1.日時
平成31年4月12日(金)14:00~15:30
2.場所
文部科学省庁舎(東館)3階3F2特別会議室
3.議題
- (1)会長等の選任
- (2)文化政策部会等の設置について
- (3)その他
4.配布資料
- 資料1
- 第19期文化審議会委員名簿(69.7KB)
- 資料2
- 文化審議会概要(69KB)
- 資料3
- 各分科会への委員の分属(55.8KB)
- 資料4
- 文化政策部会の設置について(案)(74KB)
- 資料5
- 美術品補償制度部会の設置について(案)(66.6KB)
- 資料6
- 世界文化遺産部会の設置について(案)(75.9KB)
- 資料7
- 無形文化遺産部会の設置について(案)(65.3KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関係法令(96.3KB)
- 参考資料2
- 文化審議会運営規則(66.1KB)
- 参考資料3
- 文化審議会の会議の公開について(71.4KB)
- 机上資料
- 文化芸術推進基本計画(第1期)(平成30年3月6日閣議決定)
- 2019年度文化庁予算の概要
- 京都移転の検討状況等
- 文化庁が変わる(リーフレット)
5.議事録
- 出席者 ・委 員:
- 佐藤委員(会長)、井上委員、岩崎委員、大渕委員、沖森委員、河島委員、薦田委員、島谷委員、道垣内委員、中江委員、松田委員、宮崎委員、渡辺委員
- ・⽂化庁:
- 中岡次長、村田次長、内藤審議官、高橋政策課長、佐藤企画官、清水文化経済・国際課長、高橋国語課長、南宗務課長、三木参事官(文化創造担当)、坪田参事官(芸術文化担当)その他関係官
【佐藤企画官】ただいまより,文化審議会第79回を開催します。本日は第19期文化審議会第1回総会につき,後ほど会長選出を行います。
※佐藤企画官より第19期文化審議会委員の紹介
(傍聴者退出)
※会長に佐藤委員,会長代理に道垣内委員が選ばれた。
(傍聴者入室)
【佐藤会長】昨年に引き続き,文化審議会の会長に就くこととなった佐藤です。
昨年は本審議会で議論して答申した文化芸術推進基本計画に基づく,初めての1年が経過し,具体的な内容や政策の具体的な進み具合や評価については,この審議会でも議論していくことがこれから重要だと思っています。
文化財保護法も改正され,我が国の文化政策について,国民の大きな期待が集まり,それだけまた課題も多くあり,審議会としてもお応えしていきたいところです。
委員の皆様におかれては,積極的に御意見をいただき,文化芸術そのものの振興だけでなく,まちづくり,観光,国際交流,福祉,産業など幅広い分野と連携しながら,2020年以降につながるレガシーの創出のようなこと,あるいは,文化芸術で立国していくということにつながっていけばありがたいと思い,本審議会においては,忌憚のない御意見を賜り,円滑な運営のために御協力をお願いしたいします。
【中岡次長】文化庁次長の中岡です。昨年10月から次長2名体制となりました。
年度初めということで,この審議会への御参加ありがとうございます。佐藤会長をはじめとする昨年度から引き続き御就任いただいた委員の皆様,そして今年度から新たに3名の委員の皆様に加厚く御礼を申し上げます。
新文化庁で,京都移転という大きなお題を文化庁は背負い,文化庁は機能強化を図りつつ京都移転を図るということとなりました。その機能強化は何かということを平成28年11月に緊急答申を文化審議会の方から頂き,幅広く文化を見ていくことと,各省庁の調整能力を付けるという大筋の御提言を頂き,それを下敷きとして平成29年6月に,文化行政にとっては基本的な法律になる文化芸術基本法を改正したところです。
それを基に,平成30年の通常国会で文部科学省設置法の改正をし,機能強化を図り,一方では,文化財保護法も昨今の文化財をめぐる状況も踏まえて改正し,さらには,著作権についても,情報システム進展に伴いまして大きな改正がありました。こういったことも全て文化審議会の御提言の中で取り上げられた内容です。
また,来年に迫る東京オリンピック・パラリンピックは,オリンピック憲章の中では文化の祭典でもあります。文化を通じて日本文化の魅力を発信する絶好の機会ということで,文化庁しては,この開催を契機とした文化プログラムの推進ということで準備を進めており,昨年,日本博を実施するという方向性で,多様かつ普遍的な日本文化の魅力,日本人と自然というようなテーマを国内外へ積極的に発信していくということを考えております。
この事業は,国際観光旅客税という,文化行政の通常の予算を痛めることなく,外枠で頂いているというものです。こういったものを積極的に活用して,文化財の活用,あるいは文化芸術の振興について適正に執行してまいります。先ほどの設置法改正で各省庁の調整機能を文化庁は持ち,それを実質化したということです。
このような個々の取組を含め,昨今の課題では,入管法の改正に伴う日本語教育の質の向上も文化審議会に与えられた課題であり,その他も様々な課題があります。
本審議会においても,是非とも文化行政に対し大所高所から御意見を頂きたく,委員の皆様から一つ一つの貴重な御意見,御提言が新時代の文化政策・施策の充実につながるものであり,今後1年間を通じて皆様方から忌憚のない御意見を頂くことを期待いたします。
【佐藤会長】本日は今期最初の審議会ですので,本審議会の概要と運営上の規則について確認し,各分科会への委員の分属についても確認いたします。なお,本審議会委員は4月1日付けで発令されており,机上の発令書の通り,各分科会への分属も記載されています。また,資料3の方にも分属が記されています。
【佐藤企画官】資料2「文化審議会概要」を御覧ください。
文化審議会は,省庁再編に合わせて国語審議会,著作権審議会,文化財保護審議会,文化功労者選考審査会の機能を整理・統合して,平成13年1月6日付けで文部科学省に設置されています。
主な所掌事務は,文部科学大臣又は文化庁長官の諮問に応じ,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣又は文化庁長官に意見を述べること等です。
構成は,委員については30人以内,任期は1年ごとで再任可。国語分科会,著作権分科会,文化財分科会,文化功労者選考分科会の四つの分科会を設置するということ。正委員のほかに臨時委員又は専門委員を置く。また,審議会及び分科会には必要に応じて部会を設置するということになっています。
最近の主な答申として,直近では,平成30年2月に文化芸術推進基本計画(第1期)について答申を頂いたところです。
資料3は各分科会への委員の分属についてです。国語分科会については,石井委員,沖森委員,中江委員,野田委員,著作権分科会については,井上委員,大渕委員,河島委員,道垣内委員,渡辺委員,文化財分科会については,薦田委員,佐藤委員,島谷委員,藤井委員,宮崎委員を分属いたします。
そのほか,参考資料1,2,3ということで,文化審議会の関係の法令,文化審議会の運営規則,文化審議会の会議の公開について,を入れております。
【佐藤会長】各分科会のほかに,本審議会の下に部会を設置することを予定しており,その内容について皆様にお諮りします。
