文化審議会第12期文化政策部会(第10回)議事録

平成27年3月2日

【内田調整官】  それでは定刻でございますので,これから始めさせていただきたいと思います。まずは,配付資料の確認をさせていただきたいと思います。表に議事次第,それから名簿がございまして,資料1といたしまして,文化芸術の振興に関する基本的な方針(第4次)[答申案]ポイントの資料でございます。資料2といたしまして,同じく第4次の答申案の本文でございます。資料3といたしまして,今後のスケジュールを記した1枚紙でございます。このほか,机上配付資料といたしまして,紙ファイルにとじておりますデータ集の関係資料と,このほか,加藤委員から,きょう,文化は資本だというふうに縦書きに書かれたテーマの国際会議,3月7日,8日に開催の会議でございますけれども,その案内を配付いただいております。
 それでは,部会長,よろしくお願いいたします。

【熊倉部会長】  それでは,ただいまより,文化政策部会第10回を開催いたします。これが今年度最後の部会になりますが,10回も開催してしまったかという感じなのですが,本日も,皆様,大変御多忙のところをお集まりいただき,まことにありがとうございます。
 いよいよ第4次方針の素案が固まってまいりました。皆様方のお手元には,先週の金曜日ということで,週末しか時間がなく,短い閲覧の期間となってしまいましたが,お送りをさせていただいております。こちらに関しまして,皆様方から改めて御意見を頂戴するのが本日のメインの議題でございます。
 最初に,このワーキングについて簡単に私から御説明をさせていただきます。前回,1月19日に第9回の部会がございまして,前の素案をお示しさせていただきました。多数の御意見を頂戴いたしまして,それを反映すべく,2月4日と18日の合計2回,この答申起草ワーキングのミーティングを開催いたしました。後ほど事務局の方から詳細を御説明いただこうと思いますけれども,本日の資料2,全文の資料で,青文字の箇所が前回お示ししたものからの変更点となっております。
 ワーキンググループでは,答申の文案作成に関わられる関係部局の課長などにも御参画いただきつつ,メンバーとかなり本音ベースでの議論が行われました。何よりの大きな目的といたしましては,本日,資料2の表紙にありますが,2つ大きな提案を事務局にさせていただきました。
 1つは,何を目指しているのかをなるべく端的に示したい,サブタイトルを付けるということで,本日,4つの案をお示しさせていただいております。これに関しても御意見を頂ければと思います。また,全体に何を目指しているのかということを簡潔に示す,なるべくインパクトのある前文を1ページ足してほしいというふうにお願いをいたしまして,2020に向けて,今の文化を取り巻く危機的状況を打破していくというメッセージを打ち出そうというふうに試みました。
 その副題としてなのですけれども,ハードだけではなくソフトへ転換するような,何とか趣旨を示したいということなのですけれども,この辺に関しては,また自由討論のときに御説明を申し上げたいと思います。
 また,ワーキングでは,文化芸術が有する社会への波及力で成熟社会の様々な課題解決を促す取組をもっと前面に打ち出すべしというような御意見ですとか,それから,夏の皆様方の,2020に向けての喫緊の課題という中でも,あるいは,関係団体,特に書面ヒアリングなどでも多数の御意見を頂いた,文化芸術の従事者が生き生きと働けるような環境整備が必要という御意見,これがなかなか文言として明確に打ち出すのが難しい部分もあったのですけれども,希望を持って働き,新たな雇用,産業が大幅に生まれているということを目指す姿として,1項目明示をすることといたしました。
 また,近年の社会情勢の記載について,十年一日のごとしという御意見を何とか払拭するために,地方創生2020東京大会,東日本大震災など,最近の社会情勢を反映した課題も盛り込みながら,新しい動きや方向性を示していくよう努力をいたしました。
 また,大きな懸案であるアーツカウンシルに関しては,現在,試行中の国の取組の本格導入はもとより,この地方版をどういうふうに考えていくのか。これはまた来年度以降の,こちらの政策部会での大きな課題になってこようとは思いますが,何とか第4次方針でも一言それに言及できないかということで,地方において多様な主体が文化政策に参画していくような流れを創出するという,やややわらかで曖昧な表現,抽象的な表現ではあるのですけれども,一応,方向性を盛り込むというふうに努力をいたしました。そのほか,1月の部会で皆さんから頂きました御意見も細々と反映をしていただいております。
 全体に,どこまでめり張りのある書きぶりになっているかどうか,また本日,皆さんから忌たんのない御意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,具体的に,事務局から,この第4次基本方針の報告をお願いいたします。

【平林課長】  それでは,資料2をご覧いただければというふうに思います。
 今ございましたように,前回,1月のこの部会からの変更点について中心にお話ししたいと思います。部会からの変更があったところは青字で記しております。下線部は第3次方針との変化,変更を示すものでございます。
 まず,今,部会長からも話がございましたが,副題を設けるべきとの御意見があったということもございまして,ワーキングでも議論いたしまして,ここでは4つの案を示しております。大きく分ければ2つになるかと思いますけれども,ここにございますように,文化芸術立国実現を目指したソフトパワーの育成,案の2としては,育成を展開に替えたというもの。そして,案の3として,文化芸術資源で未来をつくる。そして,案の4として,文化芸術資源で未来をつくるための人材の充実と環境の整備というような案を作りましたので,後ほど御議論をしていただければと思います。
 それから,1枚めくっていただきまして,目次の次でございますが,こちらも前回の部会での御意見を踏まえまして,冒頭にインパクトのあるメッセージを打ち出そうということで,新たに前文といたしまして,はじめにというものを挿入したところでございます。このはじめにの箇所でございますが,それぞれのパラグラフをご覧いただければと思いますが,我が国には世界に誇る有形・無形の文化財があり,それらは世界に誇る資産であるということ,そういった内容を盛り込み,その価値を日本人自身が十分に認識した上で,国内外への発信をすべきであるということ。それから,これからの成熟社会における新たな社会モデルを構築していくことが求められ,文化芸術が教育,福祉,まちづくりなどと一体になりながら,その構築に寄与していくことということ。それから,4つ目のパラグラフでは,他方,過疎化,少子高齢化,昨今の厳しい財政状況等から,地域の文化芸術を支える基盤がぜい弱になっており,危機感が広がっているということ。そして,5つ目のパラグラフでは,文化芸術はこうした課題の解決にも貢献していくといったこと。
 そして,次のページ,3ページ目に,四角の枠組みで,我が国が目指す「文化芸術立国」の姿というものを記載いたしました。子供から高齢者,NPOや企業等,あらゆる人々,あらゆる主体が創作活動への参加機会や鑑賞機会を提供しているということ。そして,2020年東京大会のときには,全国津々浦々で文化プログラムを展開するということ。そして,3つ目として,被災地からも力強く復興する姿を示すということ。そして,4つ目として,新たな雇用,産業が大幅に創出されているということ。そういった文化芸術立国の姿というものを示してみたところでございます。
 続いて,第1の部分でございます。4ページ目以下でございます。
 第1の1の文化芸術を取り巻く諸情勢の変化を踏まえた対応の箇所でございますが,こちらには,地方創生,それからオリンピック・パラリンピック東京大会,そして東日本大震災,グローバル化の進展,それに情報通信技術の発展等といった,昨今の新しい社会の動きというものを記載したところでございます。例えば,5ページ目のグローバル化の進展の箇所につきましては,大学のスーパーグローバル事業を想定した記述を盛り込んだところでございます。
 それから,前のページに戻りますが,4ページ目の2020年の東京大会におきましては,前回の部会での意見を踏まえまして,ロンドン大会での文化プログラムの取組を我が国が参考にすべき事例として記載したところでございます。
 それから,6ページ目の第1の2の部分,文化芸術振興の基本理念等という箇所でございます。(1)といたしまして,文化芸術振興の基本理念でございますが,こちらについて,より具体的に記載したところでございます。例えば,その3つ目に文化芸術を鑑賞,参加,創造することができる環境の整備という箇所がございますが,そちらにおきましては,前回の部会での意見を踏まえまして,文化芸術を創造し,享受することが人々の生まれながらの権利であるということを明記したところでございます。全般的に,文化芸術振興基本法の条項中の理念をここに明記したところでございます。
 それから,飛びまして,8ページ目の(3)の基本的視点でございますが,それの2つ目の公共財・社会包摂の機能・公的支援の必要性の箇所に青字がございますが,こちらのパラグラフにつきましては,前回,部会の意見といたしまして,まずは文化芸術の公共財としての性格を示した上で,公的支援の必要性を記載すべきであり,また,文化芸術の公共財としての性格と公的支援の必要性を共に1つのパラグラフにしてはどうかといったような御意見がございまして,このように修正したところでございます。
 また,ワーキングにおきましては,文化芸術が成熟社会に果たす役割や,国家だけでなく地域への愛着という意味合いもあるということについても盛り込むべきであるというような御意見がございまして,それを踏まえた修正をいたしました。
 コミュニティへの教育価値というような文言の意味がちょっと分かりにくいということで,こちらについては削除をしたところでございます。
 それから,同じく8ページ目の下の国際的な文化交流の必要性の箇所,あるいは次のページの社会への波及効果という小見出しのところですが,いずれも昨今の動向を踏まえた書きぶりにしたところでございます。国際的な文化交流の必要性のところでは,前回の部会において,東アジアの対象を明確にすべきであるというような意見がございましたので,下から6行目かと思いますが,中国,韓国,ASEANといったという言葉を補ったところでございます。
 続いて,12ページ目以下に,第2の部分でございます。こちらの第2の部分というのは,文化芸術振興に関する重点施策ということで,今後の各論として重点化すべき施策を記載している箇所でございます。
 重点戦略1でございます。文化芸術活動に対する効果的な支援でございますが,その中の箱の1つ目の四角でございますが,戦略的かつ工夫を凝らした方法による創造活動というものを記してございます。それから,2つ目のまた青字の部分ですが,各地域の文化芸術活動への支援の方向性について記載したところでございます。続いて,4つ目の四角でございますが,やはり前回の部会の意見を踏まえまして,創造都市やユネスコ等の関係者との交流について記載いたしました。また,地域の諸課題に文化芸術が対応していくというような方向性を示したところでございます。なお,冒頭の前文である「はじめに」の箇所におきましても,文化芸術が社会課題の解決に向かい,政治,社会を構築していくモデルとなるべき趣旨を記載しているところでございます。それから,5つ目の四角でございますが,冒頭,部会長がございましたように,日本版アーツカウンシルについて記載をしております。
 それから,次のページでございますが,次のページの1つ目の四角でございますが,全国の公演,イベント情報を一元化して発信する体制づくりに向けた施策を記載しているところでございます。そして,次の四角でございますが,やはり前回の御議論を踏まえまして,企業等の文化芸術活動を促すということを明記させていただきました。
 続いて,重点戦略2でございます。同じく枠囲みの1つ目の四角でございますが,前段の部分は別の箇所にあったパラグラフを1つにまとめたものでございます。それから,2つ目の四角ですが,学校において芸術教育を充実するというような記載をいたしました。3つ目の四角でございますが,前回の議論を踏まえまして,地方公共団体が主体的に行う取組も読めるように修正を行ったものでございます。それから,4つ目の四角ですが,昨今,指摘されます指定管理者制度の課題も踏まえまして,留意事項の周知について記載したところでございます。
 それから,14ページ目の重点戦略の3でございます。こちらも施策について申し上げますと,2つ目の四角ですが,文化財の活用について記載をしたものでございます。3つ目の四角には,新たな仕組みである日本遺産について記載を行いました。そして,5つ目の四角ですが,ユネスコの世界文化遺産,それから無形文化遺産の推薦・登録に向けた取組について記載を行いました。そして,最後の四角には水中遺産について記載を行いました。
 それから,重点戦略の4でございます。こちらも,1つ目の四角について,こちらは後段に文化交流支援について新たに記載を行ったところでございます。それから,次のページ,15ページをご覧いただきますと,ここの2つ目の四角ですが,アーカイブについて記載しているところでございます。この基本方針が,いずれ内閣の閣議決定をされるということがございますので,文化庁の施策に閉じたような表現ではなくて,国立国会図書館についても触れるというように,省庁横断的に取り組んでいく施策の方向性を意識した記載にさせていただきました。続いて,次の3つ目の四角には,アーティスト・イン・レジデンスといったものについて記載を行っております。それから,4つ目の四角には,ユニークベニューの記載を行ったところでございます。やっぱり前回の議論を踏まえまして,魅力発信という要素を追記させていただきました。それから,5つ目でございますが,こちらには文化遺産保護についての国際協力について記載しております。それから,6つ目の四角ですが,やはり前回御議論があった,東アジア各国との相互理解を促進するといったための施策について記載を行っております。最後の四角には,日本語教育の推進について記述をさせていただきました。
 続いて,重点戦略の5でございます。こちら,2つ目の四角には,アイヌ文化博物館について記載を行ったところでございます。それから,次の四角には,調査研究に基づく政策形成について記載しているところでございます。
 続いて,16ページ目以下,第3の箇所でございます。こちらは,文化芸術振興基本法の骨格に基づきまして,諸施策を網羅的に記述している箇所でございまして,例えばという形で,若干,紹介させていただきますと,まず,(2)メディア芸術の振興,次のページですが,こちらにおいては,メディア芸術に関する作品等に関するデータベース整備等の事業の推進について記載をしているところでございます。
 それから,同じページの(3)の伝統芸能の継承及び発展の青字の箇所でございますが,部会でも御指摘のございました,国立劇場おきなわをはじめとする取組の充実であるとか,国立文化施設間の連携,さらには国立文化施設と地域の文化施設等との連携について記述をしたところでございます。
 それから,例えば,ちょっと飛びますが,26ページ目に劇場,音楽堂等の充実というような箇所を丸々青字で追加させていただきましたが,こちらについては,劇場法あるいはそれを受けた指針といったもので定められている事項を踏まえた記載を行ったところでございます。
 簡単ですが,これが今の基本方針の内容でございます。
 それから,スケジュールについてでございますが,資料の3をごらんいただければと思いますが,本日が第10回の政策部会ということで,こちらである程度まとめていただきまして,今期の文化審議会の総会が次に,3月16日に開かれるということで,そこでやって固めていただいたら,その後に,3月の中旬から4月にかけまして,国民からの意見募集をして,それで4月に答申を頂こうというようなスケジュールを考えてございます。それを受けて閣議決定を目指すというようなことが,まず一応,大まかなイメージでございます。
 以上でございます。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 ということで,駆け足の説明でしたが,じっくりお目通しを頂きながら,まだ時間はたっぷりございます。自由討議に入っていきたいと思いますけれども,初見に近い委員の皆様方もいらっしゃると思いますので,まずは,ワーキングのメンバーの方々からどうかと思うのですが,ちょうど,またお1人,ワーキングのメンバーが。では,大林委員,ありがとうございます。

