日本語教育のための試験の改善について -日本語能力試験・日本語教育能力検定試験を中心として-

「日本語教育のための試験の改善に関する調査研究協力者会議」報告概要

平成13年3月30日
文化庁・日本語教育のための試験の改善に関する調査研究協力者会議報告

I 日本語能力試験の改善について

(1) 現状

1.
日本語を母語としない者を対象に日本語を測定し認定する試験。1級から4級の級別に行い,国内は(財)日本国際教育協会,海外は国際交流基金が実施。
2.
1級及び2級は留学生の大学入学選考にも活用されている。

(2) 課題

1.
平成14年度からの日本留学試験の実施に伴い,日本語能力試験の目的・役割を明確にすることが必要。
 
・1級,2級の受験者は必ずしも留学希望者のみではない。
・基本的で幅広い日本語能力を測定する試験へと目的を明確化することが必要。
2.
各級の認定基準は,学習時間数を基準とした区分となっているが,多様な学習需要に対応し,具体的な言語技能を勘案した認定基準への見直しが必要。
3.
行の三つの類別(「文字・語彙」「聴解」「読解・文法」)について,日本語運用能力測定をより重視する視点からの見直しが必要。

(3) 改善

1.
基本的な在り方
・ 日本語能力試験の目的・役割としては,日本語の知識だけでなく,実際に運用できる日本語能力を測定することを今以上に重視することが望ましい。
・ 認定基準の設定は,実際の接触・交流場面で共通と考えられる具体的な言語技能や言語活動を勘案することが合理的である。例えば,例示として「○級なら○○ができる」という,受験者にとって分かりやすい記述の方法が考えられる。
・ 現行の1級の認定基準における「大学における学習・研究の基礎として役立つような」の記述に関しては,日本留学試験の設置目的と明確に区別するため,見直すべきである。
2.
試験の構成,初等・中等教育段階の学習者への対応等
・ 将来は,文字を媒介としないで受けられる試験や,学習奨励のための「5級」相当の試験の開発が考えられるが,当面は従来の四つの級に「5級」相当の内容を含めることも一案である。
・ 海外の日本語学習者数約210万人のうち,初等・中等教育機関の学習者は約3分の2を占めている。日本語教育関係の人材が不十分と考えられる国に対しては,我が国が初等・中等教育段階の学習者向けの試験問題作成を支援することも必要であろう。
3.
試験の類別
・ 言語の知識面を問う「文字・語彙・文法」と,言語の運用面を問う「聴解」「読解」のような分け方が望ましい。
4.
試験の実施体制及び方法
・ 国立国語研究所等を核として,基礎的データの整備や日本語の試験のための基礎的な調査研究などの日本語教育支援体制を検討することが必要であろう。
・ 実践的な運用能力を測定する方法については,改善着手可能な部分と将来的な課題に分けて考え,具体的な実施を念頭に調査研究を継続して進めることが必要であろう。

調査研究報告 本文

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