第173回(平成30年5月21日)宗教法人審議会議事録

  • ○ 日時平成30年5月21日(月)16:00〜
  • ○ 場所旧文部省庁舎「第2会議室」
  • ○ 議題
    1. 開会
    2. 議題
      1. (1)宗教法人「了徳寺」の任意解散の認証決定に係わる審査請求について
      2. (2)最近の宗務行政について
    3. 閉会
  • ○ 出席者
    【委員】
    新井委員原田委員飯島委員石井委員巫部委員九條委員戸松委員比企委員
    日比野委員本部委員峰委員宮本委員村鳥委員矢木委員渡辺委員
    【文化庁】
    中岡文化庁次長藤原文化部長田村宗務課長
    その他関係者

1.開会

○新井会長

それでは定刻になりましたので,ただいまより第173回宗教法人審議会を開会いたします。本日は御多用中,御出席いただき,誠にありがとうございます。

まず委員の異動があったようですので,事務局から委員の紹介をお願いいたします。

○宗務課長

それでは、資料1―1をごらんください。本審議会の委員名簿でございます。

(委員の紹介)

○宗務課長

事務局にも異動がございまして,紹介をさせていただければと思います。

(事務局員の紹介)

○新井会長

次に,事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○宗務課長

それでは,配布資料の確認をさせていただきます。

(配布資料の確認)

○新井会長

続いて,定足数について確認したいと思いますので,事務局からお願いいたします。

○宗務課長

本日は,19名の総員中15名の委員の方々が出席されています。総委員数の5分の3以上の出席が必要とされていますが,定足数は満たしております。

○新井会長

ありがとうございました。

それでは,本日の議事に入りたいと思います。

2.議事

議題(1)宗教法人「了徳寺」の任意解散の認証決定に係る審査請求について

宗教法人「了徳寺」の規則変更認証決定に係る審査請求についての議事要旨は次のとおりである。

・平成30年3月16日,同年4月23日に開催された小委員会における検討結果の報告が行われた。

・審議の結果,審査請求を棄却する旨の裁決をすることを適当とする旨の答申が行われた。

議題(2)最近の宗務行政について

○新井会長

続きまして,議題2に移りたいと思います。最近の宗務行政について,事務局から報告がありますので,よろしくお願いいたします。

○宗務課長

それでは,最近の宗務行政関連の報告をさせていただければと思います。

(第170回(平成27年9月2日)宗教法人審議会で答申が行われた宗教法人「乘性寺」の規則変更について進捗状況の報告を行った。)

資料7をご覧ください。前回,3月の審議会で少しお話があった件ですが,宗教法人法に関わる改正も含まれたような大きな改正法案が閣議決定されて,まだ国会審議は始まっていないのですが,今国会で審議される可能性があるところでございます。

内容はどのようなものかと申しますと,7-1の成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案です。簡単に御説明しますと,成年後見制度の利用が非常に低率です。認知症の方等が500万人ぐらい日本にいるようですが,実際にこの後見制度を利用している人は20万人程度で,4%程度にしか過ぎないそうです。どうしてこれの活用が進まないかというと,一度成年被後見人に認定されてしまいますと,資格や職業等について様々な権利制限がかかってくる。ですので,一律に排除する規定を見直すべきだということで,平成28年に出した法律では,3年以内にこの見直しを行うこととなっておりました。今回,その関係の法案が,国会でこれから審議されるという状況になっているところでございます。

改正内容でございます。先ほど述べたように,成年被後見人等を資格・職種・業務から一律に排除する規定(欠格条項)について,心身の故障の状況を個別的,実質的に審査して,制度毎の必要な能力の有無を判断する規定(個別審査規定)へと適正化します。これまでは一律に全員排除されていたのですが,個別に実質的能力を見て,その能力がないのであれば,それは排除されても仕方がないのだけれど,これまで問題なく業務をやっていたのに,急に成年被後見人になったからダメだというように一律に排除することはないようにしようという趣旨でございます。

このような規定は,例えば公務員の関係法や弁護士法,医師法等にも相当数があり,宗教法人法に関係するところでは,責任役員についても全部一斉に改正する形になっているところでございます。

具体的な改正条文については,7-2をご覧ください。宗教法人法については,第22条に役員の欠格事由が載っているところでございます。現行の規定で「次の各号のいずれかに該当する者は,代表役員,責任役員,代務者,仮代表役員又は仮責任役員になることができない」とあり,2号で成年被後見人又は被保佐人,昔でいうところの禁治産者,準禁治産者に当たる方々のところが欠格というように規定されているところでございます。これを,新しい2号では,「心身の故障によりその職務を行うに当たって必要となる認知,判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」という内容に改正する法案になっているところでございます。

