日時:令和5年6月30日(金)
13:00~15:00
場所:文部科学省東館13F2、3会議室
(オンライン併用)
議事
1開会
2議事
- (1)文化審議会著作権分科会長の選出等について【非公開】
- (2)第23期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について
- (3)小委員会の設置について
- (4)その他
3閉会
配布資料
- 資料1
- 第23期文化審議会著作権分科会委員名簿(269KB)
- 資料2
- 文化審議会著作権分科会の議事の公開について(案)(253KB)
- 資料3
- 知的財産推進計画2023等の政府方針(著作権関係箇所抜粋)(2.8MB)
- 資料4
- 第23期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(案)(274KB)
- 資料5
- 小委員会の設置について(案)(264KB)
- 参考資料1
- 文化審議会関連法令等(321KB)
- 参考資料2
- 著作権分科会における審議状況と今後の対応(令和5年3月31日文化審議会総会資料2)(228KB)
- 参考資料3
- 著作権法の一部を改正する法律(概要)(353KB)
- 参考資料4
- AIと著作権の関係等について(416KB)
- 参考資料5
- インターネット上の海賊版による著作権侵害対策情報ポータルサイトについて(852KB)
資料2、資料4、資料5について異議なく、案の通り了承されました。
了承された資料については、以下の通りです。
- 資料2
- 文化審議会著作権分科会の議事の公開について(254KB)
- 資料4
- 第23期文化審議会著作権分科会における主な検討課題について(274KB)
- 資料5
- 小委員会の設置について(264KB)
議事内容
○今期の文化審議会著作権分科会委員を事務局より紹介。
○本分科会の分科会長の選任が行われ、茶園委員が分科会長に決定。
○分科会長代理について、茶園分科会長より上野委員を指名。
○会議の公開について運営規則等の確認。
※以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成二十四年三月二十九日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。
(配信開始)
【茶園分科会長】
それでは、傍聴される方々におかれましては、会議の様子を録音・録画することは御遠慮くださいますようにお願いいたします。
では、改めて御紹介させていただきますけれども、先ほど分科会長の選出が行われまして、分科会長に私、茶園が就任いたしました。また、分科会長代理といたしまして上野委員を指名させていただきましたので、御報告させていただきます。
私は、前期も分科会長を務めさせていただきましたけれども、分科会ではDX、デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権法の対応、とりわけ利用の円滑化と対価還元等につきまして、詳しい審議をこの著作権分科会において行っていただきました。その成果として、著作権法の改正が行われました。ただ、改正が行われて終わりというわけではありませんで、新たに設けられました制度をさらに発展させていくということが必要でして、これらの点につきまして、先生方に活発な御議論をお願いしたいと思います。
また、AIに関する問題が、現在、社会において活発に議論されているようでございます。AIというような新しい技術につきましては、著作権法はこれまでも新しい技術に対応してきましたし、また、今後も同じように新しい技術が生み出されたらそれに対応することになります。新しい技術への対応というのは、著作権法に宿命づけられたものでございます。AIにつきましては、これまでも検討され、著作権法も対応してきたのですが、恐らく多くの人々にとって、思っていた以上に早く普及したということで、社会の中にいろいろ混乱が生じていて、著作権法の問題も関心を集めているのであろうと思います。これらの点につきましても、先生方に活発な御議論をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
では、本日は今期最初の著作権分科会となりますので、議事に先立ちまして、杉浦文化庁次長から一言御挨拶をいただきたいと思います。杉浦次長、よろしくお願いいたします。
【杉浦文化庁次長】
文化庁次長の杉浦でございます。今期の著作権分科会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。
先生方におかれましては、日頃より著作権施策の検討・実施に当たりまして、御協力、御指導を頂戴しておりますこと、誠にありがとうございます。このたびは、御多用の中、著作権分科会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、2021年7月に文部科学大臣から諮問され、本分科会において御議論を頂戴しました「デジタルトランスフォーメーション時代に対応した著作権制度・政策の在り方について」を受けまして、今年5月に著作権法の一部を改正する法律が成立し、公布されました。これも、これまでの先生方のここでの御議論の賜物だと考えておりまして、この場をお借りしまして本当に感謝申し上げます。ありがとうございます。
今期の著作権分科会におきましては、昨年度に引き続き、デジタルトランスフォーメーション時代に対応した適切な対価還元等について御議論いただくことに加え、新たにAIと著作権に関する論点の整理等につきまして御審議いただきたいと考えております。
特に、AIと著作権につきましては、いわゆる生成AIの普及・多様化により、政府のAI戦略会議におきまして、制作活動を効率化する例に触れている一方で、著作権侵害のリスクについても指摘されているところでございます。知的財産推進計画等の政府方針を踏まえまして、文化庁といたしましても、著作権法の丁寧な周知に加えまして、各分野の先生方に御参画いただいている本審議会におきまして、御議論いただきたいと、このように考えている次第でございます。
社会の変化の中で、著作権制度・政策も少しずつ姿を変えてまいりましたが、その検討に当たりましては、「権利保護・適切な対価還元」と「利用の円滑化」のバランスを取り、文化芸術の発展につなげていくことが肝要と考えております。
委員の皆様方におかれましては、それぞれの御専門の立場から、社会の要請を踏まえた我が国の著作権制度・政策の課題につきまして、精力的な御議論、御審議をお願いしたいと思います。
今年度もよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
杉浦次長、どうもありがとうございました。
それでは、報道関係の方々におかれましては、御退出くださいますようにお願いいたします。
【茶園分科会長】
では、続きまして、議事(2)の「今期の著作権分科会における主な検討課題」と、議事(3)の「小委員会の設置」に入りたいと思います。知的財産推進計画2023等の政府方針の内容、それを踏まえた今期の主要な検討課題(案)、小委員会の設置(案)に関する資料等を事務局に御準備いただいております。それらにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【小倉著作権課課長補佐】
事務局でございます。資料3を御覧ください。資料3は、今月決定された知的財産推進計画2023などの政府方針における著作権関連箇所を抜粋した資料となります。大部にわたりますので、事務局からの説明はポイントを絞って紹介させていただきます。
下方中央に振ってあるページ数、1ページ目を御覧ください。知財計画2023の2、基本認識の3ポツ、AI技術の進展と知的財産活動への影響の箇所を御覧ください。
こちらでは、3行目に引用されておりますように、2017年の検討委員会報告では、AIの学習用データに係る著作権法の権利制限規定に関する制度設計や、AIが悪用される場合や、AI生成物に関する人間の創作的寄与の程度の考え方について触れた上で、近年のAIの状況等の記載があります。
4ページ目を御覧ください。3、知財戦略の重点10施策の中に、3ポツ、急速に発展する生成AI時代における知財の在り方、(1)、生成AIと著作権についてが挙げられております。
これについて、次の5ページ目の中央、施策の方向性というところを御覧ください。そこでは、生成AIと著作権との関係について、AI技術の進歩の促進とクリエイターの権利保護等の観点に留意しながら、具体的な事例の把握・分析、法的考え方の整理を進め、必要な方策等を検討するとあります。
続いて、5ページ目の下側から、7ポツ、デジタル時代のコンテンツ戦略のところを御覧ください。これ以降、少し記載が続きますが、9ページの上、中ほどのところの施策の方向性の欄を御覧ください。こちらには、著作物の海外展開等が掲げられております。
また、その直下、(2)、クリエイター主導の促進とクリエイターへの適切な対価還元につきましては、このまま文章は続きますが、11ページ目を御覧いただきますと、上側、施策の方向性のところに3点ございますが、各分野の実態把握と課題の整理であるとか、クリエイターの支援、こういったものが掲げられております。
同じく11ページ目、下半分の(3)のメタバース・NFT、生成AIなど新技術の潮流への対応につきましては、これまで昨年度同様の記述に加えまして、AIについても、先ほど御説明したものが再掲されております。
