それからこういう産業とか文化を支援するシステムの構築,それから人材育成の強化,専門的な学術組織の確立,学会ということだけではなくて,研究開発をする組織をその複合文化施設の中につくる。センターの設立ということを提案しています。
 1枚めくっていただいて,次のページでは,研究機関,調査,研究,開発をする部門についての考え方を書いています。ここに書いてある大学名は固有名詞だから,いろいろ振りかえて考えていただければいいと思いますが,その次の下半分の図にご注目ください。ここが名称こそ違え,この同じ理念を持って設立したらいいと提案したセンターの基本構想になります。
 基本構想の案として,総合芸術としてのメディア芸術というふうにとらえて,総合的専門文化施設,複合文化施設としての活動をしていくと。情報交流の拠点になる。日本固有の文化との連携,それがまた脱領域化していくというのが私がこの施設に期待する,複数の従来は違った領域が一緒にともにあることで脱領域化していくということの理念です。研究機関の設置,来館者,地域都市との地域連携,それからプロダクトの開発の提案,アーカイブというふうに目的があります。
 組織は管理部門と学芸部門があって,それぞれが事業方針7つ,連携事業,研究開発,企業連携,広報事業,収集,普及,展覧会ということでやっていくという組織にされてはどうかと思います。右側に具体的なことを書いております。
 急いでかいつまんでお話ししますと,次のページがそのセンターの運営組織イメージです。これは5年前ごろの話なんですけれども,今回の予算規模とか,ハブ的につくるのであって,一つの組織,建物の中に全部の機能を詰め込む物理的なものではないという理念を考えると,施設の規模としてはこれくらいのスケールがちょうどいいんじゃないかというふうに思う施設です。施設概要と組織の構成と事業方針,それから展示支援はこのようなことがというのが書いてあります。ラボとして成立するような複合文化施設の規模,スケールのイメージです。
 そのページの下半分がこの領域がこれから目指すコラボレーションしていくべき10の領域ということで,このときは主に科学と芸術の脱領域化ということでつくりましたけれども,今回のセンターが取り組む各芸術領域にもこれは当てはまっていく,嫌でも避けて通れない,コラボレーションしていくべきハイブリッドな領域だと思いますので,その10点(情感科学/シミュレーション/フロンティア科学/細胞遺伝子/人工生命・人工知能/ロボット・機械/ネットワーク・ユビキタス/デバイス・インタフェース/新素材・材料/ディスプレイ)を提案しております。
 1枚めくっていただくと,今度はA4の横位置,年間事業スケジュール案になります。4月から3月までの単年度予算で例えば常設展,企画展,研究関係,共催展,自主展,研究目的の発表,それから連携企画ということで,展示の部屋と展示室とホール,シアター系の施設でできることを1年間のざっとしたプランとしてこのようなプランをつくってみました。これはまた別の,東京大学の中で准教授として行った調査です。
 この考え方は,20年間,東京都写真美術館でメディア芸術祭にもお世話になりながら展開してきた,この領域の現場での運営方法に基づくものです。短期,中期のいろいろな企画をいろいろな機能の違うものをこのようなサイクルで入れているという提案です。
 長くなりましたが,一番最後にめくっていただくと,モノクロの横位置の報告書があると思います。これは東京都映像文化施設設置企画委員会,ちょうど私たちが今取り組んでいるこの委員会で検討されたようなことなんですが,20年前,若かりし日の私が命をかけて,平成元年に東京都がつくろうとした映像文化施設をこのような形で考えてはどうかと,こういう報告書を作りました。これはぜひ今回の策定をされるに当たって,ご一読いただきたく配布しました。
 映像工夫館という施設があります。現在の東京都写真美術館の中の映像展示室です。このときも非常に各部門がどの部門を力を入れてやるべきかとか,いろいろな葛藤がありましてこのような形になり,現在この形は十分には成立していませんが,今回検討されている中にあるいろいろな目的がもう80年代の末に私たちが取り組んだときに,要素としてここに入っております。機能と活動ということで,連携だとか,温故知新的なことだとか,産業的なことも目端に入れていくとかということが広報に至るまで入っておりますので,詳細にご覧いただければと思います。
 再度,一番最後のページに基本計画としてこのような考え方ではどうか,事業の規模としてはこういうものでどうかというのが入っております。
 では,長くなりましたが,ご提案はこういうところです。この報告書については,また別途参照していただければと思います。