なお,該当個別審査ですが,公務員であれば当然,採用している人事課や人事院等その資格を所掌しているところですが,法人の役員については役員を選任するところが判断するため,宗教法人に関しては,いわゆる責任役員会で最終的には御判断いただく形に変わるということでございます。これまでも,気を付けていただいたところだと思いますので,個別的な判断にはなりますけれど,実質的には余り変わらないと考えます。現在は認知症であってもそのまま役職に就かれている場合でも,この法律が成立・施行となった時は能力を見た上で一度判断するということでございますので,その点は今後注意が必要になると思います。

事務局からは以上でございます。

○新井会長

ありがとうございました。ただいま事務局から2件の報告がありました。何か御質問,御意見がありましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

1件目については,かなり技術的な問題でして,前の裁決が裁判においてどう処理されたかという報告でしたが,2番目については,皆さん御関心があるテーマかもしれませんが,このあたりはいかがでしょうか。実際に宗教法人の役員の方,こういう方も増えているのではないのかと推察されますが,実際にはどんなような形になっているのか,もし何か御意見でもありましたらお願いしたいと思うのですが,いかがでしょうか。

恐らく仏教界ですと,包括法人によって違うと思いますが,例えば教師の資格を取るときには,欠格事由にないという証明書を出さないと,取れないようになっています。ですから,成年後見人ではないのですが,違う証明が必要で,もしそういうことであるならば,なるべく早くそれぞれの,連合体にお知らせを頂ければありがたいと思います。

○宗務課長

先ほど資料7-1の施行期日のことを説明し損ねましたので,その点について補足させていただきます。宗教法人法については,府省令等の整備は必要ではないのですが,やはり関係者への周知が必要だということで,若干の時間が認められておりまして,原則として公布の日から3月で施行という形になっております。それまでの間に,周知に関する通知,事務連絡等を流させていただきたいと考えているところでございます。

ありがとうございます。

○新井会長

ほかはいかがでしょうか。個別審査規定をということですので,財産管理はできないですが,宗教的活動は問題なくできるというような例があるのかどうか分かりませんが,個別的に見ていくわけですね。宗教法人の目的に沿った職務遂行ができるかどうかということを見るということです。従来の成年被後見人であれば一律にその権利を剥奪するというのは,やはり人権上問題があるだろうということになったわけですね。

ほか特によろしいですか。

○宗務課長

補足させていただきますと,おそらく選任のときから成年被後見人等,被保佐人に当たる人を代表役員にするということは,多分ないのだと思います。例えば,小さなお寺で,なかなか次のなり手がいないということで,ずっと住職代表役員を続けているという人が高齢になり,指定すると欠格になってしまうから,あえて適用しないで続けてやっていただくという人がいるかもしれません。実際,最近も「被後見人が責任役員を続けていいでしょうか」という問い合わせが事務局にあり,いやいや,それはもう欠格ですから,次の人を早く選んでくださいとお願いしたようなことも,事例としてはございます。

○新井会長

よろしいですか。特に宗教関係の方は,このあたりでもし何か御質問でもあればと思いますが。

それでは,以上で本日の議事は終わりになりますけど,最後に全体を通しての,今回の審査請求事案の感想も含めて,御質問,御意見がありましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

大丈夫ですか。

まだちょっと時間もあるようですので,今私が関わっている法律改正で,少しこちらの審議会と関わることもありますので,ちょっと報告をさせていただきます。

民法の公益法人の法律が変わりまして,平成18年,大分前なのですけども,改正前の民法34条なのですけど,公益目的というのは学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する事項,祭祀,宗教というのが入っていたのですね。それが今度,公益等認定法という法律ができました。一般社団法人,一般財団法人を公益法人にするときに,公益等認定するのですが,そのときに,改正前は,今申し上げたようなことだったのですが,公益認定法においては,祭祀,宗教というのは削除されて,公益目的というのは学術,技芸,慈善その他公益に関する事業になったのです。つまり祭祀,宗教が落とされたのですね。

他方,公益信託というのがあるのですが,これも改正されたのですが,平成18年の改正前の公益信託は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する事業と,こちらは,祭祀,宗教というのが入っていたのですね。それで今,実は公益信託法の改正の議論を法制審議会で行っているのですが,ここでは,祭祀,宗教も入っているということになります。

