文化審議会第8期文化政策部会(第10回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,高萩委員,堤委員,坪能委員,富山委員,西村委員,増田委員,山内委員,山脇委員

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【滝波企画調整官】

【宮田部会長】 それでは第10回の文化政策部会を開催いたします。本日は小田,酒井,里中,鈴木,浜野,吉本先生,6名がご欠席ということでございます。この13日の懇談会に引き続き関係団体の皆様からヒアリングを行います。文化芸術関係団体の皆様におかれましては,ご多忙のところ大変ありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。
 
 それでは資料2の進行に従いまして,順次ヒアリングを行っていきたいと思います。お忙しいところ,ありがとうございます。社団法人企業メセナ協議会の加藤恒夫専務理事様,いらっしゃいますでしょうか。いろいろなところから大変ありがたいご意見を先般の13日もいただいたとご報告をいただいております。
 では加藤様,ひとつよろしくお願い申し上げます。

【社団法人企業メセナ協議会】 ただいまご紹介をいただきました,社団法人企業メセナ協議会の専務理事をやっております加藤でございます。本日はこのような席で意見を発表させていただく機会を得ましたこと,大変ありがたく思っています。ありがとうございます。
 時間の関係もございますので,早速私どものヒアリング資料に基づきまして,私どもの考えていることについてご報告させていただきます。
 第1番目の現行の基本方針(第2次基本方針)の評価と課題について。私どもから提出させていただいた書面にございますように,第2次基本方針を拝見させていただきますと,第1次基本方針策定後の諸情勢の変化を踏まえ,第1次基本方針を見直し,策定したとなっておりますが,その中で短期的な経済効率を一律には求めない長期的かつ継続的な視点に立った施策の展開,法制・財政・税制上の措置による文化芸術活動の発展を支える環境づくり,専門的人材の育成と文化ボランティア活動を活発にするための環境整備,メディア芸術等の新しい文化芸術の国際的な拠点形成などが基本的な視点や重点施策の中で表明されております。
 しかし,この第1次基本方針から第2次基本方針へどこがどう変わったのか正直申し上げまして,非常にわかりづらい。政策がきちんと実行されて,どう変化したのかが実感できれば,その政策の拠ってきたる基本方針というものが意識されて,方針の変化がわかるはずでございます。この第1次,第2次の変化を見ても,それが感じられません。
 したがいまして,第2次基本方針の評価でございますが,現時点では実行されることのない,かなり観念的な理念としてあるだけに過ぎないと評価せざるを得ません。
 例示を2つほど挙げますと,第1次基本方針下の2003年に,指定管理者制度というものが行政の効率化という名のもとに導入されました。それをきっかけに公立美術館の運営ですとか,文化施設の運営が短期的な経済効率を求められるようになって,その状況が今もって改善されておりません。この「短期的な経済効率性を一律に求めない」という第2次基本方針に背馳することが明らかですし,問題はこの指定管理者制度が導入されたことに対しての評価,どう変わったのか検証がなされていないということではないのかと考えております。
 また,第2次基本方針では文化芸術の振興がより質の高い経済活動を実現すると,その意義を述べておりますが,昨今の,特にリーマンショック以降の経済危機の中にあって,ともすると経済の課題,それに対しての文化というような対立軸だけで語られておりまして,そういった点で,文化芸術振興が経済活動のより高次的なものにつながっていくという視点がない。また,検証されていないということがやはり問題ではないのかと考える次第でございます。やはり基本方針を出した後のPDCA,これをきちんとまとめて進めていくということをぜひお願いをしたいということが第1点でございます。
 2番目といたしまして,第3次基本方針のもとで,重点的に推進すべき事項,重点施策については2つほど挙げたいと思います。
 基本的に私どもとしては,2007年に「日本の芸術文化振興について,10の提言」という政策提言,それから2009年に,先ほど申し上げましたリーマンショック以後の地域再生の課題といたしまして,「文化振興による地域コミュニティ再生策~ニュー・コンパクト」という政策提言をしてまいりました。これらの基本的な内容は,先般明らかにされました,審議経過報告と基本的には変わっておりませんし,ここで挙げられております6つの重点戦略がやはり今後重点的に推進すべき事項と考えておりますが,2つほど留意すべき点について申し述べたいと思っております。
 1つは,文化芸術活動に対する支援のあり方に対する抜本的な見直しの文化芸術団体にとって,より経営努力のインセンティブが働くような助成方法となっておりますが,助成を受ける団体にとって,真の支えとなる制度,例えば赤字補填を改め,概算払いにも対応できるような助成制度であってほしいと思っております。
 また,マッチング・グラントを導入する場合には,これは決して国の文化予算の減額分の補填という目的であってはならないわけで,文化予算の確保を条件とした導入でなければならないと考えております。
 なお,寄付を含めて支援の仕組みを考えるとき,「支援する側=企業,市民/支援される側=NPO」と限定し過ぎではないかと考えております。民間の幅広い主体,NPO法人や公益法人,市民,企業等の多様な参画のあり方を支援すべきでないかと考えております。
 2つ目は文化,芸術を創造し,支える人材の充実に関しての認識ですが,人材は決して不足しているのではございません。豊富に存在するにもかかわらず,これらの人々が活用されていないということが問題であると考えております。その要因としては,文化庁にアートマネジメント領域の人材育成に関する長期的な方針がないこと,文化芸術領域で働く人の雇用環境,給与,社会保障,そういったすべての雇用環境について,根本的な議論がなされていないこと,文化芸術領域と異業種との積極的な交流が少ないため,財務,マーケティング,広報,法律等の専門スキルを持つ人材が新たに流入しにくいこと,そのような人材を雇用できる経済的な環境でもないことが挙げられるのではないのかと考えております。
 したがいまして,人材活用の仕組みづくりについては,こういった面をよく踏まえ,臨んでいかなければと考えるわけでございます。
 最後の3番目,その他基本方針の見直し全般ですが,これについては3つほど申し上げたいと思っております。
 1つは,基本方針に,具体的な政策への落とし込みがなされていないことです。第1次基本方針,第2次基本方針が示されてきたけれども,今日まで何が機能したのか,よく見えないということがあろうかと思いますので,非常に文化,芸術ということに対して,理念的,観念的にとらえ過ぎているのではないのか,したがって,現実的な改善意欲が現場においても沸いてこないというところが問題かと思っております。
 2番目に,これは文化芸術振興基本法ができたときから私どものほうで主張させていただいているところですが,今,文化芸術の現状がどうなっているのかという把握がどのようになされているのかが見えてこないということでございます。審議会の経過報告の中での資料を拝見したところ,この資料の中から何を読み解くのか,どういう問題点が相互に絡み合っているのか分析が事務レベルでもなされていないように思われます。したがいまして,産業レベルの問題につきましても,現状がどうであるのか,規模としてどの程度あるか,今,何が問題であるか把握していなければ政策の立てようがないと考えるわけです。
 そして最後の3番目ですが,基本方針をお立てになるときに,これを実態の行政の現場レベルに落とし込んでいったときに,この基本方針のどこに対応する施策であるのか,この基本方針の中のどの部分に関する事業なのかを明確に位置づけていただきたいということでございます。
 それがなければ幾ら予算を投入しても,それに対しての効果とか,今後,問題点を長期的に解決をしていくような施策が出てまいりません。民間では常にやっていることですので,よくご吟味いただきたいと考えております。
 以上でございます。

【宮田部会長】加藤さん,大変ありがとうございました。理想的なご報告でございます。少なくとも文化庁がリーダーシップを持って,現状の問題を把握し,検証し,インセンティブを与えながら施策を勧めて欲しいという,非常に示唆に富んだご発言,ありがとうございました。
 5分ばかりでございますが,先生方からご質問等々,ございましたら時間をとりたいと思いますが,いかがでしょうか。
 民間と官との違いというのを最後にすぱっと申されましたが,官民一体となって文化庁はやりたいという気持ちで皆さん頑張っておりますので,今の言葉を肝に銘じて,より深く見ていきたいというふうに思っておりますが,いかがでしょうか。
 後藤さん。

【後藤委員】寄付の仕組みのところで,寄付をされる側がNPOとか,いわゆる公益的な法人,それから寄付をするのは企業,市民という仕組みで寄付税制は成り立っていると思うんですけれども,それにこだわらずにもっと多様に書いていらして,これは例えばどういうことを具体的にイメージされて,もっと多様なあり方とおっしゃっているのかお聞きしたいと思います。

【社団法人企業メセナ協議会】芸術文化を推進していく上では,支援する側と実演者の側とか,政策者の側ということを明確に分けることが,今,なかなかできにくくなってきている。例えばアートNPOのような形での中間組織的な支援組織とかが出てまいりますし,私どものような非常に中間的な組織もございます。ダイレクトに支援するというだけではなくて,そういったところを経由する支援活動とか,そういったようなところも含めた形で,中間組織も通した形での支援もあり得ると考えております。

【青柳委員】今のお話を聞いていると,文化芸術というのが非常に構造的で,そして分節化も可能であるという前提でお考えのようですが,我々,少なくとも私は文化というのは奥行きのあるところでは非常に渾然一体になっているものだと思う。つまり,音楽も美術と関係あるし,美術も演劇と関係あるし,入り口のところではおっしゃるような分節化が可能であるけれども,本当にねらうところは,その奥行きのところでの渾然としてある文化が充実することが最大の目的なんですね。ですから,ここで企業メセナが考えているようなことは,表層的な文化の中で対応することは可能だけれども,やっぱりこういう基本方針の中では本当の複合体としての文化が充実していくことが目的なわけです。ですから,ここはまだ方法論であって,本当の目的論にはなっていないわけですよね。ですから,基本方針とは目的論まで考えての方針だと私は思いますけれども。