○浜野座長

 阿部さん,よろしく。

○阿部氏

 まず,最初に報告させていただきたいのですが,文化庁メディア芸術祭の作品募集が昨日から始まっております。いろいろマスコミ報道等ございましたので,今年は作品募集が激減するのではないかなと危惧していたのですが,去年に比べると2倍もの応募が来ています。いろいろ否定的な意見等も報道されましたが,アーティスト,クリエーター,いろいろな創作活動にいそしんでいらっしゃる方々はメディア芸術や,メディア芸術祭に対して理解してくださっているし,支持してくださっているように感じ,一応ほっとしている状況です。
 本題に入らせていただきます。重複しますけれども,収集・保存,展示についてこれから考えていくときに,最初にやらなければいけないのは,既存の施設が何をやっているかということをちゃんと把握することです。既にいろいろなジャンルで収集・保存,展示されている施設がいろいろあります。そういったところと重複することは非常に無駄ですので,そういったところをきっちりと調べ,その上でメディア芸術センターとして収集・保存,展示をどういうふうにやっていくのかということを計画的にかつ着実にやっていくということが必要です。
 今回のメディア芸術センターがやろうとしていること,ついつい忘れられがちなんですけれども,青木前長官もおっしゃられていましたのは「メディア芸術,メディアアート,アニメーション,マンガ,ゲーム,映画,いろいろなジャンルを網羅したメディア芸術というものをプレゼンテーションできる施設」であったはずです。そういったものを考えていきましょうというのが議論の発端だったと思います。
 メディア芸術センターとは,言うならば日本の現代文化をプレゼンテーションする施設だと思うのですが,既存の施設には無い機能とは何だろうと考えますと,まず一つはメディア芸術の全体を俯瞰して見れるような施設というのは日本じゅう探してもありませんし,世界を見渡してもありません。
 もう一つは,秋葉原に行けばサブカルチャーの分野での最先端に触れることはできますが,歴史的なところを見ることはできません。戦後,手塚治虫先生が非常にご活躍されて,日本のサブカルチャー,マンガ,アニメ,いろいろ発展してきたわけですけれども,まだメディアアートの分野でも山口勝弘先生を初め,いろいろな方々がご活躍されて発展しましたけれども,そういった歴史的な流れをきっちりと国内外に示す施設は数少ないと思いますし,それも複合的なジャンルをちゃんと重ね合わせてやっている施設はありません。 
 最後にもう一つ申し上げますと,メディア芸術センターが設立された場合,開館直後が最先端ではなくて,進化し続けなければいけないと思うんですね。ある美術館に行って10年間展示が変わってなくて,どんどん,どんどん陳腐化していって展示も施設も古くなっているというようなところを幾つも拝見します。
 メディア芸術の,最先端をプレゼンテーションする場であるならば,新陳代謝を起こる仕組みをつくらないといけないと思います。それは美術館にとってのエンジンの部分ですけれども,それは何かというと,フェスティバルではないかと思います。もちろんメディア芸術祭ではなくほかのいろいろなエンジンをつくることも選択肢としてはあるのかもしれませんけれども,今我々が活用できるエンジンとしてはメディア芸術祭を石原委員がおっしゃってくださいましたけれども,十分に活用して,回していくことが人を集める,作品を集めるという意味でも非常に有効なのではないかなと思います。
 私のほうからは以上です。

○浜野座長

 石川さん。

○石川氏

 いろいろとこの検討会のときからお話を伺ってきまして,ここに出ておりますメディアアート,アニメーション,マンガ,エンタテインメント,ゲーム,映画,映像という分野でのそれぞれの思いというのは非常に大変強く伝わっています。かつそれぞれが何をしたいかというところも具体的に大分深く話も出ていると思いますが,このメディア芸術総合センター(仮称)の中においては,これを個々ばらばらにではなく,どうやってそれを連携して見せていくのか,というところが非常に大事になってくるんじゃないかなと思います。
 センターの規模にしましても,その一つ一つだけでもかなり大規模になり,本気でやれば大きなものが5つぐらい必要になってくるのではないかと思いますが,これをどうバランスをとるのかというところをこの委員会の中で早い段階で決めておかなければいけないかな感じております。
 というのも,検討会のときは皆さん意見を聞いて最後どういうふうにまとめるのかなと思っていましたが,まとめがないままこの準備委員会に入ってきているのではないかなという気がしております。その辺のバランスの調整をぜひお願いしたいということと,実際あとどういうふうに日本のこのような分野が融合していくのかと,しているのかというところが見せられるものが必要なんじゃないかなと思います。
 今,阿部さんのお話がありましたけれども,最先端の部分というのは芸術という視点で見ていけば,メディア芸術祭を毎年やられておりますので,その部分がある意味の最先端なのかなというふうには感じられると思います。
 それと,アーカイブというところでは過去の歴史の中で評価が定まってきたものをアーカイブしていくというところが大切なのかなというふうに思います。それと今の日本のポップカルチャーが非常に海外で受け入れられているというところを,どういうものが認められているのかを見せられるという部分も現代日本を興味を持って見てもらえるんじゃないかなというふうに感じております。
 それと,展示も新しい物をどんどんやっていきながら,人がどんどん集まるということが大事だと思います。それを興味を持って見に来ているという方と,関係者がどんどん集まって,そこで集まることによって,また新たな人間関係,人材育成につながっていくような施設が必要だろうなというふうに感じております。
 以上でございます。

