文化審議会著作権分科会(第60回)(第20期第3回)

日時:令和3年2月3日(水)
15:00~17:00

場所:AP虎ノ門 B室

議事

1開会

2議事

  1. (1)放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)について
  2. (2)図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)について
  3. (3)使用料部会及び各小委員会の審議の経過等について
  4. (4)その他

3閉会

配布資料

資料1-1
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)の概要(2.2MB)
資料1-2
放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)(1MB)
資料2-1
図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)の概要(2.1MB)
資料2-2
図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)(1.4MB)
資料3-1
基本政策小委員会の審議の経過等について(292.3KB)
資料3-2
法制度小委員会の審議の経過等について(631.8KB)
資料3-3
国際小委員会の審議の経過等について(461.9KB)
参考資料1
文化審議会関係法令等(269.7KB)
参考資料2
第20期文化審議会著作権分科会委員名簿(331.7KB)
参考資料3
平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」の本格実施について(1.4MB)
参考資料4
令和2年著作権法改正による「侵害コンテンツのダウンロード違法化」の施行及び普及啓発等について(1.9MB)

議事内容

【道垣内分科会長】ちょうど定刻になりましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会の第60回を開催いたします。定足数は達しているようです。本日は御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,原則として委員の皆様にはウェブ会議システムを利用して御参加いただいております。

皆様におかれましては,ビデオはオンにしておいていただきたいと思います。そして,御発言いただくときは手で合図していただくか,いきなり発言されても結構です。ご発言のときにはミュートを解除してください。そうでないときにはミュートにして御参加いただければと思います。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきまして確認いたします。予定されている議事の内容を参照しますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴の方々にはオンラインで御参加いただいているところでございます。この点,このまま進めてよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内分科会長】ありがとうございます。では,本日の会議は公開ということで,傍聴の方々にはそのまま傍聴いただくことにいたします。なお,傍聴の方々,委員もそうですが,会議の様子を録音・録画することは御遠慮いただきたいと存じます。

では,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】お手元の議事次第に記載の配付資料の一覧を御覧いただければと思います。

まず,資料1-1が同時配信等に関する報告書(案)の概要,1-2が報告書(案)の本体となっております。また,資料2-1が図書館関係に関する報告書(案)の概要,資料2-2が同じく報告書の本体となっております。また,資料3-1から3-3までは,基本政策小委員会,法制度小委員会,国際小委員会,それぞれの審議経過をまとめた資料でございます。また,参考資料として,関係法令等,委員名簿,授業目的公衆送信補償金制度の本格実施,侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する資料をお配りしております。不足などございましたら,お伝えいただければと思います。

【道垣内分科会長】よろしいでしょうか。では,議事に入りたいと存じます。初めに,議事の進め方について確認をさせていただきます。本日の議事は,一番上の紙にありますように,4つございまして,1つ目が放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)について,2番目が図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)について,3番目が,使用料部会及び各小委員会の審議の経過等について,4番目はその他になります。

では,1番目,放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)についてでございます。本件につきましては,1月26日に開催されました基本政策小委員会において報告書が取りまとめられております。それを本分科会の報告書(案)として用意していただいております。

まず,その内容につきまして,基本政策小委員会の主査をお願いしております末吉委員と事務局から御説明をお願いいたします。よろしく。

【末吉委員】末吉でございます。放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する報告書(案)について概要を御報告いたします。

本課題については昨年度から検討を進めております。本年度は専門のワーキングを設置し,総務省が取りまとめた放送事業者の要望を基に,まず幅広い関係者からのヒアリングを行い,視聴者,放送事業者,クリエーターの全てにとって利益となるような措置を迅速に講ずるという基本方針の下で集中的に議論を進めてまいりました。その結果,パブリックコメントも経て,最終的には,1,権利制限規定の同時配信等への拡充,2,許諾推定規定の創設,3,同時配信等に係るレコード・レコード実演の利用円滑化,4,リピート放送の同時配信等に係る映像実演の利用円滑化,5,裁定制度の改善という5点の措置について具体的な制度設計等を示す報告書を取りまとめることができました。

報告書の具体的な内容については,事務局から説明をお願いします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料1-1を御用意いただければと思います。報告書の本体は1-2でございますけれども,本日は概要版である資料1-1に基づいて御説明を差し上げたいと思います。

まず,1ページを御覧いただければと思います。検討の経緯は,ただ今,末吉委員から御報告のあったとおりでございます。本日,著作権分科会としての報告書(案)について御議論いただき,取りまとめがされましたら,政府として今国会での法案提出・成立を目指して作業を進めていきたいと考えております。

基本方針につきましては,改めて申し上げるまでもないところもありますけれども,同時配信等が視聴者の利便性向上などの観点から非常に重要な取組であり,放送と同等の権利処理を可能とする制度改正などを進めていくという方針でございます。

また,3つ目の丸にありますように,視聴者から見た利便性を第一としつつ,一元的な権利処理の推進と権利保護・権利者への適切な対価還元のバランスを図りつつ,視聴者,放送事業者,クリエーター全てにとって利益となる措置を迅速に講じていくこととしております。

その際の留意事項としては,4つ目の丸にありますように,多様なサービス形態や実態変化等に柔軟に対応できる仕組みにするということ,また一方で,著作物の創作・流通・利用のサイクルを維持・活性化するために,クリエーターに対して配信サービスの実態等に応じた適切な対価が支払われるようにすることが極めて重要であるという問題意識も示されているところでございます。

次に,2ページを御覧ください。ここからが制度改正の内容についての記載でございます。まず総論として,対象とするサービスの範囲をどうするかという点につきましては,同時配信のほか,追っかけ配信,一定期間の見逃し配信を対象にすることになっております。また,放送対象地域との関係を問わず,番組内容の一部変更,CMの差し替えも認めるなど柔軟な仕組みを構築することにしております。具体的なサービスの範囲を画する要素については,下にマル1からマル7まで記載をしております。

まず,マル1が見逃し配信の期間でございまして,例にあるように,毎週放送の場合は1週間,月1回放送の場合は1か月とするなど,過度に期間が拡大しないよう注意しながら,実態に即した柔軟な設定を可能とすることにしております。マル2,マル3は,先ほど申し上げたとおりでございます。マル4,配信形態につきましては,放送事業者の御要望に基づき,ストリーミング形式,すなわち,ダウンロード・複製を伴わない形での配信を対象にしております。マル5,実施主体につきましても,放送事業者からの御要望に基づき,放送事業者が主体的に実施していると評価できるものであれば,配信プラットフォームを問わず対象にすることにしております。マル6,視聴者からの対価徴収の有無,有料配信のサービスを入れるかどうかという点につきましては,多様なビジネスモデルに柔軟に対応し得るよう,法律上の制約は設けず,サービス実態などを踏まえつつ,政省令等で具体的な取扱いを規定するとしております。なお,報告書本体には記載しておりますけれども,仮に有料配信を含めることを検討する場合には,有料配信にした場合の権利者への対価還元の在り方を含めまして,放送事業者が権利者に説明をし,理解を得る必要があるということも記載をしております。マル7が,ラジオ,衛星放送,有線放送の扱いでございます。こうしたサービスについては,地上波のテレビ放送とは異なる事情があるとして,権利者団体を中心に御懸念が示されておりました。これを踏まえまして,類型的にこうしたサービスを全て除外するということはしませんけれども,音楽配信ビジネスとバッティングする部分などを特定し,必要最小限の部分を除外していくという方針になってございます。

次に,3ページでございます。措置内容の一覧を記載しております。後ほど個々に御説明しますので説明は割愛いたしますけれども,(1)から(5)まで大きく5つの柱で措置を行うことで同時配信等に係る権利処理を抜本的に改善していこうというものでございます。また,一番下に米でありますように,制度改正とは別途,運用面での対応を進めるべき事項については,総務省,文化庁も関与した形で当事者間協議などを進めることにしております。

