文化審議会著作権分科会(第55回)(第19期第2回)

日時:令和2年2月10日(月)
15:00~17:00

場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂

議事

1開会

2議事

  1. (1)写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)について
  2. (2)法制・基本問題小委員会の審議の経過等について
  3. (3)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について
  4. (4)国際小委員会の審議の経過等について
  5. (5)「外国人児童生徒等への音声教材の提供における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」における検討状況について(報告)
  6. (6)その他

3閉会

配布資料

資料1-1
写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)の概要(99.3KB)
資料1-2
写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)(242KB)
資料2
令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(227.2KB)
資料3
令和元年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(46.3KB)
資料4
令和元年度国際小委員会の審議の経過等について(275.6KB)
資料5
外国人児童生徒等への音声教材の提供について(192.1KB)
―「外国人児童生徒等における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」における検討状況―
資料6
著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額について(54.4KB)
参考資料1
第19期文化審議会著作権分科会委員名簿(125.6KB)
参考資料2
文化審議会関係法令等(145.3KB)
参考資料3
「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(令和2年1月16日)(534.2KB)
出席者名簿(61.4KB)

議事内容

【道垣内分科会長】まだ一部到着されていない委員もいらっしゃいますけれども,定刻になりましたので,ただいまから第55回の文化審議会著作権分科会を開催いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の議題の公開についてでございますけれども,予定されている議事内容を見ますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には御入場していただいているところでございます。この点,何かございますでしょうか。

では,議事は公開ということで,傍聴の方々にはそのままいていただきたいと存じます。

では,最初に,配付内容の確認を事務局よりお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただければと思います。

まず資料1-1として,写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)の概要,資料1-2として,その報告書(案)の本体をお配りしております。また,資料2として,令和元年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について,資料3として,同じく著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について,資料4として,同じく国際小委員会の審議の経過等についてをお配りしております。また,資料5が外国人児童生徒等への音声教材の提供についてと題する文部科学省教科書課からの提出資料,最後の資料6が,著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額についてと題する資料となっております。

また,参考資料1として,今期の本分科会の委員の名簿,参考資料2として,文化審議会関係法令等,参考資料3として,「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめをお配りしております。

不足などございましたら,事務局までお伝えいただければと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。本日の議事は,配付されている紙の最初のところにございますように6つございまして,最初が写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)についてでございます。2番目が,法制・基本問題小委員会の審議の経過等について。3番目が,著作権等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過報告等について。4番目が,国際小委員会の審議の経過等について。5番目が,先ほどお話がございましたように,外国人児童生徒等への音声教材の提供における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会における検討状況についてでございます。著作権法に関する部分が出てくるものですから,それについて御報告いただきます。そして最後に,その他でございます。

では,最初の1番の議題に入りたいと思います。法制・基本問題小委員会におきましては,今年度幾つかの課題について御審議,御検討いただきましたけれども,そのうち写り込みに係る権利制限規定の拡充につきまして,1月24日に開催されました同小委員会におきまして報告書(案)が取りまとめられました。その他のテーマについては議題の(2)の方で御報告いただきますけれども,まずは報告書(案)ができておりますこの点について,主査の茶園委員,それから,事務局から補足があれば補足の御説明をお願いいたします。

【茶園委員】それでは,写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する報告書(案)につきまして,資料1に基づいて御報告をさせていただきます。

写り込みに係る権利制限規定,これは著作権法30条の2が定めるものですけれども,この規定は平成24年の著作権法改正によって創設されたものです。しかしながら,社会実態の大きな変化によりまして,本規定の適用場面が限定されていることの問題点が顕在化してまいりました。

このような状況を踏まえまして,法制・基本問題小委員会におきまして,本規定の本来の趣旨・正当化根拠,あるいは現行規定が有する課題等を整理しつつ,条文上適法になる利用の範囲を明確化・拡充することについて集中的に議論がなされてまいりました。議論の結果,見直しの方向性について一定の見通しが立ったことから,昨年の10月には当該小委員会におきまして中間取りまとめを取りまとめまして,その後,1か月の意見募集を行いました。その結果を踏まえたものが,先般の小委員会で御了承を受けております。この詳細につきましては,事務局から追加説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。それでは,資料1-1に基づきまして,報告書(案)の概略について御紹介を申し上げたいと思います。

1.問題の所在につきましては,先ほど主査からございましたとおり,平成24年の法改正で写り込みに係る権利制限規定が創設をされておりますけれども,要件が厳格に設定されている結果,必ずしも妥当な結論を導けない場合があるということが,従来から指摘をされておりました。またこれに加えて,スクリーンショット,個人による生配信など,新しい利用形態が広がっていく中で,問題点がより顕在化してきたという状況がございます。こういう点を踏まえながら,規定の明確化・拡充について検討を行ってきたということでございます。

次に2.基本的な考え方でございます。小委員会の中では,本規定の本来の趣旨・正当化根拠を確認するとともに,平成29年に権利制限規定について,第1層,第2層,第3層という分類を行いましたので,本規定がそのどこに該当するかという点も確認しながら検討を行ってまいりました。

結論としては,ここにございますとおり,可能な限り柔軟な対応が認められるよう,様々な行為を行う際に,現実的な支障が生じ得る部分については要件の緩和などを行うことが適当とされております。ただし,2つ目の丸にございますとおり,要件の緩和などによって想定外の利用対応にまで適用範囲が拡充されたり,濫用的な利用,既に形成されているライセンス使用の阻害などが起こらないように十分注意することが必要であるということも付記されているところでございます。

次に3.が検討結果でございます。(1)から(6)までに分けて記載をしておりますので,順に御紹介いたします。

まず(1)が,対象行為の範囲についてでございます。現行規定上,写真の撮影,録音・録画が対象になっておりますけれども,ここにございますとおり,生放送・生配信,スクリーンショット,模写,CG化など,様々対象となる行為が想定されますので,こういった形で写り込みが生じ得る行為については,技術・手段等を制限せず,広く対象に含めることが適当とされております。このため,条文化に当たりましても,包括的に規定することが適当ということになっております。ただし,それによって写り込みが生じ得るものとして想定している場合以外,全く関係ないような事例が対象に含まれてしまうことは適切ではありませんので,法文上,適切な表現で対象行為を特定する必要があるということも記載しているところでございます。

次に(2)が,著作物創作要件についてでございます。現行規定上,著作物を創作するに当たってという要件が課されているところでございますけれども,この規定の本来の趣旨からすると,必ずしも著作物創作という場面に限定する必要性はないため,固定カメラでの生配信,スクリーンショットなど,創作と認められない行為にも対応する観点から,著作物創作要件は削除することが適当という形になってございます。

次に(3)が,分離困難性・付随性の要件についての取扱いでございます。本規定の正当化根拠と冒頭に記載しておりますが,こちらはその著作物の利用を主たる目的としない,他の行為に伴って付随的に生じる利用だと,これがこの規定の本質的なところだ整理をされておりますので,そういう意味では付随性というものが重要な要件になるということでございます。一方で,分離困難性につきましては,かなり厳格な要件でございますが,この要件によって外形的・画一的な判断を行うことまでが必須とは考えられませんので,分離困難性の要件は削除し,実質面に着目した柔軟な判断を可能とすることが適当とされてございます。

ただしその際に,2ページ目にございますとおり,単に分離困難性の削除を行うだけでは不都合な事例があるということも,パブリックコメントなどで指摘をされたところでございます。

具体的には,まず1で濫用的な行為と書いておりますが,例えば,分離が容易かつ合理的であって,その著作物を利用する必要性・正当性が全然認められないのに意図的に著作物を入れ込む,こういった行為を招くのは適切ではないということがあります。

また,2として,既にライセンス市場が形成されており,無許諾での利用を認めた場合には権利者の利益を不当に害することが明らかな行為というのもあり得るところでございます。例えば,テレビ番組におけるBGMとしての利用ですとか,ブライダルの記録用ビデオを作成する際に主要な場面で流れる楽曲を収録する行為,こういったものが2に該当するということで,パブリックコメントでも御意見を頂いております。

また,3として,みずから利益を得る目的で他人の著作物を意図的に利用する場合など,権利者から許諾を得て利用することが可能かつ合理的と考えられる行為もあり得るということでございます。例えば,ネット配信をするときに,それとあまり関係ない有名キャラクターのフィギュアであるとか,有名画家の絵画などを意図的に入れ込む行為ですとか,ゲームの実況動画を配信する際にゲームの映像を利用する,こういった行為については,3に該当すると考えられるということで,パブリックコメントでも御意見を頂いております。

こういった1,2,3のような行為は対象にならないように除外をしつつ,社会通念上正当と認められるものは幅広く対象にする必要がございまして,こういった観点から,考慮要素を幾つか例示した上で,その他の要素に照らし,「正当な範囲内において」などの要件を分離困難性にかえて規定することが適当ということになってございます。

なお,2つ目の丸にございますように,本規定の対象としては,メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合,これが典型的に想定をされておりまして,現行規定もそういった前提のもと,規定がされております。ただ,具体的な事例について考えますと,街の雑踏を撮影する場合のように,被写体である街の雑踏の光景全体が被写体であって,その一部に著作物が付随的に入り込んでいるという場合も想定されますので,こういった全部の中に一部著作物が入り込むという場合についても対象に含まれることを明確化することが適当とされているところでございます。

次に,(4)が軽微性の要件についてでございます。現行規定上も軽微な構成部分ということで規定がされておりますが,この軽微性の判断がどのようにされるかというのが条文上明確になっていないという問題がございました。ここにございますとおり,具体的には全体に占める著作物の面積の割合だけではなくて,画質,音質,利用時間,作品全体のテーマとの関係での重要性などから総合的に判断されるものでございますので,それを明らかになるように考慮要素を複数例示をしつつ,その他の要素に照らし,軽微な構成部分となるものといった形で規定することが適当とされております。

次の(5)対象支分権についてでございます。こちらは(1)の対象行為の拡大に連動するものでございますけれども,生配信なども幅広く対象に含めることに伴いまして,公衆送信や演奏・上映などを広く対象に含めるよう,いずれの方法によるかを問わず利用することができるという包括的な規定とすることが適当とされております。