続きまして、12ページの下ほど、(4)、コンテンツ創作の好循環を支える著作権制度・政策の改革のところを御覧ください。こちらにつきましては、13ページとなりますが、令和5年著作権法改正にも触れまして、14ページを御覧ください。施策の方向性とありますが、こちらでは、施行に向けた準備と、関係者への周知啓発等を行う旨、記載があります。
また、下、中ほどのところでは、「分野横断権利情報検索システム」の構築に向けた取組について記載があります。
続きまして、17ページ目を御覧ください。(6)では、海賊版・模倣品対策の強化ということで、海賊版対策の強化について、インターネット上の国境を越えた著作権侵害等に対する権利者支援等のこれまでの取組に加えまして、令和5年改正による損害賠償額算定方法の見直しであるとか、また、20ページ目になりますが、著作権制度の普及啓発について記載がございます。
以上が知的財産推進計画の主な著作権箇所の部分でございますが、資料をそのまま少し進みまして、その他の決定、政策文書として、29ページには規制改革実施計画、32ページにはいわゆる骨太の方針、33ページには新たな資本主義実行計画等の記載があります。
なお、昨年度と異なりまして、今年度は、いずれも著作権法の改正を前提とした記載はされておりません。
資料3の紹介につきましては、以上となります。
続きまして、資料4を御覧ください。資料4は、今期の著作権分科会における主な検討課題についてです。
冒頭記載しておりますとおり、令和3年7月の諮問を受けまして、昨年度、第一次答申が取りまとめられたところでございます。今期は、その下、審議事項1、2、3と整理していますとおり、継続審議事項であるDX時代に対応した適切な対価還元、また、権利者保護に向けた国際的対応、裁定に係る補償金の額について、これらに加えまして、新たに生成AIと著作権に関する論点整理を追加した案を示させていただいております。
この生成AIと著作権に関する論点整理の趣旨でございますが、先ほど知財計画について御紹介したとおり、生成AIと著作権との関係について、AI技術の進歩の促進とクリエイターの権利保護等の観点に留意しながら、具体的な事例の把握・分析、法的考え方の整理を行うことを想定しております。
続きまして、資料5を御覧ください。資料5は、今期の小委員会の設置についてです。
小委員会につきましては、著作権分科会運営規則に基づき、同規則において置くこととされている使用料部会のほかに、「分科会長は、特定の事項を審議するため必要があると認めるときは、分科会に小委員会を置くことができる。」とされております。
今期につきましては、先ほど御説明した資料4の審議事項に対応し、著作権関連の基本政策及び国際的な課題に関することを審議する政策小委員会、著作権法制度に関することを審議する法制度小委員会を設置することを案として示させていただいております。
各小委員会の構成については、3ポツに記載のとおり、分科会長の指名となります。
事務局からの説明は以上となります。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
ただいまの事務局の説明を踏まえまして、小委員会の設置につきましては、資料3のとおり、分科会の決定とさせていただきます。
それでは、今期の分科会の第1回ということでございますので、先ほどの事務局からの説明のあった検討課題も参考にしつつ、出席委員の皆様から御発言をいただきまして、審議を始めたいと思います。
構成員の皆様全員から御意見を頂戴したいと考えておりますけれども、恐縮ではございますけれども、日程の調整がつかず、本日途中退席を予定されている委員を先に指名させていただきたいと思います。その他の先生方におかれましては、遅れて来られる予定の委員を除きまして、お名前の五十音順で指名させていただきますので、お一人当たり2~3分程度で簡潔に御発言をお願いしたいと思います。
それでは、まず、太田委員からお願いいたします。
【太田委員】
太田勝造と申します。明治大学で法社会学という、法学と社会科学の間の学際的分野の研究をしております。
若い頃からAIを使った法分野の研究、例えば、法律エキスパート・システムの構築へ向けた研究とか、そういう分野の研究もしておりまして、現在も「AIと法」分野の研究に携わっております。 著作権に関しては、前期の小委員会から、今回こちらに参加させていただくことになりました。それほど政策的に十分な知識があるわけではございませんが、皆様に何らかの形でお役に立てればと思っております。よろしくお願いします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、宮島香澄委員、お願いいたします。
【宮島委員】
日本テレビの報道局で解説委員をしております宮島香澄と申します。よろしくお願いいたします。
今日御案内にあった知財の推進計画の策定などにも、去年まで内閣府の会議で携わっておりました。私は日本テレビで報道の仕事をしているので、コンテンツを作る側でもあるんですけれども、それよりもより広く、政策をどういうふうに考えていくかというような視点で参加したいと思っております。
今日は少し御意見を申し上げてもいいのかなと思うので、問題意識だけ2点申し上げます。
1つは、今日、皆様が共通で思っていらっしゃる生成AIの問題に関しては、本当に大変なことだと思っておりまして、各国も今悩みの中にいるのかなと思っています。そんな中、これを解決するのは本当にいろいろ難しいのですが、まずは各国がどういう動きなのか、あるいは、プラットフォーマーがどんな動きなのか、そういったことをみんなで共有しながら、そして、連携しながら考えることが何よりも必要だと思いますし、技術開発と商業利用の線引きですとか、そのプラスマイナスのところをすごく慎重に考える必要があると思います。そういったところの情報の共有と、その都度の共有した情報を広くみんなで考えるような状態ができればいいと思っております。
あと、もう一つは、法制度の運用に関してです。著作権法、法律としてちゃんとできているんですけれども、今の時代はみんなが発信できるようになってしまって、一体どこまでが個人利用で、どこからが商業利用かがもはや分からなくなっている状況の中で、必ずしも十分な知識を持たない状況で発信側に回るということがすごく増えているなと思っております。
法律の理解のために学校教育とか、発信はすごく大事ですけれども、そもそも高校とか、学校教育の場での著作権物の扱い方が除外要因になっているために、つまり、特例でコピーしてテストに出したり、自分たちでコピーして回したりということが普通にできることが許されているために、それとの整合性において、そのような場だけで一所懸命教育してもギャップができてしまうのかなと思っています。
なので、著作権教育というのはやり方や場に工夫がいると難しいなと思っていますし、教育どころか、春頃、内閣府のポスターでも、イラストレーターの方に似ているものが出されて回収するというようなことがありました。プロがいる世界でもこの線引きが難しくなっていく中で、法律にちゃんと書いてあることをどうきれいに運用していくかということは、大きな課題だと思っております。
そのような問題意識で参加します。よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、あんびるやすこ委員、お願いいたします。
【あんびる委員】
初めまして、あんびると申します。
私は、美術家の代表として、今まで幾つかの著作権の会議に出席してまいりましたが、ふだんは絵本を書いている絵本作家でございます。
私が実作家として最近実感していることは、私たちが生み出した作品をデジタルで利用したいという世の中のお声が、かつてないほどに高まってきたというふうなことでございます。私たちも、こういった社会的要請に応えつつも、自分自身の創作の環境を維持していくということに注力したいと思っていまして、皆様の御意見を伺いたいと思っています。
特に、生成AIにつきましては、美術家の中には大変懸念する声と、いや、人間がやっていることとAIがやっていること、同じなんじゃないかというようなお声、様々なお声がある中で、皆さんと一緒に考えていけたらいいなと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、植木康夫委員、お願いいたします。
【植木委員】
初めまして、植木といいます。新聞協会の著作権小委員会のメンバーであります。
生成AIについて申し上げます。生成AIをめぐっては、社会の様々な面で利便性の向上が期待される一方、他人の著作物等を生成AIが享受目的を持って無断利用するなど、著作権者の権利が侵害されるリスクが強く懸念されています。生成AIの利用をめぐる著作権の保護は現状では十分ではなく、このままでは著作権法が目的とする文化の発展が危機にさらされると考えます。
新聞社や通信社等の報道機関の記事、写真、画像等のコンテンツは、報道各社が著作権等の法的権利を有しています。こうした報道コンテンツが無断・無秩序にAIに利用される懸念が高まっています。特定の記事の全体あるいは一部分が伝える事実それ自体が著作権を構成しにくいとしても、多大な労力とコストをかけた報道機関としての一連の活動が結実したものということができることから、法的保護に値するコンテンツも多く存在します。
生成AIをユーザーが操作し、特定のキーワードや指示を入力することで、新しい記事や画像を生成する場合、出力されたコンテンツが元の記事や画像に依拠し、類似性が高い場合は、著作権法違反となる可能性があります。実際、外国ではAIが精製した画像をめぐり、著作権侵害で提訴しているケースもあります。
