諮問文

16庁文第257号
平成17年諮問第15号

文化審議会

次の事項について,別紙理由を添えて諮問します。

  • ○ 敬語に関する具体的な指針の作成について
  • ○ 情報化時代に対応する漢字政策の在り方について

(理 由)

敬語に関する具体的な指針の作成について

 国際化・情報化の進展,価値観の多様化等の社会変化は,人々の言語生活や言葉遣いにも様々な影響を与えている。端的に言えば,このような社会変化に伴って,人々の言葉遣いもまた大きく多様化している。このことは,言葉の持つ豊かさとしてとらえることができる一方で,コミュニケーションを円滑化し,人間関係を構築していくことを一層難しくしている要因ともなっている。

 敬語は,我が国の大切な文化として受け継がれてきたものであり,社会生活において多様な人間関係を構築し,維持・発展させていく上で,極めて重要な位置を占めている。今後,上述の社会変化が進み,人々の言語生活や言葉遣いが多様化すればするほど,社会生活を送る上で「コミュニケーションを円滑化し,人間関係を構築していく」という敬語の機能が重要な意味を持つ。

 このような敬語の機能を十分生かすには,当然のことながら,その適切な運用が前提となるものであるが,文化庁の「国語に関する世論調査」の結果によれば,現在は,敬語の必要性を多くの人が感じつつ,必ずしも適切に運用されているとは言い難い状況にある。この点を踏まえ,敬語が必要だと感じているけれども,現実の運用に際しては困難を感じている人たちに対して,敬語の適切な運用に資する具体的で分かりやすい指針を作成することが必要であると考える。

情報化時代に対応する漢字政策の在り方について

 種々の社会変化の中でも,情報化の進展に伴う,パソコンや携帯電話などの情報機器の普及は人々の言語生活とりわけ,その漢字使用に大きな影響を与えている。このような状況にあって「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」である常用漢字表(昭和56年内閣告示・訓令)が,果たして,情報化の進展する現在においても「漢字使用の目安」として十分機能しているのかどうか,検討する時期に来ている。

 常用漢字表の在り方を検討するに当たっては,JIS漢字や人名用漢字との関係を踏まえて,日本の漢字全体をどのように考えていくかという観点から総合的な漢字政策の構築を目指していく必要がある。その場合,これまで国語施策として明確な方針を示してこなかった固有名詞の扱いについても,基本的な考え方を整理していくことが不可欠となる。

 また,情報機器の広範な普及は,一方で,一般の文字生活において人々が手書きをする機会を確実に減らしている。漢字を手で書くことをどのように位置付けるかについては,情報化が進展すればするほど,重要な課題として検討することが求められる。検討に際しては,漢字の習得及び運用面とのかかわり,手書き自体が大切な文化であるという二つの面から整理していくことが望まれる。

 以上のような観点から,「敬語に関する具体的な指針の作成」及び「情報化時代に対応する漢字政策の在り方」について,それぞれ検討する必要がある。

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