次に,4ページでございます。ここからが制度改正の各論を記載した部分になります。まず,(1)権利制限規定の拡充につきましては,基本的に全ての規定について同時配信,追っかけ配信,見逃し配信も対象になるよう適用拡大を行うことにしております。具体的な対象規定はマル1からマル6まで記載のとおりでございますけれども,中でマル2だけ少し特殊な扱いになっております。38条3項におきましては,営利を目的としない公の伝達などについて定めておりますけれども,この中でも特に38条3項の後段,営利・有料で行う場合の公の伝達について,権利者団体から強い御懸念をいただいておりました。このため,報告書におきましては,前段の非営利・無料で行う場合には見逃し配信まで対象に含めることも検討するとしつつ,後段については,少なくとも同時配信は対象に含めるとしつつ,具体的な範囲につきましては,視聴者,伝達を行う者の利便性と権利者の利益保護のバランスに留意しながら,具体的な範囲を特定するという記載にさせていただいております。

次に,5ページでございます。(2)許諾推定規定の創設でございます。冒頭にありますように,借用素材などの著作物,映像実演,これらについては,放送にせよ配信にせよ,許諾を得る必要があるという仕組みでございます。ただ,放送番組に関する契約の際に,同時配信等まで行っていいかどうか不明確な場合があるとして,そうした場合の利用円滑化方策が議論されてきたところでございます。そのアウトプットとしまして,具体的には2つ目の丸にありますように,権利者が放送番組での利用を認める契約を放送事業者と締結するに当たり,別段の意思表示をしていない場合には,放送だけではなくて同時配信等の許諾も行ったと推定する旨の規定を設けまして,権利処理をワンストップ化していこうということになっております。その際,推定が及ぶサービスの範囲としては,同時配信だけではなくて,追っかけ配信,見逃し配信も全て対象に含めるということになっております。

一方で,権利者側からは,この許諾推定規定によって不利な条件での契約を強いられるといった懸念も示されておりますので,その払拭のための対応も行うことになっております。具体的には,一番下の丸にありますように,権利者側の懸念を払拭しつつ,放送事業者にとって安定的な利用を可能とすることが重要であるため,具体的な適用条件などについてのルールづくりをすべきということにしております。

次に,6ページでございます。そのルールづくりの一環としまして,制度設計・運用などについて基本的な考え方を整理しております。「検討に当たっての視点」にございますように,放送事業者による安定的な利用,権利者側の懸念の払拭,法的に推定を及ぼすに足りる事情,この3点を踏まえながら,どのような制度,運用が望ましいかという基本的な部分について議論を行っていただいた結果を整理しております。

まず,推定に係る条件,推定が及ぶための条件につきましては,放送事業者側,権利者側,それぞれにどのような要件が求められるかということが整理されております。まず(1)では,放送事業者側に求められる条件としまして,同時配信等を業として実施していること,その旨を権利者が把握できるように一定の方法で公表していること,契約に当たって放送のみを行う,同時配信等は行わないという旨は明示していないこと,この3点が求められると整理されております。

(2)権利者側の別段の意思表示の在り方,推定を及ぼさせないための意思表示の在り方といたしまして,まず,契約時に別段の意思表示は行うこと,メールなどを含む書面での契約の場合はこの別段の意思表示も書面で行うこと,また,別段の意思表示の内容の中には,同時配信等を拒否するというもののほか,同時配信等に当たっての条件などを伝える意思表示も含まれることが整理がされております。

次に7ページに参りまして,ここでは,一旦推定がなされた場合に,それを後から権利者が覆す際にどういった要素が勘案されるかという点について,具体例を整理したものでございます。ワーキングチーム・小委員会での議論の結果,大きく2つに分けられるだろうということで記載がされております。1つ目は,その権利者が同じ放送事業者との間の過去の契約交渉において同時配信等を明確に拒否する旨の意思表示をしていたこと,2つ目は,権利者に支払われた対価が明らかに放送のみを行う場合の水準であったことでございます。こうした事情がある場合には,推定が覆り得るということでございます。ただ,米1にありますように,あくまでこれは考慮要素でございますので,これに該当するから必ず推定が覆るというわけでなくて,ケース・バイ・ケースの判断になる旨も明確にしております。また,米2にありますように,こうした推定が覆るような特殊事情がある場合には,そもそも放送事業者が権利者の意向を明示的に確認して契約することが望ましいとされております。逆に言うと,そうすることで容易にリスクの解消もできるだろうということでございます。いずれにしましても,こうした基本的な考え方を基に,より具体的な内容などについては,総務省,文化庁の関与の下で,関係者間でガイドラインを策定することとされております。その中では,ここに記載したような点も含めて,幅広い事項について合理的なルールづくりが行われることが望ましいとされております。

続いて,8ページでございます。(3)レコード・レコード実演の利用円滑化についてでございます。レコードについては,放送については報酬請求権である一方,配信については許諾権であるという制度上の差異があり,これに起因して放送で流せるものが同時配信等で流せない場合があるという課題が指摘されておりました。これを解決するために,同時配信等に当たって円滑に許諾が得られないと認められる者を,便宜上,「被アクセス困難者」と名づけまして,そうした方々のレコード・レコード実演に関しては,通常の使用料相当額の補償金を払うことで権利制限を行い,事前許諾を不要にしようというものでございます。この被アクセス困難者の具体的な中身は米に記載しておりまして,著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ,権利情報プラットフォーム上で適正な使用料で確実に許諾する旨も明らかにされていない者を意味するものでございます。

また,マル3で,外国原盤について若干記載をしておりますが,日本の管理事業者が管理していない場合もあり,かつ,日本のプラットフォーム上で意思表示を求めるということも現実的ではありませんけれども,権利処理窓口が明らかな場合まで全て権利制限するというのも適切でありませんので,外国原盤については慎重に取扱いを考える必要があるだろうと整理がされております。

次の丸は対象とするサービスの範囲でございまして,同時配信,追っかけ配信,見逃し配信を全て含めることとしております。最後の丸は,補償金の徴収・分配のスキームでございますけれども,放送事業者による権利処理手続の簡素化,被アクセス困難者による対価獲得の実効性確保,この両面から,一元的な窓口を設け,個々の権利者というよりは団体が一元的に権利交渉を行うことを可能にするのが望ましいだろうと整理がされております。ただし,下の米にありますように,実際に一元的な窓口を指定するかどうかという点に関しては,被アクセス困難者の数がどのぐらいの規模になるのか,また,手続コストがどのぐらいの負担になるのか,こういった点を踏まえながら,合理的な運用ができるかを見極めた上で判断する必要があるとされております。いずれにしても,より詳細な運用などについては関係者間で十分に詰めていく必要があるということでございます。

9ページに参りまして,(4)が映像実演の利用円滑化でございます。特に映像実演の分野については,過去に制作した放送番組のリピート放送を行う場合については報酬請求権という扱いになっておりますけれども,リピート放送に伴う同時配信等については,現状,許諾権になっており,利用の円滑化が求められておりました。これもレコードと同様の考え方でありますけれども,同時配信等に当たって円滑に許諾が得られないと認められる者を被アクセス困難者と位置づけまして,そうした方の映像実演については,初回契約に別段の定めがない限り,許諾は不要としつつ,通常の使用料相当額の報酬の支払いを求めるというスキームにしております。

被アクセス困難者の具体的な中身については米に記載のとおりでございまして,著作権等管理事業者による集中管理が行われておらず,かつ,権利処理窓口も明らかでない者,こういった方を対象に権利制限をしようというものでございます。なお,その下の米にありますように,初回放送時に同時配信などがされていない場合や法施行前に初回放送が行われたかなり古い番組につきましては,初回の契約時に実演家がリピート放送の際の同時配信等を見越して別段の意思表示をするのが難しい事情もあると考えられるため,別途,実演家側の意思表示の機会を確保する必要があるという整理もされております。対象とするサービスの範囲と,補償金の徴収・分配スキームについては,先ほどレコードについて御説明したところと同じでございます。

最後の10ページに参りまして,(5)が裁定制度の改善についてでございます。まず,マル1,協議不調の場合の裁定については,現状,放送だけが対象になっているところ,同時配信,追っかけ配信,見逃し配信に当たって権利者との協議が調わない場合にも活用できるようにし,かつ著作隣接権にも準用することにしております。それから,マル2の権利者不明の場合の裁定については,3つの措置を講ずることにしております。ローマ数字1は,補償金の事前供託免除に関しまして,民放事業者についても,権利者が現れた場合の補償金支払いの確実性を担保する要件を設定しつつ,免除対象に加えることにしております。ローマ数字2は,相当な努力の要件緩和でございます。現状,著作権情報センターのウェブサイトに7日間広告掲載をし,7日間が経過したら申請ができるという運用になっておりますが,これを広告掲載直後から申請できるようにしまして,利用開始までの期間を実質的に1週間短縮しようとうものでございます。ローマ数字3は,申請手続の電子化を速やかに進めるというものでございます。それから,マル3としまして,裁定に係る事務処理の迅速化についても記載をしております。今回のマル1,マル2の制度改正を契機として,より裁定のニーズが高まることも踏まえて,文化庁における事務処理体制の充実,申請から利用開始までの標準処理期間の公表などを通じて,事務処理の迅速化を進めることとしております。報告書の内容については以上でございます。

