伝統文化を活かした地域おこしに向けて(概要)

I.はじめに

(1)手引きの背景
 「地方の時代」や「文化の時代」と呼ばれるように,身近な地域を中心として,地域住民の間で,地域固有の個性豊かな伝統芸能や美術工芸品の鑑賞,お祭りなどの活動への参加,歴史的な建造物・町並みや史跡等の保存・活用の取り組みなどへの気運が急速に高まってきている。

(2)手引きのねらい
 中山間地域等に残る個性豊かな地域の伝統文化は,次世代に継承していくべき国民共通の財産であり,自らの地域を見つめ直して地域の伝統文化を発見し,その継承に向けた自主的な取組を進める。
 また,地域の伝統文化を支える地域住民や民間企業との連携を図りながら,その一体的・総合的な保存及び活用を進めることで,地域の魅力を創出する。
 さらに,地域の伝統文化の保存及び活用により,地域間の交流を活性化するとともに,関連産業との連携を図る。

II.総合的な保存活用計画の策定

(1)総合的な保存活用計画の策定
 伝統文化を活かした地域おこしを進めるに当たっては,まずは,地域の伝統文化の現在の状況に至る経緯,現在の状況,実態等を詳細に調査し,その上で,調査結果を踏まえて,様々な対策を盛り込んだ,総合的な保存活用計画の策定を行うことが必要である。

(2)計画策定に当たっての留意事項
計画の策定に当たっては,以下の事項に留意することが必要である。

  1. 文化財の総合的な保護の推進
  2. 地域住民や民間企業等の活動との連携
  3. 伝統産業,地場産業や観光産業との連携
  4. ハード整備とソフト面での施策の連携
  5. 教育との連携

III.具体的手法

1.お祭り,民俗芸能,工芸技術等の継承・発展

(1)調査・記録作成の充実
 お祭り,民俗芸能等で時代の影響を受けて変化・消滅する可能性があるものを継承・発展させるためには,その現状や歴史,経緯等の詳細な調査により特色等を十分に把握し,伝承や普及などの目的に合った最適な記録作成を行うことや,これらの成果の有効活用によって,伝承者と支援者を確保していくことが必要である。

(2)後継者の確保・育成と公開の機会の充実
 お祭り,民俗芸能等を守り後世に伝えていくためには,公開の機会を増やすとともに,後継者の確保・育成のための取り組みを支援することが求められる。

(3)お祭り,民俗芸能,工芸技術等の継承・発展のための拠点の充実
 お祭り,民俗芸能等の継承・発展のための拠点の充実は重要である。特に,今後は,様々なソフト面での施策の充実に重点を置くことが必要である。
 また,施設の運営に当たっては,地域住民が積極的かつ主体的に参加できる活動の枠組みを構築すべきである。

2.歴史的な建造物・町並みや史跡等の保護の推進

(1)歴史的な建造物・町並みや史跡等の保存の充実
 歴史的な建造物・町並みや史跡等を保存し,確実に次世代に伝承していくためには,日常的な維持管理や定期的な保存修理,整備を行うとともに,防火・防犯対策や災害対策を適切に講じることが必要である。

(2)歴史的な建造物・町並みや史跡等の活用の推進
 歴史的な建造物や町並み,史跡等を有効に活用することによって,地域の歴史や文化を活かした地域おこしのための拠点として位置付けることができる。

(3)近代の文化遺産の保護の推進
 近代の文化遺産について,早急にその価値を明らかにする調査を行い,その特性に応じた柔軟な保護の措置を講じることが必要である。

3.地域の博物館・美術館の活動の振興

(1)博物館・美術館の整備・運営の充実
 文化財の保存・活用を通じて地域の歴史や文化の理解を促進する場として,地域の博物館・美術館の整備・運営の充実は,極めて重要である。

(2)博物館・美術館による文化財の調査研究・活用の充実
 地域の優れた文化財の情報を収集し,調査研究を進めることは,地域の博物館・美術館が担う重要な責務である。

(3)博物館・美術館活動を支える人材の養成の充実
 地域の博物館・美術館の機能を最大限に発揮し,人々の学習ニーズの多様化,高度化に対して,的確に応えていくためには,適切な専門職員の配置・養成を行うことが必要である。

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