文化審議会著作権分科会(第58回)(第20期第1回)

日時:令和2年6月26日(金)
10:00~12:00

場所:AP虎ノ門 A室

議事

1開会

2議事

  1. (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
  2. (2)平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(報告)
  3. (3)「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」について(報告)
  4. (4)第20期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
  5. (5)小委員会の設置について
  6. (6)その他

3閉会

配布資料

資料1
第20期文化審議会著作権分科会委員名簿(392.8KB)
資料2
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための文化審議会著作権分科会の議事の公開に関する当面の措置について(案)(96.8KB)
資料3
遠隔教育等を推進するための「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について(3MB)
資料4
「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」関係資料一式(5.3MB)
資料5
「知的財産推進計画2020」等の政府方針(著作権関係抜粋)(621.2KB)
資料6
第20期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)(164.5KB)
資料7
小委員会の設置について(案)(184.2KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(312KB)
参考資料2
令和元年度著作権分科会における審議状況と今後の主な課題(177KB)

資料2,資料6,資料7について異議なく,案の通り了承されました。
了承された資料については,以下の通りです。

資料2
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための文化審議会著作権分科会の議事の公開に関する当面の措置について(96.3KB)
資料6
第20期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(163.8KB)
資料7
小委員会の設置について(182.6KB)

議事内容

○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介。

○本分科会の分科会長の選任が行われ,道垣内委員が分科会長に決定。

○分科会長代理について,道垣内分科会長より鈴木委員を指名。

○会議の公開について運営規則等の確認。

○新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための当面の措置として、本分科会(小委員会を含む。)の議事については、分科会長(小委員会の場合においては主査とする。)の判断により、会議の傍聴を認めることに代えて、事前に登録した者に対するインターネットを通じた生配信によって公開することができることを決定。

※以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

(配信開始)

【道垣内分科会長】傍聴の方々におかれましては,しばらくお待ちいただきましてありがとうございました。ここから審議を公開させていただきます。

2点お願いがございます。

1点目は,この会議の様子を録音・録画することは御遠慮いただきたいということでございます。システム上はできないと思いますけれども,カメラでコンピューター上に映像を撮るとか,録音機を横に置くとかでは事実上はできなくはありません。しかし,そういったことはしないでいただきたい。これは通常の傍聴の場合もそうでございますので,そのようにお願いしたいと思います。

もう一点,音声とビデオはオフにしておいていただきたい。これは既に,多分,設定してあると思いますけれども,そのようにお願いいたします。

では,改めて御紹介させていただきます。私が,先ほど分科会長に選任されました道垣内と申します。よろしくお願いいたします。

また,分科会長代理として,横に鈴木委員がいらっしゃいますが,彼を指名いたしましたので,御報告申し上げます。

本日は,今期最初の著作権分科会になりますので,議事に先立ちまして,今里文化庁次長から一言お願いいたしたいと存じます。よろしくお願いします。

【今里文化庁次長】文化庁の次長の今里でございます。今期の著作権分科会の開催に当たりまして一言御挨拶を申し上げます。

皆様方におかれましては,日頃より著作権施策の検討・実施に当たって御協力・御指導を頂いておりますとともに,この度は御多用の中,この著作権分科会の委員をお引き受けいただき,誠にありがとうございます。

初めに,平成30年の著作権法改正で創設された「授業目的公衆送信補償金制度」につきまして,今般の新型コロナウイルス感染症に伴う遠隔教育のニーズに対応するために,当初の予定を早めまして4月28日から施行されることとなりました。関係者の皆様の御努力や令和2年度の補償金額を無償とする判断をされた権利者団体の皆様の格別の御配慮に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。

また,インターネット上の海賊版対策をはじめとする著作権法等の改正が6月5日に成立いたしまして,6月12日に公布されたところでございます。昨年の法案提出の見送りの経緯を踏まえて検討を重ねてきた結果,海賊版対策の実効性確保と,国民の正当な情報収集の萎縮防止のバランスが,国民の皆様の声を丁寧に伺うことにより,このバランスがとれた内容とすることができたものと考えてございます。

今後は,こうした関連の法制度の整備の状況を踏まえつつ,互いの創作行為・著作権を尊重する意識を醸成するために,様々な手段を用いて普及啓発・教育を充実していくことがより一層重要となると認識してございます。

また,昨今の情報通信技術の発展等を背景に,著作物の創作・流通・利用を巡る状況が日々刻々と変化している中にありまして,著作権制度を最新の時代の状況に適合させていくために何が必要なのかを見極めて,適時・適切な対応を講じていくことの重要性もますます高まっております。

とりわけデジタル・ネットワークを活用した著作物利用の円滑化とクリエーターへの適切な対価の還元を両立させることが大きな課題となっているものと認識してございます。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門の立場から,昨年度からの継続課題に加え,社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度・著作権施策の新たな課題について精力的な御議論をお願いしたいと思います。

私からの挨拶は以上でございます。今年度も何卒よろしくお願い申し上げます。

【道垣内分科会長】御丁寧にありがとうございました。

それでは,中身の審議に入らせていただきます。

2番目のこれは報告事項でございますけれども,「授業目的公衆送信補償金制度」の早期実施につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。

【日比著作権課著作物流通推進室長】失礼いたします。

資料3をご覧ください。「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行につきまして御説明申し上げます。

初めのページの「1.法改正の概要」でございますけれども,学校等におけるICTを活用した教育の推進を図るため,平成30年の著作権法改正によりまして,授業の過程における著作物の公衆送信につきまして,従来は個別の許諾が必要であったものを,設置者が文化庁の指定管理団体に一括して補償金を支払うことにより,無許諾で可能とする仕組みとしたところでございます。

この改正は,法律の公布日から3年を超えない範囲内の政令で定める日から施行することとされておりまして,当初,令和3年4月からの施行に向け関係者で準備が進められていたところでございます。

「2.早期施行」のところでございますけれども,今般の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,教育現場においてオンラインでの遠隔授業等のニーズが急速に高まっておりまして,4月以降も多くの大学において対面授業に代えてオンラインでの遠隔授業等を実施するとともに,小中高等学校におきましても,臨時休業期間を延長してオンラインでの指導を充実している状況がございます。

こうした教育現場の実情に対応するため,当初の予定を早めて,この制度を本年の4月28日から施行したということでございます。

併せまして,権利者団体の皆様の配慮によりまして,令和2年度に限って特例的に補償金額は無償とするという申請を頂き,文化庁として認可をしたところでございます。

令和3年度以降の補償金額につきましては,当初の予定どおり有償としてスタートさせる必要がございますが,これは別途,指定管理団体からの申請に基づき認可が行われる予定でございます。これにつきましては,今年4月20日に閣議決定した緊急経済対策におきまして,令和3年度からの本制度の本格実施に向けて補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することとされてございます。

「3.経緯」にございますように,4月16日には教育関係者と権利者の皆様が集まった「関係者フォーラム」において,今年度の運用指針等を策定いただいているところでございます。

おめくりいただきまして,次からポンチ絵で制度の概要を示したものがございます。文化庁のホームページにも掲載し,公表しているものでございますが,簡単に内容を御紹介いたします。

ポンチ絵の1ページ目,「制度の概要」にございますように,真ん中の図にございますように,従来から複製でありますとか遠隔合同授業等におきましては,著作物を利用する際に無許諾・無償で利用が可能であったということでございますけれども,黄色で塗ってある部分,その他の公衆送信,オンデマンド授業ですとかスタジオ型のリアルタイム配信授業等につきまして,無許諾で有償,補償金という形に制度が変わったということでございます。