11ページ以降には検討スケジュール,委員名簿など添付しておりますので,必要に応じて御参照いただければと思います。

簡単ですが,事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。今御紹介いただきましたこの報告書(案)につきまして御意見等ございますでしょうか。様々な考慮要素のバランスをお考えいただいたものだと思います。

【若泉委員】NHKの若泉ですが,よろしいでしょうか。

【道垣内分科会長】どうぞ。

【若泉委員】報告書をまとめるに当たって,ワーキングチームの委員の皆様,関係者の皆様,限られた時間の中で詳細かつ丁寧な議論を尽くしてくださって,本当にありがとうございました。NHKは,NHKプラスを昨年の4月から本格実施しております。放送番組のネット同時及び見逃し配信サービスです。なるべくフタかぶせがなくリアルタイムで放送番組をネットでも見ていただくために,日々努力を続けております。今回の制度改正により,同時配信等に係る権利処理が円滑化されて,これまでよりもフタかぶせが減少し,視聴者の皆さんの利便性の向上につながること,そして,クリエーターの皆様への適切な対価の還元につながることを期待しております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。フタかぶせというのは,画像が見えないようにする措置のことですね。

【若泉委員】そうです。権利が取れていないところを黒くすることです。

【道垣内分科会長】分かりました。業界の専門用語かと思います。

【若泉委員】すみませんでした。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。内容については特に御異論はないということかと思いますので。

どうぞ御発言ください。

【椎名委員】芸団協の椎名でございます。同時配信等に係る円滑化ということで精力的におまとめいただきました。その過程の中で,我々も幾つかの懸念について申し上げて,そこら辺も書き込んでいただきましたが,推定許諾制度については,その運用が適切にされないと実演家の権利保護が(音飛び)ように思います。報告書(案)にも載っていますけれど……。

【道垣内分科会長】すみません。椎名委員,ちょっと今,音声が途絶えました。回線が不具合だったようですので,15秒ぐらい前から,もう一回お願いします。

【椎名委員】すみません。報告書(案),おまとめいただいてありがとうございますということで,ただ,推定許諾制度に関しましては,その運用を適切にされないと実演家の権利保護が疎かになってしまいかねない部分も含まれておりますので,報告書にも書いてあるとおり,関係当事者間でのガイドライン,そこら辺が非常に重要になっていくと思いますので,適切な運用がしっかり担保されるように考えていっていただきたいと思います。以上でございます。ありがとうございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。報告書(案)を踏まえて,今後の運用についてのご注意かと思います。ありがとうございました。そのほか,ございますか。よろしければ,本報告書について,特にここを修正すべきだという御指摘もないようでございますので,本分科会といたしましては,この報告書の「案」を取りまして,報告書とさせていただいて,文化庁から速やかに公表していただくということをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

では,2番目の議題に移ります。図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)でございます。これにつきましては,1月15日に開催された法制度小委員会において報告書がまとめられております。今,ここに案として,それが提出されております。まず,その内容につきまして,法制度小委員会主査の茶園委員と事務局から御説明をお願いいたします。

【茶園委員】では,まず報告させていただきます。

【道垣内分科会長】すみません,茶園委員,もうちょっとボリュームを上げるような措置を取っていただきたいと思います。

【茶園委員】よろしいでしょうか。

【道垣内分科会長】結構です。

【茶園委員】まず,図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書(案)について概要を御説明いたします。図書館関係の権利制限規定につきましては,従来からデジタル化・ネットワーク化への対応に関する課題が指摘されておりましたけれども,今般の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う図書館の休館等によりまして,インターネットを通じた図書館資料へのアクセスに関するニーズが顕在化いたしました。こうした状況を踏まえまして,法制度小委員会におきましては,専門のワーキングチームを設置し,幅広い関係者からのヒアリングを行った上で,国民の情報アクセスの充実と権利者の利益保護のバランスに留意しつつ検討を進めてまいりました。

その結果,パブリックコメントも経まして,最終的には,①入手困難資料へのアクセスの容易化(著作権法第31条第3項関係),②図書館資料の送信サービスの実施(著作権法第31条第1項第1号関係),この2つの課題につきまして,それぞれ対応の方向性や具体的な制度設計等を示す報告書を取りまとめることができました。この報告書の具体的な内容につきましては,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料2-1を御覧いただきたいと思います。先ほどと同様,報告書の本体は資料2-2になっておりますが,大部でございますので,資料2-1の概要版に基づき御説明を申し上げたいと思います。

まず1ページ目の経緯は,今,茶園委員から御報告いただいたとおりでございまして,1月15日付で小委員会の報告書がまとまっております。本日御議論をいただき,分科会としての報告書を取りまとめいただくことができましたら,先ほどの同時配信等の件と併せて,今国会への法案提出を目指していきたいと考えております。

次に,2ページを御覧いただければと思います。ここからが大きな課題の1つ目である入手困難資料へのアクセスの容易化,31条3項の関係でございます。まず,現行制度のところに記載のように,絶版その他これに準ずる理由により一般に入手困難な図書館資料につきましては,現行制度上,国会図書館が公共図書館,大学図書館などにデータを送信し,利用者はそれを図書館等の館内で閲覧することなどが可能になっております。一方で,館内に行かないといけませんので,図書館等が休館している場合,病気や障害等により図書館に足を運べない場合,もしくは近隣にそもそも図書館等が存在していない場合,こうした場合には入手困難資料へのアクセス自体が困難になるという課題がございます。

これに対応するため,「対応の方向性」にありますように,国立国会図書館が一定の条件の下で,入手困難資料のデータを利用者に直接インターネット送信できるようにするとしております。これによって,国民は図書館等に行かずとも,各家庭などから入手困難資料が閲覧できるようになるということでございます。ただ,その際に権利者保護の観点が重要でございまして,ここにあるように,送信対象資料の厳格な絞り込み,利用者のID・パスワードによる管理,データの流出防止などの措置を講ずることとしております。

次に,3ページを御覧いただければと思います。ここからは制度設計についてでございます。まず,(1)では補償金の取扱いを含めた全体の方向性というものを記載しております。ワーキングチーム・小委員会におきましては,この入手困難資料へのアクセスを個人向けにまで拡大するに当たりまして,補償金が必要なのかどうか,また補償金を課すことでさらにサービスの利便性を高めていけないかという視点で大きな方向性について議論をいただいております。

マル1「前提」にありますように,現行制度上,補償金は課されておりません。この理由は,米にありますように,そもそもの資料が市場などで流通しておらず,権利者への影響が軽微であること,国会図書館が非営利目的で行う公益性の高い行為であること,送信先が図書館等に限定されているということを考慮したものでございます。その上で,補償金が課されていない中での運用としまして,送信の実施方法などに関して,関係者間の協議で合意事項ができておりまして,その中で,将来の電子出版市場,権利者への利益等に悪影響を及ぼさない厳格な運用が担保されているということが現状としてございます。

これを踏まえて,今回,個人向けに送信を拡大していくに当たって,補償金が必要かどうかという点について議論を行っていただいておりますけれども,検討結果としては,マル2の2行目辺りからございますように,送信対象資料の範囲等については,現行の厳格な運用を尊重しつつ,利用者に直接インターネット送信することを可能とし,補償金制度は導入しないということになっております。送信対象資料について,権利者への悪影響がない範囲に厳格に絞り込むことで,補償金なしで利用者まで直接送信を可能にするという考え方でございます。

他方で,米にありますように,将来的には,もう少しサービスの利便性,対象資料の範囲を含めた利便性を高めつつ補償金制度を導入する,こういう方向も目指すべきだろうという御意見もございましたので,その点は継続検討課題という位置づけにしております。