【社団法人企業メセナ協議会】私はそれが基本方針を持っていく上での一番の問題点だと思っています。今,青柳先生のおっしゃりました芸術の最終目的は,文化芸術振興基本法に明らかになっております。したがいまして,これをどう具体化していくのか,どう表層的な部分まで落とし込んでいくのかという方針を決定するのがこの基本方針ではないのかと私どもは考えております。したがいまして,私どもは非常に法律的な理念の問題と,基本方針との差異がわかりにくい状態でございます。
 したがいまして,行政の事業に落とし込んでいくためには,より表層的な部分までカバーしなければならないというふうに考えておりますので,こういった意見で申し上げたということでございます。

【青柳委員】おっしゃることはよくわかるんですが,まず本来文化というものはある方法とかある政策で触れるということは非常に危険なものなんですね。それはもうご存じのとおり,ナチの時代でも何でも,みんな文化政策というものがいかに危険な政策であったか我々は歴史的に知っているわけです。ですから,法律をある程度,施策の結果の効率性も考えなくてはいけないけれども,それを丁寧に,穏やかにやっていくことが我々,歴史的な経験を持っている今の世代の文化施策のやり方だと思うんです。

【社団法人企業メセナ協議会】その点につきましては,私どものほうで,先ほど申し上げました10の提言の中で,芸術に対する支援のあり方,あるいは行政からの支出の問題,そういった面にで,ともすると今の世の中,パブリック・マジョリティーのほうで進んでいってしまう。そういう点でいきますと,今,青柳先生のほうでご指摘のあったようなことが起きてくるわけでございます。
 しかし,芸術文化がやはりマイノリティーの中,それが混在していく中,それをどう温存するのかが非常に重要な部分でございまして,私どもとしてはその10の提言の中で,パブリック・マイノリティーについてのケアを絶対忘れてはいけないと提言させていただいております。
 したがいまして,この基本政策の中におきましても,商業的に成功している芸術分野というのもございます。それから支援がなくてはならないような芸術文化というのもございます。そしてもう一つは,やはり非常にラジカルな形の,マイノリティーな芸術分野領域というものがございますので,その芸術文化の多様性を私どもがどうカバーをしていくのか念頭に置いた形で,それをより具体的に明示していく必要があると考えております。

【青柳委員】私も全く賛成でございまして,それともう一つは,文化に対しての支援というようなものが,例えばスペクトルで10センチまでしか中に入らない,あるいは50センチ中に入っていく,あるいは1メートル中に入ってくという,いろいろなスペクトルが援助の仕方,支援の仕方があると思うんです。そしてその5センチなり,10センチなり,50センチ中に入っていくけれども,その奥にあるものというのは,非常にコングロマリットなものであると。ですから,恐らくそれぞれの協会やあるいは組織というものは,協会によって5センチをねらおう,10センチをねらおう,あるいは50センチのところをねらおう,いろいろあると思うんですね。それをやっぱり基本政策の場合には総体として捉えておかなくてはいけないため効果の見にくさがあるのかと思います。

【社団法人企業メセナ協議会】その辺はよく理解しているつもりでございます。

【宮田部会長】そろそろよろしいでしょうか。本当はもう少し話あいたいのですが
 加藤さん,ありがとうございました。少なくとも企業メセナには私ども文化人は大変お世話になっておりますし,そういう意味でも今後ともどうぞご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは次に行かせていただきます。
 社団法人日本劇団協議会,福島明夫専務理事様から10分程度,よろしくお願いを申し上げます。

【社団法人日本劇団協議会】本日は貴重な時間をいただきまして,ありがとうございます。
 今,加藤さんがおっしゃったようなお話は基本的に私どもは基本理念として全く同じ考え方だなと伺っておりました。我が日本劇団協議会は,現在は75の劇団,それから演劇創造団体が加入している団体で,基本的には加盟できている劇団のみならず,現状では会費の問題もありまして,ハードルが高いので,なかなか参画できていない劇団の意見も含めて機関紙等での交流を図って,さまざまな事業展開を行っている団体でございます。
 それでは,この順番に申し上げますと,1番目の現行の基本方針の評価と課題ということでは,基本的には今,加藤さんがおっしゃられたことです。この基本方針に書かれていることはかなり重要な分節があって,経済効率に縛られてはいけないとか,さまざまなことが書かれているにもかかわらず,それが具体的にどう進行してきたかが見えにくい。この3年間のことで言いますと,そういう意味ではかなり論議は深められてきていると思うんですね。特に昨年の政権交代以降の劇場法をめぐる論議ですとかを含めまして,石は投げられて,論議は深められてきたのだが,実践的には,昨年度の事業仕分けの問題があちこちの団体から出されておりますように,私どもも演劇界においては重点支援事業の予算が削減されたことで,団体の中には劇団の中には大幅に支援金額が下がったことで,今年の活動がかなりきつくなったというような声も聞かれているわけです。
 具体的に言うと,次の人材の育成,つまり大学や養成段階でのアートマネジメントの人材育成などは進んだにしても,実際に雇用環境がない,彼らが活用される場,あるいは彼らが実践的に,社会的に訓練される場がなかなかつくられていないのです。これは舞台美術関係の方からご意見を伺っていただければより明確なのですが,我々から言うと,実際には劇場における安全の問題も含めて,舞台技術が継承されていかないという,危機的な状況にあると思っております。
 それから,次の地域文化の振興と子どもの文化芸術について,実は具体的な政策というか,具体的な事業展開が2年,3年でかなり変わっていくので,芸術団体側としても長期的な戦略を描きにくいという問題があります。つまりある戦略支援システムを,政策部会なり,あるいは文化庁がお考えになられても,それが2年,3年で事業が打ち切られると,芸術団体はまた新しい対応を考えていかなければいけないという問題に立ち至る。そういう問題を把握したことが,この3年間の中では大きかったかなと思っております。
 今後の基本方針のもとで重点的に推進すべき事項ということで申し上げますと,地域の核となる文化芸術拠点の充実とそのための法的基盤整備については,全くそのとおりであると思っています。よく全国で箱物行政と言われて,市民会館,文化会館がたくさんつくられたことについて,過剰であるという指摘もあるのですが,それよりも1,300館の施設が今あって,それがどうやって芸術文化機関として機能していくかという視点を文化行政としては持つべきではないかと私どもは思っています。それが今現実には建物だけで,どんどん予算が削減されていくことによって,改修もままならないというような状況で,今後も減少していくという危険性を持っているだけに,指定管理者制度の問題も含めまして,国として,ある意味での教育と同じように,研究機関とか,文化機関としての位置づけを明確にすべきであると私どもは考えています。
 また,ここにも公立文化施設の問題があるのですが,私ども劇団にとって,東京における民間劇場の役割は非常に大きいんですね。これは単に商業劇場ということではなくて,貸し小屋としても非常に大きな形でメセナ的にご協力いただいている劇場はかなりたくさんあります。これについての位置づけもされるべきだと考えています。
 それから,次に日本版アーツカウンシルの問題ですが,これは透明性を確保するとか,そういうことが言われていますが,先ほどの話を伺っていて,青柳先生がおっしゃられたことと関連していいますと,やはり国と芸術との距離をどう維持するかといったときに,統制でもいけないし,あるいは特定の芸術の支援でもいけないという意味では,民間機関をどう確立させるかが非常に重要なことではないかと思っています。その意味で,専門家の参画が必要かと。今の芸術文化振興会をそういう形につくり上げていくかどうか,この辺は議論が分かれるところではあると思うのですが,そういうことも含めてご検討いただきたいと思っております。
 それから,子どもたちがすぐれた舞台芸術に触れる機会の充実ということで申し上げますと,これは文化庁の施策でかなり全国的に招致を中心にして,国の事業としての前進はあるのですが,それまでの学校だとか,保護者,あるいは地域の地方公共団体の支援政策によって行われた事業が削減されてきているということと,少子化や過疎化が非常に大きな影を落としていて,実際には事業が大都市部にかなり集中してきているという問題があります。これは本当に地域間格差の問題を考えて,本当に子どもたちの文化環境をどう維持するか,あるいは子どもたちが地域のコミュニティをどう意識するかということを考えても,それぞれの地域での鑑賞機会や,文化をどうつくり上げていくかという視点は非常に重要です。ですから文化庁事業だけではなくて,,今,子どもたちの文化環境というか,例えば鑑賞機会であるとか,文化祭ですとか,そういうことの実態も含めて,どういう実情にあるのかぜひ国として把握して進めていくべきではなかろうかと思っております。
 それから次の舞台芸術の国際交流と海外発信の強化の問題で申し上げますと,これは我々から言いますと,2国間交流と普通の国際交流があるのですが,余りにもこの差がございます。2国間交流は外務省の選定するというか,友好年に沿って2国間交流が行われて,その年に大量に行われるんですが,翌年には全く消えていくという非常に特徴的な国際交流の関係があって,ある年にある友好ができたとして,それを継続的にどう進めていくのかという視点が今なかなか持ち切れない。これは芸術団体に任されているところもございまして,ただ,それを維持するための財政的基盤は芸術団体には全体としてないという状況があるので,継続できる事業への展開を望みたいと考えています。
 それから3番目にその他基本方針の見直し全般の問題なんですが,私どもとしては,国が助成を支援をしていく際に,やはり芸術団体がどう発展するか,どう成長できるかという視点というのは絶対に必要であろうと。これは民間の単に劇団であるとか,そういうところだけではなくて,公立劇場も含めた芸術文化機関としての芸術団体をどう育成するかという視点をやはり持つべきであると思っています。戦後65年間の間に,さまざまな民間での活動が行われてきて,そのことよってかなりの鑑賞機会が確保されてきた実績があるだけに,そこをどう励ましながら,全体として発展させるかということの視点はぜひ持っていただければなと思っています。
 最後に全体として,私ども全国津々浦々公演活動で回っていますけれども,今の状況はやはり地域崩壊であるとか,子どもたちの文化環境というのが非常に危機的な状況にあるということは僕らが見ていても非常によくわかることで,これを克服する上での文化の力という意味での文化振興の意義をもう一度明確にすべきかなと思っています。
 非常に直接的な表現で言いますと,芝居をやって,それから高校生,中学生から反応が返ってきたときに,自殺を思いとどまったであるとか,やっぱりもう一回頑張ってみようであろうとか,そういう声が直接寄せられてきたときに,やっぱり我々の芸術活動の意味というのは,そこにあると我々も確認しているところなので,その意味で文化政策全般としてその目的として,単純に今の日本の経済の活力をどうつくるかとかいうことだけではなく,全般的な人間としての生きる意欲を国民の間にどうつくっていくかという課題で言っても,芸術振興の意義は非常に深いとに思っておりますので,それから言いますと,やっぱり文化予算の現状ですとか,特に支援のありようについて,やはりもう少し巨視的なというか,文化省の問題も含めてなんですが,もう一度大きな視点が,位置づけが必要なのではないかと考えている次第でございます。
 以上で意見にかえさせていただきます。

