第Ⅲ 重要美術品の整理等について

経緯

 昭和8年4月1日に公布・施行された「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」は,当時,貴重な我が国の美術品が多々海外に流出している状況に鑑み,その輸出・移出を防止する目的で制定された。
 その認定の基準は国宝級というところに置かれ,国宝の資格をもちながら,まだ国宝になっていない,いわば準国宝を標準とするとされた。
 しかし,実際の認定においては,輸出・移出のおそれがない物件まで認定されるものもあり,また,輸出・移出を防止するための緊急措置として認定されたため,価値が定まっていないものも多数その中に混じることとなった。
 認定行為は,昭和24年まで実施され,その時点での重要美術品の件数は,美術工芸品7,898件,建造物299件,合計で8,197件となっている。
 翌昭和25年5月30日に「文化財保護法」が公布され,同年8月29日同法施行に伴い,「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」が廃止となったが,「文化財保護法」の附則において,「認定されている物件については,同法は当分の間,なおその効力を有する」とされた。
 その後今日に至るまで,文化庁では,重要美術品等認定物件分類目録等を作成するなど,重要美術品の見直しと調査を実施し,可能な物件について重要美術品の認定の取消・重要文化財の指定(格上げ指定)を推進してきた。

 法律が廃止されてからほぼ50年が経過しており,今後,重要美術品の整理等について以下のような方策を実施する必要がある。

 (注) 「国宝保存法」の下での「国宝」は,現行の「文化財保護法」の下では重要文化財とみなされることとなった。

今後の方策

  1. 重要美術品に関する総合的な調査を関係者の協力を得て,計画的に実施する。
  2. 文化庁外部の専門家により構成される会議等により,重要文化財への格上げ指定候補物件の選定を実施する。
  3. 文化庁は,会議等により選定された格上げ指定候補物件について,調査を実施する。
  4. 調査結果をもとに,3~5年の期限を設定して,文化財保護審議会に対し重要文化財への格上げ指定の提案を実施する。
  5. 上記作業の進捗状況を踏まえ,重要美術品制度の取扱いについて判断を行う。
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