次に,4ページを御覧ください。(2)で「絶版等資料」の呼び方や対象範囲についての議論を記載しております。まずマル1,用語・呼称についてでございます。法律上,「絶版等資料」という略称が使われておりまして,その意味としては,「絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」,こういうふうに定義がされております。このため,絶版か否かというのはあくまで例示でございまして,それに関わらず,現に一般に入手困難かどうかということで対象範囲が決まってくるという仕組みになっております。そういう意味で,この定義自体に何か問題があるというわけではありませんけれども,「絶版」という言葉が強調されますと,対象範囲について誤解,混乱を招くおそれもあるということで,この報告書では,便宜上,「入手困難資料」と呼称することで対象範囲を明確にすることにしております。

次に,マル2が「内容・外延」でございまして,これは個人向けに送信を拡大する際に,資料の範囲をどう定めるかという論点でございます。まず,(ア)にありますように,今回,利用者に直接送信することを可能とすることで,権利者の潜在的な市場への影響が拡大するであろうということ,また,(イ)にありますように,今回の見直しの主眼はあくまで図書館等では見られるものを家で見たい,そういうニーズに対応するものでございますので,少なくとも,利用者への直接送信に関しては,今,図書館で見られる資料の運用より対象資料の範囲を広げることは慎重である必要があるだろうという結論でございます。また,法整備に当たりましては,この資料の範囲が過度に拡大しないように法令上の担保を行うことも含めて検討する必要があるとされております。

次に,5ページに参りまして,同じく対象資料の範囲についてでございますが,個人向けではなく,図書館等に向けて送る資料,現行規定ベースのものにつきましては,個人向け送信とは別途,現行の運用を厳格に維持するか否かについては別途検討を行う余地もあるとされております。個人向けと図書館等向けでは,資料の範囲に差を設けることもあり得るのではないかという問題意識が示されております。いずれにしても,こうした具体的な運用につきましては,これまでも国会図書館と出版社,権利者などとの間で協議は行われてきておりますので,今回の制度改正に合わせて,中立的な第三者を交えた上でバランスの観点から議論を行うべきとしております。

それから,中古本市場との関係について,論点として議論がされております。これは,新刊本が入手できなくても中古本が容易に入手できる場合も増えてきているという御指摘を受けまして,中古本が流通している場合に入手困難資料と捉えてよいかどうかという議論でございます。結論としては,入手困難資料に該当するか否かの判断に当たって中古本の流通は考慮しない,すなわち,新刊本が入手困難であれば権利制限の対象としていいだろうという整理になっております。

理由としては,(ア)から(ウ)に記載しておりますが,(ア)にありますように,現行の運用においても考慮はされていないこと,(イ)にありますように,中古本が流通しても権利者に対価還元はされませんので,権利者の利益保護の観点からの考慮は求められないということ,また,(ウ)にありますように,中古本は分量,価格,流通状況のチェックなどの面で,新刊本と同様の入手容易性が確保されているとは言い難いこと,こういった観点から中古本の流通は考慮しないと法律上は位置づけております。ただ,米にありますように,これはあくまで法律上の整理でございますので,運用の際に中古本市場を考慮することまで妨げるものではないという点も付記しております。

次に,6ページに参りまして,(3)が送信の形態についてでございます。まず,マル1「閲覧者の範囲・手続」については,閲覧者の範囲を特定の属性の者に絞ることは適切ではない一方で,権利者の利益保護を確保する観点から,事前にID・パスワードなどを付与しまして,それによって閲覧者の管理を行う仕組みを設ける必要があるとされております。それに伴い,ID・パスワードなどを取得するときに利用規約などに同意をしてもらい,その中で不正利用も防止できるだろうという想定でございます。

それから,マル2,複製の可否について,これも様々御意見がございましたけれども,共通認識としては,まず,ストリーミングだけだと利便性の観点から少し問題があるであろうということ,また一方で,紙媒体でのプリントアウトにつきましては,データの不正拡散等の懸念も少ないため,利便性確保のために認めるべきであろうということ,この2点については認識が共有されております。いずれにしましても,こうした具体的な内容については,国会図書館におけるシステム上の実行可能性なども加味しないといけませんので,そういう点も踏まえながら対応を進める必要があると整理がされております。

次に,7ページに参りまして,その他の論点でございます。(4)が「受信者側での複製(プリントアウト)の取扱い」でございます。これは,プリントアウトができる形態で送信するということが前提になりますけれども,その場合,受信者が自身の手元で複製する行為が必然的に伴うことになります。私的使用など現行の権利制限でカバーされる場合はいいですけれども,そうでない場合にはプリントアウトができないことになってしまいますので,自ら閲覧する限りにおいては,受信者側での複製も別途権利制限を認めることが適当という整理になってございます。

それから,(5)が国会図書館から送信される資料をリアルタイムで公に伝達するという行為に関してでございます。現行規定上,明示的な規定は置かれておらず,解釈で処理がされておりますけれども,今回の制度改正によって,より公の伝達のニーズも高まることから,別途明示的に公の伝達権の制限規定も設けるべきとされております。その際,図書館など以外の場,例えば,公民館における公の伝達も幅広く認めるべきであるということと,一方で,無条件ということでなくて非営利・無料など一定の要件を課すべきであることが整理されております。

それから,(6)は運用面でございますけれども,大学図書館・公共図書館などが,国会図書館の持ってない貴重な資料を持っている場合もあるため,その資料につきましては,国立国会図書館をハブとして資料の全国的な共有を図ることが望ましいとされております。一旦,国会図書館にデータを集約した上で,国会図書館から幅広く送信することを通じて,各地にある資料を全国的に見られるようにしていくという構想でございます。

次に8ページに参りまして,大きな2つ目の課題である図書館資料の送信サービスの実施,31条第1項第1号関係についてでございます。現行制度のところに記載のとおり,国会図書館,公共図書館,大学図書館等では,調査研究を行う利用者の求めに応じ,著作物の一部分を1人につき一部複製して提供することが可能になっております。一方で,ファクスやメールなどの公衆送信ができないことから,遠隔地などからの簡易・迅速な資料の入手が困難という課題が指摘をされております。これに対応するために,「対応の方向性」にありますけれども,まず,民間事業者によるビジネスと,図書館等における公共サービスとの間の適切なすみ分け,これを維持するのが大前提であるということを確認しつつ,その上で,国民の情報アクセスを充実させていくkとが重要でございます。このため,権利者保護のための厳格な要件設定を行うこと,補償金請求権の付与を行うこと,この2つを前提として,調査研究を行う利用者の求めに応じた公衆送信を可能にしようということでございます。

9ページを御覧ください。この制度についての詳細な制度設計等についてでございます。まず,(1)では,正規の電子出版などをはじめとする市場との関係について整理をしております。マル1の1つ目にありますように,近年,様々な電子配信サービスが提供されておりまして,図書館でのメール送信などを可能にすることで,正規の電子出版等の市場との競合,潜在的な市場への影響が懸念されるとしております。

また,2つ目のポツにありますように,利便性の高い電子媒体等での送信ということになりますと,紙の出版市場への影響も今の複写サービスよりも大きな影響が及ぶだろうということも記載されております。出版社・権利者団体の多くからは,正規市場との競合に強い懸念が示されておりまして,一定の資料については,そもそも送信対象から除外してほしいといった御意見をいただいているところでございます。これを受けて,基本的な考え方として,正規市場を阻害しないように,法令上,明確な担保を行うべきであるとされております。

次に,10ページでございます。この担保を行うための具体的な措置についてでございます。様々御議論がありましたけれども,結論としては,著作権者の利益を不当に害する場合はこの限りでないという,いわゆるただし書を設けまして,送信される著作物の種類,性質,サービスの実態,送信される分量など,実態に即して,きめ細かに対象から除外する判断を行うのが適切と整理がされております。ただ,漠然としたただし書を設けることになると,予測可能性などが低下しますので,それに対応するために,文化庁の関与の下で,幅広い関係者,中立的な第三者を交えて具体的な解釈・運用を示すガイドラインを作成すべきであるとされております。

また,そうした検討に当たりましては,今回のただし書が単なる一般的な安全弁ではなくて,正規市場との競合回避という極めて重要な役割を果たすことを十分に認識の上,正規市場等に与える影響を十分に考慮した上で対応を行うことが重要とされております。これは,既存のただし書は安全弁として設けられているものが多いわけですけれども,今回は,同じただし書という手法を設けながら,送信サービスの実施を可能にする根本となる要件を定めるという性質の違いがありますので,それを十分に認識しながら検討することが重要であるという問題意識に基づくものでございます。