【佐藤企画官】資料4,「文化政策部会の設置について(案)」は文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項等について,調査審議を行うために文化審議会に設置するものです。正委員は河島委員と松田委員で,その他の臨時委員と専門委員については記載の通りです。
資料5の「美術品補償制度部会の設置について(案)」は調査審議事項にあるとおり,展覧会における美術品損害の補償に関する法律の規定により審議会の権限に属させられた事項等について,調査審議を行うために設置し,部会の議決は,上記2(1)及び(2)に掲げる事項については,美術品補償制度部会の議決をもって審議会の議決とするということにさせていただきます。構成は委員名簿の通り,正委員は宮崎委員,臨時委員と専門委員は,資料のとおりです。
資料6「世界文化遺産部会の設置について(案)」は調査審議事項にあるとおり,世界遺産条約の実施に関し,文化庁として講ずべき施策に関する基本的事項等についての調査審議を行うために設置し,部会の議決については世界文化遺産部会の議決をもって審議会の議決とするという扱いにいたします。構成は,委員名簿の通り正委員は佐藤委員と松田委員,臨時委員は資料のとおりです。
資料7「無形文化遺産部会の設置について(案)」は調査審議事項のとおり,無形文化遺産保護条約の実施に関して文化庁として講ずべき施策に関する基本的事項等についての調査審議を行うために設置し,部会の議決は上記2に掲げる事項については,無形文化遺産部会の議決をもって審議会の議決とするという扱いです。構成は,正委員は岩崎委員と松田委員,その他は資料のとおりです。
【佐藤会長】ただいまの資料4から7のとおり,文化政策部会,美術品補償制度部会,世界文化遺産部会,無形文化遺産部会の四つの部会の設置について決定したいがよろしいですか。
(「異議なし」の声あり)
【佐藤会長】特に御意見がないため,案のとおり決定し,それぞれの部会について構成委員を,同じ資料のとおりに指名します。
以上で,今期審議会の発足に当たっての手続は一応終了いたしました。本日は今期の1回目の会議であり委員の皆様の自己紹介も兼ね,お一人ずつ御意見,御抱負などを御発言ください。
【井上委員】一橋大学の井上由里子です。専門は知的財産法,分属は著作権分科会です。
著作権に関しては,昨今,IT化の流れに伴いまして様々な見直しが迫られており,抜本的な改革も必要とされ,著作権法の改正,次々に進んでいるところで,私も微力ではあるが,これからもしっかりと取り組んでまいります。
【岩崎委員】岩崎まさみと申します。所属の部会は無形文化遺産です。
この審議会には3期目になり,無形文化遺産に関わる仕事をさせていただくようになってから7年目になります。文化という言葉に感覚が麻痺してきて,何か当然,漠然とあるものだ,くらいに考え始めておりましたが,つい最近,目を覚ますようなことがあった。一つは,あるアイヌの青年の話です。古式舞踊,無形文化遺産,ユネスコにも登録されているが,踊りは見せるために踊るのではないと年寄りたちに言われてきた。だから,見せるために,自分が踊っていることにすごく矛盾を感じているというような手記を読み,いろいろ話を聞いているうちに,自分たちの生活が昔とはこんなに変わってしまっているときに,舞台が設定されて,そこに自分が上がり,アイヌという意識を持って,みんなの前にアイヌ文化というのはこういうものであるということを見せることができる時間というのはとても貴重なんだ,だから僕は踊ると,そういう言葉を聞いたときに,本当に文化の在り方というのをやっぱりよく考えていかなければならないんだなと。漫然と無形文化という言葉を使っていた私は,少しはっとさせられた事件になったんですけれども。
今年,これから1年間,この無形文化について初心に戻って,文化は生活を豊かにするべきものだという漠然とした考え方ではなくて,それが本当にどういう意味をその当事者たちには持つのかということを真剣に考え直したいなというようなことを今,思っている次第です。今年も1年間よろしくお願いいたします。
【大渕委員】東京大学法学部の大渕です。所属は著作権分科会でありまして,著作権法などを中心とする知的財産法という法律を専攻しております。
法律というのはもともと非常に地味なものなのですが,著作権法をごらんいただきますと,ここにおられる方は,ほとんどがクリエーター,著作者になられる方かと思いますが,心血を注いで作られた著作物というのは作品とクリエーターの皆様方をお守りして,もちろん文化的所産の公正な利用にも配慮しつつも,最後は,もって文化の発展に寄与するということになっておりまして,著作権法をご覧いただくと細かくて嫌だと思われるかもしれませんが,こうしないと皆さんの貴重な作品とクリエーターをお守りできないから,法律的には必死で守っているということでございますので,そこの点を御了解いただければと思っております。微力ながら何らかの貢献をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【沖森委員】沖森と申します。私の専門は日本語学でありまして,こちらでは国語分科会の国語課題小委員会に属してまいりました。臨時委員として常用漢字表の改定に関わっているのが最初,この文化審議会との関わりであったわけですけれども,その後,正委員としてこの場にも出席といいますか,参列するようになりました。
今年度は,昨年度に引き続き,「公用文作成の要領」の見直しというようなことをやる予定であります。今年中に何らかの形で成果物といいましょうか,報告ができればと思っております。何とぞ1年間よろしくお願いいたします。
【河島委員】同志社大学経済学部の河島伸子と申します。
私,文化審議会,何期かにわたって委員もやらせていただいておりますけれども,その過程を通じまして,やはりこういったところで配付される資料ですとか,議論の中で使われている言葉というのが随分変わってきて,文化政策というものが変化してきたことというのをきょうまた改めてひしひしと感じております。
従来ですと,芸術文化や文化財を保護する,大事に守っていくというところにやはり重点があり,それから新しいものをもっと創造していく方向にというところにだんだん移っていき,そして今日では,もちろんその二つも重要性は変わらないんですけれども,社会的な価値であるとか,経済的なところへの貢献といったことも随分と文言に入ってくるようになりまして,文化政策というものが一つレベルアップして,存在感というのが増してきている。普段は京都におりますので,新文化庁の京都への移転ということもありまして,国民の間でも,少なくとも京都の間では大変関心が高まっており,いよいよ本格的に移転が決まりましたところで,また文化庁への世間の注目というのも集まってくるのではないかと思っております。
そういった意味で,今年度は私,分属が決まっております文化政策部会の方では,基本計画のフォローアップというのが一つ大きい仕事になっておりまして,私の理解では,これは政策,基本計画がどの程度実行されていっているのかということをモニタリング,あるいは評価していくというような作業になるかと思います。そういう意味でも,文化庁の政策というのがいよいよ本格化して,大人のものになっていく,そういう年に当たっていると思いますので,微力ながら力を何らかの形で貢献できればと思っております。