【大林委員】  やっぱりどうしても全部網羅していこうということになるので,こういうことになると思いますけれども,そういう中でよく,割と今までより,めり張りが出てきたのじゃないかなというふうに感じております。
 ただ,あえて言いますと,例の,一番冒頭のキャッチというか一言ですね。もっとシンプルに,例えばですけれども,文化で未来をつくるとか,そういうふうにして,文化芸術資源で未来をつくるというと,くどくなってしまって,そこで余り言ってしまうと,かえってその後が,どれなのだということになるので,何か文化で未来をつくるぐらいのほうが,私は,シンプルで好きなのですが,その辺は多少,言葉の好みの問題もあるのでお任せしますが,サブタイトルも付くんでしたか。

【熊倉部会長】  この4案のあたりから,これがサブタイトルです。表紙に書いてあります。

【大林委員】  そうですね。例えばの話ですけれども,はじめにのところで具体的にこういう形で書く方が,よりインパクトがあるのじゃないかなという気がしたものですから。余計なことを言いました。

【熊倉部会長】  いえいえ。ありがとうございます。ほかの委員の方でも,あるいは,片山委員,いかがですか。ワーキングの感想も含めて。

【片山部会長代理】  自分たちで議論をしてきたので,かなり飽和状態になっていて,何を言ったらいいのか分からないところもあるのですが,ただ,今,大林委員がおっしゃった,文化で未来をつくるというキャッチコピーだと,ある意味,言わなくても,もう,それはそもそもの前提であると思います。基本的な方針ですので,文化で未来をつくるに当たって,どこに焦点を当てるのかという点を言わないといけないというふうにワーキングの中では議論をしたのです。そのときに,ハードではなくてソフトの基盤を作ることが重要だというところで,この言葉遣いをいろいろ模索したというところがあります。その辺,どうお考えになりますか。

【大林委員】  そうしたら,それはそれでいいと思うのです。もしそうであれば,でも,そうしたら,文化の基本はソフトだとか,文化をソフトで基盤づくりとか,何かそういうことを言えばよかったのに,文化芸術資源で未来をつくると言うと,どれなのだ,芸術なのか資源なのか文化なのか何なのだろうというふうにかえってなってしまうような気がして,何を言いたいのかという。例えば,文化で未来をつくると言うと,本当にかなり未来にウエートがかかってくると思うのです。ですから,子供たちの教育のこと,福島,これからどういうふうな,我々はそれを文化でつくるのだという意気込みが割と感じられない。でも,そこに,もし,おっしゃるような意味を入れるのであれば,そういうソフトで基盤づくりということをシンプルにぽんと入れたらいいのではないかなという気はしますけれども。

【熊倉部会長】  ちょっとこの副題,なかなか大変らしくて,これは基本方針なので,全省庁で了解されて,閣議決定をされなければいけないものです。ソフト基盤整備みたいなことを一旦御提案したのですが,それだと,じゃ,ハードは要らないのねとか,いろいろ問題があるという意見もあるようです。
 ソフトパワーという苦肉の策が,これは事務局からの御提案なのですが,ただ,ワーキングの中ではソフトパワーと言ったときに,一般的には国際外交における,軍事以外の,非常に外交寄りに見えるのではないかと。むしろこの部会では,もちろんそうした側面も強く意識しながらですけれども,そういった外向けの行け行けの姿勢だけでなく,その地域創生における人的資源をとにかくきちんと優遇していきたいというのが1つの大きな指針なので,そういう意味で,ソフトパワーなのだけれども。
 それからまた,この基本的な方針を一番熱心に読んで,影響を受けるのは誰だろうというふうに考えたときに,恐らく地方自治体の文化振興の担当者の方々であろうと。その方々にとって,ソフトパワーと言ってしまうと,ああ,何か国際関係の話ねというふうに思われてしまわないかと。そういうことであるならば,でも,この言葉がキャッチーであることは事実なので,来年度以降,この文化施策部会では,そのソフトパワーの意味や,さらなる具体策みたいなのを話し合っていくということもあり得るのではないかと。
 その文化芸術資源と,これは簡単に文化資源と言えるといいのですけれども,一般的な言い方ではないようですので文化芸術資源としております。このタームなら使えそうです。単に文化で未来をつくることにして,もちろんソフトパワーにするとか,これをいじくり回すことは不可能ではないかなということですが,単に文化ということではなくて,それを資源として捉えて,どう展開していくのかというのが,1つ,社会課題ということも含めて,今回のこの方針の大きな1つの方向性かなと考えます。また,人材の充実と環境の整備という言い方だと少し長いですね。

【大林委員】  皆さんの意見を聞いてみないとですからね。

【熊倉部会長】  はい。副題についての大体の御説明はこれで以上です。副題に関する御意見でも,中身の表記に関する御意見でも。河島委員,お願いします。

【河島委員】  副題のところなのですけれども,私,3番がシンプルで分かりやすくていいかなと思っているのですが,先ほどからソフトパワーというのが,これはちょっと,通常の,御説明いただいたソフトパワーという言葉の理解と逆というか,違うと思うのです。文化芸術がソフトパワーの源泉の1つであるというのがジョセフ・ナイ式のソフトパワーという言葉のもともとの言い方だと思うので,ここで,ソフトパワーでなくて,ソフト面というのはようやく分かったのですけれども,そうだとすると,ソフトパワーという言葉をここで,いわば勝手に変えているのですね。
 そこまでやるのはやり過ぎなのではないかなという気がしていまして,それで,4番は長過ぎるから,それだったら3番が比較的シンプルで分かりやすくて,これをベースにもう少し加えるのなら加えても多少はいいと思うのですけれども,4番は何をするための何々と何々というので,ちょっと長いなと感じています。