【宮田部会長】大変ありがとうございました。国の事業として継続ということですね。子どもはいずれ大人になるわけですから,その子どもに豊かな感性を持たせるということが日本の国家そのものに次に降りかかってくるというようなことですね。ありがとうございました。さて,いかがでしょうか,先生方。
 加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】大変明快なご提案で共感するところが大きいのですが,特に民間の劇団,劇場のご努力にも敬意を表したいと思います。その上で,今,劇場の法的な整備,強化という考え方があるわけですけれども,その中で,施設がいわゆる箱だけではだめで,その中に専門家もいなくてはならない,さらに創造者がわかりやすく言えば,劇場と劇団がくっついていることが望ましい。そうでなければ本来の創造活動というものが生まれてこない。海外の事例でいうと,シアターというのは箱のことを言っている場合も全くないわけではありませんが,通常その中に創造者がいる,つまり劇団があるから劇場を劇場と呼んでいるわけで,そういう意味では日本は全くないわけではありませんが,特に公立の施設の中でそうした仕組みを持っている例がほとんどない。まことに不可解なことなわけです。その不可解なことというのは専門家の間では非常によく知られていて,常識となっているんですが,残念ながら一般の方は,箱だけあれば何とかなるものというふうにまだ理解をされている向きが多いと思うんです。そういう場合に,海外はこうだから,日本はもっと頑張らなければいかんという,法的な整備をしなくてはいけないというのはそのとおりなんですが,ぜひこれから強調していただきたいというか,いろいろな機会を通じて示していただきたいのは,どうして施設に創造的な人間がいなくてはならないか,つまり,劇場には劇団がなければどうしてだめなのかということの根拠をできるだけわかりやすく説明をすることをぜひ芸術団体の方にお願いしたいなと思うのですが,自分たちの中ではわかり切っている話なので,なかなか周りへの説明なされてこない。そうすると,やっぱり理解が進まない。せっかく今そうした方向を向いてもいいかという時代になってきている絶好のチャンスですから,ご説明をいただいて,この機運を盛り上げていっていただきたいと思います。

【宮田部会長】加藤先生,ありがとうございました。今,たまたま私は国立大学協会の理事をしているわけですが,某鈴木副大臣が全く同じことを,「大学は何をしているか,一般の人は何もわからん。大学から発信しろ」と,ついこの間言われたばかりなので,ちょうどいい,そういう機運,まちの人,国民,皆さんに理解を得られるというチャンスをつくるという点では大変いいご意見をいただきました。ぜひその辺を頑張って……

【社団法人日本劇団協議会】一言ちょっと申し上げると,ようやく始まったところだと思うんです。例えば公立劇場において,芸術監督制度,これも芸術監督制度がどれだけの実権を持つかということでの議論はさまざまあるのですが,ただ,そのことによって,やはり劇場が活性化した事例というのは数多く生まれているわけですね。現実にはただ実際に職業的な劇団を持てるかどうかというのは地方財政の問題もあって,ただ,1人の芸術監督がいるだけで,その地域のある種アマチュアも含めた演劇が振興してきているという事例がございますので,その事例を私どもとしてはできるだけ広げていきたいと思います。

【宮田部会長】いろんな教科書をつくっていただけるといいですね,その地域に合わせて。指定管理者制度の問題等々もいろいろあるでしょうけれども。
 田村先生はこの件に関してはお話になりたいことがあるかと思いますが,どうですか。

【田村部会長代理】ちょっとお伺いしたいのですが,オーケストラの場合はプロのオーケストラとして,規定があります。ステージマネージャーがいて,年間どのぐらい実演活動をしていてと,いろいろございますが,劇団の場合は本当にパーマネントな集団として活動して,質を高める劇団というのが一体どのぐらいおありになるのでしょうか。

【社団法人日本劇団協議会】それは私の口からは非常に申し上げにくいと思います。というのは,今,田村先生がおっしゃった意味でのパーマネントというのが非常に演劇界の場合には申し上げにくいところがあって,舞台芸術だけでは生活できないという状況があるのと,実際には劇団経営を維持する,通年で維持するための経費をほとんど劇団員が稼いでこなければいけないという状況に追い込まれているという意味においては,しっかりとした報酬が支払われたことをもってプロと見なすとするならば,それがなかなか確立しにくい分野だと私は思っています。75あると申し上げましたが,その劇団の中で,稽古場を持っている劇団というのは半数あればいいほうだと思いますし,劇団協議会に入っていない劇団で,それだけのものを維持している劇団も数十はあるとは思うんですが,100は超えないという状態です。つまり問題は,そうやって通年で芸術活動を展開できるような,芸術団体として存在できるような基盤が残念ながら日本の場合にはつくられていないという現状にあると思っております。ちょっと説明としては不十分で申しわけないんですが。

【宮田部会長】ありがとうございました。それでは
 次に進めさせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは続きまして,社団法人日本演奏連盟の金山茂人専務理事さんから約10分程度お願い申し上げたいと思います。よろしくどうぞ。