あともう一つ,専門でコンテンツ産業と,それと芸術文化というものも,そういった産業の在り方というのも専門でございますので,著作権分科会の方にも,こちらも本当に微力なのですが,参加させていただくことになっております。どうぞよろしくお願いいたします。
【薦田委員】薦田でございます。専門は,日本の伝統音楽のことを研究しておりまして,分属は文化財審議会でございます。そういう仕事に関わっておりまして,よく思うことは,伝承,日本には様々な伝統的な音楽文化がありますが,それを伝承するということは人を育てる作業だということをいつも実感しております。人を育てるということは大変時間のかかる作業でもあります。そういうものに対する目先のいろいろな政策だけではなくて,長期的なスパンでもって,しっかりした政策を文化庁がとってくださるといいなと思っております。
それからもう一つ,伝承に関わっておりまして思うことは,日本の音楽文化というのは,実は世界の音楽文化全体にとりますと,人間が持っている音楽能力というのがいろいろな多様な音楽能力の総和として存在するわけなので,日本の伝統文化が一つ,あるいは伝統音楽が一つ消えるということは,人間の総和としての音楽能力がそれだけ小さくなるということなんですね。そのときに,日本の文化庁が,何をしなければならないかということをしっかりと見据えて,政策を決めていってくださるといいなと思っています。そういうことに向けて,私がどれほどのことができるか分かりませんけれども,せっかくこの立場を頂いているので,しっかり頑張っていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【佐藤会長】ありがとうございました。 私,先ほど最初に御挨拶したのですが,ちょっと一言付け加えさせていただきたいと思います。私,昨年3月までは東京大学におりましたが,今は人間文化研究機構というところの理事をしております。専門は日本史でありまして,文化財分科会の方に分属させていただいております。
先ほどもちょっと申し上げたんですけれども,新しい文化財保護法の下で,地域においてバランスを持ちながら文化財,文化の保存や活用を図るということが,これからどう具体的に始まって,どうなっていくかということの上では,今年度,非常に大事な年かなと思っております。
また,来年,オリンピックやパラリンピックがあるということでもありまして,日本博だとか,日本遺産だとか,あるいは文化プログラムなどがいろいろ,実際に実現しなくちゃいけないという段階に来ると思いますけれども,これも1回切りの花火に終わることなく,この後に続いていかなくちゃいけないと思っておりますので,これも大変な文化庁としてはお仕事になるのだろうと思っております。
また,京都移転に関しては,どうなるか分からないという面があって,心配するところもございますが,新文化庁としては,逆にチャンスとして,日本の文化をさらに充実する方向に持っていっていただければというふうに期待しております。
以上,ちょっとそういう課題もあるけれども,逆に言うと,先ほど申し上げたように,私は,多くの国民から,課題があるけれども,期待されているというふうに考えていただいて,今まで以上にと言うと宮田長官に怒られるかもしれないのですが,さらに御努力いただければと思っております。
【島谷委員】九州国立博物館の館長をしております島谷でございます。専門は日本の書を専門にしておりまして,長く東京国立博物館に勤めておりました。4年前に九州国立博物館に参りまして,そこで地方にいるということを実感しながら仕事をしております。
この分科会では,文化財分科会に分属されておりますが,それ以前に,文化財分科会の第四分科会,無形ですが,そこを担当させていただいた経緯もあって,ここに選ばれているのではないかと思います。ほかにはユネスコの国内委員であるとか,あと,カルコンといいまして日米文化教育交流会議の日本側委員も担当させていただいております。
何より現場に即した仕事をしておりますので,文化財保護法が変わったということで,保存と活用,特に活用の方に皆さんの観点が行っているのではないかと思うのですが,活用するためにはしっかりとした保存が必要だということも,地に足を着けてやっていかなきゃいけないことかなと思っております。ただ,そればかり重視しておりますと活用ができませんので,どうすれば活用ができるかということを文化庁の方々と知恵を絞っていかなきゃいけないかと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【中江委員】中江有里と申します。このたび新しく委員を拝命いたしました。なお,国語分科会に所属し,国語課題小委員会に配属されることになります。
日頃,私は,俳優,そして小説やエッセーなどを手掛ける作家業をしております。中でも新刊を中心とした書評を,新聞や雑誌,テレビなどのメディアを通じて行っています。また,読書推進に関する活動をライフワークにしております。こうした活動を続けているのは,ひとえに私が幼い頃から本好きだったということがあります。昨今,本離れ,活字離れという言葉が聞かれますが,そういった言葉を聞くと非常に残念な気持ちになります。それ以外の仕事では,読書に関する講演活動も行っていまして,地方自治体や公立図書館などに呼ばれる機会もありますが,そういった場所に来てくださる皆さんは非常に熱心で,本当に本離れってあるのかなと思うほどです。
ところで,私は日常的に,ソーシャルネットワークサービス,SNSを利用しております。SNSというのは,ある書き込みが話題になることを「バズる」と申します。このような場所でネット用語というのはちょっとふさわしくないかもしれませんが,あえて使うと,先日,新たな元号「令和」の「令」の書き方について,印刷物で書く書体と手書きの書き方が違う,正しいものはどれかということが文化庁へ問い合わせが殺到したということが,まさにバズりました。結果,いずれも同じ字で,どれを使うか決まりはないという答えに安堵するような声が,またさらにバズりました。やっぱり新元号に使われる文字の規範を知りたいという思いがネット上で集結したということだと思います。また,元号の典拠となっている万葉集が注目されて,書店では売り切れて重版したというのも話題になっていました。これらの現象は,SNS上に誰かが書き込んで,それをまたほかの誰かが読んで,さらに拡散されていくというような状況で,この現象一つ見ても,日本人は読み書きがとても好きなんだなということを感じる事象でした。
国語というのは国の言葉で,そして,どの時代も言葉への関心というのは尽きることがないと思います。私は,国語の研究者や専門家ではありませんが,読むことや書くことをなりわいとしております。日常はもちろん,創作では読者,そして実作者として,現代小説においての言葉の在り方に日々向き合っております。こうした活動が何らかのお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【松田委員】東京大学の文化資源学研究室というところに勤めております松田陽と申します。所属としましては,文化政策部会,世界文化遺産部会,それから無形文化遺産部会にて今期は貢献させていただくことになります。