資料をめくっていただきまして少し飛びますけれども,ポンチ絵の5ページ目を御覧ください。

改正前と改正後を図示したものでございますけれども,改正前は,利用の都度,個別に許諾を得る必要があったところ,改正後は,ワンストップの窓口である指定管理団体に補償金を払えば適法に利用が可能となる仕組みでございますが,その図の真ん中にございますように,指定管理団体として授業目的公衆送信補償金等管理協会,SARTRASと呼んでおりますが,こちらを昨年2月に文化庁として指定したところでございます。

来年度以降の補償金額につきましては,現在,SARTRASにおいて検討いただいておりますが,真ん中に小さく書いてありますように,例えば年1回の支払いで生徒等1人当たり幾らといったような包括的な料金設定の方向で検討いただいているということでございます。

次のページ,ポンチ絵の6ページ目を御覧ください。

補償金額の決定プロセスについてでございます。この資料の下半分にお示ししているとおり,指定管理団体SARTRASにおきまして補償金額の案を決定いただきましたら,それを教育機関の設置者の代表に意見聴取をした上で文化庁に申請をしていただきます。申請がありましたら,文化庁において文化審議会に諮問した上で認可の可否を決定するというプロセスとなるわけでございます。

飛びまして,ポンチ絵の資料の8ページを御覧ください。

先ほども少し触れました「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」というものがございます。こちらは下半分にございますように,権利者団体,それから教育関係者,設置者の代表であったり学校関係者の皆様にこのフォーラムにお集まりいただきまして,この制度の円滑な運用に向けて様々な議論を頂いております。

テーマとしては,真ん中の右に①から④まであるようなテーマで御議論いただいておりますが,特に「③著作権法の解釈に関するガイドラインについて」とございますように,この制度の運用の詳細を当事者間で決めていただくということをしていただいてございます。今後,令和3年度の有償の補償金額に対応したガイドライン(運用指針)につきまして,現在,御検討いただいているということでございます。

資料3の一番最後を御覧ください。

この制度につきまして,初等中等教育,高等教育などの関係者の皆様に広く周知を図るために,文化庁において簡単な内容を紹介したリーフレットを御用意しております。これらを含めましてホームページで公開してございます。

私からの説明は以上です。

【道垣内分科会長】どうもありがとうございました。

この度の疫病,私の知り合いでもお亡くなりになった方がいらっしゃるので大変なことでございますけれども,しかし,日本国にとっては,不幸中の幸いといいますか,大学関係者から見ると,入試が終わってからのことでした。もし入試のタイミングに当たっていれば大変なことになったと思います。それとともに,著作権法の改正がぎりぎり間に合ったというのは,これは奇跡的なのではないでしょうか。どなたかの先見の明が多分あったのではないかと思いますけれども,準備が整っていたので,1年繰り上げで,しかも関係の方々の御良識で最初は無料ということも,これで一旦使ってしまえばなかなか引き返せないので,うまい営業政策かもしれないのですが,とにかく間に合いました。少なくとも私はオンライン授業で十分だと思っています。そのように社会のニーズに対応できていたということは,皆さん方の御努力のおかげだろうと思います。

何かこの点,コメント等がございますでしょうか。

どうぞ,瀬尾委員。

【瀬尾委員】瀬尾でございます。

今,道垣内先生から「もう引き返せないだろう」という,大変ありがたいような,どうなんだろうと期待も含めたお言葉を頂きました。

このSARTRASの業務執行理事で常務理事を務めさせていただいております関係上から,若干ここに大変丁寧な資料を頂いておりますけれども,この中に補足をさせていただきたいと思います。状況を少し皆様に御報告させていただきたいと思います。

まず,3月の頭にコロナが非常に拡大しているという状況がありましたが,正直言って日本でこんなふうになるというのはあまり予想はしていなかったのですけれども,ただ,やはり急激に拡大してくるということで,まずは特別な配慮ということで,権利者団体が結構迅速にこれに対しては寛容な措置をとることを発表させていただきました。

この時点でどのようになるかは,予定がなかったのですけれども,実はその3月の半ばからやはり急激に遠隔授業の需要を,教育関係者の皆様,それから,たくさんの方々のところから,これは制度があるのに早く施行してくれないと我々は使えない,一々許諾を受けることは難しいというかなり強い要望を頂きました。これは当然のことかと思います。

そんな中で,文化庁さんからもこのような状況で前倒しとかの対応も考えられるのですかというお伺いや,文科省さんの状況からしても,こういうのは早いほうがいいよねみたいな雰囲気がありました。

それを忖度したわけではないのですけれども,我々としては真摯にそういう状況を勘案して,そしてこの制度を始めたらどうかというアイデアを持ちまして実現に至った次第です。ただ先ほどから権利者の御努力ということでお話していますけれども,決して簡単に決まったものではございません。もう相当大変な一月でございました。特に無料というのが,1回無料にしたら永久にただになってしまうのではないかとか,こんな周知徹底ができていない状態で野放しになったらぐちゃぐちゃになってしまうのではないかとか,非常に強い強い懸念を各方面から頂きましたけれども,やはり百年に一度とも言われる国難という言葉もございましたので,非常に丁寧に,かつ緻密な議論をして,最終的には全会一致で前倒しと無償を決めました。

これは外側に対しても非常に大きなものですけれども,権利者団体としても,それこそ映像,放送からクラシカルな美術,写真,文芸に至るまで,全ての権利者が一致したということは,実は権利者側としても大変エポックメーキングなことだったと思います。

その中で重要なことは,遠かった教育関係者と著作権の権利者の距離,これを埋める,信頼関係を築く,そういうふうなことが必要であろうということです。つまり,単純にお金を取った,それで許諾するだけではない,それ以上のものが必要だろう,ということがありました。結構これは格好いい建前論に聞こえるかもしれませんが,取引でも何でも全てのコミュニケーションの上において,この信頼関係は絶対に必要なものです。これは経済的にも,それから実務的にも必要なものなので,建前ではないです。

そういうことから何とか,本当は4月のもっと早い時期と言っていたのですけれども,もともと団体というのは一月から三月ぐらいに1回しか理事会をやりませんから,大体決められないのですけれども,今回は特段のスピードでやって,それでも4月の28日施行という形になったかと思います。

これを機に来年の有償化を,一応,夏あたりまでには申請を行わせていただきたいという予定で進んでおりますが,先ほど出ましたフォーラム,つまり法律とそれから現実を埋めるソフトローの部分については,まだ難航する部分もございますので,鋭意調整中ということになります。

そのような形ででき得れば,夏頃までの申請と本年度にきちんとした登録等をでき得る限り行って,来年の4月1日より有償のスタートを切る,これに全力を挙げて取り組んでいくということでございます。山は多々あります。高い富士山のような山が1個あるというよりは,中央アルプスのようにいっぱいあって,越えるのは大変なのですけれども,それをこの一月,二月,集中していきたいと思っています。

最後に,これは任意なのですが,御登録を教育関係者に頂いております。これはまだ数字が精査されていないので丸い形で申し上げますけれども,小学校が大体2万校弱あるのですけれども,5,000校弱,約25.6パーセントの登録を頂戴しております。

それから中学校が全部で1万校超があるということなのですが,現時点では3,000校弱,大体30パーセント弱,27.8パーセントの御登録を頂いております。

それから高校に関しましては,全部で5,000校弱あるのですけれども,3,000校弱登録いただきまして,60パーセントを多分超えるだろうと。この時点でそれだけの登録があることは,かなりすばらしいことかなと思っております。