【社団法人日本演奏連盟】ただいまご紹介いただきました,日本演奏連盟専務理事の金山茂人と申します。私は実は日本演奏連盟に来たのは5年前です。それまではオーケストラにおりまして,現在もまだ在籍していて,今年で48年目を迎えております。そのうち30年はオーケストラの営業活動など全部を含めた楽団長をやっておりました。ですから,オーケストラの苦労というのは嫌というほど染み渡っているんです。昭和43年にたしか文部省の文化部から文化庁というのは昇格されたんだと思いますけれども,それから今日まで何十年たっているんでしょう。先ほど劇団協議会の方は,ことしがスタートだとおっしゃいましたが,私に言わせると,もうスタートどころじゃない。私は昭和43年ずっと前からオーケストラにかかわっておりました。そのオーケストラの名前は東京交響楽団といいます。13日の日に日本オーケストラ連盟のヒアリングで,常務理事がいろいろ説明して,本当はオーケストラのことではなくて,日本演奏連盟のことを話さなければいけないと思うんですが,総合的にオーケストラも演奏連盟も同じ悩み,日本の芸術文化団体はどうあるべきかということが一番大変なことだと思うんです。
 ただ,この平成23年度の文化庁概算要求の概要を見ますと,確かに22年度よりも3.1%伸びておりますが,これで日本の文化芸術を全部賄えということですね。これは批判ではないのですが,東京大学からの概算要求は,この前の新聞報道によりますと,文化庁予算の約倍だというんですね。これは確かに東大というのは立派な学校で,だれも批判する者はいないと思うんですが,その一方では,その東大の半分の予算で日本のすべての文化を賄える。これには文化財保存も全部入っているわけですね。その中に何十,何百という芸術文化団体が補助を受けてやっていくとは厳しいことだなと。そういった意味では悩みは尽きないのです。基本方針に基づいて説明ししますと,確か25ページにちょっと書きましたこれが根本ですけれども,これにまつわる,これだけの文章を書くには私の48年の命が込められているといっても言い過ぎではないと思います。そういった意味でここにも,宮田学長は東京芸術大学の学長でいらっしいますが,音楽学部の学生というのは,大変な思いで,大変な努力で芸大に入ってきます。これらの彼らの就職先というのは,やっぱりオーケストラに入るんですね。このオーケストラに入って,では彼らは卒業してどういう生活をしていくか,これを一度考えられたことがあるのかを伺いたいと思います。ご存知かと思いますがこのままでは一体日本はどうなるんだと。確かに今まで経済大国でアメリカに次ぐ2番目だと言っていますが,だんだん中国に追い上げられている中,ことしあたり中国に追い抜かれると私は予期しております。一方で,文化予算はどうなんだと。彼らは彼らの文化については少なくとも遥かに後進国だったはずです。長官は先日までデンマーク大使であられたんですね。もちろんヨーロッパのそういう文化芸術の状況と比較するつもりはございませんが,少なくとも近隣諸国の韓国,中国の文化予算が日本の4倍から5倍だというんです。日本の音楽家は頑張っていると思いますが,これでは遅かれ早かれスポーツと同じようにどんどん追い抜かれてしまいます。芸術文化というのは競争する必要はないと思いますが,ある意味では競争意識はお互いに持っているわけです。ですので最終的には国がどこかで,文化芸術を根底から支えなければいけない。
 ただ,私どもが反省しなければいけないのは,なぜ日本の芸術文化が育たないのか,予算が育たないのかと言うと,これは国民のコンセンサスが足りないからです。例えばオーケストラのファンというのは,国民全体の1%とも2%とも言われているんです。これじゃあだめなんです,本当は。テレビの視聴率でオーケストラをやれば,少なくとも10%前後の視聴率が上がればいいんですが,残念ながらNHK交響楽団が毎週(日)に放送しますけれども,あの視聴率も零点零何とかというんです。だから,こういう状況というのは我々芸術団体としても反省しなければいけない。これは確かにわかるんですが,せめて,先日文化庁が案を出してくださった,今までのような赤字補填という方法じゃなくて,もっと違った,そういうものを忘れた本当の意味の助成を何とか守っていただきたい。そうしませんと,本当にこのままではこういう経済状況ですし,また,皆様方は国民からの税金を使わなければいけない,そのためには管理も物すごく厳しくやらなければいけないという状況と立場はわかるんですが,どうかそのあたりも含めてもっともっとこの文化庁案を遂行していただきたい。
 私は今日のように,文化庁のお役人,長官を初め文化審議会の方々と議論する機会をいただいて大変うれしいのですが,もう一歩進んで,財務省のお役人と話したい。やはり我々の苦労を本当にわかっていただきたい。だめなのはわかっているんですが,やはり文化庁だけだったらだめ。私はそれを強調したくてここで話させていただきますが。
 では,演奏連盟という立場でいきますと,在外研修の費用というのが大幅に減ったんですね。最近の何かこの予算案を見ますと,昨年までついているのがぼっとなくなっちゃう。これはなくなったんじゃなくて,振りかえをしているんですね。よく見ると,それが余りにも複雑過ぎて,だから,在外研修が昨年から見ると3分の1近くなっちゃっているんですけれども,どこかそれも振りかえているんだと思いますけれども,これはやっぱり人材育成という意味から,もっと日本の若い音楽家が欧米に行って勉強するという必要がうんとあると思いますので,どうかこの方面にも一つお忘れなくやっていただきたいと思います。
 最後にしつこいようですけれども,この文化庁案をどうか財務省に負けないで通していただきたいということを切にお願いして,話を終わります。

【宮田部会長】ありがとうございました。熱弁でございますが,真意だと思います。
 たまたま先ほど我が大学の話も出ましたけれども,この文化芸術に関しての学生さんたちの就職率というのがどういう就職率,つまり分母をどこに持ってくるかによって随分違います。例えば私は美術が専門なんですが,就職をしたいという学生は130パーセントぐらいの確率で,もっと高いかな,就職できています。時分に就職したいという人たちまでも,その分母を分子の中に入れるとおかしな話になるんです。同時に音楽の学生に,この間あるNHKの番組,爆笑問題の「日本の教養」というのがあったんですが,1人の学生が,3年生ですが,「私はオルガンをやっている」と,爆笑問題の人たちは「世間はもっと早く就職しなければいけないだろう」と言っていたときに,「いえ,私は今きわめたいものがそこにある」,その一言でしたね。つまり若者たちが,最後の部分が高等教育です。何をする,何を勉強する,何を自分に問いかけるかといったときに,大事なことは就活だけではないんですね。自分というものをつくることだと思います。そこの力に文化というのがあるような気がします。ですから,強い力は先ほど青柳先生の中にもありましたけれども,文化はあるときはファッショになる。利用される可能性もあります。気をつけなければいけない部分というのはあるんですが,私どもは非常にその辺は注意しながら教育をしているつもりです。
 さて,そもそも論の大変すばらしいお話をいただきました。私も全く同感でございます。我が家でも,財布のひもを握っているかみさんのご機嫌をとって,これをやるからぜひ投資してくれというような議論をしております。大きさは違えど大学や国にも,似たようなケースが非常に多いと思いますので,ぜひ議論して頂きたいと思っております。
 山脇先生,どうぞ。

【山脇委員】今,金山さんのお話で,私も本当に心からそのとおりだと思いましたのは,文化に対する国民のコンセンサスという問題です。本当に根本の根本なんですが,結局,日本では文化予算は少ないながらふえていますが,きっと削られても国民は何とも言わないのではないかと。つまり,国民の文化に対しての意識がやはり低い。それはやはり根本に帰りますと,教育だと思うんですが,私どもがアムステルダムの国立美術館の館長とお話をしてたいたときに,10歳までに美術館に3回行った人は一生行くという調査結果があるというようなお話を伺いました。これは多分美術館だけの話ではないと思うんですね。音楽会なり,芝居を見る,それから伝統芸能を見るということもすべてかかわってくると思うので。かなり長い目で見なければいけないと思うんですが,やはり今国民が,劇場なり美術館なりに足を運ぶということがどういうことなのかと考え,人間の体に染み入ってくることが文化にとって必要なんだということを理解し,やはり子どものうちから体験させることがどんなに大切かという基本に帰る必要があると思いました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 どうぞ。

【社団法人日本演奏連盟】1つよろしいですか。今のお話なんですけれども,子どものときに音楽を聞かせればいいというものじゃないと思うんですね。例えばヨーロッパで言えば,ヨーロッパ人は必ずしも,例えばクラシックで限りますと,クラシックファンが多いというものじゃないというんですね。ただ,自分自身はクラシックに興味がなくても,文化というものに自分が払っている税金を使われることについて,すばらしい国を構築するにはこれが必要なんだよねと考える人が多い。このことを日本人に理解して貰うことは難しくて,文化と芸術,教育と文化がつながるというのはそういうことだと思うんですね。
 それから,昨今この妙な社会,妙な人殺しが起きる,子が親を殺し,親が子を殺しというこの妙な時代,これはひょっとすると戦後の経済ばっかり,物質ばっかり追いかけてきた日本の一つの結果ではないかなと。だから,このままでは日本は本当にだめになるんじゃないかと。一文化に携わっているものというよりも,一国民として私は心配しております。

【宮田部会長】ありがとうございます。教育論,まさしくそこには文化が大きく根底にあるというお話でございました。そのとおりだと思います。
 後藤先生。

【後藤委員】今,山脇さんがオランダの話をされましたが,私はきょうのお昼前にオランダから帰ってきたところなので,少しオランダの状況を申し上げます。オランダでは美術館は子どもは全部無料です。恐らく17歳までは無料だと思います。それで,18歳以上になっても学生証を見せるとかなり安く入れたりするということで,アムステルダムにはコンセルトヘボウというすばらしいホールがありますけれども,オーケストラとかを聞きに行っても非常に安く,学生だと大体1,000円ぐらいでオーケストラなども聞けてしまうような仕組みになっていたかと思います。だから,補助金をもっと大きくというときには,先ほどの劇団の方のお話とも共通するんですが,補助金をふやして何をしたいかという,あるいは何をしなければいけないかというと,多分3つあって,1つはアーティストの社会保障をして,ちゃんとしたアーティストが活動していけるようにしなければいけないということはもちろんですが,補助金を増やしたことによって,質が上がりますかというところもあるわけですよね。必ずしも補助金が増えたからといって,芸術の質が上がらない,文化の質が上がらないという国もいっぱいあって,それはそれですごく議論になっているところなんです。そして3番目がアクセスということで,より多くの国民が鑑賞できるようにならなければいけない。この3つを補助金をふやすことによって同時に達成しないと,やはり補助金をなぜ出すんですかということに対して説明ができないと思うので,どうしてもやっている側からの声というのはまとまっているので,強く出るんですけれども,鑑賞している側の声というのは一人一人なので,そんなに出てこないんですよね。だから,もう少しアクセスを保障するためにどういう補助金のあり方が必要なのか議論すべきではないかなと思って聞いていました。
 やっぱり究極的には国民が支えているという意識がない限りは予算もふえないですし,それからふえたとしても,見に行く人がいなかったらほとんど意味がないことになってしまいますので,もう少し目に見える形で観客を開拓するというか,そのためにはどういう補助金のあり方が必要なのかというような議論も必要なのではないかなと思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。最後の部分は非常に大事な部分だと思いますね。発信者は結構受信する部分の見方を忘れている部分が往々にあるような気がする。先ほどの先生の理論もそのとおりな気がします。ありがとうございました。
 