私の研究は,人に伝えるときにはこのように言うことにしているのですが,文化遺産というものを社会はどのように作り出して,その作り出した文化遺産を社会はどのように使うのかということを調べております。文化遺産というのは,ただそこにあるだけで文化遺産になるのではなく,人々がそこに価値を見出して,それを言語化して,活用ということになるのか,保存ということになるのか分かりませんが,そこに関与することによって作り出されるものだと思っています。作り出された文化遺産をまた使うことによって文化遺産であり続けるようにするという,それが文化遺産という現象の本質なのではないかと考えております。
そのようなことを研究しながら,この審議会では,日本という国として文化遺産をどのように作り出して,また使っていくのかということをしっかり考えたいと思います。国としてどのように文化遺産を導いていくのかを考える上では,日本の中のそれぞれの地域において文化遺産をどのように作り出して,使っていくのかを細かくやっぱり見ていかないといけないと思いますので,なるたけ様々な地方に飛んで現状を見るようにしております。と同時に,世界の中で,日本はどのような文化遺産を作り出して,使おうとしているのかということも同時に考えないといけないと思っております。私は個人的に比較的海外に長くいて研究しておりましたので,なるたけ外の視点,それから,先ほど言いました地方,すなわち内の視点の両方を組み合わせながら,日本という国としてどのように文化遺産を導いていきたいのかを考えて発言するようにしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【宮崎委員】宮崎と申します。実践女子大学というところで美術史を教えております。所属は文化財分科会と,あと,美術品補償制度部会に属しております。
去年,3年目ぐらいに入ったと思いますけれども,以前は長く文化財の専門委員をしておりました。それで急にこういうところにピンチヒッターとして入った形になりましたけれども,私の専門は実は中国美術史でして,中国美術をやっておりますと,どうしても日本の美術とは一体何なのか,日本の文化というのは中国がかなり源になっていおり,その中で日本というのは何なのか,日本文化は何なのかということをいつも切実に考えてきております。
そういう視点から見て,また,頻繁に中国に行き,中国の昔はとてもひどい状況の中で,文化財がかなり壊れて保存もほとんどできないような状態だったのが,今や日本よりもよっぽど予算が付いて,物すごく保存から展示の施設も全く世界最先端のものに変わってきているというのを目の当たりにしますと,日本で,日本の文化庁とか,あるいは国でどのように文化のかじ取りをしていく,かじ取りという言葉はおかしいんですけれども,やはりそういうことがないと何かそのまま滅んでしまうものとか,保存できないもの,継承できないものがたくさんあるということを切実に感じております。
特に,分科会の方で民俗芸能とかそういうふうなものをたくさん拝見する機会がありまして,そうすると,それをどうやって継承していくのかということを,かなり自分の専門とは離れますけれども,切実に考えさせられます。
あと,そのときに,子供とか,教育とかというものがやはり関係してくるんじゃないかというふうな気持ちになります。微力ですので,何もできないんですけれども,でも,そういう問題意識を持って,さらに言いますと,日々学生と接していますと,学生の日本語能力の問題点というのを痛切に感じることが多くて,やっぱり文章を読んで,そして書くということはそう簡単ではないということを感じます。
そういうふうなことも含めて,幾つもこの文化庁の文化審議会と関わるような課題は,たくさん問題意識を感じるんですけれども,自分がどこまでできるかは分かりませんけれども,できる範囲で,いろいろな問題意識を持ちながら皆さんの話を伺って,そしていろいろと自分なりに考えて,何かお役に立てることがあればいいかなと思っております。よろしくお願いいたします。
【渡辺委員】作曲をやっております渡辺俊幸です。
著作権協会,JASRACの理事もやっておりますので,当然のことながら,音楽著作権に対しては様々ないろいろな思いを持っておりますが,著作権分科会にも所属しておりまして,昨年度の最後の総会,3月に行われましたが,そのときにも申し上げましたが,録音録画補償金問題というのが長年解決されてきておりません。
それは,新しいメディアが出てきて,それに対応することがないまま,ずっと期間が過ぎておりますから現実的に機能していないということで,今,それを御説明すると長くなりますから省略しますが,長くそれが検討され続けて結論が出ない背景には,メーカー,消費者対著作者という,その構図の中で,著作者に対する思いという中に,そのぐらいのものは取らなくてもいいじゃないかというような,何かそういった思いが少なからずあるのではないかというようなことを感じることもあります。それは一般の方々からなんですけれども。
そこで,あえて,御存じない方もいらっしゃるかと思って,そういう細かいことを申し上げますが,作曲家という者はいろいろなタイプがあります。私のような映画音楽やテレビのドラマの音楽をやるようなタイプの作曲家は,作曲をするたびに委嘱料を頂きます。そして,別に何かそれが使用されれば著作権使用料をまた頂く,そういうことがあります。
ところが,歌を作っている方々,例えば,実名を出しますと都倉俊一さんとか,歌を専門に作られて,特に自分でパフォーマンスもしないような方々,いわゆる作曲専門で歌に特化してやっていらっしゃる方々は,作曲だけから収入を得るわけですが,ところが,作曲をした時点においては委嘱料がないんです,ゼロ円です。売れて,やっとお金が入ってくる。そして,1枚につき数円です。5円を超えることはないです。そのぐらいの金額が,だから1万枚売れても数万円という状況なんですね。そういう中で生活していかなければならないというのが歌専門に頑張っている作曲家なんですね,作詞家の方も当然そうです。
そういう状況の中で今,CDの売れ行きは落ちています。全体的に落ちています。新しい形に変わろうとしていますから,新しい形の中で,例えばSpotifyとかYouTubeというものを利用しながら,新しい形で若者は自分で音源を全部作り,そして自分で歌う,あるいは自分で初音ミクなどを使用して発信していく。これは世界に発信していく別の流れなんですね。これはこれで非常に可能性があります。日本から,いわゆる世界に向けて活躍できる存在がこれから出てくるであろうという時代を迎えている。これはすごく音楽家として喜ばしいことなのですが。