○浜野座長

 岡島さん。

○岡島氏

 私どものフィルムセンターでは,映画フィルムを使ってつくられた作品や映像記録,それから関連資料というものを可能な限り網羅的に収集し,保存し,上映をし,デジタル媒体の上で利活用をし,教育普及をし,ということを膨大な量を対象にしながら,世界でも大変少ないスタッフの数でこれまでやってきております。
 昨年度で言いますと,1年間に8,000本の映画フィルムを収集するということを実現したわけですが,今後まだ数十万本のフィルムを相手にしていかなければならないという状況がございます。
 それから,デジタル保存というのはご承知のように長期的には極めて問題が多いので,もとになっているフィルムの保存を継続する必要があります。
この点はアメリカの映画芸術科学アカデミーが一昨年発表した「ザ・デジタル・ジレンマ――デジタル映画素材のアーカイブ化とアクセスに関する戦略的課題」という調査白書の中ではっきりと述べられていることでございますし,さらにこの白書には,映画についてはフィルム保存のほうがデジタル保存よりも長期的には圧倒的にコストが低いと,10分の1であるという記述さえあるということで,今後も絶対にフィルム保存を継続しなければならないという決意を固めております一方で,デジタルボーンの映画,ボーンデジタルでつくられる映画が今後ふえてくると,これもまた我々の収集保存対象としてふえていく部分でございます。
 ですから,フィルムからデジタルへのシフトが非常に速い速度で進んでいる中で,私どもが対象にしていくものは投影された映像というところまで広げる必要は確かにあるんです。つまりフィルム技術によってつくられた作品や記録や資料の収集・保存から,“プロジェクテッド・ムービングイメージ・オントゥ・ザ・スクリーンあるいはモニター”,モニターまで考えるかどうか,非常に難しいところですけれども,そこまではフィルムセンターは仕事の領域として今後カバーしていく必要があると,こういうふうに思っております。
 そういう中で,まだまだ多くの予算も人員も必要だと強く感じておりますけれども,そういう中で林委員が出されたこの組織イメージというのはとてもわかりやすく,そして多くの人が納得できるものだと思います。
 ただし,一つだけ声を大にして申し上げたいのは,林委員ははっきりと適切な予算,人員の拡充措置を行うと書いてくださっておりますが,この部分が抜け落ちてこのイメージだけがもし先行するようなことになりますと,今申し上げたフィルムセンターが今後抱えるであろう大量の仕事に加えて,さらに多くの仕事が期待されることになる。それを極めて少ない人材でこなさなければならないということになりますので,この条件,つまり適切な予算,人員の拡充措置を行うということが,文言や図から絶対に外れないということが一番重要であろうかと思っております。
 私は,今申し上げたような意味に基づいて10ページにある全体のイメージを書かせていただきました。これはもしお金がなくなったらどうしよう,もし人がつかなかったらどうしようというかなり後ろ向きの心配事に支えられて書かれた文章ですが,もしメディア芸術センターが1.展示・上映,2.収集・保存,3.調査・研究開発,4.人材育成・普及啓発,5.情報収集・提供をすべて期待されて行うこととなり,なおかつ芸術分野が5つ以上もあるのだとするならば,一体幾らのお金が必要で,幾らの人員が必要かであるかを,その最低人数でもよいから確実に査定すべきだと思います。
 そして,もし1から5までの仕事のうちで,お金を用意することができない,人員を確保することができないのであれば,どれを優先的に除外していくのかということも現実的に考えていく必要があると思います。3から5は,私は今のところわかっている計画の中では困難ではないかと現実的には考えております。
 そして,2の収集・保存は長期的に見て最も大切なものであることはわかりますが,これを長期的な雇用を持たないで,確保しないで,本当にできるのかについては非常に疑問がございます。したがいまして,もし今本当に限られた予算しかなく,限られた人員しかないと,そして公設民営の考え方を推し進めるというのであるならば,1の展示・上映事業のみに特化するのが現実的ではないかと思っております。
 以上です。