 続きまして,社団法人の日本写真家協会の田沼武能会長さんからよろしくお願いします。

【社団法人日本写真家協会】ただいまご紹介に預かりました,社団法人日本写真家協会の会長を務めています田沼と申します。
 写真家協会としましては,このヒアリングに初めてお呼びいただいたことを大変ありがたく,場を与えていただいたことを感謝する次第でございます。しかしながら,お送りいただいた資料を見ておりますと,写真の写の字も出てこないというのが現状でございます。基本理念と6つの重点戦略ということがあるんですが,そこにも写真は1つも出てきておりません。現在,写真は実用化しているということもあるんですが,この社会で写真がなくてはならない存在になっていると思います。写真の種類といたしましては,芸術的な写真もございますし,ドキュメンタリー的な写真もありますし,コマーシャル的な写真もあります。これは全部写真でございます。そういう意味において,この写真の文化,芸術という枠を超えて,この世の中になくてはならないのが写真ではないかというふうに存じ上げております。
 日本写真家協会は,1950年に発足しまして,ことし60年の創立を迎えております。ことし記念事業といたしまして,「おんな――立ち止まらない女性たち」という展覧会を先日,都の写真美術館で行いました。2週間に1万人を超える来場者があり,大変公表を博した。これもやはり写真でなければできない展示,歴史をたどるものがそこにあったからではないかと私は関係者として自負する次第でございます。
 我が国のこの写真家協会というのは,まず発足したときに職能の確立と著作権に関する改正運動から始まりました。その当時,著作権というのが写真に限り,写真を写してから10年しかございませんでした。これを私ども写真会が一生懸命になって,その改正運動をいたしまして,その改正されましたのが1997年です。実に四十数年かかっております。それで,その時点で実はその死後起算50年という,文芸,美術と同じ扱いをされるようになりました。そのとき改正をしたときに協会といたしましては,現存者の著作物が切れてしまうわけです。現に私自身が20代に撮った写真の著作権が切れてしまっている。これを遡及してほしいということを申し上げましたところ,これは法律上,不遡及の原則というのがあって,まかりならんということを言われまして,それを解決するにはクライアントと話し合いをしてくださいということで,クライアントと話をしました。雑誌協会,書籍協会,NHKもやっと文句は言わないということで話がついたんですが,民間放送連盟全く個々に話し合いをしてくださいとのことでした。全国にある放送関係のところと個々に話をするということは不可能に近いです。何とかそれもやっておったんですが,それをやっている最中にもっと大変なことが起こりました。というのは,写真の作品として,皆さんに見ていただくプリントされたものは美術館とかそういうところで収蔵されておりますが,フィルムに関しては全く保存する場所がなかったわけです。それで,たまたま私は師匠が木村伊兵衛なもので,木村伊兵衛が亡くなった後,奥様も具合が悪くなって,後はよろしく頼むと言われまして,私が今その管理をしておるんですが,管理をしておって感じたことは,要するに私が管理をしておっても,私がいなくなったらもう終わりですよね。そうなってしまうと,写真のフィルムというものは保存していくことができない。大体において,今,私どもが保存センターをつくってほしいということをお願いしたのが2001年か2002年だと思います。そのときに,既に戦後活躍した有名写真家が亡くなっておるわけです。亡くなってしまっても,奥様が健在のときにはよろしいんです。散々苦労かけたけれども,一生懸命撮ったものだから,何とかして保存したいという気持ちはあるんですけれども,その奥様が亡くなると,息子の代になると,これは無用の長物になるんです。ゴミと同じで廃棄されてしまう。廃棄されてしまったら,写真というものは現在は撮れますけれども,過去を撮ることができない。これは大変後々になると重要なる文化資料となっていくと私は思うんです。
 ですので,何とか早く保存センターというものを立ち上げて保存したいということを考えまして,遡及の問題はさておいて,フィルム保存センターを立ち上げるべく一生懸命文化庁にお願いして,現在は調査研究費というものが4年間にわたって出ております。そして,今はフィルムの保存センターではなく,このフィルムセンターという,映画用のフィルムを保存している場所がありまして,そこの一部を使わせてくださるということが決まったわけでございます。それはありがたいことなんですけれども,いろんな条件を拝見していますと,居候のようなんです。場所を貸してくださると。その写真保存センターができるんじゃなく,倉庫の一部を貸してくださると。先方様が必要とあらば,即刻立ち退くことを承認しろと。そういう条件が入っております。これでは全くフィルムの保存を始めても,いつ立ち退きを要求されるかわからない。いうなれば間借り人といいますか,そういうような状態で現在はなっているわけです。これを何とか私どもはフィルム保存センターという形で保存していけるように現在,文化庁にお願いしているところでございます。それが文化庁が保存するというその一言があれば,私どもは民間の力を活用するといいますか,民間に,写真関係のところにお願いしまして,幾らか追加というか,賛助基金を集めまして,運営の一部にすることは考えておるんですが,写真家協会,一団体でそれを運営しろというお話をいただいたんですが,これはなかなかちょっと難しい。写真家協会といっても,ただいま1,800人のプロの写真家の集団でございます。その集団の会員から年会費を4万円をもらって運営しているんですが,1,800人に4万をかけたとしても,勘定がわかるとお思いになりますが,そういうような状態ではとてもできない。やはりこれは文化資産として,国が最後はやっていくべきものではないかと私は考える次第です。
 先進国の保存状態を調査研究した結果,先進国では国でそれを賄っているという状態があります。それはそれぞれの国の見解があると思いますけれども,何とかして国がやるという形にしていっていただきたい。写真というものは時がたつにつれて,大変重要なものになっていくというふうに思います。簡単に申しますと,坂本竜馬が今はやっておりますけれども,坂本竜馬をイメージするのは1枚の写真です。それがやはり写真の大切なところだと思います。いろいろとよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】ありがとうございました。写真は今撮ることはできるが,過去に遡って撮ることはできないということでございました。いかに大事であるということ。それと,写真という言葉が今まではなかったというような,これはやはりいろいろ問題が多いですね。あるとき某文部科学省の報告書の中に文化という字がなかったものですから,私は猛烈に怒った記憶があるのですが,今のお話と似たような感じでした。大事な部分だと思います。
 いかがでしょうか,佐々木先生。

【佐々木委員】写真というのは本当に今のお話のように,非常に重要な,文化を継承していくという上でも,あるいは想像の上でも非常に重要なメディアだと思うのですが,以前に多分,国立メディア芸術総合センターが話題になりましたけれども,そういうときに協会として何かご意見をコメントされるとか,そういうことはございましたでしょうか。

【社団法人日本写真家協会】私どもはメディア芸術センターの場合には現在のメディアのさまざまな活動をセンターで扱うということで,要するに保存するということに関しては,そこでは扱わないというお話でしたので,私どもは保存センターというものを立ち上げたいと申し上げたわけでございます。

【佐々木委員】やはり写真及びさまざまな今の新しいメディア,これは全体を保存するという大きな方向も必要であろうと思いますね。

【社団法人日本写真家協会】私どもも,そのメディアセンターにも入っていかなければいけないのではないかと,私は思っております。今,現代アートの中に写真がとても多く使われているというのが現状でございます。

【佐々木委員】ありがとうございました。

【宮田部会長】田村先生,本当にありがとうございました。ご苦労さまでございました。
 それでは恐縮でございます。次に移らせてもらいます。
 社団法人全国国宝重要文化財所有者連盟でございます。落合偉洲理事長さん,お願い申し上げます。