【加藤委員】  まあそうなのですけれども,私も関係した本の中で,表題にソフトパワーというのを使った本があるのですが,そこは明らかに意識して,この用語を変えて使ったと。つまり,どういう言語も,最初に使い始めた人がある程度の定義をするわけで,クリエーティブインダストリーにしてもクリエーティブシティにしても,それは誰かの定義はある。しかし,今日使われている使い方というのは,それは相当幅が広がり,あるいは変化してくるので,言葉の定義は変化するものなので,それを意識的に変化さてもいいのかなというふうに思います。3でもいいのですが,3では,余りにも何を言いたいかが,逆に漠然とし過ぎているのではないか。1はあり得ないというのは,私も直接,内田さんに申し上げたところで,育成という用語はともかくやめてくれということは申し上げました。
 なので,そこは御議論いただいたらいいと思うのですけれども,全体に,今回,拝見して,非常によくまとまったかなと思います。大変ワーキングがよく機能したのではないのかなと,その点は高く評価したいと思います。
 それで,その上で,文言は余りもう変えられないようではありますけれども,あえて1つだけ,2ページ目の冒頭に,我が国は,世界に誇るべき有形・無形の文化財と言って,フレーズの2番目に,こうした日本の文化力は世界に誇る資産でありと言って,この世界に誇るというのを2回続けて表現されているトートロジーは,つまり,文化芸術的センスから言うと美しくない。そもそも我が国には,例えば世界的に見ても豊かな有形・無形文化財を有しているから,したがって,こうした日本の文化力は世界に誇る資産だというような表現が論理的なのではないか。お気持ちはよく分かりますよ。どうしても世界に誇りたいという気持ちは大変よく分かりますが,そこはちょっと整理された方がはるかにインパクトを持つのではないか。
 これはテークノートだけしておいていただいて,特に反映するのは難しいでしょうから,しかしながら,是非テークノートしていただきたい点がもう一点ありまして,17ページで国立劇場おきなわについて入れ込んだということを先ほどあえて取り上げて御説明も頂いたので,この点は大変有り難いなというふうに思っておりますが,やはり沖縄の文化振興を今,相当,重点的に図っていくべきであるということについては,本来,第4次の基本方針の中に書かれるべきだったのではないかと思います。それは日本の全体の政策の観点からいっても,特に文化において沖縄を応援しているというメッセージを発信しておくことは,文化政策上の戦略的にも非常に機能する可能性があったのではないか。これが触れられていない点は残念だと。だから,是非,触れられるべきだという,議事録にだけ残していただければ,それで結構なのですが,将来,たとえば2年後にご覧になったときに,何だ,言っていたじゃないかと。それを十分反映できなかったということを反省していただくために,今,申し上げているわけです。
 以上です。

【熊倉部会長】  ほかにいかがですか。
 そうなのですね,多分,ソフトパワーはアサヒ・アートフェスティバルの本からはきっと,どちらかというとジョセフ・ナイよりはAAFの本から着想を得られたのじゃないかと推察をいたしておりまして,そういうふうに読み替えていくことは,でも,来年に向けた宿題がくっ付いてきちゃうのかもしれません。

【大林委員】  ただ,キャッチで全てを表現しようというのは無理な話であって,キャッチはやっぱりいかに人を引き付けるかという,もちろん,それが中身と相違があってはいけないわけですけれども,ですから,やっぱり全部を表す,全部にこれがフォローしなきゃいけないと思うところに無理があるのではないかなと。ただ,やっぱりキャッチがないと何なのだというのでぼやけてしまうから付けようよということだったのではないかなという気はします。

【熊倉部会長】  そのソフトパワーにしても,文化芸術立国実現じゃなくても,文化で未来をつくるソフトパワーとかでもいいのかなと,今のお話を聞いていて思ったのですが,他に御意見いかがでしょうか。じゃ,吉本委員,お願いします。

【吉本委員】  今の熊倉部会長の案に近いのですけれども,折衷案として,ソフトパワーという用語をジョセフ・ナイの定義にこだわらずに使うことを前提に,文化芸術のソフトパワーから未来をつくると,という案はどうでしょうか。文化芸術資源で未来をつくるよりも,ここは「で」よりも「から」の方がいいと思うのです。文化から未来をつくるとか。でも,文化の中でも,この基本的な方針の中には,いわゆる人材とかソフトが重要だということを訴えているので,文化芸術のソフトパワーから未来をつくると,1つ案を考えてみました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。同じくワーキングにお集まりいただきました湯浅委員を主体に,いかがですか。

【湯浅委員】  過去2回のワーキングと前回の部会に参加できなかったので,その前の議論から振り返ってみますと,かなりいろいろなところが整備をされて,ここの素案のところに来たなというふうに見ておりまして,参加できませんでしたが,関わった方々,大変お疲れさまでしたと思いました。
 今のこのソフトパワーなり,ここのキャッチのところについては,やはりどうしても,先ほど加藤委員がおっしゃった,意味が変わっていってもいいということもよく分かるのですけれども,そうはいっても,これだけぽんと文字で見る人の数というのは,非常に大きな数がいることを考えますと,いろいろな見方があるもの,特にソフトパワーというところ,外交との関係で一般的には考えるので,あと,これが英語になっていくことも考えると,一般的な通念とはちょっと違うものをここでぼんと持ってくるのは危険があるのかなと個人的には思いました。
 この中で言えば,3番目の未来をつくる視点というのは,文化芸術からなのか,文化芸術でなのかは議論していたと思いますけれども,将来をこれから,今,作っていくのだというところに日本が全体的に立っている中では,とても力強いのではないかとは思いますので,この方向性で,もう少しいい言葉があるといいのかなというふうに思いました。

【熊倉部会長】  文化で未来をつくるのは当たり前のことだと思うのですけれども,余り当たり前のことを言ってもインパクトがないと思うので,この第4次方針の,人をきちんと配備していく,あるいはそのアーツカウンシルを含めた制度を新しく作っていく,この2つが2020に向けて,そして,その2つを活用するためのアーカイブという発想,この3点が,一応,夏の中間方針で出したときの論点だったと思うので,その3つが全く反映されない副題だったら,なくてもいいのかなという気もするのですが,何かほかの御提案もあればお願いしますが,太下委員,いかがでしょうか,副題だけでなく。

【太下委員】  私もワーキングに参加させていただいて,いろいろと議論をさせていただきました。取りまとめに当たられました内田さんをはじめ文化庁の皆さん,大変御苦労さまでした。
 2点,副題じゃないのですけれども,この場でお話ししておいた方がいいかなと思うことがあります。
 1点目は,今回ワーキングで関わって,これが閣議決定の文書になるというようなことで,非常に重たいものだなということを実感いたしました。御説明はあったかと思いますけれども,そんな簡単に自由な文言がここに盛り込めるわけではないということで,内田さんをはじめ文化庁の皆さんにはだいぶんと御苦労いただいたのだと思います。
 ということは,逆に言うと,ここに書いてあることは,本来,この文化の領域で語りたいこととは,またちょっと表現が違っているということだと思います。そういった背景を知らないで読まれると,表面的なフレーズになっているとか,言葉遣いが官僚的であるとか,そういうところも多々あるのかもしれません。
 なので,この第4次基本方針は,これからパブリックコメントを受けたり,オーソライズしていくプロセスがあるかと思いますけれども,オーソライズされた暁には,この第4次基本方針というものをベースに,実際に血肉の通った政策に仕立てていくことが必要だと考えています。そのためには,この第4次基本方針のテキストを積極的に読み替えていくという作業が是非必要になってくると思います。
 例えば,この部会で私が何回も申し上げている「地方版アーツカウンシル」についてです。12ページ目の重点戦略1の文化芸術活動に対する効果的な支援というところで,アーツカウンシルに関する記述があります。この日本版アーツカウンシルの本格導入を図るということについては,下から3つ目の四角の部分で書いていただいていますし,さらに,その3つ上に地方の話を書いていただいているわけです。けれども,ここでは本来,中央政府が作る日本版アーツカウンシルと,さらに,それに対応するような形で,全国で地方版のアーツカウンシルというものをどんどん立ち上げていくことが必要だと考えます。それを文化庁としても側面支援していくというような政策とすることが,両輪のアーツカウンシルという形で非常に望ましいのではないかと思うのです。けれども,ストレートな表現はこの第4次基本方針には盛り込めていないわけですね。そういった意味でいうと,この第4次基本方針がオーソライズされた暁には,オリンピックの文化プログラムというのも実現していく上でも,地方でのアーツカウンシル作りというものを具体的な政策として立案,実施していくということがあらためて必要になろうかと思います。
 同様に,その前のページの10ページ目,11ページ目で,成果目標,成果指標というのも書いてありますけれども,これも御説明があったかもしれませんが,実は,ここに書いてある成果指標というのは,この第4次基本方針に列挙されていることを淡々とやっていけば,おのずから達成できるという性質の指標ではないわけですね。国民が文化を誇りに思う比率であるとか,訪日外国人の旅行者数とか,どちらかというと,これら第4次基本方針に書いてあることは,もちろんやっていくことは当然のこととして,更にそれが2次,3次のような形で効果が波及していく中で達成されるような目標がここに列挙されているわけです。
 閣議決定の文書としては,こういったところに具体的なアウトプット,要するに,平たい言葉で言うと次の年度の予算確保に関わるような指標は書きづらいという御事情もあったかと思うので,ここに具体的なPDCAの目標になるような事項が書いていないわけですね。そういった意味でいうと,今後のPDCAに関しても,この第4次基本方針がオーソライズされた暁には,実際,これをPDCAに回るような形のものにもう一回仕立て直していくという編集作業が必要になると思います。
 とりあえず,ワーキングにも参加して,この取りまとめに参加した立場で,2点,この場で意見を言わせていただきました。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 ほかの皆様方,いかがでしょうか。どなたからでも。劇場法に関しての,26ページから27ページにかけて大きな記載が付加されておりますが,相馬委員,いかがですか。