日本の著作権法第30条の4が、諸外国に比べ、AIによる著作物の学習に極めて有利につくられていることは大きな課題です。このため、「学習利用の価値が著作権者に還元されないまま大量のコンテンツが生成されることで、創作機会が失われ、経済的にも著作活動が困難になる」、「原作品への依拠性、類似性が高く、著作権を侵害しているコンテンツが生成・拡散される」といった事態が生じて、文化の発展を阻害するおそれがあります。
著作権法第30条の4は、2018年の改正でつくられましたが、当時、生成AIのような高度なAIの負の影響を十分に想定し議論されていたわけではないと思います。生成AIが文化の発展を阻害しないためには、著作権が適切に保護されるべきだと考えます。
AIによる報道コンテンツの無断・無秩序な利用が既成事実化すれば、報道機関の経営に大きな打撃を与え、良質なコンテンツを提供し続けることは困難になる可能性があります。 虚実ない交ぜの様々な情報が氾濫する中、民主主義を下支えする良質なニュースコンテンツが減れば、国民の「知る権利」を阻害しかねません。生成AIを使って、報道各社の記事を複数組み合わせ、文言を少し変えるだけで新たな記事を量産することができることから、報道機関が労力やコストをかけて作った著作物が、悪質な偽情報や有害情報、政治的な意図を持った世論誘導情報に悪用されるおそれもあります。
政府は、著作権法をはじめとする法制度全体の観点から、生成AIが社会と調和するものとなるよう、法的・制度的対応を急ぐべきだと考えます。生成AIによる報道コンテンツの無断・無秩序な利用が既成事実化される前に、政府等による適切な対応が検討されることを強く望んでおります。
先ほど事務局から説明のありました知的財産推進計画2023の5ページにも、こう書いてあります。学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する考え方を、具体的事例に即して整理し、考え方の明確化を図ることが望まれる。こういう課題について、ここでも議論していただきたいと思います。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、上野達弘委員、お願いいたします。
【上野分科会長代理】
早稲田大学の上野達弘と申します。著作権法を研究しております。
最近の話題はやっぱりAIと著作権でありまして、私も国内外で議論に参加しております。そんな中、先ほどもお話ございましたけれども、一部のクリエイターの方や新聞社などの中には、情報解析の権利制限規定に関する御懸念が見られることも承知しているところでございます。
ただ、間々見受けられる誤解というものもありまして、30条の4という権利制限規定は、あくまで著作物を情報解析するという入力の過程のみを適法にしているにとどまりまして、出力を適法にするものではありません。したがって、例えば、出力されたコンテンツが学習元の著作物と創作的表現において共通するというような場合には、若干の議論はありますけれども、依拠性も類似性も認められるということで、著作権侵害になると考えられます。
したがいまして、このような生成系AIを開発する側、あるいは、提供する側、それを利用する側、皆かなり大きな法的リスクを負っているということは認識しなければならないのではないかと思います。
その上で、学習過程における著作物利用に関しても権利者の許諾を必要とすべきだとか、いろいろな御意見があるというのは承知しております。ただ、平成30年改正に向けた議論におきましては、柔軟な権利制限規定について文化審議会でも多くの議論がされていたということは確かでございますけれども、すでに2015年から次世代知財システム検討委員会、あるいは、2016年から新たな情報財検討委員会という会議体が知的財産本部に設定されておりまして、そこでは、先ほどのAIが学習した著作物のすべてに依拠性を認めてよいのかという論点も盛んに議論されておりまして、そのように依拠性が認められてしまうと類似性のあるコンテンツをAIが生成したら全部著作権侵害になってしまうのではないのか、といった議論もかなりしておりました。
したがいまして、当時、「生成系AI」という言葉こそ用いられておりませんでしたが、むしろ生成AIを念頭に置いた議論が展開されていたと理解するのが妥当ではないかと思います。私もその当時の委員でございましたし、本分科会の委員でもある、先ほどお話のあった宮島香澄委員も、この知財本部の両委員会の委員をされていたところであります。そういう意味では、生成AIやこれによる権利侵害を想定した議論がされていなかったということはないように思います。
ただ、現状におきまして、AI技術の発展と権利者の利益のバランスをどう取っていくのかというのは引き続き重要な課題だと思っております。そのための手段としては、法改正なのか、ソフトローなのか、それ以外なのか、様々な手法があり得るかと思いますので、今後様々な観点から検討していくことが必要ではないかと考えております。
以上です。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、内山隆委員、お願いいたします。
【内山委員】
青山学院の内山といいます。今回はよろしくお願いいたします。
何を話していいのか、少し迷うのですけれども、どちらかというと、多分私は、保護と利活用といった場合に、その利活用側の視点でいろんなことを考えていきたいという立ち位置でございます。
今回、生成系AIに限らず、例えば、2015年、16年あたりの深層学習に基づくAIのときもそうでしたけれども、言わば新しいクリエイティブのための道具が出てきて、それがどう活用されていくかということ。恐らく、そこで一番考えられることは、作業のワークフローが大きく変わるだろうと。そのワークフローが変わることに強い抵抗のある方は、いろんな意味で保護を訴えるとは思うんですけれども、そのワークフローの変化というのも、ある意味では社会的な進化になることも十分あり得るかと思いますので、そうした進化と同時に、一方で既存のものに対する保護と、この辺のバランスをどういうふうに考えるかというところにやっぱり関心を持って議論に参加していきたいなと考えております。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、喜入冬子委員、お願いいたします。
【喜入委員】
筑摩書房の社長をしております喜入冬子と申します。こちらの会議には、日本書籍出版協会の理事という立場で参加させていただいております。2年目になりますので、まだまだ分からないところがありますので、皆様に教えを請いながら参加させていただければと思っております。
私どもは、基本的には、オリジナルのコンテンツを作り、それを本という形にして、それを皆様に読んでいただく、それを我々の仕事、商売としております。過去からずっと今までやってきたそうしたビジネスをなるべく毀損しないような形で、著作物の利用がなされることが大前提だと考えております。クリエイターという言葉でここでは語られていますけれども、著者、クリエイター、オリジナルなものを作っていく人たちは、もちろん御飯を食べなければいけません。その方たちがきちんとクリエイトしてくれなければ、ここから先の発展も当然ないわけで、オリジナルなコンテンツを作るということに対するリスペクトと、それに対する報酬というものがきちんと確保されるような形で、著作権利用というものがシステム的に運営されていくことを望みたいと思っております。
最近話題の生成AIについては、どれが誰の著作権物なのかについて、非常に危なっかしいことになっているということは、皆さん御存じのとおりで、私も十分に承知をしておりますので、具体的な事例を見ながら、どこで区分けをするのか、線引きをするのか。そして、当然私どもも、著作権不明のものとか、クリエイターが分からないものとかでも、ぜひともこれを使って新しいものを作り出したいというところもございますので、活用する側でもありますから、その辺、バランスを取りながら、皆様の御意見を聞きながら、一緒に考えていければと思っております。
よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、草野絵美委員、お願いいたします。
【草野委員】
皆さん、こんにちは。アーティストの草野絵美と申します。私はNFTプロジェクトを手掛けるデジタルアーティストとして、自身もAIと共に作品を制作しています。
私にとって、生成AIはまるでコラボレーターのような存在です。作品を制作する際には、ChatGPTとディスカッションを重ね、どのようなコードを書けば思い描いた画像を動かせるのか、どのコードが最適なのかといった問いに対して、アイデアを出し合いながら進めています。その上で生成AIを用いて作品を作り、その作品をさらに自分の手で加工するという手法を取ることができます。
先週、ファッション誌「WWD」の表紙をAIで制作させていただきました。私がAIで制作する写真にはよく顔が登場しますが、これが実際の人物の顔と誤認されないように、私自身の顔をベースにして、自分の顔のモデルを学習させたAIで制作しました。こういった工夫により、生成AIだけでもオリジナリティを出すことができると私は考えています。
年内にはロンドン、韓国、ニューヨークなどで作品の展示が予定されています。世界中で徐々にAIアーティストのコミュニティが形成されつつあり、その中で「オリジナリティはどこから生まれるのか」「AIだけで制作した場合、どのように作品に文脈を付けるべきか」といったテーマが活発に議論されています。