次に(6)ただし書きについてでございます。ただし書きについては,ほかの権利制限規定と同様,権利者の利益を不当に害しないための歯止めとして重要な規定ではございますけれども,この規定のただし書きというのはあくまで最終的な安全弁として想定をされたものでございまして,具体的にこういった事例がただし書きに該当するのだということがイメージされていたわけではないという特殊性がございます。この点,今回の見直しで対象行為広げておりますけれども,あくまで本規定の本来趣旨,正当化根拠が妥当する範囲で柔軟な対応が認められるように拡充するというものでございまして,先ほど紹介したような付随性,正当性,軽微性,こういった様々な要件がかかっておりますので,基本的に今回の見直しによって,ただし書きの適用場面・事例が大きく拡大することは想定されないとされております。

ただし,括弧書きに記載しておりますとおり,対象行為が大幅に拡大することは事実でございますので,それによって既に成立しているライセンス市場などとのバッティングが生じる可能性は,従来よりも増加していると考えられますので,仮にそういった事態が生じた場合には,当然このただし書きが機能し,権利制限規定の適用が除外されることになるということも記載しているところでございます。

最後,4.がその他(周知・普及啓発)の関係でございます。今回,対象行為を拡大して規定を柔軟化することに伴いまして,誤解などに基づく不適切な利用を防止する必要がございます。また,逆に,本来,権利制限の対象となるはずの行為が無用に萎縮してしまうということも避けなければなりませんので,この両面から,法整備を行う際には,その趣旨や各要件の解釈などについて,周知・普及啓発によって明らかにしていくことが重要ということが記載されているところでございます。

以上が概略でございまして,その問題意識や背景などにつきましては,資料1-2の本体を適宜御参照いただきたいと思います。

事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

では,ただいまの御説明がありました報告書(案)について御意見等ございましたら,お願いいたします。

【久保田委員】当協会は,ゲームソフトメーカーやコンテンツメーカーが所属している団体です。この写り込みに関する権利制限規定の拡充につきましては,固定方法としてCG化等も対象に含まれている中で,ゲーム制作においても,創作活動を促進することにつながるということで,ゲームメーカー等は非常に期待しているということで,賛同したいと思っております。

ただ,今言われました分離困難性が除外されることにつきましては,どういう形のものが妥当するか,具体的にそういうものを抽出して,法改正後の解説,条文の解説等では,濫用行為が行われないために,きっちりと具体例を挙げて,そういった写り込みに該当しない,不正な利用行為も記載していただきたい。ガイドライン等の中で,教育・啓発をしていく観点で非常に重要かなと考えております。以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。

大渕委員,この前の改正のときにいろいろ御活躍いただいたので,特に分離可能性の要件をなくして置きかえることについて,何かもう少し御説明いただくとありがたいですが。

【大渕委員】分かりました,御指名ですので。今,御指摘がありました写り込みについては,平成24年度改正で,一度,立法がなされております。その際に,私は法制・基本問題小委員会に属していたのですが,端的に申し上げますと,今回できました最終的なものというのは,平成24年に我々がイメージしていたものとほぼ同じであります。その後の社会の実態の変化にも対応しつつ,我々が24年改正のときにイメージしていたのと同じぐらいの広さになっています。平成24年改正は,立法化に当たって,典型例に絞ったために,条文の見た目としては,我々が当初思っていたよりも狭くなってしまいました。行間を読めば一緒だったのかもしれませんが,基本線はむしろ今回の方が正しくて,我々が当初思っていたものとほぼ同じくらい,社会通念上写り込みと言えるようなものまで広げていただいたといえると思います。

ただ,さはさりながら,前に一度絞った形になっているものですから,今度それを外すに当たっては,外すだけだと広がり過ぎるところもあります。そのような意味では,我々が当初思っていたものに非常に忠実に近いものにしていくために,絞り込みすぎた要件を外して,別のより適切な要件に代えていただいて,要するにきちんとそれを描写していただけるような要件に落としていただいたものだというように理解しております。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。どうぞ,渡辺委員。

【渡辺委員】今のこの案の中で1つ気になるのは,分離困難性の削除というところで,社会通念上正当と認められるというこの範囲が,社会通念上というところが一般の人々にとっての社会通念というのは様々なので,特に私は音楽に関わる者ですが,音楽が,例えば動画投稿,あるいは生配信に関わる部分で,やや心配なところがあります。

例えば,一般家庭で子供の誕生日を祝うという動画を撮っている。その背景で,何となくハッピーバースデーに関するいろんなアーティストの音楽が,別に故意ではなく,楽しい雰囲気を作るために子供のために流されている。その中で,自然な形で撮影をする。自分がユーチューバーだった場合,それを配信するという行為は多々あり得るわけですが,それは意図的ではないが,私から見れば,これは違法というふうに感じるわけですが,ただ,一般的な人々にしてみると,いや,そのぐらいはいいんじゃないかというようなことを思う方々もいらっしゃるかもしれないというので,その辺の社会通念上正当と認められるという言葉だけで,どこまで一般の方々に深い著作権というものについての御理解が得られるかどうかというのは,多少――多少というかかなり不安です。

日頃,私はJASRACにも関わっておりますから,JASRACの行為自体を批判している人々もかなりいて,どうしてかなと私は思うんですが,なかなか理解が得られにくいところです,著作権というものは。ですから,そこをそもそもまだ理解を得られていない段階で,このように広げたときに,よほど細かく細かく具体例を挙げていかないと,なかなか浸透しないだろう。後で気付かされるというようなことがあり得るだろうと思いますので,そこら辺を是非盛り込んで,そういうことが起こらないようにしていただければなと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。もう少し問題とされているイメージを明らかにして頂けますか。音楽は流れていても,会話が入っていたり,あるいは音質が非常に悪いものであればよさそうだと私は思うんですけれども,それでもやっぱりまだ御心配ですか。

【渡辺委員】つまり,ムード作りの音楽ですよね。例えば,ハッピーバースデーの,あるいはクリスマス。クリスマスなんかは私,やっぱりクリスマスシーズンになると御飯食べながら,クリスマスに関連する音楽を自分の家庭では流しています,私の場合ね。別にそれは何となくいつも流れている。その中で,特に子供ですね。私が一番想定するのは,やっぱり親御さんで,一般的な人々の行為として楽しく子供の楽しげな姿を撮りたいと。これはたくさんあると思うんですが,そのときにたまたま音楽が流れている。それをもし投稿するなら,わざわざ消さなきゃいけないんだよということを理解していただけるかどうかなんですよね。それが一般通念からすると異常な行為というふうに,一般社会の通念からすると外れているというふうに思われるのかどうかということも含めて,私は非常に心配しております。

つまり,それが認められてしまうと,例えば,ユーチューバーがクリスマスシーズンに,ユーチューバーですよ。それがムード作りのためにクリスマスの関連の音楽を流しながら何らかの行為をする。ユーチューバーはそれで金銭を得ているわけですから,ムード作りのための音楽という点では一致しているわけです。ただ,心情としてはまるで違うわけですね。親御さんが何となく流しているという,全く意図しない音楽の使用の仕方と,それから,ユーチューバーの場合は意図的というふうにも考え得るわけですが,一般的な動画を投稿されたときに,一般家庭の中で何となくバックミュージックとして流れているクリスマスの音楽,あるいはハッピーバースデーの音楽,その他の音楽,それが楽しげなムードの中で撮っているんだからいいじゃないかということがもし,これは問題ないということになってしまうと,それではじゃあ,それがオーケーなら何で自分のはだめなんだろうということを言い出す,意図的な方々もあり得るのではないかという点で,私は前者の楽しげな中での自然な行為においても,そこはノーとするべきであるという思いを持っております。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。どうぞ。

【瀬尾委員】写真って写り込みに大変深く関わっているかと思います。まず最初に,写り込みの話以前に,1つ私が申し上げたいことは,著作物というものの性質というのが,今大きく変わっている時代にあるという認識が,果たして皆様とどれだけ共有化されているか。つまり,これまでは人の創造性,人又は感情を表現する唯一無二のものであって,非常に貴重なものなので,これについては重要性をもって報いるということが著作権法にあったと思います。ただ,公表も難しかった。そして,唯一無二の時代から,みんなが簡単に簡単に著作物を作って,簡単に公表できてしまう。その著作物というのは,渡辺委員のおっしゃったような,従来からの著作物ですね。情報としての性格が強い著作物というのは,明らかに性質というか,使い方も違うと思うんですけれども,それが混在している時代にある。そこで多分,今,渡辺委員のおっしゃるようなジレンマが生まれるんじゃないかと思うんです。これまでのプロの習慣と,アマチュアの中で流れている一般習慣,つまりそこには著作物性の違いがあると私は思っています。

その中で,私はやはりこれまでのマーケットを壊すような使い方というのはただし書きに相当するし,ただし書きが必要だと思いますけれども,新たなそういう創作された,言い方は申し訳ないんですが,アマチュアが作ったようなもの,情報性の高い著作物,若しくは流布することを前提に作って,著作権も余り意識していないような著作物,それが大量に現れたときに,この写り込みの規定がないと,世の中に膨大な著作物があふれているために,まちを撮ったら何か写ります,必ず。

なので,私はやはりそこら辺のところの著作物というのを,これまでの単一の捉え方じゃなくて,複数の概念で捉えていき,かつ方法分けをしていく。例えば,これまでのマーケット,渡辺委員のおっしゃるような,アマチュアに押されちゃったら,これまでのプロのマーケットと,そういったものを使い倒されちゃうんじゃないのという危惧,これをちゃんときちんと担保しつつ,情報性を強く押し出して,著作者も利用を前提にしているような著作物は,私は使える方向にしていかないといけないというふうに思っていますし,これは写真のエゴではなくて,やはり情報というものについては,相当な範囲が利用されていく方向にあるのではないかなと思います。

もう一つは,情報ということから考えても,例えば写真は情報そのものです。写真の中には非常に多くの情報がある。表現と同時に情報そのものであるともいう。これがとれなくなるし,とれなくなるというのはまたちょっと別の理由ですけれども,公表がほとんどできなくなってくる。もっと一般的に言ってしまうと,アーカイブ化ができなくなっちゃうんですね。このアーカイブというのは,AI時代にとって最も重要な社会コアになっていくときに,その中に写真が入らなくなってしまう。そういうようなことがあるとすると,やはり私はこの著作物の捉え方を多面的に捉えていって,そしていろいろな適用によって著作物をアーカイブとかAIとか社会的な流用とか,普通の人が普通に作って,それを共有できる喜びみたいなものを生かせるような体制にしていくとすると,私はこの写り込みは非常に重要な切り口だと思いますし,私は一定の不安をちゃんと除去するような方法をとりつつ,かなり大胆に拡大していくことが必要なんじゃないかなと思います。