それから大学ですが,大学は全部で800校弱と大体把握しておりますけれども,500校超。こちらは非常に御努力いただきまして60パーセントから70パーセントの後半に至る登録を頂戴しております。

こういったことを踏まえまして,よりコミュニケーションと情報の提供,それから今後のより円滑なICT教育の環境構築に向けて教育関係者の皆さんとSARTRASも頑張っていくというふうなことであるかと思いますが,ここにもたくさんSARTRASのメンバーの皆さんがいらっしゃいますけれども,総じて効果とやったかいがあったということで権利者も喜んでいるということでございますので,今年後半,夏から後半の本番に向けて,より一層の進歩をしていきたいと思っております。

私からは以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

SARTRASの常務理事で,この短い期間に非常に落としどころのよいところに導いていただきました。ありがとうございました。これから実際の値段決めはまたそれなりに大変ではないかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。

そのほか,何かございますでしょうか。

よろしいですか。

では,議事の3番目,著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律についての御説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料4を御覧いただければと思います。今般成立をいたしました著作権法等の改正について簡単に御紹介を申し上げます。

本分科会におきましては,2019年の2月に報告書を取りまとめいただいておりまして,基本的にはその内容に沿った形で法改正の内容を定めているものでございます。

1枚目の「改正の概要」に改正事項を列挙しておりますが,全体で8項目から成り立っております。最も中心になるのは「1.インターネット上の海賊版対策の強化」でございます。昨今の海賊版被害の深刻化を受けまして,より実効的な措置を講じられるように2つの改正を盛り込んでおります。

1つ目は,いわゆるリーチサイト対策でございまして,侵害コンテンツにユーザーを誘導するリーチサイトについて,その運営行為やそこにリンクを貼る行為を規制するものでございます。

2つ目は,侵害コンテンツのダウンロード違法化でございます。既に音楽,映像については違法化がされておりますところ,その他の著作物についても同じような規律を適用していこうという内容でございます。

ただ,御承知のとおり,このダウンロード違法化に関しましては,本分科会におきましても様々御議論がございましたし,国民の皆様方の不安・懸念が大変大きいという状況になっておりました。それを受け,昨年の秋頃から文化庁において,改めてパブリックコメントや国民アンケートなどを実施して,国民の皆様方のダウンロードの実態や不安などを丁寧に把握いたしまして,新たな検討会の下で制度設計を進めてまいりました。その結果,違法化の対象からの除外規定など様々設けることとなり,それをもって海賊版対策の実効性と国民の情報収集の確保を両立させる仕組みを構築することができたものと考えております。

「2.その他の改正事項」については,海賊版対策と比べると注目されていないものもございますが,いずれも著作物利用の円滑化や著作権等の保護の観点から非常に重要な改正事項でございます。

①は,写り込みに係る権利制限規定につきまして,生配信やスクリーンショットを対象に含めるとともに,様々な要件の緩和を行うことで幅広い場面に適用できるようにするものでございます。

②の行政手続に係る権利制限規定につきましては,従来から特許審査などは対象になっておりましたところ,新たに種苗法,GI法の手続を追加するとともに,今後新たなニーズが出てきたときに政令で随時手続を追加できる仕組みを設けるものでございます。

③は,著作権者等から許諾を受けて著作物等を利用する権利につきまして,その著作権等が譲渡された場合の譲受人などにも対抗できる仕組みを設けるものでございます。

④は,著作権侵害訴訟で用いられている書類提出命令の仕組みをより実効的にするために,裁判所が実際の書類を見て判断するインカメラ手続についての規定の充実を図るものでございます。

⑤は,アクセスコントロールの保護に関しまして,例えばソフトウエアに用いられているライセンス認証など最新の技術にも適切に対応できるように,定義規定の改正や,新たな規制対象行為の追加を行うものでございます。

⑥は,プログラムの登録に関しまして,関係者のニーズなどを踏まえて新しい証明制度を設けるとともに,手数料の取扱いを変更するものでございます。

これらの改正事項につきまして,一番下に記載のとおり基本的には令和3年の1月1日から施行を予定しております。ただし,1ポツの①リーチサイト対策と2ポツの①から③までの著作物利用の円滑化のための措置につきましては,今年の10月1日から施行するなど,改正事項によって若干施行日が分かれている点に御注意いただければと思います。

今後は,法の施行に向けまして,政令・省令の整備でやガイドラインの策定などを進めていく必要がございますし,とりわけ侵害コンテンツのダウンロード違法化については幅広い国民の方々の行動に影響しますので,丁寧な普及啓発・周知が必要になってくるものと思っております。皆様方のお知恵もお借りしながら,円滑な施行に向けて取り組んでいきたいと思っておりますので,引き続き御指導をお願いできればと思います。

簡単ですが,以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

ただいまの御説明につきまして,何か御意見,御質問等がございますでしょうか。

よろしゅうございますか。

では,決定しなければならない事項もございますので,次に移らせていただきます。

4番目,第20期文化審議会著作権分科会における主な検討課題についてでございます。これにつきまして,まず事務局より「知的財産推進計画2020」等の政府の方針の内容と,それを踏まえた今期の検討課題(案)について御説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,まず資料5を御覧いただければと思います。「知的財産推進計画2020」などから著作権に関係する部分を抜粋しておりますので,簡単に御紹介いたします。

まず1ページ目,「知的財産推進計画2020」の3ポツ(1)の部分でございます。「創造性の涵養/尖った人材の活躍」というタイトルで,人材育成,教育に関する記載がなされております。

「現状と課題」の部分については割愛させていただきまして,2ページの真ん中あたり,「施策の方向性」というところを御覧いただければと思います。

具体的な施策が2つ記載されております。

1つ目は,いわゆる知財創造教育の取組でございまして,新たな創造をすることや創造されたものを尊重する意識を楽しみながら育んでいこうという取組でございます。これまでも各地域で教育プログラムの作成などが進められてきましたところ,その活用を促進するために,教育プログラムの効果的な発信方法を検討することについて記載がなされております。

それから2点目は,先ほども御紹介のあった「授業目的公衆送信補償金制度」に関する記載でございます。3行目あたりからですけれども,今年度における緊急的かつ特例的な運用を円滑に進めること,それから,来年度からの本格実施に向けて教育現場に対する周知等を行うことや,補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することについて記載がされております。

続いて5ポツの(1)「デジタル時代のコンテンツ戦略」という部分でございます。ページが飛びますけれども,4ページをお開きいただければと思います。

「施策の方向性」というところに全体で5つの施策が記載されております。

1つ目は,先ほど御紹介した「授業目的公衆送信補償金制度」についての記載が再掲されているものですので,省略いたします。

2つ目が,デジタル時代におけるコンテンツの流通・活用の促進に向けて,著作権制度を含めた関連政策の在り方を幅広く検討しようという内容でございます。具体的には,下から3行目あたりから,2020年内に,知的財産戦略本部の下に設置された検討体を中心に,具体的な課題と検討の方向性を整理する。その後,関係府省において速やかに検討を行い,必要な措置を講ずることとされております。知財本部の下の検討体で方向性が出ましたら,本分科会において具体的な議論を頂くことが想定されるものでございます。

3つ目が,放送コンテンツの同時配信等に係る権利処理の円滑化についてでございます。こちらは昨年度から御議論いただいておりますけれども,関係者の意向を十分に踏まえつつ,運用面の改善や制度の在り方について検討を行いまして,本年度内の法案の国会提出を含め,必要な見直しを順次行う,という記載がなされております。