【相馬委員】  前回お話しさせていただいたことが3点ありまして,それを具体的に盛り込んでいただき,ありがとうございました。前回,東アジアの地域を具体的に書いた方がいいということ,それから,多文化社会への配慮ということ,それから,芸術文化の担い手たちの雇用増大という3点についてフィードバックさせていただきまして,それを内田さんから頂いた案の中でかなり具体的に示していただいて,皆さん,いろいろ御苦労があったと思いますが,ありがとうございました。
 それで,私から,まず2点,気がついたことを,質問も含めてお話しさせていただきたいと思います。
 まず,4ページ目ですけれども,東日本大震災のところ,一番下の項目です。この最初の文章をちょっと読んでみましたが,これを契機として,日本全国の地域社会が抱える課題を解決しと書いてありますが,ここが,震災復興から日本全国の地域社会の抱える課題を解決するという,ちょっと飛躍があるのかなという気がしていまして,もちろん,おっしゃりたいことはよく分かるのですけれども,そもそも芸術文化が地域社会の抱える課題を直接的に解決するだけではないといいますか,それは結果的にそういうことがあるかもしれないけれども,むしろ芸術文化はそういった社会的な課題を顕在化させるであるとか,多くの人に気付かせるということが重要かと思いますので,ここを少し言い方を変えて,例えば,課題を顕在化しですとか,あるいは,課題への新しいアプローチを提示しというような言い方に変えた方が,より伝わりやすい文章になるのではないかなということを思いました。でも,実際的にそれが課題解決につながっていく道筋を示すことも,もちろん,こういった大きな基本方針では重要かと思います。
 それから,2点目ですが,15ページです。アーカイブのところです。2点目ですが,こちらのアーカイブの文言に関して,既に映画,音楽,アニメ,漫画,ゲーム,デザイン,写真,建築,文化財等とありますが,ここに舞台芸術がないのは,何かきっと理由があるのだとお察ししますが,今年度の審議会で何度か私からも,舞台芸術のアーカイブが今こそ重要ではないかというお話をさせていただきました。もし,特別な御事情がないのであれば,是非,舞台芸術という文言を入れていただければと思います。

【熊倉部会長】  この点に関しては,たしかワーキングでも,演劇,パフォーミングアーツが抜けているという指摘はさせていただいて,ただ,そのアーカイブに関する具体的なイメージが,なかなか担当部局と我々のイメージとの間で,いろいろ千差万別あり得るというような議論も,かんかんがくがくさせていただいたのですが,これは結局,入らなくなっちゃった御事情がありますか。

【加藤課長】  ご指摘のありました舞台芸術について,取り組んでいく可能性は十分あると思っております。どのような文言を具体に盛り込むかという点については,また御相談させていただきたいと思います。

【吉本委員】  であれば,演劇,舞踊,あるいは舞台芸術と入れるべきなのじゃないですか。抜けているのは,私もやっぱり変だと思いますよ。

【大林委員】  ちなみに,これは,例えば現代美術みたいなのはどこへ入るんですか。

【吉本委員】  その点はワーキングでも議論したのですけれども,美術館,博物館等があって,美術資料については,そちらでいわゆるコレクションという形でアーカイブがかなり進んでいるだろうということで,ここには入っていないんだねという,たしかワーキングでは議論があった気がします。

【大林委員】  しかし,現実には,近代は結構,コレクションとして美術館等に収まっているけれども,現代はほとんどないですね。しかも,いい現代美術というものは,ほとんど日本の美術館ではコレクションもされていないし,アーカイブ化もされていないので,やたら,ここにはアニメ,漫画,ゲームは目に付くけれども,何でパフォーミングアーツ,舞台芸術とか,現代美術とか,そういうのがないのかは,私もこれは大変不思議です。

【熊倉部会長】  これは恐らく,アーカイブに関する,正式には何でしたか,私と太下委員で様子見に伺わせていただいたアーカイブに関する会議がありまして,そこの議論を踏まえていらっしゃるのだと思います。
 それと,イメージの違いとしては,今,大林委員もおっしゃったように,文化庁は非常に責任感が強くて,ここを記載しちゃうと,実際の物を集めなくちゃいけないというイメージが非常に強くて,そこまで今すぐやるとは言えないというようなちゅうちょがあるようで,劇場,音楽堂などに関しては,パフォーミングアーツに関してはそういうものがあるので,恐らく,このイメージの違いとして,消えてなくなっちゃうものに関してのイメージが強いのかなと。きちっとした,割と専門施設があることに関しては,とりあえずはそこなのじゃないのと。我々はむしろ情報としてのアーカイブというイメージが,委員は強いので,どんな分野だってできるのではないのというところで議論は平行線のまま。これも来年度以降の持ち越しということなのですけれども,そういう意味で,いろんな分野をちゃんとここに網羅しておいて,そんなに大変なことはないのではないかとワーキングでは申し上げているのですが,なかなか庁内調整の御関係などもおありなのでしょうか。もう一度,再度,御検討を頂いて,御相談をさせていただきましょうか。

【加藤課長】  十分検討させていただきたいと,文言も考えさせていただきたいと思います。

【熊倉部会長】  平田委員,お願いします。

【平田委員】  加藤委員から,いつも沖縄に対する力強いお言葉を頂いて,本当に心強いです。また,そういうふうな使命をしっかり担っていけるだけの,沖縄も頑張っていきたいと思っています。
 今,2点だけ少し,サブタイトルの部分では,僕は案の3番ですね。これは意外に,今,いろいろ意見をぐるぐる回しながら,聞きながら,結論からいくと,これはいいなというふうに思い始めています。というのは,1つは,やっぱり資源という言葉をあえて使うことで,これだけ議論が出るということは,どなたがこの資源という言葉を出してきたかは分かりませんが,非常に面白いなと思っています。人も資源だと。地域の環境や,地域にある自然も含めて,みんなこれは資源なのだというふうな位置付けで考えるならば,これまで,ある意味,教育庁をはじめ,文化財中心としてきた,いわゆる文化振興に,文化の産業化ということをもう一歩進めるには,文化を資源としてしっかり捉えていくという考え方はとても面白いなというように思っています。
 一方で,象徴的な資源といいましょうか,シンボリックキャピタルというような言葉が沖縄では結構使われていて,要するに,これからの沖縄は,人作りというのは,シンボリックキャピタルを目指していくと。そこにその人がいるから,その人がいるということで地域力を上げていくというふうな人作りというのを目指していこうというのは,結構,若い間でも話が,議論がされているのです。それを若いアーティストが,歌を歌うアーティストたちがそういうことを言い始めているということを考えてみますと,非常に僕は,人が輝くことによって地域が輝くというようなことは本当に重要だろうと思っていますので,そのキャピタルという言葉から資源というような意味合いというのも,とても自分の中では,もしかすると,これはすごく先に行っている,なれている人からすると,そうでもないと思うかもしれませんが,若い人からするとエッジが効いているというふうに思うのかもしれないなという気がしました。ですから,人であり,地域であり,国であり,そういったものを作っていくという意味で,資源という言葉をあえて入れていくというのは面白いと思いました。
 そして,未来という言葉も,この中に人とか地域とか国とか,全部入ってきますので,まあシンプルに文化芸術資源でなのか,文化芸術資源がなのか,未来という言葉があれでしたら,次の世代を略して次代と言うこともありますけれども,そういうふうに次を何か作っていくというような位置付けならば,短い案3も非常にいいなという気がしました。全部を語らなくても本当はいいのかもしれません。むしろ,こういうふうな形で大事なポイントが何だろうと思って,中をしっかり読ませてもらうということも大事かもしれません。
 ということを考えると,2ページで若干気になったのが,1つ,2つ,3つ,4つ,5つと,5つのブロックで,これは文言がくくられているわけです。資源と言った割には,余り資源力が,なかなか見づらい文言になっているなということをちょっと感じています。1番は主に地域とか地方の祭りとか伝統文化,あるいは幅広い文化の活動ということをうたっていると思いますが,2番は唯一,文化力とか文化の資産という言葉でここはつづっているのですね。3番に地域作りとか教育とか福祉が今後文化とつながっていくということが非常に重要視されているのですけれども,問題はブロック4番だと思うのです。全てネガティブな言葉でつづられていて,ネガティブな言葉が続いてきて,危機感が広がっているということに対する,そのフォローアップというのが4と5の間にもう一つないことには,いきなりオリンピックに飛んでしまっていると。本当に文化芸術資源という言葉をここであえて使うのであれば,この4番のネガティブの間に,ゆえに,この文化芸術が果たせる役割が大きいというようなことを1つ入れ込んだ後に,その契機として2020年の東京オリンピックを目指していくというようなくだりになっていかないと,はじめにの5つのブロックというのは,一つ一つが切れ切れのような内容になっている可能性があるのではないかというふうに,今,皆さんの議論を聞きながら改めて読み返してみると,その辺の文脈が見えたものですから,もしよろしければ,一意見という形で捉えてもらえばと思います。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 武内委員,お願いします。