特にまたアーカイブの話が出ましたので付け加えますと,将来的にはこの写り込みだけではなくて,例えば著作権と関係ない肖像に関する権利,パブリシティー権,プライバシー権。そういったものも全て含めて,トータルに著作物の流通する時代というものを,私はこの文化審議会の中でも著作権に関することだけではなくて,新しい制度として是非検討の場に載せていただきたいなと思います。ちょっと長くなりましたが。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。この場は報告書(案)を採択して,資料1-2から案を外し日付を入れてもよいかというのがここでの問題でございますけれども,ちょうどよいという御意見と,少し心配という御意見と,もうちょっと広げてもいいんじゃないかという御意見と様々ある中で,具体的にこの言葉をこうしていただくとありがたいとか,そういう御指摘がございましたら非常にありがたいんですが,いかがでしょうか。

渡辺委員。

【渡辺委員】今の瀬尾委員のおっしゃったことは,私もそのとおりだと思います。ただ,音楽というものは,音楽に限って非常に微妙なところがありますので,音楽についてだけ特に特筆して何か条項というかな,何かを加えていただけると非常にありがたい。そのほかの面についてここに書かれていることは,私はこの方向でいいというふうに思っております。

【道垣内分科会長】前田委員,どうぞ。

【前田委員】今の渡辺委員の御意見についてなんですが,私はこう思います。まず,音楽だけ特別の扱いをする文言を付け加えるのはなかなか難しいだろうと思います。先ほど一般家庭でのホームパーティーをご家族が自然なかたちで撮影したビデオで,その背景でハッピーバースデーとかが小さく流れている場合と,それから,ユーチューバーがその動画のムード作りのために音楽を流しながら何かする場合という2つの例を挙げられたかと思いますが,その2つの例の間にはやはり違いがあり得るのだろうと思います。

この報告書,資料1-2の7ページの一番下のところでございますけれども,正当な範囲内かどうかの考慮要素の例といたしまして,その著作物の利用により利益を得る目的の有無ということと,それから,分離困難性の程度というのが挙げられているかと思います。ユーチューバーが動画のムード作りのために音楽を流しながら何かする場合というのは,著作物の利用により利益を得る目的がある場合と考えられることも多いでしょうし,それから,分離困難性の程度も低いと思います。それに対して,一般家庭でのホームパーティーをご家族が自然なかたちで撮影したもので,しかも背景において音楽が小さく鳴っているにすぎないというようなケースであれば,著作物の利用により利益を得る目的はない,あるいは希薄であるということが多いと思いますし,分離困難性も高い。わざわざ音楽をつけたのではなく,分離困難性の程度が高いと思いますので,この報告書に書かれている考慮要素によってうまく切り分けができる可能性があるのではないか。そうすると,あえて音楽についてのみ特別の要件を記載する必然性はないように私は思います。

【道垣内分科会長】では,まず渡辺委員どうぞ。

【渡辺委員】今の前田委員がおっしゃったことはそのとおりだと思います。そのとおりなのでありますが,私は今,極端な例でユーチューバーと申し上げましたが,いわゆる一般的な,特にユーチューバーになろうとまでは思わない一般的な方々が投稿する際に,何となく音楽を付けたいなと思うことはたくさんありますが,現時点においては,いわゆる音源化されたプロの商品となったものを背景で流すということは禁じられているんですね,ユーチューブにおいて基本的には。あくまでも自分がその曲を歌うということは許されているんですが,背景で商品化された音楽を流すという行為は,その作品の原盤権を持つ権利者からの許可を得ていない限り,今,ユーチューブ上では禁じられているんです。そうではないですか。私の認識はそうなんですが。

今,JASRACとの包括契約によって認められていることは,例えばその楽曲を自分で歌う,自分で演奏するなどの投稿,これは包括契約の中で認められているんですが,CD化されたものとかを,原盤権を持つレコード会社等からの許可を得ずに自分が勝手にユーチューブで流すという行為は認められていないと私は認識しています。

大渕委員,いかがですか。そのはずですが。

【大渕委員】包括契約の関係は別として,渡辺委員がおっしゃりたいことも,瀬尾委員がおっしゃりたいことも分かるので,我々としては両にらみというか,両方考えた上で,悩みに悩んで書いたのが7ページの下半分に書いてあるようなことであります。利益の点や分離困難の程度も重要ですが,もう一つ重要なのは,各所に出てきている意図的な写り込み,写し込み問題です。私は写し込みの方はむしろ32条の引用の方だと思っているぐらいで,どの程度意図しているかは別として,入ってしまったというのと,自分の方から適切だから入れているというのは随分違います。7ページの下半分のところは,悩みに悩んで,意図的かどうかという点を非常に重要視しています。先ほど御懸念になっていたようなものは意図的なものなので,私としては原則的には写り込みというのは入らないのかなと思っているぐらいであります。もともと総合考慮なのですが。

だから,利益の点,分離困難性の程度の点,それから,意図性の点を全部相互考慮するというのがきちんと出れば,渡辺委員の御懸念の点は解消されるのではないかと思います。それを分離困難性一本でやっていると,今度はまた絞り過ぎているというきらいがあって,1つやめるとほかはまた別のものにしなくてはいけないのですが,先ほど言われた点以外に,意図性その他も細かく書かれておりますので,それを全部読んでいただければと思います。今後,条文上どこまで書けるかは別として,書けないことは文化庁の方のガイドラインで出していただければと思います。先ほどの御懸念の点も,条文での明確化にプラスして,骨子はここに出ているとおりでありますが,文化庁の方でうまくガイドラインで出していただければと思います。お二人の御懸念を両方解消できるようなものとして我々,悩んで出したものでありますので,そのような観点から御覧いただければ,お聞きしている範囲では十分賄えているというように思っております。あとは,どこまでガイドラインでクリアに書いていただけるかという問題だというように理解しております。

【道垣内分科会長】瀬尾委員,どうぞ。

【瀬尾委員】済みません,さっきちょっと誤解があったかもしれません。私が申し上げたのは考え方の問題であって,今後,この議論を発展させるためには,そのような視点が必要じゃないかという意見を申し上げました。法文としましては,方向感としましては,私は今,大渕委員のおっしゃったように,はっきり言って結構柔軟に書いてあるところもあるので,かなり読めると思うんです。最終的には裁判でしょうけれども。私は,この案文に関してこちらでよろしいということを申し上げたつもりですので,ちょっと明確にそれだけお話をさせていただきます。

【道垣内分科会長】渡辺委員,どうぞ。

【渡辺委員】私が唯一反対しているような状況なので。今の大渕委員の御説明で全く問題はありません。ただ,やはり何度も申し上げますが,一般の方々が著作権というものに関して,なかなか理解をしていらっしゃらない方が多いという現実がありますので,特にこういうふうに分離困難性のことを削除した後,誤解が生じないようにといいますか,小さなことから,これもいいじゃないか,これもいいじゃないかって一般の方が広げる可能性が多大に考えられますので,そこを心配しているということだけです。ですから,何かそういうことが起きないような御配慮を頂ければ,それで結構であります。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。事務局からどうぞ。

【大野著作権課長補佐】前田委員と大渕委員から御説明いただいたのと重なりますけれども,事務局から少し考え方を御説明いたします。

分離困難性の要件につきましては,少し画一的に過ぎるのではないかという認識が小委員会で共有をされておりました。一方で,分離困難性を削除するだけだと様々不都合な事例が生じるということも認識をされておりました。その後,パブコメを実施したところ,JASRACさんをはじめ,音楽については特に御懸念が強いという御意見もございましたので,7ページの2の部分の記載を抜本的に充実しております。

具体的には4行目あたりにございますけれども,テレビ番組やインターネット動画等のBGMとして楽曲を意図的に利用する行為,これが権利制限を認めるべきではない典型例として記載をされておりますし,また,前田委員から御紹介のありましたとおり,2段落目,「このため」という段落では,考慮要素として,利益を得る目的とか,分離困難性の程度,特に意図的に使っているかどうか,こういう点が重要な判断要素になるということを明示しております。つまり,意図的に使っている場合はかなりハードルが高くなるということは明記をしているところでございます。

また,このように記載してもさらに一般の方が誤解をしたり,不適切な利用をしてしまう恐れもありますので,一番最後の10ページのところに4.その他,周知・普及啓発という括りを新たに設けまして,2段落目にありますとおり,誤解等に基づく不適切な利用を防止するといった観点から法整備を行う際に,正確かつ分かりやすい形で周知・普及啓発を行っていくことが重要と,こういう記載を新たにさせていただいたところでございます。

そういう意味で,御懸念の点は恐らく法解釈を適切に行えば解消される問題ですけれども,それが正確に伝わらないと問題が起きるということだと思っておりますので,そういった問題が起きないような周知をしっかりしていきたいと思います。また,その内容を考える際には様々な方に御相談をしながら適切なものを作っていきたいと思っております。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。一般の方々に誤ったメッセージが伝わらないように,文化庁からの社会への説明をお願いしたいと思います。あるいは,こういうのは適切かどうか分かりませんが,傍聴の方の中にはメディアの方もいらっしゃると思いますので,是非その点誤解がないように報道して頂ければ幸いです。相当な懸念があるけれども,ぎりぎりなところでこの案になっているということが分かるようにしていただければと思います。

それでは,この報告書(案)につきまして,このまま著作権分科会としての取りまとめの中に入れさせていただいて,文化審議会で報告をするということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

それでは,議題の2番目でございます。基本問題小委員会の審議の経過等についてでございます。さきほどの議題1で取り上げた以外のテーマについての審議の経過の御説明でございます。主査と事務局からの御説明をお願いいたします。

