(4)くらしの文化分野

  1. ○  文化芸術振興基本法にいう「生活文化」及び「国民娯楽」に関し,とりわけ衣食住に係る文化を重要な対象領域として取り上げ,それら我が国の生活に根ざした文化を「くらしの文化」として包括的にとらえることにより,伝統的な「くらしの文化」の保護及び伝承を図るとともに,現在・未来の創造活動によって形作られる「くらしの文化」の振興を図ることとする。

  1. [1] 「くらしの文化」に関する調査研究の推進
    • ○  振興すべき「くらしの文化」,海外に発信すべき「くらしの文化」を明確化するとともに,既存の活動を一元的にデータ化することを含め,国として基礎資料をまとめる必要がある。
    • ○  「くらしの文化」において既に人知れず消失してしまったものがあることを想起すれば,アーカイブは早急に検討すべき事項である。従来の取組を情報として集約し,全体像を把握しつつ,意識的な保存を図っていく方策を検討する必要がある。

  1. [2] 「くらしの文化」の担い手・団体の育成・支援
    • ○  我が国の伝統的な「くらしの文化」を再興するためには,供給サイド(作り手)と需要サイド(使い手)双方の担い手(継承者)の育成が不可欠である。
    • ○  作り手としての担い手の育成を図る上では,生産過程で必要となる伝統的な技術・技法を保持する継承者の養成が求められる。その際,伝統的な技術・技法を生かしながら,新たな創造につなげていく視点も重要である。また,使い手としての担い手の育成を図る上では,子どものころからいかに「くらしの文化」に触れさせるかが肝要であり,伝統的な生活空間が減少する中,実体験の機会を充実することや,きっかけづくりにおいて学校教育の場を活用することも必要である。
    • ○  従来,建物等ハード面では各省庁の補助や助成が存在したが,地域資源の発掘や団体の立ち上げに対する支援策はいまだ不十分であり,その拡充が求められる。その際,税制優遇や顕彰等のインセンティブ設計についても検討する必要がある。
    • ○  街の文化的景観を構成する町家や古民家等伝統的な建築物の保存・活用を促進する方策や,都市計画において公共事業費の一定割合を文化的側面に割り当てる「Percent for Art」等についても,関係省庁による連携の下,検討すべきである。

  1. [3] 創造都市の推進と創造産業の振興
    • ○  創造都市については,多数の地方公共団体が主体的に地域性を生かした創造都市としての発展の可能性を追求しているので,国としては,税制優遇等によるインセンティブの設計や,省庁間縦割りの弊害等の阻害要因を除去するといった側面支援に注力すべきである。また,都市間連携や,例えば「創造地域圏(creative region)」等,歴史的・文化的なつながりの強い地域を対象とした広域連携の枠組みを設定すべきである。
    • ○  創造都市の推進を図る際には,経済的・文化的インセンティブを導入して創造人材の集積を促す必要がある。また,国内外の芸術家が滞在して制作活動等を行うアーティスト・イン・レジデンスの環境整備や,芸術祭等のイベントの活用も有効である。
    • ○  建築,ファッションデザイン,工芸等の創造産業を文化政策の一環としても一層の振興を図っていく必要がある。その際,小規模の事業所で活動する人やフリーランスが多いため,社会保障の充実が期待されるとともに,知的財産,契約に関する教育も重要である。

  1. [4] 観光振興や文化発信に資する環境整備
    • ○  我が国には,暮らしに根付いた文化であって歴史や伝統文化に裏打ちされた潜在的な観光資源が多くある。観光振興の視点を導入することにより,「くらしの文化」を残しつつ地域を活性化すれば,文化の継承のみならず雇用の創出にもつながる。文化的資源を活用して観光振興を図る上では,受入施設・体制の整備が重要である。
    • ○  地域資源の発掘や地域文化の発信は,地方公共団体にとって重要なテーマであり,国としては,広域連携による取組への支援を含め間接的な支援の充実が求められる。
    • ○  海外発信については,「くらしの文化」に関する情報を含め観光に関する情報を外国語で記載した外国向けのポータルサイトを作成することが有効である。また,海外に日本文化を紹介するに当たっては,外国メディアを招聘することや,在外公館,海外駐在員等の協力を得ることも有効である。

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