文化審議会第8期文化政策部会(第17回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,堤委員,富山委員,西村委員,浜野委員,増田委員,山内委員,山脇委員,福原文部科学省参与,

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【宮田部会長】 お忙しいところ,ありがとうございました。それでは,暫時,皆さん,そろわれると思いますので,ちょうど,東京国立博物館で平山先生のオープニングがあったので,テープカットとか,いろいろやっていたみたいです。もうすぐ駆けつけてくると。私だけちょっと一足先に出てきてしまって,それでは,資料確認等々をお願い申し上げます。

【滝波企画調整官】  それでは,失礼します。本日は資料の確認をまずさせていただきたいと存じます。いつものように本日の配付資料ですが,議事次第の後ろに各種資料を取りそろえております。
 資料1としまして答申・第3次基本方針(案)の構成,それから,資料2としまして文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)について(答申)(案),それから,資料3として文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)について(答申)(案)の概要(案),資料4としまして重点戦略の戦略目標,評価の進め方・指標(例),資料5としまして重点戦略の工程表(およその見通し),資料6としまして文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次)について(答申)(案)の平成23年度予算案等への反映状況でございます。
 それから,参考資料1として,いつものようにこの部会の名簿,参考資料2としまして意見募集及び関係団体ヒアリングにおける主な意見(概要),それから,参考資料3としましては第8期文化政策部会における審議経過がございます。それから,各委員の席にはそのほか机上参考資料として,いつものように夏の審議経過報告の冊子と,現在の第2次基本方針の冊子と,それから,できたてほやほやですけれども,英文でこの基本方針案の概要の英訳を付したものがございますので,これもあわせてお配りをしてございます。そのほか,いつものように関連資料集として,ファイルにとじたものもあわせてご用意をしております。
 事務局のほうで資料を取りそろえておりますけれども,万一,過不足等がございましたらば,お申しつけをいただけたらというふうに思います。特にないようでしたらば,部会長のほうで進行をお願いしたいと思います。