でも一方で,職業作曲家として,特に歌に特化して頑張っている作曲家,作詞家にとっては非常に厳しい時代を迎えているということを理解していただきたいんですね。その場合に録音録画補償金とか,そういう小さなことですけれども,例えばカラオケ,1回歌っていただいて1円です。1,000回歌っていただいて1,000円です。そういうものを細々と頂いて生活されているということを理解していただくと,その莫大なお金を手にしている方は一部の方だということはお分かりいただけると思うんです。100万枚とか,そういうメガで行けるような作家の方は本当に一部です。ですから,そういうことを理解していただくと,もうちょっと作家側に意識を向いていただけるのではないかというような思いがいたしまして,今,あえてこういうことを申し上げさせていただきました。
それからもう1点,先ほど邦楽のことをお話しされました。日本の伝統文化を守るのは非常に音楽家として大事なことだと思います。日本博ということで立ち上げられて,伝統音楽を守っていただく。これはやっぱり一般的な大衆音楽と比べて,それを支持するというか,聴衆ということで考えれば非常に少ないサイズのものですから,なかなか収入を得ていくということは難しい面がある。それはやっぱりいろいろな形で援助する,補償する,そういうことが必要だという分野であります。
そしてもう1点,忘れがちなのはオーケストラという存在です。オーケストラというものは,確かに西洋音楽ですよね,もとはね。もとは西洋音楽でありますが,今やクラシック音楽というのは世界共通語の音楽というふうに思います。例えば歌舞伎とか京劇などは,その国独自の文化としてずっと伸びていってほしいようなもので,これが世界にずっと普及して,どこの国でも歌舞伎が見られるとか,どこの国でも京劇が見られるというようなタイプのものではない。でも,オーケストラ音楽,いわゆるベートーベンやブラームスを演奏するというような形態は,世界共通語にもなっている時代です。
ですから,小澤征爾さんは,東洋人がどこまでこの西洋音楽をとことん突き詰められるかを自分の体をもって実験したとおっしゃっているんですね。でも,小澤征爾さんは,それこそウイーンの歌劇場で監督をされるところまで上り詰めた方です。ですから,実験は成功したわけです。日本人でも西洋音楽をそこまできちっと理解し,きちっと演奏することができるんだと。実際に今,ヨーヨー・マ,チェリストの最高峰,東洋人です。でも,1970年代には小澤征爾さんとヨーヨー・マさんが語り合っている,あるビデオがありますが,そこで,東洋人の顔をしているというだけで,おまえらに西洋音楽が分かるはずがないじゃないかということで,常にそういう酷評を浴びせられたということを語り合っているというビデオがありますが,今は,そういうことがもうない時代になりました。
そういう今の時代において,皆さんが,どこか東南アジアの後進国に行ったということを想像されて,そこで何かオーケストラが作品を演奏しているところにたまたま招待されて行ったとする。そのときに,演奏を聞いたときに想像以上にうまかったということを体験すると,その国の文化度が想像以上に高いものだなということに驚かれると思うんです。例えば,そのオーケストラはすばらしいということは,それの教育機関がすばらしいというところにすっと頭が行く。あらゆる面で,自分が想像したよりもその国の文化度が高いというふうに思われると思うんです。ですから,世界共通語となった西洋音楽,クラシック音楽をいかに高いレベルで演奏するかということは大切にしなければならないですね。日本に世界の要人が来て,たまたまそれを聞いたときに,何てすばらしいんだ,日本のオーケストラはすばらしいと思っていただくということは,文化度がどれほど高いかということを認識していただくことに結び付くと私は考えているんです。
今,西洋音楽を演奏しているオーケストラを助成するということを十分にやっていただいていると思いますが,でも,現実的にはオーケストラというのは70人,80人の規模の所帯でありますから,給料ということをまた細々と話すのは何なんですけれども,でも,具体的に話さないと分かっていただけないので,N響はもう安泰です。そして,読響,都響,このぐらいのクラスは,具体的に言いますと700万円以上の給料をもらっているんですね。ところが,それ以外の,相当有名なオーケストラ,600万円以下です。そして,300万円以下のオケもたくさんあります。そういう中で頑張っているわけですね。そうすると,今よりも助成が万が一減るようなことがあると,それ以下になっていくわけですから,これ以上,絶対下げないでいただきたい。少なくとも上げる方向でいただきたいというのが私の願いです。
そして,オーケストラが何か恵まれない環境にあるというと,若い人が,もう音楽家になるということを諦めるようになるということになると,音楽大学に,そもそも少子化で入る人は減っている,さらに減るということになると教育自体も衰退していく。これは大問題です。
そして,オーケストラというところだけに目を向けるのではなくて,その教育形態が下がる,教育のレベルが下がる。実際に,ストリングスを弾く方々の演奏能力が下がるということはどういうことかというと,映画音楽を録音するときに必ずストリングスは入るんです,ほとんど場合。そのときの演奏レベルが下がるんですね。そうすると,世界に向けてこれから日本の映画を輸出していこうという流れにあるわけですよね。そのときに,日本で録音したその映画音楽が世界レベルから見たときに,何て貧弱な,何だこの弦はというようなことになったら,これは大問題です。
今は非常に高いレベルになりました。私は1970年代から仕事をしているので,もう45年ぐらいやっていますが,その当時と比べると,今のストリングスのレベルは随分上がっているんですね。ありがたいことです。日本の音楽教育レベルは上がっている。演奏者のレベルは上がっている。これをずっとやっぱり持続してほしいですね。それはいろいろな意味で,オーケストラだけではないところに広がりを持って影響を与えているということにまで目を向けて,是非是非考えていただきたいなというのが音楽家としての願いであります。
以上です。よろしくお願いいたします。
【佐藤会長】どうもありがとうございました。
一通りお話を伺っていますが,やっぱり今の渡辺委員のお話も伺って,もうちょっと自分もお話ししておきたいという方がおられれば,是非いかがでしょうか。
【薦田委員】すみません,非常に自分の身近な問題で,こういう大所高所からいろいろ論じられる場所でお話しするのはどうかなと思ってちょっと迷っていたんですけれども,私の身の回りで,実は文化庁の委託事業で頂けるお金が今年半額になったという団体が幾つかありました。体力のない団体は,そういうことがあるとちょっと潰れるかもしれないという危惧を持っております。さっき申し上げたように,長いスパンで人を育てねばならないような事業に取り組んでいるところは,前年度と同じ事業内容で申請をし,同じお金を頂けることを前提にいろいろな企画を立てております。そうすると,同じ企画をやりなさい,でも,お金は半分ですよというとかなりつらい,体力がないところは潰れるし,あるいは,そこに関わっている人たちの善意に頼るしかなくなってしまうというような状況がちょっと今年は起きるのではないかというような現実を見ております。
それから,実際にオリパラ関連で,この前のオリンピックのときにすばらしい邦楽関係の企画があったので,それを一つのモデルにして実践しようというふうにして頑張っていた団体がありました。本来,申請を考えていた枠組みが突然なくなって,日本博の方に申請するようにと言われたところ,非常に頂けるお金が小さくて,企画そのものを縮小せざるを得なかったというような話を現実に聞いております。