【茶園委員】では,今期の法制・基本問題小委員会における審議経過につきまして,資料2に基づきまして御報告をさせていただきます。

今期の法制・基本問題小委員会におきましては,知的財産推進計画2019,これは令和元年6月21日に知的財産戦略本部の決定がされたものですけれども,この知的財産推進計画2019等を踏まえつつ,(1)写り込みに係る権利制限規定の拡充について,(2)研究目的に係る権利制限規定の創設について,(3)独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度について,(4)インターネット検索情報サービスにおける侵害コンテンツの表示規制についての検討を行いました。

この詳細につきましては,事務局から追加の説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料2の2.課題の審議状況について御紹介をいたします。

まず(1)写り込みにつきましては,先ほど御説明をし,報告書の御了承を頂いたところでございますので,説明は割愛いたします。

次に,(2)研究目的に係る権利制限規定の創設についてでございます。こちらは知的財産推進計画2019におきまして,権利者の利益保護に十分配慮しつつ検討を進め,結論を得て,必要な措置を講ずるとされたことを受けて検討を行ってまいりました。その際には,これまでの検討・法改正等の経緯や現行法上の取扱いを確認しつつ,検討の進め方,検討の論点を抽出するということで議論を進めてまいりました。

2ページにございますとおり,具体的には本年度の第2回,第3回の小委員会において検討を行いまして,まず検討の進め方としまして,今年度は基礎的な調査研究を実施し,来年度以降,具体的な制度設計について検討を行うということにしております。調査研究におきましては,(i)諸外国の法制度・運用の詳細,(ii)国内における様々な研究活動に係る著作物の利用実態・ニーズ,(iii)関係する権利者団体の意向などを把握しようということになっておりまして,本年1月から文化庁の委託事業として調査研究を実施しているところでございます。

また,次の段落にございますとおり,検討に当たっての視点,論点について自由討議を通じて洗い出しをしていただきまして,合計で9項目留意すべき点が整理されたところでございます。

まず,1が契約等による対応可能性ということで,契約でどこまで対応できて,どこから権利制限が必要なのかの見極めをしっかりしようという内容でございます。2は,対象とする「研究」の範囲と書いておりますが,主体,分野,営利・非営利など,どういう切り口で権利制限の対象とする研究を特定していくかという点でございます。3は,研究と著作物利用との関連性と書いておりますが,著作物利用が研究に当たってどの程度必要なのかという必要性の強弱を考慮するかどうかという点でございます。4は,対象とする著作物の種類と書いておりますけれども,種類によって研究におけるニーズ,権利者への影響も変わってまいりますので,こういった点をどのように考慮するかという点になります。また,5は情報源の適法性と書いておりますが,研究目的であれば違法にアップロードされたものでも使ってよいのかどうかという論点がございますし,また6として,著作物の利用形態によって権利制限をどこまでしていくのかというのも問題になるということでございます。また,7として,権利者の利益保護への配慮として,権利制限を行うとした場合の補償金の要否なども論点になるとされております。また,8として,権利制限規定をつくる際に明確性と柔軟性のバランスをとる必要があるという点や,9のその他関連する課題として,例えば図書館関係の権利制限を拡充することも研究活動の促進に資するのではないか,こういった点も含めまして,大きな視点が整理されたところでございます。来年度は文化庁の調査研究の内容と,この視点を踏まえながら,より具体的な議論を行っていくことになろうかと思っております。

次に,(3)が独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与及び独占的ライセンスの対抗制度についてでございます。こちらは昨年度,ワーキングチームを設置して議論を行ったところでございまして,昨年度は利用許諾に係る権利について,当然対抗制度を導入しようという結論が出されまして,そちらは昨年の本分科会の報告書にも取りまとめがされているところでございます。本年度はさらに発展的な内容を議論するため,独占性の対抗制度,独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与について,継続的に審議を行っていただいたところでございます。詳細については,後ろに別紙として付けておりますが,具体的な検討を始める前に,基礎的な用語や概念を整理するとともに,関係者からのヒアリングなどを通じて,どういった状況が実現されることを関係者が期待しているのか,こういった点の整理を行ったところでございます。本年度は基礎的な部分の整理を行ったところですので,来年度,それに基づいてより具体的な検討を進めることになってございます。詳細については割愛いたします。

次に,(4)がインターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制についてでございます。こちらの課題は,いわゆるリーチサイト対策と併せて議論が行われてきたものでございまして,昨年2月の分科会報告書におきましては,直ちに立法的対応の検討を進めることはせずに,まずは当事者間の取り組みの状況を見守ろうということになってございました。これを受けて,第2回の小委員会におきまして,関係団体からのヒアリングを行ったところでございます。

その内容は,3ページ目に4つのポツで記載をしております。まず1つ目にございますとおり,2019年7月に関係団体による協議の場として「著作権侵害コンテンツの検索結果表示に関する検討会」が設置・開催をされまして,そこには文化庁,内閣府,経済産業省もオブザーバーとして参加をしているところでございます。

また,2点目はCODAからグーグルに対するDMCAに基づく削除要請,これは従来から行われているものでございますけれども,これが有効に機能していることが確認されております。

また,3つ目のポツは新しい仕組みでございますけれども,CODAとグーグルとの間で悪質な海賊版サイトに係るトップページやカテゴリーページを効果的・効率的に検索結果から削除する仕組みというのが新たに構築をされまして,そちらも有効に機能しているという報告がございました。

4つ目のポツですけれども,このようにインターネット情報検索サービスについては円滑に対策が進んでいる一方で,新たな課題として,個人のブログ,SNSなどを通じた侵害コンテンツへのアクセスについてが課題となっているという報告もあったところでございます。

この報告を受けて,小委員会として議論を行っていただきまして,小委員会としては,現在の検索サービスへの対応を通じて確立された枠組みを有効に活用しながら,SNS対策を含めてさらなる取組を当事者間で進めるようにということを求めていただいたところでございます。その状況は適宜さらにフォローアップをしながら,必要に応じた検討を行うとされているところでございます。

資料の4ページは,小委員会の開催状況,5ページは委員名簿を付けているものでございます。なお,その後ろのページからは,研究目的の権利制限とライセンス関係の議論について詳細な資料を付けておりますが,時間の関係で説明は割愛をいたします。事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。ただいま御説明がありました法制・基本小委員会の資料2の1ページで言いますと(2),(3),(4)というテーマについての御報告でしたけれども,何か御意見等ございますでしょうか。どうぞ小池委員。

【小池委員】小池です。2つ目,研究目的に係る権利制限規定の創設についてのところの,こちらの資料で,ページで言いますと11ページのところが,図書館についての議論があったということが記録されているのですけれども,ちょっと確認させていただきたいのですが,もともと31条というのは,調査研究の用に供するため,図書館は一部分を複製できるという規定になっているということで,今運用されているわけですけれども,研究というのが実際の現場において,どういうことを研究と言うのかということが,実際にはなかなか小難しいという判断というんでしょうかね,されているところで。つまり,目的は研究のためだというのだけれども,実際に複製をしてほしいと言われるもの,利用者が求めるものは,それが研究の目的なのかという判断をすることは,実際には図書館側では難しいので,形式的な形の中で研究のためですと言われるところで,実際には行われていると。

そうしたときに,今回の研究目的のために一定の権利制限をしようとしたときに,研究というものがどういうものなのかという議論が結構重要になってくるのではないかと思うのです。多くの大学とか公共図書館では実態が違ってくるとは思うのですけれども,公共図書館において通常行われる複製,コピーサービスにおいて,多くの人たちは,正直研究というものを広い意識で認識しているのではないかと思いますので,特に第2回のところですかね,少し拡大するというんでしょうか,考え方を拡大しようというような御議論もあったようですので,少しこのあたり,今後検討されるときには考慮して,実態をちょっと考えていただいた方がよろしいかなと思います。長くなりました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。小池委員が今おっしゃった11ページというのは,別紙の1で赤字が入っているものの最後のページですね。

【小池委員】そうです。

【道垣内分科会長】資料2の中の別紙1の最後のページです。どうぞ。もし同じ点であれば。

【瀬尾委員】いや,違う点,図書館ではないです。

【茶園委員】どうもありがとうございました。おっしゃられたように,研究目的に係る権利制限規定を検討するということですけれども,そもそも研究とは何を意味するかについては,様々な,広い意味もあれば狭い意味もあります。そのため,その検討を始めたばかりですけれども,研究が何かを最初に限定するとか,枠をはめるということは今のところしないでおいて,一応漠然と,研究と考えられるものを対象にして検討を進めていくことにしています。恐らく最終的にはその対象は何かについて十分に詰める必要があると思いますけれども,現段階においては幅広にいろいろと情報を集めて検討していきたいと考えております。

幅広にいろいろな問題を議論する中で,今おっしゃったように,31条が担っているような図書館との関係という問題等も出てくる場合があるでしょうが,それで直ちに31条をどうのこうのしようとかというわけでは全然ありません。今のところは幅広に問題なり論点をいろいろと探っているという状況でございます。

【道垣内分科会長】今の小池委員の御意見を取り入れていただいて,御検討いただければと思います。

今の点ですか。同じ点であれば。

【大渕委員】茶園座長に言っていただいたとおりなのですが,研究の定義というのはものすごく重要で,これこそが大論点の1つです。論文などでも定義が一番最後にできるぐらい重要なことなので,今は,とりあえず作業的な意味で研究としていますが,最終的に研究をどう定義していくか自体が大論点です。そこは先ほど言われたような点も十分ににらんだ上で,研究と31条との関係も,もう一つの大論点なので,今結論が出ているはずもありません。これからそこに向けて粛々と議論を進めているという状態でございます。

【道垣内分科会長】分かりました。

では,ほかの点で。

【瀬尾委員】今の研究目的についてですけれども,実際知財の方でこういうふうなことをするということをきいております。ただ,基本的な考え方としては,いわゆるオープンアクセスのような研究資料についての共有をどんどん広げていくという方向性があるかと思います。そういった意味では,非常にそれも重要なことなんですけれども,一方,これはちょっと写真著作権協会というよりは複製権センター,若しくは学術著作権協会やJCOPYといった管理団体としての立場でありますけれども,今,世界中のマーケットで,特に医師薬系,自然科学系の研究論文というのは,メインマーケットです。つまり,もうマーケットが確立しちゃっているわけですよね。なので,これをいきなり権利制限するというのは,膨大なマーケットを浸食することになります。