【宮田部会長】 よろしゅうございますか,資料関係は。ありがとうございました。
 ついに来ました,1月17日という感じなんですが,膨大なお時間を先生方にちょうだいいたしました。重ねて私のほうからも御礼を申し上げます。17回文化政策部会を開催いたします。
 本日は,小田,酒井,里中,鈴木,高萩,坪能,吉本の7名がご欠席でございますが,審議は続けたいと,かように思っております。
 今,答申(案)の議題としてまとめの審議を行いたいと思っておりますので,ご案内のとおり,今期部会の最終回となりますので,答申(案),取りまとめのご協力をぜひお願い申し上げます。
 時間配分でございますが,お手元の議事次第の記載のとおりでございますけれども,答申(案)本文に約30分,答申(案)別添について30分,平成23年度の予算案その他について30分を予定しております。当初よりちょっと早目に終了を考えております。というのは,この後,このことについてもう一度,精査しなければいけない時間をつくりたいと思っておるものですから,よろしくご協力ください。
 それでは,早速,答申(案)の審議に入ります。本文について前回からの修正点を中心に,事務局からご説明してください。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】 それでは,資料2に基づきまして,特に前回からの修正点というところを中心にご説明を申し上げたいと思います。
 ご説明に入ります前に少し補足なんですけれども,本日,ご欠席ではございますけれども,吉本委員と,それから,高萩委員のほうから,若干,意見というか,欠席なさるということでコメントのメールをちょうだいできたことがありましたので,少しその点もご紹介しながら,ご説明をしたいというふうに思っております。
 それで,資料2でございますけれども,前回からの修正点につきまして,基本的にアンダーラインを引く形で紹介をしております。ただ,ほとんど線を引いた箇所はありませんで,前回からほとんどそのままになっております。そういう中でありますけれども,先ほど申し上げた吉本委員等の意見もありましたので,少し,その辺もご紹介したいというふうに思います。
 まず,2ページでございます。第1の(1)文化芸術を取り巻く諸情勢の変化の一番最初のところ,「昨今」で始まる段落でございますけれども,ここについて吉本委員のほうから,きょう,ご欠席ですが,少しコメントがございまして,中身にかかわる話じゃないんだがということですが,ここの「国内外の諸情勢は」の次に「以下のとおり」とあるんですけれども,これは別になくてもいいんじゃないかというようなご意見がありましたので,そのような意見があったということをご紹介したいと思います。
 それから,内容にかかわる修正は特にございませんで,ところどころ,アンダーラインを特に引くまでもないなと思って引いておらないんですけれども,漢字の使い方について,先日,常用漢字表の見直しに関する内閣府告示があったということもございまして,少し,従前でしたら平仮名じゃなければいけなかった点を漢字に書きかわる等の修正は機械的にさせていただいておりますので,念のため,ご紹介させていただきます。
 それから,次に3ページでございます。ここは特に線は引いていないんですけれども,ここについても吉本委員のほうからメールでご連絡がありまして,最初の3行目のところですが,「多様な文化芸術の発展を促すためには」の後ろ,「公的支援による資源配分を必要とする」の部分に関しまして,吉本委員のほうからコメントがございまして,公的支援による資源配分の原資が資金以外を含むということで意図的に使っているなら,このままでもいいけれども,「公的資金による支援」としたほうがすっきりしないだろうかというコメントがございました。このような直しでいくか,あるいは単純に単なる「公的支援」だけでもいいかもしれませんし,「公的な資源配分」といったぐらいでもいいのかもしれません。少し,そのあたりもご議論いただけたらいいかなというふうに思っております。
 次に,その次の行ですけれども,「周辺ビジネスへの波及効果,将来世代への遺贈価値」というふうにあるんですけれども,ここの「遺贈」という部分に関して,これも吉本委員からコメントがございまして,遺贈というと特別な意味が発生するので,継承でいいのではないかというコメントがございましたので,ご紹介させていただきます。
 それから,その次の次の段落,「このような認識の下」の部分ですが,「従来,社会的費用として捉える向きもあった文化芸術への公的支援に関する考え方を転換し,社会的必要性に基づく戦略的な投資と捉え直す」,この部分に関しまして高萩委員のほうから意見というか,補足というかいうのがありまして,芸術活動への援助を投資として考えるという方向に転換したということが強調されるとよいと思うという補足的なコメントがございますので,これもご紹介だけしておきます。それぐらいでございました。
 あと,次に少し飛ばしますけれども,ページが5ページに飛びまして,ここは第2の6つの重点戦略の部分でございます。ここに関しても吉本委員のほうから少しまたコメントがございました。重点戦略1と書いた文化芸術活動に対する効果的な支援のすぐ後ろのリード文のところでございます。最初の段落の一番最初のところ,「文化芸術活動に対する支援の在り方について」のすぐ後ろですが,「実質的に赤字を補?する仕組みとなっているため」という部分に関しまして吉本委員のほうから,実質的に赤字を補てんするとすると,赤字のすべてを補てんしているようなニュアンスにならないか,現状に即して赤字の一部を補てんするとしたほうがより意味が正確になるのではないのかというコメントがございましたので,ご紹介いたします。
 それから,その重点戦略1のリード文の最後のところ,「これらの取組によって」で始まるところの最後のところですが,「その成果を広く国民が享受することができる環境を整備する」とあるんですけれども,ここの表現がこれも吉本委員ですが,回りくどいのじゃないかということで,享受できる環境を整備するでいいのではないかというコメントがございましたので,ご紹介しておきます。
 次に,その下の箱書きの中ですが,ここはアンダーラインを引いたところでございます。2つ目のダイヤ印,「文化芸術への支援策をより有効に機能させるため,独立行政法人日本芸術文化振興会における専門家による審査,事後評価,調査研究等の体制と機能を大幅に強化し」云々ということで,前回の議論の中で,機能の充実のみならず,体制の強化ということも同時に進めなければならないのではないかというご意見がございましたので,その旨に表現を改めております。
 それから,同じページの最後のところのダイヤ印,いわゆる劇場関連のところですが,冒頭のところに「現在,法的基盤のない」を加えますとともに2行目のところ,「劇場,音楽堂等の法的基盤の整備について」ということで,現在,法的基盤がないということから,法的基盤をつくるんだということの意味が明確にわかるように書くべきだというご意見が前回ございましたので,その旨の修正を加えております。
 それから,少しまた飛ばしまして,アンダーラインを引いたところは基本的にございませんで8ページに飛びますけれども,8ページの一番上の箱の中なんですが,ここはアンダーラインを引いておりませんけれども,最初のダイヤ印,「文化芸術創造都市の取組等新たな創造拠点の形成を支援するとともに」の後ろなんですけれども,ここも吉本委員からコメントがございまして,「地方芸術祭」という言葉遣いに関しまして,地方芸術祭という表現は中央に対する地方という上から目線を感じるので,各地域における芸術祭としてはどうだろうかというコメントがございましたので,ご紹介しておきます。
 それから,アンダーラインのところですけれども,重点戦略6のリード文の部分です。後ろのほう,「その際,併せて,我が国の強みであるアニメ,マンガ,映画等の「クール・ジャパン」」ということで例示を加えました。これは前回のご審議の中で,クール・ジャパンの例示がやっぱり何かあったほうがいいのではないかというふうなご意見があったことを踏まえての修正でございます。
 この修正に関しまして,やはり,吉本委員から少しコメントがございました。これについてもご紹介したいと思います。吉本委員からは,ここは私の発言に基づいて言葉を補っていただいたかと思いますが,先日の新聞報道を見ると,経産省ではファッションや食なども含めているようですので,実際の政策に合わせるべく,それらも追加してみるといいのではないでしょうか(文化庁の範囲外ということになるかもしれませんが)というふうなことで,吉本委員からのご提案としては,アニメ,マンガ,映画を初め,ファッションや食文化を含めたクール・ジャパンの潜在力を喚起し云々というふうなことにしてみたらどうだろうかというふうなご提案がございましたので,ご紹介しておきます。
 このページは以上でございまして,それから,10ページに関しましてはアンダーラインが引いてありますけれども,これは重点戦略の直しと連動する直しということで,いわゆる諸外国のアーツカウンシルに相当する部分での体制整備のことも記述すべきということで,修正した部分でございます。  それから,ページがまた飛びまして19ページから20ページにかけまして,これも重点戦略の部分と同じ修正で,いわゆる劇場,音楽堂等の関連で法的基盤が現在ないということと,だからこそ,法的基盤を整備するんだというふうなくだりをつけ加えてございます。
 前回からの修正点及び何人かの委員からご提案のあった修正案といったものをご紹介させていただきました。なお,資料3はこの前もご紹介しましたけれども,この基本方針案の答申(案)の概要ということで,6枚にわたりまして概要としてまとめたものでございます。これについても,今後,いろいろな場面で活用していきたいというふうに思っております。
 冒頭の説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】 どうもありがとうございました。国語審議会からの話もございますので,平仮名を漢字に直したあたりと,これは機械的にお願いをしてあります。それから,高萩先生,吉本先生等々からのお話もいただいたものも,今,ご説明をいただいております。その辺も含めまして,また,全体を通してでも結構でございますが,少しお時間をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 例えば5ページの赤字の一部なんていうのは,当然,そのほうがよろしいんじゃないかとか,いわゆる劇場,音楽堂等のというのに対して,何かそこだけに重点しているように聞こえるので,前段に「法的基盤のない」という言葉を入れることによって,何も特別視しているわけではないということのもの,それから,8ページなどにあります,新聞紙上等でも大分出ておりましたし,私も経産省のちょっとお仕事をさせていただいているので,この辺は入れたほうがいいだろうなという気がしている,いわゆるクール・ジャパンの表現の仕方の中のファッションや食文化というあたり,この辺なども含めて,また,それ以外でも先生方のほうで何かございましたらつけ加えたり,あるいは修正したりというふうに思います。
 増田先生,お願いいたします。

【増田委員】細かいところなんですけれども,3ページの一番下から5行目の一番最後から,「世界的潮流に乗り遅れることなく」と「乗り遅れること」という言葉がちょっと気にかかりまして,何か始終,世界的潮流が先にあって日本が一生懸命,いつでもいつでも後を追っているという印象が私には思えるんですけれども,乗りおくれる必要はないので,潮流をつくるとか,そういった意気込みの言葉のほうがいいのではないかなというふうに感じましたけれども,それともう一つは前にもお話が出たと思うんですけれども,16ページの国語に関するところで外来語をできるだけ少なくしようと,「公用文書等では,国民に分かりやすい表現を用いるよう努める」と書いてあるのの,これの全体の中に片仮名がかなりあるんですけれども,この程度は一応は国民全体にわかるような言葉に改めた結果としなくてはいけないんでしょうね。
 いい言葉がなかなか,いい言葉をまたつくるという努力を促すのは,このところだけなんですよね,言葉としては。大変苦労したアーツカウンシルなんかについても,結局,相当するといっても文章を読むと何々に相当すると言われても,アーツカウンシル自体が内容の説明が一切ないので,一般からしたら何かわからないと思うんですけれども,そういうことはやっぱり出てきてしまいますねという感想です。「乗り遅れる」というのは言葉を改めたほうが,もっと積極的な言葉に。

【宮田部会長】特にその点はちょっと気になりますね。片仮名においては随分,修正はしたようには記憶しておりますけれども,潮流の云々の話はぜひひとつ考えたいと思いますが,ほかはいかがでしょうか。後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】まず,吉本さんのご意見のところなんですけれども,「公的支援による資源配分を必要とする」というところで確かにおっしゃるとおり……。