もちろん皆さん,すごく頑張っていらっしゃるんだろうとは思うんですけれども,その辺のところがちょっとどうなっているのかなというのを私としては説明していただけるとありがたいと思います。宮田長官が,昨年の最後の文化審議会のときに,困難はいっぱいあると,でも,私たちには夢があるとおっしゃったんですけれども,現実が夢になることがないように,是非着実にそういうことを続けていただきたい。
実はさっき申し上げましたように,人を育てるということは非常に時間がかかるんです。文科省は非常にいい取組をしておりまして,指導要領の改訂,2000年以降の改訂には目覚ましいものがあって,その影響が今,少しずつ若い人に表れてきています。大変意欲的で能力のある演奏家も育ちつつあるのですが,彼らがまだそれだけで食べていけるほどの環境が整っておりません。どうしてそんなことになったかというと,明治以来の日本の文化政策があって,そういう状況になって,その反省のもとに文科省はそういう指導要領を考えておられますし,文化庁も今までの文化政策をなさってきたと思うのですが,今年に限って,ちょっとと思うようなことがありましたので,ちょっとそこを御説明いただけたらと思っております。すみません。
【村田次長】文化庁次長の村田でございます。
中岡次長と私で分担しておりまして,私は,主として文化財を中心とした分野の担当をさせていただいております。
それで一つ,あと,また担当の方から補足もさせていただきたいと思っておりますけれども,今,薦田先生からお話があった予算の関係でいいますと,これも,予算については単年度主義といって,毎年毎年いろいろな形で見直しをしております。ただ一方で,お話がございましたとおり,継続性という部分も一方ではあるわけでございまして,そういった継続性を頭に入れながら,毎年新たな課題について対応していく。今年も,そういう意味ではオリンピックに向けて日本博ということがございますので,日本博に向けた予算について組んで,手を挙げていただいているという状況でございます。
その中で今,お話があった幾つか,従来というか,ここ数年とは違う形の枠組みで事業を展開したということがございます。その中には個別に見ていきますと,いろいろな経費の見直しですとか,あるいは考え方の見直しということがあったかと思います。端的に言うと,個別にどの件かということはちょっと今,手持ちにその資料がございませんので,細かくは御説明できませんけれども,そういった事業の見直しの中で,従来やっていたものとは違う枠組みで公募したということがあったと思います。
そのあたりは少しまた,正直言って,個別の団体から見れば,少し去年から見ると違ったということがあろうかと思いますけれども,全体的には,できるだけそういった影響を少なくしながら今年度の事業を組み立てたということでございます。ただ,これも実際やってみてどうかというのは,それぞれの団体のお立場からお話があろうかと思いますので,少し今年度の状況も各団体の方からも実情をお聞きしながら,これはまたさらに引き続き来年度以降も事業があるわけでございますので,事業の立て方等については,引き続き考えさせていただきたいと思っているところでございます。
【坪田参事官】ただいまの村田次長の補足です。け文化財,伝統文化はたくさんのセクションでやっているんですけど,芸術文化は一つのセクションでやっています。きょういろいろと,ある意味応援を頂いたと思っているんですけれども,非常にありがたい御議論がされているなというのを,先ほど渡辺委員の話,薦田委員の話から感じることができました。
芸術文化の予算を伸ばすという必要性は分かっていながらの世界だったんですけれども,先ほど言った日本博というもの,これはちょっとまだ我々の説明不足もあり,分かりにくいんですけれども,この2020年を契機に日本のすばらしい,これはいろいろなジャンルがあります,縄文から現代までということを狙っていますので,伝統文化もあるし,今の現代アート,映画,メディア芸術,音楽,これは当然,西洋音楽も含めてということでやろうとしていますので,その公募については,実は先週金曜に始まったばかりなんです。ですから,先ほどの話にありましたけれども,既存の予算はちょっとそういうことも,全体の整理とか新たに見直すこともあってということがあるんですけれども,日本博の方はまた一つ,ある意味,いいものは単価も大きく実際に出せるようになっていますので,そこはまたいろいろと,個別のことはあれですけれども,全体としては,きちんと各団体の思いとかニーズを受け止めてやっていきたいと思います。
そこで一つ大事なのは,既存の舞台芸術を支援する事業もそうなんですけれども,毎年毎年やはり工夫もしていただく必要があるなということを我々は感じております。その中で厳正な審査をしてということと,継続分とやっぱり新規分,新規の参入,新しい試みをする団体などもこうやって入れていくとなると,ある意味でずっと支援を享受してきた団体についてもいろいろと見直しをしていかないと,そことの新しい新規をこうやって我々も引き上げていく関係では,やっぱり全体の調整が関わってくるというのもありますので,そういうこともふだんのもっとコミュニケーションをとっていくことが大事かなと思っていますので,そういう意味では私も,分野ごとに,密接な対話をもって次の概算要求に備えようとしていますので,そういう個別の動きと,また,この総会や,あと,文化政策部会の方でも大きく議論を頂いて,いろいろな,我々にとっても,こういう説明をしたらもっとこの芸術分野を伸ばせるんだというようなことを,知恵といいますか,アイデアというかそういうのを頂ければ,我々もさらに,拡充する方から,また組み立てていくということがかなっていくと思いますので,是非ともいろいろな御支援を頂きたいと思います。
特に,渡辺委員の先ほどのクラシック音楽,本当にまさに先生が言われたような指摘をよく我々は受けているんです。どうして西洋音楽をと,日本でというようなことにおいてちょっと説明に窮する部分があるんですけれども,すごくクリアな,なるほどというのを頂いたので,これからそのように説明すればいいなということは非常にありがたいし,ほかの映画音楽も含めて,全ての芸術の方へ影響していく,そこのもとになっているというような説明の仕方も非常に,我々も何となくは分かっていましたけれども,今すごくクリアに教えていただいた感じがしますので,その辺のデータ的なものは多分補強しないといけない部分があるので,またその辺のお知恵を是非頂きたいと思っておりますけれども,我々としても努力をしていきたいと思っております。ありがとうございます。
【佐藤会長】ありがとうございます。
文化庁全体の予算は決してマイナスになっているわけではないというふうに承っていますので,是非補助金の配分等は見える形で進めていただければと思います。
また,日本博については,先ほど御説明があった国際観光税が財源になって,これは通常の文化庁予算とは別に予算が来るということですから,これは是非有効に使っていただいて,これは年限があるというものではないと思ってよろしいのでしょうか。