それから,このただし書を設けることに伴って,現行の一部分要件をどうしていくのかという点についても御議論がございました。様々御意見がありましたが,結論としては(ア)にありますように,直ちに一部分要件を削除することや大幅な要件変更は適当ではないこと,一方で,(イ)にありますように,現行の要件のままでは,例えば百科事典の1項目であっても全部のコピーができないなど不合理な事態が生じているため,何らかの手当てを行う必要があることについて認識が共有されております。方向性としては,著作物の一部分という骨格はそのまま維持をしながら,著作権利者の利益を不当に害しないと関係者が合意したようなものについては,特例的に全部の複製・送信が認められるということを政省令などで柔軟に追加していくようなスキームが取れないかという提案がされているところでございます。

次に,11ページに参りまして(2)が送信の形態・データの流出防止措置でございます。まず,マル1の送信の形態につきましては,利用者のニーズ,各図書館等における実現可能性に応じて柔軟な対応ができるよう,ファクス,メール,ID,パスワードで管理されたサーバーへのアップロードなど多様な形態での送信を認めることとしております。また,マル2,データの流出防止措置,こちらも権利者の御懸念が強い論点でございまして,作成・送信されたデータが目的外で流出・拡散することのないよう,措置を講ずることとされております。具体的には,(ア)にありますように,図書館等におけるデータの流出防止措置として,人的・物的管理体制の構築,データが不要となった場合の速やかな破棄などを求めております。また,(イ)にありますように,データを受信した利用者による不正拡散防止措置として,図書館から利用者に対して著作権法の規定,データの利用条件などを明示すること,それから,技術的な防止措置を様々講ずることなどが挙げられているところでございます。いずれにしても,詳細は政省令,ガイドラインなどで定めることになります。

12ページに参りまして,(3)主体となる図書館等の範囲についてでございます。まず前提として,今回の送信サービスは,全ての図書館等で実施したいというニーズがあるわけではなく,また,図書館等によって体制,システム,財政面などに様々違いがありますので,全ての図書館等で適切な運用が担保できるとも言い難いだろうということがございます。このため,一定の運営上の基準を設定しまして,それを満たすものに限って送信サービスが実施できるという仕組みを取ることにしております。その基準といたしましては,先ほどのデータの流出防止に加えまして,今回,補償金制度が導入されることから,その運用に当たっての事務処理などができる人的・物的体制の構築,職員に対する適切な研修などが想定されるとしております。これも詳細については,政省令,ガイドラインなどで定めることになります。

次に,(4)「補償金請求権の付与」,これは極めて重要な論点でございます。冒頭に記載のように,国民が迅速かつ簡易にパソコン,スマホで必要なデータを入手・閲覧できるようになれば,権利者の利益に大きな影響が想定されるところでございます。このため,今回,メール送信等を可能とすることに伴う不利益を補償するために,補償金請求権を付与することとしております。

次に,13ページからが補償金の詳細なスキームについての記載でございます。まず,ローマ数字1が対象範囲でございまして,現在無償となっている複製まで含めるかどうかという論点でございますけれども,そこまで含めた場合には,国民の情報アクセス,研究活動等に支障が生じることも懸念されるため,今回新たに権利制限をする公衆送信だけに補償金をかけるという整理になっております。

それから,ローマ数字2は補償金の徴収・分配スキームでございます。図書館等における手続コストの軽減,権利行使の実効性確保,この両面から文化庁に指定する指定管理団体が一元的に徴収・分配を行う仕組みにするとされております。また,適切な分配のためには,権利者側で権利情報の集約・データベースの構築等に努めること,図書館側では送信実績の正確な把握・管理をすることが重要ということも併せて記載がされております。ローマ数字3が補償金額の決定方法でございます。今回の送信サービスは公益性の高いサービスであり,補償金額が国民全体に関わる重要な事柄であることから,文化庁による認可制とすることになっております。その際の具体の手続としては,まず,指定管理団体が図書館等の設置者の団体から意見聴取を行った上で案を作成し,文化庁長官が文化審議会に諮った上で認可の可否を判断することが想定されます。ローマ数字2と3のスキームは,授業目的公衆送信補償金と同じ内容でございます。

次に,14ページに参りまして,ローマ数字4が補償金額の料金体系・水準についてでございます。詳細は法令ではなく,先ほど御説明したように指定管理団体が案を作成して・・というプロセスになりますけれども,ここでは基本的な考え方を整理しております。今回の送信サービスにつきましては,(ア)にありますように,図書館等において個々の送信実績を正確に把握・管理することができること,一方で,(イ)にありますように,図書館資料を本来用途で使うというものであって権利者に与える影響が大きいだろうということ,このことから,まず,マル1,料金体系については個別の送信ごとに補償金を徴収するものとすべきこと,また,マル2,補償金額についても,低廉な額というよりは,権利者の逸失利益を補塡できるだけの水準にすることが記載をされております。具体的な補償金額の決め方についてはこれからの議論でございますけれども,米にありますように,過度に複雑化しないように注意をしながらも,著作物の種類・性質,送信する分量,利用者の属性などに応じたきめ細かな設定を行うことも考えられるとされております。

次に,ローマ数字の5が補償金の受領者でございます。今回,公衆送信権の制限ということになりますので,著作権者と公衆送信に関わる電子出版権者双方を受領者として位置づけることになっております。一方で,今回,直接的に公衆送信権の制限を受ける訳ではない紙の出版権者,出版権の設定されていない出版社,これらの利益確保も図ることが重要であるという認識が記載されております。ただ,これらの者は公衆送信権の制限に直接関わるものでありませんので,法律で規定することは困難であるため,関係者間で合理的なルールづくりを行うことで利益確保を図っていくべきとされております。

それから,ローマ数字の6が補償金の支払い主体・負担者についてでございます。まず,法律上の支払い主体としては,著作物の利用主体(送信主体)である図書館等の設置者になるとしつつ,実際の補償金負担はサービス利用者に転嫁される場合が多いだろうと整理がされております。なお,米にありますように,公立図書館については図書館法で無料公開の原則が規定されておりますが,今回の送信サービスはあくまで付加的なサービスであることなどから,その関係でも問題は生じないだろうという整理もされております。

最後の15ページに参りまして,(5)その他論点でございます。まず,マル1の「サービス利用者の登録」でございます。図書館等において,あらかじめ利用者に対して著作権法の規定の趣旨・内容,サービスの利用条件などを明示した上で,それに同意した者を登録して,その人に対してサービスを提供する,もし不正利用が判明した場合は,利用を停止することにすべきと整理がされております。また,マル2「脱法行為の防止」,こちらは,権利者団体から複数回に分けて申請して,全文を取得するなどの行為が行われることを懸念する御意見もございましたので,図書館等において同一の者からの申請は慎重に精査すべきとされております。ただ,これも米印にありますように,図書館等では,利用者のプライバシー保護という観点から,情報管理の在り方については慎重な検討が必要であり,精査にも限界があるという御指摘もなされているところでございます。

それから,マル3が「契約上の義務の優先」でございまして,図書館等では,直接契約に基づき,書籍・論文・新聞などのデータ提供を受けている場合がございます。この場合,契約条件の中で,公衆送信不可などの条件が定められていることもありますけれども,その場合は基本的に契約上の義務として遵守する必要があるだろうという整理がされております。

以上が報告書案の内容でございまして,最後のまとめの部分では,この報告書に沿って早急に法整備等の対応を進めるとともに,適切な運用のために丁寧な周知・啓発が重要であるということが記載されております。また,その下にありますけれども,小中高の学校図書館については,現行制度上,著作権法31条の図書館等には含まれておりませんが,対象として指定すべきという御意見もいただいております。この点については関係団体で様々な御意見があるところですが,こうした点をはじめとして,残された課題も幾つかございますので,その点については,今回の制度改正後も引き続き検討を継続していくと整理がされております。

16ページ以降は委員名簿,ヒアリング団体の一覧などでございますので,必要に応じて参照いただければと思います。

事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。ただいま御紹介いただきました,この報告書(案)につきまして,分科会の委員の方々におかれましては,何か御意見等ございますでしょうか。