【宮田部会長】先生,ごめんなさい,何ページでしょうか。

【後藤委員】3ページです。「市場のみでは資金調達が困難な分野も多く存在し」とあって,「公的支援による資源配分を必要とする」というところなんですけれども,ここは確かに長い文章でもあるので,公的支援を必要とするでも意味はとれると思うので,「資源配分を必要とする」というのはなくてもよろしいのではないでしょうかと思います。公的支援には別にお金だけではなくて,ほかの支援もあると思うんですけれども,ですから,あえて資金配分というふうにしてしまうと非常に狭くなっちゃうので,取るということでよろしいと思うんですけれども,ほかにその次の次の行で,「遺贈価値」というところを継承価値と直せということなんですけれども,これはちょっと英語でbequest価値となっているのを遺贈価値というふうにしてあるので,継承価値とすると一体何を意味しているのか,ちょっとわからないことになってしまうので,遺贈価値のままでいいと思います。
 それから,クール・ジャパンのところの例示なんですけれども,8ページのところの,これは3ページの下のところに「伝統文化からメディア芸術やデザイン,ファッションまで多彩な日本文化を積極的に発信するとともに」というふうに書いてありますので,せっかく文化庁がクール・ジャパンと言うのですから,ちょっと経産省で言っている範囲,プラス,ファッション,食文化もいいんですけれども,この前のところで出てきているデザインとか,それから,工芸などは非常にクール・ジャパンの力をつくるもとになっていると思うんですね。無形文化財として保護してきたというのは,非常に世界にないユニークな文化支援でもありますので,ファッション,食文化,デザイン,工芸なども入れたほうがいいのではないかなというふうに思います。一応,それぐらいなんですけれども。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 あとはございませんか。後藤先生,今のクール・ジャパンは,そのあたりは私もいいなという感じがしますね。特に文化庁は文化財も含めて伝統工芸的なことがしっかりありますので,そこを入れられるのはとてもいいんじゃないのかな。
 それでは,また,途中で気になるところがありましたらおっしゃっていただいて全然,前後して構いませんので,私がやる会議というのは余り縦に割りたくないタイプなものですから,この辺で,一歩,進めさせていただきたいんですが,よろしゅうございますか。それによって,ここの部分もまた資料2に関しては大丈夫と,議論できますということをお約束しておきます。
 それでは,資料2をやりましたので,今度は別添についてちょっとやりましょうか。これは資料4,5になりますので,ちょっとこれも含めて,当然,資料2にもまた戻って結構ですから,全体間できょうは見ていきながら進めていって,フィニッシュにするというふうに考えたいと思いますので,それでは,事務局,どうですか。

【滝波企画調整官】それでは,まず,資料4,それから,資料5に基づきまして,答申(案)の別添資料のほうの説明ということで,させていただきたいと思います。
 まず,資料4ですけれども,これは重点戦略の戦略目標,評価の進め方・指標(例)ということで,この資料についても本当に何回もごらんいただいているわけですけれども,重点的に取り組むべき施策ということで,一番左側の欄につきましては,先ほどご紹介した資料2で若干の修正があった点を踏まえた修正を加えた点を赤字にしておりまして,それに応じて具体的施策,それから,評価の進め方・指標(例)を掲載していくという体裁のとおりになっております。
 資料4ですけれども,本文の修整に伴う重点的に取り組むべき施策の修正は施しておりますけれども,それに対応する具体的施策あるいは評価の進め方・指標(例)の部分に関しましては,特に今回は修正は加えておりませんで,前回の資料から特に修正はありません。そういう状況ですけれども,さらに委員お気づきの点等がありましたらば,お願いしたいなというふうに思っております。それが1点。
 それから,資料5でございます。これは重点戦略の工程表(およその見通し)ということになりますけれども,これについても一番左側の重点的に取り組むべき施策の欄につきましては,先ほどの本文の修正に対応する修正は加えておりますけれども,それ以外の修正は特にありません。右側の工程表(およその見通し)に相当する部分について,可能な範囲でさらに書き加えることができる部分について書き加えていったというのがこの資料でございまして,特に何点か直した点をご紹介しますと,1ページ目の真ん中あたりですが,先ほどの劇場関連のところ,法的基盤の整備について具体的に検討というところですが,中身が少し見えるように書き下しまして,「劇場,音楽堂等の現状と課題について整理をするとともに,果たすべき役割や機能,運営に必要な人材,管理や運営の在り方,国の関わり方等について検討」ということの記述を盛り込んでおります。
 それから,2ページでございますけれども,ここについても,今回,新年度の予算編成がなされたということを踏まえての少し可能な範囲での記述の追加をしてございまして,真ん中あたり,博物館の管理・運営に関する研修の部分について,「美術館,博物館を支える人材の研修」といったくだりを書き加えておりますし,それから,その下の無形文化財の伝承,それから,文化財保存技術の伝承等の部分についても,それぞれ,支援対象を拡充するとともに,支援が必要な無形文化財あるいは文化財保存技術についての伝承者養成事業の新規実施ということを書き加えております。
 それから,重点戦略3のところですが,これについても予算の査定を受けたことを踏まえての書き加えた部分がございまして,最初のダイヤ印に対応する施策ですが,上から2つ目の黒丸ですが,伝統音楽等の普及促進支援事業に関しては,実演家団体と教育関係者等が連携した取組ということを加えておりますし,その下の丸印,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業に関しましても,子どもたちが文化財と触れ合う取組と地域活性化施策を連携実施といったような事柄を追加をしてございます。
 それから,重点戦略4でございますけれども,ここについても予算が査定されたことを踏まえて,少し記述を追加しております。それぞれ上から2つ目のダイヤ印,3つ目のダイヤ印のところですが,赤字で登録有形文化財の活用整備補助の新規実施というものを書き加えております。このような可能な範囲での追記というものをしておりますので,これも含めてさらにご意見をいただけるようでしたらありがたく存じます。
 説明は以上でございます。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 今のも含めて参考資料3をお手元にお持ちだと思いますが,約1年間,本当に先生方,ありがとうございました。その辺も含め,振り返って,こんなこともというふうなこともございましたら,感想でも結構でございます,ご発言いただけたらと思います。
 さっき滝波さんからも話がありましたけれども,文化庁始まって以来の予算も少額とはいえ,嫌な言い方だね,すごいことだと思って,それは長官以下,皆様のおかげかと思っております。そうすると,やはり,私どもが苦労したこういう答申に対しても,ちゃんと反映されているのかというような気がいたしております。苦労が報われるというのが大事なことかなと思いますが,いかがでしょうか。この中で最後,いろいろと気になるところ等々がございましたら,ご発言いただけたらと思っております。
 今,1年間と言いましたけれども,何と部会は18回,人数が全部足らなかったので,1回だけ懇親会というのを入れると19回,それから,5つのワーキングが3回でやっていますから,五三,15回,合計で33回で約70時間を超えているんですよね。本当に大変なお時間を先生方にちょうだいいたしまして,きょうに至っているということでございます。改めて部会長からお礼を申し上げますけれども,本当にいい答申ができつつあるという感じでございます。
 滝波さん,この赤の部分に関してはいかがですか,もうこの路線でということで。