それから4つ目は,私的録音録画補償金制度などについての記載でございます。1行目の後半あたりからですけれども,デジタル時代における新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成策等について検討を進めるとともに,私的録音録画補償金制度については新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として具体的な対象機器等の特定について検討を進め,スケジュールとしては,2020年内に結論を得て,2020年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずる,と記載がされております。これについても,関係府省間での議論の状況などを踏まえながら,本分科会において具体的な議論を行っていただくことを想定しております。

最後の5つ目は運用面の取組でございますが,音楽分野における権利情報を集約したデータベースの整備・活用についてでございます。管理事業者に権利を預けていない個人クリエーター等の権利情報集約化に関する調査研究を実施し,権利処理プラットフォームのさらなる充実を図るための検討を行うことについて記載がなされております。

続いて5ページに参りまして,(2)模倣品・海賊版対策の強化についてでございます。こちらも一番下あたりから「施策の方向性」として記載がなされております。

昨年の10月に政府として総合的な対策メニュー,工程表というものを策定しておりますところ,それに基づいて必要な取組を進めることや効果検証などを行うことについて記載がなされております。

6ページに参りまして,こちらは教育・普及啓発についての記載でございます。

1つ目のポツでは,海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう,各省庁・関係機関が一体となった普及啓発活動を推進する旨,記載がされております。

2つ目のポツは,より著作権教育に特化した内容でございまして,先ほど御紹介のあった「授業目的公衆送信補償金制度」の施行や今般の海賊版対策法案の成立といった関連の法制度整備の状況を踏まえながら効果的な普及啓発を行うということになっております。

具体的には,子供の頃から他人の創作行為を尊重し,著作権等を保護するための知識と意識をより一層醸成するために,オンライン学習コンテンツをはじめ著作権教育に資する教材等の開発,ポータルサイトなどを通じた様々な資料・情報の周知,教職員等を対象とした研修の充実などを行っていくということについて記載がされております。

続いて(3)デジタルアーカイブ社会の実現でございます。具体的な施策は7ページの最後のところに記載がされております。

この背景といたしましては,新型コロナウイルス感染症の流行に伴い図書館が休館となりまして,それに伴って,図書館が保有している資料へのアクセスが困難になったということがございます。それによって研究活動などにも一部影響が生じたと伺っておりまして,その背景の下,この記載がなされております。

具体的には,絶版等により入手困難な資料をはじめ,図書館等が保有する資料へのアクセスを容易化するため,図書館等に関する権利制限規定をデジタル化・ネットワーク化に対応するものとすることについて検討を進め,措置を講ずるということになってございます。

次の8ページ以降は,今御説明した記載についての工程表などでございますので,説明は割愛いたしまして,一番最後の16ページを御覧いただければと思います。

先ほどの議題の中でも簡単に御紹介がございましたけれども,本年の4月20日に閣議決定された緊急経済対策において「授業目的公衆送信補償金制度」についての記載がございます。

真ん中あたりに「・早期施行」と書いておりまして,この制度を早期に施行するということと,一番下のあたりでございますけれども,令和3年度からの本格実施に向けて補償金負担の軽減のための必要な支援について検討することについて記載がなされております。

我々としましては,文部科学省の教育部局とともに,円滑な運用に向けた対応をしっかり進めていきたいと考えております。

資料5については以上でございます。

続いて,資料6について御説明をさせていただきます。

ただいま御紹介いたしました「知的財産推進計画2020」などを踏まえまして,今期の分科会で検討いただく主な課題について,「案」という形で記載したものでございます。大きく審議事項①から④までで構成しております。

まず①が,著作権関連の基本政策に関することでございます。具体的には,放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化,私的録音録画補償金制度の見直し,デジタル時代に対応した著作権政策の在り方,いずれも先ほど御紹介した「知財計画2020」に記載された内容でございます。関係府省での議論の状況なども踏まえながら具体的な議論を本分科会で行っていただくことを想定しております。

次に②が,著作権法制度に関することでございます。1つ目の研究目的に係る権利制限規定の創設や,3つ目の独占的ライセンシーに対する差止請求権の付与等,4つ目の追及権等については昨年度からの継続課題でございますが,先ほど御紹介した2つ目の図書館関係の権利制限規定の見直しについて,新たな課題として御議論いただきたいと考えております。

審議事項の③が,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応に関することでございます。昨今,諸外国におきましても様々な法整備が進められておりますし,また,海賊版対策につきましては,国境を越えた対応の重要性が高まっておりますので,そうしいた点について分析・議論をお願いしたいと考えております。

審議事項④は,使用料部会に関することでございまして,先ほど来出ております「授業目的公衆送信補償金」に関して,補償金額の認可に向けた審議を行っていただくことがメインの議題になろうかと思っております。また,定例でございますけれども,権利者不明の場合の裁定制度の補償金の額についても御審議いただくことが想定されるところでございます。

事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

ただいまの事務局の御説明を踏まえまして,この資料の6が「案」になっておりますけれども,こういうところでいかがかということでございます。いかがでございましょうか。

ちょっとよろしいですか,私から。

横並びに全部マルがついていますけれども,先ほどの政府全体の動きからすると,今年度中に成案を得るとか,今年度中に措置を講ずるとかという時間が設定されているものがあったと思うのですが,どれがそれに当たるのでしょうか。

【大野著作権課長補佐】先ほどの知財計画2020で明確に今年度中にといったような期限が区切られておりますのは,審議事項①の1つ目の放送番組の同時配信等と,2つ目の私的録音録画補償金制度の見直しについては,「今年度内」,「次期通常国会に法案を提出」といった記載がなされているところでございます。

その他については具体的な期限までは記載されておりませんけれども,短期的に結論を出すべき取組と位置づけられているものも様々あろうかと思っております。

【道垣内分科会長】分かりました。もちろん全てのテーマが重要だと思いますし,意見がまとまれば早く上げたいと思いますけれども,特に1番目と2番目は期限が切られている。使用料部会のものもそうですね。

いかがでしょうか。

林委員。

【林委員】今お話のありました審議事項①,著作権関連の基本政策に関することの中の同時配信に係ることについては私どもも関係がありますので,一言申し述べたいと思います。

前回の分科会からの新しい動きといたしまして,皆様御存じのように今年4月からNHKでは放送番組のネット同時配信及び見逃し配信サービスのNHKプラスを本格的に始めました。皆様御存じのように放送番組のインターネット配信は,たとえ放送と同時だといたしましても,日本の制度上は権利が異なりますので,NHKといたしまして,放送番組になるべく蓋をかぶせることのない形で,リアルタイムでネットを通じてお届けするために,日々,大変な労力をかけて権利処理に取り組んでいるところでございます。

昨年度,保護利用小委で,ここにあります放送番組のインターネット上での同時配信等に係る権利処理の円滑化につきまして御議論いただいたと承知しております。今年度もこのような形で審議事項ということで挙げていただいて,様々な場面で御議論いただくことになると思いますけれども,私ども放送事業者にとりまして,放送番組のインターネット同時配信のより円滑な権利処理にこの議論が寄与すると同時に,視聴者の皆様に対して良質な放送番組を今後も,放送に限らない伝送路においても滞りなくお届けできるよう制度改正がなされることを期待しております。

どうぞ皆様,よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】椎名委員,お願いします。

【椎名委員】ありがとうございます。

まず,私的録音録画補償金制度に関してですけれども,これに関しては「知財計画」にも書かれていますけれども,2段階の解決ということで,補償金制度に代わる新たな措置,例えばもう汎用的な機器が当たり前になってきている世の中での私的録音録画の問題をどう考えるのかという話とは別に,現行制度でどのような部分が解決できるかということで,今,省庁間の議論が行われていると承知をしています。

