参考資料3
墳丘冷却の現状について
1.墳丘部の温度
墳丘冷却の経緯については,第5回国宝高松塚古墳保存対策検討会で報告した。ここでは,墳丘部の温度の実測結果を以下に示す。
1)墳丘部南北断面
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図1. 墳丘部南北断面の温度測定点の配置図 | 図2. 墳丘部南北断面での温度測定点と予測結果の比較 |
墳丘部の温度測定点と計算結果との比較から,墳丘部の冷却は当初の予定通り進行していることが分かる。3月初旬に墳丘部表層の温度を上昇させたのは,石室内の温度を10℃に維持するためである。
2)墳丘部東西断面
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図3. 墳丘部南北断面の温度測定点の配置図 | 図4. 墳丘部南北断面での温度測定点と予測結果の比較 |
図4において,石室より西側に0.75m,1.5m離れた点(S03)および石室より東側に0.75m,1.5m離れた点(S04)での温度測定値は,当初の予測より低くなっている。これは,当初の予測より冷却が若干早く進行していることを示している。
2.石室内の温湿度変化
2005年12月までの実測結果については,第5回国宝高松塚古墳保存対策検討会で報告したので,ここでは,2006年1月からの実測結果について報告する。
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図5.石室内の温度変化(2006年) | 図6.石室内の湿度変化(2006年) |
2006年1月から6月までの石室内の温度変化を図5に示す。3月初旬から1週間ほど,温度が大きく変動しているのは,温度センサーの不具合によるものである。その後センサー部分を交換した。4月初旬より,石室内の温度はほぼ10℃で安定している。時々,スパイク状に温度が,2℃,3℃上昇しているは,カビの点検と処置のため担当者が石室内に入室した時の温度上昇を示している。
2006年1月から6月までの石室内の湿度変化を図6に示す。3月初旬から1週間ほど,湿度が大きく変動しているのは,温度センサーの不具合によるものである。相対湿度は平均95%程度である。時々,スパイク状に湿度が,低下しているは,カビの点検と処置のため担当者が石室内に入室した時の温度上昇に対応したものである。また,石室点検のために作業者が石室内に入るたびに,湿度が低下しその後,湿度が上昇する傾向が見られる。
3.まとめ
恒久保存対策までの緊急の生物対策として,墳丘部の冷却を行うことが決定され,2005年7月から,冷却工事が行われ,完了後9月から墳丘部の冷却が開始された。現在までの墳丘部の温度測定結果から冷却が当初の予定通り進んでいることが分かる。石室内部の湿度の平均は95%程度である。今後も,石室内湿度を監視しながら,石室内での結露を防ぐように前室部分の空調の調整等を行っていく予定である。