【滝波企画調整官】事務局のほうで,可能な範囲で書き加えてみたものではありますけれども,これ以外にもうちょっとしっかりせいやというふうなご指摘もあろうかと思いますし,そういった点も含めまして,ご意見をいただけたらありがたく存じます。

【宮田部会長】振り返りますと,やっぱりワーキングで柱をきちっと分けて,それぞれの専門性を持たせて,その中で先生方に深くご議論いただいたということが今回の会の成功ではないでしょうかね。大変中身の濃いものになっているような気がいたしますけれども。
 どうぞ,堤先生。

【堤委員】この文言とは直接関係ないんですけれども,今の重点戦略5というのを踏まえまして,その中で,劇場,音楽堂の企画力・創造力及び海外発信力強化のためというのを早速踏まえさせていただきまして,私が関係しておりますサントリ-ホールでは,この秋にアジアの各国の劇場,音楽堂のリーダーの方,プラス,ニューヨークのカーネギーホール,そして,ロンドンの劇場等の方をお招きして,シンポジウムなどをしたいと思っておりますので,その支援をよろしくお願いしたいと思います。すみません,宣伝になってしまって。

【宮田部会長】いやいや,結構な話だと思います。そういう点でいくと,資料4のラストの,それも堤先生の勢いをかりたみたいなところがあるんですが,東アジア共同体というのが書いてありますけれども,4年前ぐらいから我が社ではどんどん進めておりますので,推進するというか,より何かもう一つ強い言葉があると,大学間交流が相当深く進んでおりますので,それこそ,最後は支援をいただきたいということになります。
 どうぞ,西村先生。

【西村委員】蒸し返すようであれなんですけれども,この議論の初期のころに文化省をつくるべきだという議論がありましたよね。そして,それは資金的にも政治的にも,また,人事的にもちゃんと文化を独立させて,きちんとやるべきではないかと,それをきちんとこの方針の中に書くべきではないかという議論をかなりやったと思う,かなりの委員の方がおっしゃったと思うんですんですけれども,それは最終的にはどういう形で決着がついたと。

【宮田部会長】この前の会議に先生はご出席になっていないでしょう,私が苦労してしゃべったのに。

【西村委員】すみません,わかりました。

【宮田部会長】冒頭のところに入れさせていただきます。別添という感じになりますけれども,それで,しかも今度,30日ですか,親会議がございます。31日でございますね。文化審議会がございますので,親会議がありますので,その場所ででもきちっと,そういうご意見があったということを全体の中でもお話しさせていただきたいというふうに思っておりますので,お気持ちは十分酌んでおります。直接,あれすること,浜野先生なんかはまだにが虫をつぶした顔をしているけれども,ちょっと場面というか,全部の機運が整っていなくて,やたら出してもなかなかつぶされちゃって,今度は次に出すときにとても出しにくいというふうなことも,ちょっといろいろと議論の中にあったものですから,機が熟したときにどんと出すと。そのためには,こういう答申の中に必ず入れておくと,記載していくという行為が今までなかったものですから,それをやろうというところまで持っていっておりますので,よろしくどうぞ。
 きょうはもう自由にお話をいただければ幸いでございます。どうぞ。

【田村部会長代理】この重点戦略の工程表というのに,書いてあって何も線がないのと,27年度に矢印が閉じているのとがあるのでございますけれど,これは意味があるのでしょうか。例えば法的基盤は線も何もないですね。一番下の国立は24年までが線で,後は点々になっている。

【宮田部会長】およその見通しというのはなかなか難しいんですよね。ちょっとこの点々について。

【滝波企画調整官】 今,部会長代理がおっしゃったうちの点々のところは,資料5の1ページの一番下の行だと思いますけれども,国立文化施設のあり方については,きょう,府から参与がお越しでございますけれども,昨年の後半にかけまして少しご議論いただきまして,論点整理というものが年末に出されております。そういったものを踏まえて,文化庁としてどのようなあり方ができるか,運営の仕組みがつくれるかということのを検討をしていきたいというふうに思っていますけれども,その辺の仕組みの検討や整備がおおむね24年度ぐらいまではかかるのではないかという意味で,ここを実線としておりますけれども,具体的な整備が図られることができれば,その後は制度の適切な運用に進んでいくだろうというふうな見込みのもとに,点線がその後,延びているというふうな一応考え方で,このような線を引いたところでございます。

【田村部会長代理】実線が最後まであるのは,そこまでかかるという,ある程度は,法的基盤というところは何もないのでございますが・・・。

【宮田部会長】どうぞ。

【山﨑芸術文化課長】何回か前の会議でもちょっとご説明したかと思うんですが,法的基盤の件に関しまして,法案をつくって国会に提出すると,また,国会情勢にもよりますので,既に具体的な検討は着手しておりますので,ある意味では法案の検討まで至れば検討自体は終わって,後は国会審議,それから,法律の執行という段階になるわけですが,ご案内のように国会情勢いかんに左右される部分がありますので,役所の行政の文書としては書き込むのが非常に難しいのかなということで,あえて書いてございません。

【宮田部会長】滝波さん,資料5なんですけれども,ここにツートントン,ツートントンがあるでしょう,線が年度の上に。これが紛らわしいものだから,今,田村先生がおっしゃった下の実の点々が余計,何か怪しく見えちゃう。これはデザイン的な話なんですけれども,重点戦略1,2のところのツートントンがね,これをちょっと変えると見やすくなる。

【加藤委員】ちょっと戻ってしまってよろしいでしょうか。本文の8ページのところに,先ほどクール・ジャパンについてはご指摘のなるべく広くとったほうがいいというのは私も大賛成ですので,もう一つ,一番上の地方芸術祭の用語の問題が吉本さんから指摘があって,各地域における芸術祭ぐらいにしてはどうかというご指摘があったわけですが,実は小田委員から前から地方芸術祭というものでいいではないかというご発言があったように思うんですが,小田委員はそういえば,きのう,市長に選挙があってめでたく再選されたようでございますけれども,その趣旨は地方での芸術祭を無視しないでくれというか,そういうことをきちんと重視をしてほしいというのがご趣旨だったと思うので,特に用語にこだわっておられたわけではないと思います。そういう意味では,各地域における芸術祭ぐらいの用語のほうがここはより適切かなと思って,このことは重要であり,かつ表現は少し配慮したほうがいいのかなと。だから,吉本委員のご指摘に合わせてはいかがでしょうかということを申し添えたいと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 今の加藤先生のように,いろいろなところで前後して結構でございます,もう少し,お時間はいただけますので。どうぞ。