私自身、AIで作った作品はAIで制作したことを明記するべきだと考えています。AIで制作したことを隠して作品を発表するのは誠実ではないと感じています。
ただ、議論の焦点は結局、「出力されたものが何かに似ているかどうか」になると思います。その学習元については言及するべきかは検討が必要だと思います。しかし、未知の事象が日々起こる中で、どのような危険があるのか、またクリエイターの権利が侵害されないかという点については、慎重に考え続ける必要があります。
しかし、私はクリエイターをエンパワーメントするツールとしてAIが活用できると信じています。使い方次第で、AIはアーティストの活動を広げ、その可能性を拡げることができると思います。カメラが発明された当初も、「ボタンを押すだけで芸術と言えるのか」という議論がありましたが、同じようにAIはアーティストとのコラボレーターとしてどのように活用し、どうエンパワーメントしていくのかという議論を持つべきだと考えています。
どうぞよろしくお願いします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、河野康子委員、お願いいたします。
【河野委員】
皆様、こんにちは。日本消費者協会の河野でございます。私は、消費者の立場から、今年度の検討課題に関して気になったことを3点申し上げたいと思っています。
まず、他の委員の御指摘と重なりますが、やはりAI技術の進展と知的財産活動への影響については、とても気になっております。文化庁様のAIと著作権の資料において一旦整理はされているというふうに理解しておりますけれども、これからさらに加速する技術の進化と、社会実装も進んでいくと思いますので、それに伴って発生し得る様々な懸念やリスクに対して、今の解釈に立ち止まることなく、ぜひ迅速かつ柔軟、分かりやすい対応を進めていただきたいと思っています。
例えば、生成AIは膨大なデータ収集から成り立っていて、学習のプロセスではデータ提供者への許諾や謝礼は必要ないということですけれども、データを使ってシステム開発をして利益を得るとなれば、データ提供者にもその一部が還元されるべきではないかという、そういった視点もあると思います。
一番大事なところは、クリエイターやAIの未来を毀損するような使い方をする、いわゆる利用者に対して有効な対策の検討をお願いしたいと思っています。
2点目は、今回も検討課題に挙がっている海賊版・模倣品などの侵害コンテンツ対策において、改めて、利用者側が購入しない、容認しないという行動を取ることが重要だと思っています。
この間、物流の2024年問題に関連して、送料無料という表現を見直そうという動きがあります。消費者から見る無料の表記が、物流事業の労働や対価に対する誤った認識を払拭しようという意図だと思います。現在、コンテンツの正規のサイトにおける広告や宣伝においても、無料とか見放題とかいう表現が多く使われていますが、利用者が誤解しないような適正なマーケティングを通して、海賊版サイトをもうかるビジネスにしてしまわないように、利用者自身の意識改革への働きかけを積極的に行う必要があると思っています。
3点目は、このたびの法改正で着手が決まった簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度についてです。この制度は、国として、デジタル化のメリットを生かして利用促進と対価還元を拡大させていくことを宣言したものだと思っておりますので、ぜひスピード感を持って準備を進めていただければと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、佐藤正弥委員、お願いいたします。
【佐藤委員】
経団連の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
既に委員の方々からも御指摘がありましたとおり、著作物に関しては、経済・産業に与える影響がますます大きくなっている中、経団連でも昨年から議論を始めまして、本年4月に、クリエイティブ産業の活性化に向けた提言を取りまとめたところでございます。
経団連の提言を御覧になった方もいらっしゃると存じますが、ポイントを一言で申し上げますと、重視すべきは「人」、すなわち「クリエイター」に焦点を当てつつ、最も成長の可能性が高い漫画・アニメ・ゲーム・実写/ドラマ・音楽の5つの分野について、コンテンツの潜在可能性を最大限引き出し、日本経済を牽引する産業とすべく意見を取りまとめたものでございます。
提言では、まさに「人」に焦点を当てておりますので、クリエイターの権利の保護と、コンテンツの利用の円滑化・活性化等のバランスを適切に取りながら、グローバルな視点での課題解決を含めて、この分野の成長産業化を図っていくといった立場から、意見をさせていただければと思っております。
私からは以上です。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、髙部眞規子委員、お願いいたします。
【髙部委員】
髙部眞規子でございます。私は、現在は弁護士ですが、40年余り裁判官をやってまいりました。その間、著作権をはじめとする知的財産権訴訟にも長く携わってまいりました。
裁判官という立場でございましたので、どちらかの立場でものを言うということはなくて、やはり権利者と利用者のバランスをどこで取るべきかという観点から考えていきたいと思っています。
ChatGPTのお話、先ほどから皆様なさっておりますけれども、報道でも毎日のように目にいたしますし、非常に急速に発展したということですね。それから、メタバースですとかNFTといったことも、本当にあっという間に浸透しております。日本の裁判所では、ここ10年余り知的財産権事件が減っていたのですけれども、インターネット関連の著作権事件は、ごく最近になって急増しております。そういった意味で、日本でも、やがてアメリカのように、こういった問題が裁判所に持ち込まれる日も遠くないのではないか、というようなことも予感するところでございます。
先ほど法的リスクといったような言葉も出ましたけれども、せっかく新しく便利な技術を使っていくのに、大きな法的リスクを抱えながら利用しなければならないというのは、やはり好ましい状況ではないと思っております。この生成AIの問題は、著作権の問題だけには限らないわけですけれども、こと著作権という視点からの問題については、それを所管している文化審議会の場で、やはりスピーディに検討して一定のルールを示して予測可能性を高めていくことが求められていると思います。インターネット関連の問題は国境を越えて発生しますので、国際的な動向を踏まえた検討を早急に行うということが求められているのではないかと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、棚井文雄委員、お願いいたします。
【棚井委員】
日本写真著作権協会で常務理事をしております、写真家の棚井といいます。よろしくお願いいたします。
私からも生成AIについてですが、現状では、AIが自由に著作物を学習できる、非営利・営利目的に無関係に解析してしまっているということは、クリエイター、アーティストへの、彼らの作品の保護、また、創作活動そのものへの影響というのを心配しています。それはクリエイター、職業写真家の個々の仕事への影響だけではなく、例えば、写真作家と呼ばれるアートワークに取り組む写真家、彼らのシリーズ作品、ライフワークとして人生をかけて取り組んでいる、人間の謎に挑んだり、社会への提言を行っているような一連の作品を、彼ら著作者の許諾なしにAIに学ばせ、類似するような作品が生成できてしまう可能性があるとすれば、それはやはり写真作家への精神的影響を与えてしまう。次なる作品を創作する意欲がそがれてしまうのではないかという心配をしています。
また、広告写真家の方々に話を聞いても、やはり生成AIの有効な利用を期待しつつも、どの作品を基に出来上がった生成物であるのか、それが不明なまま大量な生成物が世の中に作り出されていることに、大変不安を抱いています。AIの進化は、先を読むことができない、あっという間に想像を大きく超えていってしまうからです。
社会にとって大変有益なAIの進化が進んでいくことは、とてもすばらしいことだと思います。とはいえ、著作物の保護と利活用のバランスがとても重要であると考えています。AIの進化のためにも、著作物、著作者は守られるべきです。
海賊版による著作権侵害のあったクリエイターへの対応、アーティストへの還元につながる追及権等々、著作者の保護を最優先して考えていっていただきたいと思っております。
私からは以上となります。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、田村善之委員、お願いいたします。
【田村委員】
東京大学で知的財産法を専攻している田村と申します。
まず、AIについて話題になっておりますが、私の立場は、基本的には、今回であれば、上野先生の御発言とほぼ同じことを考えております。
この問題を考える上では、入口と出口の問題を法的に分けて考えるべきだと思っております。
一部の委員の方からも御発言がありましたけれども、学習過程に関して申しますと、こうしてビッグデータの時代に様々な大量の情報を処理することができるというのは、一つは技術の進展であります。それに対して、旧態依然とした法制度が足かせとなって、そうした技術の恩恵を人々が享受することができなくなるという事態は、やはり防がなければいけません。