どうぞ。

【井村委員】書籍出版協会の井村です。ご説明ありがとうございました。今ご説明いただいたように,また報告書の中にも書かれておりますが,図書館に関わる権利制限,特に2番目の図書館資料の送信サービスにつきましては,電子出版のみならず,紙の書籍に非常に大きな影響を与えることになると思います。それだけに,私ども出版社と著作権者の皆様方に多大な影響が出る可能性があり,これからの慎重な議論が必要になってくると思います。

特に私ども出版社につきましては,紙の書籍に関しても影響が出るということで,2号出版権者のみならず,紙の出版権もしくは出版権さえ有してない,けれども著者の方から許諾を得て紙の本を出しているという出版社がたくさんございます。そういう出版社に対しても,逸失利益がきちんと補償金で補塡されていかないことには,次の出版活動が困難になってしまいます。一方,報告書にも書かれておりますとおり,2号出版権者以外の者が補償金を受領することに関しては法律で規定できないこともあり,今後の関係者間での議論に委ねると言っても,難しい面は多々あると思います。そういう意味では,文化庁さまに議論をきちんとリード頂くことが重要になってくると思いますので,今後もよろしく御指導のほどお願いしたいなと考えております。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。そのほか,何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。ただ今いただいた御意見も,報告書案についてはこれでいいけれども,今後の文化庁がきちんと関わって適切に運用していくようにという御意見かと思います。そういうことを踏まえまして,この報告書(案)を本分科会としての報告書とさせていただいて,事務局においてはこれを速やかに公表いただき,これを条文に落として,しかるべく国会に提出していただくということになろうかと思います。

【事務局】すみません,返田委員が挙手しております。

【道垣内分科会長】どうぞ御発言ください。

【返田委員】ありがとうございます。日本図書館協会の返田でございます。今回の権利制限の見直しというのは,今後のコロナの後のデジタル社会において大変重要な一歩と考えております。この法改正の成果をより展開できるよう,特に,(2)「図書館資料の送信サービスの実施」のところで3点お願いしたいことがございます。

まず1点目,補償金の支払い義務者についてでございます。報告書では,法律上の補償金の支払い主体は著作物の利用主体,送信主体である図書館等の設置者とするとされています。実際の補償金負担はサービス利用者に転嫁される場合が多いと考えられるとございます。複製を最終的に利用する利用者が負担することが適当と考えております。その点,各図書館においてきちんと対応できるよう,根拠となるものを整えていきたいと切に考えております。パブリックコメントにおいても,利用者に転嫁する場合の法的規定を求む意見もございました。仮に支払い主体が設置者であったとしても,利用者に支払いを求める根拠が必要となること,実務上の観点からも重要なことと思います。よろしくお願いいたします。

続いて2点目でございますが,徴収と支払いのために生じる事務処理の量,この点についても懸念の声が上がっております。具体的な方法については,今後設置されるガイドライン等の実務者,関係者の協議において検討されるとのことですので,こちらについてもよろしくお願いいたします。

3点目については,データ送信において流出防止等の措置が求められております。各自治体がおのおの仕組みを構築,導入することは現実的ではないと思っておりますので,全国の公共図書館が使えるよう,システム構築の点も今後の検討としてよろしくお願いいたします。なお,先ほど最後の点でございました学校図書館の件につきましても,今後の検討をしていただけるということで,どうぞよろしくお願いしたいと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。3点御指摘いただきましたけれども,後の2点は運用上のことかと思います。第1点の利用者に支払いを求めることについての根拠条文をとおっしゃったんですが,この点,何か事務局からお答えいただく点ございますか。

【大野著作権課長補佐】実務的な視点から,非常に重要な御指摘をいただいたものと受け止めております。まず,法律上の支払い主体については,報告書に記載のとおり,送信主体である図書館等の設置者になることは結論として出ております。一方で,実際の負担者は,受益者であるサービス利用者の方々に御負担いただくことが基本であろうということも,我々として認識を共有しております。先ほど根拠とおっしゃったのは,必ずしも条文上の根拠ということではなく,何らか利用者に対して説明しやすいような環境整備をしてほしいという御趣旨かと思いますが,国としても自治体においてスムーズな対応ができるように,周知・広報をはじめとした環境整備をしっかり行っていきたいと思っております。その点は,御安心をいただきたいと思います。

それから,事務処理に関する御懸念もいただいております。この点も当然,権利者保護をしっかり図っていくことが前提になりますけれども,その上で,可能な限り簡素な合理的な仕組みを構築していくことが重要だと理解をしております。パブリックコメントでもありましたけれども,今回の法改正は非常に多岐にわたる論点を施行までに詰める必要がございますので,十分な準備期間を取って,その間に現場の皆様方の御知見も借りながら,丁寧に協議を進めていきたいと思っております。事務処理の合理化に関してもぜひ皆様方のアイデアをいただきながら検討を進めていきたいと思っております。

事務局からは以上です。

【道垣内分科会長】大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】先ほど,返田委員から3点御指摘いただきましたが,実際にこれだけの大きな法改正を運用される図書館のお立場としては,事前に御心配の点が多々あるのは当然かと思っております。先ほど事務局からお答えいただいたように,法律上の整理としては,ここにあります報告書(案)に示されているとおりなのですが,法律が重要であることはもちろんのこととして最も重要なのは運用をしっかりすることかと思います。先ほど言われました3点,特に第1点については,いろいろ御懸念の点がおありかと思いますが,利用者が合理的なフィーを払う代わりに利便性の高いサービスが受けられるというのが今回の改正のもともとの趣旨,眼目であります。法律上の負担者は図書館ですが,最終的には,負担が実際に利用されるユーザーに転嫁されるというのは,言わば当然のように前提とされていることかと思います。そうは言っても実際上は,個々の方々に周知していただくなど,いろんな点で運用上の工夫をしていかないと,この制度はうまく進んでいかないと思います。今後,法律をベースにしつつ,その上にしっかりとした制度をきちんと組めるように,色々な形で努力していけばスムーズに運用できると,我々委員としては考えさせていただいたものであります。いろいろ御心配いただきながらも,しっかりと進めていただければ,先ほどの運用面での3点の問題点は必ず解決できると思っております。他方,先ほど文化庁から御説明があったとおり,民だけに任さずに,国でもしっかりとバックアップして,きちんと大きな目標が達成できるように努力されていくものだと思っております。

今回の件というのは,先ほども出ておりましたとおり,国民の情報アクセス向上という非常に大きな意義のある話でありますし,そもそも図書館関係団体の御要望に基づくものでもありますので,実際の円滑な施行に向けて,図書館関係者においてもぜひ前向きな形で議論に参加していただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

井村委員。

【井村委員】再度,発言をさせていただきます。先ほど出版社,それと著作権者に非常に大きな影響が出ると申し上げましたけれども,図書館資料送信サービスにおいては,出版物に関係する様々な業種,文献複写提供サービス会社とか図書館の周りの書店さんとか,そういった著作物を利用して業を営んでいる業種の方々にも大きな影響を与える可能性があります。今後の議論においては,そういう業種があることを念頭に置いた上で,慎重に議論を進めていただきたいと,再度文化庁さまにはそういう業種に配慮したリードをお願いしたいと思っております。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。私がここで言うことではないですが,この料金決めは相当大変だと思います。安からず高からず,しかし十分な,さきほどご指摘のあった出版業界その他にも十分御配慮できるような制度運用をしていただきたいと思います。

この報告書はこれでまとめさせていただきますけれども,今後,関係者の協議も積み重ねていただいて,そこに文化庁もちゃんと絡んでいただいて,しっかり,いいところはちゃんと生きるように,弊害は起きないように運用していって頂くことをお願いしたいと思います。

以上でよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございました。では,1番と2番の議題をここで終わりまして,3番目,使用料部会及び各小委員会の審議の経過等についてでございます。

まず,最初が使用料部会の審議の経過等についてでございます。これにつきましては,部会長は私ですので,私のほうから内容を簡単に御説明申し上げ,必要があれば事務局からもお願いしたいと思います。

使用料部会における審議の経過でございますけれども,今期の部会では2つあります。1つ目が授業目的公衆送信補償金の額の認可,これは結構大変な話でした。もう1つのほうは通常の業務ですが,著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額であります。この2つについて審議を行いました。