【増田委員】先ほど乗りおくれるというのが気にかかるといって発言しただけですので,言葉としては何がいいかなと考えましたけれども,世界的潮流を先導するためにとかいう言葉は余りにも強いんでしょうか。一応,提案いたします。

【宮田部会長】世界的潮流を先導する。

【増田委員】自分たちでつくって引っ張っていくという。

【宮田部会長】今,私はこれの答申の表紙の一文字を考えておるんですけれども,引っ張っていく,なるほど,そういう意味ではちょっといいヒントになりそうですね。後追いではないということを,先生,申し上げたいんですよね。

【増田委員】はい,そうです。

【宮田部会長】ありがとうございます。

【山脇委員】遺贈価値という言葉を寡聞にして知らないのですが。

【宮田部会長】もちろん,日常的に使う言葉ではないでしょうけれども,余り使わないですよね。いかがでしょうか。文字的に見ればわかるんですけれども,ここで見ると何を言っているのかわからないときがありますね。

【山脇委員】文継承という意味なんでしょうか。

【増田委員】私個人としては最初のころは遺産という言葉が文化に使われ始めたときに,非常にちょっと戸惑いましたけれども,今は大分なれました。世界遺産という言葉が一般的になってからでなれましたけれども,そのときも遺産といったら何となく親が死んでというのが先にメイシンがきてしまって,世代から世代へわたるのを残されたものという意味なんだというので,何となく納得はしているんですけれども,最初のころは遺贈というのも,そういうふうなのに準じた意味なのかなというぐらいには考えましたけれども,遺贈だとまだ私個人的には昔の遺産という意味合いのほうが強くきて,世代をわたって,今は一般的になっているような文化遺産というような意味に,まだまだなじんでいない感じはいたしますけれども。

【宮田部会長】そうですね。増田先生がおっしゃるように文化遺産というと一つの用語になっていて,とても心地よい響きを感じるんですけれども,きょうもさっきまでオープニングをしていたヒラヤマ先生の展覧会なども文化遺産という,なじむんですけれども,遺贈も上に何かがくっついてだんだんなじんでくるのかもしれないですが,どうぞ。

【西村委員】これは経済の用語ですよね,文化経済学で言われる用語ですよね。ですから,使用価値と使用価値以外のものに分けて,使用価値以外のものが存在価値とか遺贈価値とかオプション価値とか,いろいろ分かれるという中の一つなんですよね。ですから,そういう経済用語として見れば,ごく普通に使われているんですけれども,日常用語として使われるかどうかという問題だと思うんですね。これは恐らくちゃんと経済用語として使われているので,そう思っていただければ通じると思いますけれども。

【山脇委員】経済用語なんですね。失礼いたしました。

【加藤委員】確かに経済用語で,それで間違いないと思うんですが,ただ,訳し方の問題は,別にここは必ずしも厳密にすべて経済用語で語っているわけでもないし,専門用語で語っているわけでもないわけですから,わかりやすい表現に変えたほうが誤解がなくていいのではないかと思います。なので,そもそももとの用語を遺贈価値と訳していること自体も,やや日本語としては変な訳し方だろうと思うので,そこの部分も含めて考えると,余りこれ自体,現在,別に間違った用語ではないんですけれども,正しい用語だと思うんですが,一般論としてわかりやすい用語に変えるほうがここでは適切なのではないかなと思います。

【宮田部会長】この答申の中ではね。山脇委員,どうですか,そういう表現のというか。

【山脇委員】ちょっと経済用語を知らなかったので小さくなって言いますが,普通の日本語を読む人間としては,もっとわかりやすいほうがいいかなという気はしないでもないです。

【宮田部会長】後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】言いかえても構わないと思うんですけれども,ここのところの趣旨を説明しますと,例えば美術館があったとして,美術館に直接,行く人たちにも便益があるんだけれども,美術館にたとえほかの行かない人にとっても価値がありますよというようなことを説明するときに使う言い方で,結局,美術館があると,その地域とか国家に対してイメージとか威信というようなことで説明していますけれども,そういうものが付与されたり,それから,周辺のビジネスに経済波及効果があったり,それから,将来の世代だって,その美術館を訪問することがあるかもしれないので,将来の世代のためにもその美術館というのは価値があるんだという意味でここのところは使っているので,何かそういうのにふさわしい日本語があれば,それでいいと思うんですけれども,価値のストックとしてちゃんと将来に渡していくというようなニュアンスで,こういうbequest valueという英語を訳したということなんですけれども。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 この辺は,これだけやっているとちょっと時間がもったいないので,この辺にさせていただいて,でも,大変ありがとうございます。新しい,場所が違うとなじまない言葉って時々ありますからね,ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは,今のような話で若干の文言等々はございますでしょうが,いかがでしょうか,この後は私にご一任させていただいてということで,よろしゅうございますでしょうか。
 それでは,だれか,異議なしぐらい言ってくれるとありがたいんだけれども,ありがとうございました。答申(案)については1月31日,先ほど文化省と文化庁の話もしましたけれども,しっかりと報告をさせていただきたいと思っております。
 それでは,平成23年度の予算案その他でございますが,事務局から説明してください。

