事業の目的
文化審議会文化経済部会等において、我が国の美術品市場の脆弱性が指摘されており、具体的には、鑑定評価の透明性・客観性と来歴管理が課題とされている。鑑定評価の透明性・客観性については、文化庁では、令和4年度「公的な鑑定評価に関する作業部会」及び令和5年度「文化経済部会基盤・制度ワーキンググループ」での議論を経て、令和6年4月23日に「美術品(近現代分野)の鑑定評価における価格評価事業者認定制度」及び「美術品(近現代分野)の鑑定評価における価格評価の手法、手順についてのガイドライン」を決定した。同制度は、美術品の価格評価の信頼性向上を目的として、過去の取引事例等に基づいた透明性・客観性の高い方法で価格評価を行う事業者に対して文化庁長官が認定を与えるものである。本事業では、過去の取引データ等へのアクセシビリティを向上させる基盤を整備するとともに、美術品の来歴管理の強化を目的として、市場に流通する美術品の取引履歴をデジタル的に捕捉する実証を行う。
事業内容
令和5年度
美術館や博物館において、収蔵品管理の標準化に向けたプロセスを進める。標準化の手法について令和4年度の実施内容を踏まえた導入試行を行うことにより、次年度以降により多くの館に横展開するための方向性・方針を今年度事業において決定する。また、国内各地に所在する美術品について、情報の分散的管理や改ざん困難な方法での収集・蓄積を進める仕組みづくり・インセンティブ設計を目的とする調査・技術導入実証を行う。さらに、我が国において美術品の価格評価が透明性・客観性の担保された形でなされ、その実績が蓄積されるとともに必要な機関・人材に向けたアクセスが担保される仕組みづくりをするべく、国内のデータの所在やステイクホルダの調査を踏まえたアクセシビリティの確保や管理のあり方について提案する。加えて、国内アート市場の売買額を網羅的に把握するための基礎的な情報収集と国外調査への接続、国際的な広報・啓発を行う。
令和6年度
これまでの議論及び令和5年度事業の内容(*4)を踏まえ、広く国内外で実施されている美術品の取引事例に基づいた価格評価を支援する基盤構築について、今後どのように進めるべきか検討する。
令和7年度
「認定制度」をふまえた価格評価の実施を促進する観点から、国内の価格評価事業者による価格評価実績を蓄積・登録するためのデータ基盤の在り方を検討すること。令和6年度事業の内容を踏まえつつ、基盤の構築について提案を行うこと。
報告書

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