私の理解では,そうは言いながらも管理しきれていないよねという不満があるから,これは出てくるんだということも感じています。なので,私としては,実はオープンアクセスの思想からいくと,これはボランタリーな集中管理の推進こそが一番適切であって,それを補完するために,基本的には権利制限を用いるべきだと。現在,これはもし研究目的で権利制限をするとすると,非常に大きなマーケットに対して甚大なリスクを与える可能性というのが,今の方向性だと見えてきてしまう。それをいかによけるのか。例えば,ただし書きでするのかというのは,現時点では,私ではちょっと思いつかないぐらいダブっている感じがします。

なので,これについて取り組んでいくということは,今後の将来性として非常に重要だと思いますけれども,あくまでマーケットが確立した市場に対して権利制限という手法を用いるべきなのか,それとも集中管理を促進させるのか,そのための施策は何なのかという,まさに幅広なことでこれについて御検討いただいて,ただ,解決することについて,私は必要だと思っています。なので,決して無駄なことでもないので,きちんと多角的なアプローチでやっていただきたい。ただ,何度も申し上げますけれども,日本だけではない大きなマーケットがあるということは,調査を今度していただくことになると思いますけれども,念頭に置いた方がいいのではないかと思います。これは意見です。これについての案文の改正についての特別な意見はありません。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

また次期のテーマとしてずっと検討していきますので,小委員会に入っていらっしゃらない方は,特にこの場でご発言頂ければと存じます。よろしゅうございますか。

よろしければ,では,これはこのように伺ったということで,次のテーマに入りたいと思います。

3番目,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議経過等につきまして,末吉主査と事務局から御報告をお願いいたします。

【末吉委員】今年度の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会における審議経過につきまして,資料3に基づき御報告をいたします。

本小委員会では,前回の分科会において,クリエーターへの適切な対価還元と,放送コンテンツの同時配信等に関する権利処理の円滑化の2つの課題について,検討を行うこととされておりました。

クリエーターへの適切な対価還元については,今年度は,知的財産推進計画2019を受けまして,内閣府,文化庁,経済産業省及び総務省において,対価還元の在り方について議論が行われておりまして,意見の隔たりの大きい当事者間での検討を再開する前に,関係府省庁間による議論の整理を確認することが適切であることから,関係府省庁間による議論の整理が整い次第,報告を受け,意見交換を行うこととなりました。

放送コンテンツの同時配信等に関する権利処理の円滑化につきましては,総務省と文化庁から報告を受けるとともに,関係団体からのヒアリングを行いました。その後,それらの報告及びヒアリングの内容を踏まえまして,本課題について具体的な検討を進めるに当たっての基本的な考え方,審議経過報告を別紙のとおり整理いたしました。来年度はこれを踏まえ,さらに議論を深めることが求められるとしております。

基本的な考え方の具体的な内容につきましては,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料3の別紙に基づいて御説明をさせていただければと思います。

タイトルにございますとおり,放送コンテンツのインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化(著作隣接権に書く制度の在り方を含む)について,基本的な考え方を取りまとめたところでございます。

冒頭4行に,この資料の位置付けを記載しております。本課題に関しては,下記の4項目の考え方に沿って,関係者の意向を十分に踏まえつつ,より具体的な検討を早急に進める必要があるということで,この資料が,今後より具体的な検討を進めるに当たっての基本となる考え方を整理したものだということが明らかにされております。

まず1.検討の射程・優先順位についてでございます。本課題につきましては,放送で利用する場合とインターネット配信で利用する場合で著作権法上の権利の在り方に差異があるというのが大元の問題意識でございます。これを受けて,規制改革推進会議における議論や,総務省から文化庁に対する通知におきましても,著作隣接権の扱いをまず議論することが示されておりました。

これを踏まえて,まず1にございますとおり,レコード及びレコードに録音された実演並びに映像実演の利用円滑化(著作隣接権の取扱い),こういったものから検討に着手することとしつつ,2,その他の課題についても,放送事業者からの要望が強いことを踏まえ,その緊急性・重要性に応じて,継続的かつ総合的に検討を行うこととするとしてございます。特に1につきましては,まもなくNHKによる同時配信が開始されるということも踏まえながら,来年度早期から具体的な検討を進め,可能な限り早急に結論を得る必要があるとしております。

次に2ページにまいりまして,2.対象とするサービスの範囲についてでございます。こちらは様々なニーズを酌み取れるようにという趣旨を記載しております。具体的には,いわゆる放送の同時配信に限らず一定期間の中でリニア放送と意図して時間をずらし配信するもの,具体的には注釈6にあるような追っかけ配信,見逃し配信と言われているようなサービスであるとか,その一定期間終了後に再活用する配信,こちらは注7にありますとおり,ビデオ・オン・デマンド,アーカイブなど,こういったものを含めまして,放送コンテンツのインターネット配信に係る事業者の多様なニーズ,将来的な事業の見通しを含めて,それに対応した措置を検討するということが記載されております。

この背景としては,1つ目の※にございますとおり,民放テレビ事業者の多くは,現時点では放送の同時配信などを本格実施しておらず,そのサービスの具体像が明確になっていないため,なるべく多様かつ柔軟に対応できるようにしておく必要があるということがございます。

なお,2つ目の※に,いわゆる「ウェブキャスティング」,すなわち放送を前提とせずに,ネットで独自のコンテンツを流すというサービスの取扱いについて記載をしております。これにつきましては,放送コンテンツのインターネット上での同時配信等とは,背景となる制度や主体,権利処理に当たっての課題,権利者に与える影響,サービス・コンテンツの多様性,とりわけ内容面の規制がないといった点で違いがございまして,一律に取り扱うことは難しいと考えられるとしつつも,いずれも国際条約に定める公衆への伝達に該当する点で共通していること,広く一斉にコンテンツを伝達する手段として国民のニーズに応える重要な役割を担っていること,こういった点を踏まえながら,「ウェブキャスティング」に係る権利処理の円滑化も視野に入れつつ,検討を進めることとするとさせていただいております。

次に3ページにまいりまして,3.が権利処理の円滑化のための手法についてでございます。まず1つ目の丸にありますとおり,権利情報を集約したデータベースの充実・利便性向上,著作権等管理事業者による集中管理の促進など,運用面の改善を着実に進めようということになっております。一方で,運用面では解決しきれない課題もあるだろうという問題意識のもと,いわゆるアウトサイダーへの対応などについては法整備を検討するということにしております。その際,新しい権利制限規定などについて議論することも必要でございますけれども,3つ目の丸にあるように,現行規定においても放送などにのみ適用される規定がございますので,これを同時配信などに拡充していくことができないかという点についても,その規定の趣旨,見直しが権利者に与える影響の程度などに留意しつつ,併せて検討を行うこととするとされております。

なお,その下の※にございますとおり,いわゆるレコード演奏権,すなわち,実演家,レコード制作者にも演奏権を与えるという課題についても併せて議論すべきではないかという問題提起も小委員会ではございました。この点については,放送番組のネット配信とは問題の所在,関係する事業者からが大きく異なる一方で,共通性もあるという点を踏まえながら,別途取扱いを検討することが適当とされているところでございます。

最後に4.権利者の利益保護への配慮でございます。今後,新しく権利制限規定の整備など,法整備を検討していくことになりますけれども,その際には既に形成されているライセンス市場又は形成される見込みの高いライセンス市場を阻害しないように十分に注意する必要があるということと,それに注意した上で,さらに権利者の利益保護について適切な配慮を行う必要があるという記載になっております。

具体的には,例として書いておりますとおり,新しく権利制限を行うとした場合の補償金請求権の付与などについて検討する必要があるという問題意識でございます。

この補償金請求権を付与する際には,2つ目の丸にございますけれども,その補償金の額自体がサービスの実態に応じた適正な対価とすることと,その補償金を実際に様々な権利者に適切に受け取れるようになることと,この両方が重要でございますので,補償金の決定方法,補償金の分配の在り方,こういった点も含めて十分に留意する必要があるとされているところでございます。

これが基本的な考え方でございまして,これをもとに,来年度より具体的な議論を進めていくことが想定をされます。事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】どうもありがとうございました。ただいまの御報告につきまして,御意見等ございますでしょうか。どうぞ。

【椎名委員】ここに書かれておりますウェブキャスティングの話と,それから,レコード演奏権,これはいずれも公衆への伝達に係る問題でございまして,我が国の法律が欧米と比べて公衆への伝達に関する保護レベルが若干食い違っているという点で,この同時配信の問題が出てきたという理解から,公衆への伝達全体の見直しをしてはどうかという提案をさせていただきました。知財計画の文言でも,放送コンテンツのインターネット上での同時配信等ということになっておりまして,同時配信に端を発した問題ではあるわけですけれども,インターネットにコンテンツが流れていく,それを公衆への伝達という概念で捉えたときに,やや制度がちぐはぐになっているのではないかという問題意識のもとにいろいろ発言をさせていただきました。結論としては,同時配信からやりましょうと。その中で,公衆への伝達全体の部分も視野に入れつつということで決着をしたわけですけれども,是非来年度の検討の課題の中で,公衆への伝達全体の見直しということがポイントとしてあるんだということを分科会としても意識して臨んでいただけたらありがたいと思っております。

【道垣内分科会長】御指摘ありがとうございました。

そのほかいかがでしょうか。2つともなかなか難しいテーマですが,よろしくお願いいたします。

それでは,続きまして,4番目の議題,国際小委員会の審議の経過等についてでございます。これは私が主査を務めておりますので私から,事務局にお手伝いいただいて御報告させていただきます。資料4でございます。

令和元年度の審議の状況につきまして,2つに分けることができ,1つ目が,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方。これはWIPOの議論に対応しての議論でございます。それから,2番目,国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,この2つを検討いたしました。検討の具体的な内容につきましては,事務局から御説明いただけますでしょうか。

【石田著作権課国際著作権室長】事務局でございます。今,御説明いただきました2つの点について,具体的に御説明をさせていただきます。

まず1点目でございますけれども,著作権保護の国際的な対応の在り方につきましては,WIPOにおける議論を事務局から報告の上,今後の我が国のとるべき立場等について議論をいただきました。

1つ目の課題としては,放送機関の保護がございます。WIPOにおきましてはデジタル化・ネットワーク化に対応した放送機関の権利の保護に関する新たなルールを策定することを目指して,放送条約の議論が続けられております。