【滝波企画調整官】それでは,資料6と,それから,参考資料としまして平成23年度文化庁予算(案)の概要という,いわゆる予算の中身がわかるようにとじた資料もあわせて配付をしておりますので,それも少しご参照いただきながら,ご説明をしたいというふうに思います。
 資料6ですけれども,先ほどからご議論いただいております基本方針案の各重点戦略の施策にそれぞれ対応する形で,今回の23年度予算(案)及び予算以外のことも含めてですが,どのような形で反映ができておるかということを資料6のとおりまとめておりますので,少しこれについてご紹介をしていきたいなというふうに思っております。これについては昨年9月のときに,23年度の概算要求にどのような形で反映ができたかということで,一度,ご紹介をしたわけですけれども,そのときの資料を今回の予算(案)が編成されたことを踏まえて,リニューアルしたような内容になってございます。  1ページ目ですけれども,重点戦略1ということで,文化芸術活動に対する効果的な支援についてご紹介しています。
 1つ目のダイヤ印は文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入ということで,これについては先ほどから話が出ていますけれども,文化芸術団体への支援方法を抜本的に見直すということと,インセンティブが働く新たな支援制度を導入するということで,今回の予算の中で舞台芸術創造力向上・発信プランというものを打ち出しておりますけれども,そこの予算の中で,具体的に今回の提言事項に対応する予算を打ち出しておりますので,そのことについてご紹介をしたものになっております。
 それから,2つ目の諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みということについても,先ほどからお話がございますけれども,新たな審査・評価,調査研究等の仕組みの試行的導入ということで,これについても新年度から一部の分野について試行がスタートするということが今回の予算の中で認められましたので,そのことの紹介をしておりますのと,備考欄のところに少し米印2つ目のところですが,文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会というものが日本芸術文化振興会のほうで着手をされておりますので,そのことについても少しご紹介をしております。
 それから,3つ目のダイヤ印ですが,地域の核となる文化芸術拠点への支援の充実ということで,これは昨年からの続きになりますけれども,劇場,音楽堂からの創造発信への支援ということで,これも事業化されております。このことを紹介しております。
 次のダイヤ印は劇場,音楽堂等の法的基盤の整備検討ですが,これについても先ほどから話が出ておりますとおり,法的基盤の整備についての検討に着手をしております。これについても備考欄のところにございますように,昨年12月から新たに検討会が着手をされております。
 次のダイヤ印は,美術品政府補償制度の導入と適切な制度運用についてですが,これについても前回や前々回のご議論の中でもございましたとおり,法案は既に提出をされておりまして,昨年の臨時国会のほうに提出を既にされております。昨年の臨時国会では衆議院は通過をしたわけですけれども,参議院のほうで継続審査という形になっております。今回,来週から始まります通常国会のほうで,改めてご審議をいただけるものというふうに思っております。なお,23年度の予算案予算総則の中で,補償契約の締結の限度額ということで,5,500億円が明記をされているところでございます。
 それから,次のダイヤ印は民間による支援活動の促進及び「新しい公共」による活動支援ということですが,これについては税制改正要望が一部認められた部分がございましたので,その紹介をしておりますが,最初の逆三角印は認定NPO法人等に対する個人からの寄附に税額控除の仕組みが新たに導入されるということで,文化に限らない話ではございますけれども,新たな税額控除制度が導入されるということで,その紹介をしております。
 それから,次のダイヤ印は先ほどご紹介しました国立文化施設等の運営見直しということで,昨年12月に論点整理が既に出ております。これを踏まえて,さらに検討を深めていくということ,及び美術館と文化財機構に関しましては中期目標の今,見直し作業をしております。23年度より次期中期目標に移行していくべく,今,作業しているところでございます。
 それから,次のページは重点戦略2でございます。文化芸術を創造し,支える人材の充実ということで,1つ目のダイヤ印,若手をはじめとする芸術家の育成支援ですけれども,これについては1つ目の丸印,次代の文化を創造する新進芸術家育成事業ということで,いわゆる元気な日本復活特別枠を活用して要望したわけですけれども,これについて予算が認められまして,新たに事業がスタートすることになります。また,メディア芸術祭における顕彰制度についても,予算が引き続き認められております。
 それから,2つ目のダイヤ印,文化芸術を支える専門的人材の育成・活用に関する支援ですけれども,これについては先ほどもご説明した劇場,音楽堂等からの創造発信への支援が継続されますのと,それから,博物館の管理・運営に関する研修が新規で予算化されることになりました。
 それから,次のダイヤ印は文化財の伝承者に対する支援の充実ですが,それぞれ無形文化財,民俗文化財,文化財保存技術の伝承や活用についての事業が引き続き行われますのと,それから,新たに元気な日本復活特別枠を活用しまして,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業が新たにスタートするところでございます。これについては重要文化財等の公開活用とか史跡などの復元・公開,地域に伝わる地域伝統芸能等の継承,公開など,地域の特色ある総合的な取組を積極的に支援するということで,地域の文化遺産を活かした観光振興・地域活性化を進めるというふうな内容でございます。70億円以上の額が新規に事業化されることになりました。それから,伝承者養成の裾野の拡大ということで,これは引き続きですけれども,支援の充実を図っていくということになっております。
 次に重点戦略3として,子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実ということになりますが,1つ目のダイヤ印,多彩な優れた芸術の鑑賞機会,伝統文化等に親しむ機会の充実でございますが,1つ目の丸で次代を担う子どもの文化芸術体験事業が,これも元気な日本復活特別枠を活用しまして,新規に事業化されることになりました。それから,2つ目の丸で,伝統音楽等の普及促進支援事業についても,新たに事業化されることになっております。再掲ですけれども,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業もスタートすることになります。
 2つ目のダイヤ印は,コミュニケーション教育など学校教育における芸術教育の充実ですけれども,これについては先ほどご紹介した次代を担う子どもの文化芸術体験事業の中で実施をしていくということにしております。
 それから,次のページ,重点戦略4ですが,文化芸術の次世代への確実な継承ですが,この辺につきましてはおおむね事業が認められておりまして,1つ目のダイヤ印,計画的な修復,防災対策等,文化財の適切な保存・継承ですが,文化財の保存修理,文化財の防災施設の整備等については,引き続き事業化されております。加えまして,美術工芸品に係る緊急防災対策が新規に認められております。
 それから,文化財の公開・活用の促進に関しましても,基本的には前年同様に事業が認められておりますのと,それに加えまして,NPO等による文化財建造物の管理活用の推進事業が新規にスタートすることになっております。
 それから,次のダイヤ印,地域の文化財の総合的な保存・活用及び文化財保護の裾野の拡大ということに関しましては,事業としては新規になりますが,歴史文化基本構想普及促進事業ということで,市町村における歴史文化基本構想の普及促進を図っていくということにしてございます。
 それから,次のダイヤ印,アーカイブ構築の着実な推進,積極活用策の検討でございます。ここのところについても,メディア芸術デジタルアーカイブを引き続き行いますのと,それから,文化関係資料のアーカイブ構築に関する調査研究を新たにスタートすることになっております。
 それから,最後の4ページですが,重点戦略5として文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用,これについては先ほどからご紹介しております文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業が新たにスタートすることが大きい内容になっておりますのと,それから,2つ目のダイヤ印のところの真ん中ですが,文化芸術創造都市の推進が引き続き認められておりますのと,文化芸術の海外発信拠点形成事業ということで,いわゆるアーティスト・イン・レジデンスなどの各地域において取り組まれている特色ある国際文化交流事業の支援ということが新たにスタートします。これは元気な日本復活特別枠を活用したものとなっております。
 それから,衣食住に係る文化をはじめとする「くらしの文化」の振興に関しましても,文化行政調査研究の枠を活用して調査を行っていきます。
 それから,重点戦略6,文化発信・国際文化交流の充実に関してですが,1つ目のダイヤ印のところ,舞台芸術,美術工芸品等の海外公演・出展,国際共同制作等への支援充実に関しましては再掲ですけれども,文化芸術の海外発信拠点形成事業がスタートするということ,国際芸術交流支援事業が引き続き行われるということ,その中で東アジア交流,海外での国際共同制作が新設をされるということがございます。
 それから,2つ目のダイヤ印,中核的国際芸術祭の国際開催や海外フェスティバルへの参加支援,メディア芸術祭を世界的祭典へということで,ここのところですが,国際芸術フェスティバル支援事業ということで,新たに元気な日本復活特別枠を活用しまして,事業化をされることになりました。
 それから,3つ目のダイヤ印,文化発信・交流拠点としての博物館等の充実に関しましても,2つ目の丸で,アジアの博物館・美術館交流事業が新たにスタートしますのと,それから,先ほどご紹介した文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業がスタートすることになります。
 4つ目のダイヤ印,文化財分野の国際協力の充実に関しましては,引き続き予算措置されておりますが,文化財の国際協力の推進を図っていくこととしております。
 そして,最後のダイヤ印ですが,東アジア地域における文化芸術活動の推進ということで,これも元気な日本復活特別枠を活用しまして,新たに東アジア文化芸術会議という形で事業化されることとなりました。
 主なものだけ拾い上げたものですけれども,詳細につきましては,また,参考資料4でしょうか,平成23年度文化庁予算(案)の概要についてというところで,ご確認いただけたらというふうに思っております。
 予算関連の説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 今のご説明について,ご質問等がございましたらお受けいたします。いかがでしょうか。それと同時に,ぜひぜひ,今後の文化庁に対する期待感等々などもございましたら,あわせてご発言いただけたらというふうに思っておりますので,少しお時間をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【山内委員】よろしいですか。文化交流のところですが,東アジア文化芸術会議の開催とありますけれども,これはどういう国々を想定しているんですか,具体的には。