【中岡次長】先ほど私の方から国際観光旅客税の話を切り出したものですから,ちょっと補足させていただきますけれども,国際観光旅客税というのは,基本的に日本を出国する方から1,000円を頂くということでございます。御案内のとおり,外国から入国されている方というのは約3,000万を超えたということでございまして,これをオリンピックのときには4,000万,さらにはそれを6,000万に引き上げていくという話になっておりますけれども,そういうことになりますと,おのずとその財源自体は増えていく。なおかつ,単発の財源じゃなくて恒久の財源でございます。
したがいまして,我々としては,それを今回,文化庁で100億円を執行することができるということでございますので,先ほど薦田先生の方から御心配がございましたが,まさに日本博の事業で,ある程度,そちらの方でどうしてもダブりが出てくるものですから,そこら辺を整理しなきゃいけないということで,既存予算につきましては,整理した部分が一部ございます。ただ,全体といたしましては上乗せが約9億円弱ございますので,文化全体から見れば,これはある意味,充実している。なおかつ,それは単年度の補正予算ではなくて,恒久的に財源が出てくるということでございます。
ただ,国際観光旅客税というのは枠組みがございまして,日本の地域の文化を活用したものというのに焦点が当たっております。我々としては,それを実演芸術も含めて読めるように,ある意味柔軟に解釈させていただいている中で,そういったものも使えるようにしようということでございます。ただ,当然,それはKPIがございまして,しっかりと成果が出ないと引き上げられる可能性がございますので,我々としては初年度から,そこら辺につきましては極めて慎重に事を運んでいきたいなと思います。
これは,毎年100億円近いお金が積み上がりますと,10年になればという話になりますとすごいお金になりますので,それはしっかりと取らなきゃいけないということと,もう一つ補足いたしますけれども,昨年,国際文化交流の祭典の実施の推進に関する法律が,議員立法でございますけれども,できました。これは,議員の提案者の考え方といたしましては,日本にベネチアビエンナーレのような大きな祭典を作り上げるべきであるというような思いの中で議員立法ができたのが昨年6月でございました。それに向けまして,その祭典法第7条の基本計画といいますのを去る3月29日に閣議決定をもって決めたわけでございます。しかも,その中に実は日本博をこっそり入れておりまして,ということになりますと,日本博の成果が,そういった国際祭典に結び付くというような計画でございますので,我々としてはそれを,ある意味恒常的に作り上げていきたいなということでございます。
御案内のとおり,ベネチアビエンナーレは100年以上の歴史の中で,やっと今ああいう状況になっております。日本にふさわしい祭典がどういうものであるかということはこれから作り上げていくわけでございますけれども,日本博,あるいは既存の事業の中でそういったものを作り上げていけば,そういった国際観光旅客税といいますものが,より長く活用できるのではないかなと思っております。
【佐藤会長】是非有効に,いい結果を出していただきますようにお願いしたいと思います。
新文化庁としても,これから攻めの姿勢も必要かなと思いますので,是非有効にお進めいただいて,また,これは今,中岡次長からお話があったように,多分,ある意味で評価もされるようなことになろうかと思いますので,是非,上手に適切に進めていただければと思いました。
ほかにいかがでしょうか。では,井上委員。
【井上委員】トップバッターで御挨拶させていただいて,余りちゃんと考えていなかったものですから一言申し上げるだけでしたので,もう少し付け加えさせていただきたいと思います。
先ほど渡辺委員から職業的なクリエーターのなりわいといいますか,どのような形で生活が成り立っているのかというお話,非常に詳細に教えていただきまして,これから著作権法について様々な議論に加わるときにも,そういったことをしっかり踏まえて議論していきたいと思います。
その上でなんですけれども,職業的なクリエーターを保護する,これは著作権法の非常に重要な役割だということは確かなんですけれども,ただ,著作権法の仕組みというのは,必ずしも職業的なクリエーターだけをターゲットにして出来上がっているものではなくて,例えば,よく教科書説例でいいますのは,幼稚園児が描いた絵,いたずら書きの絵でも,何の手続もしなくても無方式で著作権というものが発生して,それで著作者の死後,幼稚園児でしたら,その後80年たってその人が死んじゃった後,今年からは70年保護されるというようなものでございまして,著作者が誰だか分からない,生きているか,死んでいるかも分からない,そういう著作物が世の中にたくさん存在するということになっておりまして,そうしますと著作権者が誰か分からない著作物,本当だったらそれを活用して,世の中で様々な人が共有できるかもしれないものが死蔵されるというような状況が生まれることがあるわけでございます。
もちろんそのような弊害を是正するための仕組みというのは著作権法にも設けられているわけですけれども,なかなかそれが十分には機能していないところがあるというようなこともございます。そうしますと,著作権を,例えば職業的なクリエーターのために許可しようというふうに進めた場合に,思わぬネガティブな影響がほかに出てしまうということもありますので,その辺をうまく考えながら,本当に保護が必要なものにうまくターゲットを絞って著作権法の在り方を考えていくということが重要なのかなと考えております。
印刷ですとか書籍の社会史の本などを見ておりますと,グーテンベルクの活版印刷が発明されて,その後,聖書をはじめ様々な書籍が非常に広く流通するようになったということで,その当時は恐らく,現在のインターネットが生まれた,そのときと同じような大変革命的な情報流通の中での曲がり角だったと思います。
そのときに,先ほど中江委員からもありましたけれども,本を読む人,読者層というものが社会の中に生み出された。それまでは例えば修道院で本当に羊の皮に書かれた聖書にアクセスできる人の数は非常に限られていたわけですけれども,世の中の幅広い方々が読者として生み出されることになったわけですね。読者があって初めてクリエーターの作られた書籍というものは生きてくるわけですから,やはり著作物の利用者と,その著作者,権利者,クリエーターが両方あってこそ初めて成り立ち得るのが文化なのかな,クリエーションなのかなと思っておりまして,そうしますと,最近はやりの言葉でいうとエコシステムというのでしょうかね,クリエーターがいて,そして恐らくクリエーターのものを伝える,書籍でしたら出版社がいて,その上で本を手に取って読む読者がいる。そういったエコシステムがあって初めて文化というのがうまく発展していくのかなと考えております。