その上で,2ページ目の下から2段落目にございますけれども,今期の委員会では,WIPOでの放送条約の議論に向けた我が国の対応の在り方について,集中的かつ機動的に検討を行うため,ワーキンググループが設置されました。本ワーキングチームでは,WIPOにおいて提案されている条文案や議論の動向を踏まえまして,我が国の取り得る立場を検討する上で議論が必要な論点の整備を行うとともに,今後のワーキングチームの進め方についての方針が議論され,その旨国際小委員会に報告があったところでございます。

また,本年の国際小委では,デジタル環境における著作権など,そういったものを取り扱い資料で言いますと3ページ目の下のところ,後半でございますけれども,WIPOでは,そのほかにもデジタル環境における著作権などについても議題とされております。諸外国におきましても,デジタル化の進展に対応するための著作権法改正が行われておりますところ,今期の委員会では欧米の著作権法改正の動向を把握するため,これらの法改正について,有識者等による報告を行い,それを踏まえて国際的な議論における我が国の対応等について議論を行いました。

資料の4ページでございますけれども,まず米国におきましては,音楽ビジネスのデジタル化。具体的にはCD販売から音楽配信に急速に移行しつつある音楽ビジネスを促進するための音楽近代化法(MMA)と呼ばれる著作権法改正が2018年の10月に行われておりますけれども,委員会ではその説明を受けて議論が行われ,6ページにございますように,WIPOでの調査において踏まえるべき観点についての意見等が出されました。

それからまた,EUにつきましては,同じく6ページの中段あたりから記載がございますけれども,ニュースアグリゲーターやオンラインコンテンツ共有サービスといった,新たなオンラインサービスの登場を背景といたしまして,デジタル単一市場における著作権指令というものが昨年4月に採択をされております。EUから担当者を招聘し,内容を聴取するとともに,8ページにございますように,今後の見通しや我が国を含めた他国への影響等について議論を行いました。国際小委員会としては,我が国の国際的な対応に資するよう,引き続きWIPOにおける議論や諸外国の動向を把握・分析していただきたいと考えております。

それから,2本目の柱であります,国境を越えた海賊行為に対する対応につきましては,9ページ以降にまとめております。文化庁が実施する海外における著作権保護に係る取組に関する報告及び有識者から海賊版サイトの定量分析に関する調査研究報告があり,これに基づいて国境を越えた海賊行為について,今後の取り得る方策などについて議論を行いました。

また,文化庁の取組についての報告では,今年度の事業と併せて現在調査中の「諸外国における著作権登録制度調査」及び「著作権法改正状況及び関連施策動向に関する諸外国調査」,この2本の調査の作成状況について,進捗の報告がございました。

以上,簡単ではございますけれども,国際小委員会の内容でございます。なお,国際小委員会の委員の皆様方には,委員会の運営に当たりまして御協力いただきまして,事務局としてもこの場をおかりして御礼申し上げます。以上です。

【道垣内分科会長】ただいまの点につきまして,御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。それでは,国際小委員会の報告はこれくらいにさせていただきまして,5番目,外国人児童生徒への音声教材の提供における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議における検討状況につきまして,本日は文部科学省初等中等教育局教科書課の方に来ていただいておりまして,その方からこの検討状況についての御説明,特に著作権法との関係でどういうことが問題になるのかという点について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【季武教科書課長補佐】御紹介いただきました,文部科学省の初等中等教育局教科書課の季武と申します。本日,当課の方で検討させていただいております,外国人児童生徒等への音声教材の提供について,今の検討状況を御説明させていただければと考えております。よろしくお願いいたします。

まず,音声教材について,資料5に沿って説明をさせていただきます。音声教材は,障害のある児童生徒が,一般的に使用されている教科書では文字や図形等を認識することが困難な場合に使われている教材でして,教科書の記述内容を読み上げて音声化して,パソコンやタブレット,MP3のプレイヤーなど,そういった端末で再生して学習することができる教材でございます。形は決まったものがあるわけではなく,複数種類がありまして,本当に音として聞くだけのものもあれば,画面上に教科書の本文を映しまして,ハイライトでどこを読んでいるかが分かるようになっているものまで様々ありまして,生徒さんに合わせて選択することができるようになっています。

こちらは著作権法の第33条の3で,障害により教科書を使用することが困難な児童生徒のために,音声教材等の作成・提供を著作権者の方の許諾なく行うことが可能となっています。

この音声教材につきまして,日本語に通じない外国人児童生徒等の学びにも役に立つのではないかという指摘を昨今受けております。使用者が随意のタイミングで教科書の音声情報,日本語での読み上げを聞くことができるという機能につきまして,実際に外国人の児童生徒等が日本語を習得するときですとか,教科書の内容を読むときに,文字では内容が理解しにくいけれども,音声になっていれば中身が分かりやすいですとか,漢字の読み方が分からないといった場合に,音声があることで学びを進めることができるのではないかといった指摘を受けているところでございます。

その指摘を受けまして,文部科学省の方で昨年の8月から,「外国人児童生徒等への音声教材の提供における教科用図書の使用上の困難の軽減に関する検討会議」という有識者会議を開催して,検討を行っておるところでございます。こちらは参考資料としまして,3ページ目に詳細を付けさせていただいておりますが,今年度中,近々報告書を取りまとめる予定です。次回の2月12日,最終回として報告書(案)について取りまとめを行っていこうとしている段階でございます。なので,まだ報告書という形ではなく,検討状況という形での御報告とさせていただいているところでございます。

こちらの会議で,3ページ目の下の方にも書かせていただいていますが,様々な音声教材等を利用しまして,先ほど申し上げたように,音声があることで何度でも気兼ねなく教科書の読み上げを聞くことで日本語を習得できるとか,自習時間を増やせるのではないかとされています。例えば,家に帰って使える場合は,家で日本語の読み上げを聞くことができますし,外国人の児童生徒を集めて取り出し学級で指導する際にも,ほかの生徒に先生が個別で指導しているときに,自習用に読み上げを使ったりすることで役立つのではないかといった指摘を受けているところです。

資料1枚目に戻っていただきまして,音声教材を使うことは,外国人児童生徒の教科書使用上の困難を軽減することに効果があって,その活用を推進するべきという御指摘を頂く一方で,実際に外国人児童生徒等が活用していくためには,対応すべき課題があるという指摘も受けているところでございます。

音声教材につきましては,著作権法の法改正等が必要という御指摘を受けていることを踏まえまして,今回御報告させていただきました。具体的な制度改正について,資料の3番目に書いております。先ほど申し上げたとおり,著作権法の第33条の3で,障害により教科書を使用することが困難な児童生徒のためには音声教材等の作成・提供を著作権者の許諾なく行うことが可能となっているところですが,こちらの対象に外国人の児童生徒が入っていないということで,外国人児童生徒等の学びを充実させるために,関係団体の皆様の理解を得た上で改正をして,見直しを行っていく必要があると考えておるところでございます。その際,音声教材はデータで受け渡しができるものでございますので,インターネットを利用した提供,公衆送信も可能とするべきであると考えているところでございます。

また一方で,今まで障害のある児童生徒が対象となっていた制度に,外国人の児童生徒を加えるということ,さらにインターネットでの提供も可能とするということを規定した場合に,今まで以上に対象となる児童生徒が増えます。このため,データの流出などが起きることがないように,しっかりと当省としても対応していく必要があるということで,データ流出の防止にしっかりと努めていくことが,併せて必要だと考えているところでございます。

現在,まだ具体的な今後の予定については調整中ではあるのですけれども,こちらの有識者会議での検討状況につきまして,報告をさせていただきました。以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。まだ検討の途中のようでございますけれども,著作権法を少し改正しなければならないかもしれないということでございます。

何かこの点,御意見ございますか。どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】これだけダイバーシティと言われている時代ですから,当然そういう法改正は必要と思うんですけれども,今,35条の法改正のガイドラインだとか基礎ライセンスだとかというあたりで,こういう問題も拾えていける方向なのかなとも思ったしだいです。33条と35条の関係の中で,外国人の子供たちが日本の学校で授業を受けるというふうになったときに,そのあたりの条文のマージする部分だとか,35条の方は先生方の著作権教育の普及啓発なんかも含めて,このあたりというのは当然ICTの普及で出てくるところですよね。この辺は私は専門ではないのですが,35条の守備範囲の中と,ICTの普及啓発という中で,今回の35条の法改正の見直しをにらんだときに,どういうふうに位置付けて考えたらいいんですかね。

【道垣内分科会長】ほかの方からでも結構ですし,今の点ですか。どうぞ。

【瀬尾委員】今,久保田委員からもございましたけれども,ちょっと文科省さんにお伺いしたいんですけれども,これを例えば特例的な,障害のある方々への対応のような局所的な問題であるとすると,権利者への影響というのは極めて少ないんですけれども,本当に日本が移民をどんどんどんどん受け入れていって,そしてその移民のお子さんたちを日本の教育制度が負っていくのかどうか。そういう問題が根底にありますよね。

だから,軽微じゃなくて,今後これが一般化して,どこのまちにもそういうふうなところがあるところを権利制限をする。権利制限をするということは,日本国が負うわけですよね。強いて言えば権利者がそのために自分の権利をみずから制限を受ける。とすると,こういうふうな問題を出すときには,日本としてはこういうふうな制度というのを今後発展させていくと,文科省さんはまずお考えなのかどうか。これは局所的な,権利者にとって軽微な問題であるのかどうか。そういうことがないと,軽微な問題であれば権利制限を受け入れることもあるでしょうけれども,これが拡大していって,今後非常に大きなシステムになるんだとすると,そもそも我々,根本的に考えなきゃいけないんじゃないかなという気がします。

それともう一つは,負担を今久保田委員がおっしゃったような制度,いわゆる法律でやるのか,若しくはそれともスキームでやるのか,例えばこういうビジネスもあり得るわけですよね。ただ,日本は制度で負っていますから,同じように外国のお子さんたちも制度で負うべきなのか。私はこれだけ本当にダイバーシティと言われているので,どこかで腹を括るという個人的な考えはありますけれども,ちょっとはっきりそういったことというのも踏まえた上で研究しないと,ただ単純にこれ,外国のお子さんにもちょっとですからいいですか,いいですよとかというよりは,大きな問題が根底にあるんじゃないでしょうか。その問題に目をつぶってというか,その問題は後に回しておいてどうすると言われても,ちょっと私も何とも答えようがないなというのが正直なところです。そこら辺について,もし見解があれば,文科省さんからお伺いしたい。

