特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会ワーキンググループ(第5回) 検討事項のまとめ
平成14年6月17日(月)13:30~15:40
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類似の古墳の調査について
虎塚古墳の調査に関する専門家からの聴取結果の報告を受けて,以下のような意見が出された。
- ・外気等の変化の影響が出るのが半年後とのことだが,高松塚古墳の場合は3~4ヶ月後だった。
- ・高松塚古墳の調査でも,虎塚古墳同様,内部での作業可能時間は30分程度だった。
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墓道部の調査について
墓道部の調査に関して,以下のような意見が出された。
- ・現在土層観察用に南北方向の畔を残しているが,石槨まで通して土層を観察すべきであるため,覆屋設置の際にも残しておく必要がある。
- ・石槨南壁の外面まで約1.5m分墓道の埋土を残している。今回の調査区は,約1000袋分くらいの土で埋め戻した。
- ・盗掘抗完掘後,畔の西側の土を墓道の底面まで下げた段階で,畔の連続土層観察を行うこととする。
- ・その間,盗掘抗を開けっ放しにしておくわけにはいかないので,ふさいでおく必要がある。
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覆屋の設計について
- ・杭の打ち込みによる大きな振動は避けるべきではないか。
- ・杭基礎は考えていない。N値が40以上であれば基礎の布設が可能。地耐力調査結果から,表土から2~3m下くらいで可能ということになる。
- ・除菌室の設備は,エアーシャワーとする。
- ・汚れた空気が流れ込まないように,気圧のコントロールも考慮すべき。
- ・小前室の床は張らない。小前室と前室の床レベルは同一とする。
- ・小前室内は自然にまかせた空調管理を基本とするが,有機溶剤等の排気にも留意した設備が必要。
- ・小前室の照明は前室から発せられる光源を鏡で照らしてはどうか。
- ・高松塚では蛍光灯を用いたが,それが原因で熱があがることはほとんどない。主な熱源は人。
- ・石槨内の照明は,ペンライト程度の光ファイバーが適しているのでは。
- ・あまりに頑丈な防護服を着用していては,作業が行いにくいのではないか。
- ・小前室のスペースは,広くすれば熱を散らすという利点がある。一方で,温湿度の自然回復能力から考えれば,小さいスペースの方がよく,両者のバランスを考慮のうえ大きさを決めることが重要。
- ・墓道壁面への影響を考えると,東西方向にはある程度の広さが必要だが,南北方向にはより小さくてもよいのでは。
- ・石槨内の流入土を除去することを考えれば,小前室が広いほうがいい。あらかじめ,小前室を広くとっておいて,石槨の手前で閉じるような構造はどうか
- ・盗掘坑の発掘調査が完了した後,人間が石槨内部に入る前に内部を赤外線カメラで撮影することが必要。そのためには,小前室にアームを設置するための設備が必要である。一案として,天井からつるす方法も考えられる。
内部で照明を用いる際に熱を発してしまうという問題もある。
- ・前室は必要に応じて扉を取り外しできるような構造にしてはどうか。
- ・原案だと入口及び除菌室,準備室の部分が北に偏っており,地形を大きく改変することになるので,設計を変更する必要がある。
- ・盗掘坑を利用しながら覆いのかかる部分の土を除去してやれば遺跡を壊さずに覆屋をかけられる。そのためには,覆屋の設計後,建設前に発掘調査を行う必要がある。
- ・南壁を外した場合のことは,後でいかようにでもできることなので,今の段階で考える必要はないのでは。
- ・覆屋を作ってからすぐに内部の調査をすることはできない。作ってから覆屋の試験期間が必要である。供用開始まで約5ヶ月か。
- ※全体の配置構造及び,土で被覆することにより密閉性を確保する基本的な設計の在り方をワーキング・グループの了解とする。
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今後の進め方について
- ・覆屋の建設は試験期間を含み,120日~150日はかかるのではないか。
- ・設計に際して発掘調査は特に必要ないが,覆屋を建てるまでに小前室天井部の発掘調査が数週間必要。
- ・石槨内床面の発掘調査と壁面の養生は適宜前後して実施する。
- ※希望的な観測もあろうが,年度内に覆屋の建設を完了させるスケジュールをワーキング・グループの案として本委員会へ提出する。
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