重要文化財(建造物)保存活用計画の策定について(通知)

平成11年3月24日
庁保建第164号
各都道府県教育委員会教育長あて,
文化庁文化財保護部長通知

 重要文化財(建造物)の保存と活用については,文化庁は,各都道府県教育委員会の協力をお願いしているところであります。
 このたび,文化庁では,今後その一層の充実を図るため,所有者等が重要文化財(建造物)の保存活用計画を策定する際に考慮すべき事項や必要な手続に係る「重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針」を定めました。
 保存活用計画は,所有者等が重要文化財(建造物)の現状と課題を把握し,保存・活用を図るために必要な事項や,所有者等が自主的に行うことのできる範囲等を明らかにし,また,これらに関して所有者等・関係地方公共団体・文化庁等の間の合意を形成しておくことによって,所有者等による自主的な保存と活用が円滑に促進されることを目的とするものであり,所有者等が「重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針」を参照のうえ自主的に策定することが望まれます。
 貴教育委員会におかれては,域内の市(区)町村教育委員会及び重要文化財(建造物)の所有者に対して周知していただくとともに御指導方よろしくお願いいたします。

重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針

平成11年3月

(指針の目的)

  1. 本指針は,「重要文化財(建造物)の活用について」(平成8年12月25日 庁保建第161号文化庁文化財保護部長通知)においてその必要性を述べている保存及び活用に係る計画(以下,「保存活用計画」という。)を策定するために必要な事項を示すものである。
  2. 本指針は,個別の重要文化財(建造物)について具体的な保存の手法や活用の内容を規定するものではなく,多様な重要文化財(建造物)に対して対応が可能なかたちで計画に定めるべき事項や留意すべき事項を示すものである。

(計画の目的)

  1. 保存活用計画は,所有者・管理責任者・管理団体(以下,「所有者等」という。)が重要文化財(建造物)の現状と課題を把握し,保存・活用を図るために必要な事項や,所有者等が自主的に保存・活用のために行うことのできる範囲等を明らかにし,また,これらに関して所有者等と都道府県及び市町村(組合及び特別区を含む。以下同じ)教育委員会・文化庁の間の合意を形成しておくことによって,所有者等による自主的な保存と活用が円滑に促進されることを目的として策定される。

(計画の策定)

  1. 保存活用計画は,原則として所有者等が都道府県及び市町村教育委員会の指導・助言を得て策定するものとし,必要に応じて文化庁と協議するものとする。
  2. 市町村教育委員会は,必要に応じて所有者等の依頼を受けて計画策定の全て又は一部を代行することができる。

(計画区域)

  1. 保存活用計画の対象とする区域(以下,「計画区域」という。)は,所有者等の権限の及ぶ土地の範囲内において自主的に定めるものとするが,必要に応じて関係者の了解 を得てその周辺地域を含むことができる。

(計画の内容)

  1. 保存活用計画は,保存管理,環境保全,防災,活用に係る各計画及び保護に係る諸手続を定めたものからなり,原則としてこれらのすべてを含む総合的な計画として策定するものとする。(付1を参照のこと)
  2. 計画区域内に含まれる重要文化財(建造物)以外の国及び地方公共団体により指定・登録等の保護がなされている建造物及びこれと一体となった土地の保存・活用に係る計画は,関係機関と協議の上定めるものとする。

(技術的指導)

  1. 所有者等は保存活用計画の策定に係る事項について,文化財保護法(昭和25年5月30日法律第214号)第47条第4項及び国宝,重要文化財等の管理,修理等に関する技術的指導に関する規則(昭和50年9月30日文部省令第29号)第1条の規定に基づいて,文化庁に技術的指導を求めることができる。
  2. 前項に従って文化庁に技術的指導を求める場合は,国宝,重要文化財等の管理,修理等に関する技術的指導に関する規則第1条に規定する技術的指導を求める書面のうち,同条第2項第1号及び第2号に規定する書類は保存活用計画案をもって代えることができる。
  3. 計画の内容に文化財保護法第43条第1号に規定する現状変更又は保存に影響を及ぼす行為が含まれる場合は,所有者等は計画策定にあたって事前に都道府県教育委員会を通じて文化庁と協議し,必要に応じて同法第47条第4項の規定に基づいて,文化庁に技術的指導を求めることができるものとする。

(計画の確認)

  1. 所有者等は,都道府県教育委員会を通じて文化庁に計画書1部を提出し,計画の内容と必要な手続について文化庁の確認を受けることができるものとする。
  2. 文化庁は,都道府県教育委員会に計画書受理の旨を通知し,もって確認の通知とする。
  3. 保存活用計画書は,所有者等,市町村教育委員会,都道府県教育委員会,文化庁において各1部を保管する。
  4. 確認を受けた計画の内容を変更する場合は,所有者等は変更後の計画書に変更前の計画書を添えて文化庁の再確認を受けるものとする。
  5. 「国宝又は重要文化財の現状変更等の許可申請等に関する規則」(昭和29年6月29日 文化財保護委員会規則第3号)に規定する許可申請書のうち,同規則第2条第1項1~3号に定める添付書類は,確認を受けた計画書をもってその一部とすることができるが,必要に応じて仕様書等を追加するものとする。
  6. 「国宝又は重要文化財の修理の届出に関する規則」(昭和29年6月29日 文化財保護委員会規則第4号)に規定する届出書のうち,同規則第1条第2項1号及び2号に定める添付書類は,確認を受けた計画書をもってその一部とすることができるが,必要に応じて仕様書等を追加するものとする。

(関係行政機関等との調整)

  1. 都道府県教育委員会及び市町村教育委員会は,所有者等の求めに応じて指導・助言を行うとともに,以下の事項について関係行政機関等関係者との調整を図る。
    1. (1)  まちづくり施策と関連する事項(都市計画,地域整備,観光計画,環境保全計画等)
    2. (2)  防災対策に係る事項(消防計画,防火訓練,震災対策,治山・治水計画,消防団・地元住民の協力等)
    3. (3)  地域の学習活動と関連する事項(社会教育活動その他の生涯学習活動等)
    4. (4)  文化財の保存に係る事項(現状変更等)
    5. (5)  地域住民の生活に関わる事項(周辺環境整備等)
    6. (6)  その他必要な事項

(計画の作成)

  1. 保存活用計画の具体的な構成及び内容は,対象とする文化財の種別・性格等の相違や活用方針等により異なるが,別紙に示す「重要文化財(建造物)保存活用標準計画の作成要領」を参照して,保存管理,環境保全,防災及び活用に配慮して計画するものとし,併せて保護に係る諸手続を定めたものとする。(付2を参照のこと)

付1 重要文化財(建造物)保存活用計画策定の手順

重要文化財(建造物)保存活用計画策定の手順

付2 重要文化財(建造物)保存活用計画の標準構成

重要文化財(建造物)保存活用計画の標準構成
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