さはさりながら,平成15年からこの問題をやっておりまして,もはや権利者の得るべき利益というのは,もう十何年分累積しているということがございますので,この省庁間の議論が決着したその先の新たな制度,これも非常に重要でございまして,ここら辺を併せて速やかにやっていく必要がある,審議会としても重要な課題なのではないかと思っております。

それからもう一点,今も出ましたけれども,同時配信等に係る権利処理の円滑化ということなのですが,私どもは放送番組のインターネット上での同時配信に限らず,レコードの公衆への伝達に係る全体的な権利の見直しの必要性ということを訴えてまいりました。

先ほども次長から著作権制度を最新の状況に適応させると,そのようなお話もありましたが,全く同じ観点からそういったことを御提案申し上げているというところになります。

この文化庁の検討課題を拝見しますと,「放送番組のインターネット上での」という言葉が「同時配信」の前についておりまして,あたかも放送番組の同時配信だけを解決すればいいというふうにも読めてしまうけれども,「知財計画」は同時配信等,私どもの問題意識も入れていただきまして,「同時配信等」という表現にしていただいた経緯がございますので,この「放送番組のインターネット上での」がついていることがどうなのかと,若干,疑問に思ったりもしております。

ただ,昨年度の検討の経緯の中では,ウェブキャスティング全般に関しても併せて検討していくということでございますので,こういった書きぶりでいいのかどうか,若干疑問に感じているところでございます。

問題意識としては,ウェブキャスティングのような新しいサービスにおいて集中管理が実現していないことによって,円滑な利用が実現していない,さらには実演家が衡平な報酬を得られていないという問題がございまして,これは同時配信にとどまらず,ウェブキャスティングについても制度改正を含め権利処理円滑化の検討を進めるべきであると。

また,併せてレコード演奏伝達権については,昨年度取りまとめられた基本的な考え方」の中でその取扱いを検討することとなったと思いますが,文化芸術立国を標榜する我が国がいまだにレコード送伝達権を導入していないということは,ゆゆしい問題ではないかと思っております。この導入に向けた検討にも速やかに着手すべきだと思っております。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

今の点は重要です。この紙の「案」を取っただけでは,皆さん,御理解が必ずしも一致しないということであれば,言葉を直したほうがいいのですけれども,審議事項①の最初のところについていかがでしょうか。「放送番組のインターネット上での」がついた上で「同時配信」,この「等」がついているわけですが,この「等」は何を意味するのかということです。先ほどの資料5の4ページのポツの3つ目は,何も限定なしの「同時配信」で,さらに「等」がついています。これは同じ意味なのかどうかです。「等」は,放送番組のところから全体にかかっているのか,そこは理解を一致させておかないとよろしくないと思います。原案の趣旨ははどうなのでしょうか。

【大野著作権課長補佐】この課題につきましては,昨年度からの継続課題だと認識しております。

まず,机上配付資料という形で,水色のファイルをお配りしておりまして,そこに昨年度の本分科会における配布資料がございます。

昨年度の第1回目の資料3として,今回の資料5と同じような検討課題についての資料がございますけれども,その審議事項②の2つ目のマルで同じ課題について記載がされております。今回もそれと全く同じような表現で記載をしているということで,昨年度から議論の対象を変えているという認識はございません。

また,この課題は,かなり難しい問題でございまして,昨年度,保護利用小委員会で集中的に御議論いただいた結果,検討の射程,進め方等々について整理がされておりますので,それを基に今年度も議論を深めていくべきもの認識しております。

【道垣内分科会長】今の御説明ですと,昨年度と同じ趣旨だということですね。

【大野著作権課長補佐】はい。

【道垣内分科会長】としますと,限定がついているということですか。

【大野著作権課長補佐】昨年度も,この「放送のインターネット上での同時配信等」という文脈の下,保護利用小委員会で検討の射程について議論が行われておりまして,その中でウェブキャスティングの扱いについても議論がなされました。

ウェブキャスティングは放送番組のネット配信とは少し取扱いに違いがあるのではないかという方向性ではございましたけれども,全体の議論を行う中で「ウェブキャスティングも視野に入れつつ」という整理がされておりますので,その整理の下,今年度も議論が深められていくべきものだろうと思っております。

【道垣内分科会長】重ねて確認ですが,資料6の3つ目の同時配信等」と書いてあることとは,大きさは同じなのですか。少し狭いのですか。

【大野著作権課長補佐】知財計画2020における「同時配信等」の意味ですか。

ここの「等」にどこまでの内容が含まれるかは,必ずしも政府内で確たる認識はございません。

【道垣内分科会長】「等」が追加されているかだけでなくて,「放送番組のインターネット上での」という限定がついていることによって,少し範囲が狭くなっているのかというのが椎名委員の御指摘で,そうであると,ちょっと懸念があるとおっしゃっているわけですね。

【大野著作権課長補佐】この点については,もともと知財計画2019でも同じような記載がされており,その内容の理解として,本分科会で「放送番組のインターネット上での同時配信等」という課題が設定されました。それに基づいて昨年度,保護利用小委員会で議論がなされ,ウェブキャスティングの取扱いも整理がされていると考えております。したがって,それを基に今年度も議論を深めればいいのかなと思っております。

【道垣内分科会長】椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】「知財計画」は「同時配信等」になっているわけですよね。で,会長もおっしゃるとおり,このような書きぶりですと,放送番組に限ると。その「等」がどちらにかかるかという議論はあるにせよ,放送番組の同時配信なのだということになってしまう。「知財計画」と書きぶりを変える必要はないのではないですか。「同時配信等」に係る議論をする中で,今,大野さんがおっしゃったとおり,ウェブキャスティングも視野に入れて議論していくわけですよね。ということは,「放送番組のインターネットにおける同時配信等」に関して議論をするだけではないということだと,検討課題としては「知財計画」と同じ文言であってもよろしいのではないですか。

【道垣内分科会長】大野さんに御説明頂く前に,ほかの委員の方の御意見を伺いたいと思います。

【高杉委員】もともと資料の認識が違うのですが,「放送番組等」の「等」は,「同時配信とそれに類似するもの」という理解なので,あくまで放送番組を前提に見逃し配信,追っかけ配信を「等」ということで理解していると考えております。

【道垣内分科会長】それだと,椎名委員の理解では狭いのでしょうか。

【椎名委員】昨年度末にまとめた報告ですか,あの中でもウェブキャスティングを視野に入れてやっていくということですので,今おっしゃった高杉さんの認識だと,ちょっと違うと思います。

書きぶりはどうでもいいのですけれども,そんなにこだわってはいないのですが,検討課題として入っていればいいのはいいのですが,ここで何か制約するようなニュアンスを感じてしまうので,できれば紛らわしい──検討することは報告書の中に書かれていますので,恐らくここの文言はこうだったからといってウェブキャスティングの検討はされないとは思わないのですけれども,やはり紛らわしいのではないかと思います。

【道垣内分科会長】どうぞ,大渕委員。

【大渕委員】法律の関係では,「等」はいつも非常に悩むところで,「等」の一文字の中に万感が込められていることがございます。はたで聞いておりまして,「何々も視野に入れる」ということも全てトータルに考えた上で,基本的には先ほどありましたように去年の文言と同じというのは,この「等」の中に人によって広く入ったりも狭くなったり,そのようなものの万感の思いが込められた「等」として今まできたものをいじり出すと,またそこのところが崩れてきてしまいますので,今後またこの「等」の内容を含めて議論は深めていくわけですが,その基本線のところを崩し出すと,今までの議論との連続性などが崩れてしまいます。御認識の点では注意すべきというのは分かるのですが,この文言自体はいじり出すと,また全体が崩れてきてしまいますので,今までの枠内でより議論を深めていくという方向のほうが,そのようなものを込めたものが「等」という一文字になっていますので,そこは崩さないほうがよいか思っています。