○浜野座長

 甲野さん。

○甲野氏

 独立行政法人国立美術館の立場では,国が具体的にどのような事業を行うべきかということを示されて,それを引き受けさせていただいて事業を展開するという立場ですので,個々の事業内容について,こうすべきだというような踏み込んだ意見を言う立場にはないと思うんですけれども,ただ2点ほど申し上げたい点がございます。
 1つは,今,岡島さんからもお話がありましたけれども,国立美術館の中ではフィルムセンターが映画フィルムについて中核的な役割を果たして,さまざまな活動を行っているところでございます。
 それから,国立西洋美術館を除いた4館におきましては,現代美術の一環としてメディアアートと呼ばれる分野につきましても,これまでさまざまな形でかかわってまいりましたし,今後もかかわってくるということがあろうかと思います。そうしたような部分が今回のこの新しいセンターの活動とかぶってくるところではないかと思いますけれども,そこの部分についての交通整理といいますか,連携調整といいますか,そこの部分をはっきりとうまい形で考えていただければ大変ありがたいというふうに思っております。
 それから,あと現実に引き受けるという立場からは,具体的にそれができるんだろうかということが一番心配になるわけでございます。本当にできるということが確保されませんと,運営は外部団体に委託をするというふうにありますけれども,手を挙げる団体も出てこなくなってしまうのではないかということもあるわけでございます。人員とか体制ということもありますけれども,一番基本となるところは,行うべき事業に見合った形での財源が確保されるべきということだと思います。
 4月の報告書においては,自己収入でもって賄うという形で書かれておりまして,それについても文化庁のほうでよく研究をしていただくというような項目がありました。さまざまな検討をしていただいているということを大変ありがたく思う次第でございますが,具体的にここで計画が明らかになっていく過程では,その具体的に行う事業内容に見合う形での財源が確保されるということを,これは要望になってしまうんですけれども,お願いしたいと思います。
 以上です。

○浜野座長

 古川先生。

○古川座長代理

 この表をいただきましたとき,それも書くならこれも言わなくちゃ,これも書いたらこれもあるよなみたいな感じで,とても細かいところはちょこちょこ書いていったんですけれども,大体皆さんのいろいろのさっきからのご意見をお聞きしたり,これを読ませていただいて,そうするとここのセンターというか,これからできるものにできることというのはそんなに全部が全部できるわけじゃないと思いますので,優先順位をつけていくというか,中谷委員とかも書かれていましたけれども,ここがハブ的な場所になって,既存の施設なんかをいろいろ使いながら,それはジャンルを問わずどこもそうだと思うんですけれども,それをやっていかなきゃいけないのかなと感じています。
 私個人的には,アーカイブ的な要素というのは必要だと思いますし,それと幾ら展示をしてショーを上げて若い人たちにしても,その後のちゃんと継続して作品がつくれたりとか,支援をしていかないと,それからアニメーション業界の問題もそうなんですけれども,一方では本当に業界は切羽詰まったりしている状況もあるわけですから,人材育成というものももちろん大事なんですけれども,何か支援できる体制というのは絶対必要だと思いまして,そういうハブ的なところはそういうことも視野に入れて,場所なんかは本当に例えば上映する場所とかも別に大きいシアターから小さな小屋まで東京中には結構あると思うし,それを使えないわけじゃなくて,使いやすくできるように支援していけばいいんだと思うし,何もゼロから全部建ててシアターとかつくってやっていくということだけを考えないで,その施設もそうだし,何かそのハブがいろいろなところに支援できる体制がとれれば,そういう中心の拠点が一番あればいいかなと思います。

○浜野座長

 どうもありがとうございました。
 私の意見としては,収集で言えばアメリカの国会図書館がフィルムプリザベーションアクトという法律をつくって映画を永久的保存しているんですが,文化庁メディア芸術祭の受賞作を永久保存にするというのを賞金とともに一つのデフォルトにすれば,収集しやすいのではないかと思います。
 保存については,他の施設と分担したらいいという意見もありますが,分担につていは危惧もあります。フィルムセンターにしても,国会図書館にしても関東大震災が来ても耐えられる準備はしています。関東大震災って必ず来るといわれており,来たときに灰燼に帰しましたというわけにはいかない。
 日本はどこでも地震があるわけで,そういった覚悟で保存してくださっているのかということを考えると,国としてやるべきことって結構あります。前回来られた樋口監督の「日本沈没」で,日本が沈没していくときに国宝を守るために海外にどう分散させて持ち出すかということが描かれています。文化を守るというのは,国土がなくなっても守るといった覚悟が要るし,守ろうという強い意志がないと文化は守れません。それを民間レベルに求めるのは酷だと思います。布川さんがおっしゃったようにメディア状況が激変していますから,50年後に今のマンガの形で見ているとか,今の形でアニメーションを見ているとか,考えられないわけですよね。
 だから,そのときに研究機能も含めて保存をどうするかとか,新しくお金を生むシステムを考えていくとかということも含めてやるんだったら,大規模にいろいろな試みをやる必要があると思います。これは個人的な意見ですが,展示については,土佐さんとかのご意見があるように大胆にだれかにやっていただいて,そのいいところを蓄積していって,100年とか1000年の単位で資産にしていくのがいいんじゃないかと思っております。
 今から運営について,中谷さんがかなり言いたいことあったので,ぜひ中谷さんから,時間がすごく少ないので。