【武内委員】  恐れ入ります。
 まず,副題のところですけれども,ちょっと委員という立場を離れて,一般国民としてのイメージで言うと,当たり前かもしれませんが,改めて 文化芸術資源が未来をつくる,ああ,未来が文化芸術でつくられるんだ,というもので,ハードが話題になることが多い中で,文化芸術と未来がつながって出てくるというのはいいなと思いました。あわせて,ソフトという言葉が入ると,やはりハードに対するソフト,ソフトイコール「人」というのは,すごくイメージがしやすくなります。その意味で,ソフトパワーという単語の問題は先ほどございましたけれども,ソフトである文化芸術,ソフトである人の力が未来をつくるのだ,ソフトが関係して,それが重要なのだというふうなことでいくと,非常にその2つのワードは印象に残るのではないかなというふうに思いました。それがまず,一点。
 次に15ページ,これは細かなことで申し訳ありませんが,ちょっと専門の部分ということで,MICEを四角の4つ目で使っていただいているのでお話しします。MICEという単語がいろいろな定義で使われているのは存じ上げています。いくつかのパターンもある。観光庁さんはどちらかというと「C」の意味としては「コンベンション」を使っていらっしゃいます。そちらの方が,「カンファレンス」よりもちょっと意味が広いのです。ですので,コンベンションという言葉の方がより良いということと,エキシビションも,エキシビションとイベントと両方挙げてほしい。というのは,文化に対してはイベントの方が関係することが多いので,より,こちらが表現としては良いのではないかと。エキシビションははずせないので,エキシビション,イベントという形で,アンドでつなぐか,何らかのことをしてイベントを入れていただければということ。
 もう一点,誘致を強調していただいているところがあるのですけれども,もちろん誘致の魅力としてということが1点と,あわせて,開催時の発信力として文化芸術を扱うのも非常に重要なポイントです。 たとえ,誘致するときに使っていなくても,誘致が決まった段階で文化を発信するという使い方もできますので,是非,誘致だけでなく開催のときのパワーというのでしょうか,そういうふうなコメントも含めていただけると有り難いと思いました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 大林委員,そろそろお時間ですが,言い残しておくことは。

【大林委員】  いやいや,サブタイトルの件は,先ほど平田委員がおっしゃったとおりだと思います。非常にうまくフォローしていただいたなと思って,確かにそういう意味にもとれますし,そういう意味だから,この3はやっぱりいいかなというふうに,ちょうど思っていました。だけど,やはり先ほどのところは,是非,このジャンルのところですね。だから,余り逆に細かく書くと,あれが入って,何であれが入っていないという話になるので,かえって,そのほかというふうにしてしまうかしないと,今みたいに議論になるし,逆に,我々からしてみると,入っていたからそれをフォローしなきゃいけないというよりも,むしろ入っていないことの方が,やっぱり意味が大きいので,ですから,実際には実施できなくてもいいから,ちゃんと入れておいてもらわないと,位置付けから落ちるというのは,いかがかなという気がします。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。
 宮田委員,お願いします。

【宮田委員】  短いのがいいです。何年か前に,私は,凛とした国日本という言葉をこの委員会の中で,皆さんの前でじかに糾合して,それを当時の長官に見せて,これこそが文化立国日本だろうということを言いました。その章は青柳長官になってからは外されましたけれども,決して,それは恨みで言っているわけではなく,次々と新しくなっていくのかなと思っておりました。
 もう一つ,違う提案をさせていただければ,よろしいでしょうか。実は,文化芸術,このようなものは,まさしく人が作ったものですので,その作ったものも含め,人も含めて,顕彰するということがとても大切だと思うのです。日本は顕彰制度がとても下手です。フランスはとてもうまい。あそこの部分に関して,私どもは,ほかは学ぶことは余りないですが,顕彰に関して,特に文化や芸術をやっていらっしゃる地域の方々のことをみんなで顕彰する意識。そうすると,皆さん,見てくださいよ。30ページの最後の最後に,たった2行しか書いていない。これ,ついでだろう。
 もっと,例えばサルトル,どの分にしても何にしても,非常に皆さん,頂いた顕彰のものをここの襟章に何かして,略章として,凛として皆さん,もらった方が付けていらっしゃる方がいらっしゃいますよね。日本の顕彰は半年しか寿命がないのです。春の顕彰で,秋の顕彰のときは,もう忘れ去られている。そういうものではないのを,できれば,実は私,賞勲局の仕事もしているものですから余計なのですが,この文化庁から世にフジの中に入れていったらいいのかなと。そうすると,より,実際にお仕事をなさっている方,ボランティアの方々にも,非常にプライドというのでしょうか,そういうものが出てくるのかなという感じがしました。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。また違う視点から,大所高所から御意見を頂きました。
 三好委員,お願いします。

【三好委員】  副題の議論に参加をさせていただきたいと思いますが,先ほど来のお話を伺っていて,副題を付ける意味が何なのか。法律に基づく基本方針で,5年ごとに出てくるわけですね。今回,それを誰に読んでもらいたいのかというと,先ほどお話にあったように,地方自治体の人々に読んでほしいというのが1つ。
 それからもう一つは,閣議決定をするという意味で,各省庁の皆さんです。自分たちに関係ないから意見を言わなくていいやと思う人もいるかもしれないし,逆に,そういうのを閣議決定されるのだったら,自分たちもちょっと相乗りしようかという人たちもいるかもしれないので,むしろ,そういう人たちを広く,これから文化芸術の中に取り込んでいくというのも1つの方法ではないか。既に部会でも御説明を頂いた,外務省とか経産省とか総務省とか,皆さん乗ってきてくれているので,これをもっと広げていくということも,1つ,これを閣議決定して出すということの意義ではないかというふうに思っております。
 その2つのことから考えると,議論で出ている案の3をベースにした考え方,もちろんソフトパワーという言い方も非常に良いのですけれども,やっぱり直接分かりやすくという意味でいうと,案の3をベースにするというのがいいのかなと。
 案の3とすると,もともとのタイトルが文化芸術の振興に関する基本的な方針ですから,ここであえて,また文化芸術と言う必要もないし,逆に資源の形容詞として文化芸術が付いてしまうと,資源に制約を課しているかのように思われてしまうので,むしろ,ここは逆に,いろんな多様な資源,つまり地方にはいろんなものがあるでしょう,あるいは,各省庁の政策にはいろんなものがあるでしょう。そういう多様な資源で,その資源から未来の社会を作っていくというふうにした方が,自分たちもそこに参加して一緒にやっていくのだという機運を醸成できるのではないかというので,私の案としては,「多様な資源から未来社会を創出する」というのが地方自治体及び各省庁の皆さんに分かりやすいのではないかというので提案をしたいと思います。
 それから,もう一点は,その副題と関係してくるのですが,今更言って申し訳ないのですが,そもそも,この2ページの「はじめに」は必要なのでしょうかねという気がするのです。というのは,先ほども出ていましたが,2ページの最後も2020東京大会になっているし,3ページの(4)も2020東京大会になっているし,4ページの2つ目のパラグラフも2020東京大会,何かそこばかりに話が行ってしまう。結局,同じことを繰り返して言っていることになってしまうので,そもそも2ページの「はじめに」というのが本当に必要なのでしょうかねというのがちょっと疑問です。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。2ページのはじめには私のたっての希望でお願いしたので,今となって,削除することはできませんが,何回も考え方を明示しておかないと,2020はかなり危ないですからね。勝手にやっておけというふうになりつつあるかなという気もしますが,じゃ,吉本委員。

【吉本委員】  すぐ人の意見に左右されちゃうので,私も案3がいいような気がしてきました。ここで資源という言葉を使うと,これは何だろうという,ある種の投げ掛けにもなると思うので。ですから,それに文化芸術を付けるか,三好委員がおっしゃったように文化芸術を繰り返さないために多様なというふうにするのか,そこは議論を経て決まっていけばいいなというふうに思いました。
 そして,はじめにというのは,私もこれはメッセージとして,繰り返しになったとしても,あった方がいいと思います。そして,例えば,文化芸術資源で未来をつくるというのがサブタイトルになった場合には,はじめにというと,いかにも頭にある前書きになっちゃうので,文化芸術資源から未来をつくるためにというふうなタイトルにする。そして,先ほど平田委員からあった,4段落目と5段落目の間に,文化芸術資源あるいは資源のことについて,どこにも記述が出てこないので,このはじめにのパートの中の5段落目に,こういう危機感が広がっているので,日本の新しい未来を作っていくためにも文化芸術資源をしっかり活用してやっていかなきゃいけないみたいなことが入るといいような気がしました。
 はじめにというのは,前の3次方針を見ると,こういう文章はなくて,この四角の枠の中で,この基本的な方針の文書がどういうものかという説明があるだけですね。だから,ここにこういう文章があるのは,僕はメッセージとしてはすごくいいような気がいたしました。
 それとあと,全体的なことと,細かな文言のことで幾つかあります。全体的には,この今のはじめにのところと,それから最初の社会を挙げての文化芸術振興のあたりが非常に強くメッセージが出ている気がしまして,大変いいと思いました。
 それと,全体的に言いますと,重点戦略の中の,重点的に取り組むべき施策がたくさんあって,これは1次方針,2次方針,3次方針と見ると,どんどんこれが具体的になっている気がいたします。そして,こんなにたくさんあると,来年度以降,楽しみだなというふうな気もいたしますが,ここはやっぱり,しっかり書いておいていただいた方が,より具体的なものにつながると思いますので,その点もいいと思いました。
 その上で,幾つか文言に関してなのですけれども,まず,4ページ目の地方創生の2つの段落目の最後のところで,2020年には大幅に増加させると。これは2020年だけ増加しているというような感じがするので,2020年に向けとかの方がいいかなと思いました。
 それから,その次の東京大会のところの2つ目の段落のロンドン大会の説明なのですけれども,2行目に文化や魅力を紹介すると書いてあるのですが,このまま読むと,イギリスの文化だけ紹介しているように読めるので,2行目の音楽の前に,世界各国のというふうに付けたらどうかと思います。世界中からアーティストを招へいしたはずで,日本も日本の文化を発信するだけではない方がいいと思いますので,そういうふうに入れたらどうかと思いました。
 それから,続いての行の一番後に,2020年東京大会等の,この等は具体的に何を指すのですか。その下の行にも,文化プログラム等とあり,その下の行には,芸術家等との連携のもと,地域の文化等と,等が4つも出てくるのですね。なので,ここに特別な意味がなければ,例えば2020年東京大会等の等は取ってもいいのではないかなという気がいたしました。
 それから,その同じパートのリオ大会で始まるところのスポーツ・文化・ワールド・フォーラム,これは非常に細かいのですけれども,文化の次の中黒はなくていいような気がするのです。これだと,スポーツと文化とワールドのフォーラムになるような気がしたのですが,どうでしょうか。細か過ぎますか。ちょっとそこが気になりました。なくてもいいかなと思います。
 それと,続いて5ページ目の一番上のところの2行目なのですけれども,その前の行の最後から読むと,訪日外国人が,力強く復興している東北地方を訪問し,地域の文化芸術の魅力と一体となって体験する。このまま読んじゃうと,外国人が一体となってと読めてしまうので,例えば地域の文化芸術の魅力と一体となった復興の姿を体験してもらうとかにした方が,ここで伝えたいことがより明確になるような気がいたしました。
 最後に,これはこの基本的な方針の中に書き込むということではないのですけれども,重点戦略の1でアーツカウンシルの本格導入のことが語られていて,16ページにもより具体的に記述されています。そして,これの本格導入を図るために具体的にどうするかというのは,これが閣議決定されて以降の話になってくると思うのですけれども,この16ページの日本版アーツカウンシルの括弧の中に,専門家による助言,審査,事後評価,調査研究等の機能とあるのですが,これは前回の基本方針でこういう書き方がなされて,今はそれに基づいて日本版アーツカウンシルの試行が進んでいるわけですけれども,是非,この助言,審査,事後評価,調査研究,等がここにも入っているから,読めるといえば読めるのですけれども,これだけではない,つまり補助金や助成金のプログラムそのものを,例えばアーツカウンシルから提案をして,この審議会で議論して,それで政策を決めていくとか,何か日本の文化に対する助成の在り方そのものも,アーツカウンシルがいろいろイニシアチブをとって検討できるようなことが行われるといいなと思いました。ここの文言にそこまでは含めないと思いますので,この方針の決定を受けて,4月以降,また具体的に議論することになると思うのですけれども,そのときに,そういうことも含めて御議論をいただけたらなというふうに思いました。
 以上です。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。副題がだんだん方向性が見えてくると,このはじめにも,もう少し位置付けの肉付けができてくるかなというような気がいたしました。
 今のアーツカウンシルの文言に関しては,吉本さんがいらっしゃらなかったときに,この最初に助言というのを入れていただいているので,第3次方針とは同じ表記になっていなくて,もともとは審査,事後評価,調査研究しか入っていなくて,それは余りにもひどいということで,おっしゃるように……。