【道垣内分科会長】季武さん,お答え可能ですか。ちょっとお待ちください。

【長尾委員】済みません,文科省ではなく日本文藝家協会です。ついこの間,これのヒアリングを二度,季武さんと前職の方から受けました。そのときの御説明では,ここにも書いてありますが,教科用図書,いわゆる今は検定教科書のことしか考えていないということでした。それで私どもの理事会では仰天いたしまして,日本語を学習するのに不自由な人という障害ということで引っくるめた考え方はできないのか,今やっていないことの方がよっぽどひどいという見解が出ました。それはあくまでも検定教科書ということだったので,今の瀬尾委員の御発言にあった,これがもっと大きくなっていって,ビジネスの市場にということの,そういうお話では受けとめておりません。そうなると,それは35条関係なくなりますので。

デジタル教科書が今,普通に日本語は分かるけど,学習困難な人に優しいというのと同じ水準で考えて,スペイン語ですとかポルトガル語しか分からない子供たちが,1年生の教科書分からないよということのために使うのだという御説明でした。なので,大きく広げていくようなことは多分全然想定されていないという説明でした。

【道垣内分科会長】もし分かればですが,いかがでしょうか。

【大野著作権課長補佐】まず,外国人児童生徒への教育全体をどうしていくべきかという議論も,文部科学省では行っております。ただ,そこについてはまだ具体のアウトプットが出たというわけではありませんので,その文脈で著作権法上何が必要かという議論もされておりません。

一方で,この教科書の問題につきましては,既に障害なる児童生徒用に作成した教科書が様々存在していて,それを外国人がすぐにでも使いたいというニーズが出てきております。このため,この課題に特化した会議が教科書課で設けられて,その中で著作権法上の課題も明らかになってきたというところでございます。そういう意味では,全体としての議論は今後控えておりますけれども,この部分については早急に,切り出して議論すべきだということで,ここで御報告をさせていただいているものだと理解しております。

【道垣内分科会長】現状で何人ぐらいの方かということはお分かりなんですか。

【季武教科書課長補佐】今,日本語に通じない児童生徒,外国籍の方と,日本国籍でも日本語に通じないという児童生徒も含めまして,大体5万人程度,小・中学校合わせて日本語が通じない児童生徒さんはいると考えております。

【道垣内分科会長】それは障害のある方との比率でいうとどのくらい違うんですか。済みません,すぐに分からなければ,今でなくても結構です。

【季武教科書課長補佐】障害のある児童生徒の人数は,今,分からないのですが,音声教材を使用されている障害のある児童生徒は1万人を超えていないので,人数としてかなり増えるというのは実態としてございます。

【道垣内分科会長】かつ,今後も増えていくかもしれないということですよね。

【季武教科書課長補佐】そうですね。そのうち全員が使うというわけではないのですが,対象となる児童生徒は御指摘のとおり増えます。

【道垣内分科会長】さらにインターネットを利用した,公衆送信を利用した形でも提供したいということで,これがやや危ないところがなきにしもあらずではございます。今の時代,ダウンロードできるようにということではないかと思いますけれども,そうした場合の御懸念がどの程度あるか。また,根本問題は,著作者の負担でするのか,国が予算を付けてちゃんと報酬を払って,その音声のデータも作るのかであろうかと思います。とりあえず今の御提案は,著作者の負担でやってくれないかということのようでございますけれども・・・。

井上委員,よかったらどうぞ。

【井上(由)委員】今,著作権者の負担でというようなお話がございましたけれども,恐らく補償金で対応するということになると思いますので,その教材を作っている会社が著作権者側に補償金を支払うというスキームがあって,使用料部会でもその点いろいろ議論していることの延長線上だと思いますので,人数も増える,それから,障害者の方と外国人の児童生徒さんでは,もしかすると考慮要素が違うということであれば,補償金の額の算定のところでいろいろ議論する可能性はあるのかなと考えます。

【道垣内分科会長】前田委員。

【前田委員】確認をさせていただきたいのですけれども,33条の3の改正により,現在は障害によって通常の教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童生徒のためのものに限定されているのを,これを日本語に習熟していない児童生徒のためにも使えるようにするという御説明であったかと思います。そうしますと,33条の3の第2項により,今,お話が出ました補償金については,営利を目的として行う場合は補償金が必要だけれども,そうではない場合,つまり非営利の場合は補償金は必要でないと,こういうことになるかどうかという点が1点です。

それから,2点目としまして,この音声教材を利用される児童生徒の分も,教科用図書そのものは購入されて,そこの部分で補償金は発生しているということになるかどうかということについてお伺いできればと思います。

【季武教科書課長補佐】お答えいたします。今,前田委員の方から御指摘いただいたとおり,33条の3の第2項,資料の2枚目に参照条文として付けさせていただいておりますが,御指摘のとおり,営利を目的として音声教材を作成された場合にのみ補償金が支払われる形になっております。

2点目の教科用図書自体を購入した上でということで確認いただきましたが,御指摘のどおり,こちらも外国人の児童生徒であっても,学校に通っている場合は,教科書の無償供与が行われますので,国で教科書を買って,それを外国籍の児童生徒にも渡しまして,その上で教科書と併せてこの音声教材を使っていただくような形になっております。

また,全体に対する補足になるのですが,先ほど御指摘いただいたとおり,外国人の児童生徒への対応としましては,まさに今後どのように対応していくのか考えているところですが,まずはこの音声教材という既存の教材を,外国人の児童生徒が使えるようにしたいという趣旨で,今回は制度の改正ができればと思っています。より根本的に外国人の児童生徒に向けて教材や教科書がどうあるべきかということは,今後,議論をしていくことを予定しております。以上です。

【道垣内分科会長】どうぞ,瀬尾委員。

【瀬尾委員】ということは,非常に限定的な措置として,当面の措置として,現状あるものの利活用を図るために局所的な現在の状態でという御提案と理解してよろしいということですね。ただ,先ほど申し上げましたように,今,教育の制度というのは,特に日本人,外国人,また外国籍,日本国籍の外国の方,いろんな方がいらっしゃる中で,単純にこの33条の読み替えだけでいろいろなものが発展していくということについては,ちょっと私はいかがなものかというふうには思います。ですので,根本的な議論をやはり文科省さんでお進めいただいて,いわゆる教育政策としては非常に重要な部分だと思われますので,その結果に沿って著作権法もそれを助ける形で改正していくということになるかと思いますけれども,やはりあくまで本議論というものは非常に影響を及ぼすし,大事なことですので,ちょっとそれと混ざらないようにしていただきたい。なし崩しになってしまうと非常にそれは権利者の不安は増大すると思いますので,きちんと議論を切り分けてお進めいただければ,私としては不自由な方に現在の教材を使うことについては賛成です。だけれども,それに対して不安が大きいのも事実ですので,今言ったような手順をお考えいただいて進めていただくことが,一番円滑な進行じゃないかなと思いますので,是非お考えいただきたいと思います。

【道垣内分科会長】そのほか,何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは,そのような検討が進んでいるので,いずれまた著作権法の議論をする機会があるのではないかと思います。

次の最後のその他の議題でございます。この著作権分科会には使用料部会が設置されておりまして,著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額について審議をしております。それにつきまして,資料6に基づいて,事務局から御説明いただけますでしょうか。

【日比著作権課著作物流通推進室長】それでは,資料6を御覧ください。今御紹介がありました,著作権法第67条に基づく著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る文化庁の裁定制度につきまして,この補償金の額を決めるに当たりましては,法律の規定に基づいて,文化審議会に諮問をするということになっております。また,著作権分科会運営規則第2条第3項第1号によりまして,この件につきましては,使用料部会の議決をもって分科会の議決とするというふうに決められております。また,資料にありますように,文化審議会運営規則の第4条第4項に基づきまして,部会の議決をしましたら,分科会長に報告をするということになっておりますので,本日御紹介をいたします。

本年度は,資料にございますとおり第1回の昨年7月9日から,直近では今年の1月28日まで4回の会議を行いまして,合計で67件,著作物数としては5万471件の補償金の額が決定されております。ちなみに昨年度の件数につきましては46件,著作物数では3万5,816件でございましたので,いずれも増加をしているという状況にございます。

簡単ですが,説明は以上でございます。

【道垣内分科会長】どうもありがとうございます。

何かございますか。だんだんとコンプライアンスの意識も高まってきて,ちゃんと手続を踏んでくださるところも増えてきているということかと思いますけれども,今後とも啓発活動をお願いいたします。

用意した議題は以上ですが,その他,何かこの場で。久保田委員,どうぞ。

【久保田委員】リーチサイトについて出てきたんですが,リーチサイト対策とアクセスコントロールに関する保護の強化に関する改正著作権法案が見送られて,今期も提出を目指されているところではあると思います。また違法ダウンロードの拡張の問題等があって,この議論が進まないのは困ります。本当にリーチサイトについては現場でも待ったなしで,いろんな事件をこつこつと積み上げて,それなりの効果を上げているということもありますが,その点,遅れるようであると困るので,当協会としてはダウンロード違法化等でその成立が遅れることがあるのであれば,そこを切り離してリーチサイトの問題として法改正を先に進めていただくことを強く要望したいと思います。

TPP関連のところというのは非常に悩ましいところがいっぱいありますが,逆にそこは非常に皆さん精緻に詰めてこられているところでもありますので,是非リーチサイト,アクセスコントロールのところについては,きちんと議論を早くしてほしいということです。