○中谷委員

 ありがとうございます。
 先ほど阿部さんからメディア芸術祭のお話がありましたが,私どももいろいろ展覧会等を企画して展開するんですが,こうやって常設といいますか,恒常的に行われる展示の施設の中では,メディア芸術祭は無料であるということが非常に大きな参加者のモチベーションだと思うんですね。ですから,今回のこの総合センターの運営の手法としてこのメディア芸術祭を例にあまりにもしてしまうと非常に危険な部分があるのではないかなというふうに正直思います。
 ですから,どうしても想定される収入等が気になるのですが,甲野さんもおっしゃるように,このまだメディア芸術というものがほかの美術展ほど集客力がまだそんなにないと僕は思っています。ですから,ある程度しっかりと最初から国の予算措置というものをしていかなければ成立しないんではないかなというふうに私は考えています。

○浜野座長

 石原さん。

○石原委員

 収益の確保方策で私が少し書いた部分で言いますと,もし収益というものが非常に重要なのであれば,プロデューサーという立場が非常に重要になるんじゃないかと思います。このようなケースでは,プロデューサーとキュレーターが一体となったチームでどういった企画展へ商品開発が可能かとか,どういうビジネスモデルがつくり出せるかということを真剣に考えないといけないだろうと。
 私の考えは,入場料収入で何とかするという考えは一刻も早く捨てるべきではないかなというふうに考えています。先ほど中谷さんの懸念も入場料がただだから5万人,10万人来るけれども,有料にしたらどうなんでしょうという懸念だと思うんですけれども,僕はこの収入財源をそういうものをベースに考えること自体が根本的にナンセンスな感じがしています。
 以上です。

○浜野座長

 森山委員。

○森山委員

 公立の美術館で長く仕事をしていると,特にメディアアートの展覧会をたくさん実施していると,中谷さんおっしゃる危惧も本当にあって,メディア芸術祭が写真美術館の2階と3階で開催していて,地下1階の先ほど見ていただいた映像工夫館という部屋で私の企画展を内容を連携してやっているときなどを例にとると,入場無料のほうのメディア芸術祭は何万人も入る。それよりちょっとは少なくはありますが,呼び水になった形で併設している有料の企画展にも通常ではあり得ない数のお客さんが入るということは,一応実際の数字としてありました。1日に9,000人というような人が来館したのですが,普通に宣伝費もかけないでやっている企画展だとそれができない。
 だけれども,メディアアートのファインアートとしての展覧会をやるだけではなくて,企画のメリハリでそれはプログラムの組み方だと思うんです。キラーコンテンツである展覧会やフェスティバルと,収蔵品をパーマネントコレクションを見せるような,集客は望めないけれども意義のある企画を抱き合わせで一緒にやるとか,そういう形で。ワンコインショーと陰口をたたかれたことがありますけれども,500円の入場料の展覧会,映像メディアに関する展覧会をここ20年で岡島先生に手伝っていただいた基本計画ができてから50本ぐらいやってきたんですけれども,それこそお金は全然かけられない。時々中谷さんが持っていらっしゃるデジタルスタジアムとか番組の公開収録をしていただくとか,メディア芸術祭と一緒にやっていただくというようなのが1年に一,二回ある。その時期をとらえて非常に生きた企画を組むということで入場者を有料であっても獲得してきたというのはあります。
 あと実際問題,財源から展覧会の文化事業を論じるというのはナンセンスなんですけれども,どうしてもそれが必要なのであれば,提案にも書きましたけれども,写真美術館がやったのは法人会員を150社集めて独自の財源を得た。ほかにも繰り返しになりますが,例えばかつてのMITメディアラボ方式では,企業からアーティストたちが開発するものをある一定期間投資していただいたものに対して生まれてくる作品のアイデアと商品のアイデアを全社が共有する形でお金を得る。
 それが運営資金に回されるとか,空間自体にギャラリーに名前をつけて出資していただくというような方法が既に幾つかの文化施設で検討されているので,そういうものを活用していけばいいと思うんですが,それとベースにあるのが,展示とか上映とか,先ほどの岡島先生の1,2,3,4,5という事業カテゴリーからいきますと,リサーチでやったのは7機能ありますけれども,展示上映を一番にするのか,収集・保存を一番にするのかというのはディスカッションで決めればいいと思います。何となくここ数回のディスカッションで方向性は定まってきたように思うんですけれども,私なんかはお金のない中でメディアアートの展示をたくさんやってきて,その収集をやってきて思うのは,変容していく領域だと実感しています。阿部さんからも出ておりましたが,日本の文化の領域で今まで起こりがちだったのが,一かゼロかというような判断基準で,文化か経済かという二項対立です。収集・保存か調査研究かどっちかをとって,もう一方はまったくしないというふうにしてしまうと,非常にそういう取捨選択は重要なんですけれども,限られたことしかできていかないと思います。
 なので,1番から5番のいろいろな機能,運営にかかわる部分としては,どこかにポイントを置いて重点的にやっていくのはいいんだけれども,ほかの機能も浜野先生から出たように収集・保存もやらないわけではなく,根っ子は残す。限られた財源の中でどうやってやっていくかというと,再び古川委員も引用いただいたハブのやり方だと思います。
 アウトソーシングと言ってしまうと,委託,委託で外にいろいろな業務を出してしまう悪い印象があるんですけれども,逆にアウトソーシングではなくて,この領域はここと一緒にやってクラウドソーシングをやるという考え方でこの施設を考えてみてはどうかと思います。
 クラウドソーシングというのは,この機能はここと力を合わせる。この機能はここと力を合わせる。それをメタ的な視点から引いてみると,一つの芸術作品ができ上がっているという表現領域の一つの言葉です。この考え方というのは必ずや組織運営にも適用できると思いますので,対象とする領域とか施設の機能を一かゼロかでどれか一つにしてしまうというのではなくて,段階的にやったり,クラウドソーシング的なものをやれば,財源の確保にも可能性がある,そういうふうに基本計画はつくるものじゃないかなという気がしております。