AIということで、大変革の時代だと皆さんおっしゃっていますが、個々的な取引ができる時代に、排他権を及ぼすことにしている著作権というのは、まさに大量に瞬時に情報を処理することができるという時代を考えたものではなく、そのような中で、学習の過程に関しては自由にするという著作権法30条の4というのは、時代に先駆けた大変すばらしい規定だったのではないかと私は思っております。
他方で、そうは申しましても、上野先生やほかの方もおっしゃっていたように、AI等の過程を経たとしても、出来上がったものが著作権侵害となるかどうかということに関しては、30条の4はタッチしておりません。依拠というものに関しては様々な意見があるかと思いますが、私自身は、著作権侵害の要件というのは、これは独自創作ではないことと考えております。
従来から、特に著作物の中身を見ることなく、機械などを利用して複製しても、それは依拠したと言われていることからも明らかなように、私の解釈では、議論があるものの、学習済みモデルなどを使って出来上がったものといえども、それが最終的に類似していて、そのルートの過程で他人の著作物が用いられているのであれば、これはやはり依拠というにふさわしいと思います。
その結果、せっかくの学習済みモデルを用いても、作る過程に関しては30条の4にありますが、作ったものに関しては、これは従来どおりの著作権侵害の要件でいく、そこに法的リスクがあるということにはなるわけでありますが、他方で、やはり我々は、AIの進展というのは見守っていく必要があるわけで、今後は、著作権の類似にも、かなりの程度法的判断に適合した、あるいは、少なくともフェールセーフという考え方、少なくともここは絶対侵害になるよという形での判断というものが割と簡単にできるかもしれない。画像検索等を使って、データベースの進展とともに、そこの法的リスクも、実はAIのほうで解決できるかもしれないということも考えなければいけないと思います。
少し長くなりましたが、もう1点だけ、メタバースに関してであります。
メタバースは、メタという言葉がついているように、新たな世界ではないかということです。しかし、現在の著作権法的には、リアルの世界に関しましては、例えば、著作物の展示については、美術の著作物の原作品に限って展示権が及ぶ、それ以外にはそもそも展示権がない。あるいは、著作権の制限に関しても、非営利であり、かつ料金を収受しない要件を満たせば、公での利用というものも認められます。そういったものがリアルの世界ですけれども、メタバースに行きますと、今は全て公衆送信という形で著作権法を整理しておりますので、一般人の感覚からすると、著作物をリアルの世界で展示しているというような場合も、著作権法の整理ですと、それは公衆送信権が全部及ぶということになります。他方で、著作権の制限規定は、基本的には非営利だろうが何だろうが公衆送信権が及ぶことになっている。そこにメタバースとリアルの世界の違いというものがあります。
これは、当然合理的なところがありまして、リアルの世界で一度に著作権に接する人間は限られているのに対して、物理的にはメタバースでネットを使い、インターネット接続すればアクセス数は飛躍的に多いということが背景にあると思います。しかし、これからは、全く同じ規律というわけにはいきませんけれども、しかし、メタバースというものが、仮に、かなり状況は変化していますが、リアルの世界と同じように、皆さんが自由に行き来できるようになりますと、物理的につながっていても本当にアクセスする人間はそれほど多くないという事態も考えられますので、そういったメタバースに対応した新たな著作権の考え方、公衆送信で一律に、全て十把一からげでよいのかということは、考えていく必要があるように思います。
以上です。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、中川達也委員、お願いいたします。
【中川委員】
弁護士の中川でございます。昨年から参加させていただいております。
生成AIの急速な進化を契機として、著作権に対する社会の関心が大変高まっていると感じます。そうした中で、この分科会が期待されている役割も非常に大きいものと存じております。私は、主に弁護士として、20年以上著作権の実務に関わってまいりました。そのような私としましても、生成AIがついに現実社会に登場し、自分でも使ってみて、また、社会の大きな反応を目の当たりにするなかで、著作権法がそもそもなぜ存在するのか、著作権法が何を保護し、何を保護しないことにしているのか、それはなぜなのかということについて、改めて原点に立ち返って考える契機になったと感じております。
生成AIをめぐる問題については、今後、論点整理を進めていくものと承知しておりますが、その際は、生成AIに対して社会から寄せられている疑問や不安の本質がどこにあるのか、それは著作権法の問題なのか、そういった点を正確に把握しつつ、その上で、著作権法としてはどのような役割を果たしていくべきなのかということを整理していく必要があると感じております。
その上で、論点整理の暁には、その結論の妥当性もさることながら、なぜそうなのかということをできるだけ社会の皆様に分かりやすく、かつ本質的な点にまで遡って丁寧に説明していくことが求められるのではないかと感じております。
また、生成AIの問題は、適切な対価還元をめぐる問題という側面もあるように感じております。そうした観点も踏まえて、私としても検討を進めてまいれればと考えております。
私からは以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、中沢けい委員、お願いいたします。
【中沢委員】
皆様、こんにちは。文藝家協会常務理事の中沢けいです。小説家でありまして、創作家として、大学で教員もしております。
今、皆様のお話を承っておりまして、生成AIについては、私ども、文藝家協会会員の皆さんも大変関心を持っているところです。新しい道具と技術が新しい創作物を生み出すというのは、これまでの人間の歴史に繰り返してきたことですから、この道具は大いに良い成果をもたらしてくれる可能性というものを感じていらっしゃる会員の方もいらっしゃいます。
今日、皆様の意見を聞いていて、私として言えることは何かなと考えたときに、今、中川先生のお話にございました、原点に立ち返って、あるいは、本質的なというような御発言もございましたけど、私たち物書きというか、小説家が聞かされている古い言葉を、大変に古いことを一つ皆様に御紹介して、御挨拶に代えさせていただきたいと思います。
それは何かと申しますと、私も、もうそろそろあと5年で50年も作家をやっているんですが、もう10代の頃から、駆け出しの頃から、文は人なりと聞かされてきました。文章というものは人なんだというふうに聞かされてきました。私たちがこれまで接してきた文章は、全て書いた人がいる文章だったんですね。そこには肉声があり、人格がありました。これが文章に接するときの大前提だったわけですが、私は、今ここへ来て、その肉声のない文章、人格を持ってない文章と対峙することになったんだなということをつくづく感じています。それに対して自分がどうしたらいいか、あるいは、文藝家協会のように同じ職能を持っている人たちにとって、より豊かな結果を持たせられるような事案として処理するためには何をしたらいいか、まだ正直言って大変戸惑いが深いところであります。
正直申しまして、人間の歴史の中で初めての出来事に出くわしているんだから、私の頭で足りるはずはないという確信だけを持っておりまして、ここにお集まりのすばらしい皆さん方のお知恵をお借りして事例を集め、最も皆さんが納得のできるルール確立をしていただければいいなと思っています。
文を使うとか、職業的な人だけではなく、大体の人間はみんな言葉をしゃべるわけですから、この問題に無関係の人は誰もいないわけです。ですから、多くの方に納得いただける意見というものを私どものほうから出すことができれば、それは誠に幸い、大げさに言えば、人類始まって以来の一つの答申を出すんだぞみたいな気持ちも心の底に少しだけあります。たくさんではないけど。
そういうわけでございますので、どうぞ、皆様よろしくお付き合いください。お願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、仁平淳宏委員、お願いいたします。
【仁平委員】
皆さん、こんにちは。日本ネットクリエイター協会の仁平と申します。よろしくお願いします。
私は、インターネットで活躍するクリエイターさんの団体の一応代表という形で、今ここに座らせていただいております。生成AIに関しまして述べさせていただきます。大きく2つあるかなと。
1つは、皆さん、ほかの先生方も言われているとおり、生成AIが出てくることによって、これまでイラストなり云々、創作活動で商売をされていた方の権利が守られなくなったり、もしくは、その人の商業的利益が失われたりというところの危惧ですよね。だから、これに対する、どういう考え方をしたらいいのかということを今後考えなければいけないのではないかということが1つ。
そして、もう一つ、これはネットならではのことなのかもしれませんが、インターネットの中でも、やはりAIを使って積極的にコンテンツを作る方というのが出てきています。これはプロフェッショナルの方もそうなんですが、いわゆるUGCという世界の中でも、こういう分野の方たちはかなりたくさんいらっしゃって。その場合に、今起きている問題としては、AIに関しては法整備がまだまだ整っていないこの現状、ある人は、AIを使って作った作品を自分の作品だよと言って胸を張って出している。それに対して、すごいねという意見もあれば、それはAIが作ったんじゃないか、君のものじゃないよという誹謗中傷がインターネットの中で出てきているというのも事実。