【道垣内分科会長】ということは,この資料5の表現とは従来から変えているのだから,大過なければそれでよいではないかということでしょうか。

【大渕委員】基本的にはそういうことです。

【道垣内分科会長】ほかの方はいかがでしょうか。

【渡辺委員】今の話を伺っていますと,もともとは「放送番組のインターネット上での同時配信」ということで議論を深めていく中で,別のウェブ上での配信ということも議論の中に含まれていって,そこも含めましょうという前提の中で,その新しい今年のこの政府の方針が「同時配信等に係る」ということだけでシンプルに書かれているわけですから,そこに合わせていくことについては,私はむしろ合わせたほうがいいのではないかと思いました。

【道垣内分科会長】ということは,この「放送番組のインターネット上での」を削除したほうがいいということですか。

【渡辺委員】そうですね。元はそこで始まった議論でしょうけれども,現時点においてはそれだけでは済まないという現状ですから,あえてそれをわざわざここに書く必要はなくて,「同時配信等に係る」というこの政府の方針どおりのシンプルな表現で,そこに様々なことが含まれる中での議論を深めていくということでよいではないかと,今のお話を聞いていて感じました。

【道垣内分科会長】これは年度内に決着させるということであると,範囲が広がるとより一層大変なことになるわけですが,しかし,「知財計画」の趣旨がもし広いとすれば,文化庁はそのごく一部しかやっていないではないかと言われてもおかしくはないと思います。大野さん,どうでしょうか。

【大野著作権課長補佐】先ほども説明したつもりだったのですけれども,舌足らずだったかもしれません。

この知財計画で言っている同時配信等の「等」の中にウェブキャスティングが入るという認識は,政府内では共有されておりません。あくまで放送番組の同時配信という文脈で議論が始まったものでございまして,ただ,同時だけではなくて「追いかけ」「見逃し」など様々なニーズがあるので,そうしたものを念頭に「等」として対象を膨らませておくということは共通認識となっております。

放送番組が根っこにないウェブキャスティングまで対象にするという点については政府内で特段の議論はなされていない状況ですので,「知財計画では広い対象を想定している一方で本分科会では対象を狭めている」という関係にはございません。

その上で,繰り返しになりますが,昨年度,この問題は相当,保護利用小委員会で議論があったと思います。ウェブキャスティングについても正面から扱うべきだという意見もあれば,そもそも取り扱うべきではないという意見など,いろいろな御議論がありました。

その上で,ウェブキャスティングについては,かなり放送番組のネット配信とは性質が異なるという認識は共有されております。ただ,放送番組のネット配信を議論する際には,ウェブキャスティングも視野にはしっかり入れないといけないという風に,微妙な調整の上で取扱いが決まっておりますので,その取扱いを変えるのではなく,その基礎の上に立って今年度の議論を進めていくのがいいのではないかと思っております。

【道垣内分科会長】ウェブキャスティングを排除してはいないということが了解されていれば,言葉は変えないで,意味としては膨らみがあるということが了解されればよいということになりますでしょうか。この「等」は全体を受けた「等」であって,放送番組を前提としないものも「等」の中には入り得るということです。ただ,どこまで成案を得ることができるかはやってみないと分からないわけですけれども。

【椎名委員】「知財計画」の書かれ方の解釈を文化庁がなさったのですけれども,これは違和感がありまして,知財本部とのやり取りをする中で「知財計画」が作られていった経緯から,これはもともと規制改革会議の書かれ方から端を発している話なのですが,その中にウェブキャスティングは含まれないと断言されてしまうと,それを文化庁さんがそういう判断に立っているというのは違和感を持ちました。違和感を持っただけでございますので。

で,今,確認された範囲で言うと,ウェブキャスティングに関する議論も含むということでございますので,書かれ方としては,この「等」で全ての「等」になっていくということであれば,書きぶり自体どうこうということはこれ以上申し上げようとは思いませんが,そのウェブキャスティングに関する議論を含むということだけは確認させていただきたいと思います。

【道垣内分科会長】どうぞ,前田委員。

【前田(哲)委員】昨年の審議経過についての私の理解では,あくまで放送番組の同時配信,だけではないかもしれませんが,放送番組の利用について議論することとし,ただ,その際に,ウェブキャスティングについても視野に入れるということであって,課題は放送番組のことであると私は理解しておりまして,今回の資料6においても,その趣旨ではないかと私は理解いたしました。

つまり,ウェブキャスティングは必ずしも排除はされていないとしても,問題は放送番組のインターネット上での同時配信に係る権利処理の円滑化であって,これとウェブキャスティングが少なくとも同等の比重ではないと。

【道垣内分科会長】ええ,恐らく中心がそれだということについては,多分,異論はないと思います。ただ,これについて成果を出すということにコミットするとすれば,もしこれにウェブキャスティングが入っているのだとすると,ウェブキャスティングについても何らかの成案を得るということになりますけれども,そこまで本当にできるのかどうかが問題です。そこまで含めて達成すべきだというのがこの「知財計画」の方針なのか否か,そこがはっきりしなておくべきかと思います。審議を始める段階で,中心はもちろんここなのですけれども,そこをウェブキャスティングまで最後には到達しなければ成果にならないと言うかどうかなのですが。

【前田(哲)委員】この「知財計画」がどういう趣旨かというのは,もちろん「知財計画」を作った方のお考えによると思いますけれども,ウェブキャスティングについてまで成果を出すことが求められているわけではないと,私は理解をしておりました。

【道垣内分科会長】大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】私が先ほど申し上げましたのも,基本的には今,前田委員が言われたのと同じであります。やはり,「何々も視野に入れつつ」というのと本体は全く違う,強弱というかアクセントは完全についていて,たしか「視野に入れつつ」自体も全く反対がなかったわけでもないぐらいで,この本体と申しますか,「放送番組の同時配信等」,追いかけとか,あくまで同時配信ないしその延長線上にある話と,ウェブキャスティングだと,かなり問題の性質が違っています。将来的には視野に入れなければいけないという点はあるのですが,そのようなところは視野に入れつつも,やはりメインというか,喫緊の課題としては主のほうなので,この文章はそこの点でのめり張りがついた形になっています。「等」の中には「視野」のほうは入っているけれども,本体は本体となっていますので,私が先ほど申し上げたように,これは入れるべきではないということなのだと思います。

【道垣内分科会長】ええ,結論を出さなくていいのであれば,それは視野に入れていろいろな議論をすればいいのですけれども,結論を出すということであるとすれば,そこは明確にしておかないとターゲットが決まらないのではないかということが心配です。大渕委員のご意見は,ウェブキャスティングを含むことはターゲットにしないほうがいいという御意見ですよね。

【大渕委員】もともと私もそう思っていますし,今までの議論もこれができるから,ターゲットと言われる部分は,「視野」ではない本体の部分がターゲットだということであります。

【道垣内分科会長】放送を前提とするところだけがターゲットであるということですね。

【大渕委員】我々はそのような形でずっと議論してきたので,そのとおりになっています。

【道垣内分科会長】椎名委員も今年度中にウェブキャスティングについても成案を得るべきだというお考えなのか,それも重要なテーマなので,放送番組を前提とする議論が終わったからといって終わるわけではないという程度でよいのか,この点はいかがでしょうか。