【宮田部会長】重点戦略6でございますね。東アジア,国そのものをこの会議の中で,どこどこということは言っていませんでしたね,今まで。先ほどちょっと私が言ったのは,私のときは,韓国,中国,それから,広げていきたいのはオーストラリアまで広げていきたいというぐらいの気持ちで私はいるんですけれども,こういういわゆる縦の世界で持っていきたい。  どうぞ,大内さん。

【山内委員】もちろん,芸術家ですから,文化人だから,国籍は必ずしも特定されないというか,むしろ,余りそれを問題にしないというところは我々にとって大事なことですが,しかし,文化庁の国際文化交流ということになりますと,やっぱり,全体の中で文化外交とは何かということもなされておりますし,長官ご自身のバックグラウンドを考えても,やはり,積極的な我が国の文化の外交的カシンということになりますので,その関係者がどの国の人であるかというようなことは,必ずしも余り大事ではないということになるかならないかと,結構,微妙なところかなという気もしたからお尋ねしたのです。
 例えば台湾なんていうのはどうなるのかなんていう,そういうようなことも少し頭の中にありますし,香港はよろしいかと思いますけれども,よろしいというか,余りないのかもしれないけれども,オーストラリアまで広げることになるとすれば,ASEAN諸国などはどうなのかとか,かなり広がりますよね。ですから,この交流というものに関しては,あくまでも個人芸術家の個性やご本人ということで考えるんだと,多分,そんなことなんですかね。

【近藤文化庁長官】答えを一言で申し上げれば,ストラテジック・アンビギューイティということじゃないかと思います。東アジア共同体とかいう話がこれまでこの数年,盛んに行われておりますが,必ずしも人によってというか,必ずしも東アジアの範囲というのを特定していないし,しないほうがむしろいいかなということで,恐らく,それを話される方々によってやや範囲が違うと思います。私どもあるいは少なくとも私の頭にあるのは日中韓とASEAN,それがやはり事実上の中核になろうと思います。
 その上で必要に応じて,状況に応じて,さらにモンゴルですとかインド方面,あるいは豪州,ニュージーランドといったことにも当然,そこは阻むものではない。しかし,共同体意識あるいは文化の歴史的な共通性ということを考えると,おのずと日中韓をコアとして,しかし,同時に日中韓には歴史,領土等々,文化以外の面での問題もございますから,ASEANという一つの塊,これは中韓に対する一つのカウンターパワーといいましょうかになるということで戦略的に,そして文化的にも,私はきのうまでバンコクに行っておりましたけれども,東南アジアとも共通性は強いということで,ちょっと長くなりましたが,その辺を頭に置きつつ,しかし,あえて文字にはしない,パブリックにはどこということは言わないということで,恐らくこれまでやってきましたし,当面はそういうふうにしていくことが一番適切ではないかと思っております。

【山内委員】ご指摘はよくわかりました。今,長官ご自身が戦略という言葉をお使いになられましたけれども,今回のこの報告等々でもちろん重点戦略という言葉を使われていますけれども,その内容に関するご説明として,その言葉をお聞きしたので了解できたと思いますが,そういうことなんだろうと思いますので結構です。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 私のところの初代がAsia is oneと言って,余りうまくとらえられないつらいことがあったので,私などはあえて言わないようにしたいなとは思っているんですが,具体の例としては例えば台湾と中国と,北朝鮮と韓国とというふうなところまでも,例えば高句麗古墳について私もずっとみんなでやっているんですね。そういうふうなことなども十分,文化としてはできているというか,文化だからこそできるという強さもあるのではないかと思うんですが,国としての書類として出すときには,あえて国の名前は出さないと,諸外国の名前は出さないで東アジアというのも一つの路線かなというような私も部会長としては感じております。でも,近藤長官は本当に外務省からおいでいただいたので,本当,そういう意味では新しい視点で今の諸外国という言葉に対しての重みを十分,僕らは認識できるのかなという気がいたしております。
 また,お気づきの点がございましたら,ここ数日は十分大丈夫でございます,キャパはございますので,いろんな手段を用いてご連絡いただければ結構だと思いますが,いかがでしょうか,この辺でまとめに入りたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。  それでは,大変膨大な,先ほども申しましたけれども,お時間をちょうだいしまして,きょうまできました。きょうを最終回といたしたいと思いますので,近藤長官からぜひ一言,ご発言いただけたらと思うんですが,よろしいでしょうか。