○浜野座長

 布川さんにひとつ提案がこのセンターに絡んで意見をお聞きしたいんですが,今グーグルというところがどんどんデジタル化していて,必ず日本のマンガもやりますよね。紙が終わったら必ずアニメーションとか映像もそのためにユーチューブを買っているわけですからやりますよね,データを著作権が切れたところから。それで,今国会図書館は大変熱心にやっていますが,マンガとアニメーションは多分後回し,特にアニメーションは。
 それで,私はここのセンターの一つの機能として許諾を得たものをデジタル化してあげて,寄託を受けて,それでそれが商用化したときに作業料をセンターがいただいて,商用はどうぞと,それで保存とビジネスをデジタル化でつないでいくというのをある種のビジネスの中核に据えたら,マンガのデジタル化とアニメーションとかほかの映像とか,そういうのはアニメーション業界で賛同を得られないですかね。

○布川委員

 先程私が補足しようとしたのは,今の浜野先生のことでした。つまり,アーカイブをこのメディアセンターに保存し,我々が商用として活用するときはお金を払うということです。先程もこの先メディアが激変していくということでしたが,例えばメディアセンターが預かったものを一つの通信局としてつくってみる構想もおもしろいのではないかと思います。例えばテレビ局みたいなものです。そういうことも将来的にはあり得ることなのかなと思います。いわゆるアーカイブテレビではないですが,私が言いたいのは,今,日本のアニメーションのアーカイブが非常に危機的なものに立っているという事です。まずはアーカイブを一元化していただきたいということですね。今後の運用に関しては,いろいろなアイデアを出し合っていきましょうというようなのが私の発想だったのですが。

○浜野座長

 もしそういう提案があれば。

○布川委員

 我々の協会はすべてのプロダクションを代表して私が言っていますが,すべてのプロダクションが同意するかどうかは別にして,私自身の個人的な考え方からすると,そういうものでまとまってもらいたいなと思っています。

