(5)文化財分野

  1. [1] 文化財の公開・活用の促進及び地域活性化に資する文化財の魅力の再構築・発信
    • ○  社会全体で文化財を守り,継承,発展させていくためには,社会を構成する各層の主体が文化財への理解を深め,関心を持つことが重要であり,文化財の公開・活用についてもこれまで以上に積極的に取り組むことが必要である。
    • ○  文化財の公開・活用の促進に際しては,魅力ある活用環境の整備に加え,安全性の確保や文化財の価値を損なわないよう配慮した施設設備等の整備とともに,文化財の魅力を適切に伝えるための人材の育成や,活動を持続していくための組織作りが重要であり,これらへの支援の充実が必要である。
    • ○  市町村においては,地域の活性化に資する文化財の役割を認識し,地域の文化財を積極的に活用することが期待される。
    • ○  各市町村が,地域の文化財を総合的に保存・活用するための基本的な方針である「歴史文化基本構想」 を策定し,この方針に沿って,地域の文化財の保存・活用を図ることは,地域活性化と多様な地域文化の継承に役立つことから,国においてはそれらの取組への支援を充実する必要がある。

  1. [2] 文化財の持続的な継承及び文化財保護に対する理解増進
    • ○  これまでの指定,登録及び記録選択等の制度に加え,今後,有形及び無形の文化財を通じて,文化財の種別・性質等に応じ,保護対象の範囲の拡大,周辺環境を含めた保護の措置を講ずる方策などについて検討が必要である。
    • ○  文化財を良好な状態に保つための日常的な維持管理,適時適切な修理や防火・防犯・耐震等の防災対策の取組を計画的かつ継続的に実施することが重要で,そのための支援の充実が必要である。
    • ○  次代を担う子どもたちが,文化財に親しみを持ち,文化財の保護に対する理解を深めることは,子どもの持つ個性を伸ばすとともに,感性をはぐくむために重要である。学校教育においては,伝統文化に関する学習指導要領の記述も充実されてきており,関係者と連携し,伝統文化や文化財について理解を深めるための教育やそれらに親しむ機会の充実を図るための取組が必要である。
    • ○  文化財の公開や市民,NPO法人,企業,人材育成を担う教育界等の幅広い参画による文化財保護の取組の充実が必要である。また,国指定等文化財への税制上の優遇措置の一層の充実が必要である。また,NPO法人や公益法人,企業等が地域で行う文化財の保存・活用への取組について,金銭的な寄附,保存活動への参画を含めた文化財保護への多様な貢献に対して支援できる仕組みについて検討が必要である。

  1. [3] 無形文化財や文化財を支える技術・技能の伝承者等の養成
    • ○  伝承者の養成に際しては,技術・技能の研鑽,伝承が図られる機会を適切に確保するとともに,保持者に続く伝承者の養成を充実させていくことが必要であり,各領域の実情を踏まえ,裾野の拡大や研修機会の充実など,新たな養成の仕組みや支援の充実が必要である。
    • ○  無形の文化財や文化財を支える技術・技能の伝承者の裾野の拡大を図るため,学校や研究機関等との連携強化が必要である。

  1. [4] 文化財を通じた国際協力・交流の推進
    • ○  我が国に蓄積された保存修復に係る高度な知識,技術,経験等を生かした文化財保護の国際協力は,現在,国は,文化遺産国際協力コンソーシアムを中心とした取組を推進しており,更にその取組の強化を図ることが必要である。
    • ○  我が国が行ってきた文化財保護の国際協力では,財政上の支援のみならず,海外での文化財の保存修復活動を通じて現地での人材育成を行うなど,現地における効果的な協力を行ってきており,このような支援策の一層の充実が必要である。
    • ○  海外の文化を理解するための取組の強化が必要である。また,伝統的な芸能や技能等も含めて日本の伝統文化を戦略的に海外に発信する取組の充実を図ることが必要であり,そのための支援の充実も必要である。

  1. [5] 文化財行政における各主体の役割と連携
    • ○  将来の世代に持続的に継承するための文化財の適切な保存の取組や,地域の多様で豊かな文化財の保存・活用の取組への支援については,国が主導的な役割を果たすことが必要である。
    • ○  地域の文化財を確実に継承していくためには,地方公共団体が主体となり関係者の参画を得て,域内の文化財を総合的に把握し,保存・活用を図ることが重要であり,多くの者が地域文化の継承にかかわることで,地域の文化的活動が活発化し,地域振興や地域コミュニティの活性化にもつながるものである。
    • ○  地域文化を継承していくための取組を進めるに当たっては,国,地方公共団体,自ら活動に参画する地域の人々やNPO法人等の民間団体等が,各々の役割を明確にしつつ,相互に連携を図ることが必要である。

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