単に似ているという理由で、「あれ?これは誰々先生の絵を君は使ったんじゃないか」という、実際はそうかどうか分からないんですけれども、そういういわれなき誹謗中傷みたいなものがある。これはUGCの世界ならではのことなのかもしれませんが、私ども2次創作を含めて、このUGCというのは、日本の今後のクリエイト活動においてすごく意味のあるものだと考えておりますので、この辺り、そもそもAIにおける著作権って何なのかというところが明確でないからゆえの誹謗中傷だったりするというふうに感じておりますので、こういう議論がされているということ、そして、どういうことが決まったかということを、やはり広くインターネットの中で活躍しているような人たちにも広く伝えていきたいなと。そのために微力ながら発言ができればいいと思っております。
よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、広石美帆子委員、お願いいたします。
【広石委員】
皆様、お疲れさまです。NHKの広石でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日お示しいただきました今期の著作権分科会における主な検討課題については、今日、御参加の委員の皆様も全員が生成AIについて御意見をおっしゃっているように、世の中的にもAIの権利に関して様々な議論がありますし、NHKの中でも、生成AIの著作権について話題に上ることはよくあります。
いつも申し上げておりますが、NHKは、放送番組の権利者であると同時に、日々番組を制作していく中で、たくさんの著作物等を使わせていただいておりますので、やはり利用者の立場であるとも認識しております。そのため、AIのための学習用データにニュースなどの放送番組が利用されること、一方で、生成AIを番組で使うことなどについて、皆、一様に関心が高いのだと思います。
加えて、令和3年度より議論している、DX時代に対応した著作権制度・政策の在り方については、著作権法が改正され、分野を横断する一元的な窓口組織を活用した権利処理・権利情報データベースの構築が進められることになりました。
コンテンツ流通の課題としては、繰り返し申し上げておりますように、不明権利者対応が一番重要だと思われます。分野横断の窓口組織の運営やスキームづくりは本当に大変だと思いますが、窓口組織が機能することによって、権利者にとっても利用者にとってもウィン・ウィンになる仕組みの導入について、相続人不明などのケースにも十分対応できる、簡素で一元的な権利処理となるよう、実質的な議論に期待したいと思います。
本日は以上です。今後、引き続きよろしくお願い申し上げます。
【茶園分科会長】
ありがとうございます。
続きまして、深町徳子委員、お願いいたします。
【深町委員】
日本映像ソフト協会から参りました深町徳子と申します。よろしくお願いいたします。
私どもの団体は、映像、映画、そして、アニメーションといったもののコンテンツのパッケージの制作及び流通を主に担当している事業者団体でございます。
昨今の日本のコンテンツが国際的に非常に注目を浴びている中、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方ということについては、非常に大きな課題感と関心を抱いております。また、先ほどから皆様の御発言のとおり、生成AIと著作権に関しても非常に大きな関心を抱いているところでございますので、この辺りの論点整理についても、微力ながら貢献させていただきたいと思っております。
また、映像関係の部分で申し上げますと、著作権者不明の場合における裁定というところについても、こちら、注目させていただきたいと思っております。
私自身、今期から初めてこちらに参加させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、前田優子委員、お願いいたします。
【前田委員】
日本民間放送連盟の前田と申します。私どもは、主に地上、BSの民間放送事業者の事業者団体でございまして、そちらから参加をさせていただいております。
委員の皆様からは、生成AIに関連するコメントが多数出ておりますけれども、私からは、別のところで2点申し上げたいと思います。
1つ目でございますけれども、河野委員からも少し言及がありましたが、海賊版対策についてでございます。
これまでも著作権分科会の国際小委員会などで検討が行われまして、これまでも相談窓口の設置ですとか、損害賠償額の算定方式の見直しといった具体的な対応が図られているところですが、放送事業者を含めました権利者にとりましては、こういった訴訟にまで至らない日々の海賊版対策、具体的に申し上げれば、違法コンテンツについてサイト運営者に対して削除要請をしていくこと、それから、そうした作業を外部の業者に委託すること、こうしたことに係る人的・経済的負担が重くのしかかっております。他方で、違法コンテンツを配信しているプラットフォーム事業者などに間接的な利益が発生している。こうしたいびつな構造は是正されるべきだと考えております。
こうした点からも、プラットフォーム事業者など、コンテンツを媒介する立場の事業者が海賊版対策に果たす役割を整理し、積極的な協力を促すことができる方策を検討することが必要であると考えております。
続きまして、2点目でございます。こちらも海賊版に関連するところにはなりますが、現在WIPOで検討されている放送条約についてでございます。
この3月に行われましたWIPOのSCCR、著作権等常設委員会は、コロナ禍を経まして、ようやく多くの国がWIPOの本部に集まって、条約テキストに基づく検討が行われました。さらに、本年11月にもSCCRが開催されることとなっておりますので、国際的な放送コンテンツの海賊版対策に有効な内容とすることを前提に、早期の条約成立に向けて、加盟国のコンセンサスの形成に資する対応を引き続き検討するということが必要になってくると思いますので、ぜひこちらもよろしくお願いいたします。
私からは以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、丸山ひでみ委員、お願いいたします。
【丸山委員】
日本芸能実演家団体協議会、皆様、芸団協とおっしゃっていると思いますが、芸団協の役員をやっております丸山です。よろしくお願いいたします。
私は、実演家の視点から3点申し上げたいと思っております。
まず、皆様もずっと今お話をしております生成AIについてですが、社会に多くの革新をもたらす技術である一方で、生成されたコンテンツが第三者の著作権を侵害する可能性の負の側面についても指摘されております。まず、この生成AIと著作権などの関係について、理論的な整理と実態の把握を行った上で、クリエイターへの影響をしっかりと見極める必要があると思っております。
そして、2点目は、知的財産推進計画において、これは繰り返し指摘されておりますが、コンテンツの創作の好循環を促進するためには、クリエイターへの適切な対価還元が重要だと。本当に重要だと思っております。著作権分科会の基本政策小委員会においても、2021年度から継続してDX時代におけるクリエイターへの適切な対価還元方策を検討課題に挙げられ、各分野の実態の把握のための調査研究が進められてきました。今期は、これらの調査研究を含めて、バリュー・ギャップの問題の解決を含むクリエイターへの適切な対価単元を実現するための具体的な措置について、ぜひ検討を深めていただきたいと思っております。
そして、3点目、昨年の著作権施行令改正によって、私的録画補償金制度に新たな対象機器等が追加されましたが、クリエイターへの適切な対価還元の一翼を担う出来事だったと思っております。これにつきましては、今後、保証金の徴収・分配などの実務が円滑に進められるように、文化庁の皆様、そして、関係団体の皆様、関係者皆様に努力を重ねていくことが必要だと思っております。我々も努力いたします。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、吉村文雄委員、お願いいたします。
【吉村委員】
初めまして。映画制作会社の集まりでございます日本映画製作者連盟、映連からの代表として参加させていただいております、東映の吉村と申します。何とぞよろしくお願い申し上げます。
私は、映像配信が立ち上がった頃、2001年、2002年頃から配信のビジネスに携わっておりまして、それ以来、映像配信という全く権利処理のルールがない中で、長年、どういう形でビジネスとして継続していけるかということで、権利者団体様との向き合いをずっと続けてきたという経験を持っております。その前提がありますので、今回初めて参加させていただきますけれども、特にコンテンツの商流というところにおいて非常に大きな興味を持っているところでございます。
昨年の著作権法の改正ということにおきまして、特に違法配信、海賊版に対しては、特にライセンス料の算定というところで大きな進歩があったというふうに理解しておりまして、これが今後の違法配信等への大きな抑止力、抑制力になるのではないかなということも期待しておりますし、長年こういう業務に携わっておりまして、こういうのがいたちごっこということがやはりありまして、何かで抑えるとすぐに抜け道が出てくる、新たな方法が出てくるということも常でありますので、この点に関しては、引き続き注視していきたいなとは思っております。