【社団法人全国国宝重要文化財所有者連盟】ただいまご紹介いただきました,全国国宝重要文化財所有者連盟の理事長をいたしております,落合と申します。本日はお話を聞いていただくということで大変ありがとうございます。私どもの団体は全国にあります,主に建造物の国宝及び重要文化財の建物を中心といたしまして,美術工芸品もしかりでございますけれども,それら文化財の所有者の会でございます。昭和52年に所有者が集まりまして,国宝重要文化財をどうやって後世に残していくかということで集まりまして,その後,社団法人となりまして,最初から数えますと,およそ33年のこの活動実績のある団体でございます。現在,大ざっぱに申しまして,国の指定の国宝重要文化財を受けております建物が大体4,200棟ぐらいあると。それから,美術工芸品で国法重文に指定されているのが一万二,三千件あると言われております。特にこの建造物につきましては,私は静岡の久能山東照宮の宮司をしておりますが,副理事長は東大寺,それから姫路にあります円教寺,それからもう一人は京都の知恩院の常務理事をしておられる。あと理事は神社の宮司とお寺の住職が半々という,日本で最大の神仏集合団体と,こういうことになろうかと思いますが,建物の国宝重要文化財のほとんど8割,9割は神社とお寺で守り伝えてきたということでございます。
 しかし,ややもすると,政教分離その他ということで,冷や飯を食わされることもありますけれども,私どもは必死の思いでこの国宝重要文化財を後世に残していきたいということで,本来は宗教家としての活動とともに,保存と活用ということを真剣に考えております。特に古い建物にありましては,先人たちの技術,それから気持ち,そういうものが形の上に残っております。そういうものを後世にしっかりと伝えていくと同時に,また,今残されているメッセージを現代に生きている人たちもしっかりと伝えていきたいというふうに思っております。
 私どものところは15の建造物が重要文化財になっておりますけれども,1年7カ月で,今から400年前につくられております。今と同じ建物を1年7カ月でつくってほしいといっても,どこのゼネコンもまず無理だと思いますが,昔はできても今はできないというものがたくさんございます。この建物を維持管理をしていくということに莫大な費用がかかります。ただお金さえあればできるということでもございません。保存技術者の養成,原材料の確保,例えば瓦,畳をつくるためのイグサ,壁土,そういうものがございます。もう瓦を焼いていても,生活できないから,瓦をもうやめたいというような方,壁土をいじっていても,ご飯が食えない。漆を山の中でかいても,なかなかだめだというようなことで,だんだんとそういう人たちが減っていくような現状にございます。これはいろんな問題があると思いますが,一つは木造建築というものが非常に制限されているということもあるような気がします。木造建築が,ちょっとここの話とはそぐわないかもしれませんが,少し制限を緩和していただきますと,伝統的なそういうものにもう少し広がりが出るのではないかなという気もいたしております。この文化財を後世に守っていくということを日夜努力をしておりますけれども,いろいろ考えてみますと,日本がやはり世界に対して,この信頼と敬愛等を持って,永遠に世界の国々から生き残っていくということを考えていきませば,日本はやはり文化大国になるという,こういう国策をまずは据えていただいて,その中でも日本の伝統的な,伝統文化というものをまずその軸に据えていただきたい。そして,その中にやはり国宝重要文化財の建物,または美術工芸品,二度と同じものがつくれないもの,そして,そのものはいろいろなことを語っている。例えば私のところに400年前にスペインの国王からいただいた時計がございます。これは徳川家康公がメキシコの難破船を助けてあげて,そのお礼としていただいた時計が現存しております。このことはメキシコ大使館はよくご存じで,ことしはぜひメキシコにその時計を持ってきてほしいという要請もございましたが,そういうものがたくさんございます。ものを通じて,昔の人たちのこの気持ちを伝えていくために万全な体制をもって,これを保存すると同時に,これを後世に伝えていきたいと。そしてそのものが持つメッセージを正確に研究をして,わかりやすく今に生きている人たちに伝えていって,それが今に生きる人たちの心豊かな生活に寄与するというところまでぜひ持っていきたいと思います。学校教育の中においても,まずたくさんの先生たちが子どもさんを連れてお見えになりますけれども,ほとんど建物についての説明をされるわけでも何でもありませんし,ただわーっと見て,きれいだねと言って,見て帰りますが,私は余計なおせっかいで捕まえて,そこでこの命を大切にするためのこういう彫刻があるんだよと,そういうことを話をして,子どもさんたちに話をしております。例えば昨年,私はドイツのドイツ博物館に行ってきました。たくさんの子どもたちがいましたが,そこの学芸員さんたちに「あなたたちはこの子どもさんたちに説明するんですか」と聞きましたら,いや,私たちは説明しません。先生を集めて,先生に説明をしますと。先生がそこで子どもたちに自分の教育の範囲に適したところに連れていって,教育をするんですよと,こういう話でした。日本の学校現場でもやはり郷土を愛する心とか,そういうことも教えて欲しいです。例えば先生たちも教育委員会とか,その他で集めていただいて,地方の文化財,建物,それから美術工芸品等について,勉強してもらって,そして先生の口から大事な文化財についてのメッセージその他を話していただけるような体制をつくっていただきたいと思っております。
 また,文化財に関する予算のほうも充実していただきたいと思っています。今,この文化財の建造物,それから美術工芸品,それらの保存,修理,防犯,耐震,いろんな問題がございますけれども,総予算が大体90億円ぐらいつけていただいていると思います。いろんな試算がありますけれども,傷んでいるものをすぐ国の費用で修理していただく,大体半額を出していただいて,残りの半額のうち県,市,所有者で大体3分の1ぐらいずつというのが大体原則のようでございます。
 しかし,それが十分予算がまだとれているという感じではございませんので,お国の事情も大変だということはよく知っておりますが,なるべく文化財に関する予算というものは削除されないように,少しでも上乗せしていただくようにお願いをいたしまして,私の意見とさせていただきます。

【宮田部会長】ありがとうございました。 ものを通じて今に生きる教育,大変すてきな言葉だと思います。それから現場で教える前に,教員に教える。大事なことですね。
 観光なんかはお考えですか。そのすばらしさと観光との関係。

【社団法人全国国宝重要文化財所有者連盟】はい。もちろん観光を考えておりまして,今私は静岡にいますが,外国からも,韓国の方や,最近はオランダやタリアの方が随分お見えになりますので,その方々にも知っていただけるように,英文のパンフレット,それからスペイン語,中国語,韓国語,そういうものも少しずつそろえていっております。できるだけ皆さんにわかるように説明するようにしております。

【宮田部会長】ありがとうございました。いかがでしょうか。
 西村先生,どうぞ。

【西村委員】教育の問題がありましたけれども,確かに日本の教育の中で,建物がどういうふうな種類があって,どういうところが見所かというのがなかなか教えられていませんよね。これがわかって見ると,違いがわかるのでよくわかるんですけれども,知らずに見ると,どれも同じに見えてしまうというところでは,そういう教育は本当に大事だなというのがおっしゃるとおりだと思います。
 1つ質問なんですけれども,これはお寺や神社には関係ないかもしれませんが,個人所有の,特に大きな建物のような場合は相続税の問題がありますよね。これで文化財になれば多少の優遇措置はあるけれども,それで十分なのかどうか。
 また,文化財になると規制もありますから,規制と優遇措置とのバランスで文化財指定を受けるか,受けないかというところは特に個人所有のものの場合は考えると思うんですよね。規制もあるものですから,なかなかうまくいかなくて,相続税の関係でいろんな形で壊されていってしまうものが多いんじゃないかと思うんです。その点で,連盟のほうで何かそうした優遇措置,税制上の優遇措置みたいなことに対しては何かご意見おありでしたら。

【社団法人全国国宝重要文化財所有者連盟】そちらもぜひお願いしたいと思いますが,文化財の建物を個人で所有されている方がおられまして,それを保存修理したいというときに,自分で例えば山を売るとか,財産を売って資金を調達したけれども,それにも税金がかかるとか,いろいろなことがあるようでございますので,その所有者がいろいろ苦労しておりますので,今後,文化財保存と活用ということに関しましては,ぜひ私とは言いませんが,多くの住職や個人所有者がおられますので,そういう所有者の意見をぜひ聞いていただいて,参考にしていただければありがたいと思っております。

【宮田部会長】ありがとうございます。本当にいただいたのはありがたいんだけれども,いじれなくて困っているという話は身近なところで私も聞いておりますので,ご苦労があると思います。優遇税制措置があるといいですね。ありがとうございました。