【椎名委員】それは前年度の報告書の読み方だと思うのです。今,探して見つけられなかったのですけれども,非常に関連してくるから,併せて視野に入れて議論していきましょうということになっていたと思って,確かに期限を切ってやっているわけではない。

繰り返しになりますけれども,放送番組の同時配信に端を発して公衆への伝達の一部だと考えた場合に,公衆への伝達全体の見直しが必要なのではないですかという問題意識を持ったということで提案させていただいて,議論の中でまずは放送番組の同時配信は国家的に喫緊の課題だからというようなことでプライオリティーがついたということは理解しています。

だけれども,議論の範囲から外れたわけでもないし,今期に結論を出していけないということでもないはずなのですね。だから,前田委員のおっしゃったようなことであるならば,僕はむしろやっぱり「放送番組」は取っていただいたほうがいいと思ってしまうのですが,まあ千歩譲って文言の話なので,検討課題としてきっちり入っているということだけ確認させていただいて,結論を出してはいけないともなっていないし,期限を切られているわけでもない。それはそのとおりだと思いますが,検討課題としてなっているということを皆さんで共有していただければ結構でございます。

【道垣内分科会長】どうぞ,末吉委員。

【末吉委員】今の椎名委員が探しておられた資料をお示ししたいと思うのですけれども,青いファイルの「第2回」が手前に入っております。それの資料3をお探しいただきたい。「令和元年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について」という形でまとめさせていただいてこの分科会に報告したもの,資料3でございます。

この資料3は,本文は非常に短いものになっているのですが,名簿の後に「別紙」がついております。この具体的な審議経過報告は,この「別紙」の中でまとめさせていただいておりまして,その「別紙」をreferする形で資料3の本文が取りまとめられていると,そういう体裁で昨年度の分科会に御報告申し上げたところなのでございますけれども,これの2ページを御覧いただきますと,「対象とするサービスの範囲」,これがまさに皆様方がここで御議論いただいているものでございまして,私の理解では,いろいろな方向から──主従,何をメインとするかという問題はあるのかもしれませんが,この範囲については恐らく皆様方,争いがないような形だと思っております。

ウェブキャスティングについては,主にこの2ポツの2つ目の米印のところでございまして,視野に入れつつ検討を進めるということ,これは一致点だと私は理解しております。

以上です。

【道垣内分科会長】それを受けての今期の審議でございますので,知財戦略本部の紙の言葉遣いと若干異なる点はやや気になることは確かだと思いますが,,まずはやるべきことは放送番組の問題についてということでよろしいでしょうか。もちろん,それについての審議が終わったからといってこの問題は終わらない,今後,様々な著作物について同様なことが議論され,場合によっては同じような対応が,それぞれ特性が違うのでしょうから,違うよおうなやり方かもしれませんが,しかるべく新しい状況・時代に合った著作権法にしていくという御理解でよろしゅうございますでしょうか。

【高杉委員】全ては,今,末吉先生が御説明を言われたとおりなのですが,ウェブキャスティングについては,椎名さんがおっしゃられているところは,椎名さんの意見としては理解しておりますけれども,私どもとしてはそういうふうに考えていないので,そういう意味でこういう形で整理されているということでございますから,椎名さんが思われているということは認識として共有はしますけれども,それには必ずしも私どもは同意していないということだけは申し上げておきたいと思います。

【椎名委員】高杉さんと僕の何か交渉で書きぶりが決まるわけでもございませんので,意見が対立しているというのはそのとおりでございますが,今も確認したように,視野に入れて検討する,だから場合によっては,放送番組の同時配信の問題解決後に公衆への伝達全体をガラガラポンしたほうがいいのではないかという議論も出てくるかもしれないわけじゃないですか。検討項目として入っているということでありますのが,繰り返しになりますが文言にはこだわらないということで収めさせていただきたいと思います。

【道垣内分科会長】期限が切られていることと,もっと広く審議することとは違う話で,ウェブキャスティングも視野に入れた議論はしていくということでよろしいでしょうか。

【末吉委員】大変複雑な問題で恐縮です。先ほど申したとおりなのですけれども,「知財計画」との関係で申しますと,これは総務省との共管でございまして,文化庁サイドだけで決められるところではなく,恐らく総務省との調整マターがあった上で小委員会のほうにいろいろなことがまた下りてくるのではないかと想像しております。

そういう中で,皆さんの言われていることを恐らく踏まえながら,「知財計画」の言うこともよく理解しながら前に進めという意味ではないかと私としては理解いたしました。

以上です。

【道垣内分科会長】次の議題でご審議頂くように,小委員会が決まって,またメンバーを決めていくわけでございますけれども,この問題を扱う小委員会には今の議論を正確にお伝えして,しかるべく議論していただくということでよろしいでしょうか。

ということで,今の点に随分時間がかかりましたけれども,ほかについて,いかがでしょうか

どうぞ,井村委員。

【井村委員】審議事項②に「研究目的に係る権利制限規定の創設」とございます。これまでどういう議論がこの研究目的のところで話し合われているのか,私は存じ上げませんし,対象がどういうところにあるのかも存じ上げないのですが,御存じかと思いますが,多くの書籍が研究に使われることを想定して刊行されており,場合によっては非常に大きな影響が出版物に及ぶということがございますので,慎重な議論を進めていただきたいのと,できるだけ前広にどのような議論がされているかというところをお示しいただきたいと思っております。

以上です。

【道垣内分科会長】権利者への還元がされないと,いい著作物自体が出てこなくなってしまいますので,そこはバランスが必要だと思います。

ほかにいかがでしょうか。

【瀬尾委員】審議事項②の一番下,「追及権等について等」についてです。追及権等につきましては,実は昔,前の委員の入江観という洋画家の先生がずっと追及権にということをやって既に15年を経由していると理解しています。

これにつきましては,写真というよりは美術の皆さんに影響が大きいことではあるのですけれども,この取り上げ方,「等」が2個ついて,どんなことまで,例えば調査とか,ちょっとお題に挙がるだけとか,どの程度検討される予定なのかという,もし,そういう今からの何となく思惑があればお伺いしたいと思って質問させていただきました。

【道垣内分科会長】事務局が決めるわけではないので。事務局のお考えもあろうかと思いますけれども,この問題を扱う小委員会でそこはしかるべくやっていただきたいと思います。外から人を呼んだりするとお金もかかりますので,予算上の制約はあろうかと思いますし,審議の回数の制限もあろうかと思います。なお,最後の「等」は全部についています。「追及権等」の「等」は,それとは異なる「等」で,追及権以外の権利も必要であれば審議するとことかと思います。

【大野著作権課長補佐】私の理解といたしましては,「追及権等」の「等」については,必ずしも追及権に限らず,美術などの著作者への利益還元の仕組みを幅広く議論していくという文脈の下で「等」がついたものと理解しております。その後ろの「について」の後ろの「等」は,分科会長がおっしゃるとおり,その他様々な課題があり得るという趣旨でつけているというものでございます。

【道垣内分科会長】よろしゅうございますか。これを前提に次の議題に移るわけでございますので,よろしければ,この「案」を取ったものを今期の審議の対象,検討課題とするということにさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。

では,次の議題で──すみません,返田委員。

【返田委員】返田でございます。

審議事項②の2つ目の図書館関係のことをお書きいただいてありがとうございます。大変期待しているところであります。

この「知的財産推進計画2020」の中で7ページに書かれている「施策の方向性」のところですが,図書館等が保有する資料についてこちらに記載されていますけれども,議論する場合,インターネット上に公開されている資料の複製について,今までも話が出ているかと思いますけれども,併せて御議論いただければと思います。