第1番目の授業目的公衆送信補償金の額の認可につきましては,令和2年9月30日に,指定管理団体から補償金額の認可申請がございました。

使用料部会では,まず文化庁が用意していた審査基準を妥当なものだということで使用料部会として採用した上で,それに基づいて審議をすることにし,まずはヒアリングを行いました。令和2年10月23日に指定管理団体から,また11月16日に教育機関の設置者団体,これは複数ございますけども,そこからそれぞれ御意見を伺いまして審議を行い,指定管理団体に幾つかの補正をしていただきました。そして12月8日に,補正された申請どおり認可することが相当であるとの結論を得ました。

使用料部会の当該報告に基づきまして,12月14日に,本分科会で,本件との利益相反のない委員だけに残っていただいて御審議いただきました結果,諮問のあった授業目的公衆送信補償金の額の認可について,適正な額であると認められるため,認可することが相当という結論を得ました。

そこで文化庁長官への答申をいたしまして,令和2年12月18日付で,文化庁長官より補償金額の認可が行われたところでございます。審議に御協力いただきました委員の皆様におかれましては,ここで改めてお礼申し上げます。

2番目の審議の項目ですが,著作権者不明等の場合における著作物等の利用に係る補償金の額についての審議でございます。

今年度は,前年度の第8回として5月に審議を行った件数を含めますと,令和2年度の第4回までで合計33件,著作物の数といたしましては1,187点の補償金の額を決定いたしました。

昨年度は71件,5万660点ということですので,数は減っているわけです。もっとも,事務局において,ここ10年くらいのトレンドを見ていただいたのですが,制度の利用を促進するという措置を平成21年にとっていただいたので,全体としては増加傾向にあります。昨年度と今年度を比べると減っているのですが,これは,国会図書館から大口が来る年と来ない年がありまして,数としてはすごく減っていますけども,増加傾向というのが全体のトレンドでございます。

以上,簡単ではございますけども,使用料部会の報告といたします。

何か事務局から補足していただくことはありますか。

特になければ,何か御質問,御意見等ございますでしょうか。

よろしゅうございますか。では次,小委員会の審議経過の報告に入りたいと思います。

まず,その中では最初のもの,基本政策小委員会の審議経過につきまして,この主査をお願いしている末吉委員から御報告をお願いいたします。

【末吉委員】末吉です。今期の基本政策小委員会における審議経過について,資料3-1に基づき報告いたします。

まず1,「はじめに」でございます。今期は規制改革実施計画等を踏まえつつ,主に放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化について検討を行うとともに,その他,著作権行政をめぐる諸動向についての報告を受けて,意見交換等を行ってまいりました。

次に2,課題の審議状況についてでございます。まず,(1)放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化については,先ほど,詳細について説明の上,分科会としての報告書を取りまとめていただきました。ここでは,問題の所在と小委員会における検討の経緯をごく簡単に記載しておりますが,説明は割愛をいたします。

次に(2)私的録音録画補償金制度の見直しについては,知的財産推進計画2020において,具体的な対象機器等の特定について2020年内に結論を得て,2020年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずるとされていました。

本小委員会では,昨年度からの関係府省庁における検討状況等の報告を受け,意見交換を行ったところでありまして,引き続き,関係府省庁における検討状況等を注視しつつ,必要に応じて,来年度以降,改めて議論を行うこととしています。

次に(3)デジタル時代に対応した著作権施策の在り方については,知的財産推進計画2020において,2020年内に知的財産戦略本部の下の検討体を中心に,具体的な課題と検討の方向性を整理することとされていました。

本小委員会では,これまでの著作権法改正等の経緯と今後の検討スケジュールなどを確認の上,議論を行っております。

知的財産戦略本部においては,昨年8月に,デジタル時代に対応した著作権制度関連政策の在り方検討タスクフォースを設置し,関係者からのヒアリングを行いつつ,具体的な課題・ニーズの抽出や,それを踏まえた検討の方向性を整理すべく,議論が行われていますが,現時点では整理に至っていない状況です。

引き続き,その議論の状況を注視しつつ,一定の整理がなされた場合には,来年度以降,本格的に議論を深めることとしています。

最後に(4)その他については,平成30年著作権法改正による,授業目的公衆送信補償金制度に関し,新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた,令和2年度における早期施行,令和3年度以降の本格実施に向けた補償金額の認可や財政支援の状況等について報告を受け,意見交換を行いました。

また,インターネット上の海賊版対策を中心とする令和2年著作権法改正に関しても,関係団体による取組や文化庁における普及啓発等の実施状況を含めて報告を受け,意見交換を行いました。

そのほか,3ページには小委員会の開催状況,4ページには委員名簿を記載しております。

簡単でございますが,私からは以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。今の経過報告につきまして,何か御質問等ございますでしょうか。

よろしゅうございますか。では,そのように伺ったということにいたします。

では次,法制度小委員会の審議経過報告につきまして,主査である茶園委員からお願いいたします。

【茶園委員】茶園です。よろしいでしょうか。

【道垣内分科会長】はいどうぞ,お願いします。

【茶園委員】では報告させていただきます。今期の法制度小委員会における審議経過につきまして,資料3-2に基づきまして報告をいたします。

まず,「1.はじめに」でございますけれども,今期は知的財産推進計画2020などに基づきまして,3つの課題について検討を行ってまいりました。

1点目は図書館関係の権利制限規定の見直し,2点目は独占的ライセンシーに対する差止請求権付与,3点目は研究目的の権利制限規定の創設でございます。このうちの2点目及び3点目につきましては,今年度の議論を受けて,来年度,さらに議論を深めることになっております。また,検討に着手できなかった課題も複数ございますので,来年度以降,重要性・緊急性に応じて順次検討を行ってまいることとなっております。

続いて,「2.課題の審議状況」についてでございます。

(1)図書館関係の権利制限規定の見直しにつきましては,先ほど,詳細について説明の上,分科会としての報告書を取りまとめていただきました。ここでは,問題の所在と小委員会における検討の経緯をごく簡単に記載しておりますけれども,説明は割愛させていただきます。

次に,(2)独占的ライセンシーによる差止請求権の付与等につきましては,今年度もワーキングチームを設置しまして,昨年度に引き続き,独占性の対抗制度及び独占的ライセンシーに差止請求権を付与する制度の導入につきまして検討を行いました。

現時点で結論が出ているわけではございませんけれども,対応の方向性や制度設計に当たっての留意点などについて一定の整理を行いまして,その審議経過等を1月13日付で審議経過報告書として取りまとめております。

最後の(3)研究目的に係る権利制限規定の創設につきましては,昨年度から議論を開始した課題でございますけれども,昨年度は,当委員会での議論を踏まえまして,文化庁において調査研究を実施し,研究目的に係る著作権の利用実態やニーズ,円滑な利用に当たっての課題などが一定程度明らかになっておりますけれども,この調査研究報告書におきましては,より広範・詳細な調査の必要性が指摘をされておりました。

これを受けまして,今年度は,まず新たな調査研究を実施することといたし,今後,その状況を踏まえながら,適宜,制度設計等に関する議論を深めることとしております。近日中に,文化庁において調査研究が開始される予定と聞いております。

なお,3ページには小委員会の開催状況,4ページには委員名簿を記載しております。

また,別紙といたしまして,5ページには今期1回目の本小委員会で決定いたしました主な検討課題の一覧,6ページにはライセンスワーキングチームの審議経過報告書をつけております。

簡単ですが,私の報告は以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。今の御報告に対しまして,何か御質問,御意見等ございますか。

よろしゅうございますでしょうか。では,小委員会の3番目として,国際小委員会の審議経過につきまして,主査の私から御報告申し上げたいと存じます。資料の3-3でございます。

今期の国際小委員会では,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,WIPOでの議論中心ですが,それから国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方について,2つの項目について検討を行いました。

まず最初の国際的な対応の在り方でございます。WIPOにおける議論を事務局から御報告いただきまして,今後の我が国の取るべき立場等について議論を行いました。

①から③までに分けて,この資料3-3は書いております。まずは放送機関の保護についての議論でございます。放送条約をつくるという話ですが,WIPOでは,デジタル化・ネットワーク化に対応した放送機関の権利の保護に関する新たなルールを策定することを目的として,放送条約の議論をずっと続けております。

今期の委員会では,WIPOの放送条約の議論に向けた我が国の対応の在り方について,集中的かつ機動的に検討を行うため,ワーキングチームをつくりました。これは昨年度もつくらせていただきましたけれども,そこで議論を行っていただきました。