【社団法人全国国宝重要文化財所有者連盟】どうもありがとうございました。よろしくお願いします。

【宮田部会長】それでは恐縮でございますが,次に進ませてもらいます。
 社団法人全国公立文化施設協会でございます。松本辰明常務理事,よろしくお願い申し上げます。

【社団法人全国公立文化施設協会】ご紹介いただきました,社団法人全国公立文化施設協会の松本でございます。本日は意見表明をさせていただく機会をいただきまして,ありがとうございました。
 私どもの協会は全国に公立文化施設2,200あるということになっておりますが,そのうち約1,300の館を会員として抱えている組織でございます。私どもで言う公立文化施設とは,劇場,音楽堂等というふうに言ってもいいのかもしれません。あるいは公立ホールと言ってもいいかと思いますが,舞台面があり,それから客席を備えた自治体等の公的団体が設置する施設をいうわけでございますが,いろんな種類の,規模の大きいところから小さいところ,展示施設等も備えた総合的な大規模の施設,それから本当に小さい小屋程度の施設まで,多種多様な施設が混在して,全国に充実しているという状況でございます。
 そういう中で,それぞれの地域に見合った文化芸術活動を行って,地域の文化振興に寄与していると考えております。こうした全国の文化施設が今,大きな危機の中に直面しております。第1次基本方針が策定された平成14年以降,さまざまな事情により閉館あるいは廃止に追い込まれた施設が130はくだらないかなというふうに推測されます。規模の大小はありましても,館が存在する地域の一つの拠点が失われると,そこでの文化活動の場が失われていくことになるわけです。せっかく存在する施設を活性化して,地域の文化力を高めていくことが今求められているのではないかなと思っています。最近,当協会を退団する施設もふえてきているんですが,年間2万円の会費でございます。たった2万円の会費を払えないという館が多くございます。大もとには自治体の財政難ということがございますが,自治体の力だけではどうにもならない厳しい現実に直面しているという状況でございます。
 それから,ちょっと余談になるんですが,現在の日本社会,非常に劣化が進んでいる気がしてなりません。去る9月10日が自殺予防デーでございました。ことしも日本の自殺者が3万人,12年連続で3万人を超えるというショッキングな報道もあったわけでございます。この12年で3万といいますと,小さな市の人口が丸ごと毎年なくなっている。それから,12年ですので,36万,これは地方の県庁所在地並みの都市の人口が丸ごと消えていくと。こういう状況,異常な状況ではないかと思っています。自殺の要因にはいろいろな理由があろうかと思いますが,人々がやはり孤立化して,連帯感が失われ,本当にそういう状況があろうかと思います。
 そういう中で,やはり文化芸術の力というのがあるのではないかなと。貧しくとも苦しくとも豊に生きる術,これを支えてくれるのが文化力ではないかなと思っております。そういう文化の力を通じて,地域,地方の元気を取り戻すということが非常に大事だと思っています。
 先日,「魔笛」というのをちょっと見ました。モーツアルトのオペラです。その中で印象深い言葉がございました。我々は音楽の力によって,地の暗い闇を通り抜けるんだと。そういう言葉が印象深く残っております。やはり文化力,芸術,その力,これが地域,地方を再生する一つのツールとして大事なんだろうと思っています。そういった意味で,地域の文化,地方の文化,舞台,芸術,音楽が中心でございますが,この活性化に向けた支援を国として継続していただくことが求められるのではないかと考えております。前置きが長くなりましたが,出させていただきました具体的な意見について,若干補足説明をさせていただきます。
 まず,基本方針の改定でございますが,おおむね5年を見通して策定されたということでございますが,3年にして,また見直しに入ったと。本来基本方針というのはやはりもっと中長期的な,5年,10年,あるいは20年といったスパンを見通してやる必要があるのかなと思います。
 基本方針と,それから政策レベル,施策レベル,事業レベル,こういったものをもう少しきちんと整理して,文化政策を構築されることを望みたいと思っております。
 同様に具体的な施策についてもいろんな助成事業と支援事業等々が生まれてはまた消えていくという繰り返しが続いておりますが,やはりその際にそれぞれの政策もそうですが,施策に,あるいは事業について,検証をしっかりやっていく必要があるのではないかなと思っています。
 今回,第3次の基本方針を策定するに当たってはそういったところを,頻繁に変わらない,基本方針と変わらない,もう少し長期的なスパンで策定をお願いできればというふうに考えております。
 それからこの中で少し感じることは,地域間格差の問題がやはり重要かなと思っております。芸術文化に限ったことではございませんが,東京と地方の格差,それから地方の県庁所在地と町村部の格差がますます広がっている状況がございます。それなりの格差を埋めていく取り組みが大事であろうと。文化事業の関係につきましては,舞台芸術の魅力発見事業というのが昨年度で開始されました。これは格差を埋めるための非常に重要な,我々文化施設にとっても期待していたものです。ようやくそれぞれの館でネットワークを組んでいろんな事業もやっていきたいという,そういう取り組みが広がっていたところで廃止されました。そういったところをやはりもう少しきちんと踏まえていただければと考えております。
 それから,2の今後の重点的に推進すべき事項の,法的整備についてでございます。芸術文化史施策の推進を根拠づける上で非常に重要であると思いますし,期待しているところでございます。
 ただ,本当に多様な公立文化施設がある中で,それぞれの施設が本当にいろいろ柔軟に活用できるような法整備をお願いしたい。大規模で,創造発信型をどんどんやっていけるような拠点に対する支援も重要でございますが,やはり中小規模館,これに対する活性化のための支援もぜひ盛り込んでいただければと思っております。人材育成については,アートマネジメントの人材育成活用といったところで非常に進展しているかと思っております。
 ただ,やはりトップマネジメント,単に芸術だけに詳しいというだけではなく,やはり劇場経営双方に理解が深い,実践できるトップマネジメントの育成,そういったことも重要であろうと思いますので,盛り込んでいただければと思っております。
 それから,幾ら人材育成をしても,なかなか雇用や活用につながらないといったことがございますので,そういった点も配慮して頂きたいと思っております。
 助成事業についてでございますが,先ほど来,申し上げていますが,地方と都市部との格差,これをやはり是正していくような取り組みが重要になってくるのではないかなと思っております。
 それから,オペラ等,大型の企画,制作をする場合にやはり時間がかかるということがございます。ですから,そういった支援について,継続的,安定的な支援をお願いしたいと思っています。今回の特徴として,マッチング・グラントだとか,あるいはアーツカウンシルとか,いろいろなカタカナ語が出ております。新しい試みとして非常に期待しておるところでございますが,やはりそれらの外国の例をそのまま導入するのではなくて,いろいろな課題がございますので,そのあたりを整理して,ぜひわかりやすく盛り込んでいただきたいと思っております。それから評価についても日本版アーツカウンシルの試行といったことが提言されておりますが,それを運営していく人材については,やはり現場経験のない人材の活用はできるだけ避けていただきたいと思っております。いろんな点で,現場について,やはりしっかりとした認識を持っている人材を充てていくということが重要であろうと思っております。そういう公的機関が担当することが重要であろうかと思っています。
 それから,最後に3番のところでちょっと申し上げたいことは,公立文化施設にとって,指定管理者制度,非常に運営面の課題がございます。この面について,やはり運営面についてもどこかで盛り込んでいただきたいなと思っております。
 指定管理者制度,もう大分たつわけでございますが,非常に経済的な効率性のみが強調されて,本来の目的が後回しにされているところもございます。それから,人材育成であるとか,事業の安定的な継続性というのが失われている。こういった状況がございますので,制度そのものの見直しは難しいのかもしれませんが,運用について,やはり改善をする必要があろうと思います。これは設置者が考えることかもしれませんが,やはり国としてこの問題に関する考えをぜひ盛り込んでいただきたいなと思っております。

【宮田部会長】ありがとうございました。指定管理者制度の話というのは,私どもの会議の中でもよく出てくる話でございます。真摯に考えなければいけない時が来ているんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

【加藤委員】指定管理者制度について,触れていただいたのは大変よかったかなと思うんですが,表現が何かやや遠慮がちというか,そもそも指定管理者制度そのものをもう廃止してしまうという主張は,必ずしもコンセンサスがこの中でとれていないから主張されていないのか,あるいはそもそもこれは文化庁の管轄では最終的にはないとはいえ,こうした審議会の中で議論することは,大いに議論して,提案することはできると思うんですが,そのあたりの遠慮がおありになるのか。私はこれは悪法のきわみと現場にいて理解しているので,ぜひ廃止をすべきだと。小手先の何か運用を変えるぐらいではなく,もっと強く主張すべきものと私自身は思っているんですが,そのあたりはいかがですか。

【社団法人全国公立文化施設協会】そうですね。指定管理者制度によって,施設の効率的な運営だとか,そういったいろんな施設に適用された場合に,そういった効用もあっただろうとは思います。ただ,やはり文化部門の施設については,指定管理者制度というのは非常に弊害が大きいと我々は考えております。
 ですから,廃止とまでは私どもは強くは言えませんが,見直しが,少なくとも運用についての改善が求められるのではないかと考えております。

【宮田部会長】ありがとうございました。これはここまでにしておきます。もう十分真意は伝わりました。
 
 それでは大変遅くなりました。ラストになりましたが,特定非営利活動法人の映像産業振興機構(VIPO)でございますが,松谷孝征理事長,お願い申し上げます。大変遅くなって申しわけございませんでした。5分ばかりずれておりますが,よろしくお願い申し上げます。