【吉本委員】  済みません,ワーキング,出ていなかったときですね。失礼しました。

【熊倉部会長】  いえいえ,ロンドンへ行っていらっしゃったときだったので。
 佐々木委員,お待たせしました。

【佐々木委員】  ちょっと花粉症で喉の調子がよくないので黙っていたのですけれども,幾つか感想を述べたいのですが,私は比較的,内田さんからも細かいやりとりもいろいろ聞いていたので,大変努力をされたということで,結局,こういう方針を閣議決定したときに,分かりやすく予算要求なんかをするときに何がポイントになるかというと,恐らく資料1のようなものですね。ここには,極めて端的に,我が国が目指す文化芸術立国の姿というのを4つにまとめて,そして,成果目標と成果指標という数値が入っているわけですね。こういうことが多分,予算要求するときにはとても意味があるのだろうと思っているのです。ですから,先ほどの副題の案1とか2というのは,こういうパワーが欲しいので,ソフトパワーと,それから文化芸術立国という姿,これは国の目標ですから,これを示すという意味では,これは非常に分かりやすくなって,簡略版なんかにはこういう形で出てくるのかもしれませんね。
 それで,そのついでに言うと,この数値目標のところに,我々が当初,議論を始めたときは下村大臣の中期プランから始まったわけですね。文化芸術立国中期プランがあって,それに基づいて方針を立ててきた。そこには,例えば創造都市ネットワークに加盟する自治体の数は170という,全自治体の1割というふうに数値目標を挙げていただいていたのですが,これはなかなかガードが堅かったというのは聞いています。ですから,数値目標として挙げられないものがあるのですね。多分,財務省なり,予算当局とやりとりをするときにとって,どういう書き方をすると意味があるかということはよく考えられて,それで守るべきものを守っているという意味では,かなりプロとして努力をされていると。つまり,その案1と2というサブタイトルは,そういう意味でそういうパワーを示したいということだという意味でも,よく理解できます。
 でも,やはりこれは,当然,国民に向けたものでもあって,そういった意味では,ほかのプランが案外,未来という言葉を使っていますね。日本再興戦略も未来の挑戦とか,まち・ひと・しごと,未来への選択とかですね。ですから,Creative for the Futureというのが,トニー・ブレアが出したものですけれども,そういった未来に向けた創造性という意味で,それに近いものとして,文化芸術資源で未来をつくると,あるいは,文化芸術のパワーでもいいのですけれども,そういったキャッチならいいのかなと。担当者の御努力はくみ上げつつ,そんなふうに思いました。
 あと,先ほど宮田学長が言われて,確かに顕彰というのは大事だと。つい最近,八戸へ行きまして,八戸が昨年,創造都市部門の長官表彰を受けた。それで,そのお祝いのシンポジウムがあって,記念講演させていただいたんですけれども,やはり宮田学長作製の副賞のイルカにはイルカパワーがあって,全国の創造都市を表彰するというのはいいことだと思います。ですから,全国津々浦々,創造的な力で日本を再生するというようなことがサブタイトルにあればいいという意味で,あえて予算当局に対してのパワーと言わなくてもいいのではないかということです。ですから,全国津々浦々,創造的な力で日本を再生するというようなことがサブタイトルにあればいいという意味で,あえて予算当局に対してのパワーと言わなくてもいいのではないかということです。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。前回,御意見を頂いた強靭化のことですとか創造都市のことですとか,明記をさせていただいて,すっきりしたと思います。
 あと,まだ御意見を頂いていない赤坂委員,お願いします。

【赤坂委員】  皆さんのお話を伺いながら,僕はやっぱり自分の立場として,福島県立博物館という地域の博物館を拠点に活動しているものですから,そこからの意見を言わせていただいた方がいいのかなと思います。
 はじめにの4段落目に,昨今の経済情勢や,厳しさを増す地方の財政状況などからも,地域の文化芸術を支える基盤のぜい弱化に対する危機感が広がっている。これ,入れていただいたことをとても有り難いと思います。この後,恥ずかしいのですけれども,現場の状況を少しお話しします。
 この言葉があって,今度,4ページ目の東日本大震災の後に,その項目の中に,これを契機として,日本全国の地域社会が抱える課題を,これは明らかに顕在化しだと思いますけれども,我が国や世界のモデルとなる「創造と可能性のある未来社会」としての「新しい東北」を創造することが期待されている。本当にこんなことを期待されているのかなと思って,僕はちょっと言葉を失うような気がします。
 僕も,意地で,東北が,福島がこういう状況だからこそ,始まりの土地にならなくてはいけないと言っていますけれども,それは,放っておくと始まりの土地になるからではなくて,意地でも始まりの土地になってやるという意味で言っているのであって,状況は物すごく厳しいと思います。ですから,力強く復興している東北の姿をみんなに見てもらおうというふうに書き込んでありますけれども,もし,本当に,本気でそれを願うのであれば,相当なことをやらなくてはいけないと思います。
 恥ずかしいことといいますのは,僕は福島県博の館長になって10年ちょっとになりますけれども,10年前に館長になった当時は,年間予算3億4,000万ぐらいありました。今の状況は1億5,6000万円です。その1億5,6000万円の8割は通常運営費です。施設を転がしていくために必要なもの。つまり,事業とかいろんな企画に使えるお金というのが,もうぜい肉をそぎ落とすレベルではなくて,ほんの数千万しか残っていないのです。ですから,正直に言うと,これまでの博物館を支えてきた,調査をし,資料を収集し,研究し,それを展示につなげていくというような,その運営のシステムはもう壊れてしまっています。もう研究費なんて,ほぼゼロです。図書費もゼロにほとんど近い。企画展示,特別展をどれだけやれるかというと,それもほとんどお金がないです。だから,やっている年間の企画展というのは,そのほとんどが国際交流基金と提携して,運搬費だけでいいとか,あるいは,どこどこで,去年で言えばアイヌ文化財団の展示をこっちに持ってくる。それもほとんど我々はお金が要らない。そういうことでしか,企画展すら運営できない状況に,もう追い込まれています。
 この第4次基本方針,たくさん地方とか地域に関わることが書き込まれているのですけれども,つまり,それを受皿として担うべき我々自身が,もう相当壊れてしまって,疲弊し切っている。その中で,東北から新しい日本の社会の未来像を示すといった提案がなされても,本当にこれはどうすればいいんだよという思いが立ってしまいます。
 実は,我々の県博では,文化庁から相当なお金を頂いて,文化連携とかいろんなことをやっています。ですから,それがなければ,20人いる学芸員はほとんど開店休業で,寝ているしかないような状況なのです。とても有り難いです。でも,もしかしたら,そういう対症療法※的な何かのプロジェクトに応募して,お金を入れるという形では,もうもたない状況になっているという現実をどうしても知っていただきたいのです。つまり,3億4,000万が1億5,6000万になるためには,毎年の10%のシーリング,それだけなのです。もう例外なしに10%予算を削減すると言われて,それが10年間になると,ここまでいってしまう。
 僕は,これが日本国家の文化政策の基本であるならば,地方に対して,もっと文化をきちんと大切にして,それを社会の新しいデザインのために活用するのだ,つまり,地方もまた,きちんとした予算を文化行政に対して付けなければ駄目なのだという,そちらの,つまり,体力の,地方の様々な施設や博物館や図書館や美術館も全部ですけれども,そこが余りに,もう疲弊しちゃっている。そこからもう一度,きちんとお金を入れていく,人材を育てていくということをしないと,対症療法※的にプロジェクト型のお金をつぎ込むということでは,もうもたない現実があるということを知っていただきたいなと思います。
 ですから,文化行政の大きな在り方というのが,地方がそういうふうに疲弊していくのを,文化庁がお金を上からプロジェクト型で入れるという形では,もうもたない。長くなっちゃいましたけれども,僕は日本の文化というのが,よその国を少しだけ歩くだけでも,いかに地方の文化というのが豊かで,まだ豊かで,それが日本の魅力になっている。食文化から含めて全部そうだと思いますけれども,物すごく地域の文化の多様性といったものが魅力の源泉になっているのだということを,やっぱりもう一度,認識していただきたい。
 ですから,はじめにのところに,厳しい現実が広がっている。その後に,やっぱり次につなげるような言葉を挟んでいただいて,それが広がるような,現実の厳しさだけではなく,それがどういうふうに広がる可能性があるのかということ,1行でも2行でも書き込んでいただけると有り難いなと思いました。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。まさに今年度の議論の最初のところに立ち返れたかと思うのですけれども,だからこそ,ソフト基盤整備が急務であって,事業ベースの補助金,更にそれにPDCAが加わることによって,現場の人への負荷が高まっていて,次年度,2年,3年と続けて事業を展開して,資源は残念ながらキャピタルではなくて,飽くまでリソースなのですが,このリソースを資本化していくのは,放っておいてもならないので,人の手が加わらないとならないのですけれども,そこのところが本当に,実は結構,危ない状況にあると。全国の文化施設も本当に少ない人員で回していて,これから,より地域展開のようなことを2020に向けて求められるのだけれども,そもそも人的体制が余りにも足りないというようなことはあると思います。なかなか,この基本方針で赤裸々に書けないところが難しいところなのですけれども,そこの部分に関しても,やはりちょっとはじめにのところで,一言,このつなぎを入れていければなというふうに思います。
 湯浅委員,どうぞ。