それから、先ほど来生成AIに関するお話も出ておりますけれども、皆様御存じのとおり、映画というのは、様々な著作権の塊のようなものでございます。どの部分で生成AIという技術を使うのかということにおいて、その著作物の集合体としての映画の在り方、それから、立ち位置というものも大きく変わってくると思っております。
具体的には、もう既に現場レベルでは、撮影の中で生成AIをうまく活用できないかということも既に研究も進めておりますし、企画として、これを取り込んだ企画というものも動き出しているようなところでございます。
ここのもとになるものが何なのかというところも踏まえて、やはり現状のこの曖昧な状況の中で出来上がったものに対しての価値、それから、位置づけというものも不安定になるのではというところの危惧も持っていたりということもありますので、ぜひ、この会に参加させていただくことで、その議論を深めさせていただき、何か一定の方向性が見いだせるようなことになればということも期待しておりますし、それに向けて微力ながら知見等も披露させていただきつつ、御協力させていただきたいと思っております。
何とぞよろしくお願い申し上げます。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、渡辺俊幸委員、お願いいたします。
【渡辺委員】
JASRACの理事を務めております作曲家の渡辺俊幸です。多くの委員が本日、生成AIに関して御発言をされていますが、私も音楽家の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
様々な思いがあるのですが、本日は、著作権法30条の4に絞ってお話をしたいですが、2018年に施行された著作権法30条の4によりまして、生成AIによるディープラーニングのための著作物等の複製利用が、著作権者の許諾を必要とせず自由にできるようになりました。先ほど田村委員がおっしゃったように、AI開発を促進させたいという考え方が優先された結果の法改正だったと思われます。
ただ、この法改正の内容に関しまして、私は大きな問題だと感じるのは、これが営利目的、商業目的であっても、情報解析に必要な範囲であれば、この権利制限が適用されてしまうという点です。これは少なくとも私のような音楽系のクリエイター側から見れば、許し難い内容と言わざるを得ません。諸外国においても、著作権法30条の4のような広範で強力な明文規定は見られず、EU諸国の音楽関係者からは、日本は本当に大丈夫なのかという声が上がるほどであります。
今回の資料にも書かれていますとおり、昨今、生成AIによる作曲系のツールが急速に増えています。しかし、そのほとんどが営利目的で制作されています。それにもかかわらず、そのツールを開発するための元ネタとなった楽曲の著作者に対価が還元されないということを当然としている現在の著作権法は、早急に見直されるべきだと私は強く感じています。
仮にですが、色々な生成AI系作曲ツールが生まれてくる中で、ヒットソングを生み出せるような作曲系生成AIツールを開発したいのであれば、メーカー側が様々なヒットメーカーそれぞれの方と直接交渉をして、万が一それなりの対価を支払うことなどで許可を得ることができれば、初めてその楽曲をAIに学習させることができるというのが本筋だと私は思います。そういった本来著作権者が行使できる権利が全く無視された状態で、AIツール開発で利益を得る側にだけメリットがある現著作権法は、とても大きな問題を抱えていると感じています。
そもそも研究目的であるのならば、音楽に関して言えば、膨大なクラシック作品や、あるいは、ポピュラーソングでも、PD楽曲の名曲がありますから、それのみを学習させればよいのであって、権利制限など本来必要ないのです。これは音楽に限らず、様々な分野の創造性の高い著作物全てに関して言えることではないかと私は感じています。こういった意味からも著作物に関して権利制限は撤廃するべきです。そうすれば、AI生成物に関しての依拠性の問題は生じなくなると考えます。
生成AIに関しての問題点は、実は著作権だけではなく、著作隣接権にも及びます。昨今、AI技術の進化によりまして、例えば、CDなどの音源からボーカルだけ、エレキベースの音だけ、ドラムスの音だけ、個々の楽器だけの音を完璧に抜き出すということができるようになりました。現行の法制度では、これらの抜き出した音源を演奏者の許諾を得ずにAIに学習させることが可能であります。それで、著作隣接権が無視されるということが常態化しています。
以前、皆様、NHK紅白歌合戦を御覧になったかどうか分かりませんが、NHK紅白歌合戦で美空ひばりさんの歌声をAIで作り上げて披露されるということがありました。現在の技術では、あれをはるかにしのぐレベルで本物そっくりの歌声を作ることもできるようになってきました。当然のことながら、それが様々な楽器においても同じことが実現するわけです。現法制下では、楽器音の場合は、聞いただけで元ネタになった演奏者を特定することは難しいので、悪い方向にそれが作用して、著作隣接権が全く無視された状態で、多数の演奏家の演奏音源が、全く対価の還元が演奏者に行われないまま、無許諾でAI学習のために使用され、結果、DTMなどで使用するための高度に進化した音源が商品化される可能性があるという状況にあります。
日本作曲家協会や日本作詞家協会をはじめとします13の音楽作家団体が結集して設立された日本音楽作家団体協議会、FCAと呼ばれる団体がありますが、そこが、先日、AIによる著作物利用について意見表明をしました。これは音楽作家の総意と言っても過言ではない意見表明であります。
そこで提唱されました主な内容は、現行著作権法における権利制限規定を見直し、創作者の権利を侵害することなく、AI技術の発展と調和を図ること、もう1点は、G7デジタル技術閣僚宣言に基づき、生成AIに関する議論の場を設け、創作者をステークホルダーとして協議に参加させること、この2点を意見表明いたしました。
私自身もこの意見に強く賛同し、著作権法30条の4の見直しを切に望んでおります。そうすることで、音楽作家や演奏家、そして、様々な分野のクリエイターたちの権利が守られるようにしていただきたいと強く願っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
では、続きまして、吉澤秀男委員、お願いいたします。
【吉澤委員】
コンピュータソフトウェア著作権協会の吉澤でございます。
当協会は、ゲームソフトやビジネスソフトなどのプログラムの著作物のほかに、デジタル化された様々な著作物の権利保護を中心に活動を進めておりますが、昨今、メタバースやChatGPTに代表されます生成AIの活動などによって、デジタルの著作物に関する課題はますます大きなものになってくると考えております。この会議で検討に期待しつつ、その一助となればとして努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今日、私のほうからは、コンテンツ制作の好循環を支える著作権制度の政策の改革の進展のために、国会で成立しました改正著作権法によって創設されることになりました裁定制度についてコメントを申し上げたいと思っています。
新裁定制度に関する手続については、新たに創設される一元的な窓口において行われることとされており、具体的内容、方法等については、今後検討されることになると思われます。課題として、2点挙げさせていただきます。
まずは、新制度における二次的著作物の取扱いについてです。二次的著作物の中には、原著作者に承諾を得ずに制作・頒布されるものもあり、窓口組織において二次的著作物であるかどうか、つまり、元の作品が何であるかを適切に判断することが必要だと思っています。特に、ゲームソフトにはキャラクターの画像、音楽、映像など様々な著作物が含まれており、それらを用いて二次的著作物を制作することも頻繁に行われております。
新体制では、インターネット上の検索等を活用して作品の探索を行うなど想定されますが、二次的著作物について十分な検討を行っていただくことを希望いたします。誤って利用可能とされないような適切な探索方法や適正な判断基準の策定などについては、権利者、関係者からのヒアリングを行うことも有効だと思っております。
次に、分野横断の権利情報データベースを利用して、著作物と著作権者の探索、探求を行うことについてですが、現実として、全ての著作物等がデータベースに登録されることはあり得ないということを十分に視野に入れておくべきだと思っています。データベースだけで権利者が発覚しなかった場合でも、その他の方法で権利者を探索する手法を十分に検討し、その意思を確認するためのフローなどの手順を適切に策定いただきたいと思っています。
また、デジタル時代のスピードの要請に鑑みまして、既存データベースへの登録を徹底できるように、周知すべき施策も併せて実行すべきと感じております。
以上、当協会のコメントを申し上げました。よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、畑陽一郎委員、お願いいたします。
【畑委員】
畑でございます。今日は遅れての参加で申し訳ございません。
今日の事務局のご説明を聞いてはいないのですが、資料を事前に拝見させていただきました上で、今年掲げられた著作権分科会の検討課題について、少し意見を述べたいと思います。
まず1点目は、もう他の委員の方々からご意見が出たのではないかと思いますが、生成AIと著作権に関する課題についてでございます。
どのようなAI生成物が著作権保護の対象となるのか、ならないのかといった点、また、日本は著作権法第30条の4で、機械学習に対して幅広い権利制限規定が設けられておりますが、そのような規定が悪用されて、侵害の疑いあるAI生成物が大量に生成される惧れはないのかといった点など、国際的にも今いろんな議論が進んでおるところでございます。