最後なのでまとめのようになってしまいますが,冒頭渡辺委員からも出ていたように,著作権に対する認識を高めていくというのは,著作権法を理解しろというようなレベルではなくて,著作権そのものの法律とか,瀬尾さん言われているような情報の本質とか意味とか価値というものを伝える中で著作物の価値が分かってきますので,当然著作権教育という言葉でくくってしまうと,今日の33条の関係を聞いていても,何か矮小化されてしまいます。もっと我々,超情報化社会に生きている人間としては,著作権法を通じて著作物の意味とか価値から情報社会を考えるということが大切。きちんと文科省の方も教科情報というような教科を中心に対応してほしい。スーパープロフェッショナルハイスクール等の研究発表を見ても,常にそこに創作と創造と,それから価値デザイン社会というものを念頭に置いて,個別の教科,授業と連携して,さらには普通高校でもそこがメーンロードになってくるような,もっと大きな視点として,分離融合のようなレベルの話も出てきております。法を前提とした著作権教育についてというようなレベルではなくて,もっと情報教育の王道のど真ん中に著作権の保護をしている著作物の文化性とか,文明との違いとか。亡くなった紋谷先生は文化とは何かということについて生活の総体と言っていますから,まさに生活そのものである文化に貢献するという意味での著作権の位置付けは,本省である文部科学省がしっかり考えるべきだと思っています。

そういう意味では,今回我々の協会や山口大学も,知的財産教育については一生懸命やっておりまして,行政書士連合会なんかとも,まちの法律家としての行政書士連合会が著作権教育をベースに情報化社会においてそういう教育を一緒にやっていくということで,三者調印しました。3月2日には福井大学を中心に,まず福井県でキックオフをします。そういう観点から,是非文化庁の御支援は当然のことながら,関連団体や,また本省である文科省もしっかり情報における著作物の価値とか意味という観点から,先ほどの33条の観点も含めて,大きな視点で是非議論を扱ってほしいと思います。以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

ほかにございますか。

この配付資料の中に,参考資料3が入っていまして,これがまだ全然言及されていないものなので,事務局からこの紙の御説明をいただけますでしょうか。

【大野著作権課長補佐】それでは,参考資料3について御説明を差し上げたいと思います。侵害コンテンツのダウンロード違法化に関しましては,昨年の2月に本分科会で報告書をおまとめいただき,それに基づいて昨年の通常国会に法案を提出すべく検討を進めておりました。しかしながら,その際には規制の対象範囲,違法化の要件につきまして,必ずしも十分な理解を得られなかったため,一旦法案の提出を見送ることとしておりました。その後,文化庁におきましては,より丁寧に国民の声を伺いながら検討を進めてきたところでございまして,昨年の11月にはこちらの検討会を新たに立ち上げ,集中的な審議を行い,本年の1月16日付けで,検討会における議論のまとめが取りまとまったということでございます。この内容について,簡単に御紹介をしたいと思います。

この検討会におきましては,1段落目にございますとおり,まず検討の基本方針を確認した上で,具体的な制度設計の議論を行っていただいております。その基本方針の中にもございますけれども,パブリックコメント,国民アンケートなどを通じて,国民の声を幅広く聞き取りましたので,それを十分に踏まえながら,海賊版対策としての実効性と国民の正当な情報収集,この2つを両立させるような制度設計について議論が行われてきたところでございます。その内容は,1ポツから4ポツまでございますので,簡単にかいつまんで御紹介をいたします。

まず1.が,文化庁提案の3点の措置についてと書いている部分になります。こちらは昨年2月時点の法案に,少なくとも3点措置を追加すべきではないかということを文化庁から提案し,了承された内容になります。

1点目は,改正案の附則に,普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮,施行状況のフォローアップについての規定を追加するという内容,2点目は,写り込みに関する権利制限規定を拡充することで,スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと,3点目が,数十ページで構成される漫画の1コマから数コマなど,「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと,この3つの内容については了承がされたところでございます。

次に2ページ目にまいりまして,2.その他の要件追加等の提案についてでございます。こちらは文化庁から提案したもののほか,パブリックコメントで頂いた様々な提案について採用するか否かを議論していただいた結果をまとめた部分となります。

まず(ア)採用する方針が了承されたものとしましては,二次創作作品・パロディなどを対象から除外するということがございます。この点については,翻訳物まで除外されないように措置した上で採用しようということが了承されたところでございます。

一方で,(イ)採用しない方針が了承されたものもたくさんございます。具体的には,合計10件の提案がございましたけれども,これらについてはいずれも海賊版対策の実効性が大きく低下するなどの理由から,採用しないという方針が了承されているところでございます。具体的な説明は省略をいたします。

次に6ページに飛んでいただきまして,(ウ)という部分がございます。こちらは採用の可否について意見が1つに集約されなかったものとなっております。具体的には,著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定するという提案でございまして,こちらは国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきであるという御意見と,ユーザーの居直りを招くなど海賊版対策の実効性低下が生じるということから,採用すべきではないという双方の意見がございまして,意見を1つに集約するには至っておりません。ただ,いずれにしましても,この要件の取扱いも含めて早急に判断の上,法整備を進める必要があるということについては認識が共有されております。

また,検討会の議論の中では,2段落目にありますとおり,権利者側の懸念に対応する観点から,折衷案の提案も頂いております。例えば,「」著作権者の利益を不当に害しない場合を除くという形で,いわば裏側から規定をすることで,この不当に害しないという立証をユーザーに負っていただくという提案ですとか,「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と規定することで,違法化から除外されるのは特別な場合だという趣旨を明確化し,居直りをより確実に防止する,こういった提案もあったところでございます。

次に,ページがまた飛びますけれども,14ページにまいりまして,3.その他の論点についてという部分がございます。こちらは先ほど御紹介した要件の追加以外に,パブリックコメントで頂いた御意見に関する議論をまとめた部分ということになります。具体的には,アにありますとおり,対象著作物をマンガ・アニメなどに限定すべきという御意見や,イにありますとおり,「違法と知りながら」という主観要件を見直すべきという御意見もパブコメでは寄せられておりますが,これはいずれも適切ではないという認識が共有されたところでございます。

次に15ページにまいりまして,4.リーチサイト対策についてでございます。パブリックコメントでは,リーチサイトについても御意見がございましたけれども,まず1つ目の丸にありますとおり,規制対象となるリーチサイトの範囲などについては,既に十分な絞り込みが行われており,その他の要件追加は行う必要がないという認識が共有されております。一方で2つ目の丸にございますが,リーチサイト運営行為などに対する刑事罰は,当初案では非親告罪になっておりましたところ,国民の不安などに対応する観点から,親告罪に変更するということが了承されております。

また,3つ目の丸では,いわゆるプラットフォームサービス提供者の扱いについて記載をしておりまして,今回のリーチサイト規制は悪質な者を対象にするものでございまして,プラットフォーマーのような方々に基本的には規制が及ばないという認識が,この検討会でも改めて共有されております。また,そういった点を条文上明記した方がいいのではないかという御意見もパブリックコメントでございまして,これについても,脱法行為を招いたり,間接侵害一般の議論に影響を与えたりしないということを前提に,賛成する意見が大勢を占めたところでございまして,その旨を記載しております。

報告書の概略については以上でございます。いずれにしましても,この議論のまとめを踏まえて,文化庁としてバランスのとれた法案を作成し,速やかに法整備を行っていきたいと思います。

先ほど,久保田委員からリーチサイトについて言及がございましたが,こちらは1ページ目の最初のパートの一番最後の段落に少し問題意識を記載しております。検討会の中でも,リーチサイトについては法整備が1年遅れになってしまっているという状況も踏まえて,より早く前倒しで施行すべきだという御意見もございましたので,それも踏まえて法案の施行期日を設定することとすべきだと,こういう内容を記載してございます。我々としましては,侵害コンテンツのダウンロード違法化とリーチサイト対策は,いずれも海賊版対策のために重要な措置でございますので,併せて今通常国会の提出に向けて取り組んでいきたいと思っておりますが,リーチサイトについては早目の施行を求める御意見があることをしっかり踏まえて検討していたきいと思っております。

なお,この検討会での議論のまとめが行われた後,自民党・公明党それぞれにおきまして,具体的な制度設計についての議論が深められておりまして,2月3日,月曜日には,文科省に対する申し入れも頂いたところでございます。その内容もしっかりと受けとめながら,国民に御理解を頂ける法案を作成していきたいと思っておりますので,引き続きの御指導・御支援を頂ければと思っております。事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。著作権分科会としては,1年前に審議を終えた問題で,審議会の外での議論の御説明をいただいたという理解でございます。

本日の議題は以上でございます。今日が今期最後の著作権分科会でございまして,今里文化庁次長がいらっしゃっていただいていますので,一言頂けますでしょうか。

【今里文化庁次長】今期の文化審議会著作権分科会を終えるに当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。

今期の著作権分科会,先ほど各小委員会の主査の方々から御報告ございましたように,写り込みに係る権利制限規定の拡充,それから,研究目的に係る権利制限規定の創設,放送コンテンツの同時配信等に関する権利処理の円滑化,国際的な諸課題について御議論いただいたところでございます。

特に写り込みに係る権利制限規定の拡充につきましては,先ほど分科会の報告をまとめるという形で,法改正の方向性を示していただいたところでございます。今後,本報告書に基づきまして,速やかに法整備を行いたいと考えてございます。

また,その他の課題につきましても,今後さらに議論・対応を進めていく上で非常に重要な御示唆を頂いたものと受けとめております。

そのほか,今ほど御報告させていただきましたとおり,侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る具体的な制度設計等につきましては,1月16日に有識者検討会での検討結果が取りまとめられ,また,与党から政府に対して,違法化の対象範囲の絞り込み等に関する申し入れ・提言がなされたところでございます。文化庁といたしましては,これらの内容を踏まえて国民に御理解を頂けるバランスのとれた案を作成してまいります。

その上で,リーチサイト対策を初め,昨年2月の分科会報告書で方向性を示していただいた事項や,写り込みに関する規定の拡充などと併せて,今通常国会への法案提出を目指してまいります。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門の立場から,今期の分科会の充実した審議のために,多大な御尽力を賜りましたことを改めて感謝を申し上げて,私からの御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

私からも一言と書いてあるんですが,特にございません。ただ,審議をもう少し早くしていただくとありがたいと思います。特にクリエーターの方々へのちゃんとした利益を配分するということは,これからそういう世界に入っていこうという人たちのインセンティブにもなりますので,ずっと議論していてなかなか決まらない難しい問題であることはよく分かっておりますけれども,そこはしかし,乗り越えて,貴重な文化を創造する方々にきちんとした場を提供できるようにしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

ということで,以上をもちまして,今期の著作権分科会は終了でございます。ありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動