また,その際に,31条の図書館に含まれない図書館もございますので,そこも対象として認識して御検討いただければと思います。どうぞ検討する際の希望としてお聞きいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】そういう御意見も踏まえてということでよろしゅうございますか。

では,この議題は終わりまして,次の資料7に基づく議題に移ります。小委員会の設置についてでございます。これにつきましても,事務局からまずご説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,資料7を御覧いただければと思います。小委員会の設置についてお諮り申し上げたいと思います。

まず1に記載のとおり,著作権分科会に3つの小委員会を設置することとしております。1つ目が基本政策小委員会,2つ目が法制度小委員会,3つ目が国際小委員会でございます。

2にそれぞれの委員会の審議事項を記載しております。基本政策小委員会は著作権関連の基本政策に関すること,法制度小委員会は著作権法制度に関すること,国際小委員会は国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為への対応に関することを審議いただくものでございます。

より具体的な課題につきましては,先ほど資料6として御了承いただきました①,②,③が,それぞれ基本政策小委員会,法制度小委員会,国際小委員会の議事に対応したものと理解しております。

資料7に戻りまして,3が,各小委員会の構成でございます。著作権分科会長が指名する委員,臨時委員,専門委員より構成することとされております。

最後の「4.その他」にございますとおり,理事の手続など運営に関し必要な事項はそれぞれの小委員会が定めることになっております。

御審議の上,決定をお願いできればと思います。

【道垣内分科会長】いかがでしょうか。

【椎名委員】まさに先ほど僕が気にしていたようなことをここで議論していくとは思うのですが,まだ決まっていないとはされながらも,ちょっと伺ったところでは,何か有識者だけで構成して,関係当事者を入れるかどうか分からないみたいな風の便りで聞いたのですが,先ほどの放送番組の同時配信等に関連してウェブキャスティングの話がされていくのはどこの委員会か分かりませんけれども。

【道垣内分科会長】それは1番目の委員会についてでしょうか。

【椎名委員】1番ですね。そういった中にきちっと議論に私どもは参加していきたいと思っていますので,当事者がいない中で補償金の問題も恐らくそこでやられると思うのですが,その委員構成には十分御配慮いただきたいという希望でございます。

【道垣内分科会長】分かりました。

ただ,全員一致でなければ決められないということになると動きが取れないことも生じてきますので,場合によっては多数決で採決しないといけないかもしれません。いずれにしましても,どのような委員構成にするかはまだ未定でございます。ひとつの御意見として伺いました。

2番目の私的録音録画は,ずっと時間をかけてやっていて,お立場がそれぞれ異なり,そのままでは重なるところがない状況かと思っております。利害関係者に入っていただくとすれば,最後は多数決で決めることになるかもしれませんけれども,その前提で議論をまとめていっていただきたく存じます。その点御理解いただければと思います。

そのほかいかがでしょうか。

【河野委員】私自身はどこの団体に所属しているわけでもございませんし,一般国民の感覚で常にこの著作権の問題に向き合ってまいりました。

今回,御提示されている,今後の主な課題の中には入っておりませんけれども,この間の様々な著作権を巡る制度の改正等を考えておりますと,国民全体に対する啓発ですとか教育の機会の場の設定がとても重要だと感じております。

今,新型コロナウイルス感染症防止対策で文化芸術が非常に危機に陥っている,この状況が続いて私たちが文化や芸術から遠ざかってしまうことは考えても恐ろしいことだと思いますし,豊かな人生を送る上でも大変な状況だと思います。

それで,その1つの解決策としてデジタルの利用のような,様々工夫がなされているわけで,そのデジタルの利用に関して言うと,先ほどから多くの委員の先生方が御懸念されているように,著作権者を守り,再生産に向けての補償をどうやっていくのかというところに対して,非常に社会環境が複雑に変化している,しかも急激に変化しているところで対応が後追いになってしまっていて,状況が整理できないというふうに感じています。

そこで,お願いしたいのは,現場感覚で状況を整理するのもとても大事なのですけれども,この分科会の大きなミッションとして,やはり国民みんながクリエーターに対する敬意とその権利をしっかりと認識することが大事で,この間の違法ダウンロードの問題に関わったときに感じたのですけれども,こうした対策は,もろ刃の剣であって,権利は守りたいけれども,皆さんにも知ってほしいみたいな,変な関係性があるのが分かりました。

そこはバランスの問題だと思いますけれども,今のデジタルが普及した時代にクリエーターの権利ということが,国民はほとんど理解できていないのではないかと感じていますので,ここに書いてある検討課題は重要なのですけれども,併せて,教育の場での理解の浸透ですとか,国民の規範意識への働きかけなどを考えていただきたいというのが私のお願いでございます。

すみません,本質からずれますけれども,そこを共通の課題で考えていただければありがたいと思いました。

以上です。

【道垣内分科会長】今の点は,文化庁も予算を使って様々な啓発活動をしていただいていますし,今後もより効率的になって効果が出るような方法で理解を深めていっていただきたいと思うのです。こちらの審議会で実際にどこかへ行って何かするということはなく,制度を考えるということですが今の点は非常に重要だと思います。

そのほか,何かございますでしょうか。

【井上(伸)委員】先般,CODA(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構)において『海賊版ダメ!ゼッタイ!』という小冊子を作りました。これは大手出版社が共同で,幼児向けの漫画家の先生から少年漫画,少女漫画,そして青年漫画の一流の先生方に4ページずつ原稿を頂きまして,「海賊はいけないよ」という非常に分かりやすい小冊子を作りました。とてもいい小冊子ですが,残念ながら予算がなくて,全国の小中学校に配ったら大変子供たちにおいて著作権意識が高まる内容になっているのですけれども,予算の関係でそれが配れないということを伺いまして,ぜひどこぞやでそういう予算化をしていただければ。これは主に漫画についての権利のことだったのですが,映像でも音楽でも全部これは共通することだと思いますので,そういう機会もぜひ作っていただければと思いました。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】それは各団体,今日頂いた前田優子さんの御名刺には「あげるくん」とか「だめよちゃん」というのが入っています。これもそういうキャンペーンの一環かと思います。ありがとうございました。

それでは,この資料7に基づきまして小委員会を設置させていただきたいと存じます。それぞれの小委員会では,資料6の議題を分担して審議を進めていただいて,しかるべきところでこの分科会に上げていただくということになろうかと思います。

なお,著作権の分科会におきましては,文化審議会著作権分科会運営規則第2条により使用料部会を設置することが決められておりまして,使用料部会とただいまの設置を決定いただいた小委員会に属すべき委員につきましては,文化審議会令の第6条第2項及び文化審議会著作権分科会運営規則第3条第2項により分科会長が指名することとされておりますので,これにつきましては,後日指名の上,事務局を通じて皆様方にお知らせしたいと存じます。

では,これで主な議案は終わりですが,6番がございまして,その他。この際,何か御意見等を頂いて,小委員会での議論に反映させていただくということから,何かここでおっしゃっていただくことがありましたら伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。

よろしゅうございますか。

では,先ほど申しました使用料部会及び小委員会につきましては後日御連絡申し上げたいと思います。

では,最後に事務局から連絡事項等がございましたら,よろしくお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は初回にもかかわらず大変活発な御議論を頂きまして,ありがとうございました。

次回の著作権分科会につきましては,各小委員会における検討状況などを踏まえながら改めて日程調整をさせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

では,以上をもちまして文化審議会著作権分科会の第58回を終了させていただきます。今日はどうもありがとうございました。

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