【湯浅委員】  余りこの時点で文言を変える段階ではないとは思うのですけれども,もしかして感想になるかもしれないのですが,かなり,どのページも,開いた中に,海外との関係の表記が多様にあるというのは,2020年に向けて日本が海外との関係で,どのような考え方で臨むのかということが非常に強く表れていて,とてもいいことだと思いますし,その中で,国際文化交流についての8ページの表記ですとか,7ページの世界への発信,5ページのグローバル化の発展と,いろんなところにちりばめられているわけなのですけれども,ほかにもいろいろありますが,夏のヒアリングのときのコメントがありましたけれども,やや,やはり発信に重きが置かれているような書きぶりが今はとても見受けられるかなというふうに個人的には思います。
 特にはじめにのところは,とても今,大事な文章なのだと思うのですが,海外との関係でいうと,国内外への発信をというのが2段落目と最後にも出てきていますので,そのオリンピックの文化プログラムを含め,海外との関係の中で言ったら,5ページを見ますと,発信だけではなく対話の重要性とか相互理解とか友好関係を構築するみたいなことも書いてありますので,読み込んでいけば発信だけではないというのは分かるとは思うのですが,やや発信という言葉が非常に多いかなと。9ページ目の社会への波及効果というところも非常に大事な教育,福祉,まちづくりへの関連性というのが大事だという文言と同じ文脈でクールジャパンのことが書いてありますけれども,ややもすると,ここも日本の魅力を発信するということが,もしかして,このコメントが社会への波及効果のところに入れるのが正しいかどうか,沿うのかという検証が必要かなというふうに思いました。
 その関係で,4ページ目の2020年東京大会のところで,ロンドン五輪の例を引いていただいておりますけれども,ここも英国のあらゆる地域で多角的な文化や魅力を紹介する文化プログラムが実施されたと。要は,発信効果についての言及のみ,ここに出ているのですが,英国の文化プログラム,多分,今のこの方針の中の精神に非常に近い,人作りとか資源を作っていくというところで文化プログラムは非常に大きな役割を果たしていますので,もしかしたら,英国のあらゆる地域で非常に多角的な文化プログラムが実施されたことにより,文化に対する参加が増え,雇用,人材の育成にもつながったとか,何かそちらの効果を書くと,文化プログラムはとにかくイベントをいっぱいやったということではないということが伝わるのかなとちょっと思いました。
 少しちょっと違った,もう一つ,13ページ目のところでの,人材のところで,子供たちを作っていく文化のプログラムの中で,下の四角の中の2つ目に,子供たちのコミュニケーション能力を育成するための文化芸術に関する体験型ワークショップをはじめとあります。ちょっと前にも一度,コメントさせていただいたのですが,コミュニケーション能力を育成するためだけと限定していいのかどうかというのは,ちょっと個人的に思うところがありまして,文化芸術に子供たちが触れる意義というのは,コミュニケーション能力だけでは,もしかして,先ほど相馬さんもおっしゃったような多角的な視点なり,社会の課題を理解するとか,いろいろな自信が,学校教育の教科書だけでは得られない大きな効果があると思うので,この限定的に,コミュニケーション能力育成イコールワークショップというような読み方にならない方がいいのかなというふうには思いました。

【熊倉部会長】  何か一言足せますか。コミュニケーション能力や,何でしょうね,社会感覚では少し変ですしね。社会意識とかね。何か短い言葉で。余り長くなってもあれなので。
 発信はもう本当におっしゃるとおりで,発信という言葉は行政は大好きなのですが,大変無責任な言葉だと思って,随分削って,書き足していただいたのですけれども,なるべく,本当にこれは発信でいいのか,違う言葉にしていくと,今風な感じに,ちょっと先進的なイメージを与えられるかなという気がします。発信と育成があると,すごい前と同じというイメージがしちゃうなという感じがするので,ちょっとやってみます。
 相馬委員,どうぞ。

【相馬委員】  例えば,他者への理解というような言葉を入れて……。

【熊倉部会長】  それは入れました。

【相馬委員】  入っていますね。今,コミュニケーション能力の育成だけが子供に求められているワークショップではないということに関連して,異なる価値観の人たちと向き合うことが国際交流の本質だと思います。それで,確かに発信だけですと,日本の魅力,国の力としてのソフトパワーを海外に出していくというのはもちろんなのですけれども,逆に,全く異なる価値観の海外のものを受容するという態度をもう少し具体的に文言として盛り込めるといいかなと思いますので,例えば,異なる価値観の受容であるとか,そこで醸成される対話ということを二,三か所,展開していただけるといいのかなと思います。

【熊倉部会長】  片山委員,お願いします。

【片山部会長代理】  先ほどの赤坂委員の御発言は大変重要な,重みのある指摘というふうに受け止めました。実は,そのことに関しては,12ページのところの重点的に取り組む施策というところの2つ目の四角,これが先ほど太下委員が指摘した地方版のアーツカウンシルのところになります。これは,従来の地方自治体のやり方に任せていたのでは,先ほど赤坂委員の御指摘のように,シーリングの中でどんどん文化予算が減らされていってしまうという状況にあるかと思います。これをはね返すために,地域の様々な主体が参画して,新しい政策立案の枠組みを作って,地域の文化芸術資源,ここで文化芸術資源が出てくるのですが,これを使って,計画的な文化芸術活動を支援するということになるわけなのです。できればこの部分にもう一言つけ足して,迫力を付ける必要があるかなというふうに思いました。
 この文章,実は主語が余りよく分からないところがありまして,地方公共団体等がいろいろな主体と連携して政策を立案するのですけれども,この促す主体が誰かとか,その後の支援をするというところが誰かというところが必ずしも明確でないところもあります。こういう動きを国としても下支えするとか,地域レベルでこういう地方版アーツカウンシルが作られて,地域の人たちがみんな参画して,地域の政策作りをして,地域の文化資源を使っていろんなことをやっていくということを国としても下支えする,応援する。要するに,国は単にプロジェクトベースで補助をするのではなくて,地域レベルでそれを解決していく枠組みを作っていくこと自体を国が支援するのだということをもう1行,何か書き足せると,地域に対してすごく勇気付けるような書きぶりになるかなということを思いました。

【熊倉部会長】  これは,でも,基本方針は全部,主語は国でしょう。

【内田調整官】  はい,大体,原則は国です。

【熊倉部会長】  ですよね。まさか人任せにはできないので。

【内田調整官】  自治体も読み込めるような場所も何か所かはございますけれども,大体,国が中心です。

【片山部会長代理】  主語は国ということだと思うのですけれども,促し,支援するというところで,更にそれをもう一言,応援を駄目押しをするみたいなところがあると,地域としては勇気付けられるかなというふうに思った次第です。

【熊倉部会長】  ここのところは,ただ,文化庁側と,特に地方版アーツカウンシルに関して全くイメージのすり合わせができていないので,これ以上,言葉を今回書き足すのは難しかろうというのが,何のことだかよく分からないのだけれども,これに関してのイメージ作りとか施策作りは,来年の宿題じゃないかなと思うのですが,それよりも,せっかくイニシアチブ改めグローカルなど出していただきましたけれども,その事業補助を取れば取るほど現場が疲弊していく。それこそ,安心して,専門職としてのプライドとビジョンを持ちながら,そして,できれば社会にきちんと貢献している,目の前の仕事をこなしているだけじゃなくて,という自負も持ちながら,まずはその文化施設の人たちが働いていただかないことには,周りのNPOもできるわけがないというのが本当に率直な感想なのですが,そうしたところをどういうふうに,自治体の意識改革を促せるのか,結構難しい問題だと思いますが,それもちょっと,ここには,今の段階では書き込めないでしょうけれども,大きな課題だということは事実です。

【加藤委員】  先ほど赤坂委員がおっしゃって,私も全く共感するところなのですけれども,私は25年ぐらい,この文化の仕事に携わってきて,すごく進んだ面が一方であると感じています。つまり,文化芸術に投資することが社会の創造全般にとって大変価値があるものだという認識が広まった面がありますが,同時に,一方,相も変わらず,文化芸術ごときものに金なんかやってもしようがないという考え方も幅広くあるのも事実なのです。その両方が常に行きつ戻りつしているというか,どっちかが強くなったり,どっちかが強くなる。あるいは,両方が共に強くなる。そういう状況をずっとやってきた。
 そういう中で,いろいろなことをこれまでも主張してきたのだけれども,先ほど言われた,本当に東日本の被災地におけるモデル作りをすると言うのなら,それは文化に投資をしない限り,何が実現するか。ほかにもいろいろ施策があることは分かるが,少なくとも文化に投資しなくてはならない。なぜならば,文化には力があるということを我々は何度も繰り返し主張してきたはずなので,そういう意味で,この副題がソフトパワーがいいかどうかはともあれ,パワーがあるということを,やっぱりそうは言っても訴え続けないと,我々は残念ながら,十分説得力を今まで持ち得ていない。その説得力のなさはじくじたるものもあるし,また反省もするけれども,多少なりとも我々が説得力を持つためには,こうした文化には力がある,社会を創造していく力があるのだということは,やっぱり言っていく必要があるので,できるだけインパクトのある表現は是非使われるべきではないか。別にソフトパワーにこだわりません。どんな表現でもいいのだが,何度でも繰り返し,そのことを訴えていないとならない。言い出したついでなので,先ほど本の例を1つ挙げましたが,それは,「地域を変えるソフトパワー」という題名にした。もう編集者からは何度も,これでは本が売れませんと,分からないと何度も言われた。しかし,それで押し通して,結果的にはよかったと編集者からは言われています。
 つまり,言葉はどうでもいいのだが,そういう訴えをしていく必要はあるので,それは繰り返しやっていく必要があるのではないでしょうか。