○浜野座長

 安藤先生の運営のほうのご意見。

○安藤委員

 今のお話なんかでもおもしろいんですけれども,現実のところでの著作権処理だとか何かで言うと,例えばさっきジブリさんのお話が出ましたけれども,ジブリさんがするかなと思うと,現実的にはなかなか難しいんじゃないかなという気もしないではないですね。
 ですから,今そういう発信みたいなものをここでやるということ,ただそこまで話を広げることではなくて,森山先生のおっしゃっていたことはととても僕はいいと思ったんですけれども,つまりちょっと浜野先生がおっしゃった先ほど「日本沈没」という中で物を外国に移管してと,実はその発想がすごく危険だと思ったんです。つまりこういうものを発信するというものは,実は保存していることだけではいけなくて,その昔の保存,昔の知恵とか,温故知新とさっき森山先生がおっしゃったけれども,その部分を知新じゃなきゃいけないわけで,つまり知新として今僕らが発信しなきゃいけないんですよ。
 つまり岡島先生のところで「羅生門」を去年デジタル化しましたけれども,それは恐らくオリジナルの「羅生門」をオリジナルのと言っちゃうと語弊があるでしょうけれども,フィルムで僕が見た「羅生門」と比べたら,デジタル復元させたほうがより「羅生門」を見た気がしたんですね。
 つまりそれというのは現代の中にそれはデジタル化するとよくなったということではなくて,それは復元,あくまでももともとの一番オリジナルに近いところ,火事や何かでいろいろあったから,音がいろいろおかしくなってしまったというところをよりもとのクリエーターの発想に近いところへ持っていく。その部分が現代の中でどういうふうに若い人たち,子供たちの中にそういうものを見せることによって培われて,日本というものが海外に発信させられるか。
 だから,仏像を海外に持っていくのではなくて,その精神を日本人として海外へ発信するということが非常に重要であって,ですから保存してしまって安心しちゃうことではないと思うわけですね。
 だから,あくまでも保存するというところにおいては,何でもかんでもとっておけばいいということではなくて,それをどのように現代の子供たちに見せるか,それが実は人材育成になるんですよ。そういうことが大事で,そういう古いものを見せるチャンスがなくて,子供たちが古いものの良さを余りわからない。古いものと言っちゃうとおかしいですが,いわゆるいいと言われているある種の日本の文化みたいなものにどこかで近づける必要がある。マンガのお話がここずっと出ていた中で,鳥獣戯画だとか,北斎マンガだとかという話が出てきていますが,そこの原点のところを我々はどういうふうに後の世代につないでいくかという拠点にしないといけないんじゃないかなというところだという気がするんですけれどね。
 ですから,ただスペースが保存というのはもう一度僕らはきっちりと考えないといけないと思うんですけれども,保存は非常に重要なんだけれども,これは独立行政法人で今いろいろ保存されている美術館がある。あるいはフィルムセンターでフィルムをやっている。その大変さかげんというところも踏まえて,それなりの覚悟が必要,覚悟というか人員,それこそ潤沢な人員と資金というものがきっちり手当てできないと,きっちりした保存もできないだろうという気がするので,そこをちゃんと踏まえた中で全体のメディアをどういうふうに保存していくか,あるいは保存ということ,私はむしろ保存するなら発信を必ずしなくちゃいけないと思っているんだけれども,その保存から発信へという形,そこに新しい創造みたいなものがついてくるんじゃないかなというふうに思うんですけれどもね。

○浜野座長

 全く同じなんですが,黒澤監督も後世にそういうことをされると思っていなかったわけです。だから,我々も今の技術だけでの決めてしまうような議論はやめないと,未来は予測できません。だから現物を残してあげることが第一です。未来は未来の人に託しておかないといけないと思います。

○安藤委員

 ですから,僕は今の技術でどうこうという話をしているんじゃなくて,我々の血の中に残さなきゃいけないということを言おうと思っているわけ,つまり子孫に残すというのは物ではなくて精神なんですよ。そういうことを言っているわけです。

○浜野座長

 了解しました。

○安藤委員

 だから,それがないとこの拠点というのがいけないんで,さっき一番最初にその精神みたいなものをまず打ち出さないと,それを残すという形のもの,あるいはそれを発展させる,発信する,創造するというような形にいかないとね。