EUにおきましては、今、通称「AI Act」という法律の検討が進んでおりまして、その内容については必ずしも日本の権利制限規定とは相入れないとも聞いております。
著作権法第30条4の但し書で、“著作者の利益を不当に害することになる場合には適用しない”ということになっておりますが、何がそれに該当するのか。EU、諸外国の検討も踏まえながら考え方の整理が必要ではないかと思っております。
また、現状、その30条の4によって利益が不当に害されている実態はないのかどうか、そのような実態把握や、より具体的なガイドラインの策定など、社会的な混乱を来さないように、今後、検討と対応をお願いしたいと思っております。
2つ目に、クリエイター、制作事業者への適切な対価の還元でございます。
現在のデジタルコンテンツの流通におきましては、ビッグプラットフォーマーの役割は言うまでもなく非常に大きくなっておりまして、私共日本レコード協会の会員レコード会社におきましても、ビッグプラットフォーマーというのは重要なビジネスパートナーとなっております。
それと同時に、透明度の高い利益配分の実現が、まさに「バリューギャップ」という言葉の下に課題となっておるわけですが、これについては既に著作権分科会の検討テーマにもなっております。持続的なコンテンツ制作を可能とするための課題検討というところで、今年度は、その解決の方向性を見いだすことができるような検討を進めてまいりたい、お願いしたいと思っております。
また、対価還元につきましては、長らく議論になっております“私的録音・録画に関する権利制限への対価還元”、これも重要な課題だと思っております。
昨年、私的録画補償金につきましては、ブルーレイディスクレコーダーと、それに用いる記録媒体を政令指定していただきました。この補償金の運用については、まだ関係者間、特に機器メーカーと指定管理団体である私的録音録画補償金管理協会(sarah)との間で、まだ鋭意協議中でございます。
今日、この会議の裏で開催されたsarahの定時総会・理事会が先ほど終了しまして、今日から2年間、私がそのsarahの代表理事を務めるように申しつかった次第でございます。
この後、ブルーレイ補償金の運用に関する協議は、早期に解決すべく続けていくわけですが、それとは別途、この後のDX時代に対応した利用円滑化と対価還元のバランスを見いだすための新しい対価還元の方法が次の大きな検討テーマと認識をしております。これについても、時機を逸することなく、検討を進めていければと思っております。
また、別の側面では、著作物等の利用につきまして、相応の使用実態がありながらも対価還元の制度が未整備となっている分野もまだまだ残っておると理解をしておりますので、そこについても、引き続き、実態把握と課題の検討を進めていければと思っております。
また今年度、著作権分科会の委員としてやっていきますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【茶園分科会長】
どうもありがとうございました。
これで委員全員の方に御発言いただいたと思いますけれども、各委員からは様々な御意見を頂戴いたしました。これまでの御意見を通じまして、何か補足など御意見がさらにございましたらお願いいたします。
では、上野委員、お願いいたします。
【上野分科会長代理】
お時間のないところ、失礼いたします。
やはり先程からお話を伺っておりますと、AIに関していろいろな御意見があるようでありますので、今後は、それが本当に著作権法の問題なのかどうかということを含めまして、様々な検討をしていくことが必要ではないかと思います。
それで、著作権法の問題に関しまして、先ほどの事務局からお話がございました参考資料4に関しまして、1点だけ御質問させていただければと思います。
これは学習と生成を分けるべきだということで、大変分かりやすい説明資料だと思いますけれども、一方で、左側の「AI開発・学習段階」のところに※1という注釈がありまして、これをめぐりまして最近、ネット上でも少し議論になっているようであります。
この※1で書かれているのは、3DCG映像作成のために風景写真を使うというような例でありまして、元の写真の創作的表現が残ることを目的にする場合には非享受利用に当たらないので30条の4の適用を受けないということだと思うのですけれども、どうもこの受け止めとして、生成AIが結果として出力するコンテンツの中に学習元著作物の創作的表現が残るような場合は、遡って、学習段階における著作物利用も30条の4の適用を受けないというような見方と理解する向きもあるように承知しております。
ただ、この文書で示そうとされたのは、単に一般論として非享受利用に当たらない例を示したにすぎず、この※1で書かれている具体例は、必ずしも生成AIの例ではないと理解したほうがよいのかなとか思ったりしたところなのですが、その辺りについて、もし何か追加して御説明いただけるようなことがありましたら、お聞かせいただければと思います。お願いいたします。
【三輪著作権課調査官】
事務局でございます。今、上野委員から御質問のありました点について、御回答申し上げます。
こちらにつきましては、委員御指摘のとおりでございまして、この「※1」のところで示させていただいた例は、必ずしも生成AIを主眼として例に挙げたものではございませんで、著作権法第30条の4におきまして、思想又は感情の享受を目的としない場合に該当しないものについて例を挙げたというものでございます。ですので、AI一般、情報解析一般について例を示したものということでございます。
以上でございます。
【茶園分科会長】
上野委員、よろしいでしょうか。
【上野分科会長代理】
はい。ありがとうございました。
【茶園分科会長】
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
それでは、今期の小委員会では、先ほど御議論いただきました今期の著作権分科会における主な検討課題に沿って審議を進めていくこととしたいと思います。
なお、著作権分科会におきましては、これは参考資料1の7ページにございますけれども、文化審議会著作権分科会運営規則第2条の規定によりまして、使用料部会を設置することに決まっております。使用料部会と、ただいま設置を決定していただきました各小委員会に属すべき委員につきましては、文化審議会令第6条第2項、参考資料1の3ページにございますけれども、これと、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第2項、参考資料1の8ページにございますけれども、この規定によりまして、分科会長が指名することとされております。これにつきましては、後日、指名の上、事務局を通じて皆様にお知らせさせていただきたいというように考えております。
では、最後に、文化庁より1点御報告いただきたいと思います。参考資料5につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
【小林国際著作権室長】
最後に失礼いたします。参考資料5でございます。インターネット上の著作権侵害対策情報ポータルサイトの運用状況について御報告いたします。
まず、左側ですけれども、オンライン上の著作権侵害による被害の状況を踏まえ、文化庁では、権利者の方々の権利行使を支援するため、昨年、ウェブサイト上に本ポータルサイトを公開し、特に個人クリエイターの方々に向けて、権利行使をするために役立つノウハウを発信しています。
ページ右側ですが、本ポータルサイト上には、著作権侵害への対応に困っている権利者の方々を対象とした、弁護士による無料の相談窓口を設けています。
また、先月、高校で授業に活用いただけるよう、著作権と海賊版について学ぶための教材も公開いたしました。
2ページ目以降は、昨年度の相談窓口の利用状況をまとめたものです。詳細は割愛いたしますが、受付件数の総数は168件であり、侵害のあった分野も幅広く、海外の事業者が絡む難しい案件も多い状況です。
本年度も権利者の方々に寄り添った相談窓口の運営、分かりやすい情報発信に努めてまいります。
より多くのクリエイターの皆様に御活用いただけるよう、キャンペーンに取り組んでおりまして、委員の皆様におかれては、機会がございましたら、関係する方々に本活動の御案内をいただけますと、大変幸いでございます。
以上でございます。
【茶園分科会長】
ありがとうございました。
それでは、その他に、全体を通じまして、何か御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので、他に特段ございませんようでしたら、本日はここまでとしたいと思います。
最後に、事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。
【小倉著作権課課長補佐】
本日は、ありがとうございました。
次回の著作権分科会につきましては、各小委員会における検討状況等を踏まえつつ、改めて日程の調整をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【茶園分科会長】
それでは、以上をもちまして第68回文化審議会著作権分科会を終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
――了――

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