このワーキングチームでは,WIPOにおいて提起されている条文案や,議論の動向,さらには国内の放送・有線放送事業者の方々の実情を踏まえまして,条約で保護される対象と,条約で与えられる権利について,各国の取り得る立場を検討するとともに,今後のワーキングチームの進め方についても議論され,その旨国際小委員会に報告があったところでございます。内容についてはここに書いてあるとおりです。

2番目,権利の制限と例外でございますが,これは2つ中身がありまして,図書館とアーカイブのための権利制限・例外。それから,教育研究機関等のための権利制限と例外の2つです。両議題とも,各国の経験等の共有を中心に,まずはゆっくり議論しましょうという先進国と,新たな国際枠組みがぜひ必要だという途上国の間の対立が続いております。COVID-19の関係で,WIPOでも議論がオンラインで行われたり,なかなかうまく審議が進んでいないようでございます。

それから3番目,その他でございます。その他の中では,公共貸与権の調査ということがWIPOで提案されております。

これは,図書館で貸し出される際に,それについての著作権者の報酬請求権を導入するということでございます。これは,既に存在する国もあり,また導入を議論したけれどもやめた国もあるという状況です。一部の国からそれをWIPOでまずは調査したらどうかという意見があり,それを受けまして,この国際小委員会では有識者の方からヒアリングを行って議論を行いました。

この資料3-3の4ページ,5ページに,そのことが書かれていると思いますが,途上国にとってのメリットや,電子書籍の貸出しへの対応ということについて注視していく必要があるという指摘があったほか,著作権制度の枠組みで制度調和を図っていくのではなくて,それより外の文化政策の話ではないかという御意見もございました。

いずれにしましても,諸外国における制度導入に対する慎重意見も相当あるところですので,注意を払って見ていきましょうということでございます。

2番目の,国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方でございます。これはさっきの紙の5ページ,6ページ辺りに書いているところですけども,文化庁が実施する,海外における著作権保護に係る取組に関する報告,及び民間団体の海賊版対策の取組についての紹介がございまして,これに基づいて,国境を越えた海賊行為について今後取り得る方策について議論を行いました。

また,今年度,インターネット上の著作権侵害対策ハンドブック,対象国をアメリカ,ロシア,ベトナムの3か国につきまして,その作成を外部委託をしているところであり,作成状況についての進捗の報告がございました。

以上,何か特別の決定をしたわけではなくて,そういう審議を行っているという経過を御報告した次第でございます。

この国際小委員会につきましても,何か御質問,御意見等ございますか。

よろしゅうございますでしょうか。では,各小委員会の審議経過報告はこの程度ということにして,4番目,その他でございます。

これは特にこちらで用意はないですね。事務局もないですね。

何かこの際,御意見は何かありますでしょうか。議題に入っていないことでも結構です。まあ,議題に入っていないことがその他なのですが。

何かございますか。よろしいでしょうか。

どうぞ,はい。

【椎名委員】すみません,芸団協でございます。実演家の立場からは,レコード実演に係る公衆への伝達における利用全体について見直ししたほうがいいのではないかということを申し上げていたところなのですが,まずは放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化が喫緊の課題ということで,優先的に今年度,議論が行われたものと認識しております。

一方,残された課題として,レコード実演の公衆への伝達における利用全般,とりわけWebキャスティングに係る権利処理の円滑化や,あるいはレコード演奏伝達権の導入に向けた検討についても,今後の検討課題になっておりますので,この部分に関しましても,しっかりと議論を進めていただきたいと,お願いしたいと思います。

以上です。

【道垣内分科会長】はい。今後の審議のテーマについての御発言かと思います。

そのほか,よろしゅうございますでしょうか。

【井上(伸)委員】すみません,井上でございます。ちょっと質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。

【道垣内分科会長】はい,どうぞ。

【井上(伸)委員】資料2-2の1ページ目,そもそも問題の所在のところで,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うニーズの顕在化というのがあるのですが,実際にコロナウイルスが拡大してから,図書館の利用率ですとか,休館がどのくらい増えているのか,あるいは利用率が減っているのかとか,そういう具体的な資料というのはどこかにあるのでしょうか。

質問でした。

【道垣内分科会長】これは,返田委員,何か御存じのことはございますか。

【返田委員】返田です。私の勤めている勤務先の図書館の状況なんですけれども,やはり新型コロナウイルスのとき,昨年の3月から休館いたしました。

休館が明けて,しばらくはそんな様子は見えなかったのですが,夏ぐらいに実際の利用が増えたというふうに覚えております。ちょっと実際の数字を今,御用意できていないので,必要でしたら,また事務局のほうを通じて御連絡させていただきたいと思います。今日も実際,利用者の方からの窓口で,今回の緊急事態においては閉館をしないんですね,よかったです,というような御意見もいただいております。

まだ当年度のことですので,全国的な集約とかそういったことは出ていないんですけれども,感触としてはそのように感じております。

以上です。

【井上(伸)委員】ありがとうございます。議論の際に根拠となる数字が必要ですので,是非お願いいたします。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。このCOVID-19終息後の時代,どういうふうになるのか分かりませんけれども,この審議会でも,東京以外に住んでいらっしゃる方にわざわざここまで来ていただくことはもうないかもしれないかなと思います。WIPOにもわざわざ行かなくてもいいかもしれない。そういうふうに変わっていくかもしれないので,図書館の在り方も恐らく変わっていくのだろうと思います。

この話は,もっと長いスパンで,時代が変わっていく中でのことかと思いますけど,書出しはそのことから書いていますので,御質問ありがとうございました。

そのほか,よろしゅうございますか。

では,今期の最後の著作権分科会ということで,矢野文化庁次長に来ていただきましたので,一言お願いいたします。

【矢野文化庁次長】まず,道垣内先生をはじめとする分科会の皆様には,大変,時代の激しい流れというか,非常に適時適切に御対応いただきました。深く感謝申し上げたいと思います。

今期の著作権分科会におきまして,まさにコロナ禍ということと,それとインターネット時代ということで,喫緊の法整備に向けた課題,1つは放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化,そして図書館関係の権利制限規定の見直しという,大きな課題であったこの2点を中心に御議論いただきまして,報告をお取りまとめいただいたということでございます。

いずれも,一言で申しますと利害関係を整理する,なかなか難しい課題があったわけでございますが,先生方の丁寧かつ充実した御議論によりまして,非常にバランスの取れたと申しますか,きめ細かな対応の方向性をお示しいただいたものと受け止めております。

今後,この報告書に基づいて,立法作業を急ピッチで進めまして,今通常国会,6月まで予定されていますが,通常国会の法案提出を早期に目指してまいりたいというふうに考えております。

また,このほか,クリエーターへの適切な対価の還元,著作権に関する普及啓発・教育の充実,そして国際的な課題への対応を含め,今後さらに議論を進めていく上で,非常に重要な御示唆を頂戴したものと受け止めております。

委員の皆様方におかれましては,それぞれの御専門の立場から,今期の分科会の充実した審議のために多大な御尽力を賜りましたことを,改めまして感謝を申し上げて,私の御挨拶とさせていただきたいと思います。本当にどうもありがとうございました。

【道垣内分科会長】御丁寧にありがとうございました。

最後に当たりまして,私からも一言御挨拶申し上げたいと思います。

この分科会の下には使用料部会,それから各小委員会,さらにはその下にワーキングチーム,さらにそこに来ていただいている外部の有識者の方,多くの方が関係して,全体の議論をしていただいております。

また事務局も,驚くほど少ない人数だと私は思います。今や著作権はあらゆる国民の関心事項で,マスコミにも取り上げられることも多々あり,ちょっとした法改正が大きな問題を引き起こしたり,あるいは利益がどっちに転ぶかということも生じてくる中,非常に少数精鋭で頑張っていただいている事務局,そういう方々に支えられまして,何とか分科会長を務めてまいりました。ありがとうございました。

私は,このところ毎年のように,そろそろ任期は終わりじゃないかと申し上げているのです。ちょっとはっきりしないのですが,でも,もしかすると終わりかもしれませんので,もしそうであれば,どうも長い間支えていただきましてありがとうございました。

以上で,私の御挨拶もおしまいでございますので,これで今期の文化審議会著作権分科会は終了とさせていただきます。ありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動