【熊倉部会長】  ありがとうございます。まさに前回の部会でも御報告したように,これはもちろん,元が法律が,文化芸術振興基本法なのでしようがないのですけれども,これは吉本委員も暮れのワーキングで,いや,これは文化政策基本法にしたらどうか,あるいは,随分前に,よその団体のことであれですが,同じような議論で,地域創造でもアウトリーチのすすめという副題で調査報告書を出させていただきましたが,まさに文化政策のすすめみたいなものの第一歩になればなというふうに,この第4次基本方針は,突然そんなことは言えませんけれども,2020には,単に文化芸術の個々の振興だけではなくて,政策として文化をどういうふうに捉えるのか,社会全体の中でのパワーとしてどういうふうに捉えて,位置付けて,そのための施策をきちんと講じていくのかという議論に21世紀後半は進んでいくといいなというところなのですが,ちょっと待ってください。もう時間なので,せっかくきょうは長官もいらっしゃるので,一言,ここまでのまとめで,御感想を頂ければと思います。

【青柳長官】  ありがとうございます。今,いろいろな先生方のお話を聞いていて,やっぱり10回もやると,ほとんど意見を共有しているなという感じを強く頂きました。
 今,私,皆さんもそうだと思うのですが,やっぱり日本の最大の課題というのは,2030年頃までに1,000万人の人口が減るということ。だから,毎年,約60万人減るわけでして,この60万人を数学ではなくて算数で計算すると,2兆6,000億円ぐらい減っていくわけです。2兆6,000億というと,大体,消費税1%が2兆円と言いますから,15年間,毎年1.数%を上げていかなければこれをカバーできない。ですから,もう20%以上に,プラス8%で,28%を30%にしなきゃやっていけない状況にあります。もちろんイノベーションとか,様々な工夫,様々な努力で,それだけどんどん縮小するとは限らない。だけど,そういう厳しい状況になる。
 そういう中で,これは先ほど平田委員がおっしゃったことなのだけれども,そういう厳しい中でも個々の人々あるいはコミュニティーの生活の質や,あるいは幸せ感や充実感をいかに減少させないか,あるいは向上させるか,それが文化だと思うのです。そこに是非是非,我々は注目していかなければいけないのではないか。
 それからもう一つ,私も美術館におりましたので,大変独法も困窮しておりますけれども,そういう中で,1つ光明というか,可能性があるというのは,佐々木委員が中心になってやっていらっしゃいますけれども,創造都市。これは,それぞれの地域で非常に,まだ46の地方自治体と団体しか入っていませんが,大変な勢いで増えています。市町村だけではなくて,最近は県も入るようになってきて,動きとしては最も今勢いがあるのではないか。それから,時宜に適しているのではないか。これをもっともっと増やしていくことによって,やっぱり何だかんだ言っても,首長にはまだ裁量権があります。その市町村であろうが県であろうが,恐らく,その気になれば数億円の,例えば青森県はある女性館長を連れてきたときから,企画展に3億円から5億円を特別予算に付けています。そういう裁量権があるので,やっぱり首長の認識によって,かなりのことがまだできる状況である。それをこのクリエーティブシティーズというものは引き出す1つの方策にもなっているし,事実それが具体例として浮上しつつあるので,もっともっとこれが広がっていくのじゃないか。だから,その部分で我々は,先ほど赤坂委員がおっしゃったようなことにある程度は対応できるのではないか。それを期待するしかないなということを思っています。
 それから,加藤委員が最初におっしゃっていた沖縄の重要性ですけれども,これはやっぱり我々も,歴史的に独立国だったのが薩摩に汚されて,そして日本に入ってきて,またアメリカへ行って,そして日本に戻ってきたということの中。そして,その中で,大変な公共事業の押し付けによって,やっぱりある意味で社会構造が変わるぐらいの公共投資の投資と,それから,それでいて,やっぱり工芸なんかをやっていらっしゃる方は,棄県率,県から離れる率は日本で一番少ないんです。なぜか,中に住んでいらっしゃる。そういう文化を持っていらっしゃる。だから,そういう非常に独自の文化を持っているところだからこそ,加藤委員がおっしゃるぐらいに強調してもいいぐらい,そして,それを1つの手本に,日本全体の地域文化あるいは地方文化というものの多様性を確保していくということが,これからの我々の非常に重要なことではないかということは感じています。
 それから,もう一つは,この間,金沢に創造都市の総会があったので行ったとき,21世紀美術館で見たら,3.11以降の建築という展覧会をやっていました。これは大変すばらしい建築ですが,皆さん,非常に迷っていらっしゃる。今まで,自分たちはモニュメンタルな,いかに立派なものを作ればいいかということを,プリツカー賞をとればいいというような感じでやってきたのが,ある意味で間違いじゃなかったか。特に伊東豊雄さんのような非常にセンシブルな方は,みんなの家というようなものを作って,どうり災地に建築家が貢献できるかということを大変真剣に考えていらして,歯がゆさを表に出していらっしゃいます。それから,乾さんという,これはもう大変にすぐれた,御存じのとおり,帝国ホテルの前の花屋さん,あの建物は彼女の作品ですけれども,あれだけのスマートなものを作る方が,地域の方々と共同で建物を作っていらっしゃる。それから,工藤さんという学校建築のすばらしい建築家もやはりそうです。
 そういう中で,やっぱり日本の,先ほどり災の中で先導的なものというのだけれども,その部分なんかは明らかに,これから世界の建築を先導していく要素を内包している動きではないかなという気を強くいたしました。
 そういうふうに,いろいろな意味で,今は我々,周辺に文化というものを本当に真面目に正面から捉えて,国の中核に置かなければいけない状況はどんどん高まってはいるけれども,しかし,残念ながら,日本の予算の作り方というようなものでは,大きく飛躍的に増えるような状況にもない。だから,そのことを前提としながら,いろいろな企業やNPOや,あるいは1人の市民や,あるいは大学との連携で,この文化政策というものをより実効のあるものにして,今,様々な御意見を頂いたことを少しでも実現していけるようにしたいなと考えております。

【熊倉部会長】  ありがとうございました。
 最後に,平田委員。

【平田委員】  私は短めに少し。13ページに,先ほどの湯浅さんの部分です。子供たちのコミュニケーション能力のところですが,多分,上の段に,重点戦略の2の中にも書かれているので,もしかしたら,事務方としては,ここははしょったのかなと思うのですが,本来,豊かな感性とか豊かな心を育むという,多分,きっとそこら辺に入ってくるべきだと思うのです。ですから,子供たちの豊かな感性やコミュニケーション能力を育成するためのと,あえてもう一回,ここはやっぱり2つ書いてもいいのではないかというふうに思いました。済みません,それだけを言いたくて。ありがとうございました。

【赤坂委員】  済みません。

【熊倉部会長】  どうぞ。

【赤坂委員】  27ページの一番下の行なのですけれども,美術館,博物館,図書館等の充実の中の1つ目の,「また」とあるのですね。また,地域の美術館,博物館等の館種や設置者の枠を超えた連携・協力を促進するという言葉があるのですけれども,僕らにとっては,この言葉は物すごく重要なのです。つまり,我々が福島県内の文化連携のためのいろんな事業をやっているのですけれども,それは文化庁からお金を頂いてやっているのですが,そんなものは博物館の学芸員のする仕事じゃないというふうに常に抑圧が働いていて,それは館の中で議論をして,ひっくり返して,仕事を広げていくと幾らでもできるのですけれども,これが「また」という形で,とても小さく置かれているのですが,僕は,これは物すごく現場から見ると重要だ。つまり,実行委員会方式とかいろんな形でやろうとするときに,この言葉がもっと表に出て,我々の後押しをしていただけると大変力強いのだけれどもな。「また」って,前と全然つながっていなくてくっついているだけなのです。是非これを表にもう少し出していただければ有り難いと思います。

【熊倉部会長】  それでは,もう期日もない中で,16日の総会に向けて決定していかなければいけませんので,ちょっと時間がないのですけれども,頑張ってやってみようと思いますので,本日の御意見を踏まえて,事務局と相談して,できる限り修正できるように内田さんの背中を押していきますが,恐れ入ります,最終的には部会長に一任ということでお任せいただければと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。
 御異論がなければ,かしこまりました。確かに承りました。
 それでは,ちょうどお時間ですので,閉会とさせていただきます。
 先ほどもお伝えいたしましたように,3月16日の文化審議会総会で,部会長の私より,これまでの議論の成果を説明させていただいて,その後,パブリックコメントを経まして,4月16日の,また次の総会での答申を目指していきたいと思います。
 今年度の文化政策部会は本日で最後となります。委員の皆様におかれましては,本当にこの1年間,宿題もたくさん出し,申し訳ありませんでしたが,多大なる御協力,心から感謝申し上げます。
 最後に,では,事務局から事務連絡をお願いいたします。

【内田調整官】  今後のスケジュールに関しましては,今,部会長から御説明がありましたとおりでございます。1年間,本当にありがとうございました。
 本日頂きました様々な御意見も含めまして,答申までの間,皆様に,どのように修正がされたかということを随時共有させていただければと思っております。
 どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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