【近藤文化庁長官】ありがとうございます。
 まずは,諸委員の先生方におかれましては,この1年足らずでしょうかの間に大変濃密なご審議をいただきまして,本当にありがとうございました。それぞれのお仕事で,ご専門の分野で多忙を極めておられる中で,これだけの時間と,そして英知を私どものために注いでいただいたということに心から感謝を申し上げます。
 私も就任以来,物理的に東京にいる限りは出させていただきました。先生方の大変な英知と熱意に本当に心を動かされました。単に文化をどうするかということではなくて,これからの日本をどうつくっていくか,再構築していくか,その過程でどうやって文化芸術を使っていくのか。これまで見落としてきたこと,それをどうやって国民の,そして政治政策決定時の目にとまらせるかという観点から,すばらしいご議論をいただいたと思います。私どもは本当にいい勉強になりましたし,これだけの英知の集まった答申をいただいて,大変心強く思っております。また,宮田部会長のすばらしいさばき,これも大変な,これだけの中身のあるものを,かつパンチのあるものをこれだけコンパクトにまとめることができた,これも部会長の大変なお力だと思います。改めて感謝を申し上げます。
 しかし,当然ながら我々の目的はここに書かれていることを実現することでございまして,これまでたくさんの答申が霞ヶ関にはファイルされていると思います。これだけは違う,これだけは実際にしっかりと実施をされたという歴史に残る答申になるように私どもも最善を尽くしますし,また,諸先生方におかれましてもいろんな場で,それぞれのご専門の場で,あるいはメディアを通じて,引き続き文化芸術の振興のためにお力添えをいただければと思います。
 今回の予算の次の予算(案)の説明をさせていただきましたが,その中で言っている割には余り伸びていないではないかというおしかりを受ける部分もあるかと思います。これはやはり今の仕分けという作業の流れの中での一つの制約でもございました。今後,やはり社会広く,国民広くがこの文化芸術の重要性ということ,それは単なる消費ではなくて投資だと先ほど言及がございましたが,そういう認識を持って,あすの日本をつくるための最も効果的な投資であるという認識を広く深く持っていただくということが必要だと思います。そのために私どももベストを尽くしますが,ぜひ引き続き諸先生方のお力添え,これをいただきたいと思います。
 実はお正月に熟議というのをやりました。これは多分,霞ヶ関で初めてだと思いますが,肩書きを取っ払って若い職員も含めて,自由に今後の役所のあり方を議論をすると。特に結論を求めるものではありませんけれども,自由な意見交換をやりまして,文化庁でもかなり若い人の声を吸い上げて,私もその一部を聞きましたけれども,非常に前向きで建設的で,いい議論が若い人から出てきたことに大変勇気づけられました。それはやはり長いインテンシブなご議論を直接,間接に聞かせていただいて,そういう認識が非常に高まっているということではないかと思っております。そういうことで職員のほうでも非常に意識が高まっております。引き続き,そういった面でのご指導も先生方にお願いをいたしまして,最終回に当たりましての御礼とごあいさつとさせていただきます。本当にありがとうございました。

【宮田部会長】ありがとうございます。大変心温まるというか,元気づけられる,いろんなものを含んでおりますお言葉をいただきました。ありがとうございました。
 私どもも文書をつくっておしまいじゃなくて,これをどうするかが問題でございますので,事務局と一丸となってこの答申を大きく伝えていき,そして,国民の皆さんに文化芸術なくしては日本の国家は成り立たんというところまで持っていけるような大きな力強い環境になっていけたらというふうに思っております。ありがとうございました。
 それから,あと,福原先生にもおいでいただきまして,ありがとうございました。ちょうど,こうやって先生のほうの会議と私どものほうのということで,非常に前向きな本当に戦略的な何かこの1年ができたような気がします。先生,ありがとうございました。  さて,最後になりますが,滝波さん,ちょっと事務的なことを含めて。

【滝波企画調整官】ありがとうございます。
 この後の少し段取りというかのところを少しご紹介しておこうかなと思いますが,部会としてはきょう,ただいまをもちまして部会長のほうにご一任をいただけたということでございます。この後は第3次基本方針案ということで,文化審議会の総会のほうでお諮りをして,ご審議いただくということをしなければいけません。先ほどから少しお話が出ていますとおり,1月31日を予定をしておりますけれども,この日に総会の開催をいたしまして,部会長のほうからこの答申(案)についてご報告をいただきたいというふうに思っています。その上で,総会のほうでしかるべきご審議がいただけるのではないかと思っています。
 そこで,答申ということでゴーサインが出れば,当日の国会情勢等にもよりますけれども,政務の大臣を念頭に置いていますけれども,のほうに答申をいただくというふうな運びになるのではないかというふうに思っております。それを受けまして,私ども文化庁あるいは政府としましては,速やかに閣議決定というふうに持っていきたいというふうに思っております。
 ということで,本当にこれまでの間に本当に多大な審議をいただきまして,部会長を初めとして,各委員の先生方から貴重なご意見をたくさんいただきまして,これからの3次方針,着実に私どもとして進めていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。引き続きのご指導をいただけたらなというふうに思っております。
 それから,机上資料で英語に訳したのをお配りしたんですけれども,これは概要版のほうの英訳になっておりますけれども,今,9ページになっていますけれども,一応,専門家の人にも少し見てもらった形のものになっております。これについては概要なんですけれども,本文についても同じように,こういった英訳のものを用意をして,国内のみならず海外に対してもしっかりと今回,第3次方針が策定されたということを広く周知ができるように,取り組んでいきたいというふうに思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 この英語版というのは,やっぱり近藤長官のにおいがぷんぷんするんだけれども,大変,結構なことじゃないでしょうか。

【山内委員】結構ですね。

【宮田部会長】ええ,とてもいいと思います。今現在,私どもの大学の話をして恐縮なんですが,先般,長官をお呼びして芸術系大学の学長を全部お呼びして,それで提言をした。これは,今,多言語化しております。英語,韓国語,中国語,この3つでまとめを動かしております。

【山内委員】すばらしい。

【宮田部会長】そうやっていって,やっぱり,文化の力で人の輪をつくりたいというふうに考えております。ありがとうございました。どうぞ。

【近藤文化庁長官】英文の使い方でございますが,2月4日にフォーリンプレスセンターという日比谷公園の向こう側にありますが,そこで外国プレスに対してブリーフィングを予定しております。今,予算の政府原案とこのレポートを中心に今現在の,そして,これからの日本の文化政策についてブリーフィングをすると。中国,韓国系の方々は英語ができないということで,日本語でやって,それを英語と中国語と韓国語かな,同時通訳というような形のようでございますが,いずれにしましても,そういう機会をなるべく公式,非公式につくって,私どもの考え方,特にこのすばらしい答申の内容について,日本ではこういうことを考えて,こういう方向に進んでいくんだということを発信するよう,心がけていくつもりでございます。

【宮田部会長】日本語を英語と韓国語と中国語,私は日本語を英語にしたものを韓国と中国に持っていく。そうするほうが割にスムーズなんですよ。これは留学生から聞いた話。

【近藤文化庁長官】論理の問題。

【宮田部会長】ええ,割に明快にいくものですから。余談でございますが,そういうふうなもっと国際化をするということで,大変結構なことではないでしょうか。
 本当に先生方,ありがとうございました。そして,最後になりますが,大変,すばらしい事務方に僕は拍手をしたい。ありがとうございました。随分,こき使われたけれどもね,本当にすばらしいと思いました。先生方,本当にありがとうございました。

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