そうしますと,著作権法というのは,著作者だけを保護するものでもないし,利用者のエゴを守るものでもないし,著作者と利用者両方がウイン・ウインの関係になれて,恐らくは伝達者の方にもうまく貢献していただけるような仕組みを考えていかなければいけないんだと思っておりまして,そんなことを考えていても,現実になかなか著作権法の在り方を考えていくときには難しいことがたくさんあって,日々悩むことも多いんですけれども,大きな流れとしてはそういうことを考えながらこの仕事に取り組んでいきたいと考えております。
以上でございます。
【島谷委員】先ほど来,予算の話,補助金の話が出ておりますが,文化庁の予算,ここのところずっとほぼ1,000億で来ておりますが,京都移転を考えた場合に,これ,1.5倍ぐらいにならないと本来の仕事はできないんじゃないかなと,私なんかは素人目に見ているんですけれども,なかなかそうはならないと思うんですけれども,先ほど宮崎先生もおっしゃいましたけれども,中国あたりでも文化予算が非常に大きくなりまして,昔は日本から援助していたのに,逆に今は中国の方が先を行っていると。博物館行政を見ましても,20年,30年前は日本がトップランナーだったのですが,今はもう韓国に追い越され,中国に追い越されという状況が続いていると。
だから,日本だけを見ていると,日本の予算の中での文化庁の枠というのはそんなに突出することはないと思うんですけれども,例えばフランスだとか,中国だとか,韓国と比較してどうであるかということを,もっと文化庁さんはアピールしていいんじゃないかなと思います。それをしない限りは,文化予算が減るとほかの部分も減っていくというのは必然になりますので,これだけ守っていこうとしても,財布がないとどうにもなりませんので,パイを増やすような努力,それは文化庁が幾ら言ってもだめで,逆に審議会で言うことが適切かどうかは分かりませんが,世間にそういう風潮が広がっていくということが必要だろうと思うんです。
だから,観光立国を目指すために日本文化を大切にしようということで,官邸とかは今,一生懸命やってくださっていまして,我々のところに強い風が吹いているんですけど,一見逆風のようなんですけど,我々はそれを順風として捉えているのですが,多言語化であるとか,いろいろな形で今,苦労しながらやっております。
さっき,中江委員の方から「令和」という新元号の話が出ましたけれども,まさしく「令和」の舞台になったのが私の館があります太宰府でございまして,発表のあった次の日からすごい人が詰め掛けておりまして,このゴールデンウイークはどうなることかなということで,私の館もすぐ,巻五の万葉集を次の週の月曜日に展示しまして対応しておりますが,月曜日もブランド創造委員会というのを太宰府でやる予定でおりますが,その「令和」の「令」の点か,下をはねて真っすぐおろすかというのは,やはり私,書が専門なので,非常に気になりました。ここは文化庁なんですけれども,文科省的には教科書体活字の筆記体でいくと絶対,点なんですよね。あれ,内閣府の技官が書いたから,相談を受けていないからしようがないと思うのですが,学校教育の場であれば絶対,点でいくべきだなというふうに,書の専門家としては思っております。
それは,日本の文字が簡略化されて現行書体,教科書体活字,若しくは学校教育の中でこれだけ使っていいという文字になったから,あの形になったわけではなくて,専門的にいいますと,中国の唐時代,「雁塔聖教序」,これは初唐の三大家と言われた人が書いた楷書の本,テキストですけれども,その中,それから,智永の千字文という,王羲之から7代の孫が書いた真草,行書と草書の千字文の中にもこの字がありまして,点なんですよね。
あえて菅官房長官がこうやったわけですけれども,ああされると多くの人はあの字を書かなきゃいけないと思うし,小学生に書かせてSNSに発信されているのを見ると,大体,手本はこうなっているんですよね。子供もそう書きます。でも,学校ではそう教えないというので,すごいギャップがあるんじゃないかなと思うんですけど,そこに注目が当たるということはとてもいいことかなと思っておりますが,そこに文科省とか文化庁が関与できなかったのは漏れないためということで,しようがなかったかと思いますが,そういうところも大切にしていかなきゃいけないかなと思っております。
国語分科会,著作権分科会,その他分科会いろいろありますけれども,その中で私なんかは特に微力ですが,できることというのは限られておりますけれども,そこで答申として答えるだけではなくて,世間に,事前に発表してはいけませんけれども,何らかの形でやっていくことが求められているんじゃないかと思います。
SNSについても,それだけつぶやきたい人がたくさんいるということ,それが一つの日本の文化になりつつあることで,ブームを作っていること,そういったことを考えると,私が所属する博物館なんかでも展示場で撮影していいものを増やしていかなきゃいけないかなという課題はありますが,そこで著作権の問題であるとか,それを持っている人の所蔵権の問題であるとか,いろいろな問題が発生しますが,それをクリアしていくのもこういった場ではないかなと思っておりますので,とにかく持てる力を皆さんで結集して,いい日本文化を作っていくことが大切かなと思っております。
とにかく観光立国で,3,000が4,000,5,000にはなるでしょうけれども,6,000以上を目指すためには,その文化がなければ人は来てくれませんので,文化庁の方としては,やりづらいかも分かりませんけど,予算倍増,3倍増ぐらいでやっていただければいいんじゃないかなと強く思っております。失礼いたしました。
【佐藤会長】まとめていただいたようで,ありがとうございます。
京都移転などの話を大分前に話していた頃には,文化省を是非作ってほしいという御意見もいっぱいあったように記憶しておりますけれども,是非これから,やっぱり文化,私は日本のこれから進んでいく上でも非常に大事なものだと思いますので,それを理解いただけるように審議会ともども頑張っていきたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
そろそろ予定の時刻が近づいているのですが,特にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,今後,各分科会,部会においてそれぞれの審議を進めていただくことになります。それぞれ実り多い審議となりますように,各委員には御協力をよろしくお願いいたします。
最後に,事務局から事務連絡をお知らせいただき,閉会としたいと思います。
【佐藤企画官】事務局でございます。
本日も活発な御意見を頂きましてまことにありがとうございました。
今後の日程でございますけれども,別途改めて御連絡をさせていただきたいと考えております。また,当面,各分科会,部会ごとに会議を開催するということにさせていただいて,各課の担当からまた追って御連絡をさせていただければと考えております。
最後に,机上の文化審議会委員の発令書でございますけれども,くれぐれもお忘れなく,お持ち帰りいただくということでお願いできればと思っております。
以上でございます。
【佐藤会長】では,これにて終了いたします。どうもありがとうございました。
――了――
担当
文化庁政策課機能強化担当

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。