【(特活)映像産業振興機構(VIPO)】皆さんお疲れさまです。
 今まで拝聴させていただきましたけれども,皆さんの団体がそれぞれ文化の香り高くて,突然映像産業と,産業振興というような話になりましたけれども,皆さんのお手元にお配りしましたものはゆっくり読んでいただいて,それに補足したような形で私はこれから,VIPOというのですが,映像産業振興機構がやりたいことを少しお話しして,ご理解を得たいなと思っております。
 映像産業振興機構は主に2つの柱で動いて活動をしてまいりました。1つは市場拡大,海外市場の拡大,もう一つは人材育成,この2つがなければなかなかものづくりができないのではないか。映像産業というのは映画であるとか,テレビであるとか,あるいはアニメーション,マンガ,それとかゲーム,そういう20年前だと文化と随分ほど遠いものになるわけですけれども,今,だんだん文化として認知されつつあり,頑張っているわけですけれども,もちろん文化庁さんからもいろいろ応援いただいて,人材育成なんかもやっていただいていますし,芸術文化振興機構なんかでも映画に大変協力をいただいておりますし,文化庁とも切っても切れないくらいご支援をいただいているわけなので,ふだんから感謝をいたしております。また,文化庁では若手映画作家育成プロジェクトというのと,アジアにおける日本映画上映事業と,それからつい先だって,パリでジャパンエキスポがありましたけれども,ああいったものにも応援をしていただいております。
 人材育成なんですが,そこに大変難しくずっと書いてありますけれども,私らはプロ,あるいは大学で勉強を教えると,あるいはこういう映像産業のための技術を教えるということだけではなくて,本当に長いスタンスで10年,20年を考えたときに,やはり子どもたちにマンガというのはおもしろいよ,アニメはおもしろいよ,あるいは映像というのはすごく動いておもしろいんだよと,自分の心の中を表現するのにはとても都合のいいものなんだ,とても表現豊かなものなんだということを子どもの時代から知ってもらおうと,つい最近江戸東京博物館で昆虫博というのがございました。これには養老孟司先生だとか,それから我々の業界ではやくみつるさんとか,奥本大三郎さんとか,もうあの人たちはみんな子どもの時代に昆虫採集して,一生懸命遊んだわけですよね。その遊んだ中で,自然に培われた,例えば手塚治虫でいえば,昆虫を生け捕ってやっているうちに,だんだん命の尊さをそれで教わったとか,そんなようなことで身近に昆虫を感じられる。昆虫のよさもよくわかる。そんなようなことと同じように,僕は人材育成の中にぜひ子どもたちに遊びながら,勉強してもらうというか,自然に映像文化が肌で感じられるような,そんなイベントをぜひやりたいなと,それを継続してやりたいと。そうすると,それが何よりもの人材育成につながるのではないかなと考えでおります。もちろん今のプロの方たちにもぜひものをつくってもらいたいし,その2つの柱のほかに,今,非常に危機感を感じているのは,要するに,ものをつくり続ける環境がだんだんなくなってきているのではないかといういことです。例えばネット社会がどんどん発達して,今度は電子書籍を各出版社がアピールしようとして,マーケットを開きますけれども,要するに今まで一生懸命生み出してきたものを電子書籍に入れる,あるいはもうひどいのは,B5版用に書いたものを,それをこんな小さなモバイルの画面に映し出してみせる。それを子どもたちは平気で読む。でも,それはただ単に右にあったものを左に持ってきて,そこに埋めていると。今,一番危機感を私たちが感じているのは,要は今,新しいものをどんどん生み続けていなければいけない。戦後すぐから60数年ずっと一生懸命,ものをつくってきた,そのものがあるからそういう今電子書籍や何かでも流用できる。では流用していったらものがなくなってしまうじゃないかと,だから,それと同じようにやはり苦労しながらものをつくっていく環境づくりをしなければいけないなというふうに思っています。
 だから,一番はそれで儲かっているところがどんどん苦労して新しいものをつくっていけばいいと思うんですけれども,なかなかそうはいかない。だから,私たちのような団体が何かいろいろな方法を考えながらやっていかなければいけないんじゃないかなという気がいたしますので,もう一つそういう,ものづくりが継続できるような関係づくりをしたいと思います。つい先だって,私,三十数年おつき合いしていただいた,川本喜八郎さんという三国志の人形をつくったり,人形アニメを散々やってきた方なんですが,この人が3年ぐらい前に「死者の書」という作品をつくりました。これは最後の作品になったわけですけれども,そのときですら,あの天下の川本喜八郎さんがものをつくりたいといったときもお金がないんですよね。みんなで出し合って,つくっていただいた。立派な作品なんですが,結局,出口がないというか商業ベースになかなか乗らない。お金はいっぱいかかる。人形を一コマずつ動かしながら撮影していくわけですから,大変手間ひまがかかるし,背景なんかもつくるのが大変,人の手間賃もかかる。そんなようなことで,大変お金がかかるけれども,作品としてはいいものができ上がるに決まっているんですが,なかなか投資ができない。投資にならないわけですね。だから,出口がないというのは,要するにそれを放送してくれるとか,ちゃんと放送局が買ってくれるとか,あるいはうちで100館挙げて配給しますよというようなものがない。それからすごく有能な若者が,やりたいことがいっぱいある,企画もすばらしいものがある,ストーリーも考えた,でもなかなかものがつくれない環境,そんなようなものに何か手助けができるといいなと。僕は例えば芸術文化振興機構,あそこは企画に対してお金を渡すわけですけれども,あれが意外と告知というか,広告が行き届いていなくて,余り応募がないんですよね。結局,よくやっている映画配給会社であるとか,よくものをつくっているプロダクションなどは必ず出すんですけれども,なかなかみんなに告知されていない。告知はしているんでしょうけれども,知らない人が多い。ああいうものがもっと広く公になるといいなと思うのと同時に,あれだけじゃ結局足りないので,どこかが応援するような仕組みをつくらなければいけないんと思います。せっかくすばらしい才能を持った若者がすばらしい内容を持っているのになかなか世に出られない。それが大家であっても,なかなかできない。もしかしたら,若者たちのものの中には大ヒット作品が出るかもわからないですよね。だから僕はよく,経産省など行政機関には,投資して,もし大ヒット作品が出たら著作権者として,行政であろうと,国であろうと,利益の一部をもらう仕組みをつくればいいじゃないですかと申し上げています。もしかしたら,出したお金が3倍になって返ってくるかもしれませんよと。そんな話をしたこともあるんですが,何か知恵を絞れば,そういう作家を育てていくことができるのではないかなという気がいたします。また私どもは,イベントを海外でたくさんやっております。これは市場,マーケットを広げるということでやっているわけなんですけれども,僕がいつも感じるのは,マーケットを広げるのはもうこれだけのネット社会になりますと,私は手塚プロダクションなんですが,「手塚治虫」と引けば,ぱっと作品なんか全部リストが出ているし,それからどんな作品だかわかるし,わざわざそこへ行って,市場の中でこういうのがありますよと伝えることが,ただ単に商売であればする必要がないんじゃないかなというふうな時代になってくる。でも,なぜそれが必要かというと,僕はやっぱりフェイス・トゥ・フェイスといいますか,人と人のつながり,特に海外においては海外で人と人とのつながりというのが物すごく大切なんじゃないかと思うんです。もちろん産業として売ることが大切なこと,経済は大切なことなんだけれども,それ以上に相手国との交流,ああ,この国の人はこんなことを考えているんだというのを理解し合う,あるいは日本を理解してもらう,そういったことがとても大事なんじゃないかなと。だから,海外でのイベントというのは僕はとても大切だと思います。
 私は今月末,それからと10月中旬に中国に行きます。広東省と武漢に行きます。今,尖閣諸島の問題かどうかは知りませんけれども,向こうから人は来ない。でも,こんなときこそ僕らのようなこういうコンテンツを持っている人間は向こうへ行って,いろんな人との交流,特に中国との交流というのが必要なのではないか。特に武漢は日中韓の大学生の作品をみんな集めてコンペティションをやったり,それからシンポジウムをやったりするわけですけれども,そういう交流というのが,結局は大げさに言えば国際平和にもつながるのではなかろうかと考えております。だから,マーケット拡充ということが1本の柱ですけれども,それと同時に世界の人々との交流というのを,映像を通じてやっていきたいなと考えておりますので,何とぞ今後ともご支援よろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。たまたま我が社も映像研究家を抱えておるものですから,なるほどという部分が多々ありました。いかがでしょうか。高萩先生,どうぞ。

【高萩委員】VIPOさん,多分文化庁からのお金は余り入っていないのではないかと思うんですけれども,前にやった公立文化施設協議会なんか,つまり出口がない,出口がないというのをかなりおっしゃっているので,公文協なんかと連携するというようなことはやっていらっしゃらないんですか。

【(特活)映像産業振興機構(VIPO)】私,実は理事長になって,まだ数カ月なんですが,公文協との連携などは余りないようですね。出口がないというのは,要はここにある我々の中に入っている人たちというのは,比較的プロダクションもありますけれども,団体が多いんですよね。出口がないというのは作品を作ったはいいけれども,さっきの川本先生の作品のように,すっと放送権を買ってくれるとか,それから上映権を買ってくれるとか,そういうようなものがなかなかないねということを書いたんじゃなかろうかと思うんですけれども。ぜひ紹介してください。

【高萩委員】中小規模館が大変だというのは,さっき公文協が言っていて,比較的できがあった作品の上映というのはそんなに大変じゃないですし,それから多分映画の上映というのはちょっと地域によってはやりにくいところがあるんですけれども,結構簡単にできるとすれば,結びつければ文化庁が援助してつくった作品が公立文化施設で上演されると,演劇ですと少ない人数でやるのは難しいかも知れませんが,繰り返してやっていけばお客さんも増えてくると思うし,やりやすいのではないかと思いましたが,ちょっとそれは研究します。

【(特活)映像産業振興機構(VIPO)】私も今まで日本動画協会という弱小プロダクションばかりの集まりの協会がありまして,その理事長をずっとやっていましたので,後で名刺をください。

【宮田部会長】 大変いいお話でした。ありがとうございました。
 本当にヒアリングで各団体の皆様,ありがとうございました。このご意見,発表を私たち審議の経過報告の中にうまく組み込んでいき,しっかりとした答申をつくっていきたいと思っております。
 また,先生方におかれましては,このヒアリングに込められた各団体の思いも含めて進行していって,いい答申をつくっていきたいと思いますので,よろしくご指導,お力をいただきたいと思っております。
 いかがでしょうか。右側にお座りの皆様は。1分ありますが。

【近藤文化庁長官】ありがとうございます。きょう伺ったさまざまなご意見,それからおととい伺ったご意見,非常に重く受けとめております。こういったものをよく消化し,非常によい次の答申をお待ちをしております。その答申を受けて文化庁として実施をし,検証し,さらに改善をしていくというプロセスを通るに当たって,今回伺った生の声というのを常に座右に置いて,政策の実施に励みたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 それでは事務局からこの後の流れについて,さくっとご説明ください。

【滝波企画調整官】ありがとうございました。
 おとといと本日と2日間にわたりまして,文化芸術関係団体からのヒアリングということで進めてまいりました。また,次回以降につきましても,引き続きの審議をお願いしたいと思いますけれども,次回以降につきましては,この前の部会の折に,国民からの意見募集というののご紹介もしましたし,それから今般の団体ヒアリングということもございました。その結果も踏まえまして,答申に向けた審議のほうに入っていきたいというふうに思います。その中で,6月の折に審議経過報告ということが出ておりますけれども,その中で幾つか検討会でというふうにされている部分がございます。例えば達成目標であるとか,工程スケジュールであるとかいったことの議論が必要になってくるだろうというふうに思っておりますので,また部会長ともご相談させていただきながら,具体的な進め方を考えていきたいと思いますけれども,例えば委員の皆様方から個別に意見発表をいただくというふうなやり方もあるのではないかなというふうに考えております。いずれにしましても,各委員の先生方のご協力をいただきながら進めていきたいというふうに思っております。
 よろしくお願いします。

【宮田部会長】本日は時間の関係がございますので,ご発言なさりたい方がいっぱいいらしたとは思うんですが,それは次の会議でどっとご発言をいただけたら幸いかと思っております。本日並びに一昨日と大変中身の濃いヒアリングをありがとうございました。
 ではこれにて散会といたします。ご協力ありがとうございました。

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