つまり何を言いたいかというと,公益等認定法と公益信託の公益の定義が違っていて,公益認定法の方は祭祀,宗教が入っていないですが,公益信託の方には入っているということなのですね。このあたり,法務省に聞いても,必ずしも理由は明確にはなっていないのですが,このあたりのところも,今後考えないといけないことなのかなという気がしますね。先ほどの裁決書の案件でも,宗教法人というものの公益性というのでしょうかね,そのあたりのところが問題になるのかもしれません。

恐らく公益等認定法は,法人格を作るわけですので,宗教法人の法人格の認証は宗教法人法だということで,こちらの方は祭祀,宗教が除外される。他方,公益信託の方は,設立する信託に公益性を与えるかどうかという別の次元のことなので,そうしているのではないかというのが私の解釈なのですが,必ずしもその辺,明確になっていませんので,もし何かそのあたり御意見等あれば,お伺いできればというように思うのですが,いかがでしょうか。

このあたりは,宗務課の何か要件解釈はあるのでしょうか。

○宗務課長

いいえ,ございません。

○新井会長

公益活動の中に祭祀,宗教というのを入れることはどうでしょうか。宗教関係の方,どのようにお考えになりますか。

○宗務課長

その点について一つ補足しますと,現行の民法には祭祀,宗教が入っていますけれど,民法を改正するときに実は先程の話のようになくなるような話があったようです。でも,その点については,宗教界の方からも,民法からなくなるのはおかしいのではないかという御意見もあって,今も入っているという状態になったと伺っています。我々も宗教法人は公益法人等の一つであると思っておりますけれど,勿論宗教界の方もそう思われていることと思います。

多分,日宗連でこのことは随分議論されてきたと思うのですよね。つまり,宗教が何かするから公益性があるのではなくて,宗教そのものに公益性があるという議論ですよね。これってなかなか難しい議論で,言葉で表せない。そして,なかなか実態が見えないところが難しいところなのですが,是非,日宗連でさらに突っ込んで議論して,何でしょうかね,何かしなければならないから宗教に公益性があるとなると,私たちはいつも追いまくられるわけですよね。ボランティア活動をする等,いろんな事業をする等,そうしないと公益性があると認められないとなると,本来の宗教の在り方そのものがむしろ損なわれていくのではないかなというおそれがあるので,是非突っ込んで議論していただきたいなと思います。

○新井会長

そうすると,公益等認定法で祭祀,宗教を外していますが,もし入れるとなると,宗教法人というのは公益性があると,公益等認定委員会,つまり行政というか,国の方で認定するということになりますけど,それはやはり好ましくないということで外したようにも思うのですが。

前に,実務者研修会で宗教法人の公益性ということで,それぞれの宗教団体の代表の幹事が,いろいろと宗教者の視点からの公益性ということでお話をいたしましたが,実際には,おっしゃるように民法に入っていて,今度,公益法ではなくなって,それで,実は宗教法人が公益法人であるということは規則にも法律にもどこにも書いていなくて,唯一,第134国会で,与謝野馨先生が宗教法人に関する委員会か何かで質問して,それに小野(元)政府委員が答えているのは,宗教法人法の第2条をもって宗教法人だと。それをすること,要するに教義信仰に基づいて,儀式,儀礼をつかさどり,信者を強化育成すると。それが宗教法人で,その結果として,要するに信者,あるいは社会の皆さんの心が安らかになって,社会が安定して,それが社会に貢献するということであれば,公益性があるというように答えていて,多分,公文書としてはそれしかなくて,だとすると,これを決めるのは,多分,宗教界が私たちは公益法人だということではなくて,あくまでも檀信徒や会員や社会の皆さんが,やっぱり宗教法人というか,宗教は私たちの社会には必要で,あった方がいいという案件だと思います。

ですから,そういう意味では,法律になかなか私たちから言って書くというと,また非常に社会的な反感が強いということで,あくまでも決めるのは社会の皆さんで,社会に役立つかどうかということを,切磋琢磨をしていかないといけないのかなというように感じています。

○新井会長

そうですね。大体そのあたりが結論かなというように思いますけど,他方,今の公益信託の改正の中では,祭祀,宗教を残すということで,そのあたりが,公益等認定法とのバランス上どうなのかなということがあるのですが,そのあたり,ちょっと様子を見ていく必要があるかもしれませんね。ほかいかがですか。よろしいですか。これからのスケジュールについて、事務局から説明をお願いします。

○宗務課長

今後の宗教法人審議会ですが,今回で一区切り付き,また何か審査請求等,宗教法人審議会の御意見を伺うべき案件が生じましたら,また連絡させていただきますけれど,当面は開催の予定がないという状況になったところでございます。

以上でございます。

3.閉会

○新井会長

本日はどうもありがとうございました。

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