○浜野座長

 すみません,余計なことを言いました。
 議論は幾らやっていても尽きないんですけれども,中谷さん,あれでよかったんですか,ご意見は。

○中谷委員

 たくさんあるんですけれども,後で結構です。

○浜野座長

 きょうはね。
 林さんは補足ないんですか。

○林委員

 議論をしていても時間が経つばかりなので,私はさっきの11ページの「全体」により具体的な現実をつくっていくための実現論というのを自分なりにまとめています。読んでいただければわかることなんですが,とにかく私はメディア芸術総合センターの議論をするにあたり,長年の懸案事項であるフィルムセンターの独立化をどうしていくのか,我が国の映画文化の重要性ということを考えたときに,そこの強化,拡充を置いておいて,メディア芸術総合センターということではないんではないかということを強く申し上げたいと思っています。
 ただし,実施計画の方針1-1というところですけれども,まず現状の保存・収集だけでも膨大な課題が残っているフィルムセンターを強化するための予算,人員の拡充の措置を行うこと,そして共通性というか,例えば映像という分野で映画とアニメーションとメディアアート,これらは先行きボーンデジタルの時代になってくるとますます隣接してくる表現形態になってきますので,そういったものを包括的に扱うためにも,フィルムセンターを独立させて,「国立映画・映像センター」と改めまして,その下に新たに今のフィルムセンターの機能を拡充するのと同時に,メディアアート,あるいはアニメーションを運営していく新しい組織と,その組織のもとに新しいミュージアムを置くということで,統合的に連なる映像系のメディア芸術を,既存のものを強化することをベースにしながら考えていけばいいんではないかと思っています。
 一方で,マンガに関しては,たまたま京都国際マンガミュージアムというのが非常に充実した機能を持ちつつあるということがありますので,東京一極集中ではなくて,東京,京都の二極化という観点から京都国際マンガミュージアムに対して国がきっちりとした支援をして,その機能や役割を拡大させるという提案です。
 また,収集・保存についてですが,フィルムセンターには相模原分室という非常に大きな保存機能があり,その中に今後予算を拡充させることによって,映像系のものも全部包含していくという考え方です。加えてマンガに関しては,保存の仕方もちょっと映像系のものとは性格が異なるんではないかということで,同じ京都に位置し,現在廃止が決まっているにもかかわらず建物をどうするかという問題になっています「私のしごと館」を再生利用して,そこにアーカイブ・センターをつくったらどうかというような考え方を持ちました。
 それから,新しいミュージアムに関してですが,これは私は仮に「東京映像ミュージアム」と呼んでいますが,これも最初に申し上げたように,建物や土地を国が所有するというところから始めれば膨大な予算がかかりますので,あくまでも既存の開発物件,あるいは既存の施設の有効利用ということを考えるべきであろうということで,たまたま現在新しい開発プロジェクトとして,カルチャーエンターテインメントのコンセプトも持ちながら都市開発が進んでいるお台場の「青海Q街区プロジェクト」とか,あるいは葛西の「Kプロジェクト」とか,あるいは森ビルもお台場に開発計画がありますが,そういったものの中に1万平米すなわち3,000坪強の床面積を確保することは十分可能だということで,仮に3,000坪を坪5万円で借りたって月1億5,000万円ですよね。だから,そういうレベルの発想から始めていくということがあってもいいのではないかなと思っています。
 最後に,予算についてはそうやってやっていくことによって,120億円を一旦60億円まで縮小できないかと。そうすることによって,きょうの前提として申し上げた,このプロジェクトがなくならないように何らかの工夫をするということを考えなきゃいけないんじゃないかということと,組織のイメージも勝手に書きましたが,現国立近代美術館の下にありますフィルムセンターが「国立映画・映像センター」として独法国立美術館の6番目の施設になり,そしてその下に新たに予算,そして人員を配置する形で「東京映像ミュージアム」,そしてアーカイブ機能を持つ相模原分室の強化,一方でマンガは京都国際マンガミュージアム,そしてその下に連なるアーカイブセンターとの連携という形で運営していくような,まだアイデアの段階ではありますが,そういった現実的なプランを考えていくべきだと思っています。

○浜野座長

 フィルムセンターが我々の重要な宝だというのは委員の方々共通意識なので,岡島さんとよく相談して,せっかく我々の熱意がフィルムセンターにお邪魔にならないように,ぜひそれは盛り込んでいきたいと思っております。
 それで,話が拡散したんですが,センターというものがあったので,真剣にこういう議論がなるほどできるんだと,意見の違いもよくわかりましたので,全回お話ししたワーキンググループでやりたいと思います。全員集まってもいいんで,作業を何回か重ねて,それでもう一度たたき台をつくってやりたいと思います。それで,網羅的なものにはならずに,ちょっと先鋭的なものを私個人は出したいと思っておりますので,ぜひ皆さん,委員の方々参加して作業をやりたいと思います。
 ちょっと進行が不手際がございましたが,時間となりましたので,どうしても言いたいことがあれば,私にメールを下さい。それをぜひワーキンググループの作業に反映したいと思いますので,ぜひよろしく。もちろん書かれたことは全部精査して読みますので,それ以外でも,きょう思いつかれたことはご連絡ください。この後,一部の委員に集まっていただいて,基本計画案の作成の準備をしてまいりますので,よろしくお願いいたします。追加で何かございましたら,また連絡ください。
 事務局から何か連絡事項ございますでしょうか。

○清水芸術文化課長

 ただいまの浜野座長からございましたように,基本計画案の策定作業に入るということでございますので,次回の開催日につきましては,その進捗状況を見てまた委員の先生方の日程を調整して改めてご連絡させていただきたいと思います。

○浜野座長

 本当に司会進行がまずくて申しわけございませんでしたが,皆さんの非常に熱意が伝わってきましたので,それをワーキンググループでできるだけ反映するように努力したいと思います。
 それでは,これで閉会とさせていただきます。長官もご列席いただきどうもありがとうございました。
 本日はどうもありがとうございました。

16:58 閉会

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