(2)メディア芸術・映画分野

  1. [1] メディア芸術祭の拡充と関連イベントとの連携
    • ○  メディア芸術への理解を深め,芸術としての評価を確立していくためには,メディア芸術祭を質の高いメディア芸術作品を発信する世界的なフェスティバルとして一層の充実を図るとともに,将来にわたって継続して開催していくことが重要である。そのため,賞金額の引上げ等によりメディア芸術祭の賞としての価値を高める,人材育成の観点からメディア芸術祭に新たに新人賞を創設する,現在Web上に開設されている「メディア芸術プラザ」を拡充するといった方策を講ずる必要がある。
    • ○  メディア芸術祭をより一層盛り上げるため,メディア芸術祭の開催期間と同時期に関連イベントが集中して行われるよう連携を図り,それらの企画に対して支援すること(メディア芸術ウィーク等)が考えられる。その際,地域におけるメディア芸術の鑑賞機会の充実を図るとともに,海外のフェスティバルと連携を強化することも必要である。

  1. [2] メディア芸術に関する貴重な作品・資料等のアーカイブの構築
    • ○  過去に日本の浮世絵等の絵画が海外に多く流出したことがあるが,現在でも,マンガの原画等のメディア芸術に関する貴重な作品や関連資料等が劣化・散逸し,又は廃棄される状況にあり,取り返しのつかない事態を招くおそれがある。過ちを繰り返すことなく,これら作品,関連資料等の計画的・体系的な収集・保存(アーカイブ)を行う必要があり,そのためには,公的支援が不可欠である。
    • ○  その際,対象となる分野の性質の違いを踏まえた方策を検討するとともに,国立国会図書館における納本制度も参考にしつつ,各分野でこれまでに様々な大学や団体が保存しているものもあるため,それらと連携を図りながら検討する必要がある。
    • ○  アーカイブの構築には膨大な作業を伴い,短期間での達成は困難であることから,一方で,各分野の作品や資料等の所在情報の集積などを進めることも必要である。

  1. [3] 新人クリエイターによる発表の場の創設等の人材育成の強化
    • ○  独創性を重視した人材育成の観点から,Web上に次代を担う新人クリエイターの作品発表の場を作る必要がある。クリエイター同士のコラボレーションや分野横断的なプログラムの推進も必要である。
    • ○  「作り手」(クリエイター)の育成と同時に,「見せ手」(キュレーター,プロデューサー)や「受け手」(鑑賞者)の育成も求められるため,文化施設におけるメディア芸術に関する専門的知識を有する職員の育成や大学におけるインターンシップの推進など学校教育段階からの人材育成についても考慮する必要がある。

  1. [4] 産業や観光面の振興,研究機能の強化及び国内外への情報発信
    • ○  メディア芸術を振興し,その芸術性を高めることは,我が国のコンテンツ産業の競争力強化につながるとともに,その優れた作品の舞台としての日本に人々が訪れるなどの観光や国際交流の促進に極めて大きな効果を発揮するものである。こうした観点から,産業や観光面の振興をも視野に,映画,マンガ,アニメ等のコンテンツの創作を支援することや関係団体等の連携・協力体制を構築することが必要である。
    • ○  メディア芸術は新しい領域であることから,大学等の教育研究機関におけるメディア芸術各分野の歴史的研究や新旧のメディア芸術に関する分野横断的な研究を振興し,将来的にはメディア芸術学の確立を目指す必要がある。このような研究機能を強化するための仕組み(インスティチュート)の構築が必要である。
    • ○  外国では日本のポップカルチャー人気が非常に高いので,既存のイベントを活用するとともに,海外からメディア芸術分野の留学生や研修生等を積極的に受け入れ,これらの留学生等による帰国後の日本文化の発信につなげるべきである。

  1. [5] 日本映画の振興のための支援の充実
    • ○  映画作品は,商業的作品と非商業的作品に大別できるが,芸術性を主眼とすることが多い非商業的作品の振興のためには,製作費等の支援が必要である。その際,日本映画の多様性を確保する観点から,小規模な作品や新たな企画提案を含む幅広い作品を支援対象とすることも考えられる。一方,商業的作品の振興のためには,税制面での優遇措置が望ましい。
    • ○  映画の振興に当たっては,放送と連携し,テレビ放送を通じた映画の普及がより促進されることが望ましい。また,海外においても放送会社の流通網を通じて日本映画が紹介されることが期待される。国を挙げて映画を振興する観点から,政府と企業が一体となって海外に売り込んでいく姿勢が必要である。

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